JP2004363166A - 裏面入射型受光素子用マウント基板 - Google Patents
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Abstract
【課題】実装時に部品間に発生する浮遊容量を低減し、受光素子の応答速度を向上させる。
【解決手段】受光素子1は、裏面9から光が入射される半導体基板3の表面5にp電極15とn電極17が設けられ、各電極15,17に対応して電極パターン23,25が設けられたマウント基板21に対し、半導体基板3の表面5を下にして各電極15,17と電極パターン23,25との間が直接ボンディングされる。マウント基板21の表面27には、p電極15が接続される領域S1と、n電極17が接続される領域S2とに分断されるように、厚み方向を薄くした長溝からなる凹部29を形成する。これにより、p電極15が接続される領域S1と、n電極17が接続される領域S2との間における半導体基板3とマウント基板21との間隔が凹部29の深さ分だけ拡大し、部品間に生じる浮遊容量が小さくなる。
【選択図】 図3
【解決手段】受光素子1は、裏面9から光が入射される半導体基板3の表面5にp電極15とn電極17が設けられ、各電極15,17に対応して電極パターン23,25が設けられたマウント基板21に対し、半導体基板3の表面5を下にして各電極15,17と電極パターン23,25との間が直接ボンディングされる。マウント基板21の表面27には、p電極15が接続される領域S1と、n電極17が接続される領域S2とに分断されるように、厚み方向を薄くした長溝からなる凹部29を形成する。これにより、p電極15が接続される領域S1と、n電極17が接続される領域S2との間における半導体基板3とマウント基板21との間隔が凹部29の深さ分だけ拡大し、部品間に生じる浮遊容量が小さくなる。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ファイバ通信に用いる裏面入射型受光素子用マウント基板に関し、さらに詳しくは、光ファイバからの光を半導体基板の裏面に入射させ、この入射した光を半導体基板の表面に設けた受光部で受光し、この受光量に応じた電気信号(光電流)を出力する裏面入射型受光素子をマウント実装するための裏面入射型受光素子用マウント基板に関する。
【0002】
【従来の技術】
光ファイバを利用した光通信では、光ファイバから伝送されてくる光信号を受光素子に入射させて電気信号に変換している。この受光素子としては、図5に示す構成の裏面入射型受光素子51が提案されている。この裏面入射型受光素子51は、受光部53と、その電極(p電極55、n電極57)とがn−InP半導体基板59の表面61に設けられている。この裏面入射型受光素子51では、図示しない光ファイバからの光を半導体基板59の裏面63に入射させ、表面61に設けた受光部53で受光し、この受光量に応じた光電流を発生して出力している。
【0003】
この種の裏面入射型受光素子51において、各電極55,57から信号を取り出す場合には、各電極55,57と導通接続される図6に示す電極パターン65,67が例えばセラミック基板に形成されたマウント基板69が用いられる。半導体基板59は、表面61を下にしたフェースダウン状態で、電極パターン65にp電極55、電極パターン67にn電極57を直接ボンディングし、図7に示すようにマウント基板69に固定する。これにより、半導体基板59の下面に位置する各電極55,57からの信号は、マウント基板69の表出した電極パターン65,67を介して取り出し可能となった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、マウント基板69を用いて信号の取り出しを行う上記構成による裏面入射型受光素子51では、図8に示すように、半導体基板59とマウント基板69上の電極パターン65,67とが狭い間隔dを挟んで対向している。そして、n電極57は、低抵抗の半導体基板59と電気的に繋がっているため、半導体基板59と電極パターン65,67との間で大きな静電容量が生じ、半導体基板59と電極55との間に寄生容量CP を有している。
【0005】
例えば半導体基板59の厚みt1が100μm、マウント基板69の厚みt2が250μm、電極パターン65,67の厚みt3が1μmで構成された裏面入射型受光素子51の場合、電極パターン65,67の幅Wを60μm、長さLを300μm、間隔dを5μmとすると、寄生容量CP は、CP =ε0 εS (W・L)/dの式(但し、ε0 は真空中の誘電率、εS は誘電体の誘電率)によって算出できる。この場合、誘電体は空気なので、寄生容量CP は、CP =ε0 εS (W・L)/d=8.85×10−12 ×(0.06×10−3×0.3×10−3)/0.005×10−3≒32fFとなる。
【0006】
また、裏面入射型受光素子51の受光層が持つ寄生容量CAPD は、受光径によって異なるが、10GHzの周波数帯で受光径がφ30〜φ40μmの場合、120fF程度となる。
【0007】
従って、寄生容量CP と裏面入射型受光素子51の受光層が持つ寄生容量CAPD とによる全体の寄生容量Ctotal は、Ctotal =CP +CAPD =152fFと大きくなる。しかも、この種の裏面入射型受光素子51は、半導体基板59上におけるp電極55とn電極57との間の距離が狭く、裏面入射型受光素子51をマウント基板69に実装した際に、各電極55,57と各電極パターン65,67間の距離も狭くなる。このため、上述した寄生容量Ctotal だけでなく、各部品間に浮遊容量が発生する。そして、この浮遊容量や寄生容量Ctotal が大きいと、入出力電極間の寄生容量が帰還容量として作用し、高周波利得の安定性に欠けるという問題を招く。また、接地電極との間の寄生容量の場合には、利得帯域幅を悪くし、その結果、応答速度が低下して十分な応答速度を得ることができないという問題を生じる。
【0008】
そこで、本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであって、マウント実装時に発生する部品間の浮遊容量を低減し、応答速度の向上を図ることができる裏面入射型受光素子用マウント基板を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
この発明の請求項1記載の裏面入射型受光素子用マウント基板は、表面5に所定間隔をおいてp電極15とn電極17が設けられ、裏面9から光が入射される半導体基板3に対し、前記各電極に対応して電極パターン23,25が設けられ、前記半導体基板の表面を下にして前記各電極と前記電極パターンとの間を直接ボンディングする裏面入射型受光素子用マウント基板21において、
前記裏面入射型受光素子用マウント基板には、前記半導体基板の前記p電極と前記n電極との間に対向する部位に厚み方向を薄くする空間層部が形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求請2記載の裏面入射型受光素子用マウント基板は、表面5に所定間隔をおいてp電極15とn電極17が設けられ、裏面9から光が入射される半導体基板3に対し、前記各電極に対応して電極パターン23,25が設けられ、前記半導体基板の表面を下にして前記各電極と前記電極パターンとの間を直接ボンディングする裏面入射型受光素子用マウント基板21において、
前記裏面入射型受光素子用マウント基板には、前記半導体基板の前記p電極と前記n電極との間に対向する部位に厚み方向を薄くする凹部29が形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の裏面入射型受光素子用マウント基板は、請求項2記載の裏面入射型受光素子用マウント基板において、
前記凹部29は、前記p電極15が接続される領域S1と、前記n電極17が接続される領域S2とが分断されるべく、前記裏面入射型受光素子用マウント基板21の両側面35,37に貫通するように形成された長溝からなることを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の裏面入射型受光素子用マウント基板は、請求項2記載の裏面入射型受光素子用マウント基板において、
前記凹部29は、前記裏面入射型受光素子用マウント基板21の周縁33を残して形成されたことを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る裏面入射型受光素子の好適な実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は本発明に係る裏面入射型受光素子用マウント基板(以下、「マウント基板」と略称する)に実装される裏面入射型受光素子(以下、「受光素子」と略称する)を表面から見た平面図、図2は本発明に係るマウント基板に図1の受光素子をフリップチップ接続する状況を示す斜視図、図3はフリップチップ接続されたマウント基板と受光素子との縦断面図である。
【0015】
まず、本発明のマウント基板に実装される受光素子の構成について図1乃至図3を参照しながら説明する。
【0016】
図1乃至図3に示すように、受光素子1は、半導体基板3の表面5側に受光部7が設けられ、半導体基板3の裏面9側が光ファイバ11からの光が入射される受光面13となる。そして、この受光素子1では、光ファイバ11からの光が受光面13に入射されると、その光が半導体基板3を透過して受光部7に入射する。
【0017】
受光素子1は、一対の電極としてp電極15とn電極17を有している。本例では、図1において受光部7の中央上部にp電極15が形成され、受光部7の周囲に一つ又は複数(図示の例ではp電極15を挟むように受光部7の下側左右に2つ)のn電極17が形成され、半導体基板3中にはpn接合部が形成されている。受光素子1は、受光面13に光が入射すると、光によって対生成された電子及び正孔が接合部の内部電界により、p領域の電子がn領域に移動し、n領域の正孔がp領域に移動する。その結果、n領域が負に帯電し、p領域が正に帯電する。これにより、p電極15及びn電極17に接続した不図示の外部回路の両端に電圧(光起電力)が発生し、光電流が流れる。
【0018】
受光素子1のn電極17には逆バイアス電圧が加えられ、感光領域内(接合部とその近傍)でつくられたキャリアが全部光電流として有効に収集されるようになっている。すなわち、p電極15は、n電極17にバイアス電圧が与えられている状態で、光が入射したときに、その光電流を出力として取り出すための電極となっている。
【0019】
なお、本例の受光素子1には、内部に電流増倍作用を持つアバランシェフォトダイオード(APD:avalanche photodiode)を採用しているが、本発明の適用範囲はAPDに限定されるものではなく、例えばp層とn層との間に高抵抗層を設けたpin接合形のPINフォトダイオードであっても良い。
【0020】
上記構成により受光素子1の各電極15,17から信号を取り出す場合には、以下に説明する本発明のマウント基板が採用される。
【0021】
本例のマウント基板21は、図2に示すように、受光素子1のp電極15と導通接続される電極パターン23と、受光素子1の2つのn電極17が共通に導通接続される電極パターン25とが表面27に形成されている。マウント基板21としては、例えば誘電率の高いセラミック基板がコストや加工精度の面から使用される。
【0022】
受光素子1をマウント基板21上に実装する場合には、図3に示すように、受光素子1の表面5を下にしたフェースダウン状態で、電極パターン23にp電極15を直接ボンディングするとともに、電極パターン25にn電極17を直接ボンディングし、受光素子1をマウント基板21に固定する。これにより、半導体基板3の下面に位置する各電極15,17からの信号は、マウント基板21の表出した電極パターン23,25を介して取り出すことができる。
【0023】
ここで、図2に示すように、半導体基板3の各電極15,17と対面するマウント基板21の表面27には、厚み方向を薄くする空気層部としての凹部29が形成されている。凹部29の幅、長さ、深さは、通常マウント基板21に実装される半導体基板3上のp電極15とn電極17との間の距離が一定でなく様々ものがあるため、p電極15とn電極17との間の距離やマウント基板21上の電極パターン23,25の形状(例えば直線状であれば、幅と長さ)などに応じて浮遊容量が十分に低減できる程度に設定される。
【0024】
図2及び図3の例における凹部29は、半導体基板3のp電極15が接続される領域S1と、n電極17が接続される領域S2とに分断されるべく、マウント基板21の表面27の長手方向に直線状の長溝として形成される。この結果、図3に示すように、マウント基板21に半導体基板3を固定した状態で、p電極15と電極パターン23の導通部分(領域S1)と、n電極17と電極パターン25の導通部分(領域S2)とが凹部29を境界として分断され、この凹部29には他の部分より大きな空隙31が形成されることになる。
【0025】
本実施の形態における凹部29は、図2に示すように、マウント基板21の周縁33を含めて対向する両側面35,37にわたり貫通して直線状に彫り込んだ長溝で構成される。これにより、凹部29の内周面29aは、マウント基板21の両側面35,37で開放されている。
【0026】
このように、本例の構成において、マウント基板21に対し、半導体基板3の表面5を下にして受光素子1をフリップチップ接続した場合、p電極15が接続される領域S1と、n電極17が接続される領域S2とが空気層部としての凹部29により分断された状態となり、この分断された部分の半導体基板3とマウント基板21との間隔が凹部29の深さ分だけ拡大され、エアギャップが形成される。これにより、凹部29を形成しない場合に比べ、間隔が拡大した分、半導体基板3と電極パターン23,25との間に生じる寄生容量だけでなく、受光素子1をマウント基板21に実装した際に生じる各部品間の浮遊容量が低減する。その結果、受光素子1における応答速度が向上し、十分な応答速度を得ることができる。
【0027】
ここで、図4はフリップチップ接続した際の本発明の構成と従来の構成とにおける容量比較を示す図である。本発明の構成(図2及び図3の凹部29が有る構成)と従来の構成(図2及び図3の凹部29が無い構成)とを比較すると、図4に示すように、受光素子の駆動電圧(p電極に印加される−のバイアス電圧)が15V以上の部分においては、本発明の構成の方が従来の構成よりも0.1pFだけ全体の容量が低いことが判る。この結果、本発明の構成によれば、従来の構成に比べて全体の浮遊容量を低減でき、受光素子における応答速度の向上を図ることができる。
【0028】
また、図2に示すように、凹部29は、両側面35,37に貫通してマウント基板21の表面27に長溝として形成されるので、マウント基板21に凹部29を形成する場合に加工しやすく、歩留りの向上を図ることができる。
【0029】
なお、本実施の形態では、コスト面や加工面を考慮して、マウント基板21の両側面35,37に貫通するように凹部29を表面27に形成した場合について説明したが、図2に破線で示すように、マウント基板21の表面27の周縁33を残して凹部29を形成し、内周面29aが両側面35,37で開放されないものであっても良い。このような凹部29の形状とすれば、マウント基板21の両側面35,37に周縁33の一部分が薄厚となった切欠部がなく、この切欠部による基板強度の低下が防止される。これにより、電極パターンが形成された素板を切断し、多数のマウント基板21を製造する際、基板強度の低下した切欠部からマウント基板21にヒビが入る、所謂へき開等による破損を防止することができる。
【0030】
また、図示はしていないが、浮遊容量を低減させるための構成として、空気層部をなす凹部の替わりに貫通穴を設ける構成としてもよい。本構造であっても、前述と同様の効果を得ることができる。さらに、空気層部として凹部と貫通穴を同一マウント基板に併用して設けてもよいことは言うまでもない。
【0031】
また、本実施の形態に採用される受光素子1では、半導体基板3に1つのp電極15と2つのn電極17を備えた構成としたが、基本的にはp電極15とn電極17とを1つずつ備える構成であればよい。また、半導体基板3をマウント基板21上により安定して固定する場合には、半導体基板3に5つの電極、例えば図1において、半導体基板3の表面5の中央上部にp電極15を1つ設け、このp電極15を挟むようにして半導体基板3の表面5の左右上下に4つのn電極17を設ける構成としてもよい。この場合、半導体基板3のp電極15とn電極17との間に対向するマウント基板21の表面27に厚み方向を薄くした凹部29を設ければ、寄生容量を含め全体の浮遊容量を低減でき、応答速度を向上させることができる。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、マウント基板上に半導体基板をフリップチップ接続した場合、空気層部(凹部)を形成しない場合に比べ、半導体基板と電極パターンとの間に生じる寄生容量を含め、各部品間に発生する浮遊容量を低減することができる。この結果、受光素子における応答速度を向上させることができる。
【0033】
また、両側面に貫通してマウント基板の表面に長溝の凹部を形成する構成とすれば、マウント基板に凹部を形成する場合に加工しやすく、歩留りの向上を図ることができる。
【0034】
さらに、マウント基板表面の周縁を残して凹部を形成すれば、凹部の内周面が開放されない構造になり、マウント基板の側面に周縁の一部分が薄厚となった切欠部の出現がなく、この切欠部による基板強度の低下を防止することができる。この結果、素板を切断して多数のマウント基板を製造する際、凹部からのヒビ割れを防止して歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るマウント基板に実装される受光素子を表面から見た平面図である。
【図2】本発明に係るマウント基板に図1の受光素子をフリップチップ接続する状況を示す斜視図である。
【図3】フリップチップ接続されたマウント基板と受光素子との縦断面図である。
【図4】フリップチップ接続した際の本発明の構成と従来の構成とにおける容量比較を示す図である。
【図5】(a)受光素子を表面から見た平面図である。
(b)同素子を裏面から見た平面図である。
【図6】図5の受光素子をマウント基板に実装する従来のフリップチップ接続の状況を示す斜視図である。
【図7】図5の受光素子とマウント基板とをフリップチップ接続した従来の構成を示す斜視図である。
【図8】図7の縦断面図である。
【符号の説明】
1…受光素子(裏面入射型受光素子)、3…半導体基板、5…表面、9…裏面、15…p電極、17…n電極、21…マウント基板、23,25…電極パターン、29…空気層部としての凹部、29a…内周面、31…空隙、33…周縁、35,37…側面、S1…p電極が接続される領域、S2…n電極が接続される領域。
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ファイバ通信に用いる裏面入射型受光素子用マウント基板に関し、さらに詳しくは、光ファイバからの光を半導体基板の裏面に入射させ、この入射した光を半導体基板の表面に設けた受光部で受光し、この受光量に応じた電気信号(光電流)を出力する裏面入射型受光素子をマウント実装するための裏面入射型受光素子用マウント基板に関する。
【0002】
【従来の技術】
光ファイバを利用した光通信では、光ファイバから伝送されてくる光信号を受光素子に入射させて電気信号に変換している。この受光素子としては、図5に示す構成の裏面入射型受光素子51が提案されている。この裏面入射型受光素子51は、受光部53と、その電極(p電極55、n電極57)とがn−InP半導体基板59の表面61に設けられている。この裏面入射型受光素子51では、図示しない光ファイバからの光を半導体基板59の裏面63に入射させ、表面61に設けた受光部53で受光し、この受光量に応じた光電流を発生して出力している。
【0003】
この種の裏面入射型受光素子51において、各電極55,57から信号を取り出す場合には、各電極55,57と導通接続される図6に示す電極パターン65,67が例えばセラミック基板に形成されたマウント基板69が用いられる。半導体基板59は、表面61を下にしたフェースダウン状態で、電極パターン65にp電極55、電極パターン67にn電極57を直接ボンディングし、図7に示すようにマウント基板69に固定する。これにより、半導体基板59の下面に位置する各電極55,57からの信号は、マウント基板69の表出した電極パターン65,67を介して取り出し可能となった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、マウント基板69を用いて信号の取り出しを行う上記構成による裏面入射型受光素子51では、図8に示すように、半導体基板59とマウント基板69上の電極パターン65,67とが狭い間隔dを挟んで対向している。そして、n電極57は、低抵抗の半導体基板59と電気的に繋がっているため、半導体基板59と電極パターン65,67との間で大きな静電容量が生じ、半導体基板59と電極55との間に寄生容量CP を有している。
【0005】
例えば半導体基板59の厚みt1が100μm、マウント基板69の厚みt2が250μm、電極パターン65,67の厚みt3が1μmで構成された裏面入射型受光素子51の場合、電極パターン65,67の幅Wを60μm、長さLを300μm、間隔dを5μmとすると、寄生容量CP は、CP =ε0 εS (W・L)/dの式(但し、ε0 は真空中の誘電率、εS は誘電体の誘電率)によって算出できる。この場合、誘電体は空気なので、寄生容量CP は、CP =ε0 εS (W・L)/d=8.85×10−12 ×(0.06×10−3×0.3×10−3)/0.005×10−3≒32fFとなる。
【0006】
また、裏面入射型受光素子51の受光層が持つ寄生容量CAPD は、受光径によって異なるが、10GHzの周波数帯で受光径がφ30〜φ40μmの場合、120fF程度となる。
【0007】
従って、寄生容量CP と裏面入射型受光素子51の受光層が持つ寄生容量CAPD とによる全体の寄生容量Ctotal は、Ctotal =CP +CAPD =152fFと大きくなる。しかも、この種の裏面入射型受光素子51は、半導体基板59上におけるp電極55とn電極57との間の距離が狭く、裏面入射型受光素子51をマウント基板69に実装した際に、各電極55,57と各電極パターン65,67間の距離も狭くなる。このため、上述した寄生容量Ctotal だけでなく、各部品間に浮遊容量が発生する。そして、この浮遊容量や寄生容量Ctotal が大きいと、入出力電極間の寄生容量が帰還容量として作用し、高周波利得の安定性に欠けるという問題を招く。また、接地電極との間の寄生容量の場合には、利得帯域幅を悪くし、その結果、応答速度が低下して十分な応答速度を得ることができないという問題を生じる。
【0008】
そこで、本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであって、マウント実装時に発生する部品間の浮遊容量を低減し、応答速度の向上を図ることができる裏面入射型受光素子用マウント基板を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
この発明の請求項1記載の裏面入射型受光素子用マウント基板は、表面5に所定間隔をおいてp電極15とn電極17が設けられ、裏面9から光が入射される半導体基板3に対し、前記各電極に対応して電極パターン23,25が設けられ、前記半導体基板の表面を下にして前記各電極と前記電極パターンとの間を直接ボンディングする裏面入射型受光素子用マウント基板21において、
前記裏面入射型受光素子用マウント基板には、前記半導体基板の前記p電極と前記n電極との間に対向する部位に厚み方向を薄くする空間層部が形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求請2記載の裏面入射型受光素子用マウント基板は、表面5に所定間隔をおいてp電極15とn電極17が設けられ、裏面9から光が入射される半導体基板3に対し、前記各電極に対応して電極パターン23,25が設けられ、前記半導体基板の表面を下にして前記各電極と前記電極パターンとの間を直接ボンディングする裏面入射型受光素子用マウント基板21において、
前記裏面入射型受光素子用マウント基板には、前記半導体基板の前記p電極と前記n電極との間に対向する部位に厚み方向を薄くする凹部29が形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の裏面入射型受光素子用マウント基板は、請求項2記載の裏面入射型受光素子用マウント基板において、
前記凹部29は、前記p電極15が接続される領域S1と、前記n電極17が接続される領域S2とが分断されるべく、前記裏面入射型受光素子用マウント基板21の両側面35,37に貫通するように形成された長溝からなることを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の裏面入射型受光素子用マウント基板は、請求項2記載の裏面入射型受光素子用マウント基板において、
前記凹部29は、前記裏面入射型受光素子用マウント基板21の周縁33を残して形成されたことを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る裏面入射型受光素子の好適な実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は本発明に係る裏面入射型受光素子用マウント基板(以下、「マウント基板」と略称する)に実装される裏面入射型受光素子(以下、「受光素子」と略称する)を表面から見た平面図、図2は本発明に係るマウント基板に図1の受光素子をフリップチップ接続する状況を示す斜視図、図3はフリップチップ接続されたマウント基板と受光素子との縦断面図である。
【0015】
まず、本発明のマウント基板に実装される受光素子の構成について図1乃至図3を参照しながら説明する。
【0016】
図1乃至図3に示すように、受光素子1は、半導体基板3の表面5側に受光部7が設けられ、半導体基板3の裏面9側が光ファイバ11からの光が入射される受光面13となる。そして、この受光素子1では、光ファイバ11からの光が受光面13に入射されると、その光が半導体基板3を透過して受光部7に入射する。
【0017】
受光素子1は、一対の電極としてp電極15とn電極17を有している。本例では、図1において受光部7の中央上部にp電極15が形成され、受光部7の周囲に一つ又は複数(図示の例ではp電極15を挟むように受光部7の下側左右に2つ)のn電極17が形成され、半導体基板3中にはpn接合部が形成されている。受光素子1は、受光面13に光が入射すると、光によって対生成された電子及び正孔が接合部の内部電界により、p領域の電子がn領域に移動し、n領域の正孔がp領域に移動する。その結果、n領域が負に帯電し、p領域が正に帯電する。これにより、p電極15及びn電極17に接続した不図示の外部回路の両端に電圧(光起電力)が発生し、光電流が流れる。
【0018】
受光素子1のn電極17には逆バイアス電圧が加えられ、感光領域内(接合部とその近傍)でつくられたキャリアが全部光電流として有効に収集されるようになっている。すなわち、p電極15は、n電極17にバイアス電圧が与えられている状態で、光が入射したときに、その光電流を出力として取り出すための電極となっている。
【0019】
なお、本例の受光素子1には、内部に電流増倍作用を持つアバランシェフォトダイオード(APD:avalanche photodiode)を採用しているが、本発明の適用範囲はAPDに限定されるものではなく、例えばp層とn層との間に高抵抗層を設けたpin接合形のPINフォトダイオードであっても良い。
【0020】
上記構成により受光素子1の各電極15,17から信号を取り出す場合には、以下に説明する本発明のマウント基板が採用される。
【0021】
本例のマウント基板21は、図2に示すように、受光素子1のp電極15と導通接続される電極パターン23と、受光素子1の2つのn電極17が共通に導通接続される電極パターン25とが表面27に形成されている。マウント基板21としては、例えば誘電率の高いセラミック基板がコストや加工精度の面から使用される。
【0022】
受光素子1をマウント基板21上に実装する場合には、図3に示すように、受光素子1の表面5を下にしたフェースダウン状態で、電極パターン23にp電極15を直接ボンディングするとともに、電極パターン25にn電極17を直接ボンディングし、受光素子1をマウント基板21に固定する。これにより、半導体基板3の下面に位置する各電極15,17からの信号は、マウント基板21の表出した電極パターン23,25を介して取り出すことができる。
【0023】
ここで、図2に示すように、半導体基板3の各電極15,17と対面するマウント基板21の表面27には、厚み方向を薄くする空気層部としての凹部29が形成されている。凹部29の幅、長さ、深さは、通常マウント基板21に実装される半導体基板3上のp電極15とn電極17との間の距離が一定でなく様々ものがあるため、p電極15とn電極17との間の距離やマウント基板21上の電極パターン23,25の形状(例えば直線状であれば、幅と長さ)などに応じて浮遊容量が十分に低減できる程度に設定される。
【0024】
図2及び図3の例における凹部29は、半導体基板3のp電極15が接続される領域S1と、n電極17が接続される領域S2とに分断されるべく、マウント基板21の表面27の長手方向に直線状の長溝として形成される。この結果、図3に示すように、マウント基板21に半導体基板3を固定した状態で、p電極15と電極パターン23の導通部分(領域S1)と、n電極17と電極パターン25の導通部分(領域S2)とが凹部29を境界として分断され、この凹部29には他の部分より大きな空隙31が形成されることになる。
【0025】
本実施の形態における凹部29は、図2に示すように、マウント基板21の周縁33を含めて対向する両側面35,37にわたり貫通して直線状に彫り込んだ長溝で構成される。これにより、凹部29の内周面29aは、マウント基板21の両側面35,37で開放されている。
【0026】
このように、本例の構成において、マウント基板21に対し、半導体基板3の表面5を下にして受光素子1をフリップチップ接続した場合、p電極15が接続される領域S1と、n電極17が接続される領域S2とが空気層部としての凹部29により分断された状態となり、この分断された部分の半導体基板3とマウント基板21との間隔が凹部29の深さ分だけ拡大され、エアギャップが形成される。これにより、凹部29を形成しない場合に比べ、間隔が拡大した分、半導体基板3と電極パターン23,25との間に生じる寄生容量だけでなく、受光素子1をマウント基板21に実装した際に生じる各部品間の浮遊容量が低減する。その結果、受光素子1における応答速度が向上し、十分な応答速度を得ることができる。
【0027】
ここで、図4はフリップチップ接続した際の本発明の構成と従来の構成とにおける容量比較を示す図である。本発明の構成(図2及び図3の凹部29が有る構成)と従来の構成(図2及び図3の凹部29が無い構成)とを比較すると、図4に示すように、受光素子の駆動電圧(p電極に印加される−のバイアス電圧)が15V以上の部分においては、本発明の構成の方が従来の構成よりも0.1pFだけ全体の容量が低いことが判る。この結果、本発明の構成によれば、従来の構成に比べて全体の浮遊容量を低減でき、受光素子における応答速度の向上を図ることができる。
【0028】
また、図2に示すように、凹部29は、両側面35,37に貫通してマウント基板21の表面27に長溝として形成されるので、マウント基板21に凹部29を形成する場合に加工しやすく、歩留りの向上を図ることができる。
【0029】
なお、本実施の形態では、コスト面や加工面を考慮して、マウント基板21の両側面35,37に貫通するように凹部29を表面27に形成した場合について説明したが、図2に破線で示すように、マウント基板21の表面27の周縁33を残して凹部29を形成し、内周面29aが両側面35,37で開放されないものであっても良い。このような凹部29の形状とすれば、マウント基板21の両側面35,37に周縁33の一部分が薄厚となった切欠部がなく、この切欠部による基板強度の低下が防止される。これにより、電極パターンが形成された素板を切断し、多数のマウント基板21を製造する際、基板強度の低下した切欠部からマウント基板21にヒビが入る、所謂へき開等による破損を防止することができる。
【0030】
また、図示はしていないが、浮遊容量を低減させるための構成として、空気層部をなす凹部の替わりに貫通穴を設ける構成としてもよい。本構造であっても、前述と同様の効果を得ることができる。さらに、空気層部として凹部と貫通穴を同一マウント基板に併用して設けてもよいことは言うまでもない。
【0031】
また、本実施の形態に採用される受光素子1では、半導体基板3に1つのp電極15と2つのn電極17を備えた構成としたが、基本的にはp電極15とn電極17とを1つずつ備える構成であればよい。また、半導体基板3をマウント基板21上により安定して固定する場合には、半導体基板3に5つの電極、例えば図1において、半導体基板3の表面5の中央上部にp電極15を1つ設け、このp電極15を挟むようにして半導体基板3の表面5の左右上下に4つのn電極17を設ける構成としてもよい。この場合、半導体基板3のp電極15とn電極17との間に対向するマウント基板21の表面27に厚み方向を薄くした凹部29を設ければ、寄生容量を含め全体の浮遊容量を低減でき、応答速度を向上させることができる。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、マウント基板上に半導体基板をフリップチップ接続した場合、空気層部(凹部)を形成しない場合に比べ、半導体基板と電極パターンとの間に生じる寄生容量を含め、各部品間に発生する浮遊容量を低減することができる。この結果、受光素子における応答速度を向上させることができる。
【0033】
また、両側面に貫通してマウント基板の表面に長溝の凹部を形成する構成とすれば、マウント基板に凹部を形成する場合に加工しやすく、歩留りの向上を図ることができる。
【0034】
さらに、マウント基板表面の周縁を残して凹部を形成すれば、凹部の内周面が開放されない構造になり、マウント基板の側面に周縁の一部分が薄厚となった切欠部の出現がなく、この切欠部による基板強度の低下を防止することができる。この結果、素板を切断して多数のマウント基板を製造する際、凹部からのヒビ割れを防止して歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るマウント基板に実装される受光素子を表面から見た平面図である。
【図2】本発明に係るマウント基板に図1の受光素子をフリップチップ接続する状況を示す斜視図である。
【図3】フリップチップ接続されたマウント基板と受光素子との縦断面図である。
【図4】フリップチップ接続した際の本発明の構成と従来の構成とにおける容量比較を示す図である。
【図5】(a)受光素子を表面から見た平面図である。
(b)同素子を裏面から見た平面図である。
【図6】図5の受光素子をマウント基板に実装する従来のフリップチップ接続の状況を示す斜視図である。
【図7】図5の受光素子とマウント基板とをフリップチップ接続した従来の構成を示す斜視図である。
【図8】図7の縦断面図である。
【符号の説明】
1…受光素子(裏面入射型受光素子)、3…半導体基板、5…表面、9…裏面、15…p電極、17…n電極、21…マウント基板、23,25…電極パターン、29…空気層部としての凹部、29a…内周面、31…空隙、33…周縁、35,37…側面、S1…p電極が接続される領域、S2…n電極が接続される領域。
Claims (4)
- 表面(5)に所定間隔をおいてp電極(15)とn電極(17)が設けられ、裏面(9)から光が入射される半導体基板(3)に対し、前記各電極に対応して電極パターン(23,25)が設けられ、前記半導体基板の表面を下にして前記各電極と前記電極パターンとの間を直接ボンディングする裏面入射型受光素子用マウント基板(21)において、
前記裏面入射型受光素子用マウント基板には、前記半導体基板の前記p電極と前記n電極との間に対向する部位に厚み方向を薄くする空間層部が形成されていることを特徴とする裏面入射型受光素子用マウント基板。 - 表面(5)に所定間隔をおいてp電極(15)とn電極(17)が設けられ、裏面(9)から光が入射される半導体基板(3)に対し、前記各電極に対応して電極パターン(23,25)が設けられ、前記半導体基板の表面を下にして前記各電極と前記電極パターンとの間を直接ボンディングする裏面入射型受光素子用マウント基板(21)において、
前記裏面入射型受光素子用マウント基板には、前記半導体基板の前記p電極と前記n電極との間に対向する部位に厚み方向を薄くする凹部(29)が形成されていることを特徴とする裏面入射型受光素子用マウント基板。 - 前記凹部(29)は、前記p電極(15)が接続される領域(S1)と、前記n電極(17)が接続される領域(S2)とが分断されるべく、前記裏面入射型受光素子用マウント基板(21)の両側面(35,37)に貫通するように形成された長溝からなる請求項2記載の裏面入射型受光素子用マウント基板。
- 前記凹部(29)は、前記裏面入射型受光素子用マウント基板(21)の周縁(33)を残して形成された請求項2記載の裏面入射型受光素子用マウント基板。
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- 2003-06-02 JP JP2003156704A patent/JP2004363166A/ja active Pending
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