JP2004512839A - 12−ヒドロキシステアリン酸の単離方法 - Google Patents

12−ヒドロキシステアリン酸の単離方法 Download PDF

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    • C12P7/6409Fatty acids
    • C12P7/6418Fatty acids by hydrolysis of fatty acid esters

Abstract

12−ヒドロキシステアリン酸及びその塩を天然の脂肪または油、特にリシノール油から単離する方法で、a)リシノール酸を単離するため、天然の脂肪または油を、1つまたは様々な酵素の触媒効果の下、15〜50℃で加水分解し、b)生成したグリセロール及び酵素を分離し、c)加水分解物を触媒作用により水素化し、d)このようにして得られた製品を処理することを特徴とする方法が開示される。

Description

【0001】
(技術分野)
本発明は、一般的に12−ヒドロキシステアリン酸の単離に関するもので、特に天然の脂肪または油、特にひまし油からの12−ヒドロキシステアリン酸の単離方法に関するものである。
【0002】
(先行技術)
12−ヒドロキシステアリン酸は、リシノール酸から誘導された C18 の脂肪酸で、化学実験式は C1836 である。それは常温で無色の結晶からなる。12−ヒドロキシステアリン酸は、プラスチック製品の中間体または化粧用製品の成分として、その塩、12−ヒドロキシステアリン酸塩の形で使用されている。
【0003】
油からの12−ヒドロキシステアリン酸の単離及び生産については既に知られており、文献や特許に広く記されてきた。従来ひまし油は、12−ヒドロキシステアリン酸単離のための開始材料として記載されてきた。その起源に依存して、粗ひまし油は、87〜91%のグリセリド形のリシノール酸、2%のステアリン酸及びパルミチン酸、4〜5%のオレイン酸、4〜5%のリノレイン酸からなっている。酸はグリセリドの形で存在している。ひまし油は、ひまし油植物 Rizinus communis の種を冷間プレスすることによって得られる。
【0004】
従来の脂肪分解方法の反応条件は、リシノール酸及び12−ヒドロキシステアリン酸がその条件下では破壊されるので、12−ヒドロキシステアリン酸の単離に適用できない。
【0005】
12−ヒドロキシステアリン酸を単離するための従来法では、ひまし油をまず不均一系金属触媒反応により化学的に水素化し、水素化された油をアルカリエステル分裂により化学的に分離し、その後、酸で中和することによって12−ヒドロキシステアリン酸を得る。
【0006】
Rev. Soc. Quim. Mex. 37, 1993, pp.66〜69で、C. Melanco は、どのようにひまし油を Ni 及び Pd 触媒の存在下で水素化するか、そしてどのようにこの水素化されたひまし油をアルカリ鹸化によって分離し、12−ヒドロキシステアリン酸を得るかについて記している。この方法で得られる12−ヒドロキシステアリン酸の収率は非常に低い。
【0007】
JAOCS, 65 (9) 1988, 1467〜1469の論文で、R. K. Trivedi は、2bar の水素圧、130℃の温度で、2重量%の Ni 触媒存在下で行う水素化方法による、ひまし油の水素化について記している。残念ながら、このひまし油の水素化方法では収率が非常に低い。加えて、どのように遊離12−ヒドロキシステアリン酸が水素化された油から単離されるかについての記述がない。
【0008】
1966年の GE 1,130,092には、ひまし油の水素化方法について記載されている。ひまし油は、Ni 触媒の存在下、180℃までの温度で水素化される。しかしながらこの方法では、12−ヒドロキシステアリン酸を放出し、単離することはなく、代わりに、水素化されたひまし油中の脂肪酸のヒドロキシ基を脱水する。
【0009】
ひまし油を直接水素化し、その後水素化された油を鹸化することにより、ひまし油から12−ヒドロキシステアリン酸を化学生産する上記の方法では、高い反応温度だけではなく、多量の金属触媒が必要である。水素化された油及び12−ヒドロキシステアリン酸の収率は、時には非常に低い。高い反応温度、多量の触媒及び低い収率に加えて、これら従来法の欠点は、アルカリ鹸化及び副生物の形成後の廃液に高含有量の塩が含まれていることである。これら副生物はとりわけ、上記従来の条件下で鹸化を行った場合に形成されるヒドロキシステアリン酸のダイマー及びポリマーである。これら副生物の除去は、もう1つの反応段階を伴い、生成物の類似した化学特性ゆえに、容易ではない。
【0010】
従来技術(JP 61139396)で知られている12−ヒドロキシステアリン酸のもう1つの単離方法では、水素化されたひまし油を、注意深く酵素により加水分解する。この特許出願の要約によると、水素化されたひまし油を、75℃で、様々な属の微生物からのリパーゼの存在下、加水分解する。加えてその温度で、水素化されたひまし油が75℃を超える融点を有するので、溶媒の存在下、加水分解を行わなければならない。リパーゼを使用すると、加水分解度は84%である。どのようにひまし油を水素化するかという記述はない。この方法の欠点は、加水分解度がたった84%と低く、反応温度は高いということである。高温は、温度に敏感な種々のリパーゼの使用を排除する。水素化されたひまし油から始まる全ての方法に共通のもう1つの欠点は、中間生成物であるリシノール酸を単離できないことである。12−ヒドロキシステアリン酸に加えて、リシノール酸も、多くの用途でかなり重要であり、従来法によっては限定された量でしか得られない。
【0011】
脂肪及び油、特にひまし油の、酵素加水分解の様々な方法は、先行技術で知られている。例えば JP 01016592の要約では、穏やかな条件下でひまし油を加水分解するリパーゼ触媒方法が記されており、70%を超える加水分解度が達成される。しかしながら、実際に加水分解度がどれほど高いのかは記載されていない。加えて、この方法の欠点は、使用する油の総量に基づいて0.15〜15重量%という多量の酵素を使うことである。10〜15重量%の酵素を触媒として使用する場合、この方法は効率が悪く、非常にコスト高である。加えて、広く書かれた要約からは、必要な加水分解度を得るための触媒量は明らかでない。
【0012】
ひまし油の酵素加水分解方法において、特に引用した特許明細書では、どのように遊離リシノール酸を加水分解された油から単離するか、また特に、どのように12−ヒドロキシステアリン酸を高収率で単離するかという記述がない。
【0013】
ひまし油のリパーゼ触媒加水分解は、科学文献からも知られている。しかしながら、そこで記載されている方法は、工業的な用途にスケールアップできない。例えば、病原性微生物(Pseudomonas aeruginosa)からのリパーゼの使用が記されている(Sharon et al., Indian. J. Expl. Biol., 1999, 37, 481以下)。加えて、ブタの膵臓からのリパーゼも使用されており(Biosci. Biotechnol. Biochem., 1992, 56, 1490以下)、装置及び副生物グリセロールの“清浄”証明を失うことになる。植物リパーゼを利用すると、ひまし油の加水分解度が非常に低くなることが記されている(Fuchs et al., J. Plant Physiol., 1996, 149, 23)。これらのリパーゼは“酸性”リパーゼ、即ち水相の複雑な pH 調整及び緩衝が必要であろうリパーゼの群に属する。
【0014】
本発明で扱う課題は、毒物学的及び生態学的に危険な反応段階をほとんど避けた、天然の脂肪または油からの、高収率で純粋な12−ヒドロキシステアリン酸の効果的及び経済的な製造のための僅か数段階を含む、産業的方法を提供することであった。本発明で扱うもう1つの課題は、リシノール酸が中間生成物として得られる、12−ヒドロキシステアリン酸を単離する方法を提供することであった。
【0015】
本発明は、12−ヒドロキシステアリン酸及びその塩を、天然の脂肪または油、特にひまし油から単離するための方法に関するものであり、
a)最初の段階で、天然の脂肪または油を、触媒としての1つまたはそれ以上の酵素の存在下、15〜50℃の温度で加水分解してリシノール酸を形成し、
b)形成されたグリセロール及び酵素を除去し、
c)加水分解物を触媒作用により水素化し、
d)このようにして得られた生成物を最終生成物に処理する、
ことを特徴とする。
【0016】
触媒としての酵素または種々の酵素、好ましくは2種類の酵素の存在下にひまし油を加水分解すると、酵素及び形成されたグリセロールを除去した後に、穏やかな条件下で水素化でき、かつ高純度の12−ヒドロキシステアリン酸を与える高濃度の遊離リシノール酸を含む混合物が得られるということが意外にも見出された。
【0017】
よって、反応段階の順序は本発明にとって重要である。天然の脂肪及び油の酵素加水分解をまず行うべきであり、触媒及び形成されたグリセロールの除去後、リシノール酸を水素化して12−ヒドロキシステアリン酸を形成するという生成物の水素化を続いて行う。この方法では、ほとんど無臭無色な製品ができる。
【0018】
本発明における天然の脂肪または油は、ひまし油グリセリド含有量が50%を超える脂肪または油のいずれかであると理解される。特に、天然の脂肪または油はひまし油である。
本発明における12−ヒドロキシステアリン酸の塩は、融解塩であり、特に、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩であると理解される。
【0019】
反応段階 a)
本発明によると、酵素触媒反応である反応段階 a)での反応条件は、選ばれた酵素の最適反応範囲によって決定される。特に反応条件は、とりわけ15〜50℃の反応温度であり、好ましくは20〜40℃、更に好ましくは35℃である。
【0020】
本発明のもう1つの態様において、段階 a)で使用される酵素触媒が、加水分解酵素、特にリパーゼとしても知られているエステル加水分解酵素の群から選ばれる。本発明によると、好ましいリパーゼは、Aspergillus oryzae、Aspergillus niger、Bacillus species、Penicillium camembertii、Pseudomonas cepacia、Candida lipolytica、Geotrichum candidum、Penicillium roqueforti、Rhizopus arrhizus、Rhizopus oryzae、Rhizopus niveus、Mucor javanicus、Rhizomucor miehei 及び Thermomyces lanugenosus からのリパーゼであり、特に Aspergillus oryzae または Thermomyces lanugenosus からのリパーゼが好ましい。Aspergillus oryzae、Bacillus species Rhizopus arrhizus または Thermomyces lanugenosus は特に好ましい。
【0021】
本発明で使用されるリパーゼは、それら自身または種々の酵素との組合せ、特に好ましくは2種類の酵素を組合せて使用される。このような組合せは、好ましくはあるリパーゼが特にグリセリドの1,3−特異分裂(このようなリパーゼは、1,3−特異リパーゼとして知られている)を触媒する一方で、他のリパーゼがモノ(2)−グリセリドの分裂を触媒するリパーゼからなる。選択は、最良の場合に、使用したリパーゼのいずれもがリシノール酸のエステル置換による望ましくない副生物(ダイマーまたはラクトン)を形成しないように、それぞれ行われる。
【0022】
Thermomyces lanugenosus、Aspergillus oryzae または Rhizopus arrhizus からのリパーゼは、好ましくは、モノグリセリド特異性 Penicillium camembertii または Bacillus species リパーゼと組み合わせる。より好ましい例では、Thermomyces lanugenosus からのリパーゼを、Penicillium camembertii リパーゼと共に使用する。
【0023】
本発明で使用する酵素は、様々な形状で用い得る。基本的に、当業者に知られているいかなる酵素の供給形状も、使用することができる。酵素は、好ましくは純粋な形状で、または固定化された及び/または溶媒中、更に好ましくは水溶液中の工業用酵素製剤として使用される。
【0024】
本発明のもう1つの態様では、本発明で使用される酵素が、天然の脂肪及び油の総質量に基づいて0.002〜0.505重量%の量で使用される。1つの特定例では、その量は0.002〜0.140重量%であり、好ましくは0.0520〜0.1004重量%である。
【0025】
使用される工業用酵素製剤を用いる場合、天然の脂肪及び油の総質量に基づいて、0.004〜0.5重量%の水溶液を用いるのが好ましい。Penicillium camembertii の水溶液の0.004〜0.02重量%、及び/または Thermomyces lanugenosus の水溶液の0.1〜0.5重量%の使用が特に好ましい。個々の工業用酵素製剤中の活性酵素の割合は、製品によって様々である。しかしながら、平均では10%の活性酵素である。
【0026】
好ましい緩衝剤は、任意に、他の反応成分として使用されてよい。本発明の目的に適した緩衝剤は、リパーゼ触媒による脂肪分解方法を緩衝できるものである。これらの緩衝剤は、触媒リパーゼを破壊したり、その活性を損なったりしない系である。このような緩衝剤は、例えば燐酸塩緩衝剤や炭酸塩緩衝剤を含む。燐酸塩緩衝剤が、特に好ましい。好ましい態様では、本発明で使用される緩衝剤は、天然の脂肪または油の総質量に基づいて、0.01〜0.2重量%、好ましくは0.01〜0.05重量%の量で使用される。しかしながら、特に好ましい態様では、脂肪分解が緩衝されていない系で行われる。
上記の条件下では、加水分解度は90〜98%である。
【0027】
反応段階 b)
第2反応段階において、加水分解中に形成されるグリセロールを除去しなくてはならない。加えて、使用された酵素触媒も除去しなくてはならない。基本的に、グリセロール及び使用された酵素触媒は、前記化合物及び触媒を除去し得る、いかなる既知の分離方法によっても除去でき、好ましくは70〜90℃での反応混合物の加熱による分離である。層分離による除去は特に好ましい。層分離は、加水分解された混合物の重量及び密度の違いによって行われる。1つの可能な態様では、分離方法は好ましくは、800r.p.m.、圧力1.2〜1.3bar で、連続的に6時間遠心分離にかけることである。
【0028】
本発明では、反応段階 a)及び b)は、要求される加水分解度によって、加水分解物が水素化されるまで何度も繰り返し得る。1回繰り返すのが好ましい。このとき、前記条件下では加水分解度は99.5〜100%になる。
【0029】
反応段階 c)
反応段階 a)及び b)の後、得られた加水分解物は、ほとんどがリシノール酸である。リシノール酸含有量は、使用されたひまし油の質及び加水分解度に依存する。得られたひまし油は、続く反応段階で12−ヒドロキシステアリン酸を得るために水素化される。基本的に、いかなる水素化触媒も、リシノール酸の水素化のための触媒として使用できる。
【0030】
基本的に、2種類の触媒が本発明の水素化では使用される。不均一系触媒反応の場合、反応媒体に不溶な触媒が存在し、それは実際の触媒反応が水素化される化合物の吸脱着平衡により行われる触媒の表面上に存在する。使用される触媒は、例えば Pt、Pd、Rh のような貴金属または、Mo、W、Cr、Fe、Co、Ni のような遷移金属の単体または混合物が好ましい。活性及び選択性を大きくするために、触媒は、活性炭、酸化アルミニウムまたは珪藻土のような担体上に適用されてよい。Ni またはラネーニッケル、活性炭に固定された Pd、金属 Pt、酸化プラチナ及び酸化亜鉛は、本発明で好ましく使用される。
【0031】
均一系触媒、即ち反応媒体に可溶な触媒は、好ましくは Wilkinson 触媒(クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム)に代表される遷移金属複合物である。
好ましい態様では、触媒が不均一系触媒である。Ni 触媒または活性炭表面に Pd が吸着された Pd 触媒は、特に好ましい。
【0032】
1つの態様では、本発明の水素化は、70〜150℃、好ましくは90〜130℃、より好ましくは120℃の温度で行われる。
もう1つの好ましい態様では、水素化は1〜300bar、好ましくは5〜50bar、より好ましくは20bar の水素ガス圧下で行われる。
もう1つの好ましい態様では、水素化触媒が、天然の脂肪または油の総質量に基づいて、0.2〜5重量%、好ましくは0.4〜2重量%の量で使用される。
【0033】
反応段階 d)
最終段階では、得られた生成物は更なる処理や加工なしに、最終製品に仕上げられる。仕上げは、噴霧乾燥によって行われるのが好ましいが、例えば切断剪断ミル、造粒機、ペレット化ローラー、フレーク形成ローラーのような溶融され得る固体を仕上げる方法であれば、原則としてどのような方法で行ってもよい。
【0034】
得られた生成物12−ヒドロキシステアリン酸は、既知の方法によって達成できない程、ほとんど無臭無色である。加えて、得られた生成物は、実質上、モノ−、ジ−またはトリグリセリドのような副生物を含んでいない。
【0035】
本発明には、一連の段階と酵素及び化学触媒反応の組合せとを通して、経済的で生態学的に安全な方法が、ひまし油から高純度リシノール酸及び12−ヒドロキシステアリン酸を製造するために開発されてきたという所見が含まれている。
【0036】
本発明の方法によって得られたリシノール酸及び12−ヒドロキシステアリン酸は、化粧品及び医薬品、潤滑剤、織物助剤中での使用、並びにプラスチック製品用として適している。
【0037】
本発明を、次の実施例によって説明する。
(実施例1)
基剤としてのひまし油に対する加水分解活性のための様々なリパーゼのスクリーニング
ひまし油5g 及び蒸留水5g を、エマルションが形成するまで25℃で攪拌した。様々なリパーゼを油に基づいて5重量%添加し、混合物を25℃で96時間攪拌した。
試料は、24、48、72時間後に分析した。エマルションは遠心分離によって分離し(5分間、13,000r.p.m.)、油層の分裂生成物を薄層クロマトグラフィーによって分析した。
【0038】
【表1】
Figure 2004512839
【0039】
(実施例2)
ひまし油完全水素化のためのリパーゼ組合せの検討
ひまし油5種類及び蒸留水5g を含む混合物7種類を、エマルションが形成されるまで25℃で攪拌した。Thermomyces lanugenosus リパーゼ(Lipozym TL 100 l)10μl をそれぞれの混合物にピペットで加えた。第2のリパーゼ(0.5%溶液を10μl)を混合物6種類に添加し、7番目の混合物は比較例とした。エマルションを36時間攪拌し、遠心分離し、薄層クロマトグラフィーによって加水分解活性を分析した。反応混合物中のモノ−及びジグリセリドの相対率を求めた。
【表2】
Figure 2004512839
相乗的な加水分解効果を有するため、Thermomyces lanugenosus 及び Penicillium camembertii リパーゼの組合せが、ひまし油の加水分解に特に好ましい。もう1つの好ましいリパーゼは、Rhizopus niveus 及び Thermomyces lanugenosus の組合せである。
【0040】
(実施例3)
ひまし油加水分解のためのリパーゼ混合比の検討
目的:実施例2で決定された特に好ましいリパーゼの組合せ(Thermomyces lanugenosus + Penicillium camembertii)を使用する際の、酵素の最適混合比を決定する。
方法:ひまし油25g 及び蒸留水25g を含む混合物5種類を、エマルションが形成されるまで25℃で攪拌した。その後、Thermomyces lanugenosus 溶液(Lipozym TL, Novo Nordisk)及び Penicillium camembertii(Lipase G, Amano)を以下の濃度で添加した。
【表3】
Figure 2004512839
様々な反応時間後に、エマルションを遠心分離(5分、13,000r.p.m.)によって分離し、ガスクロマトグラフィーで酸形成を分析した。
【0041】
【表4】
Figure 2004512839
【0042】
この試験は、商業的に入手できる酵素製剤の試料重量に基づいて、約25:1の Thermomyces lanugenosus リパーゼ(Lipozym TL)対 Penicillium camembertii リパーゼ(Lipase G, Amano Pharmaceuticals)の比率が好ましい酵素比であるということを示している。リパーゼ G 成分が増加すると、ごく僅かであるが遊離酸の形成が増加するのに対して、リパーゼ G 成分が減少すると、遊離酸の形成が減少する。
【0043】
(実施例4)
2段階方法によるひまし油の加水分解
ひまし油4,800kg 及び水2,080kg を、エマルションが形成されるまで30℃で攪拌した。Penicillium camembertii からのリパーゼ(Lipase G, Amano)700g 及び Thermomyces lanugenosus からのリパーゼ(Lipozym TL, Novo Nordisk)14kg を攪拌しながら添加した。混合物を30℃で24時間攪拌した。その後、80℃に加熱したエマルションを重力によって分離した。油層を水2,080kg と共にエマルションが形成されるまで30℃で再攪拌し、Penicillium camembertii からのリパーゼ(Lipase G, Amano)700g 及び Thermomyces lanugenosus からのリパーゼ(Lipozym TL, Novo Nordisk)14kg を添加した。混合物を30℃で24時間攪拌しながら再度定温放置し、80℃に加熱し、重力によって分離した。
【0044】
第1反応段階後、副生物の形成はなく、ひまし油の転化率は88%であった。全体で、副生物の形成はなく、ひまし油の転化率は99%以上であった。
残存酵素活性は、使用した酵素量の1%未満であった。
GC 分析による最終生成物の組成
酸:99.8%
モノグリセリド:0.1%
ジグリセリド:0.1%
トリグリセリド:0%
【0045】
(実施例5)
ニッケル触媒による水素化
実施例3からのリシノール酸500ml を真空乾燥し、500ml オートクレーブ中、0.4重量%の触媒(ニッケル触媒 Nysofact IQ 101)の存在下、1時間、120℃/20bar の水素圧で水素化した。約100℃の熱生成物を酸性白土(10重量%)でろ過し、1重量%の Trisyl 300を添加した。90℃で20分間攪拌し乾燥した後、混合物をヌッチェフィルターで真空下ろ過分離した。得られた12−ヒドロキシステアリン酸の融点は72〜81℃である。
特性:
OH 価:159
よう素価:2.2
酸価:170
【0046】
(実施例6)
パラジウムによる水素化
実施例3からのリシノール酸500ml を真空乾燥し、500ml オートクレーブ中、0.5重量%の触媒(パラジウム/活性炭触媒:活性炭表面に5%のパラジウムを担持[Norrit Pulver])の存在下、3時間、90℃/150bar の水素圧で水素化した。水素化後、生成物を加圧ろ過によって触媒から分離させた。
特性:
OH 価:144
よう素価:4
酸価:173

Claims (12)

  1. 12−ヒドロキシステアリン酸及びその塩を、天然の脂肪または油、特にひまし油から単離する方法であって、
    a)最初の段階で、天然の脂肪または油を、触媒としての1つまたはそれ以上の酵素の存在下、15〜50℃の温度で加水分解してリシノール酸を形成し、
    b)形成されたグリセロール及び酵素を除去し、
    c)加水分解物を触媒作用により水素化し、
    d)このようにして得られた生成物を最終生成物に処理する、
    ことを特徴とする方法。
  2. 段階 a)で使用される酵素が加水分解酵素の群から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 加水分解酵素が、Aspergillus oryzae、Aspergillus niger、Bacillus species、Penicillium camembertii、Pseudomonas cepacia、Candida lipolytica、Geotrichum candidum、Penicillium roqueforti、Rhizopus arrhizus、Rhizopus oryzae、Rhizomucor miehei、Rhizopus niveus、Mucor javanicus 及び Thermomyces lanugenosus からのリパーゼから選ばれることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
  4. 酵素は、天然の脂肪または油の総量に基づいて、0.012〜0.505重量%の量で使用することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. 緩衝剤を、方法の段階 a)において、天然の脂肪または油の総量に基づいて、0.01〜0.2重量%の量で使用することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. 緩衝剤は燐酸塩緩衝剤であることを特徴とする請求項5に記載の方法。
  7. 段階 b)での分離方法は、遠心分離または、エマルションの70〜90℃の加熱による層分離であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  8. 段階 c)での水素化触媒は、Pt、Pd、Rh、Mo、W、Cr、Fe、Co、Al 及び Ni からなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  9. 水素化を温度70〜150℃で行うことを特徴とする請求項8に記載の方法。
  10. 水素化を1〜300bar の水素ガス圧下で行うことを特徴とする請求項8に記載の方法。
  11. 金属触媒を、使用される脂肪または油の総量に基づいて、0.2〜5重量%の量で使用することを特徴とする、請求項8〜10のいずれかに記載の方法。
  12. 段階 c)は噴霧乾燥によって行うことを特徴とする請求項1に記載の方法。
JP2002539541A 2000-11-03 2001-10-25 12−ヒドロキシステアリン酸の単離方法 Pending JP2004512839A (ja)

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