JP2004516228A - 薬剤を導入するための設備が設けられた真空補助閉鎖システム - Google Patents

Abstract

真空補助閉鎖（ＶＡＣ）治療を受けている創傷部（１２）に創傷治療剤を導入するための方法および装置は、実質的に創傷場所内に挿入するための発泡パッド（１１）と、創傷場所において発泡パッドをシール密閉するための創傷用滅菌布（１３）とを一般に含む。発泡パッドは流体の排出を促進するための真空源と流体連通する状態とされる。更に、当業者に公知の移植またはその他の技術により、創傷治癒を促進するための、当業者に公知の基本繊維芽細胞成長因子（ｂＦＧＦ）、抗菌剤またはその他の因子によって発泡パッドが予め処理される。

Description

【０００１】
（関連出願）
本願は、１９９９年４月２日に米国特許庁の出願された「薬剤を導入するための設備が設けられた真空補助閉鎖システム」を発明の名称とする米国仮特許出願第６０／１２７，５９５号に対する優先権を主張するものである。本書では、この米国仮特許出願第６０／１２７，５９５号の図面を含む全開示内容をレファレンスとして援用する。
【０００２】
（技術分野）
本発明は、創傷部の治療に関し、より詳細には、本発明は創傷部の治癒を促進するために真空補助閉鎖体（ＶＡＣ）パッドを備えたグラフトを通し、創傷場所に成長因子またはその他の薬剤を導入する、創傷部の真空補助閉鎖体（ＶＡＣ）に関する。
【０００３】
（背景技術）
創傷部を閉鎖するには、創傷に隣接する上皮および皮下組織の内部への移動が必要である。この移動は、血流が増加し、種々のタイプの機能細胞が活性化するように、炎症プロセスを通って通常促進される。炎症プロセスを通って、損創傷を受けたかまたは破壊された血管を通過する血流は毛細管レベルの詰まりによって停止し、その後、クリーンアップおよび再生動作を開始できる。不幸なことに、このプロセスは創傷部が大きかったり、または感染した場合には阻害される。かかる創傷部では創傷部の表面の近くにうっ血ゾーン（すなわち組織の局部的な腫れが組織への血流を制限する領域）が生じる。
【０００４】
十分な血流がない場合、創傷部を囲む上皮および皮下組織は、受ける酸素および栄養分の量が少なくなるだけでなく、バクテリア感染と戦うことができる能力が低下し、よって自然に創傷部を閉じる能力も低下する。最近まで治癒が困難なかかる創傷部は縫合糸またはステープルを使用してしか治療されていなかった。かかる機械的な閉鎖技術はまだ広く実施されており、有効であることが多いが、これら閉鎖技術は創傷部に隣接する皮膚組織に引っ張りを生じさせるという主な欠点を有する。特に縫合糸またはステープルを使用して閉鎖を実行するのに必要な引っ張り力によって、縫合糸またはステープルの挿入点に極めて高い局所的な応力が生じる。これら応力は一般に挿入点で組織の破断を生じさせ、これによって最終的に創傷部の裂開を生じさせたり、更に組織の喪失を生じさせ得る。
【０００５】
更に、感染によってステープリングまたは縫合による閉鎖を不能する程度に硬化したり、炎症が生じるような創傷もある。縫合またはステープリングによって修復できない創傷部は、一般に長期の入院が必要であり、付き添い人の高いコストと、大きな手術、例えば周辺組織の移植が必要となる。例えばステープルまたは縫合により容易に治療できない創傷の例として、大きい創傷、深い創傷、開いた創傷；床擦れ潰瘍、慢性骨髄炎から生じる潰瘍および後に全深度熱傷に至るような部分深度熱傷がある。
【０００６】
機械的閉鎖装置のこれらおよびそれ以外の欠点の結果として、連続的な負圧を加えることにより、創傷部で排出を行うための方法および装置がこれまで開発されている。かかる負圧を創傷部の十分な面積に加えると、かかる負圧は上皮および皮下組織の創傷部に向かう移動を促進することが判っている。実際に創傷部に負圧を加える方法（一般に真空補助閉鎖（ＶＡＣ）治療と称される方法）は、一般に過剰な体液を同時に除去することによる創傷部の機械的な収縮を行っている。このように、ＶＡＣ治療は公知の本来の副次的効果の多く、例えば適正な静脈還流がない場合の浮腫の発生を軽減しながら、体の自然な炎症プロセスを高める。
【０００７】
このＶＡＣ治療は創傷部の閉鎖の促進に大いに効果があるが、多くの創傷部の治療はこれまで治療できないと考えられており、ある問題も残っている。個々の患者には炎症プロセスは極めて固有なものであるので、ＶＡＣ治療を加えても、特に梗塞、初期のクリーンアップおよび再生ステージ中にある創傷部を適当に治療するための急速な十分な応答は得られない。従って、本発明の主な目的は、創傷の治療を促進する成長因子および／または他の薬剤を導入することにより、公知のＶＡＣ治療を改善する方法および装置を提供することにある。
【０００８】
（発明の開示）
上記目的によれば、本発明、すなわち真空補助閉鎖（ＶＡＣ）治療を受けている創傷部に創傷治療剤を導入するための方法および装置は、実質的に創傷場所内に挿入するための発泡パッドと、創傷場所において発泡パッドをシール密閉するための創傷用滅菌布とを一般に含む。本発明によれば、発泡パッドは流体の排出を促進するための真空源と流体連通する状態とされる。更に、当業者に公知の移植またはその他の技術により、創傷治癒を促進するための、当業者に公知の基本繊維芽細胞成長因子（ｂＦＧＦ）、抗菌剤またはその他の因子によって発泡パッドが予め処理されている。
【０００９】
本発明の好ましい方法によれば、ＶＡＣシステムの発泡パッドに必要な変更により、これまで公知のＶＡＣ治療に成長因子または他の創傷治療剤が添加されている。基本繊維芽細胞成長因子（ｂＦＧＦ）としてのかかる成長因子は、それらの効力のある脈管形成および肉芽化組織形成活動度に起因し、創傷の治癒を促進することが判っている。感染した創傷、熱傷および糖尿病の創傷などのように治療が困難であると実証されていても、上記の結果得られる活動度は創傷を急速に上皮で再び被い、かつ収縮させる。従って、発泡パッド１１の変形およびｂＦＧＦによる発泡パッドの予備的処理を通したＶＡＣ治療と成長因子の導入との組み合わせは、創傷治療技術に重要な寄与をすると考えられる。
【００１０】
最後に、これまでの説明、次の図面および詳細な説明、特許請求の範囲を特に参照すれば、当業者には本発明の上記以外の特徴、目的および利点が明らかとなろう。
【００１１】
本発明の範囲は特定の実施例よりも広いが、図解のための図面と共に、以下、好ましい実施例について詳細に説明する。図中、同様な参照番号は同様な部品を示す。
【００１２】
（発明を実施するための最良の態様）
当業者であれば、本明細書に示した図を特に参照すれば、多数の別の実施例について容易に認識できようが、この詳細な説明は本発明の好ましい実施例、すなわち特許請求の範囲によってのみ範囲が限定される、薬剤を導入するための設備が設けられた真空補助閉鎖システムを説明するものである。
【００１３】
次に、図面を参照すると、ここには実質的に創傷場所１２に挿入するための発泡パッド１１と、創傷場所１２において発泡パッド１１の密閉体をシールするための創傷用滅菌布１３とを含む、本発明１０が示されている。本発明によれば、発泡パッド１１は体液の排出を促進するための真空源と流体で連通するように設けられている。更に、発泡パッド１１は当業者に公知の移植またはその他の技術により、創傷治癒を促進するための、当業者に公知の基本繊維芽細胞成長因子（ｂＦＧＦ）、抗菌剤またはその他の因子によって予め処理されている。
【００１４】
本発明の好ましい実施例によれば、発泡パッド１１、創傷用滅菌布１３および真空源は公知技術で知られているように実現されており、これらの各々は１９９５年８月２２日に出願された米国特許出願第０８／５１７，９０１号に詳細に説明されている。本明細書では、米国特許出願第０８／５１７，９０１号の完全な開示内容は本明細書に記載されているが、特許請求の範囲および図面を含むこの特許出願の完全な開示内容をレファレンスとして援用する。更に、かかるＶＡＣシステムは米国テキサス州サンアントニオのカイネティックコンセプツ社および／またはその子会社を通して容易に入手できるものである。
【００１５】
上記米国特許出願第０８／５１７，９０１号に詳細に説明されているように、発泡パッド１１は吸引時に、創傷部の体液を良好に透過できる、高度に微細な連続気泡ポリウレタンまたはポリエーテル製発泡体を含むことが好ましいが、本願では、発泡パッド１１は所望する薬剤を導入するために必要な従来のスポンジ状セルロースタイプの包帯を含むことができる。また、米国特許出願第０８／５１７，９０１号に詳細に記載されているように、発泡パッド１１はプラスチックまたは同様な材料のホース１４を介して真空源に流体連通するように設けられていることが好ましく、真空減は介在された疎水性膜フィルタを介し、真空ポンプと流体連通することにより、安全に真空状態に置かれたキャニスターを含むことが好ましい。最後に、米国特許出願第０８／５１７，９０１号は、創傷用滅菌布１３についても詳細に述べており、この創傷用滅菌布１３は創傷場所１２上にシール張り付けするための感圧性アクリル接着剤によって少なくとも周辺がカバーされたエラストマー材料を含むことが好ましい。
【００１６】
本発明の好ましい方法によれば、米国特許出願第０８／５１７，９０１号に記載されているような部品を、従来技術で知られているように使用するが、本発明の発泡パッド１１が成長因子の導入に必要なように変形されている点が異なっている。基本繊維芽細胞成長因子（ｂＦＧＦ）としてのかかる成長因子は、それらの効力のある脈管形成および肉芽化組織形成活動に起因し、創傷の治癒を促進することが判っている。感染した創傷、熱傷および糖尿病の創傷などのように治療が困難であると実証されていても、上記の結果得られる活動度は創傷を急速に上皮で再び被い、かつ収縮させる。従って、発泡パッド１１の変形およびｂＦＧＦにより予備的処理を通したＶＡＣ治療と成長因子の導入との組み合わせは、創傷治療技術に重要な寄与をすると考えられる。同様に、本方法は、単独またはｂＦＧＦまたはその他の薬剤と組み合わせるか否かに拘わらず、抗菌剤を創傷場所１２に導入するための優れた機会を与えるものである。
【００１７】
これまでの説明は、本発明の好ましい実施例の一例であるが、当業者がこの詳細な説明、添付図面および特許請求の範囲を特に参照すれば容易に可能である多数の変形例、変更例、改善例および置換例について考えつくことができよう。例えば、本発明の好ましい実施例はＶＡＣのシステムの発泡パッド１１上に所望する薬剤を移植することを含むが、当業者であれば、この例の開示の利点と共に所望する薬剤を導入するための多数の実質的に均等な態様について容易に認識できよう。例えば、薬剤により予備的処理されていないか、または時間経過後、創傷場所１２で消費される薬剤により予備的処理されている発泡パッド１１のケースでは、針または注射器などを用いて、創傷用滅菌布１３を通して発泡パッド１１に所望する薬剤を注射できる。いずれのケースにおいても、本発明の範囲は特定の実施例よりも広いので、これまでの説明は本発明を限定するものであると見なすべきではなく、本発明は特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。
【００１８】
（産業上の利用性）
本発明は創傷の治療技術に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図１】
哺乳類の創傷場所に使用される、本発明の好ましい実施例の一部切り欠き斜視図である。

Claims (10)

1. 哺乳類の創傷治癒を促進するための治療装置であって、
   流体を透過でき、一部が創傷表面によって画定されるシール可能な空間内に位置決めするようになっている多孔性パッドと、
   前記多孔性パッドと流体連通する第１端部とチューブを通して前記多孔性パッドに負圧を加えるようになっている真空源と流体連通する第２端部とを有するチューブとを備え、前記多孔性パッドが創傷治癒因子によって予め処理されている治療装置。
2. 前記創傷治癒因子が基本繊維芽細胞成長因子を含む、請求項１記載の治療装置。
3. 前記基本繊維芽細胞成長因子が前記多孔性パッドに移植されている、請求項２記載の治療装置。
4. 前記創傷治癒因子が、抗菌剤を含む、請求項１記載の治療装置。
5. 前記抗菌剤が抗生物質を含む、請求項４記載の治療装置。
6. 前記多孔性パッドが複数の創傷治癒因子によって予め処理されている、前記請求項のいずれかに記載の治療装置。
7. 前記シール可能なスペース内に前記多孔性パッドをシールするための創傷用滅菌布を更に含む、前記請求項のいずれかに記載の治療装置。
8. 前記創傷用滅菌布を通して注射することにより前記多孔性パッドに所定量の創傷治癒因子を導入した、請求項７記載の治療装置。
9. 前記所定量の傷治癒因子が、前記多孔性パッドを予め処理している前記創傷治癒因子に添加されている、請求項８記載の治療装置。
10. 前記所定量の創傷治癒因子が、前記多孔性パッドを予め処理している前記創傷治癒因子と同じタイプの因子を含む、請求項９記載の治療装置。