JP2004503503A - カンゾウ根から抽出した抗腫瘍活性を有するヒドロキシル化カルコン化合物 - Google Patents
カンゾウ根から抽出した抗腫瘍活性を有するヒドロキシル化カルコン化合物 Download PDFInfo
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Abstract
本発明は、癌を予防および治療するための組成物および方法を提供する。この組成物は、1−プロパノン−1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−ヒドロキシ−3−(4’−ヒドロキシフェニル)を含むグリシリザ・グラブラ(Glycyrrhiza glabra)由来の純粋なヒドロキシル化カルコン化合物を含有する。
Description
【0001】
緒言
本願は、2000年6月13日に提出した仮出願No. 60/211,266による優先権の利益を主張するものである。
【0002】
発明の背景
ハーブ製品は、ヒトの疾患治療での使用に対して人気を博している。ほとんどのハーブ製品の臨床効果は未知であるけれども、多くのハーブは、生物活性を有する誘導体を含有する。そのようなハーブのひとつがカンゾウ根(licorice root)である。カンゾウ根抽出物は生物活性を有することが示されており、例えば、その生物活性としては、抗酸化活性(Palagina, M.V. et al. 1999. Ter Arkh 71:45−48)、メラニン合成阻害(Yokota, T. et al. 1998. Pigment Cell Res. 11:355−361)、血管新生阻害(Kobayashi, S. et al. 1995. Biol. Phar,. Bull. 18:1382−1386)、抗菌活性(Mitscher, L.A. et al. 1980. J. Nat. Prod. 43:259−269)、抗寄生虫活性(Zhai, L. et al. 1995. Antimicrob. Agents. Chemotherap.39:2742−2748)、および抗腫瘍活性(Shibata,S. 1994. Stem Cells:44−52)等が挙げられる。様々な生物学的効果を担ういくつかの化合物が単離されている。そのような化合物としては、例えば、グラブリジン(Yokota, T. et al. 1998. Pigment Cell Res. 11:355−361)、イソリクイリチン(Kobayashi, S. et al. 1995. Biol. Pharm. Bull. 18:1382−1386)、グリチルリチン(Raggi, M.A. et al. 1995. Boll. Chim. Farm. 134:634−638)、およびリコカルコンA(非ヒドロキシル化カルコン化合物)(Shibata, S. 1994. Stem Cells 12:44−52)等が挙げられる。
【0003】
カンゾウ根を含むPC−SPESと呼ばれる8種類のハーブの組合せに関する最近の研究によって、PC−SPESが強力な臨床活性および生物活性を有することが示されている(DiPaola, R.S. et al. 1998. N. Engl. J. Med. 339:785−791)。PC−SPESは、化学的去勢を生じる植物性エストロゲンによる抗前立腺癌活性を示した。別の研究によって、カンゾウ根単独で男性における循環テストステロンレベルを減少させることが可能であることが示された(Armanini, D. et al. 1999. N. Engl. J. Med. 341:1158)。患者でのさらなる研究によって、PC−SPESは化学的去勢に対して不応の場合も抗腫瘍活性を有することが示されており、このことは他のメカニズムがこのカンゾウ−ハーブ併用療法の抗腫瘍活性の原因でありうることを示している(Small, E. et al. 1999. N. Engl. J. Med. 340(7):785−791)。
【0004】
さらにPC−SPES抽出物は、腫瘍細胞系統におけるアポトーシスおよびbcl−2の発現の減少を誘導することが示されている。Bcl−2は26 kDaのタンパク質であって、アポトーシス経路における重要な事象であるミトコンドリアからのシトクロムcの放出を抑制することによって細胞死を防ぐ。bcl−2の過剰発現は、細胞死を促進する刺激から細胞を保護する一方、bcl−2レベルの低下は細胞死および化学療法に対する感受性を増加させる(Reed, J.C. 1997. Nature 387:773−776)。最近の研究により、bcl−2発現を減少させるまたはリン酸化によってbcl−2を不活化する薬剤はアポトーシスを誘導することが示唆されている。例えば、パクリタキセル、ドセタキソール、ビンクリスチンおよびビンブラスチンは、微小管の構造を変化させ、bcl−2のリン酸化に関連してアポトーシスを誘導する(Hadlar, S. et al. 1996. Cancer Res. 56:1253; Haldar, S. et al. 1995. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:4507−4511)。
【0005】
現在、カンゾウ根から抽出された化合物、特にヒドロキシル化カルコン化合物が、アポトーシスの誘導と一貫する活性ならびに抗腫瘍剤および抗癌剤としての強力な活性を有することが見出されている。
【0006】
発明の概要
本発明の目的は、グリシリザ・グラブラ(Glycyrrhiza glabra)から抽出・精製したヒドロキシル化カルコン化合物を提供することである。好ましい実施形態において、該化合物は1−プロパノン−1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−ヒドロキシ−3−(4’−ヒドロキシフェニル)を含む。
【0007】
本発明の別の目的は、ヒドロキシル化カルコン化合物と細胞または組織とを接触させることを含むbcl−2のリン酸化を誘導する方法を提供することである。
【0008】
本発明のさらに別の目的は、ヒドロキシル化カルコン化合物と細胞または組織とを接触させることを含む、細胞または組織におけるアポトーシスを誘導する方法を提供することである。
【0009】
さらに本発明には、有効量のヒドロキシル化カルコン化合物と腫瘍細胞または組織とを接触させることによる、腫瘍細胞の増殖を抑制する方法ならびに癌を予防および治療する方法が含まれる。
【0010】
詳細な説明
カンゾウ根抽出物の特定の成分としてヒドロキシル化カルコンを同定した。ヒドロキシル化カルコンは、動物(ヒトを含む)における抗腫瘍効果と一貫する生物活性を有する。このカンゾウ根抽出物の成分は、動物(ヒトを含む)の癌の予防および治療における抗癌剤として使用することができると考えられる。
【0011】
本発明のヒドロキシル化カルコン化合物は、メタノール、エタノール、DMSOまたは酢酸エチルでカンゾウ根を抽出することにより同定した。粗抽出物画分を回収し、カンゾウ根全体の種々の画分の効果をイムノブロッティングにより評価した。酢酸エチル、DMSO、またはエタノールで抽出されたカンゾウ根抽出物は、ビヒクル対照(エタノールのみ)または水による抽出物と比較してより緩やかに移動するバンドによって示されるように、bcl−2のリン酸化を誘導した。
【0012】
今までの研究によって、bcl−2のリン酸化とG2/M期における細胞周期停止(arrest)との関連が確認された。したがって、さまざまなカンゾウ根抽出物の細胞周期に及ぼす効果も評価した。カンゾウ根抽出物は、パクリタキセル(対照)と同様にG2/M期における細胞周期停止を誘導した。したがって、これらの結果から、カンゾウ根抽出物が既知の抗微小管薬剤と類似した生物活性を有することが示される。
【0013】
bcl−2のリン酸化が可能なカンゾウ根抽出物における活性成分を同定するために、抽出画分を回収し、HPLCによって評価した。該抽出物は、複数の誘導体を含有していた。したがって、HPLCによって測定された3つの主要なピークに焦点を置いた。主要ピーク1、2および3から溶出した画分は、パクリタキセル処理した対照と同様にbcl−2のリン酸化を誘導することが示された。NMR解析および質量分析により、ピーク3はヒドロキシル化カルコン化合物を含むことが判明した(本明細書中ではDCと表わし、図1Aに示す)。ピーク1および2は、DCの2つのグリコシル化された誘導体であった(それぞれ図1Bおよび図1C)。赤ワインから単離されたエストロゲン化合物であるレスベラトロール(Goldberg, D.M. et al. 1996. Am. Jour. of Enol. Vitic. 47:415−420)のような、様々な食物で見つけられた他のポリフェノール構造体が、可能性のある抗癌剤および化学予防剤として提案されている。DCタイプ化合物は、別の天然物ロサ・シモサ(Rosa cymosa)からも単離されているが(Yoshida et al. 1993. Phytochemistry 32: 1033−1036)、このDCタイプ化合物の生物活性については調べられていない。
【0014】
精製されたDCの活性は、さらなる試験において測定した。DCは、MCF−7およびDUPro−1の両腫瘍細胞において、bcl−2のリン酸化を誘導することが示された。さらに、純粋なDCは、カンゾウ根抽出物全体と同様にG2/M期における細胞周期停止を誘導した。これらの実験において、MCF−7腫瘍細胞はDCで処理され、フローサイトメトリーによって評価された。DCは、公知の抗微小管剤パクリタキセルと同様にG2/M期における細胞周期停止を誘導した。しかしながら、DCはビンブラスチンと同様に微小管の断片化を誘導することが示されており、一方、パクリタキセルは微小管が束状になるのを誘導することが示されている。したがって、DCは実際にはビンブラスチンとより類似した微小管の不安定化剤である。これらのデータからは、メトキシ基を全くもたないヒドロキシル化カルコン化合物が依然として複数のメトキシ基をもつカルコン構造体と同様の有意な抗微小管活性を有することが示される(Edwards, M.L. et al. 1990. J. Med. Chem. 33:1948−1954)。
【0015】
次いで、DCの細胞傷害性をアポトーシスアッセイで評価した。このアッセイでは、腫瘍細胞を純粋なDCで処理し、細胞生存度およびアポトーシス反応を評価した。アポトーシス中に細胞膜の外層に再分配される細胞外ホスファチジルセリンの検出によって示されるように、DCはMCF−7細胞のアポトーシスを誘導した。初期アポトーシス細胞は、顕微鏡下で緑色蛍光を示した。壊死細胞は、その黄色−赤色の細胞内の染色の様相で確認された。DCは、10μMカンプトテシン(対照化合物)の場合と同様にアポトーシスを誘導した。さらに、DCは用量依存的にMCF−7細胞の細胞生存度を減少させた(IC50 13μM)。
【0016】
これらの生物活性データは、特定のカンゾウ根抽出物であるDCが、ヒトにおける抗腫瘍効果の可能性を示す生物活性を有することを示す。具体的には、DCはアポトーシスおよびbcl−2のリン酸化を誘導する。
【0017】
このように、本発明は、グリシリザ・グラブラ由来の純粋なヒドロキシル化カルコン化合物を含む組成物に関する。これらの化合物は、グリシリザ・グラブラから抽出・精製することができる。あるいは、ヒドロキシル化カルコン化合物は、当業者に周知の方法を用いて合成により製造することができる。さらに、現在、当業者であれば、可能性がある臨床用化合物について試験するための慣例的な方法に基づいて、本発明のヒドロキシル化カルコン化合物と類似した構造および活性を有する新しい化合物を開発することが可能である。本発明の組成物は、純粋なヒドロキシル化カルコン化合物の投与のための許容される医薬用ビヒクルをさらに含むのが好ましい。許容される医薬用ビヒクルの選択は当業者によって慣例的に行われ、多数の処方例がRemington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, PA, 1985などの標準的テキストに示されている。
【0018】
本明細書中で示すように、グリシリザ・グラブラ由来の純粋なヒドロキシル化カルコン化合物を含む組成物は、動物(ヒトを含む)の細胞または組織、特に腫瘍細胞または組織におけるbcl−2のリン酸化を誘導する。さらに、本発明の組成物は、動物(ヒトを含む)の細胞または組織、特に腫瘍細胞または組織におけるアポトーシスの誘導に有用である。このように本発明の組成物は、動物(ヒトを含む)の癌の予防方法および治療方法に有用であると考えられる。したがって、本発明はさらに、動物(ヒトを含む)の癌および腫瘍細胞の増殖の予防および治療のための方法に関する。この方法は、グリシリザ・グラブラ由来の純粋なヒドロキシル化カルコン化合物を含む組成物を有効量動物に投与することを含む。本発明において「有効量」とは、bcl−2のリン酸化の誘導、アポトーシスの誘導、腫瘍形成の抑制、または、癌の予防もしくは治療(これらに限定されるものではない)のような薬理応答を生じうるグリシリザ・グラブラ由来の純粋なヒドロキシル化カルコン化合物の量を意味する。投与すべき化合物の有効量は、本明細書中で示すような薬理応答データに基づいて、当業者によって慣例的に決定することができる。たとえば、投与すべき用量は、本明細書中で示すようなIC50測定値などのin vitroアッセイのデータに基づいて、当業者によって慣例的に決定される。さらに、投与経路ならびに投与計画は、レスベラトロールなどの類似化合物での今までの経験に基づいて、当業者によって慣例的に決定することができる。
【0019】
以下の実施例(これらの実施例は本発明を限定するものではない)は、本発明をさらに説明するために示すものである。
【0020】
実施例
実施例1: カンゾウ根由来の化合物の抽出と単離
粉末状にしたグリシリザ・グラブラの根をメタノールで抽出し、ロータリー・エバポレーター(Rotavapor R−110, Buchi, Switzerland)を使用して真空化で濃縮した。次いで、残っている濃縮物を、酸性にした酢酸エチル(3% HCL)で抽出し、乾燥させた酢酸エチル抽出物を、バイオアッセイに関連した分画を行い得るような逆相オクタデシル官能基化シリカゲルカラムによるクロマトグラフィーにかけた。溶出は、メタノールの濃度を増加させながら水/メタノールの溶媒混合物(90:10、80:20、70:30、60:40、50:50、40:60、30:70、20:80、10:90、0:100;各500ml)を使用して行った。連続する画分を回収し、生物活性について試験した。
【0021】
最も活性な画分を、Mac−Mod Analytical (Chadds Ford, PA)から購入したセミ分取Zorbax Rx−C18逆相HPLCカラム(9.4mm x 240mm、5μm)で再度クロマトグラフィーにかけた。化合物は、勾配溶媒システム(A:水と0.05%ギ酸、B:アセトニトリル)によって溶出した。溶出プログラム(3ml/分)は以下のとおりであった:80%Aから40%Bへ(0〜45分)。モニターした波長は254nmであった。連続する画分を回収し、さらなる生物学的試験に付した。
【0022】
集めた画分は、Supelco(Bellefonte, PA)から購入したカラムガードを装備したDiscovery C18逆相HPLCカラム(250mm x 4.6mm、5μm)を使用して純度についてスクリーニングを行った。溶媒プログラムは勾配システム(A:水と0.05%ギ酸、B:100%アセトニトリル、35〜55分間)であった。溶出プログラム(1ml/分)は以下のとおりであった:100%Aから100%Bへ(0〜35分間);100%B(35〜55分間)。Varian 9065ダイオードアレイ検出器を用いてモニターした波長は220〜320 nmであった。最終的に分離した純粋な化合物は、Mac−Mod Analyticalから購入したZorbax Rx−C18逆相カラム(9.4mm x 240mm、5μm)によるセミ分取HPLCを利用して得られた。化合物は、0.05%ギ酸、18%アセトニトリルを含有する82%水を含むアイソクラチック(isocratic)溶媒系で溶出した。
【0023】
実施例2:化合物の同定
1Hと13Cの両方のNMRスペクトルはVXR−200装置で得られた。質量分析は、データ解析のためにDigital DECPc XL560コンピューターを装備したMicromass Platform II システムで実行した。質量スペクトルは、陰イオンモードで大気圧化学イオン化法(APCI)を使用して得られた。イオン源温度は150℃に設定し、プローブは450℃に設定した。サンプルコーン電圧は10Vであり、コロナ放電は3.2kVであった。HPLC分析は、Varian 9065 Polychromダイオードアレイ検出器を連結したVarian Vista 5500液体クロマトグラフィーポンプを使用して行った。精製化合物のセミ分取画分は、Waters Lambda−Max Model 481 LC分光光度計を連結したVarian 9012 HPLCポンプで得られた。オクタデシル官能基化シリカゲル(60A 粒径)をカラムクロマトグラフィーに使用した。充填剤はAldrich Chemical Company (Milwaukee, WI)から購入した。抽出および単離に使用したすべての溶媒は、HPLC等級であった。
【0024】
実施例3: Bcl−2 の発現アッセイおよびリン酸化アッセイ
bcl−2タンパク質発現の分析は、従前に記載のウエスタンブロットアッセイ(Haldar, S. et al. 1996. Cancer Res. 56: 1253 ; Haldar, S. et al. 1995. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:4507−4511)を利用して行った。タンパク質の同定は、モノクローナルbcl−2一次抗体(DAKO Corporation)および抗マウス西洋ワサビペルオキシダーゼ標識ヤギ二次抗体(Bio−Rad Laboratories, Richmond, CA)を使用して行った。bcl−2のリン酸化は、Haldarによって記載された(Haldar, S. et al. 1996. Cancer Res. 56: 1253 ; Haldar, S. et al. 1995. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:4507−4511)ウエスタンブロットにおける移動度シフトによって測定した。
【0025】
実施例4 : 細胞周期分析
細胞を24時間処理し、10μM BrdUと一緒に37℃で45分間インキュベートした。次いで、細胞を氷冷したPBSで洗浄し、200μl PBS中に再懸濁し、70%冷エタノールで固定した。細胞を再懸濁し、2N HCl/0.5% Triton X−100を含むPBS中で30分間インキュベートし、0.1M 四ホウ酸ナトリウム(pH 8.5)で1回すすぐことにより中和した。フルオレセインイソチオシアナート(FITC)コンジュゲート抗BrdU抗体(Becton Dickinson)を0.5%Tween 20/1%BSAを含むPBS 50μl中に添加し(10 μg/サンプル)、30分間インキュベートした。細胞を洗浄し、5μg/mlヨウ化プロピジウムを含有するPBS 1ml中に再懸濁した。蛍光発光強度は定量的フローサイトメトリーによって測定し、蛍光プロフィールはBecton Dickinson FACScanで作成した。10,000個の細胞の最小値を分析した。
【0026】
実施例5 : 細胞生存度およびアポトーシスアッセイ
Apoalert Annexin V−EGFP法(CLONTECH, Palo Alto, CA)を使用してアポトーシスを評価した。簡潔に述べると、腫瘍細胞を2時間処理し、細胞を固定化溶液で洗浄し、Annexin V−EGFPとヨウ化プロピジウムで暗中15分間染色した。細胞は、Nikon Eclipse TE−200倒立蛍光顕微鏡(Nikon株式会社、東京、日本)を使用して観察した。写真は、APO−BRDUキット(Pharmingen, San Diego, CA)によるSPOT標識と組み合わせてSPOTデジタルカメラ(Diagnostic, Inc., Sterling Heights, MI)を使用して撮影した。細胞(ディッシュ当たり1×106個)を12時間処理し、PBSで洗浄し、氷中1%パラホルムアルデヒドで30分間固定した。固定した後、細胞はPBSで2度洗浄し、70%エタノールで固定した。ペレットは洗浄し、Br−dUTPとTdT酵素を含むDNA標識溶液50μl中に再懸濁し、37℃で60分間インキュベートした。インキュベーション後、ペレットを洗浄し、FITC標識抗BrdU抗体と一緒に暗中30分間室温でインキュベートし、ヨウ化プロピジウムおよびRNaseで染色した。この染色した細胞は、30分後にフローサイトメトリーで分析した。細胞生存度は、従前の記載(Scudiero D.A. et al. 1988 Cancer Res. 48:4827−4833)のテトラゾリウム色素法によって評価した。細胞を96ウエルプレートにプレートし、種々の薬剤と72時間インキュベートした。吸光度は、Dyatechマイクロプレートリーダーを使用して、570nmで測定した。
【図面の簡単な説明】
【図1】
図1は、質量分析およびNMRによって確認された、いくつかの本発明のヒドロキシル化カルコン化合物の構造を表わす。図1Aは、親化合物1−プロパノン−1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−ヒドロキシ−3−(4’−ヒドロキシフェニル)の構造を示す。図1Bは、1−プロパノン−1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−ヒドロキシ−3−(4’−ヒドロキシフェニル−4’−o−β−D−グルカピラノシド)と本明細書中で表される、親化合物のグリコシル化誘導体を示す。図1Cは、1−プロパノン−1−(2,4−ジヒドロキシフェニル−4’−o−β−D−グルコピラノシド)−3−ヒドロキシ−3−(4’−ヒドロキシフェニル)と本明細書中で表される、親化合物の第2のグリコシル化誘導体を示す。
緒言
本願は、2000年6月13日に提出した仮出願No. 60/211,266による優先権の利益を主張するものである。
【0002】
発明の背景
ハーブ製品は、ヒトの疾患治療での使用に対して人気を博している。ほとんどのハーブ製品の臨床効果は未知であるけれども、多くのハーブは、生物活性を有する誘導体を含有する。そのようなハーブのひとつがカンゾウ根(licorice root)である。カンゾウ根抽出物は生物活性を有することが示されており、例えば、その生物活性としては、抗酸化活性(Palagina, M.V. et al. 1999. Ter Arkh 71:45−48)、メラニン合成阻害(Yokota, T. et al. 1998. Pigment Cell Res. 11:355−361)、血管新生阻害(Kobayashi, S. et al. 1995. Biol. Phar,. Bull. 18:1382−1386)、抗菌活性(Mitscher, L.A. et al. 1980. J. Nat. Prod. 43:259−269)、抗寄生虫活性(Zhai, L. et al. 1995. Antimicrob. Agents. Chemotherap.39:2742−2748)、および抗腫瘍活性(Shibata,S. 1994. Stem Cells:44−52)等が挙げられる。様々な生物学的効果を担ういくつかの化合物が単離されている。そのような化合物としては、例えば、グラブリジン(Yokota, T. et al. 1998. Pigment Cell Res. 11:355−361)、イソリクイリチン(Kobayashi, S. et al. 1995. Biol. Pharm. Bull. 18:1382−1386)、グリチルリチン(Raggi, M.A. et al. 1995. Boll. Chim. Farm. 134:634−638)、およびリコカルコンA(非ヒドロキシル化カルコン化合物)(Shibata, S. 1994. Stem Cells 12:44−52)等が挙げられる。
【0003】
カンゾウ根を含むPC−SPESと呼ばれる8種類のハーブの組合せに関する最近の研究によって、PC−SPESが強力な臨床活性および生物活性を有することが示されている(DiPaola, R.S. et al. 1998. N. Engl. J. Med. 339:785−791)。PC−SPESは、化学的去勢を生じる植物性エストロゲンによる抗前立腺癌活性を示した。別の研究によって、カンゾウ根単独で男性における循環テストステロンレベルを減少させることが可能であることが示された(Armanini, D. et al. 1999. N. Engl. J. Med. 341:1158)。患者でのさらなる研究によって、PC−SPESは化学的去勢に対して不応の場合も抗腫瘍活性を有することが示されており、このことは他のメカニズムがこのカンゾウ−ハーブ併用療法の抗腫瘍活性の原因でありうることを示している(Small, E. et al. 1999. N. Engl. J. Med. 340(7):785−791)。
【0004】
さらにPC−SPES抽出物は、腫瘍細胞系統におけるアポトーシスおよびbcl−2の発現の減少を誘導することが示されている。Bcl−2は26 kDaのタンパク質であって、アポトーシス経路における重要な事象であるミトコンドリアからのシトクロムcの放出を抑制することによって細胞死を防ぐ。bcl−2の過剰発現は、細胞死を促進する刺激から細胞を保護する一方、bcl−2レベルの低下は細胞死および化学療法に対する感受性を増加させる(Reed, J.C. 1997. Nature 387:773−776)。最近の研究により、bcl−2発現を減少させるまたはリン酸化によってbcl−2を不活化する薬剤はアポトーシスを誘導することが示唆されている。例えば、パクリタキセル、ドセタキソール、ビンクリスチンおよびビンブラスチンは、微小管の構造を変化させ、bcl−2のリン酸化に関連してアポトーシスを誘導する(Hadlar, S. et al. 1996. Cancer Res. 56:1253; Haldar, S. et al. 1995. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:4507−4511)。
【0005】
現在、カンゾウ根から抽出された化合物、特にヒドロキシル化カルコン化合物が、アポトーシスの誘導と一貫する活性ならびに抗腫瘍剤および抗癌剤としての強力な活性を有することが見出されている。
【0006】
発明の概要
本発明の目的は、グリシリザ・グラブラ(Glycyrrhiza glabra)から抽出・精製したヒドロキシル化カルコン化合物を提供することである。好ましい実施形態において、該化合物は1−プロパノン−1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−ヒドロキシ−3−(4’−ヒドロキシフェニル)を含む。
【0007】
本発明の別の目的は、ヒドロキシル化カルコン化合物と細胞または組織とを接触させることを含むbcl−2のリン酸化を誘導する方法を提供することである。
【0008】
本発明のさらに別の目的は、ヒドロキシル化カルコン化合物と細胞または組織とを接触させることを含む、細胞または組織におけるアポトーシスを誘導する方法を提供することである。
【0009】
さらに本発明には、有効量のヒドロキシル化カルコン化合物と腫瘍細胞または組織とを接触させることによる、腫瘍細胞の増殖を抑制する方法ならびに癌を予防および治療する方法が含まれる。
【0010】
詳細な説明
カンゾウ根抽出物の特定の成分としてヒドロキシル化カルコンを同定した。ヒドロキシル化カルコンは、動物(ヒトを含む)における抗腫瘍効果と一貫する生物活性を有する。このカンゾウ根抽出物の成分は、動物(ヒトを含む)の癌の予防および治療における抗癌剤として使用することができると考えられる。
【0011】
本発明のヒドロキシル化カルコン化合物は、メタノール、エタノール、DMSOまたは酢酸エチルでカンゾウ根を抽出することにより同定した。粗抽出物画分を回収し、カンゾウ根全体の種々の画分の効果をイムノブロッティングにより評価した。酢酸エチル、DMSO、またはエタノールで抽出されたカンゾウ根抽出物は、ビヒクル対照(エタノールのみ)または水による抽出物と比較してより緩やかに移動するバンドによって示されるように、bcl−2のリン酸化を誘導した。
【0012】
今までの研究によって、bcl−2のリン酸化とG2/M期における細胞周期停止(arrest)との関連が確認された。したがって、さまざまなカンゾウ根抽出物の細胞周期に及ぼす効果も評価した。カンゾウ根抽出物は、パクリタキセル(対照)と同様にG2/M期における細胞周期停止を誘導した。したがって、これらの結果から、カンゾウ根抽出物が既知の抗微小管薬剤と類似した生物活性を有することが示される。
【0013】
bcl−2のリン酸化が可能なカンゾウ根抽出物における活性成分を同定するために、抽出画分を回収し、HPLCによって評価した。該抽出物は、複数の誘導体を含有していた。したがって、HPLCによって測定された3つの主要なピークに焦点を置いた。主要ピーク1、2および3から溶出した画分は、パクリタキセル処理した対照と同様にbcl−2のリン酸化を誘導することが示された。NMR解析および質量分析により、ピーク3はヒドロキシル化カルコン化合物を含むことが判明した(本明細書中ではDCと表わし、図1Aに示す)。ピーク1および2は、DCの2つのグリコシル化された誘導体であった(それぞれ図1Bおよび図1C)。赤ワインから単離されたエストロゲン化合物であるレスベラトロール(Goldberg, D.M. et al. 1996. Am. Jour. of Enol. Vitic. 47:415−420)のような、様々な食物で見つけられた他のポリフェノール構造体が、可能性のある抗癌剤および化学予防剤として提案されている。DCタイプ化合物は、別の天然物ロサ・シモサ(Rosa cymosa)からも単離されているが(Yoshida et al. 1993. Phytochemistry 32: 1033−1036)、このDCタイプ化合物の生物活性については調べられていない。
【0014】
精製されたDCの活性は、さらなる試験において測定した。DCは、MCF−7およびDUPro−1の両腫瘍細胞において、bcl−2のリン酸化を誘導することが示された。さらに、純粋なDCは、カンゾウ根抽出物全体と同様にG2/M期における細胞周期停止を誘導した。これらの実験において、MCF−7腫瘍細胞はDCで処理され、フローサイトメトリーによって評価された。DCは、公知の抗微小管剤パクリタキセルと同様にG2/M期における細胞周期停止を誘導した。しかしながら、DCはビンブラスチンと同様に微小管の断片化を誘導することが示されており、一方、パクリタキセルは微小管が束状になるのを誘導することが示されている。したがって、DCは実際にはビンブラスチンとより類似した微小管の不安定化剤である。これらのデータからは、メトキシ基を全くもたないヒドロキシル化カルコン化合物が依然として複数のメトキシ基をもつカルコン構造体と同様の有意な抗微小管活性を有することが示される(Edwards, M.L. et al. 1990. J. Med. Chem. 33:1948−1954)。
【0015】
次いで、DCの細胞傷害性をアポトーシスアッセイで評価した。このアッセイでは、腫瘍細胞を純粋なDCで処理し、細胞生存度およびアポトーシス反応を評価した。アポトーシス中に細胞膜の外層に再分配される細胞外ホスファチジルセリンの検出によって示されるように、DCはMCF−7細胞のアポトーシスを誘導した。初期アポトーシス細胞は、顕微鏡下で緑色蛍光を示した。壊死細胞は、その黄色−赤色の細胞内の染色の様相で確認された。DCは、10μMカンプトテシン(対照化合物)の場合と同様にアポトーシスを誘導した。さらに、DCは用量依存的にMCF−7細胞の細胞生存度を減少させた(IC50 13μM)。
【0016】
これらの生物活性データは、特定のカンゾウ根抽出物であるDCが、ヒトにおける抗腫瘍効果の可能性を示す生物活性を有することを示す。具体的には、DCはアポトーシスおよびbcl−2のリン酸化を誘導する。
【0017】
このように、本発明は、グリシリザ・グラブラ由来の純粋なヒドロキシル化カルコン化合物を含む組成物に関する。これらの化合物は、グリシリザ・グラブラから抽出・精製することができる。あるいは、ヒドロキシル化カルコン化合物は、当業者に周知の方法を用いて合成により製造することができる。さらに、現在、当業者であれば、可能性がある臨床用化合物について試験するための慣例的な方法に基づいて、本発明のヒドロキシル化カルコン化合物と類似した構造および活性を有する新しい化合物を開発することが可能である。本発明の組成物は、純粋なヒドロキシル化カルコン化合物の投与のための許容される医薬用ビヒクルをさらに含むのが好ましい。許容される医薬用ビヒクルの選択は当業者によって慣例的に行われ、多数の処方例がRemington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, PA, 1985などの標準的テキストに示されている。
【0018】
本明細書中で示すように、グリシリザ・グラブラ由来の純粋なヒドロキシル化カルコン化合物を含む組成物は、動物(ヒトを含む)の細胞または組織、特に腫瘍細胞または組織におけるbcl−2のリン酸化を誘導する。さらに、本発明の組成物は、動物(ヒトを含む)の細胞または組織、特に腫瘍細胞または組織におけるアポトーシスの誘導に有用である。このように本発明の組成物は、動物(ヒトを含む)の癌の予防方法および治療方法に有用であると考えられる。したがって、本発明はさらに、動物(ヒトを含む)の癌および腫瘍細胞の増殖の予防および治療のための方法に関する。この方法は、グリシリザ・グラブラ由来の純粋なヒドロキシル化カルコン化合物を含む組成物を有効量動物に投与することを含む。本発明において「有効量」とは、bcl−2のリン酸化の誘導、アポトーシスの誘導、腫瘍形成の抑制、または、癌の予防もしくは治療(これらに限定されるものではない)のような薬理応答を生じうるグリシリザ・グラブラ由来の純粋なヒドロキシル化カルコン化合物の量を意味する。投与すべき化合物の有効量は、本明細書中で示すような薬理応答データに基づいて、当業者によって慣例的に決定することができる。たとえば、投与すべき用量は、本明細書中で示すようなIC50測定値などのin vitroアッセイのデータに基づいて、当業者によって慣例的に決定される。さらに、投与経路ならびに投与計画は、レスベラトロールなどの類似化合物での今までの経験に基づいて、当業者によって慣例的に決定することができる。
【0019】
以下の実施例(これらの実施例は本発明を限定するものではない)は、本発明をさらに説明するために示すものである。
【0020】
実施例
実施例1: カンゾウ根由来の化合物の抽出と単離
粉末状にしたグリシリザ・グラブラの根をメタノールで抽出し、ロータリー・エバポレーター(Rotavapor R−110, Buchi, Switzerland)を使用して真空化で濃縮した。次いで、残っている濃縮物を、酸性にした酢酸エチル(3% HCL)で抽出し、乾燥させた酢酸エチル抽出物を、バイオアッセイに関連した分画を行い得るような逆相オクタデシル官能基化シリカゲルカラムによるクロマトグラフィーにかけた。溶出は、メタノールの濃度を増加させながら水/メタノールの溶媒混合物(90:10、80:20、70:30、60:40、50:50、40:60、30:70、20:80、10:90、0:100;各500ml)を使用して行った。連続する画分を回収し、生物活性について試験した。
【0021】
最も活性な画分を、Mac−Mod Analytical (Chadds Ford, PA)から購入したセミ分取Zorbax Rx−C18逆相HPLCカラム(9.4mm x 240mm、5μm)で再度クロマトグラフィーにかけた。化合物は、勾配溶媒システム(A:水と0.05%ギ酸、B:アセトニトリル)によって溶出した。溶出プログラム(3ml/分)は以下のとおりであった:80%Aから40%Bへ(0〜45分)。モニターした波長は254nmであった。連続する画分を回収し、さらなる生物学的試験に付した。
【0022】
集めた画分は、Supelco(Bellefonte, PA)から購入したカラムガードを装備したDiscovery C18逆相HPLCカラム(250mm x 4.6mm、5μm)を使用して純度についてスクリーニングを行った。溶媒プログラムは勾配システム(A:水と0.05%ギ酸、B:100%アセトニトリル、35〜55分間)であった。溶出プログラム(1ml/分)は以下のとおりであった:100%Aから100%Bへ(0〜35分間);100%B(35〜55分間)。Varian 9065ダイオードアレイ検出器を用いてモニターした波長は220〜320 nmであった。最終的に分離した純粋な化合物は、Mac−Mod Analyticalから購入したZorbax Rx−C18逆相カラム(9.4mm x 240mm、5μm)によるセミ分取HPLCを利用して得られた。化合物は、0.05%ギ酸、18%アセトニトリルを含有する82%水を含むアイソクラチック(isocratic)溶媒系で溶出した。
【0023】
実施例2:化合物の同定
1Hと13Cの両方のNMRスペクトルはVXR−200装置で得られた。質量分析は、データ解析のためにDigital DECPc XL560コンピューターを装備したMicromass Platform II システムで実行した。質量スペクトルは、陰イオンモードで大気圧化学イオン化法(APCI)を使用して得られた。イオン源温度は150℃に設定し、プローブは450℃に設定した。サンプルコーン電圧は10Vであり、コロナ放電は3.2kVであった。HPLC分析は、Varian 9065 Polychromダイオードアレイ検出器を連結したVarian Vista 5500液体クロマトグラフィーポンプを使用して行った。精製化合物のセミ分取画分は、Waters Lambda−Max Model 481 LC分光光度計を連結したVarian 9012 HPLCポンプで得られた。オクタデシル官能基化シリカゲル(60A 粒径)をカラムクロマトグラフィーに使用した。充填剤はAldrich Chemical Company (Milwaukee, WI)から購入した。抽出および単離に使用したすべての溶媒は、HPLC等級であった。
【0024】
実施例3: Bcl−2 の発現アッセイおよびリン酸化アッセイ
bcl−2タンパク質発現の分析は、従前に記載のウエスタンブロットアッセイ(Haldar, S. et al. 1996. Cancer Res. 56: 1253 ; Haldar, S. et al. 1995. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:4507−4511)を利用して行った。タンパク質の同定は、モノクローナルbcl−2一次抗体(DAKO Corporation)および抗マウス西洋ワサビペルオキシダーゼ標識ヤギ二次抗体(Bio−Rad Laboratories, Richmond, CA)を使用して行った。bcl−2のリン酸化は、Haldarによって記載された(Haldar, S. et al. 1996. Cancer Res. 56: 1253 ; Haldar, S. et al. 1995. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:4507−4511)ウエスタンブロットにおける移動度シフトによって測定した。
【0025】
実施例4 : 細胞周期分析
細胞を24時間処理し、10μM BrdUと一緒に37℃で45分間インキュベートした。次いで、細胞を氷冷したPBSで洗浄し、200μl PBS中に再懸濁し、70%冷エタノールで固定した。細胞を再懸濁し、2N HCl/0.5% Triton X−100を含むPBS中で30分間インキュベートし、0.1M 四ホウ酸ナトリウム(pH 8.5)で1回すすぐことにより中和した。フルオレセインイソチオシアナート(FITC)コンジュゲート抗BrdU抗体(Becton Dickinson)を0.5%Tween 20/1%BSAを含むPBS 50μl中に添加し(10 μg/サンプル)、30分間インキュベートした。細胞を洗浄し、5μg/mlヨウ化プロピジウムを含有するPBS 1ml中に再懸濁した。蛍光発光強度は定量的フローサイトメトリーによって測定し、蛍光プロフィールはBecton Dickinson FACScanで作成した。10,000個の細胞の最小値を分析した。
【0026】
実施例5 : 細胞生存度およびアポトーシスアッセイ
Apoalert Annexin V−EGFP法(CLONTECH, Palo Alto, CA)を使用してアポトーシスを評価した。簡潔に述べると、腫瘍細胞を2時間処理し、細胞を固定化溶液で洗浄し、Annexin V−EGFPとヨウ化プロピジウムで暗中15分間染色した。細胞は、Nikon Eclipse TE−200倒立蛍光顕微鏡(Nikon株式会社、東京、日本)を使用して観察した。写真は、APO−BRDUキット(Pharmingen, San Diego, CA)によるSPOT標識と組み合わせてSPOTデジタルカメラ(Diagnostic, Inc., Sterling Heights, MI)を使用して撮影した。細胞(ディッシュ当たり1×106個)を12時間処理し、PBSで洗浄し、氷中1%パラホルムアルデヒドで30分間固定した。固定した後、細胞はPBSで2度洗浄し、70%エタノールで固定した。ペレットは洗浄し、Br−dUTPとTdT酵素を含むDNA標識溶液50μl中に再懸濁し、37℃で60分間インキュベートした。インキュベーション後、ペレットを洗浄し、FITC標識抗BrdU抗体と一緒に暗中30分間室温でインキュベートし、ヨウ化プロピジウムおよびRNaseで染色した。この染色した細胞は、30分後にフローサイトメトリーで分析した。細胞生存度は、従前の記載(Scudiero D.A. et al. 1988 Cancer Res. 48:4827−4833)のテトラゾリウム色素法によって評価した。細胞を96ウエルプレートにプレートし、種々の薬剤と72時間インキュベートした。吸光度は、Dyatechマイクロプレートリーダーを使用して、570nmで測定した。
【図面の簡単な説明】
【図1】
図1は、質量分析およびNMRによって確認された、いくつかの本発明のヒドロキシル化カルコン化合物の構造を表わす。図1Aは、親化合物1−プロパノン−1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−ヒドロキシ−3−(4’−ヒドロキシフェニル)の構造を示す。図1Bは、1−プロパノン−1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−ヒドロキシ−3−(4’−ヒドロキシフェニル−4’−o−β−D−グルカピラノシド)と本明細書中で表される、親化合物のグリコシル化誘導体を示す。図1Cは、1−プロパノン−1−(2,4−ジヒドロキシフェニル−4’−o−β−D−グルコピラノシド)−3−ヒドロキシ−3−(4’−ヒドロキシフェニル)と本明細書中で表される、親化合物の第2のグリコシル化誘導体を示す。
Claims (6)
- グリシリザ・グラブラ(Glycyrrhiza glabra)由来の純粋なヒドロキシル化カルコン化合物を含む組成物。
- 上記化合物が1−プロパノン−1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−ヒドロキシ−3−(4’−ヒドロキシフェニル)である、請求項1に記載の組成物。
- 請求項1に記載の組成物と細胞または組織とを接触させることを含む、細胞または組織におけるbcl−2のリン酸化を誘導する方法。
- 請求項1に記載の組成物と細胞または組織とを接触させることを含む、細胞または組織におけるアポトーシスを誘導する方法。
- 請求項1に記載の組成物と腫瘍細胞とを接触させることを含む、腫瘍細胞の増殖を抑制する方法。
- 請求項1に記載の組成物を動物に投与することを含む、動物における癌または腫瘍細胞の増殖を予防または治療する方法。
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