JP5257967B2 - 半導体光素子 - Google Patents

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本発明は、光機能を有する半導体光素子に関する。
半導体光素子とは、pn接合またはpinなどダブルヘテロ接合を有する発光ダイオード(以下、「LED」という。)、半導体レーザダイオード(以下、「LD」という。)等の光を発生する半導体素子をいう。
近年、“Blu−Ray Disk”などの高密度光ディスク用光源として窒化ガリウム(以下「GaN」という。)をベースとした青紫外域窒化物半導体レーザがすでに実用化されている。また、同様な材料系により紫外、青、緑色域LEDや白色LEDもすでに市販されている。これらの発光素子の活性層材料には、主にInを含む窒化物半導体である窒化インジウム(以下「InN」)結晶とGaN結晶の混晶であるInGaN混晶が用いられている。
半導体光素子の発光波長は活性層であるInGaN混晶のIn組成を変えることで制御が可能である。このInGaN混晶におけるIn組成制御に関する技術としては例えば下記非特許文献1がある。この論文ではGaNとInNの物性値的な特性の差(格子定数など)により、相分離が起きやすく均一なIn組成の制御が困難であることが示されている。このような現象はIn組成の増加に伴い顕著となる。
また、下記非特許文献2ではInGaN混晶を活性層に用いたLEDにおいてIn組成を変化させてその発光スペクトルを調べている。この文献ではIn組成を増加させた場合、発光波長が600nmまでのLEDは単峰性のピークを示すが、それ以上のIn組成(〜50%)では組成分離により発光波長が450nmと650nm付近に2つに別れてしまうという結果を報告している。つまり赤色域で発光するLEDはより短波長で動作するLED構造に比べIn組成増加に伴う相分離や結晶品質の低下の影響が大きく、高効率発光を示すLED構造の作製が困難である。
また、下記非特許文献3ではIn組成を増加しレーザ発振波長を450nmに制御したLDについて調べ、In組成の増加により組成分離や結晶品質の低下が起こり、400nm付近で発振するLDに比べ閾値電流密度の増大や素子寿命が短くなると報告している。
また、下記非特許文献4には現在482nmまでLDの長波長化が可能であるとの報告がある。さらなる長波長化を目指すにはLDの場合特に、InGaN活性層中のIn組成揺らぎを抑制する必要がある。In組成揺らぎはLEDの場合発光効率の向上に寄与するが、LDの場合発振波長よりも低いエネルギーを持つIn組成過剰領域はすべて内部損失として働き、閾値電流密度の増大の要因となる。未だ実現されていない純緑色半導体レーザを実現するには従来のInGaN混晶に代わる新しい活性層材料が必要であると考えられる。
InGaN混晶中のIn組成揺らぎはLEDにおいては発光効率の寄与につながると述べたが、上述の非特許文献2で報告されているように赤色域まで発光波長を長波長化しようとした場合、In組成の増加による組成分離、結晶品質の低下が主要因となりデバイス品質の著しい低下を招く。つまりLEDの場合もLDの場合ほどではないが、In組成増加に伴う結晶性の低下により赤色域(波長600nm以上)への長波長化は困難性が高い。
ところで上記の問題の解決手法のひとつとしてInN/GaN超格子、多重量子井戸構造をInGaN混晶に代わる活性層として用いる手法が下記非特許文献5乃至7に開示されている。非特許文献5乃至7では、有機金属気相成長法によりInNとGaNを交互に供給し、上記のInGaN混晶に代わる活性層として応用しようとする試みが報告されている。
I−hsiu Ho et al.、APL.、vol.69、2701−2703(1996) T.Mukai et al.、JJAP、vol.38、3976−3981(1999) S.Nakamura et al.、APL.、vol.76、22−24(2000) 高橋清監修、ワイドギャップ半導体光・電子デバイス、森北出版、217ページ H.K.Cho et al,、JCG.、vol.281、349−354 S.Y.Kwon et al.、Phys.Stat.Sol.(c)、vol.0、No.7、2830−2833(2003) S.Y.Kwon et al.、APL.、vol.86、192105(2005) S.B.Che et al.、APL.、vol.86、261903(2005)
しかしながら、上記非特許文献5に記載の技術では、InN/GaN多重量子井戸構造の成長に有機金属気相成長法を用いている。有機金属気相成長法では窒素源として通常アンモニア(NH)を用いており、基板温度が低いとアンモニアの熱分解が促進されず、成長速度が極端に下がる。よって一般的に有機金属気相成長法での成長温度は700℃以上となっている。このような温度域においてInNは他の窒化物半導体(GaNやAlN)と比べ熱的に不安的であり、InN層自体の成長が困難である。また、この論文ではInN薄膜層の形成とその薄膜InN/GaN量子井戸構造の作製について述べているが、その量子井戸界面層は非常に粗い。これは薄膜InN層成長制御の不完全性を示しており、InN層自体も熱的に解離し、GaNと混晶化することによりInGaN層を形成しているものと考えられる。つまりこの論文の手法ではIn組成が高いInGaN混晶活性層における問題と同様にIn過剰領域が形成されているものと考えられる。
非特許文献6に記載の技術でも、やはり有機金属気相成長法を用いているため成長温度が高い(〜700℃)。非特許文献5との違いは成長中断を用いることにより界面平坦性の向上を目指しており、事実断面透過型電子顕微鏡像は比較的良好な界面を示している。ただし、多重量子井戸構造からの発光は390nmと短い。これは井戸層の厚さが1nm程度と薄膜になっているものの、成長中断や高温成長によりIn組成の比較的少ないInGaN混晶が形成されており、この混晶層からの発光により400nm以下という短波長域からの発光が得られていると考えられる。つまりこの論文の手法ではInN単層膜形成制御が実現できているとは言い難い。
一方で有機金属気相成長法とは異なり、分子線エピタキシー法(以後MBE)は低温域での成長に有効な手法である。これは窒素源にアンモニアではなく、ラジカル窒素源を用いているため、極端に言えば室温下でも窒化物の成長が可能である。またMBE法は原子層オーダーの超急峻な膜厚制御が可能である。非特許文献8ではInN/GaN単一量子井戸構造に関する研究結果が報告されている。この論文ではMBE法を用いることによって、InN層形成を透過型電子顕微鏡像により確認している。しかし、InNとGaNの大きな格子不整合度(約11%)によりInN層厚が8nm程度では格子緩和により多数の欠陥が発生することがわかっており、デバイス品質のInN/GaNヘテロ構造の作製が困難であった。
そこで、本発明は、上記課題を鑑み、新規な半導体光素子を提供することを目的とする。
本発明の一手段に係る半導体光素子は、第一の半導体層と、InNからなる又はInNを主成分とする第二の半導体層と、が交互に積層されている活性層を有し、この活性層において第一の層と第二の層とが擬似格子整合系を形成している。ここで「InNを主成分とする半導体層」とは、層中にInNを50%以上含む半導体層を意味する。また「擬似格子整合系」とは、第二の層が、第一の層に対し格子緩和を起こさず歪んだ状態でコヒーレント成長をしている系を意味する。
また、本発明の他の一手段に係る半導体光素子は、第一の半導体層と、厚さが1分子厚のInNからなる又はInNを主成分とする第二の半導体層と、が交互に形成されている活性層を有する。ここで「分子厚」とは、In原子とN原子とで形成する分子の長さを意味する。限定されるわけではないが、例えばc軸方向に成長する結晶の場合は結晶格子におけるc軸の長さの半分を意味する。
また、本発明の他の一手段に係る半導体光素子は、第一の半導体層と、第一の半導体層中のIII族原子層1層をIn原子層1層で置き換えた、異種金属原子層である第二の第二の半導体層と、が交互に形成されている活性層を有する。
また、本発明の他の一手段に係る半導体光素子は、第一の半導体層と、厚さが1分子厚の島状に形成されたInNからなる第二の半導体層と、が交互に形成されている活性層を有する。
また、上記各手段において、限定されるわけではないが第一の半導体層は、GaNからなる又はGaNを主成分とする層であることが好ましく、例えばInGaN、AlGaN、AlGaInN混晶を用いることができる。
また、上記各手段において、限定されるわけではないが第一の半導体層は、第二の半導体層よりも厚いことが好ましい。
また、上記各手段において、限定されるわけではないが第一の半導体層の数は第二の層の数よりも一層多いことが好ましい。
また、上記各手段において、限定されるわけではないが第一の半導体層の厚さは、第二の半導体層の厚さの1倍以上30倍以下であることが好ましい。
また、また、上記各手段において、限定されるわけではないが、更に、活性層を挟んで形成される一対のガイド層と、活性層及び一対のガイド層を挟んで形成される一対のクラッド層と、一対のクラッド層のそれぞれに接続される一対のコンタクト層と、一対のコンタクト層のそれぞれに接続される第一の電極及び第二の電極と、を有することも好ましい。
また、上記各手段において、限定されるわけではないが、更に、層を挟んで形成される一対のクラッド層と、一対のクラッド層のそれぞれに接続される一対のコンタクト層と、一対のコンタクト層のそれぞれに接続される第一の電極及び第二の電極と、
を有することが好ましい。
また、上記において、第二の半導体層は、1分子層厚以下のInN層の熱的安定性がバルクInNとは異なり、バルクInNの高温側臨界成長温度である500℃以上の700℃まで熱的に安定であり、1分子層以下のInN層の成長を可能とすることも好ましく、また、第二の半導体層は、1分子層厚以下のInN層の熱的安定性がバルクInNと異なるという特性を利用し、1分子層厚以上のInNを供給しても、1分子層InN層以外(つまり2分子層以上)の余分なInN層は熱分解して成長中になくなり、1分子層以下のInN層のみが自己組織的に形成する手法を用いることで、分子層レベルで平坦な界面急峻性を実現することも好ましい。
以上、本発明により、新規な半導体光素子を提供することができる。
本発明者らは、半導体光素子の活性層において、InN層の厚さを十分薄く制御した擬似格子整合系InN/GaN多重量子井戸構造を用いることで、結晶品質の低下、組成分離の影響を根本から防ぎ、In組成を容易に制御・増加させることができる点に想到し、本発明を完成するに至った。
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は多くの異なる実施の形態、実施例として表すことができ、本実施形態、実施例に狭く限定されることがない。
(実施形態1)
図1は、本実施形態に係るレーザダイオード(以下「LD」という。)の概略図である。本実施形態に係るLDは、図1に示すとおり基板1、n型コンタクト層2、n型クラッド層3、n型ガイド層4、活性層5、p型ガイド層6、p型クラッド層7、p型コンタクト層8を順に積層して構成されている。またn型コンタクト層3上には第一の電極9が、p型コンタクト層9上には第二の電極10が形成されており、第一と第二の電極の間に電圧を印加することで活性層5に正孔及び電子を注入し、発光させることが可能である。
基板1は、この上部に形成される各層のGaN等の結晶を成長させるために用いられるものであって、限定されるわけではないが例えばサファイア基板やSiC基板、GaNバルク基板を基板に用いることができ、また、その他の基板にHVPE、MOCVDなどによりGaN結晶からなる層を積層させたものであってもよい。なお、基板1の表面の極性や表面処理(窒化処理)により今後積層されていく層の極性が決定されていくが、表面の極性としてはIII族極性面、V族極性面のいずれであってもよい。
n型コンタクト層2は、n型クラッド層との導通を図るために形成される層であり、限定されるわけではないが例えばGaN結晶、InGaN混晶又はAlGaN混晶にSi等を不純物として注入した層を好適に用いることができる。
n型クラッド層3は、電子を活性層5に注入するためのものであって、限定されるわけではないが例えばAlGaN混晶やGaN結晶、InGaN混晶にSi等を不純物として注入した層を好適に用いることができる。
n型ガイド層4は、n型クラッド層と異なる屈折率を有する層である。n型ガイド層4は、n型クラッド層3と活性層5の間の屈折率差を利用し、発する光を活性層5に効率よく閉じ込め閾値電流密度の低減させるものであって、限定されるわけではないが例えばGaN結晶、InGaN混晶、AlGaN混晶からなる層を好適に用いることができる。
活性層5は、障壁層としてのGaN51層と、井戸層としてのInN層52とを交互に積層して構成されるInN/GaN多重量子井戸構造となっており、しかもGaN層51とInN層52とが擬似格子整合系を形成している。ここで本実施形態に係る「擬似格子整合系」とは、井戸層であるInN層が、障壁層であるGaN層に対し格子緩和を起こさず歪んだ状態でコヒーレント成長をしている系を意味する。この積層の概略図を図2に示す。なお図2では合計11層の例を示しているが多重量子井戸構造が格子緩和を起こさない限りにおいて層の数は制限されない。なお、InN層が一層の単量子井戸構造であってもよい。
通常InN結晶とGaN結晶は約11%の格子不整合度を有しており、通常の手法で層を形成させたのでは格子緩和を起こして欠陥が発生してしまう。しかし本実施形態では、擬似格子整合系を形成しつつ積層させることで格子緩和を起こさせることなく質の高い活性層を実現することができる。本発明者らはこの実現について検討を行ったところ、InN層の厚さを極めて薄く制御することで上記擬似格子整合系を実現することができることを見出した。GaN層の上にInN層を成長させる場合、その厚さは3分子厚以下、より望ましくは1分子厚以下に制御する。逆に言えば、これより厚いInN層成長を行うと結晶中にミスフィット転位が発生し、結晶品質の大幅な低下が懸念されてしまう。なおここで「分子厚」とは、In原子とN原子とで形成する分子の長さを意味する。「分子厚」は限定されるわけではないが、例えばc軸方向に成長する結晶の場合は結晶格子におけるc軸の長さの半分を意味する。本実施形態に係るInN層の場合、例えば図3で示すように、InNが形成する結晶格子におけるIn原子とN原子との距離の成長方向(C軸)の1/2の長さに相当し、理想的には2.9Åである。即ち、実際の3分子厚は概ね1nm以下と見積もることができるため1nm以下であることが望ましく、より望ましい1分子厚は概ね0.3nm以下であると見積もることができるため0.3nm以下である。なお、GaN層の場合の1分子厚は、上記と同様の方法で考えると理想的には2.6Åである。
また本実施形態に係る活性層5は、InN層の厚さとGaN層の厚さを制御することで等価的なIn組成を容易に増減させることができる。例えば各InN層の厚さを1分子厚(0.3nm)とし、GaN層の厚さを1.2nmとすれば、等価的なIn組成は20%となり、535nm付近の純緑色域まで発光波長の長波長化が可能となる。従来のInGaN混晶活性層を用いたLD構造では、緑色域までレーザ発振波長を拡張する場合、InGaN混晶中のIn組成を増加させる必要があるが、この場合In組成増加に伴い組成分離が起きやすくなり、結晶品質も著しく低下してしまう。またこの場合In組成を増加させることとなるためV/III比(つまりN原料の供給量など)もその都度最適な値へと変えなくてはならず、その制御は容易ではない。これに対し、本実施形態に係るLDは、InN層とGaN層との厚さを変えるのみでIn組成を増加させることができる。即ちInN/GaN量子井戸構造はIn組成の増加における制約が少なく、緑色域でのLD用活性層として有望である。なお、GaN層51の厚さは適宜調整可能であり、限定されるわけではないが、InN層52との擬似格子整合系を形成する観点から厚さは少なくとも1分子厚(0.3nm)以上あることが好ましい。これにより等価的なIn組成を最大50%程度まで制御ができると考えられる。
また本実施形態のLDにおける活性層5は、InN層領域に局在した励起子により高効率発光が期待される。本実施形態にかかる活性層5は通常のInGaN混晶を含む活性層とは異なり、In組成の面内揺らぎが殆ど起こらず、ポテンシャルを層状に規則的かつ均一に形成することができる。これにより高In組成域InGaN混晶活性層で問題であった内部吸収損失の問題を解決し、レーザ発振においても活性層5が有効に作用すると期待できる。
以上のことから本実施形態に係るInN/GaN量子井戸構造はInGaN混晶活性層で起こる問題を根本から解決することが可能であり、InGaN混晶活性層に代わる新しい活性層材料として有望である。
なお、本実施形態では井戸層にInN層を用い、障壁層にGaN層を用いているが、擬似格子整合系を形成できる限りにおいて限定されず、例えば障壁層にはAlを含ませる態様も可能である。この場合、InN層とGaN層の間に生じる圧縮歪みを補償できる歪補償型の量子井戸構造となる。これにより歪みの蓄積による結晶性の悪化を防止することができる。またもちろん、等価的なIn組成を増加させて長波長化を図るため、InGaN混晶層を用いることもできるし、InGaAlN混晶層とすることもできる。なお、また障壁層にInを含ませる場合、In組成は相分離や結晶品質の低下を防ぐため、その割合はIII族元素成分全量に対し0.1以下であることが望ましい。また、活性層中に上記井戸層及び障壁層とは別に歪補償のための中間層を配置することもできる。中間層の構成は上記障壁層と同様の材料を採用することができる。また、井戸層としてもInN層からなる層とすることが好ましいが、擬似格子整合系を形成することができればに限られず層中にInNを50%以上含むInNを主成分とする層(例えばInGaN、AlInN、AlGaInN)とすることも可能である。
p型ガイド層6は、上記n型ガイド層6と同様の機能を有するものであって、活性層5と後述するp型クラッド層7と異なる屈折率を有する層である。p型ガイド層6は、屈折率差を利用し活性層5に光を効率よく閉じ込め、閾値電流密度を低下させるためのものである。即ち、p型ガイド層6とn型ガイド層7とは、一対でInN/GaN多重量子井戸活性層5を挟み込み、光を閉じ込めて光の高効率化を達成することができる。この層としては、限定されるわけではないが例えばGaN結晶、InGaN混晶、AlGaN混晶にMg等を不純物として注入した層を好適に用いることができる。
p型クラッド層7は、正孔をInN/GaN多重量子井戸活性層5に注入するために用いられるものであり、この層としては、限定されるわけではないが例えばAlGaN混晶、GaN結晶又はInGaN混晶にMg等を不純物として注入した層を好適に用いることができる。
p型コンタクト層8は、正孔をInN/GaN多重量子井戸活性層5に注入するために用いられるものであって、限定されるわけではないが例えばGaN結晶やInGaN混晶、AlGaN混晶にMg等を不純物として注入した層を好適に用いることができる。
第一の電極9は、InN/GaN多重量子井戸活性層5に電子を注入させるために用いられるものであって、導電性を有する限りにおいて限定されるわけではないが、例えばアルミニウム(Al)やチタン(Ti)、金(Au)等により構成される電極層を好適に用いることができる。
第二の電極10は、InN/GaN多重量子井戸活性層5に正孔を注入するために用いられるものであって、導電性を有する限りにおいて限定されるわけではないが、例えばパラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)、金(Au)等により構成される電極層を好適に用いることができる。
以上、本実施形態に係るLDは、第一の電極及び第二の電極の間に電圧が印加され、活性層5に電子及び正孔が注入されることで発光する。
InGaN混晶を活性層に用いたLEDではInGaN混晶中のIn組成揺らぎを逆に利用し、In組成が高い領域に局在した励起子発光を利用することで転位密度が高いGaN系LEDにおいて高効率発光を実現している。しかし、これはLDにおいては負の要因として働き、レーザ発振波長よりも長い波長で吸収が起こる高In組成領域は吸収損失となり閾値電流密度の増大につながっている。本実施形態で提案するInN/GaN量子井戸構造によると、超薄膜InN層によりポテンシャルが形成されているためInGaN混晶におけるIn組成揺らぎが起きず、均一な局在ポテンシャル形成が可能である。つまり、GaN障壁層中の励起子は均一なポテンシャルを有するInN領域付近に局在し高効率発光を示すものと期待される。よってInN/GaN多重量子井戸活性層では特に高In組成InGaN混晶活性層で問題となった高In組成領域による吸収損失が見られず、長波長域でも高効率発光、閾値電流密度の低いレーザ発振を得ることが可能であると考えられる。
ここで、本実施形態に係るLDの製造方法について説明する。本実施形態に係るLDの製造方法は、基板1にn型コンタクト層2を形成する工程、n型クラッド層3を形成する工程、n型ガイド層4を形成する工程、活性層5を形成する工程、p型ガイド層6を形成する工程、p型クラッド層7を形成する工程、p型コンタクト層8を形成する工程、第一の電極9を形成する工程、第二の電極10を形成する工程、を有している。
基板1にn型コンタクト層2を形成する工程としては、限定されるわけではないが例えば有機金属気相成長法、MBE法又はパルスレーザー堆積法を用いることができる。なお、基板1としてGaNバルク基板やGaN層を形成した基板を用いる場合、本工程は省略可能である。
n型クラッド層3を形成する工程としては、限定されるわけではないが、MBE法、パルスレーザー堆積法を用いることができる。MBE法で形成する場合、基板温度は形成する層の材料によって異なるため適宜調整が可能であるが、例えばn型クラッド層3としてGaNを用いる場合、600℃以上800℃以下であることが好ましい。またMBE法で形成する場合、n型クラッド層形成の前に基板1を有機洗浄、熱処理しておくことも好ましい。この熱処理の温度も形成する層の材料によって異なるが、GaN層を形成する場合は800℃以上1000℃以下が好ましい範囲である。なお、n型ガイド層4を形成する工程は、上記n型クラッド層3を形成する工程とほぼ同様の工程とすることができる。なお、本工程は、有機金属気相成長法であっても可能ではある。
活性層5を形成する工程は、擬似格子整合系の量子井戸構造を形成することが出来る限りにおいて限定されるわけではないが、低温成長、原子・分子レベルの超薄膜制御の観点からMBE法、パルスレーザー堆積法が好ましい。MBE法で形成する場合、基板1の加熱温度は、形成する層の材料によって異なるため、限定されるわけではないが、III族極性の場合、500℃以上700℃以下の範囲内にあることが好ましく、600℃以上700℃以下の範囲内にあることがより好ましい。特に本実施形態に係る活性層5では、3分子厚以下の厚さとなっているためバルク時とは異なる熱的安定性を実現し、通常500℃以下の温度で行う必要があると考えられていた層の成長温度を500℃(In極性InNバルク結晶を成長させた場合の高温側臨界温度)より高くすることができ、600℃以上であっても可能となる。つまり、GaNと同等の高い成長温度で活性層5を形成することが可能となり、この高温化は結晶品質を飛躍的に向上し、LD構造を実現する上で極めて重要となる。このことはV族極性においても同様に考えることができる。
本実施形態に係る活性層は井戸構造であるため、障壁層と井戸層とを交互に積層することで形成できる。本実施形態に係るLDでは、InN井戸層の成長制御が特に重要である。膜厚はGaN層の上に3分子厚以下、好ましくは1分子厚以下に制御する。これによりInN/GaN間の格子不整合度による格子緩和を防ぎ、InN井戸層がコヒーレントにGaN障壁層上に成長した擬似格子整合系量子井戸構造が実現できる。InGaN混晶を用いて長波長化を実現しようとする場合必ずIn組成増大に伴う結晶品質の悪化が懸念されるが、本実施形態に係るLDではこのような虞が殆どない。特に、井戸層と障壁層の厚さの比を制御することで、活性層から発せられる光の波長を容易に制御することもできるようになる。これにより結晶品質を維持したまま緑色・赤色域まで長波長化が実現可能となる。
なお井戸層を1分子厚程度に制御するということは、1分子厚程度の厚さ揺らぎが光学特性などのデバイス動作に大きく影響を及ぼすことを意味する。つまり、1分子層InN/GaN量子井戸活性層において厳密な膜厚・界面制御が要求される。しかしながらこの点については、オーダリングによる超平坦界面形成により解決が可能である。InN/GaN系などの高歪系へテロ構造においては自己組織化により1分子層程度の厚さであれば非常に平坦な界面を形成することができる(D.Doppaiapudi et al.、JAP.、vol.84、1389−1395(1998))。事実我々はこのオーダリングによるものと考えられる非常に急峻なヘテロ界面を有するInN/GaN多重量子井戸構造を実現している。
p型ガイド層6を形成する工程は、上記n型ガイド層4を形成する工程と材料が異なる以外ほぼ同様の工程を採用することができる。また、p型クラッド層を形成する工程も上記n型クラッド層を形成する工程と材料が異なる以外ほぼ同様の工程を採用することができる。
第一の電極9を形成する工程は、限定されるわけではないが、真空蒸着により形成することができる。第一の電極9はn型コンタクト層2の上に形成されるため、例えばフォトリソグラフィとドライエッチングを用いてn型コンタクト層2を露出させた後、第一の電極9を形成させる態様が好ましい。なおフォトリソグラフィを採用する場合、フォトリソグラフィに先立ち、SiO等の保護膜をプラズマCVD法等で全面に製膜することも好ましい態様である。なお第一の電極9は、形成した後、窒素雰囲気下でアニールすることでオーミック電極とすることが好ましい。
第二の電極10を形成する工程は、限定されるわけではないが、真空蒸着により形成することができる。本工程は限定されるわけではないが、例えばSiO等の保護膜をプラズマCVD法等で全面に成膜し、p型コンタクト層8上に電流注入窓をパターニングにより形成し、その部分に第二電極10を形成することが好ましい形態である。また第二の電極10も、第一の電極と同様、窒素雰囲気下でアニールすることオーミック電極とすることが好ましい。なお、上記アニール、保護膜の製膜は第一の電極9の形成工程のものと同時に行うことができる。
以上の工程により、本実施形態に係るLDを製造することができる。
(実施形態2)
上記実施形態1のような擬似格子整合系の量子井戸構造ではInN井戸層厚を3分子厚以下、より望ましくは1分子厚以下に制御する例を示しているが、本実施形態では、更に、分数分子厚の井戸層となっている。ここで「分数分子厚」とは、1分子厚の層が面状に均一ではなく、島状に形成されている状態をいう。このような分数分子厚においても局在励起子が存在しうると考えられ、高効率発光の実現が可能である。この分数分子厚の半導体光素子の活性層の概念図を図4に示しておく。
(実施形態3)
図5は本実施形態に係る半導体発光ダイオード(以下「LED」という。)の断面概略図である。本実施形態に係るLEDは、図5に示すとおり、基板1、n型コンタクト層2、n型クラッド層3、InN/GaN多重量子井戸活性層5、p型クラッド層7、p型コンタクト層8、を順に積層して構成されており、n型コンタクト層2上には第一の電極9が、p型コンタクト層8上には第二の電極10がそれぞれ積層されている。本実施形態における上記各層、各電極は、機能においてほぼ実施形態1と同様であり、その説明については省略する。
以上の実施形態に係る半導体素子の効果を確認すべく、実際にInN/GaN多重量子井戸活性層(以下「サンプル」という。)を作成し、評価した。以下説明する。
(実施例1)
(InN/GaN多重量子井戸活性層の作製)
まずC面サファイア基板に対し、有機金属気相成長法を用いてSiがドープされたGa極性GaN層を2μm成長させた。即ち極性をIII族極性とした。
次に、このGaN層を成長させた基板を有機洗浄した後、MBE装置に導入し、860℃で熱処理した後、同じ温度で100nmのGaN層を形成し、その後基板温度を600℃に降温し1分子厚(0.3nm)のInN層と14nmのGaN層を交互に40層ずつ合計80層成長させ、更にこの上にキャップ層としてGaN層を20nm成長させた。なお、本実施例では1分子厚のInN層と14nmのGaN層を交互に計10層形成するごとに中間層としてGaN層を100nm形成した。本実施例の断面概略図を図6に示す。
(X線回折測定)
図7に、本実施例に係るサンプルのX線回折測定結果(XRD測定結果)を示す。図7が示すとおり、本実施例に係るサンプルにおいて、InN/GaN周期構造の形成を示すサテライトピークが明瞭に確認できた。本サンプルにおいては中間層として100nmのGaN層を挿入しているため、多重量子井戸構造からのサテライトピークとGaN中間層のフリンジピークも確認できている。図7のサテライトピークからInN/GaN多重量子井戸において急峻なヘテロ界面を有する周期構造が形成されていることを確認できる。また通常、III族極性InN単層膜の高温側成長温度の限界は500℃であり、これ以上高温でInN単膜を成長するとInNの分解が起こり、In金属が表面に析出しInN結晶成長が起こらないと考えられてきた。しかしながら本実施例のサンプルでは基板温度600℃というInN単層膜の場合に比べ100℃高い温度においてInN層形成による周期構造が確認できることから、1分子層InNがバルクInNとは異なり、優れた熱的安定性を有していることが予測された。このような急峻なサテライトピークを有するXRD測定結果は今までに報告されていない。これは有機金属気相成長法に比べMBE法による低温成長・極薄膜成長制御の優位性を示しており、またInNの臨界膜厚を考慮した成長制御によるものといえる。
(断面写真)
図8に本実施例の結果得られたサンプルの透過型電子顕微を用いた断面写真を示す。図8に示すとおり、本実施例のサンプルでは約1分子厚のInN層の形成が確認でき、格子緩和による欠陥の発生は見られず、非常に急峻な界面が実現されていた。本実施例により擬似格子整合系の量子井戸構造を確認することができた。また図にみられるような超急峻1分子厚InN井戸層の形成はオーダリング効果によるものと考えられ、InNとGaN間の高歪量に起因しているものと考えられる。このような良好なヘテロ界面、1分子厚という薄膜InN井戸層を有する構造の実現は窒化物半導体関連ではいままでに報告はなく、InN井戸層の膜厚・成長温度制御とMBE法による成長手法による寄与も大きいものといえる。
(実施例2)
(InN/GaN多重量子井戸活性層の作製)
まずC面サファイア基板に対し、有機金属気相成長法を用いてSiがドープされたGa極性GaN層を2μm成長させた。即ち極性をIII族極性とした。
次に、このGaN層を成長させた基板を有機洗浄した後、MBE装置に導入し、860℃で熱処理した後、同じ温度で100nmのGaN層を形成し、その後基板温度を600℃に降温し1分子厚(0.3nm)のInN層と20nmのGaN層を交互に10層ずつ合計20層成長させ、更にこの上にキャップ層としてGaN層を20nm成長させた。なお、本実施例では実施例1とは異なり、中間層を設けず作成した。
(X線回折測定)
図9に、本実施例に係るサンプルのX線回折測定結果(XRD測定結果)を示す。図9が示すとおり、本実施例に係るサンプルにおいて、InN/GaN周期構造の形成を示すサテライトピークが明瞭に確認できた。図9のサテライトピークからInN/GaN多重量子井戸構造の周期構造が形成されていることが確認でき、また明瞭でかつシャープなサテライトピークが観測されることから、急峻な界面が形成されていることがわかる。本実施例のサンプルにおいてもInN層形成により周期構造が確認でき、1分子層InNがバルクInNとは異なり、優れた熱的安定性を有していることが予測された。本実施例によっても有機金属気相成長法に比べMBE法による低温成長・極薄膜成長制御の優位性が示されたと考えることができる。
(フォトルミネッセンス)
図10に、本実施例で作成したサンプルの室温フォトルミネッセンス測定結果の一例を示す。本実施例のサンプルは室温下で446nm近傍にピークを有しており、単峰性の量子井戸構造に起因した発光を示した。この結果は1分子層InNに対し20nmという十分に厚いGaN層を用いた例であり、このGaN層の厚さを薄くすることで簡単に長波長化することが可能であることが容易に想像できる。また、本実施例で作成したサンプルは、欠陥が少なく高品質であるため室温下においても発光を確認することができた。
(実施例3)
(InN/GaN多重量子井戸活性層の作製)
本実施例に係るサンプルは、ほぼ実施例1と同様であるが、InN/GaN多重量子井戸活性層の構造及び層形成温度が異なる。具体的には、GaN層を成長させた基板を有機洗浄した後、MBE装置に導入し、860℃で熱処理した後、同じ温度で100nmのGaN層を形成し、その後基板温度を650℃に降温し、3分子厚(1nm)のInN層と14nmのGaN層を交互に40層ずつ合計80層供給させ、更にこの上にキャップ層としてGaN層を20nm成長させた。なお、本実施例では実施例1と異なり、中間層としてのGaN層は形成しなかった。
(X線回折測定)
また図11に、本実施例に係るサンプルのX線回折測定結果(XRD測定結果)を示す。図11が示すとおり、本実施例に係るサンプルにおいてもInN/GaN周期構造の形成を示すサテライトピークが明瞭に確認できた。本サンプルにおいてもサテライトピークの半値幅が非常に狭いことから、急峻な界面が形成されていることがわかる。また通常、III族極性InN単層膜の高温側成長温度の限界は500℃であり、これ以上高温でInN単膜を成長するとInNの分解が起こり、In金属が表面に析出しInN結晶成長が起こらないと考えられてきた。しかしながら本実施例のサンプルでは650℃の高温においてもInN層形成による周期構造が確認でき、極薄膜InNがバルクInNとは異なり、優れた熱的安定性を有していることが予測された。このような急峻なサテライトピークを有するXRD測定結果は今までに報告されていない。これは有機金属気相成長法に比べMBE法による低温成長・極薄膜成長制御の優位性を示しており、またInNの臨界膜厚を考慮した成長制御によるものといえる。
(断面写真)
図12に本実施例の結果得られたサンプルの透過型電子顕微を用いた断面写真を示す。図12に示すとおり、本実施例のサンプルではInN層が面状均一に存在するのではなく、厚さ1分子層程度のInNが島状に分散したInN層が形成されていることがわかる。つまり分数分子厚のInNの形成が確認された。600℃で成長した実施例1の場合と比べてInN井戸層の形成が大きく異なるのは成長温度の差に起因すると考えられる。III族極性InNバルクの高温側臨界成長温度が500℃であることを考慮すると、600や650℃の高温では成長とともにIn原子やInNの取り込まれ・分解・脱離も成長とともに起こっていると考えられる。つまり、650℃で成長した実施例2は600℃の場合に比べてより取り込まれ・分解・脱離の影響が顕著であるため、InNの3分子厚を供給しても結果として分数分子厚のInNが形成されたと考えられる。これらの島状InN層の位置は積層方向に相関を持って形成されており、これら分数分子厚のInN層の形成はオーダリング効果によるものであり、InNとGaN間の高歪量に起因していると考えられる。事実、図12の電子顕微鏡像では分数分子厚InNの形成・配列において各層間に相間があるように見られる(部分的には分数分子厚InNが形成されているその上にまた新たな分数分子厚InNが形成されている)。本実施例においても格子緩和による欠陥の発生は見られず、擬似格子整合系の量子井戸構造を確認することができた。
(フォトルミネッセンス測定)
図13に、本実施例で作成したサンプルの室温フォトルミネッセンス測定結果の一例を示す。本実施例のサンプルは室温下で399nmに単峰性のピークを有しており、量子井戸構造に起因した発光を得ることに成功した。この結果は実施例2の図10に比べると短波長側にシフトしており、これはInN井戸層が1分子厚から分数分子厚に減少することによるブルーシフトであると考えられる。これらの結果は分数分子厚InNに起因する高効率局在励起子発光の可能性を示す重要な結果であるといえる。
(実施例4)
(InN井戸層厚を変化させたInN/GaN多重量子井戸活性層の作製)
本実施例に係るサンプルは、ほぼ実施例3と同様であるが、InN/GaN多重量子井戸活性層の周期数は一定とし、InN井戸層厚のみを変化させている。具体的には、GaN層を成長させた基板を有機洗浄した後、MBE装置に導入し、860℃で熱処理した後、同じ温度で100nmのGaN層を形成し、その後基板温度を650℃に降温し、InN層と10nmのGaN層を交互に10層ずつ合計20層供給させた。キャップ層や中間層としてのGaN層は成長していない。なお、本実施例のサンプルは、InN井戸層の総供給量のみを3,4,5分子層(それぞれサンプルA,B,C)と変化させて成長した(供給時間は6秒に固定)。
(InNの臨界膜厚の実証)
図14に、本実施例においてInN井戸層厚を増加させて作成したInN/GaN周期構造のXRD測定結果を示す。XRD測定結果(上側)からすべてのサンプルにおいて高次のサテライトピークが観測され、良好な周期構造の形成が確認できる。これらの測定結果をシミュレーション結果(下側)と比較することでInN井戸層厚を見積もった。すると、サンプルA、BではInN井戸層厚が1分子層でシミュレーション結果が実験結果と一致するのに対し、サンプルCではInN井戸層厚が1.4分子層で実験結果との良い一致が得られた。これはサンプルCのXRD測定においてのみ、多重量子井戸構造の0次ピークが分離して観測されていることからも、サンプル中の等価的なIn量がもっとも多くなっており、シミュレーション結果が妥当であることがわかる。つまり、サンプルA、Bでは1分子層以下のInN井戸層の形成が、サンプルCでは1分子層よりも厚いInN井戸層の形成がそれぞれ確認された。
(InNの臨界膜厚の実証)
また図15に、実施例4のサンプルの原子間顕微鏡(AFM)により測定した表面モフォロジーを示す。AFM像から、InN井戸層厚が1分子層以下のサンプルA、Bでは原子層ステップが観測され、表面粗さも1nm以下であるのに対し、サンプルCでは、明らかに表面モフォロジーが異なり、多数のピットが観測され表面粗さも2nm以上に増加した。これらの結果はInN/GaN多重量子井戸構造におけるInN井戸層の臨界膜厚が1分子層であることを示す重要な結果であり、1分子層を超えると格子緩和により新たな欠陥が発生し、高密度のピット発生、表面モフォロジーや結晶性の悪化につながることを示している。
このようなInN/GaNヘテロ構造における1分子層厚制御の重要性の実験的検証は本実施例で初めて明らかになったものであり、1分子層InN井戸層の成長制御が半導体光機能素子の実現において重要であることがわかる。
以上の通り、上記実施例により、上記実施形態に係る半導体光機能素子の効果が達成できることを確認した。以上により新規な半導体光デバイスを実現することができる。
本発明に係る半導体光素子は、LDやLEDとして産業上利用可能である。また更に、受光素子や電子デバイス等広範な分野においても利用が可能である。
一実施形態に係るLDの断面概略図である。 一実施形態に係るLDの活性層における断面外略図である。 InN層における「分子厚」を説明するための概念図である。 分数分子厚の半導体光素子の活性層の概念図である。 一実施形態に係るLEDの断面外略図である。 実施例1に係るサンプルの断面概略図である。 実施例1に係るサンプルのX線回折測定結果を示す図である。 実施例1に係るサンプルの透過型電子顕微鏡によるInN/GaN多重量子井戸構造の断面写真を示す図である。 実施例2に係るサンプルのX線回折測定結果を示す図である。 実施例2に係るサンプルの室温フォトルミネッセンス測定結果を示す図である。 実施例3に係るサンプルのX線回折測定結果を示す図である。 実施例3に係るサンプルの透過型電子顕微鏡によるInN/GaN多重量子井戸構造の断面写真を示す図である。 実施例3に係るサンプルの室温フォトルミネッセンス測定結果を示す図である。 実施例4に係るサンプルのX線回折測定結果(上側)およびそのシミュレーション(下側)を示す図である。 実施例4に係るサンプルの表面モフォロジーの原子間力顕微鏡増を示す図である。
符号の説明
1…基板、2…n型コンタクト層、3…n型クラッド層、4…n型ガイド層、5…活性層、6…p型ガイド層、7…p型クラッド層、8…p型コンタクト層、9…第一の電極、10…第二の電極

Claims (9)

  1. 第一伝導型半導体層と、
    前記第一伝導型半導体層上に形成される活性層と、
    前記活性層上に形成される第二伝導型半導体層と、を有する半導体光素子であって、
    前記活性層では、GaNからなる又はGaNを主成分とする第一の半導体層と1分子厚のInNからなる第二の半導体層が交互に積層されており、前記第一の半導体層と前記第二の半導体層とが疑似格子整合系を形成しており、前記第二の半導体層がバルクInN成長可能限界温度よりも高温で、1分子層厚以上の過剰InNを供給した後に前記過剰InNを熱分解より除去しつつ自己組織的に形成されなるものであり、
    前記第一の半導体と前記第二の半導体との界面平坦性が、前記半導体光素子の積層方向に沿って回折ベクトルを走査させるX線回折測定において、前記第一の半導体層と前記第二の半導体層とが10層ずつ交互積層されたときのサテライト1次ピーク半値全幅が200秒以下の特性となる急峻性を有する半導体光素子。
  2. 前記第二の半導体層はInGaAlN層である請求項1に記載の半導体光素子。
  3. 第一伝導型半導体層と、
    前記第一伝導型半導体層上に形成される活性層と、
    前記活性層上に形成される第二伝導型半導体層と、
    を有する半導体光素子であって、
    前記活性層では、GaNからなる又はGaNを主成分とする第一の半導体層と分数分子層厚のInNからなる第二の半導体層が交互に積層されており、前記第一の半導体層と前記第二の半導体層とが疑似格子整合系を形成しており、前記第二の半導体層がバルクInN成長可能限界温度よりも高温で、1分子層厚以上の過剰InNを供給した後に前記過剰InNを熱分解より除去しつつ自己組織的に形成されなるものであり、
    前記第一の半導体と前記第二の半導体との界面平坦性が、前記半導体光素子の積層方向に沿って回折ベクトルを走査させるX線回折測定において、前記第一の半導体層と前記第二の半導体層とが40層ずつ交互積層されたときのサテライト1次ピーク半値全幅が100秒以下の特性となる急峻性を有する半導体光素子。
  4. 前記第二の半導体層は、500℃以上700以下で形成される請求項1又は3に記載の半導体光素子。
  5. 前記第一の半導体層の層厚は、前記第二の半導体層の層厚よりも厚い請求項1又は3に記載の半導体光素子。
  6. 前記第一の半導体層の数は前記第二の半導体層の数よりも一層多い請求項1又は3に記載の半導体光素子。
  7. 前記第一の半導体層の前記層厚は、前記第二の半導体層の前記層厚の1倍以上30倍以下である請求項5に記載の半導体光素子。
  8. 前記第一伝導型半導体層は、第一ガイド層と、第一クラッド層と、第一コンタクト層とを有し、
    前記第二伝導型半導体層は、第二ガイド層と、第二クラッド層と、第二コンタクト層とを有し、
    前記第一および第二コンタクト層のそれぞれに接続される第一の電極及び第二の電極を有する請求項1又は3に記載の半導体光素子。
  9. 前記活性層は分子線エピタキシー法若しくはレーザー蒸着法により成膜される請求項1又は3に記載の半導体光素子。
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