JP2004514701A - トリアジン誘導体の水溶性ポリマー複合体 - Google Patents
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Abstract
本発明は、ポリ(エチレングリコール)などの水溶性の非ペプチドポリマー骨格を用いたトリアジン誘導体の水溶性ポリマー複合体を提供する。本発明は、mPEG, 二官能PEG, 枝分かれ又はマルチアームPEG 及びフォーク状PEG を用いて作られる複合体を含む。本発明はさらに、そのような複合体を作製する方法、及びこの複合体を用いたトリアジン誘導体に応答する状態を治療する方法を含む。
Description
【0001】
発明の属する技術分野
本発明は、生物的に活性な分子の水溶性ポリマー複合体に関する。詳しくは、本発明は、トリアジンをベースとする活性な物質のポリマー複合体に関し、そのようなポリマー複合体を製造し、投与する方法に関する。
【0002】
発明の背景
トリアジン誘導体は、薬剤としてかなり大きな可能性があり、トリアジンをベースとするいくつかの化合物は抗腫瘍剤として有効であることが示されている。例えば、あるトリアジン誘導体、トリメラモル(trimelamol)、は抗がん剤として有望な活性を示している。
【0003】
【化13】
【0004】
卵巣がんに対する効力を調べる臨床試験で(I.R.Judson et al., Cancer Research 49: 5475−5479, 1989; I.R.Judson, et al., Br. J. Cancer, 63: 311−313, 1991)、トリメラモルの安全性と効力の程度が実証されたが、水への溶解度の低さとトリメラモルの二量体化と析出を生じ易い強い性向のために試験は打ち切られた。トリメラモルの合成類似体が製造されたが、この類似体は精製することが難しく、安定性の点であまり改善されなかった(米国特許No. 5,854,244)。
【0005】
このように、抗腫瘍活性を示す多くのトリアジン誘導体が合成されているが(Matsuno, T., et al., Chem. Pharm. Bull. 2000, 48(11): 1778−81; Abdel−Rahman RM, et al., Pharmazie, 1999, 54(9): 667−71)、それらの化合物は化学的に不安定である傾向を示し(すなわち、劣化、二量体化、加水分解し易い);化学的な修飾及び/又は調合が特に難しい。さらに、トリアジン抗がん剤は、in vitro でもin vivo でも効力があることが示されているものの、きわめて毒性が強い。したがって、ある種のトリアジン剤の抗腫瘍効力を維持し又は強化しながら、有害な副作用を減らし、それらの化学的安定性を高めるアプローチが必要とされている。
【0006】
発明の要約
本発明は、トリアジン化合物の新しい水溶性ポリマー複合体の発見と、トリアジン誘導体の二量体化と不安定性の問題を回避してそれらのポリマー複合体を製造するユニークな合成方法に基づいている。具体的に言うと、本発明は1つの様態では、ある種のトリアジン誘導体、例えばN−アルキル−N−(ヒドロキシメチル)アミノトリアジンの水溶性ポリマー複合体を提供する。このポリマー複合体はトリメラモルに比べて水溶性と溶液中での安定性が大きく改善される。
【0007】
本発明のポリマー複合体は、少なくとも1つの水溶性の非ペプチドポリマー骨格を、(i)トリアジン誘導体のs−トリアジン環(すなわち、1,3,5−トリアジン)、又は(ii)トリアジン誘導体のas−トリアジン環(すなわち、1,2,4−トリアジン)の非ヘテロ原子に共有結合で結合した形で含む。好ましくは、この非ペプチドポリマー複合体は、この誘導体のトリアジン環のただ1つの非ヘテロ原子に共有結合で結合したポリマー骨格を含む。
【0008】
ある実施の形態では、本発明のポリマー複合体は、例えば次の構造に結合した、ポリ(エチレングリコール)などの水溶性の非ペプチドポリマー骨格を含む:
【0009】
【化14】
ここで、L は、ポリマー骨格の結合点であり;
X は、O又はNR2などの結合基、ここでR2はH, C1−6アルキル、又は置換されたC1−6アルキル(例えば、CH2OH)であり;そして
Y1とY2 は各々独立に、アミノ、置換されたアミノ、C1−6アルキル、置換されたC1−6アルキル、アリール、又は置換されたアリールである。
【0010】
ある実施の形態では、Y1とY2は各々NRR1である、ここでRは、C1−6アルキル(例えば、メチル)、置換されたC1−6アルキル又は電子求引性の基(例えば、−CH2CF3又はCH2C≡CH)であり、R1は、H, C1−6アルキル、又は置換されたC1−6アルキル(例えば、CH2OH)である。
【0011】
適当なポリマー骨格は、ポリ(アルキレングリコール)、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(サッカライド)、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリフォスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリ(N−アクリロイルモルフォリン)、及びコポリマー、ターポリマー及びそれらの混合物などである。
【0012】
本発明のポリマー複合体は、mPEG又は二官能PEGなどの線状ポリマー骨格出発物質、又はマルチアームポリマー骨格を用いて形成することができる。具体的に言うと、本発明は、ポリマー骨格の一端がトリアジン誘導体部分に結合し、他端は異なる部分によって官能化されているヘテロ二官能ポリマー複合体を含む。さらに、本発明は、ポリマー骨格の両端がトリアジン誘導体部分に結合しているホモ二官能ポリマー複合体を含む。
【0013】
また、本発明の一部を構成しているものは、複合体形成の従来の方法とは相当に異なるトリアジン誘導体のポリマー複合体を作る方法であって、この方法では、ポリマーは活性ある薬剤の反応性部分と直接反応する。ある種のトリアジン誘導体は、溶液内で不安定であるため、直接の結合というアプローチにあまり適さない。この問題を克服するために、本発明者たちは合成方法を考案した。この方法では、ポリマーは最初、トリアジン薬剤の比較的安定な前駆物質に結合されてペグ化トリアジン中間物質を形成し、それをさらに1つ以上の合成ステップで修飾して複合体の活性なトリアジン誘導体部分を形成する。すなわち、複合体の活性な薬剤部分は、水溶性ポリマー部分を結合させる前ではなく、結合させた後で合成される。トリアジン中間物質のポリマー部分の存在は、複合体の活性トリアジン誘導体部分をその後合成するときに安定化する効果があると考えられる。
【0014】
具体的に言うと、別の様態で、本発明は本発明のポリマー複合体を形成する方法を含み、その方法ではポリマー骨格は最初は前駆的なトリアジン構造、例えばシアヌル酸ハライドに結合され、その後でトリアジン骨格を修飾して活性なトリアジン部分を形成する。この方法は、各合成工程での生成物の精製を高い収率で、例えば適当な有機溶剤又は溶剤混合物、例えばジエチルエーテル、イソプロパノールなどからのその生成物の選択的な析出によって遂行することを可能にした。さらに、この経路はトリアジンの二量体化の問題を回避し、トリアジン環内のモノ・ポリマー置換に関してきわめて選択的である。
【0015】
本発明はまた、いろいろなタイプのがんを含めてトリアジン誘導体に応答する疾病の治療のためのこれらの複合体の利用を提供する。治療の方法は、治療に有効な量の本発明のポリマー複合体を哺乳類に投与する工程を含む。
【0016】
発明の詳細な説明
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。しかし、本発明は多くの異なる形態で実施できるものであり、以下に示される実施の形態に限定されると解釈してはならない;そうではなく、以下の実施の形態は、この開示を十分で完全なものにし、本発明の範囲を当業者に十分に伝えるために提示されるものである。
【0017】
I.定義
用語、「官能基」、「活性部分」、「活性化する基」、「反応部位」、「化学反応性基」、及び「化学反応性部分」は、当業者によっても本明細書においても、ある分子のはっきりと区別される定義可能な部分又は単位を指すものとして用いられる。これらの用語は化学の分野で多少とも同義的に用いられ、分子の中で何らかの機能又は活動を実行して多の分子と反応する部分を指すように用いられる。「活性(active)」という用語は、官能基と一緒に用いられるとき、反応するために強力な触媒を必要とする又はきわめて非実際的な反応条件を必要とする基(すなわち、「非反応性の」又は「不活性の」基)と異なり、他の分子の求電子的又は求核的な基と容易に反応する官能基を意味する。例えば、当業者には理解されるように、「活性エステル」という用語は、アミンなどの求核基と容易に反応するエステルを意味する。活性エステルの例としては、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル、又は1−ベンゾトリアゾリルエステルなどがあげられる。普通、活性エステルは水性媒質中で数分以内にアミンと反応するが、ある種のエステル、例えば、メチルエステル又はエチルエステルは、求核基と反応するためには強力な触媒を必要とする。
【0018】
「結合部」又は「結合基」(例えば、以下で述べるX部分)という用語は、本明細書では、原子、原子の群、又は、普通化学反応の結果として形成される結合を指すために用いられる。本発明の結合基は、普通、結合する部分、例えばポリマー骨格及びトリアジン誘導体を1つ以上の共有結合で結合する。加水分解に対して安定な結合とは、結合が水中で実質的に安定であり、用いられるpHで、例えば生理的な条件の下で長時間、多分無限に長い時間、ほとんど反応しないということを意味する。加水分解に対して不安定な、又は分解する結合とは、その結合が水中又は血液を含む水性溶液中で分解するということを意味する。酵素的に不安定な、又は分解する結合とは、その結合が1つ以上の酵素によって分解するということを意味する。当業者には理解されるように、PEG 及び関連ポリマーはポリマー骨格に、又はポリマー骨格をトリアジン誘導体に結合する結合基に、分解する結合を含むことがある。
【0019】
「アルキル」という用語は、普通、長さが約1乃至約12炭素原子の範囲にある炭化水素鎖を指し、直鎖及び枝分かれ鎖を含む。炭化水素鎖は飽和していても飽和していなくてもよい。「置換されたアルキル」という用語は、C3−C6シクロアルキル、例えばシクロプロピル、シクロブチル、など;アセチレン;シアノ;アルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、など;低級アルカノイルオキシ、例えばアセトキシ;ヒドロキシ;カルボキシル;アミノ;低級アルキルアミノ、例えばメチルアミノ;ケトン;ハロ、例えばクロロ又はブロモ;フェニル;置換されたフェニルなど、1つ以上の非妨害的な置換基によって置換されたアルキル基を指す。
【0020】
「アリール」とは、各々が5又は6個のコア炭素原子を有する1つ以上の芳香族環を意味する。多重アリール環は、ナフチルのように縮合環であることもビフェニルのように非縮合環であることもある。アリール環は、1つ以上の環状炭化水素、ヘテロアリール又はヘテロ環式環と縮合されることもされないこともある。
【0021】
「置換されたアリール」は、1つ以上の非妨害基を置換基として有するアリールである。フェニル環における置換では、置換基はどんな位置(すなわち、オルト、メタ、又はパラ)であってもよい。
【0022】
「非妨害的な置換基」とは、安定な化合物を生ずる基である。適当な非妨害的な置換基又は基としては、それだけに限定されないが、次のようなものがあげられる;ハロ、C1−C10アルキル、C2−C10アルケニル、C2−C10アルキニル、C1−C10アルコキシ、C7−C12アラルキル、C7−C12アルカリル、C3−C10シクロアルキル、C3−C10シクロアルケニル、フェニル、置換されたフェニル、トルオイル、キシレニル、ビフェニル、C2−C12アルコキシアルキル、C7−C12アルコキシアリール、C7−C12アルコキシアルキル、C6−C12オキシアリール、C1−C6アルキルスルフィニル、C1−C10アルキルスルフォニル、−(CH2)m−O−(C1−C10アルキル)ここでmは1乃至8である、アリール、置換されたアリール、置換されたアルコキシ、フルオロアルキル、複素環式基、置換された複素環式基、ニトロアルキル、−NO2、−CN、−NRC(O)−(C1−C10アルキル)、−C(O)−(C1−C10アルキル)、C2−C10チオアルキル、−C(O)O−(C1−C10アルキル)、−OH、−SO2、=S、−COOH、−NR、カルボニル、−C(O)−(C1−C10アルキル)−CF3、−C(O)−CF3、−C(O)NR2、−(C1−C10アルキル)−S−(C6−C12アリール)、−C(O)−(C6−C12アリール)、−(CH2)m−O−(CH2)m−O −(C1−C10アルキル)、ここで各mは1乃至8である、−C(O)NR、−C(S)NR、−SO2NR、−NRC(O)NR、−NRC(S)NR、それらの塩、など。ここで用いられる各Rは、H、アルキル又は置換されたアルキル、アリール、アラルキル、又はアルカリルである。
【0023】
「置換されたアミノ」とは、化学式がNR3R4のアミノ基であって、R3とR4の少なくとも1つが上で定義されたような非妨的害置換基、例えばC1−6アルキル又は置換されたC1−6アルキル、であるアミノ基を指す。
【0024】
「ポリオレフィンアルコール」とは、ポリエチレンなど、オレフィンポリマー骨格を含むポリマーであって、ポリマー骨格に多数のヒドロキシル基が結合しているものである。ポリオレフィンアルコールの一例はポリビニルアルコールである。
【0025】
本明細書で用いられる場合、「非ペプチド」とは、実質的にペプチド結合を含まないポリマー骨格を指す。しかし、ポリマー骨格は骨格の長さに沿って間隔をおいた少数のペプチド結合を、例えば約50モノマー単位あたり約1個のペプチド結合を含んでもよい。
【0026】
「シアヌル酸ハライド」とは、トリアジン環の非ヘテロ原子位置に共有結合で結合した少なくとも1つのハロゲン原子を有するs−トリアジン又はas−トリアジン環を指す。好ましくは、シアヌル酸ハライド分子は、塩化シアヌルのように3つのハロゲン原子がトリアジン環の非ヘテロ原子位置に結合している。
【0027】
「トリアジン誘導体のポリマー複合体」とは、ここで定義されたようなトリアジン誘導体に共有結合で結合した水溶性及び非ペプチドのポリマー骨格であって、複合体のトリアジン環部分が(i)ハロ置換基、及び(ii)共有結合で結合したタンパク質を欠いているものである。すなわち、本発明のポリマー置換されたトリアジン誘導体は、タンパク質修飾因子ではなく、それ自体が薬剤複合体である。
【0028】
II .ポリマー複合体
本発明は、いくつかの新しいトリアジン誘導体のポリマー複合体の発見に基づいている。本発明の複合体は、親であるトリアジン誘導体の化学的な不安定性及び不溶性の問題を克服し、好ましくは低収率と親化合物の二量体化の問題を回避する合成方法で調製されて複合体前駆体が高い収率で得られる。複合体とその合成方法について以下でさらに詳しく説明する。
【0029】
本発明のポリマー複合体は、少なくとも1つの水溶性の非ペプチドポリマー骨格を(i)トリアジン誘導体のs−トリアジン環、又は(ii)トリアジン誘導体のas−トリアジン環のヘテロ原子位置への結合によって共有結合で結合された形で含む。好ましくは、非ペプチドポリマー複合体は、ポリマー骨格を誘導体のトリアジン環内のただ1つの非ヘテロ原子(すなわち、非窒素)位置に共有結合で結合された形で含む。
【0030】
「トリアジン誘導体」という用語は、1,3,5−トリアジン又は1,2,4−トリアジン環を含むあらゆる構造を包含することが意図される。本明細書で用いる場合、この用語は縮合環を含むトリアジン環、例えばベンゾトリアジン環、を含む。トリアジン誘導体はヘテロ原子位置で置換されている及び/又はポリマー骨格に共有結合で結合していないトリアジン環構造の残りの非ヘテロ原子位置で置換されていることがある。トリアジン環の非ヘテロ原子位置での置換基の例としては、アミノ、置換されたアミノ(例えば、アルキルアミノ及びジアルキルアミノ)、アリール(例えば、フェニル)、置換されたアリール(例えば、フェニルを1つ以上のハロゲン原子などで置換したもの)、などがあげられる。
【0031】
上記のトリメラモルの他に、本発明のポリマー複合体のトリアジン誘導体部分を構成することができる具体的なトリアジン化合物の他の例としては、アルトレタミン(2,4,6−ジメチルアミノ−1,3,5−トリアジン)、ラモトリジン(3,4− ジアミノ−6−(2,3−ジクロロフェニル)−1,2,4−トリアジン)、及びチラパザミン(3−アミノ−1,2,4−ベンゾトリアジン−1,4−ジオキシド)などがあり、すべて下に示される。アルトレタミンは、難治性の卵巣がんに対する活性が実証された抗腫瘍剤である(Damia et al., Clin. Pharmacokinet., 1995, 28(6):439−449)。水に対する溶解度が低いので、この薬は普通経口的に投与される。チラパザミンは、低酸素性の主要細胞を選択的に殺す能力を示す生体内還元ベンゾトリアジン化合物の一部類に属する鉛化合物である(Koch, Cancer Research, 1993, 53: 3992−3997)。ラモトリジンは、てんかんの治療に有効な抗けいれん剤であり、糖尿性の神経障害及びSUNCT(サンクトShort lasting,Unilateral, Neuralgiform headache attacks with Conjunctival Injection and Tearing)症候群に関連した痛みの治療とコントロールにも有望である(Eisenberg, et al., Neurology, 2001, 57(3):505−509; D’Andrea, et al., Neurology, 2001, 57(9): 1723−1725)。
【0032】
【化15】
【0033】
ラモトリジンに関して言うと、ポリマー骨格はトリアジン環のアミノ置換位置のどちらに結合させてもよい。あるいはまた、ポリマー骨格はフェニル環上で利用できるどの炭素原子に結合させてもよい。チラパザミンに関して言うと、ポリマー骨格は縮合環構造上で利用できるどの炭素原子に結合させても又はアミノ置換位置で結合させてもよい。
【0034】
ある特別の実施の形態では、本発明は、ここで化学式Iと呼ばれる以下の構造に結合された水溶性の非ペプチドポリマー骨格を含むトリアジン誘導体のポリマー複合体に関する。
【0035】
【化16】
【0036】
ここで:
L は、ポリマー骨格との結合点であり、
X は、O 又はNR2 などの結合基、ここでR2はH、C1−6アルキル、又は置換されたC1−6アルキル(例えば、CH2OH)であり;そして
Y1とY2 は、各々独立にアミノ、置換されたアミノ、C1−6アルキル、置換されたC1−6アルキル、アリール、又は置換されたアリールである。
【0037】
さらに別の実施の形態では、Y1 とY2 は、それぞれNRR1である、ここでR はC1−6アルキル(例えば、メチル)、置換されたC1−6アルキル、又は電子求引基であり、R1はH、C1−6アルキル、又は置換されたC1−6アルキルである。ポリマー骨格に結合されるトリアジン誘導体がアルトレタミンであるときには、R とR1 はどちらもC1−6アルキル、具体的にはメチルである。ポリマー骨格に付着されるトリアジン誘導体がトリメラモルであるときには、R はメチルであり、R1 は−CH2OH である。
【0038】
A.ポリマー骨格
化学式Iの水溶性の非ペプチドポリマー骨格は、ポリ(エチレングリコール)(すなわち、PEG)であってもよい。しかし、他の関連したポリマーも本発明の実施で用いるのに適しており、PEG 又はポリ(エチレングリコール)という用語の使用は、この点に関して包含的であることを意図し、排除的であることを意図していないことは言うまでもない。PEG という用語は、ポリ(エチレングリコール)の線状、枝分かれ、又はマルチアーム形態のいずれをも含み、以下で詳しく述べるように、アルコキシPEG 、二官能PEG 、フォーク状PEG 、枝分かれPEG 、ペンダントPEG 、または分解する結合を含むPEG など、を含む。
【0039】
ここで記述される何れの形態でも、PEG は普通、透明、無色、無臭、水溶性、熱に対して安定、多くの化学物質に対して不活性、であり、(特にそうなるように設計した場合を除き)加水分解も劣化もせず、一般に無毒である。ポリ(エチレングリコール)は、生体適合性であると考えられる。それはすなわち、PEG は生きている組織又は生物に害を与えることなく共存することができるということである。さらに具体的に言うと、PEG は実質的に非免疫原性であり、それはすなわち、PEG には体に免疫応答を生ずる働きがないということである。体に対して何らかの望ましい機能を有する分子、例えば本発明の生物的に活性なトリアジン誘導体に結合させたとき、PEG はその物質をマスクするように働き、免疫応答を減少させたりなくしたりして生物がその物質の存在を許容できるようにすることができる。PEG 複合体は、実質的な免疫応答が生じないように、又は凝固その他の望ましくない効果が生じないように働く。化学式 CH2CH2O−(CH2CH2O)n−CH2CH2− (ここで、n は、約3 乃至約4000、普通は約3 乃至約2000)を有するPEG は本発明の実施に有用なポリマーの1つである。数平均分子量が約100 Da 乃至約100,000 Da であるPEG、好ましくは約350 Da 乃至約40,000 Da であるPEG、はポリマー骨格として特に有用である。
【0040】
本発明で有用な1つの形態では、自由な又は結合していないPEG は各端がヒドロキシル基で終端する線状ポリマー:
HO−CH2CH2O−(CH2CH2O)n−CH2CH2−OH
である。
上記のポリマー、アルファ−、オメガ−ジヒドロキシルポリ(エチレングリコール)、は簡潔な形、HO−PEG−OH,で表すことができ、ここで−PEG−という記号は次の構造単位を表す:
−CH2CH2O−(CH2CH2O)n−CH2CH2−
ここで、n は普通約3乃至約4000の範囲にある。このタイプの線状ポリマー骨格は実施例7における出発物質として用いられる。
【0041】
本発明の複合体を形成するのに有用な別のタイプのPEG は、メトキシ−PEG−OH、又は簡潔にmPEG 、であり、そこでは一端は比較的不活性のメトキシ基であり、他端は容易に化学的に修飾されるヒドロキシル基である。mPEG の構造を下に示す。
CH3O−(CH2CH2O)n−CH2CH2−OH
ここで、n は上述のとおりである。mPEGの形のポリマー骨格の使用は実施例1−5及び8で示される。
【0042】
下に示すエチレンオキシドとプロピレンオキシドのランダム又はブロックコポリマーは、その化学がPEG と密接に関連しており、これも本発明の複合体のポリマー骨格として用いることができる。
HO−CH2CHRO(CH2CHRO)nCH2CHR−OH
ここで、各R は独立にH 又はCH3 であり、n は上述の通りである。
【0043】
ポリマー骨格はまた、枝分かれ構造を含むこともあり、これは普通、枝分かれする中央コア部分と、この中央コアに結合した複数のポリマー鎖、好ましくは線状ポリマー鎖を有する。ある実施の形態では、PEG が枝分かれした形態で用いられ、これは例えば、いろいろなポリオール中央コア構造、例えば、グリセロール、グリセロールオリゴマー、ペンタエリスリトール及びソルビトール、にエチレンオキシドを添加して調製される。本発明では、ポリマー鎖に結合するための複数のヒドロキシル基を提供する任意のポリオールが使用できる。ポリオールの枝分かれするコア構造は、約3 乃至約100 個の利用できるヒドロキシ基(普通は約3 乃至約20 個)を提供し、枝分かれしたポリマー構造は約3 乃至約100 個のポリマー鎖を含むことになる。このタイプの枝分かれしたポリ(エチレングリコール)分子は一般的な形でR(−PEG−OH)mと表すことができ、ここでR は中央コア部分に由来する、グロセロール、グリセロールオリゴマー、又はペンタエルスリトールなどであり、m はアームの数で、普通約3 乃至約20 である。ペンタエルスリトールを中央コアとして用いて形成された枝分かれPEG 構造の使用は実施例6で例示される。中央コア部分はまた、リシンなど、いくつかのアミノ酸のいずれかから誘導することができ、その中央コア部分はポリマー鎖を結合させるために普通2つ以上の部位、例えばアミノ酸を備えている。参照によって全体が本明細書に取り込まれる米国特許No. 5,932,462 に記載されているようなマルチアームPEG 分子もポリマー骨格として使用できる。 米国特許No. 5,932,462 に記載されているポリマー骨格については、化学式Ieに関連して以下で詳しく論じる。
【0044】
ポリマー骨格は、また、フォーク状PEG を含むこともできる。フォーク状PEG の一例は、PEG−YCHZ2で表され、ここでY は結合基であり、Z は一定の長さの原子の鎖でCH に結合される活性化された末端基である。国際特許出願No. PCT/US99/05333 は、本発明のある実施の形態で使用されるいろいろなフォーク状PEG 構造を開示しており、その内容は参照によって本明細書に取り込まれる。Z 官能基を枝分かれする炭素原子に結合している原子の鎖は、係留基の役目をし、例えば、アルキル鎖、エーテル鎖、エステル鎖、アミド鎖、及びそれらの組み合わせ、を含む。Z 官能基は、本発明においてトリアジン誘導体と反応してトリアジン誘導体とポリマー骨格の間の結合を形成するように用いることができる。フォーク状ポリマーの実施の形態は、以下で化学式Idに関連して詳しく論じられる。
【0045】
ポリマー骨格は、ペンダントPEG を含むこともできる。これは、反応性の基、例えばカルボキシル基、がPEG 骨格の末端ではなく、その長さに沿って共有結合で結合しているものである。ペンダント反応基は、PEG 骨格に直接に、又はアルキレンなどの結合部分によって、結合することができる。
【0046】
上述の形のPEG の他に、ポリマーは1つ以上の弱い又は劣化する結合を、上述のポリマーを含めて骨格に有するように調製することもできる。例えば、PEG は、ポリマー骨格に加水分解されるエステル結合を含んで調製することができる。以下に示すように、この加水分解はポリマーを低い分子量の断片に次のように開裂する:
−PEG−CO2−PEG− + H2O → −PEG−CO2H + HO−PEG−
同様に、ポリマー骨格は、弱い又は分解する結合部分によって生物的に活性な物質、例えばトリアジン誘導体、に共有結合で結合させることができる。例えば、PEG カルボン酸又は活性化されたPEG カルボン酸とアルコール基との反応によって生物的に活性な物質に形成されたエステル結合は一般に生理的条件の下で加水分解してその物質を放出する。
【0047】
ポリマー骨格内部の分解できる結合として又はポリマー骨格を生物的に活性な物質と結合する分解できる結合として使用できるその他の加水分解で分解される結合としては次のようなものがある:炭酸塩結合;イミン結合、これは、例えばアミンとアルデヒドの反応から得られる(例えば、Ouchi et al., Polymer Preprints, 38(1): 582−3 (1997)、これは参照によって本明細書に取り込まれる);リン酸塩エステル結合、これは、例えばアルコールをリン酸塩基と反応させて形成される;ヒドラゾン結合、これは普通ヒドラジドとアルデヒドの反応によって形成される;アセタール結合、これは普通、アルデヒドとアルコールの反応によって形成される;オルトエステル結合、これは、例えばギ酸塩とアルコールの反応によって形成される;ペプチド結合、これはPEG などのポリマーの一端におけるアミン基などとペプチドのカルボキシル基によって形成される;及びオリゴヌクレオチド結合、これは、例えばポリマーの一端におけるホスホラミディト(phosphoramidite)基などとオリゴヌクレオチドの5’ヒドロキシル基によって形成される。
【0048】
ポリ(エチレングリコール)又はPEG という用語は上記のすべての形態のPEG を含むということは当業者には理解される。
【0049】
その他にも多くのポリマーが本発明に適している。非ペプチドで水溶性であり、2 個から約300 個までの末端を有するポリマー骨格が特に本発明に有用である。適当なポリマーの例としては次のようなものが上げられるが、それだけに限定されない:すなわち、他のポリ(アルキレングリコール)、例えばポリ(プロピレングリコール)(“PPG”)、エチレングリコールとプロピレングリコールのコポリマーなど、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(サッカライド)、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリ(N−アクリロイルモルフォリン)、例えば米国特許No. 5,629,384に記載されているもの(この特許は参照によって本明細書に取り込まれる)、及びそれらのコポリマー、ターポリマー及び混合物。ポリマー骨格の各鎖の数平均分子量はいろいろであるが、普通、約100 Da 乃至約100,000 Da の範囲にあり、多くの場合約350 Da 乃至約40,000 Da の範囲にある。これらのポリマーは、線状であっても、上述の形態のいずれか(例えば、枝分かれした、フォーク状など)であってもよい。
【0050】
実質的に水溶性で非ペプチドのポリマー骨格についての前述のリストは決してすべてを尽くすものではなく、単に例示的なものであり、本発明では上で述べた性質を有するすべてのポリマー物質が考えられているということは当業者には認識されるであろう。
【0051】
B.ポリマー骨格とトリアジン誘導体の間の結合
トリアジン誘導体とポリマー骨格の間の結合、例えば上の化学式IのX 部分、は、少なくとも部分的にはポリマー骨格に結合した官能基とトリアジン誘導体分子の反応から生ずる。具体的な結合は、用いられる官能基のタイプに依存する。ポリマー骨格がフォーク状の端末や枝分かれ構造を含まない比較的単純な構造、例えば米国特許No. 5,932,462 に記載されているようなもの、であり、トリアジン誘導体に結合するための少なくとも1つのヒドロキシル末端をもっていると仮定すると、X はOになる。同様に、比較的単純なポリマー骨格が官能基としてアミン基を持つ場合、X はNR2になり、R2 はH, C1−6アルキル、又はCH2OH である。マルチアーム、枝分かれ、又はフォーク状のポリマー骨格が用いられる場合、X 部分は比較的複雑になり、結合構造がもっと長くなる。例えば、以下で示すように、ある例示的な「フォーク状」ポリマー実施形態では(化学式Id)、X 部分はポリマー骨格の端末とトリアジン誘導体部分の間に−X1−(W)p−CH−Y’− 結合を含む。X 結合全体は、ポリマー骨格とトリアジン誘導体分子の間の全体の長さが1 乃至約20個の原子、好ましくは1 乃至約10個の原子、である結合を包含する。
【0052】
C.複合体構造の例
次に、本発明の複合体のもっと具体的な構造の実施形態について説明するが、それらはすべて、上の化学式Iの構造に包含されるものである。以下に示す具体的な構造は単に例示的な構造として示されるものであって、本発明の範囲を制限する意図はない。化学式Ia−Idで示される特定の1,3,5−トリアジン誘導体の代わりに、上で言及したような他のトリアジン誘導体を用いることができる。例えば、1,2,4−トリアジン誘導体を複合体のトリアジン誘導体部分に用いることができるだろう。
【0053】
ある実施の形態では、本発明のポリマー複合体の実質的に線状の形態は次の構造を有する:
【化17】
【0054】
ここで、POLY は、水溶性の非ペプチドポリマー骨格;
Z は、以下で説明するキャッピング(capping)基;
X は、O 又はNR2 などの結合基、ここでR2 はH, C1−6アルキル、又は置換されたC1−6アルキル(例えば、CH2OH);そして
Y1 とY2 は、各々独立にアミノ、置換されたアミノ、C1−6アルキル、又は置換されたC1−6アルキル、アリール、又は置換されたアリールである。
【0055】
Z 部分は、ここで記述されるタイプのポリマーに適当などんなキャッピング基でもよい。例えば、z キャッピング基は、アルコキシ基(例えば、メトキシ又はエトキシ)など比較的不活性な基であってもよい。あるいはまた、Z 部分は、反応性の官能基、場合により保護された形のもの、例えばヒドロキシル、保護されたヒドロキシル、活性エステル(例えば、N−ヒドロキシスクシニミジルエステル又は1−ベンゾトリアゾリルエステル)、活性カーボネート(N−ヒドロキシスクシニミジルカーボネート又は1−ベンゾトリアゾリルカーボネート)、アセタール、アルデヒド、アルデヒド水和物、アルケニル、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、活性スルホン、アミン、保護されたアミン、ヒドラジド、保護されたヒドラジド、チオール、保護されたチオール、カルボン酸、保護されたカルボン酸、イソシアネート、マレイミド、ビニルスルホン、ジチオピリジン、ビニルピリジン、ヨードアセタミド、エポキシド、グリオキサル、ジオン、メシレート、トシレート、又はトレシレートであってもよい。
【0056】
当業者には理解されるように、「保護された」という用語は、ある反応条件の下で化学的に反応性の官能基の反応を阻止する保護基又は保護部分の存在を指す。保護基は、保護される化学的に反応性の基のタイプ及び用いられる反応条件によって異なる。例えば、化学的に反応性の基がアミン又はヒドラジドである場合、保護基は、テルト−ブチルオキシカルボニル(t−Boc)及び9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)の群から選択することができる。化学的に反応性の基がチオールである場合、保護基はオルトピリジルジスルフィドにすることができる。化学的に反応性の基がカルボン酸、例えばブタン酸又はプロピオン酸、であるか又はヒドロキシル基である場合、保護基はベンジル又はアルキル基、例えばメチル、エチル又はtert−ブチルにすることができる。当業者に公知の他の保護基も本発明で使用できる、例えば、Greene, T. W. et al., Protective Group in Organic Synthesis, 2nd ed., John−Wiley & Sons, New York, NY (1991)を参照されたい。
【0057】
本発明のポリマー骨格の末端官能基の具体的な例としては、N−スクシンイミジルカルボネート(例えば、米国特許Nos. 5,281,698, 5,468,478 を参照)、アミン(例えば、Buckmann et al., Makromol. Chem. 182: 1379 (1981)、Zaplipsky et al., Eur. Polym. J. 19: 1177 (1983)を参照)、ヒドラジド(例えば、Andresz et al. Makromol. Chem. 179: 301 (1978)を参照)、スクシンイミジルプロピオネート及びスクシンイミジルブタノエート(例えば、Olson et al. in Poly(ethylene glycol) Chemistry and Biological Applications, pp 170−181, Harris & Zaplipsky eds., ACS, Washington, DC, 1997を参照;また、米国特許No. 5,672,662 を参照)、スクシンイミジルスクシネート(例えば、Abchowski et al. Cancer Biochem. Biophys. 7:175 (1984) 及びJoppich et al. Makromol. Chem. 180: 1381 (1979))、スクシンイミジルエステル(例えば、米国特許No. 4,670, 417 を参照)、ベンゾトリアゾールカルボネート(例えば、米国特許No. 5,650,234 を参照)、グリシジルエーテル(例えば、Pitha et al. Eur. J. Biochem. 94:11 (1979), Elling et al., Biotech. Appl. Biochem. 13:354 (1991) を参照)、オキシカルボニルイミダゾール(例えば、Beauchamp, et al., Anal. Biochem. 131:25 (1983), Tondelli et al. J. Controlled Release 1:251 (1985)を参照)、p−ニトロフェニルカルボネート(例えば、Veronese et al. Appl. Biochem. Biotech. 11:141 (1985);及び Sartore et al., Appl. Biochem. Biotech. 27:45 (1991) を参照)、アルデヒド(例えば、Harris et al. J. Polym. Sci. Chem. Ed. 22:341 (1984), 米国特許No. 5,824,784, 米国特許No. 5,252,714, を参照)、マレイミド(例えば、Goodson et al. Bio/Technology 8:343 (1990), Romani et al. in Chemistry of Peptides and Proteins 2:29 (1984), 及び Kogan, Synthetic Comm. 22:2417 (1992), を参照)、オルトピリジル−ジスルフィド(例えば、Woghiren, et al. Bioconj. Chem. 4:314 (1993), を参照)、アクリロル(例えば、Sawhney et al., Macromolecules 26:581 (1993), を参照)、ビニルスルホン(例えば、米国特許No. 5,900,461 を参照)などがあげられる。上記の文献はすべて参照によって本明細書に取り込まれる。
【0058】
上の化学式Iaに対応するホモ二官能ポリマー複合体で、中央ポリマー骨格が2つのトリアジン誘導体を結合している形も本発明に含まれ、その場合、Z は次の構造を有する:
【化18】
【0059】
ここで、X’ は結合基(linker)、L’ はPOLY への結合点、そしてY1 とY2 は上で定義した通りである。ある好ましい実施の形態では、X とX’はO であり、POLY はポリ(エチレングリコール)である。
【0060】
本発明はまた、例えば3 個乃至約100 個の末端(termini)を有するマルチアームポリマー複合体を含む。中央コア分子に結合した複数のポリマーアームを有するマルチアーム又は枝分かれ複合体の一例は次の構造をもつ:
【化19】
【0061】
ここで:
n は、3 から約100 までの、好ましくは3 から約20 までの整数;
R’は、中央コア分子;
X 及びY は、各々独立に選択される、O 又はNR2などの結合基、ここでR2 はH、C1−6 アルキル、又はCH2OH である;
各POLY は、独立に選ばれる水溶性の非ペプチドポリマー骨格であり;そして Y1 とY2 は上で定義した通りである。
【0062】
中央コア分子、R、は好ましくは、ポリオール、例えばグリセロール、グリセロールオリゴマー、ペンタエリスリトール、又はソルビトール、ポリアミン、例えばポリリシン、又は他のポリアミノ酸及びアルコールとアミン基の組み合わせを有する分子から成る群から選択される分子から誘導される。あるいはまた、R 部分は米国特許No. 5,830,986 に記載されたタイプのデンドリマー(樹状体)、例えばポリアミドアミンデンドリマー、ポリ(プロピレンイミン)デンドリマー、などを含む。この特許は参照によって全体が本明細書に取り込まれる。好ましくは、R の分子量は約2000 未満である。中央コア分子は、結合Y によってn 個のポリマー骨格、POLY、に付着できるn 個の官能部位を有する分子から誘導される。複数のポリマー骨格を中央コア分子に結合させることができるため、ポリマーの積載能力が増大し、それは比較的低い活性の生物的に活性な物質に取って特に有効である。
【0063】
本発明のマルチアーム複合体の1つの具体的な例は次の構造を有する:
【化20】
【0064】
ここで、PEG は、平均分子量が約100 Da 乃至約100,000 Daのポリ(エチレングリコール)、そしてY1 とY2 は上で定義した通りである。
本発明の「フォーク状」ポリマー複合体のある特定の例を下記に示す:
【0065】
【化21】
【0066】
ここで、X1 とY’ は独立に選ばれた結合基、例えばO 又はNR2 、そしてR2 はH, C1−6 アルキル、又はCH2OH である;L はポリマー骨格への結合点、各p は独立に0 又は1 であり、各W は係留基、例えば−(CH2)m−, −(CH2)m−O−, −O−(CH2)m−, −(CH2)m−O2C−CH2CH2−, 及び−(CH2)m−O−(CH2)r−, ここで各m 及びr は独立に1−10であり、各D はトリアジン誘導体、例えば次の構造を有するトリアジン誘導体である:
【0067】
【化22】
【0068】
ここで、Y1 とY2 は上で定義した通りである。
【0069】
別の実施の形態では、ポリマー複合体は、米国特許No. 5,932,462 に記載されているタイプの枝分かれポリマー骨格を用いて形成され、ポリマー骨格は次のような構造を有する:
【0070】
【化23】
【0071】
ここで:
polya とpolyb は、水溶性の非ペプチドポリマー骨格、例えばメトキシポリ(エチレングリコール);
R” は、非反応性部分、例えばH, メチル、又は水溶性の非ペプチドポリマー骨格;そして
P とQ は、非反応性結合である。
【0072】
ある好ましい実施の形態では、枝分かれしたポリマー骨格はメトキシポリ(エチレングリコール)二置換リシンを含む。
【0073】
III .ポリマー複合体の調製
本発明の別の様態は、上述のポリマー複合体を形成する間接的な方法である。この方法では、ポリマー骨格は、通常のやり方のように活性薬剤部分に直接結合されない。その代わりに、ポリマーは、活性薬剤の市販されている前駆物質に結合されてペグ化されたトリアジン薬剤前駆物質を形成し、それをさらにトリアジン骨格との反応によって修飾して分子の活性薬剤部分を構成する。
【0074】
このアプローチは、活性トリアジン誘導体、トリメラモルに水溶性のポリマーを直接結合することは信じがたいほど困難であり、収率が低く、一部はトリメラモルの加水分解のために生成物の複雑な混合物が生ずるということが発見された後に開発された。用いられたトリアジン薬剤前駆物質の例、塩化シアヌル、は以前、ポリエチレングリコールをインターフェロンなどの活性タンパク質に結合するための結合基として用いられたが(Abuchowski, et al., J. Biol. Chem. 252: 3578 (1977); 米国特許No. 5,342,940)、これまでトリアジンをベースとする抗腫瘍化合物などの活性薬剤部分を生成するための合成前駆物質として用いられたことはなかった。
【0075】
一般に、この方法は、上述のような水溶性ポリマーをシアヌル酸ハライド又はそれと同等なものと反応させて、トリアジン環の非ヘテロ原子位置の1つでポリマーアームが置換された反応性のトリアジン中間物質を形成する。普通、ポリマー、例えばPEG が一端で活性化されてシアヌル酸ハライドのハロゲン原子の1つを追い出し/置換する。好ましいのは、ヒドロキシ終端PEG 又はアミノ終端PEG の対応するアルコキシド塩などの反応性部分であるが、当業者であれば容易に決定できるように、いくつかの反応性の基の何れを用いてもよい。トリアジン環の性質によって、ポリマー置換は普通ただ1つの位置でのみ起こり、これをきわめて選択的な合成ルートにする。すなわち、普通、二−及び三−ポリマー置換されたトリアジンは認められるほど形成されず、それによってこれが高収率の合成方法となる。さらに、本発明の基礎を成している活性物質は小さな分子であるために、トリアジン環内の1つの部位だけにポリマーが結合することが一般に好ましい。例示的なPEG骨格を塩化シアヌルに結合する代表的な反応が実施例1, 4, 6, 7, 及び8 に示されている。
【0076】
ポリマー骨格の結合に続いて、シアヌル酸ハライド中間物質は、1つ又は一連の化学的修飾工程で修飾されて、複合体の活性トリアジン誘導体部分に対応するトリアジン環のハライド位置に官能基が導入される。本発明の好ましい実施の形態では、この官能基は、アミノ、置換されたアミノ(例えば、アルキルアミノ及びジアルキルアミノ)、アリール(例えば、フェニル)、置換されたアリール(例えば、フェニルを1つ以上のハロゲン原子などで置換したもの)から成る群から選択される。
【0077】
具体的に言うと、この方法はシアヌル酸ハライドと反応する官能基に結合された水溶性の非ペプチドポリマー骨格を提供する工程を含む。官能基は好ましくはヒドロキシル又はアミノである。例えば、1,3,5−トリアジン誘導体のポリマー誘導体を形成するとき、ポリマー骨格を次の構造を有するシアヌル酸ハライドと反応させることが好ましい:
【0078】
【化24】
【0079】
ここで、各Xh はハロゲン、好ましくは塩素である。
【0080】
普通、ポリマー骨格とシアヌル酸ハライドとの間の反応は適当な溶剤、例えばトルエン、テトラヒドロフラン、又はジオキサン、好ましくは無水の形の存在下で起こる。ある実施の形態では、水溶性の非ペプチドポリマー骨格の末端官能基はヒドロキシルであり、それが強い塩基、例えばn−ブチル又はt−ブチルリチウムとの反応によって対応するアルコキシドに変換され、続いてシアヌル酸ハライドと反応する。
【0081】
こうして形成される、ポリマーアームが結合したジハロトリアジン中間物質はさらに修飾されて、トリアジン環上に残っているハロゲン又は他の置換基が活性トリアジン誘導体に対応するもので置換される。例えば、ジハロトリアジンポリマー中間物質を、アミン、例えばメチルアミンなどのアルキルアミンと反応させて次の構造に結合されたアミノ置換トリアジンポリマー複合体が形成される:
【0082】
【化25】
【0083】
ここで、R’はアルキル、好ましくはC1−6 アルキルであり、L とX は上で定義された通りである。残っているハライドを置換されたアミノ基で置換する反応の例は実施例2, 4, 及び6−8で示される。
【0084】
この例では、ポリマー誘導されたジハロトリアジン中間物質分子の2つのハロ官能基は同一の官能基で置換され、それがさらに所望のトリアジン誘導体製品に応じて化学的に修飾される。最終トリアジン誘導体におけるトリアジン環上の置換された官能基が異なる場合には、所望の官能基の段階的な導入が用いられる。
【0085】
普通、ポリマー誘導されたジハロ置換トリアジン前駆物質から対応する活性トリアジン誘導体の複合体への変換、例えばアルキルアミンとの反応による変換、は適当な溶剤、例えばトルエン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、塩化メチレン、又はクロロホルムの存在下で起こる。
【0086】
トリアジン誘導体のポリマー複合体は、例えば導入されたアミノ基において炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩の存在下で水性ホルムアルデヒドとの反応によってさらに修飾されて、下に示すようなトリアジン環に二置換されたアミノ基を有するポリマー複合体が形成される:
【0087】
【化26】
【0088】
ここで、L, X, 及びR’は上で定義された通りである。ホルムアルデヒドとの反応の例は、実施例3, 5, 及び6−8 で示される。
【0089】
上述の合成方法は、中間のポリマー複合体が最初の工程で形成されて、各合成工程のポリマー生成物がジエチルエーテル、イソプロパノール、又はそれらの混合物など、適当な溶剤からの析出物として集めることができるので最終製品の精製を非常に強化/単純化する。すなわち、各反応工程で形成されるポリマーが結合した化合物の分離が容易であるために、プロセスの最後だけでなく全合成の各段階で精製を容易に行うことができる。
【0090】
IV .ポリマー複合体を含む組成物/調合物
ここで提供される化学的に修飾されたトリアジン誘導体は、普通、次のような特性の1つ以上を備えている。本発明のトリアジン誘導体の複合体は、高い純度/均一性を有する他に、少なくとも測定できる程度の特異的活性を保持する。すなわち、本発明によるトリアジン複合体は、修飾されない親トリアジン化合物の特異的活性の約2% 乃至約100%を保持する。この活性は、特定親トリアジン化合物の公知の活性に応じて、適当なin vivo 又はin vitro 抗腫瘍モデルを用いて決定することができる。例えば、複合体の抗腫瘍活性は、標準的な抗白血病、肺がん、乳がん、及びCNS腫瘍評価を用いて、例えばヒトがん細胞ライン又はマウス白血病細胞ラインを用い、複合体の活性を修飾されない親トリアジン化合物の活性と比較測定することによって容易に決定できる。一般に、本発明のトリアジン複合体は、当業者に周知の適当な抗腫瘍モデルで測定して、修飾されない親トリアジンの活性に比べて少なくとも約2%, 5%, 10%, 15%, 25%, 30%, 40% 以上の特異的活性を保有する。
【0091】
本発明のポリマー複合体は、それ自体で投与することも又は製薬的に受容される塩の形で投与することもできる。用いる場合、ポリマー複合体の塩は、薬理的にも製薬的にも受容できるものでなければならないが、製薬的に受容できない塩も自由な活性化合物又は製薬的に受容されるその塩を調製するために好適に使用することができるので本発明の範囲から除外されない。このような薬理的及び製薬的に受容される塩は、文献に詳しく記載されている標準的な方法を用いて、ポリマー複合体と有機又は無機の酸との反応によって調製できる。使用できる塩の例としては、それだけに限定されないが、次の酸から調製されるものがある:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、p−トルエンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸、ナフタレン−2−スルホン酸、及びベンゼンスルホン酸、など。また、製薬的に受容される塩は、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩として、例えばカルボン酸のナトリウム、カリウム、又はカルシウム塩として、調製することもできる。
【0092】
本発明はまた、獣医学的及びヒトの医学的用途のための製薬調合物又は組成物であって、1つ以上の本発明のポリマー複合体、又は製薬的に受容されるその塩、を1つ以上の製薬的に受容されるキャリア、及び場合により他の治療成分、安定化剤、などと共に含む製薬調合物又は組成物を提供する。キャリア(単数又は複数)は、調合物の他の成分と適合し、そのレシピエントに不当に有害ではないという意味で製薬的に受容されるものでなければならない。本発明の組成物はまた、ポリマー賦形剤/添加剤又はキャリア、例えば、ポリビニルピロリドン、誘導体化セルローズ、例えばヒドロキシメチルセルローズ、ヒドロキシエチルセルローズ、ヒドロキシプロピルメチルセルローズ、Ficolls (ポリメリックシュガー)、ヒドロキシエチルスターチ(HES)、デキストレート(例えば、シクロデキストリン、すなわち、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、及びスルホブチル−β−シクロデキストリン)、ポリエチレングリコール、及びペクチンを含むことがある。さらに、組成物は、希釈剤、緩衝剤、結合剤、崩壊剤、増粘剤、潤滑剤、保存剤(抗酸化剤を含む)、芳香剤、味覚麻痺剤、無機塩(例えば、塩化ナトリウム)、抗菌剤(例えば、塩化ベンザルコニウム)、甘味料、帯電防止剤、表面活性剤(例えば、“TWEEN 20” と“TWEEN 80” などのポリソルベート、F68とF88 などのPluronics 、BASF から入手できる)、ソルビタンエステル、脂質(例えば、レシチンなどのリン脂質、及びその他のホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、脂肪酸及び脂肪酸エステル、ステロイド(例えば、コレステロール))、及びキレート化剤(例えば、EDTA, 亜鉛、及び他のそのような適当な陽イオン)、を含むことがある。本発明による組成物で使用するのに適したその他の製薬的な賦形剤及び/又は添加剤は以下にリストされている、“Remington: The Science & Practice of Pharmacy”, 19th ed., Williams & Williams, (1995), 及び “Physician’s Desk of Reference”, 52th ed., Medical Economics, Montvale, NJ (1998), 及び“Handbook of Pharmaceutical Excipients”, Third Ed., Ed. A. H. Kibbe, Pharmaceutical Press, 2000。
【0093】
本発明の複合体は、経口、直腸、局所、経鼻、眼、又は非経口(腹腔内、静脈内、皮下、又は筋肉内注射、を含む)投与に適したものを含む組成物で調合することができる。この組成物は、単位服用の形で好適に提供することができ、製薬の分野で周知のどんな方法によっても調製できる。すべての方法が、活性物質又は化合物(すなわち、ポリマー複合体)を1つ以上の付属成分を構成するキャリアと関連させる工程を含む。一般に、この組成物は活性化合物を液体のキャリアと関連させて溶液又は懸濁液を形成するか、あるいはまた、活性化合物を固体の、場合により粒状の製品を形成し、そしてもしも必要ならその後その製品を所望の配給形態に成形するための適当な調合成分と関連させる。本発明の固体調合物は、粒状である場合、普通粒径が約1 ナノメートルから約500 ミクロンの範囲にある粒子を含む。一般に、静脈内注射を意図した固体調合物の場合、粒子の直径は普通約1 nm から約10 ミクロンまでの範囲にある。
【0094】
調合物内のトリアジン誘導体の複合体の量は、用いられる特定トリアジン誘導体、複合体の形でのその活性、その分子量、その他の因子、例えば服用形態、標的患者の集団、及びその他の要因によって異なるが、一般に当業者であれば容易に決定できる。調合物内の複合体の量は、治療的に有効な量のトリアジン誘導体をそれを必要としている患者に送給して、トリアジン誘導体に結びつけられる治療効果の少なくとも1つ、例えば腫瘍崩壊活性、を達成するのに必要な量である。実際には、これは、特定複合体、その活性、治療使用とする状態の重篤性、患者の集団構成、調合物の安定性、などによって大きく異なる。組成物は一般に、約1 重量%乃至約99 重量%のトリアジン誘導体の複合体を含み、典型的には約2 重量%乃至約95 重量%の複合体、さらに典型的には約5 重量%乃至約85 重量%の複合体を含み、これはまた組成物に含まれる賦形剤/添加剤の相対的な量にも依存する。もっと詳しく言うと、組成物は普通、少なくとも約1つの次のパーセンテージ:すなわち、重量で2%, 5%, 10%, 20%, 30%, 40%, 50%, 60% 又はそれ以上、のトリアジン複合体を含む。
【0095】
経口投与に適した本発明の組成物は、カプセル、カシェ剤、錠剤、ロゼンジ、など、各々が所定の量の活性物質を粉末又は顆粒として含む離散的な単位として;又は、水性の液体又はシロップなどの非水性の液体中の懸濁液、エリクシール、エマルジョン、ドラフト(draught)など、の形で提供することができる。
【0096】
錠剤は、圧縮または成型によって、場合により1つ以上の付属成分を用いて作ることができる。圧縮錠剤は、活性化合物が粉末又は顆粒など自由に流れる形で、場合により結合剤、崩壊剤、潤滑剤、不活性の希釈剤、表面活性剤、又は分散剤をミックスしたものを適当な機械で圧縮して調製することができる。適当なキャリアを含む成型錠剤は、適当な機械で成型して作ることができる。
【0097】
シロップは、砂糖、例えばスクロースの濃縮溶液に活性化合物を加えて作られ、それにさらに付属成分(単数又は複数)を加えることもできる。そのような付属成分としては、芳香剤、適当な保存剤、砂糖の結晶化を遅らせる物質、及び多価アルコール、例えばグリセロールやソルビトール、など他の成分の溶解度を高める物質、などがある。
【0098】
非経口投与に適当な調合物は活性化合物の無菌水性製剤を好適に含み、レシピエントの血液と等張になるように調合することができる。
【0099】
鼻スプレー調合物は、保存剤及び等張剤を合わせた活性物質の精製された水溶液を含む。この調合物は、鼻の粘膜に適合するpH及び等張状態に調整することが好ましい。
【0100】
直腸投与のための調合物は、適当なキャリア、例えばココアバター、又は水素添加された脂肪、又は水素添加された脂肪カルボン酸、などを用いた座薬として提供することができる。
【0101】
眼科用の調合物は、鼻スプレーと同様な方法で調製されるが、pHと等張因子は眼にマッチするように調整されることが好ましい。
【0102】
局所治療調合物は、鉱物油、石油、ポリヒドロキシアルコール、その他の局所治療調合物に用いるベースの1つ以上の媒質に活性化合物を溶解又は懸濁させて含む。上記のような他の付属成分の添加が望ましいことがある。
【0103】
さらに、本発明は、ポリマー複合体又はその塩のリポゾーム調合物(liposomal formulation)を提供する。リポゾーム懸濁液を形成する方法は当業者には周知である。本発明の水溶性ポリマー複合体、又はその塩、は従来のリポゾームテクノロジーを用いて脂質小胞(lipid vesicle)に組み込むことができる。そのような場合、複合体又はその塩の水溶性のために、複合体又はその塩は実質的にリポゾームの親水性センター又はコアに引き込まれる。用いられる脂質層は通常のどんな組成のものであってもよく、コレステロールを含んでいても含んでいなくてもよい。生成されるリポゾームは、例えば標準的な音波処理及び均質化方法を用いてサイズを小さくすることができる。本発明のポリマー複合体を含むリポゾーム調合物は、凍結乾燥して凍結乾燥物を生成することができ、それを製薬的に受容されるキャリア、例えば水によって再形成してリポゾーム懸濁液を再生することができる。
【0104】
エアロゾルとして吸入によって投与するのに適した製薬調合物も提供される。この調合物は、所望のポリマー複合体又はその塩の溶液又は懸濁液を含む。所望の調合物は小さなチャンバにいれて噴霧化することができる。噴霧化は、圧縮空気又は超音波エネルギーによって行われ、複合体又はその塩を含む複数の液滴又は固体粒子が形成される。
【0105】
V.ポリマー複合体を利用する方法
本発明のポリマー複合体はヒトを含む哺乳類におけるトリアジン誘導体に応答する状態を治療するのに用いることができる。治療に好ましい1つの状態はがんである。治療の方法は、治療に有効な量の上述のようなトリアジン誘導体のポリマー複合体を含む組成物又は調合物をその哺乳類に投与する工程を含む。特定の複合体の治療に有効な用量は、複合体によって、患者によって、多少異なり、患者の状態、ポリマー複合体の負荷容量(loading capacity)、及び送給ルートに依存する。一般的な命題としては、約0.5 乃至約20 mg/kg 体重、好ましくは約0.5 乃至約20 mg/kg、という用量が治療に効力を有する。他の製薬的に活性な物質と合わせて投与される場合、それよりも少ない量のポリマー複合体でも治療に有効なことがある。
【0106】
ポリマー複合体は、1日に1回又は数回投与できる。治療の継続期間は、1日1回で2週間乃至3週間にわたることもあり、数ヶ月又は数年にわたって続くこともある。1日の用量は、1個の服用単位又は数個の小さな服用単位で1回の投与によるか、又は小さく分けた用量をある一定の間隔で何回も投与するやり方でもよい。可能な送給ルートとしては、舌下錠による、皮下注射による、経皮的、筋肉内注射による、静脈注射による、経口的、又は吸入によるルートがある。
【0107】
VI .実験
mPEG 及びその他の形のPEG が用いられる以下の実施例は本発明を例示するためのものであり、本発明を限定するものと考えてはならない。本発明の実施において用いることができる他の形のPEG 及び同様のポリマーは、上述のように本発明に包含される。さらに、以下の実施例は特定のトリアジン前駆物質及びトリアジン誘導体構造を用いているが、本発明は例示した特定のトリアジン構造に限定されない。
【0108】
添付された実施例で言及されるすべてのPEG 試薬は、Shearwater Corporation of Huntsville, AL. から入手できる。全てのNMRデータは、Bruker 製の300 MHz NMR 分光計によって生成された。
【0109】
実施例1
2−mPEGyloxy 5k −4,6− ジクロロ −1,3,5− トリアジン(I)の合成
【化27】
【0110】
丸底フラスコで、10 グラムのメトキシ−PEG5K(m−PEG5K)(2 mmole)が50 ml の無水トルエンに加えられた。トルエン(25 ml)は、2 時間の蒸留で除去された。残留物は45 ℃に冷却された。得られた溶液に、0.2 wt% の1,10 フェナントロリンを含むn−ブチルリチウム(ヘキサン中2.5 M)が一滴ずつ加えられた。溶液が黄色からブラウン−オレンジに変わったときに添加を終了した。次に、得られた溶液を無水トルエン中の塩化シアヌル(3.6 グラム、20 mmole)溶液に加えた。最終溶液を一晩攪拌した後、200 mlのエチルエーテルに直接加えた。沈澱(I)が濾過によって集められ、新しいエーテルで洗浄され、真空下で乾燥された。1H NMR(DMSO−d6): δ3.50(br m, PEG), 4.39 (t, CH 2 O)。
【0111】
この実施例は、ヒドロキシル基を官能基とした単純なmPEG 骨格をシアヌル酸ハライドに結合する方法を示しており、この方法ではヒドロキシル基が最初にアルコキシドに変換される。
【0112】
実施例2
2−mPEGyloxy 5k −4,6− ジ − ( N− メチルアミノ) −1,3,5− トリアジン( II )の合成
【化28】
【0113】
丸底フラスコで、4.5 グラムの2−mPEGyloxy5K−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン(I)が40 ml の無水トルエンに溶解された。この溶液に12 mlのメチルアミン(THF中に2 M)が加えられた。溶液は30 ℃で一晩攪拌された。溶液は濾過され、次に直接200 ml のエチルエーテルに加えられた。沈澱2−mPEGyloxy5k−4,6−ジ−(N−メチルアミノ)−1,3,5−トリアジン(II)が濾過によって集められ、真空下で乾燥された。1H NMR(DMSO−d6): δ3.50(br m, PEG), 7.0 (m, NH), 4.26 (t, CH 2 O), 2.73 (s, CH 3 )。
【0114】
この実施例は、ポリマー誘導体化されたジハロトリアジン前駆物質とアルキルアミンを反応させて残っているハロゲン原子を置換されたアミノ基で置換する反応を例示している。
【0115】
実施例3
2−mPEGyloxy 5k −4,6− ジ − ( N− メチル −N− ヒドロキシメチルアミノ) −1,3,5− トリアジン( III )の合成
【化29】
【0116】
丸底フラスコで、2 グラムの2−mPEGyloxy5k−4,6−ジ−(N−メチルアミノ)−1,3,5−トリアジン(II)が30 ml の炭酸カリウムの水溶液(50 mM)に溶解された。この溶液に15 ml のホルムアルデヒド水溶液(37 wt%)が加えられた。溶液は45 ℃で一晩攪拌された。次に、溶液は室温まで冷却され、5 wt% のNaCl溶液(90 ml)で希釈された。得られた溶液は塩化メチレンで抽出された。有機相は硫酸ナトリウム上で乾燥され、濾過された。濾液は真空下で濃縮され、残ったシロップが50 ml のエチルエーテルに加えられた。得られた沈澱は濾過して集められ、真空下で乾燥されて2−mPEGyloxy5k−4,6−ジ−(N−メチル−N−ヒドロキシメチルアミノ)−1,3,5−トリアジン(III )が得られた。1H NMR(DMSO−d6): δ3.50(br m, PEG), 4.34 (t, CH 2 O), 3.03 (s, CH 3 ), 4.99 (d, CH 2 OH ), 5.68 (t, CH2OH)。
【0117】
この実施例では、実施例2においてトリアジン環に加えられた置換されたアミノ基がさらにホルムアルデヒドとの反応によって修飾される。
【0118】
実施例4
2−mPEGyloxy 350 −4,6− ジ − ( N− メチルアミノ) −1,3,5− トリアジン( IV )の合成
【化30】
【0119】
丸底フラスコで、10 グラムのメトキシ−PEG350が100 ml の無水トルエンに加えられた。トルエン(40 ml)は2時間の蒸留で除去された。残留物は45 ℃に冷却された。得られた溶液に、0.2 wt% の1,10 フェナントロリンを含むブチルリチウム(ヘキサン中2.5 M)が一滴ずつ加えられた。溶液が黄色からブラウン−オレンジに変わったときに添加を終了した。得られた溶液を無水トルエン(120 ml)中の塩化シアヌル(30 g)の溶液に加え、得られた溶液は一晩攪拌された。溶液は濾過され、200 mlのメチルアミン(THF 中2 M)がそれに加えられた。得られた混合物は一晩30 ℃で攪拌された。その後、溶液は濾過され、濾液が濃縮されて、2−mPEGyloxy350−4,6−ジ−(N−メチルアミノ)−1,3,5−トリアジン(IV)がオイルとして得られた。1H NMR(DMSO−d6): δ3.50(br m, PEG), 7.0 (m, NH), 4.26 (t, CH 2 O), 2.73 (s, CH 3)。
【0120】
この実施例では、小さな分子量のmPEG が上の実施例1及び2で述べたような反応に用いられる。
【0121】
実施例5
2−mPEGyloxy 350 −4,6− ジ − ( N− メチル −N− ヒドロキシメチルアミノ) −1,3,5− トリアジン(V)の合成
【化31】
【0122】
丸底フラスコで、0.5 グラムの2−mPEGyloxy350−4,6−ジ−(N−メチルアミノ)−1,3,5−トリアジン(IV)が15 ml の炭酸カリウム水溶液(50 mM)に溶解された。この溶液に15 ml のホルムアルデヒド水溶液(37 wt%)が加えられ、溶液は一晩50 ℃で攪拌された。次に、溶液は室温まで冷却され、5 wt% NaCl 溶液(60 ml)で希釈された。得られた溶液は塩化メチレンで抽出された。有機相は硫酸ナトリウム上で乾燥され、濾過された。生成物、2−mPEGyloxy350−4,6−ジ−(N−メチル−N−ヒドロキシメチルアミノ)−1,3,5−トリアジン(V)、は真空下で溶剤を除去して集められた。1H NMR(DMSO−d6): δ3.50(br m, PEG), 4.34 (t, CH 2 O), 3.03 (s, CH 3), 4.99 (d, CH 2 OH), 5.68 (t,CH2OH)。
【0123】
この実施例は、実施例4で生成されたポリマー複合体のトリアジン環の置換されたアミノ基をホルムアルデヒドとの反応によってさらに修飾している。
【0124】
実施例6
( VIII )、すなわち( III )の 4− アーム PEG 20K 類似体、の合成
【化32】
【0125】
丸底フラスコで、10 グラムの4−アーム−PEG 20K (ポリエトキシ化されたペンタエリスリトール)が160 ml の無水トルエンに加えられた。トルエン(20 ml)は2時間の共沸蒸留で除去された。残留物は40 ℃に冷却された。得られた溶液に、0.2 wt% の1,10 フェナントロリンを含むブチルリチウム(ヘキサン中2.5 M)が一滴ずつ加えられた。ブチルリチウムの添加の間に溶液は非常に粘っこくなり、いくつかのゲルクラスターが出現した。混合物が黄色からブラウン−オレンジに変わったときに添加を終了した。得られた溶液に、無水トルエン中の塩化シアヌル(3 g)の溶液(25 ml)が加えられた。最終混合物は一晩攪拌された。得られた溶液は直接200 mlのエチルエーテルに加えられた。沈殿物(VI)が濾過によって集められ、新しいエーテルで洗浄され、真空下で乾燥された。
【0126】
丸底フラスコで、5 グラムの(VI)が50 ml の無水トルエンに加えられた。この溶液に12 ml のメチルアミン(THF 中で2 M)が加えられた。溶液は一晩30 ℃で攪拌された。溶液は細かいフィルタで濾過され、200 ml のエチルエーテルに直接加えられた。沈殿物(VII )が濾過によって集められ、真空下で乾燥された。1H NMR(DMSO−d6): δ3.50(br m, PEG), 7.0 (m, NH), 4.26 (t, CH 2 O), 2.73 (s, CH 3)。
【0127】
丸底フラスコで、1 グラムの(VII )が10 ml の炭酸カリウム水溶液(50 mM)に溶解された。この溶液に10 ml のホルムアルデヒド水溶液(37 wt%)が加えられた。溶液は一晩45 ℃で攪拌された。次に、溶液は室温まで冷却され、5 wt% NaCl 溶液(60 ml)で希釈された。得られた溶液は塩化メチレンで抽出された。有機相は硫酸ナトリウム上で乾燥され、濾過された。濾液は真空下で濃縮され、残留シロップが50 ml のエチルエーテルに加えられた。得られた沈澱は、濾過によって集められ、真空下で乾燥されて(VIII)が得られた。1H NMR(DMSO−d6):δ3.50(br m, PEG), 4.34 (t, CH 2 O), 3.03 (s, CH 3), 4.99 (d, CH 2 OH), 5.68 (t,CH2OH)。
【0128】
この実施例は、上の実施例1−3で述べた一般的な反応スキームにおいてポリオールコアを含むマルチアームポリマー骨格を用いている。
【0129】
実施例7
(XI)、すなわち( III )のホモ二官能 PEG 3400 類似体、の合成
【化33】
【0130】
丸底フラスコで、20 グラムのPEG 3400 が200 ml の無水トルエンに加えられた。トルエン(40 ml)は2時間の共沸蒸留で除去された。残留物は40 ℃に冷却された。得られた溶液に、0.2 wt% の1,10 フェナントロリンを含む新しいブチルリチウム(ヘキサン中2.5 M)が一滴ずつ加えられた。ブチルリチウムの添加の間に溶液は粘っこくなり、いくつかのゲルクラスターが出現した。混合物が黄色からブラウン−オレンジに変わったときに添加を終了した。得られた溶液に、無水トルエン中の塩化シアヌル(22 g)の溶液(100 ml)が加えられた。最終混合物は一晩攪拌された。得られた溶液は濾過され、700 mlのエチルエーテルに加えられた。沈殿物(IX)が濾過によって集められ、新しいエーテルで洗浄され、真空下で乾燥された。
【0131】
丸底フラスコで、10 グラムの(IX)が100 ml の無水トルエンに加えられた。この溶液に20 ml のメチルアミン(THF 中で2 M)が加えられた。溶液は一晩40 ℃で攪拌された。溶液は細かいフィルタで濾過され、600 ml のエチルエーテルに直接加えられた。沈殿物(X)が濾過によって集められ、真空下で乾燥された。1H NMR(DMSO−d6): δ3.50(br m, PEG), 7.0 (m, NH), 4.26 (t, CH 2 O), 2.73 (s, CH 3)。
【0132】
丸底フラスコで、3.9 グラムの(X)が20 ml の炭酸カリウム水溶液(50 mM)に溶解された。この溶液に20 ml のホルムアルデヒド水溶液(37 wt%)が加えられた。溶液は一晩室温で攪拌された。溶液は、5 wt% NaCl 溶液(80 ml)で希釈された。得られた溶液は塩化メチレンで抽出された。有機相は硫酸ナトリウム上で乾燥され、濾過された。濾液は真空下で濃縮され、残留シロップが100 ml のエチルエーテルに加えられた。得られた沈澱(XI)は、濾過によって集められ、真空下で乾燥された。1H NMR(DMSO−d6):δ3.50(br m, PEG), 4.34 (t, CH 2 O), 3.03 (s, CH 3), 4.99 (d, CH 2 OH), 5.68 (t,CH2OH)。
【0133】
実施例7は、上の実施例1−3で述べた一般的な反応スキームにおいて二官能PEG骨格を用いている。
【0134】
実施例8
(2−N−mPEG 5K −2−N− ヒドロキシメチルアミノ )−4,6− ジ (N− メチル −N− ヒドロキシメチル )−1,3,5− トリアジン(X IV )の合成
【化34】
【0135】
丸底フラスコで、1 グラムのメトキシ−PEG アミン5KDa (0.2 mmole)が60 ml の無水トルエンに加えられた。トルエン(40 ml)は2時間の共沸蒸留で除去された。残留物は35 ℃まで冷却され、次に無水トルエン中の塩化シアヌル(0.37 グラム)の溶液(10 ml)に加えられた。(XII)を含む最終溶液は室温で4時間攪拌された。この溶液に10 ml のメチルアミン(THF 中で2 M)が加えられた。溶液はキャップ付の丈夫なガラスチューブに移され、一晩オイルバス上で80 ℃で攪拌された。溶液は濾過され、溶媒は濃縮されて100 ml のエチルエーテルに直接加えられた。沈殿物(XIII )が濾過によって集められ、真空下で乾燥された。1H NMR(DMSO−d6): δ3.50(br m, PEG), 2.67 (s, CH 3)。
【0136】
丸底フラスコで、1 グラムの(XIII )が10 ml の炭酸カリウム水溶液(50 mM)に溶解された。この溶液に10 ml のホルムアルデヒド水溶液(37 wt%)が加えられた。溶液は一晩50 ℃で攪拌された。溶液は室温まで冷却され、5 wt% NaCl 溶液(45 ml)で希釈された。得られた溶液は塩化メチレンで抽出された。有機相は硫酸ナトリウム上で乾燥され、濾過された。濾液は真空下で濃縮され、残留シロップが50 ml のエチルエーテルに加えられた。得られた沈澱(XIV)は、濾過によって集められ、真空下で乾燥された。1H NMR(DMSO−d6):δ3.50(br m, PEG), 3.01 (s, CH 3), 4.97 (d, CH 2 OH)。
【0137】
この実施例は、実施例1−3で述べた一般的な反応スキームにおけるアミノ基を官能基とするポリマー骨格の利用を例示している。
【0138】
実施例9
D 2 O 中の( III )、(V)、及び(X IV )の安定性研究
化合物III 、V、及びXIV(6 mg)が別々に0.75 ml のD2O に37 ℃で溶解された。メチレンピークの消滅、ならびにメチルピークのシフト、は300 MHz NMR で時間的にモニターされた。ホルムアルデヒド放出反応の半減期は一次反応速度論(first order kinetics)を用いてモニターされた。III とVの半減期(t1/2)はD2O 中で81 時間であり、XIVの半減期は19.4 時間であった。加水分解されたVのMALDI−TOF スペクトルは、検出できるほどの二量体化は何もないということを示した。
【0139】
この実施例は、本発明が提供するトリメラモルのポリマー複合体は生理的温度で溶液にホルムアルデヒドを放出することを示しており、これが親化合物、トリメラモルの可能な作用メカニズムであると考えられている。さらに、この実施例は、トリメラモルのポリマー複合体が、親化合物に比べて二量体化に対してもっと安定であることを示している。
【0140】
上述の説明及び関連した図面で明らかにされた教示の利点を有する本発明のいろいろな変形やその他の実施形態は、本発明が関わる分野の当業者にはすぐに思い浮かぶであろう。したがって、本発明は開示された特定の実施の形態に限定されるものではなく、いろいろな変形やその他の実施形態が添付された特許請求の範囲に含まれることは言うまでもない。特定の用語が本明細書でもちいられているが、それらは一般的な概念として説明の目的にのみ用いられたものであり、それに限定するためのものではない。
発明の属する技術分野
本発明は、生物的に活性な分子の水溶性ポリマー複合体に関する。詳しくは、本発明は、トリアジンをベースとする活性な物質のポリマー複合体に関し、そのようなポリマー複合体を製造し、投与する方法に関する。
【0002】
発明の背景
トリアジン誘導体は、薬剤としてかなり大きな可能性があり、トリアジンをベースとするいくつかの化合物は抗腫瘍剤として有効であることが示されている。例えば、あるトリアジン誘導体、トリメラモル(trimelamol)、は抗がん剤として有望な活性を示している。
【0003】
【化13】
【0004】
卵巣がんに対する効力を調べる臨床試験で(I.R.Judson et al., Cancer Research 49: 5475−5479, 1989; I.R.Judson, et al., Br. J. Cancer, 63: 311−313, 1991)、トリメラモルの安全性と効力の程度が実証されたが、水への溶解度の低さとトリメラモルの二量体化と析出を生じ易い強い性向のために試験は打ち切られた。トリメラモルの合成類似体が製造されたが、この類似体は精製することが難しく、安定性の点であまり改善されなかった(米国特許No. 5,854,244)。
【0005】
このように、抗腫瘍活性を示す多くのトリアジン誘導体が合成されているが(Matsuno, T., et al., Chem. Pharm. Bull. 2000, 48(11): 1778−81; Abdel−Rahman RM, et al., Pharmazie, 1999, 54(9): 667−71)、それらの化合物は化学的に不安定である傾向を示し(すなわち、劣化、二量体化、加水分解し易い);化学的な修飾及び/又は調合が特に難しい。さらに、トリアジン抗がん剤は、in vitro でもin vivo でも効力があることが示されているものの、きわめて毒性が強い。したがって、ある種のトリアジン剤の抗腫瘍効力を維持し又は強化しながら、有害な副作用を減らし、それらの化学的安定性を高めるアプローチが必要とされている。
【0006】
発明の要約
本発明は、トリアジン化合物の新しい水溶性ポリマー複合体の発見と、トリアジン誘導体の二量体化と不安定性の問題を回避してそれらのポリマー複合体を製造するユニークな合成方法に基づいている。具体的に言うと、本発明は1つの様態では、ある種のトリアジン誘導体、例えばN−アルキル−N−(ヒドロキシメチル)アミノトリアジンの水溶性ポリマー複合体を提供する。このポリマー複合体はトリメラモルに比べて水溶性と溶液中での安定性が大きく改善される。
【0007】
本発明のポリマー複合体は、少なくとも1つの水溶性の非ペプチドポリマー骨格を、(i)トリアジン誘導体のs−トリアジン環(すなわち、1,3,5−トリアジン)、又は(ii)トリアジン誘導体のas−トリアジン環(すなわち、1,2,4−トリアジン)の非ヘテロ原子に共有結合で結合した形で含む。好ましくは、この非ペプチドポリマー複合体は、この誘導体のトリアジン環のただ1つの非ヘテロ原子に共有結合で結合したポリマー骨格を含む。
【0008】
ある実施の形態では、本発明のポリマー複合体は、例えば次の構造に結合した、ポリ(エチレングリコール)などの水溶性の非ペプチドポリマー骨格を含む:
【0009】
【化14】
ここで、L は、ポリマー骨格の結合点であり;
X は、O又はNR2などの結合基、ここでR2はH, C1−6アルキル、又は置換されたC1−6アルキル(例えば、CH2OH)であり;そして
Y1とY2 は各々独立に、アミノ、置換されたアミノ、C1−6アルキル、置換されたC1−6アルキル、アリール、又は置換されたアリールである。
【0010】
ある実施の形態では、Y1とY2は各々NRR1である、ここでRは、C1−6アルキル(例えば、メチル)、置換されたC1−6アルキル又は電子求引性の基(例えば、−CH2CF3又はCH2C≡CH)であり、R1は、H, C1−6アルキル、又は置換されたC1−6アルキル(例えば、CH2OH)である。
【0011】
適当なポリマー骨格は、ポリ(アルキレングリコール)、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(サッカライド)、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリフォスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリ(N−アクリロイルモルフォリン)、及びコポリマー、ターポリマー及びそれらの混合物などである。
【0012】
本発明のポリマー複合体は、mPEG又は二官能PEGなどの線状ポリマー骨格出発物質、又はマルチアームポリマー骨格を用いて形成することができる。具体的に言うと、本発明は、ポリマー骨格の一端がトリアジン誘導体部分に結合し、他端は異なる部分によって官能化されているヘテロ二官能ポリマー複合体を含む。さらに、本発明は、ポリマー骨格の両端がトリアジン誘導体部分に結合しているホモ二官能ポリマー複合体を含む。
【0013】
また、本発明の一部を構成しているものは、複合体形成の従来の方法とは相当に異なるトリアジン誘導体のポリマー複合体を作る方法であって、この方法では、ポリマーは活性ある薬剤の反応性部分と直接反応する。ある種のトリアジン誘導体は、溶液内で不安定であるため、直接の結合というアプローチにあまり適さない。この問題を克服するために、本発明者たちは合成方法を考案した。この方法では、ポリマーは最初、トリアジン薬剤の比較的安定な前駆物質に結合されてペグ化トリアジン中間物質を形成し、それをさらに1つ以上の合成ステップで修飾して複合体の活性なトリアジン誘導体部分を形成する。すなわち、複合体の活性な薬剤部分は、水溶性ポリマー部分を結合させる前ではなく、結合させた後で合成される。トリアジン中間物質のポリマー部分の存在は、複合体の活性トリアジン誘導体部分をその後合成するときに安定化する効果があると考えられる。
【0014】
具体的に言うと、別の様態で、本発明は本発明のポリマー複合体を形成する方法を含み、その方法ではポリマー骨格は最初は前駆的なトリアジン構造、例えばシアヌル酸ハライドに結合され、その後でトリアジン骨格を修飾して活性なトリアジン部分を形成する。この方法は、各合成工程での生成物の精製を高い収率で、例えば適当な有機溶剤又は溶剤混合物、例えばジエチルエーテル、イソプロパノールなどからのその生成物の選択的な析出によって遂行することを可能にした。さらに、この経路はトリアジンの二量体化の問題を回避し、トリアジン環内のモノ・ポリマー置換に関してきわめて選択的である。
【0015】
本発明はまた、いろいろなタイプのがんを含めてトリアジン誘導体に応答する疾病の治療のためのこれらの複合体の利用を提供する。治療の方法は、治療に有効な量の本発明のポリマー複合体を哺乳類に投与する工程を含む。
【0016】
発明の詳細な説明
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。しかし、本発明は多くの異なる形態で実施できるものであり、以下に示される実施の形態に限定されると解釈してはならない;そうではなく、以下の実施の形態は、この開示を十分で完全なものにし、本発明の範囲を当業者に十分に伝えるために提示されるものである。
【0017】
I.定義
用語、「官能基」、「活性部分」、「活性化する基」、「反応部位」、「化学反応性基」、及び「化学反応性部分」は、当業者によっても本明細書においても、ある分子のはっきりと区別される定義可能な部分又は単位を指すものとして用いられる。これらの用語は化学の分野で多少とも同義的に用いられ、分子の中で何らかの機能又は活動を実行して多の分子と反応する部分を指すように用いられる。「活性(active)」という用語は、官能基と一緒に用いられるとき、反応するために強力な触媒を必要とする又はきわめて非実際的な反応条件を必要とする基(すなわち、「非反応性の」又は「不活性の」基)と異なり、他の分子の求電子的又は求核的な基と容易に反応する官能基を意味する。例えば、当業者には理解されるように、「活性エステル」という用語は、アミンなどの求核基と容易に反応するエステルを意味する。活性エステルの例としては、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル、又は1−ベンゾトリアゾリルエステルなどがあげられる。普通、活性エステルは水性媒質中で数分以内にアミンと反応するが、ある種のエステル、例えば、メチルエステル又はエチルエステルは、求核基と反応するためには強力な触媒を必要とする。
【0018】
「結合部」又は「結合基」(例えば、以下で述べるX部分)という用語は、本明細書では、原子、原子の群、又は、普通化学反応の結果として形成される結合を指すために用いられる。本発明の結合基は、普通、結合する部分、例えばポリマー骨格及びトリアジン誘導体を1つ以上の共有結合で結合する。加水分解に対して安定な結合とは、結合が水中で実質的に安定であり、用いられるpHで、例えば生理的な条件の下で長時間、多分無限に長い時間、ほとんど反応しないということを意味する。加水分解に対して不安定な、又は分解する結合とは、その結合が水中又は血液を含む水性溶液中で分解するということを意味する。酵素的に不安定な、又は分解する結合とは、その結合が1つ以上の酵素によって分解するということを意味する。当業者には理解されるように、PEG 及び関連ポリマーはポリマー骨格に、又はポリマー骨格をトリアジン誘導体に結合する結合基に、分解する結合を含むことがある。
【0019】
「アルキル」という用語は、普通、長さが約1乃至約12炭素原子の範囲にある炭化水素鎖を指し、直鎖及び枝分かれ鎖を含む。炭化水素鎖は飽和していても飽和していなくてもよい。「置換されたアルキル」という用語は、C3−C6シクロアルキル、例えばシクロプロピル、シクロブチル、など;アセチレン;シアノ;アルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、など;低級アルカノイルオキシ、例えばアセトキシ;ヒドロキシ;カルボキシル;アミノ;低級アルキルアミノ、例えばメチルアミノ;ケトン;ハロ、例えばクロロ又はブロモ;フェニル;置換されたフェニルなど、1つ以上の非妨害的な置換基によって置換されたアルキル基を指す。
【0020】
「アリール」とは、各々が5又は6個のコア炭素原子を有する1つ以上の芳香族環を意味する。多重アリール環は、ナフチルのように縮合環であることもビフェニルのように非縮合環であることもある。アリール環は、1つ以上の環状炭化水素、ヘテロアリール又はヘテロ環式環と縮合されることもされないこともある。
【0021】
「置換されたアリール」は、1つ以上の非妨害基を置換基として有するアリールである。フェニル環における置換では、置換基はどんな位置(すなわち、オルト、メタ、又はパラ)であってもよい。
【0022】
「非妨害的な置換基」とは、安定な化合物を生ずる基である。適当な非妨害的な置換基又は基としては、それだけに限定されないが、次のようなものがあげられる;ハロ、C1−C10アルキル、C2−C10アルケニル、C2−C10アルキニル、C1−C10アルコキシ、C7−C12アラルキル、C7−C12アルカリル、C3−C10シクロアルキル、C3−C10シクロアルケニル、フェニル、置換されたフェニル、トルオイル、キシレニル、ビフェニル、C2−C12アルコキシアルキル、C7−C12アルコキシアリール、C7−C12アルコキシアルキル、C6−C12オキシアリール、C1−C6アルキルスルフィニル、C1−C10アルキルスルフォニル、−(CH2)m−O−(C1−C10アルキル)ここでmは1乃至8である、アリール、置換されたアリール、置換されたアルコキシ、フルオロアルキル、複素環式基、置換された複素環式基、ニトロアルキル、−NO2、−CN、−NRC(O)−(C1−C10アルキル)、−C(O)−(C1−C10アルキル)、C2−C10チオアルキル、−C(O)O−(C1−C10アルキル)、−OH、−SO2、=S、−COOH、−NR、カルボニル、−C(O)−(C1−C10アルキル)−CF3、−C(O)−CF3、−C(O)NR2、−(C1−C10アルキル)−S−(C6−C12アリール)、−C(O)−(C6−C12アリール)、−(CH2)m−O−(CH2)m−O −(C1−C10アルキル)、ここで各mは1乃至8である、−C(O)NR、−C(S)NR、−SO2NR、−NRC(O)NR、−NRC(S)NR、それらの塩、など。ここで用いられる各Rは、H、アルキル又は置換されたアルキル、アリール、アラルキル、又はアルカリルである。
【0023】
「置換されたアミノ」とは、化学式がNR3R4のアミノ基であって、R3とR4の少なくとも1つが上で定義されたような非妨的害置換基、例えばC1−6アルキル又は置換されたC1−6アルキル、であるアミノ基を指す。
【0024】
「ポリオレフィンアルコール」とは、ポリエチレンなど、オレフィンポリマー骨格を含むポリマーであって、ポリマー骨格に多数のヒドロキシル基が結合しているものである。ポリオレフィンアルコールの一例はポリビニルアルコールである。
【0025】
本明細書で用いられる場合、「非ペプチド」とは、実質的にペプチド結合を含まないポリマー骨格を指す。しかし、ポリマー骨格は骨格の長さに沿って間隔をおいた少数のペプチド結合を、例えば約50モノマー単位あたり約1個のペプチド結合を含んでもよい。
【0026】
「シアヌル酸ハライド」とは、トリアジン環の非ヘテロ原子位置に共有結合で結合した少なくとも1つのハロゲン原子を有するs−トリアジン又はas−トリアジン環を指す。好ましくは、シアヌル酸ハライド分子は、塩化シアヌルのように3つのハロゲン原子がトリアジン環の非ヘテロ原子位置に結合している。
【0027】
「トリアジン誘導体のポリマー複合体」とは、ここで定義されたようなトリアジン誘導体に共有結合で結合した水溶性及び非ペプチドのポリマー骨格であって、複合体のトリアジン環部分が(i)ハロ置換基、及び(ii)共有結合で結合したタンパク質を欠いているものである。すなわち、本発明のポリマー置換されたトリアジン誘導体は、タンパク質修飾因子ではなく、それ自体が薬剤複合体である。
【0028】
II .ポリマー複合体
本発明は、いくつかの新しいトリアジン誘導体のポリマー複合体の発見に基づいている。本発明の複合体は、親であるトリアジン誘導体の化学的な不安定性及び不溶性の問題を克服し、好ましくは低収率と親化合物の二量体化の問題を回避する合成方法で調製されて複合体前駆体が高い収率で得られる。複合体とその合成方法について以下でさらに詳しく説明する。
【0029】
本発明のポリマー複合体は、少なくとも1つの水溶性の非ペプチドポリマー骨格を(i)トリアジン誘導体のs−トリアジン環、又は(ii)トリアジン誘導体のas−トリアジン環のヘテロ原子位置への結合によって共有結合で結合された形で含む。好ましくは、非ペプチドポリマー複合体は、ポリマー骨格を誘導体のトリアジン環内のただ1つの非ヘテロ原子(すなわち、非窒素)位置に共有結合で結合された形で含む。
【0030】
「トリアジン誘導体」という用語は、1,3,5−トリアジン又は1,2,4−トリアジン環を含むあらゆる構造を包含することが意図される。本明細書で用いる場合、この用語は縮合環を含むトリアジン環、例えばベンゾトリアジン環、を含む。トリアジン誘導体はヘテロ原子位置で置換されている及び/又はポリマー骨格に共有結合で結合していないトリアジン環構造の残りの非ヘテロ原子位置で置換されていることがある。トリアジン環の非ヘテロ原子位置での置換基の例としては、アミノ、置換されたアミノ(例えば、アルキルアミノ及びジアルキルアミノ)、アリール(例えば、フェニル)、置換されたアリール(例えば、フェニルを1つ以上のハロゲン原子などで置換したもの)、などがあげられる。
【0031】
上記のトリメラモルの他に、本発明のポリマー複合体のトリアジン誘導体部分を構成することができる具体的なトリアジン化合物の他の例としては、アルトレタミン(2,4,6−ジメチルアミノ−1,3,5−トリアジン)、ラモトリジン(3,4− ジアミノ−6−(2,3−ジクロロフェニル)−1,2,4−トリアジン)、及びチラパザミン(3−アミノ−1,2,4−ベンゾトリアジン−1,4−ジオキシド)などがあり、すべて下に示される。アルトレタミンは、難治性の卵巣がんに対する活性が実証された抗腫瘍剤である(Damia et al., Clin. Pharmacokinet., 1995, 28(6):439−449)。水に対する溶解度が低いので、この薬は普通経口的に投与される。チラパザミンは、低酸素性の主要細胞を選択的に殺す能力を示す生体内還元ベンゾトリアジン化合物の一部類に属する鉛化合物である(Koch, Cancer Research, 1993, 53: 3992−3997)。ラモトリジンは、てんかんの治療に有効な抗けいれん剤であり、糖尿性の神経障害及びSUNCT(サンクトShort lasting,Unilateral, Neuralgiform headache attacks with Conjunctival Injection and Tearing)症候群に関連した痛みの治療とコントロールにも有望である(Eisenberg, et al., Neurology, 2001, 57(3):505−509; D’Andrea, et al., Neurology, 2001, 57(9): 1723−1725)。
【0032】
【化15】
【0033】
ラモトリジンに関して言うと、ポリマー骨格はトリアジン環のアミノ置換位置のどちらに結合させてもよい。あるいはまた、ポリマー骨格はフェニル環上で利用できるどの炭素原子に結合させてもよい。チラパザミンに関して言うと、ポリマー骨格は縮合環構造上で利用できるどの炭素原子に結合させても又はアミノ置換位置で結合させてもよい。
【0034】
ある特別の実施の形態では、本発明は、ここで化学式Iと呼ばれる以下の構造に結合された水溶性の非ペプチドポリマー骨格を含むトリアジン誘導体のポリマー複合体に関する。
【0035】
【化16】
【0036】
ここで:
L は、ポリマー骨格との結合点であり、
X は、O 又はNR2 などの結合基、ここでR2はH、C1−6アルキル、又は置換されたC1−6アルキル(例えば、CH2OH)であり;そして
Y1とY2 は、各々独立にアミノ、置換されたアミノ、C1−6アルキル、置換されたC1−6アルキル、アリール、又は置換されたアリールである。
【0037】
さらに別の実施の形態では、Y1 とY2 は、それぞれNRR1である、ここでR はC1−6アルキル(例えば、メチル)、置換されたC1−6アルキル、又は電子求引基であり、R1はH、C1−6アルキル、又は置換されたC1−6アルキルである。ポリマー骨格に結合されるトリアジン誘導体がアルトレタミンであるときには、R とR1 はどちらもC1−6アルキル、具体的にはメチルである。ポリマー骨格に付着されるトリアジン誘導体がトリメラモルであるときには、R はメチルであり、R1 は−CH2OH である。
【0038】
A.ポリマー骨格
化学式Iの水溶性の非ペプチドポリマー骨格は、ポリ(エチレングリコール)(すなわち、PEG)であってもよい。しかし、他の関連したポリマーも本発明の実施で用いるのに適しており、PEG 又はポリ(エチレングリコール)という用語の使用は、この点に関して包含的であることを意図し、排除的であることを意図していないことは言うまでもない。PEG という用語は、ポリ(エチレングリコール)の線状、枝分かれ、又はマルチアーム形態のいずれをも含み、以下で詳しく述べるように、アルコキシPEG 、二官能PEG 、フォーク状PEG 、枝分かれPEG 、ペンダントPEG 、または分解する結合を含むPEG など、を含む。
【0039】
ここで記述される何れの形態でも、PEG は普通、透明、無色、無臭、水溶性、熱に対して安定、多くの化学物質に対して不活性、であり、(特にそうなるように設計した場合を除き)加水分解も劣化もせず、一般に無毒である。ポリ(エチレングリコール)は、生体適合性であると考えられる。それはすなわち、PEG は生きている組織又は生物に害を与えることなく共存することができるということである。さらに具体的に言うと、PEG は実質的に非免疫原性であり、それはすなわち、PEG には体に免疫応答を生ずる働きがないということである。体に対して何らかの望ましい機能を有する分子、例えば本発明の生物的に活性なトリアジン誘導体に結合させたとき、PEG はその物質をマスクするように働き、免疫応答を減少させたりなくしたりして生物がその物質の存在を許容できるようにすることができる。PEG 複合体は、実質的な免疫応答が生じないように、又は凝固その他の望ましくない効果が生じないように働く。化学式 CH2CH2O−(CH2CH2O)n−CH2CH2− (ここで、n は、約3 乃至約4000、普通は約3 乃至約2000)を有するPEG は本発明の実施に有用なポリマーの1つである。数平均分子量が約100 Da 乃至約100,000 Da であるPEG、好ましくは約350 Da 乃至約40,000 Da であるPEG、はポリマー骨格として特に有用である。
【0040】
本発明で有用な1つの形態では、自由な又は結合していないPEG は各端がヒドロキシル基で終端する線状ポリマー:
HO−CH2CH2O−(CH2CH2O)n−CH2CH2−OH
である。
上記のポリマー、アルファ−、オメガ−ジヒドロキシルポリ(エチレングリコール)、は簡潔な形、HO−PEG−OH,で表すことができ、ここで−PEG−という記号は次の構造単位を表す:
−CH2CH2O−(CH2CH2O)n−CH2CH2−
ここで、n は普通約3乃至約4000の範囲にある。このタイプの線状ポリマー骨格は実施例7における出発物質として用いられる。
【0041】
本発明の複合体を形成するのに有用な別のタイプのPEG は、メトキシ−PEG−OH、又は簡潔にmPEG 、であり、そこでは一端は比較的不活性のメトキシ基であり、他端は容易に化学的に修飾されるヒドロキシル基である。mPEG の構造を下に示す。
CH3O−(CH2CH2O)n−CH2CH2−OH
ここで、n は上述のとおりである。mPEGの形のポリマー骨格の使用は実施例1−5及び8で示される。
【0042】
下に示すエチレンオキシドとプロピレンオキシドのランダム又はブロックコポリマーは、その化学がPEG と密接に関連しており、これも本発明の複合体のポリマー骨格として用いることができる。
HO−CH2CHRO(CH2CHRO)nCH2CHR−OH
ここで、各R は独立にH 又はCH3 であり、n は上述の通りである。
【0043】
ポリマー骨格はまた、枝分かれ構造を含むこともあり、これは普通、枝分かれする中央コア部分と、この中央コアに結合した複数のポリマー鎖、好ましくは線状ポリマー鎖を有する。ある実施の形態では、PEG が枝分かれした形態で用いられ、これは例えば、いろいろなポリオール中央コア構造、例えば、グリセロール、グリセロールオリゴマー、ペンタエリスリトール及びソルビトール、にエチレンオキシドを添加して調製される。本発明では、ポリマー鎖に結合するための複数のヒドロキシル基を提供する任意のポリオールが使用できる。ポリオールの枝分かれするコア構造は、約3 乃至約100 個の利用できるヒドロキシ基(普通は約3 乃至約20 個)を提供し、枝分かれしたポリマー構造は約3 乃至約100 個のポリマー鎖を含むことになる。このタイプの枝分かれしたポリ(エチレングリコール)分子は一般的な形でR(−PEG−OH)mと表すことができ、ここでR は中央コア部分に由来する、グロセロール、グリセロールオリゴマー、又はペンタエルスリトールなどであり、m はアームの数で、普通約3 乃至約20 である。ペンタエルスリトールを中央コアとして用いて形成された枝分かれPEG 構造の使用は実施例6で例示される。中央コア部分はまた、リシンなど、いくつかのアミノ酸のいずれかから誘導することができ、その中央コア部分はポリマー鎖を結合させるために普通2つ以上の部位、例えばアミノ酸を備えている。参照によって全体が本明細書に取り込まれる米国特許No. 5,932,462 に記載されているようなマルチアームPEG 分子もポリマー骨格として使用できる。 米国特許No. 5,932,462 に記載されているポリマー骨格については、化学式Ieに関連して以下で詳しく論じる。
【0044】
ポリマー骨格は、また、フォーク状PEG を含むこともできる。フォーク状PEG の一例は、PEG−YCHZ2で表され、ここでY は結合基であり、Z は一定の長さの原子の鎖でCH に結合される活性化された末端基である。国際特許出願No. PCT/US99/05333 は、本発明のある実施の形態で使用されるいろいろなフォーク状PEG 構造を開示しており、その内容は参照によって本明細書に取り込まれる。Z 官能基を枝分かれする炭素原子に結合している原子の鎖は、係留基の役目をし、例えば、アルキル鎖、エーテル鎖、エステル鎖、アミド鎖、及びそれらの組み合わせ、を含む。Z 官能基は、本発明においてトリアジン誘導体と反応してトリアジン誘導体とポリマー骨格の間の結合を形成するように用いることができる。フォーク状ポリマーの実施の形態は、以下で化学式Idに関連して詳しく論じられる。
【0045】
ポリマー骨格は、ペンダントPEG を含むこともできる。これは、反応性の基、例えばカルボキシル基、がPEG 骨格の末端ではなく、その長さに沿って共有結合で結合しているものである。ペンダント反応基は、PEG 骨格に直接に、又はアルキレンなどの結合部分によって、結合することができる。
【0046】
上述の形のPEG の他に、ポリマーは1つ以上の弱い又は劣化する結合を、上述のポリマーを含めて骨格に有するように調製することもできる。例えば、PEG は、ポリマー骨格に加水分解されるエステル結合を含んで調製することができる。以下に示すように、この加水分解はポリマーを低い分子量の断片に次のように開裂する:
−PEG−CO2−PEG− + H2O → −PEG−CO2H + HO−PEG−
同様に、ポリマー骨格は、弱い又は分解する結合部分によって生物的に活性な物質、例えばトリアジン誘導体、に共有結合で結合させることができる。例えば、PEG カルボン酸又は活性化されたPEG カルボン酸とアルコール基との反応によって生物的に活性な物質に形成されたエステル結合は一般に生理的条件の下で加水分解してその物質を放出する。
【0047】
ポリマー骨格内部の分解できる結合として又はポリマー骨格を生物的に活性な物質と結合する分解できる結合として使用できるその他の加水分解で分解される結合としては次のようなものがある:炭酸塩結合;イミン結合、これは、例えばアミンとアルデヒドの反応から得られる(例えば、Ouchi et al., Polymer Preprints, 38(1): 582−3 (1997)、これは参照によって本明細書に取り込まれる);リン酸塩エステル結合、これは、例えばアルコールをリン酸塩基と反応させて形成される;ヒドラゾン結合、これは普通ヒドラジドとアルデヒドの反応によって形成される;アセタール結合、これは普通、アルデヒドとアルコールの反応によって形成される;オルトエステル結合、これは、例えばギ酸塩とアルコールの反応によって形成される;ペプチド結合、これはPEG などのポリマーの一端におけるアミン基などとペプチドのカルボキシル基によって形成される;及びオリゴヌクレオチド結合、これは、例えばポリマーの一端におけるホスホラミディト(phosphoramidite)基などとオリゴヌクレオチドの5’ヒドロキシル基によって形成される。
【0048】
ポリ(エチレングリコール)又はPEG という用語は上記のすべての形態のPEG を含むということは当業者には理解される。
【0049】
その他にも多くのポリマーが本発明に適している。非ペプチドで水溶性であり、2 個から約300 個までの末端を有するポリマー骨格が特に本発明に有用である。適当なポリマーの例としては次のようなものが上げられるが、それだけに限定されない:すなわち、他のポリ(アルキレングリコール)、例えばポリ(プロピレングリコール)(“PPG”)、エチレングリコールとプロピレングリコールのコポリマーなど、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(サッカライド)、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリ(N−アクリロイルモルフォリン)、例えば米国特許No. 5,629,384に記載されているもの(この特許は参照によって本明細書に取り込まれる)、及びそれらのコポリマー、ターポリマー及び混合物。ポリマー骨格の各鎖の数平均分子量はいろいろであるが、普通、約100 Da 乃至約100,000 Da の範囲にあり、多くの場合約350 Da 乃至約40,000 Da の範囲にある。これらのポリマーは、線状であっても、上述の形態のいずれか(例えば、枝分かれした、フォーク状など)であってもよい。
【0050】
実質的に水溶性で非ペプチドのポリマー骨格についての前述のリストは決してすべてを尽くすものではなく、単に例示的なものであり、本発明では上で述べた性質を有するすべてのポリマー物質が考えられているということは当業者には認識されるであろう。
【0051】
B.ポリマー骨格とトリアジン誘導体の間の結合
トリアジン誘導体とポリマー骨格の間の結合、例えば上の化学式IのX 部分、は、少なくとも部分的にはポリマー骨格に結合した官能基とトリアジン誘導体分子の反応から生ずる。具体的な結合は、用いられる官能基のタイプに依存する。ポリマー骨格がフォーク状の端末や枝分かれ構造を含まない比較的単純な構造、例えば米国特許No. 5,932,462 に記載されているようなもの、であり、トリアジン誘導体に結合するための少なくとも1つのヒドロキシル末端をもっていると仮定すると、X はOになる。同様に、比較的単純なポリマー骨格が官能基としてアミン基を持つ場合、X はNR2になり、R2 はH, C1−6アルキル、又はCH2OH である。マルチアーム、枝分かれ、又はフォーク状のポリマー骨格が用いられる場合、X 部分は比較的複雑になり、結合構造がもっと長くなる。例えば、以下で示すように、ある例示的な「フォーク状」ポリマー実施形態では(化学式Id)、X 部分はポリマー骨格の端末とトリアジン誘導体部分の間に−X1−(W)p−CH−Y’− 結合を含む。X 結合全体は、ポリマー骨格とトリアジン誘導体分子の間の全体の長さが1 乃至約20個の原子、好ましくは1 乃至約10個の原子、である結合を包含する。
【0052】
C.複合体構造の例
次に、本発明の複合体のもっと具体的な構造の実施形態について説明するが、それらはすべて、上の化学式Iの構造に包含されるものである。以下に示す具体的な構造は単に例示的な構造として示されるものであって、本発明の範囲を制限する意図はない。化学式Ia−Idで示される特定の1,3,5−トリアジン誘導体の代わりに、上で言及したような他のトリアジン誘導体を用いることができる。例えば、1,2,4−トリアジン誘導体を複合体のトリアジン誘導体部分に用いることができるだろう。
【0053】
ある実施の形態では、本発明のポリマー複合体の実質的に線状の形態は次の構造を有する:
【化17】
【0054】
ここで、POLY は、水溶性の非ペプチドポリマー骨格;
Z は、以下で説明するキャッピング(capping)基;
X は、O 又はNR2 などの結合基、ここでR2 はH, C1−6アルキル、又は置換されたC1−6アルキル(例えば、CH2OH);そして
Y1 とY2 は、各々独立にアミノ、置換されたアミノ、C1−6アルキル、又は置換されたC1−6アルキル、アリール、又は置換されたアリールである。
【0055】
Z 部分は、ここで記述されるタイプのポリマーに適当などんなキャッピング基でもよい。例えば、z キャッピング基は、アルコキシ基(例えば、メトキシ又はエトキシ)など比較的不活性な基であってもよい。あるいはまた、Z 部分は、反応性の官能基、場合により保護された形のもの、例えばヒドロキシル、保護されたヒドロキシル、活性エステル(例えば、N−ヒドロキシスクシニミジルエステル又は1−ベンゾトリアゾリルエステル)、活性カーボネート(N−ヒドロキシスクシニミジルカーボネート又は1−ベンゾトリアゾリルカーボネート)、アセタール、アルデヒド、アルデヒド水和物、アルケニル、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、活性スルホン、アミン、保護されたアミン、ヒドラジド、保護されたヒドラジド、チオール、保護されたチオール、カルボン酸、保護されたカルボン酸、イソシアネート、マレイミド、ビニルスルホン、ジチオピリジン、ビニルピリジン、ヨードアセタミド、エポキシド、グリオキサル、ジオン、メシレート、トシレート、又はトレシレートであってもよい。
【0056】
当業者には理解されるように、「保護された」という用語は、ある反応条件の下で化学的に反応性の官能基の反応を阻止する保護基又は保護部分の存在を指す。保護基は、保護される化学的に反応性の基のタイプ及び用いられる反応条件によって異なる。例えば、化学的に反応性の基がアミン又はヒドラジドである場合、保護基は、テルト−ブチルオキシカルボニル(t−Boc)及び9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)の群から選択することができる。化学的に反応性の基がチオールである場合、保護基はオルトピリジルジスルフィドにすることができる。化学的に反応性の基がカルボン酸、例えばブタン酸又はプロピオン酸、であるか又はヒドロキシル基である場合、保護基はベンジル又はアルキル基、例えばメチル、エチル又はtert−ブチルにすることができる。当業者に公知の他の保護基も本発明で使用できる、例えば、Greene, T. W. et al., Protective Group in Organic Synthesis, 2nd ed., John−Wiley & Sons, New York, NY (1991)を参照されたい。
【0057】
本発明のポリマー骨格の末端官能基の具体的な例としては、N−スクシンイミジルカルボネート(例えば、米国特許Nos. 5,281,698, 5,468,478 を参照)、アミン(例えば、Buckmann et al., Makromol. Chem. 182: 1379 (1981)、Zaplipsky et al., Eur. Polym. J. 19: 1177 (1983)を参照)、ヒドラジド(例えば、Andresz et al. Makromol. Chem. 179: 301 (1978)を参照)、スクシンイミジルプロピオネート及びスクシンイミジルブタノエート(例えば、Olson et al. in Poly(ethylene glycol) Chemistry and Biological Applications, pp 170−181, Harris & Zaplipsky eds., ACS, Washington, DC, 1997を参照;また、米国特許No. 5,672,662 を参照)、スクシンイミジルスクシネート(例えば、Abchowski et al. Cancer Biochem. Biophys. 7:175 (1984) 及びJoppich et al. Makromol. Chem. 180: 1381 (1979))、スクシンイミジルエステル(例えば、米国特許No. 4,670, 417 を参照)、ベンゾトリアゾールカルボネート(例えば、米国特許No. 5,650,234 を参照)、グリシジルエーテル(例えば、Pitha et al. Eur. J. Biochem. 94:11 (1979), Elling et al., Biotech. Appl. Biochem. 13:354 (1991) を参照)、オキシカルボニルイミダゾール(例えば、Beauchamp, et al., Anal. Biochem. 131:25 (1983), Tondelli et al. J. Controlled Release 1:251 (1985)を参照)、p−ニトロフェニルカルボネート(例えば、Veronese et al. Appl. Biochem. Biotech. 11:141 (1985);及び Sartore et al., Appl. Biochem. Biotech. 27:45 (1991) を参照)、アルデヒド(例えば、Harris et al. J. Polym. Sci. Chem. Ed. 22:341 (1984), 米国特許No. 5,824,784, 米国特許No. 5,252,714, を参照)、マレイミド(例えば、Goodson et al. Bio/Technology 8:343 (1990), Romani et al. in Chemistry of Peptides and Proteins 2:29 (1984), 及び Kogan, Synthetic Comm. 22:2417 (1992), を参照)、オルトピリジル−ジスルフィド(例えば、Woghiren, et al. Bioconj. Chem. 4:314 (1993), を参照)、アクリロル(例えば、Sawhney et al., Macromolecules 26:581 (1993), を参照)、ビニルスルホン(例えば、米国特許No. 5,900,461 を参照)などがあげられる。上記の文献はすべて参照によって本明細書に取り込まれる。
【0058】
上の化学式Iaに対応するホモ二官能ポリマー複合体で、中央ポリマー骨格が2つのトリアジン誘導体を結合している形も本発明に含まれ、その場合、Z は次の構造を有する:
【化18】
【0059】
ここで、X’ は結合基(linker)、L’ はPOLY への結合点、そしてY1 とY2 は上で定義した通りである。ある好ましい実施の形態では、X とX’はO であり、POLY はポリ(エチレングリコール)である。
【0060】
本発明はまた、例えば3 個乃至約100 個の末端(termini)を有するマルチアームポリマー複合体を含む。中央コア分子に結合した複数のポリマーアームを有するマルチアーム又は枝分かれ複合体の一例は次の構造をもつ:
【化19】
【0061】
ここで:
n は、3 から約100 までの、好ましくは3 から約20 までの整数;
R’は、中央コア分子;
X 及びY は、各々独立に選択される、O 又はNR2などの結合基、ここでR2 はH、C1−6 アルキル、又はCH2OH である;
各POLY は、独立に選ばれる水溶性の非ペプチドポリマー骨格であり;そして Y1 とY2 は上で定義した通りである。
【0062】
中央コア分子、R、は好ましくは、ポリオール、例えばグリセロール、グリセロールオリゴマー、ペンタエリスリトール、又はソルビトール、ポリアミン、例えばポリリシン、又は他のポリアミノ酸及びアルコールとアミン基の組み合わせを有する分子から成る群から選択される分子から誘導される。あるいはまた、R 部分は米国特許No. 5,830,986 に記載されたタイプのデンドリマー(樹状体)、例えばポリアミドアミンデンドリマー、ポリ(プロピレンイミン)デンドリマー、などを含む。この特許は参照によって全体が本明細書に取り込まれる。好ましくは、R の分子量は約2000 未満である。中央コア分子は、結合Y によってn 個のポリマー骨格、POLY、に付着できるn 個の官能部位を有する分子から誘導される。複数のポリマー骨格を中央コア分子に結合させることができるため、ポリマーの積載能力が増大し、それは比較的低い活性の生物的に活性な物質に取って特に有効である。
【0063】
本発明のマルチアーム複合体の1つの具体的な例は次の構造を有する:
【化20】
【0064】
ここで、PEG は、平均分子量が約100 Da 乃至約100,000 Daのポリ(エチレングリコール)、そしてY1 とY2 は上で定義した通りである。
本発明の「フォーク状」ポリマー複合体のある特定の例を下記に示す:
【0065】
【化21】
【0066】
ここで、X1 とY’ は独立に選ばれた結合基、例えばO 又はNR2 、そしてR2 はH, C1−6 アルキル、又はCH2OH である;L はポリマー骨格への結合点、各p は独立に0 又は1 であり、各W は係留基、例えば−(CH2)m−, −(CH2)m−O−, −O−(CH2)m−, −(CH2)m−O2C−CH2CH2−, 及び−(CH2)m−O−(CH2)r−, ここで各m 及びr は独立に1−10であり、各D はトリアジン誘導体、例えば次の構造を有するトリアジン誘導体である:
【0067】
【化22】
【0068】
ここで、Y1 とY2 は上で定義した通りである。
【0069】
別の実施の形態では、ポリマー複合体は、米国特許No. 5,932,462 に記載されているタイプの枝分かれポリマー骨格を用いて形成され、ポリマー骨格は次のような構造を有する:
【0070】
【化23】
【0071】
ここで:
polya とpolyb は、水溶性の非ペプチドポリマー骨格、例えばメトキシポリ(エチレングリコール);
R” は、非反応性部分、例えばH, メチル、又は水溶性の非ペプチドポリマー骨格;そして
P とQ は、非反応性結合である。
【0072】
ある好ましい実施の形態では、枝分かれしたポリマー骨格はメトキシポリ(エチレングリコール)二置換リシンを含む。
【0073】
III .ポリマー複合体の調製
本発明の別の様態は、上述のポリマー複合体を形成する間接的な方法である。この方法では、ポリマー骨格は、通常のやり方のように活性薬剤部分に直接結合されない。その代わりに、ポリマーは、活性薬剤の市販されている前駆物質に結合されてペグ化されたトリアジン薬剤前駆物質を形成し、それをさらにトリアジン骨格との反応によって修飾して分子の活性薬剤部分を構成する。
【0074】
このアプローチは、活性トリアジン誘導体、トリメラモルに水溶性のポリマーを直接結合することは信じがたいほど困難であり、収率が低く、一部はトリメラモルの加水分解のために生成物の複雑な混合物が生ずるということが発見された後に開発された。用いられたトリアジン薬剤前駆物質の例、塩化シアヌル、は以前、ポリエチレングリコールをインターフェロンなどの活性タンパク質に結合するための結合基として用いられたが(Abuchowski, et al., J. Biol. Chem. 252: 3578 (1977); 米国特許No. 5,342,940)、これまでトリアジンをベースとする抗腫瘍化合物などの活性薬剤部分を生成するための合成前駆物質として用いられたことはなかった。
【0075】
一般に、この方法は、上述のような水溶性ポリマーをシアヌル酸ハライド又はそれと同等なものと反応させて、トリアジン環の非ヘテロ原子位置の1つでポリマーアームが置換された反応性のトリアジン中間物質を形成する。普通、ポリマー、例えばPEG が一端で活性化されてシアヌル酸ハライドのハロゲン原子の1つを追い出し/置換する。好ましいのは、ヒドロキシ終端PEG 又はアミノ終端PEG の対応するアルコキシド塩などの反応性部分であるが、当業者であれば容易に決定できるように、いくつかの反応性の基の何れを用いてもよい。トリアジン環の性質によって、ポリマー置換は普通ただ1つの位置でのみ起こり、これをきわめて選択的な合成ルートにする。すなわち、普通、二−及び三−ポリマー置換されたトリアジンは認められるほど形成されず、それによってこれが高収率の合成方法となる。さらに、本発明の基礎を成している活性物質は小さな分子であるために、トリアジン環内の1つの部位だけにポリマーが結合することが一般に好ましい。例示的なPEG骨格を塩化シアヌルに結合する代表的な反応が実施例1, 4, 6, 7, 及び8 に示されている。
【0076】
ポリマー骨格の結合に続いて、シアヌル酸ハライド中間物質は、1つ又は一連の化学的修飾工程で修飾されて、複合体の活性トリアジン誘導体部分に対応するトリアジン環のハライド位置に官能基が導入される。本発明の好ましい実施の形態では、この官能基は、アミノ、置換されたアミノ(例えば、アルキルアミノ及びジアルキルアミノ)、アリール(例えば、フェニル)、置換されたアリール(例えば、フェニルを1つ以上のハロゲン原子などで置換したもの)から成る群から選択される。
【0077】
具体的に言うと、この方法はシアヌル酸ハライドと反応する官能基に結合された水溶性の非ペプチドポリマー骨格を提供する工程を含む。官能基は好ましくはヒドロキシル又はアミノである。例えば、1,3,5−トリアジン誘導体のポリマー誘導体を形成するとき、ポリマー骨格を次の構造を有するシアヌル酸ハライドと反応させることが好ましい:
【0078】
【化24】
【0079】
ここで、各Xh はハロゲン、好ましくは塩素である。
【0080】
普通、ポリマー骨格とシアヌル酸ハライドとの間の反応は適当な溶剤、例えばトルエン、テトラヒドロフラン、又はジオキサン、好ましくは無水の形の存在下で起こる。ある実施の形態では、水溶性の非ペプチドポリマー骨格の末端官能基はヒドロキシルであり、それが強い塩基、例えばn−ブチル又はt−ブチルリチウムとの反応によって対応するアルコキシドに変換され、続いてシアヌル酸ハライドと反応する。
【0081】
こうして形成される、ポリマーアームが結合したジハロトリアジン中間物質はさらに修飾されて、トリアジン環上に残っているハロゲン又は他の置換基が活性トリアジン誘導体に対応するもので置換される。例えば、ジハロトリアジンポリマー中間物質を、アミン、例えばメチルアミンなどのアルキルアミンと反応させて次の構造に結合されたアミノ置換トリアジンポリマー複合体が形成される:
【0082】
【化25】
【0083】
ここで、R’はアルキル、好ましくはC1−6 アルキルであり、L とX は上で定義された通りである。残っているハライドを置換されたアミノ基で置換する反応の例は実施例2, 4, 及び6−8で示される。
【0084】
この例では、ポリマー誘導されたジハロトリアジン中間物質分子の2つのハロ官能基は同一の官能基で置換され、それがさらに所望のトリアジン誘導体製品に応じて化学的に修飾される。最終トリアジン誘導体におけるトリアジン環上の置換された官能基が異なる場合には、所望の官能基の段階的な導入が用いられる。
【0085】
普通、ポリマー誘導されたジハロ置換トリアジン前駆物質から対応する活性トリアジン誘導体の複合体への変換、例えばアルキルアミンとの反応による変換、は適当な溶剤、例えばトルエン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、塩化メチレン、又はクロロホルムの存在下で起こる。
【0086】
トリアジン誘導体のポリマー複合体は、例えば導入されたアミノ基において炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩の存在下で水性ホルムアルデヒドとの反応によってさらに修飾されて、下に示すようなトリアジン環に二置換されたアミノ基を有するポリマー複合体が形成される:
【0087】
【化26】
【0088】
ここで、L, X, 及びR’は上で定義された通りである。ホルムアルデヒドとの反応の例は、実施例3, 5, 及び6−8 で示される。
【0089】
上述の合成方法は、中間のポリマー複合体が最初の工程で形成されて、各合成工程のポリマー生成物がジエチルエーテル、イソプロパノール、又はそれらの混合物など、適当な溶剤からの析出物として集めることができるので最終製品の精製を非常に強化/単純化する。すなわち、各反応工程で形成されるポリマーが結合した化合物の分離が容易であるために、プロセスの最後だけでなく全合成の各段階で精製を容易に行うことができる。
【0090】
IV .ポリマー複合体を含む組成物/調合物
ここで提供される化学的に修飾されたトリアジン誘導体は、普通、次のような特性の1つ以上を備えている。本発明のトリアジン誘導体の複合体は、高い純度/均一性を有する他に、少なくとも測定できる程度の特異的活性を保持する。すなわち、本発明によるトリアジン複合体は、修飾されない親トリアジン化合物の特異的活性の約2% 乃至約100%を保持する。この活性は、特定親トリアジン化合物の公知の活性に応じて、適当なin vivo 又はin vitro 抗腫瘍モデルを用いて決定することができる。例えば、複合体の抗腫瘍活性は、標準的な抗白血病、肺がん、乳がん、及びCNS腫瘍評価を用いて、例えばヒトがん細胞ライン又はマウス白血病細胞ラインを用い、複合体の活性を修飾されない親トリアジン化合物の活性と比較測定することによって容易に決定できる。一般に、本発明のトリアジン複合体は、当業者に周知の適当な抗腫瘍モデルで測定して、修飾されない親トリアジンの活性に比べて少なくとも約2%, 5%, 10%, 15%, 25%, 30%, 40% 以上の特異的活性を保有する。
【0091】
本発明のポリマー複合体は、それ自体で投与することも又は製薬的に受容される塩の形で投与することもできる。用いる場合、ポリマー複合体の塩は、薬理的にも製薬的にも受容できるものでなければならないが、製薬的に受容できない塩も自由な活性化合物又は製薬的に受容されるその塩を調製するために好適に使用することができるので本発明の範囲から除外されない。このような薬理的及び製薬的に受容される塩は、文献に詳しく記載されている標準的な方法を用いて、ポリマー複合体と有機又は無機の酸との反応によって調製できる。使用できる塩の例としては、それだけに限定されないが、次の酸から調製されるものがある:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、p−トルエンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸、ナフタレン−2−スルホン酸、及びベンゼンスルホン酸、など。また、製薬的に受容される塩は、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩として、例えばカルボン酸のナトリウム、カリウム、又はカルシウム塩として、調製することもできる。
【0092】
本発明はまた、獣医学的及びヒトの医学的用途のための製薬調合物又は組成物であって、1つ以上の本発明のポリマー複合体、又は製薬的に受容されるその塩、を1つ以上の製薬的に受容されるキャリア、及び場合により他の治療成分、安定化剤、などと共に含む製薬調合物又は組成物を提供する。キャリア(単数又は複数)は、調合物の他の成分と適合し、そのレシピエントに不当に有害ではないという意味で製薬的に受容されるものでなければならない。本発明の組成物はまた、ポリマー賦形剤/添加剤又はキャリア、例えば、ポリビニルピロリドン、誘導体化セルローズ、例えばヒドロキシメチルセルローズ、ヒドロキシエチルセルローズ、ヒドロキシプロピルメチルセルローズ、Ficolls (ポリメリックシュガー)、ヒドロキシエチルスターチ(HES)、デキストレート(例えば、シクロデキストリン、すなわち、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、及びスルホブチル−β−シクロデキストリン)、ポリエチレングリコール、及びペクチンを含むことがある。さらに、組成物は、希釈剤、緩衝剤、結合剤、崩壊剤、増粘剤、潤滑剤、保存剤(抗酸化剤を含む)、芳香剤、味覚麻痺剤、無機塩(例えば、塩化ナトリウム)、抗菌剤(例えば、塩化ベンザルコニウム)、甘味料、帯電防止剤、表面活性剤(例えば、“TWEEN 20” と“TWEEN 80” などのポリソルベート、F68とF88 などのPluronics 、BASF から入手できる)、ソルビタンエステル、脂質(例えば、レシチンなどのリン脂質、及びその他のホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、脂肪酸及び脂肪酸エステル、ステロイド(例えば、コレステロール))、及びキレート化剤(例えば、EDTA, 亜鉛、及び他のそのような適当な陽イオン)、を含むことがある。本発明による組成物で使用するのに適したその他の製薬的な賦形剤及び/又は添加剤は以下にリストされている、“Remington: The Science & Practice of Pharmacy”, 19th ed., Williams & Williams, (1995), 及び “Physician’s Desk of Reference”, 52th ed., Medical Economics, Montvale, NJ (1998), 及び“Handbook of Pharmaceutical Excipients”, Third Ed., Ed. A. H. Kibbe, Pharmaceutical Press, 2000。
【0093】
本発明の複合体は、経口、直腸、局所、経鼻、眼、又は非経口(腹腔内、静脈内、皮下、又は筋肉内注射、を含む)投与に適したものを含む組成物で調合することができる。この組成物は、単位服用の形で好適に提供することができ、製薬の分野で周知のどんな方法によっても調製できる。すべての方法が、活性物質又は化合物(すなわち、ポリマー複合体)を1つ以上の付属成分を構成するキャリアと関連させる工程を含む。一般に、この組成物は活性化合物を液体のキャリアと関連させて溶液又は懸濁液を形成するか、あるいはまた、活性化合物を固体の、場合により粒状の製品を形成し、そしてもしも必要ならその後その製品を所望の配給形態に成形するための適当な調合成分と関連させる。本発明の固体調合物は、粒状である場合、普通粒径が約1 ナノメートルから約500 ミクロンの範囲にある粒子を含む。一般に、静脈内注射を意図した固体調合物の場合、粒子の直径は普通約1 nm から約10 ミクロンまでの範囲にある。
【0094】
調合物内のトリアジン誘導体の複合体の量は、用いられる特定トリアジン誘導体、複合体の形でのその活性、その分子量、その他の因子、例えば服用形態、標的患者の集団、及びその他の要因によって異なるが、一般に当業者であれば容易に決定できる。調合物内の複合体の量は、治療的に有効な量のトリアジン誘導体をそれを必要としている患者に送給して、トリアジン誘導体に結びつけられる治療効果の少なくとも1つ、例えば腫瘍崩壊活性、を達成するのに必要な量である。実際には、これは、特定複合体、その活性、治療使用とする状態の重篤性、患者の集団構成、調合物の安定性、などによって大きく異なる。組成物は一般に、約1 重量%乃至約99 重量%のトリアジン誘導体の複合体を含み、典型的には約2 重量%乃至約95 重量%の複合体、さらに典型的には約5 重量%乃至約85 重量%の複合体を含み、これはまた組成物に含まれる賦形剤/添加剤の相対的な量にも依存する。もっと詳しく言うと、組成物は普通、少なくとも約1つの次のパーセンテージ:すなわち、重量で2%, 5%, 10%, 20%, 30%, 40%, 50%, 60% 又はそれ以上、のトリアジン複合体を含む。
【0095】
経口投与に適した本発明の組成物は、カプセル、カシェ剤、錠剤、ロゼンジ、など、各々が所定の量の活性物質を粉末又は顆粒として含む離散的な単位として;又は、水性の液体又はシロップなどの非水性の液体中の懸濁液、エリクシール、エマルジョン、ドラフト(draught)など、の形で提供することができる。
【0096】
錠剤は、圧縮または成型によって、場合により1つ以上の付属成分を用いて作ることができる。圧縮錠剤は、活性化合物が粉末又は顆粒など自由に流れる形で、場合により結合剤、崩壊剤、潤滑剤、不活性の希釈剤、表面活性剤、又は分散剤をミックスしたものを適当な機械で圧縮して調製することができる。適当なキャリアを含む成型錠剤は、適当な機械で成型して作ることができる。
【0097】
シロップは、砂糖、例えばスクロースの濃縮溶液に活性化合物を加えて作られ、それにさらに付属成分(単数又は複数)を加えることもできる。そのような付属成分としては、芳香剤、適当な保存剤、砂糖の結晶化を遅らせる物質、及び多価アルコール、例えばグリセロールやソルビトール、など他の成分の溶解度を高める物質、などがある。
【0098】
非経口投与に適当な調合物は活性化合物の無菌水性製剤を好適に含み、レシピエントの血液と等張になるように調合することができる。
【0099】
鼻スプレー調合物は、保存剤及び等張剤を合わせた活性物質の精製された水溶液を含む。この調合物は、鼻の粘膜に適合するpH及び等張状態に調整することが好ましい。
【0100】
直腸投与のための調合物は、適当なキャリア、例えばココアバター、又は水素添加された脂肪、又は水素添加された脂肪カルボン酸、などを用いた座薬として提供することができる。
【0101】
眼科用の調合物は、鼻スプレーと同様な方法で調製されるが、pHと等張因子は眼にマッチするように調整されることが好ましい。
【0102】
局所治療調合物は、鉱物油、石油、ポリヒドロキシアルコール、その他の局所治療調合物に用いるベースの1つ以上の媒質に活性化合物を溶解又は懸濁させて含む。上記のような他の付属成分の添加が望ましいことがある。
【0103】
さらに、本発明は、ポリマー複合体又はその塩のリポゾーム調合物(liposomal formulation)を提供する。リポゾーム懸濁液を形成する方法は当業者には周知である。本発明の水溶性ポリマー複合体、又はその塩、は従来のリポゾームテクノロジーを用いて脂質小胞(lipid vesicle)に組み込むことができる。そのような場合、複合体又はその塩の水溶性のために、複合体又はその塩は実質的にリポゾームの親水性センター又はコアに引き込まれる。用いられる脂質層は通常のどんな組成のものであってもよく、コレステロールを含んでいても含んでいなくてもよい。生成されるリポゾームは、例えば標準的な音波処理及び均質化方法を用いてサイズを小さくすることができる。本発明のポリマー複合体を含むリポゾーム調合物は、凍結乾燥して凍結乾燥物を生成することができ、それを製薬的に受容されるキャリア、例えば水によって再形成してリポゾーム懸濁液を再生することができる。
【0104】
エアロゾルとして吸入によって投与するのに適した製薬調合物も提供される。この調合物は、所望のポリマー複合体又はその塩の溶液又は懸濁液を含む。所望の調合物は小さなチャンバにいれて噴霧化することができる。噴霧化は、圧縮空気又は超音波エネルギーによって行われ、複合体又はその塩を含む複数の液滴又は固体粒子が形成される。
【0105】
V.ポリマー複合体を利用する方法
本発明のポリマー複合体はヒトを含む哺乳類におけるトリアジン誘導体に応答する状態を治療するのに用いることができる。治療に好ましい1つの状態はがんである。治療の方法は、治療に有効な量の上述のようなトリアジン誘導体のポリマー複合体を含む組成物又は調合物をその哺乳類に投与する工程を含む。特定の複合体の治療に有効な用量は、複合体によって、患者によって、多少異なり、患者の状態、ポリマー複合体の負荷容量(loading capacity)、及び送給ルートに依存する。一般的な命題としては、約0.5 乃至約20 mg/kg 体重、好ましくは約0.5 乃至約20 mg/kg、という用量が治療に効力を有する。他の製薬的に活性な物質と合わせて投与される場合、それよりも少ない量のポリマー複合体でも治療に有効なことがある。
【0106】
ポリマー複合体は、1日に1回又は数回投与できる。治療の継続期間は、1日1回で2週間乃至3週間にわたることもあり、数ヶ月又は数年にわたって続くこともある。1日の用量は、1個の服用単位又は数個の小さな服用単位で1回の投与によるか、又は小さく分けた用量をある一定の間隔で何回も投与するやり方でもよい。可能な送給ルートとしては、舌下錠による、皮下注射による、経皮的、筋肉内注射による、静脈注射による、経口的、又は吸入によるルートがある。
【0107】
VI .実験
mPEG 及びその他の形のPEG が用いられる以下の実施例は本発明を例示するためのものであり、本発明を限定するものと考えてはならない。本発明の実施において用いることができる他の形のPEG 及び同様のポリマーは、上述のように本発明に包含される。さらに、以下の実施例は特定のトリアジン前駆物質及びトリアジン誘導体構造を用いているが、本発明は例示した特定のトリアジン構造に限定されない。
【0108】
添付された実施例で言及されるすべてのPEG 試薬は、Shearwater Corporation of Huntsville, AL. から入手できる。全てのNMRデータは、Bruker 製の300 MHz NMR 分光計によって生成された。
【0109】
実施例1
2−mPEGyloxy 5k −4,6− ジクロロ −1,3,5− トリアジン(I)の合成
【化27】
【0110】
丸底フラスコで、10 グラムのメトキシ−PEG5K(m−PEG5K)(2 mmole)が50 ml の無水トルエンに加えられた。トルエン(25 ml)は、2 時間の蒸留で除去された。残留物は45 ℃に冷却された。得られた溶液に、0.2 wt% の1,10 フェナントロリンを含むn−ブチルリチウム(ヘキサン中2.5 M)が一滴ずつ加えられた。溶液が黄色からブラウン−オレンジに変わったときに添加を終了した。次に、得られた溶液を無水トルエン中の塩化シアヌル(3.6 グラム、20 mmole)溶液に加えた。最終溶液を一晩攪拌した後、200 mlのエチルエーテルに直接加えた。沈澱(I)が濾過によって集められ、新しいエーテルで洗浄され、真空下で乾燥された。1H NMR(DMSO−d6): δ3.50(br m, PEG), 4.39 (t, CH 2 O)。
【0111】
この実施例は、ヒドロキシル基を官能基とした単純なmPEG 骨格をシアヌル酸ハライドに結合する方法を示しており、この方法ではヒドロキシル基が最初にアルコキシドに変換される。
【0112】
実施例2
2−mPEGyloxy 5k −4,6− ジ − ( N− メチルアミノ) −1,3,5− トリアジン( II )の合成
【化28】
【0113】
丸底フラスコで、4.5 グラムの2−mPEGyloxy5K−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン(I)が40 ml の無水トルエンに溶解された。この溶液に12 mlのメチルアミン(THF中に2 M)が加えられた。溶液は30 ℃で一晩攪拌された。溶液は濾過され、次に直接200 ml のエチルエーテルに加えられた。沈澱2−mPEGyloxy5k−4,6−ジ−(N−メチルアミノ)−1,3,5−トリアジン(II)が濾過によって集められ、真空下で乾燥された。1H NMR(DMSO−d6): δ3.50(br m, PEG), 7.0 (m, NH), 4.26 (t, CH 2 O), 2.73 (s, CH 3 )。
【0114】
この実施例は、ポリマー誘導体化されたジハロトリアジン前駆物質とアルキルアミンを反応させて残っているハロゲン原子を置換されたアミノ基で置換する反応を例示している。
【0115】
実施例3
2−mPEGyloxy 5k −4,6− ジ − ( N− メチル −N− ヒドロキシメチルアミノ) −1,3,5− トリアジン( III )の合成
【化29】
【0116】
丸底フラスコで、2 グラムの2−mPEGyloxy5k−4,6−ジ−(N−メチルアミノ)−1,3,5−トリアジン(II)が30 ml の炭酸カリウムの水溶液(50 mM)に溶解された。この溶液に15 ml のホルムアルデヒド水溶液(37 wt%)が加えられた。溶液は45 ℃で一晩攪拌された。次に、溶液は室温まで冷却され、5 wt% のNaCl溶液(90 ml)で希釈された。得られた溶液は塩化メチレンで抽出された。有機相は硫酸ナトリウム上で乾燥され、濾過された。濾液は真空下で濃縮され、残ったシロップが50 ml のエチルエーテルに加えられた。得られた沈澱は濾過して集められ、真空下で乾燥されて2−mPEGyloxy5k−4,6−ジ−(N−メチル−N−ヒドロキシメチルアミノ)−1,3,5−トリアジン(III )が得られた。1H NMR(DMSO−d6): δ3.50(br m, PEG), 4.34 (t, CH 2 O), 3.03 (s, CH 3 ), 4.99 (d, CH 2 OH ), 5.68 (t, CH2OH)。
【0117】
この実施例では、実施例2においてトリアジン環に加えられた置換されたアミノ基がさらにホルムアルデヒドとの反応によって修飾される。
【0118】
実施例4
2−mPEGyloxy 350 −4,6− ジ − ( N− メチルアミノ) −1,3,5− トリアジン( IV )の合成
【化30】
【0119】
丸底フラスコで、10 グラムのメトキシ−PEG350が100 ml の無水トルエンに加えられた。トルエン(40 ml)は2時間の蒸留で除去された。残留物は45 ℃に冷却された。得られた溶液に、0.2 wt% の1,10 フェナントロリンを含むブチルリチウム(ヘキサン中2.5 M)が一滴ずつ加えられた。溶液が黄色からブラウン−オレンジに変わったときに添加を終了した。得られた溶液を無水トルエン(120 ml)中の塩化シアヌル(30 g)の溶液に加え、得られた溶液は一晩攪拌された。溶液は濾過され、200 mlのメチルアミン(THF 中2 M)がそれに加えられた。得られた混合物は一晩30 ℃で攪拌された。その後、溶液は濾過され、濾液が濃縮されて、2−mPEGyloxy350−4,6−ジ−(N−メチルアミノ)−1,3,5−トリアジン(IV)がオイルとして得られた。1H NMR(DMSO−d6): δ3.50(br m, PEG), 7.0 (m, NH), 4.26 (t, CH 2 O), 2.73 (s, CH 3)。
【0120】
この実施例では、小さな分子量のmPEG が上の実施例1及び2で述べたような反応に用いられる。
【0121】
実施例5
2−mPEGyloxy 350 −4,6− ジ − ( N− メチル −N− ヒドロキシメチルアミノ) −1,3,5− トリアジン(V)の合成
【化31】
【0122】
丸底フラスコで、0.5 グラムの2−mPEGyloxy350−4,6−ジ−(N−メチルアミノ)−1,3,5−トリアジン(IV)が15 ml の炭酸カリウム水溶液(50 mM)に溶解された。この溶液に15 ml のホルムアルデヒド水溶液(37 wt%)が加えられ、溶液は一晩50 ℃で攪拌された。次に、溶液は室温まで冷却され、5 wt% NaCl 溶液(60 ml)で希釈された。得られた溶液は塩化メチレンで抽出された。有機相は硫酸ナトリウム上で乾燥され、濾過された。生成物、2−mPEGyloxy350−4,6−ジ−(N−メチル−N−ヒドロキシメチルアミノ)−1,3,5−トリアジン(V)、は真空下で溶剤を除去して集められた。1H NMR(DMSO−d6): δ3.50(br m, PEG), 4.34 (t, CH 2 O), 3.03 (s, CH 3), 4.99 (d, CH 2 OH), 5.68 (t,CH2OH)。
【0123】
この実施例は、実施例4で生成されたポリマー複合体のトリアジン環の置換されたアミノ基をホルムアルデヒドとの反応によってさらに修飾している。
【0124】
実施例6
( VIII )、すなわち( III )の 4− アーム PEG 20K 類似体、の合成
【化32】
【0125】
丸底フラスコで、10 グラムの4−アーム−PEG 20K (ポリエトキシ化されたペンタエリスリトール)が160 ml の無水トルエンに加えられた。トルエン(20 ml)は2時間の共沸蒸留で除去された。残留物は40 ℃に冷却された。得られた溶液に、0.2 wt% の1,10 フェナントロリンを含むブチルリチウム(ヘキサン中2.5 M)が一滴ずつ加えられた。ブチルリチウムの添加の間に溶液は非常に粘っこくなり、いくつかのゲルクラスターが出現した。混合物が黄色からブラウン−オレンジに変わったときに添加を終了した。得られた溶液に、無水トルエン中の塩化シアヌル(3 g)の溶液(25 ml)が加えられた。最終混合物は一晩攪拌された。得られた溶液は直接200 mlのエチルエーテルに加えられた。沈殿物(VI)が濾過によって集められ、新しいエーテルで洗浄され、真空下で乾燥された。
【0126】
丸底フラスコで、5 グラムの(VI)が50 ml の無水トルエンに加えられた。この溶液に12 ml のメチルアミン(THF 中で2 M)が加えられた。溶液は一晩30 ℃で攪拌された。溶液は細かいフィルタで濾過され、200 ml のエチルエーテルに直接加えられた。沈殿物(VII )が濾過によって集められ、真空下で乾燥された。1H NMR(DMSO−d6): δ3.50(br m, PEG), 7.0 (m, NH), 4.26 (t, CH 2 O), 2.73 (s, CH 3)。
【0127】
丸底フラスコで、1 グラムの(VII )が10 ml の炭酸カリウム水溶液(50 mM)に溶解された。この溶液に10 ml のホルムアルデヒド水溶液(37 wt%)が加えられた。溶液は一晩45 ℃で攪拌された。次に、溶液は室温まで冷却され、5 wt% NaCl 溶液(60 ml)で希釈された。得られた溶液は塩化メチレンで抽出された。有機相は硫酸ナトリウム上で乾燥され、濾過された。濾液は真空下で濃縮され、残留シロップが50 ml のエチルエーテルに加えられた。得られた沈澱は、濾過によって集められ、真空下で乾燥されて(VIII)が得られた。1H NMR(DMSO−d6):δ3.50(br m, PEG), 4.34 (t, CH 2 O), 3.03 (s, CH 3), 4.99 (d, CH 2 OH), 5.68 (t,CH2OH)。
【0128】
この実施例は、上の実施例1−3で述べた一般的な反応スキームにおいてポリオールコアを含むマルチアームポリマー骨格を用いている。
【0129】
実施例7
(XI)、すなわち( III )のホモ二官能 PEG 3400 類似体、の合成
【化33】
【0130】
丸底フラスコで、20 グラムのPEG 3400 が200 ml の無水トルエンに加えられた。トルエン(40 ml)は2時間の共沸蒸留で除去された。残留物は40 ℃に冷却された。得られた溶液に、0.2 wt% の1,10 フェナントロリンを含む新しいブチルリチウム(ヘキサン中2.5 M)が一滴ずつ加えられた。ブチルリチウムの添加の間に溶液は粘っこくなり、いくつかのゲルクラスターが出現した。混合物が黄色からブラウン−オレンジに変わったときに添加を終了した。得られた溶液に、無水トルエン中の塩化シアヌル(22 g)の溶液(100 ml)が加えられた。最終混合物は一晩攪拌された。得られた溶液は濾過され、700 mlのエチルエーテルに加えられた。沈殿物(IX)が濾過によって集められ、新しいエーテルで洗浄され、真空下で乾燥された。
【0131】
丸底フラスコで、10 グラムの(IX)が100 ml の無水トルエンに加えられた。この溶液に20 ml のメチルアミン(THF 中で2 M)が加えられた。溶液は一晩40 ℃で攪拌された。溶液は細かいフィルタで濾過され、600 ml のエチルエーテルに直接加えられた。沈殿物(X)が濾過によって集められ、真空下で乾燥された。1H NMR(DMSO−d6): δ3.50(br m, PEG), 7.0 (m, NH), 4.26 (t, CH 2 O), 2.73 (s, CH 3)。
【0132】
丸底フラスコで、3.9 グラムの(X)が20 ml の炭酸カリウム水溶液(50 mM)に溶解された。この溶液に20 ml のホルムアルデヒド水溶液(37 wt%)が加えられた。溶液は一晩室温で攪拌された。溶液は、5 wt% NaCl 溶液(80 ml)で希釈された。得られた溶液は塩化メチレンで抽出された。有機相は硫酸ナトリウム上で乾燥され、濾過された。濾液は真空下で濃縮され、残留シロップが100 ml のエチルエーテルに加えられた。得られた沈澱(XI)は、濾過によって集められ、真空下で乾燥された。1H NMR(DMSO−d6):δ3.50(br m, PEG), 4.34 (t, CH 2 O), 3.03 (s, CH 3), 4.99 (d, CH 2 OH), 5.68 (t,CH2OH)。
【0133】
実施例7は、上の実施例1−3で述べた一般的な反応スキームにおいて二官能PEG骨格を用いている。
【0134】
実施例8
(2−N−mPEG 5K −2−N− ヒドロキシメチルアミノ )−4,6− ジ (N− メチル −N− ヒドロキシメチル )−1,3,5− トリアジン(X IV )の合成
【化34】
【0135】
丸底フラスコで、1 グラムのメトキシ−PEG アミン5KDa (0.2 mmole)が60 ml の無水トルエンに加えられた。トルエン(40 ml)は2時間の共沸蒸留で除去された。残留物は35 ℃まで冷却され、次に無水トルエン中の塩化シアヌル(0.37 グラム)の溶液(10 ml)に加えられた。(XII)を含む最終溶液は室温で4時間攪拌された。この溶液に10 ml のメチルアミン(THF 中で2 M)が加えられた。溶液はキャップ付の丈夫なガラスチューブに移され、一晩オイルバス上で80 ℃で攪拌された。溶液は濾過され、溶媒は濃縮されて100 ml のエチルエーテルに直接加えられた。沈殿物(XIII )が濾過によって集められ、真空下で乾燥された。1H NMR(DMSO−d6): δ3.50(br m, PEG), 2.67 (s, CH 3)。
【0136】
丸底フラスコで、1 グラムの(XIII )が10 ml の炭酸カリウム水溶液(50 mM)に溶解された。この溶液に10 ml のホルムアルデヒド水溶液(37 wt%)が加えられた。溶液は一晩50 ℃で攪拌された。溶液は室温まで冷却され、5 wt% NaCl 溶液(45 ml)で希釈された。得られた溶液は塩化メチレンで抽出された。有機相は硫酸ナトリウム上で乾燥され、濾過された。濾液は真空下で濃縮され、残留シロップが50 ml のエチルエーテルに加えられた。得られた沈澱(XIV)は、濾過によって集められ、真空下で乾燥された。1H NMR(DMSO−d6):δ3.50(br m, PEG), 3.01 (s, CH 3), 4.97 (d, CH 2 OH)。
【0137】
この実施例は、実施例1−3で述べた一般的な反応スキームにおけるアミノ基を官能基とするポリマー骨格の利用を例示している。
【0138】
実施例9
D 2 O 中の( III )、(V)、及び(X IV )の安定性研究
化合物III 、V、及びXIV(6 mg)が別々に0.75 ml のD2O に37 ℃で溶解された。メチレンピークの消滅、ならびにメチルピークのシフト、は300 MHz NMR で時間的にモニターされた。ホルムアルデヒド放出反応の半減期は一次反応速度論(first order kinetics)を用いてモニターされた。III とVの半減期(t1/2)はD2O 中で81 時間であり、XIVの半減期は19.4 時間であった。加水分解されたVのMALDI−TOF スペクトルは、検出できるほどの二量体化は何もないということを示した。
【0139】
この実施例は、本発明が提供するトリメラモルのポリマー複合体は生理的温度で溶液にホルムアルデヒドを放出することを示しており、これが親化合物、トリメラモルの可能な作用メカニズムであると考えられている。さらに、この実施例は、トリメラモルのポリマー複合体が、親化合物に比べて二量体化に対してもっと安定であることを示している。
【0140】
上述の説明及び関連した図面で明らかにされた教示の利点を有する本発明のいろいろな変形やその他の実施形態は、本発明が関わる分野の当業者にはすぐに思い浮かぶであろう。したがって、本発明は開示された特定の実施の形態に限定されるものではなく、いろいろな変形やその他の実施形態が添付された特許請求の範囲に含まれることは言うまでもない。特定の用語が本明細書でもちいられているが、それらは一般的な概念として説明の目的にのみ用いられたものであり、それに限定するためのものではない。
Claims (58)
- s−トリアジン環又はas−トリアジン環を含むトリアジン誘導体の非ヘテロ原子位置に共有結合で結合された水溶性の非ペプチドポリマー骨格を有するトリアジン誘導体のポリマー複合体。
- 該トリアジン誘導体が1,3,5−トリアジン環,1,2,4−トリアジン環又はベンゾトリアジン環を含むことを特徴とする請求項1に記載のポリマー複合体。
- 該トリアジン誘導体が、1つ以上の非ヘテロ原子位置で、アミノ、置換されたアミノ、アリール、及び置換されたアリールから成る群から選択される置換基で置換されていることを特徴とする請求項1に記載のポリマー複合体。
- 該ポリマー骨格が、ポリ(アルキレングリコール)、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(サッカライド)、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリ(N−アクリロイルモルホリン)、及びそれらのコポリマー、ターポリマー及び混合物から成る群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のポリマー複合体。
- 該ポリマー骨格がポリ(エチレングリコール)であることを特徴とする請求項1に記載のポリマー複合体。
- 該ポリ(エチレングリコール)が約100 Daから約100,000 Daまでの平均分子量を有することを特徴とする請求項5に記載のポリマー複合体。
- 該ポリマー骨格が約2個から約300個までの末端(termini)を有することを特徴とする請求項1に記載のポリマー複合体。
- X がO 又はNR2 であり、R2 がH, C1−6 アルキル、又は置換されたC1−6 アルキルであることを特徴とする請求項8に記載のポリマー複合体。
- Y1 とY2 が各々NRR1 であり、R はC1−6 アルキル、置換されたC1−6 アルキル又は電子求引性基であり、R1 はH, C1−6 アルキル、又は置換されたC1−6 アルキルであることを特徴とする請求項8に記載のポリマー複合体。
- R がメチルであり、R1 が−CH2OH であることを特徴とする請求項10に記載のポリマー複合体。
- POLY が、ポリ(アルキレングリコール)、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(サッカライド)、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリ(N−アクリロイルモルフォリン)、及びそれらのコポリマー、ターポリマー及び混合物から成る群から選択されることを特徴とする請求項12に記載のポリマー複合体。
- POLY がポリ(エチレングリコール)であることを特徴とする請求項12に記載のポリマー複合体。
- X がO 又はNR2 であり、R2がH, C1−6 アルキル、又は置換されたC1−6 アルキルであることを特徴とする請求項12に記載のポリマー複合体。
- Z が、アルコキシ、ヒドロキシル、保護されたヒドロキシル、活性エステル、活性炭酸塩、アセタール、アルデヒド、アルデヒド水和物、アルケニル、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、活性スルホン、アミン、保護されたアミン、ヒドラジド、保護されたヒドラジド、チオール、保護されたチオール、カルボン酸、保護されたカルボン酸、イソシアネート、イソチオシアネート、マレイミド、ビニルスルホン、ジチオピリジン、ビニルピリジン、ヨードアセトアミド、エポキシド、グリオキサール、ジオン、メシレート、トシレート及びトレシレートから成る群から選択されることを特徴とする請求項12に記載のポリマー複合体。
- X’ がO 又はNR2 であり、R2 がH, C1−6 アルキル、又は置換されたC1−6 アルキルであることを特徴とする請求項17に記載のポリマー複合体。
- POLY がポリ(エチレングリコール)であり、X とX’ が両方ともO であることを特徴とする請求項17に記載のポリマー複合体。
- POLY がポリ(エチレングリコール)であり、Z がメトキシであることを特徴とする請求項12に記載のポリマー複合体。
- n が約3 乃至約20 であることを特徴とする請求項21に記載のポリマー複合体。
- 各X とY は、O 又はNR2 から成る群から独立に選択され、R2はH, C1−6 アルキル、又は置換されたC1−6 アルキルであることを特徴とする請求項21に記載のポリマー複合体。
- R’は、ポリオール、ポリアミン、及びアルコールとアミン基の組み合わせを有する分子から成る群から選択される分子から誘導されることを特徴とする請求項21に記載のポリマー複合体。
- R’は、グリセロール、グリセロールオリゴマー、ペンタエリスリトール、ソルビトール、及びリシンから成る群から選択される分子から誘導されることを特徴とする請求項21に記載のポリマー複合体。
- 各POLY が、ポリ(アルキレングリコール)、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(サッカライド)、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリ(N−アクリロイルモルフォリン)、及びそれらのコポリマー、ターポリマー及び混合物から成る群から選択されることを特徴とする請求項21に記載のポリマー複合体。
- 各POLY がポリ(エチレングリコール)であることを特徴とする請求項21に記載のポリマー複合体。
- X1 とY’は、O 又はNR2 から成る群から独立に選択され、R2 はH, C1−6 アルキル、又は置換されたC1−6 アルキルであることを特徴とする請求項29に記載のポリマー複合体。
- polya とpolyb はどちらもメトキシポリ(エチレングリコール)であることを特徴とする請求項31に記載のポリマー複合体。
- R” がH、メチル、又は水溶性の非ペプチドポリマー骨格であることを特徴とする請求項31に記載のポリマー複合体。
- 該ポリマー骨格がメトキシポリ(エチレングリコール)二置換された(disubstituted)リシンを含むことを特徴とする請求項1に記載のポリマー複合体。
- トリアジン誘導体のポリマー複合体を形成する方法であって:
シアヌル酸ハライドと反応する官能基に結合された水溶性の非ペプチドポリマー骨格を用意すること;
該ポリマー骨格をトリハロ置換されたトリアジン環を含むシアヌル酸ハライドと反応させて、該トリアジン環の非ヘテロ原子位置に共有結合で結合したポリマー骨格を有するジハロトリアジン中間物質を形成すること;及び
該ジハロトリアジン中間物質の残る2つのハロゲン原子の各々を官能基で置換すること;
を含む方法。 - Xh が塩素であることを特徴とする請求項36に記載の方法。
- 該水溶性の非ペプチドポリマー骨格の官能基が、ヒドロキシル、アルコキシド及びアミンから成る群から選択されることを特徴とする請求項35に記載の方法。
- 前記ポリマー骨格をシアヌル酸ハライドと反応させる工程が、トルエン、テトラヒドロフラン、及びジオキサンから成る群から選択される溶剤の存在下で起こることを特徴とする請求項35に記載の方法。
- 該ポリマー骨格が、ポリ(アルキレングリコール)、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(サッカライド)、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリ(N−アクリロイルモルフォリン)及びそれらのコポリマー、ターポリマー及び混合物から成る群から選択されることを特徴とする請求項35に記載の方法。
- 該ポリマー骨格がポリ(エチレングリコール)であることを特徴とする請求項35に記載の方法。
- 該ポリ(エチレングリコール)が約100 Daから約100,000 Daまでの平均分子量を有することを特徴とする請求項41に記載の方法。
- 前記ジハロトリアジン中間物質の残る2つのハロゲン原子の各々を官能基で置換する工程が、各ハロゲン原子を、アミノ、置換されたアミノ、C1−6アルキル、置換されたC1−6アルキル、アリール、又は置換されたアリールから成る群から選択される官能基で置換する工程を含むことを特徴とする請求項35に記載の方法。
- 該アルキルアミンがメチルアミンであり、R’がメチルであることを特徴とする請求項44に記載の方法。
- 該アルキルアミンとの反応が、トルエン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、塩化メチレン及びクロロホルムから成る群から選択される溶剤の存在下で起こることを特徴とする請求項44に記載の方法。
- 哺乳類におけるがんを治療する方法であって、s−トリアジン環又はas−トリアジン環を含むトリアジン誘導体の非ヘテロ原子位置に共有結合で結合した水溶性の非ペプチドポリマー骨格を含むトリアジン誘導体のポリマー複合体を該哺乳類に治療に有効な量投与する工程を含む方法。
- 該トリアジン誘導体が、1,3,5−トリアジン環、1,2,4−トリアジン環又はベンゾトリアジン環を含むことを特徴とする請求項48に記載の方法。
- 該トリアジン誘導体が1つ以上の非ヘテロ原子位置で、アミノ、置換されたアミノ、アリール及び置換されたアリールから成る群から選択される置換基で置換されていることを特徴とする請求項48に記載の方法。
- 該ポリマー骨格が、ポリ(アルキレングリコール)、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(サッカライド)、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリ(N−アクリロイルモルフォリン)及びそれらのコポリマー、ターポリマー及び混合物から成る群から選択されることを特徴とする請求項48に記載の方法。
- 該ポリマー骨格がポリ(エチレングリコール)であることを特徴とする請求項48に記載の方法。
- 該ポリ(エチレングリコール)が約100 Da から約100,000 Daまでの平均分子量を有することを特徴とする請求項52に記載の方法。
- X がO 又はNR2 であり、R2がH, C1−6 アルキル、又は置換されたC1−6 アルキルであることを特徴とする請求項54に記載の方法。
- Y1 とY2 が各々NRR1 であり、R はC1−6 アルキル、置換されたC1−6 アルキル、又は電子求引性基であり、R1 はH, C1−6 アルキル、又は置換されたC1−6 アルキルであることを特徴とする請求項54に記載の方法。
- R がメチルであり、R1 が−CH2OH であることを特徴とする請求項54に記載の方法。
- 前記投与する工程が、該化合物を舌下錠で(buccally)、皮下注射で、経皮的に、筋肉内に、静脈注射で、経口的に、又は吸入によって投与する工程を含む請求項48に記載の方法。
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