JP2004518867A - 噴射システムの噴射量を測定するための方法、コンピュータプログラムおよび装置 - Google Patents
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Abstract
Description
従来技術
本発明はまず、噴射システムによって試験流体が測定チャンバ内に噴射される、特に内燃機関の噴射システムの噴射量を測定するための方法に関している。
【0002】
この種の方法は、市場からも公知である。この公知方法の適用は、とりわけEMI(噴射量インジケータ)とも称される装置の使用下で行われる。この装置は、ピストンが案内されているケーシングからなる。このケーシングの内室とピストンは、測定チャンバを仕切っている。測定チャンバは開口部を有しており、その開口部には噴射ノズルが気密に装着されている。この噴射ノズルが燃料を測定チャンバ内に噴射すると、測定チャンバ内にある流体は押し出され、これによってピストンが移動する。このことは、距離センサによって検出される。ピストンの距離からは、測定チャンバ内、もしくはそこに保持されている流体の体積変動が推定され、これによって噴射された流体量が推定される。
【0003】
公知の方法は、既に非常に高い精度で作動する。しかしながら特に内燃機関では、常により多くの噴射システムが用いられており、これは非常に少ない噴射量で噴射され、しかもその噴射は密に接近して順次連続される複数の部分噴射からなっている。そのような噴射システムでは、さらにもっと正確な噴射量の検出が望まれる。
【0004】
それ故に本発明の課題は、冒頭に述べたような形式の方法において、最小の噴射量がより高精度に測定できるように改善を行うことであり、また密に接近して順次連続される噴射自体もより高い信頼性で測定可能になるようにすることである。
【0005】
この課題は本発明により、測定チャンバの体積を噴射期間の間一定にし、測定チャンバ内にガス体積、有利には空気体積を実在させ、噴射された試験流体の体積を、理想ガスに対する状態方程式を用いて噴射の際に生じる測定チャンバ内の圧力変化から求めるようにして解決される。
【0006】
発明の利点
本発明による方法は次のような考察に基づいている。すなわち噴射された試験流体が実質的に被圧縮性であることに基づいている。噴射される試験流体とは、例えば内燃機関の噴射システムを検査する場合には、その物理的な特性が、例えばディーゼル燃料やガソリン燃料などの特性に相応しているテストオイルである。測定チャンバの体積は噴射期間の間は総じて一定であるので、噴射の際には測定チャンバ内に実在するガス体積は、噴射された試験流体の分だけ減少する。このガス体積の減少は、結果的にガス体積において(さらにこれにより試験流体の体積においても)圧力の上昇を引き起こす。しかしながら測定チャンバ内のそのような圧力変化は、容易に検出可能である。従って検出された圧力変化からは、理想ガスに対する状態方程式を用いて相応の体積変化を求めることができる。
【0007】
本発明の方法によれば、当該方法の実施に対して何ら可動部材を必要とすることなく、噴射された試験流体の体積を専ら簡単な物理的関係に基づくだけで求めることができる。それにより、測定速度の迅速化が図れると共にさらに当該方法の実施に対する摩耗性も皆無である。例えば従来技法のもとでピストン質量体の振動に基づいて引き起こされる測定結果の改竄は、本発明による方法のもとでは除外される。それにより、時間的に密に接近して順次連続的に測定チャンバ内に噴射される最小噴射量も、より高い精度で捕らえて求めることができる。
【0008】
本発明の有利な実施例は従属請求項にも示されている。
【0009】
有利な実施例によれば、噴射の前に、気密に閉じられている測定チャンバの体積を所定の量だけ変化させ、結果的に生じた圧力変化から測定チャンバ内のガス体積が求められる。この変化実施例は、一般に測定チャンバ内のガス体積は近似的に既知なだけであるという考察に基づいている。というのも測定チャンバ内では例えば先行時点で噴射された試験流体も存在するので、ガス体積は必ずしも測定チャンバの体積に相応しないからである。噴射前に測定チャンバを完全に空にすることは、通常のケースでは多大なコストをかけなければできない。
【0010】
しかしながら先に述べた本発明による方法の有利な実施例によれば、噴射の前に測定チャンバ内のガスの体積を非常に高精度にかつ簡単なやり方で求めることができる。それに対しては、測定チャンバの体積が所定の量だけ、つまり予め正確にわかっている規定量だけ変化させられる(例えばピストンの移動によって)。測定チャンバは気密に閉塞されており、また測定チャンバ内に実在する試験流体も非圧縮性であるので、測定チャンバの体積の減少からは測定チャンバ内に存在するガス体積の圧縮と相応の圧力変化が結果的に生じる。この結果からは、理想ガスに対する状態方程式と体積減少前のガス体積における圧力とを用いて、ガスの体積を求めることができる。このようにして正確に求められた測定チャンバ内のガス体積により、測定精度のさらなる向上が可能となる。
【0011】
測定精度のさらにもう一段階の向上は、測定チャンバ内のガスおよび/または試験流体の温度を検出して噴射された試験流体の体積を求める際に考慮することによって可能となる。このことは基本的には、噴射の際の測定チャンバ内の温度もほぼ一定に維持されるということに近似的に基づいたものであるが、しかしながら実際には、噴射の際にも温度変化は生じ得る。このことは実質的に2つの物理的な作用に関係しており、その1つは噴射された試験流体の運動エネルギーから熱エネルギーへの変換であり、もう1つは測定チャンバ内の圧力上昇に基づくガス体積の断熱的温度上昇である。噴射された試験流体の温度および/または測定チャンバ内に存在するガスの温度も検出されるならば、このことは理想ガスに対する状態方程式で考慮され、それによって測定精度のさらなる著しい向上が図れる。
【0012】
しかしながら測定チャンバ内のガスおよび/または試験流体の絶対温度の測定には、通常のシステムを用いれば所定の時間遅延が伴う。なぜならそれらが温度変化に即応できるものではないからである。それ故本発明の別の有利な実施例によれば、噴射された試験流体の温度上昇が、噴射システム内で占められる圧力と測定チャンバ内の圧力の差分から求められる。この変化実施例によれば、簡単な計算によって少なくとも試験流体の運動エネルギから熱エネルギへの変換に基づいて生じた噴射時の試験流体の温度上昇分が考慮される。そのような計算は迅速な速度で実施でき、そのため即応的で高精度な測定結果が得られる。
【0013】
特に有利には、測定の前に測定チャンバにガス、有利には空気が注入される。これにより測定チャンバ内で大きなガス体積が得られ、このことは測定領域にも有利となる。
【0014】
本発明による方法の別の有利な実施例によれば、測定チャンバ内の流体通流が均質化および/または緩慢化される。このことは例えば圧力波に基づく圧力振動を減衰させ得る。
【0015】
有利には、測定チャンバは、ワイヤネットを含んでいる。これにより、噴射された流体が分散され、温度の平均化が促進される。
【0016】
さらに、温度上昇によって引き起こされ時間と共に弱まる圧力変化を指数的な数式によって表わすことも可能である。最も簡単なパターンで考えられることは、温度上昇が、観察される圧力上昇に比例していることである。すなわちあらゆる(差異的)圧力上昇は、(差異的)にもたらされる流体体積による測定チャンバの体積減少に起因する一定のパーセンテージ成分と、温度上昇によって引き起こされ測定チャンバ毎に表わされ時間と共に指数的に減少する特性経過を有する一定のパーセンテージ成分からなっている。
【0017】
噴射過程以外で、時間的に減少する特性経過を直接測定することも可能である。なぜなら噴射による測定チャンバの体積減少が何も起こらないからである。それ故にこの領域では時定数を定めることができ、さらに温度上昇に起因する圧力上昇のパーセンテージ成分を定めることができる。この指数的な数式を用いることによって、簡単な計算手法で、試験流体の噴射によって引き起こされる全ての圧力上昇をさらなる想定なしで導出することが可能となる。
【0018】
指数関数は、周期的な成分を何も含まないので、オーバーシュートやその他の周期的な現象は何も生じない。それ故に噴射された流体の体積によって引き起こされる測定チャンバの体積減少の時間的な分解能(分解時間)は、測定チャンバ圧力の時間的な検出(検出時間)に相応する。
【0019】
本発明は、前述した方法をコンピュータ上で実施する際のその実行に適したコンピュータプログラムにも関している。その際特に有利には、このコンピュータプログラムがメモリ上、特にフラッシュメモリ上に記憶されている。
【0020】
また本発明は、噴射システム、特に内燃機関の噴射システムの噴射量を測定するための装置にも関しており、この装置は、測定チャンバと、該測定チャンバと噴射システムを接続させ得る接続装置と、測定チャンバ内の圧力を検出する圧力センサと、該圧力センサから提供される測定信号を処理する処理装置とを有している。
【0021】
そのような装置は、冒頭でも述べたような既に市場で周知の噴射量インジケータ(EMI)に相応する。そのような装置の測定精度を、特に少ない噴射量と時間的に密に接近して順次連続する噴射のもとで高めるために、本願では測定チャンバを次のように構成することが提案されている。すなわちその体積が噴射期間中に一定に維持され、測定チャンバ内でガス体積、有利には空気体積が存在するように構成することである。さらに処理装置は、噴射された試験流体の体積が、噴射前後で圧力センサの測定信号から理想ガスに対する状態方程式を用いて求められるように構成されることが提案されている。
【0022】
このような装置を用いることによって、冒頭に述べたような形式の本発明の方法を特に良好かつ確実に実施することが可能となる。その際に得られる利点は、当該装置が噴射量測定に際して機械的な可動部材を何も含む必要がないことである。その限りにおいては本発明による装置は、噴射の間に測定チャンバの体積が変化する前述したEMIとは相反するものである。それによって本発明による装置では、非常に早い測定速度と摩耗からの開放が得られる。その上さらに本発明による装置では可動部材が省略されるので、相応の測定問題に容易に対応可能であり、さらに製造も比較的安価にできる。
【0023】
本発明による装置の別の構成例によれば、測定チャンバを領域的に区切り、所定の形式でシフト可能なピストンが含まれている。このピストンを用いることにより、測定チャンバの体積が所定の量だけ変化される。これは測定チャンバ内のガスの圧力変化につながる。この圧力変化からは測定チャンバ内のガス体積を求めることができる。噴射の期間中は、ピストンがシフトしないように固定される。
【0024】
有利にはこの装置はガス供給部を含んでおり、さらに有利には測定チャンバと接続可能な圧縮空気発生源を含んでいる。そのようなガス供給部を用いれば測定前に所定の噴射量を測定チャンバに注入できる。これにより、測定の際に得られるガス体積が最大となり、このことも測定の際の測定精度を向上させる。
【0025】
有利には前記装置は、空洞体、例えば焼結体を含んでおり、これは、測定チャンバ内で試験流体の噴射の際に渦流が発生するのを回避するように設けられる。これは次のような考察に基づくものである。すなわち現在の噴射システムでは測定チャンバ内での高い噴射速度は、ガスないし試験流体の渦流を巻き起こし、これが圧力測定の際に障害を引き起こしかねないので、本発明の提案によれば、空洞体を相応に配置してそのような渦流の発生を回避させ、圧力測定の安定化と精度の維持を図っている。その際には、測定チャンバ全体を空洞体の中に構成することも可能である。さらに測定チャンバ内には例えばワイヤネットや長めのターニングからなるターニング塊が置かれてもよく、それらがその広い表面に基づいて圧力波を特に良好に減衰させ得る。
【0026】
別の有利な構成例によれば、当該装置が温度センサを含んでおり、この温度センサは、測定チャンバ内のガスおよび/または試験流体の温度を検出する。このようにして、ガスおよび/または試験流体の温度が理想ガスの状態方程式の適用のもとで考慮され、このことも噴射された試験流体の体積の算出精度を再度高める。
【0027】
特に有利には、当該装置の処理装置は、前述した2つのコンピュータプログラムを備えている。
【0028】
図面
以下の明細書では本発明の2つの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。ここにおいて、
図1は、本発明による噴射システムの噴射量を測定するための装置の第1実施例を部分的に裁断されている側面図で概略的に示したものであり、
図2は、図1に類似した本発明による噴射システムの噴射量を測定するための装置の第2実施例を概略的に示した図である。
【0029】
実施例の説明
図1には符号10で、噴射システムの噴射量を測定するための装置全体が表わされている。この装置10は、測定チャンバ12を含んでおり、この測定チャンバ12は、その上側に開口部14を有している。この開口部14は、シールリング16を備えている。このリングの上には、噴射システム、すなわち当該実施例では、インジェクターの噴射ノズル18が気密にかつ液密に載置されている。噴射ノズル18は、高圧−試験流体供給部20に接続されている。
【0030】
図1中の測定チャンバ12の下方領域には、試験流体22が充填されている。この試験流体は、燃料の物理的特性に相応する特性を有しているテストオイルである。図1中の測定チャンバ12の上方領域には、理想ガス、当該実施例では空気24が充填されている。測定チャンバ12における空気24が存在している領域は、ガス体積Vgを形成する。測定チャンバ12の左上方領域からはさらに圧力センサ26と接続する分岐管路(参照符号なし)が分岐してる。測定チャンバ12内の温度Tgは、温度センサ28によって検出される。図1中の測定チャンバ12の右上方領域からは、さらなる別の分岐管路(参照符号なし)が分岐しており、これはバルブ30を介して圧縮空気発生源32に接続している。
【0031】
測定チャンバ12の試験流体22が充填されている下方領域は、第3の分岐管路(参照符号なし)とバルブ34を介して排出部36に接続可能である。この図1中の下方領域では、測定チャンバ12がピストン38によって区切られており、このピストンは、ピストンロッド40を介して測定チャンバ12の壁部を通って測定チャンバ12内へ貫通しており、それによって出し入れが可能となっている。ピストン38ないしピストンロッド40の移動は、サーボモータ42によって行われる。このモータを介してピストン38は、所定の位置でブロックさせることも可能である。
【0032】
噴射ノズル18、圧力センサ26、温度センサ28、バルブ30,34並びにサーボモータ42は、制御/処理装置44と電気的に接続されている。この制御/処理装置44は、装置10全体の作動を制御している。さらにこの制御/処理装置44は、圧力センサ26の測定信号(これは測定チャンバ12内の圧力に相応する)と、温度センサ28の測定信号(これは測定チャンバ12内の温度に相応する)から、噴射ノズル18によって噴射された試験流体の噴射量の体積(図1中の符号46)を求める。
【0033】
制御/処理装置44は、フラッシュメモリ(参照番号なし)を含んでおり、このメモリ上にコンピュータプログラムが記憶されている。このコンピュータプログラムによって当該装置10は、以下の方法に沿って制御される。
【0034】
まず、バルブ34が制御/処理装置44によって開かれ、噴射ノズル18が、比較的大量の試験流体(46)を測定チャンバ12内へ噴射するように駆動制御される。この噴射ノズル18による噴射の終了後に、制御/処理装置44はバルブ30を開き、これによって測定チャンバ12内に圧縮空気が注入される。試験流体22と注入された圧縮空気(参照符号なし)は、開放されたバルブ34を介して排出部36に導出される。このようにして測定チャンバ12内に存在するガス体積Vgは最大になる。
【0035】
ここで前記制御/処理装置44により前記2つのバルブ30,34は閉じられる。測定チャンバ12内に圧縮空気が注入されても、全ての残留試験流体が測定チャンバ12から排出され得るものではないので、測定チャンバ12内の本当のガス体積Vgはまだわからない。従ってここでは以下に述べるやり方でこれが求められる。
【0036】
まずサーボモータ42が制御/処理装置44により、ピストン38がピストンロッド40を介して正確に所定の区間だけ測定チャンバ12内へ侵入移動するように駆動制御される。ピストン38と測定チャンバ壁部の間の間隙に起因するリークの問題を避けるために、測定チャンバ12内壁の当該箇所を高弾性のダイヤフラムによって形成し、それに対してピストン38が押し付けられるように構成してもよい。また同じように、ピストンの代わりに測定チャンバ12の壁部に膨らみを持たせ、そこを調整部材が死点を介して2つの終端位置の間で往復移動できるようにすることも可能である。
【0037】
ピストン38が所定の区間だけ測定チャンバ12内へ侵入する移動に基づいて、測定チャンバ12の体積は、所定の量だけ減少する(なおピストン38の直径は既知であることを前提とする)。この体積減少分dVは、ピストン38の直径×ピストン38の移動区間に相応する。バルブ30と34は閉じられているので、測定チャンバ12は総じて気密に閉塞されている。試験流体は非圧縮性のものであることから出発すれば、測定チャンバ12の体積減少分dVは、ガス体積Vg中に圧力上昇を引き起こす。これは圧力センサ26から検出される。体積変化、すなわちピストン38が移動する速度は比較的小さいので、測定チャンバ12の体積減少の間は、ガス体積中の温度が一定に保たれることに基づくことが可能である。それにより、理想ガスに対する状態方程式に従えば、体積減少dV前の測定チャンバ12内の空気24の体積Vgは、以下の式、
Vg=dV・(Pg+dP)/dP
から得られる。なお体積減少分dVは既知であるので、体積減少dV後のガス24の本当の体積Vgも算出することができる。従って噴射ノズル18から噴射された試験流体22の体積Vm本来の測定がここで実施できるものとなる。これに対して制御/処理装置44は、噴射ノズル18を相応に駆動制御する。噴射ノズル18により測定チャンバ12内へ噴射される試験流体22は非圧縮性のものなので、この噴射は、測定チャンバ12内で得られるガス体積Vgに、噴射された試験流体体積Vm分だけの減少を引き起こす。
【0038】
この場合圧力センサ26によって、噴射開始前の圧力Pgと噴射終了後の圧力が検出され、相応する信号が制御/処理装置44に供給される。この検出された2つの圧力値から圧力差分dPが算出できる。また温度センサ28により、噴射ノズル18による噴射開始前に測定チャンバ12内で占められていた温度Tgが検出され、さらに噴射ノズル18による噴射終了後に測定チャンバ12内で占めあれていた相応の温度Tg2も検出される。噴射された試験流体の体積Vmはここにおいて以下の方程式、
Vm=Vg・(Pg・Tg2−(Pg+dP)・Tg1)/Tg1/(Pg+dP)
に従って得ることができる。
【0039】
つまり本発明による装置10のもとでは、噴射された試験流体22の体積Vmの本来の測定の間に動される可動部材は何もない。この噴射された体積Vmの検出は、専ら測定チャンバ12内の物理的な状態量の測定によって行われるだけである。それによって非常に高速な測定速度と非常に高い分解能が得られる。それ故に当該装置10を用いれば、非常に僅かな噴射量も、時間的に密に接近して順次連続する噴射も正確に測定することができる。測定試行の後では測定チャンバ12が再びバルブ30,34の開放によって排出操作され、バルブ30,34の閉成の後で、測定チャンバ12のガス体積Vgがピストン38のシフトによって求められる。その後で新たな測定試行が新たな噴射ノズル18を用いて実施される。
【0040】
温度センサ28は所期の遅れ(Traegheit)を有しているので、噴射後の温度Tg2も近似的に算出可能である。これに対する出発点は、初期温度Tg1と、以下で述べるように算出された温度差分dTである。
【0041】
噴射ノズル18から測定チャンバ12内へ噴射された試験流体22は、一般に非常に高い運動エネルギを有している。噴射量Vmが比較的短い噴射ノズル18によって測定チャンバ12内へ噴射され、高圧−試験流体供給部20内の圧力Phが既知であることを前提とすれば、噴射ノズル18によって噴射された量Vmの運動エネルギーEkinは、以下の式
Ekin=Vm・(Ph−Pe)
から得られる。運動エネルギーの熱への変換によって作用する濃度ρの噴射された体積要素Vmの温度上昇は以下の式
dT=(Ph−Pg)/ρ・cp
によって得られる。
【0042】
この噴射ノズル18から測定チャンバ12内へ噴射される体積要素Vmの温度の上昇は、圧力センサ26から供給される信号の適用のもとで制御/処理装置44において考慮される。これにより、噴射された試験流体22の噴射量の検出の際の測定精度がさらにもう一段階高められる。
【0043】
非常に効果的な手法では、温度の上昇によって一時的に引き起こされる圧力上昇が、減衰的な指数関数によって書き表される。温度上昇は、試験流体46の測定チャンバ12内への噴射によって引き起こされるので、この温度上昇も、噴射された流体の体積Vmに比例するものと見なすことができる。このことは特に、噴射された体積Vmの運動エネルギEkinが急速に温度上昇へ移行し、測定チャンバ12内の温度ができるだけ迅速に補償される場合に当て嵌まる。この目的のために図1では、測定チャンバ12がワイヤネット13で充たされている。このワイヤネット13は一方では、噴射された流体体積Vmが非常に小さな粒子に分解されて安定した状態にもたらされることに寄与し、他方では流体とガス充填体の間で熱的に非常に密なコンタクトを形成することに寄与している。
【0044】
以下に続く数式は、次のことから出発している。すなわち圧力上昇の時間的に減衰する成分が、(一定の時定数を伴った)指数関数によって近似可能であり、さらにこの成分が、測定された圧力変化dPと一定の尺度係数bによって書き表されることから出発している。指数関数はcnとして与えられ、ここで前記cは0よりも大きくかつ1より小さい数であり(0<c<1)、前記nは、(時間的に同じ間隔の)圧力値P(n)のナンバーである。このナンバーnは、時間に相応する。
【0045】
前記定数cの値は、噴射期間外の減衰経過から導出できる。このことは、観察される圧力変化
dP=P(n)−P′(n−1)
が、次の成分、
(1−b)*[P(n)−P′(n−1)]
(これは時間的に一定に維持され噴射による体積変化に相当する)
と次の成分、
b*[P(n)−P′(n−1)]
(これは時間nを伴う指数関数cnに相応してゼロに低下する)
から構成されることを意味する。前記P′(n−1)は、先行する時点で測定される圧力値であり圧力値P(n)の時点に対して換算されるものである。
【0046】
これにより、測定された圧力の時間的な変化は、先行する時点の圧力変化とこの圧力変化までの時間間隔に依存する。
【0047】
従って以下のことが成り立つ。すなわち、
圧力P(n−1)は、(n−1)の時点で測定されたものである。時点n(この時点では圧力値P(n)が測定される)では、
P(n−1)は以下のように考えられる。すなわち、
P′(n−1)=P(n−1)−ΔP、
この場合、
前記ΔPは、
ΔP=b*Σ[(P(i)−P′(i−1))*c(n − 1 − i)]*(1−c)
i=1…(n−1)
である。
【0048】
前記総和(Σ)の項“b*[(P(i)−P′(i−1)]*c(n − 1 − i)”は、iの時点で時点(n−1)に向けて推計される噴射の時間依存性の圧力成分である。前記係数(1−c)は、時点nから時点(n−1)までの変化分に相当する。
【0049】
噴射期間外では、噴射体積による圧力上昇は生じない。つまりこの領域では、観察される時間的な減衰が前記“総和”の減衰と一致する。この一致性からも尺度係数bが導出できる。
【0050】
指数関数の数式は実際には、圧力上昇の時間依存性の成分の記述に対して確定される。噴射期間外で時間的に一定の圧力経過は、時間依存性でない成分に対して生じる。噴射期間内では、数式は、噴射によって引き起こされた(差異的)圧力変化の真の経過を供給する。指数関数は、周期的な成分は何も含まないので、算出された(差異的)体積変化には、オーバーシュートやその他の周期的現象は現れない。
【0051】
それ故にこの数式は、噴射期間内の体積変化を、測定チャンバ12内の圧力P(n)を検出した時間的な分解能(分解時間)で提供する。測定チャンバ12内の圧力上昇の時間的に減衰する成分は、因果的にみて、噴射された試験流体に起因するものである。従ってこの成分は、基本的には、その時にもたらされた体積Vmに対する尺度でもあり、故にこの体積Vmの導出にも利用できる。
【0052】
温度上昇dTにより、試験流体22内の蒸気圧の上昇も現れる。通常の試験流体の場合では、この蒸気圧の上昇は、約200℃の試験流体温度にまでなるが、但し測定結果の精度に実質的な影響を与えるほどではないので、考慮しないままでよい。また測定チャンバ12内の圧力上昇により、既存ガス24の断熱的温度上昇も引き起こされる。
【0053】
しかしながら測定チャンバ12内へ噴射ノズル18から噴射される試験流体22の微細な分散と、全体的に存在する試験流体22とガス24との総合的な渦流化によって、測定チャンバ12内のガス24は、あらゆる瞬間において試験流体22の温度をとるものとみなすことができる。
【0054】
さらに測定結果は、試験流体22内に、ガス、例えば空気が混入することによる影響を受ける。この場合噴射された試験流体22内の気泡成分は、9%になり得る。さらに付加的に試験流体22内へ圧縮空気が届いた場合には、気泡成分もそれに応じて増加する。しかしながら試験流体22内へ混入する空気の影響は、測定チャンバの圧力Pgが高ければ高いほど小さくなる。それ故に高い測定精度を得るためには、測定チャンバ12内で常により高い圧力Pgを働かせることが総じて有利である。
【0055】
以下では図2に基づいて説明を続ける。この図には、本発明による噴射システムの噴射量を測定するための装置10の第2実施例が示されている。この図2にでは、第1実施例の部材と同じ機能を有する部材に対しては、同じ符号が付されている。この第1実施例と同じ部材に対する再度の説明はここでは省く。
【0056】
図1に示されている第1実施例との相違は、測定チャンバ12内に焼結体48が存在している点である。このことは以下の理由による。
【0057】
噴射ノズル18による試験流体22の噴射の際の高い噴射速度によっては、測定チャンバ12内に渦流が起こり得る。これは圧力センサ26による圧力の測定に障害をもたらしたり、センサ自体を破損させ得る。その他にも噴射衝撃の先鋭化に起因して圧力波が流体内に生じ得る。この種の圧力波は、特に測定の安定化を損なわせるので、噴射後の所定の安定フェーズに至ってからでないと、所要の精度を伴った測定結果が得られなくなる。このことは特に、時間的に密に接近して順次連続する噴射の場合には大きな欠点となる。
【0058】
そこでここにおいて、図2に示されている実施例のように、噴射ノズル18と圧力センサ26の間に焼結体48を配置すれば、噴射ノズル18から噴射される試験流体22が均等になり、圧力センサ26による圧力の測定も安定化する。この焼結体48の上方に存在している測定チャンバ12部分には、細長いターニングからなる塊50が置かれており、これによって圧力波が低下ないし減衰される。
【0059】
さらにここでは、図2の焼結体48の上方に存在する領域は試験オイル22で充たされており、その一方で空気体積Vgは、焼結体48自体の中で形成されることを述べておく。この層化(Schichtung)は、焼結体48の毛管作用によって可能となる。
【0060】
その他ではこの図2による装置は、図1に示されている装置と同じ原理で動作する。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明による噴射システムの噴射量を測定するための装置の第1実施例を部分的に裁断されている側面図で概略的に示したものである。
【図2】
図1に類似した本発明による噴射システムの噴射量を測定するための装置の第2実施例を概略的に示した図である。
Claims (17)
- 噴射システム(18)、特に内燃機関の噴射システムの噴射量(Vm)を測定するための方法であって、
試験流体(22)が噴射システム(18)によって測定チャンバ(12)内に噴射される形式の噴射量を測定するための方法において、
測定チャンバ(12)の体積を噴射期間の間一定にし、測定チャンバ(12)内にガス体積、有利には空気体積(Vg)を存在させ、噴射される試験流体の体積(Vm)を、理想ガスに対する状態方程式を用いて、噴射の際に生じる測定チャンバ(12)内の圧力変化(dp)から求めるようにしたことを特徴とする方法。 - 噴射の前に、気密に閉塞されている測定チャンバ(12)の体積を所定の量だけ変化させ、結果的に生じた圧力変化から測定チャンバ(12)内のガス体積(Vg)を求める、請求項1記載の方法。
- 測定チャンバ(12)内のガス(24)および/または試験流体(22)の温度(Tg)を検出し、噴射された試験流体(22)の体積(Vm)の算出の際に考慮する、請求項1または2記載の方法。
- 噴射された試験流体(22)の温度上昇(dT)を、噴射システム内で占められている圧力(Pg)と測定チャンバ(12)内の圧力(Ph)の差分から求めるようにした、請求項1から3いずれか1項記載の方法。
- 測定の前に測定チャンバ(12)にガス、有利には空気が注入される、請求項1から4いずれか1項記載の方法。
- 試験流体の通流が噴射の際に均質化および/または緩慢化される、請求項1から5いずれか1項記載の方法。
- 前記測定チャンバ(12)は、ワイヤネット(13)を含んでいる、請求項1から6いずれか1項記載の方法。
- 測定チャンバ(12)内の圧力上昇によって引き起こされた圧力上昇を、噴射された体積(Vm)ないしは測定された圧力変化(dP)に比例する指数関数によって表わす、請求項1から7いずれか1項記載の方法。
- 請求項1から8に記載の方法をコンピュータ上で実施する際のその実行に適していることを特徴とするコンピュータプログラム。
- 前記コンピュータプログラムはメモリ上、特にフラッシュメモリ上に記憶されている、請求項9記載のコンピュータプログラム。
- 噴射システム(18)、特に内燃機関の噴射システムの噴射量を測定するための装置であって、
測定チャンバ(12)と、
該測定チャンバ(12)に噴射システム(18)を接続させる接続装置(16)と、
前記測定チャンバ(12)内の圧力(Pg)を検出する圧力センサ(26)と、
該圧力センサ(26)から供給される測定信号を処理する処理装置(44)とを有している形式の装置において、
前記測定チャンバ(12)は、その体積が噴射期間中に一定に維持でき、当該測定チャンバ(12)内でガス体積、有利には空気体積(Vg)が存在するように構成されており、
さらに前記処理装置(44)は、噴射された試験流体の体積(Vm)が噴射前後で圧力センサ(26)の測定信号から理想ガスに対する状態方程式を用いて求められるように構成されていることを特徴とする装置。 - 前記装置は、前記測定チャンバ(12)を領域的に区切る、所定の形式でシフト可能なピストン(38)を含んでいる、請求項11記載の装置。
- 前記装置は、前記測定チャンバ(12)に接続可能なガス供給部、有利には圧縮空気発生源(32)を含んでいる、請求項11または12記載の装置。
- 前記装置は、空洞体(48)、有利には焼結体を含んでおり、これは前記測定チャンバ(12)内で試験流体(22)の噴射の際に渦流が発生するのを回避するように設けられている、請求項11から13いずれか1項記載の装置。
- 前記測定チャンバ(12)は、空洞体(48)内に構成されている、請求項14記載の装置。
- 前記装置は、温度センサ(28)を含んでおり、該温度センサ(28)は、測定チャンバ(12)内のガスおよび/または試験流体の温度(Tg)を検出する、請求項11から15いずれか1項記載の装置。
- 前記処理装置(44)は、請求項6または7によるコンピュータプログラムを備えている、請求項11から16いずれか1項記載の装置。
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