JP2004364409A - パルス幅変調信号発生装置及びパルス幅変調信号発生方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】三角波を使用せずに、正弦波の周期変動が大きい場合でも、高調波歪による誤差の少ないPWM波形信号を生成する。
【解決手段】外部から与えられる周波数指令に応じた正弦波32を発生させ、この正弦波32を90度遅延位相するだけで積分波形36を求め、この積分波形36における積分値の経時差分(a−b)を所定のパルス周期T0毎に求め、この経時差分(a−b)に基づいて、PWM波形信号40のパルス幅tを演算する。正弦波32の周波数が大きく変動しても、精度良いパルス幅tを得ることで、三角波キャリア比較法に比べて、パルス幅変調時の高調波歪による誤差を大幅に緩和できる。
【選択図】 図3
【解決手段】外部から与えられる周波数指令に応じた正弦波32を発生させ、この正弦波32を90度遅延位相するだけで積分波形36を求め、この積分波形36における積分値の経時差分(a−b)を所定のパルス周期T0毎に求め、この経時差分(a−b)に基づいて、PWM波形信号40のパルス幅tを演算する。正弦波32の周波数が大きく変動しても、精度良いパルス幅tを得ることで、三角波キャリア比較法に比べて、パルス幅変調時の高調波歪による誤差を大幅に緩和できる。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、パルス幅変調信号発生装置及びパルス幅変調信号発生方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車の分野等においては、例えば42Vの直流電源を用いて交流モータを駆動することが行われる。この場合、PWMインバータ(Pulse Width Modulation)内のスイッチ素子をPWM制御して、任意の周波数の交流電流を交流モータに与える。
【0003】
かかるPWM制御のひとつの方式として、図4に示したように、正弦波発生部1で発生した正弦波3と、キャリア信号発生部(三角波発生部回路)5で発生された三角波のキャリア信号7とを比較器9で比較して、図5のように、矩形波の出力信号(PWM波形信号)11のパルス幅を制御する三角波キャリア比較法(両縁変調方式)が知られている。
【0004】
この三角波キャリア比較法は、既知の正弦波発生部1と既知のキャリア信号発生部5の両出力を比較器9で比較してパルス化することにより、容易にPWM波形信号を得ることができる利点がある。
【0005】
参考のために、この発明に関連する先行技術文献を示しておく。
【0006】
【特許文献1】
特開2003−047253号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、三角波キャリア比較法においては、三角波7の傾きを持った直線と正弦波3との交点を使ってパルス幅を決定しているため、特に図5のように、三角波7の周期が正弦波3の半周期に比べて極めて小さい場合は、三角波7の直線の傾きが正弦波3に比べて十分に大きくなり、正弦波3の部分的な面積に比例するパルス幅のPWM波形信号11を精度良く得ることができる。
【0008】
しかしながら、図6のように、三角波7の周期が正弦波3の半周期に近づくにつれて、三角波7の直線の傾きと正弦波3の微分係数が近似する部分が生じる。このように、三角波7の直線の傾きと正弦波3の微分係数とが近似すると、出力されるPWM波形信号11が徐々に正弦波3の近似とかけ離れたものとなり、PWM波形信号11の高調波歪による誤差が大きくなってしまう。
【0009】
特に、例えばハイブリッドカーの走行用のモーターをPWMインバータで駆動させる場合のように、モーターの回転数が大幅に変動することがある場合には、正弦波3の周期変動が大きくなることから、一定周期のキャリア信号(三角波7)に対して正弦波3の周期が最短となる状態では、PWM波形信号11に高調波歪による誤差が生じやすくなるおそれがある。
【0010】
これは、平均化して正弦波3に近似するPWM波形信号11を得る手段として、有限な傾きの三角波7を利用していることに起因すると言える。
【0011】
また、三角波キャリア比較法においては、高周波の三角波7を発生する必要があるが、かかる高周波の三角波7は、周囲のモーター等に使用されたコイルの鉄心などにおいて鉄損が生じやすくなるという不利があり、高周波の三角波7を使用せずに精度良いPWM波形信号11が得られる方法が望まれていた。
【0012】
そこで、この発明の課題は、三角波を使用せずに、正弦波の周期変動が大きい場合であつても、高調波歪による誤差の少ないPWM波形信号を生成し得るパルス幅変調信号発生装置及びパルス幅変調信号発生方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決すべく、請求項1に記載の発明は、所定のまたは任意の周波数の前記対象波を発生させる対象波発生手段と、前記対象波の積分波形を求める積分波形発生手段と、所定のパルス周期毎に前記積分波形における積分値の経時差分を求め、当該経時差分に基づいて矩形波のパルス幅を演算するパルス幅演算手段とを備えるものである。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のパルス幅変調信号発生装置であって、前記パルス幅演算手段は、前記経時差分の極大値が、前記パルス幅の上限値である前記パルス周期に変換され、且つ前記経時差分の極小値が、前記パルス幅の下限値であるゼロ値に変換されるような所定の変換関数を用いて、前記パルス幅を演算するものである。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のパルス幅変調信号発生装置であって、前記パルス幅演算手段は、前記対象波の周期内における前記経時差分の最大絶対値と前記パルス周期の半周期の長さとの比率を変換係数とし、前記各パルス周期毎の前記積分値の前記経時差分と前記変換係数とを乗算した後、この乗算された値に前記パルス周期の半周期の長さを加算して、前記パルス幅を演算するものである。
【0016】
請求項4に記載の発明は、所定のまたは任意の周波数の対象波を発生させる第1の工程と、前記対象波の積分波形を求める第2の工程と、所定のパルス周期毎に前記積分波形における積分値の経時差分を求め、当該経時差分に基づいて矩形波のパルス幅を演算する第3の工程とを備えるものである。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のパルス幅変調信号発生方法であって、前記第3の工程において、前記経時差分の極大値が、前記パルス幅の上限値である前記パルス周期に変換され、且つ前記経時差分の極小値が、前記パルス幅の下限値であるゼロ値に変換されるような所定の変換関数を用いて、前記パルス幅を演算するものである。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のパルス幅変調信号発生方法であって、前記第3の工程において、前記対象波の周期内における前記経時差分の最大絶対値と前記パルス周期の半周期の長さとの比率を変換係数とし、前記各パルス周期毎の前記積分値の前記経時差分と前記変換係数とを乗算した後、この乗算された値に前記パルス周期の半周期の長さを加算して、前記パルス幅を演算するものである。
【0019】
【発明の実施の形態】
この発明の一の実施の形態に係るパルス幅変調信号発生装置は、PWM(パルス幅変調)波形信号として、平均化して元の正弦波形になるように設定するために、元の正弦波形の一定時間毎の面積を反映したパルス幅の矩形波が得られればよいことに着目してなされたもので、対象波である正弦波の積分波を求め、この積分波における正弦波の積分値の一定時間毎の経時差分をマイクロコンピュータを用いて求め、この経時差分量に基づいて、PWM波形信号の各矩形波のパルス幅を決定するものである。
【0020】
図1はこの実施の形態に係るパルス幅変調信号発生装置の適用例を示すブロック図、図2はこの実施の形態に係るパルス幅変調信号発生装置を示すブロック図、図3は正弦波、積分波及びPWM波形信号の関係を示す図である。
【0021】
このパルス幅変調信号発生装置21は、図1の如く、負荷23として例えばハイブリッドカーの走行用の交流モーターなどのように車載用として使用されるもので、例えば42Vの直流電源25からの直流電流をPWMインバータ(インバータ手段)27内のスイッチング素子27aで有周期性の電流に変換し、この電流を交流電流として負荷23の駆動を行うために使用される。特に、走行用の交流モーターのように、交流モーターの回転数を任意に可変とする場合等において、パルス幅変調信号発生装置21からPWMインバータ27に与えるPWM波形信号の周期を自在に調整可能とする場合に好適なものである。
【0022】
ここで、PWMインバータ27は、負荷23の構成に対応して、単相または三相の既知のものが使用され、内部のスイッチング素子27aがPWM波形信号(パルス幅変調信号)40に従ってオンオフすることで、直流電源25からの直流電流を交流電流に変換して交流モーター等の負荷23を駆動する。
【0023】
そして、このパルス幅変調信号発生装置21は、CPU、RAM及びROM等を備えるマイクロコンピュータが使用された機能要素として実現され、PWMインバータ27のスイッチング素子27aをオンオフするために、元の正弦波32を各パルス周期T0毎に矩形波として平均化したPWM波形信号40を出力するものであって、その機能構成としては、図2の如く、このPWM波形信号40のパルス周期T0を規定する一定周期発生装置31と、正弦波(対象波)32を発生させる正弦波発生装置(対象波発生手段)33と、この正弦波発生装置33で発生された正弦波32を位相ブロック35で90度だけ遅延させることで積分波形36を発生させる積分波形発生装置(積分波形発生手段)37と、この積分波形発生装置37で発生した積分波形36の経時差分に基づいてPWM波形信号40のパルス周期T0及びパルス幅t(図3)を演算するパルス幅演算ブロック(パルス幅演算手段)39と、このパルス幅演算ブロック39で演算されたパルス幅でパルス周期T0毎にPWM波形信号40となる矩形波を発生させるパルス発生器41とを備える。
【0024】
一定周期発生装置31は、パルス幅変調信号発生装置21としてのマイクロコンピュータ自身の動作全体の規律を行うための例えばPLL(Phase Locked Loop)発振回路からのクロック信号等に基づいて、PWM波形信号40のパルス周期T0を規定するためのタイミングパルスを発生するものである。このタイミングパルスで規律されるパルス周期T0は、正弦波発生装置33で発生され得る正弦波32のうち、最も高周波数の正弦波32の周期に対して10分の1以下に設定される。これにより、PWM波形信号40の周波数が正弦波発生装置33で発生され得る正弦波32の周波数に対して10倍以上に設定され、正弦波32に対して充分な分解能のPWM波形信号40を得ることが可能となっている。尚、負荷23としてハイブリッドカーの走行用の交流モーターを適用する場合は、PWM波形信号40の周波数は例えば4kHz程度に設定される。
【0025】
正弦波発生装置33は、外部から与えられた電圧指令、周波数指令及び位相指令等の種々の指令情報に基づいて正弦波32を出力する。ここで生成される正弦波32の周波数は可変とされ、外部からの周波数指令に応じて正弦波発生装置33により設定される。ただし、外部から与えられる周波数指令には上限が設定されている。例えば、負荷23としてハイブリッドカーの走行用の交流モーターを適用する場合は、当該ハイブリッドカーの最高速度を規定する交流モーターの最高回転数が、外部から与えられる周波数指令の上限を規定することになる。そして、この外部から与えられる周波数指令の上限に応じた正弦波32の周期は、一定周期発生装置31で規定されたパルス周期T0に対して、上述のように10倍以上に設定されることになる。尚、負荷23としてハイブリッドカーの走行用の交流モーターを適用する場合、正弦波発生装置33で発生される正弦波32は、例えば0Hz〜400Hz程度に設定される。図3では、パルス周期T0の18倍の周期で正弦波32が発生された例を示している。
【0026】
位相ブロック35は、正弦波発生装置33から与えられた正弦波32を、90度の位相差で遅延位相させる。そして、積分波形発生装置37は、位相ブロック35により90度の位相差で遅延位相された波形を、図3のようにそのまま元の正弦波32の積分波形36としてパルス幅演算ブロック39に出力する。
【0027】
パルス幅演算ブロック39は、図3の如く、一定周期発生装置31で規定されるパルス周期T0毎に、積分波形発生装置37から与えられた積分波形36から得られた積分値の経時差分(a−b)を求め、この経時差分(a−b)に基づいて、そのパルス周期T0毎のPWM波形信号40のパルス幅tを演算する。
【0028】
このパルス幅演算ブロック39におけるパルス幅tの演算についての原理を説明する。
【0029】
PWM波形信号40の矩形波はパルス周期T0毎に現れることから、必然的に、その矩形波のパルス幅tの上限値はパルス周期T0であり、当該パルス幅tの下限値はゼロ値であり、また当該パルス幅tの中心値は(T0/2)である。
【0030】
また、正弦波32の積分値の経時差分(a−b)は、正弦波32の積分波形36が逓増しているときは正の値である一方、低減しているときは負の値をとる。
【0031】
そこで、パルス幅tの中心値(T0/2)を基準に、正弦波32の積分値の経時差分(a−b)に比例した値で増減演算を行うことで、パルス幅tを演算する。具体的に、パルス幅演算ブロック39は、所定の変換係数をKとして、パルス周期T0及び正弦波32の積分値の経時差分(a−b)に基づき、次の(1)式の線形演算によりパルス幅tを演算する。
【0032】
t=T0/2+K・(a−b) …(1)
ここで、正弦波32の積分値の経時差分(a−b)が正の値であり且つ極大値をとる場合には、パルス幅tがその上限値であるパルス周期T0に等しくなり、また、正弦波32の積分値の経時差分(a−b)が負の値であり且つ極小値をとる場合に、パルス幅tがその下限値であるゼロ値に等しくなると考えられる。このことから、パルス幅演算ブロック39は、一定周期発生装置31で規定されるパルス周期T0が設定され、また正弦波発生装置33からの正弦波32の周波数が安定した時点で、次の(2)式により変換係数Kを求める。
【0033】
K=T0/(2・MAX|a−b|) …(2)
これらの(1)式と(2)式(これらを併せて「変換関数」と称する)により、上記の経時差分(a−b)の極大値が、パルス幅tの上限値であるパルス周期T0に変換され、且つ経時差分(a−b)の極小値が、パルス幅tの下限値であるゼロ値に変換される。
【0034】
この場合、パルス幅演算ブロック39は、上記の(1)式を演算する前の段階で、正弦波32の積分値のパルス周期T0毎の経時差分(a−b)を数周期分の正弦波32について検出し、そのそれぞれの絶対値|a−b|のうちの極大値を、(2)式中のMAX|a−b|(積分値の最大絶対値)として適用して、(2)式の演算を行う。即ち、パルス幅演算ブロック39は、正弦波発生装置33で発生する正弦波32の周波数が変更される度に、(2)式の演算を実行して変換係数Kを求め、この(2)式で得られた変換係数KをRAM内に格納した後、(1)式の演算をパルス周期T0毎に実行する。
【0035】
尚、(2)式中のMAX|a−b|は、図3の如く、正弦波32の90度位相の時点で現れるため、正弦波32の90度位相の時点で取得された経時差分(a−b)をそのまま(2)式中のMAX|a−b|としても差し支えない。
【0036】
パルス発生器41は、パルス幅演算ブロック39から与えられたパルス幅tの矩形波を、一定周期発生装置31で規定されるパルス周期T0毎に、PWMインバータ27のスイッチング素子27aに対して出力するものである。
【0037】
上記構成のパルス幅変調信号発生装置21の動作を説明する。
【0038】
まず一定周期発生装置31は、PWM波形信号40のパルス周期T0毎にタイミングパルスを発生する。
【0039】
そして、正弦波発生装置33は、外部から与えられた電圧指令、周波数指令及び位相指令等の種々の指令情報に基づいて正弦波32を出力する。ここで、外部から与えられる周波数指令には上限が設定されており、この周波数指令の上限に応じた正弦波32の周波数(最大可能周波数)に対して、上記の一定周期発生装置31からのタイミングパルスの周波数は、正弦波発生装置33で発生される正弦波32に対して充分な分解能のPWM波形信号40を得るために、10倍以上とされる(図3では、パルス周期T0の18倍の周期で正弦波32が発生されている)。
【0040】
次に、位相ブロック35は、正弦波発生装置33から与えられた正弦波32を、90度の位相差で遅延位相させる。そして、積分波形発生装置37は、位相ブロック35により90度の位相差で遅延位相された波形を、図3のようにそのまま元の正弦波32の積分波形36としてパルス幅演算ブロック39に出力する。
【0041】
そして、パルス幅演算ブロック39は、図3の如く、正弦波発生装置33で発生する正弦波32の周波数が変更される度に、正弦波32の積分値のパルス周期T0毎の経時差分(a−b)の最大絶対値MAX|a−b|とパルス周期T0とに基づいて、(2)式の演算を実行して変換係数Kを求める。尚、正弦波発生装置33で発生する正弦波32の周波数が変更された旨は、例えば、正弦波発生装置33に与えられる周波数指令が変更された旨を検出したことを以て判断する。
【0042】
そして、この(2)式で得られた変換係数KをRAM内に格納した後、パルス周期T0及び正弦波32の積分値の経時差分(a−b)に基づいて、(1)式の演算をパルス周期T0毎に実行して、そのパルス周期T0毎のPWM波形信号40のパルス幅tを演算する。
【0043】
しかる後、パルス発生器41は、パルス幅演算ブロック39から与えられたパルス幅tの矩形波を、一定周期発生装置31で規定されるパルス周期T0毎に、PWMインバータ27のスイッチング素子27a(図1)に対して出力する。
【0044】
以上のように、一定のパルス周期T0の前後における積分値の経時差分(a−b)を用いてPWM波形信号40のパルス幅tを演算することにより、各パルス周期T0における元の正弦波32の区分毎の面積に基づいてパルス幅tを正確に且つ容易に設定することができる。
【0045】
したがって、従来のような三角波キャリア比較法(両縁変調方式)に比べて、PWM波形信号40の高調波歪による誤差を大幅に緩和できる。特に、マイクロコンピュータを使用して各パルス周期T0の前後における積分値の経時差分(a−b)を求めているので、正弦波32の最大可能周波数に対してPWM波形信号40の周波数を10倍以上と高く設定するのが容易になる。このため、例えば自動車の走行用の交流モーターを駆動するなど、対象波である正弦波32の周波数が広範囲に変動する場合などにおいて、正弦波32の最大可能周波数に際しても、従来の三角波キャリア比較法に比べて、元の正弦波32に対して、高い分解能で精度のよいPWM波形信号40を得ることができる。
【0046】
また、電源電圧の変動等が容易に生じ得る自動車に搭載する場合に、その電源電圧の変動等が生じても、容易に精度の良いPWM波形信号40を生成することができる。
【0047】
このことから、正弦波32の周波数変動を大きな範囲で許容することができ、広い周波数範囲の正弦波32に対応してPWM波形信号40を精度良く生成することができる。
【0048】
さらに、従来の三角波キャリア比較法においては、精度良いPWM波形信号を得るために高周波の三角波を発生する必要があり、かかる高周波の三角波が、周囲のモーター等に使用されたコイルの鉄心等で鉄損を生じやすくなるという不利があったが、この実施の形態では、高周波の三角波を使用しなくても、精度良いPWM波形信号40を得ることが可能であるため、周囲部品における鉄損の心配もなくなる。
【0049】
尚、上記実施の形態では、対象波として正弦波32を適用していたが、これに限るものではなく、対象波の積分波形36を求めて、その積分値の経時差分をパルス周期T0毎に求めて、その経時差分に基づいてパルス周期T0毎の矩形波のパルス幅tを演算するものであれば、どのようなものでもよい。ただし、対象波が正弦波32である場合には、この正弦波32に対して90度の遅延位相を求めるだけで積分波形36を容易に求めることができ、極めて効率的にパルス幅tを演算することが可能な点で有利である。
【0050】
また、上記の実施の形態では、図3の如く、各パルス周期T0の期間の中央部分にパルス幅tを有するPWM波形信号40を生成していたが、各矩形波が、各パルス周期T0の前端に矩形波の立ち上がりエッジを合わせるようにしても良いし、あるいは、各パルス周期T0の後端に矩形波の立ち下がりエッジを合わせるようにしても良い。
【0051】
【発明の効果】
請求項1及び請求項4に記載の発明によれば、所定のまたは任意の周波数の対象波を発生させ、対象波の積分波形を求めて、この積分波形における積分値の経時差分を所定のパルス周期毎に求め、この経時差分に基づいて矩形波のパルス幅を演算しているので、各パルス周期毎の区間に対応する元の対象波の面積を元にパルス幅を正確に且つ容易に設定することができ、従来のような三角波キャリア比較法(両縁変調方式)に比べて、パルス幅変調時の高調波歪による誤差を大幅に緩和できる。特に、対象波の周波数変動を大きな範囲で許容することができ、広い周波数範囲の対象波に対応して精度良くパルス幅変調を行うことができる。
【0052】
請求項2、請求項3、請求項5及び請求項6に記載の発明によれば、簡単な演算で、容易に各矩形波のパルス幅を演算することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一の実施の形態に係るパルス幅変調信号発生装置がPWMインバータに接続されている状態を示すブロック図である。
【図2】この発明の一の実施の形態に係るパルス幅変調信号発生装置を示すブロック図である。
【図3】この発明の一の実施の形態に係る正弦波と積分波形とPWM波形信号とを示す図である。
【図4】三角波キャリア比較法のパルス幅変調信号発生装置を示すブロック図である。
【図5】三角波キャリア比較法における正弦波とキャリア信号とPWM波形信号の一例を示す図である。
【図6】三角波キャリア比較法における正弦波とキャリア信号とPWM波形信号の他の例を示す図である。
【符号の説明】
21 パルス幅変調信号発生装置
23 負荷
25 直流電源
27 PWMインバータ
31 一定周期発生装置
32 正弦波
33 正弦波発生装置
35 位相ブロック
36 積分波形
37 積分波形発生装置
39 パルス幅演算ブロック
40 PWM波形信号
41 パルス発生器
【発明の属する技術分野】
この発明は、パルス幅変調信号発生装置及びパルス幅変調信号発生方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車の分野等においては、例えば42Vの直流電源を用いて交流モータを駆動することが行われる。この場合、PWMインバータ(Pulse Width Modulation)内のスイッチ素子をPWM制御して、任意の周波数の交流電流を交流モータに与える。
【0003】
かかるPWM制御のひとつの方式として、図4に示したように、正弦波発生部1で発生した正弦波3と、キャリア信号発生部(三角波発生部回路)5で発生された三角波のキャリア信号7とを比較器9で比較して、図5のように、矩形波の出力信号(PWM波形信号)11のパルス幅を制御する三角波キャリア比較法(両縁変調方式)が知られている。
【0004】
この三角波キャリア比較法は、既知の正弦波発生部1と既知のキャリア信号発生部5の両出力を比較器9で比較してパルス化することにより、容易にPWM波形信号を得ることができる利点がある。
【0005】
参考のために、この発明に関連する先行技術文献を示しておく。
【0006】
【特許文献1】
特開2003−047253号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、三角波キャリア比較法においては、三角波7の傾きを持った直線と正弦波3との交点を使ってパルス幅を決定しているため、特に図5のように、三角波7の周期が正弦波3の半周期に比べて極めて小さい場合は、三角波7の直線の傾きが正弦波3に比べて十分に大きくなり、正弦波3の部分的な面積に比例するパルス幅のPWM波形信号11を精度良く得ることができる。
【0008】
しかしながら、図6のように、三角波7の周期が正弦波3の半周期に近づくにつれて、三角波7の直線の傾きと正弦波3の微分係数が近似する部分が生じる。このように、三角波7の直線の傾きと正弦波3の微分係数とが近似すると、出力されるPWM波形信号11が徐々に正弦波3の近似とかけ離れたものとなり、PWM波形信号11の高調波歪による誤差が大きくなってしまう。
【0009】
特に、例えばハイブリッドカーの走行用のモーターをPWMインバータで駆動させる場合のように、モーターの回転数が大幅に変動することがある場合には、正弦波3の周期変動が大きくなることから、一定周期のキャリア信号(三角波7)に対して正弦波3の周期が最短となる状態では、PWM波形信号11に高調波歪による誤差が生じやすくなるおそれがある。
【0010】
これは、平均化して正弦波3に近似するPWM波形信号11を得る手段として、有限な傾きの三角波7を利用していることに起因すると言える。
【0011】
また、三角波キャリア比較法においては、高周波の三角波7を発生する必要があるが、かかる高周波の三角波7は、周囲のモーター等に使用されたコイルの鉄心などにおいて鉄損が生じやすくなるという不利があり、高周波の三角波7を使用せずに精度良いPWM波形信号11が得られる方法が望まれていた。
【0012】
そこで、この発明の課題は、三角波を使用せずに、正弦波の周期変動が大きい場合であつても、高調波歪による誤差の少ないPWM波形信号を生成し得るパルス幅変調信号発生装置及びパルス幅変調信号発生方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決すべく、請求項1に記載の発明は、所定のまたは任意の周波数の前記対象波を発生させる対象波発生手段と、前記対象波の積分波形を求める積分波形発生手段と、所定のパルス周期毎に前記積分波形における積分値の経時差分を求め、当該経時差分に基づいて矩形波のパルス幅を演算するパルス幅演算手段とを備えるものである。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のパルス幅変調信号発生装置であって、前記パルス幅演算手段は、前記経時差分の極大値が、前記パルス幅の上限値である前記パルス周期に変換され、且つ前記経時差分の極小値が、前記パルス幅の下限値であるゼロ値に変換されるような所定の変換関数を用いて、前記パルス幅を演算するものである。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のパルス幅変調信号発生装置であって、前記パルス幅演算手段は、前記対象波の周期内における前記経時差分の最大絶対値と前記パルス周期の半周期の長さとの比率を変換係数とし、前記各パルス周期毎の前記積分値の前記経時差分と前記変換係数とを乗算した後、この乗算された値に前記パルス周期の半周期の長さを加算して、前記パルス幅を演算するものである。
【0016】
請求項4に記載の発明は、所定のまたは任意の周波数の対象波を発生させる第1の工程と、前記対象波の積分波形を求める第2の工程と、所定のパルス周期毎に前記積分波形における積分値の経時差分を求め、当該経時差分に基づいて矩形波のパルス幅を演算する第3の工程とを備えるものである。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のパルス幅変調信号発生方法であって、前記第3の工程において、前記経時差分の極大値が、前記パルス幅の上限値である前記パルス周期に変換され、且つ前記経時差分の極小値が、前記パルス幅の下限値であるゼロ値に変換されるような所定の変換関数を用いて、前記パルス幅を演算するものである。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のパルス幅変調信号発生方法であって、前記第3の工程において、前記対象波の周期内における前記経時差分の最大絶対値と前記パルス周期の半周期の長さとの比率を変換係数とし、前記各パルス周期毎の前記積分値の前記経時差分と前記変換係数とを乗算した後、この乗算された値に前記パルス周期の半周期の長さを加算して、前記パルス幅を演算するものである。
【0019】
【発明の実施の形態】
この発明の一の実施の形態に係るパルス幅変調信号発生装置は、PWM(パルス幅変調)波形信号として、平均化して元の正弦波形になるように設定するために、元の正弦波形の一定時間毎の面積を反映したパルス幅の矩形波が得られればよいことに着目してなされたもので、対象波である正弦波の積分波を求め、この積分波における正弦波の積分値の一定時間毎の経時差分をマイクロコンピュータを用いて求め、この経時差分量に基づいて、PWM波形信号の各矩形波のパルス幅を決定するものである。
【0020】
図1はこの実施の形態に係るパルス幅変調信号発生装置の適用例を示すブロック図、図2はこの実施の形態に係るパルス幅変調信号発生装置を示すブロック図、図3は正弦波、積分波及びPWM波形信号の関係を示す図である。
【0021】
このパルス幅変調信号発生装置21は、図1の如く、負荷23として例えばハイブリッドカーの走行用の交流モーターなどのように車載用として使用されるもので、例えば42Vの直流電源25からの直流電流をPWMインバータ(インバータ手段)27内のスイッチング素子27aで有周期性の電流に変換し、この電流を交流電流として負荷23の駆動を行うために使用される。特に、走行用の交流モーターのように、交流モーターの回転数を任意に可変とする場合等において、パルス幅変調信号発生装置21からPWMインバータ27に与えるPWM波形信号の周期を自在に調整可能とする場合に好適なものである。
【0022】
ここで、PWMインバータ27は、負荷23の構成に対応して、単相または三相の既知のものが使用され、内部のスイッチング素子27aがPWM波形信号(パルス幅変調信号)40に従ってオンオフすることで、直流電源25からの直流電流を交流電流に変換して交流モーター等の負荷23を駆動する。
【0023】
そして、このパルス幅変調信号発生装置21は、CPU、RAM及びROM等を備えるマイクロコンピュータが使用された機能要素として実現され、PWMインバータ27のスイッチング素子27aをオンオフするために、元の正弦波32を各パルス周期T0毎に矩形波として平均化したPWM波形信号40を出力するものであって、その機能構成としては、図2の如く、このPWM波形信号40のパルス周期T0を規定する一定周期発生装置31と、正弦波(対象波)32を発生させる正弦波発生装置(対象波発生手段)33と、この正弦波発生装置33で発生された正弦波32を位相ブロック35で90度だけ遅延させることで積分波形36を発生させる積分波形発生装置(積分波形発生手段)37と、この積分波形発生装置37で発生した積分波形36の経時差分に基づいてPWM波形信号40のパルス周期T0及びパルス幅t(図3)を演算するパルス幅演算ブロック(パルス幅演算手段)39と、このパルス幅演算ブロック39で演算されたパルス幅でパルス周期T0毎にPWM波形信号40となる矩形波を発生させるパルス発生器41とを備える。
【0024】
一定周期発生装置31は、パルス幅変調信号発生装置21としてのマイクロコンピュータ自身の動作全体の規律を行うための例えばPLL(Phase Locked Loop)発振回路からのクロック信号等に基づいて、PWM波形信号40のパルス周期T0を規定するためのタイミングパルスを発生するものである。このタイミングパルスで規律されるパルス周期T0は、正弦波発生装置33で発生され得る正弦波32のうち、最も高周波数の正弦波32の周期に対して10分の1以下に設定される。これにより、PWM波形信号40の周波数が正弦波発生装置33で発生され得る正弦波32の周波数に対して10倍以上に設定され、正弦波32に対して充分な分解能のPWM波形信号40を得ることが可能となっている。尚、負荷23としてハイブリッドカーの走行用の交流モーターを適用する場合は、PWM波形信号40の周波数は例えば4kHz程度に設定される。
【0025】
正弦波発生装置33は、外部から与えられた電圧指令、周波数指令及び位相指令等の種々の指令情報に基づいて正弦波32を出力する。ここで生成される正弦波32の周波数は可変とされ、外部からの周波数指令に応じて正弦波発生装置33により設定される。ただし、外部から与えられる周波数指令には上限が設定されている。例えば、負荷23としてハイブリッドカーの走行用の交流モーターを適用する場合は、当該ハイブリッドカーの最高速度を規定する交流モーターの最高回転数が、外部から与えられる周波数指令の上限を規定することになる。そして、この外部から与えられる周波数指令の上限に応じた正弦波32の周期は、一定周期発生装置31で規定されたパルス周期T0に対して、上述のように10倍以上に設定されることになる。尚、負荷23としてハイブリッドカーの走行用の交流モーターを適用する場合、正弦波発生装置33で発生される正弦波32は、例えば0Hz〜400Hz程度に設定される。図3では、パルス周期T0の18倍の周期で正弦波32が発生された例を示している。
【0026】
位相ブロック35は、正弦波発生装置33から与えられた正弦波32を、90度の位相差で遅延位相させる。そして、積分波形発生装置37は、位相ブロック35により90度の位相差で遅延位相された波形を、図3のようにそのまま元の正弦波32の積分波形36としてパルス幅演算ブロック39に出力する。
【0027】
パルス幅演算ブロック39は、図3の如く、一定周期発生装置31で規定されるパルス周期T0毎に、積分波形発生装置37から与えられた積分波形36から得られた積分値の経時差分(a−b)を求め、この経時差分(a−b)に基づいて、そのパルス周期T0毎のPWM波形信号40のパルス幅tを演算する。
【0028】
このパルス幅演算ブロック39におけるパルス幅tの演算についての原理を説明する。
【0029】
PWM波形信号40の矩形波はパルス周期T0毎に現れることから、必然的に、その矩形波のパルス幅tの上限値はパルス周期T0であり、当該パルス幅tの下限値はゼロ値であり、また当該パルス幅tの中心値は(T0/2)である。
【0030】
また、正弦波32の積分値の経時差分(a−b)は、正弦波32の積分波形36が逓増しているときは正の値である一方、低減しているときは負の値をとる。
【0031】
そこで、パルス幅tの中心値(T0/2)を基準に、正弦波32の積分値の経時差分(a−b)に比例した値で増減演算を行うことで、パルス幅tを演算する。具体的に、パルス幅演算ブロック39は、所定の変換係数をKとして、パルス周期T0及び正弦波32の積分値の経時差分(a−b)に基づき、次の(1)式の線形演算によりパルス幅tを演算する。
【0032】
t=T0/2+K・(a−b) …(1)
ここで、正弦波32の積分値の経時差分(a−b)が正の値であり且つ極大値をとる場合には、パルス幅tがその上限値であるパルス周期T0に等しくなり、また、正弦波32の積分値の経時差分(a−b)が負の値であり且つ極小値をとる場合に、パルス幅tがその下限値であるゼロ値に等しくなると考えられる。このことから、パルス幅演算ブロック39は、一定周期発生装置31で規定されるパルス周期T0が設定され、また正弦波発生装置33からの正弦波32の周波数が安定した時点で、次の(2)式により変換係数Kを求める。
【0033】
K=T0/(2・MAX|a−b|) …(2)
これらの(1)式と(2)式(これらを併せて「変換関数」と称する)により、上記の経時差分(a−b)の極大値が、パルス幅tの上限値であるパルス周期T0に変換され、且つ経時差分(a−b)の極小値が、パルス幅tの下限値であるゼロ値に変換される。
【0034】
この場合、パルス幅演算ブロック39は、上記の(1)式を演算する前の段階で、正弦波32の積分値のパルス周期T0毎の経時差分(a−b)を数周期分の正弦波32について検出し、そのそれぞれの絶対値|a−b|のうちの極大値を、(2)式中のMAX|a−b|(積分値の最大絶対値)として適用して、(2)式の演算を行う。即ち、パルス幅演算ブロック39は、正弦波発生装置33で発生する正弦波32の周波数が変更される度に、(2)式の演算を実行して変換係数Kを求め、この(2)式で得られた変換係数KをRAM内に格納した後、(1)式の演算をパルス周期T0毎に実行する。
【0035】
尚、(2)式中のMAX|a−b|は、図3の如く、正弦波32の90度位相の時点で現れるため、正弦波32の90度位相の時点で取得された経時差分(a−b)をそのまま(2)式中のMAX|a−b|としても差し支えない。
【0036】
パルス発生器41は、パルス幅演算ブロック39から与えられたパルス幅tの矩形波を、一定周期発生装置31で規定されるパルス周期T0毎に、PWMインバータ27のスイッチング素子27aに対して出力するものである。
【0037】
上記構成のパルス幅変調信号発生装置21の動作を説明する。
【0038】
まず一定周期発生装置31は、PWM波形信号40のパルス周期T0毎にタイミングパルスを発生する。
【0039】
そして、正弦波発生装置33は、外部から与えられた電圧指令、周波数指令及び位相指令等の種々の指令情報に基づいて正弦波32を出力する。ここで、外部から与えられる周波数指令には上限が設定されており、この周波数指令の上限に応じた正弦波32の周波数(最大可能周波数)に対して、上記の一定周期発生装置31からのタイミングパルスの周波数は、正弦波発生装置33で発生される正弦波32に対して充分な分解能のPWM波形信号40を得るために、10倍以上とされる(図3では、パルス周期T0の18倍の周期で正弦波32が発生されている)。
【0040】
次に、位相ブロック35は、正弦波発生装置33から与えられた正弦波32を、90度の位相差で遅延位相させる。そして、積分波形発生装置37は、位相ブロック35により90度の位相差で遅延位相された波形を、図3のようにそのまま元の正弦波32の積分波形36としてパルス幅演算ブロック39に出力する。
【0041】
そして、パルス幅演算ブロック39は、図3の如く、正弦波発生装置33で発生する正弦波32の周波数が変更される度に、正弦波32の積分値のパルス周期T0毎の経時差分(a−b)の最大絶対値MAX|a−b|とパルス周期T0とに基づいて、(2)式の演算を実行して変換係数Kを求める。尚、正弦波発生装置33で発生する正弦波32の周波数が変更された旨は、例えば、正弦波発生装置33に与えられる周波数指令が変更された旨を検出したことを以て判断する。
【0042】
そして、この(2)式で得られた変換係数KをRAM内に格納した後、パルス周期T0及び正弦波32の積分値の経時差分(a−b)に基づいて、(1)式の演算をパルス周期T0毎に実行して、そのパルス周期T0毎のPWM波形信号40のパルス幅tを演算する。
【0043】
しかる後、パルス発生器41は、パルス幅演算ブロック39から与えられたパルス幅tの矩形波を、一定周期発生装置31で規定されるパルス周期T0毎に、PWMインバータ27のスイッチング素子27a(図1)に対して出力する。
【0044】
以上のように、一定のパルス周期T0の前後における積分値の経時差分(a−b)を用いてPWM波形信号40のパルス幅tを演算することにより、各パルス周期T0における元の正弦波32の区分毎の面積に基づいてパルス幅tを正確に且つ容易に設定することができる。
【0045】
したがって、従来のような三角波キャリア比較法(両縁変調方式)に比べて、PWM波形信号40の高調波歪による誤差を大幅に緩和できる。特に、マイクロコンピュータを使用して各パルス周期T0の前後における積分値の経時差分(a−b)を求めているので、正弦波32の最大可能周波数に対してPWM波形信号40の周波数を10倍以上と高く設定するのが容易になる。このため、例えば自動車の走行用の交流モーターを駆動するなど、対象波である正弦波32の周波数が広範囲に変動する場合などにおいて、正弦波32の最大可能周波数に際しても、従来の三角波キャリア比較法に比べて、元の正弦波32に対して、高い分解能で精度のよいPWM波形信号40を得ることができる。
【0046】
また、電源電圧の変動等が容易に生じ得る自動車に搭載する場合に、その電源電圧の変動等が生じても、容易に精度の良いPWM波形信号40を生成することができる。
【0047】
このことから、正弦波32の周波数変動を大きな範囲で許容することができ、広い周波数範囲の正弦波32に対応してPWM波形信号40を精度良く生成することができる。
【0048】
さらに、従来の三角波キャリア比較法においては、精度良いPWM波形信号を得るために高周波の三角波を発生する必要があり、かかる高周波の三角波が、周囲のモーター等に使用されたコイルの鉄心等で鉄損を生じやすくなるという不利があったが、この実施の形態では、高周波の三角波を使用しなくても、精度良いPWM波形信号40を得ることが可能であるため、周囲部品における鉄損の心配もなくなる。
【0049】
尚、上記実施の形態では、対象波として正弦波32を適用していたが、これに限るものではなく、対象波の積分波形36を求めて、その積分値の経時差分をパルス周期T0毎に求めて、その経時差分に基づいてパルス周期T0毎の矩形波のパルス幅tを演算するものであれば、どのようなものでもよい。ただし、対象波が正弦波32である場合には、この正弦波32に対して90度の遅延位相を求めるだけで積分波形36を容易に求めることができ、極めて効率的にパルス幅tを演算することが可能な点で有利である。
【0050】
また、上記の実施の形態では、図3の如く、各パルス周期T0の期間の中央部分にパルス幅tを有するPWM波形信号40を生成していたが、各矩形波が、各パルス周期T0の前端に矩形波の立ち上がりエッジを合わせるようにしても良いし、あるいは、各パルス周期T0の後端に矩形波の立ち下がりエッジを合わせるようにしても良い。
【0051】
【発明の効果】
請求項1及び請求項4に記載の発明によれば、所定のまたは任意の周波数の対象波を発生させ、対象波の積分波形を求めて、この積分波形における積分値の経時差分を所定のパルス周期毎に求め、この経時差分に基づいて矩形波のパルス幅を演算しているので、各パルス周期毎の区間に対応する元の対象波の面積を元にパルス幅を正確に且つ容易に設定することができ、従来のような三角波キャリア比較法(両縁変調方式)に比べて、パルス幅変調時の高調波歪による誤差を大幅に緩和できる。特に、対象波の周波数変動を大きな範囲で許容することができ、広い周波数範囲の対象波に対応して精度良くパルス幅変調を行うことができる。
【0052】
請求項2、請求項3、請求項5及び請求項6に記載の発明によれば、簡単な演算で、容易に各矩形波のパルス幅を演算することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一の実施の形態に係るパルス幅変調信号発生装置がPWMインバータに接続されている状態を示すブロック図である。
【図2】この発明の一の実施の形態に係るパルス幅変調信号発生装置を示すブロック図である。
【図3】この発明の一の実施の形態に係る正弦波と積分波形とPWM波形信号とを示す図である。
【図4】三角波キャリア比較法のパルス幅変調信号発生装置を示すブロック図である。
【図5】三角波キャリア比較法における正弦波とキャリア信号とPWM波形信号の一例を示す図である。
【図6】三角波キャリア比較法における正弦波とキャリア信号とPWM波形信号の他の例を示す図である。
【符号の説明】
21 パルス幅変調信号発生装置
23 負荷
25 直流電源
27 PWMインバータ
31 一定周期発生装置
32 正弦波
33 正弦波発生装置
35 位相ブロック
36 積分波形
37 積分波形発生装置
39 パルス幅演算ブロック
40 PWM波形信号
41 パルス発生器
Claims (6)
- 所定のまたは任意の周波数の対象波を発生させる対象波発生手段と、
前記対象波の積分波形を求める積分波形発生手段と、
所定のパルス周期毎に前記積分波形における積分値の経時差分を求め、当該経時差分に基づいて矩形波のパルス幅を演算するパルス幅演算手段と
を備えるパルス幅変調信号発生装置。 - 請求項1に記載のパルス幅変調信号発生装置であって、
前記パルス幅演算手段は、前記経時差分の極大値が、前記パルス幅の上限値である前記パルス周期に変換され、且つ前記経時差分の極小値が、前記パルス幅の下限値であるゼロ値に変換されるような所定の変換関数を用いて、前記パルス幅を演算する、パルス幅変調信号発生装置。 - 請求項2に記載のパルス幅変調信号発生装置であって、
前記パルス幅演算手段は、前記対象波の周期内における前記経時差分の最大絶対値と前記パルス周期の半周期の長さとの比率を変換係数とし、前記各パルス周期毎の前記積分値の前記経時差分と前記変換係数とを乗算した後、この乗算された値に前記パルス周期の半周期の長さを加算して、前記パルス幅を演算する、パルス幅変調信号発生装置。 - 所定のまたは任意の周波数の対象波を発生させる第1の工程と、
前記対象波の積分波形を求める第2の工程と、
所定のパルス周期毎に前記積分波形における積分値の経時差分を求め、当該経時差分に基づいて矩形波のパルス幅を演算する第3の工程と
を備えるパルス幅変調信号発生方法。 - 請求項4に記載のパルス幅変調信号発生方法であって、
前記第3の工程において、前記経時差分の極大値が、前記パルス幅の上限値である前記パルス周期に変換され、且つ前記経時差分の極小値が、前記パルス幅の下限値であるゼロ値に変換されるような所定の変換関数を用いて、前記パルス幅を演算する、パルス幅変調信号発生方法。 - 請求項5に記載のパルス幅変調信号発生方法であって、
前記第3の工程において、前記対象波の周期内における前記経時差分の最大絶対値と前記パルス周期の半周期の長さとの比率を変換係数とし、前記各パルス周期毎の前記積分値の前記経時差分と前記変換係数とを乗算した後、この乗算された値に前記パルス周期の半周期の長さを加算して、前記パルス幅を演算する、パルス幅変調信号発生方法。
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CN102315842A (zh) * | 2011-04-22 | 2012-01-11 | 北京科诺伟业科技有限公司 | 单极正弦脉冲宽度调制spwm方法和单极spwm电路 |
JP2012028820A (ja) * | 2011-11-07 | 2012-02-09 | Omron Corp | Led駆動回路 |
CN112290779A (zh) * | 2020-10-16 | 2021-01-29 | 臻驱科技(上海)有限公司 | 临时改变载波形式的脉冲宽度调制方法 |
-
2003
- 2003-06-04 JP JP2003159761A patent/JP2004364409A/ja active Pending
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