JP2004507488A - 高分子電解質多層カプセルの制御された持続性の放出特性 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は薬剤をカプセル化および放出するためのマイクロコンテナ(micro container)の透過性を制御する方法、特に高分子電解質多層カプセルの持続放出性の制御に関する。
【0002】
先進的な医薬調製物の開発における重要な課題は、生理活性材料の持続放出を提供するデリバリーシステムを洗練することに取り組んでいる。多くの場合、これらのデリバリーシステムは102〜105nmの範囲の大きさのポリマー粒子からなる。薬剤分子はポリマーマトリックス中またはコア・シェル構造中に埋め込まれている。コア−シェル中での分解速度は生理活性コア材料の放出速度を決定する。
【0003】
原則として、薬剤粒子の表面上にポリマーまたは生体高分子を吸着させることにより[1]、またはモノマーを吸着させ、引き続き界面において重合することにより[2〜4]、活性コアの周囲にシェルを製造することができる。シェルの組成はさらに特定の機能を提供することができる。これはコアと溶剤との相互作用を促進する、または特定の所望の化学的特性を付与するように調節してもよい。シェルは生理活性材料を含有するコアを方向付ける、または操作するために磁気的、光学的、導電性または標的特性を有していてもよい。
【0004】
最近ではポリマーカプセルを構成する新しいタイプのシェル構造が導入された[5〜7]。これらの新規の中空ポリマーカプセルはサブミクロンおよびミクロン範囲の規定のサイズと、調整可能な壁特性を有する[7、13〜15]。これらのカプセルは、コロイド粒子上の高分子電解質のLbL(layer−by−layer)アセンブリに引き続きコロイドコアの除去により製造される。LbLアセンブリは反対電荷を有する種、たとえば高分子電解質をコロイド粒子の表面上に交互に吸着させることにより行う[16、1]。LbL吸着のための駆動力は入ってくるポリマーと表面との間の静電引力である。
【0005】
約60nm〜数十ミクロンの大きさの範囲の種々のコア、たとえば有機もしくは無機材料、生物細胞、薬剤結晶またはエマルション滴が、LbL技術により多層を形成するためのテンプレートとして使用されている。現在までに多種多様な異なった物質、たとえば合成および天然高分子電解質、生体高分子、タンパク質、核酸、磁性および蛍光無機ナノ粒子、リピドなどがコロイド粒子上に多層シェルを形成するための層成分として使用された。シェル壁の厚さはその製造の条件に依存する。ナノメートル範囲で調整することもできる。コロイド粒子上の多層被膜の厚さはたとえば層の数を変更する吸着によりナノメートル範囲で調整することができる。カプセル壁が半透過性の特性を有することが確立された[8、9]。これらは小さい分子、たとえば染料およびイオンに対しては透過性であるが、その一方で高分子量を有する化合物を排除する[17、9]。
【0006】
多種多様な材料が存在し、これらのカプセル化は異なった技術分野での適用のため、たとえば触媒、化粧品、医薬、バイオテクノロジー、栄養学などのために所望されている。
【0007】
カプセルにポリマーを充填するための可能なアプローチの1つは、カプセルを形成しながら所望のポリマーをシェル構造の内層に埋め込み、かつ高分子電解質、たとえば多価イオンを中空シェルの内層からその内部へと脱着することである[18]。次いでこれらのイオンを除去することによりポリマーがカプセル内部へと放出される。
【0008】
もう1つのアプローチはカプセル壁の選択透過性を利用してカプセル内部でポリマーを直接合成することである[19]。カプセルはこれにより首尾よく充填される一方で、これらの方法はポリマーの種類に関して限定的な適用性を有するのみであり、かつコアの溶解または重合のためにしばしば厳しい条件、たとえば低いpH、コアの分解のために使用される酸化剤または有機溶剤、または合成の間に高めた温度を使用しなくてはならない。
【0009】
制御可能な、または調節可能な充填ならびに放出特性を有するシステムを提供することが所望されていた。特にカプセル壁の透過性を変更することにより、材料をカプセルへ充填する、またはカプセルから放出することを可能にする方法が所望されていた。さらに、多くの適用にとってカプセル充填ならびに特殊な環境条件下でのその後の放出のプロセスを制御するために、定義され、かつ制御可能なカプセル壁の透過性が要求される。充填は有利に迅速であるが、しかし放出は多くの適用にとって緩慢であるという事実に基づいて、透過性が切り替え可能であることがさらに所望される。
【0010】
従ってカプセル壁の特性に影響を与え、該特性を変更もしくは切り替えるための方法を提供することが本発明の課題であった。本発明のもう1つの課題は高分子をカプセル内に導入し、かつ該分子に対するカプセルの透過性を切り替え、かつ制御するための手段を提供することであった。
【0011】
これらの課題は、カプセルの製造および使用の間の反応条件を変更することによって高分子電解質多層カプセルの透過性を制御するための方法において、pH、温度、塩濃度、イオン組成、イオン濃度、イオン強度、溶剤組成または溶剤濃度の反応条件の少なくとも1つを変更することを特徴とする方法により解決される。
【0012】
本発明はさらに高分子電解質多層カプセルの透過性を制御するための方法に関し、その際、所望の透過性が得られるように高分子電解質層の数を調節する。
【0013】
本発明によれば高分子電解質多層カプセルの透過性は、カプセルの環境のパラメータ、たとえばカプセルを製造または使用する間の反応条件、カプセルがその中に含有されている媒体またはカプセルがその中へと輸送される媒体により決定、変更および/または制御することができる。高分子量の化合物に対する透過性も低分子量の化合物に対する透過性も、異なった適用における要求に応じて調節できることが判明した。
【0014】
ここで使用される高分子量の化合物または高分子とは、少なくとも30000Da、より有利には少なくとも50000Daおよび最も有利には少なくとも70000Daの分子量を有する分子である。低分子量の化合物または小さい低分子とは10000Daよりも小さい、有利には5000より小さい、および最も有利には1000Daよりも小さい分子量を有する分子である。
【0015】
本発明による透過性の制御は、カプセル内に分子を封入し、かつ該分子を規定の方法で、たとえば延長された期間にわたって、または所望の規定の場所もしくは時点で放出するための独自の手段を提供する。
【0016】
本発明による方法によって、特にカプセルの透過性を可逆的に修正することが可能になる。このことによってカプセルの環境条件を修正することにより簡単な方法で、特に所望の活性物質によってカプセルを充填する、または特にカプセル中に封入された活性物質を放出することがそれぞれ可能になる。従ってたとえば透過性を増大することにより、完成したカプセルを後から活性物質で充填することができる。活性物質がカプセル壁を透過することができるこのような「開放された条件(open condition)」は本発明によれば、カプセルの50%以上、より有利には70%以上、および最も有利には90%以上が透過性である場合に存在する。カプセルを充填した後でたとえば貯蔵または輸送する間に、適切な条件を調節することによって、封入された活性物質に対するカプセル壁の透過性を低減することができるので、活性物質はカプセルから放出されない。しかしカプセルのこのような「閉じられた条件(closed condition)」はさらに同時に、おそらく不所望の物質がカプセル内に入ることを防止する。カプセル壁の透過性を増大することによりそれぞれ所望の放出時間および放出場所で活性の薬剤を規定の方法で、たとえば遅延して放出することができる。さらに所望の組織中で優勢な条件下で、封入された活性物質に対して高い透過性を有するカプセル壁を使用することにより、細胞の特定のコンパートメントまたは有機体の特定の領域での放出を得ることが可能である。
【0017】
本発明により規定の方法で環境条件によってカプセル壁の透過性ひいては高分子の封入および排除を調整することができる。高分子のpH制御された取り込みおよび放出のために、その電荷がpHに依存する高分子電解質からなるカプセルを使用することができる。
【0018】
持続性の薬剤放出のための高分子電解質カプセルの実地での使用は、高分子電解質壁を通過する小さい分子の透過に関する定量的なデータを必要とし、そのデータをここに示す。
【0019】
持続性放出の観点から、小さい極性分子を一度カプセル封入してしまえば該分子の層透過性を低減することができることが有利である。この目標に到達するための1つの可能な方法は、層成分としてリピドを使用することである[9、10]。その際、より厚いカプセル壁の形成は透過性を低減するために有利かつ容易な方法であると詳細に示されている。層の数を増加することによって、カプセル内に封入された材料または分子によるシェルの浸透が低減する。
【0020】
このアプローチを検査するためにフルオレセインマイクロ粒子を異なった数の高分子電解質層で被覆した。フルオレセインのような染料は多種の薬剤のためのモデル物質として考えることができる。その後、pH値の変更によりコアの溶解を開始し、かつバルク中の蛍光の増大により監視した。
【0021】
低分子量の化合物からなるコアの周囲に配置された高分子電解質多層シェルは、コアが溶解する条件下での放出に対してバリア特性をもたらすことが判明した。この発見は、延長され、かつ制御される放出特性を有するシステムを製造するための新規のアプローチである。放出は配置される高分子電解質層の数によって調節することができる。低分子量の化合物に対するカプセル透過性はカプセル中の高分子電解質層の数に著しく依存することが判明した。
【0022】
異なった特性を有する多種多様な合成高分子電解質、リピドおよび多糖類がすでに多層アセンブリのために使用されてきた[9、12]。このことによってシェルの放出特性を調整すると共に、種々のコアを使用する生物学的親和性および可能性を保証する多数の可能性が提供される。LbL技術によるシェルのアセンブリは、物質の制御され、かつ延長された放出が必要とされるバイオテクノロジーの適用のための新たな経路を開く。薬剤の調製、放出およびデリバリー、有機体中での濃度の制御およびその吸収の周期性に関する数多くの問題を、堆積物およびナノ結晶上のシェルの形成により解決することができる。さらに高分子電解質層に標的特性を与えることは困難でない。この方法で特定の、もしくは損傷した組織に対する、高分子電解質多層被覆された薬剤の親和性を増大することができる。
【0023】
以下ではモデル物質としてフルオレセイン(分子量〜350Da)を使用して、より定量的な条件でカプセル壁を形成している層の数と関連させてカプセルの放出特性を論じる。
【0024】
フルオレセインのような分子のシェル壁の透過はその透過率(P)により記載される。式(1)はバルク中のフラックス(J)とシステムのパラメータおよびフルオレセイン濃度の変化の速度Ceを結びつける。この速度が一定の場合、蛍光の増加の傾斜から透過率(P)を容易に計算することができる。(図3のパート2)。
【0025】
【数1】
【0026】
V0が溶液の体積である場合、Jは全表面積Sを有するカプセル壁を通過するフルオレセインフラックスであり、かつ(Ci−Ce)はカプセルの内側の(Ci)および外側の(Ce)のフルオレセイン濃度の差である。
【0027】
固体のフルオレセインのコアがカプセル内に存在する限り、カプセルの内側は25mg/mlの飽和のフルオレセイン溶液Csを含有する。従って式1の右側のプロセスの開始時点での濃度差はCi=Csによって問題なく換算することができる。カプセルは平均直径5μmを有する球形であると想定された。従って透過率は
【0028】
【数2】
【0029】
から計算することができる。
【0030】
8〜18層に関して透過率の値は10− 8m/sのオーダーである。1つの高分子電解質層の厚さが2nmであることを想定して、透過率は透過率とシェル壁の厚さとをかけ算することによって拡散係数(D)へと換算することができる。計算される拡散係数は10− 15m2/sのオーダーである。
【0031】
高分子電解質多層の透過性が絡み合ったポリマーの網状構造を通過する網状構造により生じる場合、これは層の厚さの逆数で調整すべきである。層の数の相関としての厚さ×透過率の挙動は図4に示されている。見て分かるように透過率は層の数が増えると共に、直線的な厚さの増大から予測されるよりもはるかに早く低減する。およそ8層から透過率とシェルの厚さの商は一定となり、その際、透過率がいまや厚さの増大によって制御できる、たとえば拡散を限定する領域が高分子電解質層であることを示す。この発見は、最初の8層の構造がその後に配置される層とは異なっていることを示す初期の観察[11]と一致する。これらのより深い層はより緻密であり、その際、図4で推論することができるような予想拡散係数を五分の一に低減する。
【0032】
透過係数はフルオレセインの放出曲線の第三段階における放出プロファイルからも計算することができる。この段階における放出の時間依存性が指数関数的であることが予測される:
【0033】
【数3】
【0034】
【外1】
【0035】
以下では透過メカニズムをより詳細に議論する。水で満たされた気孔を通過する拡散と、高分子電解質多層シェルの均一な層を通過する「バルク」拡散メカニズムとを区別することができる。より薄い壁に関して、シェルの厚さへの著しい依存性は、さらなる層の堆積により連続的に閉鎖される気孔の存在によって、または厚さに依存する拡散係数によって説明することができる。後者は実際に、10− 18〜10− 20m2/secの典型的なDの値が得られる平坦な高分子電解質膜により調査される透過と共に観察された[11]。我々結果を先行の研究結果とを比較するために、次の相違点に言及する。
【0036】
− [11]に記載された方法によれば膜はそれぞれの吸着段階の後で乾燥することにより製造されたが、これは粒子を被覆する間には不可能であり、かつより緻密な膜につながる。
【0037】
− 測定は染料試料を規定の厚さで膜中へ堆積させ、かつクエンチ剤(quencher)の拡散に基づいた、時間に依存する蛍光の変化を観察することからなっていた。たしかにこのケースに該当する十分に小さい気孔濃度に関して、この技術は「バルク」拡散に対して感受性であるにすぎず、かつ気孔を通過する透過は反映しない。
【0038】
従って透過率データから得られる拡散係数は、[11]で測定された値よりも大きいことが予測される。それでも、3〜4オーダーの大きさの違いはこのことによって説明することができず、従ってこれらはむしろ気孔を通過する拡散に相応する可能性が高い。拡散係数Dと、気孔容積中での拡散に関する上限であるバルク水中での拡散係数D(〜10− 10m2/s)を比較すると、壁内部の気孔容積のフラクションは10− 5よりも大きいことが予測される。
【0039】
次に気孔形成の可能なメカニズムについて扱う。壁の不安定化が予測されうる。というのも、pH値が8に向かって上昇すると、PAHのアミノ基が脱プロトン化され、かつこのことによって多層中に気孔が形成される。気孔形成のもう1つの可能性は、フルオレセインコアの溶解の結果として、内部に浸入する水による浸透圧である。関連する静水圧の差は、壁中に圧力を生じ、この圧力は存在する気孔を拡大するか、または新たな気孔を形成する。図3(パート1)において見られるように、特に層のより大きな番号に関して、溶解の開始時に放出は持続性である。内側から浸透圧がかかる高分子電解質シェルは、フルオレセイン分子がカプセルを出るための経路を作るまでフルオレセインの放出に抵抗することが予測される。気孔は高分子電解質多層のこの再配置の結果として形成される。テンプレートおよび得られるカプセルが異なった直径を有し、かつ不均一な壁厚を有することに注意すべきである。従って拡散係数は平均的であるが、しかしより遅い放出プロファイルを有するより大きなテンプレートがなお存在していてもよい。
【0040】
まとめると、高分子電解質カプセル壁の層の数を増大することによってカプセルの透過率が低下しうることが認められる。遅延された放出のために有利には8以上、より有利には9以上、および最も有利には10以上の層を有するカプセルを使用する。
【0041】
本発明は有利な実施態様では、材料および分子、たとえば高分子、生体高分子、薬剤などを予め形成された中空の高分子電解質カプセル中に封入するための新規の方法に関する。本発明のこの実施態様によれば、材料/分子の周囲にカプセルを形成するよりもむしろ、材料および/または分子を中空カプセル中へ導入することができる。
【0042】
高分子電解質多層の特性および構造は、周囲の媒体の種々の物理的および化学的条件に対して敏感であることが判明した。特にpHはその物理化学的なパラメータの1つであり、これは高分子電解質錯体間の状態[20、21]に、特に錯体中の1つの高分子電解質の電荷がpHに依存する場合に、影響を与える。高分子電解質対、ポリ(スチレンスルホネート)(PSS)および比較的弱いポリカチオンであるポリ(アリルアミンヒドロクロリド)(PAH)は、平坦なコロイド表面上に多層の膜を製造するために最もよく使用されており(1)、かつ本発明を記載するための高分子電解質対の例として使用する。しかし、本発明はこの特定の高分子電解質対に限定されない。
【0043】
異なった高分子電解質を使用することにより、透過率をさらに変更することができる。カチオンポリマーとアニオンポリマーとを組み合わせることによりほぼ無限の変更の可能性が生じる。特性値、たとえば極性およびポリマーの剛性は、化学組成により調節することができ、かつ異なった物質クラスに対して特殊な効果を有する。たとえば極性を低下させることにより、高い疎水性が得られ、このことによって極性の、水溶性物質に対する透過性が低下し、その一方で無極性の、油溶性物質に対する透過性は強化される。
【0044】
さらにカプセルの透過挙動は、使用される高分子電解質の分子量および分岐度により著しく修正することができる。分子量は有利には10000および500000g/モルの間で設定され、その際、一般により大きな分子量および分岐の増大はカプセルの安定性を高め、かつ透過率を低下させる。
【0045】
媒体のpH値を変更することによりマイクロカプセルの壁の透過率を変えることができる。pH誘発される透過率の変化の特殊なメカニズムに結びついていることは意図されていない一方で、pHが変化する際の高分子電解質の荷電の変化は気孔形成を誘発することができる(22)か、または高分子電解質の網状構造を緩め、従ってポリマーの浸透を可能にすることが想定される。pHの変化に付随するイオン濃度の影響は、透過率の変化にも貢献しうる。
【0046】
カプセル壁を開放および閉鎖の状態に切り替えるこの可能性は、分子、特にポリマー、生体高分子およびナノ粒子の取り込みおよび放出を制御するために便利で、効果的な手段である。たとえば低いpH値でカプセルを充填し、かつpHを上昇させた後に材料は内側に封入される。放出のためにふたたびpHをわずかに低下させ、その際、放出の動態はpHにより調整することができる。ここに示した、制御して高分子を高分子電解質カプセル中に充填し、かつ該カプセルから放出する可能性により、広い適用が可能となる。記載した、膜中の高分子電解質網状構造の、pH誘発される透過率の変化は高分子電解質多層の透過率を修正するための一般的なメカニズムであり、かつシェルの特定の組成に限定されない。弱い高分子電解質からなる平坦な高分子電解質膜に関する調査は、気孔がpH値または塩濃度の変更により生じることを示している。
【0047】
高分子電解質、特に弱い高分子電解質からなるカプセルの透過率はpH値に著しく依存することが判明した。カプセルは、カプセル壁を形成している2つの高分子電解質の電荷が代償されているpHで高分子に対して不透過性であるが、弱い高分子電解質が完全に荷電しているpHでカプセルは開放されている。この依存性はpHによりカプセルを開放および閉鎖することによってポリマーをカプセル封入するための機会を与える。開放された状態でAFMにより100〜300nmの大きさの範囲の気孔がカプセル壁中に観察される。pHの変化により気孔を形成するプロセスのもう1つの顕著な特徴は、気孔の形成または透過率の増大が可逆的なことである。
【0048】
反対にカプセルのさらなる透過性は該カプセルを構成している層の数に依存する。これらのファクターを両方使用することにより、低分子の化合物に対しても高分子の化合物に対してもカプセルの放出特性を制御する可能性が与えられる。酸性のpHで安定しているフルオレセイン粒子をコアとして使用することができる。該粒子を異なった数の高分子電解質層で被覆することができる。フルオレセインの溶解および放出の動力学を塩基性のpHで測定した。コアの分解時間はカプセル壁の厚さに著しく依存することが判明した。溶解の間、フルオレセインの持続性放出が観察された。
【0049】
pHおよびカプセル壁の厚さによる透過率の制御は異なった物質をカプセル中に取り込み、かつカプセルから放出することを制御するための新たな方法として提案される。これは高分子電解質カプセルを多くの適用、たとえば薬剤担体、マイクロ反応器などのために使用するための新たな経路を開く。
【0050】
まとめると、pHを上昇させることによりカプセルの透過率を低下させることができ、かつpH値を低下させることによりカプセルの透過率を上昇させることができ、従って、このプロセスは可逆的であるということができる。カプセル壁は特に8より大きいpHで、より有利には10より大きいpHで不透過性(閉じられた状態)であり、その一方で6より小さいpHで、特に4より小さいpHでカプセル壁の透過性(開放された状態)が得られることが判明した。pHの変更は透過性を調整するための簡単な方法であり、かつ周囲の媒体を調節することによりカプセルのための透過性の切り替えを提供することが可能になる。
【0051】
本出願は、塩濃度によりカプセル壁の透過性を制御することによって感受性の高分子を標的に合わせてカプセル封入し、かつ放出するための新規の、簡単かつ極めて緩和な方法を提供する。塩は生きている生物体において著しい重要性を有する。塩濃度は細胞質および細胞外媒体中で細胞膜の透過性、浸透圧およびエネルギーにより運転されるポンプによる能動的輸送によって著しく制御される。血漿中の塩化ナトリウムの生理学的濃度は約0.15Mであり、その他のイオン、たとえばカリウムおよびカルシウムは膜を横断する、および細胞中の信号変換にとって決定的である。
【0052】
中空の高分子電解質カプセル、有利にはPAH/PSSから作られたカプセルの透過性は、0.5〜2×10− 2M/lの狭い濃度範囲で塩濃度を変更することにより開放および閉鎖状態の間で可逆的に切り替えることができる。塩濃度の上昇は50000Daを上回る、有利には70000Daを上回る大きな分子に対するカプセル壁の可逆的な開放につながる。
【0053】
塩濃度の上昇に伴う走査型電子顕微鏡画像における気孔の不在、比較的小さい透過率および壁中でのフェルスター共鳴エネルギー移動の段階的な低下は、高分子電解質間の静電相互作用およびその後のポリマーのより良好な拡散と関連した膨潤が弱くなることを示している。塩により誘発される透過性は、マイクロコンテナおよびナノコンテナ中の特に敏感な高分子、たとえば酵素、タンパク質またはDNAのカプセル封入および放出のための極めて簡単で、重要かつ効果的な方法である。
【0054】
まとめると、塩濃度を上昇させることによってカプセル壁の透過性を増大することができ、その一方で、塩濃度を低下させることにより透過性が低減する(閉鎖された状態)ことが認められる。有利にはカプセル壁は少なくとも2×10− 2M、より有利には少なくとも3×10− 2Mおよび最も有利には少なくとも1×10− 1Mの塩濃度によって透過性になる。カプセルの閉鎖された状態が所望される場合、周囲の条件は最大で5×10− 3M、より有利には最大で1×10− 3Mおよび最も有利には最大で1×10− 4Mの塩濃度に調節される。
【0055】
本発明により適切な塩は、少なくとも1つのアニオンおよび少なくとも1つのカチオンからなる全ての異極化合物である。アニオンおよびカチオンは1つ荷電した、もしくは複数荷電したイオンであってもよい。透過率を調節するために、有利には無機塩、好ましくは金属塩、たとえば金属ハロゲン化物、特にアルカリ金属ハロゲン化物を使用する。特に有利な塩の例はアルカリ金属カチオン、特にLi+、Na+、K+、アルカリ土類金属カチオン、特にMg2+、Ca2+または異なった金属カチオン、たとえばAg3+、鉄イオンなど、およびアニオン、たとえばハロゲン化物のアニオン、または異なった無機アニオンを含有する塩である。金属はその他の正電荷を有する基、たとえばアンモニウム基、スルホニウム基またはホスホニウム基により交換されていてもよい。しかし有機塩、特に有機アニオンを含有する塩を使用することも可能である。
【0056】
塩濃度以外に透過性は環境のイオン濃度およびイオン組成のそれぞれによっても調節することができ、その際、ここでもまたより高いイオン濃度に関して透過性が達成され、その一方で低いイオン濃度に関して不透過性のカプセル壁が得られる。
【0057】
イオン組成は特に特定の役割を果たす。というのも、カプセルの透過性が周囲の媒体のイオンと、高分子電解質シェルの電荷との間の相互作用によって影響されるからである。周囲の媒体のイオン、たとえばカプセルシェルの高分子電解質と錯体を形成するイオンを適切に選択することにより、透過性を調節することができる。
【0058】
塩濃度、イオン組成およびイオン濃度への透過率の依存性は特に有利には、カプセル封入された活性物質を有機体、たとえば哺乳動物および特にヒトに投与することによって使用することができる。従ってカプセルはまず最初に、インビトロで上記の手段によってカプセル壁を活性物質に対して透過性にして、活性物質で充填することができる。次いでカプセル封入された活性物質を、たとえば貯蔵媒体の塩濃度を5×10− 3M未満に調節することによって安定した形で貯蔵することができる。これはたとえば蒸留水、有利には無菌の蒸留水中に貯蔵することによって行うことができる。充填したカプセルの投与は周囲の媒体の調整を伴い、その際、すでに記載したように、血漿中の塩化ナトリウムの生理的濃度は約0.15Mである。この周囲の条件下でカプセルは活性物質に対して透過性であるので、活性物質が標的組織で放出される。
【0059】
本発明は、高分子電解質カプセルが大きなポリマーに対して開放および閉鎖されるが、しかし小さい有機分子に対しても開放および閉鎖され、かつ温度処理により透過性を簡単な方法で制御することができる簡単な方法に関する。
【0060】
薄い高分子電解質壁の透過性を熱により簡単に切り替えられることが判明した。これはおそらく高温でカチオンとアニオンとの結合がより強く分離し、次いで形成された電荷が水和し、かつポリマー鎖が絡み合うことにより壁が一次的に膨潤することによって生じる。このプロセスの可逆性は中空の高分子電解質カプセルを、薬剤のカプセル封入のため、ならびに活性物質の制御されたインテリジェント放出のための大きな高分子、ポリマーまたはナノ粒子で充填するための優れた手段を提供する。たとえば農業では多くの害虫は主として高温で活動的である。このようなカプセルに農薬をカプセル封入することにより高温かつ好天の日にのみ放出することを保証することができる。またはインテリジェント衣類の新しい世代では、著しく発汗した場合にのみ消臭剤が放出される。
【0061】
有利には50℃まで、より有利には40℃までの温度で透過性は低く(閉鎖された状態)、その一方で50℃を上回る温度、特に少なくとも60℃で透過性のカプセル(開放された状態)が得られる。温度を上げることによって簡単な方法で透過性の増大を達成することができる。
【0062】
本発明のもう1つの実施態様では、高分子電解質多層カプセルの透過性を、溶剤組成または溶剤濃度の変更により修正する。従って放出挙動は溶液により調節することができ、その際、溶液としてたとえば極性の溶液、特に水および/または極性の溶液もしくはその混合物を使用することができる。放出挙動を調節するための適切な溶液はアルコール/水混合物であり、その際、アルコール成分、たとえばメタノール、エタノールまたはプロパノールを個々の適用に適合させることができる。
【0063】
さらに高分子電解質多層カプセルの透過性は界面活性剤、たとえばドデシル硫酸ナトリウム(SDS)またはジパルミトイル−DL−α−ホスファチジルコリン(DPPC)を周囲の媒体に添加するか、またはカプセルの製造において使用されるコアのための被覆として使用することによりさらに影響を与えることができる。
【0064】
高分子電解質多層カプセルの透過性は光によっても影響を与えることができる。電解質層中の感光性の基、たとえばアゾ化合物または有機ビスアジドは、光によって化学的に変性することができ、これは光に曝露することによって架橋する感光性組成物を選択する場合、たとえば透過性の増大または透過性の低減につながる。
【0065】
上で説明したように、本発明によればさらなる成分を高分子電解質層に挿入して透過性を広い範囲で変更することが可能である。さらなる成分はたとえば高分子電解質に共有結合していてもよいし、または高分子電解質層中に埋め込まれているのみの独立した分子もしくは粒子であってもよい。さらなる成分は高分子電解質と一緒に、または独立したユニットとして種々の方法、有利にはLbL法、あるいはまた一段法またはその後の拡散を使用して配合することができる。
【0066】
本発明によりその透過性を制御することができるマイクロカプセル、特に中空のマイクロカプセルは、有利には反対電荷の高分子電解質を可溶性のコロイドテンプレート上に交互に堆積させることによって製造することができる。高分子電解質カプセルはたとえばテンプレート、たとえば60nmから、有利には100nmから10μmまで、有利には2μmまでの大きさのテンプレートをポリカチオンおよびポリアニオンの交互の層によって被覆することによって製造することができる[6、7]。十分な厚さの高分子電解質壁を形成した後で、テンプレート粒子を溶解することができ、かつ中空のカプセルが得られる。テンプレートはたとえばpHを変えることにより、またはテンプレートを酸化分解することにより除去することができる。これはカプセル壁が分子量が10000より小さい、有利には5000より小さい、および特に1000より小さい小分子に対して透過性であるが、しかしポリマーに対しては透過性でないという顕著な特性によって可能である。テンプレートはカプセルの大きさと形とを決定する。500nm〜10μmの範囲の単分散性カプセルを製造することができる。適切なカプセルおよびその製造および組成はたとえばWO99/47252、WO99/47253、WO00/03797およびWO00/77281に記載されており、これらの開示内容をここで参照することによって取り入れる。
【0067】
カプセル壁の顕著な特徴は、層の材料および/または数を変えることにより、および/または環境条件、たとえばpH、塩濃度、イオン強度、イオン組成、溶剤濃度、溶剤組成および/または温度を変えることによりその特性を広い範囲で調整できることである。これらのカプセルは薬剤、酵素、DNA、無機塩類、染料、ポリマー、タンパク質および/または活性な高分子のナノスケールのカプセル封入における広い展望を提供する。
【0068】
カプセルは有利には反対電荷の高分子電解質をコロイド粒子の表面上に交互に吸着させることにより製造する。0.06、有利には0.1から10μmまでで変化する大きさを有する異なったコア、たとえば無機コロイド粒子、生物細胞、タンパク質集合体、薬剤ナノ結晶を使用することができる。中空カプセルは引き続きコアを溶解することにより製造することができる。
【0069】
カプセルの透過性は、たとえばバイオテクノロジー、医薬、食料品産業などに関連する種々の範囲におけるその著しい重要性のために本質的に興味深い。
【0070】
本発明を以下の実施例および図面により詳細に記載する:
図1:高分子電解質多層堆積プロセスおよびその後のコアの溶解の図。最初の工程(A〜D)はフルオレセインコア上での段階的なシェルの形成に関する。所望の数の高分子電解質層が堆積した後で、被覆された粒子をpH8にさらし(E)、かつバルクへのフルオレセインの浸透によるコアの溶解が開始され、その結果、最終的にコアは完全に溶解し、かつ中空のカプセルが残留する(F)。
【0071】
図2:経過時間によるフルオレセインの増加。これは異なった厚さのシェルにより被覆されたフルオレセイン粒子の溶解により得られる(9、13、15および18層)。
【0072】
図3:17のPSS/PAH層により被覆されたフルオレセインコアの溶解の3つの段階。
【0073】
図4:層の数の相関としてのフルオレセインの拡散。
【0074】
図5:高分子電解質多層カプセルへのFITC−デキストラン(分子量75000)の透過およびカプセル封入。左側のpH=10、中央のpH=3、右側のpHはpH=3でカプセルにFITC−デキストランを充填した後でpH10に増大させた。バルクFITC−デキストランをpH=10で洗浄することによって除去した。上段は図、中央はカプセルの共焦画像、下段は共焦点画像において示したラインに沿ったフルオレセインプロファイルを示す。
【0075】
図6:共焦点レーザー走査型電子顕微鏡画像:これは次のものを示す:a)0.05MのNaClの存在下に洗浄およびコアの溶解を実施したカプセル;b)それぞれの堆積工程の後に純水で洗浄したカプセル;10− 3MのPAH−Rho溶液中で24時間インキュベーション;c)b)においてと同じ手順であるが、10− 2Mの塩の存在下でのインキュベーション。
【0076】
図7:塩濃度に依存する、第10層のPAH−fluoおよび第12層のPAH−rhoを有するカプセル中でのフェルスター共鳴エネルギー移動効率。該図面はこれらのカプセルの典型的な蛍光スペクトルを示す。励起は495nmに設定した。
【0077】
図8:塩濃度の関数としてのFRET効率の時間に依存する低下。
【0078】
図9a):図9b)に記載のプロトコルに従って5×10− 3MのPAH−rhoで充填したカプセル。カプセル封入されたPAH−rhoの放出後に同じカプセルを3×10− 2Mの塩溶液によって誘発。
【0079】
図10:塩濃度の変更により透過性を切り替えることによってマイクロ分子をカプセル封入および放出する図。
【0080】
図11a):10− 3Mのフルオレセイン−PAH(分子量70000g/モル、ポリマーの排除)の存在下でのカプセルのCLSM画像;b)10− 3Mのローダミン−デキストラン(分子量50000g/モル、蓄積)の存在下でのカプセルのCLSM画像。
【0081】
図12a):23℃で10− 3Mのローダミン−PAH(分子量70000g/モル)の存在下でのカプセルのCLSM画像;b)溶液を60℃で20分加熱し、かつ引き続き水で洗浄した後にカプセル中に封入されたローダミン−PAH。
【0082】
図13:標識されたデキストラン、分子量77000に対する、低いpHおよび高いpHでの8層のPSS−PAHからなるカプセルの透過性。
【0083】
図14:異なった数のPSS−PAH高分子電解質層により被覆されたフルオレセインコアの溶解の特性時間。
【0084】
図15:高分子量の分子の透過。
【0085】
第1表:PAH−rho、5×10− 3Mの溶液で充填したカプセルの百分率。24時間のインキュベーション時間後および異なった塩濃度の存在下。
【0086】
実施例
例1:高分子電解質層の数の変更
材料
高分子電解質。ポリ(スチレンスルホン酸)ナトリウム(Na−PSS、分子量〜70000)、ポリ(アリルアミン塩酸塩)(PAH、分子量〜50000)およびフルオレセイン、ナトリウム塩をAldrichから入手した。エタノール、塩化ナトリウム、硼酸および塩酸をSigmaから購入した。全ての材料をそれ以上精製することなく使用した。
【0087】
全ての実験で使用した水は3段階のMillipore Milli−Q Plus 185精製システムで準備し、かつ18.2MΩよりも高い抵抗率を有していた。
【0088】
方法
エタノール1部およびpH2の塩酸4部を、フルオレセイン15mg/mlの水溶液1部に添加することによりフルオレセイン粒子を準備した。光学顕微鏡により粒径を測定した。450gで遠心分離サイクルを5回繰り返すことによって直径4〜9μmのフルオレセイン粒子を塩酸中で洗浄した。予めコアが分解することを予防するために全てのその後の多層の堆積および洗浄を塩酸中、pH2で実施した。
【0089】
高分子電解質多層アセンブリ。この多層アセンブリは0.5MのNaCl中、10− 2Mのモノマー濃度、pH2で高分子電解質の吸着により行った。反対電荷を有するタイプの高分子電解質を引き続き、フルオレセイン粒子の懸濁液に添加し、次いで塩酸中で遠心分離サイクルを繰り返した[7]。フルオレセイン粒子を15分間、高分子電解質溶液と相互作用させた。フルオレセイン粒子を700gで10分間遠心分離した。穏やかに振とうし、次いで超音波を1分間使用して遠心分離後に粒子を分散させた。
【0090】
蛍光分光分析。コアの溶解はH3BO3−NaCl−NaOH緩衝液中、pH8で行った。動態は522nmでの発光の時間依存性を記録することによって追跡した。励起は488nmに設定した。
【0091】
共焦点顕微鏡分析。ライカ(Leica)の共焦点走査型システムによってコアを溶解した後のカプセルの共焦点画像が得られた。開口数1.4を有する100倍の油浸対物レンズを使用した。
【0092】
図1はフルオレセイン粒子のカプセル封入および放出の図を示す。LbL吸着の後(図1A〜1D)、pHをpH2からPH8に変更することによってコアの溶解を開始し(図1E)、かつ一定の期間の後に完了した(図1F)。
【0093】
フルオレセイン粒子はpH8で迅速に溶解した。考えは、こうして粒子を高分子電解質多層によって被覆することによりコアの溶解速度を遅くするというものであった。異なった数の層からなるシェル壁を製造し、かつそのフルオレセイン透過挙動に関して試験した。蛍光分光分析はコアの溶解速度を決定するために便利な手段である。というのは、コアの蛍光は染料の自己消滅の帰結として完全に抑制されるからである。染料をバルク中へ放出するにあたり蛍光強度が増大する。こうしてコアの溶解速度は試料中の蛍光の増加を測定することによって直接追跡することができる。
【0094】
図2にはpHを8に切り替えることによって得られる典型的な時間依存性の蛍光曲線が示されている。異なった厚さの層(9、13、15および18層)により被覆されたフルオレセイン粒子を、裸のフルオレセイン粒子の溶解を示す対照と比較する。
【0095】
図3に示されているように、比較的短い誘発期間(1)の後で、溶解の速度は一定になり(2)、その後、最終的にバルク中の蛍光は横這いになる(3)。初期のより緩慢な蛍光の増加はコアの溶解の開始と関連する。プロセスのこの段階で高分子電解質多層の構造は、溶解したフルオレセイン分子に由来する発生期の浸透圧により変化することがある。コアの溶解が開始したすぐ後にカプセル中のフルオレセインの濃度は一定で、かつほぼ飽和状態となる。というのも、コアの溶解および透過の進行の間での安定した状態の状況が確立されるからである。さらに、シェルの内部およびバルクとの間での一定の濃度勾配が想定される。というのは、バルク溶液が無限に希釈されることが想定されうるからである。従ってフルオレセインが高分子電解質層を通過してバルクへと浸透する速度は一定となる。実際、蛍光の直線的な増加が観察される(2)。この状態は図1Eに示した溶解の状態に相応する。直線的な領域の勾配は高分子電解質層の数と共に低減する。明らかに吸着された層の数の増加はフルオレセインの浸透を低減する。コアが完全に溶解した後で、シェル内のフルオレセイン濃度はバルクと平衡する。拡散のための駆動力は低減し、かつ放出は横這いになる(3)。
【0096】
図4は層の数の関数としての透過率×厚さの挙動を示している。
【0097】
例2:pHの相関としての透過率
全てフルオレセインイソチオシアネートにより標識されたポリ(スチレンスルホン酸)ナトリウム(Na−PSS、分子量〜70000)、ポリ(アリルアミン塩酸塩)(PAH、分子量〜50000)、デキストラン(分子量〜75000および4000000)およびウシ血清アルブミンをAldrichから入手した。中空の高分子電解質カプセルをpH=7で濾過プロトコルを使用して8層のPSS/PAHを直径5.2μm(microparticles GmbH社、ベルリン)のMF粒子状に交互に吸着させることにより製造した(15)。コアをpH=1で溶解した。引き続き50mMのNaCl中で洗浄した。共焦点レーザー走査型顕微鏡(TCS Leica)を使用して共焦点画像を撮影した。励起波長は488nmであった。カプセルをFITC標識した、濃度1mg/mlのポリマー溶液中に懸濁させた。
【0098】
FITC標識したデキストラン(分子量約75000を有する)のための5.2μmのメラミンホルムアルデヒド(MF)粒子をテンプレートとして使用し、8層のPSS/PAHからなる中空高分子電解質カプセルの排出特性を、pHの相関として調査した。図5(左)は、pH=10でのFITC−デキストランの存在下でのカプセルの共焦点画像を示している。カプセルの内部は暗いままであるが、背景は蛍光発光している。このことは、この条件でカプセル壁がFITC−デキストランに対して透過性でないことを示している。変形したカプセルさえもその内側に蛍光を示さない。しかし、pH=3でカプセルの内部はバルクと同様に蛍光発光する(図5、中央)。これはこの低いpH値でFITC−デキストランのためにカプセルが開放されることによってしか説明できない。
【0099】
比較的低いpHおよび高いpHでそれぞれ「開放」および「閉鎖」された状態はカプセルの90%以上に関して観察されたことを言及しておく必要がある。FITC−デキストランに対して開放された状態は6までのpH値で観察された。pH8からカプセルのほとんどは閉鎖されている。その間のpH値、つまりpH=7では、開放されたカプセルと閉鎖されたカプセルとが同時に存在していた。
【0100】
充填の可能性は図5(右)に記載されており、その際、該カプセルはまずpH=3でFITC−デキストランに曝露される。次いでpH値を10へシフトさせ、かつFITC−デキストランの残りを遠心分離によりバルクから除去する。カプセルが共焦点画像による蛍光プロファイルによって示されているように蛍光材料で充填されたまま残ることは注目すべきである。カプセルの内部は明るく、かつ時間の経過において一定した蛍光が認められる一方で、溶液からの蛍光シグナルは存在しない。
【0101】
pHの変更によりカプセル壁の透過率を変え、ひいてはカプセルの充填を変える類似の実験を分子量2000000のFITC−デキストランおよびFITC標識されたウシ血清アルブミンを使用して実施した。その結果は分子量75000のFITC−デキストランのものと同様であったが、ただし閉鎖状態と開放状態との間の移行のpH値が1〜1.5pH単位で異なっていた。
【0102】
例3:塩濃度によるカプセル壁透過率の制御
2つの異なった種類の高分子電解質カプセルをこの透過率の実験のために使用した。ポリスチレンスルホン酸ナトリウムPSSおよびポリアリルアミンPAHの8つの層を、弱く重合したメラミン−ホルムアルデヒド樹脂からなる直径4.7μmの単分散性テンプレート上に吸着させた。1つのバッチではコアの溶解をpH1で実施し、かつその後の洗浄を0.05MのNaClの存在下で実施した。このプロトコルによりしわのあるカプセルが得られた(図6a)。これらのカプセルを2つの付加的な層で被覆し、かつ引き続きMillipore水(δ<18MΩcm)で洗浄した。この処理の後、カプセルは球形であることが想定される。
【0103】
第二のバッチ中のコアを0.1MのHCl中に溶解し、かつその後、塩の添加を回避するためMillipore水で洗浄した。後者のプロトコルにより球状の形を有するカプセルの均一な集団が得られた(図6b)。2つのタイプのカプセルの透過挙動は類似していた。2つ目の種類のカプセルにより得られた結果を本質的にこの例で報告する。付加的な2つの層を有するカプセルにより得られた顕著に異なった結果が得られる場合にのみ言及する。
【0104】
カプセル壁の透過性を蛍光標識したポリマーのポリスチレンスルホネートPSS(120000g/モル)、ポリアリルアミンPAH(70000g/モル)、デキストラン(55000g/モル)およびヒトのアルブミン(70000g/モル)を使用して調査した。245番目の位置ごとにローダミンBで標識したポリアリルアミンPAHを使用した。フェルスター共鳴エネルギー移動の測定において、120番目の位置ごとにフルオレセインで標識されたポリアリルアミンPAHを使用した。カプセルをそれぞれのポリマー試料の5×10− 3M溶液に添加し、その濃度を常にモノマー単位で表現する。引き続き共焦点画像によりポリマーの透過を追跡した(TCSCN Leica、ドイツ)。カプセルの内側および外側の蛍光分子を定量化した。
【0105】
図6bにおける画像は、カプセルの赤道面の共焦点スキャンを示しており、該カプセルは標識されたポリマー溶液と共に24時間インキュベーションしたものである。カプセルの約90%がポリマーを排除した。ポリマーで充填したカプセルの小数が破損し、かつ大きな穴が観察され、この穴を通過してポリマーはほぼ即座にカプセル内部へと拡散することができたであろう。
【0106】
次いで0.1MのNaClの存在下で類似の実験を実施した。共焦点画像(図6c)は、全てのカプセルの内部がバルク中に存在するのとほぼ同じ濃度のポリマーを含有していることを示している。この発見は塩の存在下でのポリマーに対する高分子電解質壁の透過性の増大と一致する。この「壁の開放」は、プラスおよびマイナスに荷電したポリマーに関しても、ならびに中性のポリマーであるデキストランに関しても観察された。従って高分子電解質試料の構造における、塩により誘発される変化、たとえば変化した種類のらせん化(coiling)は浸透の原因となるメカニズムではあり得ない。むしろ壁中の高分子電解質錯体の構造および特性の、塩により誘発される変化を、透過率における著しい増加の原因であると見なすべきである。この画像から明らかであるように、蛍光試料分子はカプセル壁の内部の表面上または内側に蓄積した。このことは、プラスに荷電したカプセル表面上に吸着していたPSSに関して予測されたが、しかし標識されたPAHに関してカプセル壁中のPAH分子の交換か、または内側のPSS層への吸着が推測されなくてはならない。
【0107】
次いで塩濃度への依存性において透過率を調査した。カプセルを5×10− 3MのPAH−ローダミンと混合し、かつ塩化ナトリウムの濃度を上昇させた。分散液を10分間インキュベーションし、かつ内部のポリマーの量をバルク中のポリマー濃度と比較した。5×10− 3MのNaClまではカプセルへのポリマーの浸透は検出されなかったが、しかしより高い濃度に関して、カプセルは次第にPAH−Rhに対して透過性になった。2×10− 2MのNaClで、PAH−Rhの浸透の時間を経時的な共焦点画像撮影により推定した。塩の添加と、カプセルの内側および外側のポリマー濃度の完全な平衡との間の時間は、8層からなるカプセルに関して約6分であった。20分以内に生じるより遅い浸透を、10層のカプセルに関して測定した。共焦点画像はそれ以上高い濃度における動態を追跡することができなかった。というのは、拡散およびポリマー濃度の平衡が早すぎたからである。
【0108】
ポリマーの浸透を誘発するための塩の最小量は、カプセルをポリマー溶液中、種々のNaCl濃度で24時間インキュベーションすることにより測定した。次いで充填したカプセルの百分率を、共焦点画像中で、そのつど約100個のカプセルに関して充填されたカプセルと空のカプセルの数とを数えることによって決定した(第1表)。10− 2Mの塩溶液において、全てのカプセルが標識されたポリマーを含有していた一方で、0.5×10− 2Mの塩溶液中ではカプセルのわずか16%が24時間以内に充填されたにすぎなかった。さらに低いNaClで、カプセルはポリマーに対して不透過性のままであった。従って高分子に対するカプセルの透過率の増大は、0.5〜2×10− 2Mの比較的狭い範囲の塩濃度内で生じた。
【0109】
さらに、塩を添加した後の透過の速度を制限するプロセスが、カプセル壁中の塩により誘発される構造の変化が壁をより透過性にしていることにより生じるのか、または層を通過してポリマーが拡散することにより生じるのかを試験した。このために、PAH(Mn=70000)の透過を、10− 2Mの塩(NaCl)および5×10− 3PAHを同時に添加した直後に、またはサンプルを10− 2MのNaCl中で12時間インキュベーションし、かつその後はじめてPAHを添加した後に観察した。第二の事例では、特徴的な透過時間は約30分であることが判明し、これはNaClおよびポリマーを同時に添加した場合に観察される約50分の特徴的な透過時間よりも短い。これらの数は2倍、顕著である。これらは、1)観察された条件下でのポリマーの透過は、濃度平衡に関して少なくとも30分を必要として全体的に遅い、および2)塩自体による透過性の誘発は数分を必要とする、ということを示している。
【0110】
カプセル壁を通過するポリマーの透過のメカニズムに関して、2つの極端な状況を区別することができる。塩溶液中でのインキュベーションが壁を通過した水によって充填された気孔の形成につながり、該気孔を横断してポリマーはカプセルの中および外へと拡散することができるか、または溶液中のイオンの存在によりPSSおよびPAHの静電結合が弱くなり、一次的な結合の破壊および再形成によって網状構造を通過してポリマーの拡散が可能になる。pHまたは塩により誘発される気孔の形成は、弱い高分子電解質からなる顕微鏡的に平坦な膜に関して観察された。これらの比較的大きな気孔は102nmのオーダーの半径を有していた。従ってSFMはカプセル分散液をH2O中乾燥させることにより、または0.1MのNaCl中で雲母支持体上に施与することにより製造された高分子電解質カプセルに適用された。しかしいくつかの塩の結晶の存在以外、カプセル壁のトポロジーにおける違いは観察されなかった。この結果は、大きな気孔の形成を透過率の増大の事例として論じる。
【0111】
ポリマーの浸透は水で充填された気孔を通過する拡散により生じると想定すると、見かけの気孔断面積は1000nm2のオーダーである。これは半径17nmの1つの気孔または2nmの80の気孔にそれぞれ匹敵する。いずれの場合でも気孔面積はカプセル表面の極めて小さい面積割合を構成しているにすぎないことに言及するに値する。これらのことを考慮すると、これらの気孔の存在が確実であるとしても、SFMによって該気孔を検出することはほとんど不可能であることが明らかになる。
【0112】
バルク電解質の塩濃度への依存性におけるカプセル壁の形態の変化を発見するために、蛍光標識した高分子電解質の間でフェルスター共鳴エネルギー移動FRETを適用した。カプセルはPSS、PAH−フルオレセイン、PSS、PAH−ローダミン、PSS、PAHの順で6つの高分子電解質層を与えることにより被覆した。ポリマーは0.5MのNaClの存在下で吸着されたが、しかし後から該カプセルを水で十分に洗浄した。異なった濃度のNaCl溶液を添加した5分後にカプセル分散液のFRETを測定した。励起は495nmに設定し、その際、フルオレセインのみが光を吸収した。ローダミン分子がフルオレセインの近く(6nmまで)に位置する場合、共鳴エネルギー移動が行われ、かつローダミンの蛍光も観察することができる(図7、挿入図)。
【0113】
相対移動効率EFRETをEFRET=(Irh−0.4Ifl)/(0.6Ifl+Irh)として定義し、その際、Iflはフルオレセイン発光における最大値に相応する522nmでの蛍光強度であり、かつIrhはローダミン発光に相応する582nmでの強度である。
【0114】
ファクター0.4はアクセプタの発光波長でのドナーの蛍光を考慮に入れる。塩濃度に対するEFRETのプロットは移動効率における明確な低減を示し(図7)、これはまさにカプセル壁がPAHに対して透過性になる濃度範囲で生じる。より高い塩濃度では、EFRETはほぼ一定に保たれる。従って、FRETは10− 2モル/L近辺の狭い塩濃度範囲内で生じる高分子電解質壁のトポロジーにおける顕著な変化を報告すると結論づけることができる。塩濃度によるEFRETの低下はローダミンおよびフルオレセインの染料分子の間の距離が増大することを示唆している。FRET信号は、カプセルがふたたび水に曝露されると、5分以内に完全に回復する。これらの調査結果は高分子電解質層の若干の可逆的な膨潤と明らかに一致する。
【0115】
壁の開放の透過性の増大とFRETの低減との間の相関関係は、透過するポリマーの不在下での、塩により誘発されるカプセル壁の変化の特徴付けを考慮に入れる。後者は壁の特性に若干の影響を与えた、特により顕著な量の透過ポリマーが壁に吸着されたことが考えられる。カプセルを1.5×10− 2MのNaCl中に導入し、かつEFRETを時間への依存性において測定した(図8)。20分後、FRETをEFRET=0.31の値で飽和させた。変化の時間の尺度は共焦点顕微鏡分析により観察される透過率の変化と一致していた。FRET信号の変化の時間および程度はいずれも塩の濃度により増大した壁の構造の変化に関連する。
【0116】
狭い塩濃度範囲で生じる、両方の層の透過率を増大し、かつ蛍光エネルギー移動を低減するメカニズムおよび駆動力を以下に論じる。比較的遅い透過は、水により充填された気孔が透過のための基本的な経路であることが想定される場合、極めて小さい気孔面積を示唆している。その一方で、FRET信号の電荷は標識されたポリマーの大部分に影響を与える構造的な変化を想定するものであると理解することができるのみである。従って塩は層の変化全体を示している。これは小数の気孔の局在した形成を想定することとほぼ一致しない。従って我々は透過率の増大は溶解度の増大または塩濃度の上昇により生じる透過性の種類と層ポリマーとの相互作用の結果であると理解する。
【0117】
より高い塩濃度が層の構造を柔軟にすることが判明した。というのも、バルク中で利用される遊離イオンが層中の電荷を遮閉するために、ポリアニオンおよびポリカチオンの間に見られるイオン対が部分的に開放されるからである。従って層の膨潤はポリマー対の分子の弾性の緩和であると理解することができ、これは層ポリマーのよりいっそうかさ高な配置につながる。10− 2MのNaClでデバイ遮閉距離は、ポリアニオン/ポリカチオン対の層厚さの増分と十分に比較してちょうど3nmであることは言及に値する。より低い電解質濃度で、静電相互作用は、層全体にわたる静電相互作用を生じるより大きな範囲を有する。
【0118】
数多くの適用にとって重要な問題は、透過性の切り替えプロセスの可逆性である。高い塩濃度でカプセルを製造し、かつそれにも関わらず洗浄後に高分子に対して不透過性であるという事実は、カプセルの開放および閉鎖の可逆性を示している。さらなる実験においてカプセル壁を閉鎖する時間を決定する。3×10− 2MのNaCl溶液をカプセルに30分間適用した。その後、純水中で約5×10− 3MのNaClに希釈した。10分後、カプセルは共焦点画像により観察されるようにPAH−ローダミンに対して不透過性になった。FRET信号は5分以内に回復した(図8)。
【0119】
高分子電解質に関する壁透過性の変更の可逆性は、カプセル封入の際に適用されるアグレッシブな物質、溶剤、pHまたは熱により生じる化学的な負荷を回避しながら、高分子、たとえばポリペプチド、DNA、酵素またはポリマーの容易かつ柔軟なカプセル封入を可能にする。しかし高い塩濃度で高分子によりカプセルを充填し、引き続き水で洗浄することにより、内部にカプセル封入されたポリマーは少量得られるにすぎない。おそらく、高分子は閉鎖された壁よりも早く洗い流されるのであろう。
【0120】
しかしより効率の高い充填は、カプセル封入のためのポリマーが、塩の除去により誘発される壁の閉鎖の間にバルク中に存在する場合に達成される(図10)。この方法によりカプセルは5×10− 3MのPAH−Rh溶液により充填される(図9)。PAH−Rh溶液の共焦点画像の蛍光強度を標準とすると、カプセル封入されたポリマーの量を決定することができた。内部のPAH−rho濃度の平均は初期の溶液の約50%であった。
【0121】
負荷されたカプセルのもう1つの重要な特性は、その放出挙動である。負荷されたカプセルを水2ml中または3×10− 2Mの塩溶液2ml中で30分間インキュベーションした。カプセルを遠心分離により試料から除去し、かつ両方の溶液中のPAH−Rhの濃度を蛍光分光分析により測定した。
【0122】
測定を実施する前に塩不含の溶液を後から3×10− 2Mに調整することにより塩濃度へのローダミン発光の依存性を考慮した。
【0123】
純水中に放出されるPAHの量は検出することができなかったが、その一方でほぼ全てのカプセル封入されたPAH−Rhは3×10− 2Mで放出された。共焦点画像は、これらのカプセルの内部がふたたび蛍光ポリマー不含であることを証明した。
【0124】
例4:温度依存性の透過性
弱く重合したメラミン−ホルムアルデヒド樹脂の単分散性の球体(d=5.94μm)をテンプレートとして使用した(Microparticle GmbH社)。粒子は0.1Mの塩化ナトリウム中の10− 2MのPSSの水溶液から、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムPSS(分子量70000g/モル− 1、Aldrich社)およびポリアリルアミン塩酸塩PAH(分子量70000g/モル− 1、Aldrich社)を交互に吸着させることにより被覆した。8層後に0.1Mの塩酸中でコアを溶解した。酸および10− 2MのNaClの水溶液により洗浄することによって分解生成物を除去した。中空の高分子電解質カプセルが残った。溶解の間の機械的負荷により生じたカプセル壁における若干の欠陥を除去するために2つの付加的な層をコアの溶解後にカプセル上に被覆した。その後、Milli−Q−water(抵抗率>18MΩcm− 1)を用いてカプセルを十分に洗浄した(8回)。この手順により塩およびプロトンからの痕跡を本質的に除去し、かつpH値は6になった。
【0125】
透過率の調査のために蛍光標識したポリマーを使用した。PAH(分子量70000、245番目のPAHユニットあたり1つのローダミン分子、および分子量15000、320番目のPAHユニットあたり1つのローダミン)およびPEI(分子量2000、650番目のPEIユニットあたり1つのフルオレセイン分子)をローダミンイソチオシアネートまたはフルオレセインイソチオシアネートとの反応により標識した。スチレンスルホネートとメタクリロイルオキシエチルチオカルバモイルローダミンB(Polyscience)の共重合により、標識したPSS(600番目のポリマーユニットあたり1つのローダミン分子)を合成した。ポリマーの分子量はゲル透過クロマトグラフィーによれば120000g/モルであることが測定された。フルオレセイン標識したヒト血清アルブミン(分子量69000)およびローダミン標識したデキストラン(分子量40000g/モル)をAldrich社から購入した。
【0126】
レーザー走査型顕微鏡分析をカプセルの充填度の測定のために実施した。40倍または100倍の油浸対物レンズを有する逆リサーチ顕微鏡(inverse research microscope)(Leica、ドイツ)を使用した。内部のポリマー/モノマーの量を、カプセル内部の蛍光強度の積分により測定した。正確な濃度を補正曲線から把握し、それぞれの蛍光試料に関して別々に決定した。カプセルに関する透過性の広い分布に基づいて、そのつど5つのカプセルから統計学的値をとった。明らかに破壊されていると認識できたカプセル(約20%)は、測定から除外した。テンプレート依存性の測定は試料の上の手製のアルミニウム装置で行い、これにより温度は電子制御装置により設定した。
【0127】
走査型顕微鏡分析をカプセルに対して適用し、雲母支持体上、空気で乾燥させた。60℃での熱処理後、カプセル溶液の液滴を雲母表面に移し、かつ温度の変化なしで乾燥させることによって乾燥工程を行った。
【0128】
4.1 透過率
カプセルの透過率をプラス(PAH)およびマイナス(PSS)に帯電した、両性イオン性(アルブミン)および電荷を有していない(デキストラン)蛍光ポリマー(デキストラン)に関して調査した。一般にカプセルを、ポリマーユニットに関して約2×10− 3モル/Lの濃度でポリマー試料と混合し、かつ15分間インキュベーションした。次いでカプセルの中心における蛍光強度を共焦点画像により測定した。カプセルの断面内での蛍光事象を積分し、かつバルク溶液中の蛍光事象と比較した。カプセルの外側よりも内側でより低い蛍光強度は、ポリマー試料に対するカプセル壁の不透過性を示している。実験の開始時点でのカプセルの内側および外側の同じ蛍光強度は、カプセル壁を通過するポリマーの迅速な浸透により生じ、これは多くの場合、破壊されたカプセルに関して観察される。以下に記載されるようなデキストランの場合、カプセルの内側の蛍光が内部におけるポリマーの蓄積を示唆するバルク相中におけるよりも高い。
【0129】
第一にポリマー試料のためのカプセル壁の透過率を、熱処理前に調査した。カプセルの大部分は24時間以内に荷電の徴候とは無関係に、60000g/モルを上回る分子量の帯電した高分子電解質に対して不透過性であった。図11aは70000g/モルのPAHに関する共焦点画像を示している。帯電していないデキストランの場合、約20%のカプセルの内側のポリマーの異常な蓄積が観察され(図11b)、その一方でその他のカプセルはポリマーもまた排除する。
【0130】
浸透に対するポリマー鎖の長さのさらなる影響を測定した。1時間以内にカプセルの80%が70000g/モルのPAHに対して不透過性であり、約65%が15000g/モルのPAHに対して不透過性であり、かつPEI2000に関して全てのカプセルが透過性である。小さい染料分子、たとえばフルオレセイン、ローダミンおよびアクリジンオレンジは、その電荷とは無関係にカプセル壁を通過することができる。
【0131】
温度へのカプセル壁の透過性の依存性は、カプセルを室温から80℃まで10℃の段階ごとに共焦点画像によりオンラインで(現場で)追跡した。それぞれの段階で温度を5分間、安定させた。カプセルおよびバルク溶液中でのポリマーの分布における変化はそれぞれのポリマーに関して類似しており、かつカプセルをローダミン標識したPSSの存在下で加熱するために示した。50℃までポリマーはカプセル壁から排除されたが、しかしこれより高い温度ではPSSがカプセル中へ流入し始め、カプセルの内側で平衡またはわずかな過剰さえも達成された。浸透の速度は温度と共にさらに増大した。これは、温度を上げることにより極めて容易に大きなポリマー分子に対してカプセル壁を開放することができることの明らかな証明である。
【0132】
さらに開放が不可逆的なプロセスであるか、または温度を50℃より低く下げることによりカプセル壁をふたたび閉鎖することができるかを試験した。これは、加熱および冷却の時間において逸脱する、異なった温度条件下でポリマーの不在下にカプセルを処理することにより調査した。
【0133】
カプセル壁透過性の増大につながる可能なメカニズムを以下に論じる。膜を通過する拡散は一般に温度と共にポリマー種の高い移動度に基づいて増大するという事実以外に、狭い温度範囲で観察される比較的強い効果は、高分子電解質壁における構造の変化を示す。1つの可能なメカニズムは、pHおよび塩による類似のシステム処理に関して上で記載したような、高分子電解質膜における気孔の開放であるかもしれない。PSS/PAHカプセルはより高い温度で直径において10%以上収縮することが観察された。このようなプロセスの機械的負荷は気孔の形成も生じる可能性がある。このような気孔を発見するために、カプセルを雲母支持体上で乾燥させた後、解像度の高い走査型顕微鏡によってカプセル壁を調査した。3つの試料を60℃に加熱する前、加熱中および加熱後に準備したが、しかしカプセルの直径が低減する以外の顕著な相違は観察されなかった。この実験結果にも関わらず、その後の乾燥プロセスがカプセル構造を著しく変えうるために、気孔の形成は完全に排除することができない。
【0134】
もう1つのメカニズムはポリアニオンとポリカチオンとの間の静電結合が弱くなることである。このことにより膜中の電荷密度が増大し、これはより強力な水和、膨潤および壁を通過するポリマーのより良好な拡散に関わる。14層からなり、そのうち第10層がPAH−フルオレセインであり、第12層がPAH−ローダミンであるカプセル中の共鳴エネルギー移動を調査することにより、このメカニズムを支持することが試みられた。溶液のスペクトルを60℃で20分加熱する前、加熱の間および加熱後に測定した。加熱の前および後のスペクトルはかなり似ているように見え、これは壁構造中でほぼ可逆的な変化を示していた。60℃でのスペクトルは他のスペクトルから著しく逸脱していた。ローダミン蛍光の低減は、それぞれフルオレセインおよびローダミン分子またはポリマー層との間の平均された距離の増大を示唆している。観察されたスペクトル変化の由来としての単純な加熱効果を排除するために、106番目の位置ごとにフルオレセイン分子を有し、かつ345番目の位置ごとにローダミン分子(分子量70000g/モル)を有するPAHポリマーを同じ条件下で調査した。
【0135】
調査結果はカプセル化高分子の独自の可能性を提供する。というのも、カプセル壁の透過性は温度により制御されることが判明したからである。カプセル壁は加熱により開放され、かつ周囲の材料は流入することができる。カプセルが所望の材料で充填されたら、壁は溶液を冷却することによりふたたび閉鎖することができる。その後、外側の残りの材料、たとえばポリマーを洗い流し、かつ封入された高分子はカプセルの内側に残る。カプセル封入は、不透過性のカプセル(図12a)を20分間、60℃に加熱することにより、全ての標識されたポリマーに関して首尾よく行われる。冷却および洗浄後、カプセルは、たとえば図12bに示されているようにポリマーを含有していた。本来のポリマー溶液の蛍光強度の定量的な測定および内部にカプセル封入されたポリマーは、内部に30%のバルク濃度を生じた。使用された両方のポリマー試料、つまり標識されたPSSおよびPAHが透過性の高い可逆性を示す内部に捕捉された。充填したカプセルを1月以上貯蔵する場合でも、ポリマーの損失はわずかであった。この損失は特にPAHが50%を越える場合に顕著であるが、しかしデキストランの場合はゼロであるにすぎなかった。
【0136】
【外2】
【0137】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【図1】
高分子電解質多層堆積プロセスおよびその後のコアの溶解を示す図。
【図2】
経過時間によるフルオレセインの増加を示す図。
【図3】
17のPSS/PAH層により被覆されたフルオレセインコアの溶解の3つの段階を示す図。
【図4】
層の数とフルオレセインの拡散との相関関係を示す図。
【図5】
高分子電解質多層カプセルへのFITC−デキストランの透過およびカプセル封入を示す図。
【図6】
カプセルの共焦点レーザー走査型電子顕微鏡画像を示す図。
【図7】
カプセル中での塩濃度に依存するフェルスター共鳴エネルギー移動効率を示す図。
【図8】
塩濃度の関数として時間に依存するFRET効率の低下を示す図。
【図9】
5×10− 3MのPAH−rhoで充填したカプセルを示す図。
【図10】
塩濃度によるマイクロ分子を封入および放出を示す図。
【図11】
フルオレセイン−PAHの存在下でのカプセル(a)およびローダミン−デキストランの存在下でのカプセル(b)のCLSM画像を示す図。
【図12】
ローダミン−PAHの存在下でのカプセル(a)およびカプセル中に封入されたローダミン−PAH(b)のCLSM画像を示す図。
【図13】
8層のPSS−PAHからなるカプセルの透過性とpHとの関係を示す図。
【図14】
PSS−PAH高分子電解質層の数とフルオレセインコアの溶解の特性時間を示す図。
【図15】
高分子量の分子の透過を示す図。
Claims (11)
- 高分子電解質多層カプセルの透過性を制御するための方法において、pH、温度、光、塩濃度、イオン組成、イオン濃度、イオン強度、溶剤組成または溶剤濃度のパラメータの少なくとも1つを、カプセルの製造、貯蔵および/または使用の間に調節および/または変更することを特徴とする、高分子電解質多層カプセルの透過性の制御方法。
- 高分子電解質多層カプセルの透過性を制御するための方法において、所望の透過性が得られるように高分子電解質層の数および/または化学組成、疎水性、極性、剛性、分子量、層成分、特に高分子電解質の電荷もしくは電荷密度を調節することを特徴とする、高分子電解質多層カプセルの透過性の制御方法。
- 高分子電解質多層カプセルを不透過性にするために少なくとも8のpHを調節する、請求項1記載の方法。
- 高分子電解質多層カプセルを透過性にするために6より低いpHを調節する、請求項1記載の方法。
- 少なくとも2×10− 2Mの塩濃度を調節する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
- 5×10− 3Mより低い塩濃度を調節する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
- 温度を少なくとも50℃に設定する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
- 温度を50℃よりも低く設定する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
- アルコールおよび/または水を含有する溶剤組成物を使用する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
- 高分子電解質層の数が少なくとも8である、請求項2記載の方法。
- リピド、界面活性剤、染料、薬剤分子、ナノ粒子および/または生体高分子、たとえば多糖類、ポリペプチド、核酸を層成分として含む、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
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