JP2004502483A5 - - Google Patents

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JP2004502483A5
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【書類名】明細書
【発明の名称】眼疾患を診断および監視する装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】眼疾患を診断および監視するための1つまたは複数の尺度を提供する装置において、
該装置により、
眼の網膜OCT走査されて、OCT走査画像られ
該OCT走査画像にて複数の軸方向走査そろえられ
該OCT走査画像にて軸方向走査毎に、
(a) 硝子体−網膜界面(VRI)と、網膜色素上皮界面(RPE)と位置決めされ
(b) 軸方向走査にて信号の統計の関数として閾値決定され
(c) VRIRPE界面との間の、当該閾値を上回るピクセル計数されることによってNFLの厚さ決定され
所定の軸方向走査にわたってNFLの厚さ平均されて、1つまたは複数の尺度提供されることを特徴とする、
眼疾患を診断および監視するための1つまたは複数の尺度を提供する装置
【請求項2】前記のそろえは、軸方向走査波形の相互相関使用される、
請求項1に記載の装置
【請求項3】前記のVRIおよびRPE界面位置決めは、最大網膜信号を下回る所定の量である閾値を横切る信号強度の移行探索される
請求項1に記載の装置
【請求項4】前記最大網膜信号、所定の個数の隣合う軸方向走査にわたる最大網膜信号の平均値として決定される、
請求項3に記載の装置
【請求項5】前記の閾値の決定では、RPE界面下の軸方向走査の所定の部分における平均信号と、網膜信号との関数として閾値決定される、
請求項1に記載の装置
【請求項6】閾値決定の際の前記網膜信号には、最大網膜信号が含まれる、
請求項5に記載の装置
【請求項7】NFLの厚さ平均化は、血管による影付け検出され、血管による影付けが検出された場合には軸方向走査消去または置き換えらる、
請求項1に記載の装置
【請求項8】前記の影付けの検出は、RPE界面下における軸方向走査の所定の部分における合計と、所定の個数の隣合う軸方向走査に対する合計とが比較される
請求項7に記載の装置
【請求項9】前記のNFLの厚さ平均化は、つぎのうちの1つまたは複数、すなわち、上側の4分円、下側の4分円、鼻側の4分円、側頭部側の4分円、およびすべての走査にわたってNFLの厚さ平均化れる、
請求項1に記載の装置
【請求項10】上側および下側の4分円にわたるNFLの厚さの合計と、鼻側および側頭部側の4分円にわたるNFLの厚さの合計との比決定される
請求項9に記載の装置
【請求項11】眼疾患を診断および監視するための尺度を提供する装置において、
該装置により、
眼の網膜OCT走査されて、OCT走査画像られ
該OCT走査画像にて複数の軸方向走査そろえられ
該OCT走査画像にて軸方向走査毎に、
(a) 硝子体−網膜界面(VRI)と、網膜色素上皮界面(RPE)と位置決めされ
(b) RPE界面下の軸方向走査の所定の部分(基準窓)に対して信号強度合計され
(c) VRI界面下の軸方向走査の所定の部分(NFL窓)に対して信号強度合計され
基準窓における信号強度の和の表現所定の軸方向走査にわたって平均され
NFL窓における信号強度の和の表現所定の軸方向走査にわたって平均され
当該平均の比を決定して尺度形成されることを特徴とする、
眼疾患を診断および監視するための尺度を提供する装置
【請求項12】前記のそろえは、軸方向走査波形の相互相関使用される、
請求項11に記載の装置
【請求項13】前記NFL窓は、VRIにおける内側の境界と、RPEから固定の距離の外側の境界とを有する、
請求項11に記載の装置
【請求項14】前記のVRIおよびRPE界面の位置決めは、軸方向走査データと、エッジ検出核との畳込み積形成れる、
請求項11に記載の装置
【請求項15】前記の基準窓における信号強度合計は、線形の信号領域にて合計が行われる、
請求項11に記載の装置
【請求項16】血管による影付けが検出され、かつ、血管による影付けが検出された場合には、影付けされた軸方向走査における信号と、隣合う軸方向走査または平均された軸方向走査から得られた信号と置き換えられる、
請求項11に記載の装置
【請求項17】前記の血管による影付け検出は、基準窓における信号の合計と、隣合う所定の数の軸方向走査の合計と比較れる、
請求項16に記載の装置
【請求項18】前記の基準窓とNFL窓における信号強度の合計の表現平均化は、4分円にわたる信号強度の和の1つまたは複数の平均と、OCT走査全体とにわたる平均とが行われる
請求項11に記載の装置
【請求項19】前記の基準窓とNFL窓における信号強度の合計の表現を平均化は、上側および下側の4分円がわずかに側頭部に方向付けられてOCT走査を横断する弧状の神経繊維束の位置に適合化される4分円にわたって信号強度が平均化される、
請求項11に記載の装置
【請求項20】前記の比決定は、
平均値対数の形態に変換され
非対称の分布の4分円毎に当該対数の形態の合計前記のNFL窓および基準窓にて減算される、
請求項18に記載の装置
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、例えば緑内障などの眼疾患を診断および監視する装置に関する。殊に本発明は、眼疾患に対して感度を有する尺度を決定することによって、眼疾患を診断および監視する装置に関する。
【0002】
発明の背景
よく知られているように緑内障によって、網膜神経繊維層(NFL=retinal fiber layer)の(通例は緩慢、特徴的な)進行性の損失が引き起こされ、これは上昇した眼内圧および別の病因因子に関連する。緑内障によるNFLの損失によって視界が制限されてしまい失明することもある。現在までのところ、緑内障NFLまたは視覚機能に与えるダメージを診断および監視する、信頼性が高くかつ高感度な手法は存在しない。現在の緑内障の臨床診断は、病歴、眼内圧測定値、視神経円板およびNFLの生体顕微鏡検査および写真、および視野検査を頼りにしている。これらの手法はいずれも単独では、緑内障または緑内障の診断において良好な感度および特定能力を有していない。しかしながら一緒に使用されることによってこれらは現在の診断の標準を成している。これはより優れた手法がないためである。走査式レーザ検眼鏡による自動的な視神経円板の分析、走査式レーザ旋光分析によるNFL評価などのような別の技術の開発により、測定の再現性は改善されたが、緑内障によるダメージを高い信頼性かつ高感度に検出することはまだ実証されていないままである。
【0003】
オプティカルコヒーレンストモグラフィ「OCT=optical coherence tomography」は非侵襲性の技術であり、これは組織の横断面画像を10ミクロンの軸方向分解で作成することができる。例えば、D. Huangその他による論文”Optical Coherence Tomography”, Science, 第284巻、1991年、第1178〜1181頁を参照されたい。OCTは、殊に人体の眼内の組織を画像化するために使用可能である。例えば、硝子体−網膜構造を非接触に画像化するのに有利なOCTシステムは従来技術において公知である。
【0004】
OCT画像ではNFLは、それが大きな信号振幅を反射することによって別の構造体から区別することができる。これについてはHeeその他による”Optical Coherence Tomography of the Human Retina”,Archive of Ophthalmology,第113巻、1995年、第325〜332頁(Heeその他)を参照されたい。一般的な組織の画像化に対するOCTの実現、および眼の画像化に対する実現は、Swansonその他による米国特許第5321501号に記載されている。OCT画像化では、プローブビームが関心対象の眼構造体にフォーカシングされ、これによって得られる光反射が低干渉性の干渉計で分析される。この干渉計は、組織の種々異なる深さで反射された信号をその光学的な遅延によって分解する。プローブビームの横方向の走査によって横断方向における情報が得られる。つぎにこのデータは、組織の反射信号の強度の断層撮影図または横断面図として表示することができる。
【0005】
OCT画像のコンピュータによる分析によって、NFLの状態に関する定量的な情報を得ることができ、またこの分析緑内障および別の視神経疾患の診断および処置に有用である。
【0006】
網膜の研究では、網膜を横方向に横断する所定のパスにおいてOCTビームを走査することが有利であり、この間に同時に軸方向(深さ)の走査が複数の個所でこの横方向の走査パスに沿って行われる。NFLを測定するためにHeeその他の論文に記載されているようにこの走査パスは、視神経頭を中心とする円を成している。疑似色またはグレイスケールディスプレイを使用して軸方向のすべての走査を表示することにより、組織の2次元の「スライス」を作成することができ、ここでこの組織において垂直軸は組織の深さに、また水平軸はこの走査ビームの横方向の位置にそれぞれ相応する。軸方向の典型的な走査によって示されるのは、(a)網膜内構造体に相応する高い信号ピーク、すなわち硝子体−網膜界面(VRI=vitreo−retinal−interface)およびNFL層;(b)核および網状層に相応する、変化に富んだ中程度の信号の領域;(c)光受容層(PRL=photorecptor layer)に相応する低い信号の領域;(d)網膜外および内側の絨毛膜様構造体、すなわち網膜色素上皮(RPE=retina−pigment epitherium)および脈絡毛細管板に相応する高い信号の領域である。
【0007】
相対的な反射度だけに基づいてNFLを検出する手法が先行技術において開発されており、これについてはSchumanその他による論文”Reproducibility of Nerve Fiber Layer Thickness Measurement Using Optical Coherence Tomography”, Ophthalmology,第103巻、1996年、第1889〜1898頁を参照されたい。このSchumanその他による論文に記載されているように、画像処理コンピュータプログラムによって、視神経頭を円形に走査することによって得られた円筒状のOCTセクションに対する網膜神経繊維層の厚さと全体的な厚さとが決定される(軸方向の情報はOCTによって得られ、円形走査によって、3次元の円筒が作成されるからである)。この画像は、データ収集中の意図しない従属的な動きに起因するアーチファクトについて補正され、ここでこれは横断面走査記録の標準的な処理技術を使用して行われる。縦方向の従属的な動きが、相互相関走査記録技術によって補正された後、断層撮影図を平滑化しかつ画像のスペクトルノイズを低減するためにディジタルフィルタが適用される。中心で重み付けされた核による2次元の線形畳込みが、スペックル変動を低減するために使用される。網膜の厚さは、軸方向の走査毎にコンピュータにより画像において定量化され、ここでこれは、硝子体−網膜界面および反射層の前縁部における第1の反射の間の間隔として定量化され、上記の反射層は、網膜色素上皮および脈絡毛細管板に相応する。神経繊維層は、コンピュータによって決定される。境界は、各走査において反射率が所定の閾値を上回る第1ポイントを探索することによって位置決めされる。例えば、内側を境界付ける膜は、画像において前方で開始されて下方に探索することによって位置決めされる。神経繊維層の後縁部は、画像において光受容層内で開始され上方に探索されることによって位置決めされる。光受容層の位置は、感覚神経の網膜内における最小の反射率を有する位置にあると仮定される。閾値は、コンピュータにより走査毎に画像において個別に決定され、ここでこれはこの走査における最大信号を下回る固定のデシベルレベルとして決定される。
【0008】
ここで注意すべきであるのは、上記の従来技術が、最大信号がどこで発生したのかにかかわらず固定の相対信号強度だけに基づいてNFL境界を識別しており、かつ外側の網膜からの信号が部分的には内側の網膜から光がどの程度反射するかによって決定されるという事実を考慮に入れていないことである。NFLの厚さと、NFL信号強度とは相関性を有するため、極小のNFLを有する組織の走査は大きすぎる閾値を有し、その結果、異常に小さな厚さを有することになってしまう。さらにこの閾値に基づいてNFL境界を位置決めすることにはエラーが伴いやすい。それはこの閾値付近での信号変動は、この境界における大きな変動を引き起こす可能性があるからである。
【0009】
上記のことからすでにわかるように、この分野において眼疾患、例えば緑内障を診断および監視する装置に対するニーズが存在するのである。
【0010】
本発明の要約
本発明の実施形態は、この分野における上記のニーズを有利にも満たしており、またこの実施形態により、眼疾患、例えば緑内障を診断および監視する装置が提供される。殊に、本発明の実施形態により、眼疾患に対して感度を有する尺度を決定することによって、眼疾患を診断および監視する装置が提供される。
【0011】
殊に本発明の実施形態により、網膜のOCT走査が分析され、これによって以下の1つまたは複数の尺度が、緑内障による網膜神経繊維層(NFL)の変化を診断および監視するために決定される。すなわち、NFLの厚さ;垂直方向の4分円(OCT走査における上側および下側の4分円が垂直方向の平均にまとめられる)および水平方向の4分円(OCT走査における鼻側および側頭部側の4分円が水平方向の平均にまとめられる)におけるNFLの比;およびNFLの所定の部分における信号強度の和と、網膜色素上皮(RPE)界面下の所定の領域における信号強度の和とのNFL信号比(NSR=NFL signal ratio)が決定される。
【0012】
本発明の第1の実施形態は殊に、眼疾患を診断および監視するための尺度を提供する装置に関しており、すなわちここでは、(a)一方の眼の網膜OCT走査されて、OCT走査画像られ;(b)このOCT走査画像において複数の軸方向走査そろえられ;(c)OCT走査画像において軸方向走査毎に;(i)硝子体−網膜界面(VRI=vitreo−retinal interface)と、網膜色素上皮(RPE)界面と位置決めされ;(ii)軸方向走査において信号の統計の関数として閾値決定され;(iii)VRIとRPE界面との間の、この閾値を上回るピクセル計数されることによってNFLの厚さ決定され;(d)所定の軸方向走査にわたってNFLの厚さ平均されて、1つまたは複数の尺度提供される。
【0013】
本発明の第2の実施形態は、眼疾患を診断および監視するための尺度を提供する別の装置に関しており、すなわちここでは、(a)一方の眼の網膜OCT走査されて、OCT走査画像られ;(b)このOCT走査画像において複数の軸方向の走査そろえられ;(c)OCT走査画像において軸方向の走査毎に;(i)硝子体−網膜界面(VRI=vitreo−retinal interface)と、網膜色素上皮(RPE)界面と位置決めされ;(ii)軸方向の走査における、RPE界面下の所定の部分(基準窓)に対して信号強度合計され;(iii)軸方向の走査における、VRI界面下の所定の部分(NFL窓)に対して信号強度合計され;(d)基準窓における信号強度の和の表現所定の軸方向走査にわたって平均され、(e)NFL窓における信号強度の和の表現所定の軸方向走査にわたって平均され、(f)これらの平均の比決定されて尺度形成される。
【0014】
図面の簡単な説明
図1は、本発明の実施形態を構成するために使用されるオプティカルコヒーレンストモグラフィ(OCT=optical coherence tomography)のブロック図を示しており、
図2は、人間の眼における視神経円板およびその周辺構造の画像と、本発明の1実施形態による視神経円板の周りの円形走査とを示しており、
図3は、視神経頭を包囲する組織の円筒状の横断面の一部を概略的に示しており、ここでOCTの軸方向走査は、この横断面に沿って離散的な個所で行われており、
図4は、本発明の第2実施形態を構成するために使用される陰影領域と、網膜神経繊維層(NFL)窓と、基準窓とを表す走査データを示している。
【0015】
詳細な説明
図1にはオプティカルコヒーレンストモグラフィ(OCT)装置1000が示されており、これは本発明の実施形態を構成するために使用される。しかしながら本発明は、OCTデータを得るために使用されるOCT装置タイプによって制限されてないことを理解されたい。当業者の通常の知識を有する者に公知であるいくつかのOCT装置であればどれでも本発明の実施形態を構成するために使用可能である。
【0016】
図1に示したようにOCT装置1000には、ファイバーオプティックデリバリーシステムが含まれており、これは低干渉性の反射率計と生体顕微鏡とを結合する。図1に示したように殊に、超高輝度発光ダイオード(SLD=superluminescent diode)100からの放射出力のビームは、実質的に約843nmの波長を中心とする波長を有し、かつ光ファイバー110の入力側に供給される。本発明の好ましい2つの実施形態によれば、すべての光ファイバーは単一モードの光ファイバーである。光ファイバー10からの放射出力は、結合器160の入力として供給され、結合器160は、入力された放射の第1部分(通例約50%)を光ファイバー170の入力として、また入力された放射の第2部分(通例約50%)を光ファイバー180の入力として供給する。図1にさらに示されているように光ファイバー170からの放射出力は、コリメートレンズ190を通って可動基準ミラー200に当たる。基準ミラーは、コーナーキューブを使用することによって、またはOCT装置を構成するためにこの分野で利用可能ないくつかの反射機構うちの任意の1つを使用することによって実現できることを理解されたい。ミラー200は、当業者の通常の知識を有する者に公知のいくつかの装置のうちの任意の1つ(図示しない)にしたがって、例えば一定の速度で移動する。基準ミラー200から反射された放射は、コリメータレンズ190を通過し、光ファイバー170の入力として、さらには結合器160の入力として供給される。
【0017】
光ファイバー180からの放射出力は、コリメータレンズ210を通過し、横方向走査ミラー220に当たる。横方向走査ミラー220は、この分野において公知の手法にしたがってコントロールされてOCTプローブビームを走査する。横方向走査ミラー220からの放射出力は、フォーカシングレンズ230を通過して、ビームスプリッタ240に当たる。このビームの焦点は、生体顕微鏡の画像面25と一致する。このことにより、OCT走査中にCCDカメラによって底部を視覚化することができる。
【0018】
ビームスプリッタ240によって反射された放射は、コンデンサレンズ250(例えば、オハイオ州メンターのVolk社製78 Diopter Volkレンズ)を通過して眼260の網膜270に当たる。フォーカシングレンズ230およびコンデンサレンズ250は、走査用のひとみ(すなわち横方向走査ミラー220の表面)が最小の口径食で眼260の瞳孔の入口に結像されるように設計されている。網膜270から反射された放射は、眼260およびコンデンサレンズ250を再度通過してビームスプリッタ240に当たる。反射されたこの放射の一部はビームスプリッタ240を通過して生体顕微鏡ヘッド280に当たる。反射された放射の別の一部は、ビームスプリッタ240によって反射され、フォーカシングレンズ230、コリメータレンズ210および光ファイバー180を再度通過して、に結合器160の入力として供給される。
【0019】
基準ミラー200から反射された放射と、網膜270から反射された放射とは、この分野の通常の知識を有する者には公知のように作用し合ってOCT出力放射が形成され、このOCT出力放射がフォト検出器290の入力として供給される。フォト検出器290からの出力は、電子回路300(例えば、バンドパスフィルタであり、このバンドパスフィルタには包絡線検出器が後置接続されており、さらにこの包絡線検出器にはアナログ−ディジタル検出器が後置接続されている)の入力として供給される。最後に電子回路300からの出力は、コンピュータ310の入力として供給される。
【0020】
OCT装置1000を使用する網膜検査は、スリットランプ検眼鏡法を使用して行われる網膜検査と同じように実行されるが、ここではコンデンサレンズ250が、生体顕微鏡ヘッド280の光軸410に沿って取り付けられるという制限がある。眼260が拡げられ、患者が生体顕微鏡ヘッド280のヘッドレスト(図示しない)に心地よく位置付けられた後、生体顕微鏡280およびコンデンサレンズ250は、眼260の光軸に沿って位置付けられる。ユニット全体は、横方向走査ミラー220の画像が眼260の瞳孔面に配置されるまで前進させられる。つぎにコンデンサレンズ250の位置が、光軸310に沿って生体顕微鏡ヘッド280に対して調整され、ここでこの調整は底部の画像が合焦するまで行われる。この調整により、検査対象の眼毎の反射力の違いが補正され、この際にこれは検査者の眼における調節に影響されない。
【0021】
生体顕微鏡ヘッド280に取り付けられた赤外線感応形電荷結合素子(CCD)ビデオカメラ(図示しない)によって、底部を走査するOCTプローブビームのビデオ画像が供給され、また網膜における各断層撮影図の位置を記録することができる。
【0022】
OCT経過のリアルタイム表示と、底部に位置付けられたOCTプローブビームのビデオ画像との両方を検査者が観察する間に、所望の走査位置が位置決めされる。このOCT検査は、拡張されていないかまたはほとんど拡張されていない瞳孔においても実行することができる。しかしながら光学的調整は、瞳孔による絞りによって影響を受けやすく、視野も低減されてしまう。
【0023】
よく知られているように眼260からの後方散乱放射の軸位置の解像度は、基準ミラー200の位置の走査によって得られる。測定を行うために使用されるOCTシステムでは、組織の反射率を1.36と仮定すると、この組織のおける軸方向の解像度は、大まかに最大半値幅で10ミクロンである。本発明の1実施形態によれば、フォト検出器109からのアナログの出力は、約4ミクロンの軸方向のピクセルサイズを形成するレートでディジタル化される。ディジタルサンプリングについてのナイキスト基準によれば、軸方向のピクセルサイズは、有利には低干渉性反射率計の軸方向の解像度の約2分の1またはそれ以下である。公知のように横方向の解像度は、画像収集時間によって制限され、かつ横方向走査範囲全体を軸方向走査の数で除算することによって得られる。本発明のこの実施形態によれば、OCT装置1000によって画像毎に100の軸方向走査が行われる。将来のOCTユニットは、オーバーサンプリングし(かつ4ミクロン以下の軸方向ピクセルサイズを形成し)、短時間により多くの軸方向走査を収集できそうである。
【0024】
網膜神経繊維層(NFL)損失は、緑内障および別のタイプの視神経疾患の両方において解剖学上の最低線(anatomic bottom line)である。本発明の実施形態により、NFLの診断を評価してこれらの疾患の進行を監視するために有益な尺度が得られる。
【0025】
本発明の実施形態によれば、アルゴリズムを実行する装置が提供され、ここではこのアルゴリズムによって視神経円板(視神経頭または乳頭とも称される)の周りの領域における、眼260の網膜および脈絡膜のOCT走査から得られたデータが分析され、これによって眼疾患を診断および監視するために使用される尺度が決定される。さらに本発明の別の実施形態によればこのような尺度が記憶される。当業者の通常の知識を有する者には、このような尺度をデータベースに記憶するための多くの方法および装置が公知であり、ここでこのデータベースには特定の患者に関連するデータを記憶および検索することができる。このようなデータベースおよび装置の例は、ディスク記憶装置に記憶されたデータベースであり、これは例えばパーソナルコンピュータのようなコンピュータからアクセス可能である。さらに本発明の別の実施形態によれば、これらの尺度は、眼疾患を診断するために正常な眼から採取した尺度と比較され、またこれらの尺度は(所定の期間にわたって)同じ患者から採取した尺度と比較することもでき、これによって眼疾患の監視が可能になる。
【0026】
図2には人間の右眼における視神経円板と、その周囲の構造体とが示されている。視神経円板は図2の中央部の構造体である。網膜血管が視神経円板の中央部から出ている。この視神経円板の上側には上側の網膜が、また視神経円板の下側には下側の網膜があり、視神経円板の右側には側頭部側の網膜が、また視神経円板の左側には鼻側の網膜がある。側頭部側および鼻側とは、頭部(側頭部)の構造体に向かう方向および鼻の構造体に向かう方向をそれぞれのことである。左眼における構造体の配置は、右眼のそれの鏡映である。概念的な文字盤を図2に示した方向で網膜構造に重ねることによって、時報表示が右眼に対して割り当てられる。また左眼の構造には鏡映対称の文字盤が適用され、これにより、9時はつねに側頭部方向を、また3時は鼻側の方向を指す。
【0027】
さらに図2に示されているように、視神経円板は、視神経が眼を出る個所であり、かつふつう垂直方向に1.75mm、また水平方向に1.5mmの直径を有する。しかしながら視神経円板の直径は、ふつうの人間の母集団間で2分の1から3分の1で変化する。本発明の有利な実施形態ではOCT走査は、有利には円形であり、かつ視神経円板の強膜のへりに中心を有する。図2では3.37mm直径の、OCTプローブビームの走査パスが円形の白線でトレースされている。OCT走査の直径は有利には十分に大きく、これによって視神経円板の大きさの大部分が含まれるようにする。しかしながらこの走査直径は過剰に大きくすべきでない。それは円板からの間隔が大きくなるに連れて、NFLがが薄くなるからである。3.37mmの直径、または大まかには平均円板直径の2倍の直径は、理にかなった妥協であると考えられる。しかしながら本発明はこれに限定されることはなく、走査は別の直径を有することができ、実際に円形でなくてもよい。
【0028】
実践的にはOCT装置1000によって得られた軸方向走査は、500個の軸方向要素を有していた。しかしながら脈絡網膜構造体の詳細を示するために画像は軸方向にトリミングされる。画像における水平または横方向の大きさは、円形の走査に沿った位置を表しており、画像における垂直方向の大きさは、軸方向走査に沿った位置を表している。ピクセルの大きさは横方向に3.6度、軸方向に4.0ミクロンであった。
【0029】
乳頭周囲の脈絡網膜構造体のOCT走査によって構造が識別能である。すなわちNFL(最大の信号レベル);網状および核層(変化する中程度の信号レベル);光受容器(小信号レベル);RPEおよび脈絡毛細管板(大信号レベル)および外側の脈絡膜および強膜(徐々に減少する信号レベル)が識別可能である。図3には視神経頭を包囲する組織の円筒状横断面の一部が概略的に示されており、軸方向走査がこの横断面に沿って離散的な位置で行われる。図3には、つぎのものについての相対的な位置(上から底部に)が示されている。すなわち、(a)硝子体;(b)硝子体−網膜界面(VRI);(c)NFl;(d)光受容層(PRL);(e)網膜色素上皮(RPE);および(f)脈絡毛細管板が示されている。
【0030】
本発明の装置の第1実施形態における、尺度を決定するアルゴリズム
以下では、本発明の装置の第1実施形態におけるアルゴリズムを説明する。このアルゴリズムによって、緑内障を診断および監視するために有効な尺度が決定される。これらの尺度は、NFLと、垂直方向の4分円(OCT走査における上側および下側の4分円が垂直方向の平均にまとめられる)および水平方向の4分円(OCT走査における鼻側および側頭部の4分円が水平方向の平均にまとめられる)におけるNFLの厚さの比である。
【0031】
本発明の装置の第1実施形態におけるアルゴリズムでは最初にデータデシベル(dB)の形態に変換される。脈絡膜の組織構造は広範囲の後方散乱特性を有するため、生のOCTデータを対数スケールに変換することが有利であり、これによってより弱い後方散乱構造の詳細を明らかにするのである。これは、OCT画像の目視検査に対して、および/または後続のディジタル処理に当てはまることである。ディジタル処理によって組織が最適に区別されるためには、特定の網膜または脈絡膜層に一貫して同様の信号値が割り当てられる手法を使用すること望ましい(制御不能の多くのファクタにより、OCTから組織への絶対的な光結合と、組織層間の相対的なコントラストとが影響を受けるため、この目的を完全に達成することは不可能であることに注意されたい)。しかしながら本発明の第1実施形態によれば、対数スケールは、OCT画像の硝子体領域において測定した、信号の標準偏差に基づいている。有利にもこれにより、OCT装置1000のバックグランドオプティカルショットノイズが実質的に測定される。それは、大きな後方散乱が眼内の通常の硝子体媒体、すなわち極めて透明度の高い通常の硝子体媒体からは予想されないからである。本発明の第1実施形態の1バーションではOCT画像の上から2番目の行が、標準偏差を計算するために使用される。これが行われるのは、アナログ−ディジタル変換サイクルの不完全な始動による、第1行において発生し得るノイズを回避するためである。択一的にはこの画像の別の領域、または既知の較正値を使用して、OCT装置1000のバックグランドノイズを決定することも可能である。本発明の第1実施形態では、バックグランドノイズの標準偏差が、0dBと定められ、またこのノイズの標準偏差の信号レベルの10倍の信号レベルが20dBと定められる。このことによって仮定されるのは、OCT装置1000からのアナログ信号出力と、OCT装置1000の干渉計部分からの光検出器信号出力とが線形であることである。アナログの対数アンプまたは別の電子式手段が使用されてOCT信号が修正される場合、ディジタル処理を変更してOCTデータを同様のdBスケールに符号化することが可能である。このdBスケールは、別の択一的な基準信号レベル、例えば、画像における、または各軸方向走査における最大信号振幅を基準とすることも可能である。
【0032】
本発明の装置の第1実施形態におけるアルゴリズムつぎに軸方向走査をそろえられる。OCT画像を収集中、オペレータは軸方向走査を調整して、網膜および脈絡膜が画像内に含まれるようにすべきである。しかしながら網膜および脈絡膜の組織の各層の画像における位置は未知である。さらにこれらの組織層の位置は、OCT画像を含む軸方向走査間につぎに起因して変化することがある。すなわち、(a)乳頭周囲の網膜の面に対するOCTプローブビームの傾き;(b)組織位置の解剖学的変化;(c)画像収集期間中の眼の動きによって変化することがある。各軸方向走査における組織層の軸方向のそろえは、これらの組織層が、実質的に同じ軸方向の深さで見えるように行われる。本発明の第1実施形態では、軸方向走査のそろえは、軸方向走査と基準走査波形とを相互相関させることによって行われ、これによってこれらの相対的なシフトが決定される。相互相関法、当業者の通常の知識を有する者にはよく知られた画像処理手法である。相対的なシフトが一旦決定されれば、軸方向走査はシフトされて相応する解剖学的特徴が登録される。第1実施形態では、PRLの中心がピクセル番号100にシフトされ、軸方向走査はピクセル0〜199の外ではトリミングされる。
【0033】
選択的には本発明の装置の第1実施形態においてはつぎにOCT画像、左から右に、上側−鼻側−下側−側頭部側の順序に再編成される。
【0034】
このデータ編成は自由であり、一貫して使用されるのであれば別の規則を採用することが可能である。
【0035】
選択的には本発明の装置の第1実施形態においてつぎデータが平滑化される。これは、例えば、中心で重み付けされた2次元の核による畳込みを使用して行われる。
【0036】
本発明の第1実施例ではつぎにVRIおよびRPE界面の位置決めに使用される閾値決定される。本発明の第1実施形態では、軸方向走査毎に、網膜領域における最高輝度のピクセルの信号レベルが得られる(最大網膜信号)。この最大網膜信号の横方向のローパスフィルタリングは、例えばかつ限定としてではなく、11個の隣合う軸方向走査にわたって局所的に平均化することによって実行され、これによって信号レベルのスプリアス変動の影響が低減される。局所的な平均化の後、この閾値は、例えばかつ限定としてではなく、最大網膜信号を15dB下回る値に等しく設定される。
【0037】
本発明の第1実施形態ではつぎに軸方向走査毎にVRI界面位置決めされ、ここでこれは、例えばかつ限定としてではなく、ピクセル0からから下方に、域上信号を有する最初のピクセルが見つかるまで探索することによって行われる。この閾値は、例えばかつ限定としてではなく、最大網膜信号を14dB下回る値に定められる。
【0038】
本発明の第1実施形態ではつぎに軸方向走査毎にRPE界面位置決めされ、ここでこれはPRL(例えばかつ限定としてではなく、ピクセル101から)のおおよその位置から下方に域上信号を有する最初のピクセルが見つかるまで探索することによって行われる。この閾値は、例えばかつ限定としてではなく、PRLの下にある全ピクセルに対する最大網膜信号を7dB下回る値に定められる。
【0039】
本発明の装置で実行されるさらなるステップを説明する前に、いくつかの用語を理解するために図3を参照されたい。図3に示したように軸走査毎に基準窓が、RPE界面から、このRPE界面下の固定間隔のところまで延びるように定められ、この基準窓は、RPE脈絡毛細管板の信号複合体内で最大信号強度のセグメントを含む。本発明の1実施形態では固定の間隔が選択され、これは、例えばかつ限定としてではなく58μmに選択される。
【0040】
本発明の第1実施形態ではつぎに基準窓内にある各軸方向走査の信号値から合計られ、この合計は、基準信号の合計を下回るようにされる。
【0041】
本発明の第1実施形態ではつぎに血管による影の妨害考慮される。OCTプローブビームのパスを横断する動脈および静脈の多数の枝がある。これらの血管は、NFL内側(上)の部分にあることが知られている。比較的太い血管は、脈絡毛細管板にはっきりとした影を落とすため、これはその下にあるNFLにも影を落とす。したがって比較的太い血管の位置におけるNFL測定は信頼性が低い可能性がある。本発明の第1実施形態では、この血管の位置が検出され、ここでこの検出は、各軸方向走査に対する基準信号の合計と、関心対象の軸方向走査を中心として隣り合う、所定の数の軸方向走査に対する基準信号の合計とが比較されることによって行われる。基準信号の合計が所定の量、例えばかつ限定としてではなく7.5dB以上、局所的な平均値を下回る場合、この軸方向走査は、例えばかつ限定としてではなく、消去されるか、またはこれは局所的または大域的な平均値に置き換えられる。この置き換えは、結果の大きな変更を生じることなく行われる。それは、視神経円板を出る4本の太い血管の合計した幅は、約600ミクロンだからであり(A.E.JalkhおよびJ.M.Celorio, W.B.Saunders, ”Altal of Fluorescein Angiography”, フィラデルフィア、1993年、第19頁を参照されたい);したがって走査直径が3.37mmの場合、OCT走査円周の約6%が覆われるからである。
【0042】
本発明の第1実施形態ではつぎに軸方向走査毎のNFL厚さの計算に使用する閾値決定される。わかっていなければならないことは、この閾値が、光結合およびOCTプローブビームの偏光状態の変化に起因して軸方向走査毎に変化し得ることである。軸方向走査毎に閾値を決定するために、最大網膜信号および基準信号の和が、例えばかつ限定としてではなく、11個の隣り合う軸方向走査にわたる局所的な平均化によって、横方向にローパスフィルタリングされ、信号レベルにおけるスプリアス変動の影響が低減される。局所的な平均化の後、基準信号の和が基準窓にわたって平均化される。つぎに最大網膜信号および平均化された基準信号の和が、dBスケールから輝度に線形なスケールに変換される。この線形なスケールの信号はつぎに合計されて、dBスケールに逆変換される。閾値は、例えばかつ限定としてではなく、この合計の8dB下に設定される。平均化された基準信号の和を閾値の計算に使用することにより、緑内障の眼における閾値の過度な低下が低減されると考えられる。
【0043】
本発明の第1実施形態ではつぎにNFL厚さ平均化される。すなわち(a)各4分円にわたって;および(b)円形走査の全体にわたってNFL厚さ平均化される。つぎに上側および下側の4分円が、垂直方向の平均にまとめられ、鼻側および側頭部側の4分円が水平方向の平均にまとめられる。垂直方向の平均に対する垂直方向の平均の比は、緑内障と特有の関係を有していると考えられ、緑内障においては神経繊維の損失は、一般的に早期に発生し、かつ垂直方向の4分円においてより重症である。被検体による全体的な検査により、つぎの尺度が、緑内障のNFL変化を診断および監視するのに有利であることが示された。これらはすなわちNFLの厚さ、および垂直/水平方向のNFLの厚さの比である。
【0044】
本発明の装置の第2実施形態における、尺度を決定するアルゴリズム
以下に説明するのは、本発明の装置の第2実施形態におけるアルゴリズムであり、このアルゴリズムによって、緑内障による変化を診断および監視するのに有利な別の尺度が定められる。この別の尺度は、いかではNFL信号比(NSR=NFL signal ratio)と称され、信号反射率に基づくものである。NSRの決定する際には、NFLの厚さが直接測定されるのではなく、外側のNFL境界の検出に対して閾値計算は不要である。
【0045】
本発明の装置の第2実施形態におけるアルゴリズムでは最初に第1実施形態について詳述したのと同じ手法を使用して、データデシベル(dB)の形に変換される。
【0046】
本発明の装置の第2実施形態におけるアルゴリズではつぎに軸方向走査がそろえられる。本発明の第2実施形態では、軸方向のそろえは、隣合う軸方向走査の相互相関によって行われ、これによりその相対的なシフトが決定される。ここで相互相関は、当業者の通常の知識を有する者には公知の画像処理手法である。一旦、この相対的なシフトが決定されると、軸方向走査はシフトされ、相応する解剖学的特徴が記録される。
【0047】
選択的には本発明の第2実施形態においてはつぎにデータが平滑化される。これは第1実施形態について上に詳述したのと同じ手法を使用して行うことが可能である。
【0048】
本発明の第2実施形態ではつぎにVRIおよびRPE界面が位置決めされる。これらの界面は、大きくかつ急峻に変化する信号強度によって特徴付けられるため、これらの決定は、一般的には曖昧ではなく、かつアルゴリズムのパラメタに比較的依存しない。本発明の第2実施形態では、これらの界面は、エッジ検出手法、例えばかつ限定としてではなく、軸方向走査毎の1次元の畳込みを使用して検出され、ここでこの畳込みには適切なエッジ検出核が使用されてその位置が精確に測定される。
【0049】
本発明の装置で実行されるさらなるステップを説明する前に、いくつかの用語を理解するために図3を参照する。図3に示したように、基準窓は、軸方向走査毎にRPE界面から、RPE界面の下に固定の間隔分延びていると定義され、この基準窓には、RPE−脈絡毛細管板の合成信号内における最大信号強度のセグメントが含まれる。本発明の第2実施形態の1バージョンでは、上記の固定の間隔は、例えばかつ限定としてではなく、58μmと選択される。
【0050】
本発明の第2実施形態では(図3を参照すると)つぎに軸方向走査毎の信号値が基準窓内で合計される。有利であることが示されたのは、この合計を、対数の(dB)領域において行うよりも線形の信号領域において行うことである。したがってi番目の軸方向走査に対して、SRef(i)と称される合計が存在する。
【0051】
本発明の第2実施形態ではつぎにRef(i)が調べられて、この信号が、網膜層における血管の重なりによる「影」に起因して「異常に」低減されているか否かかが決定される。本発明の第2実施形態では、iの周りにおける所定の個数の軸方向走査についての局所的な平均SRefに対するSRef(i)の比が、所定のdB値以下の場合に、i番目の軸方向において影が発生すると考えられ得る。影が生じたiの値は、後に使用するために保存される。
【0052】
本発明の第2実施形態ではつぎに(図3を参照すると)軸方向走査毎に、網膜の全体的な厚さ(すなわちVRIとRPE界面との間隔)が、「NFL窓」「外側の網膜窓」とに分割される。本発明の第2実施形態によれば、この外側の網膜窓は、RPEではじまり、かつ上方に(画像上において、すなわち眼の内側に)、例えばかつ制限としてではなく、142μm延びるように選択される。この142μmの間隔は、正常な眼の被検体において測定された平均的な網膜の厚さおよび平均的なNFLの厚さとの差に基づくものである。NFL窓は、外側の網膜窓の上にある(画像上において)残りの内側の網膜とされる。全体的な網膜の厚さは軸方向走査毎に変化するため、NFL窓の幅もそれにしたがって変化することに注意されたい。つぎに、このNFL窓内で、軸方向走査毎の信号値が(ここでも線形の強度領域において)合計される。したがってi番目の軸方向走査に対してSnfl(i)と称される和が存在する。NFL窓は、NFLの平均的な位置に相応するが、解剖学的に精確な一致はいずれの場合においては期待されないし、また必要ともされない。
【0053】
本発明の第2実施形態ではつぎにi番目の走査において影が発生する場合、Snfl(i)およびSRef(i)の値が、影が付けられた領域を境界付ける値を使用して補間された値に置き換えられる。
【0054】
本発明の第2実施形態ではつぎに例えばかつ制限としてではなく、円形の軌跡に沿って収集した軸方向走査を4分円にグループ分けする。j番目の4分円内で軸方向走査から得られたすべての和SRefおよびSnflは一緒に平均化される。:
【0055】
【数1】
Figure 2004502483
【0056】
ここでN(j)は、j番目の4分円における軸方向走査の数である。実験によって示されたのは、単一の軸方向走査から得られた値の変化の度合いは使用のためには大き過ぎ、これに対して4分円による平均または全体的な平均はより有利であることである。本発明の第2実施形態の有利なバージョンでは、4分円は非対称に選択される。すなわちこれらは、異なる角度の大きさを有しており、かつ、神経繊維が視神経頭に達するまでに円形の走査パスを横切る際のこの神経繊維の非対称な分布に相応して方向付けられている。非対称の4分円を使用することは、垂直および水平方向に方向付けられた境界線を有する対称な4分円を使用することに対して大きな改善である。それは緑内障によるNFL損失は、もっぱら所定の方向に沿って発生するからであり、4分円を実際の分布に相応して方向付けることはNFL損失に対して大きな感度を有することになると考えられるからである。緑内障によるNFL損失はもっぱら弧状の2つの帯領域において発生し、ここではNFLは通常最も厚さがある。この弧状の帯は、視神経円板を上側および下側において出て、側頭部側に曲がりはじめる。したがって上側および下側の4分円をわずかに側頭部側に向けて、この弧状の帯に位置に合わせることは有利である。当業者の通常の知識を有する者には、この実際の分布を決定する方法は既知である。
【0057】
本発明の第2実施形態ではつぎに4分円の平均と全体的な平均と対数の形(dB)に変換される
log = 10log10(A)
つぎにNSR信号比4分円j毎に決定される:
NSR(j) = Anfl log(j)−ARef log(j)
神経繊維密度および後方散乱横断面領域が大きくなるとともにNFL信号は増大すべきであり、かつ比較的厚いNFLからの影によって基準のRPE+脈絡毛細管板信号は減少すべきであるため、本発明の第2実施形態では、比NSRは、NFLの厚さ、密度および散乱特性の複合的な尺度であると考えられる。本発明の第2実施形態によればNSRは、緑内障の眼を診断および監視するために使用可能な尺度であり、したがって正常な眼と緑内障の眼とを区別するために使用可能である。
【0058】
図4は、代表的な走査から得られたOCTデータを示している。データに重ね合わされているのは、NFL窓と基準窓とを示す境界線である。白い特徴的なマークは、基準窓において異常に小さな信号強度を有する領域(影)を示している。
【0059】
NSRを使用して正常な眼と緑内障の眼とが区別されることの有用性をチェックするために、それぞれにサンプルがOCT装置1000によって走査された。走査プロトコルにしたがって、1%のトロピカミドと2.5%のフェニレフリンとによる拡大の後、それぞれの眼が視神経円板を中心として走査され、この間に患者は、走査される眼に提示されるターゲットに眼をすえる。走査されたデータは上記の手法を使用して処理され、NSR全体の平均が計算される。2つの母集団(正常の被検体の母集団と緑内障の被検体の母集団)に対する平均値は、正常の母集団に対する測定値の標準偏差のほぼ10倍異なることがわかった。正常な分布を仮定すると、ここに示した本発明の手法は、研究において99%の特定度を有する、早期の緑内障の眼の4分の1以下のNFL損失を検出するために使用できるとが予想される。
【0060】
当業者には、上記の説明は、図解および説明のためにだけに提示されたことが分かるはずである。したがってこれは網羅的であること、または本発明を開示された精確な形態に制限することを意図したものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の実施形態を構成するために使用されるオプティカルコヒーレンストモグラフィのブロック図である。
【図2】
人間の眼における視神経円板およびその周辺構造の画像と、本発明の1実施形態による視神経円板の周りの円形走査とを示す図である。
【図3】
視神経頭を包囲する組織の円筒状の横断面の一部を概略的に示す図である。
【図4】
本発明の第2実施形態を構成するために使用される陰影領域と、網膜神経繊維層(NFL)窓と、基準窓とを表す走査データを示す図である。
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