JP2004514444A - 二重lox組換えに基づく真核生物発現ライブラリーおよび使用方法 - Google Patents

二重lox組換えに基づく真核生物発現ライブラリーおよび使用方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、改変体核酸の多様な集団を含む非酵母真核生物細胞の集団を含む、細胞組成物を提供する。この改変体核酸の各々は、異なる細胞において発現され、そして各細胞内にてそのゲノム中の同一の部位で位置づけられる。本発明はまた、改変体核酸の多様な集団を含む非酵母真核生物細胞の集団を、この改変体核酸によってコードされる改変体ポリペプチドの多様な集団の親ポリペプチドに関連する活性についてスクリーニングする工程、および親ポリペプチドと比較して最適化された活性を示す改変体ポリペプチドを同定する工程によって、最適化された活性を示すポリペプチドを同定する方法を提供する。

Description

【0001】
本発明は、国立衛生研究所によって与えられた助成金番号NIH 1 R43 GM60106−01の下で、政府支援でなされた。アメリカ合衆国政府は、本発明において特定の権利を有する。
【0002】
(発明の背景)
本発明は、一般に、分子生物学、より詳細には真核生物発現ライブラリーに関する。
【0003】
新たなそしてより効果的な薬物の開発が、医薬品工業の主要な目的である。薬物の発見および開発は、以下の一般的な2つのアプローチ(リード化合物のスクリーニングおよび構造ベースの薬物設計)として記載され得る。
【0004】
リード化合物についてのスクリーニングに基づく薬物の発見は、候補化合物のプールを生成することを包含する。これらの候補化合物は、天然産物(例えば、植物、昆虫または他の生物)由来であり得る。候補化合物のプールはまた、組換え的に(例えば、コンビナトリアル抗体ライブラリーおよびランダムペプチドライブラリーのファージディスプレイライブラリーを用いて)生成され得る。あるいは、候補化合物は、コンビナトリアル化学のようなアプローチを用いて化学合成され得、ここで、化合物は、化学基を結合して多くの多様な候補化合物を生成することによって合成される。
【0005】
一般に、候補化合物のプールは、潜在的リード化合物を同定するために、目的の薬物標的を用いてスクリーニングされる。このアプローチは、通常、所望の活性について多くの化合物をアッセイする必要がある。このアッセイ、化合物の利用可能性および調製に依存して、候補化合物のプールのスクリーニングは、困難でありそして時間を浪費し得る。さらに、操作のさらなる繰り返し(例えば、リード化合物の改変型形態のスクリーニング)をさらに実施して、最適な活性を有する構造を決定する。よって、これらのさらなる操作は、目的の標的に対する最適な結合活性を示す薬物候補の開発に必要とされる時間および労力をさらに複雑にしそして増加させる。
【0006】
構造ベースの薬物設計にたよる薬物の発見および開発は、標的分子における活性に必要とされる重要な残基を阻害さもなくば妨害するモデル化合物に対するテンプレートとしての薬物標的の、3次元構造予測を使用する。次いで、薬物標的に対して活性を示すモデル化合物は、薬物標的に対して所望の活性を示す候補薬物の開発のためのリード化合物として使用される。
【0007】
構造ベースの薬物設計を使用してモデル化合物を同定することは、薬物標的に対するこの化合物の結合を改善する可能性のあるリード化合物の改変を予測する際に利点を提供し得る。しかし、関連薬物標的の構造を得ることは、過度に時間を浪費しそして困難である。さらに、薬物標的に対して所望の結合活性を示す化合物を同定するための改変および試験を連続して繰り返すことは、同様に困難であり、そして時間を浪費する。このようなプロセスは、しばしば、達成するために何年も費やす。さらに、目的の薬物標的が細胞表面上のレセプターである場合、この標的は、細胞膜に埋め込まれ得る。このような膜タンパク質の3次元構造の決定は、現在利用可能な限られた数の膜タンパク質構造によって明示されるように、非常に困難である。
【0008】
標的の構造−機能研究に基づく、薬物候補を同定する際の別の困難性は、相互作用が生じる生理学的環境をより正確に反映する系における、薬物候補と標的との相互作用を特徴付けることである。細菌発現系が簡便でそして安価であるという性質に起因して、真核生物タンパク質の多くの初めの構造−機能研究が、細菌発現系および細菌発現ライブラリーを使用して行われる。しかし、このような細菌発現系は、真核生物細胞において正常に生じる多くの翻訳後修飾を組み込み得ない。さらに、細菌系は、しばしば、真核生物タンパク質の不溶性形態の発現を生じ、よって、薬物候補相互作用についての意味のある情報を得る能力を制限する。
【0009】
真核生物細胞における真核生物タンパク質の発現が翻訳後修飾を可能にし、そして細菌系発現に起因する可溶性問題を回避するが、真核生物発現系はまた、制限を有する。例えば、哺乳動物細胞におけるコンビナトリアルタンパク質ライブラリーの発現は、哺乳動物細胞の形質転換に関連する制限によって妨害されてきた。哺乳動物細胞のDNA媒介形質転換は、典型的に、宿主ゲノムへの外因性DNAのランダムな組込みを生じ、タンパク質発現において顕著な変動性を導く。さらに、タンパク質ライブラリーの発現に必要かつ十分な形質転換効率を保障する実験条件は、各細胞において複数の部位でのDNAの組込みを導き得る(Lacyら、Cell,34:343−358(1983))。結果として、単一の細胞が、複数の異なるタンパク質改変体を発現し得、スクリーニング、および引き続くDNA配列決定による変異の同定の両方を顕著に複雑にする。
【0010】
相同組換えを使用して、ゲノム中の特定の位置に対する単一のDNAコピーを標的化する。しかし、この方法論に関連する複雑性および多くの偽の標的化事象が、コンビナトリアルタンパク質ライブラリーの効率的な発現のための相同組換えの使用を妨害する(Linら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82:1391−1395(1985);Thomasら、Cell,44:419−428(1986))。
【0011】
従って、構造−機能研究および薬物の発見のために、ライブラリーを発現およびスクリーニングするための有用な真核生物発現系に対する必要性が存在する。本発明は、この必要性を満足し、そして同様に関連する利点を提供する。
【0012】
(発明の要旨)
本発明は、非酵母真核生物細胞の集団を含む細胞組成物を提供する。この集団は、改変体核酸の多様な集団を含み、これらの改変体核酸の各々は、異なる細胞において発現され、そして各細胞内にてそのゲノム中の同一部位で位置づけられる。本発明はまた、改変体核酸の多様な集団を含む非酵母真核生物細胞の集団を、改変体核酸によってコードされる改変体ポリペプチドの多様な集団の、親ポリペプチドに関する活性についてスクリーニングし;そしてこの親ポリペプチドと比較して最適化された活性を示す改変体ポリペプチドを同定することによって、最適化された活性を示すポリペプチドを同定する方法を提供する。
【0013】
(発明の詳細な説明)
本発明は、改変核酸または異種核酸の多様な集団を含む非酵母真核生物細胞の集団を含む組成物およびこれらの集団を使用する方法を提供する。この組成物は、改変核酸または異種核酸の多様な集団を含む非酵母真核生物細胞の集団、異なる細胞において発現され、そして各細胞内のゲノムの同一部位に配置される核酸の各種を含有する。この組成物および方法は、核酸の集団における各核酸が、個別の細胞において発現されて、同一細胞における複数の種のトランスフェクションに関連する複雑性を最小化し得るという点で有利である。この核酸はまた、この核酸を発現する同質遺伝子細胞を生成するために、細胞ゲノム中の同一部位に対し標的化され得る(例えば、部位特異的組換えを使用して)。
【0014】
改変核酸フラグメントまたは異種核酸フラグメントを含む本発明の細胞集団は、ランダムな組込みまたはトランスフェクトされた核酸のコピー数効果に起因する可変性を持たない核酸によってコードされるポリペプチドの簡便な特徴付けおよび比較を可能にするのに有用である。本発明の方法は、方向付けられた進化に適用可能であり、ここで分子の特徴が、改変分子を生成および好ましい活性についてスクリーニングすることによって最適化される。
【0015】
最適なリガンド−レセプター結合パートナーを決定するための、迅速かつ効果的な方法が、本明細書に開示される。この方法は、所望の標的分子に特異的なリガンドの同定のために適用可能である。このようなリガンドは、潜在的な薬剤候補として開発され得るか、またあるいは、所望の結合特性の増強された活性を示すリガンド改変体の生成および同定のためのリード化合物として使用され得る。この方法は、標的レセプター分子に結合する高い可能性を有するリガンドを迅速に同定するために、レセプター改変体集団を使用するという点で有利である。標的レセプターに対して改変体の集団を用いる最初のスクリーニングによって、結合事象を検出する可能性が、増加する。全てが親レセプターと関連するレセプター改変体の使用が、結果として親レセプターと類似の結合事象を同定するので、増強された結合事象の獲得は、生産的であり、従って、このようなスクリーニングによって同定されたリガンドは、これらの親レセプターと会合および、結合するリガンドと同様に関係する。従って、改変体の集団を使用する最初のスクリーニングは、標的レセプターに対し好ましい結合特性を有するリガンドについての、迅速な同定および富化を生じる。この富化された集団は、次いで標的レセプターに対し最適な結合特性を有するリガンドを引き続きスクリーニングされ得る。従って、本発明の方法は、疾患の診断および処置のために適用可能な特異的なリガンドの同定のための迅速かつ効果的な方法を提供する。
【0016】
本明細書中で使用される場合、用語「レセプター」は、リガンドと選択的に結合し得るために十分なサイズの分子をいうことが意図される。このような分子は一般に、ポリペプチド、核酸、炭水化物または脂質のような高分子である。しかしながら、誘導体、アナログおよび模倣化合物ならびに天然のまたは合成の有機化合物はまた、この用語の定義の範囲に含まれることが意図される。レセプターのサイズは、レセプターがリガンドに対する選択的な結合活性を示すか、または示すようにされ得る限り、重要ではない。さらに、レセプターは、所望のリガンドに対する選択的な結合を示す限り、完全な分子のフラグメントまたは修飾形態であり得る。例えば、レセプターがポリペプチドである場合、インタクトなポリペプチドと同様の結合選択性を実質的に維持するネイティブのポリペプチドのフラグメントまたはドメインが、用語レセプターの定義の範囲内に含まれることが意図される。このような結合ドメインまたはフラグメントの特定の例は、抗体分子の可変領域である。可変領域内の相補性決定領域(CDR)はまた、実質的に抗体分子と同等の結合選択性を示し得、従って、この用語の意味の範囲内にあると考えられる。
【0017】
最適な結合リガンドは、レセプター改変体集団の生成によって同定される。このレセプター改変体は、スクリーニングのための集合的なレセプター改変体集団にプールされ得るか、またはレセプター改変体は、リガンドに対する結合活性のについて個々にスクリーニングされ得る。レセプター改変体集団を、リガンド集団を亜集団または個々のリガンドに分割することによってスクリーニングして、結合活性を決定し得る。レセプター改変体集団に対する結合性を示すリガンドの結合活性を、比較して、最適な結合特性を有するリガンドを同定する。さらに、結合リガンドの最適化が、実行され得る。最適な結合特性を有するリガンドを同定した後、さらに最適化された結合リガンドは、同定された最適な結合リガンドに基づくリガンド改変体のライブラリーの作製および親レセプターへの結合活性に対するスクリーニングによって引き続いて同定され得る。ポジティブな結合リガンド改変体の結合活性を、互いに比較し、そして親リガンドと比較して、親レセプターに対する好ましいかまたは最適な結合特性を示すリガンドを同定する。
【0018】
レセプターとしては、例えば、Gタンパク質共役型レセプター、インテグリン、増殖因子レセプターおよびサイトカインレセプターのような細胞表面レセプターが挙げられ得る。一つの実施形態において、最適な結合リガンドは、Gタンパク質共役型レセプター改変体の集団の作製により同定される。Gタンパク質共役型レセプターは、集合的なレセプター改変体集団にプールされ、そして多様な集団内でリガンドに対する結合活性についてスクリーニングされる。レセプターはまた、抗体であり得、免疫系の他のポリペプチドまたはリガンドを含み得る。免疫系のこのような他のポリペプチドとしては、例えば、T細胞レセプター(TCR)、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)、CD4レセプターおよびCD8レセプターが挙げられる。さらに、ステロイドホルモンレセプターのような細胞質レセプターならびに転写因子およびDNA複製因子のようなDNA結合ポリペプチドは、同様に用語レセプターの定義の範囲内に含まれる。別の例示的なレセプターは、ブレオマイシンに対する抵抗性を賦与するブレオマイシン抵抗性タンパク質(BRP)である(実施例、VII、IXおよびXを参照のこと)。さらなる例示的レセプターは、コリンエステラーゼを加水分解するブチリルコリンエステラーゼである(実施例XIを参照のこと)。
【0019】
本明細書中で使用される場合、用語「ポリペプチド」は、レセプターまたはリガンドに関連して使用される場合、2つ以上のアミノ酸のペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質をいうことが意図される。この用語は、同様にその誘導体、アナログおよび機能的模倣物をいうことが意図される。例えば、誘導体は、アルキル化、アシル化、カルバミル化、ヨウ素化のようなポリペプチドの化学的修飾、またはポリペプチドを誘導体化する任意の修飾を含み得る。アナログは、修飾アミノ酸(例えば、ヒドロキシプロリンまたはカルボキシグルタミン酸)を含み得、そしてペプチド結合によって連結されないアミノ酸を含み得る。模倣物は、化合物の予測される3次元構造に関わらず、ポリペプチドの機能を模倣する化学的部分を含む化学物質を含む。例えば、ポリペプチドが、機能ドメインに2つの荷電した化学部分を有する場合、模倣物は、2つの荷電した化学部分を空間的な配向性および制限された構造に配置するので、荷電した化学的機能が、3次元空間において維持される。従って、これらの全ての修飾は、ポリペプチドがその結合機能を維持する限り、用語「ポリペプチド」の範囲内に含まれる。
【0020】
本明細書中に記載される場合、用語「リガンド」は、レセプターに選択的に結合し得る分子をいう。この用語は選択的に、結合相互作用が、非特異的相互作用を超えて、定量可能なアッセイにより検出可能であることを意味する。リガンドは、本質的に、ポリペプチド、核酸、炭水化物、脂質または低有機化合物のような、任意の型の分子であり得る。さらに、誘導体、アナログおよび模倣化合物もまた、この用語の定義の範囲内に含まれることが意図される。このように、リガンドおよびレセプターが、結合パートナーとして規定されるので、リガンドである分子はまた、レセプターであり得、逆に、レセプターである分子もまた、リガンドであり得る。当業者は、用語リガンドの意味によって意図されるものを知っている。リガンドの特定の例は、天然有機化合物または合成有機化合物ならびに組換え的または合成的に生成されるポリペプチドである。レセプター改変体に結合するこのようなポリペプチドは、以下の実施例Vに記載される。
【0021】
本明細書中で使用される場合、用語「改変体」は、レセプターまたはリガンドに関して使用される場合、親分子と類似の構造および機能を共有するが、少なくとも一つの原子が異なる分子をいうことが意図される。機能を規定する特性は、親レセプターによってまたは親リガンドによって決定され得る。改変体は、例えば、親分子と実質的に同一または類似の結合機能を有する。しかしながら、改変体は、結合機能の化学的官能基に検出可能な相違を有し得、結合機能が類似である限り、なお親分子の改変体とみなされる。改変体は、例えば、アミノ酸残基の変異または化学部分の付加により直接修飾された親レセプターを含む。修飾はまた、間接的であり得る(例えば、親レセプターの結合機能を変える、調節分子またはアロステリックエフェクターの結合)。
【0022】
さらに、その改変体は、イソ型、または異なるが、親レセプターと関連するファミリーのメンバーであり得る。そのような親分子の直接的な改変または間接的な改変、ならびにそれらの同種のメンバーの全てが、本明細書中で使用される場合、用語改変体の定義に含まれると考えられる。親分子と異なる化学官能基が、改変体分子の集団を生成するために使用され得る。親ポリペプチドレセプターの特定の例において、改変体は、例えば、機能性結合ドメイン中の1以上のアミノ酸だけ異なり得る。この特定の例において、機能性結合ドメインとは、レセプターとリガンドとの間の結合相互作用に寄与するポリペプチドの領域または部分をいう。そのような機能性結合ドメインとしては、例えば、触媒ドメインとリガンド結合ドメインの両方、ならびにポリペプチド機能に寄与する構造ドメインが挙げられる。
【0023】
本明細書中で使用される場合、用語「集団」は、2以上の異なる分子の群をいうことが意図される。集団は、使用者に現在利用可能であるかまたは当業者によって作製され得る、多数の独立した分子であり得る。典型的に、集団は、2分子ほど小さい集団および1013分子ほど大きい集団であり得る。いくつかの実施形態において、集団は、約5と10の間の異なる種、ならびに数百または数千までの異なる種である。実施例Vに示される特定の例において、その中に記載される集団は7つの異なる種である。実施例IXは、約200〜約1300の異なる種の集団を例示する。他の実施形態において、集団は、例えば、10、10および10より多い異なる種であり得る。なお他の実施形態において、集団は、約10〜1012の間もしくはそれ以上の異なる種である。従って、本発明の集団は、約10以上、約15以上、約20以上、約30以上、約40以上、約50以上、約75以上、約100以上、約150以上、約200以上、約250以上、約300以上、約350以上、約400以上、約450以上、約500以上、約700以上、約800以上、約1000以上、約2000以上、約5000以上、約1×10以上、約1×10以上、約1×10以上、約1×10以上、さらに約1×10以上の異なる種であり得る。さらにその集団は、使用者の目的および要求に依存して多様または重複性であり得る。当業者は、特定の用途に適切な集団のサイズおよび多様性を知っている。
【0024】
本明細書中で使用される場合、用語「亜集団」は、元の集団由来の1以上の種の分子の亜群をいう。その亜集団は、例えば、1以上の画分への集団の分割、あるいは元の集団の既知の画分の合成または生成によって得られ得る。その亜集団は、当量数の異なる分子を含む必要がない。
【0025】
本明細書中に示される場合、用語「集合性の」は、集団または亜集団に関して用いられる場合、凝集体または、集団のメンバーが混合し得るように、集団または亜集団を形成するメンバーのプールをいう。対照的に、非集合性集団は、集団の個々のメンバーが凝集されるよりもむしろ分離された(例えば、プレートの個々のウェルに分離された)集団である。
【0026】
本明細書中で使用される場合、用語「最適な結合」は、リガンドとレセプターとの相互作用の好ましい結合特性をいう。最適な結合は、所望の親和性、活性、または特異性のリガンド−レセプター相互作用であり得る。例えば、最適な結合は、生物学的アッセイにおいて、最も有効的な相互作用であり得る。最適な結合特性は、結合分子の特定の用途に依存する。例えば、結合基準は、親レセプターに対するリガンドの相対的な親和性である。この場合において、親レセプターに対して最も高い結合親和性を有する集団中のリガンドが、最適な結合を有する。あるいは、その基準は、レセプター改変体亜集団に対するリガンド亜集団の最も高い結合親和性であり得る。この例において、レセプター改変体亜集団に対して最も高い親和性を有するリガンド亜集団が、最適な結合を有する。この場合、最も高い親和性リガンドが、リガンド亜集団のメンバーであり、同様に、最も高い親和性レセプター改変体は、レセプター改変体亜集団のメンバーである。最適な結合はまた、最も多くの数のレセプター改変体に対する結合、またはいくつかの閾値より大きい数のレセプター改変体に対する結合であり得る。いくつかの用途において、より低い親和性の結合が、最適な結合になり得る。
【0027】
本明細書中で使用される場合、用語「異種核酸」は、特定の細胞において天然では発現しない核酸をいう。
【0028】
本発明は、約10以上の改変体核酸の多様な集団を含む非酵母真核生物細胞の集団を含む、細胞組成物を提供する。その各改変体核酸は異なる細胞中で発現され、ゲノム中の同一の部位における各々の細胞内に配置される。所望の場合、その細胞組成物は、親アミノ酸配列中の予め選ばれた位置における予定されたアミノ酸変化を有する改変体核酸を含み得る。
【0029】
ゲノム中の同一の部位での改変体核酸の組み込み、または異種核酸フラグメントの組み込みは、特定の改変体または異種核酸の発現においてのみ異なる同質細胞株を作製するように機能する。単一の部位での組み込みは、ゲノム中の複数の部位での組み込み位置的な影響(これは核酸によりコードされるmRNAの転写に影響を及ぼす)、および複数のコピーの組み込み、または細胞1つにつき1つより多い核酸の発現による複雑性を最小化する。
【0030】
ゲノム中の単一の部位に対して改変体核酸または異種核酸を標的化するための1つのアプローチは、部位特異的組換え配列を含む部位における、真核生物のゲノムへの外来性のDNAの挿入を標的化するために、Creリコンビナーゼを使用する(SauerおよびHenderson,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85:5166−5170(1988);FukushigeおよびSauer,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:7905−7909(1992);BethkeおよびSauer,Nuc.Acids Res.,25:2828−2834(1997))。Creリコンビナーゼは、十分に特徴付けられた38kDaのDNAリコンビナーゼ(Abremskiら,Cell 32:1301−1311(1983))であり、バクテリオファージP1における配列特異的組換えのために、必要かつ十分である。組換えは、それぞれが2つの逆13塩基対リコンビナーゼ認識配列からなる、2つの34塩基対 loxP配列の間(図5A、下線部)で生じ、これはコア領域(図5A、影付部)を包囲する(SternbergおよびHamilton,J.Mol.Biol.150:467−486(1981a);SternbergおよびHamilton,J.Mol.Biol.150:487−507(1981b)。DNA切断およびDNA鎖交換は、コア領域の端の上部鎖または下部鎖(図5A、矢印)で生じる。Creリコンビナーゼはまた、酵母(Sauer,Mol.Cell.Biol.7:2087−2096(1987))および哺乳動物細胞(SauerおよびHenderson,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85:5166−5170(1988);FukushigeおよびSauer,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:7905−7909(1992);BethkeおよびSauer,Nuc.Acids Res.,25:2828−2834(1997))の両方を含む、真核生物において部位特異的組換えを触媒する。
【0031】
Creリコンビナーゼに加えて、Flpリコンビナーゼがまた、ゲノム中の特定の部位への外来性のDNAの挿入を標的化するために使用され得る(O’Gormanら,Science 251:1351−1355(1991);Dymecki,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.93:6191−6196(1996))。Flpリコンビナーゼに対する標的部位は、8塩基対スペーサ−によって分離された13塩基対反復からなる:5’−GAAGTTCCTATTC(TCTAGAAA)GTATAGGAACTTC−3’(配列番号90)。ゲノム中の特定の部位に対して核酸を標的化するために、部位特異的リコンビナーゼおよび対応する組換え部位の任意の組合せが本発明の方法に使用され得ることが理解される。
【0032】
リコンビナーゼは、改変体核酸または異種核酸フラグメントを含むベクターで同時トランスフェクトされたベクター上でコードされ得る。あるいは、リコンビナーゼをコードする発現エレメントは、核酸改変体または異種核酸フラグメントを発現する同一のベクターに組み込まれ得る。改変体核酸または異種核酸フラグメントをコードする核酸で、リコンビナーゼをコードする核酸をトランスフェクトすることに加えて、このリコンビナーゼをコードするベクターは、細胞内にトランスフェクトされ得、そしてその細胞は、リコンビナーゼの発現について選択され得る。続いて、リコンビナーゼを安定に発現する細胞が、改変体核酸または異種核酸フラグメンをコードする核酸でトランスフェクトされ得る。
【0033】
本明細書中で例示されるように、Creリコンビナーゼによって媒介される正確な部位特異的DNA組換えが、単一のコピーの外因性DNAを含む安定な哺乳動物形質転換体を作製するために用いられてきた(実施例VIIを参照のこと)。Cre媒介標的化事象の頻度がまた、改変された二重lox(doublelox)法を用いて実質的に高められた。この二重lox法は、lox部位のコア領域内での特定のヌクレオチド変化(図5B、星印)が、組換えの効率性にほとんど影響を与えることなく、Cre−媒介組換えの部位選択特異性を変更するという観察に基づく(Hoessら、Nucleic Acids Res.14:2287−2300(1986))。従って、標的化ベクターおよび宿主細胞ゲノムの両方における、loxPおよびlox511(図5B)と命名された変更されたloxP部位の組込みは、二重交差事象による部位特異的組換えを生じる(図5C)。この二重loxアプローチは、20倍を超える単一交差挿入組換えによって部位特異的構成要素の回収を増加し、部位特異的組換えの絶対的な頻度を増加し、その結果、この部位特異的組換えは、異常な組換えの頻度を上回る(BethkeおよびSauer、Nuc.Acids Res.、25:2828−2834(1997))。実際、標的化された組込みの頻度は、16%の推定されるトランスフェクション効率で蒔かれた生存可能な哺乳動物細胞の総数の1%であった(BethkeおよびSauer、Nuc.Acids Res.、25:2828−2834(1997))。
【0034】
相同組換えはまた、ゲノム中の特定の部位に核酸配列を配置するために用いられ得る。例えば、ベクターは、核酸の集団の個々の核酸に、細胞のゲノム中の特定の部位に位置する相同な核酸配列との相同組換えを可能にするのに十分な相同性を有する核酸配列が隣接するように設計され得る。このような相同配列が、特定のゲノムの位置で天然に生じ得るか、または相同配列が、周知のトランスフェクションの方法および組込みを可能にするベクターを用いて、宿主ゲノムへ組み換え的に導入され得る。相同配列がゲノム中に組み換え的に導入される場合、細胞株は、与えられたクローンの細胞が、同じゲノム部位に位置する相同配列を有するように、クローンへと単離され得る。相同組換えを用いる特定の部位でのゲノムへの核酸の導入の方法は、外因性リコンビナーゼ(例えば、FlpのCre)よりもむしろ外因性組換え機構を使用する。
【0035】
発明の核酸に隣接する相同性の領域は、ゲノム中の特定の部位に位置する相同配列との相同組換えを可能にするのに十分である。このような相同配列は、一般的に少なくとも約1kbの長さ、より好ましくは約2kbの長さを有する。一般的に、相同組換えの速度は、15kbまでと推定される限度まで、相同DNA配列の長さの増加と共に増加する(Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley&Sons、New York(1999)を参照のこと)。
【0036】
構築物と標的化ゲノムとの間の相同性の程度が、相同組換えの速度に影響し得ることが理解される。相同組換えは、正確なDNA相同性のストレッチを必要とし、その結果、単一のDNAのミスマッチが、相同組換えの速度を減少するために十分である(DengおよびCapecchi、Mol.Cell.Biol.12:3365−3371(1992))。従って、ゲノム中の特定の部位に位置する相同配列との相同組換えを可能にするために十分な本発明の核酸に隣接する相同性の領域は、2kb以上の長さであり得、そして相同組換えを可能にするために十分な標的ゲノムDNA配列との配列相同性を有し得る。
【0037】
本発明は、細胞組成物を提供し、ここで細胞は、2つのlox部位を含むゲノムにおける部位を含む。このlox部位は、例えば、loxP部位またはlox511部位であり得る。この細胞はまた、同一でない2つのlox部位を含み得る。
【0038】
本発明は、さらに10以上の改変体核酸の集団を含む非酵母真核生物細胞の集団を含む細胞組成物を提供し、各々の改変体核酸は、異なる細胞において発現され、そして部位特異的組換え配列によって各々の細胞のゲノム中に組み込まれている。この認識配列は、例えば、Creリコンビナーゼによって認識される13アミノ酸配列であり得る。
【0039】
この細胞組成物は、核酸が細胞に導入されるものと同じであるという点で、完全でありかつ完全性を有する、改変体核酸フラグメントまたは異種核酸フラグメントを含む。この細胞組成物は、不完全な核酸を含む細胞(例えば、その中においてインビボで核酸における欠失または挿入を生じる細胞、すなわち、改変体核酸を産生するために特別に導入される細胞以外の細胞)を除外する。
【0040】
この二重lox標的化アプローチは、正確に制御された様式で、染色体セグメントと外因性トランスフェクトDNAとの迅速な置換を可能にし、そしてこれは哺乳動物細胞におけるコンビナトリアルタンパク質ライブラリーを発現するための有効なアプローチである。哺乳動物細胞において指向される進化の適用のためのCre媒介標的化挿入の使用を実証するために、ブレオマイシン耐性タンパク質(BRP)のコンビナトリアルタンパク質ライブラリーが、モデル系として哺乳動物細胞において発現され、配列決定され、そしてスクリーニングされた(実施例Xを参照のこと)。Cre媒介標的化挿入およびFlp媒介標的化挿入がまた、ブチリルコリンエステラーゼ改変体のライブラリーについて実証された(実施例XIを参照のこと)。
【0041】
BRPは、ブレオマイシンに結合し、そしてブレオマイシンに対する耐性を与える真核細胞において機能的に発現される14kDaのタンパク質である(Gatignolら、FEBS Lett.230:171−175(1988))。結晶のデータおよび部位指向型変異誘発の研究は、ブレオマイシンの隔絶に潜在的に関与するBRP残基を同定した(Dumasら、EMBO J.13:2483−2492(1994))。従って、BRPは、哺乳動物細胞において指向される進化の適用を実証するためのモデルタンパク質として理想的な特徴を保有する。詳細には、BRPの機能的活性は、真核生物細胞において容易に測定され、そして必要とされはしないが、構造の情報が、タンパク質の目立たない領域(discreet region)に集合させた変異誘発を可能にするために利用可能である。
【0042】
ブチリルコリンエステラーゼ改変体はまた、哺乳動物細胞中で産生され、そして発現された。コリンエステラーゼは、神経伝達物質アセチルコリンおよび多数のエステル含有化合物を加水分解する能力がある、遍在性の多型カルボキシラーゼB型酵素である。2つの主要なコリンエステラーゼは、アセチルコリンエステラーゼおよびブチリルコリンエステラーゼである。ブチリルコリンエステラーゼは、以下に示すように多数のコリンエステルの加水分解を触媒する:
【0043】
【化1】
Figure 2004514444
ブチリルコリンエステラーゼは、優先的に、基質としてブチリルコリンおよびベンゾイルコリンを使用する。ブチリルコリンエステラーゼは、哺乳動物の血漿、肝臓、膵臓、腸粘膜および中枢神経系の白質において見出される。ブチリルコリンエステラーゼをコードするヒト遺伝子は、第3染色体上に位置し、そしてブチリルコリンエステラーゼの30を超える天然に生じる遺伝子改変体が公知である。ブチリルコリンエステラーゼポリペプチドは、574アミノ酸の長さであり、そして1,722塩基対のコード配列によってコードされる。天然に存在するヒトブチリルコリンエステラーゼ改変体、種の改変体、および組み換え的に調製された変異が、Xieら、Molecular Pharmacology 55:83−91(1999)によって既に記載されている。
【0044】
本明細書中で開示されるように、本発明は、哺乳動物細胞におけるコンビナトリアルタンパク質ライブラリーの発現について一般的かつ広範に適用可能な系を確立するために有用な方法を提供する。本発明の方法は、BRP、最適活性を有する改変体の同定の試験方法のためのモデルとして選択されるタンパク質(実施例VII、IXおよびXを参照のこと)、およびブチリルコリンエステラーゼ(実施例XIを参照のこと)の機能を改変することによって実証される、哺乳動物の発現系を含む非酵母の真核生物の発現系において指向される進化技術に適用可能である。
【0045】
本発明の改変体核酸または異種核酸は、種々の真核生物細胞において発現され得る。例えば、この核酸は、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞および非酵母の真菌細胞において発現され得る。当業者は、周知の識別可能な構造特徴および生理学的特徴に基づいて、酵母から非酵母の真菌(例えば、カビ)を容易に識別し得る。
【0046】
本発明はまた、最適活性を示すポリペプチドの同定の方法を提供する。この方法は、改変体核酸によってコードされる改変体ポリペプチドの多様な集団の親のポリペプチドと関連する活性について、本発明の細胞組成物をスクリーニングする工程;および親のポリペプチドに対して最適活性を示す改変体ポリペプチドを同定する工程を含む。それ故、この方法は、最適活性を有するポリペプチドを同定するために用いられ得る。同様に、本発明の方法は、親の核酸に関連する活性についてのスクリーニングによって最適活性を有する核酸を同定するために適用され得る。例えば、増加された結合活性および減少された結合活性の両方について最適活性を有するBRP改変体が、同定された(実施例Xを参照のこと)。
【0047】
本発明は、さらに結合リガンドを同定する方法を提供する。この方法は、発明の細胞組成物を1つ以上のリガンドと接触させる工程;および改変体核酸の1つに結合するリガンドを同定する工程を含む。本発明はさらに、結合リガンドを同定する方法を提供する。この方法は、発明の細胞組成物を1つ以上のリガンドと接触させる工程であって、この細胞は改変体核酸によってコードされる改変体ポリペプチドの多様な集団を含む、工程;およびその改変体核酸によってコードされるポリペプチドに結合するリガンドを同定する工程を含む。
【0048】
本発明は、1つ以上のリガンドとレセプター改変体集団とを接触させること、および集合的なレセプター改変体集団への1つ以上のリガンドの結合を検出することによって、1つ以上のリガンドへのレセプターの結合を決定するための方法を、提供する。このレセプター改変体集団は、集合的集団であり得る。本発明の方法は、検出可能な相互作用について、1つ以上の結合パートナーをスクリーニングするために、改変体であるが類似する分子の集合的集団を、使用する。例えば、集合的レセプター改変体集団は、結合活性を決定するために、1つ以上のリガンドを用いてスクリーニングされる。レセプター改変体集団を使用することは、結合リガンドの同定のために、レセプター改変体集団が、類似した機能の単一レセプターと比較して拡張したレセプター標的範囲を提供するという点で、有利である。この拡張したな標的範囲は、集団中の少なくとも1つのリガンドが、レセプター改変体に対して検出可能な結合親和性を有する可能性を、増加する。
【0049】
改変体レセプターの集団へのリガンドの結合を検出する可能性の増加は、莫大な数の異なるリガンドが、好ましいレセプターまたは親レセプターへの望ましい結合特性を最も有する可能性があるリガンド集団のサブユニットを迅速に同定するために、単一改変体集団を用いてスクリーニングされ得るという点で、実用的な適用を有する。基本的に、結合パートナーを同定するための改変体レセプター集団の使用は、親レセプターに結合しそうでないリガンドを、初期スクリーニングにて排除する。その改変体レセプター集団へ結合を示すリガンドの亜集団は、続いて、その親レセプターに対する結合活性および親和性について、試験され得る。さらに、リガンドの初期亜集団が比較的多数残存している場合は、その親レセプターとより密接に関係する改変体までにレセプターの標的結合範囲を減少するための、改変体レセプターの亜集団を使用するさらなるスクリーニングが実施され得、優先的な結合特性を示す有望な結合リガンドを狭める。
【0050】
所望されるレセプターへ結合する可能性が高い結合リガンドを迅速に同定することに加えて、拡張した結合標的範囲の使用は、同様に、特定のリガンドに結合するレセプターの迅速な同定を、可能にする。この場合、レセプターの集団は、その親リガンドに結合しそうでないレセプターが排除される、上記されたものと類似する様式にて、リガンド改変体集団を用いてスクリーニングされ得る。同様に、そのリガンド結合範囲は、所望される結合特性を示すレセプターを優先的に同定するために、その親リガンドとより密接に関係するリガンド改変体を続いて使用することによって、減少され得る。
【0051】
有望な結合パートナーを迅速に同定するために、レセプターの改変体集団またはリガンドの改変体集団をスクリーニングすることは、このようなスクリーニングがまた、より広範の結合候補体(親分子への低い結合または検出不可能な結合を示す結合パートナーを含む)を同定するという、さらなる利点を有する。例えば、レセプター改変体集団とのリガンドの相互作用を検出する可能性の増加は、レセプターとリガンドとの間の相補的な相互作用との関連で、例証され得る。例えば、レセプターに対するリガンドの親和性は、そのレセプターとそのリガンドとの間の接触部位での化学官能基、および三次元空間中の化学基の相対的位置によって、決定され得る。レセプター改変体およびリガンド改変体は、例えば、接触部位における化学官能基が異なり得るか、接触部位における化学官能基の高次構造および三次元配向に寄与する他の化学官能基が異なり得る。レセプター改変体集団は、リガンド接触部位(単数または複数)が異なり得、ゆえに異なるリガンドに対して異なる親和性を有し得る、レセプター改変体を含む。リガンドは、親レセプターに対して、検出可能な結合のレベルより低い親和性を有する。対照的に、同じリガンドが、レセプター改変体に対して、検出可能な親和性および強い結合親和性さえを、示し得る。親レセプターに対するリガンドのスクリーニングは、リガンドを結合パートナーとして同定させない。ゆえに、レセプター改変体集団を使用することで、親和性に関係なく、親レセプターに結合するリガンドを同定する可能性が、増加する。リガンドの結合力に関係なくリガンドを同定する能力を有することで、使用目的に適した相対的親和性を示すリガンドの選択が、可能となる。
【0052】
さらに、レセプター改変体集団を用いてスクリーニングすることで、標的レセプターに対する所定の結合リガンドの相対的親和性についてのさらなる情報が、提供される。例えば、莫大な数のレセプター改変体に結合するリガンドは、より少ないレセプター改変体(例えば、ただ1つのレセプター改変体)に結合するリガンドよりも、標的レセプターまたは親レセプターに結合する増加した可能性をを有する。従って、リガンドがレセプター改変体集団を用いてスクリーニングされる場合、このリガンドが親レセプターのみを用いてスクリーニングされる場合よりも、多くの情報が取得される。
【0053】
さらに、本発明の方法を使用して同定された結合リガンドは、リガンド改変体のライブラリーを生成するために、使用され得る。この同定されたリガンドを親リガンドとして使用することで、リガンド改変体集団を含むライブラリーを、生成する。リガンド改変体のライブラリーは、親リガンドとの構造類似性に基づき得、例えば、リガンド改変体のこのようなライブラリーは、以下のコンビナトリアル化学法を使用することで、生成され得る:Combinatorial Peptide and Nonpeptide Libraries:A Handbook、Jung編、VCH、New York(1996);Gordonら、J.Med.Chem.37:1233〜1251(1994);Gordonら、J.Med.Chem.37:1385〜1401(1994);Gordonら、Acc.Chem.Res.29:144〜154(1996);WilsonおよびCzarnik編、Combinatorial Chemistry:Synthesis and Application、John Wiley&Sons、New York(1997);Terrett、Combinatorial Chemistry、Oxford University Press、New York(1998);CzarnikおよびDewitt編、A Practical Guide to Combinatorial Chemistry、American Chemical Society、Washington DC(1997)。
【0054】
レセプター改変体の特性は、特定のリガンドスクリーニングの必要性に依存して、変化され得る。例えば、レセプター改変体が密接に関連する場合、最も多い数のレセプター改変体に結合するリガンドは、親レセプターに結合する最も高い可能性を有する。レセプター改変体の特性はまた、集団中のレセプター改変体がより密接に関連しなくなるように、変化され得る。従って、研究者の必要性に依存して、レセプター改変体は、より密接に関連するように、またはより密接に関係しないように、作製され得る。
【0055】
レセプター改変体と親レセプターとの関係性は、親レセプターにおける類似の化学官能基に対してレセプター改変体を規定する、特定の化学官能基の化学的類似性または化学的差異によって、決定され得る。例えば、親レセプターまたは親リガンドがポリペプチドである場合、改変体と親との関係性は、この改変体とこの親分子との間で異なるアミノ酸の関係性によって、決定される。改変体と親との間の化学的により保存的な差異は、結果として、親分子とより密接に関連する改変体を生じる。アミノ酸の保存的置換としては、例えば、以下のものが挙げられる:(1)非極性アミノ酸(Gly、Ala、Val、LeuおよびIle);(2)極性中性アミノ酸(Cys、Met、Ser、Thr、AsnおよびGln);(3)極性酸性アミノ酸(AspおよびGlu);(4)極性塩基アミノ酸(Lys、ArgおよびHis);および(5)芳香族アミノ酸(Phe、Tyr、TrpおよびHis)。さらに、アミノ酸の保存的置換としては、例えば、同種の生物の対応するタンパク質間での、アミノ酸変化の頻度に基づく置換が、挙げられる(Principles of Protein Structure、SchulzおよびSchirmer編、Springer Verlag、New York(1979))。
【0056】
一般的に、リガンドは、複数の接触点から生じる複数の分子相互作用を介して、または、記載され得る1つの化学官能基の複数の相互作用(例えば、3つの点)を介して、レセプターと相互作用する。これらの3つの点は、例えば、結合パートナーに対する接触点として機能する、3つの異なる化学基であり得る。同様に、1つのポリペプチドリガンドもしくはポリペプチドレセプターにおける3つの異なるアミノ酸、または3つの異なるアミノ酸クラスターは、結合パートナーに対する接触点として、作用し得る。この場合、リガンドとレセプターとの間の結合は、3つの点全てが結合し得る場合にのみ、生じる。
【0057】
リガンド−レセプター相互作用に関して、上記の複数点結合の記述を使用すると、それらの点のうちの1つが親レセプターと同一であるように固定化され、そして、残りの点が、レセプター改変集団を生成するために変化される、レセプター改変体集団が、生成され得る。例えば、3つの参考の点を使用する場合、1つの点は親レセプターと同一となるように固定され、そして、他の2つの点は、レセプター改変体集団を生成するために、変化される。レセプター改変体集団を生成することによって、そのレセプター改変体のうちの1つへのリガンドの結合を検出する可能性は、増加される。次いで、結合リガンドの同定が、反復プロセスとして、実施され得る。レセプター上の1つの点を固定し、そして他の接触点を変化させることによって同定されたリガンドを用いて、リガンド改変体のライブラリーを生成し得る。このプロセスの次の繰り返しにおいて、最初のレセプター接触点が固定され得、そして、さらなる1つの点が、親レセプターと同一となるように固定され得る。3つの参照点を記載する上記の例において、2つの点が親レセプターと同一となるように固定され、そして、1つの点が、第2のレセプター改変体集団を生成するために、変化される。リガンド改変体のライブラリーは、リガンド改変体ライブラリーから結合リガンドを同定するために、第2のレセプター改変体集団を用いて、スクリーニングされる。同定された結合リガンドの結合活性は、親レセプターに対して最適な結合活性を有するリガンド改変体を同定するために、比較され得る。さらなるレセプター接触点を固定し、最適な結合の1つ以上のリガンド改変体を同定し、そしてリガンド改変体のライブラリーを生成するプロセスは、親レセプターに最適な活性で結合するリガンドが同定されるまで、繰り返される。従って、リガンドの集団またはリガンド改変体の集団は、結合リガンドを同定するために、同じ親レセプター由来の異なるレセプター改変体集団用いて、スクリーニングされ得る。
【0058】
親レセプターは、リガンドに結合する任意の分子であり得る。このレセプターは、例えば、リガンドの結合において、細胞内シグナルを伝達する細胞表面レセプターであり得る。例えば、Gタンパク質結合レセプターは、膜を7回貫通し、そして、シグナル伝達を、細胞内ヘテロトリマーGタンパク質に関連させる。Gタンパク質結合レセプターは、ホルモンのシグナル伝達、視覚、味覚および嗅覚を含む、広い範囲の生理機能に関与する。さらに、これらのレセプターは、アセチルコリン、アデノシンヌクレオチドおよびアデニンヌクレオチド、β−アドレナリン作用性リガンド(例えば、とりわけ、エピネフリン、アンギオテンシン、ボンベシン、ブラジキニン、カンナビノイド、ケモカイン、ドパミン、エンドセリン、ヒスタミン、メラノコルチン、メラトニン、神経ペプチドY、ニューロテンシン、オピオイドペプチド、血小板活性化因子、プロスタノイド、セロトニン、ソマトスタチン、タキキニン、トロンビンおよびバソプレシン)に対するレセプターを含む、レセプターの大きなファミリーを包含する。
【0059】
他の細胞表面レセプターは、内因性のチロシンキナーゼ活性を有し、そしてリガンドに対する増殖因子またはホルモンレセプター(例えば、血小板由来増殖因子、表皮増殖因子、インスリン、インスリン様増殖因子、肝細胞増殖因子、ならびに他の増殖因子およびホルモン)を含む。さらに、細胞内チロシンキナーゼと結合する細胞表面レセプターは、インターロイキンおよびインターフェロンに対するレセプターのような、サイトカインレセプターを含む。
【0060】
インテグリンは、種々の生理学的プロセス(例えば、細胞付着、細胞移動および細胞増殖)に関与する、細胞表面レセプターである。インテグリンは、細胞−細胞、および、細胞−細胞外マトリクスの両方の接着事象を媒介する。構造的に、インテグリンは、1本のα鎖ポリペプチドが非共有結合的に1本のβ鎖と結合するヘテロダイマーポリペプチドから構成される。一般に、異なる結合特異性は、別個のα鎖ポリペプチドおよびβ鎖ポリペプチドの、独自の組み合わせに由来する。例えば、ビトロネクチン結合インテグリンは、αインテグリンサブユニットを含み、そしてビトロネクチン結合インテグリンとしては、αβ、αβおよびαβが挙げられ、これらは全て、異なるリガンド結合特異性を示す。
【0061】
レセプターはまた、免疫系において機能し得る。抗体または免疫グロブリンは、リガンドに結合する、免疫系レセプターである。ポリペプチドレセプターは、抗体全体であり得るか、または、リガンドに結合する、それらの任意の機能性フラグメントであり得る。機能性フラグメント(例えば、Fab、F(ab)、Fv、単一鎖Fv(scFv)など)は、抗体という用語の定義に含まれる。抗体の機能性フラグメントの記述における、これらの用語の使用は、当業者に周知の定義に対応することを意図する。このような用語は、例えば、HarlowおよびLane、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、New York(1989)(これは、本明細書中に参考として援用される)に記載される。
【0062】
抗体およびそれらの機能性フラグメントを記述するために上記の用語が用いられるように、他の抗体ドメイン、機能性フラグメント、領域、ヌクレオチド配列およびアミノ酸配列ならびにポリペプチドまたはペプチドを言及する用語の使用は、各々の用語の意味の範囲内に含まれることを、同様に意図する。なぜならば、各々の用語は当該分野において知られ、かつ用いられるからである。このような用語としては、例えば、「重鎖ポリペプチド」または「重鎖」、「軽鎖ポリペプチド」または「軽鎖」、「重鎖可変領域」(V)および「軽鎖可変領域」(V)、ならびに用語「相補性決定領域」(CDR)が挙げられる。
【0063】
抗体に加えて、このレセプターは、T細胞レセプター(TCR)であり得る。T細胞レセプターは、構造および機能の両方において抗体可変領域配列と類似する、2つのサブユニット(αおよびβ)を含む。このことについて、両方のサブユニットは、抗体において見出されるCDR領域に類似するCDR領域をコードする、可変領域を含む(Immunology、第3版、Kuby,J.(編)、New York、W.H.Freeman & Co.(1997))。TCRの、CDR含有可変領域は、抗原提示細胞の細胞表面上に提供される抗原に結合し、そして、本質的にいかなる特定の抗体に対しても、結合特異性を示し得る。
【0064】
公知または固有の結合機能を示す、この免疫系の他の例示的なレセプターとしては、主要組織適合性複合体(MHC)、CD4およびCD8が挙げられる。MHCは、抗原提示細胞とエフェクターT細胞との間の媒介相互作用において機能する。CD4レセプターおよびCD8レセプターは、エフェクターT細胞と抗原提示細胞との間の結合相互作用において機能する。CD4およびCD8はまた、抗体配列およびTCR配列が示すような、類似のCDR領域構造を示す。
【0065】
レセプター改変体集団の作製は、使用者によって所望される任意の手段によるものであり得る。当業者は、レセプター改変体を作製するためにどの方法を用い得るかを知っている。例えば、所定のポリペプチドレセプターのレセプター改変体は、このレセプター改変体が、親レセプターに対する構造的類似性または機能的類似性を保持する限り、機能性ドメインにおける1つ以上のアミノ酸の変異誘発によって作製され得る。このような場合、このレセプターの変異誘発は、当業者に周知の方法を用いて行われ得る(Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Sambrookら編、Cold Spring Harbor Press、Plainview、NY(1989))。例えば、Gタンパク質結合レセプターの場合、細胞外ドメインは、このクラスのレセプターの7つの膜貫通ドメインの、配列相同性およびトポロジーに基づいて、同定され得る。この細胞外ドメインに対応する領域の変異誘発は、親Gタンパク質結合レセプターに結合し、そして親Gプロテイン結合レセプターからのシグナル伝達応答を誘発するリガンドを、スクリーニングするために有用な、レセプター改変体集団を提供し得る。
【0066】
公知のアミノ酸配列において、迅速かつ効率的に大量の変異体を作製するか、または、無作為な配列の多様な集団を発生させるための、当該分野で周知の1つの方法は、コドンベース合成またはコドンベース変異誘発として知られる。この方法は、米国特許第5,264,563号および同5,523,388号の主題であり、そしてGlaserら、J.Immunology 149:3903〜3913(1992)にもまた記載される。簡単に述べると、例えば、遺伝コードのアミノ酸を特定する、全20個のコドンの無作為化のためのカップリング反応を、別個の反応容器において行い、そして特定のコドン位置に対する無作為化を、各々の反応容器の生成物を混合することによって起こす。混合の後、次いで、全20個のアミノ酸の等量混合物をコードするコドンに対応する無作為化された反応生成物を、次の位置での各々の無作為化コドンの合成のための別個の反応容器に分割する。全20個のアミノ酸の等頻度の合成のために、2個までのコドンが、各々の反応容器において合成され得る。
【0067】
これらの合成方法に対する変更もまた存在し、そしてこれらとしては、例えば、所望の位置での所定のコドンの合成、および、1つ以上のコドン位置での所定の配列の偏った合成が挙げられる。偏った合成は、所定のコドンまたは親コドンが1つの容器において合成され、そして無作為なコドン配列が第2の容器において合成される、2つの反応容器の使用を包含する。第2の容器は、完全に無作為なアミノ酸を特定の位置で特定する、コドンの合成のための、上記の容器のような、複数の反応容器に分割され得る。あるいは、変性コドンの集団は、例えば、XXG/Tヌクレオチド(ここで、Xは全4種のヌクレオチドの混合物である)のカップリングを介して、第2の反応容器において合成され得る。所定のコドンおよび無作為なコドンの合成の後、2つの反応容器の各々における反応生成物を混合し、次いで、次のコドン位置での合成のために、さらなる2つの容器に再分割する。
【0068】
多様な数の改変体配列を作製するための、上記のコドンベース合成に対する改変は、本明細書中に記載される改変体集団の作製のために、同様に用いられ得る。この改変は、合成を親配列側に偏らせる、上記の二容器法に基づき、そして、使用者が、無作為なコドン変化を有する特定の数のコドン位置を含む集団内へ、この改変体を分離することを可能にする。
【0069】
簡単に述べると、この合成は、各々のコドン位置の合成の後、反応容器を新しい2つの反応容器へと分割し続けることによって行う。分割の後、1対の継続的な反応容器から得られた反応生成物を混合する(第2の容器から始める)。この混合は、無作為な変化を伴う同数のコドン位置を有する反応生成物を、集める。次いで、最初の容器および最後の容器の生成物、ならびに、反応容器の継続的な対の各々の新しく混合された生成物を分割し、そして、2つの新しい容器に再分割することによって、合成が進行する。この新しい容器のうちの1つにおいて、親コドンが合成され、そして第2の容器において、無作為なコドンが合成される。例えば、最初のコドン位置での合成は、1つの反応容器における親コドンの合成および第2の反応容器における無作為なコドンの合成を必要とする。第2のコドン位置での合成のためには、最初の2つの反応容器のそれぞれを、2対の容器を与える2つの容器に分割する。各々の対について、容器のうちの1つにおいて親コドンを合成し、そして第2の容器において無作為なコドンを合成する。直線的に配列したとき、第2および第3の容器における反応生成物を混合して、単一のコドン位置にて無作為なコドン配列を有するこれらの生成物を集める。この混合はまた、生成物集団を3にまで減少させる。この集団は、次回の合成のための開始集団である。同様に、第3、第4および残りの各位置について、前の位置に対する各々の反応生成物集団を分割し、そして親コドンおよび無作為なコドンを合成する。
【0070】
コドンベースの合成の上記の改変に続いて、1つ、2つ、3つおよび4つの位置などでランダムなコドンの変化を含む集団は、都合よく分離され得、そして個々の必要性に基づいて使用され得る。さらに、この合成スキームはまた、集団を、親配列よりも、ランダム化した配列について豊富にし得る。なぜなら、親配列合成物のみを含有する容器は、ランダムコドン合成から同様に分離されるからである。
【0071】
オリゴヌクレオチド指向性変異誘発を用いて合成された抗体改変体のライブラリーの、効率的な合成および発現は、既に記載されるように合成され得る(Wuら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、95:6037〜6042(1998);Wuら、J.Mol.Biol.、294:151〜162(1999);Kunkel、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、82:488〜492(1985))。オリゴヌクレオチド指向性変異誘発は、それらの表現型とは独立して体系的に変異を導入するための、十分に確立されかつ効率的な手順であり、従って、タンパク質工学への指向性進化アプローチに理想的に適している。この方法論は、柔軟性があり、制限酵素を使用せずに正確な変異を導入し得、そしてオリゴヌクレオチドがコドンベースの変異誘発を用いて合成される場合、比較的安価である。簡単には、オリゴヌクレオチド指向性変異誘発を実施するために、所望される変異をコードするオリゴヌクレオチドの集団は、野生型配列の一本鎖のウラシル含有テンプレートに対してハイブリダイズされる。ウラシルを含有する一本鎖テンプレートを作製するために、dutung E.coli株CJ236(Bio−Rad;Richmond,CA)を、糸状ファージ複製起点(ファージミドベクター)を含むプラスミドで感染させる。ファージミドを含む細菌細胞の重複感染は、一本鎖ウラシル含有DNAの産生および分泌を生じる。ウラシルテンプレートに対する変異促進性のオリゴヌクレオチドのアニーリングに続いて、T4 DNAポリメラーゼ、dNTP、およびT4 DNAリガーゼが添加されて、二本鎖の環状DNAが生成され、そして変異DNAは、dutung細菌株の形質転換に続いて効率的に回収される。
【0072】
改変体の集団はまた、遺伝子シャッフリングを用いて作製され得る。遺伝子シャッフリングまたはDNAシャッフリングは、組換えによって多様性を産生する指向性進化のための方法である(例えば、Stemmer、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:10747〜10751(1994);Stemmer、Nature 370:389〜391(1994);Crameriら、Nature:391 288〜291(1998);Stemmerら、米国特許第5,830,721号、1998年11月3日発行を参照のこと)。遺伝子シャッフリングまたはDNAシャッフリングは、選択された変異遺伝子のプールのインビトロでの相同組換えを使用する方法である。例えば、特定の遺伝子の点変異体のプールが使用され得る。遺伝子は、(例えば、DNaseを使用して)ランダムにフラグメント化され、そしてPCRにより再アセンブリされる。所望により、DNAシャッフリングは、多様性を生ずるために異なる生物由来の相同遺伝子を使用して実施され得る(Crameriら、前出、1998)。フラグメント化および再アセンブリは、所望により、何回も実施され得る。得られる再アセンブリした遺伝子は、本発明の組成物および方法において使用され得る改変体のライブラリーである。
【0073】
種々のタイプの分子(例えば、ペプチド、ペプトイドおよびペプチド模倣物)の多様な集団を含有する、ライブラリーを調製するための方法は、当該分野において周知である(例えば、EckerおよびCrooke、Biotechnology 13:351〜360(1995)、ならびにBlondelleら、Trends Anal.Chem.14:83〜92(1995)、そしてそれらの中に引用される参考文献を参照のこと(それらの各々は、本明細書中に参考として援用される);GoodmanおよびRo、Peptidomimetics for Drug Design、「Burger’s Medicinal Chemistry and Drug Discovery」中、第1巻(M.E.Wolff編;John Wiley & Sons 1995)、803〜861頁、ならびにGordonら、J.Med.Chem.37:1385〜1401(1994)もまた参照のこと(それらの各々は、本明細書中に参考として援用される))。分子が、ペプチド、タンパク質またはそれらのフラグメントである場合、この分子は、直接的にインビトロで生成され得るか、またはインビトロで産生され得る核酸から発現され得る。合成ペプチド化学の方法は、当該分野において周知である。
【0074】
レセプター改変体の集団は、関連レセプターのファミリーから代替的に誘導され得る。さらに、一例としてGタンパク質共役レセプターを使用して、レセプター改変体集団は、Gタンパク質共役レセプターのファミリーのメンバーのコレクションであり得る。なぜなら、これらのタンパク質は、構造的に類似であり、そして類似の機能を達成するため、これらは、リガンド結合において機能する、構造的に関連したレセプター改変体のファミリーを構成する。そのようなレセプターファミリーは、そのレセプターに関する、入手可能な配列情報を使用し、そしてそのレセプターファミリーを増幅し得るプライマーを作製するか、またはそのファミリーのメンバーの遺伝子を単離するために使用され得る産生プローブを作製することによって単離され得る。
【0075】
さらに、レセプター改変体の集団は、このファミリーの全てのメンバーが同定されない場合でさえ、関連レセプターのファミリーから作製され得る。この場合において、目的のレセプターが同定され、そして関連したファミリーのメンバーは、例えば、関連したファミリーのメンバーの単離を可能にするプローブを作製するか、または親レセプターの保存された構造的ドメインとハイブリダイズするプライマーを作製し、そして関連したファミリーのメンバーを増幅することによって単離される。
【0076】
ゲノム内の同一の部位に核酸を標的化し得る細胞を入手するために、組換え配列は、細胞のゲノム中に組み込まれ得る。例えば、組換え配列は、以前に記載されるように、組換え配列を含有するベクターをトランスフェクトすること、およびクローンを単離することによってゲノム内の部位に標的化され得る(BethkeおよびSauer、Nuc.Acids Res.、25:2828〜2834(1997))。クローンは、低コピー数または単一のコピー数についてスクリーニングされ得、そして個々のクローンは、相同部位特異的なリコンビナーゼ認識配列に隣接した核酸を標的化するために使用され得る。さらに、内因性の組換え機構を用いる相同組換えについて有用な配列は、上記のように、クローンのトランスフェクションおよびクローンの単離によって同様に入手され得る。
【0077】
哺乳動物細胞において指向性進化技術を適用するための一般的なアプローチとしてリコンビナーゼ媒介性の標的化挿入を使用するために、数千の異なるタンパク質改変体を含有するライブラリーが、容易に発現され得るように、効率的なトランスフェクションを達成することが所望される。効率的なトランスフェクションおよび標的化された組込みは、細胞へとDNAを導入する方法、改変体の核酸もしくは異種核酸フラグメントをコードする標的化ベクターの量、および/または1回のトランスフェクションあたりに使用されるDNAの質量の合計を変化させることによって達成され得る。改変体の核酸もしくは異種核酸フラグメントをコードする標的ベクターが、リコンビナーゼ発現ベクターと同時にトランスフェクトされる場合、標的化ベクターとリコンビナーゼベクターとの比率は、変化し得る。
【0078】
これまでに、異なる宿主株に標的化ベクターを導入するために、種々のトランスフェクション方法が、使用されている。例えば、13−1細胞は、リン酸カルシウムを用いてトランスフェクトされている(BethkeおよびSauer、Nuc.Acids Res.、25:2828〜2834(1997))。一方、lox標的細胞株14−1−2は、リポフェクション(lipofection)を用いてトランスフェクトされている(FukushigeおよびSauer、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:7905〜7909(1992);BaubonisおよびSauer、Nuc.Acids Res.、21:2025〜2029(1993))。リン酸カルシウム(ChenおよびOkayama、Mol.Cell.Biol.、7:2745〜2752(1987))およびリポソームによってDNAトランスフェクションを媒介する機構は、正確には理解されていないが、異なるようである。従って、トランスフェクションパラメータは、細胞タイプによって変更され得、そして経験的に最適化され得る(実施例VIIIを参照のこと)。さらに、標的化ベクターの導入が、安定な細胞トランスフェクションおよび一過性細胞トランスフェクションの両方によって達成され得ることが理解される。
【0079】
本明細書中に開示される結果は、哺乳動物細胞のような非酵母真核生物細胞におけるタンパク質改変体のライブラリーの発現およびスクリーニングの実行可能性を示す(実施例Xおよび実施例XIを参照のこと)。このアプローチは、一般的であり、真核生物細胞において機能的に発現される任意のタンパク質に適用され得る。このアプローチを広く適用するための重要な局面は、慣用的に得られる標的化組込みが0.5%の効率であることである(実施例VIIIを参照のこと)。0.5%の標的化組込み効率は、わずか2×10個の宿主細胞を単純にトランスフェクトすることによって10,000を越える独特のメンバーを含む哺乳動物発現ライブラリーのような、非酵母真核生物発現ライブラリーの使用を可能にする。これまでに、細菌細胞において発現されたタンパク質の指向性進化は、約3,000の独特な改変体を含むライブラリーを合成することによって目的のタンパク質の所望される特徴を操作するために使用されている。動物細胞のような培養された非酵母真核生物細胞を使用する、本明細書中に開示された方法は、哺乳動物細胞に独特な区画化および翻訳後修飾によって、細菌細胞の使用よりも適切な、治療的使用のためのタンパク質を操作するための環境を提供する。従って、本明細書中に開示された真核生物細胞系を含む、非酵母真核生物細胞発現系は、細菌細胞において発現され得るタンパク質を操作するために使用され得る。
【0080】
本明細書中に開示された方法を使用して、改変体の核酸または異種核酸フラグメントの多様な集団を含む、非酵母真核生物細胞の集団は、組込みの正確さのさらなる特徴付けなしに、慣用的および再現可能に産生され得る。従って、細胞中に改変体の核酸または異種核酸フラグメントを導入して細胞の集団を作製した後、この集団は、細胞のさらなる特徴付けをせずに、スクリーニングのために直接的に使用され得る。しかし、所望される場合、改変体の核酸または異種核酸フラグメントを含有する細胞のさらなる特徴付けは、実施され得る。
【0081】
レセプター改変体に関する、本明細書中に開示される方法は、同様に結合活性以外の活性についてスクリーニングするために適用され得ることが、理解される。この方法は、測定され得る任意の活性(例えば、生物学的活性または酵素活性)についてスクリーニングするために用いられ得る。
【0082】
一旦、レセプターが同定され、そして改変したレセプター集団が作製されると、レセプター改変体は、集合的なレセプター改変体集団に結合するリガンドを検出するために都合のよい様式で生成される。このような系の1つは、培養物中でレセプター改変体へのリガンドの結合が検出され得るように、細胞内でレセプター改変体を発現させる工程を包含する。検出方法の1つは、リガンドの結合を検出するために、レセプターの細胞性シグナル伝達特性を利用することに基づく。レセプター改変体のシグナル伝達特性の利用は、好都合である。なぜなら、インビトロアッセイのためにレセプター改変体集団を単離および精製する必要性、または細胞抽出物を調製する必要性を有することなく、リガンド結合の検出を可能にするからである。
【0083】
細胞性シグナル伝達事象を検出するためのシステムの1つは、メラニン保有細胞系である(Lerner、Trends Neurosci.17:142−146(1994))。メラニン保有細胞は、生体に色素沈着を提供する皮膚細胞である。ヒトにおける等価な細胞は、メラノサイトであり、これは、皮膚および毛髪の色の要因となる。魚類、トカゲおよび爬虫類を含む、多くの動物において、メラニン保有細胞は、例えばカムフラージュのために用いられる。メラニン保有細胞の色は、メラノソームとよばれる、メラニン含有小器官の細胞内での位置に依存する。メラノソームは、微小管ネットワークに沿って移動し、そして、明色を与えるためにクラスタリングされるか、または暗色を与えるために分散される。メラノソームの分布は、Gタンパク質共役型レセプターおよび細胞性伝達シグナル事象により調節される。ここで、セカンドメッセンジャー(例えば、サイクリックAMPおよびジアシルグリセロール)の濃度の増加が、メラノソームの分散およびメラニン保有細胞の暗化を生ずる。逆に、サイクリックAMPおよびジアシルグリセロールの濃度の減少は、メラノソームの凝集およびメラニン保有細胞の明化を生ずる。
【0084】
セカンドメッセンジャーのレベルは、ホルモンにより調節される。メラトニンは、細胞内セカンドメッセンジャーレベルを低減させるレセプターを刺激し、よって細胞を明るくさせる。対照的に、メラノサイトを刺激するホルモン(MSH)は、細胞内セカンドメッセンジャーレベルを増加させ、そしてメラニン保有細胞を暗くさせる。メラノソーム分布の他の制御因子としては、カテコールアミン、エンドセリンおよび光が挙げられる。従って、細胞は、光刺激に応答して暗くなる。
【0085】
メラニン保有細胞系は、レセプター刺激した細胞内シグナル伝達によるメラノソーム分布の調節に起因するレセプター−リガンド相互作用(Gタンパク質共役型レセプターを含む)を試験するために有利である。例えば、Gタンパク質共役型レセプターは、親レセプターとして選択され得、そしてレセプター改変体集団が作製され得る。レセプター改変体集団は、メラニン保有細胞(例えば、カエルメラニン保有細胞)にトランスフェクトされ、そしてGタンパク質共役型レセプター改変体が発現される。Gタンパク質共役型レセプターシグナル伝達を刺激または抑制するリガンドが、決定され得る。なぜなら、この系が、メラノソームの凝集および細胞の明化、ならびにメラノソームの分散および細胞の暗化の両方を検出するのに用いられ得るからである。
【0086】
Gタンパク質共役型レセプターに加えて、レセプターがメラノソーム分布を調節するシグナル伝達機構に共役する限り、メラニン保有細胞系はまた、他の型のレセプターを試験するために有用である。例えば、多くのレセプターチロシンキナーゼは、ジアシルグリセロールにおける変化に共役する。ジアシルグリセロールは、メラノソーム分布を調節するセカンドメッセンジャーであるので、これらのレセプターのアゴニストもしくはアンタゴニストとして機能するリガンド、あるいは、これらのチロシンキナーゼ活性を刺激または抑制するリガンドは、メラニン保有細胞系を用いて分析され得る。
【0087】
メラニン保有細胞系に加えて、他の系を使用して、レセプターのシグナル伝達事象を検出し得る。レセプターは、しばしば初期応答性遺伝子の発現を誘導する、細胞内シグナル伝達事象を開始する。例えば、多くのレセプターチロシンキナーゼは、初期応答性fos遺伝子を誘導する。レセプター系は、例えば、fosプロモーターをルシフェラーゼのような検出可能なタンパク質に融合することにより、作製され得る。これらのレセプターから細胞性シグナル伝達を刺激もしくは抑制するリガンドは、インビトロアッセイにおいて時間を浪費して行う必要なく、内因性の細胞性シグナル伝達機構を用いて検出され得る。
【0088】
集合的なレセプター改変体集団を、結合を許容する条件下で、リガンドをインキュベートすることにより、1つ以上のリガンドと接触させる。例えば、生理学的な条件に類似した条件下(例えば、37℃での等張液中でのインキュベーション)で、リガンドを、集合的なレセプター改変体集団と接触およびインキュベートし得る。結合しなかったリガンドは、この集合的なレセプター改変体集団から除去され、そしてレセプター改変体へのリガンドの結合が検出される。例えば、メラニン保有細胞の暗化および明化は、レセプター改変体へのリガンドの結合を検出するために用いられ得る。
【0089】
本発明は、集合的なレセプター改変体集団を1つ以上のリガンドと接触させるための方法、およびこの集合的なレセプター改変体集団に結合するリガンドを検出するための方法を提供する。集合的なレセプター改変体集団をスクリーニングするさらなる利点は、個々のメンバーが同定され得るように、集団が分離されることを必要とする伝統的なスクリーニング方法と異なり、本発明は、分離されていないプールとして、レセプター改変体集団をスクリーニングする。この集合的なレセプター集団は、集合的なレセプター集団がリガンドと接触するのに必要な表面積または体積を有意に減少させるという利点を提供し、これにより、結合相互作用についてより多くのリガンドをスクリーニングするための能力を増大させる。
【0090】
本発明は、集合的なレセプター改変体集団を2つ以上のサブ集団に分割するための方法、1つ以上のレセプター改変体サブ集団を1つ以上のリガンドと接触させるための方法、1つ以上のリガンドへの結合活性を有する1つ以上のレセプター改変体サブ集団を検出するための方法を提供する。レセプター改変体サブ集団の1つ、すべてのレセプター改変体サブ集団または中間数のレセプター改変体サブ集団が、スクリーニングされ得る。
【0091】
例えば、特定の集合的なレセプター改変体集団および特定のリガンドは、多数の結合相互作用を与えることが公知であり得る。この例において、レセプター改変体に結合するリガンドを同定するためには、レセプター改変体集団全体よりも、むしろレセプター改変体サブ集団を接触させることで十分である。当業者は、本明細書に記載される教示を考慮すれば、リガンド結合活性を検出する有望な可能性を提供するために、どれだけのレセプター改変体サブ集団があれば十分であるかを知る。集合的なレセプター改変体集団への1つ以上のリガンドの結合を検出する後、この集合的なレセプター改変体集団を、2つ以上のサブ集団に分割し、そしてこのリガンドと接触させる。2つ以上のレセプター改変体がサブ集団内にある場合、レセプター改変体サブ集団は、集合的であり得る。レセプター改変体サブ集団は、同数のレセプター改変体を含む必要はない。少なくとも1つのレセプター改変体サブ集団は、このリガンドと結合するが、1つより多いレセプター改変体が、そのリガンドと結合する場合、1つより多いレセプター改変体サブ集団が、検出され得る。
【0092】
本発明はまた、1回以上の分割、接触、および検出を反復するための方法を提供する。一旦結合が検出されると、1つ以上のレセプター改変体が1つ以上のリガンドへの結合活性を有することを決定され得る。このような決定は、最適な結合活性であり得るレセプターへのリガンド結合活性の同定を可能にする。レセプター改変体サブ集団が、1つ以上のリガンドへ結合する単一のレセプター改変体のみを含むまで、レセプター改変体サブ集団が反復して分割され、そして、結合活性に関して試験される場合、このリガンドへの結合を用いる、個々のレセプター改変体の同定が達成される。
【0093】
あるいは、1つ以上のリガンドへの結合を伴う個々のレセプター改変体は、レセプター改変体サブ集団を、単一のレセプター改変体のみを含むサブ集団に分割することなく、同定され得る。集合的なレセプター改変体集団中の個々のレセプター改変体は、レセプター改変体をタグ化するための系を用いて、同定され得る。アプローチの1つは、タグを合成することであり、これは、レセプター改変体の作製と相関する。例えば、レセプター改変体集団は、親レセプターの領域を変異誘発させることにより、作製され得る。レセプター改変体を作製するためのレセプターを変異誘発させるが、この変異体に特異的なタグは、平行して作製され得る。例えば、細胞の表面上で発現され、そして特異的な抗体により同定されるペプチドは、同時発現したレセプター改変体を同定するためのタグとして用いられ得る。
【0094】
レセプター改変体を産生する変異の導入は、例えば、本明細書中に記載したコドンベースの合成方法を使用して実施され得る。あるいは、変異は、親ベクターから変異誘発されるレセプターcDNAの領域を切断することによって導入され得る。並行して、ペプチドタグに対応する領域は、同じように切断され得る。親レセプターにおける特定のアミノ酸の変異は、ペプチド内の一つ以上のアミノ酸の特異的な変異と関連し、例えば特定の抗体によって認識される特有なペプチドを産生し得る。変異残基を含むDNAフラグメントは、親ベクターに挿入されて、そのレセプターおよびそのペプチドタグにこれらの変異を導入し得る。適切な制限酵素部位は、クローニングを可能にするために使用され得るか、またはloxP部位は、親ベクターへの部位特異的な組換えを可能にするために使用され得る。したがって、特定のレセプター改変体は、特定のペプチドタグと関連する。
【0095】
上記のメラニン保有細胞発現系の特定の実施例において、リガンドに結合するレセプター改変体を発現する陽性細胞は、メラニン保有細胞の濃淡特性を使用するセルソーティングによって集団内の他の細胞から単離され得る。次いで、単離した陽性細胞は、その細胞表面上で発現されたペプチドタグに対して分析され得る。ペプチドタグの同定は、リガンドに結合するレセプター改変体の同定を可能にする。
【0096】
十分に多数のタグが、限定数の異なるペプチドおよびそれらのペプチドに特異的な抗体を産生し得る。これは、特定の位置に特定のペプチドを制限することによって実施され得る。例えば、32の異なるペプチドの組み合わせは、4つの特定の位置に8つの特定のペプチドを制限することによって4096(8)の異なるタグを産生するために使用され得る。
【0097】
タグシステムは、リガンドに結合する集合的レセプター改変体集団内の個々のレセプター改変体を単離および同定するために使用され得る。例えば、ペプチドから成るタグが発現された細胞表面は、蛍光活性化セルソーター(FACS)分析においてペプチドに特異的な抗体を使用して同定され得る。個々のレセプター改変体は、それぞれのレセプター改変体に関連する特有なタグを使用して同定され得る。さらに、タグは、特定のレセプター改変体と同調するので、個々のレセプター改変体が同定され得る。32のペプチドおよび抗体の組み合わせが、4096の異なるタグを産生するために使用される場合、FACS分析における32の各々の抗体に細胞をさらすことは、個々のレセプター改変体の単離および同定を可能にする。リガンドに結合する個々のレセプター改変体の数は、最適な結合リガンドを同定するために使用され得、そして薬物開発のリード化合物としてリガンドの効果の指標を与え得る。
【0098】
改変体の核酸に指向される本明細書中で開示された方法および組成物はまた、細胞の集団における異種核酸の発現に適用され得る。本発明はまた、10以上の異種核酸フラグメントの多様な集団を含む非酵母の真核細胞の集団を含有する細胞組成物を提供し、この異種核酸フラグメントは、核酸フラグメントの異なる種を含み、この異種核酸フラグメントの各々は、異なる細胞内で発現され、そしてゲノムにおける同一部位で各細胞内に局在される。本発明はさらに、結合リガンドを同定するための異種核酸フラグメントを含む細胞の集団を使用する方法(改変体の核酸を含む細胞に指向される本明細書中で開示された方法と類似する)を提供する。
【0099】
本発明はまた、リガンドについてポリペプチドレセプターを同定する方法を提供する。この方法は、ポリペプチドをコードする10以上の異種核酸フラグメントの多様な集団を含む非酵母真核細胞の集団を、リガンドと接触させる工程であって、この異種核酸フラグメントは、核酸フラグメントの異なる種を含み、この異種核酸フラグメントの各々は、異なる細胞内で発現され、かつゲノムにおける同一部位で各細胞内に局在される、工程;およびリガンドに結合する異種核酸フラグメントによってコードされるポリペプチドを同定する工程を包含する。
【0100】
本発明はさらに、機能的なポリペプチドフラグメントを同定する方法を提供する。この方法は、細胞の集団を産生するために、非酵母真核細胞に10以上の異種核酸フラグメントの多様な集団を誘導する工程であって、この異種核酸フラグメントは、核酸フラグメントの異なる種を含み、この核酸フラグメントの各々は、異なった細胞内で発現され、かつゲノムにおける同一部位で各細胞内に局在される、工程;機能的な活性について細胞の集団をスクリーニングする工程;および、上記機能的活性を有する上記核酸フラグメントによってコードされるポリペプチドを同定する工程を包含する。
【0101】
例示的な機能的活性としては、結合、触媒作用、生物学的活性、または機能的活性の任意の型が挙げられる。核酸フラグメントによってコードされるポリペプチドを同定するのに有用な任意の測定可能な活性が、本発明の方法で使用され得ることは理解されている。異種核酸フラグメントによってコードされるポリペプチドの機能的な活性をスクリーニングする方法は、当業者に周知であり、これらとしては、発現スクリーニングの周知の方法(Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology(Supplement 47),John WileyおよびSons,New York(1999)を参照のこと)が挙げられる。例えば、異種核酸フラグメントの多様な集団を含む細胞の集団は、リガンド(例えば、低分子、ポリペプチドまたは抗体)に対する結合活性についてスクリーニングされ得る。このような結合アッセイは、(所望ならば)、細胞全体または細胞溶解物において実施され得る。インタクトな細胞をアッセイする場合、異種核酸フラグメントによってコードされるポリペプチドは、細胞表面上で発現され得、かつリガンドにアクセス可能であるか、またはこのリガンドは、細胞によって特異的に取り込まれることもしくは膜を貫通することを可能にする化学組成物を有し得、それによって、細胞間で発現したポリペプチドにアクセス可能である。
【0102】
さらに、触媒活性は、細胞全体または細胞溶解物を使用する酵素活性についてのスクリーニングによって測定され得る。酵素アッセイが実施され得る任意の触媒活性は、異種核酸フラグメントを含む細胞の集団をスクリーニングして、機能的活性を有する核酸フラグメントによってコードされるポリペプチドを同定するために使用され得る。このような触媒活性は、オキシレダクターゼ、トランスフェラーゼ、ハイドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼおよびリガーゼとして分類され得る。アッセイが実施され得る触媒活性の特定の例には、以下が挙げられるがこれらには限らない;キナーゼ、GTPase、およびホスファターゼ。
【0103】
異種核酸フラグメントを発現する細胞はまた、生物学的活性についてスクリーニングされ得る。例えば、細胞は、シグナル伝達経路(例えば、本明細書中で開示されたレセプターベースのアッセイに関連したGタンパク質または任意の周知のシグナル伝達経路(例えば、MAPキナーゼ経路、ステロイドホルモンレセプター経路、または任意のシグナル伝達経路))に対する、異種核酸フラグメントによってコードされるポリペプチドの効果についてスクリーニングされ得る。本明細書中で開示するような触媒活性のスクリーニングと類似して、スクリーニングアッセイは、当業者に公知の広範囲のシグナル伝達経路について実施され得ることが理解される。
【0104】
生物学的活性はまた、レポーター遺伝子アッセイを使用してモニタリングされ得る。このようなレポーター遺伝子アッセイおよびシステムは、当業者には周知である(Ausubelら、前出、1999)。レポーター遺伝子アッセイは、レポーター遺伝子アッセイに関連するシグナル伝達経路(例えば、レポーター遺伝子の遺伝子発現を変化させるシグナル伝達経路)における変化をモニタリングするために使用され得る。レポーター遺伝子に関連するシグナル伝達経路を変化させる核酸フラグメントによってコードされるポリペプチドは、レポーター遺伝子発現における変化によって検出され得る。
【0105】
非酵母真核細胞における異種核酸または改変体核酸の発現に指向される本発明の方法は、ポリペプチドをスクリーニングするために特に有用であり、このポリペプチドは、しばしば細菌細胞環境内で適切に折り畳まれないか、またこのポリペプチドは真核細胞内で翻訳後修飾を起こす。したがって、本発明の方法は、真核生物環境内で折り畳まれ、そしてプロセスされる真核生物のポリペプチドをスクリーニングするために特に有益である。この方法はまた、真核生物環境内のシグナル伝達経路に対する効果についてポリペプチドが試験され得るので有用である。なぜなら、このようなシグナル伝達経路は、一般的に細菌細胞内に存在しないからである。
【0106】
さらに、この方法は、欠失した特定の遺伝子を有する細胞株において実施され得る。このような細胞株は、欠失した活性を置換するかまたは欠失した活性を補正する核酸フラグメントによってコードされるポリペプチドについてスクリーニングするために使用され得る。例えば、ポリペプチドは、類似の活性を提供することによって、欠失した活性を置換し得る。このような方法は、例えば、類似の活性を有する他のポリペプチドについてスクリーニングするため、または欠失した遺伝子に相当する種を同定するために使用され得る。ポリペプチドはまた、例えば、欠失した遺伝子に関連するシグナル伝達経路において別のポリペプチドを変化させることによって欠失した活性を補正し得る。したがって、本発明の方法は、シグナル伝達経路内で機能するかまたシグナル伝達経路を変化させる異種核酸フラグメントによってコードされるポリペプチドを同定するために使用され得る。
【0107】
機能的な活性を有し、異種の核酸フラグメントによってコードされるポリペプチドを同定するための上記アッセイに類似のアッセイを、改変体核酸によってコードされるポリペプチドの活性をスクリーニングまたは決定することにも適用し得る。例えば、ある特定の遺伝子を欠失した一つの細胞株を作製し、この遺伝子の改変体を細胞に導入し、活性についてスクリーニングし得る。そのような細胞株は、改変体集団が生成した核酸またはコードされるポリペプチドに関連する特定の活性のバックグラウンドシグナルを減少することに有用であり得る。
【0108】
さらに、本方法を、特定のシグナル伝達経路に応じて生じる機能的活性についてスクリーニングするために実行し得る。例えば、ライブラリーを、そのようなシグナル伝達に対する予想される応答が細胞増殖または細胞死である生存細胞においてスクリーニングし得る。効果の測定され得る任意のシグナル伝達経路を、機能的活性に対するスクリーニングとして使用し得る。
【0109】
本発明は、集合的リガンド改変体集団を一つ以上のレセプターと接触させ、そして一つ以上のレセプターの集合的リガンド改変体集団との結合を検出することによって、リガンドの一つ以上のレセプターへの結合を決定する方法もまた提供する。本発明はさらに、集合的リガンド改変体集団を、二つ以上の部分集団へ分割し、前記二つ以上の部分集団のうちの一つ以上と一つ以上のレセプターとを接触し、そして一つ以上のレセプターへの結合活性を有する一つ以上のリガンド改変体部分集団を検出する方法を提供する。
【0110】
レセプターの一つ以上のリガンドへの結合を決定する上記方法および手順を、リガンドの一つ以上のレセプターへの結合の決定にも同様に適用し得る。本明細書中に記載されるように、リガンド改変体集団または部分集団の分割を反復し、一つ以上のレセプターと接触させ、そして結合活性を検出するための方法が提供される。さらに、リガンド結合活性の検出は、一つ以上のレセプターへの結合活性を有するリガンド改変体の同定を可能にする。最適な結合活性を前もって決定した標準値と比較して決定し得る。例えば、最適な結合をするリガンドは、一つ以上のレセプターへ最高の親和性で結合するリガンドであり得る。あるいは、最適な結合とは、最大数のレセプター改変体へ結合することまたはいくらかの閾値よりも大きな数のレセプター改変体に結合することであり得る。
【0111】
本発明はさらに、集合的リガンド集団とレセプターまたはその改変体とを接触させることによって、リガンドのレセプターまたはその改変体への結合を決定し、レセプターまたはその改変体の集合的リガンド集団への結合を検出するための方法を提供する。
【0112】
集合的リガンド集団は、構造的にリガンド改変体と関連し得るかまたは構造的に無関係であり得、親レセプターまたは一つ以上のレセプター改変体と接触され得る。例えば、親レセプターおよびレセプター改変体を、メラニン保有細胞株のような適切な細胞株で発現し得る。集合的リガンド集団を親レセプターまたは一つ以上の改変体と接触させ、集合的リガンド集団中の一つ以上のリガンドの結合を、例えば、メラニン保有細胞の色の変化を検出することによって、検出する。
【0113】
本発明はさらに集合的リガンド集団を二つ以上の部分集団へ分割し、前記二つ以上の部分集団のうちの一つ以上をレセプターまたはその改変体と接触し、レセプターまたはその改変体への結合活性を有する一つ以上のリガンド部分集団を検出する方法を提供する。このリガンド部分集団は等しくない数のリガンドを含み得る。
【0114】
本発明はさらに、分割、接触および検出を一回以上反復する方法を提供する。このリガンド集団を、部分集合が単一のリガンドを含むまで分割し得る。リガンド結合活性の検出は、レセプターまたはその改変体への結合活性を有するリガンド改変体の同定を可能にする。最適な結合活性を有する個々のリガンドを、前もって決定した標準値と比較して決定し得る。リガンド改変体集団は、例えば、合成的方法でインビトロで発現され得るか、またはそのリガンド改変体は、細胞集団中で発現され得る。このリガンド改変体は、本明細書に開示される方法を使用して、組換え発現され得る。
【0115】
本発明は、レセプターに対して最適な結合をするリガンド改変体を同定する方法を提供する。本方法は、(a)集合的レセプター改変体集団またはその部分集団をリガンド集団と接触させる工程;(b)リガンド集団中の一つ以上のリガンドが集合的レセプター改変体集団またはその部分集団へ結合することを検出する工程;(c)リガンド集団を部分集団へ分割する工程;および(d)(a)から(c)の各々の工程を必要に応じて反復する工程からなる。ここで、工程(c)におけるリガンドの部分集合は二つ以上のリガンドを含み、工程(a)におけるリガンド集団として使用され、工程(b)における検出は、集合的レセプター改変体集団への結合活性を有する一つ以上のリガンドを同定する。
【0116】
最適な結合をするリガンド改変体を同定する方法は、さらなる工程(e)工程(d)で同定されたリガンドの改変体のライブラリーを作製する工程;(f)親レセプターを各々のリガンド改変体と接触させる工程;および(g)一つ以上のリガンド改変体の親レセプターへの結合を検出する工程を含み得る。
【0117】
集合的レセプター改変体集団への結合活性を有する一つ以上のリガンドの同定に続いて、この同定されたリガンドを、親リガンドとして使用し、親リガンドに対して構造的類似性を有するリガンド改変体のライブラリーの作製し得る。例えば、リガンド改変体のライブラリーは、親レセプターへの結合活性についてスクリーニングされたリガンド改変体の集団であり得る。一旦、結合活性を有するリガンド改変体が同定されると、リガンド改変体の結合活性は、さらに、お互いに比較し得るか、または前もって決定した標準値と比較し得る。そのような比較によって、親レセプターへの最適な結合活性を有するリガンド改変体の同定が可能になる。
【0118】
リガンド−レセプター相互作用に対する参照となる多重結合点(multiple binding point)に関して以前に記載されたように、特定の化学的機能性基を、これらが親リガンドと同一になるように固定し得る。固定された一つの化学的基を有するリガンド改変体は他の化学的基において親リガンドと異なる。最適な結合を有するリガンドの同定に続いて、リガンド改変体のライブラリーを作製し得、親レセプターに対して最適な結合を有するリガンド改変体を決定する。親リガンドに対して最適な結合を有するリガンド改変体を、第二の親リガンドとして使用し得、リガンド改変体の第二のライブラリーを作製する。そのようなリガンド親改変体は、第二のリガンドと同一に固定された二つの化学的基を有し得る。親レセプターに対して最適な結合を有する個々のリガンドまたはリガンド改変体の同定およびこの同定されたリガンド改変体に基づいた新規のライブラリーの作製の繰り返し工程を、親リガンドに対して最適な結合を有するリガンド改変体を決定するために繰り返し得る。このリガンド改変体は、構造的基準または機能的基準に基づいて同定され得、当業者に公知の種々の方法によって合成され得る。例えば、リガンドがポリペプチドである場合、改変体は、当業者に公知の表面提示法および例えば本明細書中に記載されるコドンに基づく合成工程を使用することによって、作製され、スクリーニングされ得る。
【0119】
本発明は、レセプターへの最適な結合をするリガンド改変体を同定する方法もまた提供する。本方法は、(a)集合的レセプター改変体集団の二つ以上の部分集団をリガンド集団由来の個々のリガンドと接触する工程;(b)一つ以上の個々のリガンドが集合的レセプター改変体集団の一つ以上の部分集団へ結合することを検出する工程;(c)個々のリガンドに対して結合活性を示す集合的レセプター集団の部分集団の少なくとも一つを二つ以上の新規の部分集団へ分割する工程;および(d)(a)から(c)の工程の各々を必要に応じて繰り返す工程からなり、工程(c)における二つ以上の新規部分集団が二つ以上のレセプター改変体を含み、そしてこの新規部分集団が、工程(a)において、集合的レセプター改変体集団の二つ以上の部分集団として使用され、ここで、工程(b)における検出によって、集合的レセプター改変体集団の部分集団における一つ以上の新規部分集団への結合活性を有する一つ以上の個々のリガンドが同定される。
【0120】
最適な結合をするリガンド改変体を同定する方法は、さらなる工程(e)親レセプターまたは密接に関連したその改変体を含む、密接に関連するレセプター改変体部分集団を工程(d)で同定された一つ以上の個々のリガンドと接触する工程;(f)一つ以上の個々のリガンドが、密接に関連するレセプター改変体部分集団と結合することを検出する工程;および(g)密接に関連するレセプター改変体部分集団に対して結合活性を有する一つ以上のリガンドの結合活性を比較する工程、を含み得、ここで前記比較により、密接に関連するレセプター改変体部分集団への最適な結合活性を有するリガンドが同定される。
【0121】
レセプターへ最適な結合をするリガンド改変体を同定する方法は、さらなる工程(h)工程(g)で同定された前記リガンドの改変体のライブラリーを作製する工程;(i)前記親レセプターを前記リガンド改変体の各々と接触する工程;および(j)一つ以上のリガンド改変体が前記親レセプターへ結合することを検出する工程、もまた含み得る。
【0122】
集合的なレセプター改変体集団に対する結合活性を有する1つ以上のリガンドを同定した後に、同定された1以上のリガンドは、少なくとも1つの親のレセプターまたはそれらと近い関係にある改変体を含む、近い関係にあるレセプター改変体部分集団スクリーニングするために、さらに用いられ得る。この部分集団は、それらがその親レセプターと近い関係にある限り、任意の数のレセプター改変体を有し得る。当業者は、最適な結合リガンドを決定するに十分な、親のレセプターに対するそのレセプター改変体の関係の近さを知る。近い関係にあるレセプター改変体部分集団中の最大数のレセプター改変体に結合するリガンドは、親のレセプターに結合する可能性が最も高く、そして最適な結合リガンドである見込みが最も高い。そのような最適な結合リガンドは、薬物開発のためのリード化合物として用いられ得る。対照的に、関連性の低いレセプター改変体を含むレセプター改変体部分集団は、最大数のレセプター改変体に結合するリガンドがまた、親のレセプターにも結合する可能性を減少させる。
【0123】
近い関係にあるレセプター改変体部分集団に対する最適な結合活性を有するリガンドは、さらに、親のリガンドとして用いられ得、親のリガンドに対する構造的類似性を有するリガンド改変体のライブラリーを産生し得る。当業者は、最適な結合活性が所望されるのが何かを知る。例えば、最適な結合活性を有するリガンドは、近い関係にあるレセプター改変体部分集団中で、最大数のレセプター改変体に結合するリガンドであり得る。最適な結合活性はまた、最小限度の数のレセプター改変体に結合するリガンドとしても規定され得る。リガンド改変体のライブラリーは、例えば、親のレセプターに対する結合活性についてスクリーニングされたリガンド改変体の集団であり得る。一旦、結合活性を有するリガンド改変体が同定されると、そのリガンド改変体の結合活性は、お互いに対してかまたは予め決定された標準に対して比較され得る。そのような比較は、親のレセプターに対する最適な結合活性を有するリガンド改変体の同定を可能とする。
【0124】
本発明の種々の実施形態の活性に実質的に影響しない改変もまた、本明細書中に提供される発明の規定内に提供されることが、理解される。従って、以下の実施例は、本発明を例示することが意図されるが、本発明を限定することは意図されない。
【0125】
(実施例I)
(レセプター改変体集団を発現するメラノホア細胞の調製)
本実施例は、メラノホア細胞中でのポリペプチドレセプター改変体集団の発現および、結合活性についてのリガンドのスクリーニングを示す。
【0126】
Xenopus laevis由来のカエルメラノホア細胞を、馴化されたカエル培地中で、27℃で増殖させた。馴化されたカエル培地を、20%の熱不活性化された胎児ウシ血清を含むLeibovitz L−15培地中(0.5倍濃度)で、4日間、カエル繊維芽細胞を増殖させることによって作製し、その培地の上清を繊維芽細胞から収集し、そしてその上清を、0.2μmフィルターを通してろ過した。カエルメラノホア細胞培養物を、PERCOLL密度勾配を介して一定時間遠心分離して、より濃く染色された細胞について濃縮した。簡単には、細胞を、トリプシン処理し、20%子ウシ血清と共にLeibovitz L−15培地(0.5倍濃度)を含むクエンチカエル培地に懸濁し、1500rpmで5分間遠心分離した。細胞を、20% PERCOLL、80%クエンチカエル培地に再懸濁した。細胞を、2容量の50% PERCOLL、50%クエンチカエル培地に重ね、そして600〜800rpmで10分間遠心分離した。その上清を吸引し、そして細胞をクエンチカエル培地中に再懸濁し、そしてその細胞を新しいチューブに移し、そして1500rpmで5分間遠心分離した。ペレットに含まれるメラノホア細胞を、より濃く染色された細胞について濃縮した。
【0127】
レセプター改変体集団を、目的のリガンド結合部位をコードするレセプターcDNAの領域を同定することによって、産生する。この目的のリガンド結合部位を、当業者に周知の方法を用いて(Sambrookら、1989、前出)親のベクターから摘出する。この摘出されたフラグメントを、このレセプターのリガンド結合ドメイン中に変異を導入するために用いる。変異体オリゴヌクレオチドを、産生して、リガンド結合ドメイン中に、特定の変異を導入する。変異誘発の後に、変異体リガンド結合ドメインに対応するDNAを、親のベクターに入れ戻して、レセプター改変体を産生する。
【0128】
各々のレセプター改変体に特異的なタグも、産生される。レセプター改変体およびペプチドタグの同時発現のために、レセプターおよびペプチドタグの両方を、親の発現ベクター上に存在させる。変異誘発のためのリガンド結合ドメインの摘出と平行して、ペプチドタグをコードするDNAも、摘出する。変異体オリゴヌクレオチドを合成して、レセプター中に変異を導入し、そして同時にタグ中に変異を導入する。親のベクター中に変異されたDNAを入れ戻すと、レセプター改変体は、細胞表面で発現される関連するタグと共に産生される。各々のタグを、別の抗体によって認識されるペプチドの特定の組み合わせから構成する。この抗体を、用いて、そのタグに関連するレセプター改変体を同定する。
【0129】
メラノホア細胞を、エレクトロポレーションを使用してトランスフェクトする(Potenzaら、Anal.Biochem.206:315〜322(1992))。さらに、当業者に周知の他の方法が、メラノホアをトランスフェクトするために用いられ得る(Sambrookら、1989、前出)。トランスフェクトされたタンパク質の発現を、トランスフェクションの後、2〜3日評価する。トランスフェクトされたタンパク質を発現する安定な細胞株は、適切な選択条件下でか、または適切な薬物を用いて細胞を処理することによって、得られる。クローンのバリエーションを最小化するために、G418を用いて、ネオマイシン耐性の選択のために染色体に組み込まれたneo遺伝子を含むメラノホア細胞株を、産生する。loxP部位は、neo遺伝子の5’末端に配置されるが、この遺伝子はプロモーターを有さない。親の発現ベクターは、レセプターDNAまたはレセプター改変体DNAと、それ自身のプロモーターおよびそのレセプターDNAの3’の下流のプロモーターを有する。LoxP部位は、そのレセプターDNAの5’末端かつ下流のプロモーターの3’末端に配置される。レセプターDNAまたはレセプター改変体DNAは、細胞中にトランスフェクトされ、そして部位特異的組換えが、loxP部位で生じる。部位特異的組換えが、loxP部位で生じる場合、下流のプロモーターは、neo遺伝子の5’末端に配置され、従って、選択マーカーを提供し、そして部位特異的組換えおよび細胞への、レセプターDNAまたはレセプター改変体DNAの導入が生じたことを示す。このloxP系の利点は、レセプターまたはレセプター改変体が、メラノホア細胞ゲノム中の同じ位置へと導入され、従って、ゲノム中の異なる導入部位に起因するクローンのバリエーションを最小化することである。
【0130】
集合的なレセプター改変体集団を発現するメラノホア細胞を、1つ以上のマイクロタイターウェルに配置する。細胞を、個々のリガンドまたはまとまったリガンド部分集団のいずれかとしての1つ以上のリガンドで処理する。リガンド結合を、レセプター改変体によるシグナル伝達にあたえるリガンドの効果を試験することによって決定した。620nmでのフォトトランスミッション(phototransmission)を、測定して、集合的なレセプター集団に対するリガンド結合について陽性のそれらのウェルを決定する。
【0131】
陽性リガンド結合の決定の後に、レセプター改変体集団を、部分集団に分配した。この部分集団を、陽性リガンド結合について試験する。さらに、個々のレセプター改変体は、その特定の同時発現タグを用いて同定され得る。リガンド結合について陽性な細胞を、メラノホアの明暗の特性を用いる細胞分類によって、非結合レセプター改変体から分離する。この分離された陽性細胞を、Becton Dickinson FACSortシステムを用いた、蛍光活性化された細胞の分類によって細胞を分類するために、各々のレセプター改変体タグ中のペプチドを同定するために用いる各々の抗体に連続的に曝す。細胞を、最初に、1つ以上の特定の抗体と反応する細胞へと細分化し、その後、個々のレセプター改変体各々を同定する、特定の抗体の組み合わせを決定する。所定のリガンドに結合する個々のレセプター改変体の数を、決定する。リガンド結合レセプター改変体に関連する特定の変異も、親のレセプターにおける特定の残基の変異を有する特定のタグを関連させることによって決定する。
【0132】
これらの結果は、同定可能なタグと関連するレセプター改変体集団の産生および最適な結合活性を有するリガンドの同定を実証する。
【0133】
(実施例II)
(レセプターに、リガンドの集中されたライブラリーおよび多様なライブラリーを結合する可能性)
本実施例は、レセプターに、リガンドの集中されたライブラリーおよび多様なライブラリーを結合する可能性を実証する。
【0134】
リガンドを、空間における1つの点として表現し、そしてレセプターを空間におけるディスクとして表現する。リガンドがレセプターに対応するディスクの内部にある場合、そのリガンドは、レセプターに結合している(図1における「ヒット」に対応する)。
【0135】
リガンド改変体集団は、空間中の点として表され、空間中の点として表される親リガンド周囲に、ガウス分布のような分布をリガンド改変体が形成するように、リガンド改変体を均一におよびランダムに選択することにより、作製される。このことは、親リガンド上の化学的官能基を改変することにより達成される。リガンド改変体が親リガンドに対して近くなるほど、改変体は、親リガンドに対して化学的に類似している。このことは、親リガンドを表す点の周囲のガウス分布の中心に対する、リガンド改変体を表す点の関連性の近さとして表される。親リガンド周囲のリガンド改変体のガウス分布を決定するために選択されるパラメータは、レセプターに結合するリガンド改変体の所定の確率を提供する。
【0136】
同様に、レセプター改変体集団は、空間中の円として表され、親レセプター周囲のガウス分布のような分布をレセプター改変体が形成するように、親レセプターを表す空間中の円の中心の周囲より均一におよびランダムにレセプター改変体を選択することにより、作製される。このことは、親レセプター上の化学的官能基を改変することにより達成される。レセプター改変体が親レセプターに対して近くなるほど、改変体は、親レセプターに対して化学的に類似している。このことは、親レセプターを表す円中心の周囲のガウス分布の中心に対する、レセプター改変体を表す点の関連性の近さとして表される。親レセプター周囲のレセプター改変体のガウス分布を決定するために選択されるパラメータは、レセプター改変体に結合するリガンドもまた親レセプターに結合するという所定の確率を提供する。
【0137】
リガンドおよびレセプターの分布は、一般的に、レセプターの分布がリガンドの分布より小さいように選択される。この場合において、レセプター周囲の分散は相対的に小さく、このことは、親レセプターに密接に関連するレセプター改変体を反映する。リガンドの分布よりも小さいレセプター分布を選択することは、レセプター改変体に結合するリガンドもまた親リガンドに結合することの確率を増加させる。
【0138】
リガンドの多様なライブラリーにおいて、リガンドは広い領域に渡って分布する(図1、下のパネル参照のこと)。その領域中で円として表されるレセプターに結合する所定のリガンドの確率は、リガンド間により大きな隔たりがあるため、減少する。リガンド間の大きな隔たりはリガンドの化学的官能基の多様性を表す。しかし、リガンドはより広い領域にわたって分散するので、より多くのレセプターに結合する確率はより大きくなる。
【0139】
多様なライブラリーと対照的に、集中リガンドライブラリーは、リガンドがより密接に関連しているという事実のため、より小さい領域に分布するリガンドを有する(図1、下部パネル参照のこと)。多様なレセプターに結合する集中したリガンドの確率は、そのリガンドがより小さな領域にあるので低くなっているけれども、より多くの集中したリガンドが所定のレセプターに結合する確率は、そのレセプターが集中したリガンドと同じ空間を占める場合、高くなる。例えば、レセプターを表す円が図1において示される集中したリガンドにより覆われる領域にわたって集中する場合に、多くのリガンドはレセプターに結合する。しかし、集中したリガンドにわたって集中した同じレセプターは、存在するにせよ、多様なリガンドのうち非常に少ない数にしか結合しない。従って、リガンドライブラリーの型は、スクリーニングの特定の目的により決定される。
【0140】
これらの結果は、リガンドの多様なライブラリーを使用することが、任意のレセプターに結合するリガンドを見出す確率を増加させることを実証する。対照的に、リガンドの集中ライブラリー(focused library)を使用することは、所定のレセプターに結合するリガンドを見出す確率を増大させる。従って、あるレセプターに結合するリガンド改変体を同定する見込みについて予測がなされ得る。
【0141】
(実施例III)
(レセプターに結合するリガンドを同定する確率は、分子相互作用に依存する)
本実施例は、あるレセプターに結合するリガンドを同定する確率が、分子相互作用に依存することを、実証する。
【0142】
レセプターに対するリガンドの結合は一般的に、複数の接触点から生じる一連のより微細な相互作用を介して、または化学的官能基の複数の相互作用を介して生じる。リガンド−レセプター結合相互作用における分子相互作用を説明するために、あるリガンドは空間中の3点として表され、そしてあるレセプターは空間中の3つの円として表される。リガンドを表す3点は、レセプターが結合する接触点として作用するリガンド上の化学基を介して生じる3つの分子相互作用に対応する。同様に、レセプターを表す3つの円は、リガンドが結合する接触点として作用するレセプター上の化学基を介して生じる3つの分子相互作用に対応する。リガンドの3点がレセプターに対応する3つの円の内側に在る場合、リガンドはレセプターに結合する。
【0143】
実施例IIにおいて示されるように、パラメータは親リガンドを表す3点の周囲のリガンド改変体のガウス分布を決定するよう選択される。同様に、パラメータは親レセプターを表す3つの円の周囲のレセプター改変体のガウス分布を決定するよう選択される。この場合において、親リガンドの各々の点、または親レセプターの各々の円の周囲の分布は独立して変化され得る。例えば、他の2点を変化させながら、1点は親分子に同一であるよう保持され得る。変化された点の周囲の分布もまた、互いに異なり得る。
【0144】
複数の分子相互作用としてのリガンド−レセプター結合相互作用を説明することにより、最適な結合リガンドがより迅速に同定され得る。例えば、親レセプターを表す円の1つを親レセプターと同一であるよう固定しながら、他の2つの円をレセプター改変体を表すよう変化させる場合、このレセプター改変体に結合する任意のリガンドは、親レセプターに結合する確率が高い(図2、上記パネル参照のこと)。親レセプターに対する結合の増加した確率は、分子相互作用部位の1つがその親と一致するという事実により決定される。レセプター親の3つの円全てが変化した場合、レセプター改変体はその親とあまり密接に関連せず、そしてその改変体に結合するリガンドはその親に結合する確率が低下する。親と一致する1つの分子相互作用部位を固定することは、親とより密接に関連するレセプター改変体を作製する。同様に、2つの分子相互作用部位を固定することは、親レセプターとさらにより密接に関連するレセプター改変体を作製する(図2、中央パネル参照のこと)。
【0145】
リガンド−レセプター相互作用についての複数点の分子相互作用の提示を使用することは、最適な結合リガンドを同定する確率を増加させる。例えば、集中したリガンドは反復するプロセスで決定され得る。スクリーニングの第一周目において、レセプター改変体の集団が、そのレセプターを表す3つの円のうちの1つを固定することにより作製される。そのようなスクリーニングにより同定される最適な結合リガンドは、集中リガンドライブラリー(focused ligand library)の製作に使用され得る。新規のレセプター改変体集団は、そのレセプターを表す円の2つを固定することにより製作される。この新規のレセプター改変体集団は、親レセプターにより密接に関連する。新規レセプター改変体集団を集中リガンドライブラリーを用いてスクリーニングすることは、親レセプターに対して最適な結合性を有するリガンド改変体を同定する確率を大いに増大させる(図2、下部パネル参照のこと)。
【0146】
これらの結果は、リガンド−レセプター結合相互作用における複数点の分子相互作用を考慮することが、最適な結合リガンドの迅速な決定を提供することを実証する。
【0147】
(実施例IV)
(リガンド−レセプター結合相互作用のベクトル提示を使用する、結合リガンド同定の確率)
本実施例は、リガンドおよびレセプターの結合相互作用が、ベクトルとして表される、複数点の空間的に関連する相互作用として説明され得ることを実証する。
【0148】
リガンドおよびレセプターの化学的官能基は、空間中の点および円としてよりもむしろベクトルとして表される。ベクトルの長さは、分子がより小さい場合はより短くなる。従って、有機化合物のようなより小さい分子は、ポリペプチドのようなより大きい分子よりも、より短いベクトルを有する。リガンドおよびレセプターの各々異なる化学基は、別個のベクトルにより表される。従って、各々のリガンドまたは各々のリガンド改変体は、ベクトルの固有の群により表され、そして各々のレセプターまたは各々のレセプター改変体はベクトルの固有の群により表される。
【0149】
所定のレセプター改変体またはリガンド改変体の結合部位は、3つのポイントで表わされる。第1のポイントは、ベクトルストリング(string)の起点(origin)である。第2のポイントは、起点での開始、およびストリングの前半の位置に一致するベクトルの和(summing)により決定される。第3のポイントは、第2のポイントでの開始およびストリングの後半の位置に一致するベクトルの和により決定される。これら3つのポイントは、それぞれのリガンドまたはリガンド改変体、およびレセプターまたはレセプター改変体を表わす三角形を定義する。類似のベクトルストリングを有する改変体分子は、より密接に関連する。なぜなら、これらの改変体分子は多くの同じベクトルの総数であるからである。
【0150】
リガンドのレセプターへの結合は、リガンドを表わす三角形およびベクトルを表わす三角形の2つの三角形の位置が近接するように配置され得るかどうかで決定される。この三角形の接近は、リガンドおよびレセプターを表わす三角形の側面の長さが、せいぜい幾分かの閾値で異なるかどうかを決定することにより測定される。従って、レセプターの化学基に結合するリガンドの化学基の能力は、ベクトルの提示およびリガンドの化学基と結合部位を表わすレセプターの化学基との間の空間的な関係において説明される。
【0151】
ランダムノイズは、官能基の動き(例えば、分子中の化学基の相対的な位置における小さな変化)を表すために導入され得る。さらに、ランダムノイズは、リガンドとレセプターとの相互作用に影響を及ぼす未知のパラメータを表すために導入され得る。
【0152】
リガンドおよびレセプターを表すために、パラメータは、ベクトルストリングの長さ、ベクトルのサイズ、計上される異なる化学基の数、大きな変化の確率、ランダムノイズの大きさ、および三角形の側面の長さの接近についての閾値について決定される。
【0153】
結合パートナーを見出す確率は、ベクトルについて、選択された分散により決定される。ベクトルが小さな分散を有する(これは、親分子に密接に関係する改変体を表わす)ように選択される場合、結合パートナーを見出す高い確率が与えられる。結合パートナーを見出すより低い確率は、ベクトルが大きな分散を有する(これは、親分子とより離れた関係である改変体を表わす)ように選択される場合に提供される。例えば、結合分子の1つが小さな分子である場合、ベクトルの長さは小さくなる。結合パートナーが大きな分子である場合、ベクトルの長さは大きくなる。従って、大きな結合パートナーと小さな結合パートナーとの間で同様のサイズの側面の長さを有する三角形を形成するためには、大きな分子への小さな分子の結合の確率を増加させるために、大きな分散が小さな分子内に導入される。1つの例において、リガンドが小さな分子であって且つレセプターが大きな分子であるときに、レセプター改変体が密接に関連し(小さな分散を有するベクトルによって表わされる)、且つリガンドがさほど密接に関連しない場合(大きな分散を有するベクトルによって表わされる)、結合リガンドを見出す最大の確率が生まれる。小さな分子が少数の小さなベクトルによって表わされるので、このような最大の確率が生ずる。この少数の小さなベクトルを合計して大きな分子に類似したサイズの三角形の側面の長さを得るために、小さな分子を表わすベクトル中に大きな分散が導入される。
【0154】
これらの結果は、リガンドおよびレセプターが、レセプターに結合するリガンドを同定する確率を決定するためにベクトルとして表わされ得ることを示す。
【0155】
(実施例V)
(抗イディオタイプ抗体リガンドの至適化)
この実施例は、レセプター改変体を用いたリガンドのスクリーニングが、至適な結合リガンドを同定する確率を増大させることを示す。
【0156】
親レセプターは、Le−関連細胞表面抗原に対するマウスのモノクローナル抗体、抗体BR96であった。米国特許第5,264,563号およびGlaserら前出に記載されているように、ランダムコドン合成を用いて6個のレセプター改変体を生成した。手短に言えば、2つのDNA合成装置カラムを用いて合成を行った。実際には全オリゴヌクレオチドを相補的配列として合成したが、簡単にするために、このDNA配列をコード鎖と呼ぶ。カラム1上において、以下に指定されたCDR位置で見出された所定の親コドンをコードするトリヌクレオチドを合成した。カラム2上において、ヌクレオチドXXG/Tを用いて、全20アミノ酸をコードするランダムコドンを合成した。ここでXは、dA、dG、dCおよびTシアノエチルホスホルアミダイトの混合物を示す。このXXG/Tコドンの使用は、supE E.coli細菌株中で抑制され得るUAGのみを含む終止コドンの数を減少させる。各コドンの合成後、2つのカラムのビーズを一緒に混合し、半分に分け、次いで2つの新しいカラム中に詰め直した。その後、これらのカラムをDNA合成機に戻し、そして次のCDR位置のためにこの工程を繰り返した。最終合成工程後、これら2つのカラムの内容物をプールし、そして生じたオリゴヌクレオチドを精製した。コドンに基づく合成のこの特殊な適用は、任意の位置で親配列に対し50%の偏りを維持する一方で、所定の領域内でランダム化されたアミノ酸をコードするオリゴヌクレオチドの混合物を生じる。2つのカラム中のビーズの比率を変えることにより、親配列に対する置換のレベルをさらに制御し得る。さらに、任意の所定の位置が特定のコドンを保持し得、そして、XXG/T以外のコドンの混合物を使用し、必要に応じてアミノ酸残基のいくつかのサブセットのみを挿入し得る。
【0157】
ランダム化されたコドンを含むオリゴヌクレオチドを使用して、変異誘発によりレセプター改変体を生成した(Kunkel、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:488−492(1985)およびKunkelら、Methods Enzymol.154:367−382(1987))。手短に言うと、M13IXL604またはM13IXL605ファージをdutungEscherichia coli株CJ236(BioRad,Richmond,CA)中で増殖させ、そして清澄化した培養上清の0.25容量の3.5Mの酢酸アンモニウム、20%ポリエチレングリコール/mlを加えてファージを沈殿させた。フェノール抽出後エタノール沈殿によってウラシルで置換された一本鎖DNAを単離した。6〜8pmolのリン酸化オリゴヌクレオチドを用いて、13μlの反応容量中の250ngのキメラL6テンプレートを変異誘発した(Huseら、J.Immunol.149:3914−3920(1992))。この反応生成物を水で二倍希釈して、1μlをE.coli株XL−1中に電気穿孔し(Stratagene、San Diego、CA)、そしてXL−1の菌叢上の力価を測定した。
【0158】
アジュバンドとして水酸化アルミニウムを用いた、50μgの精製された抗体BR96で、6週齢または7週齢のBALB/cマウスの腹腔内に(20日毎に1回で、4回)免疫することによって、3つの抗イディオタイプ抗体リガンドを生成した。このマウスの血清の反応性をELISA(Fieldsら、Nature 374:739−742(1995))で試験した。可溶性ポリクローナルウサギIgGによる最後の追加免疫後、最も強い応答を有したマウスを殺し、そしてその脾臓を用いて、GalfreおよびMilstein、Methods Enzymol.73:3−46(1981)に記載されているようにハイブリドーマを得た。
【0159】
抗イディオタイプ抗体リガンドに結合するレセプター改変体をスクリーニングした。親レセプターおよび6個のレセプター改変体に対して、抗イディオタイプ抗体リガンドをスクリーニングし、ELISAアッセイを用いて結合活性を決定した(図3参照のこと)。レセプター12および親レセプターに結合するものとして抗イディオタイプ抗体No.1を分類した。レセプター7、レセプター10および親レセプターに結合するものとして抗イディオタイプ抗体No.7を分類した。親レセプターを含め、レセプター全てに結合するものとして抗イディオタイプ抗体No.3を分類した。
【0160】
親レセプター(野生型を示す)の軽鎖CDR領域1および領域2、ならびに6個のレセプター改変体(M131B3−5〜M131B3−12を示す)のヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、表1に示される。親レセプターおよび6個のレセプター改変体のCDR L1領域についてのヌクレオチドおよびアミノ酸配列(それぞれ配列番号1、3、5、7、9、11、13および2、4、6、8、10、12、14)は、表1の上半分に示される。親レセプターおよび6個のレセプター改変体のCDR L2領域についてのヌクレオチドおよびアミノ酸配列(それぞれ配列番号15、17、19,21、23、25、27および16、18、20、22、24、26、28)は、表1の下半分に示される。表1において、野生型のレセプターに類似した抗イディオタイプ抗体No.3への結合および抗イディオタイプ抗体No.1への無視できる程度の結合に基づいて、M13IXL604クローンにおけるLlおよびL2 CDR変異を選択した。変異誘発手順から生じる変化は、肉太活字体により示される。
【0161】
レセプター配列中で保存されているいくつかの位置を見出した。一方では、他の位置がCDR領域1と領域2との両方において親レセプターと異なることを見出した。置換は、CDR L1中の5つの標的部位全て、およびCDR L2中の3つの部位に存在した。CDR L1およびCDR L2における置換の総数は、それぞれの変異体において2〜4の範囲におよんだ。
【0162】
(表1.BR96抗体のレセプター改変体のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列)
【0163】
【表1】
Figure 2004514444
Figure 2004514444
スクリーニングの結果を、図6に要約する。ここで、レセプターを円として表わし、リガンドを記号として表わす。これらの結果は、レセプター改変体の集団に対するスクリーニングリガンドが、最適な結合活性を有するリガンドを迅速に同定することを示している。例えば、この実施例の集合的レセプター改変体集団がメラニン保有細胞系でスクリーニングされる場合、リガンド番号3は、最も高いシグナルを発生する。なぜなら、このリガンドが、このレセプター改変体集団の7つ全てのレセプターに結合するからである。リガンド番号7は、弱いシグナルを与える。なぜなら、このリガンドが、このレセプター改変体集団の3つのレセプターに結合するからである。リガンド番号1は、さらに弱いシグナルを与える。なぜなら、このリガンドが、このレセプター改変体集団の2つのレセプターに結合するからである。従って、集合的レセプター改変体集団でのスクリーニングは、親レセプター単独でのスクリーニングよりも、リガンドの結合特性についてのより多くの情報を提供する。さらに、親レセプターに弱く結合するリガンドは、親単独に対してスクリーニングする場合にバックグラウンドを超えて検出可能ではなく、レセプター改変体集団内の1より多いレセプターがリガンドに結合する場合に検出可能であり得る。
【0164】
これらの結果は、レセプター改変体集団のスクリーニングが、レセプターへのリガンドの最適な結合を迅速に同定することを示している。
【0165】
(実施例VI)
(二重lox標的ベクターの改変)
この実施例により、二重lox標的ベクターの改変を説明する。
【0166】
二重lox標的ベクターpBS397−p53catは、指向した展開技術を広範なタンパク質に適用するのに一般的なビヒクルとして使用することができなかった。なぜなら、合成ポリリンカー領域が、目的の標的タンパク質の急速なクローニングを妨害する、制限された数の特有な制限部位を含んだからである。さらに、このベクターは、糸状ファージ複製起点を含まず、結果として、このベクターを使用してオリゴヌクレオチド特異的変異誘発のための一本鎖DNAテンプレートを作製することができなかった。従って、BRPおよび他の標的タンパク質の改変体のライブラリーの後の合成を容易にするために、fl複製起点を、二重lox標的ベクター中にクローニングした。
【0167】
fl起点をコードするDNAを、pcDNA3.1/Zeo(Invitrogen;Carlsbad,CA)をSphI制限エンドヌクレアーゼで処理して、fl起点を含む575塩基対のフラグメント作製することによって獲得し、pBS397二重lox標的ベクターを、SfI1制限エンドヌクレアーゼで処理した。fl起点含有フラグメントと直線型pBS397との両方を、T4ポリメラーゼで処理して平滑末端を作製し、そしてこのフラグメントを、ベクターと結合させた。適切な配向について選択するために、この結合したベクターを、2つの制限エンドヌクレアーゼ(fl起点内に特有の部位を有するエンドヌクレアーゼ(XhoI)およびベクター内に特有の部位を有する別のエンドヌクレアーゼ(DraIII))で処理した。
【0168】
(+)方向にfl起点を含む改変したpBS397ベクター(pBS397−fl(+)と称される)を、作製したフラグメントの部位に基づいて選択し、続いて、XhoIおよびDraIIIで処理し、その後、DNA配列決定によって、より完全に特徴付けた。改変した二重lox標的ベクターが糸状ファージfl複製起点を含むので、目的のBRPまたは他の任意の標的タンパク質の一本鎖ウラシル含有DNAテンプレートは、日常的に獲得することができ、かつこのテンプレートを使用して、オリゴヌクレオチド特異的変異誘発に基づいて、タンパク質改変体のライブラリーを合成することができる。
【0169】
糸状ファージfl複製起点を、二重lox標的ベクター内にクローニングした。このことにより、オリゴヌクレオチド特異的変異誘発によるタンパク質ライブラリーの効率的かつ正確な合成が可能になった。
【0170】
(実施例VII)
(BRPのクローニングおよびNIH3T3細胞におけるBRPの発現)
この実施例により、標的ベクターpBS397−fl(+)中へのBRPのクローニング、および哺乳動物NIH3T3標的細胞株13−1におけるBRPの発現を説明する。
【0171】
BRPを標的ベクター内にクローニングするために、CMV(真核生物)プロモーターおよびEM7(細菌)プロモーター、BRP遺伝子産物、ならびにSV40ポリアデニル化配列を含むDNAフラグメントを、制限エンドヌクレアーゼEcoRVおよびHindIIIで処理することによって、pCMV/Zeoベクター(Invitrogen;Carlsbad,CA)から除去した。同様に、改変した二重lox標的ベクターpBS397−fl(+)もまた、エンドヌクレアーゼEcoRVおよびHindIIIで処理した。続いて、BRP遺伝子産物を含むインサートを直線型ベクターと結合させて、CMVプロモーターおよびEM7プロモーター、BRP遺伝子産物、SV40ポリアデニル化配列、ならびに二重lox部位に全て隣接したneo遺伝子の3’末端部分、を含む新規なベクター(pBS397−fl(+)/BRP)を得た。
【0172】
哺乳動物細胞中でBRPを発現させるために、宿主哺乳動物細胞株13−1(これは、マウスNIH3T3細胞由来であり、頭から尾方向に向いた異種特異的loxP部位に隣接したlacZレセプター遺伝子の単一コピーを含む)を使用した(図5C)(BethkeおよびSauer,Nuc.Acids Res.,25:2828〜2834(1997))。
【0173】
この宿主細胞株はまた、neo遺伝子発現のためのATG開始コドンおよびプロモーター、ならびに機能的lacZ遺伝子を含み、結果として、G418−感応性/青色表現型を生じる。二重lox標的ベクターは、異種特異的loxP部位に隣接した無効neo遺伝子およびBRPを含み(図5C)、非正統的発現事象を減少する異種特異的lox部位の上流の発現停止シグナルを伴う(Sauer,Methods Enzymol.225:890〜900(1993))。二重lox標的ベクターによる部位特異的組換えにより、lacZ遺伝子の切除およびneo遺伝子の発現が起こり、G418−耐性/白色表現型が生じる。
【0174】
抗菌性Zeocinに対する宿主NIH3T3標的細胞株13−1の感受性を決定した。Zeocin(抗生物質のブレオマイシン/フレオマイシンファミリーのグリコペプチドメンバー)を、Streptomyces verticillusにおいて見出し、そしてこれは、細菌細胞株、真菌細胞株、植物細胞株および哺乳動物細胞株に対して強い毒性を示す(Drocourtら、Nucleic Acids Res.,18:4009(1990);Calmelsら、Curr.Genet.20:309〜314(1991);Perezら、Plant Mol.Biol.,13:365〜373(1989);Mulsantら、Somat.Cell Mol.Genet.,14:243〜252(1988))。Zeocinの毒性は、DNAに介在しかつDNAを切断するその性能から生じる。しかしながら、Sh Ble遺伝子産物(BRP)による化学量論的結合および失活に起因するZeocin耐性が観察され、そして結果として、原核生物と真核生物との両方においてZeocinに対する耐性を与えるための選択マーカーとして、BRPを使用した。
【0175】
哺乳動物細胞は、ゼオシンに対する広範な感受性を示し、この感受性は、細胞株および他の要因(例えば、イオン強度、細胞密度および増殖速度)によって影響される。その結果、BRP改変体のライブラリーを発現させてスクリーニングする前に、NIH3T3由来13−1宿主細胞株のゼオシン感受性を決定した。ゼオシン感受性を決定するために、13−1細胞を、約25%のコンフルエンシーにてプレーティングした。24時間後、この培地を、0μg/ml、50μg/ml、100μg/ml、200μg/ml、400μg/ml、800μg/mlまたは1000μg/mlのゼオシンを含む新鮮培地に交換した。選択培地を、4日毎に交換し、そして生存細胞の百分率を14日間にわたって調べた。製造業者(Invitrogen)によって報告されるように、ゼオシンに対する細胞の応答は、感受性細胞を集まらせてプレートから脱着させるネオマイシンのような他の選択薬剤とは異なった。ゼオシン処理に感受性の細胞は、異常な形状および大きさの大きな増大を示した。大きな空の細胞質小胞が、高倍率で観察された。100μg/ml以上のゼオシンでの宿主13−1細胞単層の処理は、この細胞を殺傷した。このことは、この宿主細胞株が100μg/mlゼオシンでの処理に対して感受性であるが、毒性は、400μg/ml以上のゼオシン濃度でより迅速に明らかであることを示した。本質的に全ての細胞を、400μg/ml以上のゼオシンで7〜10日間で殺傷した。13−1宿主細胞株のゼオシン感受性は、大部分の哺乳動物細胞株は、選択培地における50μg/ml〜1000μg/mlの範囲にわたる濃度のゼオシンに感受性であるという以前の観察と一致する。
【0176】
BRPでトランスフェクトした宿主細胞株13−1のゼオシン感受性を決定するために、宿主細胞株13−1を、以前(BethkeおよびSauer,Nuc.Acids Res.,25:2828−2834(1997))に記載された条件を用いて、pBS397−fl(+)/BRP二重lox標的化ベクターおよびpBS185 Creリコンビナーゼベクターで同時形質転換した。手短に述べると、5×10個の宿主13−1細胞を、リン酸カルシウム(ChenおよびOkayama,Mol.Cell.Biol.,7:2745−2752(1987))を用いて4μgのpBSl85および30μgのpBS397−fl(+)/BRPで100mmディッシュ中で一晩トランスフェクトした。Cre媒介標的化挿入から生じた形質転換体を、400μg/mlジェネティシンを含む培地に再度プレーティングすることによって、48時間後に選択した。10日後、コロニーを単離し、そして24ウェル培養プレートに移した。以前に記載されたように、二重loxベクターを用いた標的化挿入は、lacZの切り出しならびにneo遺伝子産物およびSh ble遺伝子産物の発現をもたらした。BRPを発現する安定なクローンを、PCRによってさらに確認した。
【0177】
上記のゼオシン選択プロトコルを用いて、BRPで形質転換した13−1宿主細胞の耐性を決定した。50μg/ml〜1000μg/mlの範囲にわたるゼオシン濃度は、形質転換された細胞の殺傷も、形質転換された細胞の増殖の阻害もしなかった。BRP遺伝子を発現しない、未改変の二重lox標的化ベクターでトランスフェクトしたコントロール細胞は、形質転換していない宿主細胞と同様のゼオシン感受性を示した。特に、このコントロール細胞は、100μg/ml以上のゼオシンでの処理に感受性であった。ゼオシンのBRP不活化の機構は、結合を介した隔離であり、従って、化学量論的である。それゆえ、この細胞のBRP形質転換によって誘導されたゼオシン耐性が克服され得るか否かを決定するために、この細胞を、より高濃度のゼオシン(2500μg/mlおよび5000μg/ml)で処理した。BRPで形質転換した細胞は、2500μg/mlゼオシンには耐性であったが、5000μg/mlゼオシンでの処理によって殺傷され、このことは、BRP結合部位が飽和されることと一致した。
【0178】
標的化された組込みを用いてBRPで安定してトランスフェクトされた宿主細胞株の複数の異なるクローンの、ゼオシン感受性を特徴付けた。重要なことには、これらのクローンの全てが、その細胞が2500μg/mlゼオシンでの処理には耐性であるが、5000μg/mlゼオシンでの処理によって殺傷されるという、同様のゼオシン感受性プロファイルを示した。ゼオシン耐性は、BRPによるゼオシンの化学量論的結合に依存するので、これらのデータは、異なるクローンが同様のレベルのBRPタンパク質を発現することを示す。続いて、ウェスタンブロット分析によって、BRPタンパク質の発現レベルが、異なるクローンにおいて同様であることが実証された。観察された、比較的均一なタンパク質発現レベルは、この組換え系の有利な使用を支持し、あらゆるBRP形質転換体がこの遺伝子を同じゲノム位置で発現することとなる。
【0179】
これらの結果は、BRPでの宿主標的細胞株の形質転換によって、形質転換体のゼオシン感受性がもたらされたことを示す。複数の異なるクローンが、類似の量のBRPを発現することが、見出された。
【0180】
(実施例VIII:部位特異的組込みに関するトランスフェクションパラメーターの最適化)
本実施例は、BRP改変体のライブラリーを発現するために、13−1細胞におけるBRPのCre媒介部位特異的組込みに関するトランスフェクションパラメーターを最適化することを記載する。
【0181】
13−1細胞のリン酸カルシウムトランスフェクションは、プレーティングした生存細胞のうちの1%において標的化組込みをもたらすことが以前に実証された(BethkeおよびSauer,Nuc.Acids Res.,25:2828−2834(1997))。それゆえ、最初の研究を、リン酸カルシウムを用いて、4μgのpBS185および10μg、20μg、30μgまたは40μgのpBS397−fl(+)/BRPで13−1細胞をトランスフェクトして行った。1回のトランスフェクションあたりのDNAの総レベルを、無関係なpBluescript II KS DNA(Stratagene;La Jolla,CA)を用いて一定に保持し、そして形質転換体を、400μg/mlジェネティシンを含む培地中に再度プレーティングすることによって48時間後に選択した。コロニーを、10日後に計数して、標的化組込みの効率を決定した。最適な標的化組込みは代表的に、30μgの標的化ベクターおよび4μgのCreリコンビナーゼベクターpBS185を用いて観察され、これは、以前(BethkeおよびSauer,Nuc.Acids Res.,25:2828−2834(1997))に報告された20μgの標的化ベクターおよび5μgのpBS185と一致していた。観察された標的化組込みの頻度はほぼ1%未満であった。観察された変動は、リン酸カルシウム方法論の選好性という性質に一部起因した。例えば、この方法論は、用いたDNAの量および緩衝液のpHに特に敏感であり、そしてこれらの両方のパラメーターは、狭い最適範囲を示したが、観察された標的化組込みの効率は、このタンパク質ライブラリーを発現するに充分であった。
【0182】
他のトランスフェクション方法もまた特徴付けた。一般に、脂質媒介トランスフェクション方法は、化学的環境を変更する方法(例えば、リン酸カルシウムトランスフェクションおよびDEAE−デキストラントランスフェクション)よりも効率が高い。さらに、脂質媒介トランスフェクションは、DNA調製物中の夾雑物、塩濃度およびpHによってそれほど影響されず、従って一般的に、より再現性の高い結果を提供する(Felgnerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84:7413−7417(1987))。従って、中性脂質であるジオレオイルホスファチジルエタノールアミンおよびGenePORTERトランスフェクション試薬(Gene Therapy Systems;San Diego,CA)と称されるカチオン性脂質の処方物を、代替的トランスフェクションアプローチとして評価した。手短に述べると、エンドトキシンを含まないDNAを、EndoFree Plasmid Maxiキット(QIAGEN;Valencia,CA)を用いて、標的化ベクターpBS397−fl(+)/BRPおよびCreリコンビナーゼベクターpBS185の両方について調製した。次に、5μgのpBS185および種々の量のpBS397−fl(+)/BRPを無血清培地中で希釈し、そしてGenePORTERトランスフェクション試薬と混合した。次いで、DNA/脂質混合物を、約5×10個の細胞/100mmディッシュからなる、13−1細胞の60%〜70%コンフルエントな単層に添加し、そして37℃でインキュベートした。5時間後、ウシ胎仔血清を10%になるように添加し、そして翌日、トランスフェクション培地を除去し、そして新鮮培地に交換した。
【0183】
種々の量の標的化ベクターでの細胞のトランスフェクションによって、0.1%〜1.0%の範囲にわたる標的化組込みの効率が得られ、最適な標的化組込みの効率は、各々5μgの標的化ベクターおよびCreリコンビナーゼベクターを用いて観察された。最適化された条件下での、13−1宿主細胞の、脂質ベースのトランスフェクションは、0.5%の標的化組込みの効率をもたらし、これは、一貫して観察された。0.5%の標的化組込みは、以前(BethkeおよびSauer,Nuc.Acids Res.,25:2828−2834(1997))に報告された1.0%の効率よりもわずかに少ないが、これは、大きなタンパク質ライブラリーを発現するに充分であり、そして哺乳動物細胞におけるタンパク質改変体のライブラリーの発現を可能にする。
【0184】
これらの結果は、NlH3T3 13−1細胞における標的化挿入のためのトランスフェクション条件の最適化を実証する。少量のDNAを必要とし、そして再現性のある0.5%の標的化効率を生成する、単純な、脂質ベースのトランスフェクション方法のための条件が確立された。
(実施例IX:コドンベースの変異誘発による、集中BRPライブラリーの合成)
本実施例は、コドンベースの変異誘発を用いた、BRPの特定の領域に関する集中BRPライブラリーの合成を記載する。
【0185】
インビボでの分子進化は、機能を低下させない別々の変異の段階的蓄積を介して、進行するようである。それゆえ、このプロセスをインビトロで模倣するために、単一アミノ酸変化を含むBRP改変体からなる集中ライブラリーを、コドンベースの変異誘発を用いて合成し、そして発現させた(Glaserら,J.Immunol.,149:3903−3913(1992))。BRPおよび関連タンパク質の部位特異的変異誘発研究および構造モデリングに基づいて、BRP直鎖状配列の4つの別個の領域内に主に存在する特定の残基が、ブレオマイシン結合に関与すると予測された(図6)(Dumasら,EMBO J.13:2483−2492(1994))。それゆえ、図6において下線を付した4つ全ての結合領域におけるあらゆる位置を、1回に1つずつ変異させて、その後この結合領域の各残基における20種全てのアミノ酸の発現を得た。
【0186】
各々が単一のアミノ酸変異を含む改変体からなる4つのBRPライブラリーの概要を、表2に示す。このアプローチによって作成されたライブラリーは、256(領域1)〜412(領域4)の独自のメンバーのサイズ範囲であり、そして合計1,280のBRP改変体を含んだ。これらのライブラリーは、集中され、従って、全体的なランダム化によって得られるライブラリーよりも、かなり小さかった。例えば、BRP領域1(残基32〜39)に対するコドンベースの変異誘発の適用は、160の独自のタンパク質改変体を含むライブラリーを生じたが、同じ領域の完全なランダム化により、1010より多い独自のクローンが得られ、これらのクローンのうち、少数のみが所望の機能を示した。
【0187】
いくつかの利点は、さらなる構造変化を導入する、より小さいライブラリーを利用することに由来することが予測された。第一に、結合活性は、広範な変異誘発によって破壊されていないので、BRPライブラリーのより大きい割合が、機能的であるはずである。次に、ライブラリーのより低い複雑性は、完全にランダム化されたライブラリーにおいて達成可能な頻度よりもより高い頻度で、改変された親和性を有する改変体の同定を生じるはずである。結果として、機能をより予測するアッセイが使用され得る。最後に、これらのライブラリーはより小さく、そしてより容易にスクリーニングされるので、ブレオマイシン(Zeocin)結合に対する、4つ全ての結合領域の寄与が評価され得る。
【0188】
生成されたBRPライブラリーの概要を、表2に示す。位置は、図6に示されるアミノ酸番号に基づく。長さは、各ライブラリー部位で含まれるアミノ酸の数をいい、そしてライブラリーの多様性は、変異誘発のためのNN(G/T)コドンの使用に基づく、最大の潜在的なDNA多様性を反映する。
【0189】
(表2.BRPライブラリーの概要)
Figure 2004514444
単一アミノ酸変異を含む改変体をコードするオリゴヌクレオチドを、オリゴヌクレオチド特異的(ハイブリダイゼーション)変異誘発(Kunkel、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、82:488−492(1985))を使用して、二重lox(doublelox)標的化ベクターにクローニングした。このライブラリーの質および変異誘発効率を特徴付けるために、各ライブラリーからランダムに選択された約15〜20の形質転換体由来のDNAを、配列決定した(表3)。
【0190】
変異を含むクローンの割合として定義されるBRPの変異誘発効率は、56%(ライブラリー4)〜75%(ライブラリー1)の範囲であった。単一アミノ酸変化は、各ライブラリー領域にわたって分布し、そして複数の別個のアミノ酸変化を、単一部位で同定した。例えば、ライブラリー1からランダムに選択された16個程度のクローンの特徴付けは、8個の位置のうち7個において変異を同定し(ライブラリー領域にわたる変異の分布)、そしてPhe34位での3種の変異の例を提供した(単一部位での複数の別個のアミノ酸)。BRPライブラリーの多様性のさらなる証拠は、同一のクローンがランダムに選択される低い頻度によって提供される。累積的に、ランダムに選択された70個のクローンの配列決定において、5つのみの改変体が、一回より多く同定された(クローン1.5、2.1、2.8、3.1および4.4は、各々2回同定された)。
【0191】
DNA配列決定を使用するライブラリー特徴付けは、変異原性オリゴヌクレオチドの合成の間に生じたエラーを明らかにした。具体的には、オリゴヌクレオチド合成の間に、野生型Ala65は、Gly65に偶発的に変化した。続いて、単一アミノ酸変化をコードするように意図されたオリゴヌクレオチドプールから生じる改変体の大部分は、実際に2つの変異を含んだ。偶発的な変異にもかかわらず、ライブラリー3は、BRP活性についてスクリーニングされた。なぜなら、この研究の主な目的は、哺乳動物細胞におけるタンパク質ライブラリーの効率的な発現を実証することであり、そしてライブラリーの実際の組成は、Cre媒介性の標的化挿入物の有効性に影響しないと予測されるからである。さらに、このライブラリー由来の大多数のクローンは、2つの変異を含んだが、Ala65は、遺伝子産物のファミリーで保存されておらず(図6)、そして以前に機能に必須であると同定されていない。従って、2つの変異を含むにもかかわらず、これらの改変体は、野生型BRPとなお密接に関連する。最後に、65AlaからGlyへの変異は、保存された置換であり、実質的な構造変化を導入するとは予測されない。
【0192】
表3は、ランダムに選択されたBRP改変体のアミノ酸配列の概要を示す(ライブラリー1、配列番号34〜44;ライブラリー2、配列番号45〜54;ライブラリー3、配列番号55〜65;ライブラリー4、配列番号66〜73)。サイレント変異を有するクローン(2.10、2.11、4.8および4.9)は、オリゴヌクレオチド特異的変異誘発と一致する変更されたDNA配列を含んだ。しかし、変更されたDNA配列は、野生型BRP DNAによってコードされるアミノ酸と同じアミノ酸をコードした。
【0193】
(表3.ランダムに選択されたBRP改変体のアミノ酸配列の概要)
【0194】
【表2】
Figure 2004514444
Figure 2004514444
これらの結果は、集中BRPライブラリーの作成を記載する。コドンベースの変異誘発によって合成されたオリゴヌクレオチドを使用するBRPのハイブリダイゼーション変異誘発は、目的の領域にわたって集中した所望の多様性を導入した。
【0195】
(実施例X)
(哺乳動物細胞において発現したBRPライブラリーの機能的スクリーニング)
本実施例は、哺乳動物細胞において発現したBRPライブラリーの機能的スクリーニングを記載する。
【0196】
4つのBRPライブラリーの各々を使用して、実施例VIIIに記載した最適化条件を用いて哺乳動物宿主細胞株13−1を形質転換し、そして部位特異的組込み体をジェネティシン(geneticin)を用いて選択した。BRP改変体を用いて形質転換した宿主細胞を、ジェネティシンに対する耐性に基づいて同定し、続いて、単離し、増殖させ、そしてゼオシン(Zeocin)感受性についてスクリーニングした(図7)。十分な数の細胞を得るための増殖後に、各クローンを、4つの別個のウェルにプレートし、14日間、可変濃度のゼオシンに曝した。以前の結果に類似して、野生型BRPを用いて形質転換したクローンは、500μg/ml、1000μg/ml、および2500μg/mlのゼオシンに対して耐性であるが、5000μg/mlのゼオシンを用いる処理では死滅した。従って、ゼオシンに対する増加した親和性を与える有益な変異を有するBRP改変体を同定するために、全クローンの内の1つのサンプルを、5000μg/mlのゼオシンを用いて処理した。反対に、ゼオシンに対する結合を低下した(すなわち、2500μg/mlのゼオシンに対して感受性である)変異体を同定するために、各クローンの培養物を、500μg/mlまたは1000μg/mlのゼオシンを用いて処理した。500μg/mlのゼオシンに対して感受性であったクローンを、さらに特徴付けないが、これらは、重要な結合残基の破壊、またはBRPの構造の実質的摂動に起因して、BRPを非機能的にする変異をおそらく含む。
【0197】
部位特異的標的化組込み体を、トランスフェクトした細胞をジェネティシンを含む培地中に置くことにより選択した。コロニーの増殖の後、各クローンの別個の培養物を、示した濃度のゼオシンの存在下で増殖させた。BRP改変体の表現型を、有益(5000μg/mlのゼオシンに対して耐性)、野生型(2500μg/mlのゼオシンに対して耐性)、有害(500μg/mlおよび1000μg/mlのゼオシンに対して耐性)、または非機能的(500μg/mlのゼオシンに対して感受性)と分類した。改変体を、図7に示すように分類した。
【0198】
BRP変異体を用いて形質転換したクローンの、種々の量のゼオシンを使用する処理は、ゼオシンに対する変化した感受性を表す複数のクローンの同定(有害な変異が、最も頻繁に同定された)をもたらした。ゼオシン選択後の有害な変異の優位性は、無関係なタンパク質を用いて実施した、以前の定方向進化研究(Wuら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,95:6037−6042(1998);Wuら、J.Mol.Biol.,294:151−162(1999))と一致し、そして、疑いなく、インビボでの分子進化の効率を反映する。さらに、単一のアミノ酸によりBRPを変化させることから生じる損なわれたBRP機能の複数の例は、定方向進化アプローチを適用するための集中させた変異誘発(focused mutagenesis)ストラテジーを用いる利点を強調する。
【0199】
野生型表現型(2500μg/mlのゼオシンに対して耐性)を表すクローンを、本研究においてさらに分析しなかった。なぜならば、DNA配列決定によるライブラリーの特徴付けは、クローンの25〜54%が、野生型BRPを発現したことを実証したからである(表3)。変異の正確な位置および性質を同定するために、BRP改変体をコードするDNAを配列決定した。簡単には、総細胞DNAを、DNeasy Tissue Kits(QIAGEN;Valencia,CA)を使用して、目的のクローンの各々の約10個の細胞から単離した。次いで、複合ゲノムDNA内に含まれるBRP遺伝子を、PfuTurbo DNAポリメラーゼ(Stratagene;La Jolla,CA)(高忠実度PCRに用いられるPfu DNAポリメラーゼの強化したバージョン)、およびSh ble遺伝子に隣接したオリゴヌクレオチドプライマー(BRP)を用いて増幅した。次いで、PCR産物のアリコートを用いて、ネスト(nested)オリゴヌクレオチドプライマーを用いる蛍光ジデオキシヌクレオチドターミネーション法(Perkin−Elmer)により、BRPを配列決定した。
【0200】
ゼオシンに対する差次的感受性を表すクローンが、種々の変異(表4)(ライブラリー1、それぞれ、配列番号34、74〜77、36および78;ライブラリー2、それぞれ、配列番号45、46および79〜81;ライブラリー3、それぞれ、配列番号55および82〜85;ライブラリー4、それぞれ、配列番号66および86〜88)を含んでいたことが、DNA配列決定により実証された。ブレオマイシン結合に関与すると予想された残基の変異(Dumasら、EMBO J.13:2483−2492(1994))は、ゼオシンに対する増強した感受性により実証されたように、殆どが有害であった(例えば、クローンの1E、2C、3A〜D)。注目すべき例外は、クローン1Bであった。クローン1Bにおいて、38AspのAsnへの変異は、ゼオシンに対する増大した耐性を生じた。しかし、溶媒に曝される残基についてのAsnのAspへの変異は、タンパク質進化の観点から珍しい置換ではない。
【0201】
(表4.選択BRP改変体の概要)
【0202】
【表3】
Figure 2004514444
遺伝子のファミリーからのDNAのシャッフリングを用いて、定方向進化のためのタンパク質ライブラリーの作製についての多様性を生み出し、そして改善された機能を有するタンパク質改変体の同定をもたらす(Crameriら、Nature,391:288−291(1998);Changら、Nature Biotech.17:793−797(1999))。本研究において、変化した表現型を有する3つのクローンは、関連するタンパク質において見出されるアミノ酸に対する変異を含んでいた。例えば、47ValからLeuへの変異(クローン2A)、および98IleからLeuへの変異(クローン4B)は、これらのアミノ酸を、それぞれ、Tn5 ble遺伝子産物およびSa ble遺伝子産物において発現されるアミノ酸に転換する。クローン3B(これは、64LeuからSerおよび65AlaからGlyの両方を無関係に含んでいた)は、Tn5 ble遺伝子産物およびSa ble遺伝子産物の両方が、残基64のSerを発現するという事実にもかかわらず、増大したゼオシン感受性を示した。しかし、65AlaからGlyへの変異のみを含む変異体は、ゼオシンに対するさらに高い感受性を示した。このことは、64LeuからSerへの変異が、65AlaからGlyへの変異を補償し得ることを示唆する。従って、BRPの規定した領域の厳密かつ全体的な変異誘発は、DNAシャッフリング技術から生じた有益な変異を同定した。
【0203】
集中ライブラリーの合成のために選択されたBRPの4つの領域内で、Gln102、Trp104、およびAla109の残基(全てが、領域4に位置する)のみが、3つの関連遺伝子産物の全てについて保存されている。これらの3つの位置のいずれかでの変異を有する非機能的BRP改変体を、ゼオシン選択後に同定した。これらの特定の残基での変異がライブラリーにおいて低い頻度で生じたという取るに足らない解釈は、ライブラリー4からランダムに選択したクローンのDNA配列決定に基づいて除外される(表3)。これらの3つの部位の各々で1つの変異が同定されたとしても、合計でわずか18個のクローンが特徴付けされる。Gln102、Trp104、およびAla109の残基で変異を有する機能的改変体を同定することができないことは、これらの残基が、遺伝子ファミリーの全てのメンバーにおいて保存されるという知見と一致する。
【0204】
クローン2Dは、タンパク質工学に対する定方向進化アプローチの利益を示す、保存された54ValからLeuへの変異から生じる、ゼオシンに対する増強した耐性を示す。この遺伝子ファミリーの各々メンバーは、54位で別個の残基を発現し、そして構造モデリングおよび部位特異的変異誘発に基づく以前の予測は、潜在的に重要な残基としてVal54を同定していない。従って、構造的予測を検証することに加えて、定方向進化技術の適用は、新規の変異を同定して、さらなる構造情報を間接的に提供する。
【0205】
タンパク質のライブラリーは、時折、無関係な変異を発現するクローンを含む。この無関係な変異は、変異誘発に用いられるオリゴヌクレオチド中の少量の不純物を介してか、または形質転換後のインビボでのランダム変異誘発によってかのいずれかで導入される。代表的には、これらの変異は、スクリーニングの成功に影響を与えず、そしてDNA配列決定によるライブラリーの特徴付けにより検出されない低い頻度で生じる。それでもなお、目的のクローンの変化した機能が、タンパク質における他の部位での更なる変異の結果ではないことを検証するために、目的のクローンの全体のDNA配列を決定した。例えば、本研究において、クローン3AのDNA配列決定は、このクローン3Aが2つの変異(65GlyからAlaおよび68TrpからLeu)を含むことを実証した。65GlyからAlaへの変異は、直ぐに明白にならなかった。なぜならばクローン3Aは、変異誘発オリゴヌクレオチドの合成の間に、誤りとして本来導入された変異を「修正した」からである。クローン3Aにおける無関係な変異の導入にもかかわらず、クローン3Aの低下した活性は、ゼオシン結合におけるTrp68の重要性を実証する。
【0206】
指向性進化アプローチのために集中ライブラリーを使用する際、同一の変異を含む改変体を発現する複数のクローンの同定は、代表的には、それらのライブラリーが網羅的にスクリーニングされたことの1つの指標である。本研究において、同一の配列を有する複数のクローンが同定される場合は、ほとんどなかった。このことは、BRPのさらなる有益な変異が、これらのライブラリーのさらなるスクリーニングを介して同定される可能性があることを示す。
【0207】
BRPのコピー数に起因するか、またはタンパク質発現レベルの極端な変動性に起因する、ゼオシン感受性の最小変化が、予期された。なぜなら、これらの形質転換体は、すべて、正確に同じゲノム部位に組み込まれた、She ble遺伝子(BRP)を発現するからである。それにも関わらず、細菌において発現される抗体ライブラリーを用いる以前の経験に基づいて、単一アミノ酸変異が、BRPタンパク質の正確な量に影響することが、可能である。従って、ゼオシンに対する変化した感受性を提示するクローンにおけるBRPタンパク質の発現レベルを、BRPに対して惹起したウサギポリクローナル抗体を使用するウェスタンブロットおよびELISAによって、評価した。
【0208】
ウェスタンブロッティングによるBRP改変体の定量のために、異なるBRPクローン由来の(BCAタンパク質アッセイにより測定した場合に)ほぼ等量の全細胞タンパク質を、2つの異なる実験において、ドデシル硫酸ナトリウムにより分離し(SDS−PAGE)、そしてニトロセルロースにトランスファーした。上記BRP抗体を用いるプロービングの前のタンパク質についてのこれらのブロットのポンソーS染色により、種々のサンプル由来のほぼ等量の全タンパク質が、相対的タンパク質発現を評価するために、ローディングまたは使用されたことが、示された。
【0209】
有益な変異を発現するクローン由来の細胞溶解物、有害な変異を発現するクローン由来の細胞溶解物、およびサイレント変異を発現するクローン由来の細胞溶解物、ならびに野生型BRPを発現するクローン由来の細胞溶解物を、調製した。等量の全細胞タンパク質を、SDS−PAGEにより分離し、ニトロセルロースにトランスファーし、そして、上記ウサギ抗体を用いてプロービングした。これらのクローンから得た相対シグナルは、その変異に関わらず、同等であり、それらの発現レベルが同様であることを、示した。さらに、等量の全細胞タンパク質を、上記ポリクローナルウサギ抗BRP抗体でコーティングしたマイクロタイタープレート上で、インキュベートした。ビオチン化ウサギ抗BRP抗体およびストレプトアビジン−アルカリホスファターゼ結合体とのインキュベーションの後の、種々の細胞抽出物中に存在するBRPのELISA定量は、BRPのウェスタンブロット定量と一致しており、そしてこれらの抽出物が、類似した量のBRPを含むことを、示した。これらのBRP改変体の相対的発現レベルの小さな差異(サンプル間の変動の10倍未満)は、細菌系において観察された抗体発現レベルにおける差異(Watkinsら、Anal.Biochem.253:37〜45(1997))と、非常に類似する。従って、BRP改変体を発現する細胞により提示されるゼオシン感受性の差異は、BRPのゼオシン親和性をおそらく反映し、BRPの相対的量における差異を反映しない。改変体の親和性定数の正確な測定値を得るために、改変体を精製する。
【0210】
これらの結果は、哺乳動物細胞におけるタンパク質改変体のライブラリーの発現およびスクリーニングを示す。これらの改変体を、活性または機能の変化について、スクリーニングし得る。
【0211】
(実施例XI)
(哺乳動物細胞におけるブチリルコリンエステラーゼ改変体ライブラリーの発現)
本実施例は、哺乳動物細胞におけるブチリルコリンエステラーゼ改変体ライブラリーの発現を記載する。
【0212】
コリンエステラーゼを用いる研究により、触媒3つ組(triad)およびリガンド結合に関与する他の残基が、疎水性残基が豊富な、深く狭い活性部位の溝(gorge)中に位置することが、示されている(Soreqら、Trends Biochem.Sci.17:353〜358(1992)に概説される)。ブチリルコリンエステラーゼ改変体の7つの集中ライブラリーの部位(図8、下線の残基)を、その活性部位の溝に沿って並ぶと決定したアミノ酸を含むように、選択した。この7つの領域は、アミノ酸68〜82、アミノ酸110〜121、アミノ酸194〜201、アミノ酸224〜234、アミノ酸277〜289、アミノ酸327〜332、およびアミノ酸429〜442(図8における下線の配列を参照のこと)に対応する。
【0213】
集中ライブラリー合成のために選択した、ブチリルコリンエステラーゼのこれらの7つの領域は、8つの芳香族の活性部位溝残基(W82、W112,Y128、W231、F329、Y332、W430、およびY440)、ならびに触媒三つ組残基のうちの2つを含む残基にまたがる。65Cys−92Cys間、252Cys−263Cys間、および400Cys−519Cys間に位置する、鎖内ジスルフィド結合の完全性を、機能的ブチリルコリンエステラーゼ構造を確実にするために維持する。さらに、残基17、残基57、残106、残基241、残基256、残基341、残基455、残基481、残基485、および残基486に位置する、推定グリコシル化部位(N−X−S/T)もまた、このライブラリー合成において回避する。全体として、この7つの集中ライブラリーは、ブチリルコリンエステラーゼ直鎖配列のうちの約14%を示す79残基にまたがり、約1500個の異なるブチリルコリンエステラーゼ改変体の発現を生じる。変異されるべきヒトブチリルコリンエステラーゼのこの7つの領域に対応する核酸のライブラリーを、コドンベースの変異誘発(米国特許第5,264,563号および同第5,523,388号;Glaserら、J.Immunology 149:3903〜3913(1992)を参照のこと)によって、合成する。
【0214】
単一アミノ酸置換を含むブチリルコリンエステラーゼ改変体をコードするオリゴヌクレオチドを、オリゴヌクレオチド指向性変異誘発(Kunkel(前出)、1985)を使用して、二重lox標的化ベクター中にクローニングする。この変異誘発の効率を改善し、かつ野生型ブチリルコリンエステラーゼを発現するクローンの数を減少させるために、これらのライブラリーを、2段階プロセスで合成する。第1段階において、各ライブラリー部位に対応するブチリルコリンエステラーゼDNA配列を、ハイブリダイゼーション変異誘発によって欠失させる。第2段階において、各欠失変異体(1つの欠失変異体が、各ライブラリーに対応する)についてのウラシル含有一本鎖DNAを、単離し、オリゴヌクレオチド指向性変異誘発によるライブラリーの合成のためのテンプレートとして使用する。このアプローチは、抗体ライブラリー合成のために慣用的に使用されており、その変異誘発オリゴヌクレオチドの種々のDNA配列から生じる可能性があるアニーリングの偏向を除去することによって、より均一な変異誘発を生じる。さらに、この2段階プロセスは、これらのライブラリーにおける改変体に対する野生型配列の頻度を減少させ、結果として、野生型ブチリルコリンエステラーゼをコードするクローンの反復スクリーニングを排除することによって、ライブラリースクリーニングをより効率的にする。
【0215】
これらのライブラリーの質および変異誘発の効率は、各ライブラリー由来のランダムに選択した約20個のクローンから、DNA配列を得ることによって特徴付けられる。それらのDNA配列は、変異誘発が、各ライブラリー中の複数の位置で生じること、および複数のアミノ酸が、各位置で発現されたことを、示す。さらに、ランダムに選択したクローンのDNA配列は、それらのライブラリーが、多岐のクローンを含み、2〜3個のクローンにより支配されないことを、示す。
【0216】
表5に示されるように、いくつかの細胞株およびトランスフェクション方法を、ブチリルコリンエステラーゼ改変体の発現について特徴付けた。トランスフェクションについて試験した細胞は、NIH3T3(13−1)細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、および293Tヒト胚腎細胞であった。FlpリコンビナーゼおよびCreリコンビナーゼの両方を、安定なトランスフェクションについて試験した。脂質ベースの一過性トランスフェクションもまた、試験した。
【0217】
(表5.安定な細胞トランスフェクションまたは一過性細胞トランスフェクションのいずれかを使用する、細胞1個あたりの単一のブチリルコリンエステラーゼ改変体の発現)
【0218】
【表4】
Figure 2004514444
これらの結果は、安定な細胞トランスフェクションまたは一過性細胞トランスフェクションのいずれかを使用する、細胞1個あたりの単一のブチリルコリンエステラーゼ改変体の発現を示す。
【0219】
ブチリルコリンエステラーゼ改変体の7つのライブラリーの各々を、二重lox標的ベクターおよび実施例VIIIに記載の最適化されたトランスフェクション条件を使用して、宿主哺乳動物細胞株に形質転換する。Cre媒介性形質転換後に、この宿主細胞を限界希釈でプレートして、96ウェル様式でそれぞれのクローンを単離する。ブチリルコリンエステラーゼ改変体がCre/lox標的部位に組み込まれた細胞を、ジェネティシンを用いて選択する。続いて、各ライブラリーから無作為に選択した20〜30のクローン由来のブチリルコリンエステラーゼ改変体をコードするDNAを、上記のようにして、配列決定し、そして分析する。簡単に述べると、総細胞DNAを、DNeasy Tissue Kits(Qiagen;Valencia,CA)を使用して、約10細胞の目的の各クローンから単離する。このブチリルコリンエステラーゼ遺伝子を、PfuTurbo DNAポリメラーゼ(Stratagene;La Jolla,CA)を使用して増幅し、次いで、このPCR産物のアリコートを、ネスト化オリゴヌクレオチドプライマーを使用する蛍光ジデオキシヌクレオチド終結法(Perkin−Elmer,Norwalk,CT)によって、無作為に選択されたクローン由来のブチリルコリンエステラーゼ改変体をコードするDNAを配列決定するために使用する。配列決定は、ライブラリーの均一な導入を示し、哺乳動物形質転換体の多様性は、細菌の形質転換後の二重lox標的ベクターにおけるライブラリーの多様性と類似する。
【0220】
ブチリルコリンエステラーゼのアミノ酸277〜289に対応する領域に対応するライブラリーを発現させ、個々の改変体を、マイクロタイターアッセイを使用して、[H]−コカインの加水分解を測定することによってスクリーニングした。増加した活性を有する改変体の触媒効率(Vmax/K)を、マイクロタイターアッセイを使用して特徴付けし、それらの相対的なKおよびVmaxを決定した。簡単に述べると、培養物の上清由来のブチリルコリンエステラーゼを、Watkinsら、Anal.Biochem.253:37−45(1997)により以前に記載されるようにして、低いブチリルコリンエステラーゼ濃度で飽和された捕捉試薬(例えば、抗体)を使用して固定する。結果として、希釈サンプル由来のブチリルコリンエステラーゼは濃縮され、培養物の上清中のブチリルコリンエステラーゼの初期濃度に関係なく、均一な量の異なるブチリルコリンエステラーゼ改変体クローンが固定化される。続いて、未結合のブチリルコリンエステラーゼおよびこのアッセイを妨害する可能性のある他の培養物上清成分(例えば、無関係の血清または有意なエステラーゼ活性を有する細胞由来タンパク質)を洗浄して除去し、そしてこの固定されたブチリルコリンエステラーゼの活性を決定する。このアッセイを、市販のウサギ抗ヒトコリンエステラーゼポリクローナル抗体(DAKO,Carpinteria,CA)を使用して、マイクロタイター様式で実施する。未結合の物質を、100mM Tris(pH7.4)で洗浄することによって除去し、そして捕捉された活性なブチリルコリンエステラーゼの量を、ブチリルチオコリンの加水分解または安息香酸の形成を測定することにより定量する。このアッセイを、放射活性安息香酸トレーサーを使用して(ここで基質(例えば、コカイン(不溶性))と生成物(例えば、安息香酸(可溶性))との間の、pH3.0における溶解度の差異を利用する)、またはHPLC(Xieら、Mol.Pharmacol.55:83−91(1999))によって実施し得る。
【0221】
野生型ブチリルコリンエステラーゼおよび改変体の反応速度定数を決定し、そして野生型ブチリルコリンエステラーゼに対する改変体の触媒効率を比較するために使用する。(−)−コカインのK値を、37℃で決定する。Vmax値およびK値を、Sigma Plot(Jandel Scientific,San Rafael,CA)を使用して算出する。ブチリルコリンエステラーゼの活性部位の数を、Massonら、Biochemistry 36:2266−2277(1997)により以前に記載されるように、滴定剤としてヨウ化エコチオパートまたはジイソプロピルフルオロホスフェートを使用する残留活性の方法により決定する。あるいは、ブチリルコリンエステラーゼ活性部位の数を、ELISAを使用して予測して、培養物上清中に存在するブチリルコリンエステラーゼまたはブチリルコリンエステラーゼ改変体の質量を定量する。精製したヒトブチリルコリンエステラーゼを、ELISA定量アッセイのための標準として使用する。触媒速度定数、kcatを、Vmaxを活性部位の濃度で割ることにより算出する。最後に、この改変体の触媒効率を、各ブチリルコリンエステラーゼ改変体のkcat/Kを決定することによって、野生型ブチリルコリンエステラーゼと比較する。マイクロタイターベースのアッセイに加えて、クローンの活性を液相で証明し得、ここで、生成物の形成を、HPLCアッセイにより測定して、ブチリルコリンエステラーゼ改変体のコカイン加水分解活性の増加を確認し、そして増加した加水分解がベンゾイルエステル基に生じることを立証する。
【0222】
簡単に述べると、ブチリルコリンエステラーゼのアミノ酸277〜289(図8)に対応するブチリルコリンエステラーゼの領域に対応する改変体ライブラリーを、Flpリコンビナーゼを使用して、哺乳動物細胞の293T細胞株にトランスフェクトした。表6は、Flpリコンビナーゼおよび293Tヒト細胞株を使用して同定および特徴付けした、ブチリルコリンエステラーゼ改変体、S287G、P285QおよびP285Sを示す。増加したコカインヒドロラーゼ活性を有する3種のブチリルコリンエステラーゼ改変体(S287G、P285QおよびP285S)を同定した(表6を参照のこと)。
【0223】
(表6.増加したコリンヒドロラーゼ活性を有するブチリルコリンエステラーゼ改変体の同定および特徴付け)
【0224】
【表5】
Figure 2004514444
コンビナトリアルブチリルコリンエステラーゼ改変体ライブラリーを作製するために、単一のアミノ酸変異を含むブチリルコリンエステラーゼ改変体のライブラリーのスクリーニングにより同定された有益な変異を、インビトロで組み合わせて、ブチリルコリンエステラーゼコカイン加水分解活性をさらに改善する。7種の注目したブチリルコリンエステラーゼライブラリのスクリーニングにより同定された最良の変異を使用して、コンビナトリアルライブラリーを合成する。このコンビナトリアルライブラリーを、オリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発により合成し、特徴付けし、そして哺乳動物宿主細胞株において発現させる。改変体を、上記のようにして、スクリーニングおよび特徴付けする。DNA配列決定を使用して、さらなる変異を明らかにする。
【0225】
この実施例は、ブチリルコリンエステラーゼ改変体が作製され得、リコンビナーゼ系を使用して哺乳動物細胞において発現され、そして増加した活性についてスクリーニングされることを例示する。
【0226】
本願全体にわたって、種々の刊行物が参照される。これらの刊行物の開示は、その全体が、本発明が属する技術状態をより十分に記載するために、本願に参照として援用される。本発明を上記の実施例を参照して記載してきたが、種々の改変が本発明の精神から逸脱することなく行われ得ることを理解するべきである。
【図面の簡単な説明】
【図1】
図1は、Xと印した場所での点として示した化学物質リガンドの、円として示したレセプターへの結合を示す。下のパネルは、リガンドの分布を示す。ここで、白丸は、多様なリガンドを示し、黒丸は、集中したリガンドを示す。
【図2】
図2は、3つの円として示したレセプター、およびXと印した3つの点として示したリガンドを使用する最適な結合リガンドの同定を示す。
【図3A】
図3Aは、抗イディオタイプ抗体リガンドの、BR96抗体レセプター改変体への結合を示す。
【図3B】
図3Bは、抗イディオタイプ抗体リガンドの、BR96抗体レセプター改変体への結合を示す。
【図3C】
図3Cは、抗イディオタイプ抗体リガンドの、BR96抗体レセプター改変体への結合を示す。
【図3D】
図3Dは、抗イディオタイプ抗体リガンドの、BR96抗体レセプター改変体への結合を示す。
【図4】
図4は、複数の抗体レセプター改変体に結合する抗イディオタイプ抗体リガンドの最適な結合の同定を示す。
【図5】
図5は、二重loxストラテジーの化合物を示す。図5Aは、リコンビナーゼ認識配列(下線を付した)およびloxPについての切断部位(矢印)を示す(配列番号29)。図5Bは、リコンビナーゼ認識配列(下線を付した)およびlox511についての切断部位(矢印)を示す(配列番号30)。「」は、lox511におけるloxPからの変化を示す。図5Cは、Cre媒介性二重交差の工程を示す。
【図6】
図6は、Sh ble遺伝子産物(配列番号31)と異なる遺伝子Sa ble(配列番号32)およびTn5 ble(配列番号33)によってコードされる関連タンパク質とのアミノ酸配列の比較を示す(Gatignolら、FEBS Lett.230:171−175(1988))。ブレオマイシン結合に推定上関連するSh ble遺伝子産物(BRP)の残基を、星印で示し、一方、保存された残基に影を付す。
【図7】
図7は、13−1哺乳動物細胞において発現するBRPライブラリーのゼオシン(Zeocin)スクリーニングを示す。細胞増殖を、(+)によって示し、一方、毒性を、(−)で示す。
【図8】
図8は、集中ライブラリーを生成するために使用される、下線を付した7つの領域を有するヒトブチリルコリンエステラーゼのアミノ酸配列(配列番号89)を示す。芳香族の、活性なゴージ(gorge)残基は、W82、W112、Y128、W231、F329、Y332、W430およびY440である。

Claims (40)

  1. 非酵母真核生物細胞の集団を含む細胞組成物であって、該集団は、約10個以上の改変体核酸の多様な集団を含み、該改変体核酸の各々は、異なる細胞において発現され、そして各細胞内にてそのゲノム中の同一部位で位置づけられる、細胞組成物。
  2. 前記改変体核酸が、予め決められたアミノ酸変化を、親のアミノ酸配列内の予め選択された位置で有する、請求項1に記載の細胞組成物。
  3. 前記改変体核酸が、部位特異的組換え配列によって各細胞内に組み込まれている、請求項1に記載の細胞組成物。
  4. 前記細胞が、CreリコンビナーゼまたはFlpリコンビナーゼを発現する、請求項1に記載の細胞組成物。
  5. 前記ゲノム中の部位が、2つのlox部位を含む、請求項1に記載の細胞組成物。
  6. 前記lox部位の少なくとも1つが、loxP部位である、請求項5に記載の細胞組成物。
  7. 前記lox部位の少なくとも1つが、lox511部位である、請求項5に記載の細胞組成物。
  8. 前記ゲノム中の部位が、同一でない2つのlox部位を含む、請求項5に記載の細胞組成物。
  9. 前記ゲノム中の部位が、loxP部位およびlox511部位を含む、請求項8に記載の細胞組成物。
  10. 前記細胞が哺乳動物細胞である、請求項1に記載の細胞組成物。
  11. 最適化された活性を示すポリペプチドを同定する方法であって、該方法は、以下の工程:
    (a)請求項1に記載の細胞組成物を、前記改変体核酸によってコードされる改変体ポリペプチドの多様な集団の、親ポリペプチドに関する活性についてスクリーニングする工程;および
    (b)該親ポリペプチドと比較して最適化された活性を示す改変体ポリペプチドを同定する工程、
    を包含する、方法。
  12. 結合するリガンドを同定する方法であって、該方法は、以下の工程:
    (a)請求項1に記載の細胞組成物を、1つ以上のリガンドと接触させる工程;
    および
    (b)前記改変体核酸の1つに結合するリガンドを同定する工程、
    を包含する、方法。
  13. 結合するリガンドを同定する方法であって、該方法は、以下の工程:
    (a)請求項1に記載の細胞組成物を、1つ以上のリガンドと接触させる工程であって、該細胞は、前記改変体核酸によってコードされる改変体ポリペプチドの多様な集団を含む、工程;および
    (b)該改変体核酸によってコードされるポリペプチドに結合するリガンドを同定する工程、
    を包含する、方法。
  14. 非酵母真核生物細胞の集団を含む細胞組成物であって、該集団は、10個以上の改変体核酸の集団を含み、該改変体核酸の各々は、異なる細胞において発現され、そして部位特異的組換え配列によって各細胞のゲノム中に組み込まれている、細胞組成物。
  15. 前記改変体核酸が、予め決められたアミノ酸変化を、親のアミノ酸配列内の予め選択された位置で有する、請求項14に記載の細胞組成物。
  16. 前記細胞が、CreリコンビナーゼまたはFlpリコンビナーゼを発現する、請求項14に記載の細胞組成物。
  17. 前記ゲノム中の部位が、2つのlox部位を含む、請求項14に記載の細胞組成物。
  18. 前記lox部位の少なくとも1つが、loxP部位である、請求項17に記載の細胞組成物。
  19. 前記lox部位の少なくとも1つが、lox511部位である、請求項17に記載の細胞組成物。
  20. 前記ゲノム中の部位が、同一でない2つのlox部位を含む、請求項17に記載の細胞組成物。
  21. 前記ゲノム中の部位が、loxP部位およびlox511部位を含む、請求項20に記載の細胞組成物。
  22. 前記改変体核酸が、各細胞のゲノム中の単一部位で組み込まれている、請求項14に記載の細胞組成物。
  23. 前記改変体核酸の各々が、異なる細胞において発現されている、請求項14に記載の細胞組成物。
  24. 前記細胞が哺乳動物細胞である、請求項14に記載の細胞組成物。
  25. 最適化された活性を示すポリペプチドを同定する方法であって、該方法は、以下の工程:
    (a)請求項14に記載の細胞組成物を、前記改変体核酸によってコードされる改変体ポリペプチドの多様な集団の、親ポリペプチドに関する活性についてスクリーニングする工程;および
    (b)該親ポリペプチドと比較して最適化された活性を示す改変体ポリペプチドを同定する工程、
    を包含する、方法。
  26. 結合するリガンドを同定する方法であって、該方法は、以下の工程:
    (a)請求項14に記載の細胞組成物を、1つ以上のリガンドと接触させる工程;および
    (b)前記改変体核酸の1つに結合するリガンドを同定する工程、
    を包含する、方法。
  27. 結合するリガンドを同定する方法であって、該方法は、以下の工程:
    (a)請求項14に記載の細胞組成物を、1つ以上のリガンドと接触させる工程であって、該細胞は、前記改変体核酸によってコードされる改変体ポリペプチドの多様な集団を含む、工程;および
    (b)該改変体核酸によってコードされるポリペプチドに結合するリガンドを同定する工程、
    を包含する、方法。
  28. 非酵母真核生物細胞の集団を含む細胞組成物であって、該集団は、10個以上の異種核酸フラグメントの多様な集団を含み、該異種核酸フラグメントは、異なる種の核酸フラグメントを含み、該異種核酸フラグメントの各々は、異なる細胞において発現され、そして各細胞内にてそのゲノム中の同一部位で位置づけられる、細胞組成物。
  29. 前記異種核酸フラグメントが、部位特異的組換え配列によって各細胞内に組み込まれている、請求項28に記載の細胞組成物。
  30. 前記細胞が、CreリコンビナーゼまたはFlpリコンビナーゼを発現する、請求項28に記載の細胞組成物。
  31. 前記ゲノム中の部位が、2つのlox部位を含む、請求項28に記載の細胞組成物。
  32. 前記lox部位の少なくとも1つが、loxP部位である、請求項31に記載の細胞組成物。
  33. 前記lox部位の少なくとも1つが、lox511部位である、請求項31に記載の細胞組成物。
  34. 前記ゲノム中の部位が、同一でない2つのlox部位を含む、請求項31に記載の細胞組成物。
  35. 前記ゲノム中の部位が、loxP部位およびlox511部位を含む、請求項34に記載の細胞組成物。
  36. 前記細胞が哺乳動物細胞である、請求項28に記載の細胞組成物。
  37. 結合するリガンドを同定する方法であって、該方法は、以下の工程:
    (a)請求項28に記載の細胞組成物を、1つ以上のリガンドと接触させる工程;および
    (b)前記異種核酸フラグメントの1つに結合するリガンドを同定する工程、
    を包含する、方法。
  38. 結合するリガンドを同定する方法であって、該方法は、以下の工程:
    (a)請求項28に記載の細胞組成物を、1つ以上のリガンドと接触させる工程であって、該細胞は、前記異種核酸フラグメントによってコードされるポリペプチドの多様な集団を含む、工程;および
    (b)該異種核酸フラグメントによってコードされるポリペプチドに結合するリガンドを同定する工程、
    を包含する、方法。
  39. リガンドに対するポリペプチドレセプターを同定する方法であって、該方法は、以下の工程:
    a)ポリペプチドをコードする10個以上の異種核酸フラグメントの多様な集団を含む非酵母真核生物細胞の集団を、リガンドと接触させる工程であって、該異種核酸フラグメントは、異なる種の核酸フラグメントを含み、該異種核酸フラグメントの各々は、異なる細胞において発現され、そして各細胞内にてそのゲノム中の同一部位で位置づけられる、工程;および
    b)該リガンドに結合する該異種核酸フラグメントによってコードされるポリペプチドを同定する工程、
    を包含する、方法。
  40. 機能的ポリペプチドフラグメントを同定する方法であって、該方法は、以下の工程:
    a)10個以上の異種核酸フラグメントの多様な集団を、非酵母真核生物細胞組成物に導入して、細胞集団を生成する工程であって、該異種核酸フラグメントは、異なる種の核酸フラグメントを含み、該核酸フラグメントの各々は、異なる細胞において発現され、そして各細胞内にてそのゲノム中の同一部位で位置づけられる、工程;
    b)機能的活性について該細胞集団をスクリーニングする工程;および
    c)該機能的活性を有する該核酸フラグメントによってコードされるポリペプチドを同定する工程、
    を包含する、方法。
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