JP2004504888A - 拡張性皮膜を有する血管内ステント - Google Patents
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- A61F2310/00592—Coating or prosthesis-covering structure made of ceramics or of ceramic-like compounds
- A61F2310/00598—Coating or prosthesis-covering structure made of compounds based on metal oxides or hydroxides
- A61F2310/0061—Coating made of silicon oxide or hydroxides
Abstract
血管内ステント(26)は生物学的適合性を有する層によって被覆された表面を有している。この層はダイヤモンド状ナノ複合材料を含んでいる。ナノ複合材料は炭素、水素、珪素、および酸素を構成成分として含んでいる。前記層は、高い柔軟性と拡張性を確保するために、150MPaよりも小さい応力を有している。この低応力は比較的多量のSi−O結合を含むことによって得られる。好適な実施例として、ステント(26)の表面の100%をダイヤモンド状ナノ複合材料によって被覆するとよい。この表面の100%被覆は、CAVD蒸着中にステントをワイヤに沿って自在に移動可能となるように取り付けることによって達成される。
Description
【0001】
[発明の分野]
本発明は生物学的適合性を有する層によって被覆された表面を有する血管内ステントに関する。
【0002】
[背景技術]
血管内ステントは業界においてすでに知られている。これらのステントは通常管状である。現在、様々の型式の管状ステントが市販されている。それらの大部分は半径方向に拡張可能なメッシュ式金属網状構造を有している。具体的には、細径ワイヤをメッシュ状に編んだ構造またはスロット式管状ステントと呼ばれる(例えば、レーザによって)切り込まれた反復パターンの穴を有する管壁構造などが挙げられる。コイルステントまたはリングステントと呼ばれる拡張可能な管状スプリング構造を有するステントも知られている。
【0003】
ステントは以下の手順によって動脈内に導入される。まず、シース(鞘)に保護された状態のステントを血管内の損傷部にかけて前進させる。適切な位置にステントを配置した後、シースをステントから取り外す。次いで、ステントをバルーンカテーテルによって半径方向に十分に拡張する。その後、カテーテルを引き抜く。このようなステントは脈管構造に損傷を与えることなくその脈管構造内を通過させるのに十分な柔軟性を有している必要がある。また、ステントは疾患血管部を支持するのに十分な強靭性を有し、かつ径方向に拡張される前に破断または脆弱することなくカテーテルに圧着させるのに十分な耐性を有している必要がある。これらの過酷な要件を満たすために、通常、金属材料がステント材料として選択される。好ましい金属材料として、ステンレス鋼、チタニウム、タンタル、またはニチノール(ニッケルーチタニウム合金)などが挙げられる。
【0004】
しかし、一般的に金属、特にステンレス鋼は血栓形成、すなわち、金属ステントに血液が溜まって血栓を形成する傾向にある。また、金属ステントは血管内膜(血管細胞)の異常増殖を引き起こす。これらが従来のステントの表面に生物学的適合性を有する層が設けられる理由の1つである。
【0005】
本出願人による国際出願番号WO−A−99/62572は、表面の大部分がダイヤモンド状ナノ複合材料を含む生物学的適合性を有する層によって被覆された血管内ステントを開示している。
【0006】
この血管内ステントは血栓形成および血管内膜の異常増殖をかなり低減させることができるが、ステントを拡張させる前に前述したようにバルーンカテーテルに圧着させた後、ステントの表面に金属が依然として露出している。その結果、露出した金属と組織との間で好ましくない反応が生じるおそれがある。
【0007】
[発明の要約]
本発明の目的はより高い柔軟性と拡張性を有する層によって被覆されたステントを提供することにある。また、本発明の他の目的は100%の被覆率で被覆されたステントを提供することにある。
【0008】
本発明は生物学的適合性を有する層によって被覆された表面を有する血管内ステントを提供することを特徴とする。この層はダイヤモンド状ナノ複合材料を含んでいる。ナノ複合材料は炭素、水素、珪素、および酸素を構成成分として含んでいる。前記層は、カテーテルへの圧着後およびカテーテルからの拡張後においても十分な拡張性と柔軟性を確保するために、150MPa、好ましくは、120MPa、さらに好ましくは、100MPaよりも小さい応力を有している。
【0009】
ナノ複合材料は、好ましくは、a−C:H網目構造にa−Si:O網目構造が相互貫入した構造を有しているとよい。
【0010】
珪素の含有量は、好ましくは、10ないし40%の範囲内にあるとよい。また、酸素の含有量は、好ましくは、8ないし40%の範囲内にあるとよい。
【0011】
前記層は、好ましくは、プラズマ支援化学蒸着(PACVD)法によって形成するとよい。具体的には、シロキサン前駆体を蒸発させ、真空室に導き、その蒸気を解離し、イオン化させる。このシロキサン前駆体によって、前記層内の構成成分である炭素、水素、珪素、および酸素が得られる。好ましくは、シロキサン前駆体はヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、およびテトラメチルジシロキサンからなる群から選択されるとよい。これらの前駆体の蒸気に酸素が加わることによって、蒸着されたナノ複合材料内に大量のSi−O結合を含ませることができ、その結果、前記層の応力を低減し、柔軟性と拡張性をもたらすことができる。
【0012】
本発明の好適な一実施態様として、前記層はその表面の100%がナノ複合材料によって被覆されるとよい。最も好ましくは、前記層は50ナノメートル(nm)の最小厚みを有しているとよい。このような100%の被覆は、後述するように、PACVD法による処理の間、ステントを特定の方法で取り付けることによって達成される。
【0013】
柔軟性と拡張性を高めると共に表面を100%被覆することによって、ステントが機械的に変形した場合に前記層に割れまたは剥落を生じる可能性を実質的に低減させ、また金属イオンが前記層から浸出して組織との間で好ましくない反応を生じる可能性を実質的に低減させることができる。
【0014】
以下、本発明を添付の図面に基づいてさらに詳細に説明する。
【0015】
[発明の好適な実施例の説明]
図1は本発明によるステントを被覆するためのPACVD法を実施するのに必要な主な構成要素を示している。10は真空蒸着室、12はプラズマ生成室、14はシロキサン蒸気の入口、16は抵抗加熱タングステン電極、17は真空ポンプバルブ、および18は回転プラテン(取付け板)を示している。ロッド(ポスト)20がプラテン18に固定されている。ロッド20はネジ付きナット22を備えている。ネジ付きナット22は約0.13mmの径を有するステンレス鋼ワイヤ24を締付けている。ステンレス鋼ワイヤ24とプラテン18間の距離は約3cmである。多数のステント26がステンレス鋼ワイヤ24から吊るされている。このように、多数のステント26を1本のステンレス鋼ワイヤ24と各ステント26の両端に配置されるロッド20の対を用いることによって被覆することができる。
【0016】
シロキサン前駆体を真空室の外で蒸発させ、そのシロキサン蒸気を入口14から真空室10に導く。アルゴンイオンをステント26に衝突させながら解離されたイオンと活性種をステント26に蒸着させ、非晶質のダイヤモンド状ナノ複合層を形成する。膜を蒸着させる前に、ステント26に低周波RFのバイアスを付加することによって、ステント26の各部に対して低エネルギーのアルゴンによるプラズマ洗浄を行う。このプラズマ洗浄は付着性を改善するために行う。炭素膜の蒸着中は、RFバイアスの付加を停止する。代表的な蒸着パラメータは以下の通りである。
真空圧:8×10−4〜30×10−4トル
RFバイアス:0〜100V
蒸着速度:10〜15分
前駆体の種類:ヘキサメチルジシロキサン(本発明)
2、3、4トリフェニル−ナノメチル−ペンタシロキサン(従来技術)
シロキサン液の流速:0.05〜0.13g/分
アルゴンの流速:12〜21sccm
【0017】
プラテン18は約7回転/分の速度で回転する。その回転に伴って、ステント26は蒸着中にステンレス鋼ワイヤ24の軸に沿って自在に移動することができる。その結果、ステント26は静止位置に保持されることがないので、ステント26の表面が100%被覆される。
【0018】
さらに広い観点から、ステント26が定位置に静的に保持されない限り、どのような蒸着方法であってもよい。このような蒸着方法は、例えば、ステントを蒸着のある期間中は所定の点に固定し、蒸着の他の期間中は他の所定の点に固定することによって実現することができる。
【0019】
ステント26の表面のすべてが被覆されたかどうか(100%の被覆率が達成されたかどうか)を判定するために、光学的顕微鏡を用いて表面が呈色したかどうかを測定した。呈色は皮膜の存在を示す指標である。図1に示される上記の蒸着方法によって処理されたステントの径方向における内側の面と外側の面に呈色が認められた。これは、蒸着中、金属ステント26の網目がステントの内側へのプラズマの進入を遮るいわゆるファラディー・スクリーンを形成し、半径方向内側の面の被覆を遮るという従来の示唆と対照をなすものである。
【0020】
蒸着層の柔軟性を試験するために、バルーンカテーテルを用いてステントを1.5mm径から2.5mm径に拡張した。この試験は被覆されたステントが動脈内に挿入されるときの条件をシュミレーションしたものである。走査型電子顕微鏡を用いてステントの拡張の前後における皮膜の割れまたは層間剥離について観察した。
【0021】
[従来技術]
ペンタシロキサン前駆体を用いて、0から100Vの範囲のRFバイアスを付加し、ステントを被覆した。この従来技術によるステントの場合、ペンタシロキサン前駆体を用いて種々の蒸着条件下で蒸着した皮膜は、ステントが拡張した後、多量の剥落と層間剥離が容易に認められた。この剥落と層間剥離は金属イオンの浸出をもたらすおそれがあり、また、血栓形成と血管内膜の異常増殖をもたらすおそれがある。
蒸着されたダイヤモンド状カーボンナノ複合層の性質をステントの蒸着と同一の蒸着がなされるように制御された試験片を用いて測定した。表1は測定値の範囲を示している。厚みは、蒸着中、ステントと同じ高さに配置した平らな証拠試験片を用いて行った。硬度測定は証拠試験片に対してナノインデンテーション法(超微小荷重による硬度測定法)を用いて行った。応力測定はストーニー法を用いて珪素ウエハ上で行った。この方法は(G.G.ストーニー「電気分解による金属堆積膜の張力」、ロンドン王立協会予稿集、A82、1909、172〜175ページ」に開示されている。
【0022】
【表1】
【0023】
[本発明]
ペンタシロキサン前駆体よりも多数のSi−O結合を有する前駆体を用いた場合、Si−O結合が多くなったためにより柔軟な膜が得られた、と本発明者らは考えている。その理由は炭素基硬質膜内におけるSi−O含有量が多くなることによって膜の応力を低下させることができるためである。この低応力は拡張性および柔軟性を有する膜の作製に必須の要件であると考えられる。ヘキサメチルジシロキサン前駆体を用いることによって、Si−Oの含有量のより高い膜を得ることができる。硬度、厚み、および膜応力のような膜性質は、ステントの蒸着と同一の蒸着がなされるように制御された試験片を用いて行った。表2は本発明による特定の皮膜に対する測定値を示している。
【0024】
【表2】
【0025】
ヘキサメチルジシロキサン前駆体のみならず、オクタメチルシクロテトラシロキサンやテトラメチルジシロキサンのような他の前駆体を用いてもよい。PACVDプロセス中にこれらの蒸気にO2が添加されることによって、Si−O結合の量を多くすることができる。
【0026】
特定の皮膜パラメータとステントを取り付ける技術を用いることによって、柔軟性のある皮膜によってステントを完全に被覆させることができる。従来のダイヤモンド状炭素膜に対するこれらの炭素基膜の利点は、大量のSi−O結合を含むことによって、皮膜の柔軟性と拡張性を改善し、応力を低下させることができる点にある。これらの特性によって、ステントがほぼ100%拡張しても、ステントへの皮膜の密着性は良好である。蒸着条件を最適化することによって、ステントまたは他の関連する生物医学用途に適用できる硬質かつ低応力の膜を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるステントを被覆するためのPACVD法の詳細を示す上面図である。
[発明の分野]
本発明は生物学的適合性を有する層によって被覆された表面を有する血管内ステントに関する。
【0002】
[背景技術]
血管内ステントは業界においてすでに知られている。これらのステントは通常管状である。現在、様々の型式の管状ステントが市販されている。それらの大部分は半径方向に拡張可能なメッシュ式金属網状構造を有している。具体的には、細径ワイヤをメッシュ状に編んだ構造またはスロット式管状ステントと呼ばれる(例えば、レーザによって)切り込まれた反復パターンの穴を有する管壁構造などが挙げられる。コイルステントまたはリングステントと呼ばれる拡張可能な管状スプリング構造を有するステントも知られている。
【0003】
ステントは以下の手順によって動脈内に導入される。まず、シース(鞘)に保護された状態のステントを血管内の損傷部にかけて前進させる。適切な位置にステントを配置した後、シースをステントから取り外す。次いで、ステントをバルーンカテーテルによって半径方向に十分に拡張する。その後、カテーテルを引き抜く。このようなステントは脈管構造に損傷を与えることなくその脈管構造内を通過させるのに十分な柔軟性を有している必要がある。また、ステントは疾患血管部を支持するのに十分な強靭性を有し、かつ径方向に拡張される前に破断または脆弱することなくカテーテルに圧着させるのに十分な耐性を有している必要がある。これらの過酷な要件を満たすために、通常、金属材料がステント材料として選択される。好ましい金属材料として、ステンレス鋼、チタニウム、タンタル、またはニチノール(ニッケルーチタニウム合金)などが挙げられる。
【0004】
しかし、一般的に金属、特にステンレス鋼は血栓形成、すなわち、金属ステントに血液が溜まって血栓を形成する傾向にある。また、金属ステントは血管内膜(血管細胞)の異常増殖を引き起こす。これらが従来のステントの表面に生物学的適合性を有する層が設けられる理由の1つである。
【0005】
本出願人による国際出願番号WO−A−99/62572は、表面の大部分がダイヤモンド状ナノ複合材料を含む生物学的適合性を有する層によって被覆された血管内ステントを開示している。
【0006】
この血管内ステントは血栓形成および血管内膜の異常増殖をかなり低減させることができるが、ステントを拡張させる前に前述したようにバルーンカテーテルに圧着させた後、ステントの表面に金属が依然として露出している。その結果、露出した金属と組織との間で好ましくない反応が生じるおそれがある。
【0007】
[発明の要約]
本発明の目的はより高い柔軟性と拡張性を有する層によって被覆されたステントを提供することにある。また、本発明の他の目的は100%の被覆率で被覆されたステントを提供することにある。
【0008】
本発明は生物学的適合性を有する層によって被覆された表面を有する血管内ステントを提供することを特徴とする。この層はダイヤモンド状ナノ複合材料を含んでいる。ナノ複合材料は炭素、水素、珪素、および酸素を構成成分として含んでいる。前記層は、カテーテルへの圧着後およびカテーテルからの拡張後においても十分な拡張性と柔軟性を確保するために、150MPa、好ましくは、120MPa、さらに好ましくは、100MPaよりも小さい応力を有している。
【0009】
ナノ複合材料は、好ましくは、a−C:H網目構造にa−Si:O網目構造が相互貫入した構造を有しているとよい。
【0010】
珪素の含有量は、好ましくは、10ないし40%の範囲内にあるとよい。また、酸素の含有量は、好ましくは、8ないし40%の範囲内にあるとよい。
【0011】
前記層は、好ましくは、プラズマ支援化学蒸着(PACVD)法によって形成するとよい。具体的には、シロキサン前駆体を蒸発させ、真空室に導き、その蒸気を解離し、イオン化させる。このシロキサン前駆体によって、前記層内の構成成分である炭素、水素、珪素、および酸素が得られる。好ましくは、シロキサン前駆体はヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、およびテトラメチルジシロキサンからなる群から選択されるとよい。これらの前駆体の蒸気に酸素が加わることによって、蒸着されたナノ複合材料内に大量のSi−O結合を含ませることができ、その結果、前記層の応力を低減し、柔軟性と拡張性をもたらすことができる。
【0012】
本発明の好適な一実施態様として、前記層はその表面の100%がナノ複合材料によって被覆されるとよい。最も好ましくは、前記層は50ナノメートル(nm)の最小厚みを有しているとよい。このような100%の被覆は、後述するように、PACVD法による処理の間、ステントを特定の方法で取り付けることによって達成される。
【0013】
柔軟性と拡張性を高めると共に表面を100%被覆することによって、ステントが機械的に変形した場合に前記層に割れまたは剥落を生じる可能性を実質的に低減させ、また金属イオンが前記層から浸出して組織との間で好ましくない反応を生じる可能性を実質的に低減させることができる。
【0014】
以下、本発明を添付の図面に基づいてさらに詳細に説明する。
【0015】
[発明の好適な実施例の説明]
図1は本発明によるステントを被覆するためのPACVD法を実施するのに必要な主な構成要素を示している。10は真空蒸着室、12はプラズマ生成室、14はシロキサン蒸気の入口、16は抵抗加熱タングステン電極、17は真空ポンプバルブ、および18は回転プラテン(取付け板)を示している。ロッド(ポスト)20がプラテン18に固定されている。ロッド20はネジ付きナット22を備えている。ネジ付きナット22は約0.13mmの径を有するステンレス鋼ワイヤ24を締付けている。ステンレス鋼ワイヤ24とプラテン18間の距離は約3cmである。多数のステント26がステンレス鋼ワイヤ24から吊るされている。このように、多数のステント26を1本のステンレス鋼ワイヤ24と各ステント26の両端に配置されるロッド20の対を用いることによって被覆することができる。
【0016】
シロキサン前駆体を真空室の外で蒸発させ、そのシロキサン蒸気を入口14から真空室10に導く。アルゴンイオンをステント26に衝突させながら解離されたイオンと活性種をステント26に蒸着させ、非晶質のダイヤモンド状ナノ複合層を形成する。膜を蒸着させる前に、ステント26に低周波RFのバイアスを付加することによって、ステント26の各部に対して低エネルギーのアルゴンによるプラズマ洗浄を行う。このプラズマ洗浄は付着性を改善するために行う。炭素膜の蒸着中は、RFバイアスの付加を停止する。代表的な蒸着パラメータは以下の通りである。
真空圧:8×10−4〜30×10−4トル
RFバイアス:0〜100V
蒸着速度:10〜15分
前駆体の種類:ヘキサメチルジシロキサン(本発明)
2、3、4トリフェニル−ナノメチル−ペンタシロキサン(従来技術)
シロキサン液の流速:0.05〜0.13g/分
アルゴンの流速:12〜21sccm
【0017】
プラテン18は約7回転/分の速度で回転する。その回転に伴って、ステント26は蒸着中にステンレス鋼ワイヤ24の軸に沿って自在に移動することができる。その結果、ステント26は静止位置に保持されることがないので、ステント26の表面が100%被覆される。
【0018】
さらに広い観点から、ステント26が定位置に静的に保持されない限り、どのような蒸着方法であってもよい。このような蒸着方法は、例えば、ステントを蒸着のある期間中は所定の点に固定し、蒸着の他の期間中は他の所定の点に固定することによって実現することができる。
【0019】
ステント26の表面のすべてが被覆されたかどうか(100%の被覆率が達成されたかどうか)を判定するために、光学的顕微鏡を用いて表面が呈色したかどうかを測定した。呈色は皮膜の存在を示す指標である。図1に示される上記の蒸着方法によって処理されたステントの径方向における内側の面と外側の面に呈色が認められた。これは、蒸着中、金属ステント26の網目がステントの内側へのプラズマの進入を遮るいわゆるファラディー・スクリーンを形成し、半径方向内側の面の被覆を遮るという従来の示唆と対照をなすものである。
【0020】
蒸着層の柔軟性を試験するために、バルーンカテーテルを用いてステントを1.5mm径から2.5mm径に拡張した。この試験は被覆されたステントが動脈内に挿入されるときの条件をシュミレーションしたものである。走査型電子顕微鏡を用いてステントの拡張の前後における皮膜の割れまたは層間剥離について観察した。
【0021】
[従来技術]
ペンタシロキサン前駆体を用いて、0から100Vの範囲のRFバイアスを付加し、ステントを被覆した。この従来技術によるステントの場合、ペンタシロキサン前駆体を用いて種々の蒸着条件下で蒸着した皮膜は、ステントが拡張した後、多量の剥落と層間剥離が容易に認められた。この剥落と層間剥離は金属イオンの浸出をもたらすおそれがあり、また、血栓形成と血管内膜の異常増殖をもたらすおそれがある。
蒸着されたダイヤモンド状カーボンナノ複合層の性質をステントの蒸着と同一の蒸着がなされるように制御された試験片を用いて測定した。表1は測定値の範囲を示している。厚みは、蒸着中、ステントと同じ高さに配置した平らな証拠試験片を用いて行った。硬度測定は証拠試験片に対してナノインデンテーション法(超微小荷重による硬度測定法)を用いて行った。応力測定はストーニー法を用いて珪素ウエハ上で行った。この方法は(G.G.ストーニー「電気分解による金属堆積膜の張力」、ロンドン王立協会予稿集、A82、1909、172〜175ページ」に開示されている。
【0022】
【表1】
【0023】
[本発明]
ペンタシロキサン前駆体よりも多数のSi−O結合を有する前駆体を用いた場合、Si−O結合が多くなったためにより柔軟な膜が得られた、と本発明者らは考えている。その理由は炭素基硬質膜内におけるSi−O含有量が多くなることによって膜の応力を低下させることができるためである。この低応力は拡張性および柔軟性を有する膜の作製に必須の要件であると考えられる。ヘキサメチルジシロキサン前駆体を用いることによって、Si−Oの含有量のより高い膜を得ることができる。硬度、厚み、および膜応力のような膜性質は、ステントの蒸着と同一の蒸着がなされるように制御された試験片を用いて行った。表2は本発明による特定の皮膜に対する測定値を示している。
【0024】
【表2】
【0025】
ヘキサメチルジシロキサン前駆体のみならず、オクタメチルシクロテトラシロキサンやテトラメチルジシロキサンのような他の前駆体を用いてもよい。PACVDプロセス中にこれらの蒸気にO2が添加されることによって、Si−O結合の量を多くすることができる。
【0026】
特定の皮膜パラメータとステントを取り付ける技術を用いることによって、柔軟性のある皮膜によってステントを完全に被覆させることができる。従来のダイヤモンド状炭素膜に対するこれらの炭素基膜の利点は、大量のSi−O結合を含むことによって、皮膜の柔軟性と拡張性を改善し、応力を低下させることができる点にある。これらの特性によって、ステントがほぼ100%拡張しても、ステントへの皮膜の密着性は良好である。蒸着条件を最適化することによって、ステントまたは他の関連する生物医学用途に適用できる硬質かつ低応力の膜を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるステントを被覆するためのPACVD法の詳細を示す上面図である。
Claims (8)
- 生物学的適合性を有する層によって被覆された表面を有する血管内ステントにおいて、前記層はダイヤモンド状ナノ複合材料を含み、前記ナノ複合材料は炭素、水素、珪素、および酸素を構成成分として含み、前記層は十分な拡張性を確保するために150MPaよりも小さい応力を有する血管内ステント。
- 前記応力は100MPaよりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のステント。
- 前記ナノ化合物はa−C:H網目構造とa−Si:O網目構造が相互貫入された構造からなる請求項1または2に記載のステント。
- 10ないし40%の範囲内の珪素が含まれている請求項1〜3のいずれか1つに記載のステント。
- 8ないし40%の範囲内の酸素が含まれている請求項1〜4のいずれか1つに記載のステント。
- 構成成分である炭素、水素、珪素、および酸素は前駆体の分解によって得られ、前記前駆体はヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、およびテトラメチルジシロキサンからなる群から選択される請求項1〜5のいずれか1つに記載のステント。
- 前記層は前記ステントの表面を100%被覆している請求項1〜6のいずれか1つに記載のステント。
- 前記層は50nmの最小厚みを有している請求項7に記載のステント。
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