JP5138127B2 - 体内埋め込み医療器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ステント、カテーテル、人工血管、人工臓器のポンプなどの各種の体内埋め込み医療器に関する。
【0002】
【従来の技術】
体内埋め込み医療器としては、ステント、カテーテル、人工血管、人工臓器のポンプなどがあり、これらは抗血栓性に優れていることが要求される。以下においては、これらの体内埋め込み医療器のうちステントを例にして説明する。
【0003】
ステントは血管あるいは他の管腔の部分を開いた状態に維持するための管形状の装置であり、例えば血管などの狭窄部の改善に用いられる。ステントは、機能及び留置方法によってセルフエクスパンダブルステントとバルーンエクスパンダブルステントに区別される。バルーンエクスパンダブルステントは、ステント自体に拡張機能はなく、ステントを目的部位に挿入した後、ステント内に配置したバルーンを拡張させ、バルーンの拡張力によりステントを目的部位のほぼ正常な管径まで拡大(塑性変形)させ、目的部位の内面に密着状態で固定する。
【0004】
ステントは生体適合性および血液に対する抗血栓性を有することが重要である。そこで、ステントの表面を抗血栓性を有する材料で被覆することが一般的に実施されている。このような抗血栓性被覆として、例えばダイヤモンドライクカーボン(DLC)と呼ばれる非晶質のカーボン膜が着目されている。DLC膜はダイヤモンドに近い物性を有し、抗血栓性だけでなく、耐薬品性、耐摩耗性、絶縁性等に優れているとされている。DLC膜は、各種のPVD(物理的蒸着法)またはCVD(化学的蒸着法)によって成膜される。特に、量産方法として多用されているのは、イオン化蒸着法と高周波プラズマCVD法である。
【0005】
しかし、従来の医療器の表面を被覆するために用いられているDLC膜は必ずしも抗血栓性に優れているとはいえず、さらに抗血栓性に優れた被覆層が要望されていた。また、DLC膜は基材との密着性が低いため、例えばステント基材が拡張して塑性変形するとステント基材から剥離しやすいという問題が生じていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、抗血栓性に優れ、しかも基材から剥離しにくい被覆層を設けた体内埋め込み医療器を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の体内埋め込み医療器は、医療器本体の表面の少なくとも一部を、原子比(F/F+C+H)が60%以上であるフッ素含有ダイヤモンドライクカーボン膜で被覆したことを特徴とする。
【0008】
本発明の体内埋め込み医療器においては、膜厚方向に沿ってフッ素含有量が変化するようにフッ素含有ダイヤモンドライクカーボン膜を成膜してもよい。また、フッ素を含まないダイヤモンドライクカーボン膜を介してフッ素含有ダイヤモンドライクカーボン膜を成膜してもよい。
【0009】
本発明の体内埋め込み医療器においては、フッ素含有ダイヤモンドライクカーボン膜の密着性を向上するために、医療器本体とフッ素含有ダイヤモンドライクカーボン膜との間に中間層を設けてもよい。中間層は、シリコン(Si)、シリコンカーバイド(SiC)、酸化チタン(TiO2)および窒化チタン(TiN)からなる群より選択される材料で構成することが好ましい。
【0010】
本発明において、フッ素含有ダイヤモンドライクカーボン膜の膜厚は0.01〜2μmであることが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の体内埋め込み医療器についてより詳細に説明する。以下においては、体内埋め込み医療器の代表としてステントを例にして説明する。
【0012】
図1は本発明に係るステントの断面図である。図1のステント10は、ステント基材11と、ステント基材11の表面を被覆するフッ素含有ダイヤモンドライクカーボン膜(以下、F−DLC膜という)12を有する。
【0013】
ステント基材11の材質としては、ある程度の生体適合性を有するものが好ましい。例えば、ステンレス鋼、タンタルもしくはタンタル合金、プラチナもしくはプラチナ合金、金もしくは金合金、またはコバルトベース合金などが用いられる。ステンレス鋼としては、最も耐食性の良好なSUS316Lが好適である。
【0014】
F−DLC膜12は膜厚方向に沿ってフッ素含有量が変化していてもよい。また、F−DLC膜12は、フッ素を含まないダイヤモンドライクカーボン膜を介して形成されていてもよい。このような構成により、膜質を改善できる。
【0015】
図2は本発明に係る他のステントの断面図である。図2のステント10は、ステント基材11と、中間層13と、ステント基材11の表面を被覆するF−DLC膜12とを有する。中間層13としては、Si、SiC、TiO2、TiNなどの材料が用いられる。また、中間層13に造影性を上げるための金属を含有させてもよい。
【0016】
本発明において、F−DLC膜12として、原子比(F/F+C+H)が60%以上であるものが用いられる。この原子比はX線光電子分光法(XPS)により求めることができる。F−DLC膜は、フッ素含有率が高いほど撥水性したがって抗血栓性に優れている。また、F−DLC膜は、フッ素含有率が高いほど柔軟性に富んでおり、例えばステントを拡張したときにも剥離しにくくなる。F−DLC膜の原子比(F/F+C+H)が60%未満では、これらの効果が劣る。
【0017】
本発明において、F−DLC膜の膜厚は0.01〜2μmが好ましく、0.5〜1μmがより好ましい。F−DLC膜の全膜厚が2μmを超えると、ステントが拡張したときに剥離しやすくなる。一方、膜厚が0.01μm未満のF−DLC膜はプラズマCVDで安定的に成膜することが困難である。
【0018】
本発明に係るステントの全体的な構造の一例を図3および図4を参照して説明する。図3は管状に形成されたステントの正面図、図4は図3のステントの軸方向に沿って切断して展開した展開図である。図3および図4に示すステント10では、その中心軸を取り囲むように、それぞれほぼ菱形状で中央部が開口した複数(この例では5個)の構成要素21(21a,21b,21c,21d,21e)が配列され、各構成要素21の側部が接続部22(22a,22b,22c,22d,22e)によって接続されて環状ユニット23を構成している。各構成要素21は軸方向の寸法が円周方向の寸法よりも長くなっている。なお、構成要素21の形状は、菱形状に限らず、ほぼ楕円状または菱形以外の多角形状でもよい。そして、すべての構成要素21はステント10の中心軸からほぼ等距離となるように配置され、5個の構成要素21で環状をなすように湾曲している。ステント10の軸方向には複数(この例では8個)の環状ユニット23a,23b,23c,23d,23e,23f,23g,23hが配列され、互いに隣り合う環状ユニット23は接続部21どうしを連結する連結部24(24a,24b,24c,24d,24e,24f,24g)により1個所で連結され、全体で円筒体をなしている。連結部23はステント10の中心軸に対して若干斜めに(この例では約12°)傾斜して延びており、各連結部24はステント10の円周方向に沿って螺旋状に配置されている。
【0019】
なお、ステント10の両端部の環状ユニット23を構成する構成要素21は、端部において十分な拡張力を得るとともに、血管内壁およびバルーンに与える損傷を少なくするために、端部がほぼ半楕円状となっている。
【0020】
ステント10は、生体内へ挿入するのに適した直径を有し、円筒体の内部から外方に広がる力が与えられたときに伸長する。このステント10では、1つの環状ユニット22に含まれる隣接する2つの構成要素21の間に形成されるほぼV字状または台形状の空間に、隣接する環状ユニット23の構成要素21の端部が侵入している。このようにステント10の円周方向に沿って構成要素21の端部が重なった状態になっているため、所定の長さのステント10の軸方向に沿って多くの環状ユニット23を配置することができる。したがって、ステント10を拡張させたときに、個々の構成要素21のステント10の軸方向に沿う長さが短くなっても、ステント10の側面における隙間の増加が少なく、より確実に血管の狭窄部を拡張でき、かつその状態を良好に維持できる。また、連結部24がステント10の円周方向に沿って螺旋状に配置されており、連続して直線をなすように延びていないので、1つの環状ユニット23が血管に追従するように変化したときの負荷が隣り合わない環状ユニット23にまで伝達されるのを抑制でき、個々の環状ユニット23を独立して拡張させることができる。
【0021】
ステント10の非拡張時の直径は1.2〜1.8mm程度が好適であり、特に1.3〜1.6mmがより好ましい。1つの構成要素21の軸方向の長さは1.5〜4.0mm程度が好適であり、特に2.0〜3.0mmがより好ましい。互いに隣り合う環状ユニット23の構成要素21どうしが軸方向に沿って重なり合う部分の長さは0.5〜1mmが好適である。それぞれ互いに隣り合う環状ユニット23に含まれる、互いに隣り合う構成要素21どうしの中心間の距離は、1.3〜2.5mmが好適である。連結部24はステント20の中心軸に対して0°〜30°程度傾斜していることが好ましく、特に5°〜25°傾斜していることがより好ましい。連結部24の長さは1.4〜2.7mmが好適である。環状ユニット23の数は6〜10が好適である。
【0022】
ステント10の中央部の環状ユニット23を構成する構成要素21の肉厚は、0.05〜0.12mm程度、特に0.06〜0.10mmが好適である。ステント10の両端部の環状ユニット23を構成する構成要素21の肉厚は、中央部の環状ユニット23を構成する構成要素21の肉厚の3/5〜4/5程度、具体的には0.05〜0.07mm程度が好適である。
【0023】
図3および図4に示すような形状のステントは、例えばステンレス鋼からなるパイプを、レーザー加工などの方法により加工することにより製造することができる。加工により最終的な形状を有するステントを得た後、焼きなましすることが好ましい。焼きなましを行うことにより、ステント全体の柔軟性および可塑性が向上し、屈曲した血管内での留置性が良好になる。この結果、ステントを拡張した後に拡張前の形状に復元しようとする力、特に屈曲した血管部位で拡張した後に直線状の形状に復帰しようとする力が減少し、屈曲した血管内壁に与える物理的刺激が減少するとともに、再狭窄の要因を減少させることができる。焼きなましは、ステント表面に酸化被膜が形成されないように、不活性ガス(例えばアルゴンガス)雰囲気下において行い、900〜1200℃に加熱した後、ゆっくりと冷却することが好ましい。ステント形状に加工した後、金やプラチナなどの貴金属のメッキを施してもよい。
【0024】
ここでは、バルーンエクスパンダブルステントを説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、セルフエクスパンダブルステント等にも適用可能である。
【0025】
本発明に係るステントは、図5に示すようなプラズマCVD装置を用いて製造される。図5において、真空容器31には弁32を介して真空排気系33が接続されている。真空排気系33は、ベース排気系のターボモレキュラーポンプ(TMP)とプロセス用のロータリーポンプ(RP)から構成されている。真空容器31には、ボンベ34aから弁35aおよびマスフローコントローラー36aを通してCF4またはC2F6が、ボンベ34bから弁35bおよびマスフローコントローラー36bを通してH2が、それぞれ供給される。真空容器31には、電極を兼ねるホルダ37と対向電極38とが互いに対向して設けられている。ホルダ37は接地されている。このホルダ37上にステント基材11が立てた状態で載置される。ホルダ37はステント基材11の温度上昇を抑えるために水冷されている。一方、対向電極38にはマッチングボックス39を介して高周波電力発生装置40が接続されている。この高周波電力発生装置40は、RFアンプ41および高周波信号発生器42を含んでいる。このような構成により、対向電極38に印加される高周波電力を振幅変調できるようになっている。
【0026】
このプラズマCVD装置を用い、以下のようにしてステント基材11表面にF−DLC膜を成膜する。まず、ホルダ37上にステント基材11を載置し、真空容器31内をベース真空に引いた後、H2プラズマクリーニングによりステント基材11表面のコンタミネーションを除去する。次に、真空容器31内にCF4またはC2F6とH2とを供給し、所定の成膜圧力に設定する。次いで、対向電極38に振幅変調した高周波電力を印加することによりプラズマを発生させ、ステント基材11表面にF−DLC膜を成膜する。
【0027】
本発明においては、対向電極38に印加する高周波電力を以下のようにして発生させる。まず、図6(A)に示すような基本周波数(一般的には13.56MHz)の基本高周波電力に、図6(B)に示すような基本周波数の10000分の1以上、10分の1以下の範囲の周波数を有する第1変調高周波電力をパルスで印加して第1振幅変調(パルス変調)する。さらに、必要に応じて、第2振幅変調する。例えば、図6(C)に示すような、第1変調周波数より高く、第1変調周波数の100倍未満の周波数を有する第2変調高周波電力を印加して第2振幅変調する。この場合、第1振幅変調によるオン時間T1の間に、オン時間T3、オフ時間T4が順次繰り返される高周波電力が発生する。また、図6(C)に示すような、第1変調周波数の100分の1より高く、第1変調周波数より低い周波数を有する高周波電力をパルスで印加して第2振幅変調(パルス変調)してもよい。この場合、第2変調高周波電力のオン時間の間に、第1変調高周波電力のオン時間T1、オフ時間T2が順次繰り返される高周波電力が発生する。
【0028】
上記のように振幅変調により発生した間欠的な高周波電力を対向電極38に印加すると、基材の温度上昇を避けることができ、パーティクルの発生を抑制してF−DLC膜の表面の平滑性を向上できる。また、上記のように振幅変調する場合には、印加電圧すなわちプラズマ中のイオンの加速エネルギーを従来よりも高くすることができる。したがって、ステント基材11へ入射するイオンのエネルギーが高くなり、ステント基材11の表面に高い密着強度を有するF−DLC膜を成膜できる。
【0029】
また、F−DLC膜は膜厚方向に沿ってフッ素含有量が変化しているものであることが好ましい。例えば、F−DLC膜の成膜において、成膜時にガス流量の割合を変化させることにより、フッ素含有量を連続的に又は間欠的に変化させることが可能である。この場合、中間層表面から徐々にF含有量を増加させ、外表面が原子比(F/F+C+H)が60%以上であるF−DLC膜で構成されることが好ましい。このようにF−DLC膜中のF含有量を徐々に変化させることにより、膜の柔軟性が向上し、表面での抗血栓性も向上する。
【0030】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明する。
【0031】
ステント基材としても用いられるSUS316Lからなる8mm×8mm×0.1mmのシート基材を用意した。このシート基材を用いて以下のサンプル1〜5を作製した。
【0032】
サンプル1:上記基材をそのまま用いた。
【0033】
サンプル2:上記基材の表面にフッ素含有率(原子比(F/F+C+H))0%のDLC膜を0.5μmの厚さに形成したものを用いた。
【0034】
サンプル3:上記基材の表面にフッ素含有率10%のF−DLC膜を0.5μmの厚さに形成したものを用いた。
【0035】
サンプル4:上記基材の表面にフッ素含有率30%のF−DLC膜を0.5μmの厚さに形成したものを用いた。
【0036】
サンプル5:上記基材の表面にフッ素含有率60%のF−DLC膜を0.5μmの厚さに形成したものを用いた。
【0037】
成膜条件は以下の通りである。C2F6−CF4混合ガスの総流量:25sccm、真空度:0.02Torr、RF周波数:13.56MHz、RF電力:1kW、変調周波数:68kHz、デューティ比:50%、成膜時間:10分。成膜時に、C2F6とCF4の混合比を調整することにより、F−DLC膜中のフッ素含有率を調整した。
【0038】
得られた各サンプル上に水滴を滴下し、その接触角を測定した結果を表1に示す。表1から明らかなように、基材表面に成膜されたDLC膜中のフッ素含有率が高いほど、接触角が大きく、撥水性に優れていることがわかる。
【0039】
【表1】
【0040】
次に、各サンプル上に血小板数を調整した多血小板血漿(PRP)を滴下し、血小板粘着試験により抗血栓性を評価した。血小板粘着試験の詳細は以下の通りである。
【0041】
ヒト肘静脈より50mL採血する(使用カヌラ19G)。ドナーは通常2人である。抗凝固剤として、3.8wt%クエン酸ナトリウム水溶液を入れた遠沈管に、血液を壁面を伝わらせながらゆっくり注入する。このとき、血液:クエン酸ナトリウム水溶液=9:1とする。遠心分離機を用い、室温において1200rpm、5分間の条件で遠心分離してPRP(多血小板血漿)を分離する。PRPを分取し、これを再び室温において1200rpm、5分間の条件で遠心分離する。PRPを分取し、室温においてその半分をさらに3000rpm、10分間の条件で遠心分離してPPP(貧血小板血漿)を分離する。各々のドナーのPRP、PPPについて、sysmexで血小板数を測定する。PRPをPPPで希釈し、血小板数を1×105個/μL±1×104個/μLに調整した6mL(6000μL)のPRPを調製する。このとき、PRPの秤取量x[μL]とPPPの秤取量y[μL]を以下のようにして決定する。
【0042】
x=(105×6000−B×6000)/(A−B)
y=6000−x
ここで、AはPRPの血小板数、BはPPPの血小板数である。
【0043】
図7(A)に示すように、ポリスチレン製のシャーレ51内に入れたサンプル台52上にサンプル53を載せた。このサンプル53に血小板数を調整したPRP液滴54を200μL滴下する。図7(B)に示すように、蓋55をPRP液滴54に接触させた状態でシャーレ51にかぶせ、PRP液滴54を空気から遮断する。このときPRP液滴54の厚みは約2mmになる。室温で30分間放置する。シャーレにPBS溶液を入れて十字を切るように洗浄する操作を2回行う。シャーレにグルタールアルデヒドの2.5wt%PBS溶液を入れ、2〜8℃に設定した冷蔵庫内で1昼夜固定する。シャーレにPBS溶液を入れて十字を切るように洗浄する操作を1回行い、シャーレに蒸留水を入れて十字を切るように洗浄する操作を7回行う。サンプルを液体窒素に入れて凍結させ、デシケータ中で真空に脱気して、1昼夜凍結乾燥する。スパッタリングを行った後、電子顕微鏡で写真撮影を行う。1000倍で四隅と中央の5点で観察する。写真1視野当りの面積は10000μm2である。写真から、粘着した血小板の個数をカウントする。各サンプルについて5つの観察点の平均から血小板の粘着個数を算出する。
【0044】
これらの結果を図8に示す。図8から、基材表面にフッ素含有率60%のF−DLC膜が形成されているサンプル5は、他のサンプルと比較して、血小板の粘着個数が少なく、抗血栓性に優れていることがわかる。
【0045】
次いで、ステント基材の表面にフッ素含有率30%のF−DLC膜を0.5μmの厚さに形成したステント(比較例)、およびステント基材の表面にフッ素含有率60%のF−DLC膜を0.5μmの厚さに形成したステント(実施例)を作製した。比較例のステントの拡張前および拡張後の電子顕微鏡写真を図9(A)および(B)に示す。実施例のステントの拡張前および拡張後の電子顕微鏡写真を図10(A)および(B)に示す。
【0046】
図9(B)のように、フッ素含有率30%のF−DLC膜はステントの拡張後にはステント基材から剥離した部分が観察された。一方、図10(B)のように、フッ素含有率60%のF−DLC膜はステントの拡張後にもステント基材から剥離した部分は観察されなかった。このことから、フッ素含有率60%のF−DLC膜は柔軟性に富んでおり、剥離強度も優れていることがわかる。
【0047】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によれば、抗血栓性に優れ、しかも基材から剥離しにくい被覆層を設けた体内埋め込み医療器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るステントの断面図。
【図2】本発明に係る他のステントの断面図。
【図3】本発明に係るステントの正面図。
【図4】図3のステントの展開図。
【図5】本発明に係るステントを製造するために用いられるプラズマCVD装置の構成図。
【図6】図5のプラズマCVD装置で使用する高周波電力の波形図。
【図7】血小板粘着試験の説明図。
【図8】各サンプルの血小板の粘着数を示す図。
【図9】比較例のステントの拡張前および拡張後の電子顕微鏡写真。
【図10】実施例のステントの拡張前および拡張後の電子顕微鏡写真。
【符号の説明】
10…ステント
11…ステント基材
12…フッ素含有ダイヤモンドライクカーボン膜
13…中間層
21…構成要素
22…接続部
23…環状ユニット
24…連結部
31…真空容器
32…弁
33…真空排気系
34a、34b…ボンベ
35a、35b…弁
36a、36b…マスフローコントローラー
37…ホルダ
38…対向電極
39…マッチングボックス
40…高周波電力発生装置
41…RFアンプ
42…高周波信号発生器
51…シャーレ
52…サンプル台
53…サンプル
54…PRP液滴
55…蓋
Claims (8)
- 医療器本体の表面の少なくとも一部を、原子比(F/F+C+H)が60%以上であるフッ素含有ダイヤモンドライクカーボン膜で被覆したことを特徴とする体内埋め込み医療器。
- 前記フッ素含有ダイヤモンドライクカーボン膜は、膜厚方向に沿ってフッ素含有量が変化していることを特徴とする請求項1記載の体内埋め込み医療器。
- 前記医療器本体の表面の少なくとも一部を、フッ素を含まないダイヤモンドライクカーボン膜を介して前記フッ素含有ダイヤモンドライクカーボン膜で被覆したことを特徴とする請求項1記載の体内埋め込み医療器。
- 前記医療器本体と前記フッ素含有ダイヤモンドライクカーボン膜との間に中間層を設けたことを特徴とする請求項1記載の体内埋め込み医療器。
- 前記中間層が、シリコン、シリコンカーバイド、酸化チタンおよび窒化チタンからなる群より選択される材料で構成されていることを特徴とする請求項4記載の体内埋め込み医療器。
- 前記中間層に造影性のある金属を含有させたことを特徴とする請求項4または5記載の体内埋め込み医療器。
- 前記フッ素含有ダイヤモンドライクカーボン膜の膜厚が0.01〜2μmであることを特徴とする請求項1ないし6いずれか記載の体内埋め込み医療器。
- ステントとして用いられることを特徴とする請求項1ないし7いずれか記載の体内埋め込み医療器。
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