JP2004516001A - 新脈管形成を阻害するための方法および組成物 - Google Patents
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Abstract
本発明は、外因性のPEDFを組織を付随する細胞に提供することにより、組織中の新脈管形成を阻害する方法を提供する。外因性PEDFの存在は、部分的には血管内皮細胞が組織中に広がる能力を妨害することにより、組織中の新脈管形成を阻害する。また本発明は、腫瘍中のPEDFの存在をアッセイすることにより腫瘍の重篤度を測定する方法を提供する。さらに本発明は、内皮細胞の移動を阻害する方法、哺乳動物の毛髪の成長を刺激する方法、腫瘍の増殖を抑制する方法、神経芽腫細胞の分化を誘導する方法、神経芽腫細胞の成長を遅くする方法、および哺乳動物の虚血性網膜症を処置する方法を提供する。本発明を実施するために、本発明はPEDF源を含む医薬組成物を提供する。
Description
【0001】
(技術分野)
発明の背景
新脈管形成は、新しい血管が形成される基本的なプロセスである。このプロセスには血管内皮細胞の組織への移動、続いてそのような内皮細胞の血管への圧縮(condensation)が関与する。新脈管形成は外因性血管新生物質により誘導することができるか、あるいは自然な条件の結果であり得る。このプロセスは再生、発育および創傷修復のような様々な正常な身体活動に必須である。このプロセスは完全に解明されていないが、毛細血管の一次細胞である内皮細胞の成長および移動を刺激する分子、そして阻害する分子の複雑な相互作用が関与する。正常条件下で、これらの分子は数年から数十年も持続し得る長期間、微小血管を静止期(すなわち毛細管の成長が無い)に維持するようである。内因細胞の代謝時間は約1000日である。しかし適切な条件下で(例えば創傷の修復中)、これらの同じ細胞は急激な増殖を受け、そしてより一層短期間内に代謝され、そして5日間の代謝速度がこれらの条件下では典型的である(Folkman and Shing,1989,J.Biol.Chem.267(16):10931−10934;Folkman and Klagsbrum,1987,Science 235:442−447)。
【0002】
新脈管形成は正常条件下で高度に調節されているが、多くの疾患(「新脈管形成性疾患」として特徴つけられる)は、持続的な非調節の新脈管形成により活発化となる。そのような疾患状態において、非調節の新脈管形成は特定の疾患を直接引き起こすか、あるいは現存する病状を悪化させるかのいずれかである。例えば目の新生血管形成は失明の最も多い原因と考えられ、そして目のおよそ20の疾患の病因の基礎になる。関節炎のような特定のこれまでに存在している状態では、新たに形成された毛細血管が関節に侵入し、そして軟骨を破壊する。糖尿病では網膜中に形成された新しい毛細管はガラス体液に侵入し、そして出血させ、失明を引き起こす。
【0003】
充実性腫瘍の成長および転移も、新脈管形成に依存的である(Folkman,1986,J.Cancer Res.46:467−473;Folkman,1989,J.Nat.Cancer Inst.82:4−6;Folkman et al.、1995、「腫瘍の新脈管形成(Tumor Angiogenesis)」、第10章、第206〜32頁、ガンの分子的基礎(The Molecular Basis of Cancer)で、Mendelsohn et al.、編集(W.B.Saunders)。例えば約2mmより大きな直径に拡大する腫瘍は、それら自体の血液供給を得なければならず、そして新しい毛細血管の成長を誘導することにより供給しなければならないことが示された。このような新しい血管が腫瘍に埋め込まれた後、新血管は腫瘍の成長に必須な栄養および成長因子、ならびに腫瘍細胞が循環に入り、そして肝臓、肺または骨のような別の部位へ転移する手段を提供する(Weindner1991,New Eng.J.Med.324(1):108)。腫瘍を有する動物に薬剤として使用する時、新脈管形成の自然なインヒビターは小さい腫瘍の成長を妨げることができる(O’Reilly et al.,1994,Cell 79:315−328)。実際に幾つかのプロトコールで、そのようなインヒビターの適用はたとえ処置を停止した後でも腫瘍の退縮および休眠状態を導く(O’Reilly et al.,1997,Cell 88:277−285)。さらに新脈管形成のインヒビターを特定の腫瘍に供給することにより、他の治療計画(例えば化学療法)に対するそれらの応答を有効とする(potentiate)ことができる(例えばTeischer et al.,1994,Int.J.Cancer 57:920−925を参照にされたい)。
【0004】
数種の新脈管形成インヒビターが新脈管形成性疾患の処置に使用するために現在開発中であるが(Gasparini,1996,Eur.J.Cancer 32A(14):3279−2385)、これらの提案されている阻害化合物には付随する欠点がある。例えばスラミンは有力なインヒビターであるが、抗腫瘍活性に達するために必要な用量ではヒトに重篤な全身的毒性を引き起こす。レチノイド、インターフェロンおよび抗エストロゲン類のような他の化合物は、ヒトの使用には安全であるようだが、わずか1週間の抗−新脈管形成効果しかない。さらに別の化合物は作成することが難しいか、または経費がかかる。加えて新脈管形成の数種の異なるインヒビターを同時に投与することが、真に効果的な処置に必要かもしれない。
【0005】
したがって新脈管形成を阻害するための新規方法および組成物の開発が長い間必要とされている。本発明はこれらの必要性を満たす。
【0006】
発明の簡単な要約
本発明は神経芽腫細胞の分化を誘導する方法に関する。この方法は、PEDFを細胞に投与し、これにより細胞の分化を誘導することを含んで成る。
【0007】
また本発明は神経芽腫細胞の成長を遅らせる方法に関する。この方法もPEDFを細胞に投与し、これにより該細胞の成長を遅らせることを含んで成る。
【0008】
さらに本発明には哺乳動物の虚血性網膜症の処置法を含む。この方法は外因性のPEDFを該哺乳動物の目に付随する(associated)内皮細胞に、PEDFが目の新脈管形成を阻害するために十分な条件下で提供し、これにより該虚血性網膜症を処置することを含んで成る。
【0009】
さらに本発明は哺乳動物の組織中の新脈管形成を阻害する方法を含み、この方法は外因性PEDFを、該PEDFが該組織中の新脈管形成を阻害するために十分な条件下で該哺乳動物に全身的に提供することを含んで成る。1つの観点では、組織は目の組織、皮膚の組織、腫瘍、関節内の組織、骨髄、鼻の上皮、前立腺、卵巣および子宮内膜組織から成る群から選択される。好適な態様では、組織は目の組織である。さらなる態様では、哺乳動物は虚血性網膜症を有する哺乳動物、虚血性網膜症を発症する危険性がある哺乳動物、黄斑変性を有する哺乳動物、および黄斑変性を発症する危険性がある哺乳動物から成る群から選択される。
【0010】
また本発明には、組織の細胞中のPEDF発現をアップレギュレートする(upregulating)方法を含み、この方法は組織に高酸素を誘導し、これにより細胞中のPEDFの発現をアップレギュレートすることを含んで成る。
【0011】
加えて、本発明は哺乳動物の黄斑変性の処置法を含み、この方法は外因性のPEDFを哺乳動物の目に付随する内皮細胞に、PEDFが目の新脈管形成を阻害するために十分な条件下で提供し、これにより黄斑変性を処置することを含んで成る。
【0012】
本発明は、哺乳動物の良性の新形成物を処置する方法を含み、この方法はPEDFを哺乳動物に投与し、これにより該良性の新形成物を処置することを含んで成る。1つの観点では、良性の新形成物は鼻のポリープである。別の観点では、哺乳動物は嚢胞性線維症を有するヒトである。さらなる観点では、良性の新形成物は前立腺内にある。
【0013】
加えて、組織中の新脈管形成を阻害する方法が提供される。この方法は外因性のPEDFを組織に関係する内皮細胞に、照射、化学療法、少なくとも1つの生物学的応答モディファイヤー(biological response modifier)の使用、およびレーザー処置から成る群から選択される少なくとも1つの他の処置と一緒に、PEDFが組織中で新脈管形成を阻害するために十分な条件下で提供することを含んで成る。
【0014】
細胞にPEDFが提供されるか、または投与される本明細書に列挙する方法の各々において、PEDFはPEDFポリペプチドを含んで成る組成物を細胞に暴露することにより提供または投与される。
【0015】
あるいは細胞にPEDFが提供されるか、または投与される本明細書に列挙する方法の各々において、PEDFは細胞にベクターを移すことにより細胞に提供または投与され、ベクターはPEDFをコードする単離された核酸を含んで成り、これによりPEDFが該細胞中で発現し、そして分泌される。
【0016】
1つの観点では、PEDFをコードする単離された核酸は配列番号2を含んで成る。別の観点では、PEDFをコードする単離された核酸はPEDFの生物学的に活性なフラグメントをコードする。特定の態様では、PEDFの生物学的に活性なフラグメントは、配列番号1のアミノ酸配列中に含まれる。他の態様ではPEDFの生物学的に活性なフラグメントは、配列番号1のアミノ酸44からアミノ酸121、または配列番号1のアミノ酸44−47を含んで成る。さらに他の態様では、PEDFは配列番号1を含んで成る。
【0017】
別の態様では、他の細胞群にPEDFをコードする単離された核酸を含んで成るベクターをトランスフェクトし、これによりPEDFが該他の細胞中で発現し、そして分泌され、そしてそのようにトランスフェクトされた該他の細胞群をそのように分泌されるPEDFが該内皮細胞と接触できる部位へ移すことによりPEDFが該内皮細胞に提供または投与される。
【0018】
1つの態様では、単離された核酸は配列番号2である。別の態様では、単離された核酸はPEDFの生物学的に活性なフラグメントをコードし、好適な態様では配列番号2のフラグメントによりコードされる。
【0019】
別の観点では、単離された核酸の該他の細胞群へのトランスフェクションが、他の細胞中に組み込まれていないか、または安定に組み込まれたDNAからPEDFの発現をもたらす。
【0020】
さらに別の観点では、PEDFが全身の循環を介して、局所投与を介して細胞に供給される。
【0021】
本明細書で記載するように、外因的に提供されるPEDFにはPEDFポリペプチドの生物学的に活性なフラグメントを含み、これは1つの態様では配列番号1のアミノ酸配列内に含まれる。好ましくは、PEDFの生物学的に活性なフラグメントは、配列番号1のアミノ酸44からアミノ酸121を含んで成る。また好ましくはPEDFの生物学的に活性なフラグメントは、配列番号1のアミノ酸44−77を含んで成る。
【0022】
本発明はまた腫瘍内のPEDFの存在をアッセイすることよる腫瘍の重篤度(severity)の測定法も含み、ここで腫瘍内のPEDFの不存在は進行した状態を示し、そして腫瘍内のPEDFの存在は腫瘍の初期状態を示す。
【0023】
PEDFが細胞に投与または提供される本発明の各々の方法において、方法はさらに別の抗新脈管形成因子をPEDFと一緒に該細胞に供給することを含んで成る。
【0024】
発明の詳細な説明
本発明は、新脈管形成を阻害するための完全長の色素上皮由来成長因子(PEDF;Steel et al.,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90(4):1526−1530)およびPEDFの任意の抗新脈管形成誘導体の使用を包含する。また本発明は新脈管形成を阻害するための完全長のPEDFおよびPEDFの任意の抗新脈管形成誘導体ををコードする核酸の使用を包含する。
【0025】
本発明の方法の内容の中で、PEDFは有効な抗新脈管形成特性を有するタンパク質であり、そしてそれには本明細書に記載するようなPEDFの任意の抗新脈管形成誘導体を含む。PEDFポリペプチドの1つの形(完全長のPEDF)は、図6A(配列番号1)に説明するが、本発明はこの例示する配列の使用に限らない。実際に、他のPEDF配列が当該技術分野(例えば公開された国際公開第95/33480号および同第95/24529号明細書を参照にされたい)で知られている。さらに遺伝子配列は異なる種および個体の間で変動し得ることは周知である。この対立遺伝子の変動の自然な範囲は、本発明の範囲内に含まれる。さらにそしてあるいは、PEDFポリペプチドは例示する配列または他の自然に生じるPEDFポリペプチドに由来する1以上の点突然変異を含むことができる。すなわちPEDFポリペプチドは典型的には配列番号1のすべてまたは一部に少なくとも約75%相同的であり、そして好ましくは配列番号1のすべてまたは一部に少なくとも少なくとも約80%相同的であり(例えば、配列番号1に少なくとも約85%相同的である);より好ましくはPEDFポリペプチドは配列番号1のすべてまたは一部に少なくとも約90%相同的であり(配列番号1のすべてまたは一部に少なくとも約95%相同的であるような);そして最も好ましくはPEDFポリペプチドは配列番号1のすべてまたは一部に少なくとも約97%相同的である。実際に、PEDFポリペプチドはエピトープタグおよびHisタグのような他のドメインを含むこともできる(例えばタンパク質は融合タンパク質であることができる)。
【0026】
本発明の内容の中で、PEDFポリペプチドは既知のPEDF配列またはそれらの誘導体の挿入、欠失、または置換突然変異体であることができるか、または含んで成ることができる。好ましくは任意の置換はPEDFポリペプチドの生化学的特性を最小に破壊する保存的置換である。すなわちアミノ酸残基を置換するために突然変異が導入される場合、正に荷電した残基(H、KおよびR)は好ましくは正に荷電した残基に置換される;負に荷電した残基(DおよびE)は好ましくは負に荷電した残基に置換される;中性の極性残基(C、G、N、Q、S、TおよびY)は、好ましくは中性の極性残基に中性される;そして中性の非極性残基(A、F、I、L、M、P、VおよびW)は、好ましくは中性の非極性残基に置換される。さらにPEDFポリペプチドは既知のPEDFタンパク質またはそれらのフラグメントの活性フラグメントであることができる。実際に、配列番号1に由来する切断されたフラグメントは、活性なPEDFポリペプチドである。例えば配列番号1の1から20の残基は分泌中に開裂され、そしてPEDF活性には無くても済む。さらに他の活性なPEDF天然および合成ポリペプチドは、配列番号1の残基44から157のような(例えば配列番号1の残基44−121および44−77)、配列番号1の残基21から382に由来する配列を含んで成る。もちろん、挿入、欠失、または置換突然変異はタンパク質のグリコシル化に影響を及ぼすことができるが、PEDFポリペプチドは本発明の方法に使用するために必要な抗新脈形成特性を保有するためにグリコシル化される必要はない。例えばPEDFの活性な34アミノ酸フラグメントがグリコシル化されていない図7に提示するデータを参照されたい。
【0027】
本発明はさらに、PEDFのアミノ酸の1以上のD−アイソマー形を含むことができるPEDFポリペプチドの使用を含むと解釈される。ペプチドは開示した同じアミノ酸で作られているが、少なくとも1つのアミノ酸、そして恐らくすべてのアミノ酸がD−アミノ酸であるレトロ−インベルソD−アミノ酸PEDFペプチドの製造は、いったん本発明から着手すれば簡単な問題である。ペプチド中のすべてのアミノ酸がD−アミノ酸であり、そして分子のN−およびC−末端が逆である場合、結果はL−アミノ酸形の分子と同じ位置で同じ構造の基を有する分子である。しかし分子はタンパク質溶解的分解に対してより安定であり、したがって本明細書で列挙する多くの応用に有用である。
【0028】
また本発明の方法は、図6B(配列番号2)に例示するような生物学的に活性なPEDFをコードする核酸、または本明細書で定義するPEDF活性を有するそれらの任意のフラグメントの状態のPEDFの使用も含むと解釈すべきである。すなわち本発明はPEDFの前述のフラグメントをコードする核酸およびそれらの任意の誘導体および配列番号2に実質的に相同的である核酸とは生物学的に活性なPEDFをコードするそれらのフラグメントの使用を含むと解釈すべきである。
【0029】
本明細書で使用する「生物学的に活性なPEDF」という用語は、本明細書に含む実験の詳細/実験の章で提示される任意のアッセイで、新脈管形成を阻害することができる任意のPEDFポリペプチド、フラグメントまたは誘導体を意味する。
【0030】
PEDFの生物学的に活性なフラグメントは、PEDFの34アミノ酸フラグメント(34mer)として本明細書の実施例の章で例示されている。このフラグメントの単離および特性決定に関する手順は、当業者の観点で本明細書に詳細に提供する。すなわち本明細書に提供される指示に従い本発明で有用なPEDFの生物学的に活性なフラグメントを同定することは容易な問題であり、したがって本発明は本明細書に開示する任意の、およびすべてのそのようなフラグメントおよびそれらの修飾および誘導体を含むと解釈すべきである。さらに本発明は本明細書で定義する用語であるPEDFの生物学的に活性なフラグメントをコードする任意の、およびすべての核酸を含むと解釈すべきである。前述の特許請求の範囲で使用した用語「PEDF」は、本明細書で定義するPEDFの生物学的に活性なPEDFのすべての形を含むと解釈すべきである。
【0031】
本明細書でPEDFを指すために使用する用語「外因性」により、この用語は細胞中で自然には発現されない任意の、およびすべてのPEDFを含むと解釈すべきである。例えば「外因性PEDF」は組換え法を使用して細胞中に導入された核酸から発現したPEDF、細胞に加えられたPEDF、および任意の、およびすべてのそれらの組み合わせを含むと解釈すべきである。したがって、この用語は細胞自体へのPEDFの添加のみに限定されず、PEDFが細胞に導入された核酸から発現された時、細胞中のPEDFの発現も含むと拡大して解釈すべきである。
【0032】
PEDFポリペプチドは、一部は活性化された内皮細胞の移動および生存を弱めることにより新脈管形成を阻害するが、これは内皮が組織中に広がる能力を下げる。すなわち本発明は、そのような細胞に外因性のPEDFを提供することにより内皮細胞の移動を阻害する方法を提供する。新脈管形成を弱めることとは別に、本方法は腸管癒着、クローン病、アテローム硬化症、強皮症および過形成性瘢痕(例えばケロイド)のような内皮細胞移動の刺激が関係する疾患を処置するために有用である。
【0033】
本発明の方法に従い、PEDFは目的の組織に付随する内皮細胞に提供される。そのような細胞は、目的組織を含んで成る細胞、組織に導入された外因性の細胞または組織中ではない隣の細胞であることができる。すなわち例えば細胞は組織の細胞であることができ、そしてPEDFはPEDFが細胞に接触するようにその場所に提供される。あるいは細胞は組織に導入された細胞であることができ、この場合PEDFは細胞が組織に導入される前に細胞に移されることができ(例えばインビトロ)、ならびに組織に導入された後にその場に移されることができる。
【0034】
PEDFが細胞に導入され、次いで哺乳動物に移される時、本発明はPEDFを細胞に導入する様式により限定されると解釈すべきではない。また細胞が哺乳動物に導入される様式により本発明が限定されるとも解釈すべきではない。以下にさらに詳細に記載するように、DNAを細胞に導入する方法はそのような細胞を哺乳動物の組織中に送達する方法のように周知である。
【0035】
内皮細胞が付随する組織は、内皮の移動または拡大を阻害することが望まれる任意の組織である(例えば、新脈管形成を阻害するために)。1つの応用では組織は目の組織であり、この場合、外因性PEDFの存在は目の種々の疾患に関係する新規な新脈管形成を阻害するだろう。例えば本発明の方法は目の創傷、低酸素症、感染、外科的医術、レーザ手術、糖尿病、網膜芽腫、黄斑変性、虚血性網膜症、または目の他の疾患または障害を処置するために有用である。これに関連して、本方法は種々の目の疾患に関連する失明の防止または視野の喪失を遅らせるために有用である。ほとんどの糖尿病患者は最終的に疾患により引き起こされる虚血に応答して網膜の血管の過剰成長による視野の損失を患う。同様に、高レベルの酸素に暴露された未熟な新生児は、網膜の静脈閉塞または他の血管または虚血性異常の結果として網膜症を発症する。本明細書に記載するように、虚血により誘導される網膜症はPEDFの全身または局所投与により防止およびまたは処置することができる。レーザー手術の場合、目に関してはPEDFを使用して処置後の血管の再成長を防止することができる。レーザーは過剰な血管を破壊するために使用されるが、それらはまた幾つかの新脈管形成を誘導する網膜中の創傷も作る。PEDFを用いた全身性または局所的処置は、そのような再成長を防止するために役立つ。
【0036】
本明細書で使用する「網膜症」という用語は、硝子体に入っても入らなくてもよい網膜内または回りの血管の異常な発育を意味する。傷害、疾患、虚血の発生、レーザーまたは他の医原性処置が、網膜症を誘導し得る。
【0037】
別の応用では組織は皮膚の疾患であり、この場合は外因性PEDFの存在が幾つかの皮膚疾患に関連する新生血管形成を防止する。例えば本方法は乾癬、強皮症、皮膚の腫瘍、感染の結果としての新生血管形成(例えば、ネコに引っ掻かれたことによる疾患、細菌性の潰瘍化等)、または他の皮膚疾患のような疾患および障害を処置するために有用である。PEDFが皮膚に提供される場合、PEDFは皮膚の表面または皮膚表面下の皮膚組織に、あるいは全身的にも提供することができる。さらにPEDFを哺乳動物の皮膚に移すことは皮膚の毛髪の成長をも刺激することができる。特定の理論に拘束されることなく、PEDFは毛包内の新脈管形成を媒介することにより、かつ/またはニューロン組織近くの分化に影響を及ぼすことにより毛髪の成長に影響を与えると考えられる。
【0038】
別の態様では、組織は腫瘍(例えば、良性または癌腫性の成長)であり、この場合、本発明の方法は腫瘍内または腫瘍への血管の成長を阻害し、そして場合により腫瘍細胞の分化、そしてゆっくりとした分割を誘導する。腫瘍内の血管の成長を阻害することは、所定のサイズを越えた成長を支持するために腫瘍に供給される十分な栄養および酸素を妨げる。すなわち本発明の方法は、遺伝的素因(例えばBRCA−1突然変異キャリアー、p53突然変異を持つLi Fraumeni患者等)または外の発癌物質(例えばタバコ、アルコール、工業用溶媒)の存在により既に存在する癌腫細胞から腫瘍の核形成を防止することができる。腫瘍形成の防止の外に、本発明の方法は既存の腫瘍の成長を遅らせ、すなわち腫瘍をより容易に阻止および摘出し、そして腫瘍の退行を引き起こすことができる。この応用は手術を施すことが難しい腫瘍を処置するために高度に有利である(例えば悩または前立腺腫瘍)。加えてこの方法は限定するわけではないが神経芽腫を含む小児腫瘍の処置に有用である。さらに、現存する腫瘍内の血管数を最小にすることは、腫瘍が転移する可能性を下げる。腫瘍の処置において、この方法は単独または他の処置と組み合わせて使用して腫瘍の成長を制御することができる。実際に本発明の方法を採用することにより、幾つかの腫瘍の他の治療に対する応答を強化することができる。例えば本発明の方法は化学療法または放射線処方の前処置(例えば約1週間前に)に、そしてそれらの処置中に続行して採用することができる。本発明の方法は例えばインターフェロンまたは他の抗新脈管形成物質のような生物学的応答モディファイヤーの使用と組み合わせて使用してもよく、そしてまたインビボで抗新脈管形成物質の生産を誘導する作用物質の使用との組み合わせも有用である。さらに本発明の方法は細胞の分化を促進する作用物質、特に限定するわけではないが悩腫瘍細胞の分化を促進する作用物質と組み合わせて使用してもよい。
【0039】
本発明の方法が他の組織に適用される場合、新生血管形成の防止は宿主の障害を効果的に処理する。すなわち例えば本発明の方法を血管の障害(例えば血管腫およびアテローム硬化症プラーク内の毛細管増殖)、筋肉の疾患(例えば心筋の新脈管形成または平滑筋内の新脈管形成)、関節(例えば関節炎、血友病関節等)、および新脈管形成が関係する他の疾患(例えばOsler−Webber症候群、プラーク新生血管形成、毛細管拡張症、血管線維腫、創傷の肉芽化等)の処置の一部として使用することができる。さらに本発明は特に嚢胞性線維症患者の鼻のポリープ、骨髄細胞の異常な成長から起こる白血病、および前立腺ガンの処置に有用である。本発明は一般に、前立腺に含まれる良性の新生組織形成の処置に有用となる。
【0040】
新生血管形成と関連する障害および症状の処置とは別に、新脈管形成の阻害は新生血管形成に関係する正常な生理学的症状の発生をモジュレートまたは防止するために使用することができる。本発明の方法を用いて、卵巣または内皮内のPEDFの存在。このように例えば本発明は出産制御に使用することができる。したがって、排卵、胚の着床、胎盤形成等に関係する新生血管形成を弱めることができる。
【0041】
本発明の方法は新脈管形成に関係する疾患または障害の発生を防止する手段としても有用であり、すなわちこの方法は、疾患の危険性がある患者の疾患を防止するための予防法として有用である。例えば、そして限定するわけではないが、PEDFは糖尿病患者の糖尿病網膜症の発生を防止するために、特定のガンの危険性があると知られている人にその特定のガンの発生を防止するため等に使用することができる。すなわち本発明の方法は、明白な疾患の処置に限定されると解釈するべきではなく、むしろ疾患の危険がある患者の疾患の防止に有用であると解釈すべきである。
【0042】
本発明は、前ガン創傷、例えば限定するわけではないが特に嚢胞性線維症を有する患者における鼻のポリープの処置を含むと解釈すべきである。これらの患者の鼻のポリープは新脈管形成性であり、そしてさらに嚢胞性線維症患者の悩脊髄液は過剰な新脈管形成因子VEGEを含む。特に嚢胞性線維症患者におけるこれらの症状の緩和は(ここで緩和はPEDFの投与を含んで成る)、したがって本発明の方法に含まれる。
【0043】
本発明の方法の内容の中で、PEDFは単独または他の既知の抗新脈管形成因子と一緒に供給することができる。例えばPEDFはインテグリン結合(engagement)を遮断する抗体およびペプチド、メタロプロティナーゼを阻害するタンパク質および低分子(例えばマルミスタット:marmistat)、内皮細胞中でリン酸化カスケードを遮断する作用物質(例えばハーバマイシン:herbamycine)、新脈管形成の既知のインデューサーに関するドミナントネガティブ受容体、新脈管形成のインデューサーに対する抗体、あるいはそれらの活性を遮断する他の化合物(例えばスラミン:suramin)または他の手段により作用する他の化合物(例えばレチノイド、IL−5、インターフェロン等)と一緒に使用することができる。実際にそのような因子が新脈管形成を異なるメカニズムでモジュレートすると、他の抗新脈管形成物質と組み合わせてPEDFを使用することは所望の組織中で新脈管形成をより効力的に(しかも効力的に相乗的に)阻害することができる。PEDFは1以上の他の抗新脈管形成因子と使用することができる。好ましくは少なくとも2種の抗新脈管形成因子をPEDFと一緒に使用してよい。
【0044】
本明細書で検討するように、PEDFは有力な因子である。すなわち1つのプロトコールでは、この方法は細胞にPEDFポリペプチドを供給することによりPEDFを提供することが含まれる(例えば適切な組成物中で)。本発明に使用するためのPEDFポリペプチドを得るために任意の適当な方法を使用することができる。多くの適切なPEDFポリペプチドは、PEDFを自然に生産している組織から、または種々のPEDF−生産細胞(例えば網膜芽腫細胞系 WER127)によりコンディショニングされた培地から精製することができる。例えばPEDFはすべての種類の筋肉、脾臓の巨核球、繊維芽細胞、腎臓管、大脳Purkinje細胞、毛包の毛脂(plpiosebaceous)腺および網膜細胞により生産されることが知られている。自然に存在するPEDFの特に良好な供給源は、目から抽出される硝子体および水性体液である。これらのタンパク質抽出物(または他の供給源)からPEDFを精製するための1つのプロトコールは、30KDaの限外濾過膜を使用した濃縮/透析、続いて約65%〜約95%硫酸アンモニウムの範囲の沈殿、続いて0.5M メチル−α−マンノピラノシドでのレンチルレクチン セファロース カラム、続いてファルマシア(PHARMACIA) HiTrapヘパリンカラムから0.5M NaClでの勾配/イソクラティック溶出による。PEDFポリペプチドを精製するための他のプロトコールは、当該技術分野では既知である(例えば、公開された国際特許出願95/33480号および同第93/24529号明細書を参照にされたい)。配列番号1により表される自然なPEDFポリペプチドは、SDS−PAGEを介して約45〜50kDaのタンパク質であると同定される。他のPAGEポリペプチドは標準的な直接ペプチド合成法を使用して合成することができる(例えば、固相合成(例えばMerrifield,1963,J.Am.Chem.Soc.85:2149−2154;Barany et al.,1987,Int.J.Peptide Protein Res.30:705−739;および米国特許第5,424,398号明細書を参照にされたい)を介するような、Bondanszky,1984、ペプチド合成の原理(Principle of Peptide Synthesis)(スプリンガー(Springer)出版、ハイデルベルグ)に要約されているような)。もちろんPAGEポリペプチドの遺伝子も既知であり(例えば公開された国際特許出願95/33480号および同第93/24529号明細書を参照にされたい);そしてまたGeneBank 寄託番号U29953も参照にされたい)、あるいは本明細書で検討するポリペプチド配列から推定することができるので、PEDFポリペプチドは標準的な組換えDNA法により生成することができる。
【0045】
別のプロトコールでは、PEDFポリペプチドはPEDFをコードする核酸を含む発現ベクターを問題の組織に付随する細胞に移すことにより、問題の組織に提供することができる。細胞はPAGEポリペプチドを、これが組織中の内皮細胞に適当に提供されてそれらの移動を阻害するように、すなわち目的の組織中の、または全身的に新脈管形成を弱めるように生産し、そして分泌する。PEDFポリペプチドをコードする核酸配列は既知であり(例えば公開された国際特許出願第95/33480および同第93/24529号明細書を参照にされたい);およびまたGeneBank 寄託番号U29953を参照にされたい)、そして他は本明細書で検討するポリペプチド配列から推定することができる。すなわちPEDF発現ベクターは典型的には既知のPEDF配列に相同的である単離された核酸配列を含み、例えばそれらは少なくとも軽度の緊縮条件下で、より好ましくは中度の緊縮条件下で、最も好ましくは高度な緊縮条件下で(軽度、中度および高度な緊縮に関する定義については、Sambrook et al.、1989、モレキュラークローニング:ア ラボラトリーマニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)、第2版、コールドスプリングハーバー出版に説明されている通りである)、既知の配列の少なくとも1つのフラグメントにハイブリダイズする。
【0046】
PEDFをコードする核酸に加えて発現ベクターはプロモーターを含み、そして本発明の内容においては、プロモーターは細胞中でPEDF遺伝子の発現を駆動することができなければならない。多くのウイルスプロモーターがそのような発現カセットでの使用に適当である(例えば、レトロウイルスITRs、LTRs、前初期ウイルスプロモーター(IEp)(ヘルペスウイルスIEpのような(例えばICP4−IEpおよびICP0−IEp)、およびサイトメガロウイルス(CMV)IEp)、および他のウイルスプロモーター(例えば後期ウイルスプロモーター、潜在−活性(latency−active)プロモーター(LAP)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、およびネズミ白血病ウイルス(MLV)プロモーター))。他の適当なプロモーターは、エンハンサー配列を含む真核生物プロモーター(例えばウサギβ−グロビン調節配列)、構成的に活性なプロモーター(例えばβ−アクチンプロモーター等)、シグナルおよび/または組織特異的プロモーター(例えば、TNFまたはRU486に反応性のプロモーターのような誘導性および/または抑制性プロモーター、メタロチオニンプロモーター等)、および腫瘍−特異的プロモーターである。
【0047】
発現ベクターの中で、PEDF遺伝子およびプロモーターはプロモーターがPEDF遺伝子の発現を駆動することができるように操作可能に連結される。この操作可能な連結が維持される限り、発現ベクターはインターナルリボソームエントリーサイト(internal ribosome entry sites:IRES)により分けられた同義遺伝子のような1以上の遺伝子を含むことができる。さらに発現ベクターは場合によりスプライス部位、ポリアデニレーション配列、転写調節要素(例えばエンハンサー、サイレンサー等)、または他の配列のような他の要素を含むことができる。
【0048】
発現ベクターは、それらが中に含むPEDFをコードする単離された核酸を発現することができる様式で細胞中に導入されなければならない。任意の適当なベクターを採用することができ、それらの多くは当該技術分野では既知である。そのようなベクターの例には、裸のDNAベクター(オリゴヌクレオチドまたはプラスミドのような)、アデノ−随伴ウイルスベクターのようなウイルスベクター(Berns et al.,1995,Ann.N.Y.Acad.Sci.772:95−104)、アデノウイルスベクター(Berns et al.,1994,Gene Therapy 1:S68)、ヘルペスウイルスベクター(Fink et al.,1996,Ann.Rev.Neurosci.19:265−287)、パッケージされたアンプリコン(Federoff et al.,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:1636−1640)、パピローマウイルスベクター、ピコルナウイルスベクター、ポリオーマウイルスベクター、レトロウイルスベクター、SV40ベクター、ワクシニアウイルスベクターおよびその他のベクターを含む。目的の発現ベクターに加えて、ベクターには例えば選択性マーカー(例えばβ−galまたはトキシンに対する耐性を付与するマーカー)、薬理学的に活性なタンパク質、転写因子のような他の遺伝的要素、あるいは他の生物学的に活性な物質も含むことができる。
【0049】
選択した任意のベクターは、真核細胞で大量に生産できなければならない。さらにベクターはPEDF配列を含むか、または含まないいずれかの目的細胞に移されることができるように、PEDF配列を含まないベクターは対照ベクターとして役立つように構築できることが必要であり、PEDF配列を含むベクターは実験用または治療用ベクターである。ベクター核酸を操作するための方法は、当該技術分野では周知であり(例えば、Sambrook et al.,同上を参照にされたい)、そして直接クローニング、レコンビナーゼを使用した部位特異的組換え、相同的組換え、および組換えベクターを構築するための他の適当な方法を含む。この様式で発現ベクターは任意の所望の細胞中で複製し、任意の所望の細胞中で発現することができ、そしてさらに任意の所望する細胞のゲノム中に組み込むことができるようになるように構築することができる。
【0050】
PEDF発現ベクターはDNAを細胞に移すために適当な任意の手段により細胞に導入される。多くのそのような方法が当該技術分野では周知である(Sambrook et al.,同上;またWatson et al., 組換えDNA(Recombinant DNA)、第12章、第2版、サイエンティフィック アメリカン ブックス(Scientific American Books)。このようにプラスミドは、リン酸カルシウム沈殿、エレクトロポレーション、リポソーム−媒介トランスフェクション、遺伝子銃、マイクロインジェクション、ウイルスキャプシド−媒介転移、ポリブレン−媒介転移、プロトプラスト融合等のような方法により移される。ウイルスベクターは細胞の直接的感染により細胞に最も良くに移される。しかし感染の様式はウイルスおよび細胞の厳密な性質に大変依存するかもしれない。
【0051】
誘導性プロモーターの制御下でPEDF遺伝子が移された細胞は、必要ならば一過性の形質転換体として本発明の方法で使用することができる。そのような細胞自体は次いで、哺乳動物にそこでの治療的利益のために移すことができる。典型的には細胞はその中で発現され、そしてそこから分泌するPEDFが新脈管形成を阻害するために所望の内皮細胞と接触するように、哺乳動物の部位に移される。あるいは特にベクターがインビトロで加えられた細胞の場合は、細胞を最初に数回のクローン選択にかけて(通常は、ベクター中の選択性マーカー配列の使用によりなされる)、安定な形質転換体を選択することができる。そのような安定な形質転換体は、次いで哺乳動物にそこでの治療的利益のために移される。
【0052】
PEDFはまた、PEDFをコードする単離された核酸を含んで成るベクターを他の細胞群にトランスフェクトすることにより内皮細胞に提供することができ、これによりPEDFが他の細胞中で発現し、そしてそこから分泌する。そのようにトランスフェクトした他の細胞群は、次いでそのように分泌したPEDFが内皮細胞と接触し、そして新脈管形成を阻害する哺乳動物の部位に移される。他の細胞からのPEDFの発現および分泌は、次いで内皮細胞に利益をもたらす。PEDFをコードするDNAが細胞に安定に組み込まれる必要はない。PEDFは細胞中の組み込まれていない、または組み込まれたDNAから発現し、そして分泌され得る。
【0053】
細胞内で、PEDF遺伝子は細胞がPEDFポリペプチドを発現し、そして分泌するよおに発現する。遺伝子の成功裏の発現は、標準的な分子生物学的技法を使用して評価することができる(例えばノーザンハイブリダイゼーション、ウエスタンブロッティング、免疫沈降、酵素イムノアッセイ等)。トランスフェクトした細胞からのPEDF遺伝子の発現およびPEDFの分泌を検出するための試薬は、当該技術分野では既知である(例えば、公開された国際特許出願第95/33480および同第93/24529号明細書を参照にされたい);Steel et al.,同上)。
【0054】
目的の組織の場所に依存して、PEDFは目的とする組織内の内皮細胞にPEDFを提供するための任意の適当な様式で供給することができる。すなわち例えばPEDFの供給源(すなわち本明細書に記載するようなPEDFポリペプチドまたはPEDF発現ベクター、またはPEDFを発現する細胞)を有する組成物を全身性の循環に導入することができ、これは目的の組織にPEDFの供給源を分布するだろう。あるいはPEDFの供給源を含有する組成物は、目的の組織に局所的に適用することができる(例えば注射、または連続注入としてのポンプ送液、あるいは腫瘍内またはガン内部または皮下部位へのボーラスとして、皮膚表面のすべてまたは一部への適用、目の表面上への滴下等)。
【0055】
PEDFの供給源がPEDFポリペプチド(例えば適当な組成物中の)である場合、組織中の新脈管形成を阻害するために十分な濃度および時間で提供される。
【0056】
新脈管形成の阻害は一般に、新しい血管が新芽を発生するか、または循環している幹細胞が到着し、そして続いて内皮細胞に分化するかにかかわらず新しい血管の発生を停止することと考えられる。しかしPEDFは活性化された内皮細胞のアポトーシスを誘導することができるので、本発明との関連で新脈管形成の阻害はPEDFによる細胞の、特に腫瘍の新脈管形成因子により活性化された時、腫瘍近く、またはその中の既存の血管中の細胞の死亡を誘導することと解釈するべきである。すなわち本発明の内容の中で、新脈管形成の阻害は新規血管の発生の阻害を含むと解釈するべきであり、この阻害は同時に近くの既存の血管を破壊してもしなくてもよい。
【0057】
PEDFが自然に生産される場合、PEDFは約250nMもの高さの濃度で存在することができる。PEDFは非毒性であるので、より高濃度の状態で組織に供給することができる。しかしPEDFの効力を仮定すると、本発明の方法では約10nM未満のようなさらに低濃度(例えばわずか0.01nM)で使用することができる。実際に幾つかのプロコールでは、約2nM PEDF未満で新脈管形成および内皮細胞の移動を効果的に阻害する。タンパク質を含んで成る組成物の配合に依存して、PEDFは所望する組織中で新脈管形成を遅らせるために十分なタイムコースにわたり供給される。プロトコールによっては(例えばPEDFが皮膚または目の表面に供給される場合)、繰り返し適用することが抗新脈管形成効果を強化し、そして幾つかの適用では必要となるかもしれない。PEDFの供給源がPEDF発現ベクターである場合、PEDFを発現する細胞は効果的な(すなわち組織中の新脈管形成を阻害するために十分な)量のタンパク質を生産する。
【0058】
本発明の方法を行うために、本発明はPEDFの供給源および適当な希釈剤を含んで成る薬理学的組成物を提供する。PEDFの供給源に加えて、組成物には1以上の薬理学的に許容されるキャリアーを含む希釈剤を含む。本発明に従い使用するための医薬組成物は、賦形剤を含んで成る1以上の薬理学的または生理学的に許容されるキャリアー、ならびに製薬的に使用することができる調製物への活性化合物の加工を容易にする任意の補助剤を使用して、通常の様式で配合することができる。適切な配合は選択する投与の経路に依存する。すなわち例えば全身注射には、PEDFの供給源は水溶液、好ましくは必要に応じてポリエチレングリコールのような安定化剤を含んでもよい生理学的に適合性のあるバッファーに配合することができる。粘膜を介する(transmucosal)投与には、浸透するべきバリアーに対して適当な浸透剤を製剤中に使用する。そのような浸透剤は一般に当該技術分野では知られている。経口投与には、PEDFの供給源は錠剤、ピル、ドラジェ、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、リポソーム、懸濁液等に包含するための適当なキャリアーと組み合わせることができる。吸入による投与には通常、PEDF供給源は適当な推薬を使用した加圧パックまたはネブライザーからエアゾール噴霧による提供の状態で送達される。PEDFの供給源は注射、例えばボーラス注射または連続注入による非経口投与用に配合することができる。そのような組成物は油性または水性賦形剤中の懸濁液、溶液または乳液のような状態をとることができ、そして沈殿防止剤、安定化剤および/または分散剤のような配合剤を含むことができる。皮膚への適用には、PEDFの供給源は適当なゲル、マグマ、クリーム、軟膏または他のキャリアーに配合することができる。目への適用には、PEDFの供給源は水溶液、好ましくは生理学的に適合性のあるバッファーに配合することができる。PEDFの供給源は、当該技術分野で既知であるような他の医薬組成物中に配合することもできる。医薬組成物および製剤の詳細な考察は、本明細書のいたるところに提供する。
【0059】
腫瘍の中にはPEDFが低下しているか、または存在しないものもあることが知られているので、本発明は腫瘍内のPEDFの存在をアッセイすることにより腫瘍の予後を評価する方法も提供する。この方法には腫瘍から組織または流体を得、そして組織または流体中のPEDFの存在または不存在を検出することを含む。組織または流体は、例えば尿、血漿、血清または硝子体液もしくは水性体液であることができる。腫瘍中のPEDF濃度が高いほど、腫瘍が新脈管形成を受ける可能性は低い相関にある。すなわち腫瘍中のより高いPEDF濃度は腫瘍形成の比較的初期の段階の指標であり、したがって楽観的指標である。逆に所定の腫瘍中のPEDFの不存在は、あるいは低レベルのPEDFの存在は、腫瘍形成がより進んだ段階の指標である。本明細書で言うPEDFレベルの高い、または低いとは、正常な問題としている疾患を持たない良い個体から得た同一組織中のPEDFレベルと比較している。
【0060】
PEDFレベルの評価は、PEDF遺伝子発現をレベルを評価するアッセイを使用して行うことができる(例えば、逆転写酵素PCR(RT−PCR)、ノーザンハイブリダイゼーション、in situ ハイブリダイゼーション等)。あるいは分泌したPEDFの存在は免疫学的アッセイ、PEDF精製アッセイまたはPAGE分析等により測定することができる)。そのような腫瘍中のPEDFの存在を検出するための試薬は、当該技術分野では既知である(例えば、公開された国際特許出願第95/33480および同第93/24529号明細書を参照にされたい)。
【0061】
本発明はまた、本発明のペプチド組成物および哺乳動物の細胞または組織に組成物を外膜的に投与することを記載する使用説明書を含んで成るキットも含む。別の態様では、このキットは化合物を哺乳動物に投与する前に、本発明の組成物を溶解または懸濁するために適する(好ましくは滅菌)溶媒を含んで成る。上記のすべてに加え、本発明は細胞中の内因性PEDFの発現を調節する方法も含むと解釈すべきである。例えば、細胞に一過性の高酸素を誘導することにより細胞中でのPEDF生産をアップレギュレートすることが可能である。そのような処置は新脈管形成のインデューサーをダウンレギュレートする付加的利点を有する。本発明は本明細書に記載する処置の各モダリティーに対してこの方法を応用することを含むと解釈すべきである。
定義
本明細書で使用する以下の各用語は、この章にあるその用語に関連する意味を有する。
【0062】
冠詞“a”および“an”は、本明細書では1または1より多い(すなわち少なくとも1つの)冠詞の文法的目的語を指す。例として“an element”は、1つの要素または1以上の要素を意味する。
【0063】
本明細書で使用する用語「隣接する」とは、介在するヌクレオチドを持たない、互いに直接付いているヌクレオチド配列を称する。例として2つが5’−AAAAATTT−3’または5’−TTTAAAAA−3’のように連結している時、ペンタヌクレオチド5’−AAAAA−3’はトリヌクレオチド5’−TTT−3’に隣接するが、2つが5’−AAAAACTTT−3’のように連結している時は隣接していない。
【0064】
本明細書で使用する「症状を緩和する」とは、症状の重篤度を減少することを意味する。
【0065】
本明細書で使用するアミノ酸は、以下の表に示すようにそれらの完全な名前により、それらに対応する三文字暗号により、またはそれらに対応する一文字暗号により表す:
【0066】
【表1】
【0067】
遺伝子の「コード領域」は、遺伝子の転写により生成されるmRNA分子のコード領域にそれぞれ相同的または相補的である遺伝子のコード鎖のヌクレオチド残基および遺伝子の非コード鎖のヌクレオチドから成る。
【0068】
遺伝子の「mRNA−コード領域」は、遺伝子の転写により生成されるmRNA分子のコード領域にそれぞれ相同的または相補的である遺伝子のコード鎖のヌクレオチド残基および遺伝子の非コード鎖のヌクレオチド残基から成る。真核細胞中の特定の場合に起こるmRNAプロセッシングにより、遺伝子のmRNAコード領域はゲノム中に生じる遺伝子中に互いに分かれた1つの領域または複数の領域を含んで成る。遺伝子のmRNAコード領域がゲノム中で分かれた領域を含んで成る場合、「mRNAコード領域」は、これらの領域の両方を個別に、または集合的に称する。
【0069】
本明細書で使用する「相補的」とは、2つの核酸、例えば2つのDNA分子の間のサブユニット配列の相補性といった広い概念を称する。両分子中のヌクレオチド位が互いに正常に対合することができるヌクレオチドにより占められている場合、核酸はこの位置で互いに相補的であると考えられる。すなわち2つの核酸は、各分子中で実質的な数(少なくとも50%)の対応する位置が、互いに正常に塩基対合するヌクレオチド(例えばA:TおよびG:Cヌクレオチド対)により占められている時、互いに相補的である。
【0070】
「疾患」とは動物が恒常性を維持することができない動物の健康状態であり、そして疾患が改善しない場合、動物の健康状態は悪化し続ける。疾患は、疾患の症状の重篤度、患者が経験するそのような症状の頻度、またはその両方が減少する場合、「緩和」する。
【0071】
「コードする」とは、定めたヌクレオチド配列(すなわちrRNA、tRNAおよびmRNA)または定めたアミノ酸配列およびそれらから生じる生物学的特性を有する、生物学的プロセスにおいて他のポリマーおよび高分子の合成のために鋳型として役立つ遺伝子、cDNAまたはmRNAのようなポリヌクレオチド中の特異的なヌクレオチド配列の固有の特性を称する。すなわち遺伝子は、その遺伝子に対応するmRNAの転写および翻訳が細胞または他の生物学的系中でタンパク質を生産する場合、タンパク質をコードする。遺伝子またはcDNAの転写の鋳型として使用するコード鎖(mRNA配列と同一であり、そして通常は配列表に提供されるヌクレオチド配列)、および非コード鎖は、タンパク質または遺伝子もしくはcDNAの他の生成物をコードすると言うことができる。
【0072】
特に言及しない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」は、互いの縮重変更体であり、そして同じアミノ酸配列をコードするすべてのヌクレオチド配列を含む。タンパク質およびRNAをコードするヌクレオチド配列はイントロンを含んでもよい。
【0073】
本明細書で使用する「相同的な」とは、2つのポリマー分子間、例えば2つの核酸分子間、例えば2つのDNA分子または2つのRNA分子、あるいは2つのポリペプチド分子間のサブユニット配列の類似性を称する。2つの分子の両方のサブユニット位が同じ単量体サブユニットで占められている時、例えば2つの各DNA分子の位置がアデニンで占められているならば、それらはその位置で相同的である。2つの配列間の相同性は、対合または相同的な位置の数の直接的関数であり、例えば2つの化合物の配列中の位置の半分(例えば10個のサブユニット長のポリマーの5つの位置)が相同的であるならば、2つの配列は50%相同的であり、位置の90%(例えば10のうちの9)が対合するかまたは相同的ならば、2つの配列は90%の相同性を共有する。例として、DNA配列3’ATTGCC5’および3’TATGGCは、50%の相同性を共有する。
【0074】
本明細書で使用する「相同性」は、「同一性」と同義語的に使用される。
【0075】
2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間のパーセント同一性の測定は、数学的アルゴリズムを使用して行うことができる。例えば2つの配列を比較するために有用な数学的アルゴリズムは、Karlin and Altschul(1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873−5877)により修飾されたKarlin and Altschul(1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264−5877)のアルゴリズムである。このアルゴリズムは、Altschul,et al(1990,J.Mol.Biol.215:403−410)のNBLASTおよびXBLASTプログラムに包含されており、そして例えばバイオテクノロジー情報に関する国立センター(National Center for Biotechnology Information:NCBI)のユニバーサル リソース ロケーター“http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/”を有する世界的ウェッブサイトでアクセスすることができる。BLASTヌクレオチド調査は、以下のパラメーターを使用してNBLASTプログラム(NCBIウェッブサイトでは“blastn”と命名されている)で行うことができる:本明細書に記載する核酸に相同的なヌクレオチド配列を得るために、ギャップペナルティ=5;ギャップエクステンションペナルティ=2;ミスマッチペナルティ=3;マッチリワード=1;期待値10.0;およびワードサイズ=11。BLASTタンパク質調査は、以下のパラメーターを使用してXBLASTプログラム(NCBIウェッブサイトでは“blastn”と命名されている)またはNCBI“blastp”プログラムで行うことができる:本明細書に記載するタンパク質分子に相同的なアミノ酸配列を得るために、期待値10.0、BLOSUM62 スコアリングマトリックス。比較を目的としてギャップのある整列を得るためには、Gapped BLASTをAltschul,et al(1997,Nucleic Acids Res.25:3389−3402)に記載されているように利用することができる。あるいはPSI−BlastまたはPHI−Blastを使用して、分子(Id.)間の明確な関係および共通のパターンを共有する分子間の関係を検出する反復調査を行うことができる。BLAST、Gapped BLAST、PSI−BlastおよびPHI−Blastプログラムを利用する時、各プログラムのデホルトパラメーター(例えばXBLASTおよびNBLAST)を使用することができる。http://www.ncbi.nlm.nih.gov.を参照にされたい。
【0076】
2つの配列間のパーセント同一性は、ギャプを用いて、または用いずに上記の技法に類似する技法を使用して測定することができる。パーセント同一性の算出には、典型的に厳密な対合がカウントされる。
【0077】
本明細書で使用する「使用説明書」は、本発明の組成物のその指定する用途についてその有用性を分かつために使用することができる公報、記録、図表または任意の他の表現媒体を含む。例えば本発明のキットの使用説明書は、組成物を含む容器に付けられているか、または組成物を含む容器と一緒に輸送されてもよい。あるいは使用説明書は、使用説明書および組成物が受容者により連携して使用されることを意図して容器とは別に輸送されてもよい。
【0078】
「単離された核酸」とは、自然に存在する状態ではそれを挟む配列から分離された核酸セグメントまたはフラグメントを称し、例えば自然に存在するゲノム中のフラグメントに隣接する配列である、例えばフラグメントに通常は隣接する配列から取り出されたDNAフラグメントを称する。この用語はまた、核酸に自然に付随する他の成分、例えば細胞中で自然に付随するRNAまたはDNAまたはタンパク質から実質的に精製された核酸にも適用する。したがってこの用語は、ベクター中に、自律複製プラスミドまたはウイルス中に、あるいは原核生物または真核生物のゲノムDNA中に取り込まれた組換えDNA、あるいは他の配列から独立して分かれた分子として存在するもの(例えばcDNAもしくはゲノムまたはPCRもしくは制限酵素消化により生産されたcDNAフラグメント)も含む。これはまたさらなるポリペプチド配列をコードするハイブリッド遺伝子の一部である組換えDNAも含む。
【0079】
2つのポリヌクレオチドを「操作可能に連結する」という記載は、2つのポリヌクレオチドの少なくとも1つが生理学的効果を発揮することができ、これにより他方が特性付けられるような様式で核酸分子中に配列された2つのポリヌクレオチドを含んで成る1本鎖または2本鎖核酸部分を意味する。例として、遺伝子のコード領域に操作可能に連結されたプロモーターはコード領域の転写を促進することができる。
【0080】
「ポリヌクレオチド」とは、核酸の1本鎖、または平行もしくは反平行鎖を意味する。すなわちポリヌクレオチドは、1本鎖または2本鎖核酸のいずれかでよい。
【0081】
用語「核酸」は、典型的には大きなポリヌクレオチドを称する。
【0082】
用語「オリゴヌクレオチド」は、典型的には短いポリヌクレオチドを称し、一般に約50ヌクレオチド以下である。ヌクレオチド配列がDNA配列により表される時(すなわち、A、T、G、C)、これはまた“T”を“U”に置き換えたRNA配列(すなわち、A、U、G、C)を含む。
【0083】
ポリヌクレオチド配列を記載するために、本明細書では通常の表記を使用する:1本鎖ポリヌクレオチド配列の左手末端は5’−末端である;2本鎖ポリヌクレオチド配列の左手方向は5’−方向と称する。
【0084】
新生RNA転写物へのヌクレオチドの5’から3’方向への付加は、転写方向と称する。mRNAと同じ配列を有するDNA鎖は「コード鎖」と称する;DNA上の示す点より5’に位置するDNA鎖上の配列は「上流配列」と称する;DNA上の示す点より3’のDNA鎖上の配列は「下流配列」と称する。
【0085】
本明細書で使用するように、用語「プロモーター/調節配列」とは、プロモーター/調節配列に操作可能に連結された遺伝子産物の発現に必要な核酸配列を意味する。場合によりこの配列はコアプロモーター配列でよく、そして他の場合ではこの配列は、遺伝子産物の発現に必要なエンハンサー配列および他の調節要素を含んでもよい。プロモーター/調節配列は、例えば組織特異的様式で遺伝子産物を発現するものでよい。
【0086】
「構成的プロモーターは、細胞中で一定の様式で、操作可能に連結した遺伝子の発現を駆動するプロモーターである。例として細胞のハウスキーピング遺伝子の発現を駆動するプロモーターは、構成的プロモーターであると考えられる。
【0087】
「誘導性」プロモーターは、遺伝子産物をコードまたは特定するポリヌクレオチドに操作可能に連結した時、細胞中にプロモーターに対応するインデューサーが存在する時にのみ遺伝子産物が生きている細胞中で実質的に生産されるようにするヌクレオチド配列である。
【0088】
「組織特異的」プロモーターは、遺伝子産物をコードまたは特定するポリヌクレオチドに操作可能に連結した時、細胞がプロモーターに対応する組織型の細胞である時にのみ遺伝子産物が生きている細胞中で実質的に生産されるようにするヌクレオチド配列である。
【0089】
少なくとも約75%、そして好ましくは少なくとも約90%、または少なくとも約95%相補的なオリゴヌクレオチドのみが互いにアニールする条件下で2つのオリゴヌクレオチドがアニールする場合、第1のオリゴヌクレオチドは第2のオリゴヌクレオチドに、「高い緊縮度で」アニールする。2つのオリゴヌクレオチドをアニールするために使用する条件の緊縮度は、因子の中でもアニーリング媒質の温度、イオン強度、インキューベーション時間、オリゴヌクレオチドの長さ、オリゴヌクレオチドのG−C含量、および分かっている場合は2つのオリゴヌクレオチド間の予想される非−相同性の程度の関数である。アニーリング条件の緊縮度を調整する方法は既知である(例えば、Sambrook et al.、1989、モレキュラークローニング:ア ラボラトリーマニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)、コールドスプリングハーバーラボラトリー、ニューヨークを参照にされたい)。
【0090】
用語「実質的に純粋」とは、自然に付随する成分から分離された化合物、例えばタンパク質またはポリペプチドを言う。典型的には、化合物はサンプル中の全材料の少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも90%、そして最も好ましくは少なくとも99%(容量によりか、湿潤重量または乾燥重量によるか、またはモルパーセントまたはモル画分による)が目的とする化合物である時に実質的に純粋である。純度は任意の適当な方法、例えばポリペプチドの場合はカラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動またはHPLC分析により測定することができる。化合物、例えばタンパク質も、それが自然に付随する成分を本質的に含まない時、あるいはそれが自然な状態で付随する天然の混入物から分離されている時に実質的に精製されている。
【0091】
本明細書で使用する「実質的に純粋な核酸」は、それを自然に存在する状態で挟んでいる配列から精製された核酸配列、セグメントまたはフラグメント、例えば通常、フラグメントに隣接する配列、例えばDNAが自然に存在するゲノム中のフラグメントに隣接する配列から取り出されたDNAフラグメントを称する。この用語はまた、自然に核酸に付随する他の成分、例えば細胞中で核酸に自然に付随するRNAまたはDNAまたはタンパク質から実質的に精製された核酸にも適用する
「予防的」処置とは、疾患に関係する病状を発症する危険性を下げる目的で、疾患の兆候を表さないか、または疾患の初期の兆候のみを現す個体に投与する処置である。
【0092】
「治療的」処置とは、病状の兆候を下げるか、または排除する目的で、病状の兆候を現す個体に投与する処置である。
【0093】
「治療に効果的な量」の化合物は、化合物を投与する個体に有益な効果を提供するために十分な化合物の量である。「ベクター」は単離された核酸を含んで成り、そして単離された核酸を細胞内部に送達するために使用することができる物質の組成物である。多数のベクターが当該技術分野では知られており、それらには限定するわけではないが、直線状ポリヌクレオチド、イオン性または両イオン性化合物を付随するポリヌクレオチド、プラスミドおよびウイルスが含まれる。すなわち用語「ベクター」には、自律複製プラスミドまたはウイルスを含む。この用語は、例えばポリリシン化合物、リポソーム等のような核酸を細胞に移し易くする非プラスミドおよび非ウイルス化合物も含むと解釈されるべきである。ウイルスベクターの例には、限定するわけではないがアデノウイルスベクター、アデノ−随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター等を含む。
【0094】
「発現ベクター」には、発現するヌクレオチド配列に操作可能に連結された発現制御配列を含んで成る組換え体ポリヌクレオチドを含んで成るベクターを称する。発現ベクターは発現に関して十分にシスに作用する要素を含んで成り;発現に関する他の要素は宿主細胞またはインビトロ発現系により供給することができる。発現ベクターには、コスミド、プラスミド(例えば裸の、またはリポソームに含まれた)、および組換え体ポリヌクレオチドに組み込まれたウイルスのような当該技術分野で既知のこれらすべてを含む。
ペプチドの修飾および合成
以下の章はペプチドの修飾およびそれらの合成に関する。もちろん本発明の方法に有用なペプチドは活性に影響することなく修飾されたアミノ酸残基を包含してよい。例えば末端はブロッキング基、すなわちN−およびC−末端を「望ましくない分解」(この用語は、化合物の機能に影響を及ぼす可能性がある化合物のその末端での任意の種類の酵素的、化学的または生化学的分解、すなわち化合物のそれらの末端での連続分解を包含することを意味する)から保護し、かつ/または安定化するために適当な化学的置換基を含むように誘導化することができる。
【0095】
ブロッキング基には、ペプチドのインビボ活性に悪い影響を及ぼさないペプチド化学の分野で通常に使用されている保護基を含む。例えば適当なN−末端ブロッキング基は、N−末端のアルキル化またはアシル化により導入することができる。適当なN−末端ブロッキング基の例には、C1−C5分枝または非分枝アルキル基、ホルミルおよびアセチル基のようなアシル基、ならびにアセトアミドメチル(Acm)基のようなそれらの置換形を含む。アミノ酸のデスアミノ同族体も有用なN−末端ブロッキング基であり、そしてペプチドのN−末端にカップリングするか、またはN−末端残基の代わりに使用することができる。C−末端のカルボキシル基が含まれているか、またはいないいずれかの適当なC−末端ブロッキング基には、エステル、ケトンまたはアミドを含む。エステルまたはケトンを形成するアルキル基、特にメチル、エチルおよびプロピルのような低級アルキル基、および1級アミン(−NH2)のようなアミドを形成するアミノ基、およびメチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルエチルアミノ等のようなモノ−およびジ−アルキルアミノ基は、C−末端ブロッキング基の例である。アグマチン(agmatine)のようなデスカルボキシル化アミノ酸同族体も有用なC−末端ブロッキング基であり、そしてペプチドのC−末端残基にカップリングするか、またはそれに代えて使用することができる。さらに末端の遊離アミノおよびカルボキシル基をペプチドから一緒に除去して、ペプチドの活性に影響を及ぼさずにそれらのデスアミノおよびデスカルボキシル化形態を得ることができると考えられる。
【0096】
他の修飾もペプチドの生物活性に悪い影響を及ぼさずに包含することができ、これらには限定するわけではないが、1以上の自然なL−異性体のアミノ酸をD−異性体のアミノ酸に置換することを含む。すなわちペプチドは1以上のD−アミノ酸残基を含んでもよく、あるいはすべてがD−形であるアミノ酸を含んで成ってもよい。本発明によるペプチドのレトロ−インベルソ形、例えばすべてのアミノ酸がD−アミノ酸形に置換された逆転ペプチドも意図する。
【0097】
本発明の酸付加塩は、機能的均等物と意図する。すなわち本発明のペプチドは、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、または酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、蓚酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、シンナミン、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸等のような有機酸で処理して、本発明の方法での使用に適するペプチドの水溶性塩を提供する。
【0098】
本発明はまた、本明細書に開示する核酸によりコードされるタンパク質またはペプチドの同族体を提供する。同族体は、保存的アミノ酸配列の差異により、または配列に影響しない修飾により、または両方により自然に存在するタンパク質またはペプチドとは異なることができる。
【0099】
例えば保存的アミノ酸の変化を行うことができ、これはタンパク質またはペプチドの1次配列を改変するが、通常その機能は改変しない。保存的アミノ酸置換は、典型的には以下の群内の置換を含む:
グリシン、アラニン;
バリン、イソロイシン、ロイシン;
アスパラギン酸、グルタミン酸;
アスパラギン、グルタミン;
セリン、トレオニン;
リシン、アルギニン;
フェニルアラニン、チロシン。
【0100】
上記のように、修飾(通常は1次配列を改変しない)は、ポリペプチドのインビボまたはインビトロの化学的誘導化、例えばアセチル化またはカルボキシル化を含む。またグリコシレーションの修飾、例えばポリペプチドの合成およびプロセッシングまたはさらなるプロセッシング工程中にグリコシル化パターンを修飾することにより作られるもの;例えばポリペプチドをグリコシル化に影響を及ぼす酵素(例えば哺乳動物のグリコシル化または脱グリコシル化酵素)に暴露することによるものを含む。またリン酸化アミノ酸残基、例えばホスホチロシン、ホスホセリンまたはホスホトレオニンを有する配列も含む。
【0101】
また、タンパク質溶解的分解に対するそれらの耐性を改善するために、または溶解性を至適化するために、または治療薬としてより適するようにするために、通例の分子生物学的技法を使用して修飾したポリペプチドを含む。そのようなポリペプチドの同族体には、自然に存在するL−アミノ酸以外の残基、例えばD−アミノ酸または自然には存在しない合成アミノ酸を含有するものを含む。本発明のペプチドは本明細書に記載する具体的な例示法の生成物に限定されない。
【0102】
本発明のペプチドは、Stewart et alにより固相ペプチド合成(Solid Phase Peptide Synthesis)、第2版、1984、ピアス化学社(Pierce Chemical Company)、ロックフォード、イリノイ州に記載されているように;およびBondanszky and Bondanszkyによりペプチド合成の実際(The Practice of Peptide Synthesis)、1984、スプリンガー出版、ニューヨークに記載されているように、標準的な十分に確立された固相ペプチド合成(SPPS)により容易に調製することができる。最初に、適当に保護されたアミノ酸残基を、そのカルボキシル基を通して架橋結合したポリスチレンまたはポリアミド樹脂のような誘導化された不溶性のポリマー性支持体に付ける。「適当に保護された」とは、アミノ酸のα−アミノ基上の、および任意の側鎖官能基上の両方の保護基の存在を言う。側鎖保護基は一般に合成を通じて使用する溶媒、試薬および反応条件に対して安定であり、そして最終的なペプチド生成物に影響を与えない条件下で除去することが可能である。オリゴペプチドの段階的合成は、最初のアミノ酸からN−保護基の除去により行い、そしてそれに所望するペプチドの配列中の次のアミノ酸のカルボキシル末端をカップリングさせる。このアミノ酸も適当に保護される。入って来るアミノ酸のカルボキシルを活性化し、支持体に結合しているアミノ酸のN−末端と、カルボジイミド、対称酸無水物またはヒドロキシベンゾトリアゾールまたはペンタフルオロフェニルエステルのような「活性エステル」基の形成のような反応性基の形成により反応させることができる。
【0103】
固相ペプチド合成法の例には、α−アミノ保護基としてtert−ブトキシカルボニルを利用するBOC法、およびアミノ酸残基のα−アミノを保護するために9−フルオレニルメチルオキシカルボニルを利用するFMOC法を含み、その両方法が当業者には周知である。
【0104】
N−および/またはC−ブロッキング基の取り込みは、固相ペプチド合成法に通例なプロトコールを使用して行うこともできる。C−末端ブロッキング基を取り込むためには、例えば所望のペプチド合成を典型的には固相として、樹脂からの開裂が所望のC−末端ブロッキング基を有するペプチドを生じるように、化学的に修飾された支持体樹脂を使用して行う。C−末端が1級アミノブロッキング基を持つペプチドを提供するために、例えば合成はp−メチルベンズヒドリルアミン(MBHA)樹脂を使用して、ペプチド合成が終了した時、塩酸を用いた処理により所望するC−末端がアミド化されたペプチドを放出するように行う。同様にC−末端でのN−メチルアミンブロッキング基の取り込みは、N−メチルアミノエチル−誘導化DVB、HF処理でN−メチルアミド化C−末端を持つペプチドを放出する樹脂を使用して行う。エステル化によるC−末端のブロッキングも、通例の手順を使用して達成することができる。これにより樹脂から側鎖ペプチドの放出を可能とする樹脂/ブロッキング基の組み合わせの使用を伴い、引き続き所望するアルコールを用いた処理でエステル官能基の形成を可能とする。メトキシアルコキシベンジルアルコールまたは均等なリンカーで誘導化されたDVB樹脂と組み合わせたFMOC保護基をこの目的に使用することができ、支持体からの開裂はジクロロメタン中のTFAにより行う。適当に活性化されたカルボキシル官能基の例えばDCCを用いたエステル化は、所望のアルコールの添加、続いて脱保護、そしてエステル化ペプチド生成物の単離により進めることができる。
【0105】
N−末端ブロッキング基の取り込みは、例えば適当な無水物およびニトリルを用いた処理により合成するペプチドが樹脂に付いている間に行うことができる。例えばN−末端にアセチルブロッキング基を取り込むために、樹脂にカップリングしたペプチドをアセトニトリル中の20%無水酢酸で処置することができる。N−ブロッキングしたペプチド生成物は次に樹脂から開裂し、脱保護し、そして引き続いて単離することができる。
【0106】
化学的または生物学的合成法のいずれかから得たペプチドが所望するペプチドであることを確認するために、ペプチド組成の分析を行うべきである。そのようなアミノ酸組成分析は高解像マススペクトロメトリーを使用して行い、ペプチドの分子量を決定することができる。あるいは、または加えて、ペプチドのアミノ酸含量を水性の酸中でペプチドを加水分解し、そして分離し、同定し、そしてHPLCを使用して、あるいはアミノ酸分析機使用して混合物の成分を定量することにより確認することができる。ペプチドを連続的に分解し、そして順序正しくアミノ酸を同定するタンパク質シークエネーターも、ペプチド中の配列を明らかに定めるために使用することができる。
【0107】
本発明の方法で使用する前に、ペプチドは精製して混入物を除去する。これに関して、ペプチドは適切な管理会社により設定された標準に合うように精製されると思われる。多数の通例の精製手順の1つを使用して、必要な純度のレベルに達することができ、それらの方法には例えばC4−、C8−またはC18−シリカのようなアルキル化シリカカラムを使用する逆相高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)を含む。有機含量を上げる勾配移動相、例えば通常は少量のトリフルオロ酢酸を含有する水性バッファー中のアセトニトリルを一般に精製に使用する。イオン−交換クロマトグラフィーもそれらの電荷に基づきペプチドを分離するために使用することができる。
医薬組成物
本明細書に記載する任意の方法を使用して同定される化合物は配合され、そして本明細書に開示する疾患の処置に哺乳動物に投与することができることを今、記載する。
【0108】
本発明は、有効成分として本発明の方法に有用な化合物を含んで成る医薬組成物の調製および使用を包含する。そのような医薬組成物は個体に投与するための適当な形態中に有効成分単独で成るか、または医薬組成物は有効成分および1以上の医薬的に許容されるキャリアー、1以上のさらなる成分、またはこれらの組み合わせを含んで成ることができる。有効成分は当該技術分野で周知であるように、生理学的に許容されるカチオンまたはアニオンと組み合わせるような、生理学的に許容されるエステルまたは塩の状態で医薬組成物中に存在することができる。
【0109】
本明細書で使用するように用語「医薬的に許容されるキャリアー」とは、有効成分と組み合わせられ、そして組み合わせた後に個体に有効成分を投与するために使用することができる化学組成物を意味する。
【0110】
本明細書で使用するように用語「生理学的に許容される」エステルまたは塩とは、医薬組成物中の他の成分と適合性がある有効成分のエステルまたは塩の状態を意味し、これは組成物が投与される個体に対して有害ではない。
【0111】
本明細書に記載する医薬組成物の製剤は薬理学の分野で既知の、またはこれから開発される任意の方法により調製することができる。一般にそのような調製法には、有効成分をキャリアーまたは1以上の他の補助成分と合わせ、そして次いで必要または望む場合は、生成物を所望の単−または多−投薬用量単位に成形または包装する工程を含む。
【0112】
本明細書で提供される医薬組成物の記載は、原理的にはヒトに医師の処方に基づき投与するために適する医薬組成物を対象とするが、当業者はそのような組成物がすべての種類の動物への投与に一般に適当であると理解するだろう。組成物を種々の動物への投与に適するようにするために、ヒトへの投与に適する医薬組成物の修飾は十分に理解されており、そして標準的な技術を持つ獣医薬理学者は、必要ならば実験を行い、単に日常的なそのような修飾を計画し、そして行うことができる。本発明の医薬組成物の投与が意図される個体は、限定するわけではないが、ヒトおよび他の霊長類、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ネコおよびイヌのような商業的に意味のある哺乳動物、ニワトリ、アヒル、ガチョウおよび七面鳥を含む商業的に意味のある鳥である。
【0113】
本発明の方法に有用な医薬組成物は、経口、直腸、膣、非経口、肺、鼻内、頬面、目内、気管内または投与の他の経路に適する形態に調製、包装、そして販売することができる。他の意図する製剤には、放出される(projected)ナノ粒子、リポソーム調製物、有効成分を含有する再封(resealed)赤血球、および免疫学に基づく製剤を含む。
【0114】
本発明の医薬組成物は、単位投薬用量として、または複数の単位投薬用量として調製、包装、またはバルクで販売されることができる。本明細書で使用する「単位投薬用量」とは、予め定めた量の有効成分を含んで成る医薬組成物の別個の量である。有効成分の量は一般に、個体に投与される有効成分の投薬用量に等しいか、あるいは例えばそのような投薬用量の半分または3分の1のような投薬用量の便利な画分である。
【0115】
本発明の医薬組成物中の有効成分、医薬的に許容されるキャリアーおよびさらなる成分の相対的量は、処置する個体の同一性、サイズ、および状態に依存して、およびさらに組成物が投与される経路に依存して変動するだろう。例として組成物は0.1%から100(重量/重量)%の間の有効成分を含んで成ることができる。
【0116】
有効成分に加えて、本発明の医薬組成物はさらに1以上の付加的な医薬的に活性な作用物質を含んで成ることができる。特に意図する付加的な作用物質にはシアニドおよびシアネートスカベンジャーのような制吐薬およびスカベンジャーを含む。
【0117】
本発明の医薬組成物の制御された、または徐放性の製剤は、通例の技法を使用して作ることができる。
【0118】
経口投与に適する本発明の医薬組成物の製剤は、限定するわけではないが各々が予め定めた量の有効成分を含有する錠剤、硬質または軟質カプセル、カシェ剤、トローチまたはロゼンジを含む別々の固体の用量単位の状態で調製、包装または販売されることができる。経口投与に適する他の製剤は、限定するわけではないが粉末化または粒状製剤、水性または油性懸濁液、水性または油性溶液または乳液を含む。
【0119】
本明細書で使用するように、「油性」液体は炭素を含有する液体分子を含んで成り、そして水よりも低い極性を現すものである。
【0120】
有効成分を含んで成る錠剤は、例えば場合により1以上のさらなる成分と共に有効成分を圧縮または成型することにより作ることができる。圧縮錠剤は、適当なデバイス中で、場合により1以上の結合剤、潤滑剤、賦形剤、表面活性剤および分散剤と混合した粉末または粒状調製物のような自由に流動する状態で有効成分を圧縮することにより調製できる。成型された錠剤は、適当なデバイス中で有効成分、医薬的に許容されるキャリアーおよび混合物を湿らせるために少なくとも十分な液体の混合物を成型することにより作ることができる。錠剤の製造に使用する医薬的に許容される賦形剤には、限定するわけではないが、不活性希釈剤、造粒および崩壊剤、結合剤、および潤滑剤を含む。既知の分散剤には限定するわけでないが、ジャガイモ澱粉およびグリコール酸ナトリウム澱粉を含む。既知の表面活性剤には限定するわけではないが、ラウリル硫酸ナトリウムを含む。既知の希釈剤には限定するわけではないが、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、微晶質セルロース、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウムおよびリン酸ナトリウムを含む。既知の造粒および崩壊剤は限定するわけではないが、トウモロコシ澱粉およびアルギン酸を含む。既知の結合剤には限定するわけではないが、ゼラチン、アカシア、前−ゼラチン化トウモロコシ澱粉、ポリビニルピロリドンおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む。既知の潤滑剤には限定するわけではないが、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、シリカおよびタルクを含む。
【0121】
錠剤は非コートでもよく、あるいは既知の方法を使用してコートして個体の胃腸管での崩壊を遅らせ、これにより徐放性および有効成分の吸収を提供することができる。例としてモノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルのような材料を錠剤にコートするために使用することができる。さらなる例として、錠剤は米国特許第4,256,108号;同第4,160,452号;および同第4,265,874号明細書に記載されている方法を使用してコートして、浸透的に制御された放出錠剤を形成してもよい。錠剤は医薬的に洗練され、そして口に合う調製物を提供するために、さらに甘味料、香料、着色剤、保存剤、またはこれらの幾つかの組み合わせを含んで成ることができる。
【0122】
有効成分を含んで成る硬質カプセルは、ゼラチンのような生理学的に分解可能な組成物を使用して作ることができる。そのような硬質カプセルは有効成分を含んで成り、そしてさらに例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリンのような不活性な固体希釈剤を含む付加的な成分を含んで成ることができる。
【0123】
有効成分を含んで成る軟質ゼラチンカプセルは、ゼラチンのような生理学的に分解可能な組成物を使用して作ることができる。そのような軟質カプセルは有効成分を含んで成り、これは水またはピーナッツ油、液体パラフィンまたはオリーブ油のような油媒質と混合してもよい。
【0124】
経口投与に適する本発明の医薬組成物の液体製剤は、液体状態で、または使用前に水もしくは別の適当な賦形剤を用いて再構成することを意図した乾燥生成物の状態で調製、包装、そして販売され得る。
【0125】
液体懸濁液は、水性または油性賦形剤中に有効成分の懸濁液を作成するための通例の方法を使用して調製することができる。水性賦形剤には、例えば水および等張性塩溶液を含む。油性賦形剤には、例えばアーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、落花生、オリーブ、ゴマのような植物油、またはヤシ油、分画した植物油、および液体パラフィンのような鉱物油を含む。液体懸濁液はさらに、限定するわけではないが沈殿防止剤、分散剤または湿潤剤、乳化剤、粘滑剤、保存剤、バッファー、塩、香料、着色剤、および甘味料を含む1以上の付加的成分を含んで成ることができる。油性懸濁液はさらに、増粘剤を含んでもよい。既知の沈殿防止剤には限定するわけではないが、スルビトールシロップ、水素化可食性脂肪、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、アカシアゴム、およびカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースのようなセルロース誘導体を含む。既知の分散剤または湿潤剤は限定するわけではないが、レシチンのような自然に存在するホスファチド、アルキレンオキシドと脂肪酸と、長鎖脂肪族アルコールと、脂肪酸およびヘキシトールに由来する部分的エステルと、または脂肪酸および無水ヘキシトールに由来する部分エステルとの縮合生成物(例えば、それぞれポリオキシエチレンステアレート、ヘプタデカエチレンオキシセタノール、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレート、およびポリオキシエチレンソルビタンモノオレート)を含む。既知の乳化剤には限定するわけではないが、レシチンおよびアカシアを含む。既知の保存剤には限定するわけではないが、メチル、エチルまたはn−プロピル−パラ−ヒドロキシベンゾエート、アスコルビン酸およびソルビン酸を含む。既知の甘味料には、例えばグリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、シュクロースおよびサッカリンを含む。油性懸濁液用の既知の増粘剤には、例えば蜜蝋、硬質パラフィンおよびセチルアルコールを含む。
【0126】
水性または油性溶媒中の有効成分の液体溶液は、実質的には液体懸濁液と同じ様式で調製できるが、主な差異は有効成分が溶媒中に懸濁しているというより溶解している点である。本発明の医薬組成物の液体溶液は、液体懸濁液に関して記載した各成分を含んで成ることができ、沈殿防止剤は溶媒に有効成分を溶解する目的には必要ないと考えられる。水性溶媒は、例えば水および等張性塩溶液を含む。油性溶媒には、例えばアーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、落花生、オリーブ、ゴマのような植物性油、またはヤシ油、分画した植物油、および液体パラフィンのような鉱物油を含む。
【0127】
本発明の医薬調製物の粉末化および粒状製剤は、既知の方法を使用して調製することができる。そのような製剤は、例えば錠剤を形成するために、カプセルを充填するために、または水性もしくは油性賦形剤を加えることにより水性もしくは油性懸濁液または溶液を調製するために使用して個体に直接投与することができる。これらの製剤の各々はさらに、1以上の分散または湿潤剤、沈殿防止剤および保存剤を含んで成ってもよい。増量剤および甘味剤、香料または着色剤のようなさらなる賦形剤もこれらの製剤に含むことができる。
【0128】
本発明の医薬組成物は、水中油型の乳液または油中水型の乳液の状態で調製、包装または販売することもできる。油相はオリーブ油または落花生油のような植物性油、液体パラフィンのような鉱物油、あるいはこれらの組み合わせでよい。そのような組成物はさらに、アカシアゴムまたはトラガカントガムのような自然に存在するゴム、ダイズまたはレシチンホスファチドのような自然に存在するホスファチド、ソルビタンモノオレートのような脂肪酸と無水ヘキシトールの組み合わせに由来するエステルまたは部分エステル、およびポリオキシエチレンソルビタンモノオレートのようなそのような部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物のような、1以上の乳化剤をさらに含んで成ることができる。これらの乳液はまた、例えば甘味剤または香料のような付加的成分を含んでもよい。
【0129】
本発明の医薬組成物は、直腸投与に適する製剤に調製し、包装し、そして販売することができる。そのような組成物は、例えば座薬、停留浣腸調製物および直腸または結腸潅注用の溶液の状態でよい。
【0130】
座薬製剤は、有効成分を通常の室温(すなわち約20℃)で固体であり、そして個体の直腸内温度(すなわち健康なヒトでは約37℃)で液体である非炎症性の医薬的に許容される賦形剤と合わせることにより作成できる。適当な医薬的に許容される賦形剤には、限定するわけではないが、カカオ脂、ポリエチレングリコール、および種々のグリセリドを含む。座薬製剤は限定するわけではないが、酸化防止および保存剤を含む種々の付加的成分をさらに含んで成ることができる。
【0131】
直腸または結腸潅注用の停留浣腸調製物または溶液は、有効成分を医薬的に許容される液体キャリアーと合わせることにより作成できる。当該技術分野で周知なように、浣腸調製物は個体の直腸構造に合わせた送達デバイスを使用して投与され、そしてその中に包装されることができる。浣腸調製物は限定するわけではないが酸化防止剤および保存剤を含む種々の付加的成分をさらに含んで成ることができる。
【0132】
本発明の医薬組成物は、膣投与用に適する製剤の状態で調製、包装または発売することができる。そのような組成物は例えば座薬、含浸またはコートしたタンポンのような膣に挿入可能な材料、膣洗浄用調製物、またはゲルもしくはクリームもしくは膣潅注用の溶液のような状態であることができる。
【0133】
化学組成物で材料を含浸またはコートする方法は当該技術分野では既知であり、そして限定するわけではないが化学組成物を表面に沈積または結合させる方法、化学組成物を材料の合成中に材料の構造に取り込む方法(すなわち、生理学的に分解可能な材料を用いるような)、および水性もしくは油性溶液または懸濁液を吸収材料に吸収させ、その後に乾燥させるか、またはさせない方法を含む。
【0134】
膣内潅注のための膣洗浄用調製物または溶液は、有効成分を医薬的に許容される液体キャリアーと合わせることにより作成できる。当該技術分野で周知なように、膣洗浄用調製物は個体の膣の構造に合わせた送達デバイスを使用して投与され、そしてその中に包装されることができる。膣洗浄用調製物は限定するわけではないが酸化防止剤、抗生物質、抗真菌剤および保存剤を含む種々の付加的成分をさらに含んで成ることができる。
【0135】
本明細書で使用する医薬組成物の「非経口投与」には、個体の組織の物理的裂け目を特徴とする投与、および組織中の裂け目を通す医薬組成物の投与の任意の経路を含む。このような非経口投与には、限定するわけではないが組成物の注射による、外科的創傷を通す組成物の適用による、組織を浸透する非外科的創傷を通す組成物の適用による医薬組成物の投与等を含む。特に非経口投与には、限定するわけではないが皮下、腹腔、筋肉内、胸骨内注射、および腎臓透析注入法を含む。
【0136】
非経口投与に適する医薬組成物の製剤は、滅菌水または滅菌等張塩溶液のような医薬的に許容されるキャリアーと合わせた有効成分を含んで成る。そのような製剤は、ボーラス投与または連続投与に適する状態で調製、包装または販売することができる。注射可能な製剤は、保存剤を含有するアンプルまたは多回用量容器のような単位剤形で調製、包装または販売することができる。非経口投与用製剤は、限定するわけでないが懸濁液、溶液、油性または水性賦形剤中の乳液、ペースト、および移植可能な徐放性または生分解性製剤を含む。そのような製剤は、限定するわけでないが沈殿防止剤、安定化剤または分散剤を含む1以上の付加的成分をさらに含んでよい。非経口投与用の製剤の1つの態様では、有効成分は再構成された組成物の非経口投与前に、適当な賦形剤(例えば滅菌された発熱物質を含まない水)で再構成するための乾燥状(すなわち粉末または粒状)で提供される。
【0137】
医薬組成物は、滅菌された注射可能な水性または油性懸濁液または溶液の状態で調製され、包装され、そして販売されることができる。この懸濁液または溶液は既知の技術に従い配合され、そして有効成分に加えて本明細書に記載する分散剤、湿潤剤、または沈殿防止剤を含んで成ることができる。そのような滅菌された注射可能な製剤は、例えば水または1,3−ブタンジオールのような非毒性の非経口的に許容されうる希釈剤または溶媒を使用して調製することができる。他の許容できる希釈剤および溶媒には、限定するわけではないがリンゲル溶液、等張塩化ナトリウム溶液および合成モノ−またはジ−グリセリドのような固定油を含む。有用である他の投与可能な製剤には、微晶質状中に、リポソーム調製物中に、あるいは生分解性ポリマー系の成分として有効成分を含んで成るものを含む。徐放性または移植用の組成物には、乳液、イオン交換樹脂、溶解性が乏しいポリマー、または溶解性が乏しい塩のような医薬的に許容されるポリマー性または疎水性材料を含んで良い。
【0138】
局所投与に適する製剤には、限定するわけでないがクリーム、軟膏またはペーストのようなリニメント、ローション、水中油型または油中水乳液のような液体または半−液体調製物、および溶液または懸濁液を含む。局所的に投与可能な製剤は、例えば約1%〜約10(重量/重量)%の有効成分を含んで成ることができるが、有効成分の濃度は溶媒中の有効成分の溶解度の限界の高さでよい。局所投与用の製剤は、本明細書に記載するさらに1以上の付加的成分を含んで成ることができる。
【0139】
本発明の医薬組成物は、頬面窩洞を介する肺への投与に適する製剤に調製、包装または販売することができる。そのような製剤は有効成分を含んで成り、そして約0.5〜約7ナノメートル、そして好ましくは約1〜約6ナノメートルの範囲の直径を有する乾燥粒子を含んで成ることができる。そのような組成物は、推薬流を粉末を分散させるために向ける乾燥粉末リザーバーを含んで成るデバイスを使用するか、あるいは密閉容器中の低沸点推薬に溶解または懸濁した有効成分を含んで成るデバイスのような自己−推進溶媒/粉末−分散容器を使用した、投与に都合良い乾燥粉末状であることができる。好ましくはそのような粉末は、少なくとも粒子の95重量%が0.5ナノメートルの直径よりも大きく、そして少なくとも粒子数の95%が7ナノメートル未満の直径を有する。より好ましくは少なくとも粒子の95重量%が1ナノメートルの直径よりも大きく、そして少なくとも粒子数の90%が6ナノメートル未満の直径を有する。乾燥粉末組成物は、好ましくは糖のような微細な固体の粉末希釈剤を含み、そして単位剤形で都合よく提供される。
【0140】
低沸点の推薬には一般に、大気圧下で65゜F未満の沸点を有する液体推薬を含む。一般に推薬は組成物の50〜99.9(重量/重量)%を構成することができ、そして有効成分は組成物の0.1〜20(重量/重量)%を構成することができる。推薬はさらに液体の非イオン性または固体のアニオン性表面活性剤または固体希釈剤(好ましくは有効成分を含んで成る粒子と同じ次元の粒子サイズを有する)のような付加的成分を含んで成ることができる。
【0141】
肺へ送達するために配合される本発明の医薬組成物も、溶液または懸濁液の液滴の状の有効成分を提供することができる。そのような製剤は有効成分を含んで成る場合によっては滅菌された水性または希釈アルコール溶液または懸濁液として調製、包装または販売されることができ、そして噴霧化または微塵化デバイスを使用して都合よく投与することができる。そのような製剤はさらに、限定するわけでないがサッカリンナトリウムのような香料、揮発性油、緩衝剤、表面活性剤またはメチルヒドロキシベンゾエートのような保存剤を含む1以上の付加的成分を含んで成ることができる。この投与経路により提供される液滴は、好ましくは約0.1〜約200ナノメートルの範囲の平均直径を有する。
【0142】
本明細書で肺への送達に有用であると記載する製剤は、本発明の医薬組成物の鼻内送達にも有用である。
【0143】
鼻内投与に適する別の製剤は、有効成分を含んで成り、そして約0.2〜500マイクロメートルの平均粒子を有する粗い粉末である。そのような製剤は鼻からかぐ様式で、すなわち鼻孔付近に保持された粉末の容器から鼻の通路を通す迅速な吸入により投与される。
【0144】
鼻からの投与に適する製剤は、例えば有効成分をわずか約0.1(重量/重量)%から、100(重量/重量)%までも含んで成ることができ、そしてさらに本明細書に記載する1以上の付加的な成分を含んでもよい。
【0145】
本発明の医薬組成物は、バッカル投与に適する製剤で調製、包装または販売することができる。そのような製剤は、常法を使用して作成することができる錠剤またはトローチ状であることができ、そして例えば0.1〜20(重量/重量)%の有効成分、経口で溶解または分解可能な組成物を含んで成るバランス、および場合により本明細書に記載した1以上の付加的成分を含んで成る。あるいはバッカル投与に適する製剤は、有効成分を含んで成る粉末またはエアゾール化もしくは微塵化した溶液もしくは懸濁液を含んで成ることもできる。そのような粉末化、エアゾール化またはエアゾール化した製剤は分配した時に、好ましくは約0.1から約200ナノメートルの範囲の平均粒子または液滴サイズを有し、そしてさらに本明細書に記載する1以上の付加的な成分を含んでもよい。
【0146】
本発明の医薬組成物は、眼内投与に適する製剤で調製、包装または販売することができる。そのような製剤は例えば水性または油性液体キャリアー中に有効成分の0.1〜1.0(重量/重量)%溶液または懸濁液を含む点眼薬の状態でよい。そのような液滴はさらに、緩衝剤、塩または本明細書に記載する1以上の他の付加的な成分を含んでもよい。有用である他の眼内に投与可能な製剤には、微晶質形またはリポソーム調製物中に有効成分を含んで成るものを含む。
【0147】
本明細書で使用するように、「付加的な成分」には限定するわけでないが、1以上の以下の成分を含む:賦形剤;表面活性剤;分散剤;不活性希釈剤;造粒剤および崩壊剤;結合剤;潤滑剤;甘味剤;香料;着色剤;保存剤;ゼラチンのような生理学的に分解可能な組成物;水性賦形剤および溶媒;油性賦形剤および溶媒;沈殿防止剤;分散および湿潤剤;乳化剤;粘滑剤;バッファー;塩;増粘剤;増量剤;乳化剤;酸化防止剤;抗生物質;抗真菌剤;安定化剤;および医薬的に許容されるポリマー性または疎水性材料。本発明の医薬組成物に含むことができる他の「付加的な成分」は、当該技術分野では既知であり、そして例えばGenaro編集、1985、シミングトンの製薬科学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)、マック(Mack)出版社、イーストン、ペンシルベニア州に記載され、これは引用により本明細書に編入する。
【0148】
PEDFを含んで成る徐放性組成物も特に有用となり得る。例えば徐放性組成物は目の硝子体に使用することができ、そしてまた目の後ろに使用することもできる。本明細書のいたることろで記載するように、徐放性組成物はPEDFを投与するために全身性または他の送達経路にも有用であり得る。当業者は、望ましい結果を達成するために所望の疾患を処置するために使用することができる適切な徐放性組成物を知っている。
【0149】
典型的には動物、好ましくはヒトに投与することができる本発明の組成物の投薬用量は、動物の体重1kgあたり1μg〜約100gの量の範囲である。投与する正確な投薬用量は、限定するわけでないが動物の種類および処置する疾患状態の種類、動物の年齢および投与経路を含む多数の種々の因子に依存して変動するだろう。好ましくは化合物の投薬用量は、動物の体重1kgあたり約1mg〜約10gで変動するだろう。より好ましくは投薬用量は動物の体重1kgあたり約10mg〜約1gで変動するだろう。
【0150】
化合物は動物に毎日、数回の頻度で投与することができ、あるいは化合物は1日1回、1週間に1回、2週間毎に1回、1月に1回、または数ケ月に1回または1年に1回未満のようなさらに少ない頻度で投与することもできる。投薬の頻度は当業者には容易に明らかであり、そして限定するわけでないが処置する疾患の種類および重篤度、動物の種類および年齢等のような任意の数の因子に依存するだろう。
【0151】
【実施例】
実施例
ここで本発明を以下の実施例を参照にして記載する。これらの実施例は具体的説明の目的のみに提供され、そして本発明がこれらの実施例に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ本明細書に提供される技法の結果として明らかとなる任意の、そしてすべての変更を包含すると解釈するべきである。
【0152】
細胞培養、タンパク質およびDNAの操作等のようなこれらの実施例で使用する手法は、当該技術分野では周知である(一般にSambrook et al.,同上を参照にされたい)。したがって簡潔にするために、実験プロトコールは詳細に記載しない。
実施例1
ここに記載するデータは、PEDFが内皮細胞の移動を防止することを示す。
【0153】
様々な血管内皮細胞型の移動は、PEDFを培養した内皮細胞、特にウシの腎近傍毛細管、ヒトの臍帯およびヒトの皮膚の微小血管組織から単離した内皮細胞に加えることにより測定した。
【0154】
細胞は、逆転させて改良したBoydenチャンバー中のゼラチンで固めたNucleopore膜(ウシの毛細管細胞には5μm孔、そして他の細胞には8μm孔)上にまいた。2時間後、チャンバーを再度逆転させ、そして試験物質を各ウェルの上に加えた。具体的には群を培養基のみ(対照)、10ng/ml bFGF、2nM PEDF(完全長PEDF)、または10ng/ml bFGF(塩基性繊維芽細胞増殖因子)および10nMPEDFの両方のいずれかに暴露した。次いで細胞は3〜4時間移動できるようにした。この後に膜を固定し、そして染色し、そして移動した細胞数を計数した。
【0155】
アッセイの結果は、最大移動のパーセントとして図1に与える(誤差棒は、標準誤差測定を表す、n=4)。示すように、血管内皮細胞の3種類の型のすべてがbFGFの存在下でほぼ100%の移動を表した。しかしPEDFの存在下では、かなり少ない移動が観察された。これらの結果はPEDFが内皮細胞の移動を阻害することを示す。これらの結果は、PEDFタンパク質が培養した網膜芽腫細胞のニューロン分化を誘導し、小脳顆粒細胞の神経栄養因子およびグリア細胞の細胞分裂抑制因子になることを仮定すると、驚くことである(Taniwaki et al.,1997,J.Neurochem.68:26−32;Sugita et al.,1997,J.Neiuosci.Res.49:710−718;Tombran−Tink et al.,1991,Exp.Eye Res.53:411−414;Becerra,1997,PEDFに関する構造−機能研究(Structre−Function Studies on PEDF)、第21章、セルピンの化学および生物学で(Chemistry and Biology of Serpins)、Church et al.、編集、プレナム(Plenum)出版)。
実施例2
ここに与えるデータは、PEDFによる細胞移動の防止が内皮細胞に特異的であることを示す。
【0156】
PEDFが繊維芽細胞または平滑筋の移動を防止する能力を、ヒトの二倍体繊維芽細胞系WI−38、ヒトの包皮繊維芽細胞、血管平滑筋、および正常なヒトの好中球から得た細胞を使用して試験した。
【0157】
アッセイは実施例1に示したように行ったが、PEDFの用量を0.01nM〜約50nMに変動させ、そして移動アッセイは逆転チャンバー無しで行った。さらに移動のインデューサーは細胞の型により変動させた(IL−8は1μg/mlで使用し、そしてPEDFは250pg/mlで使用した)。
【0158】
この実験の結果は図2A−2Dに与える。これらの図で示すように、PEDFはいかなる細胞系の移動も阻害しなかった。この結果はPEDFの抗移動活性が血管内皮細胞に特異的であることを示す。
実施例3
ここに与えるデータは、PEDFが他の抗新脈管形成因子と比べた時に、内皮細胞移動の最も有力な阻害物質であることを示す。
【0159】
実施例1に概説したプロトコールに準じて、ウシの腎近傍毛細管内皮細胞をbFGF、PEDFおよび幾つかの既知の抗新脈管形成因子に暴露した。50%の移動を達成するために必要な上記因子の量を測定し、そしてED50として報告する。より小さいED50測定値はより有力な抗新脈管形成因子を示す。表1に示すこの実験の結果は、PEDFが高度に有力な抗新脈管形成因子であることを示す。
【0160】
実施例4
これらのデータは、PEDFが既知の新脈形成物質の新脈形成活性を阻害することを示す。
【0161】
実施例1に概説したプロトコールに準じて、ウシの腎近傍毛細管内皮細胞を5種の既知の新脈管形成物質単独に、または0.1μg/ml PEDFと組み合わせたものに暴露した。特にaFGFは50ng/mlの濃度で使用し、bFGFは10ng/mlの濃度で使用し、IL−8は40ng/mlの濃度で使用し、PEDFは250pg/mlの濃度で使用し、そしてVEGFは100pg/mlの濃度で使用した。
【0162】
このアッセイの結果を図3に与える。示すように、細胞の移動は脈管形成物質の種類にかかわらずPEDFによりかなり阻害された。これらの結果はPEDFが媒介する血管内皮細胞の移動の阻害がbFGF誘導に特異的ではなく、PEDFがこれらの細胞の移動を阻害するために全般的に作用することを示している。
実施例5
これらのデータは、PEDFがインビボの新生血管形成を阻害することを示す。種々のタンパク質を含んで成るペレットを、ラットの無血管角膜に移植した。ペレットはbFGFを含むか、または含まず、そしてまたはPEDFまたは対照として機能するウシ血清アルブミン(BSA)のいずれかを含んだ。7日後、ラットの角膜を調査して新脈管形成が生じたかどうかを決定した。
【0163】
このアッセイの結果を表2に与える。示すように、bFGFを欠くペレットを注入したものからは脈管形成は観察されなかった。しかしbFGFおよびBSAを用いて移植したすべての目では、脈管形成が観察された。さらにbFGFおよびPEDFを同時に注入すると、角膜には新生血管形成が生じなかった。これらの結果は、PEDFがインビボでの新脈管形成の有力なインヒビターであることを示している。
【0164】
実施例6
ここに与えるデータは、完全なPEDFタンパク質以外のPEDFポリペプチドが活性な抗新脈管形成剤であることを示す。
【0165】
完全なPEDFタンパク質のトリプシン処理は、タンパク質を配列番号1のアミノ酸352で開裂し、タンパク質の約3〜5kDaのカルボキシ末端を除去する(Becerra et al.,1995,J.Biol.Chem.270:25922−25999)。この手順を使用してフラグメントを作成し、そして短縮化N−PEDFフラグメント(配列番号1のアミノ酸21−382を表す)を、ヘパリンアフィニティクロマトグラフィーによりトリプシンから精製した。
【0166】
上記に概説したプロトコールに準じて使用して、種々の濃度の完全長PEDFまたは短縮化ペプチドのいずれかを、それら各々が内皮細胞移動に影響する能力について評価した。短縮化したペプチドに関して作成されたデータを図5に示す。これらのデータを完全長PEDFの活性(図4を参照にされたい)と比較すると、両タンパク質が内皮細胞移動の阻害に同様に有力となることが明らかである。これらの結果は完全長PEDF以外のペプチドが活性なPEDFポリペプチドであることを示している。
【0167】
PEDFに由来するさらなる短縮化ペプチドは、上記に記載したように改良Boydenチャンバー内の9代目のヒトの皮膚の微小血管内皮細胞(クローンテックス(Clonetics)、セル システムズ(Cell Systems)を使用して内皮細胞移動アッセイにおいて試験し、そして結果を図7に示す。図7Aでは、精製した組換えPEDF(rPEDF)、細菌が生産したPEDF(BH)または配列番号1に関するアミノ酸残基78−121(44−mer)および44−77(34−mer)を含むPEDFペプチドの存在下で、細胞をVEGFの勾配に暴露した。抗新脈管形成効果がPEDFペプチドに特異的であり、そして混入によるものではないかどうかを確認することを示す場合は中和抗体を加えた。完全長PEDF調製物は25nMで使用し、PEDFに対する中和ポリクローナル抗血清は、1:200希釈で、組換えヒトVEGF(R&Sシステムズ(Systems))は200pg/mlで使用した。図7Bでは、細胞を34−merおよび44−merペプチドの濃度が増しながら存在する中でVEGFの勾配に暴露した。この実験に使用した抗血清はアフィニティ精製せず、一方、ここに与える他のすべての実験で使用した抗血清はアフィニティ精製した。
【0168】
データは、418アミノ酸PEDFタンパク質の34アミノ酸ペプチドフラグメントが抗新脈管形成活性を有することを確証した。このペプチドは毛細管内皮細胞のインデューサー、VEGFへの移動を遮断した。さらにこのデータは34アミノ酸ペプチドの活性が、2つのペプチド(その1つは34−mer内に含まれた)に特異的なポリクローナル抗体の添加により排除できたことを示す。このペプチドは約10nMのED50を有する。ほとんどのペプチドがnM範囲よりはμM範囲でED50を有するので、小ペプチドは並外れて活性である。完全なPEDFに関するED50は約0.3nMである。この並外れた効力により、このペプチドは本発明の方法、そして特に新脈管形成に影響することができる治療用化合物の開発に有用となり得る。
【0169】
またこれらのデータは、抗新脈管形成性のPEDFの領域を、網膜芽腫細胞での分化を誘導する領域および神経栄養性の領域から分ける。このような後者の2つの性質は本明細書で見いだされた34アミノ酸ペプチドによっては誘導されないが、34アミノ酸ペプチドとは重複しないPEDFの隣接するペプチドフラグメントにより誘導されることが示された(Alberdi et al.,1999,J.Biol.Chem.274:31605−31612)。すなわち本発明の方法において、PEDFの神経活性が新脈管形成療法中に合併症を引き起こす場合、そのような合併症はPEDFの34アミノ酸ペプチドフラグメントを使用することにより回避することができるはずである。この知見は図7に例示され、ここではPEDFタンパク質のアミノ酸44〜77を表すPEDFの34アミノ酸ペプチドが抗新脈管形成剤として活性であるが、アミノ酸78〜121を含んで成る隣接する44アミノ酸ペプチドは抗新脈管形成剤として活性ではないことを示す。
実施例7
これらのデータは、皮膚に適用した外因性PEDFがそこでの毛髪の成長を促進することを示す。
【0170】
さらなる実験では、精製したヒスチジン−標識PEDFの注射が毛包密度の上昇、および自然には無毛である無胸腺症(ヌード/ヌード)マウスの皮膚にふさ状分岐の成長をもたらした。この結果はPEDFが新たな毛髪の成長を刺激する可能性を有することを示唆している。
【0171】
PEDFは、毛包中(毛脂腺)に存在する細胞を含む多くの細胞型により発現されるタンパク質である。毛包密度の上昇は、精製したPEDFを4日間連続して毎日注射した実験的に生成した神経芽腫の上にある皮膚で観察された。これは塩水賦形剤を同様に注射した腫瘍をもつ対照動物では観察されなかった。
【0172】
処置は、100μl容量のリン酸緩衝化生理食塩水中に全部で2μgの精製したヒスチジン−標識PEDFを4日間連続して毎日、2〜3部位/腫瘍に注射することから成った。5日目に、注射部位上に小さな増加した毛髪成長の領域が記録された。マウスは過剰用量のメタファンを使用して安楽死させ、そして腫瘍を外科的に摘出した。腫瘍組織をスライスし、そして緩衝化ホルマリンに少なくとも24時間漬けた。組織はパラフィンに包埋し、そして組織検査用に調製した。PEDFで処理した神経芽腫の上にある皮膚は、塩水賦形剤を注射した腫瘍の上にある皮膚と比べた時に、毛包密度が上昇していた(図8)。毛包密度における同様の上昇は、精製したPEDFの注射後の腫瘍の不存在下で見られた。
実施例8
ここで与えるデータは、PEDFが神経芽腫の分化を誘発するという事実を表し、これによりこれらの腫瘍を処置に関する基礎を提供する。神経芽腫細胞のインビトロ処置および実験的に作成した神経芽腫の精製したヒスチジン−標識PEDFタンパク質を用いたインビボ処置は、細胞の分化を誘発した。したがってこれらのデータは、PEDFをこれらの細胞に投与することがこれらの腫瘍の分化を誘導し、したがってよりゆっくりと成長させる効果的な手段であることを示唆している。
【0173】
PEDFはシュワン細胞を含む多くの細胞型により発現そして分泌されるタンパク質である。神経芽腫は悪性腫瘍であり、そしてこれらの細胞中のシュワン細胞の存在がより良い結果と関係している。ここに与えるデータは、シュワン細胞の存在が神経芽腫の好ましい予後を導くという理由の1つは、これらの細胞がPEDFを生産するという事実であることを示す。そこで生産されるPEDFは腫瘍細胞に傍分泌様式で作用して、それらの分化を誘導する。かりにも分化した神経芽腫細胞は、よりゆっくりと成長するので、神経芽腫へのPEDFの投与はこの細胞の成長をゆっくりさせることによりこの腫瘍の新規療法を提供する。細胞成長は、(1)PEDFを腫瘍に栄養を供給する血管を形成する内皮細胞に結合させ、そしてそれらの成長を防止し、それにより間接的に腫瘍を抑制する、および(2)PEDFを腫瘍細胞に直接結合させ、これによりそれらの分化を誘導する2つの方法で遅らせる。
【0174】
インビトロ実験は、PEDFが神経芽腫に由来する細胞系に及ぼす効果を確かめるために行った。2種の神経芽腫に由来する細胞系は、アメリカン ティシュ タイプ アンド カルチャーから得たSK−N−BE(2)およびSK−N−SHであった。両細胞系は、10%ウシ胎児血清(フローラボラトリーズ(Flow Laboratories)、マックレーン、バージニア州)を含有するDMEM中のカルチャー中で、37℃で5%CO2にて維持した。細胞(1.25×104/ml)を再懸濁し、そして1ml/ウェルを使用して24ウェルプレートにまいた。24時間後、PEDFを3連でウェルに0、1,0、7.5、1または10nMで加え、そして細胞をさらに24時間インキューベーションした。分化した細胞のパーセントは、ウェルあたり3つの重複しない1mm2面積中の総細胞数を計数することにより決定した。細胞は50ミクロン長より大きな神経突起の突出を保有する場合、分化したと考えた。
【0175】
図9Aおよび9Bに与える結果、および対照およびPEDF処置群の写真を図10に示す。さらに、新脈管形成アッセイにおいてPEDF活性を中和することができるPEDF誘導化ペプチドに対して生じた抗体を細胞に加えた時、抗体はPEDFが誘発する分化を効果的に遮断した(図10)。
【0176】
インビボ実験を行ってPEDFの神経芽腫に及ぼす効果を測定した。ヒトの神経芽腫は各マウスの後部脇腹上の2カ所に1×106SK−N−BE(2)細胞を皮下注射することにより、無胸腺症(nu/nu)マウスに実験的に誘導した。腫瘍が触診できるサイズ(約8mm直径)に成長した時、PEDF処置を始めた。全部で2μgの精製したヒスチジン−標識PEDF(100μlのリン酸緩衝化生理食塩水中)を2〜3カ所/各腫瘍に4日間連続して毎日注射した。5日目に、マウスは過剰用量のメタファンを使用して安楽死させ、そして腫瘍を外科的に摘出した。腫瘍組織をスライスし、そして緩衝化ホルマリンに少なくとも24時間置いた。組織はパラフィンに包埋し、そして組織検査用に調製した。切片は、ニューロフィラメントタンパク質を認識する抗体(ダコ(Dako)、カルピンテリア、カリフォルニア州)で染色した。PEDFで処置した神経芽腫は、ニューロフィラメントタンパク質に関する陽性染色の獲得により測定された増大した分化を表した(図11)。全部で6種のSK−N−BE(2)腫瘍をPEDFで処置し、そして6/6がニューロフィラメント染色について適度から強力な陽性だった。全部で4種の腫瘍をPBSで処置し、そしてすべてが陰性か、またはより豊富な細胞質を含む単一細胞で集中染色を表した(図11)。
実施例9
この実施例に与えるデータは、PEDFがヒトおよびマウスの目を硝子液および角膜で新脈管形成の主要なインヒビターであり、そしてインビトロおよびインビボでの酸素圧(tension)により制御される証拠を提供する。
【0177】
疾患の不存在では、哺乳動物の目の脈管は自然な新脈管形成のインヒビターの存在により静止している。本発明では、PEDFは脈管が角膜に侵入することを防止し、そして硝子液の正常な抗新脈管形成活性の要因であることを示す。ここに与える実験では、角膜細胞によるPEDFの分泌が低酸素により増し、そして高酸素で低下し、この損失は角膜の新生血管形成において許される役割を果たすことを示唆している。すなわちPEDFは目の、特に病理的な新生血管形成が視野を狭め、そして失明を導く虚血による網膜症の処置に治療として有用である。
【0178】
新脈管形成、先在する血管から新しい血管の成長は、自然に存在するインヒビターの影響により新規の血管の成長が妨げる場合、ほとんどの健康な組織では強力な調節下にある(Bouck et al.,1996,Adv.Cancer 69:135;Hanahan and Folkman,1996,Cell 86:353)。そのような制御の破壊は関節炎からガンに至る様々な疾患の発症に本質的な役割を果たす(Folkman et al.,1995,Molecular Basis of Cancer 206−232)。健康な哺乳動物の目では、脈管は通常、両区分とも抗−新脈管形成活性を有することが示された角膜からおよび硝子体から排除される(Brem et al.,1977,Am.Ophthalmol.84:323;Henkind,1978,Am.Ophthalmol.85:287;Kaminska and Niederkom,1993,Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.34:222)。角膜からの血管を塞げないことは、視力の損失、混濁および異常な回復と関係する(Kaminska and Niederkom,1993,Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.34:222)。網膜では、過剰な新生血管形成は増殖性糖尿病網膜症ならびに加齢に関係する黄斑変性のような虚血性の網膜症の基礎となり、現在、西欧圏で視野の損失を引き起こしている。以下に与えるデータは、例外的に有力な新脈管形成の新規インヒビターとして、および健康な硝子体および角膜の長期に認識される抗新脈管形成活性の原因となる分子として、網膜タンパク質色素上皮に由来する因子(PEDF)を同定する。
【0179】
網膜芽腫抑制遺伝子(Rb)により調節されるかもしれない目の抗新脈管形成因子を同定することを目的とする研究では、野生型Rb遺伝子、WERI−Rb−27Rを発現するレトロウイルスで感染させた網膜芽腫細胞系により前以てコンディショニングした培地を分画した。(Xu et al.,1991,Cancer Res.51:4481)。タンパク質精製スキームでは、1000から1250倍に濃縮された抗新脈管形成活性および銀染色したタンパク質ゲル上に1本の50−kDバンドをもたらした。PEDFはWERI−Rb−27R無血清コンディショニング培地から、蒸留水に対する透析(分子量カットオフ、30kD)、60〜95%硫酸アンモニウム沈殿、レンチルレクチンSepharose 4B(ファルマシア(Pharmacia))から0.5M α−メチル−D−マンノピラノシドを用いた段階的溶出、そしてHiTrapヘパリンSepharoseカラム(ファルマシア)からNAClの上昇勾配での溶出から成る連続工程により精製した。(Xu et al.,1991,Cancer Res.51:4481)。精製は内皮細胞移動アッセイによりモニターし、そして収率は17.5%であった。移動アッセイは、記載のようにウシの腎近傍毛細管内皮細胞またはヒトの皮膚の微小血管内皮細胞(クローンテックス(Clonetics)、サンディエゴ、カリフォルニア州)を使用して各サンプルに関して4連で行った(Polverni,et al.,1991,Methods Enzymol.198:440)。多数の実験を合わせるために、バックグラウンドの移動(Bkgd)は賦形剤(0.1%ウシ血清アルブミン)について最初に引き算され、そして次いでインデューサー単独に対する最大移動を100%に設定することにより標準化した。すべての実験を2回から5回繰り返した。統計はステューデントのt試験を用いて標準化する前に生のデータについて行った。標準誤差はパーセントに転換した。タンパク質のタンパク質溶解に由来する内部ペプチドのエドマン分解は、2つの不明量な配列(TSLEDFYLDEERTVRVPMMXD)(配列番号3)および(IAQL−PLTGXM(配列番号4)を生じた。アミノ酸残基に関する1文字の略号は以下の通りである:A,Ala;D,Asp;E,Glu;F,Phe;G,Gly;I,Ile;L,Leu;M,Met;P,Pro;Q,Gln;R,Arg;S,Ser;T,Thr;V,Val;X、任意のアミノ酸;そしてY,Tyr。BLASTタンパク質相同性調査では、PEDFが同一配列を有することが明らかとなった。タンパク質のミクロ配列分析では、このタンパク質が以前に記載した色素上皮−由来因子(PEDF)と同一であることが示された。
【0180】
PEDFは、培養したY79網膜芽細胞のニューロン分化を誘導する因子としてヒトの網膜色素上皮細胞のコンディショニング培地から最初に精製された。(Beccerra、セルピンの化学および生物学(Chemistry and Biology of Serpins)、Church,et al.編集、(プレナム、ニューヨーク、1997)、第223−237頁)。(Tombran−Tink,et al.,1991,Exp.Eye Res.53:411 1991;Steele et al.,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90:1526)。PEDFは小脳の顆粒細胞に神経向性であり、ミクログリアの成長を阻害し、そしてまたアーリーポピュレーションダブリングレベルcDNA(early population doubling level cDNA:EPC−1)とも呼ばれ、若い細胞サイクルGo期中にそのアップレギュレーションに影響を及ぼすが、老化した培養繊維芽細胞には影響しない。(Tanawaki,et al.,1995,J.Neurochem.64:2509;Y.Sugita et al.,1997,J.Neurosci.Res.49:710)。Pignolo et al.,1993,J.Biol.Chem.268:8949 1993);(Tombran−Tink,et al.,Neurosci.,15:4992 1995)。タンパク質はセリンプロテアーゼインヒビター(セルピン)ファミリーと配列および構造相同性を共有するが、プロテアーゼは阻害しない。(Beccerra,et al.,1993,J.Biol.Chem.268:23148 1993);Beccerra,et al.,1995 ibid.270:25992)。WERI−Rb−27Rコンディショニング培地から精製した抗新脈管形成活性は、活性がタンパク質がSDS−ポリアクリルアミドゲルからの単一バンドとして回収される時に保持され(Daw son,et al.,非公開データ)、そして組換えPEDFまたはPEDFペプチドのいずれかに対して生じた抗体で中和されるので、PEDFによるものであり、微量の混入物によるものではないと思われた。(図12A)。
【0181】
PEDFの生物学的に精製したもの、ならびに組換え体は、ラットの角膜の新生血管形成を効果的に阻害した(図13Aおよび13B)。ヒトのPEDF cDNAはCOOH−末端ヘキサヒスチジン標識をコードするようにポリメラーゼ連鎖反応により工作し、pCEP4(インビトロゲン(Invitrogen)、カールスバッド、カリフォルニア州)にクローン化し、そしてヒトの胚性腎細胞にトランスフェクトした。組換えPEDFはXpress Protein Purification System(インビトロゲン(Invitrogen)、カールスバッド、カリフォルニア州)を用いてコンディショニングした培地から精製した。インビトロで、PEDFは内皮細胞の移動を0.4nMの中央効果用量(ED50)で用量依存的様式で阻害し(図12B)、このアッセイにおける中で最も有力な新脈管形成の天然インヒビターとし(www.sciencemag.org/feature/data/104007から入手できる補足する図面を参照にされたい)、純粋なアンギオスタチン(図12B)、トロンボスポンジン−1(0.5nMのED50)およびエンドスタチン(3nMのED50)よりもわずかに活性であった。1.0nM以上の用量では、PEDFは毛細管内皮細胞の塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)−誘導化増殖も40%まで阻害した。
【0182】
PEDFは、血小板由来増殖因子、血管内皮増殖因子(VEGF)、インターロイキン−8、酸性繊維芽細胞増殖因子およびリゾホスファチジン酸を含む我々が試験した各々の新脈管形成インデューサーに対して内皮細胞の移動を阻害した。(www.sciencemag.org/feature/data/1040070から入手できる補足する図面を参照にされたい)。これは内皮細胞に対して幾らかの特異性を示し、ウシの腎近傍腺またはヒトの皮膚から培養した、および臍帯管に由来する微小血管の移動を阻害した。対照的に、PEDFが内皮細胞を阻害するために必要な濃度の10倍で存在した時でも、ヒトの包皮または肺繊維芽細胞、大動脈平滑筋細胞、口腔角質細胞、または好中球の刺激性サイトカインに向かう移動を阻害しなかった。(www.sciencemag.org/feature/data/1040070から入手できる補足する図面を参照にされたい)。
【0183】
中和PEDF抗体は、ヒト(図12C)、マウスおよびウシの角膜から調製した基質抽出物による内皮細胞化学走性の阻害を低下させた(Klintworth,1991,角膜の新脈管形成:総合的な論説(Corneal Angiogenesis:A comprehensive Critical Review)(スプリンガー(Springer)−出版、ニューヨーク):Kaminska and Niederkorn,1993,Investig,Opthalmol.Vis.Sci.34:222)。基質抽出物の調製には、角膜は付随する上皮、およびできるかぎり内皮を含まず、氷冷リン酸緩衝化生理食塩水(PBS、pH7.4)で徹底的に洗浄し、そして小さいフラグメントに切り刻み、これを0.5MMフェニルメタンスルホニルフルオリドを含有するPBS中で24時間インキューベーションした。抽出物を濾過滅菌し、−80℃で保存し、そしてミリリットルあたり10μgの最終タンパク質濃度で移動アッセイで試験した。同様に、PEDFおよびプロテインAビーズへ結合した抗体の除去は、ウシおよびヒトの基質抽出物から抗新脈管形成活性を完全に排除した(図13Aおよび13B)。さらにPEDFに対する中和抗体の添加により、外因性の新脈管形成インデューサーの不存在下で、新たな脈管のラット角膜への侵入が刺激された(図12Aおよび12B)。これは局所的なPEDFの封鎖によるものと思われ、これは角膜中の内因性の脈管形成刺激活性を暴露した(図12C、13Aおよび13B)。PEDFに対する抗体単独ではインビトロで内皮細胞の移動を刺激せず(図12A)、そしてPEDFペプチド327〜343とそれに対して生じた抗体をプレインキューベーションした時、ラットの角膜には新生血管形成は観察されなかった(図13Aおよび13B)。PEDFペプチド単独では新脈管形成アッセイにおいて中性であった(図13A)。
【0184】
角膜のように、硝子体液も抗新脈管形成性であり(Brem,et al.,1977,Am.J.Ophthalmol.84:323;Henkind 1978 ibid.85:287)、そして一般的には血管を欠き、そしてまた高濃度のPEDFを含む(Beccerra,1997、セルピンの化学および生物学(Chemistry and Biology of Serpins);Church et al.,1997,編集(プレナム出版)、第223−237頁);Wu and Beccerra,1996,Investig.Opthalmol.Vis.Sci.37:1984)。硝子体液からのPEDFの除去はその抗新脈管形成活性を排除し、そして基になる新脈管形成刺激活性を現すことが見いだされた(図12C、13Aおよび13B)。硝子体中のPEDFのレベルは、1ミリリットルの硝子体あたり4ngのVEGFの存在でも(増殖性の糖尿病網膜症の患者から得た硝子体液中に見いだされる濃度に等しい)、内皮細胞の移動を阻害するために十分であった(Aiello et al.,1994,N.Engle.J.Med.331:1480;Adamis,et al.,1994,Am.J.Opthalmol.118:445)。トランスフォーミング増殖因子β(TGFβ)は、目の新生血管形成のインヒビターになると仮定された(Ogata et al.,1997,Curr.Eye Res.16:9;Hayasaka,et al.,1998,Life Sci.63:1089;Vinores et al.,1998,J.Neuroimmunol.89:43)。しかし我々の実験では、 TGFβアイソフォーム1、2および3の中和により、硝子体液または角膜抽出物の抗新脈管形成活性はインビトロで変わらなかったか(www.sciencemag.org/feature/data/104007から入手できる補足する図面を参照にされたい)、またはインビボでの角膜の新生血管形成の誘導は変わらなかった(図13A)。
【0185】
新生児では、周囲の酸素濃度の変化が網膜の脈管密度を調節することができる。この効果は通常、新脈管形成インデューサーであるVEGFのレベルの変化に起因し、VEGFは酸素が限られている時にはアップレギュレートされ、そして酸素が過剰な時はダウンレギュレートされる(Aiello et al.,1995,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.92:10457;Adamis,et al.,1996,Arch.Opthalmol.114:66;Provis,et al.,1997,Exp.Eye Res.65:555)。PEDFも酸素により調節されるのかどうかを決定するために、新生マウスを出生後7から12日に75%酸素(高酸素)に暴露し、この条件は脈管形成低下(undervascularized)網膜の発生(Smith,et al.,1995,Invest.Opthalmol.Vis.Sci.35:101)およびVEGF mRNAの減少(Pierce et al.,1996,Arch.Opthalmol.114:1219)を導く。超酸素に暴露した9匹のうちの8匹のマウスの網膜が、12日目にPEDFについて強く染色され(図14B)、一方、正常酸素(21%酸素)に維持された10匹の未処置動物はPEDF染色を示した(図14A)。未処置動物では、網膜発生中のPEDFレベルは、新脈管形成インヒビターに関して予想されたパターンに従った。PEDF免疫染色は、網膜の脈管が発生している時、3匹の動物のうち3匹が18日以前は染色されなかったか、または弱かったが(図14Aおよび14C)(Connolly et al.,1988,Microvas.Res.36:275)、21日では4匹のマウスのうちの4匹(図14D)、および網膜の新生血管形成が本質的に完了した時は6匹の成体のうちの6匹が強かった(Connolly,et al.,1988,Microvas.Res.36:275)。最高のPEDFレベルは光受容体細胞層、網膜のほとんどの無血管層で見られた。
【0186】
PEDFに及ぼす酸素調節の効果をさらに調査するために、網膜芽腫細胞を低酸素(0.5%)、あるいは低酸素症を刺激する化学薬剤に維持した(Goldberg,et al.,1988,Science 242:1214)。予想どおり、低酸素は酵素−結合免疫吸着アッセイにより測定されるようにコンディョニング培地中のVEGFのレベルにおいて9.5±4.8倍の上昇を誘導し、そしてPEDFのレベルを11.8±4.7倍まで減少させた(図15A)。Rb−陰性網膜芽腫細胞およびRbを再度発現する復帰変異体の応答は同じであった(図15A)。PEDF mRNAの差異は、低酸素−処理および未処理細胞間で検出されず(図15B)、PEDFの低酸素調節は翻訳または翻訳後レベルで起こることを示唆した。
【0187】
低酸素腫瘍細胞でコンディョニングした培地は、正常酸素腫瘍酸素でコンディョニングした培地よりも脈管形成性であった(図15C)。低酸素は、最大の内皮細胞化学走性の50%を誘導するのに必要な培地の濃度を、1ミリリットルあたり4.0から0.3μgに下げた。これら細胞の新脈管形成活性に対してわずかに貢献するだけのVEGFの中和は、低酸素コンディョニング培地の脈管形成活性を下げなかったが、PEDFの中和は通常酸素の腫瘍培地を低酸素細胞に由来する培地の脈管形成性の程度にした(図15C)。これらのインビトロ実験に一致して、12のヒト網膜芽腫病理検体のうちの12に存在する腫瘍細胞がPEDFについて染色されず、恐らくこれは部分的には腫瘍環境における限定された酸素により(Gulledgeand Dewhirst,1996,Anticancer Res.16:741)、一方、隣接する正常な網膜は陽性であった。
【0188】
まとめると、PEDFは酸素が限られている時には新脈管形成の許容的環境を(腫瘍および網膜症におけるように)、そして酸素濃度が正常または高い時は阻害的環境を作ることにより、目の血管成長の調節に寄与しているらしい。
【0189】
PEDFの高い効力およびPEDFが作用することができる広い範囲の新脈管形成インデューターを考慮すると、PEDFは病理的な目の新生血管形成ならびに網膜芽腫に有用な治療薬となることが示され、ここでPEDFの細胞分化を誘導し(Tombran−Tink,et al.,1991,Exp.Eye Res.53:411;Steele et al.,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90:1526)、そして新脈管形成を阻害する二重活性が特に効果的である。
実施例10
ここで与えるデータは、PEDFを用いた全身処置による虚血性網膜症の改善を示す。
【0190】
網膜症は、7日齢のマウスをその母親と酸素テントに置き、そして動物を75%酸素/25%窒素の環境に12日まで維持することにより、C57/BL6マウスに誘導した。12日に動物をテントから取り出し、そして周囲環境(21%酸素)に置いた。12日から16日まで、子には1日1回、100μlのリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)賦形剤、または11.2μgもしくは22.4μgのPEDF(PBS中)のいずれかを腹腔注射することにより処置した。子はメタファンで安楽死させ、そして1mlの固定剤(4%パラホルムアルデヒド/100mM リン酸ナトリウムバッファー(pH7.2)/4%シュクロース)を心臓の左心室を通して潅流した。目を摘出し、そして固定剤中に置き、パラフィンに包埋し、そして組織検査にかけた。目の断面を作成し、ヘマトキシリン−フロキシン−サファリン(HPS)で染色し、そして角膜、レンズ、網膜および視神経を含む1つの断面中の網膜の内部制限膜(inner limiting membrane)をわたる内皮細胞核の数を計数した。図16AはPBS処置動物の目の網膜症を具体的に説明し、箱は低出力画像における網膜の内部制限膜を貫通した脈管の束を囲んでいる。この脈管の束の高出力における画像を図16Bに示す。図16Cおよび16Dは、PEDF処置マウスの目を具体的に説明するが、脈管の束は存在しない。内皮細胞核の#を定量した(表3)。PEDF処置動物は、網膜の内部制限膜をわたった内皮細胞に有意な減少があり、そして用量/応答関係を示すことができた(図17)。
【0191】
【表2】
【0192】
本明細書で述べる各特許、特許出願および公報は、引用により本明細書に編入する。
【0193】
本発明を具体的態様について開示したが、本発明の他の態様および変更も、本発明の精神および範囲から逸脱することなく当業者により考案され得る。前述の特許請求の範囲は、そのようなすべての態様および均等な変更態様を含む。
【図面の簡単な説明】
【図1】
大きなおよび小さい血管およびヒトおよびウシ種に由来する内皮細胞の移動を阻害するPEDFの能力を具体的に説明する。
【図2】
図2A−2Dから成り、血管内皮細胞以外の細胞の移動を阻害する種々のPEDF用量の無能力をグラフで表すことにより、PEDFの血管内皮に対する特異性を具体的に説明する。図2Aは、ヒトの上皮に由来するWI−38細胞に関するデータを表す。図2Bはヒトの包皮繊維芽細胞に関するデータを表す。図2Cはヒトの血管平滑筋細胞に関するデータを表す。図2Dはヒトの好中球に関するデータを表す。
【図3】
塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)、血小板由来増殖因子(PEDF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、インターロイキン−8(IL−8)および酸性繊維芽細胞増殖因子(aFGF)を含む新脈管形成の様々なインデューサーに向かう毛細管内皮細胞の移動を防止するPEDFの能力を示すグラフである。
【図4】
完全長PEDF([書き込んだ丸]四角)の抗新脈管形成活性を表す用量応答曲線のグラフであり、PEDFがナノモル下の濃度で毛細管内皮細胞のbFGFへ向かう移動の阻害において活性であり、そして新脈管形成の別のインヒビターであるアンギオスタチン([空の]丸)よりも活性であることを示す。
【図5】
C−末端から5kDaが無い短縮化PEDFポリペプチドの抗新脈管形成活性を表す用量応答曲線であり、このPEDFのフラグメントが完全な活性を保持していることを示す。
【図6】
図6Aおよび6Bから成り、完全長PEDFのアミノ酸配列(配列番号1)、および完全長PEDFをコードする核酸配列(配列番号2)である。自然に存在する多形により、アミノ酸レベルでアミノ酸残基97および98はEQまたはDEであることができ、そしてDNAレベルで、これらのアミノ酸をコードする対応するヌクレオチドはしだかってGAG CAGまたはGAC GAGである。
【図7】
図7Aおよび7Bから成り、PEDFに由来する種々の短縮化ペプチドが新脈管形成に及ぼす効果を表す2つのグラフである。
【図8】
図8A、8Bおよび8Cから成り、PEDFで処置した動物から得た皮膚切片の一連の顕微鏡写真の像であり、ここでは毛包を表す。ヌードマウスの皮下で成長しているヒトSK−N−BE(2)神経芽腫に、2gの精製PEDFを4日間連続して2〜3カ所/腫瘍に注射した。5日目に、毛が処置した腫瘍上に成長していることが認められた。組織切片(PEDF処置した図8Bおよび8Cを参照にされたい)は、賦形剤のみ(PBS−処置した図8A)で処置した腫瘍の上にある皮膚に比べて、3倍上昇した毛包密度を表した。毛包密度における同様の上昇が、精製PEDFの注射後に腫瘍の不存在下で見られた。
【図9】
図9Aおよび9Bから成り、細胞を精製したPEDFの示した濃度で24時間処置した時、培養したヒトの神経芽腫細胞(図9AのSK−N−BE、および図9BのSK−N−SH)の増加した分化を表す一連のグラフである。下向きの矢印は処理した細胞の50%に分化を誘導した用量を示す。
【図10】
図10A−19Cから成り、バッファーで(対照、図10A)、PEDFで(図10B)、または中和抗−PEDF抗体の存在下でのPEDFで(図10C)、インビトロで処理した培養したヒトSK−N−BE(2)神経芽腫細胞の一連の顕微鏡写真である。分化を示す高い頻度の突起の突出が、図10Bにのみ見られる。
【図11】
図11A−11Eから成り、賦形剤のリン酸緩衝化生理食塩水(PBS;図11Aおよび11B)を注射したヌードマウス、またはヒトPEDFを注射したヌードマウス(図11C、11Dおよび11E)で成長するヒトSK−N−BE(2)神経芽腫の一連の顕微鏡写真である。神経芽腫は固定し、そして分化の指標であるニューロフィラメントタンパク質について染色した。劇的に上昇した染色、したがって分化が処置した腫瘍で見られた。図11Cでは分化がPEDFを注射した針の跡に沿って明らかに存在する(中央上部の明らかな方形)。
【図12】
図12A−12Cから成り、培養した内皮細胞の移動に及ぼす精製したPEDFの阻害活性、およびヒトの硝子体液および角膜抽出物の抗新脈管形成活性に関するPEDFの要件を表す一連のグラフである。図12A:WERI−Rb−17R(Xu,et al.,1991,Cancer Res.51:2881)培地から精製したPEDF(0.1g/ml)は単独で、または組換えPEDFに対する抗体(抗−EPC−1;20g/ml)またはPEDFペプチドに対する抗体(抗−PEDF;1g/ml)と組み合わせて、ウシの毛細管内皮細胞の抗新脈管形成bFGF(10ng/ml)に向かう移動を阻害する能力について試験した。PEDF抗ペプチド抗体(抗−PEDF)はPEDFアミノ酸327−343を含有するペプチドに対してウサギで生成し、カサガイヘモシアニンに結合し、そしてペプチドカラムでアフィニティ精製した。細菌組換えPEDF/EPC−1に対するポリクローナル抗血清(抗−EPC−1)をDiPaolo et al.,により記載され(1995,Exp.Cell.Res.220:178)、そして抗新脈管形成タンパク質であるアンギオテンシンはO’Reilly,et al.,(1994,Cell 79:315)に記載されている。購入した試薬は、中和抗VEGF(ジェンザイム(Genzyme)、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)、TGFに対するpan抗体、およびリソホスファチジン酸(シグマケミカル社(Sigma Chemical Co.)、セントルイス、モンタナ州)を除くすべての新脈管形成インデューサー(R&D システムズ、ミネアポリス、ミネソタ州)を含んだ。すべてのタンパク質および抗体は生物学アッセイで使用する前にPBSに対して徹底的に透析した。移動アッセイは、ウシ腎近傍毛細管内皮細胞またはヒト皮膚の微小血管内皮細胞(クローンテックス社、サンディエゴ、 カリフォルニア州)を用いて記載されているように(Polerini,et al.,1991,Methods Enzymol.194:440)、各サンプルについて4連で行った。多数の実験を合わせるために、バックグラウンド移動(Bkgd)は最初に賦形剤(0.1%ウシ血清アルブミン)に向かう移動を引き算し、そしてデータはインデューサー単独に対する最大移動を100%設定することにより標準化した。すべての実験は2〜5回繰り返した。統計はステューデントt試験で標準化する前に生のデータで行った。標準誤差は百分率に変換した。図12B:増加する濃度でアンギオテンシン([〇]丸印)または組換えPEDF([ ]四角)を図12Aのように試験した。ヒトPEDF cDNAはポリメラーゼ連鎖反応でCOOH−末端ヒスチジン標識をコードするように工作し、pCEP4(インビトロゲン、カールスバッド、カリフォルニア州)にクローン化し、そしてヒトの胚性腎細胞にトランスフェクトした。組換えPEDFはXpress Protein Purification System(インビトロゲン、カールスバッド、カリフォルニア州)を用いてコンディショニングした培地から精製した。図12C:示したように希釈したヒトの硝子体液およびヒトの角膜基質抽出物(ミリリットルあたり10gのタンパク質で使用した)を、インデューサーであるVEGF(0.1ng/ml)または抗−PEDF(1g/ml)の存在下(あるいはVEGFおよび抗−PEDFの両方の存在下)でアッセイした。ヒトの硝子体液は、目の疾患がない個体から得た3体の死体の目からぬいた。液体は使用するまで凍結した。新鮮な硝子体液はウシおよびマウスの目から得た。基質抽出物の調製には、角膜は付随する上皮、およびできるかぎり内皮を含まず、氷冷リン酸緩衝化生理食塩水(PBS、pH7.4)で徹底的に洗浄し、そして小さいフラグメントに切り刻み、これを0.5mMフェニルメタンスルホニルフルオリドを含有するPBS中で24時間インキューベーションした。抽出物を濾過滅菌し、−80℃で保存し、そしてミリリットルあたり10gの最終タンパク質濃度の移動アッセイで試験した。棒は、5回の別個の実験の平均の標準偏差(SEM)を示す(図12A)。図12Bおよび12Cの場合は、1つの代表的実験からのデータを標準誤差を用いて示す。
【図13】
図13Aおよび13B − 1から13B − 8から成り、精製したPEDFによる、および正常なヒトの硝子体および角膜に自然に存在するPEDFによる新生血管形成の阻害を表す表および一連の顕微鏡写真の像である。図13A:組換え(rPEDF)または精製した(pPEDF)PEDF(8nM)、PEDFペプチド327−343(200g/ml)、非希釈硝子体液または角膜抽出物(ミリリットルあたり200gのタンパク質で使用)を、賦形剤(PBS)と含み、そして無血管のラット角膜へ移植する示したHydron ペレットへの添加を行った。陽性の応答として7日までに縁からペレットへ向かう血管の激しい内向きの成長が記録された(Polverini,et al.,1991,Methods Enzymol.198:440)。記録された場合は、プロテインAビーズに結合した抗−PEDFを使用して、硝子体液および角膜抽出物からPEDFを除去した。図13B:×13倍率で示す図13Aからの角膜応答の代表的写真。PEDF抗ペプチド抗体(抗−PEDF)は、PEDFアミノ酸327−343を含有するペプチドに対してウサギで生成し、カサガイヘモシアニンに結合し、そしてペプチドカラムでアフィニティ精製した。細菌組換えPEDF/EPC−1に対するポリクローナル抗血清(抗−EPC−1)はDiPaolo et al.,により記載され(1995,Exp.Cell.Res.220:178)、そして抗新脈管形成タンパク質であるアンギオテンシンはO’Reilly,et al.,(1994,Cell 79:315)に記載されている。購入した試薬は、中和抗VEGF(ジェンザイム、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)、TGFに対するpan抗体、およびリソホスファチジン酸(シグマ)を除くすべての新脈管形成インデューサー(R&D システムズ、ミネアポリス、ミネソタ州)を含んだ。すべてのタンパク質および抗体は生物学アッセイで使用する前にPBSに対して徹底的に透析した。
【図14】
図14A−14Fから成り、新生時マウスにおいて高酸素によるPEDFタンパク質発現の誘導を表す一連の顕微鏡写真の像である。網膜は、周囲温度に維持した(図14A、14Cおよび14D)、またはP7からP12に75%酸素に暴露した(図14B)C57BL/6マウスから、出生後12日(P12)(図14Aおよび14B)、p18(c)、またはP21(図14D)に摘出し、そしてPEDFについて染色した。赤−茶色により示されるPEDFの蓄積(矢じり)に注目されたい。図14Dに直接隣接する対照切片は、第1抗体無し(図14E)またはPEDFペプチド327−343を含む第1抗体(図14F)のプレインキューベーション後に染色された。図14Aに示す網膜層は網膜色素上皮(RPE)、外核層(ONL)、内核層(INL)、およびガングリオン細胞層(GCL)を含む。マウスの目は摘出してから1〜5分内にホルマリンで固定した。免疫染色のために、パラフィン−包埋切片を抗−PEDFとインキューベーションし、そしてABC法(Vectastain Elite;ベクターラボズ(Vector Labs)、ベーリンガム、カリフォルニア州)で視覚化した。尺度棒、25m。PEDF抗ペプチド抗体(抗−PEDF)は、PEDFアミノ酸327−343およびアミノ酸55−71を含有する2つのペプチドに対してウサギで生成し、カサガイヘモシアニンに結合した。これをアミノ酸327−343を含むペプチドを含有するカラムでアフィニティ精製した。すべてのタンパク質および抗体は生物学アッセイで使用する前にPBSに対して徹底的に透析した。
【図15】
図15A−15Cから成り、培養した網膜芽腫細胞中の低酸素が誘導するPEDFタンパク質のダウン−レギュレーションを表すイムノブロットの像およびグラフである。図15A:3種のRb−陰性細胞系(WERI−Rb−27,Y79およびWERI−Rb−1;すべてはメリーランド州、ロックビルのアメリカンタイプカルチャーコレクションから)および1つのRb−陽性系(WERI−Rb−27R)(Xu,et al.,1991,Cancer Res.51:4481)の培養からの培地中に存在するPEDFのイムノブロット分析。細胞は正常酸素(N;21%O2)、低酸素(H;05%O2)、またはCoCl2(Co;100M)中で維持し、そして無血清培地を等しい数の細胞から48時間にわたり集めた。レーンあたり5gのタンパク質を含有するブロットを抗−PEDFで釣り上げ、そしてECLで発色させた(アマーシャム(Amersham)、アーリントンハイツ、イリノイ州)。図15B:低酸素に24〜48時間暴露した後のWERI−Rb−27細胞から単離した全細胞性RNA(レーンあたり10g)のノーザンブロット。ブロットは1.5kbの完全長PEDF cDNAまたは添加を制御するための819−塩基対のアクチンプローブを用いて釣り上げた。数はデンシトメトリーにより測定したPEDF対−アクチンmRNAレベルの比率を示す。図15C:正常または低酸素WERI−Rb−1細胞に由来する培地(ミリリットルあたり2gの総タンパク質量で使用)を、ヒトの皮膚の微小血管内皮細胞の移動を誘導させる能力について試験した。移動アッセイはウシ腎近傍毛細管内皮細胞またはヒトの皮膚の微小血管内皮細胞(クローンテックス、サンディエゴ、カリフォルニア州)を用いて、記載されているように(Polverini,et al.,1991,Methods Enzymol.198:440)、各サンプルに関して4連で行った。多数の実験を合わせるために、バックグラウンド移動(Bkgd)は最初に賦形剤(0.1%ウシ血清アルブミン)に向かう移動を引き算し、そしてデータはインデューサー単独に対する最大移動を100%設定することにより標準化した。すべての実験は2〜5回繰り返した。統計はステューデントt試験で標準化する前に生のデータで行った。標準誤差は百分率に変換した。アッセイには培地単独、または培地に中和抗−PEDF(1g/ml)または抗−VEGF(20g/ml)を加えたものを含んだ。VEGFが誘導する移動は、抗−VEGFにより完全に排除され、そして抗−PEDFにより影響を受けなかった。PEDF抗ペプチド抗体(抗−PEDF)は、PEDFアミノ酸327−343を含有するペプチドに対してウサギで生成し、カサガイヘモシアニンに結合し、そしてペプチドカラムでアフィニティ精製した。VEGFが誘導する移動は、抗−VEGFにより完全に排除され、そして抗−PEDFにより影響を受けなかった。単独で試験した時、いずれの抗体も移動に影響しなかった。67細胞に等しい100%が10高い出力の場で移動した。
【図16】
ば16A−16Dから成り、C57/BL6マウスにおいて、高酸素が誘導する網膜症での血管の成長に及ぼすPEDFの効果を表す一連の顕微鏡写真の像である。図16Aおよび16Bは PBS 、賦形剤で処理した。図16Cおよび16Dは PEDF で処理した。
【図17】
マウスを対象とした網膜症とPEDF処置の間の用量応答関係を表すグラフである。
(技術分野)
発明の背景
新脈管形成は、新しい血管が形成される基本的なプロセスである。このプロセスには血管内皮細胞の組織への移動、続いてそのような内皮細胞の血管への圧縮(condensation)が関与する。新脈管形成は外因性血管新生物質により誘導することができるか、あるいは自然な条件の結果であり得る。このプロセスは再生、発育および創傷修復のような様々な正常な身体活動に必須である。このプロセスは完全に解明されていないが、毛細血管の一次細胞である内皮細胞の成長および移動を刺激する分子、そして阻害する分子の複雑な相互作用が関与する。正常条件下で、これらの分子は数年から数十年も持続し得る長期間、微小血管を静止期(すなわち毛細管の成長が無い)に維持するようである。内因細胞の代謝時間は約1000日である。しかし適切な条件下で(例えば創傷の修復中)、これらの同じ細胞は急激な増殖を受け、そしてより一層短期間内に代謝され、そして5日間の代謝速度がこれらの条件下では典型的である(Folkman and Shing,1989,J.Biol.Chem.267(16):10931−10934;Folkman and Klagsbrum,1987,Science 235:442−447)。
【0002】
新脈管形成は正常条件下で高度に調節されているが、多くの疾患(「新脈管形成性疾患」として特徴つけられる)は、持続的な非調節の新脈管形成により活発化となる。そのような疾患状態において、非調節の新脈管形成は特定の疾患を直接引き起こすか、あるいは現存する病状を悪化させるかのいずれかである。例えば目の新生血管形成は失明の最も多い原因と考えられ、そして目のおよそ20の疾患の病因の基礎になる。関節炎のような特定のこれまでに存在している状態では、新たに形成された毛細血管が関節に侵入し、そして軟骨を破壊する。糖尿病では網膜中に形成された新しい毛細管はガラス体液に侵入し、そして出血させ、失明を引き起こす。
【0003】
充実性腫瘍の成長および転移も、新脈管形成に依存的である(Folkman,1986,J.Cancer Res.46:467−473;Folkman,1989,J.Nat.Cancer Inst.82:4−6;Folkman et al.、1995、「腫瘍の新脈管形成(Tumor Angiogenesis)」、第10章、第206〜32頁、ガンの分子的基礎(The Molecular Basis of Cancer)で、Mendelsohn et al.、編集(W.B.Saunders)。例えば約2mmより大きな直径に拡大する腫瘍は、それら自体の血液供給を得なければならず、そして新しい毛細血管の成長を誘導することにより供給しなければならないことが示された。このような新しい血管が腫瘍に埋め込まれた後、新血管は腫瘍の成長に必須な栄養および成長因子、ならびに腫瘍細胞が循環に入り、そして肝臓、肺または骨のような別の部位へ転移する手段を提供する(Weindner1991,New Eng.J.Med.324(1):108)。腫瘍を有する動物に薬剤として使用する時、新脈管形成の自然なインヒビターは小さい腫瘍の成長を妨げることができる(O’Reilly et al.,1994,Cell 79:315−328)。実際に幾つかのプロトコールで、そのようなインヒビターの適用はたとえ処置を停止した後でも腫瘍の退縮および休眠状態を導く(O’Reilly et al.,1997,Cell 88:277−285)。さらに新脈管形成のインヒビターを特定の腫瘍に供給することにより、他の治療計画(例えば化学療法)に対するそれらの応答を有効とする(potentiate)ことができる(例えばTeischer et al.,1994,Int.J.Cancer 57:920−925を参照にされたい)。
【0004】
数種の新脈管形成インヒビターが新脈管形成性疾患の処置に使用するために現在開発中であるが(Gasparini,1996,Eur.J.Cancer 32A(14):3279−2385)、これらの提案されている阻害化合物には付随する欠点がある。例えばスラミンは有力なインヒビターであるが、抗腫瘍活性に達するために必要な用量ではヒトに重篤な全身的毒性を引き起こす。レチノイド、インターフェロンおよび抗エストロゲン類のような他の化合物は、ヒトの使用には安全であるようだが、わずか1週間の抗−新脈管形成効果しかない。さらに別の化合物は作成することが難しいか、または経費がかかる。加えて新脈管形成の数種の異なるインヒビターを同時に投与することが、真に効果的な処置に必要かもしれない。
【0005】
したがって新脈管形成を阻害するための新規方法および組成物の開発が長い間必要とされている。本発明はこれらの必要性を満たす。
【0006】
発明の簡単な要約
本発明は神経芽腫細胞の分化を誘導する方法に関する。この方法は、PEDFを細胞に投与し、これにより細胞の分化を誘導することを含んで成る。
【0007】
また本発明は神経芽腫細胞の成長を遅らせる方法に関する。この方法もPEDFを細胞に投与し、これにより該細胞の成長を遅らせることを含んで成る。
【0008】
さらに本発明には哺乳動物の虚血性網膜症の処置法を含む。この方法は外因性のPEDFを該哺乳動物の目に付随する(associated)内皮細胞に、PEDFが目の新脈管形成を阻害するために十分な条件下で提供し、これにより該虚血性網膜症を処置することを含んで成る。
【0009】
さらに本発明は哺乳動物の組織中の新脈管形成を阻害する方法を含み、この方法は外因性PEDFを、該PEDFが該組織中の新脈管形成を阻害するために十分な条件下で該哺乳動物に全身的に提供することを含んで成る。1つの観点では、組織は目の組織、皮膚の組織、腫瘍、関節内の組織、骨髄、鼻の上皮、前立腺、卵巣および子宮内膜組織から成る群から選択される。好適な態様では、組織は目の組織である。さらなる態様では、哺乳動物は虚血性網膜症を有する哺乳動物、虚血性網膜症を発症する危険性がある哺乳動物、黄斑変性を有する哺乳動物、および黄斑変性を発症する危険性がある哺乳動物から成る群から選択される。
【0010】
また本発明には、組織の細胞中のPEDF発現をアップレギュレートする(upregulating)方法を含み、この方法は組織に高酸素を誘導し、これにより細胞中のPEDFの発現をアップレギュレートすることを含んで成る。
【0011】
加えて、本発明は哺乳動物の黄斑変性の処置法を含み、この方法は外因性のPEDFを哺乳動物の目に付随する内皮細胞に、PEDFが目の新脈管形成を阻害するために十分な条件下で提供し、これにより黄斑変性を処置することを含んで成る。
【0012】
本発明は、哺乳動物の良性の新形成物を処置する方法を含み、この方法はPEDFを哺乳動物に投与し、これにより該良性の新形成物を処置することを含んで成る。1つの観点では、良性の新形成物は鼻のポリープである。別の観点では、哺乳動物は嚢胞性線維症を有するヒトである。さらなる観点では、良性の新形成物は前立腺内にある。
【0013】
加えて、組織中の新脈管形成を阻害する方法が提供される。この方法は外因性のPEDFを組織に関係する内皮細胞に、照射、化学療法、少なくとも1つの生物学的応答モディファイヤー(biological response modifier)の使用、およびレーザー処置から成る群から選択される少なくとも1つの他の処置と一緒に、PEDFが組織中で新脈管形成を阻害するために十分な条件下で提供することを含んで成る。
【0014】
細胞にPEDFが提供されるか、または投与される本明細書に列挙する方法の各々において、PEDFはPEDFポリペプチドを含んで成る組成物を細胞に暴露することにより提供または投与される。
【0015】
あるいは細胞にPEDFが提供されるか、または投与される本明細書に列挙する方法の各々において、PEDFは細胞にベクターを移すことにより細胞に提供または投与され、ベクターはPEDFをコードする単離された核酸を含んで成り、これによりPEDFが該細胞中で発現し、そして分泌される。
【0016】
1つの観点では、PEDFをコードする単離された核酸は配列番号2を含んで成る。別の観点では、PEDFをコードする単離された核酸はPEDFの生物学的に活性なフラグメントをコードする。特定の態様では、PEDFの生物学的に活性なフラグメントは、配列番号1のアミノ酸配列中に含まれる。他の態様ではPEDFの生物学的に活性なフラグメントは、配列番号1のアミノ酸44からアミノ酸121、または配列番号1のアミノ酸44−47を含んで成る。さらに他の態様では、PEDFは配列番号1を含んで成る。
【0017】
別の態様では、他の細胞群にPEDFをコードする単離された核酸を含んで成るベクターをトランスフェクトし、これによりPEDFが該他の細胞中で発現し、そして分泌され、そしてそのようにトランスフェクトされた該他の細胞群をそのように分泌されるPEDFが該内皮細胞と接触できる部位へ移すことによりPEDFが該内皮細胞に提供または投与される。
【0018】
1つの態様では、単離された核酸は配列番号2である。別の態様では、単離された核酸はPEDFの生物学的に活性なフラグメントをコードし、好適な態様では配列番号2のフラグメントによりコードされる。
【0019】
別の観点では、単離された核酸の該他の細胞群へのトランスフェクションが、他の細胞中に組み込まれていないか、または安定に組み込まれたDNAからPEDFの発現をもたらす。
【0020】
さらに別の観点では、PEDFが全身の循環を介して、局所投与を介して細胞に供給される。
【0021】
本明細書で記載するように、外因的に提供されるPEDFにはPEDFポリペプチドの生物学的に活性なフラグメントを含み、これは1つの態様では配列番号1のアミノ酸配列内に含まれる。好ましくは、PEDFの生物学的に活性なフラグメントは、配列番号1のアミノ酸44からアミノ酸121を含んで成る。また好ましくはPEDFの生物学的に活性なフラグメントは、配列番号1のアミノ酸44−77を含んで成る。
【0022】
本発明はまた腫瘍内のPEDFの存在をアッセイすることよる腫瘍の重篤度(severity)の測定法も含み、ここで腫瘍内のPEDFの不存在は進行した状態を示し、そして腫瘍内のPEDFの存在は腫瘍の初期状態を示す。
【0023】
PEDFが細胞に投与または提供される本発明の各々の方法において、方法はさらに別の抗新脈管形成因子をPEDFと一緒に該細胞に供給することを含んで成る。
【0024】
発明の詳細な説明
本発明は、新脈管形成を阻害するための完全長の色素上皮由来成長因子(PEDF;Steel et al.,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90(4):1526−1530)およびPEDFの任意の抗新脈管形成誘導体の使用を包含する。また本発明は新脈管形成を阻害するための完全長のPEDFおよびPEDFの任意の抗新脈管形成誘導体ををコードする核酸の使用を包含する。
【0025】
本発明の方法の内容の中で、PEDFは有効な抗新脈管形成特性を有するタンパク質であり、そしてそれには本明細書に記載するようなPEDFの任意の抗新脈管形成誘導体を含む。PEDFポリペプチドの1つの形(完全長のPEDF)は、図6A(配列番号1)に説明するが、本発明はこの例示する配列の使用に限らない。実際に、他のPEDF配列が当該技術分野(例えば公開された国際公開第95/33480号および同第95/24529号明細書を参照にされたい)で知られている。さらに遺伝子配列は異なる種および個体の間で変動し得ることは周知である。この対立遺伝子の変動の自然な範囲は、本発明の範囲内に含まれる。さらにそしてあるいは、PEDFポリペプチドは例示する配列または他の自然に生じるPEDFポリペプチドに由来する1以上の点突然変異を含むことができる。すなわちPEDFポリペプチドは典型的には配列番号1のすべてまたは一部に少なくとも約75%相同的であり、そして好ましくは配列番号1のすべてまたは一部に少なくとも少なくとも約80%相同的であり(例えば、配列番号1に少なくとも約85%相同的である);より好ましくはPEDFポリペプチドは配列番号1のすべてまたは一部に少なくとも約90%相同的であり(配列番号1のすべてまたは一部に少なくとも約95%相同的であるような);そして最も好ましくはPEDFポリペプチドは配列番号1のすべてまたは一部に少なくとも約97%相同的である。実際に、PEDFポリペプチドはエピトープタグおよびHisタグのような他のドメインを含むこともできる(例えばタンパク質は融合タンパク質であることができる)。
【0026】
本発明の内容の中で、PEDFポリペプチドは既知のPEDF配列またはそれらの誘導体の挿入、欠失、または置換突然変異体であることができるか、または含んで成ることができる。好ましくは任意の置換はPEDFポリペプチドの生化学的特性を最小に破壊する保存的置換である。すなわちアミノ酸残基を置換するために突然変異が導入される場合、正に荷電した残基(H、KおよびR)は好ましくは正に荷電した残基に置換される;負に荷電した残基(DおよびE)は好ましくは負に荷電した残基に置換される;中性の極性残基(C、G、N、Q、S、TおよびY)は、好ましくは中性の極性残基に中性される;そして中性の非極性残基(A、F、I、L、M、P、VおよびW)は、好ましくは中性の非極性残基に置換される。さらにPEDFポリペプチドは既知のPEDFタンパク質またはそれらのフラグメントの活性フラグメントであることができる。実際に、配列番号1に由来する切断されたフラグメントは、活性なPEDFポリペプチドである。例えば配列番号1の1から20の残基は分泌中に開裂され、そしてPEDF活性には無くても済む。さらに他の活性なPEDF天然および合成ポリペプチドは、配列番号1の残基44から157のような(例えば配列番号1の残基44−121および44−77)、配列番号1の残基21から382に由来する配列を含んで成る。もちろん、挿入、欠失、または置換突然変異はタンパク質のグリコシル化に影響を及ぼすことができるが、PEDFポリペプチドは本発明の方法に使用するために必要な抗新脈形成特性を保有するためにグリコシル化される必要はない。例えばPEDFの活性な34アミノ酸フラグメントがグリコシル化されていない図7に提示するデータを参照されたい。
【0027】
本発明はさらに、PEDFのアミノ酸の1以上のD−アイソマー形を含むことができるPEDFポリペプチドの使用を含むと解釈される。ペプチドは開示した同じアミノ酸で作られているが、少なくとも1つのアミノ酸、そして恐らくすべてのアミノ酸がD−アミノ酸であるレトロ−インベルソD−アミノ酸PEDFペプチドの製造は、いったん本発明から着手すれば簡単な問題である。ペプチド中のすべてのアミノ酸がD−アミノ酸であり、そして分子のN−およびC−末端が逆である場合、結果はL−アミノ酸形の分子と同じ位置で同じ構造の基を有する分子である。しかし分子はタンパク質溶解的分解に対してより安定であり、したがって本明細書で列挙する多くの応用に有用である。
【0028】
また本発明の方法は、図6B(配列番号2)に例示するような生物学的に活性なPEDFをコードする核酸、または本明細書で定義するPEDF活性を有するそれらの任意のフラグメントの状態のPEDFの使用も含むと解釈すべきである。すなわち本発明はPEDFの前述のフラグメントをコードする核酸およびそれらの任意の誘導体および配列番号2に実質的に相同的である核酸とは生物学的に活性なPEDFをコードするそれらのフラグメントの使用を含むと解釈すべきである。
【0029】
本明細書で使用する「生物学的に活性なPEDF」という用語は、本明細書に含む実験の詳細/実験の章で提示される任意のアッセイで、新脈管形成を阻害することができる任意のPEDFポリペプチド、フラグメントまたは誘導体を意味する。
【0030】
PEDFの生物学的に活性なフラグメントは、PEDFの34アミノ酸フラグメント(34mer)として本明細書の実施例の章で例示されている。このフラグメントの単離および特性決定に関する手順は、当業者の観点で本明細書に詳細に提供する。すなわち本明細書に提供される指示に従い本発明で有用なPEDFの生物学的に活性なフラグメントを同定することは容易な問題であり、したがって本発明は本明細書に開示する任意の、およびすべてのそのようなフラグメントおよびそれらの修飾および誘導体を含むと解釈すべきである。さらに本発明は本明細書で定義する用語であるPEDFの生物学的に活性なフラグメントをコードする任意の、およびすべての核酸を含むと解釈すべきである。前述の特許請求の範囲で使用した用語「PEDF」は、本明細書で定義するPEDFの生物学的に活性なPEDFのすべての形を含むと解釈すべきである。
【0031】
本明細書でPEDFを指すために使用する用語「外因性」により、この用語は細胞中で自然には発現されない任意の、およびすべてのPEDFを含むと解釈すべきである。例えば「外因性PEDF」は組換え法を使用して細胞中に導入された核酸から発現したPEDF、細胞に加えられたPEDF、および任意の、およびすべてのそれらの組み合わせを含むと解釈すべきである。したがって、この用語は細胞自体へのPEDFの添加のみに限定されず、PEDFが細胞に導入された核酸から発現された時、細胞中のPEDFの発現も含むと拡大して解釈すべきである。
【0032】
PEDFポリペプチドは、一部は活性化された内皮細胞の移動および生存を弱めることにより新脈管形成を阻害するが、これは内皮が組織中に広がる能力を下げる。すなわち本発明は、そのような細胞に外因性のPEDFを提供することにより内皮細胞の移動を阻害する方法を提供する。新脈管形成を弱めることとは別に、本方法は腸管癒着、クローン病、アテローム硬化症、強皮症および過形成性瘢痕(例えばケロイド)のような内皮細胞移動の刺激が関係する疾患を処置するために有用である。
【0033】
本発明の方法に従い、PEDFは目的の組織に付随する内皮細胞に提供される。そのような細胞は、目的組織を含んで成る細胞、組織に導入された外因性の細胞または組織中ではない隣の細胞であることができる。すなわち例えば細胞は組織の細胞であることができ、そしてPEDFはPEDFが細胞に接触するようにその場所に提供される。あるいは細胞は組織に導入された細胞であることができ、この場合PEDFは細胞が組織に導入される前に細胞に移されることができ(例えばインビトロ)、ならびに組織に導入された後にその場に移されることができる。
【0034】
PEDFが細胞に導入され、次いで哺乳動物に移される時、本発明はPEDFを細胞に導入する様式により限定されると解釈すべきではない。また細胞が哺乳動物に導入される様式により本発明が限定されるとも解釈すべきではない。以下にさらに詳細に記載するように、DNAを細胞に導入する方法はそのような細胞を哺乳動物の組織中に送達する方法のように周知である。
【0035】
内皮細胞が付随する組織は、内皮の移動または拡大を阻害することが望まれる任意の組織である(例えば、新脈管形成を阻害するために)。1つの応用では組織は目の組織であり、この場合、外因性PEDFの存在は目の種々の疾患に関係する新規な新脈管形成を阻害するだろう。例えば本発明の方法は目の創傷、低酸素症、感染、外科的医術、レーザ手術、糖尿病、網膜芽腫、黄斑変性、虚血性網膜症、または目の他の疾患または障害を処置するために有用である。これに関連して、本方法は種々の目の疾患に関連する失明の防止または視野の喪失を遅らせるために有用である。ほとんどの糖尿病患者は最終的に疾患により引き起こされる虚血に応答して網膜の血管の過剰成長による視野の損失を患う。同様に、高レベルの酸素に暴露された未熟な新生児は、網膜の静脈閉塞または他の血管または虚血性異常の結果として網膜症を発症する。本明細書に記載するように、虚血により誘導される網膜症はPEDFの全身または局所投与により防止およびまたは処置することができる。レーザー手術の場合、目に関してはPEDFを使用して処置後の血管の再成長を防止することができる。レーザーは過剰な血管を破壊するために使用されるが、それらはまた幾つかの新脈管形成を誘導する網膜中の創傷も作る。PEDFを用いた全身性または局所的処置は、そのような再成長を防止するために役立つ。
【0036】
本明細書で使用する「網膜症」という用語は、硝子体に入っても入らなくてもよい網膜内または回りの血管の異常な発育を意味する。傷害、疾患、虚血の発生、レーザーまたは他の医原性処置が、網膜症を誘導し得る。
【0037】
別の応用では組織は皮膚の疾患であり、この場合は外因性PEDFの存在が幾つかの皮膚疾患に関連する新生血管形成を防止する。例えば本方法は乾癬、強皮症、皮膚の腫瘍、感染の結果としての新生血管形成(例えば、ネコに引っ掻かれたことによる疾患、細菌性の潰瘍化等)、または他の皮膚疾患のような疾患および障害を処置するために有用である。PEDFが皮膚に提供される場合、PEDFは皮膚の表面または皮膚表面下の皮膚組織に、あるいは全身的にも提供することができる。さらにPEDFを哺乳動物の皮膚に移すことは皮膚の毛髪の成長をも刺激することができる。特定の理論に拘束されることなく、PEDFは毛包内の新脈管形成を媒介することにより、かつ/またはニューロン組織近くの分化に影響を及ぼすことにより毛髪の成長に影響を与えると考えられる。
【0038】
別の態様では、組織は腫瘍(例えば、良性または癌腫性の成長)であり、この場合、本発明の方法は腫瘍内または腫瘍への血管の成長を阻害し、そして場合により腫瘍細胞の分化、そしてゆっくりとした分割を誘導する。腫瘍内の血管の成長を阻害することは、所定のサイズを越えた成長を支持するために腫瘍に供給される十分な栄養および酸素を妨げる。すなわち本発明の方法は、遺伝的素因(例えばBRCA−1突然変異キャリアー、p53突然変異を持つLi Fraumeni患者等)または外の発癌物質(例えばタバコ、アルコール、工業用溶媒)の存在により既に存在する癌腫細胞から腫瘍の核形成を防止することができる。腫瘍形成の防止の外に、本発明の方法は既存の腫瘍の成長を遅らせ、すなわち腫瘍をより容易に阻止および摘出し、そして腫瘍の退行を引き起こすことができる。この応用は手術を施すことが難しい腫瘍を処置するために高度に有利である(例えば悩または前立腺腫瘍)。加えてこの方法は限定するわけではないが神経芽腫を含む小児腫瘍の処置に有用である。さらに、現存する腫瘍内の血管数を最小にすることは、腫瘍が転移する可能性を下げる。腫瘍の処置において、この方法は単独または他の処置と組み合わせて使用して腫瘍の成長を制御することができる。実際に本発明の方法を採用することにより、幾つかの腫瘍の他の治療に対する応答を強化することができる。例えば本発明の方法は化学療法または放射線処方の前処置(例えば約1週間前に)に、そしてそれらの処置中に続行して採用することができる。本発明の方法は例えばインターフェロンまたは他の抗新脈管形成物質のような生物学的応答モディファイヤーの使用と組み合わせて使用してもよく、そしてまたインビボで抗新脈管形成物質の生産を誘導する作用物質の使用との組み合わせも有用である。さらに本発明の方法は細胞の分化を促進する作用物質、特に限定するわけではないが悩腫瘍細胞の分化を促進する作用物質と組み合わせて使用してもよい。
【0039】
本発明の方法が他の組織に適用される場合、新生血管形成の防止は宿主の障害を効果的に処理する。すなわち例えば本発明の方法を血管の障害(例えば血管腫およびアテローム硬化症プラーク内の毛細管増殖)、筋肉の疾患(例えば心筋の新脈管形成または平滑筋内の新脈管形成)、関節(例えば関節炎、血友病関節等)、および新脈管形成が関係する他の疾患(例えばOsler−Webber症候群、プラーク新生血管形成、毛細管拡張症、血管線維腫、創傷の肉芽化等)の処置の一部として使用することができる。さらに本発明は特に嚢胞性線維症患者の鼻のポリープ、骨髄細胞の異常な成長から起こる白血病、および前立腺ガンの処置に有用である。本発明は一般に、前立腺に含まれる良性の新生組織形成の処置に有用となる。
【0040】
新生血管形成と関連する障害および症状の処置とは別に、新脈管形成の阻害は新生血管形成に関係する正常な生理学的症状の発生をモジュレートまたは防止するために使用することができる。本発明の方法を用いて、卵巣または内皮内のPEDFの存在。このように例えば本発明は出産制御に使用することができる。したがって、排卵、胚の着床、胎盤形成等に関係する新生血管形成を弱めることができる。
【0041】
本発明の方法は新脈管形成に関係する疾患または障害の発生を防止する手段としても有用であり、すなわちこの方法は、疾患の危険性がある患者の疾患を防止するための予防法として有用である。例えば、そして限定するわけではないが、PEDFは糖尿病患者の糖尿病網膜症の発生を防止するために、特定のガンの危険性があると知られている人にその特定のガンの発生を防止するため等に使用することができる。すなわち本発明の方法は、明白な疾患の処置に限定されると解釈するべきではなく、むしろ疾患の危険がある患者の疾患の防止に有用であると解釈すべきである。
【0042】
本発明は、前ガン創傷、例えば限定するわけではないが特に嚢胞性線維症を有する患者における鼻のポリープの処置を含むと解釈すべきである。これらの患者の鼻のポリープは新脈管形成性であり、そしてさらに嚢胞性線維症患者の悩脊髄液は過剰な新脈管形成因子VEGEを含む。特に嚢胞性線維症患者におけるこれらの症状の緩和は(ここで緩和はPEDFの投与を含んで成る)、したがって本発明の方法に含まれる。
【0043】
本発明の方法の内容の中で、PEDFは単独または他の既知の抗新脈管形成因子と一緒に供給することができる。例えばPEDFはインテグリン結合(engagement)を遮断する抗体およびペプチド、メタロプロティナーゼを阻害するタンパク質および低分子(例えばマルミスタット:marmistat)、内皮細胞中でリン酸化カスケードを遮断する作用物質(例えばハーバマイシン:herbamycine)、新脈管形成の既知のインデューサーに関するドミナントネガティブ受容体、新脈管形成のインデューサーに対する抗体、あるいはそれらの活性を遮断する他の化合物(例えばスラミン:suramin)または他の手段により作用する他の化合物(例えばレチノイド、IL−5、インターフェロン等)と一緒に使用することができる。実際にそのような因子が新脈管形成を異なるメカニズムでモジュレートすると、他の抗新脈管形成物質と組み合わせてPEDFを使用することは所望の組織中で新脈管形成をより効力的に(しかも効力的に相乗的に)阻害することができる。PEDFは1以上の他の抗新脈管形成因子と使用することができる。好ましくは少なくとも2種の抗新脈管形成因子をPEDFと一緒に使用してよい。
【0044】
本明細書で検討するように、PEDFは有力な因子である。すなわち1つのプロトコールでは、この方法は細胞にPEDFポリペプチドを供給することによりPEDFを提供することが含まれる(例えば適切な組成物中で)。本発明に使用するためのPEDFポリペプチドを得るために任意の適当な方法を使用することができる。多くの適切なPEDFポリペプチドは、PEDFを自然に生産している組織から、または種々のPEDF−生産細胞(例えば網膜芽腫細胞系 WER127)によりコンディショニングされた培地から精製することができる。例えばPEDFはすべての種類の筋肉、脾臓の巨核球、繊維芽細胞、腎臓管、大脳Purkinje細胞、毛包の毛脂(plpiosebaceous)腺および網膜細胞により生産されることが知られている。自然に存在するPEDFの特に良好な供給源は、目から抽出される硝子体および水性体液である。これらのタンパク質抽出物(または他の供給源)からPEDFを精製するための1つのプロトコールは、30KDaの限外濾過膜を使用した濃縮/透析、続いて約65%〜約95%硫酸アンモニウムの範囲の沈殿、続いて0.5M メチル−α−マンノピラノシドでのレンチルレクチン セファロース カラム、続いてファルマシア(PHARMACIA) HiTrapヘパリンカラムから0.5M NaClでの勾配/イソクラティック溶出による。PEDFポリペプチドを精製するための他のプロトコールは、当該技術分野では既知である(例えば、公開された国際特許出願95/33480号および同第93/24529号明細書を参照にされたい)。配列番号1により表される自然なPEDFポリペプチドは、SDS−PAGEを介して約45〜50kDaのタンパク質であると同定される。他のPAGEポリペプチドは標準的な直接ペプチド合成法を使用して合成することができる(例えば、固相合成(例えばMerrifield,1963,J.Am.Chem.Soc.85:2149−2154;Barany et al.,1987,Int.J.Peptide Protein Res.30:705−739;および米国特許第5,424,398号明細書を参照にされたい)を介するような、Bondanszky,1984、ペプチド合成の原理(Principle of Peptide Synthesis)(スプリンガー(Springer)出版、ハイデルベルグ)に要約されているような)。もちろんPAGEポリペプチドの遺伝子も既知であり(例えば公開された国際特許出願95/33480号および同第93/24529号明細書を参照にされたい);そしてまたGeneBank 寄託番号U29953も参照にされたい)、あるいは本明細書で検討するポリペプチド配列から推定することができるので、PEDFポリペプチドは標準的な組換えDNA法により生成することができる。
【0045】
別のプロトコールでは、PEDFポリペプチドはPEDFをコードする核酸を含む発現ベクターを問題の組織に付随する細胞に移すことにより、問題の組織に提供することができる。細胞はPAGEポリペプチドを、これが組織中の内皮細胞に適当に提供されてそれらの移動を阻害するように、すなわち目的の組織中の、または全身的に新脈管形成を弱めるように生産し、そして分泌する。PEDFポリペプチドをコードする核酸配列は既知であり(例えば公開された国際特許出願第95/33480および同第93/24529号明細書を参照にされたい);およびまたGeneBank 寄託番号U29953を参照にされたい)、そして他は本明細書で検討するポリペプチド配列から推定することができる。すなわちPEDF発現ベクターは典型的には既知のPEDF配列に相同的である単離された核酸配列を含み、例えばそれらは少なくとも軽度の緊縮条件下で、より好ましくは中度の緊縮条件下で、最も好ましくは高度な緊縮条件下で(軽度、中度および高度な緊縮に関する定義については、Sambrook et al.、1989、モレキュラークローニング:ア ラボラトリーマニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)、第2版、コールドスプリングハーバー出版に説明されている通りである)、既知の配列の少なくとも1つのフラグメントにハイブリダイズする。
【0046】
PEDFをコードする核酸に加えて発現ベクターはプロモーターを含み、そして本発明の内容においては、プロモーターは細胞中でPEDF遺伝子の発現を駆動することができなければならない。多くのウイルスプロモーターがそのような発現カセットでの使用に適当である(例えば、レトロウイルスITRs、LTRs、前初期ウイルスプロモーター(IEp)(ヘルペスウイルスIEpのような(例えばICP4−IEpおよびICP0−IEp)、およびサイトメガロウイルス(CMV)IEp)、および他のウイルスプロモーター(例えば後期ウイルスプロモーター、潜在−活性(latency−active)プロモーター(LAP)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、およびネズミ白血病ウイルス(MLV)プロモーター))。他の適当なプロモーターは、エンハンサー配列を含む真核生物プロモーター(例えばウサギβ−グロビン調節配列)、構成的に活性なプロモーター(例えばβ−アクチンプロモーター等)、シグナルおよび/または組織特異的プロモーター(例えば、TNFまたはRU486に反応性のプロモーターのような誘導性および/または抑制性プロモーター、メタロチオニンプロモーター等)、および腫瘍−特異的プロモーターである。
【0047】
発現ベクターの中で、PEDF遺伝子およびプロモーターはプロモーターがPEDF遺伝子の発現を駆動することができるように操作可能に連結される。この操作可能な連結が維持される限り、発現ベクターはインターナルリボソームエントリーサイト(internal ribosome entry sites:IRES)により分けられた同義遺伝子のような1以上の遺伝子を含むことができる。さらに発現ベクターは場合によりスプライス部位、ポリアデニレーション配列、転写調節要素(例えばエンハンサー、サイレンサー等)、または他の配列のような他の要素を含むことができる。
【0048】
発現ベクターは、それらが中に含むPEDFをコードする単離された核酸を発現することができる様式で細胞中に導入されなければならない。任意の適当なベクターを採用することができ、それらの多くは当該技術分野では既知である。そのようなベクターの例には、裸のDNAベクター(オリゴヌクレオチドまたはプラスミドのような)、アデノ−随伴ウイルスベクターのようなウイルスベクター(Berns et al.,1995,Ann.N.Y.Acad.Sci.772:95−104)、アデノウイルスベクター(Berns et al.,1994,Gene Therapy 1:S68)、ヘルペスウイルスベクター(Fink et al.,1996,Ann.Rev.Neurosci.19:265−287)、パッケージされたアンプリコン(Federoff et al.,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:1636−1640)、パピローマウイルスベクター、ピコルナウイルスベクター、ポリオーマウイルスベクター、レトロウイルスベクター、SV40ベクター、ワクシニアウイルスベクターおよびその他のベクターを含む。目的の発現ベクターに加えて、ベクターには例えば選択性マーカー(例えばβ−galまたはトキシンに対する耐性を付与するマーカー)、薬理学的に活性なタンパク質、転写因子のような他の遺伝的要素、あるいは他の生物学的に活性な物質も含むことができる。
【0049】
選択した任意のベクターは、真核細胞で大量に生産できなければならない。さらにベクターはPEDF配列を含むか、または含まないいずれかの目的細胞に移されることができるように、PEDF配列を含まないベクターは対照ベクターとして役立つように構築できることが必要であり、PEDF配列を含むベクターは実験用または治療用ベクターである。ベクター核酸を操作するための方法は、当該技術分野では周知であり(例えば、Sambrook et al.,同上を参照にされたい)、そして直接クローニング、レコンビナーゼを使用した部位特異的組換え、相同的組換え、および組換えベクターを構築するための他の適当な方法を含む。この様式で発現ベクターは任意の所望の細胞中で複製し、任意の所望の細胞中で発現することができ、そしてさらに任意の所望する細胞のゲノム中に組み込むことができるようになるように構築することができる。
【0050】
PEDF発現ベクターはDNAを細胞に移すために適当な任意の手段により細胞に導入される。多くのそのような方法が当該技術分野では周知である(Sambrook et al.,同上;またWatson et al., 組換えDNA(Recombinant DNA)、第12章、第2版、サイエンティフィック アメリカン ブックス(Scientific American Books)。このようにプラスミドは、リン酸カルシウム沈殿、エレクトロポレーション、リポソーム−媒介トランスフェクション、遺伝子銃、マイクロインジェクション、ウイルスキャプシド−媒介転移、ポリブレン−媒介転移、プロトプラスト融合等のような方法により移される。ウイルスベクターは細胞の直接的感染により細胞に最も良くに移される。しかし感染の様式はウイルスおよび細胞の厳密な性質に大変依存するかもしれない。
【0051】
誘導性プロモーターの制御下でPEDF遺伝子が移された細胞は、必要ならば一過性の形質転換体として本発明の方法で使用することができる。そのような細胞自体は次いで、哺乳動物にそこでの治療的利益のために移すことができる。典型的には細胞はその中で発現され、そしてそこから分泌するPEDFが新脈管形成を阻害するために所望の内皮細胞と接触するように、哺乳動物の部位に移される。あるいは特にベクターがインビトロで加えられた細胞の場合は、細胞を最初に数回のクローン選択にかけて(通常は、ベクター中の選択性マーカー配列の使用によりなされる)、安定な形質転換体を選択することができる。そのような安定な形質転換体は、次いで哺乳動物にそこでの治療的利益のために移される。
【0052】
PEDFはまた、PEDFをコードする単離された核酸を含んで成るベクターを他の細胞群にトランスフェクトすることにより内皮細胞に提供することができ、これによりPEDFが他の細胞中で発現し、そしてそこから分泌する。そのようにトランスフェクトした他の細胞群は、次いでそのように分泌したPEDFが内皮細胞と接触し、そして新脈管形成を阻害する哺乳動物の部位に移される。他の細胞からのPEDFの発現および分泌は、次いで内皮細胞に利益をもたらす。PEDFをコードするDNAが細胞に安定に組み込まれる必要はない。PEDFは細胞中の組み込まれていない、または組み込まれたDNAから発現し、そして分泌され得る。
【0053】
細胞内で、PEDF遺伝子は細胞がPEDFポリペプチドを発現し、そして分泌するよおに発現する。遺伝子の成功裏の発現は、標準的な分子生物学的技法を使用して評価することができる(例えばノーザンハイブリダイゼーション、ウエスタンブロッティング、免疫沈降、酵素イムノアッセイ等)。トランスフェクトした細胞からのPEDF遺伝子の発現およびPEDFの分泌を検出するための試薬は、当該技術分野では既知である(例えば、公開された国際特許出願第95/33480および同第93/24529号明細書を参照にされたい);Steel et al.,同上)。
【0054】
目的の組織の場所に依存して、PEDFは目的とする組織内の内皮細胞にPEDFを提供するための任意の適当な様式で供給することができる。すなわち例えばPEDFの供給源(すなわち本明細書に記載するようなPEDFポリペプチドまたはPEDF発現ベクター、またはPEDFを発現する細胞)を有する組成物を全身性の循環に導入することができ、これは目的の組織にPEDFの供給源を分布するだろう。あるいはPEDFの供給源を含有する組成物は、目的の組織に局所的に適用することができる(例えば注射、または連続注入としてのポンプ送液、あるいは腫瘍内またはガン内部または皮下部位へのボーラスとして、皮膚表面のすべてまたは一部への適用、目の表面上への滴下等)。
【0055】
PEDFの供給源がPEDFポリペプチド(例えば適当な組成物中の)である場合、組織中の新脈管形成を阻害するために十分な濃度および時間で提供される。
【0056】
新脈管形成の阻害は一般に、新しい血管が新芽を発生するか、または循環している幹細胞が到着し、そして続いて内皮細胞に分化するかにかかわらず新しい血管の発生を停止することと考えられる。しかしPEDFは活性化された内皮細胞のアポトーシスを誘導することができるので、本発明との関連で新脈管形成の阻害はPEDFによる細胞の、特に腫瘍の新脈管形成因子により活性化された時、腫瘍近く、またはその中の既存の血管中の細胞の死亡を誘導することと解釈するべきである。すなわち本発明の内容の中で、新脈管形成の阻害は新規血管の発生の阻害を含むと解釈するべきであり、この阻害は同時に近くの既存の血管を破壊してもしなくてもよい。
【0057】
PEDFが自然に生産される場合、PEDFは約250nMもの高さの濃度で存在することができる。PEDFは非毒性であるので、より高濃度の状態で組織に供給することができる。しかしPEDFの効力を仮定すると、本発明の方法では約10nM未満のようなさらに低濃度(例えばわずか0.01nM)で使用することができる。実際に幾つかのプロコールでは、約2nM PEDF未満で新脈管形成および内皮細胞の移動を効果的に阻害する。タンパク質を含んで成る組成物の配合に依存して、PEDFは所望する組織中で新脈管形成を遅らせるために十分なタイムコースにわたり供給される。プロトコールによっては(例えばPEDFが皮膚または目の表面に供給される場合)、繰り返し適用することが抗新脈管形成効果を強化し、そして幾つかの適用では必要となるかもしれない。PEDFの供給源がPEDF発現ベクターである場合、PEDFを発現する細胞は効果的な(すなわち組織中の新脈管形成を阻害するために十分な)量のタンパク質を生産する。
【0058】
本発明の方法を行うために、本発明はPEDFの供給源および適当な希釈剤を含んで成る薬理学的組成物を提供する。PEDFの供給源に加えて、組成物には1以上の薬理学的に許容されるキャリアーを含む希釈剤を含む。本発明に従い使用するための医薬組成物は、賦形剤を含んで成る1以上の薬理学的または生理学的に許容されるキャリアー、ならびに製薬的に使用することができる調製物への活性化合物の加工を容易にする任意の補助剤を使用して、通常の様式で配合することができる。適切な配合は選択する投与の経路に依存する。すなわち例えば全身注射には、PEDFの供給源は水溶液、好ましくは必要に応じてポリエチレングリコールのような安定化剤を含んでもよい生理学的に適合性のあるバッファーに配合することができる。粘膜を介する(transmucosal)投与には、浸透するべきバリアーに対して適当な浸透剤を製剤中に使用する。そのような浸透剤は一般に当該技術分野では知られている。経口投与には、PEDFの供給源は錠剤、ピル、ドラジェ、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、リポソーム、懸濁液等に包含するための適当なキャリアーと組み合わせることができる。吸入による投与には通常、PEDF供給源は適当な推薬を使用した加圧パックまたはネブライザーからエアゾール噴霧による提供の状態で送達される。PEDFの供給源は注射、例えばボーラス注射または連続注入による非経口投与用に配合することができる。そのような組成物は油性または水性賦形剤中の懸濁液、溶液または乳液のような状態をとることができ、そして沈殿防止剤、安定化剤および/または分散剤のような配合剤を含むことができる。皮膚への適用には、PEDFの供給源は適当なゲル、マグマ、クリーム、軟膏または他のキャリアーに配合することができる。目への適用には、PEDFの供給源は水溶液、好ましくは生理学的に適合性のあるバッファーに配合することができる。PEDFの供給源は、当該技術分野で既知であるような他の医薬組成物中に配合することもできる。医薬組成物および製剤の詳細な考察は、本明細書のいたるところに提供する。
【0059】
腫瘍の中にはPEDFが低下しているか、または存在しないものもあることが知られているので、本発明は腫瘍内のPEDFの存在をアッセイすることにより腫瘍の予後を評価する方法も提供する。この方法には腫瘍から組織または流体を得、そして組織または流体中のPEDFの存在または不存在を検出することを含む。組織または流体は、例えば尿、血漿、血清または硝子体液もしくは水性体液であることができる。腫瘍中のPEDF濃度が高いほど、腫瘍が新脈管形成を受ける可能性は低い相関にある。すなわち腫瘍中のより高いPEDF濃度は腫瘍形成の比較的初期の段階の指標であり、したがって楽観的指標である。逆に所定の腫瘍中のPEDFの不存在は、あるいは低レベルのPEDFの存在は、腫瘍形成がより進んだ段階の指標である。本明細書で言うPEDFレベルの高い、または低いとは、正常な問題としている疾患を持たない良い個体から得た同一組織中のPEDFレベルと比較している。
【0060】
PEDFレベルの評価は、PEDF遺伝子発現をレベルを評価するアッセイを使用して行うことができる(例えば、逆転写酵素PCR(RT−PCR)、ノーザンハイブリダイゼーション、in situ ハイブリダイゼーション等)。あるいは分泌したPEDFの存在は免疫学的アッセイ、PEDF精製アッセイまたはPAGE分析等により測定することができる)。そのような腫瘍中のPEDFの存在を検出するための試薬は、当該技術分野では既知である(例えば、公開された国際特許出願第95/33480および同第93/24529号明細書を参照にされたい)。
【0061】
本発明はまた、本発明のペプチド組成物および哺乳動物の細胞または組織に組成物を外膜的に投与することを記載する使用説明書を含んで成るキットも含む。別の態様では、このキットは化合物を哺乳動物に投与する前に、本発明の組成物を溶解または懸濁するために適する(好ましくは滅菌)溶媒を含んで成る。上記のすべてに加え、本発明は細胞中の内因性PEDFの発現を調節する方法も含むと解釈すべきである。例えば、細胞に一過性の高酸素を誘導することにより細胞中でのPEDF生産をアップレギュレートすることが可能である。そのような処置は新脈管形成のインデューサーをダウンレギュレートする付加的利点を有する。本発明は本明細書に記載する処置の各モダリティーに対してこの方法を応用することを含むと解釈すべきである。
定義
本明細書で使用する以下の各用語は、この章にあるその用語に関連する意味を有する。
【0062】
冠詞“a”および“an”は、本明細書では1または1より多い(すなわち少なくとも1つの)冠詞の文法的目的語を指す。例として“an element”は、1つの要素または1以上の要素を意味する。
【0063】
本明細書で使用する用語「隣接する」とは、介在するヌクレオチドを持たない、互いに直接付いているヌクレオチド配列を称する。例として2つが5’−AAAAATTT−3’または5’−TTTAAAAA−3’のように連結している時、ペンタヌクレオチド5’−AAAAA−3’はトリヌクレオチド5’−TTT−3’に隣接するが、2つが5’−AAAAACTTT−3’のように連結している時は隣接していない。
【0064】
本明細書で使用する「症状を緩和する」とは、症状の重篤度を減少することを意味する。
【0065】
本明細書で使用するアミノ酸は、以下の表に示すようにそれらの完全な名前により、それらに対応する三文字暗号により、またはそれらに対応する一文字暗号により表す:
【0066】
【表1】
【0067】
遺伝子の「コード領域」は、遺伝子の転写により生成されるmRNA分子のコード領域にそれぞれ相同的または相補的である遺伝子のコード鎖のヌクレオチド残基および遺伝子の非コード鎖のヌクレオチドから成る。
【0068】
遺伝子の「mRNA−コード領域」は、遺伝子の転写により生成されるmRNA分子のコード領域にそれぞれ相同的または相補的である遺伝子のコード鎖のヌクレオチド残基および遺伝子の非コード鎖のヌクレオチド残基から成る。真核細胞中の特定の場合に起こるmRNAプロセッシングにより、遺伝子のmRNAコード領域はゲノム中に生じる遺伝子中に互いに分かれた1つの領域または複数の領域を含んで成る。遺伝子のmRNAコード領域がゲノム中で分かれた領域を含んで成る場合、「mRNAコード領域」は、これらの領域の両方を個別に、または集合的に称する。
【0069】
本明細書で使用する「相補的」とは、2つの核酸、例えば2つのDNA分子の間のサブユニット配列の相補性といった広い概念を称する。両分子中のヌクレオチド位が互いに正常に対合することができるヌクレオチドにより占められている場合、核酸はこの位置で互いに相補的であると考えられる。すなわち2つの核酸は、各分子中で実質的な数(少なくとも50%)の対応する位置が、互いに正常に塩基対合するヌクレオチド(例えばA:TおよびG:Cヌクレオチド対)により占められている時、互いに相補的である。
【0070】
「疾患」とは動物が恒常性を維持することができない動物の健康状態であり、そして疾患が改善しない場合、動物の健康状態は悪化し続ける。疾患は、疾患の症状の重篤度、患者が経験するそのような症状の頻度、またはその両方が減少する場合、「緩和」する。
【0071】
「コードする」とは、定めたヌクレオチド配列(すなわちrRNA、tRNAおよびmRNA)または定めたアミノ酸配列およびそれらから生じる生物学的特性を有する、生物学的プロセスにおいて他のポリマーおよび高分子の合成のために鋳型として役立つ遺伝子、cDNAまたはmRNAのようなポリヌクレオチド中の特異的なヌクレオチド配列の固有の特性を称する。すなわち遺伝子は、その遺伝子に対応するmRNAの転写および翻訳が細胞または他の生物学的系中でタンパク質を生産する場合、タンパク質をコードする。遺伝子またはcDNAの転写の鋳型として使用するコード鎖(mRNA配列と同一であり、そして通常は配列表に提供されるヌクレオチド配列)、および非コード鎖は、タンパク質または遺伝子もしくはcDNAの他の生成物をコードすると言うことができる。
【0072】
特に言及しない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」は、互いの縮重変更体であり、そして同じアミノ酸配列をコードするすべてのヌクレオチド配列を含む。タンパク質およびRNAをコードするヌクレオチド配列はイントロンを含んでもよい。
【0073】
本明細書で使用する「相同的な」とは、2つのポリマー分子間、例えば2つの核酸分子間、例えば2つのDNA分子または2つのRNA分子、あるいは2つのポリペプチド分子間のサブユニット配列の類似性を称する。2つの分子の両方のサブユニット位が同じ単量体サブユニットで占められている時、例えば2つの各DNA分子の位置がアデニンで占められているならば、それらはその位置で相同的である。2つの配列間の相同性は、対合または相同的な位置の数の直接的関数であり、例えば2つの化合物の配列中の位置の半分(例えば10個のサブユニット長のポリマーの5つの位置)が相同的であるならば、2つの配列は50%相同的であり、位置の90%(例えば10のうちの9)が対合するかまたは相同的ならば、2つの配列は90%の相同性を共有する。例として、DNA配列3’ATTGCC5’および3’TATGGCは、50%の相同性を共有する。
【0074】
本明細書で使用する「相同性」は、「同一性」と同義語的に使用される。
【0075】
2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間のパーセント同一性の測定は、数学的アルゴリズムを使用して行うことができる。例えば2つの配列を比較するために有用な数学的アルゴリズムは、Karlin and Altschul(1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873−5877)により修飾されたKarlin and Altschul(1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264−5877)のアルゴリズムである。このアルゴリズムは、Altschul,et al(1990,J.Mol.Biol.215:403−410)のNBLASTおよびXBLASTプログラムに包含されており、そして例えばバイオテクノロジー情報に関する国立センター(National Center for Biotechnology Information:NCBI)のユニバーサル リソース ロケーター“http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/”を有する世界的ウェッブサイトでアクセスすることができる。BLASTヌクレオチド調査は、以下のパラメーターを使用してNBLASTプログラム(NCBIウェッブサイトでは“blastn”と命名されている)で行うことができる:本明細書に記載する核酸に相同的なヌクレオチド配列を得るために、ギャップペナルティ=5;ギャップエクステンションペナルティ=2;ミスマッチペナルティ=3;マッチリワード=1;期待値10.0;およびワードサイズ=11。BLASTタンパク質調査は、以下のパラメーターを使用してXBLASTプログラム(NCBIウェッブサイトでは“blastn”と命名されている)またはNCBI“blastp”プログラムで行うことができる:本明細書に記載するタンパク質分子に相同的なアミノ酸配列を得るために、期待値10.0、BLOSUM62 スコアリングマトリックス。比較を目的としてギャップのある整列を得るためには、Gapped BLASTをAltschul,et al(1997,Nucleic Acids Res.25:3389−3402)に記載されているように利用することができる。あるいはPSI−BlastまたはPHI−Blastを使用して、分子(Id.)間の明確な関係および共通のパターンを共有する分子間の関係を検出する反復調査を行うことができる。BLAST、Gapped BLAST、PSI−BlastおよびPHI−Blastプログラムを利用する時、各プログラムのデホルトパラメーター(例えばXBLASTおよびNBLAST)を使用することができる。http://www.ncbi.nlm.nih.gov.を参照にされたい。
【0076】
2つの配列間のパーセント同一性は、ギャプを用いて、または用いずに上記の技法に類似する技法を使用して測定することができる。パーセント同一性の算出には、典型的に厳密な対合がカウントされる。
【0077】
本明細書で使用する「使用説明書」は、本発明の組成物のその指定する用途についてその有用性を分かつために使用することができる公報、記録、図表または任意の他の表現媒体を含む。例えば本発明のキットの使用説明書は、組成物を含む容器に付けられているか、または組成物を含む容器と一緒に輸送されてもよい。あるいは使用説明書は、使用説明書および組成物が受容者により連携して使用されることを意図して容器とは別に輸送されてもよい。
【0078】
「単離された核酸」とは、自然に存在する状態ではそれを挟む配列から分離された核酸セグメントまたはフラグメントを称し、例えば自然に存在するゲノム中のフラグメントに隣接する配列である、例えばフラグメントに通常は隣接する配列から取り出されたDNAフラグメントを称する。この用語はまた、核酸に自然に付随する他の成分、例えば細胞中で自然に付随するRNAまたはDNAまたはタンパク質から実質的に精製された核酸にも適用する。したがってこの用語は、ベクター中に、自律複製プラスミドまたはウイルス中に、あるいは原核生物または真核生物のゲノムDNA中に取り込まれた組換えDNA、あるいは他の配列から独立して分かれた分子として存在するもの(例えばcDNAもしくはゲノムまたはPCRもしくは制限酵素消化により生産されたcDNAフラグメント)も含む。これはまたさらなるポリペプチド配列をコードするハイブリッド遺伝子の一部である組換えDNAも含む。
【0079】
2つのポリヌクレオチドを「操作可能に連結する」という記載は、2つのポリヌクレオチドの少なくとも1つが生理学的効果を発揮することができ、これにより他方が特性付けられるような様式で核酸分子中に配列された2つのポリヌクレオチドを含んで成る1本鎖または2本鎖核酸部分を意味する。例として、遺伝子のコード領域に操作可能に連結されたプロモーターはコード領域の転写を促進することができる。
【0080】
「ポリヌクレオチド」とは、核酸の1本鎖、または平行もしくは反平行鎖を意味する。すなわちポリヌクレオチドは、1本鎖または2本鎖核酸のいずれかでよい。
【0081】
用語「核酸」は、典型的には大きなポリヌクレオチドを称する。
【0082】
用語「オリゴヌクレオチド」は、典型的には短いポリヌクレオチドを称し、一般に約50ヌクレオチド以下である。ヌクレオチド配列がDNA配列により表される時(すなわち、A、T、G、C)、これはまた“T”を“U”に置き換えたRNA配列(すなわち、A、U、G、C)を含む。
【0083】
ポリヌクレオチド配列を記載するために、本明細書では通常の表記を使用する:1本鎖ポリヌクレオチド配列の左手末端は5’−末端である;2本鎖ポリヌクレオチド配列の左手方向は5’−方向と称する。
【0084】
新生RNA転写物へのヌクレオチドの5’から3’方向への付加は、転写方向と称する。mRNAと同じ配列を有するDNA鎖は「コード鎖」と称する;DNA上の示す点より5’に位置するDNA鎖上の配列は「上流配列」と称する;DNA上の示す点より3’のDNA鎖上の配列は「下流配列」と称する。
【0085】
本明細書で使用するように、用語「プロモーター/調節配列」とは、プロモーター/調節配列に操作可能に連結された遺伝子産物の発現に必要な核酸配列を意味する。場合によりこの配列はコアプロモーター配列でよく、そして他の場合ではこの配列は、遺伝子産物の発現に必要なエンハンサー配列および他の調節要素を含んでもよい。プロモーター/調節配列は、例えば組織特異的様式で遺伝子産物を発現するものでよい。
【0086】
「構成的プロモーターは、細胞中で一定の様式で、操作可能に連結した遺伝子の発現を駆動するプロモーターである。例として細胞のハウスキーピング遺伝子の発現を駆動するプロモーターは、構成的プロモーターであると考えられる。
【0087】
「誘導性」プロモーターは、遺伝子産物をコードまたは特定するポリヌクレオチドに操作可能に連結した時、細胞中にプロモーターに対応するインデューサーが存在する時にのみ遺伝子産物が生きている細胞中で実質的に生産されるようにするヌクレオチド配列である。
【0088】
「組織特異的」プロモーターは、遺伝子産物をコードまたは特定するポリヌクレオチドに操作可能に連結した時、細胞がプロモーターに対応する組織型の細胞である時にのみ遺伝子産物が生きている細胞中で実質的に生産されるようにするヌクレオチド配列である。
【0089】
少なくとも約75%、そして好ましくは少なくとも約90%、または少なくとも約95%相補的なオリゴヌクレオチドのみが互いにアニールする条件下で2つのオリゴヌクレオチドがアニールする場合、第1のオリゴヌクレオチドは第2のオリゴヌクレオチドに、「高い緊縮度で」アニールする。2つのオリゴヌクレオチドをアニールするために使用する条件の緊縮度は、因子の中でもアニーリング媒質の温度、イオン強度、インキューベーション時間、オリゴヌクレオチドの長さ、オリゴヌクレオチドのG−C含量、および分かっている場合は2つのオリゴヌクレオチド間の予想される非−相同性の程度の関数である。アニーリング条件の緊縮度を調整する方法は既知である(例えば、Sambrook et al.、1989、モレキュラークローニング:ア ラボラトリーマニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)、コールドスプリングハーバーラボラトリー、ニューヨークを参照にされたい)。
【0090】
用語「実質的に純粋」とは、自然に付随する成分から分離された化合物、例えばタンパク質またはポリペプチドを言う。典型的には、化合物はサンプル中の全材料の少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも90%、そして最も好ましくは少なくとも99%(容量によりか、湿潤重量または乾燥重量によるか、またはモルパーセントまたはモル画分による)が目的とする化合物である時に実質的に純粋である。純度は任意の適当な方法、例えばポリペプチドの場合はカラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動またはHPLC分析により測定することができる。化合物、例えばタンパク質も、それが自然に付随する成分を本質的に含まない時、あるいはそれが自然な状態で付随する天然の混入物から分離されている時に実質的に精製されている。
【0091】
本明細書で使用する「実質的に純粋な核酸」は、それを自然に存在する状態で挟んでいる配列から精製された核酸配列、セグメントまたはフラグメント、例えば通常、フラグメントに隣接する配列、例えばDNAが自然に存在するゲノム中のフラグメントに隣接する配列から取り出されたDNAフラグメントを称する。この用語はまた、自然に核酸に付随する他の成分、例えば細胞中で核酸に自然に付随するRNAまたはDNAまたはタンパク質から実質的に精製された核酸にも適用する
「予防的」処置とは、疾患に関係する病状を発症する危険性を下げる目的で、疾患の兆候を表さないか、または疾患の初期の兆候のみを現す個体に投与する処置である。
【0092】
「治療的」処置とは、病状の兆候を下げるか、または排除する目的で、病状の兆候を現す個体に投与する処置である。
【0093】
「治療に効果的な量」の化合物は、化合物を投与する個体に有益な効果を提供するために十分な化合物の量である。「ベクター」は単離された核酸を含んで成り、そして単離された核酸を細胞内部に送達するために使用することができる物質の組成物である。多数のベクターが当該技術分野では知られており、それらには限定するわけではないが、直線状ポリヌクレオチド、イオン性または両イオン性化合物を付随するポリヌクレオチド、プラスミドおよびウイルスが含まれる。すなわち用語「ベクター」には、自律複製プラスミドまたはウイルスを含む。この用語は、例えばポリリシン化合物、リポソーム等のような核酸を細胞に移し易くする非プラスミドおよび非ウイルス化合物も含むと解釈されるべきである。ウイルスベクターの例には、限定するわけではないがアデノウイルスベクター、アデノ−随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター等を含む。
【0094】
「発現ベクター」には、発現するヌクレオチド配列に操作可能に連結された発現制御配列を含んで成る組換え体ポリヌクレオチドを含んで成るベクターを称する。発現ベクターは発現に関して十分にシスに作用する要素を含んで成り;発現に関する他の要素は宿主細胞またはインビトロ発現系により供給することができる。発現ベクターには、コスミド、プラスミド(例えば裸の、またはリポソームに含まれた)、および組換え体ポリヌクレオチドに組み込まれたウイルスのような当該技術分野で既知のこれらすべてを含む。
ペプチドの修飾および合成
以下の章はペプチドの修飾およびそれらの合成に関する。もちろん本発明の方法に有用なペプチドは活性に影響することなく修飾されたアミノ酸残基を包含してよい。例えば末端はブロッキング基、すなわちN−およびC−末端を「望ましくない分解」(この用語は、化合物の機能に影響を及ぼす可能性がある化合物のその末端での任意の種類の酵素的、化学的または生化学的分解、すなわち化合物のそれらの末端での連続分解を包含することを意味する)から保護し、かつ/または安定化するために適当な化学的置換基を含むように誘導化することができる。
【0095】
ブロッキング基には、ペプチドのインビボ活性に悪い影響を及ぼさないペプチド化学の分野で通常に使用されている保護基を含む。例えば適当なN−末端ブロッキング基は、N−末端のアルキル化またはアシル化により導入することができる。適当なN−末端ブロッキング基の例には、C1−C5分枝または非分枝アルキル基、ホルミルおよびアセチル基のようなアシル基、ならびにアセトアミドメチル(Acm)基のようなそれらの置換形を含む。アミノ酸のデスアミノ同族体も有用なN−末端ブロッキング基であり、そしてペプチドのN−末端にカップリングするか、またはN−末端残基の代わりに使用することができる。C−末端のカルボキシル基が含まれているか、またはいないいずれかの適当なC−末端ブロッキング基には、エステル、ケトンまたはアミドを含む。エステルまたはケトンを形成するアルキル基、特にメチル、エチルおよびプロピルのような低級アルキル基、および1級アミン(−NH2)のようなアミドを形成するアミノ基、およびメチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルエチルアミノ等のようなモノ−およびジ−アルキルアミノ基は、C−末端ブロッキング基の例である。アグマチン(agmatine)のようなデスカルボキシル化アミノ酸同族体も有用なC−末端ブロッキング基であり、そしてペプチドのC−末端残基にカップリングするか、またはそれに代えて使用することができる。さらに末端の遊離アミノおよびカルボキシル基をペプチドから一緒に除去して、ペプチドの活性に影響を及ぼさずにそれらのデスアミノおよびデスカルボキシル化形態を得ることができると考えられる。
【0096】
他の修飾もペプチドの生物活性に悪い影響を及ぼさずに包含することができ、これらには限定するわけではないが、1以上の自然なL−異性体のアミノ酸をD−異性体のアミノ酸に置換することを含む。すなわちペプチドは1以上のD−アミノ酸残基を含んでもよく、あるいはすべてがD−形であるアミノ酸を含んで成ってもよい。本発明によるペプチドのレトロ−インベルソ形、例えばすべてのアミノ酸がD−アミノ酸形に置換された逆転ペプチドも意図する。
【0097】
本発明の酸付加塩は、機能的均等物と意図する。すなわち本発明のペプチドは、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、または酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、蓚酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、シンナミン、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸等のような有機酸で処理して、本発明の方法での使用に適するペプチドの水溶性塩を提供する。
【0098】
本発明はまた、本明細書に開示する核酸によりコードされるタンパク質またはペプチドの同族体を提供する。同族体は、保存的アミノ酸配列の差異により、または配列に影響しない修飾により、または両方により自然に存在するタンパク質またはペプチドとは異なることができる。
【0099】
例えば保存的アミノ酸の変化を行うことができ、これはタンパク質またはペプチドの1次配列を改変するが、通常その機能は改変しない。保存的アミノ酸置換は、典型的には以下の群内の置換を含む:
グリシン、アラニン;
バリン、イソロイシン、ロイシン;
アスパラギン酸、グルタミン酸;
アスパラギン、グルタミン;
セリン、トレオニン;
リシン、アルギニン;
フェニルアラニン、チロシン。
【0100】
上記のように、修飾(通常は1次配列を改変しない)は、ポリペプチドのインビボまたはインビトロの化学的誘導化、例えばアセチル化またはカルボキシル化を含む。またグリコシレーションの修飾、例えばポリペプチドの合成およびプロセッシングまたはさらなるプロセッシング工程中にグリコシル化パターンを修飾することにより作られるもの;例えばポリペプチドをグリコシル化に影響を及ぼす酵素(例えば哺乳動物のグリコシル化または脱グリコシル化酵素)に暴露することによるものを含む。またリン酸化アミノ酸残基、例えばホスホチロシン、ホスホセリンまたはホスホトレオニンを有する配列も含む。
【0101】
また、タンパク質溶解的分解に対するそれらの耐性を改善するために、または溶解性を至適化するために、または治療薬としてより適するようにするために、通例の分子生物学的技法を使用して修飾したポリペプチドを含む。そのようなポリペプチドの同族体には、自然に存在するL−アミノ酸以外の残基、例えばD−アミノ酸または自然には存在しない合成アミノ酸を含有するものを含む。本発明のペプチドは本明細書に記載する具体的な例示法の生成物に限定されない。
【0102】
本発明のペプチドは、Stewart et alにより固相ペプチド合成(Solid Phase Peptide Synthesis)、第2版、1984、ピアス化学社(Pierce Chemical Company)、ロックフォード、イリノイ州に記載されているように;およびBondanszky and Bondanszkyによりペプチド合成の実際(The Practice of Peptide Synthesis)、1984、スプリンガー出版、ニューヨークに記載されているように、標準的な十分に確立された固相ペプチド合成(SPPS)により容易に調製することができる。最初に、適当に保護されたアミノ酸残基を、そのカルボキシル基を通して架橋結合したポリスチレンまたはポリアミド樹脂のような誘導化された不溶性のポリマー性支持体に付ける。「適当に保護された」とは、アミノ酸のα−アミノ基上の、および任意の側鎖官能基上の両方の保護基の存在を言う。側鎖保護基は一般に合成を通じて使用する溶媒、試薬および反応条件に対して安定であり、そして最終的なペプチド生成物に影響を与えない条件下で除去することが可能である。オリゴペプチドの段階的合成は、最初のアミノ酸からN−保護基の除去により行い、そしてそれに所望するペプチドの配列中の次のアミノ酸のカルボキシル末端をカップリングさせる。このアミノ酸も適当に保護される。入って来るアミノ酸のカルボキシルを活性化し、支持体に結合しているアミノ酸のN−末端と、カルボジイミド、対称酸無水物またはヒドロキシベンゾトリアゾールまたはペンタフルオロフェニルエステルのような「活性エステル」基の形成のような反応性基の形成により反応させることができる。
【0103】
固相ペプチド合成法の例には、α−アミノ保護基としてtert−ブトキシカルボニルを利用するBOC法、およびアミノ酸残基のα−アミノを保護するために9−フルオレニルメチルオキシカルボニルを利用するFMOC法を含み、その両方法が当業者には周知である。
【0104】
N−および/またはC−ブロッキング基の取り込みは、固相ペプチド合成法に通例なプロトコールを使用して行うこともできる。C−末端ブロッキング基を取り込むためには、例えば所望のペプチド合成を典型的には固相として、樹脂からの開裂が所望のC−末端ブロッキング基を有するペプチドを生じるように、化学的に修飾された支持体樹脂を使用して行う。C−末端が1級アミノブロッキング基を持つペプチドを提供するために、例えば合成はp−メチルベンズヒドリルアミン(MBHA)樹脂を使用して、ペプチド合成が終了した時、塩酸を用いた処理により所望するC−末端がアミド化されたペプチドを放出するように行う。同様にC−末端でのN−メチルアミンブロッキング基の取り込みは、N−メチルアミノエチル−誘導化DVB、HF処理でN−メチルアミド化C−末端を持つペプチドを放出する樹脂を使用して行う。エステル化によるC−末端のブロッキングも、通例の手順を使用して達成することができる。これにより樹脂から側鎖ペプチドの放出を可能とする樹脂/ブロッキング基の組み合わせの使用を伴い、引き続き所望するアルコールを用いた処理でエステル官能基の形成を可能とする。メトキシアルコキシベンジルアルコールまたは均等なリンカーで誘導化されたDVB樹脂と組み合わせたFMOC保護基をこの目的に使用することができ、支持体からの開裂はジクロロメタン中のTFAにより行う。適当に活性化されたカルボキシル官能基の例えばDCCを用いたエステル化は、所望のアルコールの添加、続いて脱保護、そしてエステル化ペプチド生成物の単離により進めることができる。
【0105】
N−末端ブロッキング基の取り込みは、例えば適当な無水物およびニトリルを用いた処理により合成するペプチドが樹脂に付いている間に行うことができる。例えばN−末端にアセチルブロッキング基を取り込むために、樹脂にカップリングしたペプチドをアセトニトリル中の20%無水酢酸で処置することができる。N−ブロッキングしたペプチド生成物は次に樹脂から開裂し、脱保護し、そして引き続いて単離することができる。
【0106】
化学的または生物学的合成法のいずれかから得たペプチドが所望するペプチドであることを確認するために、ペプチド組成の分析を行うべきである。そのようなアミノ酸組成分析は高解像マススペクトロメトリーを使用して行い、ペプチドの分子量を決定することができる。あるいは、または加えて、ペプチドのアミノ酸含量を水性の酸中でペプチドを加水分解し、そして分離し、同定し、そしてHPLCを使用して、あるいはアミノ酸分析機使用して混合物の成分を定量することにより確認することができる。ペプチドを連続的に分解し、そして順序正しくアミノ酸を同定するタンパク質シークエネーターも、ペプチド中の配列を明らかに定めるために使用することができる。
【0107】
本発明の方法で使用する前に、ペプチドは精製して混入物を除去する。これに関して、ペプチドは適切な管理会社により設定された標準に合うように精製されると思われる。多数の通例の精製手順の1つを使用して、必要な純度のレベルに達することができ、それらの方法には例えばC4−、C8−またはC18−シリカのようなアルキル化シリカカラムを使用する逆相高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)を含む。有機含量を上げる勾配移動相、例えば通常は少量のトリフルオロ酢酸を含有する水性バッファー中のアセトニトリルを一般に精製に使用する。イオン−交換クロマトグラフィーもそれらの電荷に基づきペプチドを分離するために使用することができる。
医薬組成物
本明細書に記載する任意の方法を使用して同定される化合物は配合され、そして本明細書に開示する疾患の処置に哺乳動物に投与することができることを今、記載する。
【0108】
本発明は、有効成分として本発明の方法に有用な化合物を含んで成る医薬組成物の調製および使用を包含する。そのような医薬組成物は個体に投与するための適当な形態中に有効成分単独で成るか、または医薬組成物は有効成分および1以上の医薬的に許容されるキャリアー、1以上のさらなる成分、またはこれらの組み合わせを含んで成ることができる。有効成分は当該技術分野で周知であるように、生理学的に許容されるカチオンまたはアニオンと組み合わせるような、生理学的に許容されるエステルまたは塩の状態で医薬組成物中に存在することができる。
【0109】
本明細書で使用するように用語「医薬的に許容されるキャリアー」とは、有効成分と組み合わせられ、そして組み合わせた後に個体に有効成分を投与するために使用することができる化学組成物を意味する。
【0110】
本明細書で使用するように用語「生理学的に許容される」エステルまたは塩とは、医薬組成物中の他の成分と適合性がある有効成分のエステルまたは塩の状態を意味し、これは組成物が投与される個体に対して有害ではない。
【0111】
本明細書に記載する医薬組成物の製剤は薬理学の分野で既知の、またはこれから開発される任意の方法により調製することができる。一般にそのような調製法には、有効成分をキャリアーまたは1以上の他の補助成分と合わせ、そして次いで必要または望む場合は、生成物を所望の単−または多−投薬用量単位に成形または包装する工程を含む。
【0112】
本明細書で提供される医薬組成物の記載は、原理的にはヒトに医師の処方に基づき投与するために適する医薬組成物を対象とするが、当業者はそのような組成物がすべての種類の動物への投与に一般に適当であると理解するだろう。組成物を種々の動物への投与に適するようにするために、ヒトへの投与に適する医薬組成物の修飾は十分に理解されており、そして標準的な技術を持つ獣医薬理学者は、必要ならば実験を行い、単に日常的なそのような修飾を計画し、そして行うことができる。本発明の医薬組成物の投与が意図される個体は、限定するわけではないが、ヒトおよび他の霊長類、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ネコおよびイヌのような商業的に意味のある哺乳動物、ニワトリ、アヒル、ガチョウおよび七面鳥を含む商業的に意味のある鳥である。
【0113】
本発明の方法に有用な医薬組成物は、経口、直腸、膣、非経口、肺、鼻内、頬面、目内、気管内または投与の他の経路に適する形態に調製、包装、そして販売することができる。他の意図する製剤には、放出される(projected)ナノ粒子、リポソーム調製物、有効成分を含有する再封(resealed)赤血球、および免疫学に基づく製剤を含む。
【0114】
本発明の医薬組成物は、単位投薬用量として、または複数の単位投薬用量として調製、包装、またはバルクで販売されることができる。本明細書で使用する「単位投薬用量」とは、予め定めた量の有効成分を含んで成る医薬組成物の別個の量である。有効成分の量は一般に、個体に投与される有効成分の投薬用量に等しいか、あるいは例えばそのような投薬用量の半分または3分の1のような投薬用量の便利な画分である。
【0115】
本発明の医薬組成物中の有効成分、医薬的に許容されるキャリアーおよびさらなる成分の相対的量は、処置する個体の同一性、サイズ、および状態に依存して、およびさらに組成物が投与される経路に依存して変動するだろう。例として組成物は0.1%から100(重量/重量)%の間の有効成分を含んで成ることができる。
【0116】
有効成分に加えて、本発明の医薬組成物はさらに1以上の付加的な医薬的に活性な作用物質を含んで成ることができる。特に意図する付加的な作用物質にはシアニドおよびシアネートスカベンジャーのような制吐薬およびスカベンジャーを含む。
【0117】
本発明の医薬組成物の制御された、または徐放性の製剤は、通例の技法を使用して作ることができる。
【0118】
経口投与に適する本発明の医薬組成物の製剤は、限定するわけではないが各々が予め定めた量の有効成分を含有する錠剤、硬質または軟質カプセル、カシェ剤、トローチまたはロゼンジを含む別々の固体の用量単位の状態で調製、包装または販売されることができる。経口投与に適する他の製剤は、限定するわけではないが粉末化または粒状製剤、水性または油性懸濁液、水性または油性溶液または乳液を含む。
【0119】
本明細書で使用するように、「油性」液体は炭素を含有する液体分子を含んで成り、そして水よりも低い極性を現すものである。
【0120】
有効成分を含んで成る錠剤は、例えば場合により1以上のさらなる成分と共に有効成分を圧縮または成型することにより作ることができる。圧縮錠剤は、適当なデバイス中で、場合により1以上の結合剤、潤滑剤、賦形剤、表面活性剤および分散剤と混合した粉末または粒状調製物のような自由に流動する状態で有効成分を圧縮することにより調製できる。成型された錠剤は、適当なデバイス中で有効成分、医薬的に許容されるキャリアーおよび混合物を湿らせるために少なくとも十分な液体の混合物を成型することにより作ることができる。錠剤の製造に使用する医薬的に許容される賦形剤には、限定するわけではないが、不活性希釈剤、造粒および崩壊剤、結合剤、および潤滑剤を含む。既知の分散剤には限定するわけでないが、ジャガイモ澱粉およびグリコール酸ナトリウム澱粉を含む。既知の表面活性剤には限定するわけではないが、ラウリル硫酸ナトリウムを含む。既知の希釈剤には限定するわけではないが、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、微晶質セルロース、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウムおよびリン酸ナトリウムを含む。既知の造粒および崩壊剤は限定するわけではないが、トウモロコシ澱粉およびアルギン酸を含む。既知の結合剤には限定するわけではないが、ゼラチン、アカシア、前−ゼラチン化トウモロコシ澱粉、ポリビニルピロリドンおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む。既知の潤滑剤には限定するわけではないが、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、シリカおよびタルクを含む。
【0121】
錠剤は非コートでもよく、あるいは既知の方法を使用してコートして個体の胃腸管での崩壊を遅らせ、これにより徐放性および有効成分の吸収を提供することができる。例としてモノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルのような材料を錠剤にコートするために使用することができる。さらなる例として、錠剤は米国特許第4,256,108号;同第4,160,452号;および同第4,265,874号明細書に記載されている方法を使用してコートして、浸透的に制御された放出錠剤を形成してもよい。錠剤は医薬的に洗練され、そして口に合う調製物を提供するために、さらに甘味料、香料、着色剤、保存剤、またはこれらの幾つかの組み合わせを含んで成ることができる。
【0122】
有効成分を含んで成る硬質カプセルは、ゼラチンのような生理学的に分解可能な組成物を使用して作ることができる。そのような硬質カプセルは有効成分を含んで成り、そしてさらに例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリンのような不活性な固体希釈剤を含む付加的な成分を含んで成ることができる。
【0123】
有効成分を含んで成る軟質ゼラチンカプセルは、ゼラチンのような生理学的に分解可能な組成物を使用して作ることができる。そのような軟質カプセルは有効成分を含んで成り、これは水またはピーナッツ油、液体パラフィンまたはオリーブ油のような油媒質と混合してもよい。
【0124】
経口投与に適する本発明の医薬組成物の液体製剤は、液体状態で、または使用前に水もしくは別の適当な賦形剤を用いて再構成することを意図した乾燥生成物の状態で調製、包装、そして販売され得る。
【0125】
液体懸濁液は、水性または油性賦形剤中に有効成分の懸濁液を作成するための通例の方法を使用して調製することができる。水性賦形剤には、例えば水および等張性塩溶液を含む。油性賦形剤には、例えばアーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、落花生、オリーブ、ゴマのような植物油、またはヤシ油、分画した植物油、および液体パラフィンのような鉱物油を含む。液体懸濁液はさらに、限定するわけではないが沈殿防止剤、分散剤または湿潤剤、乳化剤、粘滑剤、保存剤、バッファー、塩、香料、着色剤、および甘味料を含む1以上の付加的成分を含んで成ることができる。油性懸濁液はさらに、増粘剤を含んでもよい。既知の沈殿防止剤には限定するわけではないが、スルビトールシロップ、水素化可食性脂肪、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、アカシアゴム、およびカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースのようなセルロース誘導体を含む。既知の分散剤または湿潤剤は限定するわけではないが、レシチンのような自然に存在するホスファチド、アルキレンオキシドと脂肪酸と、長鎖脂肪族アルコールと、脂肪酸およびヘキシトールに由来する部分的エステルと、または脂肪酸および無水ヘキシトールに由来する部分エステルとの縮合生成物(例えば、それぞれポリオキシエチレンステアレート、ヘプタデカエチレンオキシセタノール、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレート、およびポリオキシエチレンソルビタンモノオレート)を含む。既知の乳化剤には限定するわけではないが、レシチンおよびアカシアを含む。既知の保存剤には限定するわけではないが、メチル、エチルまたはn−プロピル−パラ−ヒドロキシベンゾエート、アスコルビン酸およびソルビン酸を含む。既知の甘味料には、例えばグリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、シュクロースおよびサッカリンを含む。油性懸濁液用の既知の増粘剤には、例えば蜜蝋、硬質パラフィンおよびセチルアルコールを含む。
【0126】
水性または油性溶媒中の有効成分の液体溶液は、実質的には液体懸濁液と同じ様式で調製できるが、主な差異は有効成分が溶媒中に懸濁しているというより溶解している点である。本発明の医薬組成物の液体溶液は、液体懸濁液に関して記載した各成分を含んで成ることができ、沈殿防止剤は溶媒に有効成分を溶解する目的には必要ないと考えられる。水性溶媒は、例えば水および等張性塩溶液を含む。油性溶媒には、例えばアーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、落花生、オリーブ、ゴマのような植物性油、またはヤシ油、分画した植物油、および液体パラフィンのような鉱物油を含む。
【0127】
本発明の医薬調製物の粉末化および粒状製剤は、既知の方法を使用して調製することができる。そのような製剤は、例えば錠剤を形成するために、カプセルを充填するために、または水性もしくは油性賦形剤を加えることにより水性もしくは油性懸濁液または溶液を調製するために使用して個体に直接投与することができる。これらの製剤の各々はさらに、1以上の分散または湿潤剤、沈殿防止剤および保存剤を含んで成ってもよい。増量剤および甘味剤、香料または着色剤のようなさらなる賦形剤もこれらの製剤に含むことができる。
【0128】
本発明の医薬組成物は、水中油型の乳液または油中水型の乳液の状態で調製、包装または販売することもできる。油相はオリーブ油または落花生油のような植物性油、液体パラフィンのような鉱物油、あるいはこれらの組み合わせでよい。そのような組成物はさらに、アカシアゴムまたはトラガカントガムのような自然に存在するゴム、ダイズまたはレシチンホスファチドのような自然に存在するホスファチド、ソルビタンモノオレートのような脂肪酸と無水ヘキシトールの組み合わせに由来するエステルまたは部分エステル、およびポリオキシエチレンソルビタンモノオレートのようなそのような部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物のような、1以上の乳化剤をさらに含んで成ることができる。これらの乳液はまた、例えば甘味剤または香料のような付加的成分を含んでもよい。
【0129】
本発明の医薬組成物は、直腸投与に適する製剤に調製し、包装し、そして販売することができる。そのような組成物は、例えば座薬、停留浣腸調製物および直腸または結腸潅注用の溶液の状態でよい。
【0130】
座薬製剤は、有効成分を通常の室温(すなわち約20℃)で固体であり、そして個体の直腸内温度(すなわち健康なヒトでは約37℃)で液体である非炎症性の医薬的に許容される賦形剤と合わせることにより作成できる。適当な医薬的に許容される賦形剤には、限定するわけではないが、カカオ脂、ポリエチレングリコール、および種々のグリセリドを含む。座薬製剤は限定するわけではないが、酸化防止および保存剤を含む種々の付加的成分をさらに含んで成ることができる。
【0131】
直腸または結腸潅注用の停留浣腸調製物または溶液は、有効成分を医薬的に許容される液体キャリアーと合わせることにより作成できる。当該技術分野で周知なように、浣腸調製物は個体の直腸構造に合わせた送達デバイスを使用して投与され、そしてその中に包装されることができる。浣腸調製物は限定するわけではないが酸化防止剤および保存剤を含む種々の付加的成分をさらに含んで成ることができる。
【0132】
本発明の医薬組成物は、膣投与用に適する製剤の状態で調製、包装または発売することができる。そのような組成物は例えば座薬、含浸またはコートしたタンポンのような膣に挿入可能な材料、膣洗浄用調製物、またはゲルもしくはクリームもしくは膣潅注用の溶液のような状態であることができる。
【0133】
化学組成物で材料を含浸またはコートする方法は当該技術分野では既知であり、そして限定するわけではないが化学組成物を表面に沈積または結合させる方法、化学組成物を材料の合成中に材料の構造に取り込む方法(すなわち、生理学的に分解可能な材料を用いるような)、および水性もしくは油性溶液または懸濁液を吸収材料に吸収させ、その後に乾燥させるか、またはさせない方法を含む。
【0134】
膣内潅注のための膣洗浄用調製物または溶液は、有効成分を医薬的に許容される液体キャリアーと合わせることにより作成できる。当該技術分野で周知なように、膣洗浄用調製物は個体の膣の構造に合わせた送達デバイスを使用して投与され、そしてその中に包装されることができる。膣洗浄用調製物は限定するわけではないが酸化防止剤、抗生物質、抗真菌剤および保存剤を含む種々の付加的成分をさらに含んで成ることができる。
【0135】
本明細書で使用する医薬組成物の「非経口投与」には、個体の組織の物理的裂け目を特徴とする投与、および組織中の裂け目を通す医薬組成物の投与の任意の経路を含む。このような非経口投与には、限定するわけではないが組成物の注射による、外科的創傷を通す組成物の適用による、組織を浸透する非外科的創傷を通す組成物の適用による医薬組成物の投与等を含む。特に非経口投与には、限定するわけではないが皮下、腹腔、筋肉内、胸骨内注射、および腎臓透析注入法を含む。
【0136】
非経口投与に適する医薬組成物の製剤は、滅菌水または滅菌等張塩溶液のような医薬的に許容されるキャリアーと合わせた有効成分を含んで成る。そのような製剤は、ボーラス投与または連続投与に適する状態で調製、包装または販売することができる。注射可能な製剤は、保存剤を含有するアンプルまたは多回用量容器のような単位剤形で調製、包装または販売することができる。非経口投与用製剤は、限定するわけでないが懸濁液、溶液、油性または水性賦形剤中の乳液、ペースト、および移植可能な徐放性または生分解性製剤を含む。そのような製剤は、限定するわけでないが沈殿防止剤、安定化剤または分散剤を含む1以上の付加的成分をさらに含んでよい。非経口投与用の製剤の1つの態様では、有効成分は再構成された組成物の非経口投与前に、適当な賦形剤(例えば滅菌された発熱物質を含まない水)で再構成するための乾燥状(すなわち粉末または粒状)で提供される。
【0137】
医薬組成物は、滅菌された注射可能な水性または油性懸濁液または溶液の状態で調製され、包装され、そして販売されることができる。この懸濁液または溶液は既知の技術に従い配合され、そして有効成分に加えて本明細書に記載する分散剤、湿潤剤、または沈殿防止剤を含んで成ることができる。そのような滅菌された注射可能な製剤は、例えば水または1,3−ブタンジオールのような非毒性の非経口的に許容されうる希釈剤または溶媒を使用して調製することができる。他の許容できる希釈剤および溶媒には、限定するわけではないがリンゲル溶液、等張塩化ナトリウム溶液および合成モノ−またはジ−グリセリドのような固定油を含む。有用である他の投与可能な製剤には、微晶質状中に、リポソーム調製物中に、あるいは生分解性ポリマー系の成分として有効成分を含んで成るものを含む。徐放性または移植用の組成物には、乳液、イオン交換樹脂、溶解性が乏しいポリマー、または溶解性が乏しい塩のような医薬的に許容されるポリマー性または疎水性材料を含んで良い。
【0138】
局所投与に適する製剤には、限定するわけでないがクリーム、軟膏またはペーストのようなリニメント、ローション、水中油型または油中水乳液のような液体または半−液体調製物、および溶液または懸濁液を含む。局所的に投与可能な製剤は、例えば約1%〜約10(重量/重量)%の有効成分を含んで成ることができるが、有効成分の濃度は溶媒中の有効成分の溶解度の限界の高さでよい。局所投与用の製剤は、本明細書に記載するさらに1以上の付加的成分を含んで成ることができる。
【0139】
本発明の医薬組成物は、頬面窩洞を介する肺への投与に適する製剤に調製、包装または販売することができる。そのような製剤は有効成分を含んで成り、そして約0.5〜約7ナノメートル、そして好ましくは約1〜約6ナノメートルの範囲の直径を有する乾燥粒子を含んで成ることができる。そのような組成物は、推薬流を粉末を分散させるために向ける乾燥粉末リザーバーを含んで成るデバイスを使用するか、あるいは密閉容器中の低沸点推薬に溶解または懸濁した有効成分を含んで成るデバイスのような自己−推進溶媒/粉末−分散容器を使用した、投与に都合良い乾燥粉末状であることができる。好ましくはそのような粉末は、少なくとも粒子の95重量%が0.5ナノメートルの直径よりも大きく、そして少なくとも粒子数の95%が7ナノメートル未満の直径を有する。より好ましくは少なくとも粒子の95重量%が1ナノメートルの直径よりも大きく、そして少なくとも粒子数の90%が6ナノメートル未満の直径を有する。乾燥粉末組成物は、好ましくは糖のような微細な固体の粉末希釈剤を含み、そして単位剤形で都合よく提供される。
【0140】
低沸点の推薬には一般に、大気圧下で65゜F未満の沸点を有する液体推薬を含む。一般に推薬は組成物の50〜99.9(重量/重量)%を構成することができ、そして有効成分は組成物の0.1〜20(重量/重量)%を構成することができる。推薬はさらに液体の非イオン性または固体のアニオン性表面活性剤または固体希釈剤(好ましくは有効成分を含んで成る粒子と同じ次元の粒子サイズを有する)のような付加的成分を含んで成ることができる。
【0141】
肺へ送達するために配合される本発明の医薬組成物も、溶液または懸濁液の液滴の状の有効成分を提供することができる。そのような製剤は有効成分を含んで成る場合によっては滅菌された水性または希釈アルコール溶液または懸濁液として調製、包装または販売されることができ、そして噴霧化または微塵化デバイスを使用して都合よく投与することができる。そのような製剤はさらに、限定するわけでないがサッカリンナトリウムのような香料、揮発性油、緩衝剤、表面活性剤またはメチルヒドロキシベンゾエートのような保存剤を含む1以上の付加的成分を含んで成ることができる。この投与経路により提供される液滴は、好ましくは約0.1〜約200ナノメートルの範囲の平均直径を有する。
【0142】
本明細書で肺への送達に有用であると記載する製剤は、本発明の医薬組成物の鼻内送達にも有用である。
【0143】
鼻内投与に適する別の製剤は、有効成分を含んで成り、そして約0.2〜500マイクロメートルの平均粒子を有する粗い粉末である。そのような製剤は鼻からかぐ様式で、すなわち鼻孔付近に保持された粉末の容器から鼻の通路を通す迅速な吸入により投与される。
【0144】
鼻からの投与に適する製剤は、例えば有効成分をわずか約0.1(重量/重量)%から、100(重量/重量)%までも含んで成ることができ、そしてさらに本明細書に記載する1以上の付加的な成分を含んでもよい。
【0145】
本発明の医薬組成物は、バッカル投与に適する製剤で調製、包装または販売することができる。そのような製剤は、常法を使用して作成することができる錠剤またはトローチ状であることができ、そして例えば0.1〜20(重量/重量)%の有効成分、経口で溶解または分解可能な組成物を含んで成るバランス、および場合により本明細書に記載した1以上の付加的成分を含んで成る。あるいはバッカル投与に適する製剤は、有効成分を含んで成る粉末またはエアゾール化もしくは微塵化した溶液もしくは懸濁液を含んで成ることもできる。そのような粉末化、エアゾール化またはエアゾール化した製剤は分配した時に、好ましくは約0.1から約200ナノメートルの範囲の平均粒子または液滴サイズを有し、そしてさらに本明細書に記載する1以上の付加的な成分を含んでもよい。
【0146】
本発明の医薬組成物は、眼内投与に適する製剤で調製、包装または販売することができる。そのような製剤は例えば水性または油性液体キャリアー中に有効成分の0.1〜1.0(重量/重量)%溶液または懸濁液を含む点眼薬の状態でよい。そのような液滴はさらに、緩衝剤、塩または本明細書に記載する1以上の他の付加的な成分を含んでもよい。有用である他の眼内に投与可能な製剤には、微晶質形またはリポソーム調製物中に有効成分を含んで成るものを含む。
【0147】
本明細書で使用するように、「付加的な成分」には限定するわけでないが、1以上の以下の成分を含む:賦形剤;表面活性剤;分散剤;不活性希釈剤;造粒剤および崩壊剤;結合剤;潤滑剤;甘味剤;香料;着色剤;保存剤;ゼラチンのような生理学的に分解可能な組成物;水性賦形剤および溶媒;油性賦形剤および溶媒;沈殿防止剤;分散および湿潤剤;乳化剤;粘滑剤;バッファー;塩;増粘剤;増量剤;乳化剤;酸化防止剤;抗生物質;抗真菌剤;安定化剤;および医薬的に許容されるポリマー性または疎水性材料。本発明の医薬組成物に含むことができる他の「付加的な成分」は、当該技術分野では既知であり、そして例えばGenaro編集、1985、シミングトンの製薬科学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)、マック(Mack)出版社、イーストン、ペンシルベニア州に記載され、これは引用により本明細書に編入する。
【0148】
PEDFを含んで成る徐放性組成物も特に有用となり得る。例えば徐放性組成物は目の硝子体に使用することができ、そしてまた目の後ろに使用することもできる。本明細書のいたることろで記載するように、徐放性組成物はPEDFを投与するために全身性または他の送達経路にも有用であり得る。当業者は、望ましい結果を達成するために所望の疾患を処置するために使用することができる適切な徐放性組成物を知っている。
【0149】
典型的には動物、好ましくはヒトに投与することができる本発明の組成物の投薬用量は、動物の体重1kgあたり1μg〜約100gの量の範囲である。投与する正確な投薬用量は、限定するわけでないが動物の種類および処置する疾患状態の種類、動物の年齢および投与経路を含む多数の種々の因子に依存して変動するだろう。好ましくは化合物の投薬用量は、動物の体重1kgあたり約1mg〜約10gで変動するだろう。より好ましくは投薬用量は動物の体重1kgあたり約10mg〜約1gで変動するだろう。
【0150】
化合物は動物に毎日、数回の頻度で投与することができ、あるいは化合物は1日1回、1週間に1回、2週間毎に1回、1月に1回、または数ケ月に1回または1年に1回未満のようなさらに少ない頻度で投与することもできる。投薬の頻度は当業者には容易に明らかであり、そして限定するわけでないが処置する疾患の種類および重篤度、動物の種類および年齢等のような任意の数の因子に依存するだろう。
【0151】
【実施例】
実施例
ここで本発明を以下の実施例を参照にして記載する。これらの実施例は具体的説明の目的のみに提供され、そして本発明がこれらの実施例に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ本明細書に提供される技法の結果として明らかとなる任意の、そしてすべての変更を包含すると解釈するべきである。
【0152】
細胞培養、タンパク質およびDNAの操作等のようなこれらの実施例で使用する手法は、当該技術分野では周知である(一般にSambrook et al.,同上を参照にされたい)。したがって簡潔にするために、実験プロトコールは詳細に記載しない。
実施例1
ここに記載するデータは、PEDFが内皮細胞の移動を防止することを示す。
【0153】
様々な血管内皮細胞型の移動は、PEDFを培養した内皮細胞、特にウシの腎近傍毛細管、ヒトの臍帯およびヒトの皮膚の微小血管組織から単離した内皮細胞に加えることにより測定した。
【0154】
細胞は、逆転させて改良したBoydenチャンバー中のゼラチンで固めたNucleopore膜(ウシの毛細管細胞には5μm孔、そして他の細胞には8μm孔)上にまいた。2時間後、チャンバーを再度逆転させ、そして試験物質を各ウェルの上に加えた。具体的には群を培養基のみ(対照)、10ng/ml bFGF、2nM PEDF(完全長PEDF)、または10ng/ml bFGF(塩基性繊維芽細胞増殖因子)および10nMPEDFの両方のいずれかに暴露した。次いで細胞は3〜4時間移動できるようにした。この後に膜を固定し、そして染色し、そして移動した細胞数を計数した。
【0155】
アッセイの結果は、最大移動のパーセントとして図1に与える(誤差棒は、標準誤差測定を表す、n=4)。示すように、血管内皮細胞の3種類の型のすべてがbFGFの存在下でほぼ100%の移動を表した。しかしPEDFの存在下では、かなり少ない移動が観察された。これらの結果はPEDFが内皮細胞の移動を阻害することを示す。これらの結果は、PEDFタンパク質が培養した網膜芽腫細胞のニューロン分化を誘導し、小脳顆粒細胞の神経栄養因子およびグリア細胞の細胞分裂抑制因子になることを仮定すると、驚くことである(Taniwaki et al.,1997,J.Neurochem.68:26−32;Sugita et al.,1997,J.Neiuosci.Res.49:710−718;Tombran−Tink et al.,1991,Exp.Eye Res.53:411−414;Becerra,1997,PEDFに関する構造−機能研究(Structre−Function Studies on PEDF)、第21章、セルピンの化学および生物学で(Chemistry and Biology of Serpins)、Church et al.、編集、プレナム(Plenum)出版)。
実施例2
ここに与えるデータは、PEDFによる細胞移動の防止が内皮細胞に特異的であることを示す。
【0156】
PEDFが繊維芽細胞または平滑筋の移動を防止する能力を、ヒトの二倍体繊維芽細胞系WI−38、ヒトの包皮繊維芽細胞、血管平滑筋、および正常なヒトの好中球から得た細胞を使用して試験した。
【0157】
アッセイは実施例1に示したように行ったが、PEDFの用量を0.01nM〜約50nMに変動させ、そして移動アッセイは逆転チャンバー無しで行った。さらに移動のインデューサーは細胞の型により変動させた(IL−8は1μg/mlで使用し、そしてPEDFは250pg/mlで使用した)。
【0158】
この実験の結果は図2A−2Dに与える。これらの図で示すように、PEDFはいかなる細胞系の移動も阻害しなかった。この結果はPEDFの抗移動活性が血管内皮細胞に特異的であることを示す。
実施例3
ここに与えるデータは、PEDFが他の抗新脈管形成因子と比べた時に、内皮細胞移動の最も有力な阻害物質であることを示す。
【0159】
実施例1に概説したプロトコールに準じて、ウシの腎近傍毛細管内皮細胞をbFGF、PEDFおよび幾つかの既知の抗新脈管形成因子に暴露した。50%の移動を達成するために必要な上記因子の量を測定し、そしてED50として報告する。より小さいED50測定値はより有力な抗新脈管形成因子を示す。表1に示すこの実験の結果は、PEDFが高度に有力な抗新脈管形成因子であることを示す。
【0160】
実施例4
これらのデータは、PEDFが既知の新脈形成物質の新脈形成活性を阻害することを示す。
【0161】
実施例1に概説したプロトコールに準じて、ウシの腎近傍毛細管内皮細胞を5種の既知の新脈管形成物質単独に、または0.1μg/ml PEDFと組み合わせたものに暴露した。特にaFGFは50ng/mlの濃度で使用し、bFGFは10ng/mlの濃度で使用し、IL−8は40ng/mlの濃度で使用し、PEDFは250pg/mlの濃度で使用し、そしてVEGFは100pg/mlの濃度で使用した。
【0162】
このアッセイの結果を図3に与える。示すように、細胞の移動は脈管形成物質の種類にかかわらずPEDFによりかなり阻害された。これらの結果はPEDFが媒介する血管内皮細胞の移動の阻害がbFGF誘導に特異的ではなく、PEDFがこれらの細胞の移動を阻害するために全般的に作用することを示している。
実施例5
これらのデータは、PEDFがインビボの新生血管形成を阻害することを示す。種々のタンパク質を含んで成るペレットを、ラットの無血管角膜に移植した。ペレットはbFGFを含むか、または含まず、そしてまたはPEDFまたは対照として機能するウシ血清アルブミン(BSA)のいずれかを含んだ。7日後、ラットの角膜を調査して新脈管形成が生じたかどうかを決定した。
【0163】
このアッセイの結果を表2に与える。示すように、bFGFを欠くペレットを注入したものからは脈管形成は観察されなかった。しかしbFGFおよびBSAを用いて移植したすべての目では、脈管形成が観察された。さらにbFGFおよびPEDFを同時に注入すると、角膜には新生血管形成が生じなかった。これらの結果は、PEDFがインビボでの新脈管形成の有力なインヒビターであることを示している。
【0164】
実施例6
ここに与えるデータは、完全なPEDFタンパク質以外のPEDFポリペプチドが活性な抗新脈管形成剤であることを示す。
【0165】
完全なPEDFタンパク質のトリプシン処理は、タンパク質を配列番号1のアミノ酸352で開裂し、タンパク質の約3〜5kDaのカルボキシ末端を除去する(Becerra et al.,1995,J.Biol.Chem.270:25922−25999)。この手順を使用してフラグメントを作成し、そして短縮化N−PEDFフラグメント(配列番号1のアミノ酸21−382を表す)を、ヘパリンアフィニティクロマトグラフィーによりトリプシンから精製した。
【0166】
上記に概説したプロトコールに準じて使用して、種々の濃度の完全長PEDFまたは短縮化ペプチドのいずれかを、それら各々が内皮細胞移動に影響する能力について評価した。短縮化したペプチドに関して作成されたデータを図5に示す。これらのデータを完全長PEDFの活性(図4を参照にされたい)と比較すると、両タンパク質が内皮細胞移動の阻害に同様に有力となることが明らかである。これらの結果は完全長PEDF以外のペプチドが活性なPEDFポリペプチドであることを示している。
【0167】
PEDFに由来するさらなる短縮化ペプチドは、上記に記載したように改良Boydenチャンバー内の9代目のヒトの皮膚の微小血管内皮細胞(クローンテックス(Clonetics)、セル システムズ(Cell Systems)を使用して内皮細胞移動アッセイにおいて試験し、そして結果を図7に示す。図7Aでは、精製した組換えPEDF(rPEDF)、細菌が生産したPEDF(BH)または配列番号1に関するアミノ酸残基78−121(44−mer)および44−77(34−mer)を含むPEDFペプチドの存在下で、細胞をVEGFの勾配に暴露した。抗新脈管形成効果がPEDFペプチドに特異的であり、そして混入によるものではないかどうかを確認することを示す場合は中和抗体を加えた。完全長PEDF調製物は25nMで使用し、PEDFに対する中和ポリクローナル抗血清は、1:200希釈で、組換えヒトVEGF(R&Sシステムズ(Systems))は200pg/mlで使用した。図7Bでは、細胞を34−merおよび44−merペプチドの濃度が増しながら存在する中でVEGFの勾配に暴露した。この実験に使用した抗血清はアフィニティ精製せず、一方、ここに与える他のすべての実験で使用した抗血清はアフィニティ精製した。
【0168】
データは、418アミノ酸PEDFタンパク質の34アミノ酸ペプチドフラグメントが抗新脈管形成活性を有することを確証した。このペプチドは毛細管内皮細胞のインデューサー、VEGFへの移動を遮断した。さらにこのデータは34アミノ酸ペプチドの活性が、2つのペプチド(その1つは34−mer内に含まれた)に特異的なポリクローナル抗体の添加により排除できたことを示す。このペプチドは約10nMのED50を有する。ほとんどのペプチドがnM範囲よりはμM範囲でED50を有するので、小ペプチドは並外れて活性である。完全なPEDFに関するED50は約0.3nMである。この並外れた効力により、このペプチドは本発明の方法、そして特に新脈管形成に影響することができる治療用化合物の開発に有用となり得る。
【0169】
またこれらのデータは、抗新脈管形成性のPEDFの領域を、網膜芽腫細胞での分化を誘導する領域および神経栄養性の領域から分ける。このような後者の2つの性質は本明細書で見いだされた34アミノ酸ペプチドによっては誘導されないが、34アミノ酸ペプチドとは重複しないPEDFの隣接するペプチドフラグメントにより誘導されることが示された(Alberdi et al.,1999,J.Biol.Chem.274:31605−31612)。すなわち本発明の方法において、PEDFの神経活性が新脈管形成療法中に合併症を引き起こす場合、そのような合併症はPEDFの34アミノ酸ペプチドフラグメントを使用することにより回避することができるはずである。この知見は図7に例示され、ここではPEDFタンパク質のアミノ酸44〜77を表すPEDFの34アミノ酸ペプチドが抗新脈管形成剤として活性であるが、アミノ酸78〜121を含んで成る隣接する44アミノ酸ペプチドは抗新脈管形成剤として活性ではないことを示す。
実施例7
これらのデータは、皮膚に適用した外因性PEDFがそこでの毛髪の成長を促進することを示す。
【0170】
さらなる実験では、精製したヒスチジン−標識PEDFの注射が毛包密度の上昇、および自然には無毛である無胸腺症(ヌード/ヌード)マウスの皮膚にふさ状分岐の成長をもたらした。この結果はPEDFが新たな毛髪の成長を刺激する可能性を有することを示唆している。
【0171】
PEDFは、毛包中(毛脂腺)に存在する細胞を含む多くの細胞型により発現されるタンパク質である。毛包密度の上昇は、精製したPEDFを4日間連続して毎日注射した実験的に生成した神経芽腫の上にある皮膚で観察された。これは塩水賦形剤を同様に注射した腫瘍をもつ対照動物では観察されなかった。
【0172】
処置は、100μl容量のリン酸緩衝化生理食塩水中に全部で2μgの精製したヒスチジン−標識PEDFを4日間連続して毎日、2〜3部位/腫瘍に注射することから成った。5日目に、注射部位上に小さな増加した毛髪成長の領域が記録された。マウスは過剰用量のメタファンを使用して安楽死させ、そして腫瘍を外科的に摘出した。腫瘍組織をスライスし、そして緩衝化ホルマリンに少なくとも24時間漬けた。組織はパラフィンに包埋し、そして組織検査用に調製した。PEDFで処理した神経芽腫の上にある皮膚は、塩水賦形剤を注射した腫瘍の上にある皮膚と比べた時に、毛包密度が上昇していた(図8)。毛包密度における同様の上昇は、精製したPEDFの注射後の腫瘍の不存在下で見られた。
実施例8
ここで与えるデータは、PEDFが神経芽腫の分化を誘発するという事実を表し、これによりこれらの腫瘍を処置に関する基礎を提供する。神経芽腫細胞のインビトロ処置および実験的に作成した神経芽腫の精製したヒスチジン−標識PEDFタンパク質を用いたインビボ処置は、細胞の分化を誘発した。したがってこれらのデータは、PEDFをこれらの細胞に投与することがこれらの腫瘍の分化を誘導し、したがってよりゆっくりと成長させる効果的な手段であることを示唆している。
【0173】
PEDFはシュワン細胞を含む多くの細胞型により発現そして分泌されるタンパク質である。神経芽腫は悪性腫瘍であり、そしてこれらの細胞中のシュワン細胞の存在がより良い結果と関係している。ここに与えるデータは、シュワン細胞の存在が神経芽腫の好ましい予後を導くという理由の1つは、これらの細胞がPEDFを生産するという事実であることを示す。そこで生産されるPEDFは腫瘍細胞に傍分泌様式で作用して、それらの分化を誘導する。かりにも分化した神経芽腫細胞は、よりゆっくりと成長するので、神経芽腫へのPEDFの投与はこの細胞の成長をゆっくりさせることによりこの腫瘍の新規療法を提供する。細胞成長は、(1)PEDFを腫瘍に栄養を供給する血管を形成する内皮細胞に結合させ、そしてそれらの成長を防止し、それにより間接的に腫瘍を抑制する、および(2)PEDFを腫瘍細胞に直接結合させ、これによりそれらの分化を誘導する2つの方法で遅らせる。
【0174】
インビトロ実験は、PEDFが神経芽腫に由来する細胞系に及ぼす効果を確かめるために行った。2種の神経芽腫に由来する細胞系は、アメリカン ティシュ タイプ アンド カルチャーから得たSK−N−BE(2)およびSK−N−SHであった。両細胞系は、10%ウシ胎児血清(フローラボラトリーズ(Flow Laboratories)、マックレーン、バージニア州)を含有するDMEM中のカルチャー中で、37℃で5%CO2にて維持した。細胞(1.25×104/ml)を再懸濁し、そして1ml/ウェルを使用して24ウェルプレートにまいた。24時間後、PEDFを3連でウェルに0、1,0、7.5、1または10nMで加え、そして細胞をさらに24時間インキューベーションした。分化した細胞のパーセントは、ウェルあたり3つの重複しない1mm2面積中の総細胞数を計数することにより決定した。細胞は50ミクロン長より大きな神経突起の突出を保有する場合、分化したと考えた。
【0175】
図9Aおよび9Bに与える結果、および対照およびPEDF処置群の写真を図10に示す。さらに、新脈管形成アッセイにおいてPEDF活性を中和することができるPEDF誘導化ペプチドに対して生じた抗体を細胞に加えた時、抗体はPEDFが誘発する分化を効果的に遮断した(図10)。
【0176】
インビボ実験を行ってPEDFの神経芽腫に及ぼす効果を測定した。ヒトの神経芽腫は各マウスの後部脇腹上の2カ所に1×106SK−N−BE(2)細胞を皮下注射することにより、無胸腺症(nu/nu)マウスに実験的に誘導した。腫瘍が触診できるサイズ(約8mm直径)に成長した時、PEDF処置を始めた。全部で2μgの精製したヒスチジン−標識PEDF(100μlのリン酸緩衝化生理食塩水中)を2〜3カ所/各腫瘍に4日間連続して毎日注射した。5日目に、マウスは過剰用量のメタファンを使用して安楽死させ、そして腫瘍を外科的に摘出した。腫瘍組織をスライスし、そして緩衝化ホルマリンに少なくとも24時間置いた。組織はパラフィンに包埋し、そして組織検査用に調製した。切片は、ニューロフィラメントタンパク質を認識する抗体(ダコ(Dako)、カルピンテリア、カリフォルニア州)で染色した。PEDFで処置した神経芽腫は、ニューロフィラメントタンパク質に関する陽性染色の獲得により測定された増大した分化を表した(図11)。全部で6種のSK−N−BE(2)腫瘍をPEDFで処置し、そして6/6がニューロフィラメント染色について適度から強力な陽性だった。全部で4種の腫瘍をPBSで処置し、そしてすべてが陰性か、またはより豊富な細胞質を含む単一細胞で集中染色を表した(図11)。
実施例9
この実施例に与えるデータは、PEDFがヒトおよびマウスの目を硝子液および角膜で新脈管形成の主要なインヒビターであり、そしてインビトロおよびインビボでの酸素圧(tension)により制御される証拠を提供する。
【0177】
疾患の不存在では、哺乳動物の目の脈管は自然な新脈管形成のインヒビターの存在により静止している。本発明では、PEDFは脈管が角膜に侵入することを防止し、そして硝子液の正常な抗新脈管形成活性の要因であることを示す。ここに与える実験では、角膜細胞によるPEDFの分泌が低酸素により増し、そして高酸素で低下し、この損失は角膜の新生血管形成において許される役割を果たすことを示唆している。すなわちPEDFは目の、特に病理的な新生血管形成が視野を狭め、そして失明を導く虚血による網膜症の処置に治療として有用である。
【0178】
新脈管形成、先在する血管から新しい血管の成長は、自然に存在するインヒビターの影響により新規の血管の成長が妨げる場合、ほとんどの健康な組織では強力な調節下にある(Bouck et al.,1996,Adv.Cancer 69:135;Hanahan and Folkman,1996,Cell 86:353)。そのような制御の破壊は関節炎からガンに至る様々な疾患の発症に本質的な役割を果たす(Folkman et al.,1995,Molecular Basis of Cancer 206−232)。健康な哺乳動物の目では、脈管は通常、両区分とも抗−新脈管形成活性を有することが示された角膜からおよび硝子体から排除される(Brem et al.,1977,Am.Ophthalmol.84:323;Henkind,1978,Am.Ophthalmol.85:287;Kaminska and Niederkom,1993,Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.34:222)。角膜からの血管を塞げないことは、視力の損失、混濁および異常な回復と関係する(Kaminska and Niederkom,1993,Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.34:222)。網膜では、過剰な新生血管形成は増殖性糖尿病網膜症ならびに加齢に関係する黄斑変性のような虚血性の網膜症の基礎となり、現在、西欧圏で視野の損失を引き起こしている。以下に与えるデータは、例外的に有力な新脈管形成の新規インヒビターとして、および健康な硝子体および角膜の長期に認識される抗新脈管形成活性の原因となる分子として、網膜タンパク質色素上皮に由来する因子(PEDF)を同定する。
【0179】
網膜芽腫抑制遺伝子(Rb)により調節されるかもしれない目の抗新脈管形成因子を同定することを目的とする研究では、野生型Rb遺伝子、WERI−Rb−27Rを発現するレトロウイルスで感染させた網膜芽腫細胞系により前以てコンディショニングした培地を分画した。(Xu et al.,1991,Cancer Res.51:4481)。タンパク質精製スキームでは、1000から1250倍に濃縮された抗新脈管形成活性および銀染色したタンパク質ゲル上に1本の50−kDバンドをもたらした。PEDFはWERI−Rb−27R無血清コンディショニング培地から、蒸留水に対する透析(分子量カットオフ、30kD)、60〜95%硫酸アンモニウム沈殿、レンチルレクチンSepharose 4B(ファルマシア(Pharmacia))から0.5M α−メチル−D−マンノピラノシドを用いた段階的溶出、そしてHiTrapヘパリンSepharoseカラム(ファルマシア)からNAClの上昇勾配での溶出から成る連続工程により精製した。(Xu et al.,1991,Cancer Res.51:4481)。精製は内皮細胞移動アッセイによりモニターし、そして収率は17.5%であった。移動アッセイは、記載のようにウシの腎近傍毛細管内皮細胞またはヒトの皮膚の微小血管内皮細胞(クローンテックス(Clonetics)、サンディエゴ、カリフォルニア州)を使用して各サンプルに関して4連で行った(Polverni,et al.,1991,Methods Enzymol.198:440)。多数の実験を合わせるために、バックグラウンドの移動(Bkgd)は賦形剤(0.1%ウシ血清アルブミン)について最初に引き算され、そして次いでインデューサー単独に対する最大移動を100%に設定することにより標準化した。すべての実験を2回から5回繰り返した。統計はステューデントのt試験を用いて標準化する前に生のデータについて行った。標準誤差はパーセントに転換した。タンパク質のタンパク質溶解に由来する内部ペプチドのエドマン分解は、2つの不明量な配列(TSLEDFYLDEERTVRVPMMXD)(配列番号3)および(IAQL−PLTGXM(配列番号4)を生じた。アミノ酸残基に関する1文字の略号は以下の通りである:A,Ala;D,Asp;E,Glu;F,Phe;G,Gly;I,Ile;L,Leu;M,Met;P,Pro;Q,Gln;R,Arg;S,Ser;T,Thr;V,Val;X、任意のアミノ酸;そしてY,Tyr。BLASTタンパク質相同性調査では、PEDFが同一配列を有することが明らかとなった。タンパク質のミクロ配列分析では、このタンパク質が以前に記載した色素上皮−由来因子(PEDF)と同一であることが示された。
【0180】
PEDFは、培養したY79網膜芽細胞のニューロン分化を誘導する因子としてヒトの網膜色素上皮細胞のコンディショニング培地から最初に精製された。(Beccerra、セルピンの化学および生物学(Chemistry and Biology of Serpins)、Church,et al.編集、(プレナム、ニューヨーク、1997)、第223−237頁)。(Tombran−Tink,et al.,1991,Exp.Eye Res.53:411 1991;Steele et al.,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90:1526)。PEDFは小脳の顆粒細胞に神経向性であり、ミクログリアの成長を阻害し、そしてまたアーリーポピュレーションダブリングレベルcDNA(early population doubling level cDNA:EPC−1)とも呼ばれ、若い細胞サイクルGo期中にそのアップレギュレーションに影響を及ぼすが、老化した培養繊維芽細胞には影響しない。(Tanawaki,et al.,1995,J.Neurochem.64:2509;Y.Sugita et al.,1997,J.Neurosci.Res.49:710)。Pignolo et al.,1993,J.Biol.Chem.268:8949 1993);(Tombran−Tink,et al.,Neurosci.,15:4992 1995)。タンパク質はセリンプロテアーゼインヒビター(セルピン)ファミリーと配列および構造相同性を共有するが、プロテアーゼは阻害しない。(Beccerra,et al.,1993,J.Biol.Chem.268:23148 1993);Beccerra,et al.,1995 ibid.270:25992)。WERI−Rb−27Rコンディショニング培地から精製した抗新脈管形成活性は、活性がタンパク質がSDS−ポリアクリルアミドゲルからの単一バンドとして回収される時に保持され(Daw son,et al.,非公開データ)、そして組換えPEDFまたはPEDFペプチドのいずれかに対して生じた抗体で中和されるので、PEDFによるものであり、微量の混入物によるものではないと思われた。(図12A)。
【0181】
PEDFの生物学的に精製したもの、ならびに組換え体は、ラットの角膜の新生血管形成を効果的に阻害した(図13Aおよび13B)。ヒトのPEDF cDNAはCOOH−末端ヘキサヒスチジン標識をコードするようにポリメラーゼ連鎖反応により工作し、pCEP4(インビトロゲン(Invitrogen)、カールスバッド、カリフォルニア州)にクローン化し、そしてヒトの胚性腎細胞にトランスフェクトした。組換えPEDFはXpress Protein Purification System(インビトロゲン(Invitrogen)、カールスバッド、カリフォルニア州)を用いてコンディショニングした培地から精製した。インビトロで、PEDFは内皮細胞の移動を0.4nMの中央効果用量(ED50)で用量依存的様式で阻害し(図12B)、このアッセイにおける中で最も有力な新脈管形成の天然インヒビターとし(www.sciencemag.org/feature/data/104007から入手できる補足する図面を参照にされたい)、純粋なアンギオスタチン(図12B)、トロンボスポンジン−1(0.5nMのED50)およびエンドスタチン(3nMのED50)よりもわずかに活性であった。1.0nM以上の用量では、PEDFは毛細管内皮細胞の塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)−誘導化増殖も40%まで阻害した。
【0182】
PEDFは、血小板由来増殖因子、血管内皮増殖因子(VEGF)、インターロイキン−8、酸性繊維芽細胞増殖因子およびリゾホスファチジン酸を含む我々が試験した各々の新脈管形成インデューサーに対して内皮細胞の移動を阻害した。(www.sciencemag.org/feature/data/1040070から入手できる補足する図面を参照にされたい)。これは内皮細胞に対して幾らかの特異性を示し、ウシの腎近傍腺またはヒトの皮膚から培養した、および臍帯管に由来する微小血管の移動を阻害した。対照的に、PEDFが内皮細胞を阻害するために必要な濃度の10倍で存在した時でも、ヒトの包皮または肺繊維芽細胞、大動脈平滑筋細胞、口腔角質細胞、または好中球の刺激性サイトカインに向かう移動を阻害しなかった。(www.sciencemag.org/feature/data/1040070から入手できる補足する図面を参照にされたい)。
【0183】
中和PEDF抗体は、ヒト(図12C)、マウスおよびウシの角膜から調製した基質抽出物による内皮細胞化学走性の阻害を低下させた(Klintworth,1991,角膜の新脈管形成:総合的な論説(Corneal Angiogenesis:A comprehensive Critical Review)(スプリンガー(Springer)−出版、ニューヨーク):Kaminska and Niederkorn,1993,Investig,Opthalmol.Vis.Sci.34:222)。基質抽出物の調製には、角膜は付随する上皮、およびできるかぎり内皮を含まず、氷冷リン酸緩衝化生理食塩水(PBS、pH7.4)で徹底的に洗浄し、そして小さいフラグメントに切り刻み、これを0.5MMフェニルメタンスルホニルフルオリドを含有するPBS中で24時間インキューベーションした。抽出物を濾過滅菌し、−80℃で保存し、そしてミリリットルあたり10μgの最終タンパク質濃度で移動アッセイで試験した。同様に、PEDFおよびプロテインAビーズへ結合した抗体の除去は、ウシおよびヒトの基質抽出物から抗新脈管形成活性を完全に排除した(図13Aおよび13B)。さらにPEDFに対する中和抗体の添加により、外因性の新脈管形成インデューサーの不存在下で、新たな脈管のラット角膜への侵入が刺激された(図12Aおよび12B)。これは局所的なPEDFの封鎖によるものと思われ、これは角膜中の内因性の脈管形成刺激活性を暴露した(図12C、13Aおよび13B)。PEDFに対する抗体単独ではインビトロで内皮細胞の移動を刺激せず(図12A)、そしてPEDFペプチド327〜343とそれに対して生じた抗体をプレインキューベーションした時、ラットの角膜には新生血管形成は観察されなかった(図13Aおよび13B)。PEDFペプチド単独では新脈管形成アッセイにおいて中性であった(図13A)。
【0184】
角膜のように、硝子体液も抗新脈管形成性であり(Brem,et al.,1977,Am.J.Ophthalmol.84:323;Henkind 1978 ibid.85:287)、そして一般的には血管を欠き、そしてまた高濃度のPEDFを含む(Beccerra,1997、セルピンの化学および生物学(Chemistry and Biology of Serpins);Church et al.,1997,編集(プレナム出版)、第223−237頁);Wu and Beccerra,1996,Investig.Opthalmol.Vis.Sci.37:1984)。硝子体液からのPEDFの除去はその抗新脈管形成活性を排除し、そして基になる新脈管形成刺激活性を現すことが見いだされた(図12C、13Aおよび13B)。硝子体中のPEDFのレベルは、1ミリリットルの硝子体あたり4ngのVEGFの存在でも(増殖性の糖尿病網膜症の患者から得た硝子体液中に見いだされる濃度に等しい)、内皮細胞の移動を阻害するために十分であった(Aiello et al.,1994,N.Engle.J.Med.331:1480;Adamis,et al.,1994,Am.J.Opthalmol.118:445)。トランスフォーミング増殖因子β(TGFβ)は、目の新生血管形成のインヒビターになると仮定された(Ogata et al.,1997,Curr.Eye Res.16:9;Hayasaka,et al.,1998,Life Sci.63:1089;Vinores et al.,1998,J.Neuroimmunol.89:43)。しかし我々の実験では、 TGFβアイソフォーム1、2および3の中和により、硝子体液または角膜抽出物の抗新脈管形成活性はインビトロで変わらなかったか(www.sciencemag.org/feature/data/104007から入手できる補足する図面を参照にされたい)、またはインビボでの角膜の新生血管形成の誘導は変わらなかった(図13A)。
【0185】
新生児では、周囲の酸素濃度の変化が網膜の脈管密度を調節することができる。この効果は通常、新脈管形成インデューサーであるVEGFのレベルの変化に起因し、VEGFは酸素が限られている時にはアップレギュレートされ、そして酸素が過剰な時はダウンレギュレートされる(Aiello et al.,1995,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.92:10457;Adamis,et al.,1996,Arch.Opthalmol.114:66;Provis,et al.,1997,Exp.Eye Res.65:555)。PEDFも酸素により調節されるのかどうかを決定するために、新生マウスを出生後7から12日に75%酸素(高酸素)に暴露し、この条件は脈管形成低下(undervascularized)網膜の発生(Smith,et al.,1995,Invest.Opthalmol.Vis.Sci.35:101)およびVEGF mRNAの減少(Pierce et al.,1996,Arch.Opthalmol.114:1219)を導く。超酸素に暴露した9匹のうちの8匹のマウスの網膜が、12日目にPEDFについて強く染色され(図14B)、一方、正常酸素(21%酸素)に維持された10匹の未処置動物はPEDF染色を示した(図14A)。未処置動物では、網膜発生中のPEDFレベルは、新脈管形成インヒビターに関して予想されたパターンに従った。PEDF免疫染色は、網膜の脈管が発生している時、3匹の動物のうち3匹が18日以前は染色されなかったか、または弱かったが(図14Aおよび14C)(Connolly et al.,1988,Microvas.Res.36:275)、21日では4匹のマウスのうちの4匹(図14D)、および網膜の新生血管形成が本質的に完了した時は6匹の成体のうちの6匹が強かった(Connolly,et al.,1988,Microvas.Res.36:275)。最高のPEDFレベルは光受容体細胞層、網膜のほとんどの無血管層で見られた。
【0186】
PEDFに及ぼす酸素調節の効果をさらに調査するために、網膜芽腫細胞を低酸素(0.5%)、あるいは低酸素症を刺激する化学薬剤に維持した(Goldberg,et al.,1988,Science 242:1214)。予想どおり、低酸素は酵素−結合免疫吸着アッセイにより測定されるようにコンディョニング培地中のVEGFのレベルにおいて9.5±4.8倍の上昇を誘導し、そしてPEDFのレベルを11.8±4.7倍まで減少させた(図15A)。Rb−陰性網膜芽腫細胞およびRbを再度発現する復帰変異体の応答は同じであった(図15A)。PEDF mRNAの差異は、低酸素−処理および未処理細胞間で検出されず(図15B)、PEDFの低酸素調節は翻訳または翻訳後レベルで起こることを示唆した。
【0187】
低酸素腫瘍細胞でコンディョニングした培地は、正常酸素腫瘍酸素でコンディョニングした培地よりも脈管形成性であった(図15C)。低酸素は、最大の内皮細胞化学走性の50%を誘導するのに必要な培地の濃度を、1ミリリットルあたり4.0から0.3μgに下げた。これら細胞の新脈管形成活性に対してわずかに貢献するだけのVEGFの中和は、低酸素コンディョニング培地の脈管形成活性を下げなかったが、PEDFの中和は通常酸素の腫瘍培地を低酸素細胞に由来する培地の脈管形成性の程度にした(図15C)。これらのインビトロ実験に一致して、12のヒト網膜芽腫病理検体のうちの12に存在する腫瘍細胞がPEDFについて染色されず、恐らくこれは部分的には腫瘍環境における限定された酸素により(Gulledgeand Dewhirst,1996,Anticancer Res.16:741)、一方、隣接する正常な網膜は陽性であった。
【0188】
まとめると、PEDFは酸素が限られている時には新脈管形成の許容的環境を(腫瘍および網膜症におけるように)、そして酸素濃度が正常または高い時は阻害的環境を作ることにより、目の血管成長の調節に寄与しているらしい。
【0189】
PEDFの高い効力およびPEDFが作用することができる広い範囲の新脈管形成インデューターを考慮すると、PEDFは病理的な目の新生血管形成ならびに網膜芽腫に有用な治療薬となることが示され、ここでPEDFの細胞分化を誘導し(Tombran−Tink,et al.,1991,Exp.Eye Res.53:411;Steele et al.,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90:1526)、そして新脈管形成を阻害する二重活性が特に効果的である。
実施例10
ここで与えるデータは、PEDFを用いた全身処置による虚血性網膜症の改善を示す。
【0190】
網膜症は、7日齢のマウスをその母親と酸素テントに置き、そして動物を75%酸素/25%窒素の環境に12日まで維持することにより、C57/BL6マウスに誘導した。12日に動物をテントから取り出し、そして周囲環境(21%酸素)に置いた。12日から16日まで、子には1日1回、100μlのリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)賦形剤、または11.2μgもしくは22.4μgのPEDF(PBS中)のいずれかを腹腔注射することにより処置した。子はメタファンで安楽死させ、そして1mlの固定剤(4%パラホルムアルデヒド/100mM リン酸ナトリウムバッファー(pH7.2)/4%シュクロース)を心臓の左心室を通して潅流した。目を摘出し、そして固定剤中に置き、パラフィンに包埋し、そして組織検査にかけた。目の断面を作成し、ヘマトキシリン−フロキシン−サファリン(HPS)で染色し、そして角膜、レンズ、網膜および視神経を含む1つの断面中の網膜の内部制限膜(inner limiting membrane)をわたる内皮細胞核の数を計数した。図16AはPBS処置動物の目の網膜症を具体的に説明し、箱は低出力画像における網膜の内部制限膜を貫通した脈管の束を囲んでいる。この脈管の束の高出力における画像を図16Bに示す。図16Cおよび16Dは、PEDF処置マウスの目を具体的に説明するが、脈管の束は存在しない。内皮細胞核の#を定量した(表3)。PEDF処置動物は、網膜の内部制限膜をわたった内皮細胞に有意な減少があり、そして用量/応答関係を示すことができた(図17)。
【0191】
【表2】
【0192】
本明細書で述べる各特許、特許出願および公報は、引用により本明細書に編入する。
【0193】
本発明を具体的態様について開示したが、本発明の他の態様および変更も、本発明の精神および範囲から逸脱することなく当業者により考案され得る。前述の特許請求の範囲は、そのようなすべての態様および均等な変更態様を含む。
【図面の簡単な説明】
【図1】
大きなおよび小さい血管およびヒトおよびウシ種に由来する内皮細胞の移動を阻害するPEDFの能力を具体的に説明する。
【図2】
図2A−2Dから成り、血管内皮細胞以外の細胞の移動を阻害する種々のPEDF用量の無能力をグラフで表すことにより、PEDFの血管内皮に対する特異性を具体的に説明する。図2Aは、ヒトの上皮に由来するWI−38細胞に関するデータを表す。図2Bはヒトの包皮繊維芽細胞に関するデータを表す。図2Cはヒトの血管平滑筋細胞に関するデータを表す。図2Dはヒトの好中球に関するデータを表す。
【図3】
塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)、血小板由来増殖因子(PEDF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、インターロイキン−8(IL−8)および酸性繊維芽細胞増殖因子(aFGF)を含む新脈管形成の様々なインデューサーに向かう毛細管内皮細胞の移動を防止するPEDFの能力を示すグラフである。
【図4】
完全長PEDF([書き込んだ丸]四角)の抗新脈管形成活性を表す用量応答曲線のグラフであり、PEDFがナノモル下の濃度で毛細管内皮細胞のbFGFへ向かう移動の阻害において活性であり、そして新脈管形成の別のインヒビターであるアンギオスタチン([空の]丸)よりも活性であることを示す。
【図5】
C−末端から5kDaが無い短縮化PEDFポリペプチドの抗新脈管形成活性を表す用量応答曲線であり、このPEDFのフラグメントが完全な活性を保持していることを示す。
【図6】
図6Aおよび6Bから成り、完全長PEDFのアミノ酸配列(配列番号1)、および完全長PEDFをコードする核酸配列(配列番号2)である。自然に存在する多形により、アミノ酸レベルでアミノ酸残基97および98はEQまたはDEであることができ、そしてDNAレベルで、これらのアミノ酸をコードする対応するヌクレオチドはしだかってGAG CAGまたはGAC GAGである。
【図7】
図7Aおよび7Bから成り、PEDFに由来する種々の短縮化ペプチドが新脈管形成に及ぼす効果を表す2つのグラフである。
【図8】
図8A、8Bおよび8Cから成り、PEDFで処置した動物から得た皮膚切片の一連の顕微鏡写真の像であり、ここでは毛包を表す。ヌードマウスの皮下で成長しているヒトSK−N−BE(2)神経芽腫に、2gの精製PEDFを4日間連続して2〜3カ所/腫瘍に注射した。5日目に、毛が処置した腫瘍上に成長していることが認められた。組織切片(PEDF処置した図8Bおよび8Cを参照にされたい)は、賦形剤のみ(PBS−処置した図8A)で処置した腫瘍の上にある皮膚に比べて、3倍上昇した毛包密度を表した。毛包密度における同様の上昇が、精製PEDFの注射後に腫瘍の不存在下で見られた。
【図9】
図9Aおよび9Bから成り、細胞を精製したPEDFの示した濃度で24時間処置した時、培養したヒトの神経芽腫細胞(図9AのSK−N−BE、および図9BのSK−N−SH)の増加した分化を表す一連のグラフである。下向きの矢印は処理した細胞の50%に分化を誘導した用量を示す。
【図10】
図10A−19Cから成り、バッファーで(対照、図10A)、PEDFで(図10B)、または中和抗−PEDF抗体の存在下でのPEDFで(図10C)、インビトロで処理した培養したヒトSK−N−BE(2)神経芽腫細胞の一連の顕微鏡写真である。分化を示す高い頻度の突起の突出が、図10Bにのみ見られる。
【図11】
図11A−11Eから成り、賦形剤のリン酸緩衝化生理食塩水(PBS;図11Aおよび11B)を注射したヌードマウス、またはヒトPEDFを注射したヌードマウス(図11C、11Dおよび11E)で成長するヒトSK−N−BE(2)神経芽腫の一連の顕微鏡写真である。神経芽腫は固定し、そして分化の指標であるニューロフィラメントタンパク質について染色した。劇的に上昇した染色、したがって分化が処置した腫瘍で見られた。図11Cでは分化がPEDFを注射した針の跡に沿って明らかに存在する(中央上部の明らかな方形)。
【図12】
図12A−12Cから成り、培養した内皮細胞の移動に及ぼす精製したPEDFの阻害活性、およびヒトの硝子体液および角膜抽出物の抗新脈管形成活性に関するPEDFの要件を表す一連のグラフである。図12A:WERI−Rb−17R(Xu,et al.,1991,Cancer Res.51:2881)培地から精製したPEDF(0.1g/ml)は単独で、または組換えPEDFに対する抗体(抗−EPC−1;20g/ml)またはPEDFペプチドに対する抗体(抗−PEDF;1g/ml)と組み合わせて、ウシの毛細管内皮細胞の抗新脈管形成bFGF(10ng/ml)に向かう移動を阻害する能力について試験した。PEDF抗ペプチド抗体(抗−PEDF)はPEDFアミノ酸327−343を含有するペプチドに対してウサギで生成し、カサガイヘモシアニンに結合し、そしてペプチドカラムでアフィニティ精製した。細菌組換えPEDF/EPC−1に対するポリクローナル抗血清(抗−EPC−1)をDiPaolo et al.,により記載され(1995,Exp.Cell.Res.220:178)、そして抗新脈管形成タンパク質であるアンギオテンシンはO’Reilly,et al.,(1994,Cell 79:315)に記載されている。購入した試薬は、中和抗VEGF(ジェンザイム(Genzyme)、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)、TGFに対するpan抗体、およびリソホスファチジン酸(シグマケミカル社(Sigma Chemical Co.)、セントルイス、モンタナ州)を除くすべての新脈管形成インデューサー(R&D システムズ、ミネアポリス、ミネソタ州)を含んだ。すべてのタンパク質および抗体は生物学アッセイで使用する前にPBSに対して徹底的に透析した。移動アッセイは、ウシ腎近傍毛細管内皮細胞またはヒト皮膚の微小血管内皮細胞(クローンテックス社、サンディエゴ、 カリフォルニア州)を用いて記載されているように(Polerini,et al.,1991,Methods Enzymol.194:440)、各サンプルについて4連で行った。多数の実験を合わせるために、バックグラウンド移動(Bkgd)は最初に賦形剤(0.1%ウシ血清アルブミン)に向かう移動を引き算し、そしてデータはインデューサー単独に対する最大移動を100%設定することにより標準化した。すべての実験は2〜5回繰り返した。統計はステューデントt試験で標準化する前に生のデータで行った。標準誤差は百分率に変換した。図12B:増加する濃度でアンギオテンシン([〇]丸印)または組換えPEDF([ ]四角)を図12Aのように試験した。ヒトPEDF cDNAはポリメラーゼ連鎖反応でCOOH−末端ヒスチジン標識をコードするように工作し、pCEP4(インビトロゲン、カールスバッド、カリフォルニア州)にクローン化し、そしてヒトの胚性腎細胞にトランスフェクトした。組換えPEDFはXpress Protein Purification System(インビトロゲン、カールスバッド、カリフォルニア州)を用いてコンディショニングした培地から精製した。図12C:示したように希釈したヒトの硝子体液およびヒトの角膜基質抽出物(ミリリットルあたり10gのタンパク質で使用した)を、インデューサーであるVEGF(0.1ng/ml)または抗−PEDF(1g/ml)の存在下(あるいはVEGFおよび抗−PEDFの両方の存在下)でアッセイした。ヒトの硝子体液は、目の疾患がない個体から得た3体の死体の目からぬいた。液体は使用するまで凍結した。新鮮な硝子体液はウシおよびマウスの目から得た。基質抽出物の調製には、角膜は付随する上皮、およびできるかぎり内皮を含まず、氷冷リン酸緩衝化生理食塩水(PBS、pH7.4)で徹底的に洗浄し、そして小さいフラグメントに切り刻み、これを0.5mMフェニルメタンスルホニルフルオリドを含有するPBS中で24時間インキューベーションした。抽出物を濾過滅菌し、−80℃で保存し、そしてミリリットルあたり10gの最終タンパク質濃度の移動アッセイで試験した。棒は、5回の別個の実験の平均の標準偏差(SEM)を示す(図12A)。図12Bおよび12Cの場合は、1つの代表的実験からのデータを標準誤差を用いて示す。
【図13】
図13Aおよび13B − 1から13B − 8から成り、精製したPEDFによる、および正常なヒトの硝子体および角膜に自然に存在するPEDFによる新生血管形成の阻害を表す表および一連の顕微鏡写真の像である。図13A:組換え(rPEDF)または精製した(pPEDF)PEDF(8nM)、PEDFペプチド327−343(200g/ml)、非希釈硝子体液または角膜抽出物(ミリリットルあたり200gのタンパク質で使用)を、賦形剤(PBS)と含み、そして無血管のラット角膜へ移植する示したHydron ペレットへの添加を行った。陽性の応答として7日までに縁からペレットへ向かう血管の激しい内向きの成長が記録された(Polverini,et al.,1991,Methods Enzymol.198:440)。記録された場合は、プロテインAビーズに結合した抗−PEDFを使用して、硝子体液および角膜抽出物からPEDFを除去した。図13B:×13倍率で示す図13Aからの角膜応答の代表的写真。PEDF抗ペプチド抗体(抗−PEDF)は、PEDFアミノ酸327−343を含有するペプチドに対してウサギで生成し、カサガイヘモシアニンに結合し、そしてペプチドカラムでアフィニティ精製した。細菌組換えPEDF/EPC−1に対するポリクローナル抗血清(抗−EPC−1)はDiPaolo et al.,により記載され(1995,Exp.Cell.Res.220:178)、そして抗新脈管形成タンパク質であるアンギオテンシンはO’Reilly,et al.,(1994,Cell 79:315)に記載されている。購入した試薬は、中和抗VEGF(ジェンザイム、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)、TGFに対するpan抗体、およびリソホスファチジン酸(シグマ)を除くすべての新脈管形成インデューサー(R&D システムズ、ミネアポリス、ミネソタ州)を含んだ。すべてのタンパク質および抗体は生物学アッセイで使用する前にPBSに対して徹底的に透析した。
【図14】
図14A−14Fから成り、新生時マウスにおいて高酸素によるPEDFタンパク質発現の誘導を表す一連の顕微鏡写真の像である。網膜は、周囲温度に維持した(図14A、14Cおよび14D)、またはP7からP12に75%酸素に暴露した(図14B)C57BL/6マウスから、出生後12日(P12)(図14Aおよび14B)、p18(c)、またはP21(図14D)に摘出し、そしてPEDFについて染色した。赤−茶色により示されるPEDFの蓄積(矢じり)に注目されたい。図14Dに直接隣接する対照切片は、第1抗体無し(図14E)またはPEDFペプチド327−343を含む第1抗体(図14F)のプレインキューベーション後に染色された。図14Aに示す網膜層は網膜色素上皮(RPE)、外核層(ONL)、内核層(INL)、およびガングリオン細胞層(GCL)を含む。マウスの目は摘出してから1〜5分内にホルマリンで固定した。免疫染色のために、パラフィン−包埋切片を抗−PEDFとインキューベーションし、そしてABC法(Vectastain Elite;ベクターラボズ(Vector Labs)、ベーリンガム、カリフォルニア州)で視覚化した。尺度棒、25m。PEDF抗ペプチド抗体(抗−PEDF)は、PEDFアミノ酸327−343およびアミノ酸55−71を含有する2つのペプチドに対してウサギで生成し、カサガイヘモシアニンに結合した。これをアミノ酸327−343を含むペプチドを含有するカラムでアフィニティ精製した。すべてのタンパク質および抗体は生物学アッセイで使用する前にPBSに対して徹底的に透析した。
【図15】
図15A−15Cから成り、培養した網膜芽腫細胞中の低酸素が誘導するPEDFタンパク質のダウン−レギュレーションを表すイムノブロットの像およびグラフである。図15A:3種のRb−陰性細胞系(WERI−Rb−27,Y79およびWERI−Rb−1;すべてはメリーランド州、ロックビルのアメリカンタイプカルチャーコレクションから)および1つのRb−陽性系(WERI−Rb−27R)(Xu,et al.,1991,Cancer Res.51:4481)の培養からの培地中に存在するPEDFのイムノブロット分析。細胞は正常酸素(N;21%O2)、低酸素(H;05%O2)、またはCoCl2(Co;100M)中で維持し、そして無血清培地を等しい数の細胞から48時間にわたり集めた。レーンあたり5gのタンパク質を含有するブロットを抗−PEDFで釣り上げ、そしてECLで発色させた(アマーシャム(Amersham)、アーリントンハイツ、イリノイ州)。図15B:低酸素に24〜48時間暴露した後のWERI−Rb−27細胞から単離した全細胞性RNA(レーンあたり10g)のノーザンブロット。ブロットは1.5kbの完全長PEDF cDNAまたは添加を制御するための819−塩基対のアクチンプローブを用いて釣り上げた。数はデンシトメトリーにより測定したPEDF対−アクチンmRNAレベルの比率を示す。図15C:正常または低酸素WERI−Rb−1細胞に由来する培地(ミリリットルあたり2gの総タンパク質量で使用)を、ヒトの皮膚の微小血管内皮細胞の移動を誘導させる能力について試験した。移動アッセイはウシ腎近傍毛細管内皮細胞またはヒトの皮膚の微小血管内皮細胞(クローンテックス、サンディエゴ、カリフォルニア州)を用いて、記載されているように(Polverini,et al.,1991,Methods Enzymol.198:440)、各サンプルに関して4連で行った。多数の実験を合わせるために、バックグラウンド移動(Bkgd)は最初に賦形剤(0.1%ウシ血清アルブミン)に向かう移動を引き算し、そしてデータはインデューサー単独に対する最大移動を100%設定することにより標準化した。すべての実験は2〜5回繰り返した。統計はステューデントt試験で標準化する前に生のデータで行った。標準誤差は百分率に変換した。アッセイには培地単独、または培地に中和抗−PEDF(1g/ml)または抗−VEGF(20g/ml)を加えたものを含んだ。VEGFが誘導する移動は、抗−VEGFにより完全に排除され、そして抗−PEDFにより影響を受けなかった。PEDF抗ペプチド抗体(抗−PEDF)は、PEDFアミノ酸327−343を含有するペプチドに対してウサギで生成し、カサガイヘモシアニンに結合し、そしてペプチドカラムでアフィニティ精製した。VEGFが誘導する移動は、抗−VEGFにより完全に排除され、そして抗−PEDFにより影響を受けなかった。単独で試験した時、いずれの抗体も移動に影響しなかった。67細胞に等しい100%が10高い出力の場で移動した。
【図16】
ば16A−16Dから成り、C57/BL6マウスにおいて、高酸素が誘導する網膜症での血管の成長に及ぼすPEDFの効果を表す一連の顕微鏡写真の像である。図16Aおよび16Bは PBS 、賦形剤で処理した。図16Cおよび16Dは PEDF で処理した。
【図17】
マウスを対象とした網膜症とPEDF処置の間の用量応答関係を表すグラフである。
Claims (39)
- 神経芽腫細胞の分化を誘導する方法であって、PEDFを該細胞に投与し、これにより該細胞の分化を誘導することを含んで成る上記方法。
- 神経芽腫細胞の成長を遅らせる方法であって、PEDFを該細胞に投与し、これにより該細胞の成長を遅らせることを含んで成る方法。
- 哺乳動物の虚血性網膜症の処置法であって、外因性のPEDFを該哺乳動物の目に付随する内皮細胞に、該PEDFが該目の新脈管形成を阻害するために十分な条件下で提供し、これにより該虚血性網膜症を処置することを含んで成る上記方法。
- 哺乳動物の組織中の新脈管形成を阻害する方法であって、外因性PEDFを該PEDFが該組織中の新脈管形成を阻害するために十分な条件下で該哺乳動物に全身的に提供することを含んで成る上記方法。
- 上記組織が、目の組織、皮膚の組織、腫瘍、関節内の組織、骨髄、鼻の上皮、前立腺、卵巣および子宮内膜組織から成る群から選択される、請求項4に記載の方法。
- 該組織が目の組織である、請求項5に記載の方法。
- 上記哺乳動物が、虚血性網膜症を有する哺乳動物、虚血性網膜症を発症する危険性がある哺乳動物、黄斑変性を有する哺乳動物、および黄斑変性を発症する危険性がある哺乳動物から成る群から選択される、請求項5に記載の方法。
- さらに別の抗新脈管形成因子をPEDFと一緒に上記細胞に供給することを含んで成る、請求項1、2、3または4に記載の方法。
- 組織の細胞中のPEDF発現をアップレギュレートする方法であって、該組織に高酸素を誘導し、これにより該細胞中のPEDFの発現をアップレギュレートすることを含んで成る上記方法。
- 哺乳動物の黄斑変性の処置法であって、外因性のPEDFを該哺乳動物の目に付随する内皮細胞に、該PEDFが該目の新脈管形成を阻害するために十分な条件下で提供し、これにより該黄斑変性を処置することを含んで成る上記方法。
- 哺乳動物の良性の新形成物を処置する方法であって、PEDFを該哺乳動物に投与し、これにより該良性の新形成物を処置することを含んで成る上記方法。
- 上記の良性の新形成物が鼻のポリープである、請求項11に記載の方法。
- 上記の哺乳動物が嚢胞性線維症を有するヒトである、請求項11に記載の方法。
- 上記の良性の新形成物が前立腺内にある、請求項11に記載の方法。
- 組織中の新脈管形成を阻害する方法であって、外因性のPEDFを該組織に付随する内皮細胞に、照射、化学療法、少なくとも1つの生物学的応答モディファイヤーの使用、およびレーザー処置から成る群から選択される少なくとも1つの他の処置と一緒に、該PEDFが該組織中で新脈管形成を阻害するために十分な条件下で提供することを含んで成る上記方法。
- PEDFポリペプチドを含んで成る組成物を上記細胞に暴露することにより、上記PEDFが該細胞に提供または投与される、請求項1、2、3、4、10、11または15に記載の方法。
- 上記細胞にPEDFをコードする単離された核酸を含んで成るベクターを移し、これにより上記PEDFが該細胞中で発現し、そして分泌されることにより該PEDFが提供または投与される、請求項1、2、3、4、10、11または15に記載の方法。
- PEDFをコードする上記の単離された核酸が、配列番号2を含んで成る、請求項17に記載の方法。
- PEDFをコードする上記の単離された核酸が、PEDFの生物学的に活性なフラグメントをコードする、請求項17に記載の方法。
- 上記のPEDFの生物学的に活性なフラグメントが、配列番号1のアミノ酸配列中に含まれる、請求項19に記載の方法。
- 上記のPEDFの生物学的に活性なフラグメントが、配列番号1のアミノ酸44からアミノ酸121を含んで成る、請求項20に記載の方法。
- 上記のPEDFの生物学的に活性なフラグメントが、配列番号1のアミノ酸44−77を含んで成る、請求項20に記載の方法。
- 上記のPEDFが配列番号1を含んで成る、請求項17に記載の方法。
- 上記のPEDFが配列番号1の生物学的に活性なフラグメントを含んで成る、請求項17に記載の方法。
- 上記のPEDFの生物学的に活性なフラグメントが、配列番号1のアミノ酸44からアミノ酸121を含んで成る、請求項24に記載の方法。
- 上記のPEDFの生物学的に活性なフラグメントが、配列番号1のアミノ酸44−77である、請求項25に記載の方法。
- 他の細胞群にPEDFをコードする単離された核酸を含んで成るベクターをトランスフェクトし、これにより該PEDFが該他の細胞中で発現し、そして分泌され、そしてそのようにトランスフェクトされた該他の細胞群をそのように分泌されるPEDFが上記内皮細胞と接触できる部位へ移すことにより、上記PEDFが該内皮細胞に提供または投与される請求項17に記載の方法。
- 上記の単離された核酸が配列番号2である、請求項27に記載の方法。
- 上記の単離された核酸がPEDFの生物学的に活性なフラグメントをコードする、請求項27に記載の方法。
- 上記のPEDFの生物学的に活性なフラグメントが、配列番号2のフラグメントによりコードされる、請求項29に記載の方法。
- 上記の単離された核酸の該他の細胞群へのトランスフェクションが、該他の細胞中に組み込まれていないか、または安定に組み込まれたDNAからPEDFの発現をもたらす、請求項27に記載の方法。
- 上記PEDFが全身の循環を介して上記細胞に供給される、請求項17に記載の方法。
- 上記PEDFが局所投与を介して上記細胞に供給される、請求項17に記載の方法。
- 上記PEDFポリペプチドがPEDFポリペプチドの生物学的に活性なフラグメントである、請求項16に記載の方法。
- 上記のPEDFポリペプチドの生物学的に活性なフラグメントが、配列番号1のアミノ酸配列内に含まれる、請求項34に記載の方法。
- 上記のPEDFの生物学的に活性なフラグメントが、配列番号1のアミノ酸44からアミノ酸121を含んで成る、請求項35に記載の方法。
- 上記のPEDFの生物学的に活性なフラグメントが、配列番号1のアミノ酸44−77を含んで成る、請求項35に記載の方法。
- 腫瘍内のPEDFの存在をアッセイすることよる腫瘍の重篤度を測定する方法であって、腫瘍内のPEDFの不存在は進行した状態を示し、そして腫瘍内のPEDFの存在は腫瘍の初期状態を示す上記方法。
- さらに別の抗新脈管形成因子をPEDFと一緒に上記細胞に供給することを含んで成る、請求項10、11または15に記載の方法。
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