JP2004504272A - 双機能癌治療剤 - Google Patents
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Abstract
例えばそのアポトーシス阻止能および/または内分泌反応阻害能を特徴とする、受容体拮抗ドメインおよび正の免疫調節物質ドメインを含む、新規融合タンパク質は、癌の治療において有用である。例えば、ヒトプロラクチン拮抗剤−インターロイキン2(hPRLA−IL−2)融合タンパク質は、アポトーシスの誘導と免疫治療を組み合わせて、乳房または前立腺における癌を抑制する。
Description
【0001】
発明の分野
本発明は全般的に、癌を治療するために融合タンパク質を調製し、かつ用いる方法に関する。
【0002】
発明の背景
ヒト乳癌は、ミラー(Miller)ら編、「女性の癌の生物学(Biology of Female Cancers)」、31〜42頁(CRC出版、1997)に報告されたように、悪性度が高く、西欧社会の女性における癌による死因の第一位である。全米癌学会による最近の推定によれば、1998年にはアメリカ人女性8人に1人が乳癌を有し、この疾患のために女性43,500人が死亡すると考えられる。
【0003】
いくつかの系列の証拠から、プロラクチン(PRL)は乳癌の発達に強く関連づけられている。プロラクチン受容体(PRLR)の発現レベルは、正常な乳腺上皮細胞と比較して、ヒト乳癌細胞のみならず(レイノルズ(Reynolds)ら、1997)、手術によって摘出した乳癌組織(ツーレイン・マルティニ(Touraine, Martini P.)ら、「ヒト乳腺癌対隣接する正常乳腺組織における、プロラクチン受容体遺伝子の発現の増加(Increased Expression Of Prolactin Receptor Gene In Human Breast Tumors Versus Contiguous Normal Breast Tissues)」、抄録、第79回全米内分泌学会総会、p113、(1997))において高いと報告されている。悪性乳腺組織におけるPRLRレベルは、その周辺の正常組織よりも5倍高くなることがあり(ツーレイン(Touraine)ら(1997)、上記を参照)、このため、これらの細胞はhPRLに対して非常に感受性が高くなる。さらに、PRLR、エストロゲン受容体(ER)、またはプロゲステロン受容体レベルのあいだに正の相関が存在することから、乳房におけるエストロゲンの分裂誘起作用の一つの機構は、ヒトプロラクチン(hPRL)の産生および分泌に影響を及ぼす可能性があることが示唆されている(サーバスク(Sirbasku)、1978;ディクソンおよびリップマン(DixonおよびLippman)、1986;リップマンおよびディクソン(LippmanおよびDickson)、1989)。併せて考慮すると、これらの知見から、hPRLが、乳癌形成において重要な役割を有する自己分泌/傍分泌増殖因子として働くという仮説が得られる(クレベンガー(Clevenger)ら、Am. J. Pathology, 146:695〜705(1995);ギンスバーグ(Ginsburg, E.)ら、Cancer Res. 55:2591〜2595(1995))。
【0004】
PRL発現と前立腺疾患との関連も同様に、ウェンボ(Wennbo)ら、Endocrinol. 138:4410〜4415(1997)によって提唱されている。PRL受容体は、アラゴナ(Aragona)ら、Endocrinol. 97:677〜684(1975)およびリーキ(Leake)ら、J. Endocrinol. 99:321〜328(1983)に報告されているように、前立腺組織に認められる。さらに、PRLレベルは、年齢と共に増加しうることが認められ、これは前立腺過形成の発達と一致する(ハモンド(Hammond)ら、Clin. Endocrinol. 7:129〜135(1977)、ベケマンスら(Vekemans)ら、Br. Med. J. 4:738〜739(1975))。PRL遺伝子を過剰発現するトランスジェニックマウスは、前立腺の劇的な肥大を起こした(ウェンボら(Wennbo)(1977)、上記を参照のこと)。
【0005】
乳癌と前立腺癌の双方に対するこの連鎖を考慮すると、PRLシグナル伝達は治療的介入にとって魅力的な標的となる。しかし、これまでこの目的に適した薬剤は利用されていない。
【0006】
免疫学的アプローチは癌の治療において非常に有望である。癌が腫瘍特異的抗原を発現し、かつ患者がこれらの抗原に反応しうるT細胞を有する証拠は十分に存在する(ブーン、トワード(Boon, Toward T.)、「ヒト腫瘍拒絶抗原の遺伝子分析(A Genetic Analysis of Human Tumor Rejection Antigens)」、Advances in Cancer Research 58:177〜210(1992);アーバン(Urban, JL)ら、「腫瘍抗原(Tumor Antigens)」、Annu. Rev. Immuno. 10:617〜644(1992))。しかし、これらのT細胞は、多くの場合アネルギーであるか、またはそうでなければ癌と闘う場合に無効である。これまでは、腫瘍の治療に対する免疫学的アプローチの主な努力は、患者への外部からのサイトカインの投与のような、腫瘍抗原に対する宿主の弱い免疫応答を増強することである。
【0007】
用いた多くのサイトカインの中で、インターロイキン2(IL−2)は、有望な結果を有することが証明された。IL−2は、Tリンパ球の細胞周期のG1からS期への進行に関与する、主なサイトカインである(モーガン(Morgan)ら、Science 193:1007〜1008(1979)を参照のこと)。リンパ球に及ぼすIL−2の主な作用は、以下の通りである:(1)Tリンパ球の主要な自己分泌増殖因子としてのIL−2は、T細胞依存的免疫応答の程度を決定する。(2)IL−2は、ヘンドルザック(Hendrzak)ら、「実験物質と臨床物質(ExperimantalおよびClinical Agents)」、263〜282、ヒュマナ出版、(1997)に報告されているように、ナチュラルキラー(NK)細胞の増殖を刺激して、その細胞溶解作用を増強する。
【0008】
しかし、IL−2の全身投与を受けた癌患者は投与できる総量を制限する、生命を脅かす可能性のある副作用を経験することが多く、これは治療の有効性に直接影響を及ぼす(ローゼンバーグ(Rosenberg)ら、N. Enl. J. Med. 319:1676〜1680(1988);マース(Maas)、Immunobiology 188:281〜292(1993))。したがって、腫瘍の治療においてIL−2を用いることに関する主な努力は、副作用と有効量の平衡を保つこと、すなわち投与したIL−2の特異性を増加させて(腫瘍部位に正確にIL−2をターゲティングする)、それによって高い全身用量によって誘発される副作用を劇的に減少させる方法および手段に、集中されてきた。
【0009】
フォルニ(Forni)G.ら 、J. Immunol. 138:4033〜4041(1987)は、IL−2の生理的用量を腫瘍に直接注入すると、その増殖の抑制を引き起こすことを証明した。このインサイチュー適用の主な長所は、それによってサイトカインの全身的使用に関連した毒性が減少することであるが、全ての腫瘍の正確な位置を知る必要があるという短所を有し、これは広汎な転移を有する患者では特に問題となる。
【0010】
毒性を減少させるさらなる努力は、ガンスバッカー(Gansbacher)ら、J. Exp. Med. 172:1217〜1224(1990);フェアロン(Fearonら)、Cell 60:397〜403(1990);およびパードル(Pardoll), D.M.、Immun. Today 14:310〜316(1993)において報告されているように、IL−2を分泌するトランスフェクト腫瘍細胞を注入すると、非改変腫瘍細胞によるその後の攻撃の際に、特異的T細胞依存的免疫を誘導できることを示した。しかし、ライスフェルド(Reisfeld)ら、Curr. Top. Microbiol. Immunol. 213:27〜53(1996)は、そのようなアプローチが、個々の患者の腫瘍細胞の単離、トランスフェクション、および再投与を含むことから、そのようなアプローチの臨床適用が時間を浪費して費用が高いことを認めた。
【0011】
最近、サイトカインを腫瘍部位に向けるために、抗腫瘍モノクローナル抗体(mAb)の結合特異性を用いるもう一つのアプローチが導入されている。ライスフェルドら(Reisfeld、1996)を参照のこと。このアプローチは、mAbの独自のターゲティング能をサイトカインの多機能活性と組み合わせ、したがって、腫瘍環境においてIL−2の有効な濃度を得る。標的化IL−2治療は、ギリース(Gillies)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:1428〜1432(1992);およびサブゼバリ(Sabzevari)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:9626〜9630(1994)において示されるように、免疫コンピテントの同系マウスにおける播種性の肺および肝マウス黒色腫転移を、完全に根治することができる。
【0012】
この標的化IL−2治療には長所がある。例えば、この治療は、これが直接の細胞障害性反応ではないために、他のmAb標的化治療の場合のように、最大の効果を得るためにmAb−IL−2融合タンパク質が全ての標的細胞に達する必要がない。ライスフェルドら(Reisfeld、1996)、上記。最も重要な点は、標的化IL−2治療の治療効果が、長期間持続する移入可能な保護腫瘍免疫の誘導に関連している点である。このmAb標的化IL−2治療はまた、これが普遍的な腫瘍環境においてIL−2を濃縮することから、サイトカイン遺伝子のエキソビボ移入とは異なって都合がよく、それによってこのアプローチは臨床的により実現可能となる。
【0013】
標的化免疫療法アプローチは癌の治療において有望であるが、PRLに拮抗する作用と標的化IL−2の作用を組み合わせる治療利益は、癌の治療において不明である。したがって、癌の維持または増殖におけるPRLの役割に拮抗し、同時に癌に対する患者の免疫応答を増強する物質および治療を開発する必要がある。
【0014】
発明の概要
したがって、本発明の目的は、癌細胞におけるプロラクチンシグナル伝達機構を妨害することができる薬剤を提供することである。
【0015】
本発明のさらにもう一つの目的は、癌細胞にアポトーシスを誘導する薬剤を提供することである。
【0016】
本発明のさらなる目的は、受容体拮抗ドメインおよび正の免疫調節物質ドメインを含む薬剤を提供することである。
【0017】
本発明のなおもう一つの目的は、標的癌細胞に存在する受容体に拮抗して、同時に癌に対する患者の免疫応答を増強することによって、癌を有する患者を治療する方法を提供することである。
【0018】
本発明のもう一つの目的は、本明細書に記載の薬剤を用いることによって癌を治療する方法を提供することである。
【0019】
以下の開示を読むことによって、より容易に明らかとなると考えられるこれらの目的および他の目的は、本発明によって達成される。
【0020】
物質の組成に関する局面において、本発明は、受容体拮抗ドメインおよび正の免疫調節物質ドメインを含むタンパク質に実質的に関する。本発明はさらに、受容体拮抗ドメインはアポトーシス促進ドメインであってよく、正の免疫調節物質ドメインはインターロイキンであってよいことをさらに提供する。受容体拮抗ドメインはまた、配列番号:1のアミノ酸配列またはその保存的変異体でありうる。
【0021】
方法論の局面において、本発明は、受容体拮抗ドメインおよび正の免疫調節物質ドメインを有するタンパク質の有効量を、患者に投与する段階を含む、癌を治療する方法に関する。本発明はさらに、本明細書に記載の任意のタンパク質を患者に投与する方法論を提供する。
【0022】
好ましい態様の詳細な説明
内分泌に基づく治療および標的化サイトカイン治療の併用効果は、癌の治療を大いに増強することが発見されている。例えば、本明細書に開示する治療の産物および方法は、PRLRを阻害することによって内因性PRLの自己分泌/傍分泌作用を阻害して、一般的にアポトーシスに至るように作用する。さらに、このアプローチは免疫応答を正に調節し、それによって特に悪性組織において腫瘍特異的Tリンパ球細胞障害性を誘導する。
【0023】
本明細書において用いられるように、「アポトーシス」とは、それによって発生的または環境的刺激が、一連の特異的な事象を実行するための遺伝子プログラムを活性化させ、最終的に細胞の死および効率的な処理に至る過程を意味する。細胞における形態学的変化には、小胞体の拡張および細胞質膜の回旋を伴う細胞容積の劇的な縮小が含まれる。今度はこれにより、構造的に正常であるが圧縮されたオルガネラを含む、一連の膜結合体へと細胞が破壊される。核は不連続な染色質の濃縮を受けて、ヌクレアーゼが媒介するDNA断片化が起こり、染色体DNAを小さなオリゴヌクレオソーム断片に分解する。核および細胞質は濃縮して、死につつある細胞は、最終的に膜結合アポトーシス体に断片化して、これはマクロファージまたは隣接する細胞によって迅速に貪食され、消化される。
【0024】
本発明は、各ドメインがこれらの機能の一つを実行する能力を有する、多ドメイン分子を利用することによって、PRLRを阻止する段階および免疫応答を正に調節する段階に関連した利益を組み合わせる。典型的な分子は、「正の免疫調節物質ドメイン」と組み合わせた「受容体拮抗ドメイン」または「アポトーシス促進ドメイン」を有する。
【0025】
本明細書において用いられるように、「受容体拮抗ドメイン」は、受容体に結合すると、受容体拮抗ドメインが一つまたは複数の細胞過程を阻害するように作用し、それによって疾患の病因または維持を妨害する、癌のような障害に関連する受容体に特異的に結合するリガンドである。アポトーシスを誘導するそのようなドメインは、本明細書において「アポトーシス促進ドメイン」と呼ばれ、「正の免疫調節物質ドメイン」は、免疫応答を増強する、好ましくは、癌細胞のような異常細胞に対する免疫応答を増強するドメインである。そのような免疫応答は一般的に、T細胞を動員する段階、および例えばその細胞障害機能を増強する段階を伴う。
【0026】
これらの特徴を有する融合タンパク質の利益は限りない。例えば、腫瘍形成組織はしばしば、一つまたは複数のタンパク質受容体レベルの増加を特徴とする。これらの受容体の一つに対して特異的なドメインを含む融合タンパク質はまた、癌組織を特異的にターゲティングすることができると考えられる。受容体拮抗ドメインは、アポトーシス促進ドメインの場合のように、癌の病因を破壊するか、または癌の維持を妨害するが、分子の受容体拮抗部分は直接の治療効果を有する。さらに、正の免疫調節物質ドメインの存在により、分子は、疾患組織に対して特異的に反応する患者自身の免疫系を誘導することによって、二次的な治療効果を有する。
【0027】
したがって、本発明に従う治療を受ける候補者には、その腫瘍が腫瘍の維持または増殖に関連する少なくとも一つの受容体の存在を特徴とする、悪性腫瘍を有する人が含まれる。好ましい態様において、融合タンパク質の受容体拮抗ドメインは、標的とする膜結合受容体に結合するアポトーシス促進ドメインである。そのような結合はアポトーシスを誘導する;同時に、正の免疫調節物質ドメインが、腫瘍特異的な動員およびTリンパ球細胞障害性の増強を誘導する。
【0028】
本発明の双機能タンパク質:
本発明に従って、悪性組織に対して独自の二重の治療効果、すなわち(a)受容体拮抗および/またはアポトーシス促進(1つで同一であってもよい)および(b)正の免疫調節、を有する双機能タンパク質が意図される。本発明はまた、本発明の双機能タンパク質をコードする核酸(例えば、DNAまたはRNA)を意図する。
【0029】
受容体拮抗ドメイン
本発明は、一つの局面において、正の免疫調節物質ドメインの作用を、疾患を有する組織に限局する第一のドメインを意図する。例えば、発癌組織はしばしば一つまたは複数のタンパク質受容体レベルの増加を特徴とする。これらの受容体の一つに対して特異的なドメインを含む融合タンパク質は、癌組織を特異的に標的とすることができ、その結果、局所的な腫瘍細胞障害性反応が標的組織に向けられる。
【0030】
一つの態様において、特定の受容体部位を標的とするドメインは、その名称が示唆するように、その対応する受容体に結合して拮抗する受容体拮抗ドメインである。好ましい態様において、受容体拮抗ドメインは、アポトーシス促進ドメインである。受容体拮抗ドメインを利用する、この目的の治療アプローチは、正の免疫調節物質ドメイン(例えば、IL−2)の全身濃度の劇的な減少を提供し、それによってインビボでのその毒性を減少させるように設計される。
【0031】
この双機能分子のさらなる治療的恩典は、受容体拮抗ドメインが一般的に内分泌阻害能を有する点である。したがって、受容体拮抗ドメインが、例えばプロラクチン拮抗剤である場合、プロラクチンの正常な内分泌機能は妨害されると考えられる。この内分泌阻止の結果として、プロラクチンおよび類似の分子の場合、例えば、標的細胞のアポトーシスがその結果として起こりうる。その場合、受容体拮抗ドメインはまた、アポトーシス促進ドメインでもある。
【0032】
アポトーシス促進ドメインの場合、そのようなドメインは一般的にアポトーシスの予防に関係する、細胞成分の正常な機能の拮抗剤を作製することによって設計される。乳癌および前立腺癌組織の双方において、例えば、発癌および悪性細胞増殖は、少なくとも部分的にPRLRレベルの増加によって刺激される。PRLRによるシグナル伝達は、プロラクチン受容体の二量体形成によって媒介され、受容体の二量体形成そのものは、受容体結合プロラクチン分子の二量体形成によって媒介されることが公知である。2つのPRLRに内因性PRLが結合すると、PRLRの二量体形成を誘導し、それによって癌細胞へのシグナル伝達を誘発する。したがって本発明の一つの態様は、プロラクチン拮抗剤(PRLA)(すなわち、プロラクチン拮抗剤ドメイン)を用いて、プロラクチンの正常なアポトーシス阻害機能に拮抗する段階を含む。
【0033】
PRLRシグナル伝達経路におけるシグナル伝達は、転写シグナル伝達物質および活性化物質(STAT)のリン酸化を必然的に伴い、これはPRLRアゴニズムの正常な結果であるアポトーシスの予防または阻止に関係する。このように、G129R拮抗剤は、ヒト乳癌細胞におけるSTAT 5リン酸化を阻害することによって、アポトーシスを促進する。したがって、PRLRを遮断すると、STAT 5を含む内因性PRLの自己分泌/傍分泌作用が阻害され、その結果アポトーシスが起こる。このように、本発明によって意図される一つのクラスのアポトーシス促進化合物は、STAT 5リン酸化を阻害することができる化合物である。
【0034】
本発明によって意図される適切なPRLAは、一般に、PRLRに対する特異的結合の特徴を保持するが、正常なPRLアポトーシス阻止機構を妨害する、いくつかの構造上の欠陥をさらに有すると考えられる。そのような構造上の欠陥には、PRL(およびしたがってPRLR)を妨害する欠陥が含まれる。
【0035】
一つの好ましい態様において、配列番号:1に示すように、この構造的欠陥は、hPRLにおける129位に対応する位置の、グリシンのアルギニンへの置換である(hPRL−G129Rと呼ぶ)。実施例4、5、および6に示す細胞に基づくアッセイ法と共に、図3および4は、この変異したhPRLが真のhPRLR拮抗剤として作用することを証明する。したがって、hPRL−G129Rのような受容体拮抗ドメインは、特定の型の癌を治療するための治療的薬剤として役立ちうる。
【0036】
この態様は、表1に示す、PRLの第三のαヘリックス領域内のアミノ酸配列の種間比較を開示する、チェン(Chen)ら、Clin. Can. Res. 5:3583〜93(1999)によって支持される。
【0037】
【表1】
【0038】
表1に従って、hPRLのグリシン129位はPRLにおいて不変であることは明白であり、このことはその機能における重要な役割を示唆している。したがって、G129の代わりに任意のアミノ酸も用いると、これらの種のそれぞれにおいてPRLAを産生するはずである(チェン(Chen)ら、Molec. Endocrinol.(1995))。一つの態様において、拮抗剤はグリシン129位の代わりにアルギニンのような、比較的かさ高い側鎖アミノ酸を用いることによって作製される。したがって、本発明の一つの局面は、かさ高い側鎖アミノ酸の代わりに小さな側鎖アミノ酸を用いると、タンパク質の拮抗剤型が得られるように、特定の位置での比較的小さな側鎖アミノ酸(すなわち、グリシン)の存在を特徴とする、PRLの保存的変異体を意図する。
【0039】
本発明の受容体拮抗ドメインにはまた、本明細書において考察した受容体拮抗ドメインの保存的変異体が含まれる。本発明のドメインの全体的な構造および組成は、その点においてそれらが適当な機能的特徴、すなわち受容体の拮抗作用、アポトーシスの誘導、正の免疫調節を付与する限り、重要である。
【0040】
本発明に従う保存的変異体は、一般的に、タンパク質ドメインの全体的な分子構造を保存する。開示のタンパク質産物を含む個々のアミノ酸の特性を意図すると、いくつかの合理的な置換が明白であると考えられる。アミノ酸置換、すなわち、「保存的置換」は、例えば、関与する残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、および/または両親媒性特性における類似性に基づいて行ってもよい。
【0041】
例えば:(a)非極性(疎水性)アミノ酸には、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、およびメチオニンが含まれる;(b)極性中性アミノ酸には、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、およびグルタミンが含まれる;(c)正荷電(塩基性)アミノ酸には、アルギニン、リジン、およびヒスチジンが含まれる;ならびに(d)負荷電(酸性)アミノ酸には、アスパラギン酸およびグルタミン酸が含まれる。置換は一般的に(a)〜(d)のグループ内で行ってもよい。さらに、グリシンおよびプロリンは、そのαヘリックス破壊能に基づいて互いに置換してもよい。同様に、アラニン、システイン、ロイシン、メチオニン、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジン、およびリジンのような特定のアミノ酸は、αヘリックスにおいてより一般的に認められ、バリン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、およびトレオニンは、βプリーツシートにおいてより一般的に認められる。グリシン、セリン、アスパラギン酸、アスパラギンおよびプロリンは、ターン構造において一般的に認められる。以下の群におけるいくつかの好ましい置換を行ってもよい:(i)SおよびT;(ii)PおよびG;ならびに(iii)A、V、L、およびI。既知の遺伝子コード、ならびに組換えおよび合成DNA技術があれば、当業者は保存的アミノ酸変異体をコードするDNAを容易に構築することができると考えられる。
【0042】
保存的変異体は特に、本明細書に記載の受容体拮抗ドメインの切断型を意図する。切断は、N末端またはC末端から作製してもよいが、一般に本来の分子の約30%を超える欠失は伴わない。より好ましくは、本来の分子の約20%未満、および最も好ましくは約10%未満を欠失させる。
【0043】
一般に、本発明のDNAおよびタンパク質分子はいずれも、「配列同一性」を参照して定義することができる。いくつかの分子は、少なくとも約50%、55%、または60%の同一性を有する。好ましい分子は少なくとも約65%の配列同一性、より好ましくは少なくとも70%の配列同一性を有する分子である。他の好ましい分子は少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも85%の配列同一性を有する。最も好ましい分子は、少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する。本明細書において用いられるように、二つの核酸分子またはタンパク質は、二つが85%を超える配列(アミノ酸または核酸)同一性を有する領域を含む場合、「有意な配列同一性を共有する」と言われる。
【0044】
「配列同一性」は、本明細書において、NCBI(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST)で入手できるBlast 2アルゴリズムを参照して、デフォルトパラメータを用いて定義される。このアルゴリズムに関する参考文献には以下が含まれる:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/blast_references.htmlにおいて認められる文献;アルトシュル、ギッシュ、ミラー、マイヤースおよびリップマン(Altschul, S.F., Gish, W., Miller, W., Myers, E.W.およびLipman, D.J.、(1990)「基本局所アラインメント検索手段(Basic local alignment search tool)」、J. Mol. Biol. 215:403〜410);ギッシュおよびステイツ(Gish, W.およびStates, D.J.、(1993)、「データベース類似性検索によるタンパク質コード領域の同定(Identification of protein coding regions by database similarity search)」、Nature Genet. 3:266〜272);マッデン、タツソフおよびザング(Madden, T.L., Tatusov, R.L.,およびZhang, J.、(1996)、「ネットワークBLASTサーバーの応用(Applications of network BLAST server)」、Meth. Enzymol. 266:131〜141);アルトシュル、マッデン、シェーファー、ザング、ザング、ミラーおよびリップマン(Altschul, S.F., Madden, T.L., Schaffer, A.A., Zhang, J., Zhang, Z., Miller, W.およびLipman, D.J.、(1997)、「ギャップトBLASTおよびPSI−BLAST:タンパク質データベース検索プログラムの新世代(Gapped BLASTおよびPSI−BLAST:a new generation of protein database search programs)」、Nucleic Acids Res. 25:3389〜3402);ならびにザングおよびマッデン(Zhang, J.およびMadden, T.L.、(1997)、「パワーBLAST:相互または自動配列分析および注釈のための新しいネットワークBLASTの応用(PowerBLAST:A new network BLAST application for interactive or automated sequence analysis and annotation)」、Genome Res. 7:649〜656)。したがって、表1に記載の配列を含む、異なる種由来のプロラクチンペプチド配列は、その本質的機能を保存するプロラクチン由来受容体拮抗ドメインにおける、さらなる変動に関する情報を与えるために、BLASTのような標準的なコンピュータープログラムを用いて整列させることができる。
【0045】
本明細書に開示の保存的変異体であるタンパク質に加えて、本発明はまた、腫瘍の増殖誘導において役割を果たすタンパク質を用いることを意図し、ここでアミノ酸の置換によってタンパク質がこの増殖を誘導する能力が阻害される。例えば、ウシ成長ホルモン(bGH)およびhGHのグリシン119位およびグリシン120位はそれぞれ、成長増強を刺激するGHの作用において重要な役割を有する。成長ホルモン受容体(GHR)の二量体形成は、HGシグナル伝達にとっての重要な段階であると考えられる。したがって、これらの各位置での何らかのアミノ酸置換(アラニン以外)、特にアルギニンのようなかさ高い側鎖へのアミノ酸置換は、受容体の二量体形成を妨害し、その結果成長ホルモン拮抗剤(GHA)となる。このように、GHAのような拮抗剤が本発明によって意図される。
【0046】
アポトーシスの予防に関係する細胞成分の正常な機能に拮抗することに加えて、本発明はさらに、アポトーシス促進ドメインの意味において、積極的な手段によってアポトーシスを誘導する物質を含む。すなわち、そのような物質は、抗アポトーシス経路に拮抗することによって作用しない;むしろ、それらはアポトーシス経路を誘導する。そのような物質の例は、ケレリトリンを含むプロテインキナーゼC(PKC)阻害剤である。
【0047】
ベンゾフェナントリジンアルカロイドであり、トッダリンとしても知られるケレリトリン(1,2−ジメトキシ−12−メチル[1,3]ベンゾジオキソロ[5,6−c]フェナントリジニウム;C21H18NO4)は、クサノオウ(Chelidonium majus)、ザントキシラム・シミュランス(Zanthoxylum simulans)、サンギナリア・カンデンシス(Sanguinaria candensis)(またはブラッドルート)、タケニグサ(Macleaya cordata)、カリダリ・セブクトコジイ(Carydali sevctocozii)、カリダリ・レデバウニ(Carydali ledebouni)、クサノオウ(Chelidonium majus)、および他のケシ科植物から純粋な形で、または他のベンゾフェナントリジンアルカロイドとの混合物のいずれかとして抽出することができる。
【0048】
PKCの阻害剤は、活性化が起こると、基質結合部位(ATPもしくはタンパク質)または調節ドメイン(ジアシルグリセロールもしくはホルボルエステル結合部位)と相互作用することができる。ケレリトリンは、PKCの触媒ドメインと直接相互作用する。これは同定されたPKCの最も強力な阻害剤の一つであり、他のどのタンパク質キナーゼも阻害しないと考えられる。例えば、ケレリトリンは、ハーバート(Herbert)ら、Biochem Biophys. Res. Commun. 172:993(1990)によって議論されるように、細胞増殖および分化を阻害することによって、L−1210腫瘍細胞に対して強力な細胞障害作用を示し、IC50値は0.053 μMである。ケレリトリンはPKCを濃度依存的に特異的に阻害することによってアポトーシスを誘導し、アラキドン酸およびコラーゲンのような、強い凝集誘導剤によって誘導される血小板の凝集を強力に阻害する。
【0049】
このように腫瘍細胞に導入されると、塩化ケレリトリンはアポトーシス閾値を低下させ、アポトーシスを誘発することができる。これは、ケレリトリン治療を他の治療方法と組み合わせて用いる場合に特に当てはまる。したがって、例えば癌と闘うために用いられるもう一つの分子、例えば正の免疫調節物質ドメインと融合したケレリトリンを含む融合分子が、本発明によって意図される。ケレリトリンを含む分子は、例えば多機能架橋剤を用いて、従来の化学的手段によってもう一つの分子(すなわち、本明細書に記載のドメイン)に融合させることができる。タンパク質に基づくPKC阻害剤は、融合タンパク質として作製してもよい。
【0050】
正の免疫調節物質ドメイン
本発明はまた、正の免疫調節物質として作用する、さらなる、しかし別のドメインを意図する。好ましい免疫調節物質ドメインは、腫瘍に向けられる正の免疫応答を支持する。適した正の免疫調節物質の例には、Tリンパ球を腫瘍に動員し、それによって悪性組織での腫瘍特異的Tリンパ球細胞障害性を誘導することができるサイトカインが含まれる。好ましい態様において、正の免疫調節物質はT細胞依存的免疫応答の程度を制御できることを特徴とする、IL−2である。IL−2はまた、マクロファージおよび単球に対して活性を有する。さらに、IL−2はナチュラルキラー(NK)細胞の増殖を刺激し、その細胞溶解作用を増強する。
【0051】
IL−2の他に、本発明は、これらのまたは類似の特性を有するさらなるサイトカインを含む、他の分子を意図する。例えば、IL−12は、正の免疫調節物質ドメインを提示することができる。IL−12は、T細胞反応をTh1型に向けるための重要なサイトカインである。IL−12は、B細胞および単球/マクロファージによって産生され、IL−2と相乗的に作用して、T細胞およびNK細胞によるIFNγ産生を誘導する。これは同様に、T細胞とNK細胞の双方の細胞障害活性を増強する。本発明にはまた、前述の正の免疫調節物質ドメインの保存的変異体(上記のように)が含まれる。
【0052】
正の免疫調節物質ドメインのその他の適した候補物質には、インターフェロン(IFN)が含まれる。例えば、IFN−βはそれ自身、腫瘍の細胞増殖を阻害することが知られている。IFN−βは抗腫瘍活性に関する普遍的なマクロファージ活性化剤である。したがって、アポトーシス促進ドメインと結合したIFN−βを含む融合分子は、標的組織に限局された正の免疫調節による治療を提供すると考えられる。
【0053】
典型的な双機能分子の調製:
本発明によって意図される双機能タンパク質は、先に述べたドメインのそれぞれ、すなわち受容体拮抗ドメイン(同様に、アポトーシス促進ドメインであってもよい)および正の免疫調節物質ドメインを含むタンパク質であり、そのような融合の際に、双方のドメインは互いに独立して、実質的にその関連する特徴を保持している。図2は、これらの特徴に従う本発明の一つの態様を開示する。ドメインは融合タンパク質として一般的に産生されるが、ドメインはまた、例えば多機能架橋剤を用いて従来の化学的手段によって融合してもよい。融合タンパク質を作製する場合、いずれかのドメインをもう一方のC末端またはN末端に配置してもよい。
【0054】
一つの態様において、融合タンパク質は、図1に示すようにhPRLA−IL−2タンパク質である。この融合タンパク質は、実施例1および図5に示すように発現ベクターに組み入れることができる。次に、産生された発現ベクターを安定な細胞株にトランスフェクトして、その後精製タンパク質を産生することができる。実施例2および3は、ベクターの形質転換および精製過程を実行するための、非制限的な手法である。この融合タンパク質は、IL−2のN末端側に融合したPRLAのC末端を有し、これを図5に示す。しかし、本発明はまた、本明細書に記載のドメインを有する任意の融合タンパク質を意図する。
【0055】
融合タンパク質を作製するための適した方法は、これらのドメインのいずれかの生物活性を実質的に変化させない方法でなければならない。例えば、IL−2のN末端を抗体のC末端に融合させても、IL−2の生物活性は変化しないことが証明されている。ライスフェルド(Reisfeld)ら(1996)、上記。したがって、類似の戦略を用いて、本発明の融合タンパク質を作製することができる。この過程には、正の免疫調節物質ドメインのN末端を受容体拮抗ドメインのC末端に結合する、融合タンパク質をコードするcDNAを設計する段階が含まれる。
【0056】
さらに、hGH(本発明者らは、最大10個のアミノ酸を欠失させる)のC末端は、トランスジェニックマウスにおいて成長促進活性にとって重要でないという証拠があり(チェン(Chen)ら、1993)、かつ構造的類似性に基づき、正の調節物質とhPRLAのような他の受容体拮抗ドメインのC末端との融合体は、これらのドメインの結合親和性を変化させないはずである。
【0057】
本発明は、本明細書において意図した所望の融合タンパク質を作製するどの特定の方法にも限定されない。しかし、意図される組換え体作製方法に従って、本発明は本発明に記載のドメインのヌクレオチド配列の一つまたは複数を含む、組換えDNA構築物を提供する。本発明の組換え構築物は、その中に一般的にオープンリーディングフレームを含むDNAまたはDNA断片が、いずれかの方向に挿入される、プラスミドまたはウイルスベクターのようなベクターを含む。本発明はさらに、これらのベクターを含む細胞を意図する。
【0058】
組換えタンパク質の産生は当技術分野で周知であり、下記に簡単に概要する。
【0059】
細菌の発現
細菌において用いるために有用な細菌の発現ベクターは、所望のタンパク質をコードする構造DNA配列を、適した翻訳開始シグナルおよび終了シグナルと共に、機能的プロモーターを伴う実施可能な読みとり相で挿入することによって、構築される。ベクターは、ベクターの維持を確実にし、望ましければ宿主内で増幅するために、一つまたは複数の表現型選択マーカーおよび複製開始点を含むと考えられる。形質転換のための適した原核生物宿主には、大腸菌(E. Coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、ならびにシュードモナス(Pseudomonas)、放線菌(Streptomyces)、およびブドウ球菌(Staphylococcus)属内の様々な種が含まれるが、他の種も選択材料として用いてもよい。好ましい態様において、原核生物宿主は大腸菌である。
【0060】
細菌ベクターは、例えば、バクテリオファージ、プラスミド、またはコスミドに基づいてもよい。これらのベクターは、選択マーカー、および周知のクローニングベクターpBR32(ATCC 37017)の要素を一般的に含む市販のプラスミドに由来する、細菌の複製開始点を含みうる。そのような市販のベクターには、例えば、GEM 1(プロメガバイオテック、マディソン、ウィスコンシン州、アメリカ)、pBs、フェージスクリプト、PsiX174、pBleuscript SK、pBs KS、pNH8a、pNH16a、pNH18a、pNH46a(ストラタジーン);pTrc99A、pKK223−3、pKK233−3、pKK232−8、pDR540およびpRIT5(ファルマシア)が含まれる。本発明に従う好ましいベクターは、Pt71発現ベクター(パリ(Paris)ら、Biotechnol. Appl. Biochem. 12:436〜449(1990))である。
【0061】
これらの「骨格」部分を、適当なプロモーターおよび発現すべき構造配列と組み合わせる。細菌プロモーターには、lac、T3、T7、ラムダPRまたはPL、trpおよびaraが含まれる。T7が好ましい細菌プロモーターである。
【0062】
適した宿主株を形質転換して、宿主株を適当な細胞密度に増殖させた後、選択したプロモーターを適当な手段(例えば、温度シフトまたは化学的誘導)によって抑制/誘導して、細胞をさらなる期間培養する。細胞は一般的に、遠心分離によって回収して、物理的または化学的手段によって破壊し、得られた粗抽出物をさらなる精製のために残しておく。
【0063】
真核細胞発現
様々な哺乳類細胞培養系もまた、組換え型タンパク質を発現させるために用いることができる。哺乳類の発現系の例には、チミジンキナーゼ陰性(TK)細胞およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ陰性(APRT)細胞のような、選択されたマウスL細胞が含まれる。他の例には、グルツマン(Gluzman)、Cell 23:175(1981)によって記述されたサル腎線維芽細胞のCOS−7株、および適合性のベクターを発現することができる他の細胞株、例えば、C127、3T3、CHO、HeLaおよびBHK細胞株が含まれる。哺乳類の発現ベクターは、複製開始点、適したプロモーター、およびエンハンサーを含み、同様に任意の必要なリボソーム結合部位、ポリアデニル部位、スプライス供与部位および受容部位、転写終了配列、ならびに5’隣接非転写配列を含むと考えられる。SV40ウイルスゲノムに由来するDNA配列、例えば、SV40開始点、初期プロモーター、エンハンサー、スプライス部位、およびポリアデニル部位を用いて、必要な非転写遺伝子要素を提供してもよい。
【0064】
哺乳類プロモーターには、CMV前初期、HSVチミジンキナーゼ、初期および後期SV40、レトロウイルス由来のLTR、ならびにマウスメタロチオネイン−Iが含まれる。典型的な哺乳類ベクターには、pWLneo、pSV2cat、pOG44、pXT1、pSG(ストラタジーン)、pSVK3、pBPV、pMSG、およびpSVL(ファルマシア)が含まれる。好ましい態様において、哺乳類の発現ベクターはpUCIG−METである。選択マーカーには、CAT(クロラムフェニコールトランスフェラーゼ)が含まれる。
【0065】
哺乳類の宿主細胞において、多数のウイルスに基づく発現系を利用してもよい。アデノウイルスを発現ベクターとして用いる場合、関係するコード配列を、アデノウイルス転写/翻訳制御複合体、例えば後期プロモーターおよび三連リーダー配列にライゲーションしてもよい。次に、このキメラ遺伝子をインビトロまたはインビボでの組換えによって、アデノウイルスゲノムに挿入してもよい。ウイルスゲノムの非必須領域への挿入(例えば、領域E1またはE3)の結果、生存可能であって、かつ感染宿主において標的タンパク質を発現することができる組換え型ウイルスが得られると考えられる(例えば、ローガン(Logan)ら、1984、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3655〜3659を参照のこと)。
【0066】
治療的組成物:
本発明のタンパク質は、薬学的に有用な組成物を調製するために、既知の方法に従って処方することができ、それによって本発明の分子またはその機能的誘導体を薬学的に許容される担体賦形剤との混合物において組み合わせる。他のヒトタンパク質、例えばヒト血清アルブミンを含む、適した賦形剤およびその処方は、例えば「レミントンの製薬科学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)」、(第16版、オソル(Osol, A.)編、マック、イーストン、ペンシルバニア州(1980))に記載されている。有効な投与に適した、薬学的に許容される組成物を形成するために、そのような組成物は、本発明の一つまたは複数のタンパク質の有効量を担体賦形剤の適量と共に含むと考えられる。
【0067】
本発明に従って用いられる薬学的組成物は、一つまたは複数の生理的に許容される担体または賦形剤を用いて、従来の方法において処方してもよい。このように、双機能分子およびその生理的に許容される塩および溶媒化合物は、吸入、もしくは通気(insufflation)(口または鼻のいずれかを通して)、または経口、口腔内、非経口、もしくは直腸投与によって投与するために処方してもよい。
【0068】
経口投与の場合、薬学的組成物は、例えば、結合剤(例えば、予めゼラチン処理したトウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、もしくはヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、乳糖、微結晶セルロース、もしくはリン酸水素カルシウム);潤滑剤(ステアリン酸マグネシウム、タルクもしくはシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプンもしくはグリコール酸デンプンナトリウム);または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)のような薬学的に許容される賦形剤を用いて従来の手段によって調製された錠剤、またはカプセル剤の形であってもよい。錠剤は、当技術分野で周知の方法によってコーティングしてもよい。経口投与のための液体調製物は、例えば、溶液、シロップ剤、もしくは懸濁剤の形であってもよく、またはそれらは使用前に水もしくは他の適した溶媒によって溶解するための乾燥製品の形であってもよい。そのような液体調製物は、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体、または硬化食用油);乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア);非水性溶媒(例えば、アーモンド油、油状エステル、エチルアルコール、または精留食用油);および保存剤(例えば、メチルまたはプロピル−p−ヒドロキシベンゾエートまたはソルビン酸)のような、薬学的に許容される添加剤を用いて従来の手段によって調製してもよい。調製物はまた、適当であれば緩衝塩、着香料、着色剤および甘味料を含んでもよい。
【0069】
経口投与のための調製物は、活性化合物の放出を制御するように適切に処方してもよい。口腔内適用の場合、組成物は、従来の方法で処方された錠剤またはロゼンジの形であってもよい。
【0070】
吸入投与の場合、本発明に従って用いられる双機能分子は、適した噴射剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、または他の適したガスを用いて加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレーの形で都合よく送達される。加圧式エアロゾルの場合、用量単位は、計測した量を送達するための弁を提供することによって決定してもよい。化合物の粉末混合物および乳糖またはデンプンのような適した粉末基剤を含む、吸入器ーまたは注入器において用いるためのゼラチンのようなカプセルおよびカートリッジを処方してもよい。
【0071】
双機能タンパク質は、注射、例えば、大量注射または持続的注入による非経口投与のために処方してもよい。注射用製剤は、単位投与剤形、例えば保存剤を添加したアンプルまたは多用量容器であってもよい。組成物は、油性または水性賦形剤中の懸濁剤、溶液、または乳剤の形であってもよく、懸濁剤、安定化剤、および/または分散剤のような処方物質を含んでもよい。または、活性成分は、使用前に適した賦形剤、例えば滅菌した発熱物質不含水で溶解するための粉末形状であってもよい。
【0072】
化合物はまた、例えばカカオバターまたは他のグリセリドのような従来の坐剤基剤を含む坐剤、または浣腸のような直腸組成物において、処方してもよい。
【0073】
先に記述した処方の他に、双機能分子は、デポー調製物として処方してもよい。そのような長時間持続型製剤は、埋め込み(例えば、皮下または筋肉内)、または筋肉内注射によって投与してもよい。このように、例えば、化合物は適したポリマーもしくは疎水性材料(例えば、許容される油中の乳剤として)、またはイオン交換樹脂と共に、またはほとんど溶解しない誘導体、例えば難溶性の塩として処方してもよい。
【0074】
組成物は、望ましければ活性成分を含む、一つまたは複数の単位用量剤形を含んでもよい、パックまたはディスペンサー装置において提供してもよい。パックは例えば、ブリスタパックのような金属またはプラスチックホイルを含んでもよい。パックまたはディスペンサー装置は、投与説明書を添付してもよい。
【0075】
組成物は、癌の治療において有用であるため、従来の化学療法剤と共に処方してもよい。従来の化学療法剤には、アルキル化剤、抗代謝剤、様々な天然物(例えば、ビンカアルカロイド、エピポドフィロトキシン、抗生物質、およびアミノ酸枯渇酵素)、ホルモンならびにホルモン拮抗剤が含まれる。特定のクラスの物質には、ナイトロジェンマスタード、アルキルスルホネート、ニトロソウレア、トリアゼン、葉酸類似体、ピリミジン類似体、プリン類似体、プラチナ複合体、副腎皮質抑制剤、副腎皮質ステロイド、プロゲスチン、エストロゲン、抗エストロゲンおよびアンドロゲンが含まれる。いくつかの典型的な化合物には、シクロホスファミド、クロラムブシル、メソトレキセート、フルオロウラシル、シタラビン、チオグアニン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、マイトマイシン、シスプラチン、ヒドロキシウレア、プレドニゾン、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、ジエチルスチルベストロール、エチニルエストラジオール、タモキシフェン、プロピオン酸テストステロン、およびフルオキシメステロンが含まれる。乳癌を治療する場合、例えば、タモキシフェンが特に好ましい。
【0076】
発明の方法:
治療方法
本発明に従う本発明の治療方法は一般に、先に同定した双機能タンパク質を利用する。融合タンパク質のドメインは、標的組織の特異的ターゲティング能および/または標的組織に対する免疫応答の増強能を共有する。したがって、典型的な方法は、融合タンパク質の受容体拮抗ドメインへの標的細胞の受容体の結合、および/または正の免疫調節物質ドメインによるT細胞依存的免疫応答の刺激を含む。
【0077】
治療方法は、治療を必要とする被験者に、融合タンパク質の治療的有効量を投与する段階を含む。「治療的に有効な」とは、本明細書において、癌の増殖を阻害するかまたは後退させる(例えば、アポトーシスを誘導する)ために十分な量である、融合タンパク質の量を意味するために用いられる。いくつかの方法は、既知の癌用薬剤または治療、例えば化学療法(好ましくは上記の種類の化合物を用いる)もしくは放射線療法との併用療法を意図する。患者はヒトまたはヒト以外の動物であってもよい。患者は一般的に、癌の維持または増殖を促進する、受容体レベルの増加を特徴とする癌を有する場合に、治療を必要とすると考えられる。
【0078】
インビボ治療の際の投与は、非経口および経口を含む任意の数の経路でなされてもよいが、好ましくは非経口投与である。嚢内、静脈内、髄腔内、および腹腔内投与経路を用いてもよいが、一般に静脈内投与が好ましい。当業者は、投与経路は治療すべき障害に応じて変化することを認識すると考えられる。
【0079】
本発明に従う双機能タンパク質の治療的有効量の決定は、特定の患者の特徴、投与経路、および治療される障害の特性に大きく依存すると考えられる。一般的な手引きは、例えば国際調和会議の刊行物およびレミントンの製薬科学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)、第27章および28章、484〜528頁(マックパブリッシングカンパニー、1990)に見出される。
【0080】
治療的有効量の明確な決定は、薬剤の毒性および有効性のような要因に依存すると考えられる。毒性は、当技術分野で周知の方法を用いて決定してもよく、前述の参考文献に認められる。有効性は、実施例において下記に記述する方法と共に同じ手引きを利用して決定してもよい。したがって、薬学的有効量は、医師によって毒性学的に許容でき、なおも有効であると考えられる量である。例えば、有効性は、標的組織でのTリンパ球細胞障害性の誘導もしくは実質的な誘導によって、または標的組織塊の減少によって、測定することができる。適した用量は、約1mg/kg〜10 mg/kgでありうる。
【0081】
融合タンパク質の生物活性を決定するためのスクリーニングアッセイ法
本発明はまた、アポトーシス促進ドメイン、正の免疫調節物質ドメイン、および/またはこれらのドメインのそれぞれを含む、融合タンパク質の生物活性を比較するために用いることができる、細胞に基づくアッセイ系を提供する。この目的のため、融合タンパク質の融合ドメインが融合していない場合(すなわち、融合タンパク質の一部ではない)、各ドメインに類似の機能を確実に保持するように細胞増殖アッセイを用いる。
【0082】
一つの態様において、融合タンパク質の生物活性は、インビトロで2つの異なる型の細胞株、すなわち特異的ドメインの活性を決定する各細胞株に、タンパク質を導入することによって決定されると考えられる。例えば、アポトーシス促進ドメインの生物活性の信頼できる指標である細胞株を、そのドメインの作用を調べるために用いなければならず、他のドメインの活性をモニターするためには、正の免疫調節物質ドメインを示すことができる細胞株を用いなければならない。
【0083】
細胞株に様々な濃度の特定のドメインを、その拮抗、非拮抗、および融合型で導入することによって、当業者はその非融合型の同じドメインと比較して、融合タンパク質のアポトーシス促進ドメインの生物活性を決定することができる。アポトーシスを測定する方法は無数にある。これらの方法には、以下の技術が含まれるがこれらに限定されない:(1)細胞生存率の喪失−生体色素の排除、またはMTT(3−(4,5−ジメチルチアゾル−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロマイド)もしくはMTS−PMSの取り込みのいずれかの障害によって測定する;(2)DNA断片化−アガロースゲル電気泳動、PFG電気泳動、インサイチューターミナルトランスフェラーゼ標識(TUNEL)によりアッセイする;細胞および核の形態学−顕微鏡を用いて染色質濃縮、DNA構築、および細胞質の完全性を可視化する;ならびにシステインプロテアーゼ活性化アッセイ−比色もしくは蛍光読み出しと組み合わせた、カスパーゼ活性化アッセイ、ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)、またはウェスタンブロットもしくは免疫組織化学によるラミニン切断を利用する。ヒト乳癌細胞株(T−47D)を用いる実施例4および9は、許容されるアッセイ系のこの程度までの非制限的な実施例を提供する。
【0084】
同様に、正の免疫調節物質ドメインの活性を測定することができる細胞株も同様に用いて、融合タンパク質のこのドメインの活性をモニターしなければならない。マウスT細胞株(HT−2)を用いる実施例9は、融合タンパク質における正の免疫調節物質ドメインの生物活性を決定するための一つの可能な、しかし非制限的な方法である。
【0085】
本発明の融合タンパク質の活性を決定するためのもう一つの好ましい方法は、インビボでの実施試験である。この試験の適した宿主は、融合タンパク質のアポトーシス促進ドメインに結合することができる癌組織を含む、哺乳類宿主であると考えられる。適した対照は、選択したアポトーシス促進ドメインのための受容体部位をほとんどまたは全く含まないことを特徴とする、任意の細胞株でありうる。実施例10は、マウス細胞を用いたインビボ試験の非制限的な実施例を提供する。
【0086】
以下の実施例は説明するためであって、制限的であるようには意図されていない。
【0087】
実施例
実施例1:発現プラスミドpUCIG−MT−Hpla−IL2融合タンパク質cDNAのクローニングおよび構築
hPRLA cDNA(XbaI制限部位から翻訳停止コドンの直前の配列まで)およびアミノ酸配列+1部位から翻訳停止コドンまでの、IL−2 cDNA(ATCCから購入)由来のPCR断片をそれぞれ、個々に増幅した。次に、これらの断片を哺乳類の発現ベクターであるpUCIG−METにライゲーションして、これらの断片を組み入れた発現ベクターを作製した(すなわちpUCIG−MET−hPRLA−IL2)。hPRLAとIL−2 cDNAのあいだにクローニング目的のためにBamHI制限酵素部位を付加すると、融合タンパク質の接合部で余分なアミノ酸残基2個(グリシンおよびセリン)が得られた。
【0088】
実施例2:安定な細胞株への発現プラスミドのトランスフェクト
本発明者らは既に、インビトロ試験において予備試験のためにhPRL−IL−2、およびhPRLA−IL−2をプールした安定なマウス細胞を作製した。本発明に従う融合タンパク質を作製するために、マウスL細胞を用いる。これらの細胞はまず、リポフェクチン法(ギブコBRL、ガイサースバーグ、メリーランド州)を用いて、マウスメタロチオネイン調節配列によって駆動されるhPRLA−IL−2 cDNAをコードするDNA分子を、ヘルペスウイルスTK遺伝子およびハムスターAPRT遺伝子(ロイング(Leung)ら、1985)に加えて共トランスフェクトする。TK+、APRT+表現型に関する二重選択の後、安定なhPRLまたはhPRL類似体分泌マウスL細胞株を、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、ギブコBRL、ガイサースバーク、メリーランド州)+10%Nu−血清(コラボレイティブリサーチ、ベドフォード、マサチューセッツ州)、15 μg/mlヒポキサンチン、1μg/mlアミノプテリン、15 μg/mlチミジンおよび50 μg/mlゲンタマイシンにおいて確立し、維持する。細胞を、90%の集密度に達するまでT150フラスコにおいて継代する。その際に、血清不含条件培地を24時間毎に回収してプールする。プールした培地をさらなる精製を行うまで−20℃で凍結する。
【0089】
実施例3:融合タンパク質の精製
融合タンパク質の収量を増加させるため、当技術分野で周知の手法に従って、それらをまず精製することが望ましい。これらの段階には以下が含まれる:遠心分離による培養物からの細胞の除去、その後の沈殿、クロスフロー限外濾過、ならびに低圧SECおよび調整的RP−HPLCクロマトグラフィーのようなクローニング方法が含まれる。これらの段階の後に、緩衝液交換、発熱物質除去、および凍結乾燥を行う。
【0090】
段階1:細胞の除去−条件培地80〜100%を6000×g、4℃で30分間遠心分離する。開始細胞培養培地の容量は80 L〜100 Lである。hPRL−G129Rは全てこの段階で回収される。
【0091】
段階2:沈殿−沈殿手法は、細胞培養培地10 Lに硫酸アンモニウム3.5 kgを絶えず攪拌しながら徐々に加えることによって行う。溶液を4℃で12時間放置する。上清を遠心分離して捨てる。次に、沈殿物を蒸留水2Lに溶解する。溶解しない不純物を遠心分離によって除去する。遠心分離段階は全て6000×g、4℃で30分間行う。溶液の最終容量は約5Lである。
【0092】
段階3:クロスフロー限外濾過を用いる容量の減少−攪拌細胞2000 ml中で10K分子量カットオフ膜を用いて、SECサイズ排除カラムの吸着層容積の10%に達するように、溶液の容量を減少させる。この膜濾過段階は55 psiで操作する。
【0093】
段階4:低圧SEC−この低圧SEC段階の目的は、大きいサイズの不純物および調整的RP−HPLCカラムを汚染させる可能性がある、小さなサイズの不純物を除去することである。低圧SECは、バイオラドP60ゲルを充填した44×1000 mmアミコンガラスカラムにおいて行う。ゲルの吸着層の容積は1231 mlである。0.05 M硫酸アンモニウムを流速0.5 ml/分でカラムを通過させる。装置全体を冷蔵庫に入れて4℃で維持する。
【0094】
段階5:調整的RP−HPLC−この作業において、UV−可視検出器を備えたウォーターズ(ミリポアコーポレーション、ベッドフォード、マサチューセッツ州)調整的HPLCを用いる。レイニン・インストルメント・インク(ウォバーン、マサチューセッツ州)からの調整的スケールダイナマックスC、RP−BPLCカラム(21.4×250 mm、5gm、300A孔サイズ)を用いて高純度のhPRL−G129R産物を得る。40%アセトニトリル(ACN)(v/v)+0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)から80%ACN+0.1%TFAへの直線勾配を用いて分離を行った。直線勾配は60分間確立して、移動相の流速は5ml/分である。UV検出器は220 nmに設定する。
【0095】
段階6:緩衝液の交換−残っている有機溶媒を、膜透析を用いて緩衝液交換によって除去する。緩衝液交換はアミコンYMIO膜によって攪拌細胞50 ml中で行う。限外濾過系は、タンパク質溶液を添加する前に発熱物質除去プロトコールに従って調製する。有機溶媒は、何度か流した後に非発熱物質蒸留水によってディアフィルトレーションする(diafilter)。hPRL−G129Rは、50 ml保持溶液において保持する。
【0096】
段階7:発熱物質除去−これらの産物はインビボで用いられるために、非発熱性産物が好ましい。したがって、100K膜濾過段階を用いて発熱物質を除去する。発熱物質除去は、100K膜を用いて攪拌細胞50 ml中で行う。攪拌した細胞を、発熱物質除去プロトコールに従って0.1 N NaOH溶液によって処理する。保持溶液を非発熱性水で3回洗浄し、浸透液中でhPRL−G129Rを回収する。浸透液の容量は〜100 mlである。hPRLまたはhPRL−G129Rの濃度は、放射免疫基質アッセイ法(RIMA)によって決定する。
【0097】
段階8:凍結乾燥−凍結乾燥は、最終産物を保存するために必要である。hPRL−G129Rは、凍結乾燥型でより安定である。液体溶媒は全て、遠心真空エバポレーターを備えた凍結乾燥装置において除去する。次に、凍結乾燥hPRL−G129R試料を−20℃の冷凍庫内でN2中で保存する。
【0098】
実施例4:放射受容体結合アッセイ法による、精製hPRLおよびhPRL−G129Rの生物活性試験
放射受容体結合アッセイ法は、PRLをGHの代わりに用いた点を除き、チェン(Chen)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:5061(1991)において既に記載されているとおりに実施する。簡単に説明すると、T−47D細胞を6ウェル組織培養プレートにおいて、90%の集密度(〜105個/ウェル)になるまで増殖させる。細胞単層を血清不含RPMI 1640培地中で2時間飢餓状態にする。次に、細胞を、8×104 cpmの125I−hPRL(比活性=30 μCi/μg;NENデュポン、ボストン、マサチューセッツ州)を含む血清不含RPMI 1640中で、様々な濃度のhPRL(標準物質としてNIHから)およびhPRL−G129Rの存在下または非存在下で、室温でインキュベートする。次に、細胞を血清不含RPMI 1640培地中で3回洗浄して、0.1 N NaOH/1%SDS 0.5 ml中で可溶化して、結合した放射活性をガンマカウンター(ICNバイオメディカル、モデル4/600プラス;コスタメサ、カリフォルニア州)によって決定する。次に、hPRLおよびhPRL−G129RのEC50値を決定して、平均値±SDとして表記する。比較は、スチューデントのt検定によって行う。
【0099】
実施例5:STAT 5リン酸化/免疫沈降アッセイ法による、精製hPRLおよびhPRL−G129Rの生物活性試験
T−47D細胞を10%活性炭除去ウシ胎児血清(CSFBS;増殖培地)を含むRPMI 1640培地において増殖させる。各実験に関して、細胞を90%の集密度に達するまで、増殖培地中で6ウェル培養プレートに継代する。実験当日、細胞を血清不含培地において1時間枯渇させて、hPRL、hPRL−G129Rまたは両者の組み合わせと共に30分間インキュベートする。処置後、T47−D細胞を氷冷PBSによって1回洗浄して、氷冷溶解緩衝液[20 mMトリスCl(pH 7.4)、100 mM NaCl、2mM EDTA、1%NP−40、1mMフッ化フェニルメチルスルホニル、10 μg/mlアプロチニン、10 μg/mlロイペプチン]1ml中で軽く剥がして回収する。この溶解混合物を、気泡ができないように22ゲージ針の中を数回上下させて、最高速度で20分間回転させる。上清を新しい微量遠心管に移す。STAT 5モノクローナル抗体5μgを、ddH2O 400μlおよび2×IP緩衝液[1%トリトンX−100、150mM NaCl、10 mMトリス、pH 7.4、1mM EDTA、1mM EGTA、0.2 mMバナジン酸ナトリウム、0.2 mM PMSF、0.5%NP−40]500 μlと共に、細胞溶解物100 μl(総タンパク質200〜500 μg)に加える。4℃でゆっくり回転させながら一晩インキュベートした後、予め洗浄した(1×IP緩衝液)プロテインAアガロースビーズ50 μlを各IP反応に加えて、インキュベーションを4℃でさらに2時間継続する。インキュベーション終了時、アガロースビーズを1×IP緩衝液によって3回洗浄して、1×SDS PAGE添加緩衝液50 μl中にプロテインAアガロースビーズを再懸濁させることによって、タンパク質を溶出する。次に、試料を4%〜12.5%SDS−PAGEに供し、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合抗ホスホチロシン抗体PY20およびECL試薬キット(アマシャム、イリノイ州)を用いて、免疫ブロットを行う。次に、ブロットをX線フィルムに感光させて、標準的な手法を用いて現像する(コダック、ロチェスター、ニューヨーク州)。T−47Dヒト乳癌細胞に対してhPRLおよびhPRL−G129Rを用いた結果は、hPRL−G129Rが同様に、hPRLによって誘導されるシグナル伝達を阻止することができることを証明し、このことはその拮抗剤作用を示唆する。
【0100】
実施例6:TUNELアッセイ法による、精製hPRLおよびhPRL−G129Rの生物活性試験
このアッセイ(フルオレセインアポトーシス検出システム、プロメガ)は、3−OH末端で断片化DNAの切れ目を標識することによって作用する。フルオレセイン標識dUTPは、ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼによって3−OH末端で組み入れられる。T47−Dヒト乳癌細胞を用いる。アッセイの前に、乳癌細胞を10%活性炭除去ウシ胎児血清(CCS)に1週間切り替える。その後、細胞を8チャンバー式スライドシステム(ラブテックII)に1室あたり60%〜70%の集密度で播種する。翌日、乳癌細胞をhPRL−G129R条件培地(0.5%CSS)中で様々な濃度のhRPL−G129Rによって処理する。約24時間〜48時間後、チャンバーを解体して製造元の説明書の通りにアッセイを行う。オリンパスIX 70顕微鏡システムを用いてFITCフィルター下でスライドガラスを調べる。
【0101】
実施例7:hPRLA−IL−2融合タンパク質濃度の決定
SDS−PAGEおよび免疫ブロット分析を行って、発現されたhPRLA−IL−2融合タンパク質が適当な分子量を有することを確認する。一過性にトランスフェクトしたマウスL細胞からの培養液を回収し、バイオラドプロテインIIまたはミニプロティーンIIシステム(バイオラド、ハーキュラス、カリフォルニア州)を用いて、本発明者らの研究室で日常的に行われている15%SDS−PAGEに供する。タンパク質の転写後、ニトロセルロース紙を2%ゼラチンのTBS溶液で軽く攪拌しながら室温で1時間ブロックした後、0.05%ツイーン20のTBS溶液(5分/洗浄)によって3回洗浄する。ポリクローナルウサギ抗hPRL(バイオデザインインターナショナル、ケネバンク、メイン州、200倍希釈)の1%ゼラチン/TBS溶液をニトロセルロース膜に加えて、室温で軽く攪拌しながら一晩インキュベートする。一次抗体を除去した後、ニトロセルロース紙を0.05%ツイーン20のTBS溶液によって3回洗浄した後、ヤギ抗ウサギIgG西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合体(ベーリンガー・マンハイム・バイオケミカルズ)の1%ゼラチン/TBS溶液の存在下で、室温で2時間インキュベートする。二次抗体と共にインキュベートした後、ニトロセルロースを0.05%ツイーン20のTBS溶液によって3回洗浄する。
【0102】
タンパク質のバンドを可視化するために、ニトロセルロース紙を0.018%H2O2(v/v)のTBS溶液50 ml、およびHRP発色試薬(バイオラド)30 mgを含むメタノール10 mlとの混合物中で、10分間インキュベートする。ニトロセルロース紙を水ですすぎ、風乾させて、写真を撮影する。精製hPRL、およびIL−2(アキュレートケミカルおよびサイエンティフィック、ウェストバリー、ニューヨーク州)を用いて、写真撮影および密度測定法(フェルナンデスおよびコプチック(FernandezおよびKopchick)、1990)によって、発現されたhPRLA−IL−2レベルを定量する。
【0103】
実施例8:放射受容体結合アッセイ法およびヒト乳癌細胞を用いる、hPRLA−IL−2融合タンパク質の結合特徴の決定
この実験の主な目的は、hPRLAとIL−2との融合が乳癌細胞におけるhPRLAに対する結合能に影響を及ぼさないことを確認するために、ヒト乳癌細胞を用いてhPRL、hPRLAおよびhPRLA−IL−2融合タンパク質の結合親和性を比較することである。
【0104】
放射受容体結合アッセイ法は、チェン(Chen)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:5061(1991)に記載の通りに実施する。簡単に説明すると、T−47D細胞を6ウェル組織培養プレートにおいて90%の集密度(〜105個/ウェル)になるまで増殖させる。細胞単層を血清不含RPMI 1640培地中で2時間飢えさせる。次に、細胞を、8×104 cpmの125I−hPRL(比活性=30 μCi/μg;NENデュポン、ボストン、マサチューセッツ州)を含む血清不含RPMI 1640中で、様々な濃度のhPRL(標準物質としてNIHから)およびhPRL−G129Rの存在下または非存在下で、室温でインキュベートする。次に、細胞を血清不含RPMI 1640培地中で3回洗浄して、0.1 N NaOH/1%SDS 0.5 ml中で可溶化して、結合した放射活性をガンマカウンター(ICNバイオメディカル、モデル4/600プラス;コスタメサ、カリフォルニア州)によって決定する。次に、hPRLおよびhPRL−G129RのEC50値を決定して、平均値±SDとして表記する。比較は、スチューデントのt検定によって行う。非特異的結合は、非標識hPRL1μg/ml+IL−2 1μgを加えることによって決定する。
【0105】
実施例9:細胞増殖アッセイ法を用いたIL−2、hPRLA、およびhPRLA−IL−2融合タンパク質の生物活性の比較
本試験において2つの型の細胞増殖アッセイ法を用いて、hPRLA−IL−2融合タンパク質がhPRLA様活性と共にIL−2様活性を保持していることを確認する。マウスT細胞株(HT−2細胞)は、一般的に組換え型マウスおよびヒトIL−2の生物活性を調べるために用いられているIL−2反応性細胞株であり、これを用いて融合タンパク質のIL−2様活性を調べる(タニグチ(Taniguchi)ら、1983;ローゼンバーグ(Rosenberg)ら、1984)。さらに、ヒト乳癌細胞を用いて潜在的な拮抗活性に関して、融合タンパク質を調べる。
【0106】
ヒト乳癌細胞株(T47−D)を用いる(ATCCから)。細胞をATCCの推奨に従う対応する増殖培地中で増殖させる。アッセイ条件は、ギンスブルグおよびフォンデルハール(GinsburgおよびVonderharr、1995)によって記述され、それぞれの細胞株について改変してもよい。一般に、細胞は空気中に5%CO2の湿潤大気中で37℃で維持する。個々の増殖実験に関して、細胞を12ウェル培養プレートに約2×104個/ml/ウェルの密度で播種する。細胞を1日接着させて、培地を除去し、ITS+(インスリン−トランスフェリン−セレニウム−BSA−リノレン酸培養添加物;コラボレイティブリサーチ、ベッドフォード、マサチューセッツ州)を含む培地によって血清不含条件に変更する。様々な濃度のhPRL、hPRLA、hPRLA−IL−2または両者の組み合わせ(hPRLA:hPRLまたはhPRLA−IL−2:hPRLを1:1、5:1、10:1等)を加える。さらに3日間培養した後、細胞を短いトリプシン処理後に回収して、細胞計数器で計数する。
【0107】
実施例10:hPRLA−IL−2融合タンパク質の抗腫瘍活性を調べるための、同系マウスモデルを用いたインビボ試験
hPRLA−IL−2の抗腫瘍効果の最終的な試験は、インビボ試験である。この目的のために、融合タンパク質の潜在的な抗腫瘍活性を調べるために、同系免疫コンピテントC3Hマウス、および同じ系統のマウスに由来する乳腺癌細胞を用いる。
【0108】
特にCRL−6326および/またはCRL−6378マウス乳腺癌細胞を用いる。それらの細胞に対するPRLRの状態を確認するために、放射受容体結合アッセイ法をこれらの細胞について行い、それらがPRLRを含むことを確認する。2つの細胞株は陽性および陰性対照として用いる。一つの細胞株は、ATCCから購入したC3H由来マウスL細胞である。これらの形質転換線維芽細胞は、皮下注射すると腫瘍を誘導する。GHRまたはPRLRはL細胞表面上では検出不可能であるため(データは示していない)、L細胞は非乳癌対照として用いる。hPRLR cDNAを安定にトランスフェクトしたマウスL細胞株は、C3Hマウスにおいて腫瘍を誘導するために用いる。これらの細胞によって誘導された腫瘍は、細胞表面上に高レベルのhPRLRが存在するために陽性対照であると見なされる。
【0109】
癌のモデルとするために癌細胞5×106個を接種することによって、皮下腫瘍を誘発する。これは、10日以内に体積25 μlに増殖するように腫瘍を誘導する。ライスフェルド(Reisfeld)ら、上記。その時点で、動物をIL−2、PRLA、およびPRLA−IL−2融合タンパク質の静脈内投与によって7日間処置した。各群について2用量(5μgおよび25 μg/注射)を用いる。処置終了時、動物を屠殺して、処置を受けなかった、またはIL−2、hPRLA、もしくはhPRLA−IL−2融合タンパク質による処置を受けた、いずれかの動物において腫瘍重量を測定して、統計分析を行う。
【0110】
腫瘍の免疫組織学的評価も同様に行って、インサイチューでの細胞浸潤の証拠を調べる。簡単に説明すると、凍結切片を冷アセトン中で10分間固定した後、0.03%H2O2によって内因性ペルオキシダーゼを除去して、10%血清の1%BSA/PBS溶液によってコラーゲン性要素を阻止する。次に、CD45特異的抗体を既定の濃度(〜20 μg/ml)で連続切片上に重層して、スライドガラスを湿潤チャンバーにおいて30分間インキュベートする。各段階のあいだにPBS洗浄を行い、ビオチン結合二次抗体を10分間適用した後、ストレプトアビジン結合アルカリホスファターゼを10分間適用する。さらに洗浄した後、基質を加えて、スライドガラスを暗所で20分間インキュベートする。PBS中で洗浄した後、スライドガラスを対比染色して、オリンパス(ニューハイドパーク、ニューヨーク州)BH2顕微鏡に載せて、これを用いて観察する。
【0111】
以下の表は、hPRLA−IL2融合タンパク質の生物活性を調べるために、同系マウスおよび腫瘍細胞を用いる実験計画を示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の双機能分子の略図である。(A)ライスフェルドら(Reisfeld、1996)による先の研究において提唱されている、mAb−IL−2融合タンパク質、および(B)本発明に従うhPRLA−IL−2融合タンパク質。
【図2】本発明の双機能融合タンパク質に関して提唱される作用機序の略図である。乳癌細胞によって産生されるPRLは、融合タンパク質(PRLA)が占有していることからPRLRに達することができない。同時に、融合タンパク質のIL−2部分が抗腫瘍T細胞反応を刺激する。
【図3】共培養法を用いた、T−47Dヒト乳癌細胞におけるhPR1−G129Rの用量依存的な阻害作用、およびhPRLの刺激作用を示す。x軸は共培養したL細胞(対照)、L−PRLまたはL−hPRL−G129R細胞数を表す。各データポイントは、少なくとも3回の、3通のウェルでの独立した実験の平均値を表す。
【図4】T−47Dヒト乳癌細胞増殖アッセイにおけるhPRL−G129Rの用量依存的な阻害作用、および4−OH−タモキシフェンとの相加作用を示す。x軸は、4−OH−タモキシフェンの非存在下(白いバー)または存在下の、いずれかでのhPRL−G129R濃度を表す。各データポイントは、少なくとも3回の、3通のウェルでの独立した実験の平均値を表す。
【図5】pUCIG−MT−hPRL−IL−2融合タンパク質cDNAの、発現プラスミドのクローニングおよび構築の略図である。
発明の分野
本発明は全般的に、癌を治療するために融合タンパク質を調製し、かつ用いる方法に関する。
【0002】
発明の背景
ヒト乳癌は、ミラー(Miller)ら編、「女性の癌の生物学(Biology of Female Cancers)」、31〜42頁(CRC出版、1997)に報告されたように、悪性度が高く、西欧社会の女性における癌による死因の第一位である。全米癌学会による最近の推定によれば、1998年にはアメリカ人女性8人に1人が乳癌を有し、この疾患のために女性43,500人が死亡すると考えられる。
【0003】
いくつかの系列の証拠から、プロラクチン(PRL)は乳癌の発達に強く関連づけられている。プロラクチン受容体(PRLR)の発現レベルは、正常な乳腺上皮細胞と比較して、ヒト乳癌細胞のみならず(レイノルズ(Reynolds)ら、1997)、手術によって摘出した乳癌組織(ツーレイン・マルティニ(Touraine, Martini P.)ら、「ヒト乳腺癌対隣接する正常乳腺組織における、プロラクチン受容体遺伝子の発現の増加(Increased Expression Of Prolactin Receptor Gene In Human Breast Tumors Versus Contiguous Normal Breast Tissues)」、抄録、第79回全米内分泌学会総会、p113、(1997))において高いと報告されている。悪性乳腺組織におけるPRLRレベルは、その周辺の正常組織よりも5倍高くなることがあり(ツーレイン(Touraine)ら(1997)、上記を参照)、このため、これらの細胞はhPRLに対して非常に感受性が高くなる。さらに、PRLR、エストロゲン受容体(ER)、またはプロゲステロン受容体レベルのあいだに正の相関が存在することから、乳房におけるエストロゲンの分裂誘起作用の一つの機構は、ヒトプロラクチン(hPRL)の産生および分泌に影響を及ぼす可能性があることが示唆されている(サーバスク(Sirbasku)、1978;ディクソンおよびリップマン(DixonおよびLippman)、1986;リップマンおよびディクソン(LippmanおよびDickson)、1989)。併せて考慮すると、これらの知見から、hPRLが、乳癌形成において重要な役割を有する自己分泌/傍分泌増殖因子として働くという仮説が得られる(クレベンガー(Clevenger)ら、Am. J. Pathology, 146:695〜705(1995);ギンスバーグ(Ginsburg, E.)ら、Cancer Res. 55:2591〜2595(1995))。
【0004】
PRL発現と前立腺疾患との関連も同様に、ウェンボ(Wennbo)ら、Endocrinol. 138:4410〜4415(1997)によって提唱されている。PRL受容体は、アラゴナ(Aragona)ら、Endocrinol. 97:677〜684(1975)およびリーキ(Leake)ら、J. Endocrinol. 99:321〜328(1983)に報告されているように、前立腺組織に認められる。さらに、PRLレベルは、年齢と共に増加しうることが認められ、これは前立腺過形成の発達と一致する(ハモンド(Hammond)ら、Clin. Endocrinol. 7:129〜135(1977)、ベケマンスら(Vekemans)ら、Br. Med. J. 4:738〜739(1975))。PRL遺伝子を過剰発現するトランスジェニックマウスは、前立腺の劇的な肥大を起こした(ウェンボら(Wennbo)(1977)、上記を参照のこと)。
【0005】
乳癌と前立腺癌の双方に対するこの連鎖を考慮すると、PRLシグナル伝達は治療的介入にとって魅力的な標的となる。しかし、これまでこの目的に適した薬剤は利用されていない。
【0006】
免疫学的アプローチは癌の治療において非常に有望である。癌が腫瘍特異的抗原を発現し、かつ患者がこれらの抗原に反応しうるT細胞を有する証拠は十分に存在する(ブーン、トワード(Boon, Toward T.)、「ヒト腫瘍拒絶抗原の遺伝子分析(A Genetic Analysis of Human Tumor Rejection Antigens)」、Advances in Cancer Research 58:177〜210(1992);アーバン(Urban, JL)ら、「腫瘍抗原(Tumor Antigens)」、Annu. Rev. Immuno. 10:617〜644(1992))。しかし、これらのT細胞は、多くの場合アネルギーであるか、またはそうでなければ癌と闘う場合に無効である。これまでは、腫瘍の治療に対する免疫学的アプローチの主な努力は、患者への外部からのサイトカインの投与のような、腫瘍抗原に対する宿主の弱い免疫応答を増強することである。
【0007】
用いた多くのサイトカインの中で、インターロイキン2(IL−2)は、有望な結果を有することが証明された。IL−2は、Tリンパ球の細胞周期のG1からS期への進行に関与する、主なサイトカインである(モーガン(Morgan)ら、Science 193:1007〜1008(1979)を参照のこと)。リンパ球に及ぼすIL−2の主な作用は、以下の通りである:(1)Tリンパ球の主要な自己分泌増殖因子としてのIL−2は、T細胞依存的免疫応答の程度を決定する。(2)IL−2は、ヘンドルザック(Hendrzak)ら、「実験物質と臨床物質(ExperimantalおよびClinical Agents)」、263〜282、ヒュマナ出版、(1997)に報告されているように、ナチュラルキラー(NK)細胞の増殖を刺激して、その細胞溶解作用を増強する。
【0008】
しかし、IL−2の全身投与を受けた癌患者は投与できる総量を制限する、生命を脅かす可能性のある副作用を経験することが多く、これは治療の有効性に直接影響を及ぼす(ローゼンバーグ(Rosenberg)ら、N. Enl. J. Med. 319:1676〜1680(1988);マース(Maas)、Immunobiology 188:281〜292(1993))。したがって、腫瘍の治療においてIL−2を用いることに関する主な努力は、副作用と有効量の平衡を保つこと、すなわち投与したIL−2の特異性を増加させて(腫瘍部位に正確にIL−2をターゲティングする)、それによって高い全身用量によって誘発される副作用を劇的に減少させる方法および手段に、集中されてきた。
【0009】
フォルニ(Forni)G.ら 、J. Immunol. 138:4033〜4041(1987)は、IL−2の生理的用量を腫瘍に直接注入すると、その増殖の抑制を引き起こすことを証明した。このインサイチュー適用の主な長所は、それによってサイトカインの全身的使用に関連した毒性が減少することであるが、全ての腫瘍の正確な位置を知る必要があるという短所を有し、これは広汎な転移を有する患者では特に問題となる。
【0010】
毒性を減少させるさらなる努力は、ガンスバッカー(Gansbacher)ら、J. Exp. Med. 172:1217〜1224(1990);フェアロン(Fearonら)、Cell 60:397〜403(1990);およびパードル(Pardoll), D.M.、Immun. Today 14:310〜316(1993)において報告されているように、IL−2を分泌するトランスフェクト腫瘍細胞を注入すると、非改変腫瘍細胞によるその後の攻撃の際に、特異的T細胞依存的免疫を誘導できることを示した。しかし、ライスフェルド(Reisfeld)ら、Curr. Top. Microbiol. Immunol. 213:27〜53(1996)は、そのようなアプローチが、個々の患者の腫瘍細胞の単離、トランスフェクション、および再投与を含むことから、そのようなアプローチの臨床適用が時間を浪費して費用が高いことを認めた。
【0011】
最近、サイトカインを腫瘍部位に向けるために、抗腫瘍モノクローナル抗体(mAb)の結合特異性を用いるもう一つのアプローチが導入されている。ライスフェルドら(Reisfeld、1996)を参照のこと。このアプローチは、mAbの独自のターゲティング能をサイトカインの多機能活性と組み合わせ、したがって、腫瘍環境においてIL−2の有効な濃度を得る。標的化IL−2治療は、ギリース(Gillies)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:1428〜1432(1992);およびサブゼバリ(Sabzevari)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:9626〜9630(1994)において示されるように、免疫コンピテントの同系マウスにおける播種性の肺および肝マウス黒色腫転移を、完全に根治することができる。
【0012】
この標的化IL−2治療には長所がある。例えば、この治療は、これが直接の細胞障害性反応ではないために、他のmAb標的化治療の場合のように、最大の効果を得るためにmAb−IL−2融合タンパク質が全ての標的細胞に達する必要がない。ライスフェルドら(Reisfeld、1996)、上記。最も重要な点は、標的化IL−2治療の治療効果が、長期間持続する移入可能な保護腫瘍免疫の誘導に関連している点である。このmAb標的化IL−2治療はまた、これが普遍的な腫瘍環境においてIL−2を濃縮することから、サイトカイン遺伝子のエキソビボ移入とは異なって都合がよく、それによってこのアプローチは臨床的により実現可能となる。
【0013】
標的化免疫療法アプローチは癌の治療において有望であるが、PRLに拮抗する作用と標的化IL−2の作用を組み合わせる治療利益は、癌の治療において不明である。したがって、癌の維持または増殖におけるPRLの役割に拮抗し、同時に癌に対する患者の免疫応答を増強する物質および治療を開発する必要がある。
【0014】
発明の概要
したがって、本発明の目的は、癌細胞におけるプロラクチンシグナル伝達機構を妨害することができる薬剤を提供することである。
【0015】
本発明のさらにもう一つの目的は、癌細胞にアポトーシスを誘導する薬剤を提供することである。
【0016】
本発明のさらなる目的は、受容体拮抗ドメインおよび正の免疫調節物質ドメインを含む薬剤を提供することである。
【0017】
本発明のなおもう一つの目的は、標的癌細胞に存在する受容体に拮抗して、同時に癌に対する患者の免疫応答を増強することによって、癌を有する患者を治療する方法を提供することである。
【0018】
本発明のもう一つの目的は、本明細書に記載の薬剤を用いることによって癌を治療する方法を提供することである。
【0019】
以下の開示を読むことによって、より容易に明らかとなると考えられるこれらの目的および他の目的は、本発明によって達成される。
【0020】
物質の組成に関する局面において、本発明は、受容体拮抗ドメインおよび正の免疫調節物質ドメインを含むタンパク質に実質的に関する。本発明はさらに、受容体拮抗ドメインはアポトーシス促進ドメインであってよく、正の免疫調節物質ドメインはインターロイキンであってよいことをさらに提供する。受容体拮抗ドメインはまた、配列番号:1のアミノ酸配列またはその保存的変異体でありうる。
【0021】
方法論の局面において、本発明は、受容体拮抗ドメインおよび正の免疫調節物質ドメインを有するタンパク質の有効量を、患者に投与する段階を含む、癌を治療する方法に関する。本発明はさらに、本明細書に記載の任意のタンパク質を患者に投与する方法論を提供する。
【0022】
好ましい態様の詳細な説明
内分泌に基づく治療および標的化サイトカイン治療の併用効果は、癌の治療を大いに増強することが発見されている。例えば、本明細書に開示する治療の産物および方法は、PRLRを阻害することによって内因性PRLの自己分泌/傍分泌作用を阻害して、一般的にアポトーシスに至るように作用する。さらに、このアプローチは免疫応答を正に調節し、それによって特に悪性組織において腫瘍特異的Tリンパ球細胞障害性を誘導する。
【0023】
本明細書において用いられるように、「アポトーシス」とは、それによって発生的または環境的刺激が、一連の特異的な事象を実行するための遺伝子プログラムを活性化させ、最終的に細胞の死および効率的な処理に至る過程を意味する。細胞における形態学的変化には、小胞体の拡張および細胞質膜の回旋を伴う細胞容積の劇的な縮小が含まれる。今度はこれにより、構造的に正常であるが圧縮されたオルガネラを含む、一連の膜結合体へと細胞が破壊される。核は不連続な染色質の濃縮を受けて、ヌクレアーゼが媒介するDNA断片化が起こり、染色体DNAを小さなオリゴヌクレオソーム断片に分解する。核および細胞質は濃縮して、死につつある細胞は、最終的に膜結合アポトーシス体に断片化して、これはマクロファージまたは隣接する細胞によって迅速に貪食され、消化される。
【0024】
本発明は、各ドメインがこれらの機能の一つを実行する能力を有する、多ドメイン分子を利用することによって、PRLRを阻止する段階および免疫応答を正に調節する段階に関連した利益を組み合わせる。典型的な分子は、「正の免疫調節物質ドメイン」と組み合わせた「受容体拮抗ドメイン」または「アポトーシス促進ドメイン」を有する。
【0025】
本明細書において用いられるように、「受容体拮抗ドメイン」は、受容体に結合すると、受容体拮抗ドメインが一つまたは複数の細胞過程を阻害するように作用し、それによって疾患の病因または維持を妨害する、癌のような障害に関連する受容体に特異的に結合するリガンドである。アポトーシスを誘導するそのようなドメインは、本明細書において「アポトーシス促進ドメイン」と呼ばれ、「正の免疫調節物質ドメイン」は、免疫応答を増強する、好ましくは、癌細胞のような異常細胞に対する免疫応答を増強するドメインである。そのような免疫応答は一般的に、T細胞を動員する段階、および例えばその細胞障害機能を増強する段階を伴う。
【0026】
これらの特徴を有する融合タンパク質の利益は限りない。例えば、腫瘍形成組織はしばしば、一つまたは複数のタンパク質受容体レベルの増加を特徴とする。これらの受容体の一つに対して特異的なドメインを含む融合タンパク質はまた、癌組織を特異的にターゲティングすることができると考えられる。受容体拮抗ドメインは、アポトーシス促進ドメインの場合のように、癌の病因を破壊するか、または癌の維持を妨害するが、分子の受容体拮抗部分は直接の治療効果を有する。さらに、正の免疫調節物質ドメインの存在により、分子は、疾患組織に対して特異的に反応する患者自身の免疫系を誘導することによって、二次的な治療効果を有する。
【0027】
したがって、本発明に従う治療を受ける候補者には、その腫瘍が腫瘍の維持または増殖に関連する少なくとも一つの受容体の存在を特徴とする、悪性腫瘍を有する人が含まれる。好ましい態様において、融合タンパク質の受容体拮抗ドメインは、標的とする膜結合受容体に結合するアポトーシス促進ドメインである。そのような結合はアポトーシスを誘導する;同時に、正の免疫調節物質ドメインが、腫瘍特異的な動員およびTリンパ球細胞障害性の増強を誘導する。
【0028】
本発明の双機能タンパク質:
本発明に従って、悪性組織に対して独自の二重の治療効果、すなわち(a)受容体拮抗および/またはアポトーシス促進(1つで同一であってもよい)および(b)正の免疫調節、を有する双機能タンパク質が意図される。本発明はまた、本発明の双機能タンパク質をコードする核酸(例えば、DNAまたはRNA)を意図する。
【0029】
受容体拮抗ドメイン
本発明は、一つの局面において、正の免疫調節物質ドメインの作用を、疾患を有する組織に限局する第一のドメインを意図する。例えば、発癌組織はしばしば一つまたは複数のタンパク質受容体レベルの増加を特徴とする。これらの受容体の一つに対して特異的なドメインを含む融合タンパク質は、癌組織を特異的に標的とすることができ、その結果、局所的な腫瘍細胞障害性反応が標的組織に向けられる。
【0030】
一つの態様において、特定の受容体部位を標的とするドメインは、その名称が示唆するように、その対応する受容体に結合して拮抗する受容体拮抗ドメインである。好ましい態様において、受容体拮抗ドメインは、アポトーシス促進ドメインである。受容体拮抗ドメインを利用する、この目的の治療アプローチは、正の免疫調節物質ドメイン(例えば、IL−2)の全身濃度の劇的な減少を提供し、それによってインビボでのその毒性を減少させるように設計される。
【0031】
この双機能分子のさらなる治療的恩典は、受容体拮抗ドメインが一般的に内分泌阻害能を有する点である。したがって、受容体拮抗ドメインが、例えばプロラクチン拮抗剤である場合、プロラクチンの正常な内分泌機能は妨害されると考えられる。この内分泌阻止の結果として、プロラクチンおよび類似の分子の場合、例えば、標的細胞のアポトーシスがその結果として起こりうる。その場合、受容体拮抗ドメインはまた、アポトーシス促進ドメインでもある。
【0032】
アポトーシス促進ドメインの場合、そのようなドメインは一般的にアポトーシスの予防に関係する、細胞成分の正常な機能の拮抗剤を作製することによって設計される。乳癌および前立腺癌組織の双方において、例えば、発癌および悪性細胞増殖は、少なくとも部分的にPRLRレベルの増加によって刺激される。PRLRによるシグナル伝達は、プロラクチン受容体の二量体形成によって媒介され、受容体の二量体形成そのものは、受容体結合プロラクチン分子の二量体形成によって媒介されることが公知である。2つのPRLRに内因性PRLが結合すると、PRLRの二量体形成を誘導し、それによって癌細胞へのシグナル伝達を誘発する。したがって本発明の一つの態様は、プロラクチン拮抗剤(PRLA)(すなわち、プロラクチン拮抗剤ドメイン)を用いて、プロラクチンの正常なアポトーシス阻害機能に拮抗する段階を含む。
【0033】
PRLRシグナル伝達経路におけるシグナル伝達は、転写シグナル伝達物質および活性化物質(STAT)のリン酸化を必然的に伴い、これはPRLRアゴニズムの正常な結果であるアポトーシスの予防または阻止に関係する。このように、G129R拮抗剤は、ヒト乳癌細胞におけるSTAT 5リン酸化を阻害することによって、アポトーシスを促進する。したがって、PRLRを遮断すると、STAT 5を含む内因性PRLの自己分泌/傍分泌作用が阻害され、その結果アポトーシスが起こる。このように、本発明によって意図される一つのクラスのアポトーシス促進化合物は、STAT 5リン酸化を阻害することができる化合物である。
【0034】
本発明によって意図される適切なPRLAは、一般に、PRLRに対する特異的結合の特徴を保持するが、正常なPRLアポトーシス阻止機構を妨害する、いくつかの構造上の欠陥をさらに有すると考えられる。そのような構造上の欠陥には、PRL(およびしたがってPRLR)を妨害する欠陥が含まれる。
【0035】
一つの好ましい態様において、配列番号:1に示すように、この構造的欠陥は、hPRLにおける129位に対応する位置の、グリシンのアルギニンへの置換である(hPRL−G129Rと呼ぶ)。実施例4、5、および6に示す細胞に基づくアッセイ法と共に、図3および4は、この変異したhPRLが真のhPRLR拮抗剤として作用することを証明する。したがって、hPRL−G129Rのような受容体拮抗ドメインは、特定の型の癌を治療するための治療的薬剤として役立ちうる。
【0036】
この態様は、表1に示す、PRLの第三のαヘリックス領域内のアミノ酸配列の種間比較を開示する、チェン(Chen)ら、Clin. Can. Res. 5:3583〜93(1999)によって支持される。
【0037】
【表1】
【0038】
表1に従って、hPRLのグリシン129位はPRLにおいて不変であることは明白であり、このことはその機能における重要な役割を示唆している。したがって、G129の代わりに任意のアミノ酸も用いると、これらの種のそれぞれにおいてPRLAを産生するはずである(チェン(Chen)ら、Molec. Endocrinol.(1995))。一つの態様において、拮抗剤はグリシン129位の代わりにアルギニンのような、比較的かさ高い側鎖アミノ酸を用いることによって作製される。したがって、本発明の一つの局面は、かさ高い側鎖アミノ酸の代わりに小さな側鎖アミノ酸を用いると、タンパク質の拮抗剤型が得られるように、特定の位置での比較的小さな側鎖アミノ酸(すなわち、グリシン)の存在を特徴とする、PRLの保存的変異体を意図する。
【0039】
本発明の受容体拮抗ドメインにはまた、本明細書において考察した受容体拮抗ドメインの保存的変異体が含まれる。本発明のドメインの全体的な構造および組成は、その点においてそれらが適当な機能的特徴、すなわち受容体の拮抗作用、アポトーシスの誘導、正の免疫調節を付与する限り、重要である。
【0040】
本発明に従う保存的変異体は、一般的に、タンパク質ドメインの全体的な分子構造を保存する。開示のタンパク質産物を含む個々のアミノ酸の特性を意図すると、いくつかの合理的な置換が明白であると考えられる。アミノ酸置換、すなわち、「保存的置換」は、例えば、関与する残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、および/または両親媒性特性における類似性に基づいて行ってもよい。
【0041】
例えば:(a)非極性(疎水性)アミノ酸には、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、およびメチオニンが含まれる;(b)極性中性アミノ酸には、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、およびグルタミンが含まれる;(c)正荷電(塩基性)アミノ酸には、アルギニン、リジン、およびヒスチジンが含まれる;ならびに(d)負荷電(酸性)アミノ酸には、アスパラギン酸およびグルタミン酸が含まれる。置換は一般的に(a)〜(d)のグループ内で行ってもよい。さらに、グリシンおよびプロリンは、そのαヘリックス破壊能に基づいて互いに置換してもよい。同様に、アラニン、システイン、ロイシン、メチオニン、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジン、およびリジンのような特定のアミノ酸は、αヘリックスにおいてより一般的に認められ、バリン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、およびトレオニンは、βプリーツシートにおいてより一般的に認められる。グリシン、セリン、アスパラギン酸、アスパラギンおよびプロリンは、ターン構造において一般的に認められる。以下の群におけるいくつかの好ましい置換を行ってもよい:(i)SおよびT;(ii)PおよびG;ならびに(iii)A、V、L、およびI。既知の遺伝子コード、ならびに組換えおよび合成DNA技術があれば、当業者は保存的アミノ酸変異体をコードするDNAを容易に構築することができると考えられる。
【0042】
保存的変異体は特に、本明細書に記載の受容体拮抗ドメインの切断型を意図する。切断は、N末端またはC末端から作製してもよいが、一般に本来の分子の約30%を超える欠失は伴わない。より好ましくは、本来の分子の約20%未満、および最も好ましくは約10%未満を欠失させる。
【0043】
一般に、本発明のDNAおよびタンパク質分子はいずれも、「配列同一性」を参照して定義することができる。いくつかの分子は、少なくとも約50%、55%、または60%の同一性を有する。好ましい分子は少なくとも約65%の配列同一性、より好ましくは少なくとも70%の配列同一性を有する分子である。他の好ましい分子は少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも85%の配列同一性を有する。最も好ましい分子は、少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する。本明細書において用いられるように、二つの核酸分子またはタンパク質は、二つが85%を超える配列(アミノ酸または核酸)同一性を有する領域を含む場合、「有意な配列同一性を共有する」と言われる。
【0044】
「配列同一性」は、本明細書において、NCBI(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST)で入手できるBlast 2アルゴリズムを参照して、デフォルトパラメータを用いて定義される。このアルゴリズムに関する参考文献には以下が含まれる:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/blast_references.htmlにおいて認められる文献;アルトシュル、ギッシュ、ミラー、マイヤースおよびリップマン(Altschul, S.F., Gish, W., Miller, W., Myers, E.W.およびLipman, D.J.、(1990)「基本局所アラインメント検索手段(Basic local alignment search tool)」、J. Mol. Biol. 215:403〜410);ギッシュおよびステイツ(Gish, W.およびStates, D.J.、(1993)、「データベース類似性検索によるタンパク質コード領域の同定(Identification of protein coding regions by database similarity search)」、Nature Genet. 3:266〜272);マッデン、タツソフおよびザング(Madden, T.L., Tatusov, R.L.,およびZhang, J.、(1996)、「ネットワークBLASTサーバーの応用(Applications of network BLAST server)」、Meth. Enzymol. 266:131〜141);アルトシュル、マッデン、シェーファー、ザング、ザング、ミラーおよびリップマン(Altschul, S.F., Madden, T.L., Schaffer, A.A., Zhang, J., Zhang, Z., Miller, W.およびLipman, D.J.、(1997)、「ギャップトBLASTおよびPSI−BLAST:タンパク質データベース検索プログラムの新世代(Gapped BLASTおよびPSI−BLAST:a new generation of protein database search programs)」、Nucleic Acids Res. 25:3389〜3402);ならびにザングおよびマッデン(Zhang, J.およびMadden, T.L.、(1997)、「パワーBLAST:相互または自動配列分析および注釈のための新しいネットワークBLASTの応用(PowerBLAST:A new network BLAST application for interactive or automated sequence analysis and annotation)」、Genome Res. 7:649〜656)。したがって、表1に記載の配列を含む、異なる種由来のプロラクチンペプチド配列は、その本質的機能を保存するプロラクチン由来受容体拮抗ドメインにおける、さらなる変動に関する情報を与えるために、BLASTのような標準的なコンピュータープログラムを用いて整列させることができる。
【0045】
本明細書に開示の保存的変異体であるタンパク質に加えて、本発明はまた、腫瘍の増殖誘導において役割を果たすタンパク質を用いることを意図し、ここでアミノ酸の置換によってタンパク質がこの増殖を誘導する能力が阻害される。例えば、ウシ成長ホルモン(bGH)およびhGHのグリシン119位およびグリシン120位はそれぞれ、成長増強を刺激するGHの作用において重要な役割を有する。成長ホルモン受容体(GHR)の二量体形成は、HGシグナル伝達にとっての重要な段階であると考えられる。したがって、これらの各位置での何らかのアミノ酸置換(アラニン以外)、特にアルギニンのようなかさ高い側鎖へのアミノ酸置換は、受容体の二量体形成を妨害し、その結果成長ホルモン拮抗剤(GHA)となる。このように、GHAのような拮抗剤が本発明によって意図される。
【0046】
アポトーシスの予防に関係する細胞成分の正常な機能に拮抗することに加えて、本発明はさらに、アポトーシス促進ドメインの意味において、積極的な手段によってアポトーシスを誘導する物質を含む。すなわち、そのような物質は、抗アポトーシス経路に拮抗することによって作用しない;むしろ、それらはアポトーシス経路を誘導する。そのような物質の例は、ケレリトリンを含むプロテインキナーゼC(PKC)阻害剤である。
【0047】
ベンゾフェナントリジンアルカロイドであり、トッダリンとしても知られるケレリトリン(1,2−ジメトキシ−12−メチル[1,3]ベンゾジオキソロ[5,6−c]フェナントリジニウム;C21H18NO4)は、クサノオウ(Chelidonium majus)、ザントキシラム・シミュランス(Zanthoxylum simulans)、サンギナリア・カンデンシス(Sanguinaria candensis)(またはブラッドルート)、タケニグサ(Macleaya cordata)、カリダリ・セブクトコジイ(Carydali sevctocozii)、カリダリ・レデバウニ(Carydali ledebouni)、クサノオウ(Chelidonium majus)、および他のケシ科植物から純粋な形で、または他のベンゾフェナントリジンアルカロイドとの混合物のいずれかとして抽出することができる。
【0048】
PKCの阻害剤は、活性化が起こると、基質結合部位(ATPもしくはタンパク質)または調節ドメイン(ジアシルグリセロールもしくはホルボルエステル結合部位)と相互作用することができる。ケレリトリンは、PKCの触媒ドメインと直接相互作用する。これは同定されたPKCの最も強力な阻害剤の一つであり、他のどのタンパク質キナーゼも阻害しないと考えられる。例えば、ケレリトリンは、ハーバート(Herbert)ら、Biochem Biophys. Res. Commun. 172:993(1990)によって議論されるように、細胞増殖および分化を阻害することによって、L−1210腫瘍細胞に対して強力な細胞障害作用を示し、IC50値は0.053 μMである。ケレリトリンはPKCを濃度依存的に特異的に阻害することによってアポトーシスを誘導し、アラキドン酸およびコラーゲンのような、強い凝集誘導剤によって誘導される血小板の凝集を強力に阻害する。
【0049】
このように腫瘍細胞に導入されると、塩化ケレリトリンはアポトーシス閾値を低下させ、アポトーシスを誘発することができる。これは、ケレリトリン治療を他の治療方法と組み合わせて用いる場合に特に当てはまる。したがって、例えば癌と闘うために用いられるもう一つの分子、例えば正の免疫調節物質ドメインと融合したケレリトリンを含む融合分子が、本発明によって意図される。ケレリトリンを含む分子は、例えば多機能架橋剤を用いて、従来の化学的手段によってもう一つの分子(すなわち、本明細書に記載のドメイン)に融合させることができる。タンパク質に基づくPKC阻害剤は、融合タンパク質として作製してもよい。
【0050】
正の免疫調節物質ドメイン
本発明はまた、正の免疫調節物質として作用する、さらなる、しかし別のドメインを意図する。好ましい免疫調節物質ドメインは、腫瘍に向けられる正の免疫応答を支持する。適した正の免疫調節物質の例には、Tリンパ球を腫瘍に動員し、それによって悪性組織での腫瘍特異的Tリンパ球細胞障害性を誘導することができるサイトカインが含まれる。好ましい態様において、正の免疫調節物質はT細胞依存的免疫応答の程度を制御できることを特徴とする、IL−2である。IL−2はまた、マクロファージおよび単球に対して活性を有する。さらに、IL−2はナチュラルキラー(NK)細胞の増殖を刺激し、その細胞溶解作用を増強する。
【0051】
IL−2の他に、本発明は、これらのまたは類似の特性を有するさらなるサイトカインを含む、他の分子を意図する。例えば、IL−12は、正の免疫調節物質ドメインを提示することができる。IL−12は、T細胞反応をTh1型に向けるための重要なサイトカインである。IL−12は、B細胞および単球/マクロファージによって産生され、IL−2と相乗的に作用して、T細胞およびNK細胞によるIFNγ産生を誘導する。これは同様に、T細胞とNK細胞の双方の細胞障害活性を増強する。本発明にはまた、前述の正の免疫調節物質ドメインの保存的変異体(上記のように)が含まれる。
【0052】
正の免疫調節物質ドメインのその他の適した候補物質には、インターフェロン(IFN)が含まれる。例えば、IFN−βはそれ自身、腫瘍の細胞増殖を阻害することが知られている。IFN−βは抗腫瘍活性に関する普遍的なマクロファージ活性化剤である。したがって、アポトーシス促進ドメインと結合したIFN−βを含む融合分子は、標的組織に限局された正の免疫調節による治療を提供すると考えられる。
【0053】
典型的な双機能分子の調製:
本発明によって意図される双機能タンパク質は、先に述べたドメインのそれぞれ、すなわち受容体拮抗ドメイン(同様に、アポトーシス促進ドメインであってもよい)および正の免疫調節物質ドメインを含むタンパク質であり、そのような融合の際に、双方のドメインは互いに独立して、実質的にその関連する特徴を保持している。図2は、これらの特徴に従う本発明の一つの態様を開示する。ドメインは融合タンパク質として一般的に産生されるが、ドメインはまた、例えば多機能架橋剤を用いて従来の化学的手段によって融合してもよい。融合タンパク質を作製する場合、いずれかのドメインをもう一方のC末端またはN末端に配置してもよい。
【0054】
一つの態様において、融合タンパク質は、図1に示すようにhPRLA−IL−2タンパク質である。この融合タンパク質は、実施例1および図5に示すように発現ベクターに組み入れることができる。次に、産生された発現ベクターを安定な細胞株にトランスフェクトして、その後精製タンパク質を産生することができる。実施例2および3は、ベクターの形質転換および精製過程を実行するための、非制限的な手法である。この融合タンパク質は、IL−2のN末端側に融合したPRLAのC末端を有し、これを図5に示す。しかし、本発明はまた、本明細書に記載のドメインを有する任意の融合タンパク質を意図する。
【0055】
融合タンパク質を作製するための適した方法は、これらのドメインのいずれかの生物活性を実質的に変化させない方法でなければならない。例えば、IL−2のN末端を抗体のC末端に融合させても、IL−2の生物活性は変化しないことが証明されている。ライスフェルド(Reisfeld)ら(1996)、上記。したがって、類似の戦略を用いて、本発明の融合タンパク質を作製することができる。この過程には、正の免疫調節物質ドメインのN末端を受容体拮抗ドメインのC末端に結合する、融合タンパク質をコードするcDNAを設計する段階が含まれる。
【0056】
さらに、hGH(本発明者らは、最大10個のアミノ酸を欠失させる)のC末端は、トランスジェニックマウスにおいて成長促進活性にとって重要でないという証拠があり(チェン(Chen)ら、1993)、かつ構造的類似性に基づき、正の調節物質とhPRLAのような他の受容体拮抗ドメインのC末端との融合体は、これらのドメインの結合親和性を変化させないはずである。
【0057】
本発明は、本明細書において意図した所望の融合タンパク質を作製するどの特定の方法にも限定されない。しかし、意図される組換え体作製方法に従って、本発明は本発明に記載のドメインのヌクレオチド配列の一つまたは複数を含む、組換えDNA構築物を提供する。本発明の組換え構築物は、その中に一般的にオープンリーディングフレームを含むDNAまたはDNA断片が、いずれかの方向に挿入される、プラスミドまたはウイルスベクターのようなベクターを含む。本発明はさらに、これらのベクターを含む細胞を意図する。
【0058】
組換えタンパク質の産生は当技術分野で周知であり、下記に簡単に概要する。
【0059】
細菌の発現
細菌において用いるために有用な細菌の発現ベクターは、所望のタンパク質をコードする構造DNA配列を、適した翻訳開始シグナルおよび終了シグナルと共に、機能的プロモーターを伴う実施可能な読みとり相で挿入することによって、構築される。ベクターは、ベクターの維持を確実にし、望ましければ宿主内で増幅するために、一つまたは複数の表現型選択マーカーおよび複製開始点を含むと考えられる。形質転換のための適した原核生物宿主には、大腸菌(E. Coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、ならびにシュードモナス(Pseudomonas)、放線菌(Streptomyces)、およびブドウ球菌(Staphylococcus)属内の様々な種が含まれるが、他の種も選択材料として用いてもよい。好ましい態様において、原核生物宿主は大腸菌である。
【0060】
細菌ベクターは、例えば、バクテリオファージ、プラスミド、またはコスミドに基づいてもよい。これらのベクターは、選択マーカー、および周知のクローニングベクターpBR32(ATCC 37017)の要素を一般的に含む市販のプラスミドに由来する、細菌の複製開始点を含みうる。そのような市販のベクターには、例えば、GEM 1(プロメガバイオテック、マディソン、ウィスコンシン州、アメリカ)、pBs、フェージスクリプト、PsiX174、pBleuscript SK、pBs KS、pNH8a、pNH16a、pNH18a、pNH46a(ストラタジーン);pTrc99A、pKK223−3、pKK233−3、pKK232−8、pDR540およびpRIT5(ファルマシア)が含まれる。本発明に従う好ましいベクターは、Pt71発現ベクター(パリ(Paris)ら、Biotechnol. Appl. Biochem. 12:436〜449(1990))である。
【0061】
これらの「骨格」部分を、適当なプロモーターおよび発現すべき構造配列と組み合わせる。細菌プロモーターには、lac、T3、T7、ラムダPRまたはPL、trpおよびaraが含まれる。T7が好ましい細菌プロモーターである。
【0062】
適した宿主株を形質転換して、宿主株を適当な細胞密度に増殖させた後、選択したプロモーターを適当な手段(例えば、温度シフトまたは化学的誘導)によって抑制/誘導して、細胞をさらなる期間培養する。細胞は一般的に、遠心分離によって回収して、物理的または化学的手段によって破壊し、得られた粗抽出物をさらなる精製のために残しておく。
【0063】
真核細胞発現
様々な哺乳類細胞培養系もまた、組換え型タンパク質を発現させるために用いることができる。哺乳類の発現系の例には、チミジンキナーゼ陰性(TK)細胞およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ陰性(APRT)細胞のような、選択されたマウスL細胞が含まれる。他の例には、グルツマン(Gluzman)、Cell 23:175(1981)によって記述されたサル腎線維芽細胞のCOS−7株、および適合性のベクターを発現することができる他の細胞株、例えば、C127、3T3、CHO、HeLaおよびBHK細胞株が含まれる。哺乳類の発現ベクターは、複製開始点、適したプロモーター、およびエンハンサーを含み、同様に任意の必要なリボソーム結合部位、ポリアデニル部位、スプライス供与部位および受容部位、転写終了配列、ならびに5’隣接非転写配列を含むと考えられる。SV40ウイルスゲノムに由来するDNA配列、例えば、SV40開始点、初期プロモーター、エンハンサー、スプライス部位、およびポリアデニル部位を用いて、必要な非転写遺伝子要素を提供してもよい。
【0064】
哺乳類プロモーターには、CMV前初期、HSVチミジンキナーゼ、初期および後期SV40、レトロウイルス由来のLTR、ならびにマウスメタロチオネイン−Iが含まれる。典型的な哺乳類ベクターには、pWLneo、pSV2cat、pOG44、pXT1、pSG(ストラタジーン)、pSVK3、pBPV、pMSG、およびpSVL(ファルマシア)が含まれる。好ましい態様において、哺乳類の発現ベクターはpUCIG−METである。選択マーカーには、CAT(クロラムフェニコールトランスフェラーゼ)が含まれる。
【0065】
哺乳類の宿主細胞において、多数のウイルスに基づく発現系を利用してもよい。アデノウイルスを発現ベクターとして用いる場合、関係するコード配列を、アデノウイルス転写/翻訳制御複合体、例えば後期プロモーターおよび三連リーダー配列にライゲーションしてもよい。次に、このキメラ遺伝子をインビトロまたはインビボでの組換えによって、アデノウイルスゲノムに挿入してもよい。ウイルスゲノムの非必須領域への挿入(例えば、領域E1またはE3)の結果、生存可能であって、かつ感染宿主において標的タンパク質を発現することができる組換え型ウイルスが得られると考えられる(例えば、ローガン(Logan)ら、1984、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3655〜3659を参照のこと)。
【0066】
治療的組成物:
本発明のタンパク質は、薬学的に有用な組成物を調製するために、既知の方法に従って処方することができ、それによって本発明の分子またはその機能的誘導体を薬学的に許容される担体賦形剤との混合物において組み合わせる。他のヒトタンパク質、例えばヒト血清アルブミンを含む、適した賦形剤およびその処方は、例えば「レミントンの製薬科学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)」、(第16版、オソル(Osol, A.)編、マック、イーストン、ペンシルバニア州(1980))に記載されている。有効な投与に適した、薬学的に許容される組成物を形成するために、そのような組成物は、本発明の一つまたは複数のタンパク質の有効量を担体賦形剤の適量と共に含むと考えられる。
【0067】
本発明に従って用いられる薬学的組成物は、一つまたは複数の生理的に許容される担体または賦形剤を用いて、従来の方法において処方してもよい。このように、双機能分子およびその生理的に許容される塩および溶媒化合物は、吸入、もしくは通気(insufflation)(口または鼻のいずれかを通して)、または経口、口腔内、非経口、もしくは直腸投与によって投与するために処方してもよい。
【0068】
経口投与の場合、薬学的組成物は、例えば、結合剤(例えば、予めゼラチン処理したトウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、もしくはヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、乳糖、微結晶セルロース、もしくはリン酸水素カルシウム);潤滑剤(ステアリン酸マグネシウム、タルクもしくはシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプンもしくはグリコール酸デンプンナトリウム);または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)のような薬学的に許容される賦形剤を用いて従来の手段によって調製された錠剤、またはカプセル剤の形であってもよい。錠剤は、当技術分野で周知の方法によってコーティングしてもよい。経口投与のための液体調製物は、例えば、溶液、シロップ剤、もしくは懸濁剤の形であってもよく、またはそれらは使用前に水もしくは他の適した溶媒によって溶解するための乾燥製品の形であってもよい。そのような液体調製物は、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体、または硬化食用油);乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア);非水性溶媒(例えば、アーモンド油、油状エステル、エチルアルコール、または精留食用油);および保存剤(例えば、メチルまたはプロピル−p−ヒドロキシベンゾエートまたはソルビン酸)のような、薬学的に許容される添加剤を用いて従来の手段によって調製してもよい。調製物はまた、適当であれば緩衝塩、着香料、着色剤および甘味料を含んでもよい。
【0069】
経口投与のための調製物は、活性化合物の放出を制御するように適切に処方してもよい。口腔内適用の場合、組成物は、従来の方法で処方された錠剤またはロゼンジの形であってもよい。
【0070】
吸入投与の場合、本発明に従って用いられる双機能分子は、適した噴射剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、または他の適したガスを用いて加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレーの形で都合よく送達される。加圧式エアロゾルの場合、用量単位は、計測した量を送達するための弁を提供することによって決定してもよい。化合物の粉末混合物および乳糖またはデンプンのような適した粉末基剤を含む、吸入器ーまたは注入器において用いるためのゼラチンのようなカプセルおよびカートリッジを処方してもよい。
【0071】
双機能タンパク質は、注射、例えば、大量注射または持続的注入による非経口投与のために処方してもよい。注射用製剤は、単位投与剤形、例えば保存剤を添加したアンプルまたは多用量容器であってもよい。組成物は、油性または水性賦形剤中の懸濁剤、溶液、または乳剤の形であってもよく、懸濁剤、安定化剤、および/または分散剤のような処方物質を含んでもよい。または、活性成分は、使用前に適した賦形剤、例えば滅菌した発熱物質不含水で溶解するための粉末形状であってもよい。
【0072】
化合物はまた、例えばカカオバターまたは他のグリセリドのような従来の坐剤基剤を含む坐剤、または浣腸のような直腸組成物において、処方してもよい。
【0073】
先に記述した処方の他に、双機能分子は、デポー調製物として処方してもよい。そのような長時間持続型製剤は、埋め込み(例えば、皮下または筋肉内)、または筋肉内注射によって投与してもよい。このように、例えば、化合物は適したポリマーもしくは疎水性材料(例えば、許容される油中の乳剤として)、またはイオン交換樹脂と共に、またはほとんど溶解しない誘導体、例えば難溶性の塩として処方してもよい。
【0074】
組成物は、望ましければ活性成分を含む、一つまたは複数の単位用量剤形を含んでもよい、パックまたはディスペンサー装置において提供してもよい。パックは例えば、ブリスタパックのような金属またはプラスチックホイルを含んでもよい。パックまたはディスペンサー装置は、投与説明書を添付してもよい。
【0075】
組成物は、癌の治療において有用であるため、従来の化学療法剤と共に処方してもよい。従来の化学療法剤には、アルキル化剤、抗代謝剤、様々な天然物(例えば、ビンカアルカロイド、エピポドフィロトキシン、抗生物質、およびアミノ酸枯渇酵素)、ホルモンならびにホルモン拮抗剤が含まれる。特定のクラスの物質には、ナイトロジェンマスタード、アルキルスルホネート、ニトロソウレア、トリアゼン、葉酸類似体、ピリミジン類似体、プリン類似体、プラチナ複合体、副腎皮質抑制剤、副腎皮質ステロイド、プロゲスチン、エストロゲン、抗エストロゲンおよびアンドロゲンが含まれる。いくつかの典型的な化合物には、シクロホスファミド、クロラムブシル、メソトレキセート、フルオロウラシル、シタラビン、チオグアニン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、マイトマイシン、シスプラチン、ヒドロキシウレア、プレドニゾン、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、ジエチルスチルベストロール、エチニルエストラジオール、タモキシフェン、プロピオン酸テストステロン、およびフルオキシメステロンが含まれる。乳癌を治療する場合、例えば、タモキシフェンが特に好ましい。
【0076】
発明の方法:
治療方法
本発明に従う本発明の治療方法は一般に、先に同定した双機能タンパク質を利用する。融合タンパク質のドメインは、標的組織の特異的ターゲティング能および/または標的組織に対する免疫応答の増強能を共有する。したがって、典型的な方法は、融合タンパク質の受容体拮抗ドメインへの標的細胞の受容体の結合、および/または正の免疫調節物質ドメインによるT細胞依存的免疫応答の刺激を含む。
【0077】
治療方法は、治療を必要とする被験者に、融合タンパク質の治療的有効量を投与する段階を含む。「治療的に有効な」とは、本明細書において、癌の増殖を阻害するかまたは後退させる(例えば、アポトーシスを誘導する)ために十分な量である、融合タンパク質の量を意味するために用いられる。いくつかの方法は、既知の癌用薬剤または治療、例えば化学療法(好ましくは上記の種類の化合物を用いる)もしくは放射線療法との併用療法を意図する。患者はヒトまたはヒト以外の動物であってもよい。患者は一般的に、癌の維持または増殖を促進する、受容体レベルの増加を特徴とする癌を有する場合に、治療を必要とすると考えられる。
【0078】
インビボ治療の際の投与は、非経口および経口を含む任意の数の経路でなされてもよいが、好ましくは非経口投与である。嚢内、静脈内、髄腔内、および腹腔内投与経路を用いてもよいが、一般に静脈内投与が好ましい。当業者は、投与経路は治療すべき障害に応じて変化することを認識すると考えられる。
【0079】
本発明に従う双機能タンパク質の治療的有効量の決定は、特定の患者の特徴、投与経路、および治療される障害の特性に大きく依存すると考えられる。一般的な手引きは、例えば国際調和会議の刊行物およびレミントンの製薬科学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)、第27章および28章、484〜528頁(マックパブリッシングカンパニー、1990)に見出される。
【0080】
治療的有効量の明確な決定は、薬剤の毒性および有効性のような要因に依存すると考えられる。毒性は、当技術分野で周知の方法を用いて決定してもよく、前述の参考文献に認められる。有効性は、実施例において下記に記述する方法と共に同じ手引きを利用して決定してもよい。したがって、薬学的有効量は、医師によって毒性学的に許容でき、なおも有効であると考えられる量である。例えば、有効性は、標的組織でのTリンパ球細胞障害性の誘導もしくは実質的な誘導によって、または標的組織塊の減少によって、測定することができる。適した用量は、約1mg/kg〜10 mg/kgでありうる。
【0081】
融合タンパク質の生物活性を決定するためのスクリーニングアッセイ法
本発明はまた、アポトーシス促進ドメイン、正の免疫調節物質ドメイン、および/またはこれらのドメインのそれぞれを含む、融合タンパク質の生物活性を比較するために用いることができる、細胞に基づくアッセイ系を提供する。この目的のため、融合タンパク質の融合ドメインが融合していない場合(すなわち、融合タンパク質の一部ではない)、各ドメインに類似の機能を確実に保持するように細胞増殖アッセイを用いる。
【0082】
一つの態様において、融合タンパク質の生物活性は、インビトロで2つの異なる型の細胞株、すなわち特異的ドメインの活性を決定する各細胞株に、タンパク質を導入することによって決定されると考えられる。例えば、アポトーシス促進ドメインの生物活性の信頼できる指標である細胞株を、そのドメインの作用を調べるために用いなければならず、他のドメインの活性をモニターするためには、正の免疫調節物質ドメインを示すことができる細胞株を用いなければならない。
【0083】
細胞株に様々な濃度の特定のドメインを、その拮抗、非拮抗、および融合型で導入することによって、当業者はその非融合型の同じドメインと比較して、融合タンパク質のアポトーシス促進ドメインの生物活性を決定することができる。アポトーシスを測定する方法は無数にある。これらの方法には、以下の技術が含まれるがこれらに限定されない:(1)細胞生存率の喪失−生体色素の排除、またはMTT(3−(4,5−ジメチルチアゾル−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロマイド)もしくはMTS−PMSの取り込みのいずれかの障害によって測定する;(2)DNA断片化−アガロースゲル電気泳動、PFG電気泳動、インサイチューターミナルトランスフェラーゼ標識(TUNEL)によりアッセイする;細胞および核の形態学−顕微鏡を用いて染色質濃縮、DNA構築、および細胞質の完全性を可視化する;ならびにシステインプロテアーゼ活性化アッセイ−比色もしくは蛍光読み出しと組み合わせた、カスパーゼ活性化アッセイ、ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)、またはウェスタンブロットもしくは免疫組織化学によるラミニン切断を利用する。ヒト乳癌細胞株(T−47D)を用いる実施例4および9は、許容されるアッセイ系のこの程度までの非制限的な実施例を提供する。
【0084】
同様に、正の免疫調節物質ドメインの活性を測定することができる細胞株も同様に用いて、融合タンパク質のこのドメインの活性をモニターしなければならない。マウスT細胞株(HT−2)を用いる実施例9は、融合タンパク質における正の免疫調節物質ドメインの生物活性を決定するための一つの可能な、しかし非制限的な方法である。
【0085】
本発明の融合タンパク質の活性を決定するためのもう一つの好ましい方法は、インビボでの実施試験である。この試験の適した宿主は、融合タンパク質のアポトーシス促進ドメインに結合することができる癌組織を含む、哺乳類宿主であると考えられる。適した対照は、選択したアポトーシス促進ドメインのための受容体部位をほとんどまたは全く含まないことを特徴とする、任意の細胞株でありうる。実施例10は、マウス細胞を用いたインビボ試験の非制限的な実施例を提供する。
【0086】
以下の実施例は説明するためであって、制限的であるようには意図されていない。
【0087】
実施例
実施例1:発現プラスミドpUCIG−MT−Hpla−IL2融合タンパク質cDNAのクローニングおよび構築
hPRLA cDNA(XbaI制限部位から翻訳停止コドンの直前の配列まで)およびアミノ酸配列+1部位から翻訳停止コドンまでの、IL−2 cDNA(ATCCから購入)由来のPCR断片をそれぞれ、個々に増幅した。次に、これらの断片を哺乳類の発現ベクターであるpUCIG−METにライゲーションして、これらの断片を組み入れた発現ベクターを作製した(すなわちpUCIG−MET−hPRLA−IL2)。hPRLAとIL−2 cDNAのあいだにクローニング目的のためにBamHI制限酵素部位を付加すると、融合タンパク質の接合部で余分なアミノ酸残基2個(グリシンおよびセリン)が得られた。
【0088】
実施例2:安定な細胞株への発現プラスミドのトランスフェクト
本発明者らは既に、インビトロ試験において予備試験のためにhPRL−IL−2、およびhPRLA−IL−2をプールした安定なマウス細胞を作製した。本発明に従う融合タンパク質を作製するために、マウスL細胞を用いる。これらの細胞はまず、リポフェクチン法(ギブコBRL、ガイサースバーグ、メリーランド州)を用いて、マウスメタロチオネイン調節配列によって駆動されるhPRLA−IL−2 cDNAをコードするDNA分子を、ヘルペスウイルスTK遺伝子およびハムスターAPRT遺伝子(ロイング(Leung)ら、1985)に加えて共トランスフェクトする。TK+、APRT+表現型に関する二重選択の後、安定なhPRLまたはhPRL類似体分泌マウスL細胞株を、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、ギブコBRL、ガイサースバーク、メリーランド州)+10%Nu−血清(コラボレイティブリサーチ、ベドフォード、マサチューセッツ州)、15 μg/mlヒポキサンチン、1μg/mlアミノプテリン、15 μg/mlチミジンおよび50 μg/mlゲンタマイシンにおいて確立し、維持する。細胞を、90%の集密度に達するまでT150フラスコにおいて継代する。その際に、血清不含条件培地を24時間毎に回収してプールする。プールした培地をさらなる精製を行うまで−20℃で凍結する。
【0089】
実施例3:融合タンパク質の精製
融合タンパク質の収量を増加させるため、当技術分野で周知の手法に従って、それらをまず精製することが望ましい。これらの段階には以下が含まれる:遠心分離による培養物からの細胞の除去、その後の沈殿、クロスフロー限外濾過、ならびに低圧SECおよび調整的RP−HPLCクロマトグラフィーのようなクローニング方法が含まれる。これらの段階の後に、緩衝液交換、発熱物質除去、および凍結乾燥を行う。
【0090】
段階1:細胞の除去−条件培地80〜100%を6000×g、4℃で30分間遠心分離する。開始細胞培養培地の容量は80 L〜100 Lである。hPRL−G129Rは全てこの段階で回収される。
【0091】
段階2:沈殿−沈殿手法は、細胞培養培地10 Lに硫酸アンモニウム3.5 kgを絶えず攪拌しながら徐々に加えることによって行う。溶液を4℃で12時間放置する。上清を遠心分離して捨てる。次に、沈殿物を蒸留水2Lに溶解する。溶解しない不純物を遠心分離によって除去する。遠心分離段階は全て6000×g、4℃で30分間行う。溶液の最終容量は約5Lである。
【0092】
段階3:クロスフロー限外濾過を用いる容量の減少−攪拌細胞2000 ml中で10K分子量カットオフ膜を用いて、SECサイズ排除カラムの吸着層容積の10%に達するように、溶液の容量を減少させる。この膜濾過段階は55 psiで操作する。
【0093】
段階4:低圧SEC−この低圧SEC段階の目的は、大きいサイズの不純物および調整的RP−HPLCカラムを汚染させる可能性がある、小さなサイズの不純物を除去することである。低圧SECは、バイオラドP60ゲルを充填した44×1000 mmアミコンガラスカラムにおいて行う。ゲルの吸着層の容積は1231 mlである。0.05 M硫酸アンモニウムを流速0.5 ml/分でカラムを通過させる。装置全体を冷蔵庫に入れて4℃で維持する。
【0094】
段階5:調整的RP−HPLC−この作業において、UV−可視検出器を備えたウォーターズ(ミリポアコーポレーション、ベッドフォード、マサチューセッツ州)調整的HPLCを用いる。レイニン・インストルメント・インク(ウォバーン、マサチューセッツ州)からの調整的スケールダイナマックスC、RP−BPLCカラム(21.4×250 mm、5gm、300A孔サイズ)を用いて高純度のhPRL−G129R産物を得る。40%アセトニトリル(ACN)(v/v)+0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)から80%ACN+0.1%TFAへの直線勾配を用いて分離を行った。直線勾配は60分間確立して、移動相の流速は5ml/分である。UV検出器は220 nmに設定する。
【0095】
段階6:緩衝液の交換−残っている有機溶媒を、膜透析を用いて緩衝液交換によって除去する。緩衝液交換はアミコンYMIO膜によって攪拌細胞50 ml中で行う。限外濾過系は、タンパク質溶液を添加する前に発熱物質除去プロトコールに従って調製する。有機溶媒は、何度か流した後に非発熱物質蒸留水によってディアフィルトレーションする(diafilter)。hPRL−G129Rは、50 ml保持溶液において保持する。
【0096】
段階7:発熱物質除去−これらの産物はインビボで用いられるために、非発熱性産物が好ましい。したがって、100K膜濾過段階を用いて発熱物質を除去する。発熱物質除去は、100K膜を用いて攪拌細胞50 ml中で行う。攪拌した細胞を、発熱物質除去プロトコールに従って0.1 N NaOH溶液によって処理する。保持溶液を非発熱性水で3回洗浄し、浸透液中でhPRL−G129Rを回収する。浸透液の容量は〜100 mlである。hPRLまたはhPRL−G129Rの濃度は、放射免疫基質アッセイ法(RIMA)によって決定する。
【0097】
段階8:凍結乾燥−凍結乾燥は、最終産物を保存するために必要である。hPRL−G129Rは、凍結乾燥型でより安定である。液体溶媒は全て、遠心真空エバポレーターを備えた凍結乾燥装置において除去する。次に、凍結乾燥hPRL−G129R試料を−20℃の冷凍庫内でN2中で保存する。
【0098】
実施例4:放射受容体結合アッセイ法による、精製hPRLおよびhPRL−G129Rの生物活性試験
放射受容体結合アッセイ法は、PRLをGHの代わりに用いた点を除き、チェン(Chen)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:5061(1991)において既に記載されているとおりに実施する。簡単に説明すると、T−47D細胞を6ウェル組織培養プレートにおいて、90%の集密度(〜105個/ウェル)になるまで増殖させる。細胞単層を血清不含RPMI 1640培地中で2時間飢餓状態にする。次に、細胞を、8×104 cpmの125I−hPRL(比活性=30 μCi/μg;NENデュポン、ボストン、マサチューセッツ州)を含む血清不含RPMI 1640中で、様々な濃度のhPRL(標準物質としてNIHから)およびhPRL−G129Rの存在下または非存在下で、室温でインキュベートする。次に、細胞を血清不含RPMI 1640培地中で3回洗浄して、0.1 N NaOH/1%SDS 0.5 ml中で可溶化して、結合した放射活性をガンマカウンター(ICNバイオメディカル、モデル4/600プラス;コスタメサ、カリフォルニア州)によって決定する。次に、hPRLおよびhPRL−G129RのEC50値を決定して、平均値±SDとして表記する。比較は、スチューデントのt検定によって行う。
【0099】
実施例5:STAT 5リン酸化/免疫沈降アッセイ法による、精製hPRLおよびhPRL−G129Rの生物活性試験
T−47D細胞を10%活性炭除去ウシ胎児血清(CSFBS;増殖培地)を含むRPMI 1640培地において増殖させる。各実験に関して、細胞を90%の集密度に達するまで、増殖培地中で6ウェル培養プレートに継代する。実験当日、細胞を血清不含培地において1時間枯渇させて、hPRL、hPRL−G129Rまたは両者の組み合わせと共に30分間インキュベートする。処置後、T47−D細胞を氷冷PBSによって1回洗浄して、氷冷溶解緩衝液[20 mMトリスCl(pH 7.4)、100 mM NaCl、2mM EDTA、1%NP−40、1mMフッ化フェニルメチルスルホニル、10 μg/mlアプロチニン、10 μg/mlロイペプチン]1ml中で軽く剥がして回収する。この溶解混合物を、気泡ができないように22ゲージ針の中を数回上下させて、最高速度で20分間回転させる。上清を新しい微量遠心管に移す。STAT 5モノクローナル抗体5μgを、ddH2O 400μlおよび2×IP緩衝液[1%トリトンX−100、150mM NaCl、10 mMトリス、pH 7.4、1mM EDTA、1mM EGTA、0.2 mMバナジン酸ナトリウム、0.2 mM PMSF、0.5%NP−40]500 μlと共に、細胞溶解物100 μl(総タンパク質200〜500 μg)に加える。4℃でゆっくり回転させながら一晩インキュベートした後、予め洗浄した(1×IP緩衝液)プロテインAアガロースビーズ50 μlを各IP反応に加えて、インキュベーションを4℃でさらに2時間継続する。インキュベーション終了時、アガロースビーズを1×IP緩衝液によって3回洗浄して、1×SDS PAGE添加緩衝液50 μl中にプロテインAアガロースビーズを再懸濁させることによって、タンパク質を溶出する。次に、試料を4%〜12.5%SDS−PAGEに供し、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合抗ホスホチロシン抗体PY20およびECL試薬キット(アマシャム、イリノイ州)を用いて、免疫ブロットを行う。次に、ブロットをX線フィルムに感光させて、標準的な手法を用いて現像する(コダック、ロチェスター、ニューヨーク州)。T−47Dヒト乳癌細胞に対してhPRLおよびhPRL−G129Rを用いた結果は、hPRL−G129Rが同様に、hPRLによって誘導されるシグナル伝達を阻止することができることを証明し、このことはその拮抗剤作用を示唆する。
【0100】
実施例6:TUNELアッセイ法による、精製hPRLおよびhPRL−G129Rの生物活性試験
このアッセイ(フルオレセインアポトーシス検出システム、プロメガ)は、3−OH末端で断片化DNAの切れ目を標識することによって作用する。フルオレセイン標識dUTPは、ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼによって3−OH末端で組み入れられる。T47−Dヒト乳癌細胞を用いる。アッセイの前に、乳癌細胞を10%活性炭除去ウシ胎児血清(CCS)に1週間切り替える。その後、細胞を8チャンバー式スライドシステム(ラブテックII)に1室あたり60%〜70%の集密度で播種する。翌日、乳癌細胞をhPRL−G129R条件培地(0.5%CSS)中で様々な濃度のhRPL−G129Rによって処理する。約24時間〜48時間後、チャンバーを解体して製造元の説明書の通りにアッセイを行う。オリンパスIX 70顕微鏡システムを用いてFITCフィルター下でスライドガラスを調べる。
【0101】
実施例7:hPRLA−IL−2融合タンパク質濃度の決定
SDS−PAGEおよび免疫ブロット分析を行って、発現されたhPRLA−IL−2融合タンパク質が適当な分子量を有することを確認する。一過性にトランスフェクトしたマウスL細胞からの培養液を回収し、バイオラドプロテインIIまたはミニプロティーンIIシステム(バイオラド、ハーキュラス、カリフォルニア州)を用いて、本発明者らの研究室で日常的に行われている15%SDS−PAGEに供する。タンパク質の転写後、ニトロセルロース紙を2%ゼラチンのTBS溶液で軽く攪拌しながら室温で1時間ブロックした後、0.05%ツイーン20のTBS溶液(5分/洗浄)によって3回洗浄する。ポリクローナルウサギ抗hPRL(バイオデザインインターナショナル、ケネバンク、メイン州、200倍希釈)の1%ゼラチン/TBS溶液をニトロセルロース膜に加えて、室温で軽く攪拌しながら一晩インキュベートする。一次抗体を除去した後、ニトロセルロース紙を0.05%ツイーン20のTBS溶液によって3回洗浄した後、ヤギ抗ウサギIgG西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合体(ベーリンガー・マンハイム・バイオケミカルズ)の1%ゼラチン/TBS溶液の存在下で、室温で2時間インキュベートする。二次抗体と共にインキュベートした後、ニトロセルロースを0.05%ツイーン20のTBS溶液によって3回洗浄する。
【0102】
タンパク質のバンドを可視化するために、ニトロセルロース紙を0.018%H2O2(v/v)のTBS溶液50 ml、およびHRP発色試薬(バイオラド)30 mgを含むメタノール10 mlとの混合物中で、10分間インキュベートする。ニトロセルロース紙を水ですすぎ、風乾させて、写真を撮影する。精製hPRL、およびIL−2(アキュレートケミカルおよびサイエンティフィック、ウェストバリー、ニューヨーク州)を用いて、写真撮影および密度測定法(フェルナンデスおよびコプチック(FernandezおよびKopchick)、1990)によって、発現されたhPRLA−IL−2レベルを定量する。
【0103】
実施例8:放射受容体結合アッセイ法およびヒト乳癌細胞を用いる、hPRLA−IL−2融合タンパク質の結合特徴の決定
この実験の主な目的は、hPRLAとIL−2との融合が乳癌細胞におけるhPRLAに対する結合能に影響を及ぼさないことを確認するために、ヒト乳癌細胞を用いてhPRL、hPRLAおよびhPRLA−IL−2融合タンパク質の結合親和性を比較することである。
【0104】
放射受容体結合アッセイ法は、チェン(Chen)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:5061(1991)に記載の通りに実施する。簡単に説明すると、T−47D細胞を6ウェル組織培養プレートにおいて90%の集密度(〜105個/ウェル)になるまで増殖させる。細胞単層を血清不含RPMI 1640培地中で2時間飢えさせる。次に、細胞を、8×104 cpmの125I−hPRL(比活性=30 μCi/μg;NENデュポン、ボストン、マサチューセッツ州)を含む血清不含RPMI 1640中で、様々な濃度のhPRL(標準物質としてNIHから)およびhPRL−G129Rの存在下または非存在下で、室温でインキュベートする。次に、細胞を血清不含RPMI 1640培地中で3回洗浄して、0.1 N NaOH/1%SDS 0.5 ml中で可溶化して、結合した放射活性をガンマカウンター(ICNバイオメディカル、モデル4/600プラス;コスタメサ、カリフォルニア州)によって決定する。次に、hPRLおよびhPRL−G129RのEC50値を決定して、平均値±SDとして表記する。比較は、スチューデントのt検定によって行う。非特異的結合は、非標識hPRL1μg/ml+IL−2 1μgを加えることによって決定する。
【0105】
実施例9:細胞増殖アッセイ法を用いたIL−2、hPRLA、およびhPRLA−IL−2融合タンパク質の生物活性の比較
本試験において2つの型の細胞増殖アッセイ法を用いて、hPRLA−IL−2融合タンパク質がhPRLA様活性と共にIL−2様活性を保持していることを確認する。マウスT細胞株(HT−2細胞)は、一般的に組換え型マウスおよびヒトIL−2の生物活性を調べるために用いられているIL−2反応性細胞株であり、これを用いて融合タンパク質のIL−2様活性を調べる(タニグチ(Taniguchi)ら、1983;ローゼンバーグ(Rosenberg)ら、1984)。さらに、ヒト乳癌細胞を用いて潜在的な拮抗活性に関して、融合タンパク質を調べる。
【0106】
ヒト乳癌細胞株(T47−D)を用いる(ATCCから)。細胞をATCCの推奨に従う対応する増殖培地中で増殖させる。アッセイ条件は、ギンスブルグおよびフォンデルハール(GinsburgおよびVonderharr、1995)によって記述され、それぞれの細胞株について改変してもよい。一般に、細胞は空気中に5%CO2の湿潤大気中で37℃で維持する。個々の増殖実験に関して、細胞を12ウェル培養プレートに約2×104個/ml/ウェルの密度で播種する。細胞を1日接着させて、培地を除去し、ITS+(インスリン−トランスフェリン−セレニウム−BSA−リノレン酸培養添加物;コラボレイティブリサーチ、ベッドフォード、マサチューセッツ州)を含む培地によって血清不含条件に変更する。様々な濃度のhPRL、hPRLA、hPRLA−IL−2または両者の組み合わせ(hPRLA:hPRLまたはhPRLA−IL−2:hPRLを1:1、5:1、10:1等)を加える。さらに3日間培養した後、細胞を短いトリプシン処理後に回収して、細胞計数器で計数する。
【0107】
実施例10:hPRLA−IL−2融合タンパク質の抗腫瘍活性を調べるための、同系マウスモデルを用いたインビボ試験
hPRLA−IL−2の抗腫瘍効果の最終的な試験は、インビボ試験である。この目的のために、融合タンパク質の潜在的な抗腫瘍活性を調べるために、同系免疫コンピテントC3Hマウス、および同じ系統のマウスに由来する乳腺癌細胞を用いる。
【0108】
特にCRL−6326および/またはCRL−6378マウス乳腺癌細胞を用いる。それらの細胞に対するPRLRの状態を確認するために、放射受容体結合アッセイ法をこれらの細胞について行い、それらがPRLRを含むことを確認する。2つの細胞株は陽性および陰性対照として用いる。一つの細胞株は、ATCCから購入したC3H由来マウスL細胞である。これらの形質転換線維芽細胞は、皮下注射すると腫瘍を誘導する。GHRまたはPRLRはL細胞表面上では検出不可能であるため(データは示していない)、L細胞は非乳癌対照として用いる。hPRLR cDNAを安定にトランスフェクトしたマウスL細胞株は、C3Hマウスにおいて腫瘍を誘導するために用いる。これらの細胞によって誘導された腫瘍は、細胞表面上に高レベルのhPRLRが存在するために陽性対照であると見なされる。
【0109】
癌のモデルとするために癌細胞5×106個を接種することによって、皮下腫瘍を誘発する。これは、10日以内に体積25 μlに増殖するように腫瘍を誘導する。ライスフェルド(Reisfeld)ら、上記。その時点で、動物をIL−2、PRLA、およびPRLA−IL−2融合タンパク質の静脈内投与によって7日間処置した。各群について2用量(5μgおよび25 μg/注射)を用いる。処置終了時、動物を屠殺して、処置を受けなかった、またはIL−2、hPRLA、もしくはhPRLA−IL−2融合タンパク質による処置を受けた、いずれかの動物において腫瘍重量を測定して、統計分析を行う。
【0110】
腫瘍の免疫組織学的評価も同様に行って、インサイチューでの細胞浸潤の証拠を調べる。簡単に説明すると、凍結切片を冷アセトン中で10分間固定した後、0.03%H2O2によって内因性ペルオキシダーゼを除去して、10%血清の1%BSA/PBS溶液によってコラーゲン性要素を阻止する。次に、CD45特異的抗体を既定の濃度(〜20 μg/ml)で連続切片上に重層して、スライドガラスを湿潤チャンバーにおいて30分間インキュベートする。各段階のあいだにPBS洗浄を行い、ビオチン結合二次抗体を10分間適用した後、ストレプトアビジン結合アルカリホスファターゼを10分間適用する。さらに洗浄した後、基質を加えて、スライドガラスを暗所で20分間インキュベートする。PBS中で洗浄した後、スライドガラスを対比染色して、オリンパス(ニューハイドパーク、ニューヨーク州)BH2顕微鏡に載せて、これを用いて観察する。
【0111】
以下の表は、hPRLA−IL2融合タンパク質の生物活性を調べるために、同系マウスおよび腫瘍細胞を用いる実験計画を示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の双機能分子の略図である。(A)ライスフェルドら(Reisfeld、1996)による先の研究において提唱されている、mAb−IL−2融合タンパク質、および(B)本発明に従うhPRLA−IL−2融合タンパク質。
【図2】本発明の双機能融合タンパク質に関して提唱される作用機序の略図である。乳癌細胞によって産生されるPRLは、融合タンパク質(PRLA)が占有していることからPRLRに達することができない。同時に、融合タンパク質のIL−2部分が抗腫瘍T細胞反応を刺激する。
【図3】共培養法を用いた、T−47Dヒト乳癌細胞におけるhPR1−G129Rの用量依存的な阻害作用、およびhPRLの刺激作用を示す。x軸は共培養したL細胞(対照)、L−PRLまたはL−hPRL−G129R細胞数を表す。各データポイントは、少なくとも3回の、3通のウェルでの独立した実験の平均値を表す。
【図4】T−47Dヒト乳癌細胞増殖アッセイにおけるhPRL−G129Rの用量依存的な阻害作用、および4−OH−タモキシフェンとの相加作用を示す。x軸は、4−OH−タモキシフェンの非存在下(白いバー)または存在下の、いずれかでのhPRL−G129R濃度を表す。各データポイントは、少なくとも3回の、3通のウェルでの独立した実験の平均値を表す。
【図5】pUCIG−MT−hPRL−IL−2融合タンパク質cDNAの、発現プラスミドのクローニングおよび構築の略図である。
Claims (27)
- 受容体拮抗ドメインおよび正の免疫調節物質ドメインを有する、タンパク質の有効量を患者に投与する段階を含む、癌を治療する方法。
- 受容体拮抗ドメインがプロラクチン拮抗剤ドメインである、請求項1記載の方法。
- 正の免疫調節物質ドメインがインターロイキンである、請求項1記載の方法。
- インターロイキンがインターロイキン2(IL−2)である、請求項3記載の方法。
- 正の免疫調節物質ドメインがインターロイキン12(IL−12)である、請求項3記載の方法。
- 正の免疫調節物質ドメインがγインターフェロン(IFNγ)である、請求項3記載の方法。
- タンパク質がプロラクチン拮抗剤−インターロイキン2(hPRLA−IL−2)融合タンパク質である、請求項1記載の方法。
- プロラクチン拮抗剤ドメインが、プロラクチンタンパク質の129位に対応する位置での、グリシンからアルギニンへの一アミノ酸置換を特徴とする、請求項2記載の方法。
- プロラクチン拮抗剤ドメインが、配列番号:1(hPRLA)のアミノ酸配列を有するタンパク質またはその保存的変異体を含む、請求項2記載の方法。
- プロラクチン拮抗剤ドメインが、本来のプロラクチン配列の切断型またはその保存的変異体を含む、請求項2記載の方法。
- 受容体拮抗ドメインおよび正の免疫調節物質ドメインを含む、タンパク質。
- 受容体拮抗ドメインがアポトーシス促進ドメインである、請求項11記載のタンパク質。
- アポトーシス促進ドメインがプロラクチン拮抗剤ドメインである、請求項12記載のタンパク質。
- 正の免疫調節物質ドメインがインターロイキンである、請求項12記載のタンパク質。
- インターロイキンがインターロイキン2(IL−2)である、請求項14記載のタンパク質。
- 正の免疫調節物質ドメインがIL−12である、請求項14記載のタンパク質。
- 正の免疫調節物質ドメインがIFNγである、請求項14記載のタンパク質。
- タンパク質が、プロラクチン拮抗剤−インターロイキン2(hPRLA−IL−2)融合タンパク質である、請求項12記載のタンパク質。
- プロラクチン拮抗剤ドメインが、プロラクチンドメインの129位に対応する位置での、グリシンからアルギニンへの一アミノ酸置換を特徴とする、請求項13記載のタンパク質。
- プロラクチン拮抗剤ドメインが、配列番号:1(hPRLA)のアミノ酸配列を有するタンパク質またはその保存的変異体を含む、請求項13記載のタンパク質。
- プロラクチン拮抗剤ドメインが、本来のプロラクチン配列の切断型またはその保存的変異体を含む、請求項13記載のタンパク質。
- 癌がプロラクチン受容体を発現するものとして特徴づけられる、請求項3記載の方法。
- 配列番号:1のアミノ酸配列を有する第一ドメインまたはその保存的変異体、および正の免疫調節物質ドメインを含む、タンパク質。
- 受容体拮抗ドメインがアポトーシス促進ドメインである、請求項1記載の方法。
- アポトーシス促進ドメインが、標的細胞においてSTAT3リン酸化を阻害することによって機能する、請求項24記載の方法。
- アポトーシス促進ドメインが、標的細胞においてSTAT3リン酸化を阻害することによって機能する、請求項12記載のタンパク質。
- 治療的有効量の請求項11記載のタンパク質、および適量の担体賦形剤を含む、薬学的組成物。
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