JP2007501014A - 化学療法剤の送達のための標的化されたキャリア融合物 - Google Patents

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Abstract

本発明は標的化された薬物キャリアとして働く融合タンパク質を提供する。このタンパク質は、特定の細胞型を標的化するように、および任意で変化した/改善された薬物結合特性を有してもよいように、さらに操作された天然の薬物結合能力を有する分子から誘導される。これらの融合タンパク質は、例えば、癌細胞への化学療法剤化合物の送達において有用である。

Description

1.発明の分野
本発明は、分子生物学およびタンパク質生化学の分野に関する。より詳細には、本発明は、化学療法剤化合物のための標的化キャリアとして働く融合タンパク質、およびそのための使用の方法に関する。
米国政府は、米国国立衛生研究所からの補助金番号CA78747に従って、本発明において権利を有する。
本発明は、2003年8月5日に出願された、全体の内容が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許仮出願第60/492,508号に対する優先権の恩典を主張する。
2.関連分野
癌は、近年における癌治療の目覚ましい進歩にも関わらず、依然として世界規模で主な死因の1つである。治療の最も有望な手段の1つ、標的化された薬物送達は、最大の失望の1つであることが判明した、最初に、非常に多くの期待がモノクローナル抗体(mAb)の使用に焦点を置いて寄せられていた。これは、高度の結合選択性によって特徴付けられる。予備的な研究は、腫瘍細胞表面レセプターを標的化することの実行可能性を実証したが、実際の結果は目覚ましいものに満たなかった。mAbの使用における固有の2つの主要な制限であるそれらの大きなサイズ、ならびに肝臓および細網内皮系による抗体の非特異的取り込みが、おそらく所望の結果に満たないことの大きな要因の1つとなった。
腫瘍標的化ペプチドは、ヒト癌のための優秀な代替的標的化剤であり、これらは抗体標的化に伴う問題のいくつかを緩和するかもしれない。過去10年間において、種々の癌細胞表面ペプチドまたは癌関連標的化ペプチドが、コンビナトリアル法によって同定されてきた。タンパク質または低分子のいずれかの抗癌剤薬物へのこれらの癌標的化ペプチドの結合体化は、癌細胞の選択性および特異性において著しい改善を示した。このことは、これらのペプチドが、癌のための標的化された薬物送達の第2世代であり得ることを実証した。それにも関わらず、ペプチド薬物標的化の応用における改善はなお所望されている。
発明の概要
従って、本発明に従って、キャリアポリペプチドの薬物結合部分および第1の細胞標的化ペプチドまたはタンパク質を含む融合タンパク質が提供される。このキャリアポリペプチドは、アポタンパク質、結合タンパク質、または天然もしくは合成のその改変体、例えば、CagAまたはNscAなどであってもよい。この結合タンパク質は、BlmA、PlmA、もしくはMRDなどの生物合成遺伝子クラスタータンパク質、または病原体薬物耐性タンパク質であってもよい。第1の細胞標的化ペプチドまたはタンパク質は、例えば、膵臓癌細胞、肝臓癌細胞、リンパ腫細胞、骨髄腫細胞、神経芽細胞腫細胞、乳癌細胞、前立腺癌、または頭頸部癌細胞などである癌細胞を標的化する、癌細胞標的化ペプチドまたは腫瘍血管系標的化ペプチドであってもよい。この融合タンパク質は、抗生物質、植物アルカロイド、アルキル化剤、DNA修復阻害剤、またはDNA切断剤などの複合体化された薬物をさらに含んでもよい。このDNA切断剤は、特に、エンジイン(enediyne)であってもよい。第1の細胞標的化ペプチドは、キャリアポリペプチドのN末端で、キャリアポリペプチドのC末端で、またはキャリアポリペプチドの内部に結合されてもよい。この融合タンパク質は、細胞標的化ペプチドもしくはタンパク質の複数コピーを含んでもよく、または第2の細胞標的化ペプチドもしくはタンパク質を含んでもよい。
別の実施形態において、キャリアタンパク質の薬物結合部分および細胞標的化ペプチドまたはタンパク質をコードする核酸が提供される。この核酸は、原核生物プロモーターまたは真核生物プロモーターなどのプロモーターをさらに含んでもよい。この核酸はまた、ポリアデニル化シグナル、内部リボソーム結合部位、および選択マーカーの1つまたは複数をさらに含んでもよい。このキャリアポリペプチドは、アポタンパク質、結合タンパク質、もしくは天然もしくは合成のその改変体、例えば、CagAもしくはNscA、または生物合成遺伝子クラスタータンパク質(例えば、BlmA、PlmA、もしくはMRD)、または病原体薬物耐性タンパク質であってもよい。この核酸は、癌細胞標的化ペプチドもしくはタンパク質または腫瘍血管系標的化ペプチドもしくはタンパク質をさらにコードしてもよい。この薬物は、抗生物質、植物アルカロイド、アルキル化剤、DNA修復阻害剤、またはDNA切断剤からなる群より選択されてもよい。細胞標的化ペプチドまたはタンパク質は、キャリアポリペプチドのN末端で、キャリアポリペプチドのC末端で、またはキャリアポリペプチドの内部に結合されてもよい。
なお別の態様において、対象に薬物を投与する方法が提供され、この方法は、(a)キャリアポリペプチドの薬物結合部分および細胞標的化ペプチドまたはタンパク質を含む融合タンパク質と複合体化された薬物;および(b)薬学的に許容される緩衝剤または希釈剤を含む薬学的組成物を該対象に投与する工程を含む。このキャリアポリペプチドは、アポタンパク質、結合タンパク質、または天然もしくは合成のその改変体であってもよい。このアポタンパク質はCagAまたはNscAであってもよい。この結合タンパク質は、生物合成遺伝子クラスタータンパク質(例えば、BlmA、PlmA、もしくはMRDなど)、または病原体薬物耐性タンパク質であってもよい。対象は癌に罹患してもよく、かつ細胞標的化ペプチドが癌の細胞または血管系を標的化する。癌は膵臓癌、肝臓癌、リンパ腫、骨髄腫、神経芽細胞腫、前立腺癌、乳癌、または頭頸部癌であってもよい。薬物は、抗生物質、植物アルカロイド、アルキル化剤、DNA修復阻害剤、またはDNA切断剤からなる群より選択されてもよい。細胞標的化ペプチドまたはタンパク質は、キャリアポリペプチドのN末端もしくはC末端に、またはキャリアポリペプチドに内部的に結合されてもよい。対象は哺乳動物、例えばヒトなどである。
なおさらに別の態様において、キャリアポリペプチド中の薬物結合活性についてスクリーニングする方法が提供され、この方法は、(a)キャリアポリペプチドの少なくとも薬物結合部分を、このキャリアポリペプチドにとって天然のリガンドではない薬物と接触させる工程;および(b)キャリアポリペプチドの薬物結合部分への薬物の結合を評価する工程を含む。この薬物結合部分は細胞標的化ペプチドまたはタンパク質に融合されてもよい。この薬物は標識されてもよい。工程(a)はキャリアポリペプチドに結合することが知られている薬物の存在下で実行されてもよく、かつアッセイは競合アッセイである。このキャリアポリペプチドはアポタンパク質、結合タンパク質、または天然もしくは合成のその改変体であってもよい。このアポタンパク質はがCagAまたはNscAであってもよい。この結合タンパク質は、生物合成遺伝子クラスタータンパク質(例えば、BlmA、PlmA、もしくはMRDなど)、または病原体薬物耐性タンパク質であってもよい。この方法はさらに、薬物の結合親和性を評価する工程を含んでもよい。細胞標的化ペプチドまたはタンパク質は、キャリアポリペプチドのN末端、C末端、または内部で結合されてもよい。
さらなる態様において、ポリペプチド中の薬物結合活性についてスクリーニングする方法が提供され、この方法は以下の工程を含む:(a)キャリアポリペプチドの少なくとも薬物結合部分を提供する工程;および(b)該キャリアポリペプチドの薬物結合部分への選択された薬物の結合を評価する工程。この方法は、工程(b)に先だって、薬物結合部分を変異誘発する工程をさらに含んでもよい。この変異誘発する工程はランダム化されてもよく、またはランダム化されなくてもよい。この方法はまた、工程(b)の後で、薬物結合部分を変異誘発する工程、および変異誘発された薬物結合部分への選択された薬物の結合を評価する工程をさらに含んでもよい。この変異誘発する工程はランダム化されてもよく、またはランダム化されなくてもよい。このキャリアポリペプチドは、アポタンパク質、結合タンパク質、または天然もしくは合成のその改変体(例えば、CagAまたはNscAなど)であってもよい。この結合タンパク質は、生物合成遺伝子クラスタータンパク質(例えば、BlmA、PlmA、もしくはMRDなど)、または病原体薬物耐性タンパク質であってもよい。この方法はさらに、薬物の結合親和性を評価する工程を含んでもよい。この薬物結合部分は、細胞標的化ペプチドに融合されてもよい。
なおさらなる実施形態において、融合タンパク質-薬物複合体を産生する方法が提供され、この方法は、以下の工程:(a)キャリアポリペプチドの薬物結合部分および細胞標的化ペプチドまたはタンパク質を含む融合タンパク質をコードする核酸を含む宿主細胞を提供する工程であって、ここで、この宿主細胞が薬物をさらに産生する、工程;ならびに(b)この融合タンパク質とこの薬物の両方が産生される条件下で該宿主細胞を培養する工程を含む。この方法は、複合体を生成する工程をさらに含んでもよい。この宿主細胞は、細菌細胞などの原核細胞、例えば、天然に薬物を産生し、かつ天然のキャリアポリペプチドの発現のためにノックアウトされるものであってもよい。この宿主細胞はまた、酵母細胞であってもよい。核酸が宿主細胞のゲノムに安定に形質転換されてもよい。このキャリアポリペプチドはアポタンパク質、結合タンパク質、または天然もしくは合成のその改変体であってもよい。細胞標的化ペプチドまたはタンパク質は、キャリアポリペプチドのN末端、C末端、または内部で結合されてもよい。
さらなる態様において、キャリアポリペプチドの薬物結合部分および細胞標的化ペプチドまたはタンパク質を含む融合タンパク質をコードする核酸を含む宿主細胞が提供される。この宿主細胞は、薬物をさらに産生してもよい。細胞標的化ペプチドまたはタンパク質は、キャリアポリペプチドのN末端、C末端、または内部で結合されてもよい。
本明細書で使用される場合、単数形(「a」または「an」)は1つまたは複数を意味し得る。本明細書で使用される場合、特許請求の範囲においては、語句「含む」とともに使用されるとき、単数形の語句(「a」または「an」)は1つまたは複数を意味し得る。本明細書で使用される場合、「別の」は、少なくとも第2またはそれ以上のものを意味し得る。
発明の詳細な説明
1.本発明
本発明は、癌治療のための天然のタンパク質の修飾および調製における新規なアプローチを利用する。このアプローチは、天然の化学医薬品において観察される強力な細胞毒性、腫瘍標的化ペプチドの証明された選択性および特異性、ならびに天然に存在する、薬物結合タンパク質の利用可能性を組み合わせる。これらの分子は、以下により詳細に記載される。
従って、本発明は、逆転可能な様式で毒性薬剤を結合する能力を有する天然に存在するタンパク質を同定する。このような薬物の例は、アポタンパク質および典型的には生合成経路に関与するいわゆる「結合タンパク質」である。このような天然に存在するタンパク質は、それらの完全な形で、または別個の実体として同定および使用されるその薬物結合部分で使用されてもよい。さらに、これらの分子は、それらが通常結合しない他の薬物への結合についてスクリーニングされ得る。最後に、これらの分子は、拡張された薬物結合能力を有する新規な、修飾タンパク質の作製のためのプラットフォームとして使用され得る。
A.アポタンパク質
アポタンパク質は、まれな例外があるが、高度な相同性を示す小さな産生タンパク質である。これらは、32〜34アミノ酸のリーダーペプチドを有するプレプロタンパク質によってコードされる。例としては、Ked、NcsA、McmA、およびAxnAが含まれる。これらの分子についての一般的構造には、2個のβ-ヘアピンリボンから構成されるサブドメインに連結された7個の鎖の逆平行β-バレルドメインが含まれる。このモチーフは、免疫グロブリンの可変ドメインに類似することが示唆されている。機能的には、これらのアポタンパク質はまた、選択的プロテアーゼ活性を示すことが示されており、このことは、化合療法薬物送達におけるより活性な役割を示唆する。さらに、あるアポタンパク質の発現は構成的であり、発色団産生とは独立しており、それによって発色団が隔離されることを保証し、かつ自己耐性における役割を示唆する。
本発明は、アポタンパク質の薬物結合の局面をうまく利用することを追求する。なぜなら、アポタンパク質は天然の薬物リガンドであり、これらは、特定の種類の薬物を結合する固有の能力を有するからである。例は、C-1027エンジイン発色団の、ストレプトマイセス グロビスポルスのCag-Aアポタンパク質への結合、またはNCSエンジイン発色団の、ストレプトマイセス カルジノスタティクス(Streptomyces carzinostaticus)中のNcsアポタンパク質への結合である。当業者は、特定の薬物を結合する能力について種々のアポタンパク質を容易にスクリーニングすることができ、または逆に、特定のアポタンパク質に結合するそれらの能力について多数の薬物をスクリーニングすることができる。さらに、分子工学技術を使用して、所定のアポタンパク質の構造を修飾することができ、それによって、薬物結合能力を変化させる。
B.結合タンパク質
「結合タンパク質」という用語は、本発明の状況においては、薬物生合成経路と多くの場合関連する、天然に存在する一連の低分子を規定する。これらの分子は、種々の生物によって産生される薬物のためのキャリアとして作用し、このようにして、薬物の隔離、薬物輸送、および薬物耐性に関与する。
アポタンパク質と同様に、本発明は、これらのタンパク質の薬物結合能力をうまく利用することを追求する。1つのこのような結合タンパク質の例は、BlmA、ストレプトマイセス ベルティシルス(Streptomyces verticillus)(Sugiyama et al., 2002)からのブレオマイシン結合タンパク質である。別の例はMRDタンパク質であり、これは、ストレプトマイセス ラベンジュレからのマイトマイシンCに結合する(Martin et al., 2002)。再度、特定の薬物を結合する能力についてこのような結合タンパク質を容易にスクリーニングし、特定の結合タンパク質に結合するそれらの能力について多数の薬物をスクリーニングし、または分子工学技術を使用して、別個の結合特性を有する新規な結合タンパク質を作製することができる。
II.融合タンパク質
A.融合型
融合タンパク質は、特異的な型の挿入変異体である。従って、このようなものとして、タンパク質融合物は少なくとも2つの異なるタンパク質(この場合、薬物結合タンパク質および細胞標的化ペプチドまたはタンパク質)からの連続するセグメントを含む。連続するセグメントが「末端から末端」様式で結合される末端融合物が存在し、および1つのタンパク質からの連続するセグメントが第2の連続するセグメントに挿入される内部融合物が存在する。本発明の目的のために、融合タンパク質は、2つの供給源からの少なくとも3つの保存性アミノ酸残基を有する。
本明細書に記載される融合タンパク質の連続するセグメントは、種々の供給源に由来してもよい。第1の供給源は、天然の薬物結合タンパク質である(例えば、アポタンパク質または生合成クラスター結合タンパク質)。しかし、連続する薬物結合セグメントは、その生物学的特性(インビボでの半減期、薬物結合特異性、薬物親和性など)を変化させるために、その天然の状態から修飾してもよい。すべての薬物結合タンパク質、またはその薬物結合フラグメントを使用してもよい。
連続するセグメントについての第2の供給源は、標的化ペプチドまたはタンパク質である。標的化ペプチドまたはタンパク質は、特定の様式で、細胞または組織上の特定のリガンドへの結合を可能にするものである。再度、完全なタンパク質を利用してもよいが、その標的化を指向するタンパク質の部分のみを使用することが利点であることが判明する可能性がある。タンパク質を、同様に変化した標的化を達成するように修飾してもよいが、より可能性が高い修飾は、リガンド結合または安定性の想定的な強度に関連する。
さらに、連続するセグメントの第3の供給源は、合成分子である。本文書における他の箇所に記載されるように、薬物結合能力および細胞標的化能力を有する新規なタンパク質/セグメントの同定のための方法が提供される。このようなものとして、全体的に新規な融合物を作製する能力が提供する。例えば、標的リガンドへの結合のための合成ペプチドライブラリーをスクリーニングするための方法は当技術分野において公知である。さらに、本発明は、薬物結合能力についてタンパク質(既知または未知のもの)をスクリーニングする方法を提供する。
B.リンカー/カップリング剤
代替的な態様において、タンパク質セグメントの「融合」は、線状ペプチド結合によっては達成されないが、その代わりに化学的融合、すなわち、遺伝子融合に頼らない手段による、薬物結合ポリペプチドへの細胞標的化ペプチドの結合によって達成される。典型的には、これは化学リンカーの使用を含む。このリンカーは、分子のN末端もしくはC末端、または内部アミノ酸に結合され得る。
ペプチドリンカーは、腫瘍環境中に優先的に局在するか、またはそこで活性である酵素のための切断部位を含んでもよく、このようなリンカーが意図される。このようなペプチドリンカーの例示的な型は、ウロキナーゼ、プラスミン、トロンビン、IXa因子、Xa因子、またはメタロプロテイナーゼ、例えば、コラゲナーゼ、ゼラチナーゼ、またはストロメライシンなどによって切断されるものである。
さらに、部分に結合体化するように首尾よく利用され得る多数の型のジスルフィド結合含有リンカーが公知であるが、ある特定のリンカーは、異なる薬理学的特性および性能に基づいて、一般的に他のリンカーよりも好ましい。例えば、立体的に「妨害される」ジスルフィド結合を含むリンカーが、インビボにおけるそれらの比較的大きな安定性のため好ましい。
架橋試薬は、2つの異なる分子、例えば、安定化剤および凝固剤の官能基を一緒に結び付ける分子架橋を形成するために使用される。しかし、同じアナログのダイマーまたはマルチマーが作製され得るか、または異なるアナログから構成されるヘテロマー複合体が作製され得ることが意図される。段階的な様式で2つの化合物を連結するために、望ましくないホモポリマー形成を除外するヘテロ二官能性架橋剤が使用され得る。
(表1)ヘテロ二官能性架橋剤
Figure 2007501014
例示的なヘテロ二官能性架橋剤は次の2つの反応基を含む:1つは一級アミン基と反応し(例えば、N-ヒドロキシスクシンイミド)、および他方はチオール基と反応する(例えば、ピリジルジスルフィド、マレイミド、ハロゲンなど)。一級アミン反応基を通して、架橋剤は1つのタンパク質(例えば、選択された抗体またはフラグメント)のリジン残基と反応してもよく、かつチオール反応基を通して、すでに第1のタンパク質に結合された架橋剤は、他のタンパク質(例えば、選択性剤)のシステイン残基(遊離のスルフヒドリル基)と反応する。
SMPTは、隣接するベンゼン環およびメチル基によって「立体障害を受ける」ジスルフィド結合を含む二官能性架橋剤である。ジスルフィド結合の立体障害は、組織および血液中に存在し得るグルタチオンなどのチオレートアニオンによる攻撃を保護する機能を発揮し、それによって標的部位への結合した薬剤の送達の前に、結合体分離の妨害を補助すると考えられている。
SMPT架橋剤は、多くの他の既知の架橋剤と同様に、システインのSHまたは一級アミンなどの官能基(例えば、リジンのεアミノ基)を架橋する能力をもたらす。別の可能な型の架橋剤には、切断可能なジスルフィド結合を含むヘテロ二官能性光反応性フェニルアジド、例えば、スルホスクシンイミジル-2-(p-アジドサリチルアミド)エチル-1,3'-ジチオプロピオネートが含まれる。N-ヒドロキシスクシンイミジル基は、一級アミノ基と反応し、かつフェニルアジドは(光分解に際し)任意のアミノ酸残基と非選択的に反応する。
妨害性の架橋剤に加えて、非妨害性のリンカーもまた、本発明に従って利用され得る。保護されたジスルフィドを含むかまたは生成すると考えられていない他の有用な架橋剤には、SATA、SPDP、および2-イミノチオレート(Wawrzynczak and Thorpe, 1986)が含まれる。このような架橋剤の使用は当技術分野において十分に理解されている。別の態様は、柔軟性のリンカーの使用を含む。
米国特許第4,680,338号は、アミン含有ポリマーおよび/またはタンパク質との結合体を産生するため、とりわけ、キレート剤、薬物、酵素、検出可能な標識などとの抗体結合体を形成するために有用な二官能性リンカーを記載する。米国特許第5,141,648号および同第5,563,250号は、種々の穏やかな条件下で切断可能である不安定な結合を含む切断可能な結合体を開示する。このリンカーは、関心対象の薬剤が、活性薬剤の放出を生じる切断を伴って、リンカーに直接的に結合されてもよいという点で、特に有用である。好ましい使用には、抗体などのタンパク質または薬物に遊離のアミノ基または遊離のスルフヒドリル基を付加することが含まれる。
米国特許第5,856,456号は、融合タンパク質、例えば、単鎖抗体を作製するためにポリペプチド成分を連結する際の使用のためのペプチドリンカーを提供する。このリンカーは、約50アミノ酸までの長さであり、荷電したアミノ酸(好ましくはアルギニンまたはリジン)の存在、続いてプロリンの存在を含み、かつ安定性の増加および凝集の減少によって特徴付けられる。米国特許第5,880,270号は、種々の免疫診断および分離技術において有用であるアミノオキシ含有リンカーを開示する。
ホモ二官能性アミン架橋剤には、グルタルアルデヒド、ビス(イミド-エステル)、ビス(スクシンイミジル-エステル)、ジイソシアネート、およびジ酸クロライドが含まれる。しかし、これらの試薬は、高分子量凝集物を生じる傾向があり、これらを、2つの異なるアミン含有生体分子間の結合体を調製するために不適切にする。
しかし、他のより洗練されたアミン反応性リンカーが利用可能である。これらには以下が含まれる:BASED、BSOCOES、スルホ-BSOCOES、DMAI(DMA)、DMSI(DMS)、DMPI(DMP)、DSS、スルホ-DSS(BS3)、DSSeb、スルホ-DSSeb、DPDPB、DSG、DTSSP、DST、DTBP DSP (Lomant試薬)、スルホ-HSAB、EGS、およびスルホ-EGS。これらの試薬は、Pierce Biotechnology、Sigma-Aldrich、およびUptimaから利用可能である。
種々の硫黄(チオール)-反応性リンカーには、BM[PEO]3、BM[PEO]4、BMB、BMDB、BMH、BMOE、DPDPB、DTME、およびHBVS(Pierce Biotechnology)が含まれる。
C.ペプチド合成
リンカー融合の状況において(上記)およびスクリーニングにおいて(下記)、デノボでペプチドを合成することが有用でありうる。種々の自動合成装置が市販されており、既知のプロトコールに従って使用され得る。例えば、各々参照により本明細書に組み入れられる、Stewart and Young,(1984); Tam et al. (1983);Merrifield (1986); and Barany and Merrifield (1979)を参照されたい。通常約6〜約35から50アミノ酸までの重複するペプチドの短いペプチド配列、またはライブラリーは容易に合成され得、次いで反応性ペプチドを同定するように設計されたスクリーニングアッセイにおいてスクリーニングされ得る。
III.融合物をコードする核酸およびその組換え産生
本発明の特定の態様は、本発明の融合タンパク質をコードする核酸に関する。「核酸」という用語は当技術分野において周知であり、かつDNA、RNA、またはその誘導体もしくはアナログの分子(すなわち、鎖)をいう。「核酸」という用語は、「オリゴヌクレオチド」および「ポリヌクレオチド」という用語を含み、各々が「核酸」という用語の亜属である。「オリゴヌクレオチド」という用語は、約3から約100ヌクレオチドの間の長さの分子をいう。「ポリヌクレオチド」という用語は、約100ヌクレオチドの長さよりも大きな分子をいう。
従って、核酸は、特定の配列の相補鎖または「相補物」を含む、一本鎖分子または二本鎖分子を含み得る。本明細書で使用される場合、一本鎖核酸は、接頭語「ss」で示され、二本鎖核酸は接頭語「ds」で示され得る。
特定の態様において、核酸は核酸セグメントである。本明細書で使用される場合、「核酸セグメント」という用語は、より小さな核酸のフラグメント、例えば、非限定的な例としては、ペプチドまたはポリペプチド配列の一部のみをコードするものである。従って、「核酸セグメント」は、ペプチドまたはポリペプチドをコードする領域の約10ヌクレオチドから全長までの、遺伝子配列の任意の部分を含み得る。
A.核酸の調製および精製
核酸は、当業者に公知の任意の技術、例えば、化学合成、酵素的産生、または生物学的(組換え)産生などによって作製され得る。合成核酸(例えば、合成オリゴヌクレオチド)の非限定的な例には、例えば、参照により本明細書に組み入れられる、EP 266,032に記載されるような、ホスホトリエステル、ホスフィン、もしくはホスホルアミダイト化学および固相技術を使用するインビトロ化学合成によって、または、各々参照により本明細書に組み入れられる、Froehler et al. (1986)および米国特許第5,705,629号によって記載されるデオキシヌクレオチドH-ホスホネート中間体を介して作製される核酸が含まれる。本発明の方法において、1つまたは複数のオリゴヌクレオチドが使用され得る。オリゴヌクレオチド合成の種々の異なるメカニズムが、例えば、各々参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第4,659,774号、同第4,816,571号、同第5,141,813号、同第5,264,566号、同第4,959,463号、同第5,428,148号、同第5,554,744号、同第5,574,146号、同第5,602,244号において開示されている。
酵素的に産生される核酸の非限定的な例には、PCR(商標)(例えば、各々参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第4,683,202号および同第4,682,195を参照されたい)などの増幅反応、または、参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,645,897号において記載されるオリゴヌクレオチドの合成において酵素によって産生されるものが含まれる。生物学的に産生される核酸の非限定的な例には、生細胞中で産生される(すなわち、複製される)組換え核酸、例えば、細菌中で複製される組換えDNAベクターなどを含まれる(例えば、参照により本明細書に組み入れられる、Sambrook et al. 1989を参照されたい)。
核酸は、ポリアクリルアミドゲルで、塩化セシウム遠心分離勾配で、または当業者に公知である任意の他の手段によって精製されてもよい(例えば、参照により本明細書に組み入れられる、Sambrook et al. 1989を参照されたい)。特定の局面において、本発明は、単離された核酸である核酸に関する。本明細書において使用される場合、「単離された核酸」という用語は、1つまたは複数の細胞の全体のゲノムの核酸、および転写された核酸のバルクを含まないように単離されたか、さもなくばそれらを含まない、核酸分子(例えば、RNA分子またはDNA分子)をいう。特定の態様において、「単離された核酸」とは、細胞成分、またはインビトロ反応成分、例えば、脂質もしくはタンパク質などの高分子、生物学的低分子などを含まないように単離されたか、さもなくばそれらを含まない核酸をいう。
B.ハイブリダイゼーション
本明細書において使用される場合、「ハイブリダイゼーション」とは、二本鎖もしくは三本鎖の分子、または部分的に二本鎖もしくは三本鎖の性質を有する分子を形成することを意味すると理解される。「アニールする」という用語は、本明細書で使用される場合、「ハイブリダイズする」と同義語である。本明細書において使用される場合、「ストリンジェントな条件」または「高ストリンジェンシー」とは、相補的配列を含む1つまたは複数の核酸鎖の間、またはその中でハイブリダイゼーションを可能にするが、ランダム配列のハイブリダイゼーションを除外する条件である。ストリンジェントな条件は、もしあれば、核酸と標的化との間のわずかなミスマッチを許容する。このような条件は当業者に周知であり、高い選択性を必要とする応用のために好ましい。非限定的な応用には、遺伝子もしくはその核酸セグメントのような核酸を単離すること、または少なくとも1つの特異的mRNA転写物もしくはその核酸セグメントなどを検出することが含まれる。
ストリンジェントな条件は、低塩および/または高温度の条件が含まれてもよく、例えば、約50℃〜約70℃の温度における約0.02M〜約0.15MのNaclによって提供される。所望のストリンジェンシーの温度およびイオン強度は、部分的には、特定の核酸の長さ、標的配列の長さおよび核酸塩基含量、核酸の電荷組成、ならびにハイブリダイゼーション混合物中のホルムアミド、テトラメチルアンモニウムクロライド、または他の溶媒の存在または濃度によって決定されると理解される。
ハイブリダイゼーションのためのこれらの範囲、組成、および条件は、非限定的な例のみの目的で言及されること、ならびに特定のハイブリダイゼーション反応のための所望のストリンジェンシーが、しばしば、1つまたは複数の陽性または陰性の対象との比較によって経験的に決定されることもまた理解される。想定される応用に依存して、標的配列に対する核酸の種々の程度の選択性を達成するためにハイブリダイゼーションの条件を変化させることを利用することが好ましい。非限定的な例において、ストリンジェントな条件下で核酸にハイブリダイズしない関連する標的核酸の同定及び単離は、低い温度および/または高いイオン強度でのハイブリダイゼーションによって達成されうる。このような条件は、「低ストリンジェンシー」または「低ストリンジェンシー条件」と呼ばれ、低ストリンジェンシーの非限定的な例には、約20℃〜約50℃の温度範囲での約0.15M〜約0.9MのNaClで実行されるハイブリダイゼーションが含まれる。当然ながら、特定の応用に適合するように低いまたは高いストリンジェンシー条件をさらに修飾することは当業者の技術の範囲内にある。
C.ベクター
「ベクター」という用語は、それが複製され得る細胞への導入のために核酸配列がそこに挿入され得るキャリア核酸分子をいう。核酸配列は、「外因性」であり得、これは、その配列がベクターが導入される細胞に対して外来性であること、またはその配列が細胞中の配列に対して相同であるが、その配列が、宿主核酸中の通常見い出されない位置にあることを意味する。ベクターには、プラスミド、コスミド、ウイルス(バクテリオファージ、動物ウイルス、および植物ウイルス)、および人工染色体(例えば、YAC)が含まれる。当業者は、標準的な組換え技術を通して(例えば、共に参照により本明細書に組み入れられる、Maniatis et al., 1988およびAusubel et al., 1994を参照されたい)、ベクターを構築するための能力を十分に身につけている。
「発現ベクター」という用語は、転写可能であるRNAをコードする核酸を含む任意の型の遺伝子構築物をいう。ある場合において、RNA分子は、次いでタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドに翻訳される。他の場合において、これらの配列は、例えば、アンチセンス分子またはリボザイムの産生において、翻訳されない。発現ベクターは、種々の「制御配列」を含み得、これは、特定の宿主細胞中での作動可能に連結されたコード配列の転写およびおそらく翻訳のために必要である核酸配列をいう。転写および翻訳を支配する制御配列に加えて、ベクターおよび発現ベクターは、同様に他の機能を働かせ、かつ以下に記載される核酸配列を含んでもよい。
a.プロモーターおよびエンハンサー
「プロモーター」は、そこで転写の開始および速度が制御される核酸配列の領域である制御配列である。これは、核酸配列の特異的転写を開始するために、調節タンパク質および分子(例えば、RNAポリメラーゼおよび他の転写因子など)が結合する遺伝子エレメントを含み得る。「作動可能に配置される」、「作動可能に連結される」、「制御下」、および「転写制御下」という語句は、転写の開始および/またはその配列の発現を制御するための核酸配列に関連して、プロモーターが正確な機能的位置および/または配向にあることを意味する。
プロモーターは、一般的に、RNA合成のための開始部位を配置するように機能する配列を含む。この最も知られている例はTATAボックスであるが、TATAボックスを欠く、哺乳動物末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ遺伝子およびSV40後期遺伝子のプロモーターなどのいくつかのプロモーターにおいては、開始位置それ自体の上にある別個のエレメントが、開始の場所を固定するように補助する。さらなるプロモーターエレメントは、転写開始の頻度を調節する。典型的には、これらは、開始位置の30〜110bp上流の領域に位置するが、多数のプロモーターが、同様に開始位置の下流の機能的エレメントを含むことが示されてきた。プロモーターの「制御下」にコード配列を置くために、選択されたプロモーターの「下流」(すなわち、3')を、転写リーディングフレームの転写開始部位の5'末端に配置する。「上流」プロモーターは、DNAの転写を刺激し、かつコードされたRNAの発現を促進する。
プロモーターエレメント間の間隔の頻度は柔軟性があり、その結果、プロモーター機能は、エレメントが互いに対して反転するか、または移動する際に保存される。tkプロモーターにおいては、プロモーターエレメント間の間隔は、50bp離れるまで増加し得、その後活性が低下する。プロモーターに依存して、個々のエレメントは、協働してまたは独立してのいずれかで機能し得る。プロモーターは、核酸配列の転写的活性化に関与するシス作用性調節配列といわれる、「エンハンサー」とともに使用されてもよく、または使用されなくてもよい。
プロモーターは、コードセグメントおよび/またはエキソンの上流に配置される5'非コード配列を単離することによって得られうるような、核酸配列に天然に付随するものであってもよい。このようなプロモーターは、「内因性」と言うこともできる。同様に、エンハンサーは、その配列の下流または上流のいずれかに位置する核酸配列に天然に付随するものであってもよい。代替的には、特定の利点は、組換えまたは異種プロモーターの制御下のコード核酸セグメントを配置することによって得られ、これは、その天然の環境中の核酸配列に通常は付随しないプロモーターといわれる。組換えまたは異種プロモーターはまた、その天然の環境中の核酸配列と天然には付随しないエンハンサーといわれる。このようなプロモーターまたはエンハンサーは、他の遺伝子のプロモーターまたはエンハンサー、ならびに任意の他のウイルス、または原核生物もしくは真核生物から単離されたプロモーターまたはエンハンサー、ならびに「天然に存在」しない、すなわち、異なる転写調節領域の異なるエレメント、および/または発現を変化させる変異を含むプロモーターまたはエンハンサーを含んでもよい。例えば、組換えDNA構築において最も一般的に使用されるプロモーターには、β-ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)、ラクトース、およびトリプトファン(trp)のプロモーター系が含まれる。プロモーターおよびエンハンサーの核酸配列を合成的に産生することに加え、配列は、本明細書に開示される組成物と関連する、組換えクローニングおよび/またはPCR(商標)を含む核酸増幅技術(各々参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第4,683,202号および同第5,928,906号を参照されたい)を使用して産生してももよい。さらに、ミトコンドリア、葉緑体などの非核オルガネラ中の配列の転写および/または発現を指向する制御配列が同様に利用され得ることが意図される。
当然ながら、発現のために選択されたオルガネラ、細胞型、組織、器官、または生物におけるDNAセグメントの発現を効果的に指向するプロモーターおよび/またはエンハンサーを利用することが重要である。分子生物学の当業者において、一般的に、タンパク質発現のためのプロモーター、エンハンサー、および細胞型の組み合わせの使用は公知である(例えば、参照により本明細書に組み入れられる、Sambrook et al. 1989を参照のこと)。利用されるプロモーターは、導入されたDNAセグメントの高レベル発現を指向する適切な条件下で、構成的、組織特異的、誘導性、および/または有用であり得、例えば、組換えタンパク質および/またはペプチドの大スケール発現において有利である。プロモーターは、異種または内因性であり得る。
さらに任意のプロモーター/エンハンサーの組み合わせ(例えば、真核生物プロモーターデータベースEPDB、www.epd.isb-sib.ch/に従う)もまた、発現を駆動するために使用され得る。T3、T7、またはSP6細胞質発現系の使用は、別の可能な態様である。真核生物細胞は、送達複合体の一部として、またはさらなる遺伝子発現構築物としてのいずれかで適切な細菌ポリメラーゼが提供される場合、特定の細菌プロモーターからの細胞質性転写を支持し得る。
表2は、RNAの発現を調節するために、本発明の状況において利用され得るエレメント/プロモーターの非限定的な例を列挙する。表3は、特異的刺激に応答して活性化され得る核酸配列の領域である誘導性エレメントの非限定的な例を提供する。
(表2)プロモーターおよび/またはエンハンサー
Figure 2007501014
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Figure 2007501014
(表3)誘導性エレメント
Figure 2007501014
組織特異的プロモーターまたはエレメントの同一性、ならびにそれらの活性を特徴付けするためのアッセイは当業者に周知である。このような領域の非限定的な例には、ヒトLIMK2遺伝子(Nomoto et al.1999)、ソマトスタチンレセプター2遺伝子(Kraus et. al, 1998)、マウスレチノイン酸結合遺伝子(Lareyre et al., 1999)、ヒトCD4(Zhao-Emonet et al., 1998)、マウスα2(XI)コラーゲン(Tsumaki, et al., 1998)、D1Aドーパミンレセプター遺伝子(Lee, et al., 1997)、インスリン様成長因子II(Wu et al., 1997)、およびヒト血小板内皮細胞接着分子1(Almendro et al., 1996)が含まれる。
b.開始シグナルおよび内部リボソーム結合部位
特異的開始シグナルはまた、コード配列の効率的な翻訳のために必要とされ得る。これらのシグナルは、ATG開始コドンまたは隣接する配列を含む。ATG開始コドンを含む外因性翻訳制御シグナルが、提供される可能性がある。当業者は、これを容易に決定すること、および必要なシグナルを提供することが可能である。開始コドンは、全体のインサートの翻訳を確実にするために、所望のコード配列のリーディングフレームと「インフレーム」でなければならないことが周知である。外因性翻訳制御シグナルおよび開始コドンは、天然または合成のいずれかであり得る。発現の効率は、適切な転写エンハンサーエレメントの包含によって増強されうる。
本発明の特定の態様において、内部リボソームエントリー部位(IRES)エレメントは、多重遺伝子、またはポリシストロン性メッセージを作製するために使用される。IRESエレメントは、5'-メチル化Cap依存性翻訳のリボソームスキャニングモデルを回避し、かつ内部部位で翻訳を開始することが可能である(Pelletier and Sonenberg, 1988)。哺乳動物メッセージからのIRES(Macejak and Sarnow, 1991)と同様に、ピコルナウイルスファミリーの2つのメンバー(ポリオおよび脳心筋炎)からのIRESエレメントが記載されている(Pelletier and Sonenberg, 1988)。IRESエレメントは、異種オープンリーディングフレームに連結され得る。複数のオープンリーディングフレームが一緒に転写され得、各々がIRESによって分離されており、ポリシストロン性メッセージを作製する。IRESエレメントによって、各オープンリーディングフレームは、効率的な翻訳のためにリボソームに接近可能である。複数の遺伝子は、単一のメッセージを転写するために単一のプロモーター/エンハンサーを使用して効率的に発現され得る(各々参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,925,565号および同第5,935,819号を参照されたい)。
c.マルチプルクローニングサイト
ベクターはマルチプルクローニングサイト(MCS)を含み得、これは、複数の制限酵素部位を含む核酸領域であり、これらの部位のいずれかが、標準的な組換え技術とともに、ベクターを消化するために使用され得る(例えば、参照により本明細書に組み入れられる、Carbonelli et al., 1999, Levensonet al., 1998, and Cocea, 1997を参照されたい)。「制限酵素消化」とは、核酸酵素中の特定の位置でのみ機能する酵素を用いる、核酸分子の触媒的切断をいう。多くのこれらの制限酵素が市販されている。このような酵素の使用は、当業者によって広範に理解されている。頻繁に、ベクターは、MCS中で切断する制限酵素を使用して線状化またはフラグメント化され、外因性配列がベクターにライゲーションされることを可能にする。「ライゲーション」とは、2つの核酸フラグメント間でホスホジエステル結合を形成するプロセスをいい、これらのフラグメントは互いに連続していてもよいし、連続していなくてもよい。制限酵素およびライゲーション反応を含む技術は、組換え技術の分野の当業者には周知である。
d.スプライシング部位
多くの転写された真核生物RNA分子は、一次転写物からイントロンを除去するためのRNAスプライシングを受ける。真核生物ゲノム配列を含むベクターは、タンパク質発現のための転写の適切なプロセシングを確実にするためのドナーおよび/またはアクセプタースプライシング部位を必要とするかもしれない(例えば、参照により本明細書に組み入れられる、Chandler et al., 1997を参照されたい)。
e.終結シグナル
本発明のベクターまたは構築物は、一般的に、少なくとも1つの終結シグナルを含む。「終結シグナル」または「ターミネーター」は、RNAポリメラーゼによるRNA転写物の特異的終結に関与するDNA配列から構成される。従って、特定の態様において、RNA転写物の産生を終了する終止シグナルが意図される。ターミネーターは、所望のメッセージレベルを達成するためにインビボで必要とされ得る。
真核生物系において、ターミネーター領域はまた、ポリアデニル化部位を露出するために、新規な転写物の部位特異的切断を可能にする特異的DNA配列を含んでもよい。これは、特定化された内因性ポリメラーゼにシグナル伝達を行い、転写物の3'末端に約200A残基(ポリA)のストレッチを付加する。このポリAテールで修飾されたRNA分子は、より安定なようであり、かつより効率的に翻訳される。従って、真核生物を含む他の態様において、ターミネーターは、RNAの切断のためのシグナルを含むことが好ましく、ターミネーターシグナルは、メッセージのポリアデニル化を促進することがさらに好ましい。ターミネーターおよび/またはポリアデニル化部位のエレメントは、メッセージレベルを増強するように、およびカセットからを通しての他の配列への読み取りを最小化するように働き得る。
本発明における使用のために意図されるターミネーターには、本明細書に記載されるか、または当業者に公知である任意の公知の転写のターミネーターが含まれ、例えば、遺伝子の終結配列(例えば、ウシ成長ホルモンターミネーターなど)、またはウイルス終結配列(例えば、SV40ターミネーターなど)が含まれるがこれらに限定されない。特定の態様において、終結シグナルは、例えば、配列の短縮化などに起因して、転写可能な配列または翻訳可能な配列を欠いていてもよい。
f.ポリアデニル化シグナル
発現、特に真核生物発現において、典型的には、転写物の適切なポリアデニル化をもたらすためのポリアデニル化シグナルが含まれる。ポリアデニル化シグナルの性質は、本発明の首尾よい実施のためには決定的であるとは考えられていないが、任意のこのような配列が利用されてもよい。好ましい態様は、種々の標的細胞において十分に機能するために便利であり、かつ十分に機能することが知られている、SV40ポリアデニル化シグナルまたはウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルを含む。ポリアデニル化は、転写物の安定性を増大し得、または細胞質輸送を容易にし得る。
g.複製起点
宿主細胞中でベクターを増殖させるために、これは1つまたは複数の複製部位の起点(しばしば「ori」と呼ばれる)を含んでもよく、これは、複製が開始される特定の核酸配列である。代替的には、宿主細胞が酵母である場合には、自己複製配列(ARS)が利用され得る。
h.選択マーカーおよびスクリーニングマーカー
本発明の特定の態様において、本発明の核酸構築物を含む細胞が、発現ベクター中にマーカーを含めることによって、インビトロまたはインビボで同定され得る。このようなマーカーは、細胞に同定可能な変化を付与し、発現ベクターを含む細胞の容易な同定を可能にする。一般的に、選択マーカーは、選択を可能にする特性を付与するものである。陽性選択マーカーは、可能にするマーカーの存在がその選択を可能にするものであるのに対して、陰性選択マーカーは、その存在がその選択を妨害するものである。陽性選択マーカーの例は、薬物耐性マーカーである。
通常、薬物選択マーカーを含めることは形質転換体のクローニングおよび同定において補助となり、例えば、ネオマイシン、ピューロマイシン、ハイグロマイシン、DHFR、GPT、ゼオシン、およびヒスチジノールに対する耐性を付与する遺伝子が有用な選択マーカーである。実行の条件に基づいて形質転換体の区別を可能にする表現型を付与するマーカーに加えて、その基礎が比色定量分析である、GFPなどのスクリーニング可能なマーカーを含む他の型のマーカーもまた、意図される。代替的には、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(tk)またはクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)などのスクリーニング可能な酵素が利用されてもよい。また当業者において、おそらくFACS分析とともに、免疫学的マーカーをいかにして利用するかは公知である。使用されるマーカーは、それが遺伝子産物をコードする核酸と同時に発現可能である限り重要であるとは考えられない。選択マーカーおよびスクリーニングマーカーのさらなる例は、当業者に周知である。
i.プラスミドベクター
特定の態様において、宿主細胞を形質転換する使用のためのプラスミドベクターが意図される。一般的に、宿主細胞と適合可能である種に由来するレプリコンおよび制御配列を含むプラスミドベクターは、これらの宿主と一緒に使用される。ベクターは、通常、複製部位、ならびに形質転換された細胞における表現型選択を提供可能なマーキング配列を有する。非限定的な例において、大腸菌は、しばしば、大腸菌種から誘導されたプラスミドであるpBR322の誘導体を使用して形質転換される。pBR322は、アンピシリン耐性およびテトラサイクリン耐性のための遺伝子を含み、従って、形質転換された細胞を同定するための容易な手段を提供する。pBRプラスミド、または他の微生物のプラスミドもしくはファージもまた、例えば、それ自体のタンパク質の発現のために微生物によって使用され得るプロモーターを含むに違いないか、またはそのプロモーターを含むように改変されるに違いない。
さらに、宿主微生物と適合可能であるレプリコンおよび制御配列を含むファージベクターが、これらの宿主細胞とともに、形質転換ベクターとして使用され得る。例えば、ファージλGEM(商標)-11が、例えば、大腸菌 LE392などの宿主細胞を形質転換するために使用され得る組換えファージベクターを作製する際に利用され得る。
さらなる有用なプラスミドベクターには、後での精製および分離または切断のためのグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)可溶性融合タンパク質を生成する際の使用のためのpINベクター(Inouye et al., 1985);およびpGEXベクターが含まれる。他の適切な融合タンパク質は、β-ガラクトシダーゼ、ユビキチンなどを有するタンパク質である。
発現ベクターを含む細菌宿主、例えば、大腸菌は、多数の適切な培地のいずれか、例えば、LB中で増殖される。特定のベクター中での組換えタンパク質の発現は、当業者によって理解されるように、特定のプロモーターに特異的な薬剤と宿主細胞を接触させることによって、例えば、培地にIPTGを添加すること、またはより高い温度にインキュベーションを切り換えることによって誘導され得る。さらなる時間の間、一般的には2時間から24時間の間、細菌を培養し、その後細胞を遠心分離によって収集し、そして洗浄して残渣の培地を除去する。
j.ウイルスベクター
特定のウイルスの細胞に感染する能力、またはレセプター媒介エンドサイトーシスを介して細胞に侵入する能力、ならびにウイルス遺伝子を宿主細胞ゲノムに組み込み、そしてウイルス遺伝子を安定かつ効率的に発現する能力は、これらを細胞(例えば、哺乳動物細胞)への外来性の核酸の移入のための魅力的な候補にしてきた。本発明の核酸を送達するために使用され得るウイルスベクターの非限定的な例は以下に記載される。
1.アデノウイルスベクター
核酸の送達のための特定の方法は、アデノウイルス発現ベクターの使用を含む。アデノウイルスベクターはゲノムDNAへの組み込みのための能力が低いことが知られているが、この特徴は、これらのベクターによって与えられる遺伝子移入の高い効率によって相殺される。「アデノウイルス発現ベクター」は、(a)構築物のパッケージングを支持し、かつ(b)そこにクローニングされた組織または細胞特異的構築物を最終的に発現するために十分であるアデノウイルス配列を含む構築物を含むことを意味する。遺伝子の組織化の知見、すなわちアデノウイルス、36kb、線状、二本鎖DNAウイルスは、7kbまでの外来性配列での、アデノウイルスDNAの大きな断面の置換を可能にする(Grunhaus and Horwitz, 1992)。
2.AAVベクター
核酸は、アデノウイルスで補助されたトランスフェクションを使用して細胞に導入され得る。トランスフェクション効率の増加は、アデノウイルス共役系を使用する細胞系において報告されてきた(Kelleher and Vos, 1994; Cotten et al., 1992; Curiel, 1994)。アデノ随伴ウイルス(AAV)は、これが高頻度の組み込みを有し、かつこれが分裂していない細胞に感染し得、従って、例えば、組織培養において(Muzyczka, 1992)またはインビボで、哺乳動物細胞への遺伝子の送達のために有用にするので、魅力的なベクター系である。AAVは、感染性のために広範な宿主を有する(Tratschin et al., 1984; Laughlin et al., 1986;Lebkowski et al.,1988 ; McLaughlin et al., 1988)。rAAVベクターの生成および使用に関する詳細は、各々参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,139,941号および同第4,797,368号において記載されている。
3.レトロウイルスベクター
レトロウイルスは、それらの遺伝子を宿主ゲノムに組み込み、大量の外来性遺伝子物質を移入し、広範なスペクトルの種および細胞型に感染し、および特定の細胞株中でパッケージングされる能力に起因して、送達ベクターとして有望である(Miller, 1992)。
レトロウイルスベクターを構築するために、核酸(例えば、関心対象の遺伝子をコードするもの)が、複製欠損であるウイルスを産生するために特定のウイルス配列の代わりにウイルスゲノムに挿入される。ビリオンを産生するために、遺伝子gag、pol、およびenvを含むが、LTRおよびパッケージング成分を有さないパッケージング細胞株が構築される(Mann et al., 1983)。レトロウイルスLTRおよびパッケージング配列と一緒にcDNAを含む組換えプラスミドが特定の細胞株に導入されるとき(例えば、リン酸カルシウム沈殿によって)、パッケージング配列は、組換えプラスミドのRNA転写物がウイルス粒子にパッケージングされることを可能にし、次いで、培養培地に分泌される(Nicolas and Rubenstein, 1988; Temin, 1986;Mann et al., 1983)。次いで、組換えレトロウイルスを含む培地が収集され、任意に濃縮されて、遺伝子移入のために使用される。レトロウイルスベクターは、広範な種々の細胞型に感染することが可能である。しかしながら、組み込みおよび安定な発現は、宿主細胞の分裂を必要とする(Paskind et al., 1975)。
レンチウイルスは、共通のレトロウイルス遺伝子gag、pol、およびenvに加えて、調節的または構造的な機能を有する他の遺伝子を含む。レンチウイルスベクターは当技術分野において周知である(例えば、Naldini et al., 1996; Zufferey et al., 1997; Blomer et al., 1997; 米国特許第6,013,516号および同第5,994,136号を参照されたい)。レンチウイルスのいくつかの例には、ヒト免疫不全ウイルス: HIV-1、HIV-2、およびシミアン免疫不全ウイルス: SIVが含まれる。レンチウイルスベクターは、HIVビルレンス遺伝子を弱毒化して増殖することによって生成され、例えば、遺伝子env、vif、vpu、およびnefが欠失され、このベクターを生物学的に安全にする。
組換えレンチウイルスベクターは、分裂していない細胞に感染することが可能であり、核酸配列のインビボとエクスビボの両方での遺伝子移入および発現のために使用され得る。例えば、適切な宿主細胞が、パッケージング機能、すなわち、gag、pol、およびenvならびにrevおよびtatを有する2つまたはそれ以上のベクターでトランスフェクトされる、分裂していない細胞に感染することが可能である組換えレンチウイルスは、参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,994,136号に記載されている。特定の細胞型のレセプターへの標的化のために、抗体または特定のリガンドとのエンベロープタンパク質の連結によって組換えウイルスを標的化し得る。特定の標的細胞上のレセプターについてのリガンドをコードする別の遺伝子とともに、ウイルスベクターに関心対象の配列(調節領域を含む)を挿入することによって、例えば、ベクターは標的特異的となる。
4.他のウイルスベクター
他のウイルスベクターは、本発明におけるワクチン構築物として利用され得る。ワクシニアウイルス(Ridgeway, 1988; Baichwal and Sugden, 1986; Coupar et al., 1988)、シンドビスウイルス、サイトメガロウイルス、および単純ヘルペスウイルスなどのウイルスに由来するベクターが利用されてもよい。これらは、種々の哺乳動物細胞のためのいくつかの魅力的な特徴を提供する(Friedmann, 1989; Ridgeway,1988; Baichwal and Sugden, 1986; Coupar et al., 1988; Horwich et al., 1990)。
5.改変されたウイルスを使用する送達
送達される核酸は、特定の結合リガンドを発現するように操作された感染性ウイルス中に収められてもよい。従って、ウイルス粒子は、標的核酸のコグネイトレセプター特異的に結合し、細胞に内容物を送達する。レトロウイルスベクターの特異的送達を可能にするように設計された新規なアプローチが、ウイルスエンベロープのへのラクトース残基の化学的付加による、レトロウイルスの化学修飾に基づいて開発された。この修飾は、シアロ糖タンパク質レセプターを介する肝細胞の特異的感染を可能にし得る。
レトロウイルスエンベロープタンパク質に対する、および特異的細胞レセプターに対するビオチン化抗体が使用される、組換えレトロウイルスの標的化への別のアプローチが設計された。抗体は、ストレプトアビジンを使用することによって、ビオチン成分を介してカップリングされた(Roux et al., 1989)。主要組織適合複合体クラスIおよびクラスII抗原に対する抗体を使用して、彼らは、エコトロピックウイルスを用いる、表面抗原を有する種々のヒト細胞の感染を実証した(Roux et al., 1989)。
D.ベクター送達および細胞形質転換
本発明を用いる使用のための、オルガネラ、細胞、組織、または生物の形質転換のための核酸送達のための適切な方法は、本明細書において記載されるような、または当業者に公知であるような、核酸(例えば、DNA)がそれによってオルガネラ、細胞、組織、または生物に導入され得る、実質的に任意の方法を含むと考えられている。このような方法には以下の方法によるDNAの直接的送達が含まれるがこれらに限定されない:例えば、エクスビボトランスフェクション(Wilson et al., 1989; Nabel et al, 1989)、マイクロインジェクション(参照により本明細書に組み入れられる、Harland and Weintraub, 1985;米国特許第5,789,215号)を含む、注射(各々参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,994,624号、同第5,981,274号、同第5,945,100号、同第5,780,448号、同第5,736,524号、同第5,702,932号、同第5,656,610号、同第5,589,466号、および同第5,580,859号)、; エレクトロポレーション(参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,384,253号; Tur-Kaspa et al., 1986; Potter et al., 1984); リン酸カルシウム沈殿(Graham and Van Der Eb, 1973; Chen and Okayama, 1987; Rippe et al., 1990); DEAE-デキストラン、その後のポリエチレングリコールの使用(Gopal, 1985); 直接的超音波負荷(Fechheimer et al., 1987); リポソーム媒介トランスフェクション(Nicolau and Sene, 1982;Fraley et al., 1979;Nicolau et al., 1987 ; Wong et al., 1980;Kaneda et al., 1989; Kato et al., 1991)、およびレセプター媒介トランスフェクション(Wu and Wu, 1987; Wu and Wu, 1988); 微粒子銃(各々参照により本明細書に組み入れられる、PCT出願番号WO 94/09699および95/06128; 米国特許第5,610,042号; 同第5,322,783号、同第5,563,055号、同第5,550,318号、同第5,538,877号、および同第5,538,880号); シリコンカーバイド繊維との攪拌(各々参照により本明細書に組み入れられるKaeppler et al., 1990; 米国特許第5,302,523号および同第5,464,765号); プロトプラストのPEG媒介形質転換(各々参照により本明細書に組み入れられる、Omirulleh et al., 1993; 米国特許第4,684,611および同第4,952,500号); 乾燥/阻害媒介DNA取り込み(Potrykus et al., 1985)、ならびにこのような方法の任意の組み合わせ。これらなどの技術の適用を通して、オルガネラ、細胞、組織、または生物が安定にまたは一過性に形質転換され得る。
a.エクスビボ形質転換
エクスビボ設定において生物から取り出された血管の細胞および組織をトランスフェクトするための方法は、当業者に公知である。例えば、イヌの内皮細胞が、インビトロでのレトロウイルス遺伝子移入によって遺伝子が変化され、そしてイヌに移植された(Wilson et al., 1989)。別の例においては、ユカタンミニピッグ内皮細胞が、レトロウイルスによってトランスフェクトされ、そして二重バルーンカテーテルを使用して動脈に移植された(Nabel et al., 1989)。従って、細胞または組織が、本明細書の核酸を使用して、エクスビボで取り出しおよびトランスフェクトされ得ることが意図される。特定の局面において、移植された細胞または組織は、生物に配置され得る。好ましい面において、核酸は、移植された細胞または組織中で発現される。
b.注射
特定の態様において、核酸は、例えば皮下、皮内、筋肉内、静脈内、腹腔内などの1回または複数回の注射(すなわち、針注射)により、細胞、組織、または生物に送達され得る。ワクチンの注射の方法は当業者に周知である(例えば、生理食塩水を含む組成物の注射)。本発明のさらなる態様は、直接的マイクロインジェクションによる核酸の導入を含む。直接的マイクロインジェクションは、Xenopus卵母細胞に核酸構築物を導入するために使用された(Harland and Weintraub, 1985)。
c.エレクトロポレーション
本発明の特定の態様において、核酸は、エレクトロポレーションを介して、オルガネラ、細胞、組織、または生物に導入される。エレクトロポレーションは、細胞およびDNAの懸濁物の高電圧放電への曝露を含む。この方法のある改変型において、特定の細胞壁分解酵素、例えば、ペクチン分解酵素が、未処理の細胞よりも、標的レシピエント細胞を、エレクトロポレーションによる形質転換に対してより感受性にするために利用される(参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,384,253号)。代替的には、レシピエント細胞は、機械的な損傷によって、形質転換に対してより感受性になりうる。
真核生物細胞のトランスフェクションは、エレクトロポレーションを使用して、極めて首尾よく行われる。この様式で、マウスプレ-Bリンパ球は、ヒトκ免疫グロブリン遺伝子でトランスフェクトされ(Potter et al., 1984)、ラット肝細胞はクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子(Tur-Kaspa et al.,1986)でトランスフェクトされた。
例えば、植物細胞などの細胞において、エレクトロポレーションによる形質転換をもたらすためには、細胞の懸濁培養もしくは胚発生性カルスなどのもろい組織を使用してもよいか、または未成熟胚もしくは他の組織化された組織を直接的に形質転換してもよいかのいずれかである。この技術において、選択された細胞の細胞壁を、ペクチン分解酵素(ペクトリアーゼ)に曝露することによって、または制御された様式で機械的に損傷を与えることによって、部分的に分解する。インタクトな細胞のエレクトロポレーションによって形質転換されたいくつかの種の例には、トウモロコシ(米国特許第5,384,253号; Rhodes et al., 1995;D'Halluin et al., 1992)、コムギ(Zhou et al., 1993)、トマト(Hou and Lin, 1996)、ダイズ(Christou et al., 1987)、およびタバコ(Lee et al., 1989)が含まれる。
d.リン酸カルシウム
本発明の他の態様において、核酸は、リン酸カルシウム沈殿を使用して細胞に導入される。ヒトKB細胞は、この技術を使用してアデノウイルス5 DNAでトランスフェクトした(Graham and Van Der Eb, 1973)。また、この様式において、マウスL(A9)、マウスC127、CHO、CV-1、BHK、NIH3T3、およびHeLa細胞が、ネオマイシンマーカー遺伝子でトランスフェクトされ(Chen and Okayama, 1987)、そしてラット肝細胞が種々のマーカー遺伝子でトランスフェクトされた(Rippe et al., 1990)。
e.DEAE-デキストラン
別の態様において、核酸は、DEAE-デキストラン、その後ポリエチレングリコールを使用して細胞に送達される。この様式において、プラスミドが、マウス骨髄腫および赤白血病細胞に導入された(Gopal, 1985)。
f.超音波負荷
本発明のさらなる態様は、直接的超音波負荷による核酸の導入を含む。LTK-線維芽細胞は、超音波負荷によって、チミジンキナーゼ遺伝子でトランスフェクトされた(Fechheimer et al., 1987)。
g.リポソーム媒介トランスフェクション
本発明のさらなる態様において、核酸は、脂質複合体、例えば、リポソームなどにトラップされてもよい。リポソームは、リン脂質二重層膜および内部の水性媒体によって特徴付けられるベシクル構造である。多重膜リポソームは、水性媒体によって分離された複数の脂質層を有する。これらは、リン脂質が過剰の水溶液中で懸濁されるときに、自発的に形成する。脂質成分は、閉鎖構造の形成前に自己再構成を受け、水分および溶解した溶質を脂質二重層の間にトラップする(Ghosh and Bachhawat, 1991)。Lipofectamine(Gibco BRL)またはSuperfect(Qiagen)と複合体形成した核酸もまた、意図される。
リポソーム媒介核酸粗内津および外来性DNAのインビトロ発現は、極めて好結果であった(Nicolau and Sene, 1982; Fraley et al, 1979; Nicolau et al., 1987)。培養ニワトリ胚、HeLa細胞、および肝細胞腫細胞におけるリポソーム媒介送達の実行可能性および外来性DNAの発現もまた実証されてきた(Wong et al., 1980)。
本発明の特定の態様において、リポソームは、赤血球凝集ウイルス(HVJ)と複合体形成されてもよい。これは、細胞膜との融合を容易にし、かつリポソームカプセル化DNAの細胞侵入を促進することが示されてきた(Kaneda et al., 1989)。他の態様において、リポソームは、核非ヒストン染色体タンパク質(HMG-1)とともに複合体形成され得るか、または利用され得る(Kato et al., 1991)。なおさらなる実施形態において、リポソームは、HVJとHMG-1の両方とともに複合体形成され得るか、または利用され得る。他の実施形態において、送達ビヒクルは、リガンドおよびリポソームを含んでもよい。
h.レセプター媒介トランスフェクション
なおさらに、核酸は、レセプター媒介送達ビヒクルを介して、標的細胞に送達されてもよい。これらは、標的細胞中に存在するレセプター媒介エンドサイトーシスによる高分子の選択的取り込みをうまく利用する。種々のレセプターの細胞型特異的分布を考慮して、この送達方法は、さらにある程度の特異性を加える。
特定のレセプター媒介遺伝子標的化ビヒクルは、細胞レセプター特異的リガンドおよび核酸結合剤を含む。他のビヒクルは、送達される核酸が作動可能に結合された、レセプター特異的リガンドを含む。いくつかのリガンドが、レセプター媒介遺伝子移入のために使用され(Wu and Wu, 1987; Wagner et al., 1990; Perales et al., 1994; Myers, EPO 0273085)、これは、技術の操作性を確立している。別の哺乳動物細胞型の状況における特異的送達が記載されている(参照により本明細書に組み入れられる、Wu and Wu, 1993)。本発明の特定の局面において、リガンドは、標的細胞集団上で特異的に発現されたレセプターに対応するように選択される。
他の態様において、細胞特異的核酸標的化ビヒクルの核酸送達ビヒクル成分は、リポソームと組み合わせた特異的結合リガンドを含んでもよい。送達される核酸はリポソーム中に収められ、特異的結合リガンドが、リポソーム膜に機能的に取り込まれる。従って、リポソームは、標的細胞のレセプターに特異的に結合し、細胞に内容物を送達する。このような系は、例えば、上記成長因子(EGF)が、EGFレセプターのアップレギュレーションを示す細胞への核酸のレセプター媒介送達において使用される系を使用して、機能的であることが示されてきた。
なおさらなる態様において、標的化された送達ビヒクルの核酸送達ビヒクル成分は、リポソームそれ自体であってもよく、これは、好ましくは、細胞特異的な結合を指向する、1種または複数種の脂質または糖タンパク質を含む。例えば、ラクトシルセラミド、ガラクトース末端のアシアルガングリオシドがリポソームに組み込まれ、かつ肝細胞によるインスリン遺伝子の取り込みの増加を示す(Nicolau et al., 1987)。本発明の組織特異的形質転換構築物は、同様の様式で、標的細胞に特異的に送達され得ることが意図される。
i.微粒子銃
微粒子銃技術は、少なくとも1つのオルガネラ、細胞、組織、または生物に核酸を導入するために使用され得る(米国特許第5,550,318号; 同第5,538,880号; 同第5,610,042号; およびPCT出願WO 94/09699; これらの各々は参照により本明細書に組み入れられる)。この方法は、DNAがコートされた微粒子を細胞膜を貫通しかつ細胞を殺傷することなく細胞に侵入することを可能にする高速まで加速する能力に依存する(Klein et al., 1987)。当技術分野において公知である、広範な種々の微粒子銃技術が存在し、その多くが本発明に適用可能である。
この微粒子銃において、1つまたは複数の粒子が少なくとも1つの核酸でコードされ得、かつ推進力によって細胞に送達され得る。小さな粒子を加速するためのいくつかの装置が開発されている。1つのそのような装置は、電流を生成するための高電圧放電に依存し、これは次には、動力を提供する(Yang et al., 1990)。使用される微粒子弾丸は、タングステンまたは金の粒子またはビーズなどの生物学的に不活性な物質からなっていた。例示的な粒子には、タングステン、白金、および好ましくは金からなるものが含まれる。いくつかの例において、金属粒子へのDNA沈殿が、微粒子銃を使用するレシピエント細胞へのDNA送達のために必要ではないことが意図される。しかし、粒子は、DNAでコートされるよりもむしろDNAを含み得ることが意図される。DNAコートされた粒子は、粒子の打ち込みを介するDNA送達のレベルを増大し得るが、それ自体において、およびそれ自体は必要ではない。
打ち込みのために、懸濁物中の細胞をフィルター上で、または固形培養培地上で濃縮する。代替的には、未成熟胚または他の標的細胞は、固形培養培地上で配列され得る。打ち込みが行われる細胞は、微粒子弾丸停止プレートの下の適切な距離に配置される。
加速によって細胞にDNAを送達するための方法の例証的な態様は、微粒子弾丸送達システム(Biolistics Particle Delivery System)であり、これは、DNAでコートした粒子または細胞を、スクリーン(例えば、ステンレス鋼またはNytexスクリーンなど)を通して細胞(例えば、懸濁培養中の単子葉植物細胞など)で覆われたフィルター表面上に推進するために使用され得る。このスクリーンは粒子を分散させ、その結果、これらは大きな凝集体中のレシピエント細胞には送達されない。微粒子銃装置と打ち込みが行われる細胞との間のスクリーン介在が、微粒子弾丸凝集物のサイズを減少し、大きすぎる微粒子弾丸による、レシピエント細胞上に与えられた損傷を減少することによって、より高い形質転換の頻度に寄与し得ると考えられている。
E.宿主細胞
本明細書で使用される場合、「細胞」、「細胞株」、および「細胞培養」という用語は、交換可能に使用され得る。これらの用語のすべてはまた、それらの子孫も含み、これは、任意のおよびすべての次の世代である。すべての子孫は、意図的なまたは不注意な変異に起因して、同一でなくてもよいことが理解されている。異種核酸配列を発現する状況において、「宿主細胞」とは、原核生物または真核生物をいい、かつこれは、ベクターを複製可能であり、および/またはベクターによってコードされる異種遺伝子を発現可能である形質転換可能な任意の生物を含む。宿主細胞は、ベクターのためのレシピエントとして使用する事ができ、および使用されてきた。宿主細胞は、「トランスフェクト」され、または「形質転換」され得る。これは、外因性核酸が、それによって宿主細胞に移動されるか、または導入されるプロセスである。形質転換された細胞は、一次の対象細胞およびその子孫を含む。本明細書で使用される場合、「操作された」および「組換え」細胞または宿主細胞という用語は、外因性核酸配列(例えば、ベクターなど)が導入された細胞を指すことが意図される。それゆえに、組換え細胞は、組換え的に導入された核酸を含まない天然に存在する細胞から区別可能である。
多数の細胞株および培養物が宿主細胞としての使用のために利用可能であり、これらは、生きている培養物および遺伝子物質のための保管所として働いている組織であるAmerican Type Culture Collection (ATCC)(www.atcc. org)を通して入手され得る。適切な宿主は、ベクターバックボーンおよび所望の結果に基づいて、当業者によって決定され得る。例えば、プラスミドまたはコスミドは、多くのベクターの複製のための原核生物宿主細胞に導入され得る。ベクター複製および/または発現のために利用可能な細胞型には以下が含まれるがこれらに限定されない: 大腸菌などの細菌(例えば、大腸菌株RR1、大腸菌 LE392、大腸菌 B、大腸菌 X 1776(ATCC番号31537)ならびに大腸菌 W3110(F-, λ-, 原栄養株, ATCC番号273325)、DH5α、JM109、およびKC8、枯草菌などの桿菌; ならびに他の腸内細菌、例えば、ネズミチフス菌、霊菌、種々のシュードモナス種、ならびに多数の市販の細菌宿主、例えば、SURE(登録商標)コンピテント細胞およびSOLOPACK(商標) Gold Cells(STRATAGENE(登録商標), La Jolla)。特定の態様において、大腸菌 LE392などの細菌細胞は、ファージウイルスのための宿主細胞として特に意図される。
ベクターの複製および/または発現のための真核生物宿主細胞の例には以下が含まれるがこれらに限定されない: HeLa、NIH3T3、Jurkat、293、Cos、CHO、Saos、およびPC12。種々の細胞型からの多くの宿主細胞が利用可能であり、当業者に公知である。同様に、ウイルスベクターは、真核生物または原核生物の宿主細胞のいずれか、特に、ベクターの複製または発現のために許容されるものとともに使用され得る。
いくつかのベクターは、原核細胞と真核細胞の両方においてベクターが複製および/または発現されることを可能にする制御配列を利用してもよい。当業者は、上記のすべての宿主細胞をインキュベートしてベクターを維持する条件、およびベクターの複製を可能にする条件をさらに理解している。ベクターの大規模産生を可能にし、ならびにベクターによってコードされる核酸、およびそれらのコグネイトポリペプチド、タンパク質、またはペプチドの産生を可能にする技術および条件もまた、理解されている。
F.発現系
上記に議論した組成物の少なくとも一部またはすべてを含む多数の発現系が存在する。原核生物および/または真核生物の系は、本発明を用いる使用のために利用され、核酸配列、またはそれらのコグネイトポリペプチド、タンパク質、およびペプチドを産生し得る。多くのこのような系が市販されており、広範に利用可能である。
昆虫細胞/バキュロウイルス系は、異種核酸セグメントの高レベルのタンパク質発現を産生し、例えば、共に参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,871,986号および同第4,879,236号に記載されており、これは、例えば、INVITROGEN(登録商標)のMAXBAC(登録商標) 2.0、およびCLONTECH(登録商標)のBACPACK(商標) BACULOVIRUS EXPRESSION SYSTEMの名称で購入できる。
他の発現系の例には、合成エクジソン誘導性レセプターを含むSTRATAGENE(登録商標)のCOMPLETE CONTROL(商標)誘導性哺乳動物発現系、またはそのpET発現系、大腸菌発現系が含まれる。誘導性発現系の別の例は、INVITROGEN(登録商標)から利用可能であり、これは、全長CMVプロモーターを使用する誘導性哺乳動物発現系であるT-REX(商標)(テトラサイクリン調節発現)系を有する。INVITROGEN(登録商標)はまた、ピキア メタノリカ(Pichia methanolica)発現系と呼ばれる酵母発現系を提供し、これは、メチロトローフ酵母ピキア メタノリカにおける組換えタンパク質の高レベル産生のために設計されている。当業者において、核酸配列またはそのコグネイトポリペプチド、タンパク質、もしくはペプチドを産生するために、ベクター(例えば、発現構築物)をいかにして発現するかは公知である。
本発明の方法によって産生されるタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドは「過剰発現される」、すなわち、細胞中のその天然の発現と比較して増加したレベルで発現されてもよいことが意図される。この過剰発現は、放射性標識および/またはタンパク質精製を含む種々の方法によって評価してもよい。しかし、単純かつ直接的な方法、例えば、SDS/PAGEおよびタンパク質染色またはウェスタンブロッティング、続いて得られたゲルまたはブロットのデンシトメトリースキャニングなどの定量的分析が好ましい。天然の細胞のレベルと比較した、組換えタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドのレベルの特異的増加は、宿主細胞によって産生される他のタンパク質に関連する特定のタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドの相対的な豊富さであるため過剰発現の指標であり、例えば、ゲル上で視覚化可能である。
ある態様において、発現されたタンパク質配列は、宿主細胞中で封入体を形成し、宿主細胞は例えば、細胞ホモジナイザー中での破壊によって溶解され、洗浄され、および/または遠心分離されて可溶性細胞成分から高密度封入体と細胞膜を分離する。この遠心分離は、高密度封入体が、糖(例えば、スクロース)の取り込みによって緩衝液中に選択的に富化される条件、および選択的な速度の遠心分離の下で実行され得る。封入体は、当業者に公知であるように、高濃度の尿素(例えば8M)または塩酸グアニジンなどのカオトロピック剤を含む溶液中で、β-メルカプトエタノールまたはDTT(ジチオスレイトール)の存在下で可溶化され、より望ましいコンホメーションに再フォールディングされてもよい。
G.細胞ベースの産生
細胞は、当業者に周知である種々の技術を使用して増殖されてもよい。例えば、本発明の細胞は、培養のバルク全体を通して懸濁中で自由に増殖する非アンカレッジ依存性細胞として; またはそれらの増殖のために固体基材への接着を必要とするアンカレッジ依存性細胞として(単層型の細胞増殖)増殖させてもよい。WO公開番号WO 97/26334(1997年7月24日公開)およびWO 97/26321(1997年7月24日公開)は、参照により本明細書に具体的に組み入れられ、異なる様式の培養を記載している。
特定の実施形態において、細胞は、マイクロキャリア培養で増殖させてもよい(van Wezel, 1967)。マイクロキャリア上での培養増殖のこの様式は、細胞操作、例えば、タンパク質分解酵素の使用を伴わない細胞移動、細胞の同時培養、動物への移植、およびマイクロキャリア保持のためのデカンター、カラム、流動ベッド、または中空ファイバーを使用する培養物の灌流のためにこの系を使用することを可能にする。
H.精製
本発明はまた、精製された、および好ましい態様において、実質的に精製された、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドを提供する。「精製されたタンパク質、ポリペプチド、またはペプチド」という用語は、本明細書において使用される場合、哺乳動物細胞または組換え宿主細胞から単離可能であるタンパク質性組成物を指すことを意図し、ここで、少なくとも1種のタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドが、その天然に入手可能な状態と比較して、すなわち、細胞抽出物中でのその純度と比較して、任意の程度まで精製されている。精製されたタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドはまた、それゆえに、それが天然に存在する環境を含まない、野生型または変異型のタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドをいう。
一般的に、「精製された」とは、種々の他のタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドを除去するための分画化に供された特定のタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドの組成物をいい、その組成物は、例えば、タンパク質アッセイによって評価され得るように、または所望のタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドについての当業者に公知であるように、その活性を実質的に保持している。
「実質的に精製された」という用語が使用される場合、これは、特定のタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドが組成物の主要成分を形成し、例えば、その組成物中のタンパク質の約50%以上を構成する組成物をいう。好ましい態様において、実質的に精製されたタンパク質は、組成物中のタンパク質の60%、70%、80%、90%、95%、99%よりも多く、またはさらに多くを構成する。
「均一まで精製されている」ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質は、本発明に適用される場合、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質が他のタンパク質および生物学的成分を実質的に含まない純度のレベルを有することを意味する。例えば、精製されたペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質は、しばしば、他のタンパク質成分を十分に含まず、その結果、分解的な配列決定が首尾よく実行され得る。
タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドの精製の程度を定量するための種々の方法が、本開示に鑑みて当業者には公知である。これらには、例えば、画分の特定のタンパク質の活性を決定すること、またはゲル電気泳動によって画分中のポリペプチドの数を評価することが含まれる。
所望のタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドを精製するために、少なくともある特定のタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドを含む天然または合成の組成物が、その組成物から種々の他の成分を除去するために分画化に供せられる。本明細書中以下に詳細に記載されるこれらの技術に加えて、タンパク質精製における使用のために適切な種々の他の技術が当業者に周知である。これらには、例えば、硫酸アンモニウム、PEG、抗体などを用いるかまたは熱変性による沈殿、その後の遠心分離;クロマトグラフィー工程、例えば、イオン交換、ゲル濾過、逆相、ヒドロキシアパタイト、レクチンアフィニティーおよび他のアフィニティークロマトグラフィー工程;等電点電気泳動;ならびにこのような技術および他の技術の組み合わせが含まれる。
別の例は、特異的結合パートナーを使用する特異的融合タンパク質の精製である。このような精製方法は、当技術分野において日常的である。本発明は特定のタンパク質についてのDNA配列を提供するので、ここでは任意の融合タンパク質精製法が実施され得る。これは、特異的タンパク質-グルタチオンS-トランスフェラーゼ融合タンパク質の生成、大腸菌における発現、およびグルタチオン-アガロース上のアフィニティークロマトグラフィーを使用する均質性に対する単離、またはタンパク質のN末端もしくはC末端上のポリヒスチジンタグの生成、およびNiアフィニティークロマトグラフィーを使用する引き続く精製によって例示される。しかし、所定の多くのDNAおよびタンパク質が既知であるか、または本明細書に記載される方法を使用して同定および増幅され得るので、任意の精製方法がここでは利用され得る。
特定の態様における使用のためには好ましいが、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドが常にそれらの最も精製された状態で提供されるという要求性は一般的に存在しない。実際は、天然の状態と比較して、それでもなお所望のタンパク質組成物中で富化されている、実質的に精製されいる度合いの低いタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドが、特定の態様において有用性を有することが意図される。
相対的により低い程度の精製を示す方法は、タンパク質生成物の全体的な収率において、または発現されたタンパク質の活性を維持する点において利点を有し得る。不活性生成物もまた、特定の態様、例えば、抗体生成を介して抗原性を決定する際などに有用性を有する。
広範な種々の手順の任意のものがタンパク質の精製のために利用され得る。例えば、薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、ペーパークロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、または超臨界流体クロマトグラフィーが、本発明に従うタンパク質の分離をもたらすために使用され得る。
分配クロマトグラフィーは、2つの相が互いに接触している場合、および一方または両方の相が溶質を構成する場合、その溶質はそれ自体2つの相に分配するという理論に基づいている。通常、分配クロマトグラフィーは、吸着剤および溶媒で満たされたカラムを利用する。溶質を含む溶液がカラムの上端に重層される。次いで、溶媒がカラムを連続的に通過し、これは、カラム材料を通しての溶質の移動を可能にする。次いで、溶質は、その移動速度に基づいて収集され得る。2つの最も一般的な型の分配クロマトグラフィーは、ペーパークロマトグラフィーおよび薄層クロマトグラフィー(TLC)である;これらはともに吸着クロマトグラフィーと呼ばれる。両方の場合において、単体は結合した液体を含む。分配クロマトグラフィーの他の例は、ガス-液体およびゲルクロマトグラフィーである。
ペーパークロマトグラフィーは、紙のシートの型のセルロースカラム上で実行される分配クロマトグラフィーの改変型である。セルロースは、広範に乾燥されたときでさえ、大量の結合した水を含む。分配は、結合した水と展開溶媒との間で起こる。しばしば、使用される溶媒は水である。通常、非常に少量の分離される溶液混合物が紙の上端に配置され、乾燥される。毛管現象が、紙を通して溶媒を引き出し、試料を溶解し、そして流れの方向に成分を移動させる。ペーパークロマトグラムが、上方または下方のいずれかの溶媒の流れで展開され得る。二次元分離は、最初の実行後に移動軸を90°変化させることによって可能である。
薄層クロマトグラフィー(TLC)は、脂質を分離するために非常に一般的に使用され、それゆえに、本発明の好ましい態様と見なされる。TLCは、ペーパークロマトグラフィーの利点を有するが、しかし微細に分離可能でありかつ均一な層に形成されることが可能な任意の物質の使用を可能にする。TLCにおいて、固定相は、ガラスまたはプラスチックのプレートの表面上に均質に拡散した吸着剤の層である。プレートは、通常、プレートの周囲に沿って選択された高さでテープを配置することによってウェルを作製した後、ゲルの表面に流し込まれる吸着剤のスラリーを形成することによって作製される。吸着剤を乾燥させた後、テープは取り外され、プレートは、ペーパークロマトグラフィーにおける紙と同様に処理される。試料が適用され、プレートは溶媒と接触される。一旦溶媒がプレートのほぼ末端に到達すると、このプレートを取り出し乾燥させる。次いで、スポットが、蛍光、免疫学的同定、放射能の計数、または色の変化を生じるための表面上への種々の試薬のスプレイによって同定され得る。
ガス-液体クロマトグラフィー(GLC)は、移動相がガスであり、固定相は、管もしくはカラムの内面または固体支持体のいずれかに吸着した液体である。液体は、通常、エーテルなどの揮発性溶媒に溶解した固体として適用される。試料(これは、揮発性であり得る任意の試料であってもよい)が、不活性ガス(例えば、ヘリウム、アルゴン、または窒素)とともに液体として導入され、次いで加熱される。このガス状混合物は管を通過する。揮発した化合物は、それらの分配係数に従って、ガス状移動相と液体固定相との間で、それら自体を連続的に再分配する。
GLCの利点は、低分子の分離にある。感度および速度は全く良好であり、標準的な液体クロマトグラフィーの1000倍に近づく速度を有する。非破壊検出器を使用することにより、GLCは、グラム量の物質を精製するために調製的に使用され得る。GLCの主要な用途は、アルコール、エステル、脂肪酸、およびアミンの分離にある。
ゲルクロマトグラフィー、または分子ふるいクロマトグラフィーは、分子サイズに基づく特別な型の分配クロマトグラフィーである。ゲルクロマトグラフィーの背後にある理論は、小さな孔を含む不活性基材の小さな粒子を用いて調製されるカラムが、分子がそれらのサイズに従って、孔を通りまたは孔の周囲を通過する際に、より大きな分子をより小さな分子から分離するというものである。粒子が作られた材料がこれらの分子を吸着しない限り、流れの速度を決定する唯一の要因はサイズである。従って、形状が比較的一定である限り、分子は、サイズが小さい順番にカラムから溶出する。ゲルクロマトグラフィーは、異なるサイズの分子を分離するためには比類なきものである。なぜなら、分離が、pH、イオン強度、温度などの他のすべての要因から独立しているからである。また、実質的に吸収が存在せず、低いゾーン拡散および溶出体積は単純に分子量に比例する。
ゲルクロマトグラフィーのためのゲル材料は、その構造が通常ランダムである三次元ネットワークである。ゲルは、一般的に不活性であり、分析される物質とは結合および反応せず、かつ電荷を有さない架橋ポリマーからなる。ゲル内に満たされる間隔は液体で満たされ、この液体は、ゲル体積の大部分を占める。一般的なゲルは、デキストラン、アガロース、およびポリアクリルアミドであり;これらは水溶液のために使用される。
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)は、並外れたピークの分解能を有する、非常に迅速な分離によって特徴付けられる。これは、非常に微細な粒子および適切な流速を維持するための高い圧力の使用によって達成される。分離は、およそ分の範囲で、または多くても1時間以内に達成され得る。さらに、非常に少量の試料のみが必要である。なぜなら、粒子がとても小さくかつ密接にパックされているので、ボイド体積はベッド体積の非常に小さな部分であるからである。また、試料の濃度は、非常に高い必要はない。なぜなら、バンドがとても狭く、試料の希釈は非常にわずかであるからである。
アフィニティークロマトグラフィーは、単離された物質と、それが特異的に結合し得る分子との間の特異的親和性に依存するクロマトグラフィー手順である。これは、レセプター-リガンド型の相互作用である。カラム材料は、不溶性担体に、結合パートナーの1つを共有結合的にカップリングすることによって合成される。次いで、カラム材料は、溶液からの物質を特異的に吸着することが可能である。溶出は、結合が起こらないものに条件を変化させる(pH、イオン強度、温度などを変化させる)ことによって起こる。
担体は、それ自体が任意の有意な程度まで分子を吸着せず、かつ広範な化学的、物理的、および熱的安定性を有する材料であるべきである。リガンドは、その結合特性に影響を与えないような方法でカップリングされるべきである。リガンドはまた、比較的強固な結合を提供するべきである。そして、試料またはリガンドを破壊することなく、物質を溶出することが可能であるべきである。アフィニティークロマトグラフィーの最も一般的な型の1つは、免疫アフィニティークロマトグラフィーである、本発明の従う使用のために適切な抗体の生成が以下により詳細に議論される。
IV.ペプチドまたはポリペプチドの標的化
以下の表は、本発明に従う腫瘍または腫瘍血管系の標的化において有用である例示的なペプチド配列のリストを提供する。
(表4)ファージディスプレイライブラリーによって同定された癌細胞表面または癌関連標的化ペプチド
Figure 2007501014
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V.化学療法剤
本発明に従って、広範な種々の化学療法剤が利用され得る。これらは、例えば、DNAを直接的に架橋する薬剤、DNAにインターカレートする薬剤、核酸合成に影響を与えることによって染色体および有糸分裂の異常をもたらす薬剤、ならびにDNAに損傷を与える薬剤(DNA複製、有糸分裂、および染色体分離に干渉する化合物を含む)であり得る。
A.抗生物質
ドキソルビシン
ドキソルビシン塩酸塩、5,12-ナフタセンジオン、(8s-シス)-10-((3-アミノ-2,3,6-トリデオキシ-a-L-リキソ-リキソ-ヘキソピラノシル)オキシ)-7,8,9,10-テトラヒドロ-6,8,11-トリヒドロキシ-8-(ヒドロキシアセチル)-1-メトキシ-塩酸塩(ヒドロキシダウノルビシン塩酸塩、アドリアマイシン)は、広範な抗新生物スペクトルで使用される。これはDNAに結合し、核酸合成を阻害し、有糸分裂を阻害し、および染色体異常を促進する。
単独で投与されると、これは甲状腺腺腫および原発性肝細胞癌腫の治療のための最初の選択の薬物である。これは、卵巣、子宮内膜、および乳房の腫瘍、気管支燕麦細胞癌、非小細胞肺癌腫、胃腺癌、網膜芽細胞腫、神経芽細胞腫、菌状息肉腫、膵臓癌腫、前立腺癌腫、膀胱癌腫、骨髄腫、びまん性組織球リンパ腫、ウィルス腫瘍、ホジキン病、副腎腫瘍、骨原性肉腫、軟部組織肉腫、ユーイング腫、横紋筋肉腫、および急性リンパ性白血病の治療のための31個の最初の選択の組み合わせの成分である。これは、島細胞、子宮頸部、精巣、および副腎皮質の癌のための代替的な薬物である。これはまた免疫抑制剤である。
ドキソルビシンは吸収が乏しく、静脈内投与されなければならない。その薬物動態学は多区画性である。分布相は、12分および3.3時間の半減期を有する。排出半減期は約30時間である。40〜50%が胆汁に分泌される。残りの大部分は肝臓で代謝され、一部は活性代謝物(ドキソルビシノール)になるが、数パーセントが尿中に排出される。肝障害の存在下では、用量が減少されるべきである。
適切な用量は、静脈、成人で、21日間隔で60〜75mg/m2、または3もしくは4週間間隔で反復される2日もしくは3日の連続日の各々での25〜30mg/m2、または週に1回20mg/m2である。事前の化学療法または新生物骨髄侵襲によって引き起こされる事前の骨髄機能低下が存在する場合、または薬物が他の骨髄造血抑制剤と組み合わせられる場合、最低用量が高齢者において使用されるべきである。その用量は、血清ビリルビンが1.2から3mg/dLの間にある場合50%、および3mg/dLより上の場合に75%減少されるべきである。生涯総用量は、正常な心臓機能を有する患者において550mg/m2、縦隔照射を受容したヒトにおいて400mg/m2を超えるべきではない。代替的には、4週間毎に反復して、各3連続日で30mg/m2である。例示的な用量は、10mg/m2、20mg/m2、30mg/m2、50mg/m2、100mg/m2、150mg/m2、175mg/m2、200mg/m2、225mg/m2、250mg/m2、275mg/m2、300mg/m2、350mg/m2、400mg/m2、425mg/m2、450mg/m2、475mg/m2、500mg/m2であってもよい。当然、これらの投薬量のすべては例示であり、これらの点の間の任意の投薬量もまた、本発明において利用されることが予測される。
ダウノルビシン
ダウノルビシン塩酸塩、5,12-ナフタセンジオン、(8s-シス)-8-アセチル-10-((3-アミノ-2,3,6-トリデオキシ-a-L-リキソ-リキソ-ヘキソピラノシル)オキシ)-7,8,9,10-テトラヒドロ-6,8,11-トリヒドロキシ-10-メトキシ-塩酸塩;セルビジンとも呼ばれ、Wyethから利用可能である。ダウノルビシンはDNAにインターカレートし、DNA指向性RNAポリメラーゼをブロックして、DNA合成を阻害する。これは、核酸合成を妨害する用量で細胞分裂を妨害する。
他の薬物と組み合わせて、これは、成人における急性骨髄性白血病(寛解の誘導)、急性リンパ性白血病、および慢性骨髄性白血病の急性期の最初に選択される化学療法に含まれる。経口吸収は乏しく、これは静脈内で与えられなくてはならない。分布の半減期は45分であり、排出の半減期は約19時間である。その活性代謝物の半減期は約27時間である。ダウノルビシンは、肝臓で大部分が代謝され、胆汁にもまた分泌される(約40%)。投薬量は、肝臓または腎臓の機能不全においては減少されなければならない。
適切な用量は(基礎等価量)、静脈内、60歳よりも若年の成人で、3もしくは4週間毎に1、2、もしくは3日間の間45mg/m2/日(60歳よりも高齢の患者については30mg/m2)、または3もしくは4週間毎に3〜6日間の間0.8mg/m2/日であり;550mg/m2以下が生涯に与えられるべきであり、胸部照射が存在していた場合には450mg/m2のみを例外とする;年齢が2歳未満でない限り、または0.5m未満の体表面でない限り、小児は1週間に25mg/m2。この場合、体重に基づく成人スケジュールを使用する。これは、注射用投薬型(基礎等価量)においては20mgが利用可能である(21.4mgの塩酸塩に対する基礎等価量)。例示的な用量は、10mg/m2、20mg/m2、30mg/m2、50mg/m2、100mg/m2、150mg/m2、175mg/m2、200mg/m2、225mg/m2、250mg/m2、275mg/m2、300mg/m2、350mg/m2、400mg/m2、425mg/m2、450mg/m2、475mg/m2、500mg/m2であってもよい。当然、これらの投薬量のすべては例示であり、これらの点の間の任意の投薬量もまた、本発明において利用されることが予測される。
マイトマイシン
マイトマイシン(ムタマイシンおよび/またはマイトマイシン-Cとしても知られている)は、抗腫瘍活性を有することが示された、ストレプトマイセス カエスピトサス(Streptomyces caespitosus)のブロスから単離された抗生物質である。この化合物は熱安定性であり、高い融点を有し、そして有機溶媒中で自由に溶解可能である。
マイトマイシンは、デオキシリボ核酸(DNA)の合成を阻害する。グアニンおよびシトシン含量は、マイトマイシン誘導性架橋の程度と相関する。この薬物の高濃度下では、細胞RNAおよびタンパク質合成もまた、抑制される。
ヒトにおいては、マイトマイシンは、静脈内投与後に血清から急速にクリアされる。血清濃度を50%減少するために必要である時間は、30mgのボーラス注射の後17分間である。30mg、20mg、または10mgの静脈内投与後、最大血清濃度は、それぞれ2.4mg/mL、1.7mg/mL、および0.52mg/mLであった。クリアランスは、肝臓における代謝によって主としてもたらされるが、しかし、代謝は他の組織においても同様に起こる。クリアランスの速度は、最大活性濃度と逆比例する。なぜなら、分解経路の飽和に起因すると考えられているからである。
マイトマイシンの用量の約10%が尿中で変化されないままで排出される。代謝経路は比較的低い用量で飽和されるので、尿中に排出される用量の割合は、用量の増加とともに増加する。子供では、静脈に投与されたマイトマイシンの排出が同様である。
アクチノマイシンD
アクチノマイシンD(ダクチノマイシン)(50-76-0); C62H86N12O16(1255.43)は、DNA依存性RNAポリメラーゼを阻害する抗新生物薬物である。これは、絨毛癌、胎児性横紋筋肉腫、精巣腫瘍、およびウィルムス腫瘍の治療のための最初の選択の組み合わせの成分である。全身性治療に応答し損なう腫瘍は、時折、局所的灌流に対して応答する。ダクチノマイシンは放射線治療を増強する。これは、二次性に(遠心性に)免疫抑制性である。
アクチノマイシンDは、一次的な外科手術、放射線治療、および他の薬物、特にビンクリスチンおよびシクロホスファミドと組み合わせて使用される。抗新生物活性はまた、ユーイング腫、カポジ肉腫、および軟部組織肉腫において顕著である。ダクチノマイシンは、絨毛癌の進行した症例を有する女性において有効であり得る。これはまた、転移性の睾丸癌を有する患者において、クロラムブシルおよびメトトレキサートと組み合わせて一貫した応答を生じる。応答は、時折、ホジキン病および非ホジキンリンパ腫を有する患者において観察されるかもしれない。ダクチノマイシンはまた、免疫学的応答、特に、腎移植の拒絶を阻害するために使用されてきた。
用量の半分がインタクトなままで胆汁に排出され、10%が尿に排出される;半減期は約36時間である。この薬物は、血液脳関門を通過しない。アクチノマイシンDは、凍結乾燥粉末として供給される(各バイアル中0/5mg)。通常の1日の用量は10〜15mg/kgである;これは、5日間静脈内で与えられる;毒性の徴候が現れない場合、さらなる過程が3〜4週間の間隔で与えられる。100〜400mgの毎日の注射が、10〜14日間、子供に与えられる;他のレジメンにおいて、3〜6mg/kg、全体で125mg/kg、および毎週の7.5mg/kgの維持用量が使用された。静脈内注入のチュ−ビングに薬物を投与することがより安全であるが、直接的な静脈内注射が与えられ、これは皮下反応を回避するために、バイアルから薬物を引き出すために使用した針を廃棄する注意を伴う。例示的な用量は、100mg/m2、150mg/m2、175mg/m2、200mg/m2、225mg/m2、250mg/m2、275mg/m2、300mg/m2、350mg/m2、400mg/m2、425mg/m2、450mg/m2、475mg/m2、500mg/m2であってもよい。当然、これらの投薬量のすべては例示であり、これらの点の間の任意の投薬量もまた、本発明において利用されることが予測される。
ブレオマイシン
ブレオマイシンは、ストレプトマイセス ベルティシルス(Streptomyces verticillus)の株から単離された細胞毒性糖ペプチド抗生物質の混合物である。これは、水に自由に溶解性である。
ブレオマイシンの作用の正確なメカニズムは未知であるが、入手可能な証拠は、作用の主要な様式がDNA合成の阻害であることを示すようであり、同時にRNAおよびタンパク質合成のより低い阻害の何らかの証拠を示す。
マウスにおいて、高濃度のブレオマイシンは、皮膚、肺、腎臓、腹膜、およびリンパ管において見い出される。皮膚および肺の腫瘍細胞は、高濃度のブレオマイシンを有することが見い出されており、対照的に、低濃度のそれが造血組織において見い出されている。骨髄において見い出される低濃度のブレオマイシンは、その組織において見い出される高レベルのブレオマイシン分解酵素と関連がある可能性がある。
1分間あたり>35mLのクレアチニンクリアランスを有する患者において、ブレオマイシンの血清および血漿末端排出は約115分である。1分間あたり<35mLのクレアチニンクリアランスを有する患者において、血清および血漿末端排出は、クレアチニンクリアランスの減少に従って指数関数的に増加する。ヒトにおいて、投与された用量の60%〜70%が、活性ブレオマイシンとして尿中で回収される。
ブレオマイシンは、緩和治療と見なされるべきである。これは、扁平上皮癌、例えば、頭頸部(口、舌、扁桃腺、上咽頭、中咽頭、洞、口蓋、唇、頬粘膜、歯肉、喉頭蓋を含む)、皮膚、ペニス、子宮頸部、および外陰部の癌において、単一の薬剤として、または他の認可された化学療法剤をの証明された組み合わせのいずれかにおいて、新生物後の管理において有用であることが示された。これもまた、リンパ腫および睾丸癌において使用されてきた。
アナフィラキシー様反応の可能性のために、リンパ腫の患者は、最初の2回分の用量のための2単位またはそれ以下を用いて治療すべき急性反応が起こらないならば、続いて規則的な投薬スケジュールを行なってもよい。
ホジキン病および睾丸腫瘍の改善は、迅速でありかつ2週間以内に堅調になる。この時点までに改善が見られないならば、改善は無いように思われる。扁平上皮癌よりもゆっくりと応答し、時折、いずれかの改善が記録される前まで3週間の長さを必要とする。
ブレオマイシンは、筋肉内、静脈内、または皮下の経路によって与えられてもよい。
B.その他の薬剤
シスプラチン
シスプラチンは、転移性睾丸癌もしくは卵巣癌、進行性膀胱癌、頭頸部癌、子宮頸部癌、肺癌、または他の腫瘍などの癌を治療するために広範に使用されてきた。シスプラチンは、単独でまたは他の薬剤と組み合わせて、3回の治療単位全体について、各3週間で5日間の間、15〜20mg/m2の臨床適用において使用される有効用量で使用され得る。例示的な用量は、0.50mg/m2、1.0mg/m2、1.50mg/m2、1.75mg/m2、2.0mg/m2、3.0mg/m2、4.0mg/m2、5.0mg/m2、10mg/m2であってもよい。当然、これらの投薬量のすべては例示であり、これらの点の間の任意の投薬量もまた、本発明において利用されることが予測される。
シスプラチンは、経口的に吸収されず、従って、静脈内、皮下、腫瘍内、または腹腔内の注射を介して送達されなければならない。
本発明の特定の局面において、シスプラチンは、非小細胞肺癌の治療において、エモジンまたはエモジン様化合物と組み合わせて使用される。しかし、シスプラチンと、エモジンおよび/またはエモジン様化合物の組み合わせが、任意の他のneu媒介癌の治療のために使用され得ることは明らかである。
VP16
VP16もまたエトポシドとして知られており、ブレオマイシンおよびシスプラチンと組み合わせて主として睾丸腫瘍の治療のために使用され、ならびにシスプラチンと組み合わせて、肺の小細胞癌のために使用される。これはまた、非ホジキンリンパ腫、急性非リンパ性白血病、乳房の癌腫、および後天性免疫不全症候群(AIDS)と関連するカポジ肉腫に対して活性である。
VP16は、静脈内投与のための溶液(20mg/ml)として、および経口使用のための50mg液体充填カプセルとして利用可能である。肺の小細胞癌腫のために、静脈内用量(併用治療において)は、最大100mg/m2、またはわずか2mg/m2であり得、日常的には、35mg/m2、4日間毎日〜50mg/m2、5日間毎日もまた使用されてきた。経口的に与えられる場合、用量は2倍にされるべきである。従って、小細胞肺癌腫のための用量は、200〜250mg/m2まで高くあり得る。睾丸癌のための静脈内用量(併用治療において)は、3回の投薬について、50〜100mg/m2毎日5日間、または1日おきに100mg/m2である。治療のサイクルは、通常、3〜4週間毎に反復される。薬物は、おそらく製剤中で使用される溶媒に起因する、低血圧および気管支痙攣を回避するために、30〜60分間の注入の間にゆっくりと投与されるべきである。
エンジイン
抗腫瘍抗生物質のエンジインファミリーの最初のメンバーであるネオカルジノスタチン(NCS)は、もともと、Ishida et al. (1965)においてストレプトマイセス カルジノスタティクス株の培養濾液から、高分子抗腫瘍抗生物質として発見された。その発見のすぐ後で、NCSのすべての生物学的活性は非タンパク質性発色団中に存在することが明確になったが、NCS発色団構造は、Edo et al. (1985)が、前例のないビシクロ[7,3,0]ドデカジイネン系、すなわち、アミノ間およびナフトエ酸部分で修飾された9員エンジインコアを示すまで、説明されなかった。しかし、この大きな影響力を持つ研究は、その後の2年間、正当に評価されず、エンジインに関して化学者および生物学者の関心を一様につかんだのは、1987年における、ミクロモノスポラ エチノスポラ(Micromonospora echinospora)株からのカリチアマイシン(calicheamicin)(Lee et al., 1987a; Lee et al., 1987b)、およびアクチノマズラ ベルコソスポラ(Actinomadura verrucosospora)株からのエスペラマイシンの発見(Golik et al., 1987a; Golik et al., 1987b)であった。NCSと対照的に、これらの後者の化合物の構造的説明は、いくつかのデオキシ糖部分で修飾された、新規なビシクロ[7,3,1]トリデカジイネン系、すなわち、10員エンジインコアを明らかにした。そのとき以来、天然産物のエンジインファミリーが、それらの高度に普通でない分子構造、生物学的活性、および作用の様式のために、化学、生物学、および医科学の分野において強力な研究活動の焦点となってきた(Nicolaou et al., 1991; Doyle and Border, 1995; Smith and Nicolaou, 1996; Maeda et al., 1997; Xi and Goldberg, 1999; Thrson et al., 2000; Jones and Fouad; 2002)。
20種を超えるエンジインの天然産物が現在では知られており、エンジインファミリーの新規なメンバーが継続して発見されている。最新の追加は、2003年初めに報告された、海洋ホヤであるディデムナム プロリフェルム(Didemnum proliferum)種からのシシジマイシンである(Oku et al, 2003)。エンジイン天然産物は、アポタンパク質およびエンジイン発色団からなる2種のサブ色素タンパク質に分類され得る。ストレプトマイセス種AJ9493からのN1999A2は、発色団単独として単離される唯一の例外である(Ando et al.,1998)。アポタンパク質は、さもなくば不安定である発色団およびその輸送および標的DNAとの相互作用のための安定化剤または特異的キャリアとして働く。それらの固有の反応性に起因して、NCS発色団およびN1999A2に加えて、次の3種のみの他の色素タンパク質発色団構造が現在知られている。アクチノミセスL585-6からのケダーシジン(kedarcidin)(Leet et al., 1992)、ストレプトマイセス グロビスポルス(Streptomyces globisporus)からのC-1027(Minami et al., 1993; Yoshida et al., 1993; Iida et al., 1996; Otani et al., 1999)、アクチノマヅラ マヅレ(Schroeder et al., 1994)からのマズロペプチン(maduropeptin)。10員エンジインコアサブカテゴリーのメンバーは、一般的により安定であり、これらすべてが別個の低分子として単離される。カルシチアミシン、エスペラマイシン、およびシシジマイシンに加えて、それらの構造が説明されてきたサブカテゴリーの他のメンバーには、ミクロモノスポラ ケルシナ(Micromonospora chersina)種nov.No. M965-1からのダイネマイシン(dynemicin)(Konishi et al., 1989 ; Myers etal, 1995)、および海洋ホヤ類ポリシンクラトン リトストロツム(Polysyncraton lithostrotum)種からのナメナマイシン(namenamicin)(McDonald et al., 1996)がが含まれる。
エンジインの両方のサブカテゴリーのメンバーは、それらの構造的な差異にも関わらず、共通の作用のメカニズムを共有する。エンジインコアは、両方の鎖上のデオキシリボース部分から水素原子を誘引することによって、電子的な再配列を受けて(BergmanまたはMyers再配列)、DNAに損傷を与える一過性ベンゼノイドジラジカルを形成する。得られるデオキシリボース炭素-中心ラジカルの分子状酸素との引き続く反応は、一本鎖と二本鎖の両方のDNAの切断をもたらすプロセスを開始する(Nicolaou et al., 1991; Doyle and Border, 1995; Smith, and Nicolaou, 1996; Maeda et al., 1997; Xi and Goldberg, 1999; Thrson et al., 2000; Jones and Fouad, 2002; Stassinopoulos et al., 1996; Ikemoton et al., 1995; Dedon and Goldberg, 1992)。この新規なDNA損傷のメカニズムは、臨床抗癌薬物へのエンジインの開発のための重要な意味を有する(Stassinopoulos et al., 1996; Ikemoton et al., 1995; Dedon and Goldberg, 1992; Sugiura et al., 1990; Zein et al, 1993; Nicolaou et al., 1993; Kappen and Goldberg, 1994; Yu et al., 1994; Hensens et al., 1994; Ho et al., 1994; Schor et al., 1999; Dziegielewski and Beerman, 2002)。
主として実質的な毒性のため、天然のエンジインは、臨床薬物として用途が限られているように見えたが、種々のポリマーベースの送達系またはエンジイン抗体結合体が、大きな臨床的成功および/または抗癌化学療法の見通しを示した(Doyle and Border, 1995; Maeda et al., 1997 ; Thrson et al., 2000; Jones and Fouad, 2002; Sielvers et al, 1999 ; Brukner, 2000)。例えば、ポリ(スチレン-コ-マレイン酸)-結合体NCSは、1993年に日本で認可され、肝癌に対する使用のために1994年から販売されている(Maeda et al., 1997)。CD33モノクローナル抗体(mAB)-カリチアマイシン結合体は、米国において2000年に認可され、骨髄性白血病を治療するためにMylotargの商標名の下で販売されている(Sielvers et al., 1999)。いくつかの抗肝癌mAB-C-1027結合体もまた、調製されて高い腫瘍特異性を示し、樹立された腫瘍異種移植片の増殖に対して強力な阻害効果を発揮している(Brukner, 2000)。これらの例は、それらの潜在的な細胞毒性を抑制し、かつ標的腫瘍細胞に送達される場合、エンジインが強力な薬物に開発され得ることを明確に実証する。
全合成によるエンジインおよびそれらのアナログなどの複雑な天然産物への接近は、合成化学者に対して記念碑的な難問を課し、これまでのところ、合成化学者による力作的な努力は、エンジインファミリーの天然産物、ならびに無数のアナログのほぼあらゆるメンバーの全合成に導いている。顕著な進歩が、(a)癌細胞特異性を改善すること、(b)腫瘍標的に対する効率的な送達系を開発すること、および(c)トリガーを設計し、かつプロドラッグとしてのエンジインをトラップすることに対してなされた(Xi and Goldberg, 1999; Thrson et al., 2000; Jones and Fouad, 2002)。しかし、化学全合成は、エンジインなどの複雑な天然産物のためには非常に限られた実用的価値を有し、天然産物の化学修飾によるアナログ生成は、限られた官能基のみに接近可能であり、しばしば、複数の保護および脱保護の工程を必要とする。
有機合成と補完的に、二次代謝を支配する遺伝子の遺伝子操作-コンビナトリアル生合成としてもまた知られる新興の技術は、複雑な天然産物およびそれらのアナログを生合成的に調製するための有望な代替を提供する(Hopwood, 1997 ; Cane et al., 1998 ; Shen, 2000; Staunton and Wessman, 2001; Strohl, 2001; Du and Shen, 2001; Rodriguez and McDaniel, 2001; Walsh, 2002)。他の官能基の存在下での特異的構造的変化がしばしば達成され、標的分子は、大スケール発酵のために受容可能である組換え生物によって産生され、それによって、製造コストを低下させ、従来的な化学合成に付随する環境的な心配を低減する。このアプローチの成功は、(a)クローニングならびに標的代謝物の生合成経路の遺伝的および生化学的特徴付け、ならびに(b)天然産物生合成遺伝子クラスターのコンビナトリアル操作のためのストラテジー、方法、および便利なツールの開発に依存する。
C.植物アルカロイド
タキソール
タキソールは、トネリコ木、テクス ブレビフォリア(Taxus brevifolia)の樹皮から単離された実験的な抗有糸分裂剤である。これは、チューブリン(ビンカアルカロイドによって使用されるものとは異なる部位)に結合し、微小管の集合を促進する。タキソールは、現在臨床的に評価されており、黒色腫および卵巣の癌腫に対して活性を有する。最大用量は、5日間の間、1日あたり30mg/m2、または3週間毎に1回与える210〜250mg/m2である。当然、これらの投薬量のすべては例示であり、これらの点の間の任意の投薬量もまた、本発明において利用されることが予測される。
ビンクリスチン
ビンクリスチンは有糸分裂をブロックし、中期での停止を生じる。おそらく、この薬物の生物学的活性の大部分は、チューブリンに特異的に結合する能力、およびタンパク質が微小管に重合する能力によって説明することができる。有糸分裂装置の微小管の破壊を通して、細胞分裂が、中期で停止する。有糸分裂中に染色体を正確に集合させることが不可能であるため、おそらく細胞死がもたらされる。
正常な骨髄細胞および上皮細胞に対するビンクリスチンの毒性が比較的低いため、この薬剤は、抗新生物薬物に通常含まれず、この薬剤はしばしば他の骨髄抑制薬剤と併用される。
予測できない吸収が、ビンブラスチンまたはビンクリスチンの経口投与後に報告されている。通常の臨床用量において、血漿中の各薬物のピーク濃度は約0.4mMである。
ビンブラスチンおよびビンクリスチンは、血漿タンパク質に結合する。これらは、血小板中に広範囲に、およびより低い程度では白血球および赤血球中に濃縮されている。
ビンクリスチンは、血漿からのクリアランスの多相パターンを有する;末端半減期は約24時間である。この薬物は肝臓において代謝されるが、生物学的に活性な誘導体は同定されていない。用量は、肝機能障害を有する患者では減少されるべきである。血漿中のビリルビンの濃度が3mg/dlより高い(約50mM)場合、投薬量の少なくとも50%減少が示される。
ビンクリスチン硫酸塩は、静脈内注射のための溶液(1mg/ml)として利用可能である。コルチコステロイドと一緒に使用されるビンクリスチンは、現在、小児白血病において寛解を誘導するための選択の治療である;これらの薬物のための最適投薬量は以下のようである:ビンクリスチン、静脈内、体表面積の2mg/m2、毎週、およびプレドニソロン、経口、40mg/m2、毎日。ホジキン病および非ホジキンリンパ腫を有する成人患者は、通常、複合プロトコールの一部としてビンクリスチンを受容する。MOPPレジメンにおいて使用される場合、ビンクリスチンの推奨用量は1.4mg/m2である。高用量のビンクリスチンは、成人よりも、重篤な神経学的毒性の経験がありうる、白血病を有する小児によってより良好に許容されるようである。より頻繁には、7日毎またはより多くの用量でのこの薬物の投与は、応答速度の比例的な改善を伴わずに、毒性の発現を増加させるようである。ビンクリスチンの静脈内投与の間の溢出を回避するために、予防手段もまた使用されるべきである。ビンクリスチン(およびビンブラスチン)は、比較され得る毒性で静脈内投与され得る用量よりも数倍多い用量で、腫瘍の動脈血供給に注入され得る。
ビンクリスチンは、ホジキン病および他のリンパ腫において有効であった。これは、単独でホジキン病において使用した場合、メクロレタミン、プレドニゾロン、およびプロカルバジンとともに使用した場合(いわゆるMOPPレジメン)、いくぶんビンブラスチンよりも有益さが低いように見えるが、これは、この疾患の進行した段階(IIIおよびIV)のための好ましい治療である。非ホジキンリンパ腫においては、ビンクリスチンは、特に、シクロホスファミド、ブレオマイシン、ドキソルビシン、およびプレドニゾロンとともに使用される場合、重要な薬剤である。ビンクリスチンは、リンパ性白血病において、ビンブラスチンよりも有用である。有益な応答が、種々の他の新生物、特に、ウィルムス腫瘍、神経芽細胞腫、脳腫瘍、横紋筋肉腫、ならびに乳房、膀胱、ならびに男性および女性の生殖系のの癌腫を有する患者において報告されている。
ビンクリスチンの使用のための用量は、個々の患者の必要性に従って臨床医によって決定される。0.01〜0.03mg/kgまたは0.4〜1.4mg/m2が投与され得るか、または1.5〜2mg/m2も投与され得る。代替的には、0.02mg/m2、0.05mg/m2、0.06mg/m2、0.07mg/m2、0.08mg/m2、0.1mg/m2、0.12mg/m2、0.14mg/m2、0.15mg/m2、0.2mg/m2、0.25mg/m2が一定の静脈内注入として与えられ得る。当然、これらの投薬量のすべては例示であり、これらの点の間の任意の投薬量もまた、本発明において利用されることが予測される。
ビンブラスチン
細胞がビンブラスチンとともにインキュベートされるとき、微小管の溶解が起こる。予測できない吸収が、ビンブラスチンまたはビンクリスチンの経口投与後に報告されている。通常の臨床用量において、血漿中の各薬物のピーク濃度は約0.4mMである。ビンブラスチンおよびビンクリスチンは、血漿タンパク質に結合する。これらは、血小板中に広範囲に、およびより低い程度では白血球および赤血球中に濃縮されている。
静脈内注射後、ビンブラスチンは、血漿からのクリアランスの多相パターンを有する;分布後、薬物は約1時間および20時間の半減期で血漿から消失する。
ビンブラスチンは、肝臓中で、生物学的に活性な誘導体、デスアセチルビンブラスチンに代謝される。投与された用量の約15%が尿中でインタクトで検出され、胆汁排出後に糞便中で約10%が回収される。用量は、肝機能障害を有する患者では減少されるべきである。血漿中のビリルビンの濃度が3mg/dlより高い(約50mM)場合、投薬量の少なくとも50%の減少が示される。
ビンブラスチン硫酸塩は、静脈内注射のための溶液中で利用可能である。この薬物は、静脈内で与えられる;特別な注意が、皮下溢出に対して払われなければならない。なぜなら、これは、痛みのある刺激および潰瘍形成を引き起こす可能性があるからである。この薬物は、循環が損なわれた末梢に注射されるべきではない。0.3mg/kg体重の単回用量後、骨髄抑制が、7〜10日以内にその最大に達する。中程度のレベルの白血球減少症(約3000細胞/mm3)に達しない場合、1週間の用量は、0.05mg/kg体重の増分で次第に増加されてもよい。睾丸癌を治療するために設計されたレジメンにおいて、ビンブラスチンは、血球細胞の計数または毒性と無関係に、3週間毎に0.3mg/kgの用量で使用される。
ビンブラスチンの最も重要な使用は、転移性睾丸スクリーニング用の治療的処置において、ブレオマイシンおよびシスプラチンを伴ってである。有益な応答は、種々のリンパ腫、特にホジキン病において報告されており、ここでは、症例の50〜90%で有意な改善が指摘され得る。高い比率のリンパ腫におけるビンブラスチンの有効性は、この疾患がアルキル化剤に対して難治性である場合に減少しない。これはまた、カポジ肉腫、神経芽細胞腫、レテラー-ジーヴェ病(組織球増殖症X)、ならびに女性における乳癌および絨毛癌において活性である。
ビンブラスチンの使用のための用量は、個々の患者の必要性に従って臨床医によって決定される。0.1〜0.3mg/kgが投与され得、または1.5〜2mg/m2もまた投与され得る。代替的には、0.1mg/m2、0.12mg/m2、0.14mg/m2、0.15mg/m2、0.2mg/m2、0.25mg/m2、0.5mg/m2、1.0mg/m2、1.2mg/m2、1.4mg/m2、1.5mg/m2、2.0mg/m2、2.5mg/m2、5.0mg/m2、6mg/m2、8mg/m2、9mg/m2、10mg/m2、20mg/m2が一定の静脈内注入として与えられ得る。当然、これらの投薬量のすべては例示であり、これらの点の間の任意の投薬量もまた、本発明において利用されることが予測される。
D.アルキル化剤
カルムスチン
カルムスチン(滅菌カルムスチン)は、特定の新生物疾患の治療において使用されるニトロソウレアの1つである。これは、1,3ビス(2-クロロエチル)-1-ニトロソウレアである。これは、214.06の分子量を有する凍結乾燥された浅黄色のフレークまたは凝固塊である。これは、アルコールおよび脂質に高度に溶解性であり、水への溶解性は乏しい。カルムスチンは、推奨されるように、再構成後に静脈内注入によって投与される。滅菌カルムスチンは、凍結乾燥した物質の100mg単回用量で一般的に利用可能である。
カルムスチンがDNAおよびRNAをアルキル化することは一般的に同意されているが、これは他のアルキル化剤と交差耐性ではない。他のニトロソウレアと同様に、これはまた、タンパク質中のアミノ酸のカルバモイル化によって、いくつかの鍵となる酵素的プロセスを阻害し得る。
カルムスチンは、グリア芽細胞腫、脳幹神経膠腫、髄芽細胞腫、星状細胞腫、上衣細胞腫、および転移性脳腫瘍などの脳腫瘍において、単一の薬剤として、または他の認可された化学療法剤とともに確立された併用治療で、緩和治療として示される。これはまた、多発性骨髄腫を治療するために、プレドニゾロンと組み合わせて使用されてきた。カルムスチンは、ホジキン病および非ホジキンリンパ腫の治療において、一次治療で治療されたが再発した患者、または一次治療に応答し損なった患者において、他の認可された薬物と組み合わせたに二次治療として、有効であることが判明した。
以前に治療されていない患者における単一の薬剤としてのカルムスチンの推奨用量は、6週間毎に静脈内150〜200mg/m2である。これは、単回用量として、または例えば、1日75〜100mg/m22日間の注射に分割してで与えてもよい。カルムスチンが、他の骨髄抑制薬物と組み合わせて、または骨髄の蓄積が枯渇している患者において使用される場合、用量はそれに合わせて調整されるべきである。初回用量に続く用量は、先の用量に対する患者の血液学的応答に従って調整されるべきである。本発明において使用され得る他の用量が当然理解され、これは例えば、10mg/m2、20mg/m2、30mg/m2、40mg/m2、50mg/m2、60mg/m2、70mg/m2、80mg/m2、90mg/m2、100mg/m2である。当業者は「Remington's Pharmaceutical Sciences」第15版、61章に向けられる。投薬量のある程度のバリエーションが、治療される対象の状態に依存して存在する必要がある。投与に対して責任がある人は、いずれにしても、個々の対象についての適切な用量を決定する。
メルファラン
メルファランは、アルケラン、L-フェニルアラニンマスタード、フェニルアラニンマスタード、L-PAM、またはL-サルコリシンとしても知られており、ナイトロジェンマスタードのフェニルアラニン誘導体である。メルファランは二官能性アルキル化剤であり、これは選択的ヒト新生物疾患に対して活性である。これは、4-(ビス(2-クロロエチル)アミノ)-L-フェニルアラニンとして、化学的に知られている。
メルファランは化合物の活性L-異性体であり、最初はBergelおよびStockによって1953年によって合成された;メドファランとして知られているD-異性体は、特定の動物腫瘍に対して活性が低く、染色体に対して効果を生じるために必要な用量は、L-異性体で必要とされるものよりも多い。ラセミ(DL-)型は、メルファラン(merphalan)またはサルコリシンとして知られている。メルファランは水に不溶性であり、〜2.1のpKa1を有する。メルファランは、経口投与のための錠剤型で利用可能であり、多発性骨髄腫を治療するために使用されてきた。
利用可能な証拠は、多発性骨髄腫を有する患者の約3分の1から半分までが、この薬物の経口投与に対して好ましい応答を示す。
メルファランは、上皮性卵巣癌の治療において使用されてきた。卵巣癌種の治療のための一般的に利用されるレジメンは、単回の治療単位として、5日間毎日、0.2mg/kgの用量でメルファランを投与することであった。治療単位は、血液学的許容性に依存して、4〜5週間毎に反復する(Smith and Rutledge, 1975; Young et al., 1978)。代替的には、使用されるメルファランの用量は、最小で0.05mg/kg/日または最大で3mg/kg/日、またはこれらの用量もしくは上記のこれらの用量の間の任意の用量であり得る。投薬量のある程度のバリエーションが、治療される対象の状態に依存して存在する必要がある。投与に対して責任がある人は、いずれにしても、個々の対象についての適切な用量を決定する。
シクロホスファミド
シクロホスファミドは、2H-1,3,2-オキサザホスホリン-2-アミン、N,N-ビス(2-クロロエチル)テトラヒドロ-、2-オキサイド、モノヒドレートであり;シトキサン(Cytoxan)(Mead Johnsonから利用可能);ネオサー(Neosar)(Adriaから入手可能)とも呼ばれる。シクロホスファミドは、トリエチルアミンの触媒的影響下で、ジオキサン溶液中で、3-アミノ-1-プロパノールをN,N-ビス(2-クロレチル)ホスホルアミジックジクロライド((ClCH2CH2)2N--POCl2)を縮合することによって調製される。縮合は二重であり、ヒドロキシル基とアミノ基の両方を含み、従って、環状化をもたらす。
他のβ-クロロエチルアミノアルキル化剤とは異なり、これは、肝臓の酵素によって活性化されるまで、活性なエチレンイモニウム型に容易には環状化されない。従って、この物質は、胃腸管中で安定であり、十分に耐容性であり、かつ経口および非経口の経路によって有効であり、局所的な発疱疹、壊死、静脈炎、または痛みさえも引き起こさない。
成人のための適切な用量は、胃腸の耐容性に依存して、経口、1〜5mg/kg/日(通常組み合わせで);または1〜2mg/kg/日;静脈内、2〜5日間の期間にわたって分割用量で最初に40〜50mg/kg、または7〜10日毎に10〜15mg/kg、または1週間に2回、3〜5mg/kg、または1.5〜3mg/kg/日が含まれる。胃腸の有害な効果のために、静脈内経路が負荷のために好ましい。維持の間、3000〜4000/mm3の白血球の計数が通常望ましい。この薬物は、時折、筋肉内、浸潤により、または体腔に投与され得る。これは、100、200、および500mgの注射のための投薬量形態、ならびに25mgおよび50mgの錠剤で利用可能である。投与のための用量の詳細のために、当業者は「Remington's Pharmaceutical Sciences」第15版、61章(参照により本明細書に組み入れられる)を参照する。
クロラムブシル
クロラムブシル(ロイコランとしても知られる)は、選択されたヒト新生物疾患に対して活性であると見い出されたナイトロジェンマスタードの型の二官能性アルキル化剤である。クロラムブシルは、化学的には、4-(ビス(2-クロルエチル)アミノ)ベンゼンブタン酸として知られている。
クロラムブシルは、経口投与のための錠剤型で利用可能である。これは、胃腸管から迅速かつ完全に吸収される。0.6〜1.2mg/kgの単回用量後、ピーク血漿クロラムブシルレベルに1時間以内に到達し、親の薬物の末端半減期は1.5時間と見積もられる。0.1〜0.2mg/kg/日または3〜6mg/m2/日または代替的には0.4mg/kgが抗新生物治療のために使用され得る。治療レジメは当業者に十分に知られており、本明細書に引用される「Physicians Desk Reference」および「Remington's Pharmaceutical Sciences」において見い出される。
クロラムブシルは、リンパ性(リンパ球性)白血病、悪性リンパ腫(リンパ肉腫、巨大濾胞性リンパ腫、およびホジキン病を含む)の治療において示される。これらの生涯のいずれかにおいては治療的ではないが、臨床的に有用な寛解を生じ得る。
ブスルファン
ブスルファン(ミレランとしても知られる)は、二官能性アルキル化剤である、ブスルファンは、化学的には、1,4-ブタンジオールジメタンスルホンとして知られている。
ブスルファンは、ナイトロジェンマスタードの構造的アナログではない。ブスルファンは、経口投与のための錠剤型で利用可能である。各計算された錠剤は2mgのブスルファンならびに不活性成分ステアリン酸マグネシウムおよび塩化ナトリウムを含む。
ブスルファンは、慢性骨髄性(骨髄性、骨髄球性、顆粒球性)白血病の緩和治療のために示されている。治療的ではないが、ブスルファンは、全体の顆粒球の重量を減少し、疾患の徴候を軽減し、そして患者の臨床状態を改善する。以前に未処置の慢性骨髄性白血病を有する約90%の成人が、ブスルファンの使用後に臓器肥大症の退行および安定化を伴う血液学的な退行を得る。生存時間およびヘモグロビンレベルの維持に関しては、脾臓照射よりも優れており、かつ脾腫を制御する際の照射と等価であることが示されてきた。
ロムスチン
ロムスチンは、特定の新生物疾患の治療において使用されるニトロソウレアの1つである。これは、1-(2-クロロ-エチル)-3-シクロヘキシル-1ニトロソウレアである。これは、実験式C9H16ClN3O2および233.71の分子量を有する黄色粉末である。ロムスチンは10%エタノール(0.05mg/mL)、および無水アルコール(70mg/mL)に可溶性である。ロムスチンは、水に比較的不溶性である(<0.05mg/mL)。これは、生理学的pHにおいてはイオンにならない。ロムスチンカプセル中の不活性成分は、ステアリン酸マグネシウムおよびマンニトールである。
ロムスチンがDNAおよびRNAをアルキル化することを一般的に同意されているが、他のアルキル化剤とは交差耐性ではない。他のニトロソウレアと同様に、これはまた、タンパク質中のアミノ酸のカルバモイル化によって、いくつかの鍵となる酵素プロセスを阻害し得る。
ロムスチンは経口的に与えられてもよい。30mg/m2〜100mg/m2までの範囲の用量での放射活性ロムスチンの経口投与後、与えられた約半分の放射能が24時間以内に分解産物の形で排出された。
代謝物の血清半減期は、16時間〜2時間の範囲である。組織レベルは、静脈内投与15分後の血漿レベルと比較可能である。
ロムスチンは、原発性と転移性の両方の脳腫瘍において、すでに適切な外科手順および/または放射性治療手順を受けている患者において、他の治療様式に加えて単一の薬剤として、または他の認可された化学療法剤を伴う確立された併用治療において有用であることが示されてきた。これはまた、ホジキン病に対する二次治療において、他の認可された薬物との組み合わせにおいて、一次治療で治療されたが再発した患者、または一次治療に応答し損なった患者において、有効であることが判明した。
成人および小児における推奨されるロムスチンの用量は、以前に治療歴のある患者における単一の薬剤として、6週間毎に単回の経口用量として130mg/m2である。骨髄機能が損なわれた個体において、用量は、6週間毎に100mg/m2まで減少されるべきである。ロムスチンが他の骨髄抑制剤と組み合わせて使用される場合、用量はそれに従って調整されるべきである。他の用量は、治療される個体にとって必要であると臨床医によって決定されるように、20mg/m2、30mg/m2、40mg/m2、50mg/m2、60mg/m2、70mg/m2、80mg/m2、90mg/m2、100mg/m2、120mg/m2、またはこれらの数字の間の用量であり得ることが理解される。
VI.スクリーニングアッセイ
A.アッセイ形式
本発明はさらに、薬物結合タンパク質および関心対象のタンパク質における薬物結合を同定するための方法をさらに含む。これらのアッセイは、ポリペプチドの大きなライブラリー(天然、合成、または変異誘発されている)のランダムスクリーニングを含んでもよく;代替的には、これらのアッセイは、さらなる修飾を伴うかまたは伴わずに、関心対象の薬物に結合する可能性をより高くすると考えられている構造的特性に注目して、特定のタンパク質のクラスに焦点を当てるために使用され得る。本発明のすべてのスクリーニング方法は、所定の結合特異性を有するタンパク質が見い出されないかもしれないという事実にもかかわらず、それ自体で有用であることが当然理解される。本発明は、このような候補についてのスクリーニングのための方法を提供し、単にそれらを見つける方法ではない。
迅速で、高価でなく、かつ実行が容易なアッセイはインビトロ結合アッセイである。このようなアッセイは、一般的には、単離された分子を使用し、迅速かつ大量に実行し得、それによって、短時間の間に入手可能な情報の量を増加する。アッセイを実行するために種々の容器が使用可能であり、これには、試験チューブ、プレート、ディッシュ、およびディップスティックまたはビーズなどの他の表面が含まれる。
例えば、標的タンパク質への薬物の結合は、溶液中で遊離状態であるか、支持体に固定されているか、細胞の表面の上または中で発現されているかのいずれかで評価され得る。標的タンパク質または薬物のいずれかが標識されてもよく、それによって結合の決定を可能にする。競合的結合様式が実行され得、そこでは1つの薬物が標識され、そして1つが遊離の標識対結合標識の量を測定して、結合に対する効果を決定し得る。化合物の高スループットスクリーニングのための技術は、WO 84/03564において記載されている。大量の小さなペプチド試験化合物が固体支持体、例えば、プラスチックピンまたはいくつかの他の表面上で合成される。結合したポリペプチドは種々の方法によって検出される。
さらなるアッセイが、結合の強度、タンパク質がインサイトおよびインビボ条件下で薬物を解離する能力、複合体またはキャリアのクリアランス、ならびに潜在的な毒性を測定するために実行されてもよい。
B.変異誘発
利用される場合、変異誘発が、種々の標準的な変異誘発手順によって達成される。変異は、それによって生物の量または構造に変化が生じるプロセスである。変異は、単一の遺伝子のヌクレオチド配列の修飾を含み得、遺伝子または全体の染色体をブロックし得る。単一の遺伝子における変化は、DNA配列中の単一のヌクレオチド塩基の除去、付加、または置換を含む点変異の結果であり得るか、または大量のヌクレオチドの挿入または欠失を含む変化の結果であり得る。
変異は、DNA複製またはゲノム中の転移可能な遺伝子エレメント(トランスポゾン)の移動の忠実度におけるエラーなどの事象の結果として自発的に生じ得る。これらはまた、化学的または物理的な突然変異原への曝露後に誘導される。このような変異誘導剤には、電離放射線、紫外線、およびアルキル化剤および多環式炭化水素などの多様な化学物質が含まれ、これらのすべてが、直接的または間接的のいずれかで、核酸と相互作用可能である(一般的には、何らかの生体内変換後に)。このような環境薬剤によって誘導されたDNA損傷は、影響されたDNAが複製または修復されるときに塩基配列の修飾をもたらす可能性があり、従って変異をもたらす可能性がある。変異はまた、特定の標的化方法の使用を通して、部位特異的であり得る。
a.ランダム変異誘発
1.挿入変異誘発
挿入変異誘発は、既知のDNAフラグメントの挿入を介して、遺伝子の不活性化に基づく。これは、いくつかの型のDNAフラグメントの挿入を含むので、生成された変異は、一般的に、機能を得る変異ではなく、機能を失う変異である。しかし、機能を得る変異を生じる挿入のいくつかの例が存在する(Oppenheimer et al. 1991)。挿入変異誘発は、細菌およびショウジョウバエ(Cooley et al. 1988)において非常に成功しており、最近は、トウモロコシ(corn)(Schmidt et al. 1987); アラビドプシス(Arabidopsis); (Marks et al., 1991; Koncz et al. 1990); およびキンギョソウ(Antirrhinum) (Sommer et aL 1990)において強力なツールとなっている。
転移可能な遺伝因子は、細胞のゲノム中の1つの場所から別の場所に移動(転移)可能なDNA配列である。認識された最初の転移因子は、トウモロコシ(Zea mays)のアクチベーター/解離エレメントであった。そのとき以来、これらは、原核生物と真核生物の両方で、広範な生物において同定されてきた。
ゲノム中の転移因子は、転移の間に複製され、かつ標的部位複製と呼ばれる短いDNAの配列の直接的反復によって隣接されることによって特徴付けられる。実質的にすべての転移因子が、それらの型および転移のメカニズムに関わらず、それらの挿入の部位においてこのような複製を作製する。ある場合においては、複製される塩基の数が一定であり、他の場合においては、これは各転移事象とともに変化し得る。大部分の転移因子は、それらの末端に、逆方向の反復配列を有する。これらの末端逆方向反復は、数塩基から数百塩基の長さのいずれかであり得、多くの場合、これらは転移のために必要であることが知られている。
原核生物の転移因子は、大腸菌およびグラム陰性細菌において最も研究されてきたが、これはまたグラム陽性細菌においても存在する。これらは一般的に、約2kB未満の長さである場合には挿入配列と呼ばれ、またはより長い場合にはトランスポゾンと呼ばれる。トランスポゾンによって複製するmuまたはD108などのバクテリオファージは、第3の型の転移因子を構成する。各型の因子は、それら自体の転移のために必要とされる少なくとも1つのポリペプチド、トランスポザーゼをコードする。トランスポゾンは、しばしば、転移に無関係の機能、例えば、抗生物質耐性遺伝子をコードする遺伝子をさらに含む。
トランスポゾンは、それらの構造に従って2つのクラスに分けられ得る。第1に、化合物または複合物トランスポゾンは、各末端に、通常逆方向で、挿入配列エレメントのコピーを有する。これらのトランスポゾンは、それらの末端ISエレメントの1つによってコードされるトランスポザーゼを必要とする。第2のクラスのトランスポゾンは、約30塩基対の末端反復を有し、ISエレメントからの配列を含まない。
転移は、通常、保存的または複製的のいずれかであるが、ある場合においては、これは両方であり得る。複製的転移において、転移因子の1つのコピーがドナー部位に残り、別のコピーが標的部位に挿入される。保存的転移において、転移因子は、1つの部位から切除され、別の部位に挿入される。
真核生物因子もまた、それらの構造および転移のメカニズムに従って分類され得る。主な区別はRNA中間体を介して転移する因子と、DNAからDNAまで直接的に転移する因子との間である。
RNA中間体を介して転移する因子は、しばしば、レトロトランスポゾンと呼ばれ、それらの多くの特徴的な特性は、これらが、逆転写酵素を有すると考えられているポリペプチドをコードしていることである。2つの型のレトロトランスポゾンが存在する。あるものは、それらが各末端に長い直接的反復配列、長末端反復(LTR)を有するという点で、レトロウイルスの挿入されたプロウイルスDNAに似ている。これらのレトロトランスポゾンとプロウイルスとの間の類似性は、それらのコード能力まで拡張される。これらは、レトロウイルスのgag遺伝子およびpol遺伝子に関連する配列を有し、これらが、レトロウイルスの生活環と関連するメカニズムによって転移することを示唆する。第2の型のレトロトランスポゾンは末端反復を有さない。これらはまた、gag様およびpol様ポリペプチドをコードし、RNA中間体の逆転写によって転移するが、レトロウイルス様因子のそれとは異なるメカニズムによってそれを行う。逆転写による転移は複製的プロセスであり、ドナー部位からの因子の切除を必要としない。
転移因子は、自発的変異の重要な供給源であり、遺伝子およびゲノムが進化してきた方法に影響を与えてきた。これらは、遺伝子の中に挿入することによって遺伝子を不活性化し得、それらのトランスポザーゼの活性を通して直接的に、またはゲノム周辺に散在する因子のコピー間の組換えの結果として間接的のいずれかで、全体的な染色体再配列を引き起こし得る。切除する転移因子は不正確に切除し、付加または欠失した塩基の数が3の倍数である場合、変化した遺伝子産物をコードする対立遺伝子を産生し得る。
転移因子それ自体が、通常でない方法で進化している可能性がある。これらが他のDNA配列のように遺伝されるならば、1つのコピー中の因子のコピーは、より離れた種におけるコピーよりも、密接に関連する種におけるコピーに似ていると考えられる。これは常に事実であるというわけではなく、このことは、転移因子が、1つの種から別の種に、時折、水平方向に移動することを示唆する。
2.化学的変異誘発
化学的変異誘発は、しばしば全体の範囲の変異体対立遺伝子を表現型的な厳格さの程度で見い出す能力などの特定の利点を提供し、実行することが容易かつ安価である、化学的発癌性物質の大部分がDNA中に変異を生じる。ベンゾ[a]ピレン、N-アセトキシ-2-アセチルアミノフルオレンおよびアフロトキシンB1は、細菌細胞および哺乳動物細胞において、GCからTAの塩基転換を引き起こす。ベンゾ[a]ピレンはまた、ATからTAなどの塩基置換を生じ得る。N-ニトロソ化合物は、GCからATへの遷移化を生じる。n-ニトロソウレアへの曝露によって誘導されるO4位のアルキル化は、TAからCGへの遷移を生じる。
変異誘発性と発癌性との間の高い相関は、Ames試験の背後の根底にある仮定である(McCann et al., 1975)。この試験は、細菌系における変異について、必要とされる場合、変異原の代謝的活性化を提供するために加えられたラット肝臓ホモジネート(これはミクロソームシトクロムP450を含む)を一緒に用いて、迅速にアッセイを行う。
脊椎動物において、ras原癌遺伝子において変異を生じるいくつかの発癌物質が見い出されている。N-ニトロソ-N-メチルウレアは、ラットにおいて乳房、前立腺、および他の癌腫を誘導し、腫瘍の大部分では、Ha-ras原癌遺伝子のコドン12の2番目の位置でGからAへの変化を示す。ベンゾ[a]ピレン誘導された皮膚腫瘍は、Ha-ras遺伝子の2番目のコドンにおいてAからTへの形質転換を含む。
3.放射線変異誘発
生物学的分子の完全性は、電離放射線によって分解される。入射エネルギーの吸収は、イオンおよびフリーラジカルの形成、ならびにいくつかの共有結合の分解をもたらす。放射線損傷に対する感受性は、分子間で、および同じ分子の異なる結晶型の間で全く変動するようである。これは、全体の蓄積した線量、およびまた線量率に依存する(一旦遊離のラジカルが存在すると、それらが引き起こす分子損傷は、それらの自然な核酸速度、および従って実際の時間に依存する)。損傷は、試料を可能な限り冷却することによって減少および制御される。
電離放射線は、DNA損傷および細胞殺傷を引き起こし、一般的に、線量率に比例する。電離放射線は、DNAとの直接的相互作用によって、またはDNA損傷をもたらすフリーラジカル種の形成を通して、複数の生物学的効果を誘導することが仮定されてきた(Hall, 1988)。これらの効果は、遺伝子変異、悪性転換、および細胞殺傷を含む。電離放射線は、いくつかの原核細胞、およびより低い程度で真核細胞において特定のDNA修復の発現を誘導することが実証されてきたが、哺乳動物遺伝子発現の調節に対する電離放射線の効果に関してはほとんど知られていない(Borek, 1985)。いくつかの研究が、哺乳動物細胞の照射後に観察されたタンパク質合成のパターンの変化を記載している。例えば、ヒト悪性黒色腫細胞の電離放射線は、いくつかの未同定のタンパク質の誘導と関連する(Boothman et al., 1989)。サイクリンおよび同時制御されるポリペプチドの合成は、ラットREF52細胞において電離放射線によって抑制されるが、癌遺伝子形質転換されたREF52細胞株においては抑制されなかった(Lambert and Borek,1988)。他の研究は、特定の成長因子またはサイトカインが、x線誘導されたDNA損傷に関与するかもしれないことを実証した。この点に関して、血小板由来成長因子は、照射後に内皮細胞から放出される(Witte et al., 1989)。
本発明において、「電離放射線」という用語は、十分なエネルギーを有し、または電離を生じる(電子の獲得または損失)ための核相互作用を介して十分なエネルギーを生じ得る粒子または光子を含む放射線を意味する。例示的かつ好ましい電子放射線はX線である。所定の細胞中で必要とされる電離放射線の量は、その細胞の性質に依存する。典型的には、有効な発現誘導線量は、細胞損傷または細胞死を直接的に引き起こす、電離放射線の線量未満である。放射線の有効量を決定するための手段は当技術分野において周知である。
特定の態様において、有効な発現誘導量は、約0.5〜約2Gy/分の割合で投与された約2〜約30グレイ(Gy)である。さらにより好ましくは、電子放射線の有効発現誘導量は、約5〜約15Gyである。他の態様において、2〜9Gyの線量が単回線量で使用される。電離放射線の有効線量は、10〜100Glyであってもよく、15〜75Glyが好ましく、20〜50Gyがより好ましい。
組織に放射線を送達するための任意の適切な手段が、外部手段に加えて本発明において利用されてもよい、例えば、放射線は、腫瘍の抗原と免疫反応する放射性標識された抗体を最初に提供すること、次に腫瘍に放射性標識された抗体の有効量を送達することによって、送達されてもよい。さらに、放射性同位元素は、組織または細胞に電離放射線を送達するために使用されてもよい。
4.インビトロスキャニング変異誘発
ランダム変異誘発はまた、誤りがちなPCR(Cadwell and Joyce, 1992)を使用して導入されてもよい。変異誘発の割合は、テンプレートの希釈を用いて複数のチューブ中でPCRを実行することによって増加され得る。1つの特に有用な変異誘発技術は、アラニンスキャニング変異誘発であり、ここでは、多数の残基が、アミノ酸アラニンで個々に置換され、その結果、タンパク質コンホメーションにおける大スケール摂動のリスクを最小化しながら、側鎖相互作用を喪失する効果が決定され得る(Cunningham and Wells, 1989)。
極小量のタンパク質を使用する、リガンド結合についての平衡定数を見積もるための技術が開発されている(Blackburn et al.,1991 ;米国特許第5,221,605号および同第5,238,808号)。少量の物質を用いて機能的アッセイを実行する能力は、抗体の飽和変異誘発のための、高度に効率的な方法論を開発するために利用され得る。本発明者らは、タンパク質変異体の抗スループット生成のための、共役されたインビトロ転写/翻訳と、PCR変異誘発とを組み合わせることによって、クローニング段階を迂回した。ここで、PCR産物は、変異体単鎖抗体のインビト転写/翻訳のためのテンプレートとして直接的に使用される。19個すべてのアミノ酸置換がこの方法で生成および分析され得る高い効率のため、ここで、関心対象の多数の残基上で飽和変異誘発を実行する可能であり、これは、インビトロスキャニング飽和変異誘発として記載され得るプロセスである(Burks et al., 1997)。
インビトロスキャニング飽和変異誘発は、以下を含む大量の構造−機能情報を得るための迅速な方法を提供する:(i)リガンド結合特異性を修飾する残基の同定、(ii)活性を保持するアミノ酸、および所定の位置で活性を無効にするアミノ酸の同定に基づく、リガンド結合のより良好な理解、(iii)活性部位またはタンパク質サブドメインの全体の柔軟性の評価、(iV)結合の増加を生じるアミノ酸置換の同定。
5.フラグメント化および再アセンブリーによるランダム変異誘発
ディスプレイされたポリペプチドのライブラリーを生成するための方法は米国特許第5,380,721号に記載されている。この方法は、ポリヌクレオチドライブラリーメンバーを得る工程、ポリヌクレオチドをプールしかつフラグメント化する工程、ならびにPCR増幅を実行して、そこからフラグメントを再形成する工程を含む、このPCR増幅によって、フラグメントを均質に再組み合わせして、組換えポリヌクレオチドのシャッフルされたプールを形成する。
b.部位特異的変異誘発
構造によって誘導される部位特異的変異誘発は、タンパク質-リガンド相互作用の分析および操作のための強力なツールを表す(Wells, 1996; Braisted et al., 1996)。この技術は、1つまたは複数のヌクレオチド配列の変化を選択されたDNAに導入することによって、配列の調製および試験を提供する。
部位特異的変異誘発は、所望される変異のDNA配列をコードする特異的オリゴヌクレオチド配列、ならびに十分な数の隣接する、未修飾のヌクレオチドを使用する。このようにして、横切られる欠失接合部の両側で安定な二重鎖を形成するように、十分なサイズおよび複雑さを有するプライマー配列が提供される。約17〜25ヌクレオチドの長さのプライマーが好ましく、これは、変化される配列の接合部の両側の約5〜10残基を有する。
この技術は、一本鎖型と二本鎖型の両方において存在するバクテリオファージベクターを利用する。部位特異的変異誘発において有用であるベクターには、M13ファージなどのベクターが含まれる。これらのファージベクターは市販されており、それらの使用は、当業者に周知である。二本鎖プラスミドもまた、部位特異的変異誘発において日常的に利用され、これは、関心対象の遺伝子を、ファージからプラスミドに移動させる工程を除外する。
一般的に、最初に一本鎖ベクターを入手するか、または二本鎖ベクターの2本の鎖を融解し、これは、その配列中に、所望のタンパク質または遺伝子エレメントをコードするDNA配列を含む。次いで、合成的に調製された、所望の変異された配列を有するオリゴヌクレオチドプライマーは、ハイブリダイゼーション条件を選択する際にミスマッチの程度を考慮しながら、一本鎖DNA調製物をアニールする。ハイブリダイズした生成物は、変異を有する鎖の合成を完了するために、大腸菌ポリメラーゼI(クレナウフラグメント)などのDNA重合酵素に供する。従って、ヘテロ二重鎖が形成され、ここでは、1つの鎖が元の変異していない配列をコードし、第2の鎖が所望の変異を有する。次いで、このヘテロ二重鎖ベクターが、大腸菌細胞などの適切な宿主細胞を形質転換するために使用され、変異した配列配置を有する組換えベクターを含むクローンが選択される。
タンパク質の所定の残基の機能的な有意さおよび情報の中身についての包括的な情報は、19個すべてのアミノ酸の置換が試験される飽和変異誘発によって最高に得られ得る。このアプローチの短所は、複数の残基の飽和変異誘発の管理実務が困難であることである(Warren et al., 1996, Zeng et al., 1996; Burton and Barbas, 1994; Yelton et al., 1995; Hilton etal., 1996)。数百の、そしておそらく数千もの部位特異的変異体が研究されなければならない。しかし、改善された技術は、変異体の産生および迅速なスクリーニングを、はるかにより直接的にしている。「ウォーク-スルー」変異誘発の説明については、米国特許第5,798,208号および同第5,830,650号もまた参照されたい。部位特異的変異誘発の他の方法は、米国特許第5,220,007号; 同第5,284,760号; 同第5,354, 670号; 同第5,366,878号 ; 同第5,389,514号; 同第5,635,377; および同第5,789, 166号に開示されている。
VII.薬物複合体化
種々のアプローチが、本発明に従う薬物複合体の調製のために利用され得る。C-1027およびNCSなどの色素タンパク質抗腫瘍抗生物質については、これらは、色素タンパク質、すなわち、エンジイン発色団および設計された癌標的化ペプチドを伴うアポタンパク質からなる薬物-タンパク質複合体として、設計された組換え生物中で直接的に産生され、かつ単離され得る。例えば、このアポタンパク質は、ネイティブなプロデューサー生物から欠失されてもよく、そしてアポタンパク質のN末端もしくはC末端のいずれかに融合されるか、または中ほどに挿入される所望の癌標的化ペプチドで遺伝子操作された遺伝子(癌標的化ペプチドの1つまたは複数のコピー)は、強力なプロモーターの制御下で発現ベクターに組み込まれる。次いで、この発現構築物は、適切な方法によって株に導入される。次いで、この色素タンパク質複合体は、産生され、単離され、そして精製される。
代替的には、薬物分子および薬物結合タンパク質は、別々に精製され(すなわち、別々の生物由来)、例えば、BlmA-ブレオマイシン複合体の形成について記載されるように(Sugiyama et al., 2002)、インビトロで個別に精製された分子から再構成される。手短に述べると、BlmA組み込み癌標的化ペプチドは、大腸菌宿主ベクター系を使用して過剰発現され、そして精製された。次いで、精製されたBlmAを10mMリン酸ナトリウム緩衝液中に溶解し、10倍過剰のブレオマイシンA2硫酸塩とともに、1時間室温でインキュベートした。このブレオマイシンA2のモル比は、BlmAの競合結合のために適切であった。これはBlmA改変体のために最適化される。
別の例は、癌標的化ペプチドとともに組み込まれるマイトマイシン結合タンパク質MRDおよびその改変体の発現を含む。得られるMRDタンパク質の産生、単離、および精製、ならびにマイトマイシン結合タンパク質MRD-マイトマイシン複合体の形成は、本質的に確立された手順に従って実行され得る(Martin et al., 2002)。
VIII.薬学的処方物および投与の経路
インビボ適用のために、意図される適用のために適切な型の薬学的組成物を調製することが必要である。一般的に、これは、ピロゲンならびにヒトまたは動物に対して有害であり得る不純物を本質的に含まない組成物を調製することを必要とする。薬物を安定にし、対象への投与を可能にするために、適切な塩および緩衝液を利用することが一般的に所望される。緩衝液はまた、適切に利用される。
本発明の水性組成物は、有効量の融合タンパク質-薬物複合体を含み、薬学的に許容されるキャリアまたは水性媒体中に溶解または分散される。このような組成物はまた、接種材料ともいわれる。「薬学的または薬理学的に許容される」という語句は、ヒトまたは動物に投与したときに、有害な、アレルギー性の、または他の都合の悪い反応を生じない、分子的実体および組成物をいう。本明細書において使用される場合、「薬学的に許容されるキャリア」とは、任意のおよびすべての溶媒、分散媒体、コーティング、抗微生物剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが含まれる。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体および薬剤の使用は、当技術分野において周知である。いかなる従来的な媒体または薬剤も本発明の薬剤と適合性でない場合を除いて、治療用組成物中でのその使用が意図される。補充的な活性成分もまた、組成物に組み込まれ得る。
本発明に従うこれらの組成物の投与は、標的組織がその経路を通して利用可能である限り、任意の一般的な経路を介してである。これには、経口、鼻、口腔、直腸、膣、または局所的が含まれる。代替的には、投与は、同所性、皮内、皮下、腫瘍内、筋肉内、腹腔内、または静脈内の注射であってもよい。このような組成物は、上記のように、薬学的に許容される組成物として、通常投与される。
活性化合物はまた、非経口投与または腹腔内投与されてもよい。遊離の塩基または薬理学的に許容される塩としての活性化合物の溶液が、水中で適切にヒドロキシプロピルセルロ−スなどの界面活性剤と混合され得る。分散物もまた、グリセロール、液体プロピレングリコール、およびその混合物中で、ならびにオイル中で調製され得る。保存および使用の通常の条件下では、これらの調製物は、微生物の増殖を妨害するための保存料を含む。
注射可能な用途のために適切である薬学的形態には、滅菌水溶液または分散液、および滅菌注射液または分散液の即時調製のための滅菌粉末がが含まれる。すべての場合において、この形態は無菌性でなくてはならず、かつ容易なシリンジ通過性が存在する程度まで、流動性でなくてはならない。これは、製造条件および保存の下で安定でなくてはならないし、細菌および真菌などの微生物の夾雑作用に対して保護されなくてはならない。キャリアは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、適切なその混合物、および植物性油を含む、溶媒または分散媒体であり得る。適切な流動性が、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散物の場合では必要とされるペプチドサイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって維持され得る。微生物の作用の妨害は、種々の抗微生物剤、抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによって行われ得る。多くの場合において、等張剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを含めることが好ましい。注射用組成物の吸収の延長は、組成物中における、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの使用によって行われ得る。
滅菌注射溶液は、必要とされる量で、適切な溶媒中で、上記に列挙した種々の他の成分とともに、活性化合物中に組み込むことによって調製され、必要な場合、その後の濾過滅菌によって調製される。一般的に、分散物は、種々の滅菌された活性成分を滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製され、これは、基本分散媒体および上記に列挙されるものからの必要とされる他の成分を含む。滅菌注射溶液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製の方法は、真空乾燥技術および凍結乾燥技術であり、これらは、以前に濾過滅菌した溶液からの活性成分および任意のさらなる所望の成分の粉末を生じる。
経口投与のために、本発明のポリペプチドは賦形剤とともに組み込まれ得、非摂取性マウスウォッシュおよびデンタルフロスの形態で使用され得る。マウスウォッシュは、適切な溶媒、例えば、ホウ酸ナトリウム溶液(Dobell溶液)などの適切な溶媒中で必要な量で活性成分を組み込んで調製し得る。代替的には、活性成分は、ホウ酸ナトリウム、グリセリン、および二炭酸カリウムを含む消毒用洗浄剤に組み込まれ得る。
本発明の組成物は、中性または酸型で製剤され得る。薬学的に許容される塩には、酸付加塩(タンパク質の遊離のアミノ基と形成する)が含まれ、これは、無機酸(例えば、塩酸もしくはリン酸など)、または無機酸(例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸など)を形成する。遊離のカルボキシル基と形成された塩はまた、無機塩基(例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、または水酸化第二鉄など)および無機塩基(イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなど)に由来し得る。
製剤の際に、溶液は、投薬量製剤と適合可能な様式で、かつ治療的に有効であるような量で投与される。製剤は、注射用溶液、薬物放出カプセルなどの種々の投薬形態で容易に投与される。水溶液中での非経口投与のために、溶液は、必要な場合、適切に緩衝化され、かつ最初に十分な生理食塩水またはグルコースで等張にされるべきである。これらの特定の水溶液は、とりわけ、静脈内、筋肉内、皮下、および腹腔内の投与のために適切である。これに関しては、利用され得る水性滅菌媒体は、本開示に鑑みて当業者には公知である。例えば、1回の投薬量を1mlの等張性NaCl中に溶解し、かつ1000mlの皮下注入液に加えるか、または注入の提案された部位に注射することができる(例えば、「Remington's Pharmaceutical Sciences」第15版、1035〜1038ページおよび1570〜1580ページを参照されたい)。投薬量のある程度の変動が、治療される対象の状態に依存して必要とされる。投与に対して責任がある人物は、いずれにしても、個々の対象についての適切な用量を決定する。さらに、ヒト適用のために、調製物は、FDA Office of Biologics standardによって必要とされるような、滅菌性、発熱性、一般的安全性、および純度の標準に合致するべきである。
IX.実施例
以下の実施例は、本発明の好ましい態様を実証するために含まれる。以下の実施例において開示される技術は、本発明の実施において十分に機能するように本発明者によって発見された技術を代表し、従って、その実施のための好ましい態様を構成すると見なされ得ることが、当業者によって認識されるべきである。しかし、当業者は本開示に鑑みて、多くの変更が、本発明の精神および範囲から逸脱することなく開示される特定の態様に対してなされ、かつ同様のまたは類似の結果をなお得ることができることを認識する。
実施例1-大腸菌における薬物キャリアタンパク質の過剰発現のための発現ベクターの構築-N-His6またはC-His8-タグを有するベクター
過剰発現ベクターを、市販のpET14b(N-His6)ベクターおよびpET37b(C-His8-タグ)ベクター(Novagen, Madison, WI)から構築した。pET14bのHindIII部位およびEcoRI部位を消化によって除去し、ブラントライゲーションを行ってpET14b'を生成した。次いで、pET14b'およびpET37bをNdeIおよびXhoIで消化し、共通のクローニング部位を含むオリゴヌクレオチドでライゲーションして、設計したベクターpET14MおよびpET37Mを生じさせた。
実施例2-薬物キャリアタンパク質およびCTPの選択
本発明者らは、2つのアポタンパク質、C-1027に対するCagAおよびネオカルジノスタチン(NCS)に対するNcsAを選択した。C-1027およびNCSは、今日までに知られている最も強力な抗癌剤である、抗癌性抗生物質の色素タンパク質エンジインファミリーの例である。これらの両方が、エンジイン発色団およびアポタンパク質からなる色素タンパク質として分離され、この色素タンパク質が薬物として直接使用される。本発明者らは、ストレプトマイセス グロビスポルスからC-1027の生合成遺伝子クラスターを、およびストレプトマイセス カルジノスタティクスからNCSについての生合成遺伝子クラスターを、それぞれクローニングおよび配列決定した。C-1027アポタンパク質はcagA遺伝子によってコードされるのに対して、NCSアポタンパク質はncsA遺伝子によってコードされる。
3種の薬物結合タンパク質を選択した:ブレオマイシン(BLM)に対してBlmA、フレオマイシン(PLM)に対してPlmA、およびマイトマイシン(MTM)に対してMrd。BLMは、ブレノキサン(Blenoxane(登録商標))の商品名で販売されている臨床用抗癌薬物である。これは、いくつかの悪性腫瘍の現在の治療に組み込まれているが、この薬剤の広範な適用は、主として用量を制限する肺毒性によって防止されている。本発明者らはストレプトマイセス ベルティシルスからBLM生合成遺伝子クラスターをクローニングおよび配列決定し、blmA遺伝子が、BLMと強固なタンパク質-薬物複合体を形成するBLM-結合タンパク質、BlmAをコードすることを確立した。PLMは、抗癌性抗生物質のBLMファミリーの別のメンバーである。本発明者らはまた、スロレプトマイセス フラボビリディス(Streptomyces flavoviridis)からPLM生合成遺伝子クラスターをクローニングおよび配列決定し、PLM-結合タンパク質をコードするplmA遺伝子がPLMクラスター中で同定された。MTMは、種々の官能基を含む天然物である、アミノベンゾキノンおよびアジリジン環系を含む。MTM Cは最初に認識された生物還元性アルキル化剤であり、種々の抗癌治療のために臨床的に広範に使用されている。MTM C産生株ストレプトマイセス-ラベンジュレからクローニングされたmrd遺伝子はMTM C結合タンパク質をコードする。精製されたMrdは、薬物結合タンパク質として機能することが示された。これは、MTM Cの還元的活性化を妨害することによって、DNAの架橋に対する保護を提供する。
本発明者らは、3種のCTPを選択した:アミノペプチダーゼN(CD13)に対するCNGRC(NGR)、αvβ3インテグリンに対するCDCRGDCFC(RGD)(SEQ ID NO: 34)、および標的化前立腺癌に対するSMSIARL(SMS)(SEQ ID NO: 47)である。
CNGRC(NGR)(SEQ ID NO: 37)は、抗癌剤ドキソルビシン(DOX)にカップリングされ、得られる薬物-CTP結合体は、ヌードマウスにおけるヒト乳癌異種移植片に対する薬物の効力の増強を示し、遊離のDOXと比較して毒性が減少した。これはまた、膜破壊によってプログラムされた細胞死を誘導するプロ-アポトーシスペプチドにカップリングされた。CNGRCがまた、マウスおよびヒトの腫瘍壊死因子(TNF)αにカップリングされた。これは、リンパ腫および黒色腫のマウスモデルにおいてTNF効力の12〜15または30倍の増強を示した。腫瘍血管系におけるCNGRCのレセプターはアミノペプチダーゼN(CD13)であり、これは、マウスおよびヒトの腫瘍における内皮細胞中でアップレギュレートされる。最近の知見は、CD13の異なるアイソフォームが骨髄細胞、上皮、および腫瘍関連血管において発現されることを示唆する。CNGRCは、腫瘍中で発現されるCD13アイソフォームにのみ結合し得、これはNGR-薬物結合体の選択性および腫瘍ホーミング特性を説明した。
CDCRGDCFC(RGD)(SEQ ID NO:34)は、αvβ3インテグリン結合Arg-Gly-Aspモチーフを含み、かつヒト腫瘍血管中で選択的に発現されるヒトαvβ3インテグリンに結合する。RGDはDOXおよびアポトーシスペプチドにカップリングされ、得られる結合体は、遊離のDOXおよびアポトーシスペプチドと比較して、ヌードマウスにおけるヒト乳癌異種移植片中での薬物の効力の増強を示した。
SMSIARL(SMS)(SEQ ID NO: 47)は、他の器官よりも10〜15倍高く、前立腺癌に選択的に標的化された。SMSがミトコンドリア膜を破壊するプロアポトーシス性ペプチドに連結された場合、これは組織破壊を引き起こし、前立腺癌を有する傾向のあるトランスジェニックマウスにおいて、前立腺癌の発症を遅延させた。
腫瘍血管系リガンドが選ばれた理由は、腫瘍増殖の速度が血液供給によって大部分制限されるためである、血管形成は、腫瘍がサイズにおいて増加するだけでなく、腫瘍が転移する手段もまた提示する。一定の変異を受ける腫瘍細胞とは異なり、腫瘍血管系は遺伝的に安定である。内皮の部分的な露出は、腫瘍の退行を導く腫瘍供給血管中での血栓の形成をもたらし得る。
実施例3-His-タグ化、CTP-薬物キャリアタンパク質融合タンパク質のための発現ベクターの構築
それぞれ5'末端および3'末端にあるHindIII部位およびEcoRI/SpeI部位に隣接して、3種のCTPを合成した(図2A)。pET14MおよびpET37M(図1)をHindIIIおよびSpeIで消化して、3種のCTPオリゴヌクレオチドとライゲーションし、それぞれ、3種のpET14M/CTPベクター(N-His6-タグ化)および3種のpET37M/CTP(C-His8-タグ化)を生成した(図2B)。
実施例4-アポタンパク質または薬物結合タンパク質をコードする遺伝子のPCRによるクローニング
cagA遺伝子を、C-1027生合成遺伝子クラスターを有するコスミドから、フォワードプライマー
Figure 2007501014
(EcoRI部位およびNdeI部位に下線を付す)(SEQ ID NO :54)およびリバースプライマー
Figure 2007501014
(HindIII部位およびXhoI部位に下線を付す)(SEQ ID NO :55)を使用してPCRにより増幅した。
ncsA遺伝子を、NCS生合成遺伝子クラスターを有するコスミドから、フォワードプライマー
Figure 2007501014
(EcoRI部位およびNdeI部位に下線を付す)およびリバースプライマー
Figure 2007501014
(HindIII部位およびXhoI部位に下線を付す)を使用してPCRにより増幅した。
blmA遺伝子を、pBS11から、フォワードプライマー
Figure 2007501014
(EcoRI部位およびNdeI部位に下線を付す)およびリバースプライマー
Figure 2007501014
(XhoI部位およびHindIII部位に下線を付す)を使用してPCRにより増幅した。
plmA遺伝子を、plmAを有する1.4kb SalI-PstIフラグメントを含むプラスミドから、フォワードプライマー
Figure 2007501014
(EcoRI部位およびNdeI部位に下線を付す))およびリバースプライマー
Figure 2007501014
(XhoI部位およびHindIII部位に下線を付す)を使用してPCRにより増幅した。
mrd遺伝子を、MTM C産生S.ラベンジュレのゲノムDNAから、フォワードプライマー
Figure 2007501014
(EcoRI部位およびNdeI部位に下線を付す)およびリバースプライマー
Figure 2007501014
(XhoI部位およびHindIII部位に下線を付す)を使用してPCRにより増幅した。
得られるPCR(商標)産物を、pGEM T-easyベクターまたはpGEM-1lzfベクターにクローニングし、PCRの充実度を確認するために配列決定した。
実施例5-大腸菌中でのHis-タグ化、CTP-薬物キャリアタンパク質融合タンパク質の過剰産生のための発現ベクターの構築
種々のキャリアタンパク質をコードするPCR増幅されたフラグメントを、NdeIおよびHindIIIで消化し、pET14M/CTP(図3B)またはpET37M/CTP(図3D)の同じ部位にクローニングして、それぞれ、2つのバージョンのHis-タグ化、CTPおよびキャリアタンパク質融合物を産生した。代替的には、PCR増幅したフラグメントを、同様にEcoRIおよびXhoIで消化し、pET14M/CTP(図3A)またはpET37M/CTP(図3C)の同じ部位にクローニングして、それぞれ、さらなるバージョンのHis-タグ化、CTPおよびキャリアタンパク質融合物を産生した。
実施例6-大腸菌中で過剰産生されたHis-タグ化、CTP-薬物キャリアタンパク質融合タンパク質の過剰産生および精製
過剰発現構築物を、製造業者によって推奨されるプロトコールに従って、形質転換によって大腸菌 B121(DE3)(Novagen)に導入した。従って、単一コロニーを、適切な抗生物質(pET14M/CTPベースの構築物に対してはアンピシリン100μg/mlまたはpET37M/CTPベースの構築物に対してはカナマイシン50μg/ml)を有する2mlのLBに接種した(図3を参照されたい)。一晩の増殖後、20μlの培養物を10mlのLBに接種し、一晩増殖させた。この培養物を500mlのLBに接種し、0.4〜0.6のO.D.まで、誘導前に増殖させた。産生を、50〜100μg/mlのIPTGを加えることによって誘導し。細胞を収集する前に6〜12時間増殖させた。
タンパク質精製をNi-NTAアガロース(Quiagen, Santa Clarita, CA)を使用して、製造業者によって示されるプロトコールに従って行った。精製タンパク質を、1×PBS緩衝液に対して透析した。表1は、キャリアタンパク質および今日までに過剰産生されたそれらの種々のCTP-含有融合タンパク質を要約する。タンパク質の純度は、図4に例示されるように、SDS-PAGEによって確認した。タンパク質濃度は、分光学的方法によって決定した。組換えタンパク質の平均収量は、約50〜100mg/lであった。融合タンパク質の同一性は、質量スペクトル分析によってさらに確証した。
(表1)キャリアタンパク質およびそれらのCTP-含有融合タンパク質の産生および精製
Figure 2007501014
(a)N-His6-タグ化およびC-His8-タグ化ネイティブキャリアタンパク質は、pET14MおよびpET37Mにおいてそれぞれ過剰産生した(図1を参照されたい)。
(b)CTP含有キャリアタンパク質融合物は、図3において特定されるような配置で、バージョンA、B、C、またはDとして過剰産生した。
実施例7-癌細胞株の培養条件
細胞株WM115(αvβ3インテグリンの高レベル発現)およびMCF7(αvβ3インテグリンの低レベル発現、WM115の約10%)を、10%ウシ胎仔血清(FBS)および60μg/mlのペニシリンおよび100μg/mlのストレプトマイシンで富化したαMEM培地中で増殖させた。KS1617細胞株(CD13の高レベル発現)を、これもまた10%FBSおよび60μg/mlのペニシリンおよび100μg/mlのストレプトマイシンで富化したRPMI 1640培地中で増殖させた。細胞培養物を、2〜3日毎に新鮮な培地に継代した。蛍光画像処理のために、細胞を、使用前に約70%コンフルエンスまで、4ウェル培養スライド中で増殖させた。
実施例8-癌細胞に対するCTP含有キャリアタンパク質の結合特異性の評価
検出を容易にするために、組換えCTP含有キャリアタンパク質を、製造業者(Dojindo, Gaithersburg, MD)によって推奨されるプロトコールに従って、タンパク質のリジン残基と反応するDojindo IC3-Osuで標識した(図5)。約0.5mg/mlタンパク質を、3倍過剰の蛍光色素と、暗所、室温で約1時間反応させ、余分な色素を、Bio-Rad Econo-Pac脱塩用カラムを使用して除去した。標識効率は、UV-vis分光光度法を使用して測定した。平均して、約25〜35%のタンパク質分子が標識された。
CTP含有キャリアタンパク質と種々の癌細胞株との間の結合特異性を、ネイティブなキャリアタンパク質と正常な細胞株を陰性対照として用いて評価した。培養培地を、培養した細胞のウェルから最初に除去し、次いで、標識したタンパク質(0.1mg/ml溶液を100μl)を加えた。室温で約10分間のインキュベーション後、タンパク質溶液を除去し、細胞を、1mlの1×PBS緩衝液で各々3回洗浄した。次いで、培養スライドを、蛍光画像処理に送った。ネイティブなCagA、NcsA、またはBlmAを用いると有意な蛍光が検出されなかったのに対し、CTP-含有CagA、NcsA、およびBlmAは強烈な蛍光を生じた。これは、癌細胞へのキャリアタンパク質のCTP-標的化特異的結合を示す(図6)。これらの結果は、CTP含有キャリアタンパク質の標的薬物送達システムとして働く能力が本技術の原理の証拠として役立つことを明確に示す。
本明細書で開示されかつ特許請求されたすべての組成物および方法は、本開示に鑑みて過度の実験を伴うことなく作製および実行され得る。本発明の組成物および方法は好ましい態様によって記載されてきたが、本発明の概念、精神、および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載された組成物および方法に、ならびに本明細書に記載された方法の工程または工程の順番において、バリエーションが適用され得ることは当業者には明らかである。より詳細には、化学的および生理学的の両方で関連する特定の薬剤が、本明細書に記載された薬剤の代わりに置き換えられても、同じかまたは同様の結果が達成されることは明らかである。当業者には明白であるこのようなすべての同様な置換物および改変は、添付の特許請求の範囲によって規定されるような、本発明の精神、範囲、および概念の中に含まれると見なされる。
X.参考文献
以下の参考文献は、それらが典型的な手順、または本明細書に記載されるものに対して補足する他の詳細を提供するという程度まで、参照により本明細書に具体的に組み入れられる。
Figure 2007501014
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以下の図面は、本明細書の一部を形成し、およびこれは本明細書の特定の局面をさらに実証するために含まれる。本発明は、本明細書に提示される特定の態様の詳細な説明と組み合わせた、これらの図面の1つまたは複数の参照によって、より良好に理解され得る。
発現ベクターpET14MおよびpET37Mの模式図である。選択された制限部位のみが示される。 (図2A)設計されたCTPの配列ならびに(図2B)発現ベクターpET14M/CTP(N-His6タグ化融合タンパク質用)およびpET37M/CTP(C-His8-タグ化用)の模式図である。 N-His6タグ化CTP-キャリアタンパク質融合物(図3A)およびキャリアタンパク質-CTP融合物(図3B)の2つのバージョン(pET14M/CTPベース)、ならびにC-His8-タグ化CTP-キャリアタンパク質融合物(図3C)およびキャリアタンパク質-CTP融合物(図3D)(pET37M/CTPベース)についての発現ベクターの模式図である。 精製キャリアタンパク質およびそれらのCTP-含有融合タンパク質のSDS-PAGEの代表的なものである。I.CagA:レーン1、ネイティブ;レーン2、NGR(B);レーン3、RGD(A);レーン4、SMS(B)。II.NcsA:レーン1、ネイティブ;レーン2、NGR(A);レーン3、NGR(C);レーン4、RGD(A)。III.BlmA:レーン1、ネイティブ;レーン2、NGR(A);レーン3、NGR(B);レーン4、RGD(A);レーン5、RGD(B);レーン6、SMS(B)。IV.Mrd:レーン1、ネイティブ、融合物の配置については、図3A、図3B、図3C、または図3Dとして示される図3A〜Dを参照されたい。 CagAおよびそのCTP含有融合タンパク質を伴って例示されるような、蛍光プローブICS-OSuを用いる組換えキャリアタンパク質の標識である。 癌細胞に対するアポタンパク質または薬物結合タンパク質のCTP標的化結合の蛍光画像である。(図6A)KS1617細胞とのBLmA:(I)、陰性対照としてのネイティブタンパク質、10分間のインキュベーション;(II)NGR-BlmA、10分間のインキュベーション;(III)NGR-BlmA、60分間インキュベーション。(図6B)KS1617細胞とのNcsA:NcsA-NGR。(図6C)WM115細胞とのNcsA(図3に示されるような種々の配置を用いる);(I)RGD-NcsA-His8(C);(II)NcsA-RGD-His8(D);(III)His6-RGD-NcsA(A);(IV)His6-NcsA-RGD(B)。(図6D)CagA:(I)KS1617細胞とのHis6-CagA-NGR(B);(II)WM115細胞とのHis6-CagA-RGD(B)。融合物の配置については、A、B、C、またはDとして示される図3を参照されたい。

Claims (75)

  1. キャリアポリペプチドの薬物結合部分および第1の細胞標的化ペプチドまたはタンパク質を含む融合タンパク質。
  2. キャリアタンパク質がアポタンパク質、結合タンパク質、または天然もしくは合成のその改変体である、請求項1に記載の融合タンパク質。
  3. アポタンパク質がCagAまたはNscAである、請求項2に記載の融合タンパク質。
  4. 結合タンパク質が生物合成遺伝子クラスタータンパク質または病原体薬物耐性タンパク質である、請求項2に記載の融合タンパク質。
  5. 生物合成遺伝子クラスタータンパク質がBlmA、PlmA、またはMRDである、請求項4に記載の融合タンパク質。
  6. 第1の細胞標的化ペプチドまたはタンパク質が癌細胞標的化ペプチドまたは腫瘍血管系標的化ペプチドである、請求項1に記載の融合タンパク質。
  7. 癌細胞が膵臓癌細胞、肝臓癌細胞、リンパ腫細胞、骨髄腫細胞、神経芽細胞腫細胞、乳癌細胞、前立腺癌、または頭頸部癌細胞である、請求項6に記載の融合タンパク質。
  8. 融合タンパク質と複合体形成した薬物をさらに含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
  9. 薬物が、抗生物質、植物アルカロイド、アルキル化剤、DNA修復阻害剤、またはDNA切断剤からなる群より選択される、請求項1に記載の融合タンパク質。
  10. DNA切断剤がエンジイン(enediyne)である、請求項1に記載の融合タンパク質。
  11. 第1の細胞標的化ペプチドがキャリアポリペプチドのN末端で結合される、請求項1に記載の融合タンパク質。
  12. 第1の細胞標的化ペプチドまたはタンパク質がキャリアポリペプチドのC末端で結合される、請求項1に記載の融合タンパク質。
  13. 第1の細胞標的化ペプチドまたはタンパク質がキャリアポリペプチドに内部的に結合される、請求項1に記載の融合タンパク質。
  14. 融合タンパク質が細胞標的化ペプチドまたはタンパク質の複数コピーを含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
  15. 第2の細胞標的化ペプチドまたはタンパク質をさらに含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
  16. キャリアタンパク質の薬物結合部分および細胞標的化ペプチドまたはタンパク質をコードする核酸。
  17. さらにプロモーターを含む、請求項16に記載の核酸。
  18. プロモーターが原核生物プロモーターまたは真核生物プロモーターである、請求項17に記載の核酸。
  19. ポリアデニル化シグナル、内部リボソーム結合部位、および選択マーカーの1つまたは複数をさらに含む、請求項18に記載の核酸。
  20. キャリアタンパク質がアポタンパク質、結合タンパク質、または天然もしくは合成のその改変体である、請求項16に記載の核酸。
  21. アポタンパク質がCagAまたはNscAである、請求項20に記載の核酸。
  22. 結合タンパク質が生物合成遺伝子クラスタータンパク質または病原体薬物耐性タンパク質である、請求項20に記載の核酸。
  23. 生物合成遺伝子クラスタータンパク質がBlmA、PlmA、またはMRDである、請求項22に記載の核酸。
  24. 癌細胞標的化ペプチドもしくはタンパク質または腫瘍血管系標的化ペプチドもしくはタンパク質をさらにコードする、請求項16に記載の核酸。
  25. 薬物が、抗生物質、植物アルカロイド、アルキル化剤、DNA修復阻害剤、またはDNA切断剤からなる群より選択される、請求項16に記載の核酸。
  26. 細胞標的化ペプチドまたはタンパク質がN末端で結合される、請求項16に記載の核酸。
  27. 細胞標的化ペプチドまたはタンパク質がキャリアポリペプチドのC末端で結合される、請求項16に記載の核酸。
  28. 細胞標的化ペプチドまたはタンパク質がキャリアポリペプチドの内部で結合される、請求項16に記載の核酸。
  29. 対象に薬物を投与する方法であって、(a)キャリアポリペプチドの薬物結合部分および細胞標的化ペプチドまたはタンパク質を含む融合タンパク質と複合体化された薬物;および(b)薬学的に許容される緩衝剤または希釈剤を含む薬学的組成物を対象に投与する工程を含む、方法。
  30. キャリアポリペプチドがアポタンパク質、結合タンパク質、または天然もしくは合成のその改変体である、請求項29に記載の方法。
  31. アポタンパク質がCagAまたはNscAである、請求項30に記載の方法。
  32. 結合タンパク質が生物合成遺伝子クラスタータンパク質または病原体薬物耐性タンパク質である、請求項20に記載の方法。
  33. 生物合成遺伝子クラスタータンパク質がBlmA、PlmA、またはMRDである、請求項32に記載の融合タンパク質。
  34. 対象が癌に罹患し、かつ細胞標的化ペプチドが癌の細胞または血管系を標的化する、請求項29に記載の方法。
  35. 癌が膵臓癌、肝臓癌、リンパ腫、骨髄腫、神経芽細胞腫、乳癌、前立腺癌、または頭頸部癌である、請求項34に記載の方法。
  36. 薬物が、抗生物質、植物アルカロイド、アルキル化剤、DNA修復阻害剤、またはDNA切断剤からなる群より選択される、請求項29に記載の方法。
  37. 細胞標的化ペプチドまたはタンパク質がキャリアポリペプチドのN末端または該キャリアペプチドのC末端で結合される、請求項29に記載の方法。
  38. 細胞標的化ペプチドまたはタンパク質がキャリアポリペプチドの内部に結合される、請求項29に記載の方法。
  39. 対象が哺乳動物である、請求項29に記載の方法。
  40. 対象がヒトである、請求項39に記載の方法。
  41. キャリアポリペプチド中の薬物結合活性についてスクリーニングする方法であって、以下の工程を含む方法:
    (a)キャリアポリペプチドの少なくとも薬物結合部分を、該キャリアポリペプチドにとって天然のリガンドではない薬物と接触させる工程;および
    (b)キャリアポリペプチドの該薬物結合部分への薬物の結合を評価する工程。
  42. 薬物結合部分が細胞標的化ペプチドまたはタンパク質に融合される、請求項41に記載の方法。
  43. 薬物が標識される、請求項41に記載の方法。
  44. 工程(a)がキャリアポリペプチドに結合することが知られている薬物の存在下で実行され、かつアッセイが競合アッセイである、請求項41に記載の方法。
  45. キャリアポリペプチドがアポタンパク質、結合タンパク質、または天然もしくは合成のその改変体である、請求項41に記載の方法。
  46. アポタンパク質がCagAまたはNscAである、請求項45に記載の方法。
  47. 結合タンパク質が生物合成遺伝子クラスタータンパク質または病原体薬物耐性タンパク質である、請求項45に記載の方法。
  48. 生物合成遺伝子クラスタータンパク質がBlmA、PlmA、またはMRDである、請求項48に記載の融合タンパク質。
  49. 薬物の結合親和性を評価する工程をさらに含む、請求項41に記載の方法。
  50. 細胞標的化ペプチドまたはタンパク質が、キャリアポリペプチドのN末端、C末端、または内部で結合される、請求項42に記載の方法。
  51. ポリペプチド中の薬物結合活性についてスクリーニングする方法であって、以下の工程:
    (a)キャリアポリペプチドの少なくとも薬物結合部分を提供する工程;および
    (b)キャリアポリペプチドの該薬物結合部分への選択された薬物の結合を評価する工程を含む方法。
  52. 工程(b)に先だって、薬物結合部分を変異誘発する工程をさらに含む、請求項51に記載の方法。
  53. 変異誘発する工程がランダム化される、請求項52に記載の方法。
  54. 変異誘発する工程がランダム化されない、請求項52に記載の方法。
  55. 工程(b)の後で、薬物結合部分を変異誘発する工程、および変異誘発された薬物結合部分への選択された薬物の結合を評価する工程をさらに含む、請求項51に記載の方法。
  56. 変異誘発する工程がランダム化される、請求項55に記載の方法。
  57. 変異誘発する工程がランダム化されない、請求項55に記載の方法。
  58. キャリアポリペプチドがアポタンパク質、結合タンパク質、または天然もしくは合成のその改変体である、請求項51に記載の方法。
  59. アポタンパク質がCagAまたはNscAである、請求項58に記載の方法。
  60. 結合タンパク質が生物合成遺伝子クラスタータンパク質または病原体薬物耐性タンパク質である、請求項58に記載の方法。
  61. 生物合成遺伝子クラスタータンパク質がBlmA、PlmA、またはMRDである、請求項60に記載の融合タンパク質。
  62. 薬物の結合親和性を評価する工程をさらに含む、請求項51に記載の方法。
  63. 薬物結合部分が細胞標的化ペプチドに融合される、請求項51に記載の方法。
  64. 融合タンパク質-薬物複合体を産生する方法であって、以下の工程を含む方法:
    (a)キャリアポリペプチドの薬物結合部分および細胞標的化ペプチドまたはタンパク質を含む融合タンパク質をコードする核酸を含む宿主細胞を提供する工程であって、ここで、該宿主細胞が薬物をさらに産生する、工程;ならびに
    (b)該融合タンパク質と該薬物の両方が産生される条件下で該宿主細胞を培養する工程。
  65. 複合体を精製する工程をさらに含む、請求項64に記載の方法。
  66. 宿主細胞が原核細胞である、請求項64に記載の方法。
  67. 原核細胞が細菌細胞である、請求項66に記載の方法。
  68. 細菌細胞が天然に薬物を産生し、かつ天然のキャリアポリペプチドの発現のためにノックアウトされる、請求項67に記載の方法。
  69. 宿主細胞が酵母細胞である、請求項64に記載の方法。
  70. 核酸が宿主細胞のゲノムに安定に形質転換される、請求項64に記載の方法。
  71. キャリアポリペプチドがアポタンパク質、結合タンパク質、または天然もしくは合成のその改変体である、請求項64に記載の方法。
  72. 細胞標的化ペプチドまたはタンパク質が、キャリアポリペプチドのN末端、C末端、または内部で結合される、請求項64に記載の方法。
  73. キャリアポリペプチドの薬物結合部分および細胞標的化ペプチドまたはタンパク質を含む融合タンパク質をコードする核酸を含む宿主細胞。
  74. 薬物をさらに産生する、請求項73に記載の宿主細胞。
  75. 細胞標的化ペプチドまたはタンパク質が、キャリアポリペプチドのN末端、C末端、または内部で結合される、請求項73に記載の方法。
JP2006522738A 2003-08-05 2004-08-05 化学療法剤の送達のための標的化されたキャリア融合物 Pending JP2007501014A (ja)

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