JP2004502785A - 内耳における細胞の再生および分化の刺激 - Google Patents
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Abstract
【選択図】図1
Description
発明の分野
本発明は、内耳感覚有毛細胞及び内耳支持細胞を含む内耳細胞の形成を刺激する方法及び組成物に関する。
【0002】
発明の背景
「神経性難聴(nerve deafness)」とも称される感覚神経性聴覚喪失(SNHL、sensorineuronal hearing loss)は、米国だけでも何千万人もの人々が冒されている重大なコミュニケーション障害である。音を検出する内耳感覚有毛細胞の喪失が、本疾患の主原因であると考えられている。内耳の解剖学的構造は当業者に周知である(例えば、Gray’s Anatomy,Revised American Edition(1977)、859−867ページを参照、参考文献として本明細書に援用される)。簡潔に述べれば、内耳には、音を感知する蝸牛(cochlea)、角加速度を感知する半規管、及び直線加速度を感知する耳石器官(otolithic organs)という三つの感覚性部位が存在する。これらの各感覚部位では、一層以上の内耳支持細胞の上に特殊化した感覚有毛細胞が配列されている。支持細胞は、内耳内の感覚有毛細胞の基礎を成し、少なくとも一部ではこれを取り囲み、物理的に支持している。作動時には、前記感覚有毛細胞は音又は動作に応じて物理的に屈折し、それらの屈折が神経に伝達され、処理及び解釈のために神経のインパルスが脳に送られる。
【0003】
哺乳動物では、内耳は、通常、損傷を受けた又は死滅した内耳感覚有毛細胞を再生することができない。このため、感覚有毛細胞の死滅又は変質に起因する聴覚障害は、永久的な聴覚障害に至るのが通常である。感覚神経性聴覚喪失は、加齢に相関した喪失(老年性難聴)、騒音への曝露、薬物への曝露(例えば、抗生物質及び抗癌治療剤)、感染症、遺伝的突然変異(症候群性及び非症候群性)、及び自己免疫疾患を含む多数の現象によって引き起こされ得る。
【0004】
現在のところ、後天性感覚神経性聴覚喪失の治療には、外用聴覚補助具及び人工内耳(cochlear implant)が使用されている。両装置ともに治療的な利用可能性は限られており、より重要なことには、聴覚の感覚性上皮の構造又は機能を回復させるという課題に応えるものではない。
【0005】
内耳細胞の再生を刺激することができる転写因子をコードする核酸分子を内耳細胞に導入する工程を含んだ内耳細胞の再生を刺激する方法を開示している国際出願番号PCT/US99/24829号には、感覚性内耳有毛細胞を再生するという課題に対するより最近のアプローチが開示されている。
【0006】
本明細書に開示されているように、既存の内耳感覚有毛細胞を破壊することによって、本来は静的な内耳支持細胞(一以上の細胞周期阻害剤タンパク質の発現レベルが低下しているか、又は細胞周期タンパク質活性が低下している)が再び細胞周期に入って、内耳感覚有毛細胞を形成するように誘導することができる子孫細胞(progeny cell)の産生が促進されることを本発明者らは発見した。基礎を成している及び/又は周囲を取り囲んでいる内耳支持細胞を刺激して感覚有毛細胞へと発育させるには、既存の内耳感覚有毛細胞の破壊で足りる事例もある。支持細胞から感覚有毛細胞を効率的に再生させるには、本明細書に記載されているように、既存の内耳感覚有毛細胞の破壊に、少なくとも一つの他の刺激を組み合わせることが必要となる事例もある。さらに、本発明者らは、(内耳感覚有毛細胞の再生を刺激して、または刺激せずに)内耳支持細胞の増殖を刺激することによって、内耳の聴覚機能が改善することを発見した。
【0007】
発明の要約
本発明は、内耳感覚有毛細胞(inner ear sensory hair cell)及び内耳支持細胞(inner ear support cell)を含む内耳細胞の形成を刺激する方法を提供する。本発明の該方法は、内耳細胞を損傷及び/又は死滅させることによって、新しい内耳細胞の形成が刺激されるという予測できない観察に基づいている。
【0008】
ある側面において、本発明は、内耳支持細胞からの内耳感覚有毛細胞の形成を刺激する方法を提供する。本発明の該側面に係る方法は、損傷を受けた感覚有毛細胞と接触している一以上の支持細胞からの一以上の新規感覚有毛細胞の形成を促進する条件下で、一以上の内耳感覚有毛細胞を損傷させる工程(a)を含む。好ましくは、複数の内耳支持細胞から、複数の内耳感覚有毛細胞が形成される。本発明の該側面に係る方法は、必要に応じて、損傷を受けた内耳感覚有毛細胞と接触している内耳支持細胞からの一以上の内耳感覚有毛細胞の形成をさらに刺激する工程(b)を含む。工程(b)は、工程(a)の前、間、後に、又は工程(a)と重複して(overlapping)行うことができる。ある実施態様では、前記損傷を受けた内耳感覚有毛細胞と接触している一以上の内耳支持細胞からの一以上の内耳感覚有毛細胞の形成を刺激する前記工程は、前記内耳支持細胞が細胞周期に入るように刺激した後、前記内耳支持細胞の子孫のうち少なくとも一部が分化して内耳感覚有毛細胞を形成するように刺激する工程を含む。
【0009】
内耳感覚有毛細胞は、例えば、内耳感覚有毛細胞を損傷させるのに有効な抗生物質、好ましくはアミノグリコシド抗生物質などの一定量の聴器毒性物質(ototoxic agent)と接触させることによって損傷させることができる。前記聴器毒性物質は、当業者に周知である任意の手段、例えば(針及び注射器などを用いた)注射(injection)又はカニューレによって内耳の中に導入することができる。本発明の該側面のある実施態様では、内耳感覚有毛細胞は、死滅するように十分損傷させる。
【0010】
本発明の幾つかの実施態様では、内耳感覚有毛細胞に対して加えられる損傷によって、前記損傷を受けた内耳感覚有毛細胞に接触している内耳支持細胞からの一以上の新規内耳感覚有毛細胞の形成が刺激される。しかしながら、別の実施態様では、内耳感覚有毛細胞に対して加えられる損傷は、単独では、前記損傷を受けた内耳感覚有毛細胞に接触している内耳支持細胞から一以上の新規内耳感覚細胞が形成されるのを効率的に刺激するには不十分である。このため、本発明の該側面に係る前記方法のある実施態様においては、内耳感覚有毛細胞を損傷させ、且つ内耳支持細胞から内耳感覚有毛細胞が形成されるように刺激し得る転写因子を(感覚有毛細胞を損傷させる工程の前、間、及び/又は後に)内耳支持細胞内で発現させることによって、内耳支持細胞からの内耳感覚有毛細胞の形成を刺激する。例えば、本発明のある実施態様では、転写因子の発現が可能な条件下で、内耳支持細胞から内耳感覚有毛細胞が形成されるように刺激し得る転写因子をコードする核酸分子を内耳支持細胞中に導入する。内耳支持細胞からの内耳感覚有毛細胞の形成を刺激し得る転写因子の代表的な例には、POU4F1、POU4F2、POU4F3、Brn3a、Brn3b、及びBrn3cが含まれる。
【0011】
本発明の該側面に係る方法の別の実施態様では、内耳感覚有毛細胞を損傷させ、且つ内耳支持細胞中で活性な一以上の細胞周期阻害剤の発現を(感覚有毛細胞を損傷させる工程の前、間、及び/又は後に)阻害することによって、内耳支持細胞からの内耳感覚有毛細胞の形成を刺激する。細胞周期阻害剤の阻害剤は、細胞内で細胞周期阻害剤に対して直接又は間接に作用する物質(タンパク質等)であり得る。代表的な例として、内耳支持細胞中で活性な細胞周期阻害剤には、p21Cip1、p27Kip1、及びp57Kip2を含むいわゆるCIP/KIPファミリーのサイクリン依存性キナーゼ阻害剤等のサイクリン依存性キナーゼ阻害剤が含まれる。例えば、ストリンジェントな条件下(2×SSC、55℃を上回るストリンジェンシーなど)で、内耳支持細胞の中で活性な細胞周期阻害剤をコードする(mRNA分子等の)核酸分子にハイブリダイズする核酸分子を発現する発現ベクターを内耳支持細胞中に導入することによって、内耳支持細胞中で活性な細胞周期阻害剤の発現を阻害することができる。
【0012】
さらに、内耳支持細胞からの内耳感覚有毛細胞の形成を刺激するためには、TGF−α、インシュリン、及びIGF−1等の様々な組換え増殖因子を使用することができる。本発明を実施する際に、インビトロで使用される組換え増殖因子の代表的な有効濃度範囲は、1〜1000ng/mlである。より具体的には、TGF−αは、1〜100ng/mlからの有効濃度で使用することが好ましい。インシュリンは、100〜1000ng/mlからの有効濃度で使用することが好ましい。IGF−1は、10〜1000ng/mlからの有効濃度で使用することが好ましい。インビボで適用する場合には、インビボで前述の濃度を与えるのに十分な量の組換え増殖因子が投与されるであろう。
【0013】
本発明の該側面に係る好ましい実施態様では、内耳支持細胞からの内耳感覚有毛細胞の形成は、処置を受けた内耳の聴覚機能に改善をもたらす。このように、ある側面では、本発明は、内耳の聴覚機能を改善させる方法であって、(a)損傷を受けた第一の内耳感覚有毛細胞に接触している支持細胞からの一以上の新規内耳感覚有毛細胞の形成を促進する条件下で、第一の内耳感覚有毛細胞を損傷させる工程と、(b)工程(a)に従って処置した内耳の聴覚機能の改善を測定する工程とを備える方法を提供する。
【0014】
別の側面では、本発明は、内耳支持細胞の形成を刺激する方法を提供する。本発明の該側面に係る方法は、(例えば、損傷を受けた内耳支持細胞と接触している内耳支持細胞の細胞分裂によって)新しい内耳支持細胞の形成を促進する条件下で内耳支持細胞を損傷させる工程を含む。本発明の該側面では、内耳支持細胞からの内耳感覚有毛細胞の形成を刺激する本発明の前記方法に関して本明細書に記載したものと同じ技術を用いて、前記内耳支持細胞を損傷させ、新しい内耳支持細胞の形成を刺激する。このため、例えば、内耳支持細胞を損傷させるのに有効な一定量の聴器毒性物質(アミノグリコシド系抗生物質など)と接触させることによって、内耳支持細胞を損傷させることができる。この場合にも、例として、内耳支持細胞を損傷させ、且つ内耳支持細胞の分裂を刺激して新しい内耳支持細胞を形成させ得る転写因子(POU4F1、POU4F2、POU4F3、Brn3a、Brn3b、及びBrn3c等)を(内耳支持細胞を損傷させる前、間、及び/又は後に)内耳支持細胞内で発現させることによって、新しい内耳支持細胞の形成をさらに刺激することができる。本発明の該側面に係る好ましい実施態様では、内耳支持細胞の増殖は、前記処置を受けた内耳の聴覚機能を改善させる。
【0015】
本発明の前記方法は、感覚有毛細胞及び支持細胞などの内耳細胞の形成を刺激するのに有用である。さらに、本発明の方法は、内耳細胞の死滅又は損傷によって引き起こされたヒト等の哺乳動物の聴覚障害(hearing disorder)の症状を改善させるのに有用である。さらに、本発明の前記方法は、内耳支持細胞からの内耳支持細胞の形成及び/又は内耳感覚有毛細胞の形成を刺激することができる遺伝子及び/又はタンパク質を同定するために使用することができる。
【0016】
好ましい実施態様の詳細な説明
本発明で使用する「SSC」という略号は、核酸ハイブリダイゼーション溶液で用いられる緩衝液を指す。1リットルの20×(20倍濃縮)原液SSC緩衝溶液(pH7.0)は、175.3gの塩化ナトリウムと88.2gのクエン酸ナトリウムとを含有する。
【0017】
本明細書で使用する「一以上の内耳感覚有毛細胞を損傷(damaging)させる」若しくは「第一の内耳感覚有毛細胞を損傷させる」という用語、又はこれと文法的に等価な用語は、損傷を受けた細胞と実質的に同じ条件下で培養されているが、損傷を受けていない内耳感覚有毛細胞と比べて、損傷を受けた感覚有毛細胞の構造、生化学、及び/又は生理に有害な変化を加えること(損傷を受けた細胞を死滅させることを含む)を意味する。
【0018】
本明細書で使用する「聴覚機能を改善させる」若しくは「聴覚機能の改善」、又はこれと文法的に等価な用語は、本発明の前記方法に従って内耳を処置することによって、音に対する内耳の感度を少なくとも10%改善させること、又は本発明の処置を受ける前には音に対して完全に不能であった内耳の音に対する感度に測定可能な何らかの改善を与えることを意味する。処置を受けた内耳の音に対する感度は、当業者に知られた任意の手段(聴性脳幹反応等)によって測定され、本発明の処置を受けておらず、被処置内耳と実質的に同一の条件下で培養されている対照内耳の音に対する感度と比較される。
【0019】
本明細書で核酸配列の比較又はアミノ酸配列の比較に対して用いられる場合、「配列の相同性」(「配列の同一性」とも称される)という用語は、対象配列と候補配列とを並列させ、最大のパーセント相同性(同一性)を得るために必要であればギャップを導入した後に得られる(配列相同性の一部として何らの保存的置換も考慮しない)、候補アミノ酸配列又は核酸配列の一部又は全部と同一である対象アミノ酸配列又は核酸配列中のアミノ酸残基又は核酸残基のパーセントを意味する。N又はC末端伸長及び挿入は何れも、相同性を低下させるものと解釈してはならない。必要であれば、最大のパーセント相同性(同一性)を得るために導入されたギャップの数又は長さには、重み付けを与えない。
【0020】
ある側面において、本発明は、内耳支持細胞からの内耳感覚有毛細胞の形成を刺激する方法を提供する。本発明の該側面に係る前記方法は、損傷を受けた感覚有毛細胞と接触している一以上の支持細胞からの一以上の新規感覚有毛細胞の形成を促進する条件下で、一以上の内耳感覚有毛細胞を損傷させる工程(a)を含む。好ましくは、複数の内耳支持細胞から、複数の内耳感覚有毛細胞が形成される。本発明の該側面に係る方法は、必要に応じて、損傷を受けた内耳感覚有毛細胞と接触している内耳支持細胞からの一以上の内耳感覚有毛細胞の形成をさらに刺激する工程(b)を含む。工程(b)は、工程(a)の前、間、後に、又は工程(a)と重複して行うことができる。本発明の該側面に係る前記方法は、インビボ及びインビトロで使用することができる。
【0021】
内耳の解剖学的構造は当業者に周知である(例えば、Gray’s Anatomy,Revised American Edition(1977)、859−867ページを参照、参考文献として本明細書に援用される)。特に、蝸牛は、音を感知するのに一次的に必要とされるコルチ器を含む。図1に示されているように、コルチ器10は基底膜12を含んでおり、基底膜12の上には、境界細胞(border cell)16、内柱細胞18、外柱細胞20、内指節細胞22、ダイテルス細胞(Dieter’s cell)24、ヘンゼン細胞(Hensen’s cell)26を含む様々な支持細胞14が存在している。支持細胞14は、内有毛細胞28と外有毛細胞30とを支持する。内有毛細胞28と外有毛細胞30の上には、被蓋膜32が配置されている。ある側面において、本発明は、基礎を成している支持細胞14から感覚有毛細胞28及び30の再生を刺激するように適合される。別の側面では、本発明は、支持細胞14の形成を刺激するように適合される。
【0022】
本明細書に開示されているように、既存の内耳感覚有毛細胞を破壊することによって、本来は静的な内耳支持細胞が再び細胞周期に入って、内耳感覚有毛細胞を形成するように誘導することができる子孫細胞の産生が促進されることを本発明者らは観察した。基礎を成している及び/又は周囲を取り囲んでいる内耳支持細胞を刺激して感覚有毛細胞へと発育させるには、既存の内耳感覚有毛細胞の破壊で足りる事例もある。支持細胞からの感覚有毛細胞を効率的に再生させるには、本明細書に記載されているように、既存の内耳感覚有毛細胞の破壊に他の刺激を組み合わせることが必要となる事例もある。
【0023】
本発明の一側面を実施する場合には、例えば、内耳感覚有毛細胞を損傷させるのに有効な一定量の聴器毒性物質と接触させることによって、内耳感覚有毛細胞を損傷させる。内耳感覚有毛細胞を損傷させるのに有用な聴器毒性物質の代表的な例には、アミノグリコシド系抗生物質(ネオマイシン、ゲンタマイシン、ストレプトマイシン、カナマイシン、アミカシン、及びトブラマイシン等)が含まれる。本発明を実施する場合、前述のアミノグリコシド系抗生物質は、典型的には、インビトロでは約0.01mM〜10mMの範囲の有効濃度で使用され、インビボでは約100〜約1,000mg/kg体重/日(mg/kg/d)の範囲の有効濃度で使用される。内耳感覚有毛細胞を損傷させるのに有用な別の化学物質の代表例には、以下の抗癌剤:シスプラチン、カルボプラチン、及びメトトレキサートが含まれ、典型的には、インビトロでは約0.01mM〜0.1mMの範囲の有効濃度で使用され、インビボでは約5〜約10mg/kg/dの範囲の有効濃度で使用される。他の有用な化学物質には、インビトロで約0.1〜1.0mMの範囲の有効濃度であるポリ−L−リジン、及びインビトロで約5〜100mMの範囲の有効濃度である塩化マグネシウムが含まれる。
【0024】
一又は複数の聴器毒性物質は、当業者に知られた任意の手段によって(例えば、針及び注射器を用いた注射によって、又は蝸牛開口術(cochleostomy)によって内耳中に導入することができる。蝸牛開口術では、蝸牛を穿刺し、化学物質を蝸牛中に導入することができるカテーテルを挿入する。蝸牛開口術法は、例えば、Lalwani,A.K.らの「Hearing Research 114:139−147(1997)」に開示されており、本文献は、参考文献として本明細書に援用される。
【0025】
本発明の方法のある実施態様では、内耳感覚有毛細胞を損傷させ、且つ内耳支持細胞から内耳感覚有毛細胞が形成されるように刺激し得る転写因子を(内耳感覚有毛細胞を損傷させる前、間、及び/又は後に)少なくとも幾つかの内耳支持細胞内で発現させることによって、内耳支持細胞からの内耳感覚有毛細胞の形成を刺激する。例えば、ある実施態様では、転写因子の発現が可能な条件下で内耳感覚有毛細胞の形成を刺激し得る転写因子をコードする核酸分子を内耳支持細胞中に導入する。
【0026】
本発明の該側面において有用な転写因子は、本発明の方法を実施する際に使用したときに、内耳支持細胞からの内耳感覚有毛細胞の再生を刺激する能力を有する。本発明の該側面において有用な転写因子の中には、内耳感覚有毛細胞の正常な発育及び/又は正常な機能に必要とされるものがある。
【0027】
本発明の該側面において有用な転写因子の代表的な例には、POU4F1(Collum, R. G. et al., Nucleic Acids Research 20(18):4919−4925(1992))、POU4F2 (Xiang et al., Neuron 11:689−701(1993))、POU4F3(Vahava, O., Science 279(5358) :1950−1954(1998)、Gerrero Proc. Nat’l Acad.. Sci. (U.S.A.) 90(22):10841−10845 (1993),Xiang, M. et al., Proc. Nat’l Acad.. Sci. (U.S.A.) 93(21):11950−11955(1996), Xiang, M. et al., J. Neurosci. 15(7Part 1):4762−4785 (1995), Erkman,L. et al., Nature 381(6583):603−606(1996), Xiang, M. et al., Proc. Nat’l Acad. Sci. (U.S.A.) 94(17):9445−9450(1997)に開示されているBrn3a(Brn3.0としても知られる)、Brn3b (Brn3.2としても知られる)、及びBrn3c(Brn3.1としても知られる)(これらの各文献は、参考文献として本明細書に援用される)。本発明の該側面において有用な転写因子の中には、少なくとも一つのホメオドメイン及び/又は少なくとも一つのPOU特異的なドメインを有し、約33kDa〜約37kDaの範囲の分子量を有するものがある。
【0028】
本明細書で使用する「ホメオドメイン」という用語は、配列番号1に記載されているホメオドメインアミノ酸配列と少なくとも50%相同(少なくとも75%相同、又は少なくとも90%相同など)であるアミノ酸配列を意味する。
【0029】
本明細書で使用する「POU特異的なドメイン」という用語は、配列番号2に記載されているPOU特異的ドメインアミノ酸配列と少なくとも50%相同(少なくとも75%相同、又は少なくとも90%相同など)であるアミノ酸配列を意味する。
【0030】
二つのタンパク質配列間又は二つの核酸配列間のパーセント相同性を決定するために使用することができるアルゴリズムの例は、Karlin and Altschul(Proc Natl. Acad. Sci. USA 90:5873−5877(1993))で改変されたKarlin and Altschul(Proc Natl. Acad. Sci. USA 87:2264−2268 (1990))のアルゴリズムである。このようなアルゴリズムは、AltschulらのNBLEST及びXBLESTに組み込まれている(J.Mol.Biol.215:403−410(1990))。
【0031】
本発明を実施する上で有用なさらに好ましい内耳細胞転写因子は、POU4F3転写因子相同体(以下、POU4F3相同体と称する)である。本発明を実施する上で有用なPOU4F3相同体は、支持細胞から内耳感覚有毛細胞の再生を刺激することができ、配列番号4に記載のアミノ酸配列を有し、配列番号3の核酸分子によってコードされるPOU4F3転写因子と少なくとも25%相同(少なくとも50%相同、又は少なくとも75%相同、又は少なくとも90%相同等)である。本明細書で使用する「POU4F3相同体」という用語には、配列番号4に記載されているアミノ酸配列を有するPOU4F3タンパク質が含まれ、これは本発明を実施する上で最も好ましい内耳細胞転写因子である。本発明を実施する上で有用な他のPOU4F3相同体の代表例は、Xiang, M. et al., J. Neuroscience 15 (7): 4762−4785 (1995)に記載されており、本文献は参考文献として本明細書に援用される。
【0032】
本発明を実施する上で有用な転写因子をコードするさらに別の核酸分子は、当業者に公知の様々なクローニング技術を用いることによって単離することができる。例えば、クローニングされたPOU4F3相同体のcDNA若しくは遺伝子、又はその断片は、例えば、「Molecular Cloning, A Laboratory Manual (2nd edition), J. Sambrook, E. F. Fritsch and T. Maniatis eds.,」の9.52〜9.55頁(引用した頁は、参考文献として本明細書に援用される)に記載されているようなニトロセルロースフィルター又はナイロン膜上に固定された核酸に放射線標識した核酸プローブをハイブリダイズさせる技術を用いたハイブリダイゼーションプローブとして使用することができる。POU4F3相同体をコードする更なる核酸分子を同定するのに好ましいハイブリダイゼーションプローブは、配列番号3に記載された核酸配列を有するcDNA分子(又はその相補配列)の少なくとも15ヌクレオチド長の断片であるが、配列番号3に記載された核酸配列を有する完全なcDNA分子も、POU4F3相同体をコードする更なる核酸分子を同定するためのハイブリダイゼーションプローブとして有用である。本発明において、POU4F3相同体をコードする更なる核酸分子を同定するための最も好ましいハイブリダイゼーションプローブは、核酸配列5’−TAG AAG TGC AGG GCA CGC TGC TCA TGG TAT G−3’(配列番号5)を有するオリゴヌクレオチドである。
【0033】
POU4F3相同体をコードする更なる核酸分子を(サザンブロッティングによって)同定するのに有用な高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション及び洗浄条件の例は、1mM Na2EDTA、20%ドデシル硫酸ナトリウムを含有する0.25M Na2HPO4緩衝液(pH7.2)中、68℃でのハイブリダイゼーションであり、洗浄(3回洗浄、各洗浄は65℃で20分)は、1mM Na2EDTA、1%ドデシル硫酸ナトリウムを含有する20mM Na2HPO4緩衝液(pH7.2)中で行われる。
【0034】
POU4F3相同体をコードする更なる核酸分子を(サザンブロッティングによって)同定するのに有用な中度のストリンジェンシーのハイブリダイゼーション及び洗浄条件の例は、1mM Na2EDTA、20%ドデシル硫酸ナトリウムを含有する0.25M Na2HPO4緩衝液(pH7.2)中、45℃でのハイブリダイゼーションであり、洗浄は、0.1%(w/v)ドデシル硫酸ナトリウムを含有する5×SSC中、55℃〜65℃で行われる。
【0035】
この場合にも、例えば、本発明において有用な転写因子をコードする核酸分子は、The Polymerase Chain Reaction (K. B. Mullis, F. Ferre, R. A. Gibbs, eds), Birkhauser Boston (1994)(参考文献として本明細書に援用される)に記載されているポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって単離することができる。このように、例えば、オリゴ(dT)プライマーを用いて1stストランドDNAの合成を開始させ、標的DNA分子と相同であるcDNA分子の5’非翻訳領域の一部に対応するオリゴヌクレオチドプライマーを用いて2ndストランドcDNAの合成を開始させることができる。続くPCRのラウンドは、前記2ndストランドcDNA合成プライマーと標的DNA分子に相同なcDNA分子の3’非翻訳領域の一部に対応するプライマーとを用いて開始させることができる。
【0036】
非限定的な例として、本発明において有用な転写因子をコードする核酸分子を増幅するための代表的なPCR反応条件は以下のとおりである。(氷上の)チューブの中に以下の試薬を混合して、PCR反応混合液、すなわちDNAテンプレート(例えば、最大1μgのゲノムDNA又は最大0.1μgのcDNA)、0.1〜0.3mM dNTP、10μlの10×PCR緩衝液(10×PCR緩衝液は500mM KCl、15mM MgCl2、100mM Tris−HCl、pH8.3を含有する)、50pmolの各PCRプライマー(PCRプライマーは、好ましくは20bpを超える長さ、及び102〜103の縮重度を有するべきである)、2.5ユニットのTaq DNAポリメラーゼ(Perkin Elmer、Norwalk、CT)、及び最終容量50μlの脱イオン水を得る。前記反応混合液を含有するチューブをサーモサイクラー中に置き、サーモサイクラーのプログラムを以下のように実行する。94℃で2分変性させた後、94℃30秒、47℃〜55℃30秒、及び72℃30秒〜2.5分を30サイクル。
【0037】
PCRプライマーは、公知の標的タンパク質配列の一部又は全部に見られる保存されたアミノ酸配列のモチーフに対して設計することが好ましいであろう。更なるPOU4F3相同体をクローニングするためのPCRプライマーを設計する基礎となり得る保存されたアミノ酸配列モチーフの例は、配列番号2に記載されたアミノ酸配列を有するPOU特異的ドメイン、及び配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するホメオドメインである。
【0038】
さらに、本発明を実施する上で有用な転写因子をコードする更なる核酸分子は、例えば、転写因子タンパク質を認識する抗体を用いることによって単離することもできる。モノクローナル及びポリクローナル抗体を調製する方法は当業者に周知であり、例えば、「Antibodies A Laboratory Manual, E. Harlow and D. Lane, Cold Spring Harbor Laboratory (1988)」の第5及び第6章(引用した章は、参考文献として本明細書に援用される)に記載されている。非限定的な例として、「Xiang, M. et al., J. Neuroscience 15(7):4762−4785 (1995) and Xiang, M. et al., P.N.A.S.(U.S.A.) 94:9445−9450 (1997)」(本文献は、参考文献として本明細書に組み込まれる)に記載されているように、Brn3のC末端から構築された融合タンパク質に対する抗体が首尾よく産生された。
【0039】
本発明を実施する上で有用な転写因子をコードする核酸分子は、例えば、発現ライブラリーをスクリーニングすることによって単離することができる。非限定的な例として、POU4F3相同体タンパク質をコードする一以上のクローンを同定するために、抗POU4F3相同体抗体を用いて、cDNA発現ライブラリーをスクリーニングすることができる。DNA発現ライブラリー技術は、当業者に周知である。cDNA発現ライブラリーのスクリーニングは、「Sambrook, J., Fritsch, E. F. and Maniatis, T. (1989) Molecular Cloning : A Laboratory Manual, 2nd ed. Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY」の12章(本文献の引用した章は、参考文献として本明細書に援用される。)に完全に論述されている。
【0040】
代表的な例として、発現ライブラリーをスクリーニングするための抗体を生じさせるのに有用な抗原は、以下のように調製することができる。Bluescriptプラスミド(Stratagene,Inc., La Jolla,Californiaから入手可能)等のプラスミドベクター中に、POU4F3相同体等の転写因子をコードする完全長のcDNA(又は完全長ではないが、全てのコード領域を含んでいるcDNA分子)をクローニングすることができる。続いて、E.Coli株(E.Coli XL1−Blue等、同じくStratagene,Inc.から入手可能)中に前記組換えベクターを導入し、前記cDNAによってコードされるタンパク質をE.Coli中で発現させ、次いで精製する。例えば、目的のcDNA分子を含むBluescriptベクターを有するE.Coli XL1−Blueは、100μgのアンピシリン/mlを含有するLB培地中、37℃で一晩増殖させ得る。アンピシリンを含有する5mlの新鮮なLB培地を接種するために、一晩培養したものから50μl分取して使用することができ、1mM IPTGで誘導する前に、激しく攪拌しながらA600=0.5になるまで培養物を37℃で増殖させる。さらに2時間増殖させた後、懸濁物を遠心し(1000×g、15分、4℃)、培地を除去して、好ましくは1mMのEDTAと一以上のプロテイナーゼ阻害剤とを含有する1mlの冷たい緩衝液中に、沈降した細胞を再懸濁させる。該細胞は、微小プローブを用いた音波処理によって破壊させることができる。冷却した音波処理物を遠心によって清澄にし、当業者に知られたタンパク質精製技術(Methods in Enzymology, Vol.182 Guide to Protein Purification, Murray P. Deutscher, ed (1990)(参考文献として本明細書に援用される)に開示されているもの等)によって、発現された組換えタンパク質を上清から精製する。
【0041】
モノクローナル及びポリクローナル抗体を調製する方法は、当業者に周知であり、例えば、「Antibodies A Laboratory Manual, E. Harlow and D. Lane, Cold Spring Harbor Laboratory (1988)」の第5及び第6章(引用した章は、参考文献として本明細書に援用される)に記載されている。ある代表的な例では、精製されたタンパク質に特異的なポリクローナル抗体は、ホイッフルボールを移植したニュージーランドウサギ中に生じさせることができる。ホイッフルボール肉芽腫中に、間隔を置いて、1μgのタンパク質を直接注入する。代表的な投与計画は、1日目、14日目、及び35日目に注射すること(それぞれ、1μgのタンパク質)である。第一の注射(免疫前血清)の一週間前と最後の注射から40日後(免疫後血清)に、肉芽腫液を採取する。
【0042】
本発明を実施する上で有用な転写因子の欠失、置換、変異、及び/又は挿入に得られる配列変種も、本発明の方法で使用することができる。本発明の実施に有用な転写因子のアミノ酸配列変種は、野生型の転写因子タンパク質をコードするDNA配列を変異させることによって、例えば、一般に位置指定突然変異導入と称される技術を用いることによって構築してもよい。本発明を実施する上で有用な転写因子をコードする核酸分子は、当業者に周知の様々なPCR技術によって変異させることができる(例えば、以下の文献を参照(本文献の引用された部分は、参考文献として本明細書に援用される)「PCR Strategies」M. A. Innis, D. H. Gelfand and J. J. Sninsky, eds., 1995, Academic Press, San Diego, CA (Chapter 14);“PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications”, M. A. Innis, D. H. Gelfand, J. J. Sninsky and T. J. White, eds., Academic Press, NY (1990)))。
【0043】
非限定的な例として、本発明を実施する上で有用な転写因子をコードする核酸分子中に位置指定変異体を導入するために、ClontechのTransformer Site−Directed Mutagenesisキットで利用されている二プライマー系を用いてもよい。該系中の標的プラスミドを変性した後、2つのプライマーを前記プラスミドに同時にアニールさせる。これらのプライマーのうちの一方は所望の位置指定変異を含有しており、他方はプラスミド中の別の位置に変異を含有しているために制限部位が失われている。次いで、これらの2つの変異を強固に連鎖させながら、2ndストランドの合成を行い、得られたプラスミドをE.coli.のmutS株の中に形質転換させる。形質転換された微生物からプラスミドを単離し、(それによって、変異していないプラスミドを直鎖にする)適切な制限酵素を用いて制限消化した後、E.coli.中に再度形質転換する。この系によって、一本鎖ファージミドのサブクローニング又は作製の必要なしに、発現プラスミド中に直接突然変異を生成させることが可能となる。2つの突然変異の強い連鎖と非突然変異プラスミドのその後の直鎖化とによって、高い変異効率がもたらされ、最小限のスクリーニングが可能となる。最初に制限部位プライマーを合成した後には、この方法では、変異部位当たりただ一つの新規プライマー種を使用するだけで足りる。各位置変異体を個別に調製するのではなく、所定の部位に所望の突然変異を全て同時に導入するために、一群の「設計された縮重(designed degenerate)」オリゴヌクレオチドプライマーを合成してもよい。変異体クローンを同定し、分類するために、プラスミドDNAの変異領域を配列決定することによって、形質転換体をスクリーニングすることができる。次いで、各変異DNAを完全に配列決定又は制限消化し、(変異していない対照とバンドシフトを比較することによって)配列中に他の変化が生じていないことを確認するために、Mutation Detection Enhancementゲル(J.T.Baker)上での電気泳動によって分析することができる。
【0044】
この場合にも、非限定的な例として、本発明を実施する上で有用な転写因子をコードする核酸分子中に位置指定変異体を導入するために、Stratagene(La Jolla、California)のQuikChangeTM Site−Directed Mutagenesisキットで用いられている2プライマー系を使用してもよい。二本鎖プラスミドDNA(標的変異部位を有するインサートを含有する)を変性し、プラスミドDNAの各ストランドが標的変異部位において相補的な2つのオリゴヌクレオチドと混合する。Pfu DNAポリメラーゼを用いてアニールしたオリゴヌクレオチドプライマーを伸長させることによって、ねじれ型(staggered)のニックを含有する変異したプラスミドを作製する。温度サイクルを経た後、制限酵素DpnI(メチル化又はヘミメチル化DNAを切断するが、メチル化されていないDNAは切断しない)を用いて、変異していない親DNAテンプレートを消化する。テンプレートDNAを与えるE.Coliの多くの株は、必要とされるメチラーゼ活性を有しているので、親テンプレートDNAは、殆ど常にメチル化又はヘミメチル化されている。所望の突然変異を取り込んでいるアニールした残りのベクターDNAをE.Coli中に形質転換する。
【0045】
ある位置指定変異導入実験を設計する際には、まず非保存的な置換(例えば、AlaをCys、His、又はGlu)を作製し、その結果、活性が著しく損なわれるかどうかを決定することが一般に望ましい。もし、活性の喪失又はノックアウトによって、その残基が重要であることが、このようにして実証されれば、側鎖の長さを変えるためにAspをGluに、SerをCysに、又はArgをHisにするような保存的な置換を行うことができる。疎水性セグメントの場合、変化させるのに有用なのは概ねサイズであるが、アルキル側鎖を芳香族に代えることもできる。
【0046】
本発明を実施する上で有用な転写因子をコードする核酸分子を用いた、他の位置指定突然変異導入技術を利用してもよい。例えば、「Sambrook, et al., Molecular Cloning : A Laboratory Manual, 2nd ed. Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York,NY(1989)」の15.3節の記載(参考文献として本明細書に援用される)に従って、DNAの制限エンドヌクレアーゼ消化後に連結を行い、本発明を実施する上で有用な転写因子の欠失変種を作製してもよい。上記Sambrookらの15.3節に記載されているように、挿入変種を構築するために同様の戦略を使用してもよい。
【0047】
本発明を実施する上で有用な転写因子の置換変種を調製するために、オリゴヌクレオチドを用いた変異導入を利用してもよい。オリゴヌクレオチドを用いた変異導入は、本発明を実施する上で有用な転写因子の欠失及び挿入変種を調製するためにも便利に使用し得る。この技術は、Adelmanら(DNA 2:183[1983])、上述のSambrookら、「Current Protocols in Molecular Biology」, 1991, Wiley(NY), F. T. Ausubel, R. Brent, R. E. Kingston D. D. Moore, J. D. Seidman, J. A. Smith and K. Struhl, eds.,(参考文献として本明細書に援用される)によって記載されているように、本分野において周知である。
【0048】
一般的に、本発明を実施する上で有用な転写因子をコードする核酸分子中に二以上のヌクレオチドを挿入、欠失、又は置換させるためには、少なくとも25ヌクレオチドの長さのオリゴヌクレオチドが使用される。変異をコードするヌクレオチドの何れかの側に対して完全に一致する12〜15のヌクレオチドを有するものが最適なオリゴヌクレオチドであろう。本発明を実施する上で有用な野生型転写因子タンパク質を変異させるためには、適切なハイブリダイゼーション条件下で、一本鎖DNAテンプレート分子に前記オリゴヌクレオチドをアニールさせる。続いて、DNA重合酵素(通常はE.coliのDNAポリメラーゼIのクレノー断片)を加える。該酵素は、変異を有するDNA鎖の合成を完結させるために、前記オリゴヌクレオチドをプライマーとして使用する。このように、DNAの一方の鎖がベクター中に挿入された野生型タンパク質をコードし、DNAのもう一方の鎖が同じベクター中に挿入された変異型のタンパク質をオードするように、ヘテロ二本鎖分子が形成される。該へテロ二本鎖分子は、続いて、適切な宿主細胞中に形質転換される。
【0049】
2以上のアミノ酸が置換された変異体は、複数の方法のうちの一つによって作製し得る。アミノ酸がポリペプチド鎖中で互いに近接して存在するのであれば、所望の全アミノ酸置換をコードする一つのオリゴヌクレオチドを用いて同時に変異させ得る。しかしながら、アミノ酸が互いにある程度離れている(例えば、11アミノ酸以上隔たっている)のであれば、所望の変化を全てコードする単一のオリゴヌクレオチドを作製することはより困難である。代わりに、2つの別の方法のうちの1つを使用し得る。第一の方法では、置換すべき各アミノ酸につき、各別のオリゴヌクレオチドを作製する。続いて、該オリゴヌクレオチドを一本鎖テンプレートDNAに同時にアニールさせると、テンプレートから合成されるDNAの他方の鎖は、所望のアミノ酸置換を全てコードするであろう。別の方法では、所望の変異体を与えるために2ラウンド以上の変異導入を行う。第一のラウンドは、単一変異体に関して説明したとおりであり、野生型タンパク質のDNAをテンプレートとして使用し、第一の所望のアミノ酸置換をコードするオリゴヌクレオチドを該テンプレートにアニールさせ、続いてヘテロ二本鎖DNA分子を作製する。第二ラウンドの突然変異導入では、第一ラウンドの突然変異導入で産生された変異DNAをテンプレートとして利用する。このように、該テンプレートは既に一以上の変異を含有している。続いて、所望のアミノ酸置換を更にコードするオリゴヌクレオチドを該テンプレートにアニールさせると、ここで得られるDNAの鎖は、第一及び第二ラウンドの両突然変異導入に由来する変異をコードしている。得られたこのDNAは、第三ラウンドの変異導入等でテンプレートとして使用することができる。
【0050】
本発明を実施する上で有用な転写因子の最初のクローニング工程には、宿主細胞として原核細胞を使用し得る。原核細胞は、大量のDNAの迅速な産生、位置指定突然変異導入に使用される一本鎖DNAテンプレートの作製、多数の変異体及び/又は内耳細胞転写因子候補の同時スクリーニング、及び作製された変異体のDNA配列決定を行う上で特に有用である。適切な原核宿主細胞には、E. coli K12 94株(ATCC番号31,446)、E. coli W3110株(ATCC番号27,325)、E. coli X1776(ATCC番号31,537)、及びE. coli Bが含まれるが、HB101、JM101、NM522、NM538、NM539のような他の多くのE.coliの株や、Bacillus subtilis等の棹菌、Salmonella typhimurium又はSerratia marcesans等の他の腸内細菌科、及び様々なPseudomonas種を含む他の多くの原核細胞種及び属を全て宿主として使用し得る。原核細胞又は頑強な細胞壁を有する他の宿主細胞は、上記のSambrookらの1.82節に記載されている塩化カルシウム法を用いて形質転換することが好ましい。あるいは、これらの細胞を形質転換するために、電気穿孔を使用してもよい。原核細胞の形質転換技術は、「Dower, W. J., in Genetic Engineering, Principles and Methods,12:275−296, Plenum Publishing Corp., 1990; Hanahan et al., Meth. Enzymol.,204:63(1991)」に記載されている。
【0051】
当業者に明らかであるように、本発明を実施する上で有用な転写因子をコードする核酸分子をクローニングし、発現し、及び/又は操作するために、宿主細胞と互換性のある種に由来するレプリコン及び調節配列を含有する任意のプラスミドベクターも使用し得る。通常、前記ベクターは、複製部位と、形質転換された細胞を表現型によって選択できるようにするマーカー遺伝子と、一以上のプロモーターと、外来DNAを挿入するための幾つか制限部位を含有するポリリンカー領域とを有する。E.coliの形質転換に典型的に使用されるプラスミドには、pBR322、pUC18、pUC19、pUCI18、pUC119、及びBluescript M13が含まれ、これらは全て、上記のSambrookらの1.12〜1.20節に記載されている。しかしながら、他の多くの適切なベクターも利用可能である。これらのベクターは、アンピシリン及び/又はテトラサイクリン耐性をコードする遺伝子を含有しており、これらのベクターを形質転換された細胞がこれらの抗生物質の存在下で増殖できるようにする。
【0052】
原核細胞ベクター中で最も一般的に使用されるプロモーターには、β−ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)及びラクトースプロモーター系(Chang et al.,Nature,375:615[1978];Itakura et al.,Science,198:1056[1977];Goeddel et al.,Nature,281:544[1979])、及びトリプトファン(trp)プロモーター系(Goeddel et al., Nucl.Acids Res.,8:4057[1980];EPO Appl. Publ.NO.36,776)、及びアルカリホスファターゼ系が含まれる。一般的には、これらのプロモーターが多用されているが、他の微生物のプロモーターも使用されている。それらのヌクレオチド配列に関する詳細は文献に記載されており、当業者であれば、それらを機能的にプラスミドベクター中に連結することが可能である(Siebenlist et al.,Cell,20:269[1980]参照)。
【0053】
複製配列をコードするDNAと、制御配列と、表現型選択遺伝子と、本発明を実施する上で有用な転写因子をコードするDNAとを含有する適切なベクターは、標準的な組換えDNA操作を用いて構築される。本分野において周知であるように(例えば、Sambrook et al.,上記参照)、単離されたプラスミド及びDNA断片は切断され、目的に適合するように加工(tailor)され、所望のベクターを与えるように特定の順序で互いに連結される。
【0054】
本発明の方法の別の実施態様では、内耳感覚有毛細胞を損傷させ、且つ内耳支持細胞中で活性な一以上の細胞周期阻害剤の発現を(内耳感覚有毛細胞を損傷させる前、間、及び/又は後に)阻害させることによって、内耳支持細胞からの内耳感覚有毛細胞の形成を刺激する。このようにして、損傷を受けた感覚有毛細胞と接触している内耳支持細胞を刺激して分裂させ、少なくとも幾つかの子孫が内耳感覚有毛細胞が形成するようにさせることができる。代表的な例として、内耳支持細胞中で活性な細胞周期阻害剤には、p21Cip1、p27Kip1、及びp57Kip2を含むいわゆるCIP/KIPファミリーのサイクリン依存性キナーゼ阻害剤等のサイクリン依存性キナーゼ阻害剤が含まれる。
【0055】
内耳支持細胞内で活性な細胞周期阻害剤の具体例には、p57Kip2(Lee et al., Genes Dev. 9(6):639−649(1995)(配列番号6);p27Kip1(Cell 78(1):59−66(1994) 配列番号8及び9));p21Cip1(El−Diery et al., Cell 75(4):817−825(1993)(配列番号10及び11);p19 Ink 4d(Chan et al.,Mol.Cell.Biol.15(5):2682−2688 (1995)(配列番号12及び13));pl8 Ink 4c(Guan et al., Genes Dev. 8(24):2939−2952(1994)(配列番号14及び15));p15 Ink 4b(Hannon and Beach, 371(6494):257−261(1994)(配列番号16及び17));p16 Ink 4a (Serrano, M. et al., Nature 366(6456):704−707(1993)(配列番号18及び19))が含まれる。本発明を実施する上で有用な細胞周期阻害剤をコードする核酸分子は、55℃2×SSCを上回る少なくとも一つのハイブリダイゼーションストリンジェンシー下で(60℃で1×SSC、又は60℃で0.2×SSCなど)、配列番号6、8、10、12、14、16、及び18に記載されている核酸分子のうちの何れか一つのアンチセンス鎖にハイブリダイズする。
【0056】
細胞周期阻害剤の阻害剤は、細胞内で細胞周期阻害剤に対して直接又は間接的な態様で作用するタンパク質等の物質であり得る。さらに、細胞周期阻害剤の阻害剤は、細胞周期阻害剤タンパク質をコードする核酸分子の全部又は一部に相補的なアンチセンス核酸分子であって、ストリンジェントな条件下(55℃で2×SSCを上回るストリンジェンシー等(例えば60℃で1×SSC、又は60℃で0.2×SSC))で細胞周期阻害剤タンパク質をコードする核酸分子にハイブリダイズする(mRNA分子等の)アンチセンス核酸分子であり得る。
【0057】
内耳支持細胞中での細胞周期阻害剤遺伝子の発現を阻害するためには、本分野で知られている任意の方法を使用することができる。例えば、内耳支持細胞中で活性な細胞周期阻害剤をコードする核酸分子の一部(又は全部)を、プロモーター配列に対してアンチセンスの方向に含むベクターを内耳支持細胞中に導入することによって、内耳支持細胞中で活性な細胞周期阻害剤の発現を阻害することができる。
【0058】
一般的に、その正常な転写方向とは逆向きであり、このため宿主細胞内で発現される標的mRNA分子と相補的なRNA転写物を発現するDNA配列を、アンチセンス技術は利用している(すなわち、アンチセンス遺伝子のRNA転写物は、ワトソン−クリックの塩基対合を介して、標的mRNA分子にハイブリダイズすることができる)。標的遺伝子の発現を妨害することが可能であれば、アンチセンス遺伝子は、数多くの様々な方法で構築し得る。前記標的遺伝子のコード領域(又はその一部)をその正常な転写方向に対して逆向きにして、その相補鎖の転写をさせることにより、アンチセンス遺伝子によってコードされるRNAとセンス遺伝子によってコードされるRNAを相補的とすることによって、アンチセンス遺伝子を構築することができる。
【0059】
一般的には、前記アンチセンス遺伝子は、一又は複数の前記標的遺伝子の少なくとも一部と実質的に同一であろう。しかしながら、発現を阻害するには、前記配列が完全に同一である必要はない。一般的には、より短いアンチセンス遺伝子を使用する場合には、これを埋め合わせるために、より高い相同性を使用することができる。典型的には、最小の同一性は、約65%超であるが、これより高い同一性によって、内在配列の発現がより効果的に抑圧されるかもしれない。約80%より相当大きな同一性が好ましいが、約95%乃至完全な同一性が最も好ましいであろう。
【0060】
さらに、前記アンチセンス遺伝子は、標的遺伝子と同一のイントロン又はエキソンパターンを有する必要はなく、前記標的遺伝子の非コードセグメントは、標的遺伝子発現のアンチセンス抑制を達成する上で、コードセグメントと同等に有効であるかもしれない。通常は、少なくとも約30又は40ヌクレオチドのDNA配列をアンチセンス遺伝子として使用すべきであるが、これより長い配列も好ましい。次いで、前記構築物を一以上の内耳支持細胞中に導入し、RNAのアンチセンスストランドを作製する。
【0061】
標的遺伝子の発現を阻害するために、触媒作用を有するRNA分子又はリボザイムも使用することができる。標的RNAと特異的に対合し、特定の位置のホスホジエステル骨格を切断するRNAリボザイムをコードするリボザイム導入遺伝子を設計することによって、標的RNAを機能的に不活化することが可能である。この切断を行う際に、リボザイム自体は変化しないので、リボザイムはリサイクルされ、他の分子を切断することができる。アンチセンスRNA中にリボザイム配列を含めることによって、アンチセンスRNAにRNA切断活性が付与され、それによりアンチセンス構築物の活性を増大させる。Tablerら(1991、Gene 108:175)は、単一構築物において、アンチセンスRNA技術の利点とリボザイム技術の利点とを組み合わせることによって、触媒能を有するRNAの構築を大幅に簡素化した。リボザイムの触媒には、より小さな相同性領域が必要とされるので、切断部位が保存されていれば、大きな遺伝子ファミリーの様々な要素の抑制を促進することができる。
【0062】
標的遺伝子活性を抑圧させるのに適した別の戦略では、優性阻害(dominant negative)突然変異を作出するための一般的な基準に従って(Herskowitz I, Nature 329:219−222(1987))、標的遺伝子によってコードされるタンパク質の変異型又は部分欠失型をセンス発現させる。
【0063】
転写因子をコードする核酸分子(又はアンチセンスDNA分子を含むベクター)を内耳細胞中に導入し、その中で発現させるためには、直接注入、電気穿孔、ウイルスによって介される遺伝子送達、アミノ酸によって介される遺伝子送達、遺伝子銃による遺伝子送達、リポフェクション及び熱ショックを含む本分野で知られている任意の遺伝子送達法を使用することができる。非ウイルス的な内耳細胞への遺伝子送達法は、Huang,L.,Hung,M−C,及びWagner,E.,の「Non−Viral Vectors for Gene Therapy,Academic Press,San Diego,California (1999)」(参考文献として本明細書中に援用される)に開示されている。
【0064】
例えば、インサイチュで又は身体から細胞を取り出した後に、ウイルスベクターによって細胞内に遺伝子を導入することができる。例えば、レトロウイルスは、感染後、宿主細胞の染色体中にその遺伝子を挿入することができるRNAウイルスである。ウイルスのタンパク質をコードする遺伝子を欠くが、細胞に感染する能力を保持し、その遺伝子を標的細胞の染色体中に挿入するレトロウイルスベクターが開発されている(A.D.Miller,Hum.Gen.Ther.1:5〜14(1990))。
【0065】
アデノウイルスベクターは、患者に直接投与するように設計されている。レトロウイルスベクターとは異なり、アデノウイルスベクターは宿主細胞の染色体中には組み込まれない。その代わり、アデノウイルスベクターを用いて細胞中に導入された遺伝子は、限られた期間だけ存続する染色体外因子(エピソーム)として核の中に維持される。アデノウイルスベクターは、気道の上皮細胞、内皮細胞、肝細胞及び様々な腫瘍を含む多数の異なる組織中に存在する分裂中の細胞及び分裂していない細胞にインビボで感染する(B.C.Trapnell,Adv Drug Del Rev.12:185〜199(1993))。
【0066】
他のウイルスベクターは、治療遺伝子をニューロンに送達する幾つかの初期投薬において使用され、幾つかの形態の脳腫瘍に治療遺伝子を送達するために使用できる可能性を秘めた単純ヘルペスウイルス(巨大な二重鎖DNAウイルス)である(D.S.Latchman,Mol.Biotechnol.2:179〜95(1994))。ワクシニアウイルスの組換え体は、大きな挿入断片を収容することができ、相同組換えによって産生される。現在まで、このベクターはヒトIL−1β及び共刺激分子であるB7−1及びB7−2などのインターロイキン類(ILs)を輸送するために使用されてきた(G.R.Peplinski等、Ann.Surg.Oncol.2:151〜9(1995);J.W.Hodge等、Cancer Res.54:5552〜55(1994))。
【0067】
遺伝子治療への別のアプローチでは、DNAプラスミドが患者に直接導入される(F.D.Ledley,Hum.Gene Ther.6:1129〜1144(1995))。プラスミドDNAは、体内の細胞によって取り込まれ、組換えタンパク質の発現を誘導することができる。典型的には、プラスミドDNAは、DOTMA(1,2−ジオレイルオキシプロピル(diolcyloxypropyl)−3−トリメチルアンモニウムブロマイド)及びDOPE(ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン)などの1以上の脂質とプラスミドDNAとが会合したリポソームの形態で細胞に送達される。DOTMAを用いた製剤は、動物モデルの肺上皮細胞において発現することが示された(K.L.Brigham等、Am.J.Med.Sci.,298:278〜281(1989);A.B.Canonico等、Am.J.Respir.Cell.Mol.Biol.10:24〜29(1994))。さらに、5%PVP(50,000kDa)と共に処方されたプラスミドDNAを筋肉注射すると、筋肉内でのレポーター遺伝子の発現レベルを、生理食塩水中のDNAのみを注射した場合に見られるレベルの200倍も増大させることが研究により示された(R.J.Mumper等、Pharm.Res.13:701〜709(1996);R.J.Mumper等、Proc.Intern.Symp.Cont.Rol.Bioac.Mater.22:325〜326(1995))。プラスミドDNAの筋肉内投与は、何ヶ月にもわたり持続する遺伝子発現をもたらす(J.A.Wolff等、Hum.Mol.Genet.1:363〜369(1992);M.Manthorpe等、Hum.Gene Ther.4:419〜431(1993);G.Ascadi等、New Biol.3:71〜81(199l);D.Gal等、Lab.Invest.68:18〜25(1993))。
【0068】
さらに、DNAの取り込みと発現は、甲状腺(M.Sikes等、Hum.Gene Ther.5:837〜844(1994))及び滑膜(J.Yovandich等、Hum.Gene Ther.6:603〜610(1995))へのプラスミドを直接注射した後にも観察されている。肝臓(M.A.Hickman等、Hum.Gene Ther.5:1477〜1483(1994))、皮膚(E.Raz等、Proc.Natl.Acad.Sci.91:9519〜9523(1994))への間質内注入、気道への喉頭注入(K.B.Meyer等、Gene Therapy 2:450〜460(1995))、内皮への適用(G.D.Chapman等、Circulation Res.71:27〜33(1992);R.Riessen等、Human Gene Therapy,4:749〜758(1993))、及び静脈内投与(R.M.Conry等、Cancer Res.54:1164〜1168(1994))後に低レベルの遺伝子発現が観測された。
【0069】
標的細胞へのDNAの供給を増大させるために、様々な装置が開発されている。簡単なアプローチの1つは、標的細胞をカテーテル又はDNA含有を含有する移植可能な材料と物理的に接触させることである(G.D.Chapman等、Circulation Res.71:27〜33(1992))。別のアプローチは、液柱を標的組織内に高圧下で直接投入する、針を使用しない噴射式注射装置を利用することである(P.A.Furth等、Anal Biochem.20:365〜368(1992);H.L.Vahlsing等、J.Immunol.Meth.175:11〜22(1994);F.D.Ledley等、Cell Biochem.18A:226(1994))。
【0070】
別の遺伝子送達装置は、「遺伝子銃」又はBiolisticTM、すなわちDNAで被覆された微粒子を細胞の核内にインビボで直接投入する弾道装置である。核内に入った後、DNAはその金又はタングステン微粒子から溶け出し、標的細胞によって発現され得る。この方法は、遺伝子を皮膚、肝臓、及び筋に直接導入するために効率的に使用されてきた(N.S.Yang等、Proc.Natl.Acad.Sci.87:9568〜9572(1990);L.Cheng等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.90:4455〜4459(1993);R.S.Williams等、Proc.Natl.Acad.Sci.88:2726〜2730(1991))。
【0071】
蝸牛開口術では、蝸牛を穿刺し、核酸分子などの化学物質を蝸牛内に導入することができるカテーテルを挿入する。蝸牛開口術は、例えば、Lalwani,A.K.等、Hearing Research 114:139〜147(1997)に開示されている(本文献を参考文献として本明細書に援用する)。
【0072】
標的へ遺伝子を送達するための別のアプローチ方法は、分子の抱合体を使用することであり、この抱合体は核酸を細胞に特異的にターゲティングさせるために核酸又はDNAの結合剤が付着したタンパク質又は合成リガンドからなる(R.J.Cristiano等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:11548〜52(1993);B.A.Bunnell等、Somat.Call Mol.Genet.18:559〜69(1992);M.Cotten等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:6094〜98(1992))。DNAが分子抱合体と結合すれば、タンパク質−DNA複合体が得られる。この遺伝子送達系は、異なるリガンドを使用することによって様々なタイプの細胞を標的とした送達が可能であることが示されている(R.J.Cristiano等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:11548〜52(1993))。例えば、ビタミンの葉酸塩は、葉酸塩受容体を過剰発現する細胞(例えば、卵巣癌細胞)内へのプラスミドDNAの送達を促進するリガンドとして使用されてきた(S.Gottschalk等、Gene Ther.1:185〜91(1994))。マラリアのスポロゾイト周囲タンパクは、硬変症、糖尿病、及び肝細胞癌などの、肝細胞上のASOR受容体の発現が低下した条件下で、肝臓特異的に遺伝子を送達するために使用されてきた(Z.Ding等、J.Biol.Chem.270:3667〜76(1995))。癌細胞上の上皮成長因子(EGF)の受容体が過剰発現すると、肺癌細胞によるEGF/DNA複合体の特異的な取込みが可能になった(R.Cristiano等、Cancer Gene Ther.3:4〜10(1996))。現時点で好ましい遺伝子送達法は、リポフェクションである。
【0073】
本発明の方法をインビトロで利用する場合、コルチ器を含む内耳全体を、好ましくは切除し、培養し、培養器の中で処置する。内耳をインビトロで培養するために有用な装置の現時点で好ましい実施例は、米国特許第5,437,998号、米国特許第5,702,941号、及び米国特許第5,763,279号に開示されており、これらの各文献は参考文献として本明細書に援用される。
【0074】
一般に、内耳を培養するための装置の現時点で好ましい実施例としては、少なくとも一部をシリコンゴムなどのガス透過性材料で構成することができる壁を備える管状容器を含む、ガス透過性のバイオリアクターが挙げられる。1つの好ましい実施例における容器は、その半分がガス透過性材料で構成され、残りの部分が非透過性材料で作製されるように構成されている。一般に入手可能なガス透過性材料は不透明である。したがって、バイオリアクターの少なくとも一部に非透過性材料を使用することによって、管状容器チャンバーの目視検査を可能にする利点を付与することができる。
【0075】
管状容器は、端部が閉じられており、実質的に水平な長手方向の中心軸を有し、容器への1以上のアクセスポートを有する。容器にアクセスポートが与えられていることによって、バイオリアクターに培地及び細胞を入れ、古い培地を管状容器から取り出すことができる。これは、バルブ又はシリンジポートとも呼ばれる、容器のアクセスポートを通して容易になされる。好ましい実施例においては、容器のアクセスポートは、シリンジポートを備えるバルブで構成される。
【0076】
容器は、その水平な長手方向の中心軸の周りを回転できることが好ましい。好ましい回転手段は、取付け基盤の上に配置されたモーターアセンブリーであり、管状容器に取り付けるための手段を有する。回転スピードは、管状容器内の内耳が一定して動いているように調節することができるが、管状容器内の水性培地中に著しい乱れを起こすほど管状容器の回転を速くすべきではない。
【0077】
必要に応じ、管状容器の壁の少なくとも一部を構築する際にガス透過性材料を使用すると、容器チャンバー内の細胞を培養する培地中に容器の壁を通して酸素が拡散できるようになる。同様に、二酸化炭素は壁を通して拡散し、容器の外へ拡散する。したがって、管状容器の壁の少なくとも一部を構築する際にガス透過性材料を使用することによって、通常は、バイオリアクター容器内に空気を注入する必要がなくなる。しかし、内耳を培養するためにさらに酸素が必要な場合には、バイオリアクター容器内の水性培地中への空気注入を利用することができる。水性培地中に空気を注入するために空気ポンプを利用するときには、空気ポンプのバルブを埃から保護するためにエアフィルターも使用する。
【0078】
本発明を実施する上で有用なバイオリアクターの別の実施例は、少なくとも一部がガス透過性材料で構成され得る壁を備える環状容器である。環状とは、環状、ドーナツ状、及び他の実質的に対称形のリング状の形をした管状容器を含むものと本明細書では定義される。環状容器は端部が閉じられ、実質的に水平な長手方向の中心軸を有する。
【0079】
別の実施例においては、本発明を実施する上で有用なバイオリアクターは、少なくとも一部がガス透過性材料で構成された管状容器を備える。この容器は端部が閉じられ、該容器がそれを中心に回転する実質的に水平な長手方向の中心軸を有する。容器はさらに、摺動可能に相互に連結された2つの部材を備え、第一の部材は第二の部材内に摺動可能に装着され、それらの間に液密な封止を形成して、容積可変の管状容器を提供する。バイオリアクターは、その実質的に水平な長手方向の中心軸の周囲に管状容器を回転させるための手段を備える。容器の1以上のアクセスポートが、容器内に又は容器から材料を移動するために設けられている。
【0080】
汚染を最小限にする必要がある場合には(例えば、AIDS又はヒトの組織の研究)、本発明を実施する上で有用なバイオリアクターの廃棄性が特に利点となる。また、摺動可能に相互連結された部材を備えた前記バイオリアクターの実施例は、調節によって、必要とされる正確なサイズのバイオリアクターを提供することができる。
【0081】
体液で満たされた感覚器官を培養するために本発明を実施する上で有用な、現時点で好ましい市販のバイオリアクターは、High Aspect Ratio Vessel(HARVTM)及びCylindrical Cell Culture Vessel)(CCCVTM)として知られ、Synthecon,Inc.(8054 El Rio,Houston,Texas)によって製造されている。
【0082】
Gibco BRL(Gibco BRL培地は、Life Technologies(本社 Gaithersburg,MD)によって生産されている)のNeuralbasalTM培地は、B27又はN2の培地サプリメントを追加する必要はあるが、内耳をインビトロで培養するための現時点で好ましい培地である。しかし、本発明を実施する際に、体液で満たされた感覚器官を培養するために、他の培地を首尾よく使用することもできる。他の適切な培地としては、ウシ胎児血清又はウマ血清を含むDME、BME、及びM−199が挙げられる。前記培地のすべてが、Gibco−BRLによって販売されている。NeuralbasalTM培地を使用する場合には、長い培養期間(>96時間)を試行するときに、N2又はB27サプリメントがより重要な役割を果たす。
【0083】
別の側面においては、本発明は内耳支持細胞の形成を刺激するための方法を提供する。本発明のこの側面に係る方法は、(例えば、損傷した内耳支持細胞と接触している内耳支持細胞の細胞分裂によって)内耳の新しい支持細胞の形成を促進する条件下で内耳支持細胞に損傷を与えるステップを含む。本発明のこの側面においては、内耳支持細胞からの内耳感覚有毛細胞の形成を刺激する本明細書に記載の方法と同じ手法を用いて、内耳支持細胞を損傷させ、新しい内耳支持細胞の形成を刺激する。したがって、例えば、アミノグリコシド抗生物質などの内耳支持細胞を損傷させる効果を有するある量の聴器毒性物質と接触させることによって、内耳支持細胞に損傷を与えることができる。また、例えば、内耳支持細胞に損傷を与え、内耳支持細胞を刺激して新しい内耳支持細胞を分裂、形成することができる転写因子(POU4F1、POU4F2、POU4F3、Brn3a、Brn3b、及びBrn3cなど)を内耳支持細胞内に(内耳支持細胞の損傷前、損傷中、及び/又は損傷後に)発現させることによって、新しい内耳支持細胞の形成をさらに刺激することができる。本発明のこの側面の好ましい実施例においては、内耳支持細胞の増殖は、処置した内耳の聴覚機能に改善をもたらす。
【0084】
以下の例は、本発明を実施するために現在考えられる最良の形態を単に説明するものにすぎず、本発明を限定するものと解釈すべきではない。
【0085】
例1
不死化した支持細胞系におけるインビトロでのPOU4F3の過剰発現
POU4F3は、内耳有毛細胞に対して顕著な特異性を示すDNA結合転写因子である。POU4F3の突然変異が、マウスの発育不全、及びマウスとヒトの聴覚損失を起こすことは周知である。有毛細胞前駆体の発生を誘導する際のPOU4F3の役割は、POU4F3を内耳支持細胞系に移入することによって検討される。
【0086】
生培地中のPOU4F3の発現を検出するため、POU4F3及びGFPの両コード領域を含むバイシストロン性mRNAから翻訳された強化緑色蛍光タンパク質(EGFP)の発現をモニターする。具体的には、70bpの5’UTR及び73bpの3’UTRを含むPOU4F3をコードする1250bpのcDNAが、ヒトCMVの主要な最初期プロモーター/エンハンサーからすぐ下流に、pIRES2−EGFPベクター(Clonetech)のユニークなEcoRV制限酵素切断部位に定方向にクローン化される。介在する合成イントロンは、POU4F3遺伝子から下流側にクローン化され、mRNAの安定性を高める。脳心筋炎ウイルス由来の内部リボソーム侵入部位(IRES)は、POU4F3遺伝子とGFP遺伝子との間にクローン化され、同じmRNAからのGFP及びPOU4F3タンパク質の翻訳を可能にする。GFPコード領域の直後には、ウシ成長ホルモン遺伝子由来のポリアデニル化シグナルが存在する。この発現カセットは、バイシストロン性プロモーターを利用するように設計されており、発現されたGFPを蛍光顕微鏡の下で視覚化することによって、POU4F3及びGFPのトランスフェクション及び発現の追跡を可能にする。この第二世代のGFPベクターは、より明るい蛍光に対して最適化された野生型GFPの赤方偏移した変異体(最大励起=488nm、最大発光=507nm)を有する。高レベルのPOU4F3タンパク質を発現する細胞の同定を最適化するため、pIRES2ベクターは部分的に能力を喪失させたIRES配列を利用する(Rees,S.等、BioTechniques 20:102110(1996))。この減衰されたIRESは、GFP開始コドンにおける翻訳開始速度を、POU4F3遺伝子のそれよりも低下させることになる。
【0087】
支持細胞系(UCL)は、112kb−tsA58トランスジェニックマウス(Immortamouse)の内耳前庭感覚上皮から確立した。出生後1日のマウス由来の卵形嚢を切除し、37℃にてサーモリシンで短時間処理した後、感覚上皮(有毛細胞及び支持細胞)を単離した。得られた支持細胞系を、急速な細胞増殖を刺激する許容的な条件(33℃及びγINF)で数回継代した後に誘導させた。3〜4日でコンフルエンスに達した。このプロセスによって全ての有毛細胞が死滅したことが、ICC及び電子顕微鏡分析(EM)によって確認された。UCLは、ZO−1と呼ばれる抗体(支持細胞内に存在するタイトジャンクションを標識する)及びEM(タイトジャンクションの複合体、分泌小胞、及び管腔面の微絨毛(全て支持細胞に特徴的である)を示した)によってさらに特定された。
【0088】
UCL細胞系用培地は、DMEM/F12(Gibco)、ウシ胎児血清(10%)及びγINF(20u/ml)からなった。培地は、細胞の増殖速度に応じて週に2〜3回交換した。3〜4週で単細胞をコンフルエントかつ継代可能にすることができる特殊な接種法を用いて単細胞クローンを発生させた。非許容的条件(37℃又は39℃、γINF無し、FBSは少量又は無し)では、細胞増殖は停止する。
【0089】
高いトランスフェクション効率がUCLにすでに観察されれば、血清のない限定された培地中でこれらの細胞を増殖させ、継代する。これが確立されると、これらの細胞は、プラスミドをコードするIRES−GFP−POU4F3でリポフェクション処理される。1〜6DIVにわたりGFPの発現に関して培地をモニターする。生培地中にGFPの蛍光が高い期間が観測されたら、培地を固定し、POU4F3及びカルビンジンICC用に調製する。
【0090】
例2
破壊されたコルチ器の培養物におけるPOU4F3の過剰発現
P7〜P14マウス由来の培養物を置床し、1mMのネオマイシンを用いて2DIVにわたり組織を破壊する。培地を取り出し、培養物をpIRES2−GFP−POU4F3で6時間リポフェクション処理し、1〜6DIVの間新鮮な培地中で回復させる。培養物をアルデヒドで固定し、POU4F3及びカルビンジン免疫細胞化学法のために処理する。pIRES2−GFPのみでリポフェクション処理した培養物をコントロールとする。三重標識した細胞(GFP、POU4F3、及びカルビンジン免疫反応に対し陽性)が存在することは、破壊されたコルチ器において、ある有毛細胞の表現型が採り入れられるのをPOU4F3が促進できることを示している。ミオシン6及びミオシン7aなどのタンパク質に対して誘導されるポリクロナール抗体を使用し、ミオシン6及びミオシン7aなどの他の有毛細胞に選択的なマーカーに対する抗体を用いることによって、この表現型の測定がさらに確実なものとなる。
【0091】
ミオシン6及びミオシン7aなどの、有毛細胞に特異的なマーカーの発現は、Brn3.1転写因子の発現がE13.5に始まってから2〜3日後のE16の時点で、マウス胎児のコルチ器において観察される。
【0092】
例3
p27 Kip1 −/−マウスにおける内耳有毛細胞の再生
p27Kip1−/−及び+/−のマウスにおける以前の報告では、内耳有毛細胞(IHC)と外耳有毛細胞(OHC)の両領域中に過剰な有毛細胞(HC)が存在という定性的な証拠が示された。(Chen,P.,Segil,N.Development 126:1581〜1590(1999);Lowenheim,H.等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.96:4084〜4088(1999))。残念ながら、これらの観察結果の全部ではないが幾つかは、周囲の支持細胞の著しい過形成によって極めて十分に説明された。そのため、p27Kip1−/−、+/−、及び+/+のマウスの蝸牛中のIHC及びOHCの数を測定した。HCの数が真に増加したかどうかをさらに正確に評価するために、同一の蝸牛由来の領域を幾つか分析した。HCに特異的なマーカーであるミオシンVIIa抗体を用いて、p27Kip1−/−の蝸牛におけるIHCの数が、p27Kip1+/−及び+/+の蝸牛におけるそれと比較して、20%増加したことが観測された。しかし、一つの分析領域でOHCの数が10%増加した以外には、p27Kip1−/−、+/−及び+/+の蝸牛のOHCの総数に統計的な有意差はなかった(表1)。表1に、4週齢のp27Kip1+/+、+/−、−/−のマウスにおける有毛細胞の数(n)を示す。コルチ器の長軸に沿って、異なる3つの部位から得られた100μmの長さの感覚上皮について計数を実施した。距離は蝸牛の頂端からの角度に相当する(±標準偏差)。+/+、+/−、及び−/−間の同じ有毛細胞領域を比較した。統計的な有意性を、ANOVAを用いて決定した。
【0093】
【表1】
【0094】
聴覚の有毛細胞が、出生から10日目に聴覚が発生した後で生成されたのかどうかを決定するために、S期の間に増殖細胞に取り込まれるヌクレオチド類縁体であるブロモデオキシウリジン(BrdU;30mg/kg/s.c)を、2週齢のp27Kip1−/−、+/−及び+/+のマウス(P10〜12)に1日に3回全身投与した。次いで、それ以上の注射をせずに2日間又は2週間マウスを回復させた。光学及び蛍光顕微鏡法を用いた免疫細胞化学法によって、BrdU陽性のHCを同定した。蝸牛もミオシンVI及びミオシンVIIaに対する抗体で標識された。最後の注射後に2日間回復させた2週齢のp27Kip1−/−の蝸牛においては、BrdUに陽性な細胞の中にBrdU/ミオシンVIIaに陽性な細胞は観測されなかった。しかし、最後の注射から14日間回復させた4週齢のp27Kip1−/−の蝸牛においては、BrdU/ミオシンVIIaに陽性なHCが観測された。これらの二重標識されたものの大部分はIHCであった。この定性的な知見は、本発明者らのIHC数及びOHC数の定量的な評価と類似している。p27Kip1+/−、+/+のマウスでは、2日及び14日の回復の時点でBrdUに陽性な細胞が全くなかった。これらのデータを表2にまとめる。表2は、BrdU又はBrdU/アミカシンを注射し、2日又は14日回復させた2週齢及び4週齢のp27Kip1+/+、+/−及び−/−のマウスのコルチ器内に存在するBrdU被標識細胞の数(n)を示している。蝸牛の頂端側の半分から採取された1000μmの長さの感覚上皮に対して計数を行った(±標準偏差)。+/+、+/−、及び−/−間でBrdUのグループにおける増殖を比較した。BrdU/アミカシンのグループにおける増殖を、同じ遺伝子型のBrdUのみのグループにおける増殖と比較した。ANOVAを用いて統計的な有意性を決定した。
【0095】
【表2】
【0096】
聴覚のHCを再生することができるかどうかを確認するために、硫酸アミカシンを全身注射し(P7〜P12)、次いでBrdUを注射して(P10〜P12)HCを破壊した。最後の注射から2日又は14日のいずれかにマウスを屠殺した。アミカシンの組織破壊効果は少なくとも2倍であった。第一に、p27Kip1−/−及び+/−の両マウスにおいて、BrdUのみの処置に比べて、アミカシン/BrdU処置後にBrdUに陽性な細胞の数が増加した。p27Kip1+/−の蝸牛では、BrdUによって標識された細胞の数は検査した試料の多くで増加したが、すべてのp27Kip1+/−の蝸牛がBrdUに陽性な細胞を示したわけではない。HCが再生したという証拠は、標識された蝸牛を解剖することによって確認した。第二に、p27Kip1−/−の蝸牛においてアミカシンによる組織破壊後に、より多数のBrdUに陽性なHCが観測された。BrdUに陽性なHCの大多数は、硫酸アミカシンがHCを損傷又は死滅させた蝸牛領域(蝸牛の基底側の半分)に現れた。BrdUに陽性な細胞は、アミカシン/BrdU又はBrdUのみを処置した後の野生型の蝸牛には観測されなかった。これらのデータを表2にまとめる。
【0097】
特異的なタンパク質のレベルを測定するために、単一の蝸牛ライセートを連続的に希釈し、ポリアクリルアミドゲルの上を泳動させた。p27Kip1−/−の蝸牛から、より強いミオシンVIIaバンドが観測されたが、ミオシンVI及びVIIaのレベルは、p27Kip1−/−、+/−、及び+/+の蝸牛の間でほぼ等しく見えることがウェスタンブロット法によって示された。p27Kip1+/−の蝸牛は、野生型の蝸牛において見られるp27Kip1タンパク質レベルの約50%を含有しており、硫酸アミカシン処理後に、p27Kip1が正常値の50%に低下することによって、支持細胞の増殖が刺激され、ある程度の有毛細胞の再生を起こさせ得ることが示唆された。
【0098】
蝸牛のタンパク質レベルを測定するために使用した手順は以下の通りである。HEPES(25mM)、NP−40(0.7%)、アプロチニン(1mM)、ロイペプチン(1μg/ml)、ペプスタチン(10μM)、フェニルメチルスルホニルフルオライド(PMSF)(1mM)、ジチオスレイトール(DTT)(1mM)、及びエチレンジアミン四酢酸(EDTA)(2mM)を含有する10μlの抽出緩衝液を用いて、蝸牛をチューブに移す。蝸牛を直ちにホモジナイズし、チューブを氷上に約30分間放置する。5μlの4Xサンプル緩衝液を添加し、塩濃度を0.5Mまで調節する。サンプルを90〜100℃に5分間加熱し、次いで13,000rpmにて10分間遠心し、上澄みを回収する。上澄みからの一定分量のタンパク質を取り、15%SDS−PAGEゲルの上で200Vにて50分間泳動させ、タンパク質をPVDFメンブレン上に100Vにて1時間転写する。メンブレンは、10%Amersham製ブロッキングバッファーで1時間又は一晩ブロックしたものである。ブロッキングバッファー中の一次抗体をメンブレンに1時間適用し、次いでメンブレンをPBS/Tweenで5回(1回当たり5分間)洗浄する。ヤギ抗マウス又はヤギ抗ウサギアルカリホスファターゼと抗ビオチンAPとを用いてメンブレンを1時間プローブし、PBS/Tweenで5回(1回当たり5分間)洗浄する。
【0099】
末梢前庭器官においてp27Kip1が同様の役割を果たすかを判定するために、p27Kip1+/−及び+/+のマウスの卵形嚢、球形嚢、及びクリステの増殖能力を調べた。マウス(P7〜P12)に硫酸アミカシン(500mg/kg/d/s.c)を6日連続して全身注射し、P10〜P12の間に、複製マーカーであるブロモデオキシウリジン(BrdU;30mg/kg/d/s.c)も注射した。マウスには、BrdUのみも同様にして注射した。次いで、14日後にマウスを屠殺し、前庭の感覚器官を固定し、解剖し、BrdUの免疫細胞化学法のために処理した。BrdUに陽性な核を光学顕微鏡法及びノマルスキーオプティクスを用いて、全検鏡板からカウントした。一部の器官を断面分析のためにさらに処理した。
【0100】
BrdUのみを投与したp27Kip1−/−のマウスでは、球形嚢及び卵形嚢においてごく低レベルのBrdU標識細胞が観測された。しかし、アミカシン/BrdUの併用処理後には、両器官でBrdUに陽性な細胞の数が40倍に増加した。標識された細胞のおよそ半分がダブレットとして出現し、細胞分裂の直後か、又は分裂中であることを示唆した。プラスチックの断面から、BrdUによって標識された細胞の大多数が、感覚上皮の基底層内の、基底膜に沿って存在することが判明した。BrdUに陽性なHCは、何れの耳石器官にも観察された。これらの再生されたHCの大部分は、杯細胞(calyx)と接触しているタイプIのHCとして現れた。BrdUのみを投与したp27Kip1+/−のマウスでは、球形嚢又は卵形嚢のいずれにも増殖は観察されなかった。アミカシン/BrdUの併用処理後は、ごく低レベルの増殖が誘導された。p27Kip1+/+のマウスでは、アミカシン/BrdU又はBrdUのみで処理した後に、球形嚢又は卵形嚢のいずれにもBrdUに陽性な核は観察されなかった。興味深いことに、アミカシン/BrdU又はBrdUのみで処理した後には、いずれの遺伝子型のクリステにもBrdUに陽性な細胞は観察されなかった。これらのデータは、様々な前庭の感覚器官の中で、及び前庭の感覚器官とコルチ器との間で、p27Kip1を欠失する際の効果が極めて異なることを示唆している。これらのデータを表3にまとめる。表3は、BrdU又はBrdU/アミカシンを注射し、その後14日間回復させた4週齢のp27Kip1+/+、+/−、及び−/−のマウスの前庭器官内のBrdU標識細胞の数を示す。卵形嚢、球形嚢、クリステの感覚上皮全体からカウントを行った(±標準偏差)。BrdU群では、+/+,+/−、及び−/−の間の同じ感覚器官における増殖のレベルを比較することによって、統計的な有意性を決定した。BrdU/アミカシン群では、同一遺伝子型の同一感覚器官における増殖レベルを比較することによって、統計的な有意性を決定した。統計的有意性はANOVAを用いて決定した。
【0101】
【表3】
【0102】
やや薄い切片を選択してプラスチックに再度包埋し、薄片に切り、電子顕微鏡下で検査した。BrdUに陽性なHCは、不動毛の束、クチクラのプレート、シナプスの形成を証拠付ける杯細胞の(calyceal)神経支配を示した。
【0103】
例4
p27 Kip1 発現のアンチセンス阻害
p27Kip1+/+の蝸牛においてp27Kip1の遺伝子産物を阻害することが非有糸分裂の支持細胞の増殖を可能にするかどうかを試験するために、野生型コルチ器の外植片(P7〜P10、聴覚が発生した年齢)をp27Kip1アンチセンスオリゴヌクレオチド(ONs)で処理した。外植片の培養物は、蝸牛からコルチ器を解剖し、蓋膜を除去し、Cell−takで被覆されたガラススライドにコルチ器を接着させることによって置床し、37℃にて5%CO2環境に維持した。次いで、95%を超えるHCを死滅させる聴器毒性抗生物質(1mM硫酸ネオマイシン)に外植片を48時間曝した(Kil,J.等、ARO abs.,21:672(1998))。次いで、ネオマイシンを含有する培地を除去し、p27Kip1アンチセンスオリゴヌクレオチド(Ons)(40nM)をカチオン性脂質を用いて24〜48時間にわたって投与した(リポフェクション)。これらの生きている培養物の幾つかを蛍光下で検査して、FITCと抱合されたアンチセンスONの存在を検出した。
【0104】
FITCに陽性な支持細胞は18〜24時間で検出され、24〜48時間の間にその数と蛍光強度が増加した。培養物をアルデヒドで固定し、BrdUの免疫細胞化学法のために処理した。アンチセンスオリゴヌクレオチド(ON)処理の24時間後に、ほとんどの蝸牛培養物においてBrdUに陽性な支持細胞が出現した。アンチセンスONで処理し、アンチセンスON無しでさらに24時間回復させた培養物中に、BrdUに陽性なダブレットが出現した。このことから、M期がうまく完結し、続いて細胞分裂が起こり得ることが示唆された。リポフェクションのみで処理された培養物は、BrdUによって標識されたごく少量の支持細胞を含有していた。
【0105】
本発明者らは、p27Kip1アンチセンスオリゴヌクレオチドを投与すると、野生型の蝸牛において支持細胞の増殖を誘導できることを認めた。この知見はユニークで相当に重要なものである。p27Kip1アンチセンスONが増殖を誘導することを実証した以前の研究は、一過性に又は可逆的に増殖が停止した、活発に分裂する細胞において見られた(Coats,S.等、Science,272:877〜880(1996);Dao,M.A.等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,95:13006〜13011(1998))。本発明者らの結果は、最後まで分化した器官中に存在する有糸分裂の終了した細胞が、p27Kip1の遺伝子産物を阻害すると、再度細胞周期に入ることを初めて実証した。
【0106】
また、支持細胞の増殖は、マウスのコルチ器では、通常はE12〜14の間に停止する。この時点以降、支持細胞の分化は出生後生活期間の第2週を通して継続する。外植の時には、本明細書に記載の処理を行なった培養物は、やや成熟した形態的諸特性をすでに発達させている。これらのデータは、有毛細胞の再生を誘導することが可能な手段としてのp27Kip1アンチセンスONの役割をさらに支持するものである。p27Kip1+/−のマウスにおいては、タンパク質の量が正常値の50%に低下すると、最後まで分化した支持細胞の幾つかが、p27Kip1の遮断を克服して再度細胞周期に入って、増殖することが可能になる。
【0107】
出生後のコルチ器では、他の上皮器官で細胞の増殖を誘導する増殖因子を添加しても、細胞の増殖又は有毛細胞の再生をインビトロ又はインビボのいずれにおいても促進しない。本明細書に報告する実験では、その欠失によりコルチ器がその有毛細胞の一部を自発的に再生することを可能にする、やや遍在性の強力な細胞周期阻害剤を同定した。1コピーの遺伝子及び正常値の50%の量のタンパク質を含むマウスのコルチ器では、聴覚の有毛細胞を再生することが可能である。
【0108】
さらに、1mMのネオマイシンを含有する100μlのNeuroBasal培地(Gibco)中のCellTak(Collaborative Research)で被覆したガラススライド(Nunc)上に器官型の培養物を確立させることができる。この処理によって有毛細胞の95%が死滅し、トランスフェクションのレベルも亢進される。培養物は、市場で入手可能なリポフェクション試薬(例えば、Perfect Lipofection Kit;InVitrogen,Inc.)を用いて、アンチセンス分子によりリポフェクションされる。培地は、増殖細胞を同定するためにBrdU(10μM)も含有する。さらに、この増殖効果を増加又は促進させるために、TGF−α(1〜100nM)、インシュリン(10〜100μM)、及びIGF−1(1〜100μM)などの様々な組換え増殖因子を使用することができる。
【0109】
例5
モルモットの繊維芽細胞系における細胞増殖をインビトロで刺激するためのp27 Kip1 アンチセンスオリゴヌクレオチドの使用
血清の除去及び増殖の停止期間にp27Kip1アンチセンスオリゴヌクレオチド(ON)に反応する細胞系培養物を確立した。これらの培養物にはモルモットの繊維芽細胞系(JH4)が含まれる。16マーアンチセンスON(配列番号20に示す核酸配列を有する)のリポフェクションは、JH4細胞系において停止していた増殖を、正常値の40%以上にまで増大させた。
【0110】
例6
モルモットの蝸牛におけるp27 Kip1 アンチセンス分子を用いた支持細胞の増殖の刺激
アンチセンスONが外リンパ腔を通して首尾よく送達でき、成熟したモルモットのコルチ器に変化を誘発できることが最近の独立した2つの研究で示された(D’Aldin,C.等、Mol.Brain Res.,55:151〜164(1998);Leblanc,C.R.等、Hear.Res.,135:105〜112(1999))。らせん状の神経節、支持細胞、並びに内部及び外部らせん状溝細胞(sulcus cell)中に、浸透圧ポンプの設置後24時間以内に、GluR2のmRNAの特異的配列に対するFITCアンチセンスONが存在することが認められた。それに続くGluR2/3タンパク質の選択的な減少も、インサイチュで観測された(D’Aldin等、1998、同上)。
【0111】
成熟モルモットのコルチ器におけるp27Kip1の発現パターンは、発育中及び成熟したマウスに観察されるものと類似していることが見出された。モルモットの蝸牛における支持細胞の増殖は、以下のように刺激される。
【0112】
すなわち、イソフルラン(誘導用に5%、維持用に2〜3%)の吸入によって又はケタミン(50mg/mg)及びキシラジン(9mg/kg)の筋肉注射によって、全身麻酔をかける。耳介の後部に局所的に1%リドカインを注射する。動物を暖かなパッドの上に置いて手術中の基礎体温を一定に維持する。呼吸及び循環を注意深くモニターする。カテーテルのコイル及び浸透圧ミニポンプ(ALZET、カタログ番号2002、最長14日間の流速0.5μl/h)からなる注入ユニットを外科的に移植することによって、モルモットの内耳の中に薬物を送達した。コイルには薬物が充填されており、浸透圧ミニポンプは色素を輸送する。内耳に送られる薬物の総量は、コイルに送られる色素の量によりモニターすることができる。薬物は、137mMのNaCl、5mMのKCl、2mMのCaCl2、1mMのMgCl2、10mMのHepes、11mMのグルコースからなり、pHが7.4で浸透圧モル濃度が300mOsm/lの人工の外リンパ溶液に溶解させる。
【0113】
外科的処置はすべて、解剖顕微鏡の下、無菌状態で行なわれる。耳後部の切開によって乳様突起状の気腫性嚢胞(中耳腔)を露出させ、1mmの切断バーを使用して開口させ、蝸牛基底回転が見えるようにする。0.5mmのダイヤモンドバーを用いて、正円窓の約1mm下方に蝸牛開窓部を設けた。この部位から内耳の外リンパ液が洩れるのが観察されれば、蝸牛開窓部の位置が正しいことが確認される。注入ユニットの先端部を蝸牛開窓部の中に挿入し、チューブを歯科用セメントによって中耳の壁面に固定する。注入ユニットを頸部の後に設けた皮下ポケットの中に格納する。皮膚の切開部を2−0絹糸で層状に縫合する。その後のあらゆる平衡失調又は回転動作を避けるために、また実験を完結させるのに必要な動物の数を削減するために、この処置を両方の耳に施す。この処置は片側当たり約30分を要する。
【0114】
注入ユニットを交換するための反復手術は、移植1週後に全身麻酔をして行なう。この処置は、最初の耳後部の皮膚切開によってのみ行なわれ、中耳腔へ再び入ることはない。この処置は、注入ユニット当たり5〜10分かかる。活動性、食欲、飲水、糞便、及び体重を点検することによって、動物の術後の状態を毎日モニターする。術後動物の体重が20%以上減少した場合、或いは極度の回転動作や頭部傾斜を示した場合には、動物を屠殺する。手術の不快感は生じていないはずであり、この処置は術後の不快感を僅かに生ずるにすぎない。
【0115】
下記表4に示すように、正常な対照動物には人工の外リンパ溶液を1又は2週間与えた。有毛細胞の損失グループには、硫酸ゲンタマイシンを1週間投与して有毛細胞を死滅させ、すぐに屠殺するか、2週間回復させた。徐々に且つ全て喪失させるはずである3通りの濃度を使用した。5%(w/v)デキストロース溶液中のカチオン性リポソームを1〜2週にわたり送達した。このグループの目的はリポフェクションによって何らかの損傷が起きないかを調べることである。有毛細胞を喪失した後のリポフェクションでは、ゲンタマイシン含有ポンプを脂質含有ポンプと置き換える。有毛細胞を損失した後のリポフェクション+アンチセンスでは、さらに1週間FITCアンチセンスをリポフェクションする。損傷後のリポフェクション+アンチセンス+増殖因子では、1週間の送達後に、アンチセンスと増殖因子のリポフェクションをさらに1週間続ける。幾つかのグループでは、アンチセンスとTGF−α、インシュリン、及びIGF−1を含む増殖因子との併用を要する。すべての動物において、BrdUを充填した個別の浸透圧ポンプを皮下に移植して、有糸分裂が活性な細胞の同定を可能にしている。
【0116】
【表4】
【0117】
ゲンタマイシンに起因する有毛細胞の損傷は、全載染色法を用いて、ミオシンVIIa(有毛細胞に特異的なマーカー)の免疫細胞化学法及びファロイジン(F−アクチンのマーカー)の組織化学法により点検した。リポソーム及びp27Kip1アンチセンスオリゴヌクレオチドのトランスフェクション効率は、FITCによって標識された核の存在を落射蛍光の下で観察することによって評価する。BrdUの免疫組織化学法は、増殖がp27Kip1アンチセンスON処理によって誘導されたかどうかを決定するために使用する。試料を選択し、電子顕微鏡法によって分析する。
【0118】
有毛細胞総数に対する新しい支持細胞の数を評価するために、BrdU及びミオシンVIIaを用いた二重標識を使用して幾つかの実験を行なう。
【0119】
新しい支持細胞の数を定量するために、BrdU及びビメンチンを用いた二重標識を使用して別の実験を行なう。BrdU、ビメンチン、及びミオシンを用いた二重標識は、新しい支持細胞の数と新しい有毛細胞の数とを識別する。哺乳類におけるコルチ器の支持細胞の増殖及び聴覚の有毛細胞の再生に対するベースラインは0であり、その結果、観測される少数の事象で、片側ANOVAを用いて、統計的有意性をより容易に達成できるようになる。
【0120】
例7
モルモットにおける聴器毒性傷害及び/又はp27 Kip1 アンチセンス処理後の聴覚機能の評価
聴器毒性傷害及び/又はp27Kip1アンチセンス処理した後のモルモットにおいて、聴性脳幹反応(ABR)を試験する。ある期間にわたり同じ動物の中で、並びに同じ又は異なるグループの動物にわたってABRの閾値を比較する(手術前及び手術後)。各刺激の回数及び強度に対する片側分散分析(ANOVA)を用いて有意性を決定する。p値が0.05未満の差異を統計的に有意と見なす。従前の研究からこの操作は、術後のABR反応を減衰させないことが判明している。
【0121】
誘発されたABRを記録するために、モルモットにアベルチン(1.2%原液で0.2ml/体重10g/i.m.)で麻酔をかける。外耳道近くの皮下に探査電極を取り付ける(0.1mm銀線;Narishige)。ブレグマの吻側にドリルで開けた穴(又は、耳道内へ挿入したイヤホン及び耳介に手術用テープで固定した音を伝達するチューブ)にジュラルミンの参照電極を配置する。接地電極(Ag/AgCl2ペレット)を背後に固定する。音刺激は、100μs間の広帯域のクリック音又は10msのトーンバースト(上昇/下降時間 1ms)のいずれかである。音が減衰されるチャンバー(TDTモデルAC−1)内にモルモットを置く。聴覚誘発反応ワークステーション(Auditory Evoked Response Workstation)(SmartEP;Intelligent Hearing System)を用いて反応を測定し記録する。クリック音及びトーンバーストの両刺激ともに、20から85dBに5dB刻みで増加する一連の刺激強度の中にモルモットを置く。トーンバーストの場合、50dBの一定強度の一連の刺激周波数(1、2、4、8、16、32Hz)も使用する。刺激は1秒間に5回繰り返し、合計512回の試験を平均することになる。閾値は、反復可能で視覚的に検出可能なABRを誘発できる最低強度として定義される。
【0122】
例8
硫酸アミカシンで処理したp27ヘテロ接合体マウスにおける聴覚機能の改善 この例ではアミカシンで処理してから4週後にさらに回復の時間を与えた以外は、本明細書の表2で報告した実験に記述したマウスと同じように実験動物を処理した。イソフルランで麻酔をかけたマウスにおいて、頭部3箇所に設置した皮下記録電極を用いた聴性脳幹反応(ABR)を利用して聴覚機能を測定した。音の強度の閾値は、単一の周波数を異なる音の強度として出すことによって決定した(強度はデシベルを単位として測定した)。ABRを誘発するのに要するトーン強度が高いほど、聴覚の閾値がより高く、すなわち聴覚機能が劣る。図3〜6に示したデータは、p27ヘテロ接合体マウスの8匹のうち5匹で聴覚が改善したことを示している(P<0.001)。
【0123】
本明細書の表2では、BrdU標識及び形態学的基準によって評価したところによれば、10匹のp27ヘテロ接合体マウスのうち5匹で、内部細胞の増殖が再生することが証明された。これらのデータから、BrdUによって標識された細胞の大部分が支持細胞であり、有毛細胞ではないことが示された。したがって、p27ヘテロ接合体マウスにおける聴覚機能の改善は、支持細胞のみが再生し、又は支持細胞が有毛細胞とともに再生したことによるものかもしれない。
【0124】
例9
マウスのコルチ器の培養系における遺伝子送達及び遺伝子発現のリポフェクション方法
コルチ器をリポフェクションするために、生後7〜14日のマウスから得た、通算で最長8日間インビトロ(DIV)で増殖させた蝸牛の外植片を利用した。培養物は、B27サプリメントを補充したNeurobasal培地(Gibco)で構成される規定の培地中で増殖させた。培養物を、内耳の感覚性の有毛細胞を選択的に死滅させるアミノグリコシド抗生物質に曝した(1mM硫酸ネオマイシンに48時間)。次いで、Perfect Lipofection Kit(InVitrogen)の8つの異なる脂質の組み合わせを試験した。CMV即時型/初期遺伝子プロモーター(InVitrogen)によって駆動されるβ−ガラクトシダーゼのレポーター遺伝子をコードする細菌のプラスミドを6時間にわたって送達した。培養物をアルデヒドで固定し、β−ガラクトシダーゼの発現のためにx−galによる組織化学法を用いて処理した。X−gal標識が支持細胞中に出現した(未破壊組織では長さ1000μm当たり5〜10の細胞が標識されたのに対して、有毛細胞を以前に含有していた感覚上皮領域では長さ1000μm当たり54.3+/−15.3の細胞が標識された)。
【0125】
β−ガラクトシダーゼの発現を検出するのに要する労力、構築物をコードするβ−ガラクトシダーゼの大きさ(すなわち4.1kbp)、及びこの技術と他の所望のICC手順との互換性が低いことを考え、緑色蛍光タンパク質(GFP;Clonetech)をコードするプラスミドで培養物をリポフェクションした。GFPの検出には、標準のFITCフィルターセット(励起最大488nm、発光最大509nm)が必要であり、AAVベクターシステムを使用して、蝸牛の有毛細胞、支持細胞及び神経細胞内に首尾よく移入された。
【0126】
本発明者らの繁殖コロニー由来のP7〜P14Swiss Websterマウスから置床させたコルチ器の培養物を、多様な市販のリポフェクション試薬(すなわち、FuGENEトランスフェクション試薬;Boehringer−Mannheim)を用いてリポフェクションする。これらの効率を、InVitrogen Kitによって達成されたトランスフェクション効率と比較する。外植片の中央から採取した長さ1000μmにわたってコルチ器内のGFPに陽性な細胞の数をカウントして、より優れたリポフェクション試薬及びより優れた脂質とDNAとの比(3:1、6:1、9:1)を決定する。細胞をカウントする画像処理ソフトウェアプログラムに画像を直接出力するCCDデジタルカメラを装備したNikon落射蛍光顕微鏡を用いて細胞を可視化する。
【0127】
次に、有毛細胞のアミノグリコシド抗生物質による組織破壊を後続のリポフェクションと組み合わせる。有毛細胞を死滅させるために、1mMの硫酸ネオマイシン(Sigma)を含有する培地を、48期間にわたって培養物内に投与する。新生児のマウス由来の培養物とは異なり、聴覚器官の発達した生後2週のマウスは、この濃度のネオマイシンにより容易に影響を受けて、カルビンジン免疫反応及びプラスチック断面分析で測定して95%を超える有毛細胞が失われることになる。残りの支持細胞を、GFPをコードするプラスミドを用いて6時間にわたりリポフェクションする。さらに1〜4DIVの間(合計3〜6DIV)、新鮮な培地中で培養物をリンスし増殖させる。培養物をアルデヒドで固定し、GFPを落射蛍光の下で直接可視化する。アルデヒドで固定した後にGFPの蛍光が失われることを示した報告が幾つかなされている。このため市販のGFPの抗生物質(Clonetech)を使用して、リポフェクションした細胞の蛍光を増大させることが必要になるかもしれない。
【0128】
例10
マウスの内耳の切除法とインビトロでの培養
マウスの内耳を以下のようにして切除した。生後7〜14日のSwiss Websterマウスを断頭し、それらの頭蓋を70%エタノールに5分間浸漬して消毒した。無菌条件下で、頭蓋を正中矢状軸に沿って半分に切断し、35mmのプラスチック培養皿(Nalge Nunc International,2000 North Aurora Road,Naperville,IL 60563)中の3mlの培地(pH7.4のNeuralbasalTM培地;Gibco)中に置いた。手術用鉗子を用いて、内耳の骨迷路系が見えるようにして、側頭骨から切り離した。重なった結合組織、あぶみ骨、顔面神経、及びあぶみ骨動脈を除去した。細い鉗子を用いて、蝸牛の側方壁の頂回転を通して直径約2mmの小さな穴を開けた。蝸牛の開存性卵円又は正円窓と共に、この外科的に設けられた導管により、体液で満たされた内耳内に培地が容易に拡散できるようになる。
【0129】
一般には、前述のようにして切除して調製した内耳を、N2又はB27培地サプリメント(いずれもGibco−BRLによって販売されている。カタログ番号17504−036)のいずれか、10U/mlのペニシリン、及び0.25μg/μlのフンギゾンを補充した50又は55mlのNeuralbasalTM培地を含むHARVTM又はCCCVTM容器に移す。B27サプリメントは、50X濃度として販売され、0.5X(例えば、50XのB27原液550μlを55mlのNeuralbasalTM培地に添加する)の使用濃度で使用する。N2サプリメント原液は100X濃度であり、1X(例えば、100XのN2原液550μlを55mlのNeuralbasalTM培地に添加する)の使用濃度で使用する。次いで、その容器を37℃で95%空気/5%CO2環境の組織培養用インキュベーターに入れる。次いで、その容器を24〜168時間にわたり39rpmで回転させる。48時間ごとに培地の50%を交換する。1個の容器で最低2個、最高12個の内耳を首尾よく培養することができた。
【0130】
内耳の感覚性の有毛細胞を破壊するために、1mMの硫酸ネオマイシン(Sigma,P.O.Box 14508,St.Louis,MO 63178)を含むNeuralbasalTM/N2又はB27培地中に24〜48時間内耳を放置する。この培養期間の後、培地をネオマイシンのない培地で完全に置き換える。
【0131】
例11
培地
表5は、Gibcoによって販売されているNeuralbasalTM培地(1x)の組成である。濃度はすべて使用濃度、すなわち、体液で満たされた感覚器官がインキュベートされる培地中の成分の濃度である。
【0132】
【表5】
【0133】
以下の抗生物質をNeuralbasalTM培地に添加することができる。Gibco−BRLによって販売されているフンギゾン試薬(アンフォテリシンB 0.25μg/ml、及びデソキシコール酸ナトリウム 0.25μg/ml)、カタログ番号17504−036。Sigmaによって販売されているペニシリンG(10units/ml)、カタログ番号P3414。Sigmaによって販売されている硫酸ネオマイシン(1mM)、カタログ番号N6386。NeuralbasalTM培地には、L−グルタミン(2mM)を補充してもよい。
【0134】
例12
長期培養中の感覚上皮の活力度のアッセイ
本発明の一側面を実施する際に、培養容器を回転させることによって与えられる微重力環境により、感覚性の有毛細胞又は非感覚性の支持細胞が著しく劣化又は喪失することなく、内耳の感覚上皮を長い培養期間(>168時間)維持することが可能となる。感覚性及び非感覚性の細胞の表面を標識するF−アクチン(ファロイジン−FITC)用プローブを用いて、並びにカルシウム結合性タンパク質であるカルビンジンに対する有毛細胞の特異抗体を用いて感覚性の上皮を標識することにより、感覚性の有毛細胞の活性度が長期培養中持続することを実証するデータが得られた。両標識は、落射蛍光顕微鏡法の下で検出され、撮影された。
【0135】
内耳の感覚上皮の正常な細胞構造が維持されていることが断面のデータから示された。例えば、コルチ器は、正常な聴覚機能に必要なコルチトンネル及びニュエル腔と呼ばれる体液で満たされた幾つかの腔を有する。これらの腔は、有毛細胞と支持細胞との間に生じ、長期培養後も維持される。通常の重力環境においては(すなわち、培養容器を回転させることなく内耳が浮いている時には)、感覚性の上皮は退化し始める。回転させないと、24時間以内には、有毛細胞は完全に失われるか細胞死の様々な末期症状を起こしているように見える。48時間後には、支持細胞は完全に消失し、或いは存在してもコルチトンネル及びニュエル腔がすべて失われる。容器を回転させることにより、この劣化が抑制され、正常な細胞構造が維持される。
【0136】
本発明の好ましい実施例を図示し、説明したが、本発明の精神と範囲から逸脱することなく、その中で様々な変更が可能であることが理解されよう。
【0137】
[配列表]
【0138】
【図面の簡単な説明】
前述の側面及び本発明によって得られる数多くの利点がより容易に理解されるとともに、添付の図面と合わせて、以下の詳細な説明を参照することによって、よりよく理解できるであろう。
【図1】
図1は、コルチ器の断面を示している。
【図2】
図2は、24時間血清飢餓状態にして、該24時間の終わり4時間にBrdUを短時間標識させた後のBrdU標識モルモットJH4細胞の数を示している。細胞は、蛍光顕微鏡下で計数した。脂質とp27kip1ASを組み合わせることによって、10%FBS刺激で見られたものの40%まで、成長停止を反転させた(p<0.0001)。(+)FBS、(−)FBSなし、(AS)アンチセンスオリゴヌクレオチド、(lipid)リポフェクション。
【図3】
図3は、マウスの内耳を硫酸アミカシンで処置してから2週後におけるマウスの右耳のABR閾値を示している。略号は、ABR=聴性脳幹反応(auditory brainstem response)、dB=デシベル、SPL=音圧レベル、Wt=野生型、Het=p27ヘテロ接合体、Ko=p27ノックアウト、kHZ=キロHzである。
【図4】
図4は、マウスの内耳を硫酸アミカシンで処理してから2週後におけるマウスの左耳のABR閾値を示している。略号は、図3の説明に記載されているものと同じである。
【図5】
図5は、マウスの内耳を硫酸アミカシンで処理してから4週後におけるマウスの右耳のABR閾値を示している。略号は、図3の説明に記載されているものと同じである。
【図6】
図6は、マウスの内耳を硫酸アミカシンで処理してから4週後におけるマウスの左耳のABR閾値を示している。略号は、図3の説明に記載されているものと同じである。
Claims (40)
- 内耳支持細胞からの内耳感覚有毛細胞の形成を刺激する方法であって、損傷される第一の内耳感覚有毛細胞と接触している支持細胞からの一以上の新規内耳感覚有毛細胞の形成を促進する条件下で、第一の内耳感覚有毛細胞を損傷させることを備えた方法。
- 前記支持細胞が、ヘンゼン細胞、ダイテルス細胞、内柱細胞、境界細胞、外柱細胞からなる群から選択される請求項1の方法。
- 前記第一の感覚有毛細胞が、有効量の化学物質と接触させることによって損傷される請求項1の方法。
- 前記化学物質が抗生物質である請求項3の方法。
- 前記抗生物質がアミノグリコシドである請求項4の方法。
- 前記抗生物質が、インビトロにおいて約0.01mM乃至約10mMの濃度で使用される請求項4の方法。
- 前記抗生物質が、インビボにおいて約100mg/kg/d乃至約1000mg/kg/dの濃度で使用される請求項4の方法。
- 前記化学物質が、シスプラチン、カルボプラチン、およびメトトレキサートからなる群から選択され、インビトロにおいて約0.01mM乃至約0.1mMの範囲の濃度で、又はインビボにおいて約5mg/kg/d乃至約10mg/kg/dの範囲の濃度で使用される請求項3の方法。
- 前記化学物質が、ポリ−L−リジン及び塩化マグネシウムからなる群から選択され、前記ポリ−L−リジンはインビトロにおいて約0.1mM乃至約1.0mMの範囲の濃度で使用され、前記塩化マグネシウムはインビトロにおいて約5mM乃至約100mMの範囲の濃度で使用される請求項3の方法。
- 前記化学物質が注射によって内耳に送達される請求項3の方法。
- 前記化学物質がカニューレを通じて内耳に送達される請求項3の方法。
- 損傷される前記第一の内耳感覚有毛細胞と接触している支持細胞からの前記一以上の新規内耳感覚有毛細胞の形成が、内耳感覚有毛細胞の形成を刺激し得る転写因子をコードする核酸分子及び内耳支持細胞中で活性な細胞周期阻害剤の阻害剤からなる群から選択される物質を前記内耳支持細胞内で発現させることによってさらに刺激される請求項1の方法。
- 前記一以上の新規内耳感覚有毛細胞の形成が、内耳感覚有毛細胞の形成を刺激し得る転写因子をコードする核酸分子を前記内耳支持細胞内で発現させることによってさらに刺激される請求項12の方法。
- 前記転写因子が、POU4F1、POU4F2、POU4F3、Brn3a、Brn3b、及びBrn3cからなる群から選択される請求項13の方法。
- 前記一以上の新規内耳感覚有毛細胞の形成が、内耳支持細胞中で活性な細胞周期阻害剤の阻害剤を前記内耳支持細胞内で発現させることによってさらに刺激される請求項12の方法。
- 前記細胞周期阻害剤の阻害剤がアンチセンス核酸分子である請求項15の方法。
- 前記アンチセンス核酸分子が、ストリンジェントな条件下で、p57Kip2、p27Kip1、p21Cip1、p19Ink4d、p18Ink4c、p15Ink4b、及びp16Ink4aからなる群から選択される細胞周期阻害剤をコードする核酸分子にハイブリダイズする請求項16の方法。
- 前記アンチセンス核酸分子が、55℃での2×SSCを超えるハイブリダイゼーションストリンジェンシー下で、配列番号6、8、10、12、14、16、及び18からなる群から選択される核酸配列を含む核酸分子にハイブリダイズする請求項17の方法。
- 内耳の聴覚機能を改善させる方法であって、
(a)損傷される第一の内耳感覚有毛細胞に接触している支持細胞からの一以上の新規内耳感覚有毛細胞の形成を促進する条件下で、第一の内耳感覚有毛細胞を損傷させることと、
(b)工程(a)に従って処置した内耳の聴覚機能の改善を測定することとを備える方法。 - 有効量の化学物質と接触させることによって前記第一の内耳感覚有毛細胞が損傷され、内耳感覚有毛細胞の形成を刺激し得る転写因子をコードする核酸分子及び内耳支持細胞中で活性な細胞周期阻害剤の阻害剤からなる群から選択される物質を前記内耳支持細胞内で発現させることによって一以上の新規内耳感覚有毛細胞の形成がさらに刺激される請求項19の方法。
- 内耳支持細胞の形成を刺激する方法であって、一以上の新規内耳支持細胞の形成を促進する条件下で、第一の内耳支持細胞を損傷させることを備えた方法。
- 前記第一の内耳支持細胞が、ヘンゼン細胞、ダイテルス細胞、内柱細胞、境界細胞、外柱細胞からなる群から選択される請求項21の方法。
- 有効量の化学物質と接触させることによって前記第一の内耳支持細胞が損傷される請求項21の方法。
- 前記化学物質が抗生物質である請求項23の方法。
- 前記抗生物質がアミノグリコシドである請求項24の方法。
- 前記抗生物質が、インビトロにおいて約0.01mM乃至約10mMの濃度で使用される請求項24の方法。
- 前記抗生物質が、インビボにおいて約100mg/kg/d乃至約1000mg/kg/dの濃度で使用される請求項24の方法。
- 前記化学物質が、シスプラチン、カルボプラチン、およびメトトレキサートからなる群から選択され、インビトロにおいて約0.01mM乃至約0.1mMの濃度で、又はインビボにおいて約5mg/kg/d乃至約10mg/kg/dの濃度で使用される請求項23の方法。
- 前記化学物質がポリ−L−リジン及び塩化マグネシウムからなる群から選択され、前記ポリ−L−リジンはインビトロにおいて約0.1mM乃至約1.0mMの濃度で使用され、前記塩化マグネシウムはインビトロにおいて約5mM乃至約100mMの範囲の濃度で使用される請求項23の方法。
- 前記化学物質が注射によって内耳に送達される請求項23の方法。
- 前記化学物質がカニューレを通じて内耳に送達される請求項23の方法。
- 一以上の新規内耳支持細胞の前記形成が、内耳支持細胞の形成を刺激し得る転写因子をコードする核酸分子及び内耳支持細胞中で活性な細胞周期阻害剤の阻害剤からなる群から選択される物質を前記内耳支持細胞内で発現させることによってさらに刺激される請求項21の方法。
- 一以上の新規内耳支持細胞の前記形成が、内耳支持細胞の形成を刺激し得る転写因子をコードする核酸分子を内耳支持細胞内で発現させることによってさらに刺激される請求項32の方法。
- 前記転写因子が、POU4F1、POU4F2、POU4F3、Brn3a、Brn3b、及びBrn3cからなる群から選択される請求項33の方法。
- 一以上の新規内耳支持細胞の前記形成が、内耳支持細胞中で活性な細胞周期阻害剤の阻害剤を内耳支持細胞内で発現させることによってさらに刺激される請求項32の方法。
- 細胞周期阻害剤の前記阻害剤がアンチセンス核酸分子である請求項35の方法。
- 前記アンチセンス核酸分子が、ストリンジェントな条件下で、p57Kip2、p27Kip1、p21Cip1、p19Ink4d、p18Ink4c、p15Ink4b、及びp16Ink4aからなる群から選択される細胞周期阻害剤をコードする核酸分子にハイブリダイズする請求項36の方法。
- 前記アンチセンス核酸分子が、55℃での2×SSCを超えるハイブリダイゼーションストリンジェンシー下で、配列番号6、8、10、12、14、16、及び18からなる群から選択される核酸配列を含む核酸分子にハイブリダイズする請求項37の方法。
- 内耳の聴覚機能を改善させる方法であって、
(a)一以上の新規内耳支持細胞の形成を促進する条件下で、第一の支持細胞を損傷させることと、
(b)工程(a)に従って処置した内耳の聴覚機能の改善を測定することとを備えた方法。 - 有効量の聴器毒性物質と接触させることによって前記第一の内耳支持細胞が損傷され、内耳支持細胞の形成を刺激し得る転写因子をコードする核酸分子及び内耳支持細胞中で活性な細胞周期阻害剤の阻害剤からなる群から選択される物質を内耳支持細胞内で発現させることによって一以上の新規内耳支持細胞の形成がさらに刺激される請求項39の方法。
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