JP2004509090A - α−ヒドロキシ酸の工業的規模での精製方法 - Google Patents

α−ヒドロキシ酸の工業的規模での精製方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、α−ヒドロキシ酸を工業的規模で精製する方法であって、10,000APHA単位以下の色(新しい)のα−ヒドロキシ酸を(a)結晶化段階にかけ、それに続いて(b)蒸留段階にかける方法に関する。

Description

【0001】
本発明は、α−ヒドロキシ酸、特に乳酸またはグリコール酸を工業的規模で精製する方法に、並びにこの方法により得ることができる最高のキラル純度の製品に、及びこれらの用途に関する。
【0002】
乳酸は、分子間エステル(ダイマー及びポリマー形の乳酸)を形成する傾向が強いために、通常、希薄あるいは濃縮溶液として販売されている。加えて、乳酸(極めて純粋な乳酸でも)は極めて吸湿性である。乳酸(ラセミ混合物と特に乳酸のエナンチオマー)の工業的規模での精製は、従来技術に従うと複雑で困難な方法である。
【0003】
乳酸、2−ヒドロキシプロピオン酸を発酵法で製造する方法は既知である。一般に、乳酸の発酵法による製造は、最初に、好適な微生物によりグルコースまたはショ糖などの炭水化物を含有する基質を乳酸に転換する醗酵段階を含む。(S)−乳酸を生産する既知の微生物は、例えば、ラクトバチルス カセイ(Lactobacillus casei)などのラクトバチルス(Lactobacillus)属の種々のバクテリアである。加えて、(R)−乳酸を選択的に生産する微生物も知られている。次に、この水性の醗酵製品を処理して乳酸を得る。この通常の工業的な処理経路は、概ね、このバイオマスを分離し、続いて酸性化、精製及び濃縮することからなる。
【0004】
(S)−乳酸の場合には、このように得られる乳酸は、人間の消費する食品での加工には充分に純粋である。この通常の方法により最終的に得られる(S)−あるいは(R)−乳酸は、エナンチオマーとして98%の、あるいは更に高い純度とすることができる(すなわち、存在する乳酸の98%あるいはそれ以上が(S)あるいは(R)エナンチオマーからなる)。しかしながら、この製品は残存砂糖をなお含有する。また、この製品は黄色に着色していて、加熱すると不純物の分解により褐色から黒色となる。更には、(S)−乳酸の場合には、この感覚刺激に反応する性質は、時には、希望すべき事項を残している。このように、このエナンチオマーは食品用途には適度に好適であるが、医薬品用途とキラル化合物の合成には全体的に好適でない。
【0005】
エステル化とそれに続く加水分解により、医薬品用途に好適となるようにこの製品の純度を増大させることができる。しかしながら、このエステル化/加水分解の結果として、エナンチオマー純度は低下し、この乳酸はエステル化に使用した少量のアルコールをなお含有する。乳酸の精製用の他の方法の例は、乳酸水溶液を一つあるいはそれ以上の抽出、(水蒸気)蒸留及び/または蒸発段階、電気透析段階及び結晶化にかけることを含む(例えばUllmans Ency1dopadie der Technischen Chemie,Verlag Chemie GmbH,Weinheim,fourth edition,Part 17,pages1−7(1979);H.Benninga,「History of Lactic Acid Making」,Kluwer Academic Publishers,Dordrecht−Boston−London(1990);C.H.Holten,「Lactic Acid;Properties and Chemistry of Lactic Acid and Derivatives」,Verlag Chemie GmbH Weinheim(1971);The Merck Index,Merck & Co.,Inc.,eleventh edition,page842(1989);Rommp Chemie Lexicon,G.Thieme Verlag,Stuttgart and New York,ninth edition,Part 4,pages2792−2893(1991)及びthe Netherlands patent applications 1013265及び1013682を参照されたい)。
【0006】
独逸特許593,657(1934年2月15日に付与)においては、(S)成分の過剰を含有し、実際的には乳酸無水物を含有しない乳酸水溶液を必要ならば減圧で薄膜蒸発法により濃縮する研究室の実験が記述されている。次に、この濃縮乳酸溶液を迅速に冷却し、結晶を形成させる。その後、結晶を母液から分離し、エーテルにより洗浄し、そしてこの結晶が53℃のシャープな融点を示すまで、酢酸エチルまたはクロロホルムまたは匹敵する溶媒から繰り返して再結晶化した。
このキラル純度またはエナンチオマー過剰及び色は報告されていない。
【0007】
H.Borsook,H.M.Huffman,Y−P.Liu,J.Biol.Chem.102,449−460(1933)においては、(S)−乳酸の過剰と共に50パーセントの乳酸を含有する水性混合物、30パーセントの乳酸無水物及び乳酸ダイマーと15パーセントの水をほぼ0.13ミリバール及び105℃で分別蒸留にかける研究室の実験が記述されている。次に、この中間溜分を再度蒸留し、その後氷/塩浴中で冷却し、固体結晶を生成させた。大量の場合には長い加熱時間の結果として製品の損失が大きいために、この蒸留を少量で行なわなければないことが報告されている。次に、この固体結晶を等容量のジエチルエーテルとジイソプロピルエーテル(同量の)から3回再結晶化させ、そして結晶を単離し、真空乾燥器中室温で乾燥した。このようにして、水、乳酸無水物または乳酸ダイマーなどの0.1パーセント未満の不純物を含有する52.7−52.8℃の融点の(S)−乳酸を得ることが可能であった。(S)−乳酸のキラル純度またはエナンチオマー過剰及び色は報告されていない。
【0008】
L.B.Lockwood,D.E.Yoder,M.Zienty,Ann.N.Y.Acad.Sci.119,854(1965)においては、工業的規模での乳酸の蒸留と結晶化も記述されていて、得られる光学的に純粋な乳酸の融点は54℃である。この色は報告されていない。
【0009】
1934年に乳酸の結晶化がBoehringw Ingelheimzにより研究されたが、精製と更なる処理についての問題のためにこの方法は良好な結果を与えないことが判明した。しかしながら、第2次世界大戦の後、Boehringer Ingelheimは、月当り約12ないし15トンの規模で医薬品用途に乳酸を約77ないし86パーセントの収率で製造することが可能であることが判明した。このプロセスにおいては、減圧(約13ミリバール)で水蒸気蒸留し、続いて−25℃で結晶化し、その後この結晶を水に溶解し、この溶液をフェロシアン化カリウム(重金属を除去するために)と活性炭により処理することにより乳酸水溶液を精製した。このように製造される(S)−乳酸のキラル純度またはエナンチオマー過剰または色と臭いなどの他の性質は知られていない(H.Benninga,「History of Lactic Acid Making」,Kluwer Academic Publishers,Dordrecht−Boston−London,pages 347−350(1990)を参照されたい)。
【0010】
結晶性(S)−乳酸は、例えば、Fluke and Sigmaにより99%以上の純度で販売されてきた(例えば、M.L.Buszko,E.R.Andrew,Mol.Phys.76,83−87(1992)及びT.S.Ing,A.W.Yu,V.Nagaraja,N.A.Amin,S.Ayache,V.C.Gandhi,J.T.Daugirdas,Int.J.Artif.Organs 17,70−73(1990)を参照されたい)。1重量パーセント未満の水含量の結晶性(S)乳酸はEPA563,455で既知である(実施例1を参照)。乳酸の結晶構造は、A.Schouten,J.A.Kanters,J.vanKrieken,J.Mol.Struct.323,165−168(1994)で記述されている。
【0011】
合成的な方法でも乳酸を得ることができる。これは既知である。しかしながら、合成的製造方法の製品は、(S)−乳酸と(R)−乳酸を等量で含有するラセミ体混合物である。この別々のエナンチオマーをエナンチオマーの一つを塩として晶出させ、次にこの塩をエナンチオマー形の乳酸に戻すジアステレオマー分離法などの既知の手法で分離することができるのは事実であるが、最終的に得られるエナンチオマー形の製品は著しい量の他のエナンチオマーをなお含有する。
【0012】
欧州特許出願552,255においては、この溶液をフリーザー中に入れて、結晶を生じさせ、これを濾別することにより、工業用品質のグリコール酸を結晶化できることが報告されている。この方法は工業的規模での実施には不適であることが明らかであろう。このような方法は、また、DEA2,810,975でも適用されている。
【0013】
WO00/56693においては、乳酸を工業的規模で精製する方法であって、(a)濃縮乳酸溶液の形で計算して少なくとも95重量%の総酸含量と少なくとも80重量%のモノマー形の乳酸含量で、そして1に等しくない乳酸エナンチオマーの比の濃縮乳酸溶液を減圧下で蒸留し、そして(b)この蒸留された乳酸溶液を結晶化にかけることを含み、純粋な乳酸の全量に関して計算して少なくとも99重量%の総酸含量、少なくとも98重量%のモノマー形の乳酸含量、99%あるいはそれ以上のキラル純度、10APHA単位以下の色及び許容できる臭いを有する純粋な乳酸を形成する方法が記述されている。
【0014】
WO00/56693に従った方法の難点は、相対的には低くはないが、この収率を改善することができること、この方法が大量のエネルギーを必要とすること、そして相対的に多量の酸を蒸留しなければならないことである。
【0015】
本発明はこの問題の解決を目的とし、それゆえ、α−ヒドロキシ酸を工業的規模(すなわち、年当り少なくとも1000トンの規模で)で精製する方法であって、10,000APHA単位以下の色の(新鮮な)α−ヒドロキシ酸を(a)結晶化段階にかけ、引き続いて(b)蒸留段階にかける方法に関する。
【0016】
本発明に従った方法は、2つもしくはそれ以上の結晶化段階及び/または2つあるいはそれ以上の蒸留段階を含んでなることが当業者には明らかであろう。しかしながら、そうでないとこのエネルギーの利点が減少するために、本発明に従えば一つの結晶化段階のみを行なうのが好ましい。
【0017】
本発明に従った方法の利点は相対的に低いエネルギー消費である。これは、結晶化時に相対的に多量の不純物が除去され、そして総生成物に関して計算して1重量%未満の水といった僅かな水しか含有しない生成物が概ね生成されるので、容易に蒸留(融解のみの後)できるという事実に主としてよっている。更には、等量の最終生成物を得るために蒸留しなければならないフィードの量はずっと小さい。
【0018】
α−ヒドロキシ酸は炭素原子上でα−ヒドロキシ基により置換された炭酸を意味する。それゆえ、α−ヒドロキシ酸の一般式は
【0019】
【化1】
Figure 2004509090
【0020】
であり、ここで、Rは水素原子、C−Cアルキル基(好ましくはメチル基)、C−C12アリール基またはヘテロ環シクロアルキルあるいは−アリール基である。本発明に従ったα−ヒドロキシ酸は、好ましくは乳酸(Rはメチルである)またはグリコール酸(Rは水素である)であり、そして特に乳酸である。
【0021】
この方法のためのフィードは、好ましくは7500APHA以下の、特に5000APHA以下の色(新しい)、全フィードに対して少なくとも70重量%の全酸含量及び全フィードに対して少なくとも60重量%の遊離酸含量により特徴付けられる。このα−ヒドロキシ酸が乳酸である場合には、このフィードは、好ましくは少なくとも80重量%の全酸含量と少なくとも70重量%の遊離酸含量を有する。このフィードは、10,000ppm以下の、好ましくは5,000ppm以下の全窒素含量と20,000ppm以下の、好ましくは10,000ppm以下の残存砂糖(主として、ポリサッカライド)全量により更に特徴付けられ、ここで、この明細書で示されるすべての含量は全フィードに対するものである。このフィードのキラル純度は、適用可能ならば、少なくとも90%、更に好ましくは少なくとも95%である。
【0022】
全酸含量(TA)は、過剰の塩基により分子間エステル結合をけん化した後の酸含量であり、酸による逆滴定により定量される。このように、全酸含量は、モノマー形、ダイマー形及びポリマー形の乳酸の量を与える。この遊離酸含量(FA)は、塩基による直接滴定により、すなわち、この分子間エステル基のけん化の前に求められる。モノマー形の乳酸(MM)の含量はこの明細書では
MM=TA−2×(TA−FA)
(但し、TA−FA<10%である)
として定義される。これは、極めて多量のダイマーあるいはポリマー形の乳酸は存在することができないことを意味する。この非モノマー形の乳酸は乳酸ラクトイル(ダイマー)の形で存在することも推測される。キラル純度(過剰の(S)−異性体に対する)は、この明細書では
キラル純度=100%×{((S)−異性体)/((R)−異性体+(S)−異性体)}
として定義される。
【0023】
既知の結晶化手法が原理的には本発明に従った方法で適用可能である。このような手法の例は、融解結晶化(または冷却結晶化)であり、この場合には、例えば(S)−α−ヒドロキシ酸または(R)−α−ヒドロキシ酸を溶融状態で含有する凝縮液体濃縮物または蒸留物は、直接に冷却されて、(S)−あるいは(R)−α−ヒドロキシ酸が晶出する。結晶化が起こる温度(結晶化温度)を可能な限り低く保ち、α−ヒドロキシ酸のオリゴマーとポリマーの形成を可能な限り制限することが好ましい。本発明に従えば、蒸留物の製造はプロセスエネルギーの点で不利であるので、好ましくは濃縮物が使用される。
【0024】
融解結晶化は結晶化される材料の融液から結晶性材料を得る方法である。この手法は、この明細書では参照の目的で示されている例えばKirk−Othmer,「Encyclopedia of Chemical Technology」,fourth edition,Part 7,pages 723−727(1993),J.W.Mullin,「Crystallization」,third revised edition,Butterworth−HeinemannLtd.,pages309−323(1993)及びJ.Ullrich and B.Kallies,「Current Topics in Crystal Growth Research」,1(1994)に詳述されている。蒸留に比較した融解結晶化の主要な利点は、有機化合物の融解エンタルピーが概ね蒸発エンタルピーよりも低いために、極めて少量のエネルギーしか必要としないことである。結晶化エンタルピーは、普通、蒸発エンタルピーよりも低いために、この利点は、また、他の結晶化法についても得られる。更に、蒸留に比較しての融解結晶化の別な利点は、概ねこの方法が低い温度で行なわれることであり、これは、この有機化合物が熱的に不安定である場合に有利である。
【0025】
融解結晶化は、必要ならば、洗浄カラムまたは遠心分離、または別な精製法と組み合わせた結晶化または層結晶化を援用して実施可能である。好適な装置と方法の例は、内容を参照のためにこの明細書に記したKirk−Othmer,「Encyclopedia of Chemical Technology」,fourth edition,Part 7,pages 723−727(1993),J.W.Mullin,「Crystallization」,third revised edition,Butterworth−Heinemann Ltd.,pages309−323(1993)及びJ.Ullrich and B.Kallies,Current Topics in Crystal Growth Research,1(1994)に記述されている。
【0026】
水溶液の結晶化が極めて良好な結果を与えることも判明した。結晶化処理においては、濃縮乳酸溶液は水により希釈され、次に一つあるいはそれ以上の冷却及び/または蒸発結晶化段階にかけられる。これらの手法においては、濃縮物または蒸留物は直接に冷却される(冷却結晶化)か、あるいは水の蒸発により濃縮される(蒸発結晶化)。冷却結晶化法における結晶化の駆動力は、濃縮乳酸溶液の温度を低下させることにより、濃縮乳酸溶液における過飽和を生じさせることである。この溶液の温度を低下させる結果として、溶解度が減少し、過飽和が起こる。
【0027】
蒸発結晶化法における結晶化の駆動力は、水の蒸発により濃縮乳酸溶液において過飽和を生じさせることであり、濃縮乳酸溶液の温度を一定に保つために、これに対して熱を供給しなければならない。結晶化熱はそれぞれ冷却と水の蒸発により有効に除去される。次に、それぞれ冷却と水の蒸発の間にこの乳酸の結晶化が起こる。別な極めて好適な結晶化法は断熱結晶化であり、この場合には、結晶化に対する駆動力は熱を供給せずに水の蒸発により濃縮乳酸溶液における過飽和を生じさせることである。水の蒸発は(a)濃縮乳酸溶液の温度が低下し、そして(b)酸の濃度が増加するという2つの効果を有する。両方の効果は溶解度の減少と過飽和の増加を生じる。
【0028】
結晶化段階は、好ましくは本発明に従って断熱結晶化または冷却結晶化により、特に断熱結晶化により行なわれる。種結晶は好ましくは結晶化中の濃縮乳酸溶液に添加される。この結晶化で溶媒を使用する場合には、溶媒は好ましくは水である。
【0029】
次に、残存液体、または母液から固体−液体を分離するのに知られている方法により晶出するα−ヒドロキシ酸を分離することができる。
【0030】
母液からα−ヒドロキシ酸結晶を分離するのに好適な分離法の例は、遠心分離、デカンテーション、濾過、一つあるいはそれ以上の洗浄カラムによる分離、またはこれらの手法の2つあるいはそれ以上の組み合わせである。本発明の文脈において、遠心分離と一つあるいはそれ以上の洗浄カラムによる分離が特に適切であることが判明した。
【0031】
得られる母液はかなりの量のα−ヒドロキシ酸をなお含有する。それゆえ、最適なプロセス管理には、この母液をプロセスに戻すことが好ましい。
【0032】
この蒸留段階は、α−ヒドロキシ酸の形で計算して少なくとも95重量%の全酸含量、少なくとも80重量%のモノマー形のα−ヒドロキシ酸含量、及び多くとも2重量%の水含量を持つα−ヒドロキシ酸を用いて減圧下で行なわれる。このα−ヒドロキシ酸エナンチオマーの間の比は、適用可能であれば好ましくは1には等しくない。
【0033】
本発明に従った蒸留においては、少なくとも98重量%の、好ましくは少なくとも99重量%の全酸含量を持つα−ヒドロキシ酸が形成され、この場合、α−ヒドロキシ酸は乳酸濃縮物の形で計算して少なくとも95重量%モノマー形のα−ヒドロキシ酸と蒸留残渣を含有する。この蒸留されたα−ヒドロキシ酸は、好ましくは少なくとも98.5重量%のモノマー形のα−ヒドロキシ酸を含有する。このキラル純度は、適用可能な場合には、好ましくは少なくとも90%あるいはそれ以上、更に好ましくは99.5%あるいはそれ以上であり、特に9%あるいはそれ以上である。
【0034】
本発明の文脈においては、「減圧」は、0.1から20ミリバールまでの、特に0.2から10ミリバールまでの範囲の圧力を意味する。減圧下の蒸留時の温度は、好ましくは100ないし200℃、特に110ないし140℃である。
【0035】
このα−ヒドロキシ酸は塔頂生成物として得られるために、高沸点の不純物は減圧下の蒸留により除去される。本発明に従えば、この減圧下の蒸留は、特に短経路蒸留装置を援用して行なわれる。この減圧下の蒸留は、また、0.1ないし20ミリバールの、特に2ないし10ミリバールの圧力で、また100°ないし200℃の温度、特に110°ないし140℃の温度でも実施可能であり、この場合、このα−ヒドロキシ酸は、好ましくは膜蒸発により蒸気相の中に移動され、その後、この蒸気は蒸留カラムに移動される。このプロセスにおいては、2つの留分への分離は還流下で行なわれ、塔頂生成物は少なくとも98重量%の、好ましくは少なくとも99重量%の全酸を含有し、そして残渣は残存砂糖とポリマー形のα−ヒドロキシ酸を含有する。この塔頂生成物は、α−ヒドロキシ酸濃縮物の形で計算して少なくとも95重量%のモノマー形のα−ヒドロキシ酸を含有する。この塔頂生成物は、好ましくは少なくとも99.5重量%のモノマー形のα−ヒドロキシ酸を含有する。この塔頂生成物のキラル純度は、90%あるいはそれ以上、更に好ましくは95%あるいはそれ以上、そして特に99%あるいはそれ以上である。この好まれる態様に従えば、この膜蒸発は、好ましくは1から10までの段数を有する蒸留カラムを持つ塗り付け型膜蒸発、薄膜蒸発及び/または落下型膜蒸発により行なわれる。蒸留段階(a)は、α−ヒドロキシ酸を残存砂糖とポリマー形のα−ヒドロキシ酸などの成分とこの不純なα−ヒドロキシ酸を着色する成分から確実に分離する。これらの成分あるいは不純物はα−ヒドロキシ酸の沸点よりも高い沸点を有する。
【0036】
吸湿性乳酸結晶の凝固が起こるのを防止するために、単離した後、得られるα−ヒドロキシ酸結晶を好適な溶媒、通常、水に直接に溶解する。このように得られるα−ヒドロキシ酸溶液の濃度は、原理的にはいかなる所望の濃度も有する。実際上、これは普通30から95%まで変わる。市場で普通に出回る濃度は80−90%である。
【0037】
本発明は、また、少なくとも99%のキラル純度と10APHA単位以下の色のα−ヒドロキシ酸またはα−ヒドロキシ酸溶液であって、このα−ヒドロキシ酸またはα−ヒドロキシ酸溶液が特に医薬品用途に許容される臭いを有するものにも関する。
α−ヒドロキシ酸溶液の場合には、この溶媒は好ましくは水である。このキラル純度は、適用可能な場合には、好ましくは少なくとも99%、特に少なくとも99.5%であり、これは99%あるいはそれ以上のエナンチオマーの過剰に相当する。最も好ましいのはキラル純度が少なくとも99.8%(すなわち、少なくとも99.6%)であるα−ヒドロキシ酸、またはこの溶液である。
【0038】
このα−ヒドロキシ酸またはα−ヒドロキシ酸溶液は、また、次の条件にも合致する。
□アルコール含量:250ppm以下(アルコールはメタノール、エタノールまたは他のアルコールであり、そのままのアルコールとして、あるいは乳酸エステルの形のものである)
□全窒素:5ppm以下
□全砂糖:100ppm以下
□全ポリサッカライド:100ppm以下
□有機酸(乳酸以外):250ppm以下
臭いに関しては、このα−ヒドロキシ酸またはα−ヒドロキシ酸溶液は、食品における用途に対する相当な改善と従来技術に従った製品よりも高い化学純度を有する。
【0039】
キラルである場合には、本発明に従ったα−ヒドロキシ酸はこの醗酵で使用される微生物に依って、(S)−α−ヒドロキシ酸と(R)−α−ヒドロキシ酸の両方とすることができる。
【0040】
キラル純度が高いために、(S)−α−ヒドロキシ酸と(R)−α−ヒドロキシ酸の両方またはこれらの溶液は、キラル合成に極めて好適に適用可能である。キラル純度の高い(S)−α−ヒドロキシ酸またはこの溶液は、また、医薬製剤における用途にも極めて好適である。
【0041】
それゆえ、本発明は、また、上述の(S)−α−ヒドロキシ酸または(S)−α−ヒドロキシ酸を含有する医薬製剤にも関する。本発明を次の実施例によりここで例示する。
【0042】
(実施例)
次の性質の(S)−乳酸を出発材料として使用する。
【0043】
【表1】
Figure 2004509090
【0044】
第1の結晶化段階においては、2.7リットルの二重壁容器を恒温浴と接続し、そして2045gの上述の出発材料をこの容器の中に入れた。この酸を攪拌しながら40℃まで冷却し、種結晶を含有する0.4gのサスペンションにより接種した。次に、この酸を直線的な冷却プログラムに従って5時間で40°から30℃まで冷却した。生成した結晶は棒の形状であり、そして多数の小粒子が生成した。5時間後、恒温浴の温度は30℃であり、そしてこの酸の結晶サスペンションの温度は31.9℃であった。このサスペンションを遠心分離した(Sieva laboratory centrifuge(Hermle))。831gの結晶と1061gの母液を得た(乳酸の形で計算して46%の収率)。
【0045】
この結晶化からの結晶の一部を水に溶解し(90%溶液)、この溶液を分析した。結果を下記の表に示す。
【0046】
【表2】
Figure 2004509090
【0047】
125gの量の上記で得た結晶をマイクロ波オーブン中で融解し、この液体を短経路蒸留装置(KDL−4)の中に入れた。条件は、油浴温度120℃、フィード速度15ml/分、圧力約1ミリバール、ローター速度250r.p.m.であり、冷却水は水道水であった。
【0048】
94.4gの蒸留物と13.3gの残渣を得た。90%溶液を得るまでこの蒸留物を水により希釈し、この溶液を色について分析した。色(新しい):6APHA、色(加熱後):5APHA。

Claims (9)

  1. α−ヒドロキシ酸を工業的規模で精製する方法であって、10,000APHA単位以下の色の(新鮮な)α−ヒドロキシ酸を(a)結晶化段階にかけ、続いて(b)蒸留段階にかける方法。
  2. 該α−ヒドロキシ酸が乳酸またはグリコール酸である請求項1に記載の方法。
  3. 該α−ヒドロキシ酸が乳酸である請求項2に記載の方法。
  4. 段階(a)が2つの結晶化段階を含んでなる先行する請求項の一つに記載の方法。
  5. 該結晶化段階が一つの装置で行なわれる請求項4に記載の方法。
  6. 段階(a)が冷却結晶化装置、融解結晶化装置、蒸発結晶化装置及び/または断熱結晶化装置で行なわれる先行する請求項の一つに記載の方法。
  7. 段階(a)からの生成物流が固体−液体分離、好ましくは遠心分離により、または一つもしくはそれ以上の洗浄カラムを援用して母液とα−ヒドロキシ酸結晶に分離される先行する請求項の一つに記載の方法。
  8. 段階(b)が一つもしくはそれ以上の落下型膜蒸発装置及び/または薄膜蒸発装置及び/または塗り付け型膜蒸発装置で行なわれる先行する請求項の一つに記載の方法。
  9. 段階(b)が短経路蒸留装置で行なわれる先行する請求項の一つに記載の方法。
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