JP2004363440A - 超臨界乾燥方法及び装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】水を用いた処理の後、二酸化炭素などによる超臨界乾燥を行えるようにする。
【解決手段】基板101が載置されたステージ152の領域が、密閉された状態とし、図示しない圧送手段により、反応室151a内に一酸化炭素を導入し、反応室151a内が一酸化炭素で充填された状態とし、反応室151aの内部を例えば15MPa程度の圧力とし、また、反応室151aの内部を35℃程度にし、水と一酸化炭素とを反応させて二酸化炭素を生成させる。
【選択図】 図1
【解決手段】基板101が載置されたステージ152の領域が、密閉された状態とし、図示しない圧送手段により、反応室151a内に一酸化炭素を導入し、反応室151a内が一酸化炭素で充填された状態とし、反応室151aの内部を例えば15MPa程度の圧力とし、また、反応室151aの内部を35℃程度にし、水と一酸化炭素とを反応させて二酸化炭素を生成させる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水やアルコールなどの液体による処理をした後の乾燥における液体の表面張力による微細なパターンの倒れを抑制する超臨界乾燥方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
よく知られているように、LSIを始めとする大規模・高性能デバイスを作製するためには、極微細パターンが必要となる。この極微細パターンは、例えば、露光,現像,リンス処理を経て形成される、光やX線または電子線に感光性を有するレジストのパターンである。また、これらレジストパターンをマスクとした選択エッチングによる、エッチング,水洗,リンス処理を経て形成される酸化物などの無機材料からなるエッチングパターンである。
【0003】
前述したレジストパターンは、有機材料である感光性レジストの膜をリソグラフィー技術で加工することにより形成できる。感光性レジストの膜に露光を行うと、露光された領域の分子量や分子構造が変化し、未露光の領域との間に現像液に対する溶解性に差が発生するので、この差を利用した現像処理により感光性レジストの膜より微細なパターンが形成できる。
【0004】
上述した現像処理では、現像を続けていけば、やがて未露光の領域も現像液に溶解し始めてパターンが消滅してしまうので、リンス液によるリンス処理を行って現像を停止している。最終的に、乾燥してリンス液を除去することで、加工マスクとしてのレジストパターンがレジスト膜に形成できる。
このような微細パターン形成における乾燥時の大きな問題点として、図3(a)〜図3(c)の工程図に示すようなパターンの倒れがある。
【0005】
アスペクト比の大きい微細なレジストのパターンは、現像を施した後でリンス洗浄,乾燥を経て形成される。レジスト以外でもアスペクト比の大きな微細パターンは形成される。例えば、レジストパターンをマスクに基板をエッチングし、高アスペクト比の基板パターンを形成する場合、エッチングの後で洗浄し、図3(a)に示すように、基板301と共に基板パターン302を水303に浸漬してリンス洗浄する。この後、乾燥が行われることになる。
【0006】
ところが、図3(b)に示すように、乾燥時には、基板パターン302の間に残った水303と、外部の空気304との圧力差により、曲げ力(毛細管力)305が働く。この結果、図3(c)に示すように、基板301上で基板パターン302のパターン倒れが発生する。この倒れる現象は、パターンが高アスペクト比になるほど顕著になる。上記毛細管力は、水などのリンス液とパターンとの間での液体と気体との界面で生じる表面張力に依存することが報告されている(非特許文献1参照)。
【0007】
水の表面張力は約72×10−3N/mと大きく、上述した毛細管力は、有機材料からなるレジストパターンを倒すだけでなく、無機材料であるシリコンなどのより丈夫なパターンをも歪める力を有している。このため、上述したリンス液や洗浄液などによる表面張力の問題は、重要となっている。表面張力は、液体と気体との界面が形成された状態で発生する。従って、乾燥すなわち液体を除去する段階で、液体と気体との界面を形成する状態が発生しないようにすれば、上述した問題を解消することが可能となる。
【0008】
ここで、液体に触れている状態から超臨界流体に触れている状態とし、この超臨界流体を気化させることで乾燥を行えば、液体と気体との界面を形成することなく、液体を除去すること、すなわち乾燥することが可能となる。この場合、超臨界流体と気体との界面が形成されるが、超臨界流体には表面張力が全く作用しない。このような特徴を利用し、超臨界状態の流体による乾燥によりパターン倒れなどの問題を解消する技術が提案されている(特許文献1,2,3参照)。
【0009】
超臨界状態の流体(超臨界流体)は、臨界温度及び臨界圧力を超えた温度及び圧力下の物質であり、液体に近い溶解力を持つが、張力や粘度は気体に近い性質を示すもので、気体の状態を保った液体といえる。このような特徴を有する超臨界流体は、液体と気体との界面を形成しないため、表面張力はゼロになる。従って、超臨界状態で乾燥すれば、表面張力の概念はなくなるため、パターン倒れはなくなることになる。
【0010】
超臨界流体は、気体の拡散性と液体の溶解性(高密度性)を兼ね備えたもので、液体から気体へ平衡線を介さずに状態変化できる。このため、超臨界流体で満たされた状態から徐々にこの超臨界流体を放出すると、液体と気体との界面が形成されないことから、乾燥対象の超微細パターンに表面張力を作用させずに乾燥させることができる。
【0011】
超臨界流体としては、多くの場合、臨界点が低く取り扱いの容易な二酸化炭素が使われている。超臨界流体を用いた超臨界乾燥では、洗浄液による洗浄処理などをした後、基板表面に付着している洗浄液を、密閉された容器内において液化二酸化炭素に置換することで開始される。二酸化炭素は、6MPa程度に加圧すれば常温で液化するため、上記置換は、容器内の圧力を6MPa程度に圧力上昇させた状態で行う。基板に付着していた洗浄液が液化二酸化炭素に置換された後、容器内を二酸化炭素の臨界点以上の温度と圧力(二酸化炭素の臨界点;31度、7.3MPa)にして液化二酸化炭素を超臨界二酸化炭素に変換する。
【0012】
最後に、上記温度を保持したまま、容器の一部を開放して超臨界二酸化炭素を外部に放出し、容器内を大気圧にまで減圧し、容器内の超臨界二酸化炭素を気化させることで乾燥を終了する。この減圧時には、二酸化炭素は液化せずに気化するため、表面張力が作用する液体と気体との界面は基板の上に形成されない。このため、基板の上に形成されている超微細パターンに倒れを発生させることなく、これらを乾燥させることができる。
【0013】
上記の超臨界乾燥のための装置としては、例えば図4に示すように、密閉可能な容器401内の反応室402に、ボンベ403に封入してある液化二酸化炭素を圧送ポンプ404により圧送する装置がある。この装置では、液化二酸化炭素導入側のバルブ405を開けることで、容器401内に液化二酸化炭素を導入し、バルブ405に連通している導入口406先端より液化二酸化炭素を吐出し、反応室402内のステージ412の上に載置されている基板411の上に液化二酸化炭素を注入する。
【0014】
このとき、例えば、ボンベ403内の液化二酸化炭素を圧送ポンプ404により反応室402内に圧送し、この状態で排出側のバルブ407の開度を調節し、排出口409より排出される液化二酸化炭素の量を制限することで、反応室402内の圧力を制御している。排出側のバルブ407に、例えば自動圧力弁などを用いれば、上記圧力制御が可能となる。
【0015】
上述したように、液化二酸化炭素を導入口406により基板の上に注入している状態で、ヒータ413により容器401を例えば31℃程度に加温し、反応室402内の圧力を7.5MPa以上とすれば、反応室402内の基板411上に注入された液化二酸化炭素が超臨界状態となる。反応室402内の圧力は、例えば、圧送ポンプ404による圧送量を増加し、また、バルブ407を調節して反応室402から排出される液化二酸化炭素の量を減ずることで、上昇させることができる。
この後、バルブ405を閉じてバルブ407を開放し、反応室402内の圧力を低下させ、反応室402内に注入された超臨界状態の二酸化炭素を気化させれば、超臨界乾燥が終了する。
【0016】
【特許文献1】
特公平1−220828号公報
【特許文献2】
特開平8−197021号公報
【特許文献3】
特公平1−170026号公報
【非特許文献1】
アプライド・フィジクス・レターズ、66巻、2655−2657頁、1995年
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、フォトリソグラフィー技術によるパターン形成のプロセスでは、一般に、最後に基板を水洗してから乾燥させる場合が多い。しかしながら、液化二酸化炭素に対して、水がほとんど溶解しないため、比較的二酸化炭素と混和しやすいエタノールで水を置換してから超臨界乾燥を行うようにしていた。しかし、混和しやすいといってもエタノールなどのアルコールと二酸化炭素との溶解性は十分ではないため、置換に時間がかかるという問題があった。また、レジストによっては、アルコールに溶解するものがあるため、水洗の後でアルコールが使えない場合もある。
【0018】
前述したように、水と液化二酸化炭素とはあまり混和しないため、パターンを濡らしている水を液化二酸化炭素に置換するのは容易ではない。特に、微細なパターンの間に水が残っている状態では、これを液化二酸化炭素で完全に置換することが非常に困難である。
例えば、超臨界乾燥では、図5(a)に示すように、基板501上のパターン502が水503に浸漬している状態に、図5(b)に示すように、液化二酸化炭素504を追加する。この追加により、図5(c)に示すように、基板501の表面を濡らしていた水503をある程度除去することは可能である。しかしながら、水と液化二酸化炭素とが混和しにくいため、パターン502の微細な隙間には水503が残りやすい。
【0019】
この状態で液化二酸化炭素504を超臨界状態にしても、図5(d)に示すように、パターン502の間には液体である水503が残り、結果として、図5(e)に示すように、パターン502の倒れが発生する。
この問題を解消する方法として、界面活性剤を利用して水と液化二酸化炭素とをより混和しやすい状態とし、超臨界乾燥を行う技術が提案されている(特開2001−165568号公報,特開2001−319917号公報)。
【0020】
しかしながら、有機高分子レジストには、界面活性剤が溶解している水に乳化もしくは分散し、パターンの形状が維持できないものがある。このようなレジストを用いてパターンを形成する場合、洗浄などに用いる水には界面活性剤を用いることができない。
これらのように、洗浄に水のみしか用いることができない場合、前述したように、二酸化炭素を用いた従来の超臨界乾燥方法では、パターン倒れなどの問題が完全に解消できない状態であった。
【0021】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、水を用いた処理の後、二酸化炭素などによる超臨界乾燥を行えるようにすることを目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る超臨界乾燥方法は、水による処理がされた基板を密閉された容器内に収容し、容器内に特定物質を導入して容器内を所定の圧力及び所定の温度とし、パターンの表面に付着している水と特定物質を化学反応させて二酸化炭素を生成させてパターンの表面に付着している水を除去するようにしたものである。なお、特定物質は、大気雰囲気では気体であり、圧力及び温度は、二酸化炭素が超臨界状態となる条件である。
この超臨界乾燥方法によれば、基板の上に形成されていてる微細なパターンに付着している水が、気体と液体の界面における表面張力をパターンに作用させることなく除去される。
【0023】
上記超臨界乾燥方法において、特定物質は、一酸化炭素であればよく、この場合、化学反応は、水と一酸化炭素が反応して二酸化炭素と水素が反応生成物として生成する反応である。また、特定物質は、カルボニル基とハロゲンとを含む化合物であっても良く、この場合、化学反応は、二酸化炭素及び水素とハロゲンとの化合物が反応生成物として生成する反応である。
【0024】
また、本発明に係る超臨界乾燥方法は、所定のパターンが形成された基板のパターンの形成面を水に晒して水による処理を行う第1工程と、この第1工程の後、基板を密閉された容器内に収容し、容器内に特定物質を導入して容器内を所定の圧力及び所定の温度とし、パターンの表面に付着している水と特定物質を化学反応させてパターンの表面に付着している水を除去する第2工程とを少なくとも備え、特定物質は、大気雰囲気では気体であり、圧力及び温度は、化学反応による反応生成物が超臨界状態となる条件である。
【0025】
本発明に係る超臨界乾燥装置は、処理対象となる基板が内部に載置されて密閉可能な反応室と、反応室の内部に特定物質を供給する特定物質供給手段と、特定物質が供給された反応室の内部を、水と特定物質とが化学反応して二酸化炭素を生成してかつ二酸化炭素が超臨界状態となる圧力に制御する圧力制御手段と、特定物質が供給された反応室の内部を、水と特定物質とが化学反応して二酸化炭素を生成してかつ二酸化炭素が超臨界状態となる温度に制御する温度制御手段と、反応室の内部の流体を排出する排出口とを少なくとも備えたものである。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
始めに、本発明の実施の形態における超臨界乾燥方法の一例を説明する。本実施の形態の超臨界乾燥方法では、水に一酸化炭素を反応させてこれらを二酸化炭素と水素とに化学変化させることで、パターンに付着している水を超臨界状態になりやすい二酸化炭素などに置換するようにした。
【0027】
まず、図1(a−1)の平面図に示すように、上部が開放されている容器151の外部において、搬送機構の搬送アーム153に処理対象の基板101を載置し、次いで、図1(a−2)の平面図に示すように、搬送アーム153とともに基板101をステージ152の上部に移動する。例えば、基板101の上には、感光性レジストの薄膜が形成され、また、このレジスト薄膜には、所定のパターンの潜像が形成されている。
【0028】
次いで、ステージ152上に基板101を載置し、搬送アーム153を容器151の外部に退出させた後、図1(a−3)の平面図に示すように、液吐出部154をステージ152の上部に侵入させ、基板101の上に現像液,水など所定の液を供給して所定の液処理を行う。以上の薬液処理により、図1(a)の模式的な断面図に示すように、基板101の表面は、形成されたパターン101aを含めて、水102で濡れた状態となる。
【0029】
これら薬液処理を行った後、図1(b−1)の平面図に示すように、液突出部154を容器151の上部より退避させ、容器151の上に蓋155をし、基板101が載置されたステージ152の領域が、密閉された状態とする。図1(b−2)の断面図に示すように、容器151を蓋155により密閉することにより、密閉空間である反応室151aが形成され、反応室151aの内部に、ステージ152が配置され、この上に水に濡れた基板101が載置された状態となる。
【0030】
次いで、図示しない圧送手段により、反応室151a内に一酸化炭素を導入し、反応室151a内が一酸化炭素で充填された状態とする。このことにより、図1(b)に示すように、基板101,パターン101aを濡らす水102が、一酸化炭素(特定物質)103で覆われた状態となる。一酸化炭素には、レジストが溶解することがなく、パターン101aが溶解することはない。
引き続き、一酸化炭素を反応室151a内に圧送し、反応室151aの内部を例えば15MPa程度の圧力とし、また、反応室151aの内部を35℃程度にし、水と一酸化炭素とを反応させて二酸化炭素を生成させる。
【0031】
一酸化炭素と水との化学反応により、二酸化炭素と水素とが生成する。この化学反応は、反応式「CO+H2O←→CO2+H2」で示される平衡反応であり、平衡定数Kp([CO][H2O]/[CO2][H2])は、300Kで1×10−5である。従って、20〜40℃程度の温度においては、上記反応式で示される化学反応は、式の右に進む。ただし、温度が1000℃以上では、逆である。従って、上述した温度及び圧力の条件においては、上記反応式で示される化学反応は、式の右に進み、導入している一酸化炭素と水とが反応し、二酸化炭素と水素とが生成される。
【0032】
基板101,パターン101aを濡らす全ての水を一酸化炭素と反応させて、二酸化炭素と水とにすることで、パターン101aの表面より水が除去されることになる。また、この化学反応を進行させている反応室151aの内部は、生成する二酸化炭素が超臨界状態となる条件である。従って、全ての水が上記反応を起こした後は、図1(c)に示すように、基板101の上において、パターン101aが二酸化炭素を含む超臨界状態の流体104に浸漬した状態となる。なお、超臨界状態は、亜臨界状態も含む。
【0033】
ここで、一酸化炭素の臨界点は、臨界温度−139℃、臨界圧力3.5MPaである。また、二酸化炭素の臨界点は、臨界温度31.1℃、臨界圧力7.38Paである。また、水素ガス(H2)の臨界点は、臨界温度−240℃臨界圧力1.28MPaである。
従って、圧力15MPa程度,温度35℃程度とした反応室151aの内部では、水以外の物質は、超臨界状態となっている。
【0034】
ところで、反応室151a内部の温度は、例えば、容器151及び蓋155に内蔵した図示しない加熱手段により制御しても良く、また、ステージ152に内蔵した図示しない加熱手段により制御しても良い。
また、例えば、反応室151aの内部にフィンなどの攪拌手段を配置し、内部の粒界を攪拌し、また、反応室151aの内部の圧力を一定とした状態で、反応室151a内部に、新たな一酸化炭素を供給し続けることなどにより、上記化学反応の進行を促進させるようにしても良い。
【0035】
なお、上述では、反応室151aの内部圧力を15MPaとしたが、これに限るものではない。反応室151aの内部は、化学反応により生成する二酸化炭素が超臨界状態となる圧力以上となっていればよい。ただし、内部圧力を可能な限り高くすることで一酸化炭素の密度を上げれば、水との化学反応をより効率よく進行させることができる。
【0036】
上述した状態を所定時間、例えば10分間保持し、パターン101aに付着している全ての水を一酸化炭素と化学反応させ、パターン101aが超臨界状態の流体104に晒された状態とする。この後、例えば、容器151の底部に設けられた図示しない排出手段により内部流体を排出し、反応室151aの内部圧力を低下させ、超臨界状態の流体104を気化させる。この結果、図1(d)に示すように、基板101の上のパターン101aは、乾燥された状態となる。このとき、パターン101aの表面においては、液体と気体との界面が存在しないので、表面張力が働くことが無く、パターンの倒れという問題が発生しない。
【0037】
この後、容器151より蓋155を取り外し、図1(d−1)に示すように、容器151の上部が開放した状態とし、図1(d−2)に示すように、ステージ152の上で搬送アーム153に基板101が保持された状態とし、図1(d−3)に示すように、搬送アーム153を動作させて、基板101を容器151より搬出し、本実施の形態における超臨界乾燥方法を適用した一連の工程を終了する。なお、上述では、容器151において現像処理,水洗処理,超臨界乾燥処理を行うようにしたが、これに限るものではない。各処理を異なる処理装置で行うようにしてもよい。
【0038】
ところで、上述では、パターンを濡らしている水に一酸化炭素を反応させ、反応生成物として二酸化炭素を生成させ、反応物である水を化学反応により消費させることで、パターンを濡らしている水を二酸化炭素に置換するようにした。しかしながら、水を反応物として二酸化炭素を反応生成物とする化学系において、水とともに反応系を構成する物質(気体)は、一酸化炭素に限るものではない。
【0039】
例えば、フッ化カルボニル(COF2)を一酸化炭素の代わりに用いるようにしても良い。フッ化カルボニルと水との化学反応により、二酸化炭素とフッ化水素とが生成する。この化学反応は、反応式「COF2+H2O→CO2+2HF」で示されるものである。従って、上述した超臨界乾燥方法において、一酸化炭素の代わりにフッ化カルボニルを用いても、同様に超臨界乾燥が行える。
【0040】
また、フッ化カルボニル(沸点:−83℃)の他に、CF3COF(沸点:−59℃)などのフッ化カルボニル系化合物、CF3OF(沸点:−97℃),CHF2OCHF2(沸点:−107℃)などのハイポフルオライト化合物を用いるようにしても良い。これらのような、カルボニル基とフッ素や塩素などのハロゲンを含み、大気雰囲気で気体である化合物であれば、一酸化炭素の代わりとなる。大気雰囲気とは、一般的に標準大気とよばれる状態の雰囲気であり、例えば、地球上(地上)気圧1013.25hPa,地上気温15℃の状態である。
【0041】
また、FNO(沸点:−60℃)やF3NO(沸点:−85℃)などのハロゲン化窒素化合物を用いるようにしてもよい。これらも、水と反応してNO2とHFを生成することで、パターンに付着している水を除去して超臨界状態の流体に置換することができる。これらのように、本発明は、水に特定物質を反応させて超臨界状態となる物質に化学変化させることで、パターンに付着している水を除去して超臨界状態の流体に置換するようにしたものである。
ここで、上述した各化学反応の反応速度をより早くするために、触媒を用いるようにしても良く、また、光を照射するようにしても良い。
【0042】
次に、上述した超臨界乾燥方法を実施する超臨界乾燥装置について説明する。図2は、上述した超臨界乾燥方法を実施する超臨界乾燥装置の構成例を示す模式的な断面図である。
この装置は、密閉可能な高圧容器201と、高圧容器201の内部に設けられた反応室202から構成されている。
【0043】
反応室202の底面には、処理対象となる基板101が載置されるステージ212が配置されている。高圧容器201は、例えばステンレスで構成され、壁の厚さが20mm程度に形成されている。
また、高圧容器201は、容器上部201aと、底部にステージ212が固定された容器下部201bとから構成され、例えば、容器上部201aを取り外すことで、反応室202の内部を開放状態とすることが可能である。
【0044】
加えて、高圧容器201は、外壁と内壁との間にヒータ213を備え、ヒータ制御部221の制御により反応室202の内部を加熱可能としている。ヒータ213は、例えば、抵抗加熱や高周波誘導加熱による加熱手段であればよい。また、マイクロ波を用いた電磁波加熱であってもよい。この場合、例えば、ステージ212が、誘電体で構成されていればよい。電磁波加熱によれば、より短い時間で、所望の温度にまで加熱することが可能となる。また、電磁波加熱によれば、電界移動による分子間摩擦熱などにより水分子を直接加熱できるため、上述した化学反応を促進させるためには好適である。
【0045】
また、本装置は、一酸化炭素が加圧されて収容されたボンベ(特定物質供給手段)203を備えている。ボンベ203に収容されている一酸化炭素は、配管204を通り、導入口205を介して反応室202の内部に導入される。配管204の途中には、圧送ポンプ206と導入バルブ207とを備え、また、圧送ポンプ206の吐出側には、ここの圧力を測定する圧力計208を備えている。圧送ポンプ206により、ボンベ203内の一酸化炭素を反応室202の内部へ圧送することを可能としている。また、圧力計208の圧力測定結果により導入バルブ207の開度を制御することを可能としている。
【0046】
また、本装置は、反応室202の内部圧力を測定する圧力計209と、反応室202内部の流体を排出する排出口210と、排出口210の途中に設けられた圧力制御バルブ211とを備えている。圧力制御バルブ211は、圧力計209の圧力測定結果により開度を制御し、排出口210より排出する流体の量を制御する。なお、ボンベ203が、一酸化炭素の代わりに、フッ化カルボニルやCF3COFなどのフッ化カルボニル系化合物、CF3OF,CHF2OCHF2などのハイポフルオライト化合物などの、カルボニル基とフッ素や塩素などのハロゲンを含み、大気雰囲気で気体である化合物を収容するものであってもよい。また、ボンベ203は、FNOやF3NOなどのハロゲン化窒素化合物を収容するものであってもよい。
【0047】
この超臨界乾燥装置では、ボンベ203より供給された一酸化炭素は、圧送ポンプ206に圧送され、配管を通過して導入口205より反応室202に輸送される。例えば、高圧で一酸化炭素が圧送されている状態で、輸送された一酸化炭素で反応室202の内部が充填された後、圧力制御バルブ211を閉じた状態とすれば、反応室202の内部を、二酸化炭素が超臨界状態となる圧力状態とすることが可能である。また、ヒータ制御部221の制御によりヒータ213を動作させ、反応室202の内部温度を二酸化炭素の臨界点の温度もしくはこれ以上の温度状態とすることが可能である。
【0048】
また、圧力計209が測定した圧力値が二酸化炭素の臨界点の圧力を保持する範囲で、圧力制御バルブ211の開度を調整し、圧力計208が測定した圧力値が二酸化炭素の臨界点の圧力を保持する範囲で、圧送ポンプ206による圧送の圧力を調整することも可能である。このようにすることで、反応室202の内部に、常に一酸化炭素が供給される状態が得られる。
【0049】
このような条件とされた反応室202の内部において、ステージ212の上の基板101においては、これに付着している水と雰囲気の一酸化炭素とが化学反応を起こし、反応生成物として二酸化炭素と水素とを生成する。ここで、反応室202の内部は、二酸化炭素が超臨界状態となる条件とされているので、二酸化炭素は超臨界状態で生成されることになる。また、前述したように、二酸化炭素が超臨界状態となる条件においては、反応生成物である水素も超臨界状態となる。
【0050】
従って、上記化学反応により、基板101の表面を濡らしている液体の水は、超臨界状態の二酸化炭素と超臨界状態の水素、すなわち超臨界状態の流体に置き換わることになる。
このようにして、反応室202内において、基板101(パターン101a)が、超臨界状態の流体に晒されている状態とした後、導入バルブ207を閉じて一酸化炭素の供給を停止し、内部の流体を排出口210より排出することで、反応室202の内部圧力を低下させれば、超臨界状態の流体は気化し、乾燥が終了する。
【0051】
次に、本発明の超臨界乾燥方法について、より詳細に説明する。
まず、公知のフォトリソグラフィー技術により、基板の上にレジストパターンを形成する。例えば、シリコンからなる基板101の上に、紫外線レジスト(SEPR551:信越化学製)を塗布して膜厚500nm程度のレジスト膜を形成し、このレジスト膜にKrF露光により所定のパターンの潜像を形成し、加えて、熱処理を施す。露光するパターンは、例えば、パターン幅が100nm,パターン間隔が100nmである。
【0052】
次に、この基板101を、例えば、図2に示したような超臨界乾燥装置のステージ212上に固定し、反応室202の内部に現像液を導入することで、現像処理を行う。現像液は、濃度が2.38%のテトラメチルアンモニウムハイドライド水溶液である。この現像処理の後、反応室202の内部より現像液を排出した後、反応室202の内部に純水を導入し、現像により基板101の上に形成したパターンのリンス処理を行う。
【0053】
次いで、反応室202を密閉した状態とし、ステージ212の上に固定した基板101の表面の水が乾燥する前に、ボンベ203に収容されている一酸化炭素を、圧送ポンプ206により圧送し、反応室202の内部を一酸化炭素で充填された状態とする。ここでは、反応室202の内部圧力は、15MPa程度とする。また、ヒータ制御部221でヒータ213を制御して反応室202の内部温度を35℃程度とする。このことにより、反応室202の内部は、超臨界状態の一酸化炭素で充填された状態となる。
【0054】
引き続き、圧力計209により測定される圧力値が15MPa程度である状態が保持されるように、圧力制御バルブ211の開度が制御された状態で、圧送ポンプ206による一酸化炭素の供給(圧送)を、例えば10分程度継続する。このことにより、反応室202の内部では、一酸化炭素で充填された状態が保持される。この状態においては、基板101の表面に付着していた水が、超臨界状態の一酸化炭素と化学反応を起こしている。
【0055】
上述した一酸化炭素の供給を10分程度継続した後、例えば、ボンベ203を二酸化炭素を収容したボンベに交換し、反応室202の内部に、二酸化炭素が供給される状態とする。加えて、圧送ポンプ206による供給量を減少させることや、また、圧力制御バルブ211の開度を調整することで、反応室202の内部圧力を7.5MPaにまで下げ、この状態を所定時間保持する。すなわち、反応室202の内部に、超臨界状態の二酸化炭素が供給される状態体とし、これを所定時間保持する。
【0056】
この後、導入バルブ207を閉じ、また、圧送ポンプ206の圧送動作を停止する。次いで、圧力制御バルブ211を所定の開度とし、反応室202の内部流体を排出して反応室202の内部圧力を低下させる。このことにより、反応室202の内部では、超臨界状態となっている流体が気化し、基板101の上に形成されているパターンにおいては、液体と気体との界面が形成されることなく、乾燥が行われる。
【0057】
最終的に、反応室202の内部圧力が大気圧程度となった状態で、反応室202を開放して基板101を取り出すことで、超臨界乾燥が終了する。
以上説明した超臨界乾燥方法によれば、10分程度の時間内で、パターンの倒れなどがない状態で、乾燥処理を行うことが可能となる。
【0058】
次に、他の実施例について説明する。
まず、公知のリソグラフィー技術により、主表面が(110)面であるシリコンからなる基板101の上にレジストパターンを形成する。例えば、基板101の上に、電子線レジスト(ZEP−7000)を塗布して膜厚250nm程度のレジスト膜を形成し、このレジスト膜に電子線露光により所定のパターンの潜像を形成する。露光するパターンは、例えば、パターン幅が20〜100nmである。
【0059】
次に、酢酸ノルマルヘキシルによる現像処理をし、2−プロパノールによるリンス洗浄処理をして、基板101の上に電子線レジストによる所望のパターンを形成する。引き続いて、上記パターンをマスクとして水酸化カリウム水溶液で基板101をエッチングし、シリコンパターンを形成する。このウエットエッチング処理の後、基板101を水洗してエッチング反応を停止させる。
引き続いて、水で濡れている状態の基板101を、ステージ212に固定し、反応室202内を密閉する。
【0060】
次いで、ステージ212の上に固定した基板101の表面の水が乾燥する前に、ボンベ203に収容されている一酸化炭素を、圧送ポンプ206により圧送し、反応室202の内部を一酸化炭素で充填された状態とする。ここでは、反応室202の内部圧力は、20MPa程度とする。また、ヒータ制御部221でヒータ213を制御して反応室202の内部温度を35℃程度とする。このことにより、反応室202の内部は、超臨界状態の一酸化炭素で充填された状態となる。
【0061】
引き続き、圧力計209により測定される圧力値が20MPa程度である状態が保持されるように、圧力制御バルブ211の開度が制御された状態で、圧送ポンプ206による一酸化炭素の供給(圧送)を、例えば10分程度継続する。この一酸化炭素の供給量は、20ml/minとする。このことにより、反応室202の内部では、一酸化炭素で充填された状態が保持される。この状態においては、基板101の表面に付着していた水が、超臨界状態の一酸化炭素と化学反応を起こしている。
【0062】
上述した一酸化炭素の供給を10分程度継続した後、例えば、圧送ポンプ206による供給量を減少させることや、また、圧力制御バルブ211の開度を調整することで、反応室202の内部圧力を7.5MPaにまで下げ、この状態を所定時間保持する。この後、導入バルブ207を閉じ、また、圧送ポンプ206の圧送動作を停止する。
【0063】
次いで、圧力制御バルブ211を所定の開度とし、反応室202の内部流体を排出して反応室202の内部圧力を低下させる。このことにより、反応室202の内部では、超臨界状態となっている二酸化炭素や水素及び一酸化炭素が気化し、基板101の上に形成されているパターンにおいては、液体と気体との界面が形成されることなく、乾燥が行われる。
【0064】
最終的に、反応室202の内部圧力が大気圧程度となった状態で、反応室202を開放して基板101を取り出すことで、超臨界乾燥が終了する。
以上説明した超臨界乾燥方法によれば、10分程度の時間内で、パターンの倒れなどがない状態で、乾燥処理を行うことが可能となる。
【0065】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、二酸化炭素が超臨界状態となる条件の下で、パターンの表面に付着している水と、例えば一酸化炭素などの特定物質を化学反応させて二酸化炭素などの大気圧下では気体である物質を超臨界状態で生成させてパターンの表面に付着している水を除去するようにした。従って、パターンに付着してパターンを濡らしていた水は、化学反応により消費されて無くなり、超臨界状態の二酸化炭素などの超臨界流体にパターンが晒された状態となる。このように、本発明によれば、水を用いた処理の後であっても、容易に超臨界乾燥が行えるようになるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態における超臨界乾燥方法を説明するための工程を示す模式的な断面図である。
【図2】本発明の実施の形態における超臨界乾燥装置の構成例を示す模式的な断面図である。
【図3】パターン倒れを示す模式的な断面図である。
【図4】従来よりある超臨界乾燥装置の構成を概略的に示す模式的な断面図である。
【図5】従来よりある超臨界乾燥方法を説明するための工程を示す模式的な断面図である。
【符号の説明】
101…基板、101a…パターン、102…水、103…一酸化炭素(特定物質)、104…超臨界状態の流体、151…容器、152…ステージ、153…搬送アーム、154…液吐出部、155…蓋。
【発明の属する技術分野】
本発明は、水やアルコールなどの液体による処理をした後の乾燥における液体の表面張力による微細なパターンの倒れを抑制する超臨界乾燥方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
よく知られているように、LSIを始めとする大規模・高性能デバイスを作製するためには、極微細パターンが必要となる。この極微細パターンは、例えば、露光,現像,リンス処理を経て形成される、光やX線または電子線に感光性を有するレジストのパターンである。また、これらレジストパターンをマスクとした選択エッチングによる、エッチング,水洗,リンス処理を経て形成される酸化物などの無機材料からなるエッチングパターンである。
【0003】
前述したレジストパターンは、有機材料である感光性レジストの膜をリソグラフィー技術で加工することにより形成できる。感光性レジストの膜に露光を行うと、露光された領域の分子量や分子構造が変化し、未露光の領域との間に現像液に対する溶解性に差が発生するので、この差を利用した現像処理により感光性レジストの膜より微細なパターンが形成できる。
【0004】
上述した現像処理では、現像を続けていけば、やがて未露光の領域も現像液に溶解し始めてパターンが消滅してしまうので、リンス液によるリンス処理を行って現像を停止している。最終的に、乾燥してリンス液を除去することで、加工マスクとしてのレジストパターンがレジスト膜に形成できる。
このような微細パターン形成における乾燥時の大きな問題点として、図3(a)〜図3(c)の工程図に示すようなパターンの倒れがある。
【0005】
アスペクト比の大きい微細なレジストのパターンは、現像を施した後でリンス洗浄,乾燥を経て形成される。レジスト以外でもアスペクト比の大きな微細パターンは形成される。例えば、レジストパターンをマスクに基板をエッチングし、高アスペクト比の基板パターンを形成する場合、エッチングの後で洗浄し、図3(a)に示すように、基板301と共に基板パターン302を水303に浸漬してリンス洗浄する。この後、乾燥が行われることになる。
【0006】
ところが、図3(b)に示すように、乾燥時には、基板パターン302の間に残った水303と、外部の空気304との圧力差により、曲げ力(毛細管力)305が働く。この結果、図3(c)に示すように、基板301上で基板パターン302のパターン倒れが発生する。この倒れる現象は、パターンが高アスペクト比になるほど顕著になる。上記毛細管力は、水などのリンス液とパターンとの間での液体と気体との界面で生じる表面張力に依存することが報告されている(非特許文献1参照)。
【0007】
水の表面張力は約72×10−3N/mと大きく、上述した毛細管力は、有機材料からなるレジストパターンを倒すだけでなく、無機材料であるシリコンなどのより丈夫なパターンをも歪める力を有している。このため、上述したリンス液や洗浄液などによる表面張力の問題は、重要となっている。表面張力は、液体と気体との界面が形成された状態で発生する。従って、乾燥すなわち液体を除去する段階で、液体と気体との界面を形成する状態が発生しないようにすれば、上述した問題を解消することが可能となる。
【0008】
ここで、液体に触れている状態から超臨界流体に触れている状態とし、この超臨界流体を気化させることで乾燥を行えば、液体と気体との界面を形成することなく、液体を除去すること、すなわち乾燥することが可能となる。この場合、超臨界流体と気体との界面が形成されるが、超臨界流体には表面張力が全く作用しない。このような特徴を利用し、超臨界状態の流体による乾燥によりパターン倒れなどの問題を解消する技術が提案されている(特許文献1,2,3参照)。
【0009】
超臨界状態の流体(超臨界流体)は、臨界温度及び臨界圧力を超えた温度及び圧力下の物質であり、液体に近い溶解力を持つが、張力や粘度は気体に近い性質を示すもので、気体の状態を保った液体といえる。このような特徴を有する超臨界流体は、液体と気体との界面を形成しないため、表面張力はゼロになる。従って、超臨界状態で乾燥すれば、表面張力の概念はなくなるため、パターン倒れはなくなることになる。
【0010】
超臨界流体は、気体の拡散性と液体の溶解性(高密度性)を兼ね備えたもので、液体から気体へ平衡線を介さずに状態変化できる。このため、超臨界流体で満たされた状態から徐々にこの超臨界流体を放出すると、液体と気体との界面が形成されないことから、乾燥対象の超微細パターンに表面張力を作用させずに乾燥させることができる。
【0011】
超臨界流体としては、多くの場合、臨界点が低く取り扱いの容易な二酸化炭素が使われている。超臨界流体を用いた超臨界乾燥では、洗浄液による洗浄処理などをした後、基板表面に付着している洗浄液を、密閉された容器内において液化二酸化炭素に置換することで開始される。二酸化炭素は、6MPa程度に加圧すれば常温で液化するため、上記置換は、容器内の圧力を6MPa程度に圧力上昇させた状態で行う。基板に付着していた洗浄液が液化二酸化炭素に置換された後、容器内を二酸化炭素の臨界点以上の温度と圧力(二酸化炭素の臨界点;31度、7.3MPa)にして液化二酸化炭素を超臨界二酸化炭素に変換する。
【0012】
最後に、上記温度を保持したまま、容器の一部を開放して超臨界二酸化炭素を外部に放出し、容器内を大気圧にまで減圧し、容器内の超臨界二酸化炭素を気化させることで乾燥を終了する。この減圧時には、二酸化炭素は液化せずに気化するため、表面張力が作用する液体と気体との界面は基板の上に形成されない。このため、基板の上に形成されている超微細パターンに倒れを発生させることなく、これらを乾燥させることができる。
【0013】
上記の超臨界乾燥のための装置としては、例えば図4に示すように、密閉可能な容器401内の反応室402に、ボンベ403に封入してある液化二酸化炭素を圧送ポンプ404により圧送する装置がある。この装置では、液化二酸化炭素導入側のバルブ405を開けることで、容器401内に液化二酸化炭素を導入し、バルブ405に連通している導入口406先端より液化二酸化炭素を吐出し、反応室402内のステージ412の上に載置されている基板411の上に液化二酸化炭素を注入する。
【0014】
このとき、例えば、ボンベ403内の液化二酸化炭素を圧送ポンプ404により反応室402内に圧送し、この状態で排出側のバルブ407の開度を調節し、排出口409より排出される液化二酸化炭素の量を制限することで、反応室402内の圧力を制御している。排出側のバルブ407に、例えば自動圧力弁などを用いれば、上記圧力制御が可能となる。
【0015】
上述したように、液化二酸化炭素を導入口406により基板の上に注入している状態で、ヒータ413により容器401を例えば31℃程度に加温し、反応室402内の圧力を7.5MPa以上とすれば、反応室402内の基板411上に注入された液化二酸化炭素が超臨界状態となる。反応室402内の圧力は、例えば、圧送ポンプ404による圧送量を増加し、また、バルブ407を調節して反応室402から排出される液化二酸化炭素の量を減ずることで、上昇させることができる。
この後、バルブ405を閉じてバルブ407を開放し、反応室402内の圧力を低下させ、反応室402内に注入された超臨界状態の二酸化炭素を気化させれば、超臨界乾燥が終了する。
【0016】
【特許文献1】
特公平1−220828号公報
【特許文献2】
特開平8−197021号公報
【特許文献3】
特公平1−170026号公報
【非特許文献1】
アプライド・フィジクス・レターズ、66巻、2655−2657頁、1995年
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、フォトリソグラフィー技術によるパターン形成のプロセスでは、一般に、最後に基板を水洗してから乾燥させる場合が多い。しかしながら、液化二酸化炭素に対して、水がほとんど溶解しないため、比較的二酸化炭素と混和しやすいエタノールで水を置換してから超臨界乾燥を行うようにしていた。しかし、混和しやすいといってもエタノールなどのアルコールと二酸化炭素との溶解性は十分ではないため、置換に時間がかかるという問題があった。また、レジストによっては、アルコールに溶解するものがあるため、水洗の後でアルコールが使えない場合もある。
【0018】
前述したように、水と液化二酸化炭素とはあまり混和しないため、パターンを濡らしている水を液化二酸化炭素に置換するのは容易ではない。特に、微細なパターンの間に水が残っている状態では、これを液化二酸化炭素で完全に置換することが非常に困難である。
例えば、超臨界乾燥では、図5(a)に示すように、基板501上のパターン502が水503に浸漬している状態に、図5(b)に示すように、液化二酸化炭素504を追加する。この追加により、図5(c)に示すように、基板501の表面を濡らしていた水503をある程度除去することは可能である。しかしながら、水と液化二酸化炭素とが混和しにくいため、パターン502の微細な隙間には水503が残りやすい。
【0019】
この状態で液化二酸化炭素504を超臨界状態にしても、図5(d)に示すように、パターン502の間には液体である水503が残り、結果として、図5(e)に示すように、パターン502の倒れが発生する。
この問題を解消する方法として、界面活性剤を利用して水と液化二酸化炭素とをより混和しやすい状態とし、超臨界乾燥を行う技術が提案されている(特開2001−165568号公報,特開2001−319917号公報)。
【0020】
しかしながら、有機高分子レジストには、界面活性剤が溶解している水に乳化もしくは分散し、パターンの形状が維持できないものがある。このようなレジストを用いてパターンを形成する場合、洗浄などに用いる水には界面活性剤を用いることができない。
これらのように、洗浄に水のみしか用いることができない場合、前述したように、二酸化炭素を用いた従来の超臨界乾燥方法では、パターン倒れなどの問題が完全に解消できない状態であった。
【0021】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、水を用いた処理の後、二酸化炭素などによる超臨界乾燥を行えるようにすることを目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る超臨界乾燥方法は、水による処理がされた基板を密閉された容器内に収容し、容器内に特定物質を導入して容器内を所定の圧力及び所定の温度とし、パターンの表面に付着している水と特定物質を化学反応させて二酸化炭素を生成させてパターンの表面に付着している水を除去するようにしたものである。なお、特定物質は、大気雰囲気では気体であり、圧力及び温度は、二酸化炭素が超臨界状態となる条件である。
この超臨界乾燥方法によれば、基板の上に形成されていてる微細なパターンに付着している水が、気体と液体の界面における表面張力をパターンに作用させることなく除去される。
【0023】
上記超臨界乾燥方法において、特定物質は、一酸化炭素であればよく、この場合、化学反応は、水と一酸化炭素が反応して二酸化炭素と水素が反応生成物として生成する反応である。また、特定物質は、カルボニル基とハロゲンとを含む化合物であっても良く、この場合、化学反応は、二酸化炭素及び水素とハロゲンとの化合物が反応生成物として生成する反応である。
【0024】
また、本発明に係る超臨界乾燥方法は、所定のパターンが形成された基板のパターンの形成面を水に晒して水による処理を行う第1工程と、この第1工程の後、基板を密閉された容器内に収容し、容器内に特定物質を導入して容器内を所定の圧力及び所定の温度とし、パターンの表面に付着している水と特定物質を化学反応させてパターンの表面に付着している水を除去する第2工程とを少なくとも備え、特定物質は、大気雰囲気では気体であり、圧力及び温度は、化学反応による反応生成物が超臨界状態となる条件である。
【0025】
本発明に係る超臨界乾燥装置は、処理対象となる基板が内部に載置されて密閉可能な反応室と、反応室の内部に特定物質を供給する特定物質供給手段と、特定物質が供給された反応室の内部を、水と特定物質とが化学反応して二酸化炭素を生成してかつ二酸化炭素が超臨界状態となる圧力に制御する圧力制御手段と、特定物質が供給された反応室の内部を、水と特定物質とが化学反応して二酸化炭素を生成してかつ二酸化炭素が超臨界状態となる温度に制御する温度制御手段と、反応室の内部の流体を排出する排出口とを少なくとも備えたものである。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
始めに、本発明の実施の形態における超臨界乾燥方法の一例を説明する。本実施の形態の超臨界乾燥方法では、水に一酸化炭素を反応させてこれらを二酸化炭素と水素とに化学変化させることで、パターンに付着している水を超臨界状態になりやすい二酸化炭素などに置換するようにした。
【0027】
まず、図1(a−1)の平面図に示すように、上部が開放されている容器151の外部において、搬送機構の搬送アーム153に処理対象の基板101を載置し、次いで、図1(a−2)の平面図に示すように、搬送アーム153とともに基板101をステージ152の上部に移動する。例えば、基板101の上には、感光性レジストの薄膜が形成され、また、このレジスト薄膜には、所定のパターンの潜像が形成されている。
【0028】
次いで、ステージ152上に基板101を載置し、搬送アーム153を容器151の外部に退出させた後、図1(a−3)の平面図に示すように、液吐出部154をステージ152の上部に侵入させ、基板101の上に現像液,水など所定の液を供給して所定の液処理を行う。以上の薬液処理により、図1(a)の模式的な断面図に示すように、基板101の表面は、形成されたパターン101aを含めて、水102で濡れた状態となる。
【0029】
これら薬液処理を行った後、図1(b−1)の平面図に示すように、液突出部154を容器151の上部より退避させ、容器151の上に蓋155をし、基板101が載置されたステージ152の領域が、密閉された状態とする。図1(b−2)の断面図に示すように、容器151を蓋155により密閉することにより、密閉空間である反応室151aが形成され、反応室151aの内部に、ステージ152が配置され、この上に水に濡れた基板101が載置された状態となる。
【0030】
次いで、図示しない圧送手段により、反応室151a内に一酸化炭素を導入し、反応室151a内が一酸化炭素で充填された状態とする。このことにより、図1(b)に示すように、基板101,パターン101aを濡らす水102が、一酸化炭素(特定物質)103で覆われた状態となる。一酸化炭素には、レジストが溶解することがなく、パターン101aが溶解することはない。
引き続き、一酸化炭素を反応室151a内に圧送し、反応室151aの内部を例えば15MPa程度の圧力とし、また、反応室151aの内部を35℃程度にし、水と一酸化炭素とを反応させて二酸化炭素を生成させる。
【0031】
一酸化炭素と水との化学反応により、二酸化炭素と水素とが生成する。この化学反応は、反応式「CO+H2O←→CO2+H2」で示される平衡反応であり、平衡定数Kp([CO][H2O]/[CO2][H2])は、300Kで1×10−5である。従って、20〜40℃程度の温度においては、上記反応式で示される化学反応は、式の右に進む。ただし、温度が1000℃以上では、逆である。従って、上述した温度及び圧力の条件においては、上記反応式で示される化学反応は、式の右に進み、導入している一酸化炭素と水とが反応し、二酸化炭素と水素とが生成される。
【0032】
基板101,パターン101aを濡らす全ての水を一酸化炭素と反応させて、二酸化炭素と水とにすることで、パターン101aの表面より水が除去されることになる。また、この化学反応を進行させている反応室151aの内部は、生成する二酸化炭素が超臨界状態となる条件である。従って、全ての水が上記反応を起こした後は、図1(c)に示すように、基板101の上において、パターン101aが二酸化炭素を含む超臨界状態の流体104に浸漬した状態となる。なお、超臨界状態は、亜臨界状態も含む。
【0033】
ここで、一酸化炭素の臨界点は、臨界温度−139℃、臨界圧力3.5MPaである。また、二酸化炭素の臨界点は、臨界温度31.1℃、臨界圧力7.38Paである。また、水素ガス(H2)の臨界点は、臨界温度−240℃臨界圧力1.28MPaである。
従って、圧力15MPa程度,温度35℃程度とした反応室151aの内部では、水以外の物質は、超臨界状態となっている。
【0034】
ところで、反応室151a内部の温度は、例えば、容器151及び蓋155に内蔵した図示しない加熱手段により制御しても良く、また、ステージ152に内蔵した図示しない加熱手段により制御しても良い。
また、例えば、反応室151aの内部にフィンなどの攪拌手段を配置し、内部の粒界を攪拌し、また、反応室151aの内部の圧力を一定とした状態で、反応室151a内部に、新たな一酸化炭素を供給し続けることなどにより、上記化学反応の進行を促進させるようにしても良い。
【0035】
なお、上述では、反応室151aの内部圧力を15MPaとしたが、これに限るものではない。反応室151aの内部は、化学反応により生成する二酸化炭素が超臨界状態となる圧力以上となっていればよい。ただし、内部圧力を可能な限り高くすることで一酸化炭素の密度を上げれば、水との化学反応をより効率よく進行させることができる。
【0036】
上述した状態を所定時間、例えば10分間保持し、パターン101aに付着している全ての水を一酸化炭素と化学反応させ、パターン101aが超臨界状態の流体104に晒された状態とする。この後、例えば、容器151の底部に設けられた図示しない排出手段により内部流体を排出し、反応室151aの内部圧力を低下させ、超臨界状態の流体104を気化させる。この結果、図1(d)に示すように、基板101の上のパターン101aは、乾燥された状態となる。このとき、パターン101aの表面においては、液体と気体との界面が存在しないので、表面張力が働くことが無く、パターンの倒れという問題が発生しない。
【0037】
この後、容器151より蓋155を取り外し、図1(d−1)に示すように、容器151の上部が開放した状態とし、図1(d−2)に示すように、ステージ152の上で搬送アーム153に基板101が保持された状態とし、図1(d−3)に示すように、搬送アーム153を動作させて、基板101を容器151より搬出し、本実施の形態における超臨界乾燥方法を適用した一連の工程を終了する。なお、上述では、容器151において現像処理,水洗処理,超臨界乾燥処理を行うようにしたが、これに限るものではない。各処理を異なる処理装置で行うようにしてもよい。
【0038】
ところで、上述では、パターンを濡らしている水に一酸化炭素を反応させ、反応生成物として二酸化炭素を生成させ、反応物である水を化学反応により消費させることで、パターンを濡らしている水を二酸化炭素に置換するようにした。しかしながら、水を反応物として二酸化炭素を反応生成物とする化学系において、水とともに反応系を構成する物質(気体)は、一酸化炭素に限るものではない。
【0039】
例えば、フッ化カルボニル(COF2)を一酸化炭素の代わりに用いるようにしても良い。フッ化カルボニルと水との化学反応により、二酸化炭素とフッ化水素とが生成する。この化学反応は、反応式「COF2+H2O→CO2+2HF」で示されるものである。従って、上述した超臨界乾燥方法において、一酸化炭素の代わりにフッ化カルボニルを用いても、同様に超臨界乾燥が行える。
【0040】
また、フッ化カルボニル(沸点:−83℃)の他に、CF3COF(沸点:−59℃)などのフッ化カルボニル系化合物、CF3OF(沸点:−97℃),CHF2OCHF2(沸点:−107℃)などのハイポフルオライト化合物を用いるようにしても良い。これらのような、カルボニル基とフッ素や塩素などのハロゲンを含み、大気雰囲気で気体である化合物であれば、一酸化炭素の代わりとなる。大気雰囲気とは、一般的に標準大気とよばれる状態の雰囲気であり、例えば、地球上(地上)気圧1013.25hPa,地上気温15℃の状態である。
【0041】
また、FNO(沸点:−60℃)やF3NO(沸点:−85℃)などのハロゲン化窒素化合物を用いるようにしてもよい。これらも、水と反応してNO2とHFを生成することで、パターンに付着している水を除去して超臨界状態の流体に置換することができる。これらのように、本発明は、水に特定物質を反応させて超臨界状態となる物質に化学変化させることで、パターンに付着している水を除去して超臨界状態の流体に置換するようにしたものである。
ここで、上述した各化学反応の反応速度をより早くするために、触媒を用いるようにしても良く、また、光を照射するようにしても良い。
【0042】
次に、上述した超臨界乾燥方法を実施する超臨界乾燥装置について説明する。図2は、上述した超臨界乾燥方法を実施する超臨界乾燥装置の構成例を示す模式的な断面図である。
この装置は、密閉可能な高圧容器201と、高圧容器201の内部に設けられた反応室202から構成されている。
【0043】
反応室202の底面には、処理対象となる基板101が載置されるステージ212が配置されている。高圧容器201は、例えばステンレスで構成され、壁の厚さが20mm程度に形成されている。
また、高圧容器201は、容器上部201aと、底部にステージ212が固定された容器下部201bとから構成され、例えば、容器上部201aを取り外すことで、反応室202の内部を開放状態とすることが可能である。
【0044】
加えて、高圧容器201は、外壁と内壁との間にヒータ213を備え、ヒータ制御部221の制御により反応室202の内部を加熱可能としている。ヒータ213は、例えば、抵抗加熱や高周波誘導加熱による加熱手段であればよい。また、マイクロ波を用いた電磁波加熱であってもよい。この場合、例えば、ステージ212が、誘電体で構成されていればよい。電磁波加熱によれば、より短い時間で、所望の温度にまで加熱することが可能となる。また、電磁波加熱によれば、電界移動による分子間摩擦熱などにより水分子を直接加熱できるため、上述した化学反応を促進させるためには好適である。
【0045】
また、本装置は、一酸化炭素が加圧されて収容されたボンベ(特定物質供給手段)203を備えている。ボンベ203に収容されている一酸化炭素は、配管204を通り、導入口205を介して反応室202の内部に導入される。配管204の途中には、圧送ポンプ206と導入バルブ207とを備え、また、圧送ポンプ206の吐出側には、ここの圧力を測定する圧力計208を備えている。圧送ポンプ206により、ボンベ203内の一酸化炭素を反応室202の内部へ圧送することを可能としている。また、圧力計208の圧力測定結果により導入バルブ207の開度を制御することを可能としている。
【0046】
また、本装置は、反応室202の内部圧力を測定する圧力計209と、反応室202内部の流体を排出する排出口210と、排出口210の途中に設けられた圧力制御バルブ211とを備えている。圧力制御バルブ211は、圧力計209の圧力測定結果により開度を制御し、排出口210より排出する流体の量を制御する。なお、ボンベ203が、一酸化炭素の代わりに、フッ化カルボニルやCF3COFなどのフッ化カルボニル系化合物、CF3OF,CHF2OCHF2などのハイポフルオライト化合物などの、カルボニル基とフッ素や塩素などのハロゲンを含み、大気雰囲気で気体である化合物を収容するものであってもよい。また、ボンベ203は、FNOやF3NOなどのハロゲン化窒素化合物を収容するものであってもよい。
【0047】
この超臨界乾燥装置では、ボンベ203より供給された一酸化炭素は、圧送ポンプ206に圧送され、配管を通過して導入口205より反応室202に輸送される。例えば、高圧で一酸化炭素が圧送されている状態で、輸送された一酸化炭素で反応室202の内部が充填された後、圧力制御バルブ211を閉じた状態とすれば、反応室202の内部を、二酸化炭素が超臨界状態となる圧力状態とすることが可能である。また、ヒータ制御部221の制御によりヒータ213を動作させ、反応室202の内部温度を二酸化炭素の臨界点の温度もしくはこれ以上の温度状態とすることが可能である。
【0048】
また、圧力計209が測定した圧力値が二酸化炭素の臨界点の圧力を保持する範囲で、圧力制御バルブ211の開度を調整し、圧力計208が測定した圧力値が二酸化炭素の臨界点の圧力を保持する範囲で、圧送ポンプ206による圧送の圧力を調整することも可能である。このようにすることで、反応室202の内部に、常に一酸化炭素が供給される状態が得られる。
【0049】
このような条件とされた反応室202の内部において、ステージ212の上の基板101においては、これに付着している水と雰囲気の一酸化炭素とが化学反応を起こし、反応生成物として二酸化炭素と水素とを生成する。ここで、反応室202の内部は、二酸化炭素が超臨界状態となる条件とされているので、二酸化炭素は超臨界状態で生成されることになる。また、前述したように、二酸化炭素が超臨界状態となる条件においては、反応生成物である水素も超臨界状態となる。
【0050】
従って、上記化学反応により、基板101の表面を濡らしている液体の水は、超臨界状態の二酸化炭素と超臨界状態の水素、すなわち超臨界状態の流体に置き換わることになる。
このようにして、反応室202内において、基板101(パターン101a)が、超臨界状態の流体に晒されている状態とした後、導入バルブ207を閉じて一酸化炭素の供給を停止し、内部の流体を排出口210より排出することで、反応室202の内部圧力を低下させれば、超臨界状態の流体は気化し、乾燥が終了する。
【0051】
次に、本発明の超臨界乾燥方法について、より詳細に説明する。
まず、公知のフォトリソグラフィー技術により、基板の上にレジストパターンを形成する。例えば、シリコンからなる基板101の上に、紫外線レジスト(SEPR551:信越化学製)を塗布して膜厚500nm程度のレジスト膜を形成し、このレジスト膜にKrF露光により所定のパターンの潜像を形成し、加えて、熱処理を施す。露光するパターンは、例えば、パターン幅が100nm,パターン間隔が100nmである。
【0052】
次に、この基板101を、例えば、図2に示したような超臨界乾燥装置のステージ212上に固定し、反応室202の内部に現像液を導入することで、現像処理を行う。現像液は、濃度が2.38%のテトラメチルアンモニウムハイドライド水溶液である。この現像処理の後、反応室202の内部より現像液を排出した後、反応室202の内部に純水を導入し、現像により基板101の上に形成したパターンのリンス処理を行う。
【0053】
次いで、反応室202を密閉した状態とし、ステージ212の上に固定した基板101の表面の水が乾燥する前に、ボンベ203に収容されている一酸化炭素を、圧送ポンプ206により圧送し、反応室202の内部を一酸化炭素で充填された状態とする。ここでは、反応室202の内部圧力は、15MPa程度とする。また、ヒータ制御部221でヒータ213を制御して反応室202の内部温度を35℃程度とする。このことにより、反応室202の内部は、超臨界状態の一酸化炭素で充填された状態となる。
【0054】
引き続き、圧力計209により測定される圧力値が15MPa程度である状態が保持されるように、圧力制御バルブ211の開度が制御された状態で、圧送ポンプ206による一酸化炭素の供給(圧送)を、例えば10分程度継続する。このことにより、反応室202の内部では、一酸化炭素で充填された状態が保持される。この状態においては、基板101の表面に付着していた水が、超臨界状態の一酸化炭素と化学反応を起こしている。
【0055】
上述した一酸化炭素の供給を10分程度継続した後、例えば、ボンベ203を二酸化炭素を収容したボンベに交換し、反応室202の内部に、二酸化炭素が供給される状態とする。加えて、圧送ポンプ206による供給量を減少させることや、また、圧力制御バルブ211の開度を調整することで、反応室202の内部圧力を7.5MPaにまで下げ、この状態を所定時間保持する。すなわち、反応室202の内部に、超臨界状態の二酸化炭素が供給される状態体とし、これを所定時間保持する。
【0056】
この後、導入バルブ207を閉じ、また、圧送ポンプ206の圧送動作を停止する。次いで、圧力制御バルブ211を所定の開度とし、反応室202の内部流体を排出して反応室202の内部圧力を低下させる。このことにより、反応室202の内部では、超臨界状態となっている流体が気化し、基板101の上に形成されているパターンにおいては、液体と気体との界面が形成されることなく、乾燥が行われる。
【0057】
最終的に、反応室202の内部圧力が大気圧程度となった状態で、反応室202を開放して基板101を取り出すことで、超臨界乾燥が終了する。
以上説明した超臨界乾燥方法によれば、10分程度の時間内で、パターンの倒れなどがない状態で、乾燥処理を行うことが可能となる。
【0058】
次に、他の実施例について説明する。
まず、公知のリソグラフィー技術により、主表面が(110)面であるシリコンからなる基板101の上にレジストパターンを形成する。例えば、基板101の上に、電子線レジスト(ZEP−7000)を塗布して膜厚250nm程度のレジスト膜を形成し、このレジスト膜に電子線露光により所定のパターンの潜像を形成する。露光するパターンは、例えば、パターン幅が20〜100nmである。
【0059】
次に、酢酸ノルマルヘキシルによる現像処理をし、2−プロパノールによるリンス洗浄処理をして、基板101の上に電子線レジストによる所望のパターンを形成する。引き続いて、上記パターンをマスクとして水酸化カリウム水溶液で基板101をエッチングし、シリコンパターンを形成する。このウエットエッチング処理の後、基板101を水洗してエッチング反応を停止させる。
引き続いて、水で濡れている状態の基板101を、ステージ212に固定し、反応室202内を密閉する。
【0060】
次いで、ステージ212の上に固定した基板101の表面の水が乾燥する前に、ボンベ203に収容されている一酸化炭素を、圧送ポンプ206により圧送し、反応室202の内部を一酸化炭素で充填された状態とする。ここでは、反応室202の内部圧力は、20MPa程度とする。また、ヒータ制御部221でヒータ213を制御して反応室202の内部温度を35℃程度とする。このことにより、反応室202の内部は、超臨界状態の一酸化炭素で充填された状態となる。
【0061】
引き続き、圧力計209により測定される圧力値が20MPa程度である状態が保持されるように、圧力制御バルブ211の開度が制御された状態で、圧送ポンプ206による一酸化炭素の供給(圧送)を、例えば10分程度継続する。この一酸化炭素の供給量は、20ml/minとする。このことにより、反応室202の内部では、一酸化炭素で充填された状態が保持される。この状態においては、基板101の表面に付着していた水が、超臨界状態の一酸化炭素と化学反応を起こしている。
【0062】
上述した一酸化炭素の供給を10分程度継続した後、例えば、圧送ポンプ206による供給量を減少させることや、また、圧力制御バルブ211の開度を調整することで、反応室202の内部圧力を7.5MPaにまで下げ、この状態を所定時間保持する。この後、導入バルブ207を閉じ、また、圧送ポンプ206の圧送動作を停止する。
【0063】
次いで、圧力制御バルブ211を所定の開度とし、反応室202の内部流体を排出して反応室202の内部圧力を低下させる。このことにより、反応室202の内部では、超臨界状態となっている二酸化炭素や水素及び一酸化炭素が気化し、基板101の上に形成されているパターンにおいては、液体と気体との界面が形成されることなく、乾燥が行われる。
【0064】
最終的に、反応室202の内部圧力が大気圧程度となった状態で、反応室202を開放して基板101を取り出すことで、超臨界乾燥が終了する。
以上説明した超臨界乾燥方法によれば、10分程度の時間内で、パターンの倒れなどがない状態で、乾燥処理を行うことが可能となる。
【0065】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、二酸化炭素が超臨界状態となる条件の下で、パターンの表面に付着している水と、例えば一酸化炭素などの特定物質を化学反応させて二酸化炭素などの大気圧下では気体である物質を超臨界状態で生成させてパターンの表面に付着している水を除去するようにした。従って、パターンに付着してパターンを濡らしていた水は、化学反応により消費されて無くなり、超臨界状態の二酸化炭素などの超臨界流体にパターンが晒された状態となる。このように、本発明によれば、水を用いた処理の後であっても、容易に超臨界乾燥が行えるようになるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態における超臨界乾燥方法を説明するための工程を示す模式的な断面図である。
【図2】本発明の実施の形態における超臨界乾燥装置の構成例を示す模式的な断面図である。
【図3】パターン倒れを示す模式的な断面図である。
【図4】従来よりある超臨界乾燥装置の構成を概略的に示す模式的な断面図である。
【図5】従来よりある超臨界乾燥方法を説明するための工程を示す模式的な断面図である。
【符号の説明】
101…基板、101a…パターン、102…水、103…一酸化炭素(特定物質)、104…超臨界状態の流体、151…容器、152…ステージ、153…搬送アーム、154…液吐出部、155…蓋。
Claims (5)
- 所定のパターンが形成された基板の前記パターンの形成面を水に晒して前記水による処理を行う第1工程と、
この第1工程の後、前記基板を密閉された容器内に収容し、前記容器内に特定物質を導入して前記容器内を所定の圧力及び所定の温度とし、前記パターンの表面に付着している水と前記特定物質を化学反応させて二酸化炭素を生成させて前記パターンの表面に付着している水を除去する第2工程と
を少なくとも備え、
前記特定物質は、大気雰囲気では気体であり、
前記圧力及び温度は、二酸化炭素が超臨界状態となる条件である
ことを特徴とする超臨界乾燥方法。 - 請求項1記載の超臨界乾燥方法において、
前記特定物質は、一酸化炭素であり、
前記化学反応は、水と一酸化炭素が反応して二酸化炭素と水素が反応生成物として生成する反応である
ことを特徴とする超臨界乾燥方法。 - 請求項1記載の超臨界乾燥方法において、
前記特定物質は、カルボニル基とハロゲンとを含む化合物であり、
前記化学反応は、二酸化炭素及び水素と前記ハロゲンとの化合物が反応生成物として生成する反応である
ことを特徴とする超臨界乾燥方法。 - 所定のパターンが形成された基板の前記パターンの形成面を水に晒して前記水による処理を行う第1工程と、
この第1工程の後、前記基板を密閉された容器内に収容し、前記容器内に特定物質を導入して前記容器内を所定の圧力及び所定の温度とし、前記パターンの表面に付着している水と前記特定物質を化学反応させて前記パターンの表面に付着している水を除去する第2工程と
を少なくとも備え、
前記特定物質は、大気雰囲気では気体であり、
前記圧力及び温度は、前記化学反応による反応生成物が超臨界状態となる条件である
ことを特徴とする超臨界乾燥方法。 - 処理対象となる基板が内部に載置されて密閉可能な反応室と、
前記反応室の内部に特定物質を供給する特定物質供給手段と、
前記特定物質が供給された前記反応室の内部を、水と前記特定物質とが化学反応して二酸化炭素を生成してかつ二酸化炭素が超臨界状態となる圧力に制御する圧力制御手段と、
前記特定物質が供給された前記反応室の内部を、水と前記特定物質とが化学反応して二酸化炭素を生成してかつ二酸化炭素が超臨界状態となる温度に制御する温度制御手段と、
前記反応室の内部の流体を排出する排出口と
を少なくとも備えたことを特徴とする超臨界乾燥装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003161932A JP2004363440A (ja) | 2003-06-06 | 2003-06-06 | 超臨界乾燥方法及び装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2003161932A JP2004363440A (ja) | 2003-06-06 | 2003-06-06 | 超臨界乾燥方法及び装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2004363440A true JP2004363440A (ja) | 2004-12-24 |
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JP2003161932A Pending JP2004363440A (ja) | 2003-06-06 | 2003-06-06 | 超臨界乾燥方法及び装置 |
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JP (1) | JP2004363440A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2008074352A1 (en) * | 2006-12-21 | 2008-06-26 | Max-Planck-Gesellschaft Zur Förderung Der Wissenschaften | A method of filling a component with an anhydrous material and a component made by the method |
US7637272B2 (en) | 2005-05-26 | 2009-12-29 | Semes Co., Ltd. | Method and apparatus for cleaning and drying substrates |
KR101373730B1 (ko) * | 2011-07-29 | 2014-03-14 | 세메스 주식회사 | 기판처리장치 및 기판처리방법 |
-
2003
- 2003-06-06 JP JP2003161932A patent/JP2004363440A/ja active Pending
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WO2008074352A1 (en) * | 2006-12-21 | 2008-06-26 | Max-Planck-Gesellschaft Zur Förderung Der Wissenschaften | A method of filling a component with an anhydrous material and a component made by the method |
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