JP2004514410A - 生物剤の経口およびcns供給を強化するためのリガンド - Google Patents

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Abstract

血液脳関門および胃腸関門を横切る生物学的因子の吸収を増加させる、配列番号6のアミノ酸配列、そのアナローグ、誘導体、または変異型を含んでなるペプチドを含んでなる、新規な、有効なリガンドが提供される。結局、本発明のリガンドは、経口的に投与される生物学的因子の生物学的利用能を増加させる。

Description

【0001】
発明の分野
本発明は治療剤の経口およびCNS生体利用効率を高めることができるペプチドまたはその類似物または誘導体(リガンド)を含む組成物に関する。さらに詳細には、本発明は生物剤と結合するリガンド、または担体を伴うリガンドの複合体から成る組成物を含む。
【0002】
発明の背景
経口経路により投与される薬剤の最適化生体利用効率は、新製品の開発段階における医薬産業の最も重要な目的の一つである。生体利用効率は、血液中に吸収され循環される医薬組成物から吸収される生物剤すなわち活性成分の量、およびこの吸収速度の両方を表す。これは、分子が血液循環に到達する迄に一つまたはいくつかの生体膜を横断していくことを意味する。経口的に投与される薬剤の物理化学的特性がその生体利用効率を決定すると一般に考えられてきた。これらのパラメータの中には、分子量(600Dより大きい分子量の治療剤に対する極めて低い透過性が知られている)、pKa、およびオクタノール/水分配係数(LogD)により特徴付けられる親油性がある。
【0003】
一般的な循環に達する薬剤の量は、腸上皮により吸収される薬剤量、および消化管中での薬剤溶解度および安定性に応じて決まる。多くのクラスの薬剤は、それらの吸収における大きな個体間の変動性および/または低い生体利用効率を示す。抗癌治療に用いられる細胞毒は、多くの場合に吸収不良を示す薬剤のいい見本である。治療用ペプチドおよびタンパク質も、それらが容易に胃および腸において代謝されてしまうので、経口経路では極めて低い生体利用効率しか有しない。分解に関する問題に加えて、こうしたペプチドおよびタンパク質の分子量は、一般的に、消化管壁を越えて循環系中への有意な輸送を可能とするには高すぎる。
【0004】
生物工学の到来からこの方、多くのタンパク質療法が多くの潜在的な難病に対して有意な治療効果を有するとして確認されてきた。こうした疾患には、癌、心臓疾患、中枢神経系疾患、免疫系疾患、血液および循環系疾患、および多くのホルモン系疾患が挙げられる。これらの内科的疾患の多くは慢性的であり、所要治療の継続的な管理を必要とする。
【0005】
タンパク質療法、および治療剤を配送するための多くの他のハードの幅広い利用は、管理可能および許容可能なやり方においてそれらを容易に患者に投与できる能力に応じて決まる。タンパク質またはペプチド薬剤を含む従来の治療経路は、主として消化管を通してのこうした薬剤の吸収不足のせいで、非経口投与(すなわち、注射による)を介するものである。しかし、注射は痛みを伴い、他の投与方法に比べて投与することが困難な場合がある。いくつかのこれら薬剤はおうおう年少者または老人患者への投与を必要とする場合があるので、患者の薬剤服用遵守もまた重要な検討材料である。経口投与は、明らかに、それらを長期間服用しなければならない患者にこうした化合物を投与するための最も望ましい方法である。
【0006】
経口ワクチン接種はより便利であるが、ワクチンは一般に注射を介して与えられる。これは、特に、それらの消化管中への低吸収の故に、死菌またはペプチド系ワクチンについて当てはまる。しかし、全身性免疫に伴う問題は、粘膜免疫反応、例えば、侵入微生物に対する第一防衛障壁として重要であるIgAの産生を有効に誘発しない場合があることである。この理由により、低腸吸収の問題が解決されるならば経口ワクチン接種を提供することは有益であろう。
【0007】
経口的にポリペプチドおよびワクチンを配送しようとする最近の努力は、吸収増強剤の使用に焦点を絞ってきている。これは、過剰油中のサリチル酸ソーダ懸濁液がGI管からのヒト成長ホルモンの吸収を高めることができるという発見をもたらした(EP publication 177,342;Moore et.al.,Internat.J.Pharma.34:35(1986)を参照すること)。吸収はこの組合せにより強化されるが、一方で、タンパク質の最高の達成可能生体利用効率は、まだ極めて低くただの約10〜20%以下(静脈内投与に比べて)である。結果として、より多くの量のタンパク質が血漿中の必要治療レベルのタンパク質を提供するために経口的に投与されなければならない。生物工学の到来を以ってしてもなお比較的に限定された有効性であり、複合化学実在物であり、従って極めて高価であることは、タンパク質およびポリペプチドに伴う特定の問題である。上述の処方は大腸中のタンパク質、ポリペプチド、およびペプチドの吸収をいくらか改善することが見出されてきたが、一方で、それらはまた上で説明したように固有の制限および不利を有する。
【0008】
従って、必要であるものは、経口的に投与される生物剤の消化管から循環系中への吸収を増大させる新奇で有用な製品である。さらに必要とされるものは、血液脳関門(BBB)を渡る治療剤の吸収を増大させ、その結果治療剤のCNS生体利用効率を増大させる新奇で有用な製品である。
【0009】
発明の概要
本発明は、ポリペプチド、またはその誘導体が小腸および血液脳関門を渡ることができる、少なくとも一つのペプチドまたはその誘導体を含むポリペプチドを提供する。こうしたポリペプチドは本明細書においてリガンド(Ligand)と呼ばれる。
一つの実施形態において、本発明は小腸および血液脳関門を渡ることができるペプチドまたはその誘導体を提供する。
本発明のポリペプチドは、ポリペプチド、またはその誘導体が小腸および血液脳関門を渡る生物剤を配送することができる、少なくとも一つのペプチドまたはその誘導体を含む。
【0010】
本発明の好ましいペプチドは、ペプチドが小腸および血液脳関門を渡ると共に小腸および血液脳関門を越えて生物剤を配送することができる、Arg−Val−Leu−Asp−Gly−Asp−Arg−Thr−Arg−Trp−Gly(配列番号:4)のアミノ酸配列を提供する。
本発明は、さらに、ポリペプチドまたはその誘導体が配列番号:1、2、3、4、5、6または7のアミノ酸配列を含むポリペプチドを提供する。
本発明の好ましいペプチド、ペプチドの変異体または誘導体は、Xがあらゆるアミノ酸である配列Arg−Val−X−Asp−X−Asp−X−Thr(配列番号:7)(またRVXDXDXTとして単一文字アミノ酸符号に短縮される)を有する。
【0011】
本発明の別の実施形態は、モチーフ配列番号:6:Y−Y−X−Y−X−Y−X−Yを有する少なくとも一つのペプチド化合物を提供する。式中、
はArgまたはLysなどの正電気を帯びたアミノ酸であり、
はVal、Leu、IleまたはMetであり、
はGluまたはAspなどの負電気を帯びたアミノ酸であり、
はGluまたはAspのような負電気を帯びたアミノ酸であり、
はThrまたはSerであり、
Xはあらゆるアミノ酸である。
【0012】
本発明のポリペプチドは、さらに、ポリペプチドまたはその誘導体のカルボキシル末端アミノ酸がペプチドのC−末端カルボキシル基に結合される、ポリペプチドまたはその誘導体のカルボキシル末端での伸長を提供する。本発明の一つの実施形態は、該配列番号:2,3,または5のアラニンのカルボキシル末端がカルボキシテトラメチルローダミンに結合される、アミノ酸配列配列番号:2,3,または5を含む医薬組成物を提供する。
【0013】
本発明は、また、本明細書において「ペプチド(peptide)模倣体」または「ペプチド(peptido)模倣体」として言及する、アミノ酸以外の化合物の誘導体であるその分子構造残基中に含むことができるポリペプチドの類似物を提供する。ペプチドリガンドの他の類似物は、その鎖の変更位相構造を有する化合物、特に分子中に環または複数の環を閉じると共にその構造を拘束する化学結合を有する非直鎖型化合物である。本発明リガンドの他の類似物には、L−α−アミノ酸残基、D−α−アミノ酸残基、非α−アミノ酸残基の別の選択を含む変更配列を持つペプチドが挙げられる。
【0014】
本発明のペプチドリガンドは、組み換え法および化学合成を含む公知の方法を用いることにより作成することができる。ペプチドを符号化する核酸を含むベクターの適する宿主細胞中への導入を通してペプチドを生産する組み換え法は、本明細書において参考のために包含するSambrook et.al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2d Ed,Vols.1〜8,Cold Spring Harbor,New York(1989)に記載されているように公知の技術である。直鎖アミノ酸配列は、例えば、メリフィールドの固相ペプチド合成(Merrifield et.al.,J.Am.Chem.Soc.,85:2149(1964))により合成される。
【0015】
あるいは、本発明のリガンドは、技術上公知の標準溶液法を用いて合成することができる(例えば、本明細書において参考のために包含するBodanszky,M.,Principles of Peptide Synthesis(Springer−Verlag,1984)を参照すること)。本発明の新奇に合成されたリガンドは、例えば、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)により容易に精製することができると共に、例えば、質量分析またはアミノ酸配列分析を用いて特性分析を行うことができる。合成ペプチドに対して95%を超える純度が好ましいが、より低い純度も許容可能である。
【0016】
従って、別の実施形態において、本発明のポリペプチドは、配列番号:4の誘導体が小腸および血液脳関門を渡り、生物剤を小腸および血液脳関門を越えて配送することができるオリゴペプチド、化学誘導体またはペプチド模倣体から構成される。
本発明の別の実施形態において、リガンドは生物剤と結合する。こうした結合は、リガンドおよび生物剤の化学的、遺伝子的または物理的結合、または上述の成分の混合、またはそれらの共投与により達成することができる。
本発明のペプチド、誘導体またはペプチド模倣体は、一つ以上の以下の活性を有する:
【0017】
本発明は、ポリペプチドまたはその誘導体が小腸および血液脳関門を渡ると共に小腸および血液脳関門を越えて生物剤を配送することができ、ポリペプチドまたはその誘導体が配列番号:4のポリペプチドまたはその誘導体の生物活性の少なくとも約20%を有する、少なくとも一つのペプチドまたはその誘導体を含むポリペプチドを提供する。
なおさらに、本発明は、ポリペプチドまたはその誘導体が少なくとも0.0005の経口治療効率係数、または少なくとも1の血液脳分割係数を有する、少なくとも一つのペプチドまたは誘導体を含むポリペプチドを提供する。
【0018】
本ポリペプチドの生物活性は、Caco2細胞横断輸送;血液脳関門の生体外モデル横断輸送を含む生体外バイオアッセイ、生体内経口生体利用効率分析;または生体内中枢神経系生体利用効率分析を用いることにより測定することができるがそれらに限定されない。
【0019】
本発明は、さらに、担体に結合する1以上のリガンドを含むポリペプチドを包含する。本発明の別の実施形態において、リガンドは、リガンドの薬理学的特性を改善して血液脳関門を越えて生物剤を配送するためのリガンドの選択性および効果を増大させるためにタンパク質、ウイルス、ポリマーまたはあらゆる他の担体との結合を有する。リガンドおよび担体の結合は、リガンドおよび担体の化学的、遺伝子的または物理的結合、または上述の成分の混合、またはそれらの共投与により達成することができる。
【0020】
本発明の別の実施形態において、担体と結合したリガンドは、さらに生物剤と結合されるが、これは本発明の前の実施形態において説明したリガンド−担体組成物および生物剤の化学的、遺伝子的または物理的結合により達成される。本発明は、さらに、生物剤と結合した1以上のリガンドまたは担体を伴うそれらの複合体を含む医薬組成物を提供する。
本発明のなお別の実施形態において、リガンドは変性生物剤と結合されるが、これはリガンドをプロドラッグであり生物剤の活性を全く示さないような物である変性生物剤に化学的に結合することにより達成される。活性生物剤は身体中の化学反応または酵素反応の作用の際にこうした物から放出される。
【0021】
本発明は、治療性化合物の経口およびCNS生体利用効率を高めることができる本発明の少なくとも一つのリガンドを含むポリペプチドにまで及ぶ。本発明は、さらに、担体と結合した本発明の1以上のリガンドを含むポリペプチドを包含する。
さらに、本発明は、こうした疾患が中枢神経系(CNS)病理に関係する疾患の診断および治療のためのポリペプチドにまで及ぶ。
本発明は、さらに、(a)ペプチド模倣体に限定されないがそれを含む上述のペプチド、変異体または化学誘導体のあらゆるもの;(b)リガンドと化学的に接合するかまたは物理的に結合するかいずれかの医薬的に許容可能な担体または賦形剤;および(c)少なくとも一つの治療剤を含む、CNS病理の診断および治療に有用なポリペプチドを目指す。
【0022】
本発明は、さらに、治療剤に化学的に接合されるかまたは遺伝子的に融合されたペプチド模倣体を包含する上述のペプチド、変異体または化学誘導体のあらゆるものを含む、CNS病理の診断および治療に有用なポリペプチドを提供する。
上述のような医薬組成物の有効量を被験者に投与することを含む、望ましくないCNSに関係する疾患または病状を有する被験者におけるCNS病理抑制のための方法も、また、提供される。
【0023】
本発明は、また、本発明の医薬組成物の有効量および医薬的に許容可能な担体を該患者に投与することを含むこうした治療の必要性がある患者におけるCNS病理に関係する疾患を治療する方法を提供する。
本発明のこれらおよび他の態様は、以下の図面および詳細説明を参照することによりさらに良く理解される。
【0024】
本発明の詳細な説明
I.リガンド
上述の説明のように、本発明は、生物剤または調合剤の経口およびCNS生体利用効率を高めることができるリガンドを含む医薬組成物を提供する。本発明は、また、リガンドが中で治療または診断目的に用いられる生物剤の配送を改善するための標識部分として使用される医薬組成物を提供する。
本発明のリガンドの調製は、公知のペプチド合成有機化学法によるか、または組み換えDNA技術の支援により達成される。
【0025】
II.化学ペプチド合成
ペプチド合成有機化学法は、均一相中においてかまたは固相の助けによるかのいずれかで縮合反応によってアミノ酸残基をカップリングすることを含むと考えられる。縮合反応は以下のように遂行することができる:
a)縮合剤の存在下における、化合物(アミノ酸、ペプチド)の遊離カルボキシル基との、および他の保護反応基の遊離アミノ基および他の保護反応基を有する化合物(アミノ酸、ペプチド)との縮合;
b)化合物(アミノ酸、ペプチド)の活性カルボキシル基との、および遊離または他の保護反応基の遊離アミノ基および遊離または他の保護反応基を有する化合物(アミノ酸、ペプチド)との縮合。
【0026】
カルボキシル基の活性化は、特に、カルボキシル基を酸ハロゲン化物、アジド、無水物、イミダゾリドまたはN−ヒドロキシ−スクシニミド、N−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾールまたはp−ニトロフェニルエステルなどの活性エステルに転換することにより行うことができる。上記の縮合反応用の最も普通の方法には、カルボジイミド法、アジド法、混合無水物法、およびThe Peptides,Analysis,Synthesis,Biology Vol.1〜3(Ed.Gross,E.and Meinhofer,J.)1979,1980,1981(Academic Press,Inc.)に記載されているような活性エステルを用いる方法がある。特に有用な方法は、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−ウロニウム、または−ホスホニウムエステル、例えば、PyBOP(ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート)(Martinez,J.etal.(1988)J.Med.Chem.28、1874)を用いるカストロタイプ法である。
【0027】
「固相」を用いる本発明のリガンドの調製は、例えば、J.Amer.Chem.Soc.85,2149(1963)およびInt.J.Peptide Protein Res.35,161〜214(1990)中に記載されている。調製しようとするペプチドのアミノ酸のカップリングは、通常、カルボキシル末端側からスタートする。この方法に対して、上に反応基があるか、または上にこうした基を導入することができる固相が必要とされる。これは、例えば、ベンゼンおよびジビニルベンゼンと反応性クロロメチル基とのコポリマー、またはヒドロキシメチルまたはアミン官能基との反応性を示す高分子固相であることができる。
【0028】
所期のアミノ酸配列の合成後、樹脂からのペプチドの分離が続く。例えば、トリフルオロ酢酸中に溶解したトリフルオロメタンスルホン酸またはメタンスルホン酸を用いて樹脂をフッ化水素と接触させることは、ペプチドを樹脂から分離させる。ペプチドは、また、低級アルコール、好ましくはメタノールまたはエタノールとのエステル交換により担体から除去することができるが、この場合にペプチドの低級アルキルエステルが直接形成される。同様に、アンモニアの支援による分割は本発明によるペプチドのアミドを生成する。
【0029】
特に適する固相は、例えば、Rink(1987)Tetrahedron Lett.,28,3787により記載されているリンクアミド樹脂(4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−Fmoc−アミノメチル)−フェノキシ−コポリスチレン−1%ジビニルベンゼン樹脂)である。合成後、ペプチドはトリフルオロ酢酸を用いる穏やかな条件下でカルボキシアミド誘導体を生成しながら固相から分離することができる。
【0030】
縮合反応に参画しない場合がある反応基は、前述のように、酸、塩基または還元の支援による加水分解により極めて容易に再度除去することができる基によって効果的に保護される。こうして、カルボキシル基は、例えば、メタノール、エタノール、t−ブタノール、ベンジルアルコールまたはp−ニトロベンジルアルコールおよび固形支持体に結合されたアミンとのエステル化により効果的に保護することができる。
【0031】
アミノ基を有効に保護することができる基には、エトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、t−ブトキシ−カルボニル(t−boc)またはp−メトキシ−ベンジルオキシカルボニル基、またはベンゼン−スルホニルまたはp−トルエンスルホニル基などのスルホン酸から誘導される酸基がある。置換または非置換アリールまたはアリールアルキル基、例えば、ベンジルおよびトリフェニルメチル、またはオルトニトロフェニル−スルフェニルおよび2−ベンゾイル−1−メチルービニルなどの基のような他の基も用いることができる。特に適するα−アミノ−保護基は、例えば、塩基感受性9−フルオレニル−メトキシカルボニル(Fmoc)基(Carpino & Han(1970)J.Amer.Chem.Soc.92,5748)である。可能な保護基のさらに広範囲な評価は、The Peptides,Analysis,Synthesis,Biology,Vol.1〜9(Eds.Gross,Udenfriend and Meienhofer)1979〜1987(Academic Press,Inc.)中に見出すことができる。
【0032】
また、リジンのα−アミノ基を保護することは必要であり、アルギニンのグアニジン基にとっても望ましいことである。この点についての通例の保護基はリジンに対してBoc基、アルギニンに対してPmc、Pms、Mbs、またはMtr基である。
保護基は、特定基の性質に応じて種々の従来の方法、例えば、トリフルオロ酢酸の支援により、または、例えば、水素およびパラジウムなどの触媒、または氷酢酸中のHBrによる穏やかな還元により分離することができる。
【0033】
III.リガンドの生合成
本発明のリガンドは、公知の組み換え技術によることを含めてあらゆる技術により調製することができる。上述の技術は、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」,Second Edition by Sambrook et.al.,Cold Spring Harbor Press,1989;「Current Protocols in Molecular Biology」,Volumes I〜III,Ausubel,R.M.,ed.,1994;「Cell Biology:A Laboratory Handbook」,VolumesI〜III,J.E.Celis,ed.,1994;「Current Protocols in Immunology」,Volumes I〜III,Coligan,J.E.,ed.,1994;「Oligonucleotide Synthesis」,M.J.Gait ed.,1984;「Nucleic Acid Hybridization」,B.D.Hames & S.J.Higgins eds.,1985;「Transcription And Translation」,B.D.Hames & S.J.Higgins,eds.,1984;「Animal Cell Culture」,R.I.Freshney,ed.,1986;「Immobilized Cells And Enzymes」,IRL Press,1986;B.Perbal,「A Practical Guide To Molecular Cloning」,1984.などの実験室マニュアルにさらに詳しく記載されている。
【0034】
本発明のリガンドを符号化するDNAは技術上知られる多様な方法により調製することができる。これらの方法には、その全体の開示を本明細書において参考のために包含するEngels et.al.,Agnew.Chem.Int.Ed.Engl.,28:716〜734(1989)に記載されている、トリエステル、亜リン酸塩、ホスホラミダイトおよびH−ホスホン酸塩法などのあらゆる方法による化学合成が挙げられるがそれらに限定されない。一つの実施形態において、発現宿主細胞により選択されたコドンが本発明のリガンドを符号化する設計DNA中に用いられる。
【0035】
組み換えDNA技術を用いてリガンドを生産する方法の1例は、(1)リガンド、充当されたリンカーおよび拘束部位コード配列を符号化するDNAオリゴヌクレオチドを合成的に生成し、(2)DNAが作動可能にプロモーターと結合されるように発現ベクターなどの適切なベクター中にDNAを挿入し、(3)DNAを発現できる微生物または他の発現系中にベクターを挿入し、および(4)組み換え的にリガンドを単離する段階を伴う。
【0036】
当業者は、本発明のリガンドが原核および真核両方の種々の細胞系においても生産されることができ、これらはすべて本発明の範囲内にあることを認識するであろう。適切なベクターには、ウイルス性、細菌性および真核性発現ベクターが挙げられる。DNAなどの核酸分子は、それが転写および翻訳制御情報を含有するヌクレオチド配列を含む場合に本発明のリガンドを「発現できる」と言われ、こうした配列はポリペプチドを符号化するヌクレオチド配列に「作動可能なように結合」される。遺伝子配列発現に必要とされる制御領域の正確な性質は、微生物から微生物へと変化することが可能であるが、しかし、一般に、原核生物においてプロモーター(RNA転写の開始を指図する)およびRNA中に転写される時に合成開始の信号を送るDNA配列の両方を含有するプロモーター領域を含む。こうした領域は、通常、TATAボックス、キャッピング配列、およびCAAT配列などの転写および翻訳の開始と関連した5’−非コード配列を含む。
【0037】
例えば、本発明のリガンドを符号化するDNA分子の全コード配列は、適切な発現ベクター中で以下の1以上と組合せてこうした発現を可能とすることができる:(1)外因性プロモーター配列(2)リボソーム結合部位(3)担体タンパク質(4)ポリアデニル化信号(4)分泌信号。修正は原核または真核中の発現を改善するために細胞5’−未翻訳および3’−未翻訳配列中になされることができる;または、コドンはそれらが同一のアミノ酸を符号化する一方でそのコドンが選択された発現系の中で好ましいコドンであることが可能であるように修正することが可能である。
【0038】
こうした好ましいコドンの使用は、例えば、本明細書において参考のためにそれらの全体を包含するGrantham et.al.,Nuc.Acids Res.,9:43〜74(1981)、およびLathe,J.Mol.Biol.,183:1〜12(1985)中に記載されている。さらに、いったん適切なベクター中にクローン化されると、DNAは前述のように様々な方法で変化して、それら自体が本発明のリガンドであるアミノ酸配列配列番号:1を含むペプチドの類似物、誘導体または変異体を生産することができる。
【0039】
別の実施形態において、本発明のリガンドは、リガンドが中でそのN−末端またはそのC−末端、または両方の末端で1以上のペプチド複製品に融合される融合タンパク質として発現することができる。特定の実施形態において、融合タンパク質は、少なくともリガンドの実質的な部分が融合タンパク質からタンパク質分解的に裂かれてリガンドを生成することができるように、特定的に裂けることが可能である。こうした融合タンパク質は化学的または酵素的プロテアーゼによって認識される裂け目部位により設計することができる。
【0040】
一つの実施形態において、融合タンパク質はリガンド配列の除去に対する独特な裂け目部位(または複数の部位)により設計される、すなわち、融合タンパク質は所定のプロテアーゼ(または複数のプロテアーゼ)がリガンドから裂け出すが、しかし、リガンド内のいかなる部位においても裂かれないように設計され、その結果リガンドの分裂を避ける。別の実施形態において、融合接合部(または複数の接合部)での裂け目部位(または複数の部位)は所定の酵素による融合タンパク質の開裂が融合タンパク質配列の残分から真正で無傷のリガンド配列を遊離する。pTrcHisAベクター(インビトロジェン)および他の類似のベクターは、大腸菌における本発明のリガンドを含む融合タンパク質の増強翻訳効率のためのtrcプロモーターからの高レベルの規制された転写を得るために用いることができる。
【0041】
本発明のリガンドは、また、金属親和性樹脂を用いる1段階精製用にN−末端のニッケル結合性ポリヒスチジン後部に融合されて発現することができる。融合タンパク質中のエンテロキナーゼ開裂認識部位は、精製リガンドからN−末端ヒスチジン融合タンパク質の次の除去を可能とする。リガンド融合タンパク質は適切な担体タンパク質、例えば、β−ガラクトシダーゼ、グリーン蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ、デヒドロフォレート・レダクターゼ、チレオドキシン、タンパク質Aブドウ球菌アウレウスおよびグルタチオンS−トランスフェラーゼを用いて生産することができる。これらの例は、勿論、限定用ではなく説明用に意図されている。
【0042】
本発明のリガンドは、また、ウイルスコートタンパク質により融合タンパク質として合成され、例えば、バクテリオファージM13、T7、T4およびラムダ、ガンマgt10、ガンマgt11など;アデノウイルス、レトロウイルスおよびpMAM−ネオ、およびpKRCなどのウイルス粒子の表面上に発現することができる。
【0043】
一般に、原核生物発現ベクターは、宿主細胞と適合する種から誘導される複製および制御配列を含有する。ベクターは、通常、複製部位、および形質転換細胞における形質選択を提供することができるタンパク質を符号化する配列を担持する。例えば、ベクターは、pBR322(ATCCNo.37,017)、phGH107(ATCCNo.40,011)、pBO475、pS0132、pRIT5、pRIT20またはpRIT30シリーズ中のあらゆるベクター(Nilsson and Abrahmsen,Meth.Enzymol.,185:144〜161(1990))、pRIT2T、pKK233−2、pDR540、pRL−ラムダ、pQE70、pQE60、pQE−9(キアゲン)、pBS,ファージスクリプト、psiX174、pブルースクリプトSK、pBsKS、pNH8a、pNH16a、pNH18a、pNH46a(ストラタジーン);pTRC99A、pKK223−3、pKK233−3、pDR540、pRIT5(ファルマシア)を含む。真核:pWLneo、pSV2cat、pOG44、pXT1、pSG(ストラタジーン)pSVK3、PBPV、pMSG、pSVL(ファルマシア)は、原核宿主中の発現に適する。
【0044】
こうしたプラスミドは、例えば、サムブルック(Sambrook)(「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」,second edition,edited by Sambrook,Fritsch,& Maniatis,Cold Spring Harbor Laboratory,(1989)を参照すること)によって開示されている。バシラスプラスミドはpC194、pC221、およびpT127などを含む。こうしたプラスミドはグリクザン(Gryczan)(In:The Molecular Biology of the Bacilli,Academic Press,NY(1982),pp.307〜329)によって開示されている。
【0045】
適するストレプトマイセスプラスミドには、p1J101(Kendall et.al.,J.Bacteriol.169:4177〜4183(1987))、および.phi.C31(Chater et.al.,In:Sixth International Symposium on Actinomycetales Biology,Akademiai Kaido,Budapest,Hungary(1986),pp.45〜54)などのストレプトマイセスバクテリオファージが挙げられる。シュードモナスプラスミドは、ジョンら(John et.al.)(Rev.Infect.Dis.8:693〜704(1986))、およびイザキ(Izaki)(Jpn.J.Bacteriol.33:729〜742(1978))により概説されている。
【0046】
本発明のリガンドに対して符号化する発現ベクターを含有する原核宿主細胞には、大腸菌K12株294(ATCC NO.31446)、大腸菌株JM101(Messing et.al.,Nucl.Acid Res.,9:309(1981))、大腸菌株B、大腸菌株.sub..chi.1776(ATCC No.31537)、大腸菌c600株(Appleyard,Genetics,39:440(1954))、大腸菌W3110株(F−、ガンマ−、原栄養菌株、ATCC No.27325)、大腸菌株27C7(W3110,tonA,phoA E15,(argF−lac)169,ptr3,degP41,ompT,kan.sup.r)(米国特許第5,288,931号、ATCC No.55,244)、バシラスサブチリス、サルモネラチフィムリウム、セラチアマルセサンおよびシュードモナス種が挙げられる。例えば、大腸菌K12株MM294(ATCC NO.31446)は特に有用である。用いることが可能である他の微生物菌株には、大腸菌Bおよび大腸菌X1776(ATCC No.31,537)などの大腸菌株が挙げられる。これらの例は、勿論、限定用ではなく説明用に意図されている。
【0047】
原核細胞中に本発明のリガンドを発現するために、リガンド符号化DNAを作動可能なように機能的原核プロモーターに結合させることが必要である。こうしたプロモーターは、構造性かまたはさらに好ましくは調節可能(すなわち、誘導可能かまたは抑制解除可能)のいずれかであり得る。構造性プロモーターの例には、バクテリオファージ.ラムダ.のintプロモーター、pBR322のβ−ラクタマーゼ遺伝子配列のblaプロモーターおよびpPR325のクロラムフェニコール・アセチル・トランスフェラーゼ遺伝子配列のCATプロモーターなどが挙げられる。
【0048】
誘導可能原核プロモーターの例には、バクテリオファージλの主要右および左プロモーター(PおよびP)、大腸菌のtrp、recA、λacZ、λacI、およびgalプロモーター、アルファ.−アミラーゼ(Ulmanen et.al.,J.Bacteriol.162:176〜182(1985))およびB.サブチリスのζ−28−特定プロモーター(Gilman et.al.,Gene Sequence 32:11〜20(1984))、バシラスバクテリオファージのプロモーター(Gryczan,In:The Molecular Biology of the Bacilli,Academic Press,Inc.,NY(1982))、およびストレプトマイセスプロモーター(Ward et.al.,Mol.Gen.Genet.203:468〜478(1986)を参照すること)が挙げられる。
【0049】
組み換え型DNA構築プロモーターにおいて最も普通に用いられているものには、P−ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)およびラクトースプロモーター系(Chang et.al.,Nature.375,615(1978);Itakura et.al.,Science,198,1056(1977);Goeddel et.al.,Nature,281,544(1979)を参照すること)およびトリプトファン(trp)プロモーター系(Goeddel et.al.,Nucleic Acids Res.,8,4057(1980);EPO Appl.Publ.No.0036,776を参照すること)が挙げられる。これらが最も普通に用いられている一方で、他の微生物プロモーターが発見され利用されてきており、それらのヌクレオチド配列に関する詳細が公表されてきて、熟練工によりプラスミドベクターを用いてそれらを機能的にくくることが可能となってきた(例えば、Siebenlist et.al.,Cell,20,269(1980)を参照すること)。
【0050】
原核細胞における適正な発現は、また、遺伝子配列−符号化配列の上流にリボソーム結合性部位の存在を必要とする。こうしたリボソーム結合性部位は、例えば、ゴールドら(Gold et.al.,)Ann.Rev.Microbiol.35:365〜404(1981)により開示されている。リボソーム結合性部位および翻訳開始に必要とされる他の配列は、作動可能なように本発明のペプチドを符号化する核酸分子に結合される。バクテリア系における翻訳は、第一メチオニンを符号化するコドンで開始される。この理由により、ペプチド配列中にATGコドンを含み、プロモーターとペプチドを符号化するDNA配列間の結合がメチオニンを符号化することができるいかなる干渉性コドンも含まないことを確認することは好ましい。
【0051】
原核生物に加えて、酵母、または多細胞性微生物から誘導される細胞などの真核微生物は宿主細胞として用いることができる。数多くの他の菌株が一般に使用可能であるが、サッカロマイセス・セレヴィシエまたは通常のパン酵母が、真核細胞の中では最も普通に用いられている。サッカロマイセス中の発現のために、例えばプラスミドYRp7(Stinchcomb et.al.,Nature 282,39,1979;Kingsman et.al.,Gene 7,141(1979);Tchemper et.al.,Gene 10:157(1980)を参照すること)が一般に用いられる。このプラスミドは、すでに、トリプトファン中で成長する能力を欠く酵母の突然変異菌株に対する選択標識を提供するtrp1遺伝子、例えば、ATCC No.44,076またはPEP4−1(Jones,Genetics,85,12,1977)を含む。
【0052】
酵母宿主細胞ゲノムの特徴としてのtrp1損傷の存在は、次に、トリプトファンの不在下における形質転換の成長を検出するための効果的な環境を提供する。酵母ベクター中の適する促進性配列には、3−ホスホグリセレートキナーゼ(Hitzeman et.al.,J.Baiol.Chem.255,2073(1980))またはエノラーゼ、グリセルアルデヒド−3−フォスフェイトデヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース−6−フォスフェイトイソメラーゼ、3−ホスホグリセリン酸ムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、グルコースリン酸イソメラーゼ、およびグルコキナーゼなどの他の解糖酵素(Hess et.al.,J.Adv.Enzyme Reg.7:149(1968)、Holland et.al.,Biochemistry 17:4900(1978)を参照すること)が挙げられる。
【0053】
適する発現プラスミドを構築することにおいて、これらの遺伝子に関係する終結(termination)配列も、mRNAのポリアデニル化および終結を提供するために発現するように期待されている発現ベクター3’配列中にくくられる。成長条件により支配される転写の付加的利点を有する他のプロモーターには、アルコールデヒドロゲナーゼ2に対するプロモーター部位、イソシトクロムC、酸ホスファターゼ、窒素代謝に関係する分解系酵素、および前述のグリセルアルデヒド−3−フォスフェイトデヒドロゲナーゼ、およびマルトースおよびガラクトース活用を担う酵素がある。酵母適合プロモーター、複製源および終結配列を含有するあらゆるプラスミドベクターが適する。
【0054】
加えて、植物細胞も宿主として利用可能であり、カリフラワーモザイクウイルス35Sおよび19S、およびノパリンシンターゼプロモーターおよびポリアデニル化信号配列などの植物細胞と適合する制御配列は利用可能である。別の好ましい宿主は昆虫細胞、例えばショウジョウバエ幼虫である。昆虫細胞を宿主として用いて、ショウジョウバエ・アルコールデヒドロゲナーゼ・プロモーターを用いることができる。Rubin,Science 240:1453〜1459(1988)を参照すること。
【0055】
本発明のリガンドは脊椎動物宿主細胞中で生産することができる。培養中(組織培養)の脊椎動物細胞の増殖は、近年での決まりの手順になってきた(Tissue Culture,Academic Press,Kruse and Patterson,editors(1973)を参照すること)。有用な哺乳動物宿主細胞の例には、SV40(COS−7,ATCC CRL1651)により形質転換されるモンキー腎臓CV1株;ヒト胎児腎臓株(浮遊培養における増殖用にサブクローン化された293または293細胞、Graham et.al.,J.Gen Virol.,36:59(1977));胎児ハムスター腎臓細胞(BHK,ATCC CCL70);チャイニーズハムスター卵巣細胞/−DHFR(CHO,Urlaub and Chasin,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,77:4216(1980));マウスセルトリ細胞(TM4,Mather,Biol.Reprod.,23:243〜251(1980));モンキー腎細胞(CV1,ATCC CCL70);アフリカグリーンモンキー腎細胞(VERO−76,ATCC CRL−1587);ヒト頚癌細胞(HELA,ATCC CCL2);イヌ腎細胞(MDCK,ATCC CCL134);バッファローラット肝細胞(BRL3A,ATCC CRL1442);ヒト肺細胞(W138,ATCC CCL75);ヒト肝細胞(Hep G2,HB8065);マウス乳癌(MMT060562,ATCC CCL51);TRI細胞(Mather et.al.,Annals N.Y.Acade.Sci.,383:44〜68(1982));MRC5細胞;FS4細胞;およびヒト肝臓癌細胞株(Hep G2)が挙げられる。
【0056】
哺乳類の宿主細胞中の発現のために、有用なベクターには、SV40から誘導されるベクター、pRK5およびpRK7を含むpRKベクターなどのサイトメガロウイルスから誘導されるベクター(Suva et.al.,Science, 237:893〜896(1987),EP307,247(Mar.15,1989),EP278,776(Aug.17,1988))ワクシニアウイルスまたは他のポックスウイルスから誘導されるベクター、およびモロニーのマウス白血病ウイルス(MoMLV)から誘導されるベクターなどのレトロウイルスベクターが挙げられるがそれらに限定されない。
【0057】
本発明ペプチドの真核宿主における本発明発現のリガンドの生産は、真核の制御領域の使用を必要とする。こうした領域は、一般に、RNA合成の開始を方向付けるために十分なプロモーター領域を含む。好ましい真核プロモーターには、例えば、マウスメタロチオネインI遺伝子配列のプロモーター(Hamer et.al.,J.Mol.Appl.Gen.1:273〜288(1982));ヘルペス・ウイルスのTKプロモーター(McKnight,Cell31:355〜365(1982));SV40初期プロモーター(Benoist et.al.,Nature(London)290:304〜310(1981));酵母gal4遺伝子配列プロモーター(Johnston et.al.,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)79:6971〜6975(1982);Silver et.al.,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)81:5951〜5955(1984)を参照すること)が挙げられる。
【0058】
複製源は、SV40または他のウイルス(例えば、ポリオーマ、腺、VSV、BPV)源から誘導することが可能であるように、外因性起源を含むようなベクターの構築により提供され得るか、または宿主細胞染色体の複製機構により提供され得るかのいずれかである。ベクターが宿主細胞染色体中に組み込まれる場合、後者は多くの場合に十分である。十分な量のタンパク質は細胞培養により生産されるが、しかし、第二コード配列を用いる精製は生産レベルをなお一層高めることに役立つ。一つの第二コード配列はジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR、これはメトトレキサート(MTX)などの外部制御パラメータにより影響を受け、その結果メトトレキサート濃度の制御により発現の制御が可能となる(Urlaub and Chasin,Proc.Natl.Acad,Sci.(USA)77:4216(1980))を含む。
【0059】
場合により、本発明のリガンドは作動可能なように分泌リーダー配列に結合されて、培地中への宿主細胞による発現産物の分泌をもたらす。分泌リーダー配列の例には、stII、エコチン(ecotin)、lamB、ヘルペスGD、1pp、アルカリホスファターゼ、転化酵素、およびアルファ係数が挙げられる。また本明細書において使用に適するものにタンパク質Aの36アミノ酸リーダー配列がある(Abrahmsen et.al.,EMBO J.,4:3901(1985))。
【0060】
いったん構築物(複数を含む)を含有するベクターまたは核酸分子が発現用に調製されると、DNA構築物(複数を含む)は、多様な適する手段、すなわち、形質転換、トランスフェクション、接合、原形質融合、電気穿孔法、粒子銃技術、リポフェクチン、リン酸カルシウム析出、直接微量注入法、およびDEAE−デキストラン・トランスフェクションなどのいずれによっても適切な宿主細胞中に導入することが可能である。プラスミドDNAによる真核細胞株のトランスフェクションに対する最も有効な方法は所定の細胞タイプによって変わる。
【0061】
ベクター導入後、受容細胞はベクター含有細胞の増殖に対して選択する選択性培地中で増殖する。クローン化遺伝子分子(複数を含む)の発現は、本発明のリガンドの産生をもたらす。これは形質転換細胞中に、またはこれらの細胞を識別するための誘導後(例えば、ブロモデオキシウラシルを神経芽腫細胞などに投与することにより)に起こり得る。培養条件の変化は本発明のリガンドを形成するために用いることができる。最も好ましい条件は生理学上の条件を模倣したものである。
【0062】
トランスフェクションは、いかなるコード配列が実際に発現されるかどうかに関係なく、宿主細胞による発現ベクターの取り込みを意味する。トランスフェクションの多くの方法、例えば、CaPO析出および電気穿孔法が等業者に知られている。良好なトランスフェクションは、一般に、このベクター作動のいかなる兆候でも宿主細胞内に起こる場合に認識される。
【0063】
形質転換は、DNAが染色体外の要素または染色体の成分のいずれかとして複製可能なように微生物中にDNAを導入することを意味する。用いられる宿主細胞に応じて、形質転換はこうした細胞に適切な標準技術を用いて行われる。Sambrook et.al.,Molecular Cloning(2nd ed.),Cold Spring Harbor Laboratory,New York(1989)のセクション1.82に記載されているように、塩化カルシウムを用いるカルシウム処理は、一般に、実質的に細胞壁バリアを含有する原核または他の細胞用に用いられる。アグロバクテリア・チュームフェイシエン(tumefaciens)による感染は、Shaw et.al.,Gene,23:315(1983)および1989年6月29日公告のWO89/05859に記載されているように、ある種の植物細胞の形質転換用に用いられる。
【0064】
こうした細胞壁のない哺乳類細胞に対しては、上述のサムブルックら(Sambrook et.al.)のセクション16.30〜16.37に記載されているリン酸カルシウム析出法が好ましい。哺乳類細胞宿主系形質転換の一般的な態様は、1983年8月16日発行の米国特許第4,399,216号中にアキセル(Axel)により記載されている。酵母菌中への形質転換は、一般に、Van Solingen et.al.J.Bact.,130:946(1977)およびHsiao et.al.,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),76:3829(1979)の方法に従って行われる。しかし、核注入、電気穿孔法、または原形質融合によるなどのDNAを細胞中に導入するための他の方法も用いることが可能である。
【0065】
本発明のリガンドを生産するために用いられる宿主細胞は、一般的にサムブルックら(Sambrook et.al.)に記載されているように多様な培地中で培養することができる。多種多様の転写および翻訳の制御配列を、発現を制御する宿主の性質に応じて用いることが可能である。制止または活性化を可能とする転写開始制御信号は、遺伝子配列の発現が調節できるように選択することが可能である。興味あるものは、温度を変更することにより発現が制止されたり開始されたりすることが可能である温度感性のあるものか、または化学(代謝など)制御を受けやすい制御信号である。
【0066】
細胞内発現系またはペリプラスム空間分泌系において、本発明の組み換え的に生産されるリガンドは、宿主細胞膜/細胞壁を分裂させることにより(例えば、浸透圧衝撃または界面活性剤中で宿主細胞膜の溶解度を高めることにより)培養細胞から回収することができる。あるいは、細胞外の分泌系において、組み換え的に生産される本発明のリガンドは培養培地から回収することができる。第一段階として、培養培地または溶解物を遠心分離してあらゆる粒子状の細胞破片を除去する。
【0067】
次に、膜および可溶性タンパク質留分を分離する。次に、リガンドは可溶性タンパク質留分から精製することができる。リガンドが膜結合種として発現する場合は、膜結合ペプチドは界面活性剤での可溶化により膜留分から回収することができる。次に、粗ペプチド抽出物は、さらに、免疫親和性上の分画化またはイオン交換カラム;エタノール沈殿;逆相HPLC;シリカ上またはDEAEなどのカチオン交換樹脂上のクロマトグラフィー;クロマト集束;SDS−PAGE;硫酸アンモニウム沈殿;例えばSephadexG−75を用いるゲル濾過;疎水親和性樹脂およびマトリックス上に固定されたIgGリガンドを用いるリガンド親和力などの適する手段によって精製することができる。
【0068】
生体外転写/翻訳系も、また、アミノ酸配列配列番号:1を含むペプチドを符号化するDNA分子から誘導されるRNAsを用いて本発明のリガンドを生産するために用いることができる。細胞なしの翻訳系はタンパク質およびペプチドの生合成において用いられ、タンパク質生産用の分子生物学上の標準手段になってきた(In vitro transcription and translation protocols,Methods in Molecular Biology,37 Edited by M.J.Tymms,1995,Humana Press.Inc.,Merrick,Translation of exogenous mRNAs in reticulocyte lysates,Meth.Enzymol.101:38(1983)を参照すること)。
【0069】
Kigawa,T.and Yokohama,S.,「Continuous Cell−Free Protein Synthesis System for Coupled Transcription−Translation」Journal of Biochemistry 110:166〜168(1991)、Baranov et.al.,「Gene expression in a cell−free system on the preparative scale」Gene 84:463〜466(1989)、Kawarasaki et.al.,「Along lived batch reaction system of cell−free protein synthesis」Analytical Biochemistry 226:320〜324(1995)を参照すること。
【0070】
真核および原核両方の細胞なしシステムが本発明のリガンドの生体外合成用に用いることができる。ウサギの網状赤血球(Pelham and Jackson,Eur.J.Biochem.,67:247〜256(1976))および小麦麦芽溶解物(Roberts and Paterson,Proc.Natl.Acad.Sci.,70:2330〜2334(1973))法が、真核生体外翻訳系に一般的に用いられる。スピリンら(Spirin,A.S.et.al.,)「Continuous Cell−Free Translation System Capable of Producing Polypeptides in High Yield」Science 242(4882):1162〜1164(Nov.25,1988)、ツバイ(Zubay,Ann.Rev.Genet.,7:267(1973)により考え出された大腸菌S30抽出物法、およびゴールドおよびシュバイガー(Gold and Schweiger,)Meth.Enzymol.,20:537(1971)の分画法が、原核生体外翻訳系に広く用いられる。
【0071】
生体外合成のための発現単位は5’未翻訳領域を含み、さらに、3’領域を含むことが可能である。発現単位の5’未翻訳領域は、プロモーターまたはRNAポリメラーゼ結合性配列、リボソーム結合性配列、および翻訳開始信号を含有する。5’未翻訳領域(「頭」)は、また、便利な制限酵素認識部位および翻訳エンハンサーまたは「活性体」配列(複数を含む)を含有することが可能である。3’領域は便利な制限酵素認識部位および選択配列の3’後部を含有することが可能である。発現単位は等業者には公知のプロトコルにより化学的に合成することが可能である。あるいは、これらの要素は、1以上のプラスミド中に組み込まれ、微生物中に増幅され、標準手順により精製され、発現単位中への組み立て前に制限酵素により適切な断片に切り刻むことが可能である。
【0072】
5’未翻訳領域は、T7、T3、またはSP6RNAポリメラーゼ用などのプロモーターまたはRNAポリメラーゼ結合性配列を含有する。リボソーム結合性部位に対して符号化するDNA配列は、プロモーター領域の下流または内部に位置する。リボソーム結合性部位は、原核翻訳手順が用いられる場合に原核リボソーム複合体(リボソームRNAsを含む)に対して特定的であることが可能である。
【0073】
しかし、本発明の特定の実施形態は、真核配列およびウサギ網状赤血球系(Krawetz et.al., Can.J.Biochem.Cell.Biol.61:274〜286,1983:Merick,Meth.Enzymol.101:38,1983を参照すること)などの生体外真核翻訳系を用いる。合意の翻訳開始配列、GCCGCCACCATGG、および他の機能的に関連する配列は、脊椎mRNAsに対して確立されてきた。この配列または関連配列は、生体外でのタンパク質合成を方向付けるDNA構築において用いることが可能である。この開始配列におけるATGトリプレットはメチオニンに対する翻訳開始コドンである;生体外タンパク質合成はこの点から始まると期待される。
【0074】
プロモーターと翻訳開始部位の間に、翻訳エンハンサーまたは「活性体」配列などの他の知られた配列を置くことは望ましくあり得る。例えば、ジョブリングら(Jobling et.al.,)(Nucleic Acids Res.16:4483〜4498(1988))は、タバコモザイクウイルスからの未翻訳「リーダー配列」がSP6−生成mRNAsにおいて「有意に翻訳を刺激した」ことを示した。
【0075】
彼らは、また、アルファルファモザイクウイルスRNA4の36−ヌクレオチド5’未翻訳領域が大麦のアミラーゼおよびヒトインターロイキンmRNAsの翻訳効率を増加させることを報告している(Jobling and Gehrke,Nature 325:622〜625(1987))。ゴキブリウイルス(ノダウイルス)RNA2(Friesen and Rueckert,J.Virol.37:876〜886(1981))、カブモザイクウイルスおよびブロムモザイクウイルス塗布タンパク質mRNAs(Zagorski et.al., Biochimie 65:127〜133(1983))も、また、高効率で翻訳する。対照的にいくつかの未翻訳リーダーはSP6RNAsの発現を厳しく低減させる(前述のJobling et.al.,(1988))。
【0076】
加えて、本発明のリガンドを符号化するDNA分子は、生体外発現単位中に組み込むことが可能である。一つの実施形態の中で、発現ポリペプチドは担体ポリペプチド/ペプチドおよびリガンドアミノ酸配列の両方を含有する。担体ペプチドは融合ポリペプチド量の定量化および精製に有用であろう(担体ポリペプチドに対する抗体が利用可能であるかまたは生産することができるとして)。一つの例は、融合ペプチドとして本発明のペプチドに付着することができる11アミノ酸物質Pである。抗−物質P抗体は、物質Pを含有する融合タンパク質の検出用および定量化用に市販されている。別の例は8アミノ酸標識ペプチド、「フラッグ」(Hopp et.al.,Bio/Technology 6:1204〜1210(1988)である。担体のポリペプチドの好ましい形態は、簡単な化学的または酵素的手段により新奇なポリペプチドから裂けることが可能であるものである。
【0077】
IV.アミノ酸配列配列番号:1を含むペプチドの類似物、誘導体、または変異体であるリガンド
上述のように、本発明における用途を有するリガンドはアミノ酸配列配列番号:4を含むペプチド、およびこうしたペプチドの類似物、誘導体、または変異体を含む。本明細書において用いられる用語「アミノ酸」および特定のアミノ酸へのあらゆる言及は、自然に起こるタンパク新生アミノ酸およびアミノ酸類似物などの非自然的発生アミノ酸を包含することを意図している。
【0078】
当業者は、この定義が特に指示のない限り自然に起こるタンパク新生(D)または(L)アミノ酸、ペニシラミン(3−メルカプト−D−バリン)などのアミノ酸類似物を含む化学的に変性されたアミノ酸、ノルロイシンなどの自然に起こる非−タンパク新生アミノ酸、およびアミノ酸の特徴である技術上知られた特性を有する化学的に合成された化合物を包含することを知るであろう。本明細書において用いられる用語「タンパク新生の」は、アミノ酸が公知の代謝経路を通して細胞の中のタンパク質中に組み込まれることができることを示す。
【0079】
本発明のリガンド中に(L)−または(D)−アミノ酸を含むことの選択は、部分的にペプチドの所期の特徴に応じて決まる。例えば、1以上の(D)−アミノ酸の組み込みは、生体外または生体内におけるペプチドの安定性の増大を与える。また、1以上の(D)−アミノ酸の組み込みは、例えば、本明細書において記載されている結合アッセイ、または技術上公知の他の方法を用いて測定されるペプチドの結合活性を増大させるかまたは減少させることができる。いくつかのケースの場合に、例えば、ペプチドを被験者に投与することを設計する場合に、活性を短期間に保持するペプチドを設計することが望ましい。これらのケースにおいて、1以上の(L)−アミノ酸のペプチド中への組み込みは、被験者中の内生ペプチダーゼが生体内でペプチドを消化することを可能として、それによって被験者の活性ペプチドへの暴露を制限している。
【0080】
本明細書において用いられる用語「アミノ酸同等物」は、自然発生アミノ酸の構造から離れるが、しかし、それらが生物活性を保持しているペプチド内で置換することができるようなアミノ酸構造を実質的に有する化合物を意味する。従って、例えば、アミノ酸同等物は側鎖修正または置換を有するアミノ酸を含むと共に、関連有機酸、またはアミドなども含むことができる。用語「アミノ酸」はアミノ酸同等物を含むように意図されている。用語「残基」はアミノ酸およびアミノ酸同等物の両方を意味する。
【0081】
本明細書において用いられる用語「ペプチド」はその最も広い意味において用いられ、アミノ酸同等物またはなお所期のペプチド機能活性を保持している間の他の非アミノ基を含有する化合物を指す。ペプチド同等物は1以上のアミノ酸を関連有機酸(PABAなど)またはアミノ酸などと置き換えること、あるいは側鎖または官能基の置換または修正により従来のペプチドとは異なることができる。その生物学的機能を破壊しないように限定された修正がペプチドになされることは理解される。この結果、完全にはペプチドの活性を破壊しないでアミノ酸配列配列番号:1を含むペプチドの修正物が本発明のリガンドである。こうした修正には、例えば、添加、欠失、またはアミノ酸残基の置換、アミノ酸構造または機能を模倣する化合物との置換、およびアミノ基またはアセチル基などの化学部分の添加を含むことができる。修正は意図的または偶然的であることができると共に、組成物または構造の修正であることができる。
【0082】
本発明のリガンドは、それらが拘束された第二構造中に維持される場合にも有用である。本明細書において用いられる用語「拘束された第二構造」「安定した」および「構造的に安定な」はリガンドを含むペプチド結合が自由に回転できないが、しかし、代わりに比較的固定された構造中に維持されることを示す。
【0083】
ペプチドの第二構造を拘束するための種々の方法が技術上公知であり、本発明のリガンドにおける用途を有している。例えば、−Phe−Pro−Gly−Phe−配列を含有するようなペプチドはβ−ターン、公知の第二構造を形成する。例えば、本発明のリガンドは、それを、例えば、Dedhar et.al.,J.Cell.Biol.104:585(1987);Rhodes et.al., Biochem 17:3442(1978);およびCarbone et.al., J.Immunol 138:1838(1987)により記載されている方法に従って、アルファ螺旋または三重螺旋などの螺旋を形成する配列中に組み込むことにより安定化させることができる。これらはそれぞれ本明細書において参考のために包含する。加えて、本発明のリガンドは、その活性が保持される限りにおいて、より大きな直鎖、環式または分岐ペプチド中に組み込むことができる。
【0084】
新奇に合成された直鎖ペプチドの第二構造を拘束するための特定の方法は、技術上公知の種々の方法のどれかを用いてペプチドを環化することである。例えば、本発明の環化リガンドは、例えば、本明細書において参考のために包含するSchiller et.al.,Int.J.Pept.Prot.Res.25:171(1985)により記載されているように、非隣接アミノ酸残基間のペプチド結合を形成することにより調製することができる。リガンドは、Bocおよびt−ブチル側鎖保護を有するNα−Fmoc−アミノ酸を用いて直鎖ペプチド鎖を組み立てることによりメリフィールド樹脂上に合成することができる。樹脂からのリガンドの放出後、ペプチド結合をリガンドのアミノおよびカルボキシル末端間に形成することができる。
【0085】
本発明の新奇に合成される直鎖リガンドは、また、反応性アミノ酸側鎖間の結合形成により環化することができる。例えば、システイン対を含むリガンドは合成することができ、K[Fe(CN)]でペプチドの希釈水溶液を酸化することにより二硫化物ブリッジを形成することができる。あるいは、ε(γ−グルタミル)−リジン結合などのラクタムはリジンおよびグルタミン酸残基間に形成することができ、リジノノルロイシン結合はリジンおよびロイシン残基間に形成することができ、またはジチロシン結合は2チロシン残基間に形成することができる。本発明の環状リガンドは、例えば、デスモシンのヘテロ環式構造を形成することができる4リジン残基を含有するように構築することができる(例えば、本明細書において参考のために包含する、Devlin, Textbook of Biochemistry 3rd ed.(1992)を参照すること)。
【0086】
これらおよび他の結合を形成するための方法は技術上公知であり、化学反応性の公知の規則に基づく(本明細書において参考のために包含する、Morrison and Boyd,Organic Chemistry,6th Ed.(Prentice Hall,1992)を参照すること)。
【0087】
V.ペプチド模倣体
本発明のリガンドは、また、アミノ酸配列配列番号:1を含むペプチドのペプチド模倣体を含むことができる。ペプチド類似物は、通常、医薬産業においてテンプレートペプチドのそれらに類似の特性を持つ非ペプチド薬剤として用いられる。これらのタイプの非ペプチド化合物は「ペプチド模倣体(peptide mimetics)」または「ペプチド模倣体(peptidomimetics)」と呼ばれ(Fauchere,J.(1986)Adv.Drug Res.15:29;Veber and Freidinger(1985) TINS p.392;およびEvans et.al.(1987)J.Med.Chem 30:1229を参照すること、これらは本明細書において参考のために包含する)、例えば、コンピュータ化された分子モデルの助けにより開発することができる。
【0088】
構造的に治療的に有用なペプチドに類似しているペプチド模倣体は、同等の治療または予防効果を生み出すために用いることが可能である。一般に、ペプチド模倣体は構造的にパラダイムポリペプチド(すなわち、生化学特性または薬学的活性を有するポリペプチド)に類似しており、こうしたペプチドはアミノ酸配列配列番号:1を含むが、しかし−CH−NH−、−CHS−、−CH−CH−、−CH=CH−(シスおよびトランス)、−COCH−、−CH(OH)CH−、および−CHSO−からなる群から選択される連鎖により技術上知られた方法およびさらに以下の参考文献に記載される方法によって任意に置換される1以上のペプチド連鎖を有する:
【0089】
Spatola,A.F.in「Chemistry and Biochemistry of Amino Acids,Peptides,and Proteins」B.Weinstein,eds.,Marcel Dekker,New York,p.267(1983);Spatola,A.F.Vega Data(March 1983),Vol.1,Issue 3,「Peptide Backbone Modifications」(general review);Morley,J.S.,Trends Pharm Sci(1980)pp.463〜468(general review);Hudson,D. et.al.,Int J Pept Prot Res(1979)14:177〜185(−CHNH−,−CH−CH−);Spatola,A.F.et.al.,Life Sci(1986)38:1243〜1249(−CH−S);Hann,M.M.,J Chem Soc Perkin Trans I(1982)307〜314(−CH=CH−,シスおよびトランス);Almquist,R.G. et.al.,J Med Chem(1980)23:1392〜1398(−COCH−);Jennings−White,C.et.al.,Tetrahedron Lett(1982)23:2533(−COCH−);Szelke,M.et.al.,European Appln.EP45665(1982)CA:97:39405(1982)(−CH(OH)CH−);Holladay,M.W.et.al.,Tetrahedron Lett(1983)24:4401〜4404(−C(OH)CH−);およびHruby,V.J.,Life Sci(1982)31:189〜199(−CH−S−);これらはそれぞれ本明細書において参考のために包含する。
【0090】
特に好ましい非ペプチド連鎖は−CHNH−である。こうしたペプチド模倣体は、ポリペプチドに対して、例えば、より経済的な生産、より大きな化学的安定性、強化された薬理学的特性(半減期、吸収、有効性、効き目、など)、改造された特異性(例えば、生物活性の広範なスペクトル)、および低減した抗原性などを含む有利な利点を有することが可能である。
【0091】
ペプチド模倣体の標識化は、通常、1以上のラベルを、直接またはスペーサ(例えば、アミド基)を通して、定量的な構造−活性データおよび/または分子モデルにより予測されるペプチド模倣体上の非妨害位置(複数を含む)に共有結合的に付着させることを含む。こうした非妨害位置は、一般に、ペプチド模倣体がそれらに対し相互作用を起こして治療効果を生み出す巨大分子(複数を含む)または細胞との直接接触を形成しない位置である。ペプチド模倣体の誘導体化(例えば、標識化)は、実質的に、所期のペプチド模倣体の生物学的または薬理学的活性を妨害するべきではない。
【0092】
ペプチド模倣体に対する多様な設計が可能である。例えば、結合用の必要な構造が中で非ペプチドにより安定化させられる環状ペプチドは、特に熟考される。ロブ(Lob)らへの米国特許第5,192,746号、バークジュニア(Burke,Jr)らへの米国特許第5,169,862号、ビショッフ(Bischoff)らへの米国特許第5,539,085号、アバーサ(Aversa)らへの米国特許第5,576,423号、シャショウア(Shashoua)への米国特許第5,051,448号、およびゲータ(Gaeta)らへの米国特許第5,559,103号には、こうした化合物を生み出すための多様な方法が記載されている。これらの特許はすべて本明細書において参考として包含する。ペプチド配列を模倣する非ペプチド化合物の合成も、また、技術上知られる。エルドレド(Eldred)ら(J.Med.Chem.37:3882(1994))はペプチド配列を模倣する非ペプチド拮抗薬を論じている。同様に、クー(Ku)ら(J.Med.Chem.38:9(1995))は一連のこうした化合物の合成のさらなる解明を提供している。
【0093】
本発明のリガンドであるアミノ酸配列配列番号:1を含むペプチドの誘導体は、組み換え核酸分子技術を用いて生産することができる。特定のペプチドに対する修正は、生合成の間の特定部位突然変異誘発およびアミノ酸置換を通してのことであるので意図的であり得るか、またはペプチドを産生する宿主における突然変異を通してのことなので偶然的であり得る。誘導体を含むペプチドは、Sambrook et.al.,Molecular Cloning,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)に記載されているものなどの標準突然変異誘発技術を用いて獲得することができる。例えば、サムブルック(Sambrook)の第15章にはクローン化DNAの特定部位突然変異誘発に対する手順が記載されている。
【0094】
アミノ酸配列配列番号:1を含むペプチドの誘導体には、例えば、リン酸化反応、グリコシル化、架橋化、アシル化、タンパク質分解開裂、治療用タンパク質、抗体分子、膜分子または他のリガンドに対する連鎖による、翻訳の間または後での修正が含まれるがそれには確かに限定されない(Ferguson et.al.,1988,Annu.Rev.Biochem.57:285〜320を参照すること)。
【0095】
遺伝子的に生産された誘導体の特定のタイプは、また、欠失、置換、添加、およびアミノ酸修正などのアミノ酸変更を含むがそれらに限定されない。「欠失」は関連ペプチド中に1以上のアミノ酸残基(複数を含む)がないことを意味する。「添加」は関連ペプチド中での1以上のアミノ酸残基(複数を含む)の存在を意味する。ペプチドに対する添加および欠失は、アミノ末端、カルボキシル末端、および/または内部において可能であり、アミノ酸配列配列番号:1を含むペプチドを符号化するDNA分子を変異することにより、および/またはペプチドの翻訳後修正により生産することができる。
【0096】
アミノ酸「修正」は自然発生アミノ酸を変更して非自然的発生アミノ酸を生産することを指す。非自然的アミノ酸を持つアミノ酸配列配列番号:1を含むペプチドの類似物は、Christopher J.Noren,Spencer J.Anthony−Cahill,Michael C,Griffith,Peter G.Schultz,Science,244:182〜188(April 1989)に記載されているように、生合成の間に非自然的アミノ酸をポリペプチド中に部位特異的に組み込みことにより生み出すことができる。
【0097】
「置換」はペプチド中において1以上のアミノ酸残基(複数を含む)を別のアミノ酸残基(複数を含む)により置き換えることを指す。突然変異は、特定のコドンが次に別のアミノ酸を符号化する別のコドンに変わるようにアミノ酸配列配列番号:1を含むペプチドを符号化するDNA分子において行うことができる。こうした突然変異は、一般に、可能な限り最も少ないヌクレオチド変化をなすことにより行われる。この種類の置換突然変異は、得られるペプチド中のアミノ酸を非伝統的なやり方(すなわち、コドンを特定のサイズまたは特徴を有するアミノ酸の集団に属するアミノ酸から別の集団に属するアミノ酸に変更することによる)または伝統的なやり方(すなわち、コドンを特定のサイズまたは特徴を有するアミノ酸の集団に属するアミノ酸から同じ集団に属するアミノ酸に変更することによる)において変更することを行うことができる。
【0098】
こうした伝統的変更は、一般に、得られるペプチドの構造および機能のより少ない変化をもたらす。以下の基はある程度まで交換できるアミノ酸を含有する:塩基性アミノ酸リジン、アルギニン、およびヒスチジン;酸性アミノ酸アスパラギンおよびグルタミン酸;中性極性アミノ酸セリン、トレオニン、システイン、グルタミン、アスパラギンおよびより少ない程度にメチオニン;非極性脂肪族アミノ酸グリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、およびロイシン(しかし、サイズにより、グリシンおよびアラニンはより近い関係にあり、バリン、イソロイシン、およびロイシンはより近い関係にある);および芳香族アミノ酸フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシン。
【0099】
加えて、異なる範疇に区分けされるけれども、アラニン、グリシン、およびセリンは、ある程度までは互換性があると思われ、システインは追加的にこのグループに適合するか、または極性中性アミノ酸で分類することが可能である。プロリンは非極性中性アミノ酸であるが、その置換はその構造上の影響のせいで困難であることを示す。従って、プロリンによるまたはプロリンのための置換は、同じかまたは類似の構造結果が得られうる場合を除いて、好ましくない。プロリン残基の特性を与える構造は、これらの1以上がヒドロキシプロリン(Hyp)により置換される場合に得ることが可能である。誘導体は1より大きい変更を含む変更の組合せおよび異なるタイプの変更を含む。
【0100】
アミノ酸配列配列番号:4を含むペプチドの「誘導体」は、類似のアミノ酸配列を有し、ある程度までアミノ酸配列配列番号:4を含むペプチドの活性を保持する機能的に等価なものである。「機能的に等価」とは、誘導体がアミノ酸配列配列番号:4を含むペプチドの活性に置き換えることができる活性を有することを意味する。好ましい機能等価物は、当業者に知られる、および/または下に記載されるアッセイにより測定される時にIBおよびBBBを通しての輸送有効性の十分なレベルを保持する。
【0101】
好ましい機能等価物は、アミノ酸配列配列番号:4を含むペプチド活性の1%〜10,000%内、さらに好ましくは10%〜1000%の間、さらに好ましくは50%〜200%内にある活性を有する。さらに特定の実施形態において、誘導体は、アミノ酸配列配列番号:4を含むペプチドに対して、少なくとも50%の配列類似性、好ましくは70%、さらに好ましくは90%、なおさらに好ましくは95%の配列類似性を有する。「配列類似性」は、ポリペプチド源には無関係で二つの異なるポリペプチド中のアミノ酸配列間に見られる「相同性」を指す。
【0102】
VI.生物剤
多様な生物剤が本発明における使用に適する。これらは、限定なしに、タンパク質、サイトカインおよびホルモン(インシュリンなど)などを含むペプチド(例えば、オリゴペプチドおよびポリペプチド)、組み換え型可溶性受容体、モノクローナル抗体、ヒト成長ホルモン、組織プラスミノゲン活性化因子、凝固因子、ワクチン、コロニー刺激因子、エリスロポエチン、酵素、およびジムスターゼを含む。
【0103】
好ましいクラスの生物剤(化学療法薬を含む)には、抗新生物薬、抗菌剤、駆虫剤、抗真菌薬、CNS薬、免疫調整剤およびサイトカイン、毒素および神経ペプチドが挙げられる。標的細胞がそれらに向けて抵抗機構を開発してくる傾向にある生物剤も好ましい。特に好ましい生物剤には、ドキソルビシンなどのアントラサイクリン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロンまたはカルミノマイシン、ビンカ・アルカロイド、マイトマイシン型抗生物質、ブレオマイシン型抗生物質、フルコナゾールなどのアゾール抗真菌薬、アンフォテリシンBなどのポリエン抗真菌薬、パクリタクセルなどのタキサン関連抗新生物薬、および腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)、インターフェロンおよびサイトカインなどの免疫調整剤が挙げられる。
【0104】
好ましい生物剤には、限定なしに、アンフォテリシン−Bなどの追加の抗真菌薬、フルシトシン、ケトコナゾール、ミコナゾール、イタコナゾール、グリセオフルビン、クロトリマゾール、エコナゾール、ターコナゾール、ブトコナゾール、シクロピロックス・オラミン、ハロプロジン、トインアフテート、ナフチフィン、ナイスタチン、ナタマイシン、ウンデシレン酸、安息香酸、サリチル酸、プロピオン酸およびカプリル酸が挙げられる。こうした薬剤には、さらに限定なしに、ジドブジンなどの抗ウイルス剤、アシクロビル、ガンチクロビル、ビダラジン、イドクスウリジン、トリフルリジン、フォックスカルネ、アマンタジン、リマンタジンおよびリバビリンが挙げられる。
【0105】
こうした薬剤には、さらに限定なしに、9−ラクタム抗生物質を含むペニシリン関連化合物などの抗菌剤、広域ペニシリンおよびペニシリナーゼ−抵抗性ペニシリン(メチシリン、ナフシリン、オキサシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、アモキシシリン、アンピシリン、アンピシリン−スルバクタム、アゾシリン、バカンピシリン、カルベニシリン、カルベニシリンインダニル、シクラシリン、メズロシリン、ペニシリンG、ペニシリンV、ピペラシリン、チカルシリン、イミペネムおよびアズトレオナムなど)、セファロスポリン(セファロスポリンはセファピリン、セファキソリン、セファレキシン、セフラジンおよびセファドロキシルなどの第一世代セファロスポリン;セファマンドール、セフォキシチン、セファクロール、セフロキシム、セフロキシムアクセチル、セフォニシド、セフォテタンおよびセフォラニドなどの第二世代セファロスポリン;
【0106】
セフォタキシム、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフォペラゾンおよびセフタジジムなどの第三世代セファロスポリンを包含する)、テトラサイクリン(デメクロサイテトラサイクリン、ドキシサイクリン、メタサイクリン、ミノサイクリンおよびオキシテトラサイクリンなど)、ベータ−ラクタマーゼ抑制剤(クラブラン酸など)、アミノグリコシド(アミカシン、ゲンタマイシンC、カナマイシンA、ネオマイシンB、ネチルマイシン、ストレプトマイシンおよびトブラマイシンなど)、クロラムフェニコール、エリスロマイシン、クリンダマイシン、スペクチノマイシン、バンコマイシン、バシトラシン、イソニアジド、リファンピン、エタムブトール、アミノサリチル酸、ピラジンアミド、エチオンアミド、シクロセリン、ダプソーン、スルホキソン・ナトリウム、クロファジミン、スルホンアミド(スルファニルアミド、スルファメトキサゾール、スルファセタミド、スルファジアジン、およびスルフィソキサザールなど)、トリメトプリム−スルファメトキサゾール、キノロン(ナリジクス酸、シノキサシン、ノルフロキサシンおよびシプロフロキサシンなど)、メテンアミン、ニトロフラントインおよびフェナゾピリジンが挙げられる。
【0107】
多様な中枢神経系生物剤が本発明における使用に適する。これらには、フェノチアジン(コンパジン、ソラジン、プロマジン、クロルプロマジン、アセプロマジン、アミノプロマジン、ペラジン、プロクロルペラジン、トリフルオペラジン、およびチオプロペラジンなど)、ジャボクアルカロイド(レセルピンおよびデセルピンなど)、チオキサンテン(クロルプロチキセンおよびチオチキセンなど)、ブチロフェノン(ハロペリドール、モペロン、トリフルオペリドール、チミペロン、およびドロペリドールなど)、ジフェニルブチルピペリジン(ピモジドなど)、およびベンズアミド(スルピリドおよびチアプリドなど)などの神経安定薬;
【0108】
グリセロール誘導体(メフェネシンおよびメトカルバモールなど)、プロパンジオール(メプロバメートなど)、ジフェニルメタン誘導体(オルフェナドリン、ベンゾトラピン、およびヒドロキシジンなど)、およびベンゾジアゼピン(クロルジアゼポキシドおよびジアズパムなど)などのトランキライザー;睡眠薬(ゾルプデムおよびブトクタミドなど);9−遮断薬(プロプラノロル、アセブトノール、メトプロロール、およびピンドロールなど);ジベンザゼピン(イミプラミンなど)、ジベンゾシクロヘプテン(アミトリプチリンなど)、およびテトラシクリック(ミアンセリンなど)などの抗欝薬;MAO抑制剤(フェネルジン、イプロニアジド、およびセレゲリンなど);
【0109】
フェニルエチルアミン誘導体(アンフェタミン、デキサンフェタミン、フェンプロポレックス、フェンテルミン、アンフェプラモン、およびペムリンなど)およびジメチルアミノエタノール(クロフェンシクラン、シプロデナート、アミノレックス、およびマジンドールなど)などの精神刺激薬;GABA−模倣体(プロガビドなど)、アルカロイド(コ−ダーゴクライン、ジヒドロエルゴクリスチン、およびビンカミンなど);コリン作用薬(シチコリンおよびフィゾシグミンなど);血管拡張剤(ペントキシフィリンなど);および脳活性剤(ピリチノールおよびメクロフェノキセートなど);およびいくつかのこうした薬剤の混合物が挙げられる。
【0110】
特に興味のあるものは、ベンゾジアゼピンなどの鎮痛剤−睡眠薬、フェノチアジン、チオキサンテン、ブチロフェノン、およびジベンゾキサゼピンなどの精神薬理学薬剤、および中枢神経系刺激剤である。本発明の脳処理実施形態が生物剤の活性を改善する組成物を目指しているので、本発明のこの実施形態は、本明細書において記載される原理および手順を適用することにより、広範な中枢神経系薬剤に適用することができる。
【0111】
当然、本発明に従って被験者に投与される生物剤は、また、抗体などの多様なポリペプチド、ジフテリア毒素などの毒素、コロニー刺激因子および腫瘍壊死因子などのペプチドホルモン、神経ペプチド、成長ホルモン、エリスロポエチン、およびチロイドホルモン、α−リポタンパク質などのリポタンパク質、ヒアルロン酸などのプロテオグリカン、ゴナドトロピンホルモンなどのグリコタンパク質、インターフェロンまたはインターロイキンなどの免疫調整剤またはサイトカイン、エストロジェン受容体などのホルモン受容体を含むことができる。特定の実施形態において、こうしたポリペプチドは、少なくとも約500、さらに好ましくは少なくとも約5,000、最も好ましくは少なくとも約10,000の分子量を持つものである。
【0112】
本明細書における用途を有する生物剤は、また、逆転写酵素阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、アンギオテンシン変換酵素、および5α−レダクターゼなどの酵素阻害剤を含むことができる。これら薬剤の特色は、フィナステリド、キナプリル、ラミプリル、リシノプリル、サキナビール(saquinavir)、リトナビール、インジナビール、ネルフィナビール、ジドブジン、ザルシタビン、アロフェニルノルスタチン、キノスタチン、デラビリジン、ビス−テトラヒドロフランリガンド(例えば、Ghosh et.al.,J.Med.Chem.39(17):3278〜90 1966を参照すること)、およびジダノシンなどのペプチドおよび非ペプチド構造である。こうした薬剤は単独または組合せ治療において投与することができる;例えば、組合せ治療では、サキナビール、ザルシタビン、およびジダノシンまたはサキナビール、ザルシタビン、およびジドブジンを利用する。例えば、Collier et.al.,Antiviral Res.,1966 Jan.29(1):99を参照すること。
【0113】
同様に、多様なヒトおよび動物のサイトカインが本組成物中の生物剤としての使用に適する。これらには、インターフェロン、インターロイキン、TNFαなどの腫瘍壊死因子(TNFs)、および免疫系の機能を制御する多くの他のタンパク質およびペプチド因子が挙げられる。これがいくつかのこうした薬剤の混合物にまで及びことは理解されよう。本発明は、サイトカイン自体の特異活性を強調することを目指すのではなく、むしろ組成物そのものを目指している。
【0114】
VII.担体
溶液(単分子系)、分散液(超分子系)、またはナノ粒子、ミクロスフェア、マトリックス、およびゲルなどのあらゆる特定系を形成する、ポリペプチド、脂質、炭水化物、ポリアミン、合成ポリマーなどの合成、半合成および自然の化合物に限定されないが、それらを含む多様な担体が本発明のリガンドと結びつくことができる。
以下のクラスの担体を例として取り上げる。しかし、種々の他の担体が本発明において用いることができることは理解される。
【0115】
高分子担体は、非イオン水溶解性、非イオン疎水性または水不良溶解性、カチオン性、アニオン性またはポリペプチドのようにポリペプチド両性電解質であることができる。これらポリマー担体の重合度は、約3〜約500,000、さらに好ましくは約5〜約5000、なおさらに好ましくは約20〜約500であることが好ましい。
【0116】
好ましい親水性担体は、水に可溶性である非毒性、非免疫原性ポリマーである。こうしたセグメントには、ポリエーテル(例えば、ポリエチレン・オキシド)、多糖類(例えば、デキストラン)、ポリグリセロール、ビニルモノマー(例えば、ポリアクリルアミド)のホモポリマーおよびコポリマー、ポリアクリル酸エステル(例えば、ポリアクリロイル モルホリン)、ポリメタクリルアミド、ポリ(N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルトリアゾール、ポリビニルピリジンのN−オキシド、ビニルピリジンおよびビニルピリジンN−オキシドのコポリマー、ポリオルトエステル、ポリアミノ酸、ポリグリセロール(例えば、ポリ−2−メチル−2−オキサゾリン、ポリ−2−エチル−2−オキサゾリン)およびそれらのコポリマーおよび誘導体が挙げられるが確かにそれらに限定されない。
【0117】
好ましい非イオン疎水性および水不良溶解性セグメントには、ポリプロピレン・オキシド、ポリエチレン・オキシドとポリエチレン・オキシドのコポリマー、ポリエチレン・オキシドおよびポリプロピレン・オキシド以外のポリアルキレン・オキシド、スチレンのホモポリマーおよびコポリマー(例えば、ポリスチレン)、イソプレンのホモポリマーおよびコポリマー(例えば、ポリイソプレン)、ブタジエンのホモポリマーおよびコポリマー(例えば、ポリブタジエン)、プロピレンのホモポリマーおよびコポリマー(例えば、ポリプロピレン)、エチレンのホモポリマーおよびコポリマー(例えば、ポリエチレン)、疎水性アミノ酸およびアミノ酸の誘導体のホモポリマーおよびコポリマー(例えば、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、ノルロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、トレオニン、プロリン、システイン、メチオニン、セリン、グルタミン、アスパラギン)、核酸のホモポリマーおよびコポリマーおよびそれらの誘導体が挙げられる。
【0118】
好ましいポリアニオン担体には、ポリメタクリル酸およびその塩、ポリアクリル酸およびその塩、メタクリル酸およびその塩のコポリマー、アクリル酸およびその塩のコポリマー、ヘパリン、ポリリン酸塩、アニオン性アミノ酸のホモポリマーおよびコポリマー(例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸)、ポリリンゴ酸、ポリ乳酸、ポリヌクレオチド、およびカルボキシル化デキストランなどが挙げられる。
【0119】
好ましいポリカチオン担体には、ポリリジン、ポリアスパラギン、カチオン性アミノ酸のホモポリマーおよびコポリマー(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、ポリメタクリル酸のアルカノールアミンエステル(例えば、ポリ−(メタクリル酸ジメチルアンモニオエチル))、ポリアミン(例えば、スペルミン、ポリスペルミン、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン、ポリブチレンイミン、ポリペンチレンイミン、ポリヘキシレンイミンおよびそれらのコポリマー)、第3アミンと第2アミンのコポリマー、部分的または完全な第4化アミン、ポリビニルピリジンおよびポリカチオンセグメントの第4アンモニウム塩が挙げられる。
【0120】
これらの好ましいポリカチオンセグメントには、また、脂肪族、ヘテロ環式または芳香族アイオネン(Rembaum et.al.,Polymer letters,1968,6:159;Tsutsui,T.,In Development in ionic polymers−2,Wilson A.D.and Prosser,H.J.(eds.)Applied Science Publishers,London,New York,vol.2,pp.167〜187,1986を参照すること)が挙げられる。
加えて、デンドリマー、例えば、種々世代のポリアミドアミン(Tomalia et.al.,Angew.Chem.,Int.Ed.Engl.1990,29,138)も用いることができる。
【0121】
特に好ましいものは、以下のポリマー群から選択されるコポリマーである:
(a)少なくとも一つの親水性非イオンポリマーおよび少なくとも一つの疎水性非イオンセグメントを有する分割化コポリマー(「親水性−疎水性コポリマー」);
(b)少なくとも一つのカチオン性セグメントおよび少なくとも一つの非イオン性セグメントを有する分割化コポリマー(「カチオン性コポリマー」);
(c)少なくとも一つのアニオン性セグメントおよび少なくとも一つの非イオン性セグメントを有する分割化コポリマー(「アニオン性コポリマー」);
(d)少なくとも一つのポリペプチドセグメントおよび少なくとも一つの非ペプチドセグメントを有する分割化コポリマー(「ポリペプチドコポリマー」);
(e)少なくとも一つのポリヌクレオチドセグメントおよび核酸でない少なくとも一つのセグメントを有する分割化コポリマー(「ポリペプチドコポリマー」);
親水性−疎水性コポリマーの典型的な代表物は、以下の式を有するエチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマーである。
【0122】
A.エチレンオキシドとプロピレンオキシドのコポリマー
一つの好ましい実施形態において、分割化コポリマーは以下の式を有するエチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマーである:
【化1】
Figure 2004514410
【化2】
Figure 2004514410
【0123】
式中、x、y、z、iおよびjは約2〜約800、好ましくは約5〜約200、さらに好ましくは約5〜約80の値を有すると共に、式中の各R、R対に対して一つは水素であり、他はメチル基である。
【0124】
式(I)〜(III)は、実際にはBブロック内のイソプロピレン基の方向がランダムであることを、単純化し過ぎている。このランダムな方向はより完全である式(IV)において示されている。こうしたポリ(オキシエチレン)−ポリ(オキシプロピレン)化合物は、Santon,Am.Perfumer Cosmet.,72(4):54〜58(1958);Schmolka,Loc.cit.82(7):25(1967);Schick,Non−ionic Surfactants,pp.300〜371(Dekker,NY,1967)により記載されている。多くのこうした化合物は、「ポロキサマー(poloxamers)」、「プルロニック(pluronics)」および「シンペロニック(synperonics)」などの無印商標名で市販されている。B−A−B式内のプルロニックポリマーは、多くの場合、「逆(reversed)」プルロニック、「プルロニック−R」または「メロキサポール(meroxapol)」と呼ばれる。
【0125】
式(XVII)の「ポリオキサミン(polyoxamine)」は、商標名テトロニック(TetronicTM)でミシガン州ワイアンドットのBASFから市販されている。式(XVII)に示されるポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンのブロックの順序は逆転することができ、テトロニック−R(商標)を創り出す。これもBASFから市販されている。Schmolka,J.Am.Oil Soc.,59:110(1979)を参照すること。ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレン・ブロックコポリマーは、また、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの反復単位のランダム混合物を含む親水性ブロックにより設計することができる。ブロックの親水性特徴を維持するために、エチレンオキシドが優位である。同様に、疎水性ブロックはエチレンオキシドとプロピレンオキシドの反復単位の混合物であることができる。こうしたブロックコポリマーは商標名プルラドット(PluradotTM)でBASFから市販されている。
【0126】
式(IV)のジアミン結合プルロニックは、また、以下の式のジアミン結合ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンポリマー族の一員であることができる。
【化3】
Figure 2004514410
【0127】
式中、点線は第二窒素から伸びているポリエーテルの対称コピーであることを示し、Rは2〜6個炭素数のアルキレン、5〜8個炭素数のシクロアルキレンまたはフェニレンであり、RおよびRに対して、(a)両方とも水素であるか、または(b)一つが水素であり他がメチル基であるかのいずれかであり、RおよびRに対して、(a)両方とも水素であるか、または(b)一つが水素であり他がメチル基であるかのいずれかであり、RおよびRの両方が水素である場合にRおよびRの一つが水素で他がメチル基であり、RおよびRの一つがメチル基である場合にRおよびRの両方が水素である。
【0128】
当業者は、本明細書における検討に照らして、本発明の実行が例えばポリ(オキシエチレン)−ポリ(オキシプロピレン)化合物に限定される場合でさえ、上述の代表的な式は余りにも限定的であることを認識するであろう。このようにして、第一ブロックを作製する単位はエチレンオキシド単独で成り立つ必要はない。同様に、すべてのB型ブロックがプロピレンオキシド単位単独で成り立つ必要があるとは限らない。代わりに、ブロックは第一実施形態のパラメータが維持される限り式(I)〜(V)に規定されるもの以外のモノマーを組み込むことができる。
【0129】
従って、最も単純な実施例において、ブロックA中の少なくとも一つのモノマーは前に説明したように側鎖基により置換することが可能である。本発明において用いることができる親水性−疎水性ブロックコポリマーの多様な他の例が合成されてきた。これらのコポリマーは一般式Aを有し、式中、Aは親水性ホモポリマーまたはコポリマーセグメントであり、Bは疎水性ホモポリマーまたはコポリマーセグメントである;nはブロックA中の単位の数であり、mはブロックb中の単位の数である。AおよびBセグメントは、それぞれ、直鎖または分岐鎖のいずれかであり得る。
【0130】
本発明において特に有用であるブロックコポリマーの例には、ポリ(エチレンオキシド)−b−ポリ(イソプレン)−b−ポリ(エチレンオキシド)トリブロックコポリマー(Morgan,et.al.,Biochem.Soc.Trans.,18:1021,1990)、ポリ(エチレンオキシド)−b−ポリ(スチレン)ブロックコポリマー(Dunn,et.al.,Pharm.Res.,11:1016,1994)、ポリ(エチレンオキシド)−b−ポリ(D,L−ラクチド)ジブロックコポリマー(Haran,et.al.,Langmuir 12:2153,1996)、およびポリ(エチレンオキシド)−b−ポリ(−ベンジルL−アスパラギン酸塩)ジブロックコポリマー(Kwon,et.al.Langmuir 12:945,1993)が挙げられるがそれらに限定されない。
【0131】
本発明において用いることができる親水性−疎水性ブロックコポリマー中の親水性ホモポリマーまたはコポリマーAセグメントは、それぞれが同じかまたは異なる垂れ下がり基を有する少なくとも3モノマー単位を含む。各垂れ下がり基は酸素および窒素からなる群から選択される少なくとも一つの原子を含む。代表的な親水性ホモポリマーまたはコポリマーには、ポリエチレンオキシド、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのコポリマー、多糖類、ポリアクリルアミド、ポリグリセロール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジンN−オキシド、ビニルピリジンN−オキシドとビニルピリジンのコポリマー、ポリオキサゾリン、およびポリアクロイルモルホリンが挙げられるがそれらに限定されない。
【0132】
好ましくは、親水性Aセグメントは以下の式である:
【化4】
Figure 2004514410
【0133】
コポリマー:
【化5】
Figure 2004514410
【化6】
Figure 2004514410
式中mおよびjはそれぞれ3〜5000の値を有する。
【0134】
本発明において有用である疎水性Bセグメントは、また、フルオロアルキルセグメントに限定されないがそれを含むフルオロカーボン部分を含むことができ、コポリマーはフルオロカーボンおよび炭化水素の両方を含むことができる。一つのこうした例は以下の式を有する分割化ブロックポリマーである:
−L−{R−L−A}w−L−R−L−R
(VI)
【0135】
式中、
(i)Rは炭素原子数2〜50個の一価のフッ素化炭化水素でありRは炭素原子数2〜50個の二価の炭化水素であるか、または(ii)Rは炭素原子数2〜50個の一価の炭化水素でありRは炭素原子数2〜50個の二価のフッ素化炭化水素であるかのいずれかであり;Rは(i)水素、(ii)炭素原子数2〜50個の一価のフッ素化炭化水素、または(iii)炭素原子数2〜50個の一価の炭化水素であり;Rは(i)Rが水素の場合、化学結合;
(ii)Rがフッ素化炭化水素の場合、炭素原子数2〜50個の二価の炭化水素、または(iii)Rが炭化水素の場合、炭素原子数2〜50個の二価のフッ素化炭化水素であり;LおよびLはそれぞれ他とは独立に結合基であり;LおよびLはRと一緒にまとめて、Rが水素の場合化学結合であり、Rが水素以外の場合LおよびLはそれぞれ独立に考えられて結合基である;
【0136】
Aは、それぞれが酸素および窒素からなる群から選択される少なくとも一つの原子を含む同じかまたは異なる垂れ下がり基を有する少なくとも3モノマー単位を含む親水性ホモポリマーまたはコポリマーであり;wは1〜100の値を有する。
【0137】
親水性ホモポリマーまたはコポリマーAは、それぞれの単位が同じかまたは異なる垂れ下がり基を有する少なくとも3単量体単位を含む。それぞれの垂れ下がり基は、酸素および窒素からなる群から選択される少なくとも一つの原子を含む。代表的な親水性ホモポリマーまたはコポリマーには、ポリエチレンオキシド、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのコポリマー、多糖類、ポリアクリルアミド、ポリグリセロール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジンN−オキシド、ビニルピリジンN−オキシドとビニルピリジンのコポリマー、ポリオキサゾリン、およびポリアクロイルモルホリンが挙げられる。
【0138】
B.カチオン性コポリマー
有用な分割化コポリマーは中で少なくとも一つのセグメントがポリカチオンであるクラスのコポリマーを含む。これらの構造の1例は複数の共有結合ポリマーセグメントを含むコポリマーの基礎であり、該セグメントは(a)少なくとも3個のアミノアルキレンモノマーを含むカチオン性ホモポリマー、コポリマー、またはブロックコポリマーである少なくとも一つのポリカチオンセグメントを有し、該モノマーは少なくとも以下の一つからなる群から選択される:
(i)以下の式で表される少なくとも一つの第3アミノモノマー:
【化7】
Figure 2004514410
【0139】
および第3アミノモノマーの4組の塩、または(ii)以下の式で表される少なくとも一つの第2アミノモノマー:
【化8】
Figure 2004514410
および酸添加および第2アミノモノマーの4組の塩、式中、
は水素、炭素原子数2〜8個のアルキル、Aモノマー、またはBモノマーであり;各RおよびRは他から独立に捉えて以下の式の同じかまたは異なる直鎖または分岐鎖アルカンジイル基であり、
【化9】
Figure 2004514410
【0140】
式中、zは2〜8の値を有し;Rは対になって表現される結合炭素原子の一つの結合を充足させる水素であり;Rは水素、炭素原子数2〜8個のアルキル、Aモノマー、またはBモノマーであり;Rは水素、炭素原子数2〜8個のアルキル、Aモノマー、またはBモノマーであり;Rは以下の式の直鎖または分岐鎖アルカンジイル基であり、
【0141】
【化10】
Figure 2004514410
【0142】
式中、zは2〜8の値を有し;Rは水素、炭素原子数2〜8個のアルキル、Aモノマー、またはBモノマーであり;および上に定義される少なくとも一つの直鎖または分岐鎖非イオン親水性セグメントAは約5〜約1000の単量体単位を有する。
本発明のコポリマー中のポリカチオン性セグメントは分岐できる。例えば、ポリスペルミン系コポリマーは分岐される。これらコポリマーのカチオン性セグメントは、1,4−ジブロモブタンとN−(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミンの縮合により合成された。この反応は第1、第2、および第3アミンを伴う高度に分岐したポリマー生成物を生成する。
【0143】
分岐ポリカチオンの例は、少なくとも2個の窒素原子を含有するポリアミンと少なくとも2個のハロゲン原子(臭化物または塩化物を含む)を含有するハロゲン化アルキル間の縮合反応の生成物である。特に、分岐ポリカチオンは多縮合の結果として生成される。この反応の1例はN−(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミンと1,4−ジブロモブタン間の反応であり、ポリスペルミンを生成する。
【0144】
分岐ポリカチオンの別の例は以下の式により表されるポリエチレンイミンである:
(NHCHCH[N(CHCH)CHCH
(VI)
有用なポリアミン系コポリマーの1例は以下の式で表されるポリマーである:
−L−[G−L−F−L]1−K
(VII)
【0145】
式中、
Fは複数の式−NH−Rで表される反復単位を含むポリアミンセグメントであり、該Rは置換可能である炭素原子数2〜6個の脂肪族基である;
Gはポリエチレンオキシドまたはエチレンオキシドとプロピレンオキシドのコポリマーであり上に定義した直鎖または分岐鎖非イオン性セグメントである;
およびKは他から独立に水素、ヒドロキシル基、アミノ基、GまたはFポリマーセグメントであり;各L、LおよびLは他から独立に結合基または化学結合である。
【0146】
ポリカチオン性セグメントのアミノ基は4級化されてアンモニウム塩を生成することができる。実施例は、ハロゲン化アルキルにより修正されて第3および第4ポリアミンを生成するポリスペルミンおよびポリアミンを含む。別の有用なタイプのカチオン性セグメントの明確な化学構造は、脂肪族、ヘテロ環式または芳香族であり得るアイオネン(ionenes)である(Rembaum et.al.Polymer Letters,1968,6:159;Tsutsui,T.,Development in ionic polymers−2.Wilson,A.D.and Prosser,H.J.(eds.),Applied Science Publishers,London,New York,vol.2,pp.163〜187,1986を参照すること)。
【0147】
C.アニオン性コポリマー
アニオン性コポリマーは水性環境の中でポリアニオンを生成する少なくとも一つの高分子電解質セグメントを含有する。これは広範囲pHにおいて、高イオン化度を有する強多塩基酸、およびpH依存のイオン化度により特徴付けられる弱塩基酸の両方を含む。アニオン性セグメントは、通常、カルボキシル基、サルフェート基、スルホン酸基、およびホスフェート基などの複数の垂れ下がりアミノ基を有する。アニオン性コポリマーの例には、ポリオキシエチレン−b−ポリメタクリル酸(Wang,et.al.,J.Polm.Sci.,Part A:Polm.Chem.,30:2251(1992)、ポリスチレン−b−ポリアクリル酸(Zhong,et.al.,Macromolecules,25:7160,1992)、ポリオキシエチレン−b−ポリオキシプロピレン−b−ポリオキシエチレンによりグラフト化されたポリアクリル酸(Bromberg and Levin,Macromol.Rapid Commun.17:169(1996))が挙げられるがそれらに限定されない。
【0148】
D.ポリペプチドコポリマー
ポリペプチドコポリマーは、セグメントが少なくとも一つのポリペプチドセグメントおよび少なくとも一つの非ペプチドポリマーセグメントを有する、複数の共有結合ポリマーセグメントを有する。ポリペプチドセグメントは複数のアミノ酸単位またはそれらの誘導体を有する。
ポリペプチドを含有する有用な分割化コポリマーの例には、以下の式で表されるポリ(オキシエチレン)−ポリ(L−リジン)ジブロックコポリマーが挙げられる:
【0149】
【化11】
Figure 2004514410
【0150】
式中、iは約2〜約500の整数であり、jは約4〜約500の整数である。第2例は以下の式で表されるポリ(オキシエチレン)−ポリ(L−アラニン−L−リジン)ジブロックコポリマーである:
【化12】
Figure 2004514410
式中、iは約2〜約500の整数であり、jは約2〜約500の整数である。
【0151】
本発明におけるポリペプチドコポリマーの使用は、固相および溶液相化学を用いることによるポリペプチドセグメントの長さのより良い制御を可能とする。明確な化学構造を有するポリペプチドに基づく分割化コポリマーについて、ポリ(アミノ酸)−b−ポリ(N,N−ジエチルアクリルアミド)−b−ポリ(アミノ酸)(Bromberg and Levin,Bioconjugate Chem.9:40(1998))などが文献に記載されてきた。さらに、ポリペプチド中の単位組成物および配列は、疎水性、親水性、イオン性、水素および化学結合形成性アミノ酸およびそれらの誘導体を含んで変性されて、分割化コポリマーの基礎の中でのより広い可変性を作り出すことができる。
【0152】
E.ポリヌクレオチドコポリマー
ポリヌクレオチドコポリマーは、セグメントが少なくとも3個の核酸単位またはそれらの誘導体を含有する少なくとも一つのセグメントを持つ、複数の共有結合ポリマーセグメントを有する。ポリペプチドコポリマーに類似に、ポリヌクレオチドコポリマーは固相および溶液相化学を用いることによるセグメント長および配列に対するより良い制御を提供する。
【0153】
明確な化学構造を有するポリヌクレオチドに基づく分割化コポリマーは、ポリオキシエチレン−b−ポリヌクレオチドコポリマーおよびポリカチオン−b−ポリヌクレオチドコポリマー(Vinogradov et.al.,Bioconjugate Chemistry.7:3(1996);米国特許第5,656,611号)を含んで記載されてきた。ポリペプチドコポリマーと同様に、ポリヌクレオチドコポリマーは、本発明に従って適切な生物剤組成物を選択することにおいて特に有用である、ポリヌクレオチドセグメントにおける単位組成物および配列の変化を可能とする。
【0154】
VIII.生物剤および/または担体をリガンドで結合すること
A.リガンドの接合
別の実施形態において、本発明は、生物剤に接合された本発明のリガンドを提供する。本明細書における用途を有する特定の生物剤は上に記載されている。
なお別の実施形態において、本発明は薬剤担体系に接合されたリガンドを提供すると共に、こうした担体系はポリマー分子、ブロックコポリマー分子、または前記ポリマーの誘導体である。担体系はタンパク質分子も含むことが可能である。特定の担体系は上に記載されている。
【0155】
B.化学接合の方法
本発明リガンドの生物剤、または担体への共役体の調製は、化学連結反応に対する知られた有機化学法の一つによって達成される。リガンドと巨大分子間の構造的連結、およびそれらが接合される化学的方法は、共役体に接合される時にリガンドの結合力およびリガンドの生物活性が最小限に妥協されるように選択されるべきである。当業者により理解されるように、多くの適する化学接合法がある。適切な接合法の選択は、接合分子中に存在する化学基の検査、およびそれらにいくつかの新規な化学基を導入してこれら分子の可能な修正を評価することにより理論的に正当化することができる。多くの化学基が接合反応を受けることができる。
【0156】
以下の基を例として本明細書において記載する:ヒドロキシル基(−OH)、第1および第2アミノ基(−NHおよび−NH−)、カルボキシル基(−COOH)、メルカプト基(−SH)、芳香族環、糖残基、アルデヒド(−CHO)、脂肪族および芳香族ハロゲン化物など。これら基の反応性は技術上公知である(本明細書において参考のために包含する、Morrison and Boyd,Organic Chemistry,6th Ed.(Prentice Hall,1992)、Jerry March,Advanced Organic Chemistry,4th Ed.(Wiley 1992)を参照すること)。接合法および技術のさらに広範囲にわたる記載は、G.T.Harmanson,Bioconjugate Techniques,Academic Press,Inc.1995、およびS.S.Wong,Chemistry of Protein Conjugation and Cross−Linking,CRC Press,Inc.1991中に見出すことができ、これらは本明細書において参考のために包含する。
【0157】
C.ヒドロキシル基による接合
ヒドロキシル基(−OH)は、セリン、トレオニン、およびチロシン残基の側鎖中、および糖類および糖タンパク質中の糖残基中のペプチドおよびタンパク質に存在する。ヒドロキシル基は、また、パクリタクセルなどの生物剤を含む多くの化合物中、および多糖類およびポロキサマーなどの高分子化合物中に存在する。ヒドロキシル基は求核特性を示し、例えばアルキル化(エーテル化)、ならびにアシル化(エステル化)などの置換反応を受けやすい。以下の反応性化学物質はヒドロキシル基と接合するために好ましい:ハロゲン化アルキル(R−Cl、R−Br)、臭化シアン(CNBr)、アシル無水物、ハロゲン化アシル、アルデヒド(−CHO)、およびヒドラジド(R−CO−NH−NH)など。特に好ましいものはアシル無水物((R−CO)O)および1,1’−カルボニルジイミダゾール(本明細書において参考のために包含するAnderson,G.W.and Paul,R.,(1958)J.Am.Chem.Soc.,80,4423を参照すること)である。
【0158】
D.アミノ基による接合
アミノ基(−NH)は、これらがアシル化されない場合、ペプチドおよびタンパク質中においてそれらのN−末端で、およびリジン残基の側鎖中に存在する。アミノ基は、また、ドキソルビシンなどの治療剤を含む多くの化合物中に存在する。化学的および遺伝子的方法は、アミノ基をペプチド、タンパク質、小有機分子および高分子を含む多くの他の分子中に導入することを可能とする。アミノ基は求核特性を示し、例えば、アルキル化、アシル化、およびアルデヒドとの縮合などの置換反応を受けやすい。
【0159】
以下の反応性化学物質はアミノと接合するために好ましい:ハロゲン化アルキル(R−Cl、R−Br、R−I)、アリールアジド、アシル無水物、ハロゲン化アシル、アシルエステル、カルボジイミドで活性化したカルボン酸塩、およびアルデヒド(−CHO)など。特に好ましいものは、アシル無水物((R−CO)O)、塩化アシル(R−CO−Cl)、p−ニトロフェニルエステル(R−CO−O−C−NO)、N−ヒドロキシサクシニミジル・エステル(NHSエステル、R−CO−O−N(CO−CH)、イミドエステル(R−C(=NH)−O−CH)、およびカルボジイミドで活性化したカルボン酸(R−CO−OH+R’−N=C=N−R’’)である。
【0160】
E.メルカプト基による接合
メルカプト基(−SH)は、システイン残基を含むペプチドおよびタンパク質中に存在する。メルカプト基は、また、多くの化合物中に存在し、他の化合物中に導入することができる(例えば、Carlsson,J.,Drevin,H.and Axen,R.(1978)Biochem.J.173,723を参照すること)。メルカプト基は求電子置換反応、例えば、アルキル化および酸化反応を受けやすい。−SH基と接合するために有用であり好ましいものは以下の反応性化学物質である:ヨウ化アルキル、α−不飽和アシル、および酸化剤。特に好ましいものは以下の誘導体である:ヨードアセトアミドR−CO−CH−I、マレイミド(R−N(CO−CH))、ビニルスルホン(R−SO−CH=CH、Masri M.S.(1988).J.Protein Chem.7:49〜54、これは本明細書において参考のために包含する)。
【0161】
F.カルボキシル基による接合
カルボキシル基(−COOH)は、ペプチドおよびタンパク質中においてそれらのC−末端に(アミド化されない場合)、およびアスパラギン酸およびグルタミン酸残基の側鎖中に存在する。カルボキシル基は、また、メトトレキサートなどの治療剤を含む多くの化合物中に存在する。化学的および遺伝子的方法は、カルボキシル基をペプチド、タンパク質、小有機分子および高分子を含む多くの他の分子中に導入することを可能とする。カルボキシル基はアミンおよびヒドロキシル基などの求核基をアシル化することができる。カルボキシル基は接合の前に活性化を必要とする。好ましい活性化法は、ハロゲン化有機または無機酸(例えば、塩化ピバロイル、エチル・クロロホルメート、塩化チオニル、PCl)との反応、カルボジイミドとの反応(R−CO−OH+R’−N=C=N−R、例えばEDC、DCC)、ベンゾトリアゾリル・ウロニウムまたはホスホニウム塩(TBTU、BOP、PyBOP)との反応である。
【0162】
G.架橋剤による接合
好ましい実施形態において、治療剤または薬剤担体分子いずれかの他分子に対するリガンド受容体の接合は、架橋剤の支持により達成される。特に好ましいものはヘテロ二官能価架橋剤である。多様な架橋剤が等業者に知られている(例えば、本明細書において参考のために包含するS.S.Wong,Chemistry of Protein Conjugation and Cross−Linking,CRC Press,Inc.1991を参照すること)。
【0163】
ヘテロ二官能価架橋剤は、それらの内一つがアミノ基を有し、他がメルカプト基を有する2分子を結合するために特に有用である。好ましい実施形態において、リガンドはメルカプト基を有し、従って、アミノ基を担持する多様な化合物と接合することに利用することが可能である。以下のヘテロ二官能価架橋剤は、例えば、アミノ基をメルカプト基に接合する:GMBS(N−[●−マレイミドブチリルオキシ]スクシニミドエステル、Fujiwara,K.,et.al.(1988).J.Imunol.Meth.112,77〜83)、SPDP(N−サクシンイミジル3−[2−ピリジルジチオ]プロピオネート、Carlsson,J.,et.al.(1978).Biochem.J.173,723〜737)、SIA(N−スクシニミジルヨードアセテート、Thorpe,P.E.,et.al.(1984).Eur.J.Biochem 140,63〜71)、SNSB(N−スクシニミジル−[4−ビニルスルホニル]ベンゾエート)。
【0164】
特に好ましいヘテロ二官能価リンカーは2反応基の間にポリオキシエチレン鎖を有する。こうしたリンカーによる接合は2接合分子間に親水性接合部を有する生成物を生み出し、その結果、それは生成物の水性媒体中での溶解度を増大させる。本明細書においてポリオキシエチレンを有する以下のリンカーを例として記載する:N−マレイミド−ポリオキシエチレン−スクシニミド・エステル(Sharewater Polymers,Cat.No.2D2Z0F02)、ビニルスルホン−ポリオキシエチレン−スクシニミド・エステル(Sharewater Polymers,Inc.Al,Cat.No.2Z5B0F02)
【0165】
前記生物剤は本発明において生物学的に活性な物質として用いることが可能である。それらは、生物剤の不活性化化学誘導体、すなわち、それらの構造がある生物学的条件において化学的または酵素的に修正されることによって活性物質に転換していくプロドラッグとして用いる方がよい。例えば、2’または7−ヒドロキシル基が中でカルボン酸のエステルに転換されるパクリタクセル誘導体はプロドラッグを形成する(Deutch et.al.,「Synthesis of congeners and prodrug.3.Watersoluble prodrugs of taxol with potent antitumor activity,」J.Med.Chem.,32:788〜792,1989を参照すること)。
【0166】
例えば、そのアミノ基が中でアミノ酸誘導体のカルボキシル基によりアシル化されるドキソルビシン誘導体はプロドラッグを形成する(Breistol K,et.al.「Superior therapeutic efficacy oj N−L−leucyl−doxorubicin versus doxorubicin in human melanoma xenografts correlates with higher tumour concentrations of free drug.」Eur J Cancer.1999 Jul;35(7):1143〜9;DeFeo−Jones D,et.al.「A peptide−doxorubicin ‘prodrug’activated by prostate−specific antigen selectively kills prostate tumour cells positive for prostate−specific antigen in vitro.」Nat Med 2000 Nov;6(11):1248〜52を参照すること)。
【0167】
H.治療ポリペプチドによるリガンドの遺伝子融合
本発明の別の実施形態において、リガンドを符号化する自然の、修正された、または組み換え型の核酸配列は、融合タンパク質を符号化するために生物活性ポリペプチド配列に縛ることが可能である。治療タンパク質によるリガンド融合物の構築および発現に適する一般的な方法は、リガンドの組み換え製造に対して本明細書において上述したのと同じものである。キメラ・リガンド−ポリペプチドは、本発明のリガンドを符号化するDNA配列をフレーム単位で対象のポリペプチドを符号化するcDNA配列に融合することにより最も幸便に構築することが可能である。
【0168】
しかし、治療ポリペプチドのゲノム断片への融合も用いることができる。あるいは、PCR技術は適切なベクターによりフレーム単位で2部の分子を接合するために用いることができる。種々の長さおよび構造のスペーサは、付加的な可撓性を有する融合タンパク質を提供しタンパク折り畳みを維持するために、リガンド配列と治療タンパク質の間に挿入することができる。本発明のリガンドの融合は、アフィニティークロマトグラフィーおよび固定化金属キレートクロマトグラフィーを含む種々の公知の方法により精製することができる(Al−Mashikhi et.al.,J.Dairy Sci.71:1756〜1763(1988))。適する融合パートナーは「生物剤」の項で記載した通りである。
【0169】
I.ウイルスタンパク質中へのリガンドの導入
本発明のリガンドはウイルスの屈性を変更するためにウイルス粒子中に導入することができる。各種ウイルスは遺伝子の生体内移送および発現用のベクターとして用いることができる。一例として、レトロウイルス(RSV、HMSおよびMMSなど)、HSVウイルス、アデノ随伴ウイルス、アデノウイルス、およびワクシニアウイルスなどを挙げることが可能である。
【0170】
例えば、アデノウイルスの標的化は、構造的に拘束するやり方においてリガンドアミノ酸配列の導入により野生型外皮タンパク質から区別されるキメラアデノウイルス繊維タンパク質の構築によって提供することができる。こうしたキメラアデノウイルス繊維タンパク質は、キメラアデノウイルス繊維タンパク質よりもむしろ野生型アデノウイルス繊維タンパク質を含む場合を除いて同一であるベクターの細胞中への参入よりもさらに効果的であるキメラ繊維タンパク質を含むベクターの細胞中への参入を導くことができる。
【0171】
望ましくは、配列を符号化するリガンドは遺伝子発現のレベルで繊維タンパク質中に導入される。こうしたリガンドアミノ酸配列はアデノウイルス配列の代わりか、またはアデノウイルス配列に加えるかのいずれかで導入される。導入の性質には関係なく、DNAまたはタンパク質いずれかのレベルでのアデノウイルス繊維タンパク質中へのその組込みは、キメラ繊維タンパク質中での配列番号:6モチーフの生成をもたらす。
【0172】
ウイルス性ベクターをCNSに再指向することおよび生物障壁を通しての輸送の増進は、例えば、抗アデノウイルス抗体に対して記載したように、抗ウイルス抗体の本発明のリガンドへの化学結合により生成される二重特異性共役を用いることにより達成することができる(Haisma HJ.,et.al.,Cancer Gene Ther.,2000,Alvarez RD.,et.al.,Clin.Cancer Res.,2000を参照すること)。化学接合の制限を避けるために、抗繊維ノブAB(または細胞アデノウイルス受容体、CAR)およびリガンドから成る遺伝子融合タンパク質を生成することができる(Dmitriev I et.al.,J.Virol.,2000)。
以下の実施例は本発明を実施することに対して今知られる最善の形態を単に説明するために意図されている。
【0173】
IX.用途および治療上の使用
本発明のリガンドを含む組成物、生物剤、および/または担体は、経口的に、局所的に、直腸に、膣に、エアロゾール使用による肺経路により、非経口的に、すなわち、筋肉内、皮下、腹膜内、または静脈内に投与することができる。リガンド組成物は単独で投与することができるし、またはそれは標準薬務に従って医薬的に許容可能な担体または賦形剤と混合することができる。投与の経口形態に対して、リガンド組成物は、錠剤、カプセル、飴剤、トローチ剤、粉末、シロップ、エリキシル剤、水溶液および懸濁液などの形状で用いることができる。
【0174】
錠剤の場合において、用いることができる担体にはラクトース、クエン酸ナトリウムおよびリン酸塩が挙げられる。でんぷんなどの種々の崩壊剤、およびステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウムおよびタルクなどの潤滑剤は、通常、錠剤で用いられる。カプセル形状での経口投与に対して、有用な希釈剤はラクトースおよび高分子量ポリエチレングリコールである。水性懸濁液が経口使用に必要とされる場合、ポリヌクレオチド組成物は乳化剤および懸濁剤と混ぜることができる。必要ならば、ある種の甘味剤および/または調味剤は添加することができる。
【0175】
非経口投与に対して、共役の滅菌溶液が通常準備され、溶液のpHは適して調整され、緩衝される。静脈使用に対して、溶質の全濃度は調合物を等張とするように制御すべきである。眼の投与に対して、軟膏または落下性液は塗布具または点眼器などの技術上知られた眼配送システムにより適用することが可能である。こうした組成物は、ヒアルロン酸などの粘液模倣体、コンドロイチン硫酸、ヒドロキシプロピル・メチルセルロースまたはポリ(ビニルアルコール)、ソルビン酸、EDTAまたは塩化ベンジルクロムなどの保存剤、および通常の量の希釈剤および/または担体を含むことができる。肺投与に対して、希釈剤および/または担体はエアロゾール形成を可能とするように適切に選択される。
【0176】
X.投与量
とりわけ本発明のリガンドを含む組成物中の生物剤の投与量は、患者の年齢、体重および病状および薬剤の薬物動力学を含む多くの因子を考慮して処方医療専門家により設定される。多くの場合、有効な処置に必要な薬剤の本発明組成物の量は、自由な生物剤を用いて必要とされる量よりも少なくてすむことが可能である。
【0177】
一般に、本発明において用いられる生物剤は有効な量で動物に投与される。組成物において用いられるリガンドの効果に対する影響は実効量を決定する際に考慮されねばならない。一般に、実効量は、(1)治療を追求している疾患の兆候を減少させるか、または(2)治療を追求している疾患の処置に関連して薬理学上の変化を誘発するかのいずれかに対する有効な量である。癌に対して、実効量は、腫瘍のサイズを減少させる;腫瘍の成長を抑える;転移を予防または抑制する;または癌に冒された動物の平均余命を増大させるために有効な量を含む。
【0178】
多くの場合において、種々の生物剤の代謝産物は薬剤の投与から生じる望ましくない影響を作り出すかまたは増幅する。例えば、これは代謝産物が心臓毒性に至ると信じられているアントラサイクリン系薬剤に対して確かにそのケースに当たる。Mushlin et.al.,Br.J.Pharmacol.110:975〜982(1993)を参照すること。本発明のリガンド組成物は生物剤に対する代謝速度を減少させることができ、それによって有害な副作用に対する可能性を減少させる。
【0179】
生物剤による小腸または血液脳関門の浸透は、当業者により認識されるような多くの技術によって測定することができる。こうした方法には、同位元素標識化、生物剤の効果に対する動物挙動の評価、および脳で起こる毒作用を伴う薬剤に対する致死投与量の測定が挙げられる。こうした方法は、さらに、適切な生体反応を引き出すために必要とされる投与量の減少を測定することを含む。
【0180】
種々の抗真菌剤がヒト真菌感染症を良好に治療している。しかし、治療投与量は、多くの場合、有効な薬剤レベルを達成することと毒性副作用を避けることとの間の妥協によるものである。近年、カンジダ・アルビカンスなどの元来敏感な種の間での薬剤耐性の出現、およびカンジダ・クルセットなどの元来からの薬剤耐性種の発生増加がより新しい抗真菌剤の追求を促してきている。
【0181】
フルコナゾールは副作用の発生は低いが、耐性の発生はますます高まってくる問題である。化学療法活性を高めること、およびこうした薬剤に対する耐性を逆転させることにおいて有効である配送付形剤は、従って、この薬剤および他の抗菌薬に対しても望ましい。
本発明は、本発明を代表するものとして提供される以下の非限定実施例を参照することにより、さらに理解することが可能である。以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態をさらに十分に説明するために提示される。しかし、それらは決して本発明の広い範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0182】
実施例
実施例 ペプチドの固相ペプチド合成: Ac−Cys−Arg−Val−Leu−Asp−Gly−Asp−Arg−Thr−Arg−Trp−Gly−NH 配列番号 1) tamra−Ala−Ser−Ala−Arg−Val−Leu−Asp−Gly−Asp−Arg−Thr−Arg−Trp−Gly−NH 配列番号 2) tamra−D−Ala−D−Ser−D−Ala−D−Arg−D−Val−D−Leu−D−Asp−D−Gly−D−Asp−D−Arg−D−Thr−D−Arg−D−Trp−D−Gly−NH 配列番号 3)
合成の出発物質は、0.66mEq/gの樹脂のレベルで置換された0.6g(0.4mmol)のRink Amide樹脂(4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−Fmoc−アミノメチル)−フェノキシ樹脂)であった(Nova Biochem.、カリフォルニア州)。
【0183】
アミノ酸の各々は、C末端グリシンで出発し、下記の工程を含んでなる合成サイクルにおいて順次に添加された:ピペリジンの脱保護(工程1)、カップリング(工程2)およびニンヒドリン試験(工程3)。配列番号1のアミノ酸配列を含んでなるペプチドの合成は、追加のFmoc脱保護(工程1)、およびアセチル化 (工程4)、および引き続くトリフルオロ酢酸切断(工程5)および精製(工程6)を使用して完結された。すべての操作は溶媒を排出するためのガラスフリットを有するガラス反応器内で実行された。反応器を180度で回転させる震蘯機を使用して、樹脂を溶媒およびそれぞれの溶液とともに攪拌した。
【0184】
1.Fmoc脱保護
樹脂をジメチルホルムアミド(DMF)(20ml)中の20%の樹脂をピペリジンで2回処理することによって、出発樹脂から、または樹脂に前に結合したアミノ酸のα−アミノ窒素からFmoc保護基を除去した。次いで樹脂を10mlのDMFで6回洗浄し、各洗浄は1分間実施した。
【0185】
2.カップリング
適当なFmoc保護されたアミノ酸(7mlのDMF中に溶解した2.4mmol)、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)(3mlのDMF中に溶解した1.25g)、およびジイソプロピルエチルアミン(0.84ml)を樹脂に添加し、この混合物を90分間攪拌した。樹脂を10mlのDMFで4回洗浄した。使用したアミノ酸誘導体を表1に示す。
【0186】
【表1】
Figure 2004514410
【0187】
3.ニンヒドリン試験
樹脂の小さい試料(ほぼ30ビーズ)を試験管に移した。1滴のエタノール中の1%のニンヒドリン溶液、1滴の80%の水性フェノール、および1滴のピリジン中の0.001%のKCNを樹脂の試料に添加し、この混合物を120℃に50分間加熱した。ビーズの青色は不完全なカップリングを示した。この場合において、カップリング工程2を反復した。完結した場合、合成を次のサイクルに進行させた。
【0188】
4.ペプチド配列番号1のアシル化
Cysを使用する最後のサイクル、およびFmoc脱保護が完結した後、樹脂を5mlのDMF中の無水酢酸(0.22ml)およびジイソプロピルエチルアミン(0.84ml)とともに室温において90分間攪拌した。
【0189】
5.テトラメチルローダミンを使用するペプチド配列番号2、および配列番号3の標識化
ペプチド鎖合成の最後のサイクル、およびFmoc脱保護が完結した後、樹脂を5(および6)−テトラメチルローダミン(5mlのDMF中に溶解した0.9g)、PyBOP(3mlのDMF中に溶解した1.25g)、およびジイソプロピルエチルアミン(0.84ml)とともに120分間攪拌した。
【0190】
6.トリフルオロ酢酸を使用する切断
樹脂をDMFで6回、DMF/メタノール(1:1v/v)で2回、そしてメタノールで3回洗浄し、真空中で1時間乾燥した。トリフルオロ酢酸(TFA、8.5ml)、水(0.5ml)、フェノール(0.5ml)およびチオアニソール(0.5ml)の混合物を乾燥樹脂に添加し、5時間攪拌した。液体を排出し、樹脂を2mlのTFAで洗浄した。合体させた液体を乾燥窒素流中で蒸発させた。残留物を20mlの無水エーテルで2回洗浄し、生成物を水(20ml)中に溶解し、凍結乾燥した。
【0191】
7.精製
凍結乾燥した粉末を水中に溶解し(2mlの10mgの粗製ペプチド)、Vydac C18調製用カラム(25×2.25cm)上に負荷した。2成分の溶離液勾配0.5%/分で、溶液A中の10%の溶液Bから出発して流速5ml/分において、カラムを溶離した。溶液AはHO中の0.1%のTFAであり、そして溶液BはCHCN中の0.1%のTFAであった。ボイド体積後の画分60〜80mlを一緒にプールし、凍結乾燥した。次いで生成物をCHCOOH・HO中に溶解し(1:9、v/v、1ml/gの生成物)、凍結乾燥した。
【0192】
【表2】
Figure 2004514410
【0193】
実施例 Caco 単層を横切るペプチド配列番号 、および配列番号 の輸送
10%の胎仔ウシ血清を補充したダルベッコ変性イーグル培地(D−MEM)(Life Technologies)中で5%のCOを含む加湿雰囲気下に、Caco−2細胞を培養した。所望の数のトランスウェル(Transwell)(直径6.5mm、孔サイズ0.4μm)を組織培養プレートのウェルの中に入れた。フィルターを培地(トランスウェルの先端(apical)側面に0.6mlおよび基部横(basolateral)側面に0.6ml)でCOインキュベーター中において30分間湿潤させた後、フラスコから細胞を収集した。細胞を培地の中に5×10細胞/mlで再懸濁させ、0.2mlの細胞懸濁培地をトランスウェルの先端側面に添加し、COインキュベーター中で培養した。培地を2日毎に8〜12日間交換して、輸送実験に適当な十分に分化した単層を得た。
【0194】
先端および基部横のインサートフィルター上の細胞単層を各側面においてPBSでリンスし、前もって加温したD−MEMと30分間前インキュベートした。先端チャンバー中の培地をおだやかに除去した。新鮮な前もって加温したD−MEM(1.2ml)を新しい基部横チャンバー(“FALCON”3504組織培養プレート)に移した。インサートを新しいチャンバーに移した。フルオレセイン標識化デキストラン(分子量3000、Molecular Probes)を濃度50μmol/lにおいてプローブとして使用して、Caco−2単層漏出性をモニターした。ペプチド配列番号2、または配列番号3を先端側面に濃度50μmol/lに添加した。0.5、1、1.5および2時間インキュベートした後、チャンバーの先端側面および基部横側面からの培地を収集し、Caco−2単層を横切るペプチドおよびデキストランを測定した。Caco−2を通る化合物の相対輸送率(%)を次のようにして計算した:
【0195】
P=Cb/(Ca+Cb)×Vb/Va
ここでCbは基部横チャンバー中の化合物の濃度であり、Caは先端チャンバー中の化合物の濃度であり、Vbは基部横チャンバー中の培地の体積であり、そしてVaは先端チャンバー中の培地の体積である。励起530nm、放射590nmを使用する試料の蛍光により、試料中のペプチドの濃度を測定した。励起480nm、放射530nmを使用する試料の蛍光により、試料中のデキストランの濃度を測定した。
【0196】
【表3】
Figure 2004514410
【0197】
HPLCを使用して先端チャンバー中のペプチド配列番号2の消化を測定した。試料を培地で100倍に希釈し、0.200mlの各々をカラムRP−HPLCカラムVydac 218TP54上に注入し、5アセトニトリル/水(10mMのリン酸)と流速1ml/分において前もって平衡化した。試料を2成分勾配1%/分のアセトニトリル(10mMのリン酸)/水(10mMのリン酸)で流速1ml/分において溶離した。励起波長555nmおよび放射波長580nmを使用して、蛍光を検出した。ペプチド配列番号2は22.3分において鋭いピークとして溶離された。残留するペプチドの百分率を次のようにして計算した:
T=A/SUM(Ai)
ここでAは22.3分におけるピーク下の面積であり、SUM(Ai)は13〜26分間のすべてのピークの面積の合計である。
【0198】
【表4】
Figure 2004514410
【0199】
実施例 配列番号 のアミノ酸配列を含んでなるペプチドを発現するファージの構築
配列番号4のアミノ酸配列を含んでなるペプチドは、大腸菌(E. coli)バクテリオファージM13の少量タンパク質IIIとの融合タンパク質として発現された。100μgのファージベクターfUSE5はPIIIのN末端におけるSfiI制限部位を含有し、これをSfiIレストリカーゼ(Boehringer Mannheim Biochemica)で供給会社が推奨する条件下に消化し、フェノール:クロロホルム抽出により精製し、氷上の20分間のイソプロパノールを使用する沈殿により14bpのスタッファーフラグメントから単離した。線状化ベクターは非相補的SfiI末端を含有し、自己結合することができず、適当な付着末端を有するオリゴヌクレオチドの配向された結合を可能とした。
【0200】
配列番号4のアミノ酸配列を含んでなるペプチドをコードするオリゴヌクレオチドインサートを自動固相オリゴヌクレオチド合成により合成し、逆相クロマトグラフィーにより精製した。配列番号4のアミノ酸配列を含んでなるペプチドをコードするオリゴヌクレオチドの配列、オリゴ番号1は次の通りである:GGGCCGGTAGGGTGCTGGACGGTGACCGGACGCGTTGGGGTGGTGGCGCTTCTG
オリゴ番号1のDNA配列を含んでなるオリゴヌクレオチドの2つの5’末端および3’末端を「半部位」フラグメント、オリゴ番号2およびオリゴ番号3にアニールして、ベクター中のSfiI部位1および2に対して相補的な付着末端を形成した。
【0201】
オリゴヌクレオチドをT4キナーゼでリン酸化し、20mMのTris−HCl、pH7.5、2mMのMgCl、50mMのNaCl中で、1.5μgのオリゴ番号2、1.2μgのオリゴ番号3、および0.5μgのオリゴ番号1を混合し、65℃に5分間加熱し、そして混合物を温室にゆっくり冷却することによってアニールした。この混合物は5:100:100(オリゴ番号1:オリゴ番号2:オリゴ番号3)の概算比率を表した。次いでアニールしたオリゴヌクレオチドのインサート(200ng)を20μgのSfiI切断fUSE5 RF DNA(モル比1:5)に結合して、小さい一本鎖ギャップを有する二本鎖環状分子を生成させた。アニールしたDNAを20mMのTris−HCl、pH7.5、5mMのMgCl、2mMのDTT、1mMのATP中で20単位のT4DNAリガーゼの添加により結合し、15℃において一夜インキュベートした。
【0202】
結合したDNAを0.3Mの酢酸ナトリウムの存在下にエタノール沈降させ、水の中に再懸濁させ、1.8kV/cm、200Ω、25mFにおいてジーン・パルサー(Geen Pulser)エレクトロポレーション装置(Bio Rad)を使用して、コンピテント大腸菌(E. coli)MC1061細胞の中に形質転換した。エレクトロポレーション後、大腸菌(E. coli)を37℃において1時間2mlのSOC培地(2%のバクト(Bacto)トリプトン、0.5%のバクト酵母エキス、10mMのNaCl,2.5mMのKCl,10mMのMgCl,10mMのMgSO,20mMのグルコース、0.2mg/mlのテトラサイクリン)中で修復させ、100mg/mlのカナマイシンおよび40mg/mlのテトラサイクリンを含有するルリア・ベルタニ(LB)寒天を有するペトリ皿上に配置した。
【0203】
プレートを37℃において一夜インキュベートした。単一のコロニーからのファージをLB培地中で増幅し、下記の文献に記載されているように、ポリエチレングリコールを使用する二重沈降法により精製した:Phage display of peptides and proteins、編者B. Kay他、Academic Press、San Diego、1996。組換えファージのクローンの構造はジデオキシDNA配列決定により確証された。
【0204】
オリゴヌクレオチド配列のリスト
オリゴ番号1
1) 長さ:54ヌクレオチド
2) 型:ヌクレオチド
GGGCCGGTAGGGTGCTGGACGGTGACCGGACGCGTTGGGGTGGTGGCGCTTCTG
【0205】
オリゴ番号2(ON10)
1) 長さ:10ヌクレオチド
2) 型:ヌクレオチド
AAGCGCCACC
オリゴ番号2(ON11)
1) 長さ:11ヌクレオチド
2) 型:ヌクレオチド
ACCGGCCCCGT
【0206】
実施例 Caco−2 単層を横切る配列番号 のアミノ酸配列を含んでなるペプチドを発現するファージの輸送
治療用化合物の経口的生物学的利用能の初期予測を得るために、Caco−2細胞単層を横切るin vitro薬物輸送速度はしばしば使用される。この細胞系統は、1977年においてFogh(Fogh J.他、J. Natl. Acad. Sci. 59(1977)221−226)によりヒト結腸癌腫に由来する永久分裂能化細胞系統として確立された。Caco−2細胞は多孔質支持体上で極性化単層として増殖し、腸上皮の形態学的特性を示す(典型的な小腸ヒドロラーゼおよびマーカーを発現する頂端面上の十分に規定された刷子縁、および細胞間の十分に形成されたタイト結合)。
【0207】
10%の胎仔ウシ血清を補充したダルベッコ変性イーグル培地(D−MEM)(Life Technologies)中で5%のCOを含む加湿雰囲気下に、Caco−2細胞を培養した。所望の数のトランスウェル(直径6.5mm、孔サイズ0.4μm)を組織培養プレートのウェルの中に入れた。フィルターを培地(トランスウェルの先端側面に0.6mlおよび基部横側面に0.6ml)でCOインキュベーター中において30分間湿潤させた後、フラスコから細胞を収集した。細胞を培地の中に5×10細胞/mlで再懸濁させ、0.2mlの細胞懸濁培地をトランスウェルの先端側面に添加し、COインキュベーター中で培養した。培地を2日毎に8〜12日間交換して、輸送実験に適当な十分に分化した単層を得た。
【0208】
先端および基部横のインサートフィルター上の細胞単層を各側面においてPBSでリンスし、前もって加温したD−MEMと30分間前インキュベートした。先端チャンバー中の培地をおだやかに動かした。新鮮な前もって加温したD−MEM(1.2ml)を新しい基部横チャンバー(“FALCON”3504組織培養プレート)に移した。インサートを新しいチャンバーに移した。H−マンニトールをプローブとして使用してCaco−2単層漏出性をモニターした。
【0209】
アイソトープ標識化化合物、配列番号4のアミノ酸配列を含んでなるペプチドを発現するファージ(5×10cfu/ml)または野生型ファージ(対照ファージ1、5×10cfu/ml)、またはランダムペプチドファージ展示ライブラリー(対照ファージ2、5×10cfu/ ml)を含有する培地を先端側面に添加した。2時間インキュベートした後、チャンバーの先端側面および基部横側面からの培地を収集し、Caco−2単層を横切るファージおよびH−マンニトールの輸送を測定した。Caco−2を通る化合物の相対輸送率(%)を次のようにして計算した:
【0210】
P=Cb/(Ca+Cb)×Vb/Va
ここでCbは基部横チャンバー中の化合物の濃度であり、Caは先端チャンバー中の化合物の濃度であり、Vbは基部横チャンバー中の培地の体積であり、そしてVaは先端チャンバー中の培地の体積である。配列番号4のアミノ酸配列を含んでなるペプチドを発現するファージは、両方の対照ファージ試料よりも、10,000倍高いCaco−2単層の透過率を示した(表5)。
【0211】
【表5】
Figure 2004514410
【0212】
実施例 in vitro においてヒト血液脳関門を横切る配列番号 のアミノ酸配列を含んでなるペプチドを発現するファージの透過率
ヒト脳微小血管内皮細胞(HCEC)単層を用いる 2チャンバーモデルを使用して、in vitroにおいてヒト血液脳関門(BBB)を横切る配列番号4のアミノ酸配列を含んでなるペプチドを発現するファージの輸送の評価を実施した。
【0213】
特発性癲癇について治療を受けている患者から外科的に切除した側頭葉の小さい試料から、HCEC培養物を誘導し、日常的に単離し、培養において維持した。HCECは、多角形の、「丸石の」形態、内皮細胞マーカー、因子VIIIに関係する抗原およびアンギオテンシン変換酵素に対する免疫反応性、および高いレベルのBBB特異的マーカー、酵素GGTPおよびアルカリ性ホスファターゼ(ALP)、グルコーストランスポーター−1(GLUT−1)、HT7抗原(26、27)を示し、そしてMDR表現型(mdr−1)、BBBの重要な特徴を発現する。
【0214】
区画化されるBBBモデルは、2つの分離された区画間に位置する半透過性膜上で増殖したHCECの単層を含んでなる。インサートアセンブリーの下部チャンバーは、1:1(v/v)比で胎児ヒト星状膠細胞(FHAS)コンディショニングされた培地を補充した増殖培地を含有する。FHASコンディショニングされた培地は無血清M199中でコンフルエントFHASを72時間インキュベートすることによって調製され、HCEC中でBBB表現型のマーカーを誘導することが示された。Millicel ERSシステムを使用する経内皮電気抵抗(TEER)の変化を測定し、そしてHCEC単層を横切るH−スクロースおよび14C−イヌリンのパラ細胞(paracellular)通過を測定することによって、区画化BBBモデルの機能的性能の評価を日常的に実行する。
【0215】
TEER値(300〜350Ω/cm)、ならびにH−スクロースおよび14C−イヌリンについての透過係数Peは、それぞれ、0.28×10−3および0.14×10−3であった。2組の内部対照を各「被験化合物」について実行する。第1に、被験化合物の非存在下にH−スクロース(2μCi/ml)および14C−イヌリン(0.5μCi/ml)の輸送を使用してパラ細胞輸送を評価したが、被験化合物の存在下に同一の放射線標識化マーカーをまた使用して化合物それ自体が不活性でありかつ単層透過性を変化させないことを保証した。
【0216】
配列番号4のアミノ酸配列を含んでなるペプチドを発現するファージおよび対照ファージを、先端チャンバーに1×1010cfu/mlの濃度に添加した。4時間インキュベートした後、チャンバーの先端側面および基部横側面からの培地を収集し、ファージ力価を測定するために使用した。化合物の相対輸送を実施例3に記載されているように計算した。配列番号4のアミノ酸配列を含んでなるペプチドを発現するファージは、対照ファージよりも1000倍高い効能でHCEC単層を横切ることができた。
【0217】
【表6】
Figure 2004514410
【0218】
実施例 配列番号 のアミノ酸配列を含んでなるペプチドと担体との結合
腸関門を横切ってタンパク質を輸送する本発明の化合物の能力について試験した。その目的で、配列番号1のアミノ酸配列を含んでなるペプチドを担体タンパク質に化学的に結合させた。
担体タンパク質、例えば、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(ICN、250u/mg)をリン酸塩緩衝液(0.1MのNa2HPO4、0.1MのNaCl、10mMのEDTAおよびpH8.5)の中に最終濃度3mg/mlで溶解した。N−スクシニミジル−3−(2−ピリジルチオ)プロピオネート(SPDP、Sigma Chemical)を、0.234mgのSPDP=39μlのDMFAの比率で、133μlのジメチルホルムアミド(DMFA)中に溶解した。
【0219】
SPDPの溶液をペルオキシダーゼ溶液に添加し、室温において攪拌しながら30分間インキュベートした。修飾後、活性化されたタンパク質をゲル濾過により精製した。ペルオキシダーゼ溶液をセファデックスG−25カラム(Fisher、20ml)に適用し、50mlのリン酸塩緩衝液で溶離した。50の感度および0.005Auのランプ強度で280nmにおいて検出する。画分コレクター(Pharmacia Biotech)を使用して、画分(1ml)を収集した。修飾されたペルオキシダーゼを含有する画分を収集し、組合わせた(総体積5〜7ml)。対照のために1mlのアリコートを保持した。活性化されたタンパク質のアリコートを1mg/mlのL−システインメチルエステル塩酸塩(Aldrich Chemical)で処理することによって、活性化されたグループの数を評価した。
【0220】
回収された2−ピリジルジサルファイドの量を343nmにおける紫外線吸収により測定した。対照試料を室温において15時間システインで処理し、ゲル濾過により精製し、レセプター結合アッセイにおいて参照として使用した。1mgの配列番号2のアミノ酸配列を含んでなるペプチドを200μlのリン酸塩緩衝液中に溶解した。活性化されたペルオキシダーゼをペプチドと混合し、室温において攪拌しながら24時間インキュベートした。反応を343nmにおける紫外線検出(2−ピリジルジサルファイドの検出)によりコントロールした。セファデックスG−25を使用するゲル濾過により、複合体を精製した。
【0221】
複合体の画分を収集し、組合わせ、ブラッドフォード(Bradford)アッセイ(クーマッシーブルー、Bio−Rad)を使用してタンパク質濃度を測定した。配列番号1のアミノ酸配列を含んでなるペプチドの複合体はSDS/PAGE電気泳動により確証された。複合体のアリコートをABTS溶液(0.22gの2’ 2’−アジノ−ビス−93’−エチルベンズチアゾリン−6−スルホン酸)ジアンモニウム塩、0.05Mのクエン酸、pH4.0、0.05%のH)と室温において30分間インキュベートし、405nmにおける吸収を検出することによって、複合体のペルオキシダーゼ活性/mgのタンパク質を測定した。
【0222】
実施例 配列番号 のアミノ酸配列を含んでなるペプチドを含んでなる複合体の Caco−2 単層を横切る輸送
2チャンバーのCaco−2モデルを使用して、ペルオキシダーゼと配列番号1のアミノ酸配列を含んでなるペプチドとを含んでなる複合体のin vitroにおいて腸関門(IB)を横切る輸送を評価した。上記実施例4に記載されているように、Caco−2細胞単層を調製した。アイソトープ標識化化合物、配列番号1−ペルオキシダーゼ複合体(25g/ml)または対照ペルオキシダーゼ複合体(25g/ml)を含有する培地を、培養したCaco−2単層の先端側面に添加した。2および4時間インキュベートした後、それぞれチャンバーの先端側面および基部横側面からの培地を収集し、ペルオキシダーゼ活性およびCaco−2単層を横切るH−マンニトールの輸送を測定するために使用した。Caco−2を通る化合物の相対輸送率(%)を次のようにして計算した:
【0223】
P=Cb/(Ca+Cb)×Vb/Va
ここでCbは基部横チャンバー中の化合物の濃度であり、Caは先端チャンバー中の化合物の濃度であり、Vbは基部横チャンバー中の培地の体積であり、そしてVaは先端チャンバー中の培地の体積である。配列番号1−ペルオキシダーゼ複合体は、両方の対照ペルオキシダーゼ試料よりも、2.5倍高いCaco−2単層の透過率を示した(表7)。
【0224】
【表7】
Figure 2004514410
【0225】
実施例 腸投与後の配列番号 のアミノ酸配列を含んでなるペプチドを発現するファージの in   vivo 生物学的利用能
動物:雌のスプレイグ・ダウレイ(Sprague Dawley)ラット、体重150〜175gをチャールス・リバー・カナダ・インコーポレーテッド(Charles River Canada Inc.)(カナダ国ケベック州セント・コンスタント)から受け取とった。動物を光(12時間の明/暗のサイクル、06時00において照明)および温度(22°±1℃)制御下に3匹/カゴで保持し、このカゴは空気フィルターのカバーを有した。動物を使用するすべての操作は滅菌した層状フード下に実行された。動物はプリナ(Purina)マウス食事(商標Pro Lab PMH 4018、Agway、ニューヨーク州シラクース)、および水に任意にアクセスした。動物の研究は「実験動物のケアーおよび使用についてのガイドライン(Guideline for Care and Use of Experimental Animals)」に従い実施した。
【0226】
動物をランダムに2つの下記のグループに分割し(対照ファージおよび配列番号4のアミノ酸配列を含んでなるペプチドを発現するファージ)、“KETASET”(Wyeth−Averst Canada Inc.、オンタリオ州)で麻酔した。小腸を外科的計器で露出させ、ファージ試料溶液(200mlのPBS、pH7.5中の1×1011cfu)をおだやかに小腸の中に注入した。小腸の内部にファージを投与した後、5、30、60および120分に血液試料を収集した。血漿を直ちに調製し、大腸菌(E. coli)K91Kanコンピテント細胞を使用してファージ力価(細胞トランスデューシング単位/mlの血漿)を測定した。表5に表す結果が示すように、配列番号1のアミノ酸配列を含んでなるペプチドを発現するファージは対照ファージよりも10,000高い効能を有する血流に到達することができた。
【0227】
【表8】
Figure 2004514410
【0228】
実施例 配列番号 のアミノ酸配列を含んでなるペプチドを発現するファージのラットの血液中の薬物速度論および静脈内注射後の器官中の分布
雌のスプレイグ・ダウレイ(Sprague Dawley)ラット、体重150〜175gのラット(3匹/グループ)に、1012cfu/100リットルの配列番号4のアミノ酸配列を含んでなるペプチドを発現するファージまたは対照ファージを静脈内注射した。注射後5分、30分、1時間および2時間に血液試料を収集した。血液試料中のファージ力価を検出した(表5)。24時間後、動物を犠牲にし、動物の脳、心臓、肝臓、肺および腎臓を収集した。Pasqualini R.他、Nature 380:364−366(1996)に記載されているように、各動物からの器官の均質化し、そして器官中のファージの力価(細胞のトランスデューシング単位/gの組織)を測定した。
【0229】
ファージの器官生物分布を表6に表す。配列番号4のアミノ酸配列を含んでなるペプチドを発現するファージの高い蓄積は、分析した動物の脳、腎臓、肺および心臓において検出された。脳において検出された対照ファージのレベルに比較して、配列番号4のアミノ酸配列を含んでなるペプチドを発現するファージの80倍高い蓄積が脳において検出された。リガンドを発現するファージを注射したラットにおけるファージの最大蓄積は脳において測定された(脳:肝臓の比=18.1)。対照ファージは器官においていっそう等しく分布し、脳中に蓄積しなかった(脳:肝臓の比=0.31)。
【0230】
【表9】
Figure 2004514410
【0231】
【表10】
Figure 2004514410
【0232】
実施例 10配列番号 のアミノ酸配列を含んでなるペプチドを発現するファージの Caco−2 単層を横切る輸送の配列番号 1− ペルオキシダーゼ複合体による阻害
実施例4に記載されているように、10%の胎仔ウシ血清を補充したダルベッコ変性イーグル培地(D−MEM)(Life Technologies)中で5%のCOを含む加湿雰囲気下に37℃において、Caco−2細胞を培養し、増殖させた。
先端および基部横のインサートフィルター上の細胞単層を各側面においてPBSでリンスし、前もって加温したD−MEMと30分間前インキュベートした。先端チャンバー中の培地をおだやかに動かした。新鮮な前もって加温したD−MEM(1.2ml)を新しい基部横チャンバー(“FALCON”3504組織培養プレート)に移した。
【0233】
インサートを新しいチャンバーに移した。H−マンニトールをプローブとして使用して、Caco−2単層漏出性をモニターした。50μg/mlの配列番号1−ペルオキシダーゼ複合体の存在および非存在下にアイソトープ標識化化合物、配列番号4のアミノ酸配列を含んでなるペプチドを発現するファージ(5×10cfu/ml)または野生型ファージ(対照ファージ1、5×10cfu/ml)を含有する培地を先端側面に添加した。3時間インキュベートした後、チャンバーの先端側面および基部横側面からの培地を収集し、Caco−2単層を横切るファージおよびH−マンニトールの輸送を測定した。Caco−2を通る化合物の相対輸送率(%)を次のようにして計算した:
【0234】
P=Cb/(Ca+Cb)×Vb/Va
ここでCbは基部横チャンバー中の化合物の濃度であり、Caは先端チャンバー中の化合物の濃度であり、Vbは基部横チャンバー中の培地の体積であり、そしてVaは先端チャンバー中の培地の体積である。配列番号4のアミノ酸配列を含んでなるペプチドを発現するファージの輸送はペプチド配列番号1−ペルオキシダーゼ複合体により完全に阻害され、本発明のリガンドがリガンド依存的レセプター仲介メカニズムによりCaco−2単層を横切ってファージを輸送することが示唆される。配列番号4のアミノ酸配列を含んでなるペプチドを発現するファージ、またはペプチド配列番号1−ペルオキシダーゼ複合体の存在下におけるH−マンニトールのパラ細胞の輸送に対する効果は検出されなかった。
【0235】
【表11】
Figure 2004514410
【0236】
実施例 11アラニン置換突然変異
配列番号4のアミノ酸配列をコードするファージインサートにおける単一点突然変異を、下記の文献に記載されているように生成させた:Hoess R.他、Gene 128:43−49(1993)。簡単に述べると、特定のアミノ酸コーディングトリップレットをGCT(アラニントリップレット)に変化させた1連の配列番号4をコードするオリゴヌクレオチドを合成した。実施例3に記載されているように、突然変異したオリゴヌクレオチドをfUSE5ファージベクターの中にクローニングした。すべての突然変異体を精製し、DNA配列決定により確認した。
実施例4に記載されているように、Caco−2細胞単層を通る突然変異したファージクローンの輸送を分析した。
【0237】
【表12】
Figure 2004514410
【0238】
実施例 12配列番号 とエリトロポイエチンとのアソシエーション
RT/PCRを使用して、ネズミエリトロポイエチン(mEPO)をpcDNA/Ampl.1発現ベクターの中にクローニングした。フェニルヒドラジンで3日間処理したマウスの腎臓から抽出したmRNAの逆転写により、cDNAコード化mEPOを得た(Shoemaker CB他、Meth. Cell Biol.(1986))。センス5’−ATAACAAGCTTGGCGCGGAGATGGGGGTGおよびアンチセンス5’ ATAACTCTAGAACGGTGGCAGCAGCATGTCACプライマーを使用して、DNAの増幅を実施した。増幅したmEPO遺伝子をpcDNA/Ampl.1のXbaIおよびHindIII部位の中に挿入し、配列をDNA配列決定により確認した。Cos−7細胞をpCMV/EPOプラスミドでトランスフェクトし、そして組換えmEPOの発現をQuantikine IVDエリトロポイエチンELISAキットにより評価した。組換えmEPOの生理学的活性をin vivoにおいてヘマトクリットの測定により評価した。
【0239】
制限部位およびSerGlyAlaGlyリンカーでフランクしたペプチド配列番号4をコードする合成オリゴヌクレオチドを合成した(5’ACACAGGATCCTCACTAGGTAGGGTGCTGGACGGTGACCGGACGCGTTGGGGTGGTGGGGCCTCTGGGGCCGGATCCCACCA)。DNAエクステンション反応および短い相補的オリゴを使用することによって、二本鎖DNAフラグメントを合成した。さらに、配列番号4をコードするDNAをXbaIにより制限し、mEPOのオープンリーディングフレームでpCMV/EPOベクターの中にクローニングした。配列番号4−EPO融合タンパク質の構造をDNA配列決定により確認した。
【0240】
実施例 13ペプチド配列番号 とのパクリタクセル( paclitaxel )プロドラッグの複合化
マレイミドプロピオン酸を使用してパクリタクセルをエステル化し、パクリタクセル−2’マレイミドプロピオネートを生成した(工程1)。次いでパクリタクセル−2’マレイミドプロピオネートをペプチド(配列番号1)と複合化させ、生成物パクリタクセル(S−マレイミドプロピオネート)−ペプチド(配列番号1)を生成した。この生成物をHPLCにより精製した。
0.1mlのジメチルホルムアミド中のパクリタクセル(6mg、0.01mmol)の溶液を0.1mlのジメチルホルムアミド中のマレイミドプロピオン酸(2.5mg)溶液、およびジシクロヘキシルカーボジイミド(ジメチルホルムアミド中の3mgの溶液)と混合した。この混合物を60分間攪拌した。
【0241】
この混合物を水−アセトニトリル勾配(1%/分、10%のアセトニトリルから出発する)の逆相HPLCにより分画した。生成物パクリタクセル−2’マレイミドプロピオネートを含有する画分がMS(m/z 100.3)により同定された。
パクリタクセル−2’マレイミドプロピオネート(0.1mlのジメチルホルムアミド中に溶解した1mg)をペプチド配列番号1(0.02mlのDMF中に溶解した2mg)と混合し、18時間攪拌した。次いでこの混合物を2mlの水で希釈し、凍結乾燥した。残留する物質を水−アセトニトリル勾配(1%/分、10%のアセトニトリルから出発する)の逆相HPLCにより精製した。生成物パクリタクセル(S−マレイミドプロピオネート)−ペプチド(配列番号1)を含有する画分がMS(m/z 1240二重装入)により同定された。
【0242】
実施例 14デオキシルビシンプロドラッグとペプチド配列番号 との複合化
ロイシル−デオキシルビシンをヘテロ二機能性リンカーマレイミドプロピオン酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステルで修飾し、生成したマレイミドプロピオニルロイシル−デオキシルビシンを得た(工程1)。次いで、マレイミドプロピオニルロイシル−デオキシルビシンをペプチド配列番号2と反応させることによって、複合体ペプチド(配列番号1)−(S−マレイミドプロピオニルロイシル−デオキシルビシン)を製造した(工程2)。
【0243】
0.1mlのジメチルホルムアミド中のL−ロイシル−デオキシルビシン(6mg、0.01mmol)の溶液を、0.1mlのジメチルホルムアミド中のマレイミドプロピオン酸N−ヒドロキシスクシンイミド(3mg)溶液、およびジイソプロピルエチルアミン(0.015mlのジメチルホルムアミド中の10%の溶液)と混合した。この混合物を20分間攪拌した。この混合物を水−アセトニトリル勾配(1%/分、10%のアセトニトリルから出発する)の逆相HPLCにより分画した。生成物マレイミドプロピオニルロイシル−デオキシルビシンを含有する画分がMS(m/z 807.3)により同定された。
【0244】
マレイミドプロピオニルロイシル−デオキシルビシン(0.1mlのジメチルホルムアミド中に溶解した1mg)をペプチド配列番号1(0.02mlのDMF中に溶解した2mg)と混合し、18時間攪拌した。次いでこの混合物を2mlの水で希釈し、凍結乾燥した。残留する物質を水−アセトニトリル勾配(1%/分、10%のアセトニトリルから出発する)の逆相HPLCにより精製した。生成物(ペプチド(配列番号1)−ロイシル−デオキシルビシン)を含有する画分がMS(m/z 1141.5二重装入)により同定された。
【0245】
【表13】
Figure 2004514410
【0246】
略号
Ac−アセチル
Fam−フルオレセイン−5−カルボニル
Tamra−カルボキシテトラメチルローダミン
は正に帯電したアミノ酸、例えば、ArgまたはLysであり、
はVal、Leu、IleまたはMetであり、
は負に帯電したアミノ酸、例えば、GluまたはAspであり、
は負に帯電したアミノ酸、例えば、GluまたはAspであり、
はThrまたはSerであり、
Xは任意のアミノ酸である。
【0247】
本発明は、本明細書に記載されている特定の態様により範囲を限定されない。事実、本明細書に記載されているものに加えて本発明の種々の変更は、前述の説明および添付図面から当業者にとって明らかであろう。このような変更は添付された特許請求の範囲に入ることを意図する。
さらに、核酸またはポリペプチドについて与えられたすべての塩基サイズまたはアミノ酸サイズ、またはすべての分子量または分子質量の値は概算であり、説明のために提供されている。
種々の刊行物が引用されており、それらの開示は引用することによって本明細書の一部とされる。

Claims (21)

  1. 少なくとも1つのペプチドを含んでなるポリペプチドまたはその誘導体であって、前記ポリペプチドまたはその誘導体は配列番号6の下記のモチーフ:
    −Y−X−Y−X−Y−X−Y
    (ここで
    は正に帯電したアミノ酸、例えば、ArgまたはLysであり、
    はVal、Leu、IleまたはMetであり、
    は負に帯電したアミノ酸、例えば、GluまたはAspであり、
    は負に帯電したアミノ酸、例えば、GluまたはAspであり、
    はThrであり、
    Xは任意のアミノ酸である)
    を含んでなり、前記ポリペプチドは小腸または血液脳関門を横切ることができる、ポリペプチドまたはその誘導体。
  2. 前記ポリペプチドまたはその誘導体が配列番号1のアミノ酸配列、またはそのアナローグ、誘導体、または変異型を含んでなる、請求項1に記載のポリペプチド。
  3. 前記配列番号1の誘導体が、小腸および血液脳関門を横切る生物学的因子を送出すことができる、請求項2に記載のポリペプチド。
  4. 前記ポリペプチドまたはその誘導体が配列番号2のアミノ酸配列、またはそのアナローグ、誘導体、または変異型を含んでなる、請求項1に記載のポリペプチド。
  5. 前記ポリペプチドまたはその誘導体が配列番号3のアミノ酸配列、またはそのアナローグ、誘導体、または変異型を含んでなる、請求項1に記載のポリペプチド。
  6. 前記ポリペプチドまたはその誘導体が配列番号4のアミノ酸配列、またはそのアナローグ、誘導体、または変異型を含んでなる、請求項1に記載のポリペプチド。
  7. 前記ポリペプチドまたはその誘導体が配列番号5のアミノ酸配列、またはそのアナローグ、誘導体、または変異型を含んでなる、請求項1に記載のポリペプチド。
  8. 前記ポリペプチドまたはその誘導体が配列番号4のペプチドまたはその誘導体の生物学的活性の少なくとも約20%である、請求項6に記載のポリペプチド。
  9. Caco2細胞を横切る輸送;血液脳関門のin vitroモデルを横切る輸送;in vivo経口的生物学的利用能の分析;またはin vivo中枢神経系の生物学的利用能の分析を含んでなるin vitroバイオアッセイを使用して、生物学的活性を測定する、請求項8に記載のポリペプチド。
  10. 前記ポリペプチドまたはその誘導体が生物学的因子をさらに含んでなる、請求項1に記載の医薬組成物。
  11. 前記ポリペプチドまたはその誘導体が小腸および血液脳関門を横切る前記生物学的因子を送出すことができる、請求項1に記載のポリペプチド。
  12. 前記ポリペプチドまたはその誘導体が血液脳関門および胃腸関門を横切る生物学的因子を増加させることができ、前記ポリペプチドまたはその誘導体が配列番号4のアミノ酸配列、またはそのアナローグ、誘導体、または変異型を含んでなる、請求項1に記載のポリペプチド。
  13. 前記ポリペプチドまたはその誘導体が担体をさらに含んでなる、請求項1に記載のポリペプチド。
  14. 前記ポリペプチドまたはその誘導体が生物学的因子および担体をさらに含んでなる、請求項1に記載のポリペプチド。
  15. 前記ポリペプチドまたはその誘導体が修飾された因子をさらに含んでなる、請求項1に記載の医薬組成物。
  16. 前記ポリペプチドまたはその誘導体が治療剤をさらに含んでなる、請求項1に記載のポリペプチド。
  17. 治療を必要とする患者に有効量の請求項1に記載の前記ポリペプチドと、薬学上許容される担体とを投与することを含んでなる、前記患者における中枢神経系の病理学に関連する疾患を治療する方法。
  18. 配列番号1、2、3、4、5または6のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドまたはその誘導体をコードする単離された核酸。
  19. 請求項18に記載の核酸配列を含んでなる発現ベクター。
  20. 請求項18に記載の発現ベクターでトランスフェクトされた宿主細胞。
  21. 配列番号1、2、3、4、5または6のアミノ酸配列をコードするポリペプチドを核酸分子がコードする、核酸分子および担体を含んでなる組成物。
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