JP2004363265A - 化合物半導体積層構造及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】結晶性が良好で、表面形状の良好な臨界膜厚以上のInP層をGaAs基板上に備えた化合物半導体積層構造を提供する。
【解決手段】本化合物半導体積層構造30は、GaAs基板32上に、P組成が一様な膜厚60nmのGaAs0.95P0.05層34を介して、膜厚1μmのInP層36を備えている。本化合物半導体積層構造30は、本実施形態例では、臨界膜厚に対する比率が0.35の膜厚を有するGaAs0.95P0.05層34をGaAs基板32とInP層34との間にバッファ層として介在させることにより、従来のGaAs基板上のInP層に比べて、InP層34の結晶性を向上させ、表面形状を良好にしている。
【選択図】 図6
【解決手段】本化合物半導体積層構造30は、GaAs基板32上に、P組成が一様な膜厚60nmのGaAs0.95P0.05層34を介して、膜厚1μmのInP層36を備えている。本化合物半導体積層構造30は、本実施形態例では、臨界膜厚に対する比率が0.35の膜厚を有するGaAs0.95P0.05層34をGaAs基板32とInP層34との間にバッファ層として介在させることにより、従来のGaAs基板上のInP層に比べて、InP層34の結晶性を向上させ、表面形状を良好にしている。
【選択図】 図6
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、GaAs基板上に膜厚が臨界膜厚以上のInP層を有する化合物半導体積層構造及びその作製方法に関し、更に詳細には、膜厚が臨界膜厚以上で且つ結晶性の良好なInP層を有する化合物半導体積層構造及びその作製方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、光通信用の1.3μm〜1.5μm波長帯の光学素子は、InP基板上に成長させたInGaAsP層を活性層とする化合物半導体レーザや、InP基板上に成長させたInGaAs層を光吸収層とする受光素子等のように、InP基板に格子整合する化合物半導体層を活性層又は光吸収層として成長させることにより製造されてきた。
例えば、波長が1.3μmのInGaAsP系の半導体レーザ素子やInGaAs系のフォトダイオード等の光学デバイスや、高電子移動度トランジスタを作製する際の基板には、InGaAsP系やInGaAs系の化合物半導体と格子整合するInP基板が主として用いられている。
【0003】
ところで、InP基板は高価なために製品コストが嵩むという問題があるので、近年、基板コストを低減するために、基板コストの低いGaAs基板上にGaAsと格子定数の異なるInP系やInGaAs系化合物半導体層を結晶成長させるなどの、結晶基板上に格子定数の異なる化合物半導体結晶を成長させる試みが、盛んに行われている。
【0004】
しかし、GaAsに対する格子不整合系のInP系化合物半導体層、例えば臨界膜厚以上のInP層をGaAs基板上に結晶成長させようとすると、GaAs基板とInP層との間の格子不整合に起因して、GaAs基板に引っ張り歪みが発生し、InP層には圧縮歪みが発生してInP層での歪みが大きくなる。その結果、多数の結晶欠陥がInP層に発生したり、InP層やその上に成長させた化合物半導体層の表面に凹凸が発生したりして、InP層及びその上の化合物半導体層の結晶性が著しく低下する。
【0005】
例えば、化合物半導体層の成長方向に貫通する貫通転位が化合物半導体層に発生すると、非発光再結合が生じる原因となる。半導体レーザ素子等の発光素子では、発光効率が非発光再結合により大幅に下がり、また動作中に貫通転位が増殖して著しい劣化を引き起こす。また、フォトダイオード等の受動素子では、非発光再結合が生じることにより、キャリアがトラップされ、応答速度が遅くなるという問題を招来する。
【0006】
そこで、この問題を解決するために、異種基板上に、直接、格子不整合系の化合物半導体層を成長させるのではなく、階段状に組成を変化させる積層バッファ層、或いは連続的に組成を変化させた傾斜組成バッファ層からなる格子不整合緩和層を介在させて、格子不整合に起因する歪みを低減し、格子不整合系の化合物半導体層の結晶性を向上させることが試みられている。
【0007】
例えば、特開2000−91558号公報は、In0.52Al0.48As/p−InGaAs系のHEMT部をGaAs基板上に形成した半導体装置を提案している。
前掲公報によれば、第1バッファ層から第5バッファ層からなる5層構造のバッファ層が両者間に介在し、第1バッファ層から第5バッファ層のそれぞれのIn組成比が各層の界面毎に不連続となるようにギャップが設けられ、かつ、各層内のIn組成比が略線形で連続的に変化するように形成されている(第4頁、図1参照)。
【0008】
また、特開2001−111039号公報は、厚さ1μm以下の化合物半導体からなるバッファ層を介して、基板上に基板結晶と格子定数の異なる所定の化合物半導体層を積層した格子不整合系積層構造を有する半導体装置を提案している。
前掲公報では、バッファ層は、複数の第1の領域と複数の第2の領域を積層方向に積層した積層構造として構成され、第1の領域の格子定数は積層方向で所定の化合物半導体層に向かって増加し、第1の領域の厚さは基板結晶との格子不整合に起因する格子歪を緩和できる厚さとし、第2の領域は第1の領域の化合物半導体層側の面上にこれに接して形成され、第2の領域の格子定数は積層方向で一定とし、かつバッファ層の格子定数は積層方向で連続している(第4頁、図2参照)。
【0009】
【特許文献1】
特開2000−091558号公報(第4頁、図1)
【特許文献2】
特開2001−111039号公報(第4頁、図2)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前掲公報等に開示されている従来の技術は、バッファ層内で発生した転位をバッファ層内で押し止める抑制効果が小さく、例えば結晶性の良好な臨界膜厚以上のInP層をバッファ層上に成長させることは難しい。また、GaAs基板上に直接InP層をエピタキシャル成長させると、GaAs基板からAsが脱離し易く、またInP層からPが脱離し易いく、その結果、InP層の表面形状の凹凸が増大して、表面モフォロジーが悪くなるが、従来の技術では、Asの脱離及びPの脱離を防止することも難しい。
【0011】
そこで、本発明の目的は、結晶性が良好で、表面形状の良好な臨界膜厚以上のInP層をGaAs基板上に備えた化合物半導体積層構造及びそのような化合物半導体積層構造の作製方法を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成する研究を続ける過程で、Jpn.J.Appl.Phys.Vol.33(1994) pp.L156−L158 Part2,No2A等の文献に示唆されている、バッファ層による歪み補償の効果に注目した。
そして、GaAs及びInPより格子定数の小さいGaAs(1−x) Px 層をGaAs基板とInP層との間に導入し、GaAs(1−x) Px 層の歪み補償効果を利用することにより、InP層の表面形状を改善することを着想し、以下のような実験によりその効果を確認した。
また、GaAs(1−x) Px 層をバッファ層として設けることにより、GaAs基板のAs脱離、及びInP層のP脱離を防止できることも確認した。
【0013】
実験例1
先ず、実験例1として図1(a)に示すように、GaAs基板12より格子定数が小さく、従ってGaAs基板に対して格子不整合性を有する、例えばPの組成が0.05のGaAs0.95P0.05層14をGaAs基板12上にMOCVD法により以下の成膜条件で60nm成長してバッファ層とした。次いで、その上にMOCVD法により以下の成膜条件でInP層16を1μm成長させて、実験例1試料の積層構造10を作製した。
ここで、格子不整合性Sとは、
S={(a2 −a1 )/a1 }×100
で表される指標である。ここで、a1 は基板の平行方向の格子定数、及びa2 は化合物半導体層の基板に平行方向の格子定数である。
S=(a2 −a1 )/a1 ×100 ・・・(1)
【0014】
GaAs 0.95 P 0.05 層の成膜条件
圧力 :50Torr
成長温度 :680℃
TMGの流量 :3.8×10−4mol/min
AsH3 の流量:2.0×10−2mol/min
PH3 の流量 :5.0×10−3mol/min
尚、TMGは、Trimethyl Galium(トリメチル・ガリウム)を略記したものである。
【0015】
InP層の成膜条件
圧力 :50Torr
成長温度 :680℃
TMIの流量 :2.2×10−4mol/min
PH3 の流量 :5.0×10−2mol/min
尚、TMIは、Trimethyl Indium(トリメチル・インジウム)を略記したものである。
【0016】
次いで、実験例1の積層構造のInP層の表面を光学顕微鏡で観察すると共に、図1(b)に示す光学顕微鏡写真を撮影した。図1(b)では、写真の右下隅にスケールが表示されているように、写真の約16mmの長さが10.00μmに相当する。
【0017】
比較実験例
また、実験例1に対する比較実験例として、図2(a)に示すように、バッファ層を介することなく、GaAs基板22上に直接膜厚1μmのInP層24をMOCVD法により実験例1と同じ成膜条件で成長させて、比較実験例の積層構造20を作製した。
次いで、比較実験例の積層構造20のInP層24の表面を光学顕微鏡で観察すると共に図2(b)に示す光学顕微鏡写真を撮影した。図2(b)では、写真の右下隅にスケールが表示されているように、写真の約16mmの長さが10.00μmに相当する。
【0018】
実験例1の光学顕微鏡写真(図1(b))と比較実験例の光学顕微鏡写真(図2(b))との比較から、膜厚60nmのGaAs0.95P0.05層14をバッファ層としてGaAs基板12とInP層16との間に介在させることにより、実験例1のInP層16の表面凹凸は極めて少なく、InP層16の表面形状が比較実験例のInP層24に比べて大幅に改善していることが確認できた。
これは、PとAsとを含むGaAs(1−x) Px 層を導入することによりInP層からのPの脱離を防止し、かつGaAs基板からのAsの脱離を防止すると共に、GaAs及びInPより格子定数の小さいGaAs(1−x) Px 層を導入することにより、歪み補償効果によりInP層の結晶性が改善し、表面形状が良好になると考えられる。
【0019】
また、実験例1の積層構造のInP層16と比較実験例の積層構造のInP層24の表面を、それぞれ、AFM(原子力間顕微鏡)を用いて表面粗さ(RMS)を測定したところ、図3に示す結果を得た。図3からも明らかなように、膜厚60nmのGaAs0.95P0.05層をバッファ層として導入することにより、実験例1のInP層16の表面粗さ(RMS)が比較実験例の積層構造のInP層24の表面粗さに比べて大幅に小さくなり、InP層16の表面形状、従って結晶性が改善していることが確認できた。
【0020】
実験例2
また、実験例2で、実験例1の積層構造10のGaAs(1−x) Px 層14中のP組成xをx=0.005の微量からx=0.9まで幅広い組成範囲でP組成を変えて多数の積層構造を試作し、試作した積層構造のInP層の表面形状を観察したところ、xが0.005から0.9の範囲で、比較実験例に比べて、InP層の表面形状が改善することを確認することができた。
【0021】
実験例3
次に、GaAs基板上にバッファ層として、Pの組成を0.05とし、膜厚を臨界膜厚に対する割合で0から1.4倍以上にまで変えて、MOCVD法により実験例1の成膜条件でGaAs0.95P0.05層を成長させた。続いて、GaAs0.95P0.05層上に膜厚1μmのInP層を成膜して、GaAs0.95P0.05層の膜厚の異なる多数個の積層構造を試作した。
次いで、AFMを用いて各積層構造のInP層の表面粗さ(RMS)を測定したところ、図4に示すように、GaAs0.95P0.05層の膜厚と表面粗さ(RMS)の関係を得た。
図4からGaAs0.95P0.05層の膜厚がGaAs0.95P0.05層の臨界膜厚の約1.4倍以下の範囲で表面形状改善の効果が認められ、特に、膜厚が臨界膜厚の0.2倍から0.8倍の範囲で最も顕著な表面形状改善の効果が認められた。
【0022】
なお、臨界膜厚hcは、MatthewsとBlakesleeの理論より下記の式により定義される。
ここで、νはPoisson比、bはBurgersベクトルの大きさ、λはすべり面と界面の交線に垂直な面とすべり方向のなす角度、fは下層との格子不整合性であって、P組成によって変化する変数、αは転位線とBurgersベクトルとのなす角、及びCは係数である。
そこで、係数C=4とし、GaAs(1−x) Px 層のP組成xを変えてGaAs(1−x) Px 層の臨界膜厚を計算したところ、図5に示す結果を得た。図5はGaAs(1−x) Px 層のP組成xと臨界膜厚との関係、つまり格子不整合性と臨界膜厚との関係を示していて、P組成xが大きくなって、格子不整合性が大きくなるに従って、臨界膜厚が小さくなることを示している。
【0023】
以上の実験から、GaAs基板及びInP層より格子定数の小さいGaAs(1−x) Px 層をGaAs基板とInP層との間に導入することにより歪み補償効果によりInP層の表面形状を改善できることが判った。
また、GaAs(1−x) Px 層のP組成xの有効範囲は0.005から0.9である。GaAs(1−x) Px 層の所要膜厚は、臨界膜厚の1.4倍を超えない膜厚であり、特に、臨界膜厚の0.2倍から0.8倍で歪補償の効果が顕著であることが判った。
【0024】
上記目的を達成するために、上述の知見に基づいて、本発明に係る化合物半導体積層構造は、GaAs基板上に膜厚が臨界膜厚以上のInP層を有する化合物半導体積層構造において、
GaAs基板とInP層の間にGaAsP層が介在していることを特徴としている。
【0025】
上述の実験から明らかなように、GaAs基板とInP層の間にGaAsP層を介在させ、GaAsP層の歪補償効果並びにAs脱離及びP脱離防止効果により、InP層の結晶性が良好になり、表面形状の凹凸の発生が抑制される。
また、InP層の膜厚には制約はなく、InP層の膜厚が厚いほど本発明の効果が顕著になるものの、半導体装置の製造に際し、実際に必要になるInP層の膜厚は10μm以下である。
【0026】
GaAsP層は、膜厚がGaAsP層の臨界膜厚の1.4倍を超えないようにする。
また、好適には、GaAsP層をGaAs(1−X) Px で表示するとき、xが0.005以上0.9以下である。
【0027】
GaAsP層は、P組成が一様な単層である必要はない。例えば、GaAsに対する格子不整合性が相互に異なり、かつ階段状に小さくなる複数層のGaAsP層でGaAsP層を構成しても良く、また、GaAsに対する格子不整合性が連続的に小さくなる傾斜組成構造のGaAsP層でGaAsP層を構成してもよい。
更には、GaAsP層が、GaAsに対する格子不整合性が連続的に小さくなる傾斜組成構造の複数層のGaAsP層で構成され、かつ傾斜組成構造の一のGaAsP層の最上部の格子不整合性がその上のGaAsP層の最下部の格子不整合性より小さくないようにしてもよい。
【0028】
本発明に係る化合物半導体積層構造を光素子に適用することにより、コストの低いGaAs基板を使って、1.3μmから1.5μm波長域の発光素子や、受光素子を経済的に製造することができる。
また、GaAs基板とInP層との間にGaAsP層を設けることにより、InP層の結晶性及び表面形状が良好になるので、その上に成膜した活性層や光吸収層の結晶性も従来のものに比べて向上し、信頼性の高い発光素子や受光素子を実現することができる。
【0029】
本発明に係る化合物半導体積層構造の作製方法は、GaAs基板上に膜厚が臨界膜厚以上のInP層を有する化合物半導体積層構造の作製方法であって、GaAs基板上にInP層を成膜するに当たり、
GaAs基板上にGaAsP層を成膜する工程と、
次いで、GaAsP層上に膜厚が臨界膜厚以上のInP層を成膜する工程とを有することを特徴としている。
【0030】
上述の実験から明らかなように、GaAs基板とInP層の間にGaAsP層を介在させ、GaAsP層の歪補償効果並びにAs脱離及びP脱離防止効果により、結晶性が良好で、凹凸の少ない表面形状のInP層をGaAs基板上に備えた化合物半導体積層構造を作製することができる。
【0031】
GaAs基板上にGaAsP層を成膜する工程では、膜厚が臨界膜厚の1.4倍を超えないGaAsP層を成膜することが好ましい。
また、GaAs基板上にGaAsP層を成膜する工程では、GaAsに対する格子不整合性が相互に異なり、かつ階段状に小さくなる複数層のGaAsP層を成膜しても良く、GaAsに対する格子不整合性が連続的に小さくなる傾斜組成構造のGaAsP層を成膜しても良い。更には、GaAsに対する格子不整合性が連続的に小さくなる傾斜組成構造の複数層のGaAsP層で構成され、かつ傾斜組成構造の一のGaAsP層の最上部の格子不整合性がその上のGaAsP層の最下部の格子不整合性より小さくない複数層のGaAsP層をバッファ層として成膜してもよい。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下に、添付図面を参照して、実施形態例に基づいて本発明をより詳細に説明する。尚、以下の実施形態例で示す成膜方法、化合物半導体層の組成及び膜厚、プロセス条件等は、本発明の理解を容易にするための一つの例示であって、本発明はこの例示に限定されるものではない。
化合物半導体積層構造の実施形態例1
本実施形態例は本発明に係る化合物半導体積層構造の実施形態の一例であって、図6は本実施形態例の化合物半導体積層構造の構成を示す断面図である。
本実施形態例の化合物半導体積層構造30は、図6に示すように、GaAs基板32上に、P組成が一様な膜厚60nmのGaAs0.95P0.05層34を介して、膜厚1μmのInP層36を備えている。
GaAs0.95P0.05層34の臨界膜厚は170nmであるから、GaAs0.95P0.05層34の膜厚の臨界膜厚に対する比率は0.35である。
【0033】
本実施形態例では、臨界膜厚に対する比率が0.35の膜厚を有するGaAs0.95P0.05層34をGaAs基板32とInP層34との間にバッファ層として介在させ、GaAs0.95P0.05層34の歪補償効果と、As脱離及びP脱離防止効果により、従来のGaAs基板上のInP層に比べて、InP層34の結晶性を向上させ、表面形状を良好にしている。
【0034】
化合物半導体積層構造の実施形態例2
本実施形態例は本発明に係る化合物半導体積層構造の実施形態の一例であって、図7は本実施形態例の化合物半導体積層構造の構成を示す断面図である。
本実施形態例の化合物半導体積層構造40は、図7に示すように、GaAs基板42上に、膜厚60nmで、P組成xが0.0から0.5まで連続的に増大する傾斜組成構造のGaAs(1−x) Px 層43を介して、膜厚1μmのInP層44を備えている。
【0035】
本実施形態例では、P組成xが0.0から0.5まで連続的に増大する傾斜組成構造のGaAs(1−x) Px 層43をGaAs基板42とInP層44との間にバッファ層として介在させ、GaAs(1−x) Px 層42の歪補償効果並びにAs脱離及びP脱離防止効果により、従来のGaAs基板上のInP層に比べて、InP層44の結晶性を向上させ、表面形状を良好にしている。
【0036】
実施形態例2の改変例
本改変例は実施形態例3の化合物半導体積層構造の改変例であって、図8は本改変例の化合物半導体積層構造の構成を示す断面図である。
本改変例の化合物半導体積層構造45では、バッファ層としてGaAs基板42とInP層44との間に介在するGaAs(1−x) Px 層が、図8に示すように、複数層、例えばP組成の組成勾配が相互に異なる3層の傾斜組成構造であって、全体としてP組成xが0.0から0.5まで連続的に増大するGaAs(1−x) Px 層46、47、48で構成されている。
【0037】
化合物半導体積層構造の実施形態例3
本実施形態例は本発明に係る化合物半導体積層構造の実施形態の一例であって、図9は本実施形態例の化合物半導体積層構造の構成を示す断面図である。
本実施形態例の化合物半導体積層構造50は、図9に示すように、GaAs基板52上に、P組成xが0.0から0.5まで順次0.1ずつ段階的に増大し、かつ各層の膜厚が12nmの5層の階段状組成構造のGaAs(1−x) Px 層54A、B、C、D、Eを介して、膜厚1μmのInP層56を備えている。
【0038】
本実施形態例では、P組成xが0.0から0.5まで段階的に増大する階段状組成構造のGaAs(1−x) Px 層54をGaAs基板52とInP層56との間にバッファ層として介在させ、GaAs(1−x) Px 層54の歪補償効果並びにAs脱離及びP脱離防止効果により、従来のGaAs基板上のInP層に比べて、InP層56の結晶性を向上させ、表面形状を良好にしている。
【0039】
化合物半導体積層構造の作製方法の実施形態例
本実施形態例は本発明に係る化合物半導体積層構造の作製方法を実施形態例1の化合物半導体積層構造の作製に適用した実施形態の一例である。
本実施形態例では、先ず、図6に示すように、GaAs基板32上にGaAsより格子定数が小さく、格子不整合性を有するバッファ層として、例えばPの組成を0.05としたGaAs0.95P0.05層34をMOCVD法により以下の成膜条件で60nm成長し、その上にMOCVD法により以下の成膜条件でInP層36を1μm成長させ、実施形態例1の積層構造30を作製する。
【0040】
GaAs 0.95 P 0.05 層の成膜条件
圧力 :50Torr
成長温度 :680℃
TMGの流量 :3.8×10−4mol/min
AsH3 の流量:2.0×10−2mol/min
PH3 の流量 :5.0×10−3mol/min
【0041】
InP層の成膜条件
圧力 :50Torr
成長温度 :680℃
TMIの流量 :2.2×10−4mol/min
PH3 の流量 :5.0×10−2mol/min
【0042】
本実施形態例では、臨界膜厚に対する比率が0.35の膜厚を有するGaAs0.95P0.05層34をGaAs基板32とInP層34との間にバッファ層として介在させ、GaAs0.95P0.05層34の歪補償効果並びにAs脱離及びP脱離防止効果により、従来のGaAs基板上のInP層に比べて、結晶性が向上し、表面形状が良好なInP層34を有する化合物半導体積層構造30を作製することができる。
【0043】
発光素子の実施形態例
本実施形態例は本発明に係る発光素子を半導体レーザ素子に適用した実施形態の一例であって、図10は本実施形態例の半導体レーザ素子の構成を示す断面図である。
本実施形態例の半導体レーザ素子60は、発振波長1.3μmの端面出射型の半導体レーザ素子であって、図9に示すように、n型GaAs基板62上に、バッファ層としてMOCVD法等のエピタキシャル成長法により形成したn型GaAsP層64と、GaAsP層64上にMOCVD法等により順次エピタキシャル成長させたn型InPクラッド層66、InGaAsP活性層68、及びp型InPクラッド層70の積層構造を有する。
また、p型InPクラッド層70上にp側電極72を、n型GaAs基板62の裏面にn側電極74を有する。
GaAsP層64は、実施形態例1の化合物半導体積層構造30のGaAsP層34、実施形態例2の化合物半導体積層構造40のGaAsP層44、及び実施形態例3の化合物半導体積層構造50のGaAsP層54のいずれかと同じ構成のGaAsP層である。
【0044】
本実施形態例の半導体レーザ素子60では、GaAs基板62上にGaAsP層64を設けることにより、n型InPクラッド層66、更にはその上のInGaAsP活性層68及びp型InPクラッド層70が良好な結晶性及び表面形状でエピタキシャル成長している。
よって、本実施形態例の半導体レーザ素子60は、信頼性が高く、良好な特性を示すことができる。
【0045】
受光素子の実施形態例
本実施形態例は本発明に係る受光素子をフォトダイオードに適用した実施形態の一例であって、図11は本実施形態例のフォトダイオードの積層構造の構成を示す断面図である。
本実施形態例のフォトダイオード80は、基板側から波長1.3μmの光を受光するフォトダイオードであって、図11に示すように、n型GaAs基板82上に、バッファ層としてMOCVD法等のエピタキシャル成長法により形成したn型GaAsP層84と、n型GaAsP層84上にMOCVD法等により順次エピタキシャル成長させた、n型InP層86、真性(i−)In0.53Ga0.47As層88、及びp型In0.53Ga0.47As層90の積層構造を有する。
また、p型In0.53Ga0.47As層90上にp側電極92を、n型GaAs基板82の裏面にリング状のn側電極94を有する。
n型GaAsP層84は、実施形態例1の化合物半導体積層構造30のGaAsP層34、実施形態例2の化合物半導体積層構造40のGaAsP層44、及び実施形態例3の化合物半導体積層構造50のGaAsP層54のいずれかと同じ構成のGaAsP層である。
【0046】
本実施形態例のフォトダイオード80では、n型GaAs基板82とn型InP層86とのの間に、バッファ層としてGaAsP層84を介在させていることにより、n型InP層86及びその上の化合物半導体層が良好な結晶性でエピタキシャル成長している。従って、本実施形態例のフォトダイオード80は良好な特性を示すことができる。
【0047】
本実施形態例の化合物半導体積層構造を利用した素子として半導体レーザ素子及びフォトダイオードを例に挙げているが、これに限らず、高移動度トランジスタに適用することもできる。
【0048】
【発明の効果】
本発明によれば、GaAs基板とInP層との間にGaAsP層を介在させ、GaAsP層の歪補償効果並びにAs脱離及びP脱離防止効果により、良好な結晶性を示し、表面モフォロジーが良好で、膜厚が臨界膜厚以上のInP層をGaAs基板上に有する化合物半導体積層構造を実現することができる。
【0049】
また、本発明方法によれば、GaAs基板とInP層との間にGaAsP層を介在させ、GaAsP層の歪補償効果並びにAs脱離及びP脱離防止効果によって、良好な結晶性を示し、表面モフォロジーが良好で、膜厚が臨界膜厚以上のInP層をGaAs基板上に有する化合物半導体積層構造を作製することができる。
本発明に係る化合物半導体積層構造を光学素子に適用することにより、InP基板に比べコストの低いGaAs基板を用いて光通信用の1.3μm〜1.5μm波長帯の光学素子を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)及び(b)は、それぞれ、実験例1で作製した積層構造の層構造を示す断面図、及びInP層の表面形状を光学顕微鏡で撮影した写真の写しである。
【図2】図2(a)及び(b)は、それぞれ、比較実験例で作製した積層構造の層構造を示す断面図、及びInP層の表面形状を光学顕微鏡で撮影した写真の写しである。
【図3】実験例1の積層構造のInP層の表面粗さ(RMS)と比較実験例の積層構造のInP層の表面粗さ(RMS)との対比である。
【図4】実験例2で得たGaAsP層の膜厚/臨界膜厚と表面粗さ(RMS)との関係を示すグラフである。
【図5】GaAs(1−x) Px 層のP組成xと臨界膜厚との関係、つまり格子不整合性と臨界膜厚との関係を示している。
【図6】実施形態例1の化合物半導体積層構造の構成を示す断面図である。
【図7】実施形態例2の化合物半導体積層構造の構成を示す断面図である。
【図8】実施形態例2の改変例の化合物半導体積層構造の構成を示す断面図である。
【図9】実施形態例3の化合物半導体積層構造の構成を示す断面図である。
【図10】実施形態例の半導体レーザ素子の構成を示す断面図である。
【図11】実施形態例のフォトダイオードの構成を示す断面図である。
【符号の説明】
10……実験例1試料の積層構造、12……GaAs基板、14……GaAs0.95P0.05層、16……InP層、20……比較実験例の積層構造、22……GaAs基板、24……InP層、30……実施形態例1の化合物半導体積層構造、32……GaAs基板、34……GaAs0.95P0.05層、36……InP層、40……実施形態例2の化合物半導体積層構造、42……GaAs基板、43……GaAs(1−x) Px 層、44……InP層、45……実施形態例2の改変例の化合物半導体積層構造、46、47、48……GaAs(1−x) Px 層、50……実施形態例3の化合物半導体積層構造、52……GaAs基板、54……GaAs(1−x) Px 層、56……InP層、60……半導体レーザ素子、62……n型GaAs基板、64……n型GaAsP層、66……n型InPクラッド層、68……InGaAsP活性層、70……p型InPクラッド層、72……p側電極、74……n側電極、80……実施形態例のフォトダイオード、82……n型GaAs基板、84……n型GaAsP層、86……n型InP層、88……真性(i−)In0.53Ga0.47As層、90……p型In0.53Ga0.47As層、92……p側電極、94……n側電極。
【発明の属する技術分野】
本発明は、GaAs基板上に膜厚が臨界膜厚以上のInP層を有する化合物半導体積層構造及びその作製方法に関し、更に詳細には、膜厚が臨界膜厚以上で且つ結晶性の良好なInP層を有する化合物半導体積層構造及びその作製方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、光通信用の1.3μm〜1.5μm波長帯の光学素子は、InP基板上に成長させたInGaAsP層を活性層とする化合物半導体レーザや、InP基板上に成長させたInGaAs層を光吸収層とする受光素子等のように、InP基板に格子整合する化合物半導体層を活性層又は光吸収層として成長させることにより製造されてきた。
例えば、波長が1.3μmのInGaAsP系の半導体レーザ素子やInGaAs系のフォトダイオード等の光学デバイスや、高電子移動度トランジスタを作製する際の基板には、InGaAsP系やInGaAs系の化合物半導体と格子整合するInP基板が主として用いられている。
【0003】
ところで、InP基板は高価なために製品コストが嵩むという問題があるので、近年、基板コストを低減するために、基板コストの低いGaAs基板上にGaAsと格子定数の異なるInP系やInGaAs系化合物半導体層を結晶成長させるなどの、結晶基板上に格子定数の異なる化合物半導体結晶を成長させる試みが、盛んに行われている。
【0004】
しかし、GaAsに対する格子不整合系のInP系化合物半導体層、例えば臨界膜厚以上のInP層をGaAs基板上に結晶成長させようとすると、GaAs基板とInP層との間の格子不整合に起因して、GaAs基板に引っ張り歪みが発生し、InP層には圧縮歪みが発生してInP層での歪みが大きくなる。その結果、多数の結晶欠陥がInP層に発生したり、InP層やその上に成長させた化合物半導体層の表面に凹凸が発生したりして、InP層及びその上の化合物半導体層の結晶性が著しく低下する。
【0005】
例えば、化合物半導体層の成長方向に貫通する貫通転位が化合物半導体層に発生すると、非発光再結合が生じる原因となる。半導体レーザ素子等の発光素子では、発光効率が非発光再結合により大幅に下がり、また動作中に貫通転位が増殖して著しい劣化を引き起こす。また、フォトダイオード等の受動素子では、非発光再結合が生じることにより、キャリアがトラップされ、応答速度が遅くなるという問題を招来する。
【0006】
そこで、この問題を解決するために、異種基板上に、直接、格子不整合系の化合物半導体層を成長させるのではなく、階段状に組成を変化させる積層バッファ層、或いは連続的に組成を変化させた傾斜組成バッファ層からなる格子不整合緩和層を介在させて、格子不整合に起因する歪みを低減し、格子不整合系の化合物半導体層の結晶性を向上させることが試みられている。
【0007】
例えば、特開2000−91558号公報は、In0.52Al0.48As/p−InGaAs系のHEMT部をGaAs基板上に形成した半導体装置を提案している。
前掲公報によれば、第1バッファ層から第5バッファ層からなる5層構造のバッファ層が両者間に介在し、第1バッファ層から第5バッファ層のそれぞれのIn組成比が各層の界面毎に不連続となるようにギャップが設けられ、かつ、各層内のIn組成比が略線形で連続的に変化するように形成されている(第4頁、図1参照)。
【0008】
また、特開2001−111039号公報は、厚さ1μm以下の化合物半導体からなるバッファ層を介して、基板上に基板結晶と格子定数の異なる所定の化合物半導体層を積層した格子不整合系積層構造を有する半導体装置を提案している。
前掲公報では、バッファ層は、複数の第1の領域と複数の第2の領域を積層方向に積層した積層構造として構成され、第1の領域の格子定数は積層方向で所定の化合物半導体層に向かって増加し、第1の領域の厚さは基板結晶との格子不整合に起因する格子歪を緩和できる厚さとし、第2の領域は第1の領域の化合物半導体層側の面上にこれに接して形成され、第2の領域の格子定数は積層方向で一定とし、かつバッファ層の格子定数は積層方向で連続している(第4頁、図2参照)。
【0009】
【特許文献1】
特開2000−091558号公報(第4頁、図1)
【特許文献2】
特開2001−111039号公報(第4頁、図2)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前掲公報等に開示されている従来の技術は、バッファ層内で発生した転位をバッファ層内で押し止める抑制効果が小さく、例えば結晶性の良好な臨界膜厚以上のInP層をバッファ層上に成長させることは難しい。また、GaAs基板上に直接InP層をエピタキシャル成長させると、GaAs基板からAsが脱離し易く、またInP層からPが脱離し易いく、その結果、InP層の表面形状の凹凸が増大して、表面モフォロジーが悪くなるが、従来の技術では、Asの脱離及びPの脱離を防止することも難しい。
【0011】
そこで、本発明の目的は、結晶性が良好で、表面形状の良好な臨界膜厚以上のInP層をGaAs基板上に備えた化合物半導体積層構造及びそのような化合物半導体積層構造の作製方法を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成する研究を続ける過程で、Jpn.J.Appl.Phys.Vol.33(1994) pp.L156−L158 Part2,No2A等の文献に示唆されている、バッファ層による歪み補償の効果に注目した。
そして、GaAs及びInPより格子定数の小さいGaAs(1−x) Px 層をGaAs基板とInP層との間に導入し、GaAs(1−x) Px 層の歪み補償効果を利用することにより、InP層の表面形状を改善することを着想し、以下のような実験によりその効果を確認した。
また、GaAs(1−x) Px 層をバッファ層として設けることにより、GaAs基板のAs脱離、及びInP層のP脱離を防止できることも確認した。
【0013】
実験例1
先ず、実験例1として図1(a)に示すように、GaAs基板12より格子定数が小さく、従ってGaAs基板に対して格子不整合性を有する、例えばPの組成が0.05のGaAs0.95P0.05層14をGaAs基板12上にMOCVD法により以下の成膜条件で60nm成長してバッファ層とした。次いで、その上にMOCVD法により以下の成膜条件でInP層16を1μm成長させて、実験例1試料の積層構造10を作製した。
ここで、格子不整合性Sとは、
S={(a2 −a1 )/a1 }×100
で表される指標である。ここで、a1 は基板の平行方向の格子定数、及びa2 は化合物半導体層の基板に平行方向の格子定数である。
S=(a2 −a1 )/a1 ×100 ・・・(1)
【0014】
GaAs 0.95 P 0.05 層の成膜条件
圧力 :50Torr
成長温度 :680℃
TMGの流量 :3.8×10−4mol/min
AsH3 の流量:2.0×10−2mol/min
PH3 の流量 :5.0×10−3mol/min
尚、TMGは、Trimethyl Galium(トリメチル・ガリウム)を略記したものである。
【0015】
InP層の成膜条件
圧力 :50Torr
成長温度 :680℃
TMIの流量 :2.2×10−4mol/min
PH3 の流量 :5.0×10−2mol/min
尚、TMIは、Trimethyl Indium(トリメチル・インジウム)を略記したものである。
【0016】
次いで、実験例1の積層構造のInP層の表面を光学顕微鏡で観察すると共に、図1(b)に示す光学顕微鏡写真を撮影した。図1(b)では、写真の右下隅にスケールが表示されているように、写真の約16mmの長さが10.00μmに相当する。
【0017】
比較実験例
また、実験例1に対する比較実験例として、図2(a)に示すように、バッファ層を介することなく、GaAs基板22上に直接膜厚1μmのInP層24をMOCVD法により実験例1と同じ成膜条件で成長させて、比較実験例の積層構造20を作製した。
次いで、比較実験例の積層構造20のInP層24の表面を光学顕微鏡で観察すると共に図2(b)に示す光学顕微鏡写真を撮影した。図2(b)では、写真の右下隅にスケールが表示されているように、写真の約16mmの長さが10.00μmに相当する。
【0018】
実験例1の光学顕微鏡写真(図1(b))と比較実験例の光学顕微鏡写真(図2(b))との比較から、膜厚60nmのGaAs0.95P0.05層14をバッファ層としてGaAs基板12とInP層16との間に介在させることにより、実験例1のInP層16の表面凹凸は極めて少なく、InP層16の表面形状が比較実験例のInP層24に比べて大幅に改善していることが確認できた。
これは、PとAsとを含むGaAs(1−x) Px 層を導入することによりInP層からのPの脱離を防止し、かつGaAs基板からのAsの脱離を防止すると共に、GaAs及びInPより格子定数の小さいGaAs(1−x) Px 層を導入することにより、歪み補償効果によりInP層の結晶性が改善し、表面形状が良好になると考えられる。
【0019】
また、実験例1の積層構造のInP層16と比較実験例の積層構造のInP層24の表面を、それぞれ、AFM(原子力間顕微鏡)を用いて表面粗さ(RMS)を測定したところ、図3に示す結果を得た。図3からも明らかなように、膜厚60nmのGaAs0.95P0.05層をバッファ層として導入することにより、実験例1のInP層16の表面粗さ(RMS)が比較実験例の積層構造のInP層24の表面粗さに比べて大幅に小さくなり、InP層16の表面形状、従って結晶性が改善していることが確認できた。
【0020】
実験例2
また、実験例2で、実験例1の積層構造10のGaAs(1−x) Px 層14中のP組成xをx=0.005の微量からx=0.9まで幅広い組成範囲でP組成を変えて多数の積層構造を試作し、試作した積層構造のInP層の表面形状を観察したところ、xが0.005から0.9の範囲で、比較実験例に比べて、InP層の表面形状が改善することを確認することができた。
【0021】
実験例3
次に、GaAs基板上にバッファ層として、Pの組成を0.05とし、膜厚を臨界膜厚に対する割合で0から1.4倍以上にまで変えて、MOCVD法により実験例1の成膜条件でGaAs0.95P0.05層を成長させた。続いて、GaAs0.95P0.05層上に膜厚1μmのInP層を成膜して、GaAs0.95P0.05層の膜厚の異なる多数個の積層構造を試作した。
次いで、AFMを用いて各積層構造のInP層の表面粗さ(RMS)を測定したところ、図4に示すように、GaAs0.95P0.05層の膜厚と表面粗さ(RMS)の関係を得た。
図4からGaAs0.95P0.05層の膜厚がGaAs0.95P0.05層の臨界膜厚の約1.4倍以下の範囲で表面形状改善の効果が認められ、特に、膜厚が臨界膜厚の0.2倍から0.8倍の範囲で最も顕著な表面形状改善の効果が認められた。
【0022】
なお、臨界膜厚hcは、MatthewsとBlakesleeの理論より下記の式により定義される。
ここで、νはPoisson比、bはBurgersベクトルの大きさ、λはすべり面と界面の交線に垂直な面とすべり方向のなす角度、fは下層との格子不整合性であって、P組成によって変化する変数、αは転位線とBurgersベクトルとのなす角、及びCは係数である。
そこで、係数C=4とし、GaAs(1−x) Px 層のP組成xを変えてGaAs(1−x) Px 層の臨界膜厚を計算したところ、図5に示す結果を得た。図5はGaAs(1−x) Px 層のP組成xと臨界膜厚との関係、つまり格子不整合性と臨界膜厚との関係を示していて、P組成xが大きくなって、格子不整合性が大きくなるに従って、臨界膜厚が小さくなることを示している。
【0023】
以上の実験から、GaAs基板及びInP層より格子定数の小さいGaAs(1−x) Px 層をGaAs基板とInP層との間に導入することにより歪み補償効果によりInP層の表面形状を改善できることが判った。
また、GaAs(1−x) Px 層のP組成xの有効範囲は0.005から0.9である。GaAs(1−x) Px 層の所要膜厚は、臨界膜厚の1.4倍を超えない膜厚であり、特に、臨界膜厚の0.2倍から0.8倍で歪補償の効果が顕著であることが判った。
【0024】
上記目的を達成するために、上述の知見に基づいて、本発明に係る化合物半導体積層構造は、GaAs基板上に膜厚が臨界膜厚以上のInP層を有する化合物半導体積層構造において、
GaAs基板とInP層の間にGaAsP層が介在していることを特徴としている。
【0025】
上述の実験から明らかなように、GaAs基板とInP層の間にGaAsP層を介在させ、GaAsP層の歪補償効果並びにAs脱離及びP脱離防止効果により、InP層の結晶性が良好になり、表面形状の凹凸の発生が抑制される。
また、InP層の膜厚には制約はなく、InP層の膜厚が厚いほど本発明の効果が顕著になるものの、半導体装置の製造に際し、実際に必要になるInP層の膜厚は10μm以下である。
【0026】
GaAsP層は、膜厚がGaAsP層の臨界膜厚の1.4倍を超えないようにする。
また、好適には、GaAsP層をGaAs(1−X) Px で表示するとき、xが0.005以上0.9以下である。
【0027】
GaAsP層は、P組成が一様な単層である必要はない。例えば、GaAsに対する格子不整合性が相互に異なり、かつ階段状に小さくなる複数層のGaAsP層でGaAsP層を構成しても良く、また、GaAsに対する格子不整合性が連続的に小さくなる傾斜組成構造のGaAsP層でGaAsP層を構成してもよい。
更には、GaAsP層が、GaAsに対する格子不整合性が連続的に小さくなる傾斜組成構造の複数層のGaAsP層で構成され、かつ傾斜組成構造の一のGaAsP層の最上部の格子不整合性がその上のGaAsP層の最下部の格子不整合性より小さくないようにしてもよい。
【0028】
本発明に係る化合物半導体積層構造を光素子に適用することにより、コストの低いGaAs基板を使って、1.3μmから1.5μm波長域の発光素子や、受光素子を経済的に製造することができる。
また、GaAs基板とInP層との間にGaAsP層を設けることにより、InP層の結晶性及び表面形状が良好になるので、その上に成膜した活性層や光吸収層の結晶性も従来のものに比べて向上し、信頼性の高い発光素子や受光素子を実現することができる。
【0029】
本発明に係る化合物半導体積層構造の作製方法は、GaAs基板上に膜厚が臨界膜厚以上のInP層を有する化合物半導体積層構造の作製方法であって、GaAs基板上にInP層を成膜するに当たり、
GaAs基板上にGaAsP層を成膜する工程と、
次いで、GaAsP層上に膜厚が臨界膜厚以上のInP層を成膜する工程とを有することを特徴としている。
【0030】
上述の実験から明らかなように、GaAs基板とInP層の間にGaAsP層を介在させ、GaAsP層の歪補償効果並びにAs脱離及びP脱離防止効果により、結晶性が良好で、凹凸の少ない表面形状のInP層をGaAs基板上に備えた化合物半導体積層構造を作製することができる。
【0031】
GaAs基板上にGaAsP層を成膜する工程では、膜厚が臨界膜厚の1.4倍を超えないGaAsP層を成膜することが好ましい。
また、GaAs基板上にGaAsP層を成膜する工程では、GaAsに対する格子不整合性が相互に異なり、かつ階段状に小さくなる複数層のGaAsP層を成膜しても良く、GaAsに対する格子不整合性が連続的に小さくなる傾斜組成構造のGaAsP層を成膜しても良い。更には、GaAsに対する格子不整合性が連続的に小さくなる傾斜組成構造の複数層のGaAsP層で構成され、かつ傾斜組成構造の一のGaAsP層の最上部の格子不整合性がその上のGaAsP層の最下部の格子不整合性より小さくない複数層のGaAsP層をバッファ層として成膜してもよい。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下に、添付図面を参照して、実施形態例に基づいて本発明をより詳細に説明する。尚、以下の実施形態例で示す成膜方法、化合物半導体層の組成及び膜厚、プロセス条件等は、本発明の理解を容易にするための一つの例示であって、本発明はこの例示に限定されるものではない。
化合物半導体積層構造の実施形態例1
本実施形態例は本発明に係る化合物半導体積層構造の実施形態の一例であって、図6は本実施形態例の化合物半導体積層構造の構成を示す断面図である。
本実施形態例の化合物半導体積層構造30は、図6に示すように、GaAs基板32上に、P組成が一様な膜厚60nmのGaAs0.95P0.05層34を介して、膜厚1μmのInP層36を備えている。
GaAs0.95P0.05層34の臨界膜厚は170nmであるから、GaAs0.95P0.05層34の膜厚の臨界膜厚に対する比率は0.35である。
【0033】
本実施形態例では、臨界膜厚に対する比率が0.35の膜厚を有するGaAs0.95P0.05層34をGaAs基板32とInP層34との間にバッファ層として介在させ、GaAs0.95P0.05層34の歪補償効果と、As脱離及びP脱離防止効果により、従来のGaAs基板上のInP層に比べて、InP層34の結晶性を向上させ、表面形状を良好にしている。
【0034】
化合物半導体積層構造の実施形態例2
本実施形態例は本発明に係る化合物半導体積層構造の実施形態の一例であって、図7は本実施形態例の化合物半導体積層構造の構成を示す断面図である。
本実施形態例の化合物半導体積層構造40は、図7に示すように、GaAs基板42上に、膜厚60nmで、P組成xが0.0から0.5まで連続的に増大する傾斜組成構造のGaAs(1−x) Px 層43を介して、膜厚1μmのInP層44を備えている。
【0035】
本実施形態例では、P組成xが0.0から0.5まで連続的に増大する傾斜組成構造のGaAs(1−x) Px 層43をGaAs基板42とInP層44との間にバッファ層として介在させ、GaAs(1−x) Px 層42の歪補償効果並びにAs脱離及びP脱離防止効果により、従来のGaAs基板上のInP層に比べて、InP層44の結晶性を向上させ、表面形状を良好にしている。
【0036】
実施形態例2の改変例
本改変例は実施形態例3の化合物半導体積層構造の改変例であって、図8は本改変例の化合物半導体積層構造の構成を示す断面図である。
本改変例の化合物半導体積層構造45では、バッファ層としてGaAs基板42とInP層44との間に介在するGaAs(1−x) Px 層が、図8に示すように、複数層、例えばP組成の組成勾配が相互に異なる3層の傾斜組成構造であって、全体としてP組成xが0.0から0.5まで連続的に増大するGaAs(1−x) Px 層46、47、48で構成されている。
【0037】
化合物半導体積層構造の実施形態例3
本実施形態例は本発明に係る化合物半導体積層構造の実施形態の一例であって、図9は本実施形態例の化合物半導体積層構造の構成を示す断面図である。
本実施形態例の化合物半導体積層構造50は、図9に示すように、GaAs基板52上に、P組成xが0.0から0.5まで順次0.1ずつ段階的に増大し、かつ各層の膜厚が12nmの5層の階段状組成構造のGaAs(1−x) Px 層54A、B、C、D、Eを介して、膜厚1μmのInP層56を備えている。
【0038】
本実施形態例では、P組成xが0.0から0.5まで段階的に増大する階段状組成構造のGaAs(1−x) Px 層54をGaAs基板52とInP層56との間にバッファ層として介在させ、GaAs(1−x) Px 層54の歪補償効果並びにAs脱離及びP脱離防止効果により、従来のGaAs基板上のInP層に比べて、InP層56の結晶性を向上させ、表面形状を良好にしている。
【0039】
化合物半導体積層構造の作製方法の実施形態例
本実施形態例は本発明に係る化合物半導体積層構造の作製方法を実施形態例1の化合物半導体積層構造の作製に適用した実施形態の一例である。
本実施形態例では、先ず、図6に示すように、GaAs基板32上にGaAsより格子定数が小さく、格子不整合性を有するバッファ層として、例えばPの組成を0.05としたGaAs0.95P0.05層34をMOCVD法により以下の成膜条件で60nm成長し、その上にMOCVD法により以下の成膜条件でInP層36を1μm成長させ、実施形態例1の積層構造30を作製する。
【0040】
GaAs 0.95 P 0.05 層の成膜条件
圧力 :50Torr
成長温度 :680℃
TMGの流量 :3.8×10−4mol/min
AsH3 の流量:2.0×10−2mol/min
PH3 の流量 :5.0×10−3mol/min
【0041】
InP層の成膜条件
圧力 :50Torr
成長温度 :680℃
TMIの流量 :2.2×10−4mol/min
PH3 の流量 :5.0×10−2mol/min
【0042】
本実施形態例では、臨界膜厚に対する比率が0.35の膜厚を有するGaAs0.95P0.05層34をGaAs基板32とInP層34との間にバッファ層として介在させ、GaAs0.95P0.05層34の歪補償効果並びにAs脱離及びP脱離防止効果により、従来のGaAs基板上のInP層に比べて、結晶性が向上し、表面形状が良好なInP層34を有する化合物半導体積層構造30を作製することができる。
【0043】
発光素子の実施形態例
本実施形態例は本発明に係る発光素子を半導体レーザ素子に適用した実施形態の一例であって、図10は本実施形態例の半導体レーザ素子の構成を示す断面図である。
本実施形態例の半導体レーザ素子60は、発振波長1.3μmの端面出射型の半導体レーザ素子であって、図9に示すように、n型GaAs基板62上に、バッファ層としてMOCVD法等のエピタキシャル成長法により形成したn型GaAsP層64と、GaAsP層64上にMOCVD法等により順次エピタキシャル成長させたn型InPクラッド層66、InGaAsP活性層68、及びp型InPクラッド層70の積層構造を有する。
また、p型InPクラッド層70上にp側電極72を、n型GaAs基板62の裏面にn側電極74を有する。
GaAsP層64は、実施形態例1の化合物半導体積層構造30のGaAsP層34、実施形態例2の化合物半導体積層構造40のGaAsP層44、及び実施形態例3の化合物半導体積層構造50のGaAsP層54のいずれかと同じ構成のGaAsP層である。
【0044】
本実施形態例の半導体レーザ素子60では、GaAs基板62上にGaAsP層64を設けることにより、n型InPクラッド層66、更にはその上のInGaAsP活性層68及びp型InPクラッド層70が良好な結晶性及び表面形状でエピタキシャル成長している。
よって、本実施形態例の半導体レーザ素子60は、信頼性が高く、良好な特性を示すことができる。
【0045】
受光素子の実施形態例
本実施形態例は本発明に係る受光素子をフォトダイオードに適用した実施形態の一例であって、図11は本実施形態例のフォトダイオードの積層構造の構成を示す断面図である。
本実施形態例のフォトダイオード80は、基板側から波長1.3μmの光を受光するフォトダイオードであって、図11に示すように、n型GaAs基板82上に、バッファ層としてMOCVD法等のエピタキシャル成長法により形成したn型GaAsP層84と、n型GaAsP層84上にMOCVD法等により順次エピタキシャル成長させた、n型InP層86、真性(i−)In0.53Ga0.47As層88、及びp型In0.53Ga0.47As層90の積層構造を有する。
また、p型In0.53Ga0.47As層90上にp側電極92を、n型GaAs基板82の裏面にリング状のn側電極94を有する。
n型GaAsP層84は、実施形態例1の化合物半導体積層構造30のGaAsP層34、実施形態例2の化合物半導体積層構造40のGaAsP層44、及び実施形態例3の化合物半導体積層構造50のGaAsP層54のいずれかと同じ構成のGaAsP層である。
【0046】
本実施形態例のフォトダイオード80では、n型GaAs基板82とn型InP層86とのの間に、バッファ層としてGaAsP層84を介在させていることにより、n型InP層86及びその上の化合物半導体層が良好な結晶性でエピタキシャル成長している。従って、本実施形態例のフォトダイオード80は良好な特性を示すことができる。
【0047】
本実施形態例の化合物半導体積層構造を利用した素子として半導体レーザ素子及びフォトダイオードを例に挙げているが、これに限らず、高移動度トランジスタに適用することもできる。
【0048】
【発明の効果】
本発明によれば、GaAs基板とInP層との間にGaAsP層を介在させ、GaAsP層の歪補償効果並びにAs脱離及びP脱離防止効果により、良好な結晶性を示し、表面モフォロジーが良好で、膜厚が臨界膜厚以上のInP層をGaAs基板上に有する化合物半導体積層構造を実現することができる。
【0049】
また、本発明方法によれば、GaAs基板とInP層との間にGaAsP層を介在させ、GaAsP層の歪補償効果並びにAs脱離及びP脱離防止効果によって、良好な結晶性を示し、表面モフォロジーが良好で、膜厚が臨界膜厚以上のInP層をGaAs基板上に有する化合物半導体積層構造を作製することができる。
本発明に係る化合物半導体積層構造を光学素子に適用することにより、InP基板に比べコストの低いGaAs基板を用いて光通信用の1.3μm〜1.5μm波長帯の光学素子を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)及び(b)は、それぞれ、実験例1で作製した積層構造の層構造を示す断面図、及びInP層の表面形状を光学顕微鏡で撮影した写真の写しである。
【図2】図2(a)及び(b)は、それぞれ、比較実験例で作製した積層構造の層構造を示す断面図、及びInP層の表面形状を光学顕微鏡で撮影した写真の写しである。
【図3】実験例1の積層構造のInP層の表面粗さ(RMS)と比較実験例の積層構造のInP層の表面粗さ(RMS)との対比である。
【図4】実験例2で得たGaAsP層の膜厚/臨界膜厚と表面粗さ(RMS)との関係を示すグラフである。
【図5】GaAs(1−x) Px 層のP組成xと臨界膜厚との関係、つまり格子不整合性と臨界膜厚との関係を示している。
【図6】実施形態例1の化合物半導体積層構造の構成を示す断面図である。
【図7】実施形態例2の化合物半導体積層構造の構成を示す断面図である。
【図8】実施形態例2の改変例の化合物半導体積層構造の構成を示す断面図である。
【図9】実施形態例3の化合物半導体積層構造の構成を示す断面図である。
【図10】実施形態例の半導体レーザ素子の構成を示す断面図である。
【図11】実施形態例のフォトダイオードの構成を示す断面図である。
【符号の説明】
10……実験例1試料の積層構造、12……GaAs基板、14……GaAs0.95P0.05層、16……InP層、20……比較実験例の積層構造、22……GaAs基板、24……InP層、30……実施形態例1の化合物半導体積層構造、32……GaAs基板、34……GaAs0.95P0.05層、36……InP層、40……実施形態例2の化合物半導体積層構造、42……GaAs基板、43……GaAs(1−x) Px 層、44……InP層、45……実施形態例2の改変例の化合物半導体積層構造、46、47、48……GaAs(1−x) Px 層、50……実施形態例3の化合物半導体積層構造、52……GaAs基板、54……GaAs(1−x) Px 層、56……InP層、60……半導体レーザ素子、62……n型GaAs基板、64……n型GaAsP層、66……n型InPクラッド層、68……InGaAsP活性層、70……p型InPクラッド層、72……p側電極、74……n側電極、80……実施形態例のフォトダイオード、82……n型GaAs基板、84……n型GaAsP層、86……n型InP層、88……真性(i−)In0.53Ga0.47As層、90……p型In0.53Ga0.47As層、92……p側電極、94……n側電極。
Claims (13)
- GaAs基板上に膜厚が臨界膜厚以上のInP層を有する化合物半導体積層構造において、
GaAs基板とInP層の間にGaAsP層が介在していることを特徴とする化合物半導体積層構造。 - GaAsP層は、膜厚がGaAsP層の臨界膜厚の1.4倍を超えないことを特徴とする請求項1に記載の化合物半導体積層構造。
- GaAsP層をGaAs(1−X) Px で表示するとき、xが0.005以上0.9以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の化合物半導体積層構造。
- GaAsP層が、GaAsに対する格子不整合性が相互に異なり、かつ階段状に小さくなる複数層のGaAsP層で構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の化合物半導体積層構造。
- GaAsP層が、GaAsに対する格子不整合性が連続的に小さくなる傾斜組成構造の1層のGaAsP層で構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の化合物半導体積層構造。
- GaAsP層が、GaAsに対する格子不整合性が連続的に小さくなる傾斜組成構造の複数層のGaAsP層で構成され、かつ傾斜組成構造の一のGaAsP層の最上部の格子不整合性がその上のGaAsP層の最下部の格子不整合性より小さくないことを特徴とする請求項1又は2に記載の化合物半導体積層構造。
- 請求項1から6のいずれか1項に記載の化合物半導体積層構造を有することを特徴とする発光素子。
- 請求項1から6のいずれか1項に記載の化合物半導体積層構造を有することを特徴とする受光素子。
- GaAs基板上に膜厚が臨界膜厚以上のInP層を有する化合物半導体積層構造の作製方法であって、GaAs基板上にInP層を成膜するに当たり、
GaAs基板上にGaAsP層を成膜する工程と、
次いで、GaAsP層上に膜厚が臨界膜厚以上のInP層を成膜する工程とを有することを特徴とする化合物半導体積層構造の作製方法。 - GaAs基板上にGaAsP層を成膜する工程では、膜厚が臨界膜厚の1.4倍を超えないGaAsP層を成膜することを特徴とする請求項9に記載の化合物半導体積層構造の作製方法。
- GaAs基板上にGaAsP層を成膜する工程では、GaAsに対する格子不整合性が相互に異なり、かつ階段状に小さくなる複数層のGaAsP層を成膜することを特徴とする請求項9又は10に記載の化合物半導体積層構造の作製方法。
- GaAs基板上にGaAsP層を成膜する工程では、GaAsに対する格子不整合性が連続的に小さくなる傾斜組成構造のGaAsP層を成膜することを特徴とする請求項9又は10に記載の化合物半導体積層構造の作製方法。
- GaAs基板上にGaAsP層を成膜する工程では、GaAsに対する格子不整合性が連続的に小さくなる傾斜組成構造の複数層のGaAsP層で構成され、かつ傾斜組成構造の一のGaAsP層の最上部の格子不整合性がその上のGaAsP層の最下部の格子不整合性より小さくない複数層のGaAsP層を成膜することを特徴とする請求項9又は10に記載の化合物半導体積層構造の作製方法。
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WO2013065639A1 (ja) * | 2011-11-01 | 2013-05-10 | 住友電気工業株式会社 | 受光素子、エピタキシャルウエハおよびその製造方法 |
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2003
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