JP2004363020A - 交流電力ケーブル - Google Patents
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Abstract
【課題】非架橋ポリエチレンを絶縁体とする交流電力ケーブルであって、従来の汎用架橋低密度ポリエチレンを絶縁体とする電力ケーブルに匹敵する、導体許容温度および高温絶縁破壊特性を維持し、撤去電力ケーブルとして処分する場合において、絶縁体のリサイクル使用が可能な交流電力ケーブルを提供するものである。
【解決手段】密度が0.93g/cm3以上、無水マレイン酸濃度が0.01〜5重量%の無水マレイン酸グラフトポリエチレンを、絶縁体に用いた交流電力ケーブルとすることによって、好ましくは前記無水マレイン酸濃度が、0.01〜1重量%である、請求項1記載の交流電力ケーブルとすることによって、解決される。
【選択図】 なし
【解決手段】密度が0.93g/cm3以上、無水マレイン酸濃度が0.01〜5重量%の無水マレイン酸グラフトポリエチレンを、絶縁体に用いた交流電力ケーブルとすることによって、好ましくは前記無水マレイン酸濃度が、0.01〜1重量%である、請求項1記載の交流電力ケーブルとすることによって、解決される。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、交流電力送電のための電力ケーブルに関し、特に好ましい導体許容温度を維持しつつ、非架橋型でリサイクル可能なポリエチレンを、絶縁体に用いた交流電力ケーブルに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電力ケーブルとしては、低密度ポリエチレンを架橋してなる架橋ポリエチレンを絶縁体とする、架橋ポリエチレンケーブルが汎用されている。架橋の目的は、低密度ポリエチレン絶縁体の耐熱性の向上であり、架橋による耐熱性の向上によって導体許容温度を高くすることができ、送電容量の増大に有利となるためである。しかし、絶縁体が架橋されていると撤去ケーブルを処分する際、絶縁体をリサイクル使用することは殆ど不可能で、多くの場合焼却や埋め立て処分せざるを得ないのが現状であり、その結果、焼却による大気汚染や埋め立てにおいては土壌中に半永久的に放置されるなど、環境負荷を増大させるのが問題となっている。
【0003】
上記問題は、前述の架橋ポリエチレンに代えて、非架橋のポリエチレンを用いることによって解消できる。すなわち、結晶化度の大きい中密度ポリエチレンまたは高密度ポリエチレンは、上記架橋ポリエチレンと同等の耐熱性を有しているので、これら中密度ないし高密度ポリエチレンを絶縁体に用いた電力ケーブルは、従来の汎用的な架橋ポリエチレン電力ケーブルと比較しても遜色の無い導体許容温度が得られ、かつ、撤去ケーブルとして処分する場合には絶縁体のリサイクル使用が可能となる。しかしながら、上記汎用的な架橋ポリエチレン電力ケーブルの絶縁体に用いられている低密度ポリエチレンは、通常高圧ラジカル重合法により得られるのに対し、中密度ポリエチレンないし高密度ポリエチレンは、重合触媒を用いた低圧重合法によって得られるため、これら中密度ないし高密度ポリエチレンには重合時の重合触媒残渣が残留しており、この触媒残渣が得られた電力ケーブルの電気特性、特に絶縁特性に悪影響を及ぼすという問題がある。
【0004】
上記のような非架橋ポリエチレンを絶縁体とする電力ケーブルについて、その検討が従来から行われており、また提案されている。例えば、高圧ラジカル重合法によって得られる低密度ポリエチレンと二塩基酸無水物との共重合体、または高圧ラジカル重合法によって得られる低密度ポリエチレンに、二塩基酸無水物をグラフトした共重合体であって、二塩基酸無水物基含量0.002〜0.05重量%のエチレン共重合体を絶縁体とする電力ケーブルについて、特許文献1で提案されている。上記特許文献1で提案の電力ケーブルは、誘電正接を上昇させることなく電気絶縁抵抗を飛躍的に高めることができるので、絶縁層を厚くしなくても高電圧送電時の電力損失を低減させることができるとしている。しかし、絶縁体のベースポリマーとして、耐熱性に難点のある低密度ポリエチレンが用いられているため、高温特性、特に導体許容温度を高くして送電容量を増大しようとする目的には、さらに改善の余地が残されている。
【0005】
また、無水マレイン酸をグラフト重合させてなる0.94g/cm3以上の低圧法ポリエチレンを、絶縁体に用いた直流電力ケーブルが特許文献2に提案されている。この直流電力ケーブルによれば、ポリエチレン中に残留する触媒残渣によって絶縁体中に局部的に形成される空間電荷の蓄積を、無水マレイン酸の作用で抑制させることができるので、絶縁破壊強度の向上が図れる旨記載されている。そこで、このようなポリエチレングラフトマーについて、交流用の電力ケーブルの絶縁体としての検討を行った。
【0006】
【特許文献1】
特開平5−205527号公報
【特許文献2】
特開平2−10610号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
解決しようとする課題は、非架橋ポリエチレンを絶縁体とする交流電力ケーブルであって、従来の汎用架橋低密度ポリエチレンを絶縁体とする電力ケーブルに匹敵する導体許容温度、および高温絶縁破壊特性を維持し、撤去電力ケーブルとして処分する場合において、絶縁体のリサイクル使用が可能な交流電力ケーブルを提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記解決しようとする課題は、請求項1に記載されるように、密度が0.93g/cm3以上、無水マレイン酸濃度が0.01〜5重量%の無水マレイン酸グラフトポリエチレンを、絶縁体に用いた交流電力ケーブルとすることによって、解決される。また好ましくは、請求項2に記載されるように、前記無水マレイン酸濃度が、0.01〜1重量%である、請求項1記載の交流電力ケーブルとすることによって、解決される。
【0009】
【発明の実施の形態】
上記本発明の電力ケーブルにおいて、絶縁体に用いる無水マレイン酸グラフトポリエチレンを得るためのポリエチレンは、その密度が0.93g/cm3以上であることが重要である。該ポリエチレンの密度が0.93g/cm3より小さいと、高温領域での電気特性、特に高温時の交流(AC)破壊電圧が低くなり、送電容量の増大が期待できない。用いることのできるポリエチレンとしては、前記特定の密度を有するものであれば何れでも良い。一般的には中密度ポリエチレンまたは高密度ポリエチレンと称して市場に供給されている種々のポリエチレンが使用できる。より具体的には、高密度ポリエチレンとして、三井化学社のハイゼックス、三菱化学社の三菱ポリエチレンHD、出光興産社の出光ポリエチレンやジャパンポリオレフィン社のジェイレクスHD等がある。また中密度および直鎖状ポリエチレンとして、三井化学社のウルトゼックス、ネオゼックス、出光興産社の出光ポリエチレンL、住友化学社のスミカセンLなどが挙げられる。
【0010】
また、上記無水マレイン酸グラフトポリエチレンにおいて、グラフト重合の際に用いる無水マレイン酸は、最終的に得られる無水マレイン酸グラフトポリエチレン中に、0.01〜5重量%の濃度となる量でグラフト重合せしめることが重要である。無水マレイン酸濃度が0.01重量%未満では、AC絶縁破壊特性の向上効果が小さく、5重量%を超えると無水マレイン酸に由来する極性基濃度が高くなり過ぎ、誘電特性(tanδ)を悪化させ、交流高電圧送電時の電力損失を増大させるようになるので好ましくない。
【0011】
なお特に好ましくは、上記無水マレイン酸グラフトポリエチレンは、請求項2に記載されるように、ポリエチレンの密度が0.93g/cm3以上で、かつ無水マレイン酸濃度が0.01〜1重量%の範囲のグラフト重合体とされ、このような無水マレイン酸グラフトポリエチレンを交流電力ケーブルの絶縁体とすることによって、さらに好ましいAC絶縁破壊特性および誘電特性(tanδ)を有する交流電力ケーブルとすることができる。
【0012】
そして、本発明に用いられる無水マレイン酸グラフトポリエチレンは、一般に良く知られたグラフト化方法、有機過酸化物、例えばジクミルパーオキサイドなどの触媒を用いる方法で製造することができる。具体的には、ポリエチレン、無水マレイン酸および有機過酸化物等触媒の所定量を、溶融混練下でグラフト反応させる方法、ポリエチレン、無水マレイン酸および有機過酸化物触媒等の所定量を適宜な有機溶媒に溶解し、溶液状態としてグラフト化反応を行う方法、ポリエチレンを水中に分散し、無水マレイン酸および有機化酸化物等触媒を供給しつつグラフト化反応を行う方法などである。中でも好ましいのは、溶液グラフト法によって製造されたものである。
【0013】
なお、上記無水マレイン酸グラフトポリエチレンは、無水マレイン酸濃度が最初から0.01〜5重量%の範囲となるような量でグラフト化反応をおこなって製造しても良いが、該無水マレイン酸濃度を、5重量%を超える高濃度でグラフト化反応をおこない、得られた高濃度無水マレイン酸グラフト重合体に、密度が0.93g/cm3以上のポリエチレンを追加し、最終的に得られる無水マレイン酸グラフト重合体中の無水マレイン酸濃度を、0.01〜5重量%の濃度範囲となるように調整しても良く、いずれも本発明に使用する無水マレイン酸グラフトポリエチレンとすることができる。
【0014】
以上のようにして得られた無水マレイン酸グラフトポリエチレンは、ベースポリマーであるポリエチレン中に、電気的特性に悪影響を及ぼす触媒残渣が残留していても、無水マレイン酸の作用でその影響が抑止される。そのメカニズムは、必ずしも明らかでないが、高電界下での交流の半サイクル毎に起こる絶縁体中の電荷注入および電荷抽出に基づく空間電荷の形成が抑制され、その結果として交流絶縁破壊特性を向上させることができると考えられる。
【0015】
本発明の交流電力ケーブルは、絶縁体として上記無水マレイン酸グラフトポリエチレンを用いたこと以外、その形状ないし構造は何ら特殊なものではなく、従来の汎用的な架橋ポリエチレン絶縁ケーブルと全く同様とすることができ、したがって、その製造も従来一般的な電力ケーブルと同様の方法で製造することができる。具体的には、導体上に半導電層、無水マレイン酸グラフトポリエチレンからなる絶縁層を順次押し出し形成する方法、あるいは、これら複数層を同時押し出しにより形成する方法などである。また、本発明の電力ケーブルには、必要に応じて通常の電力ケーブル同様、外部半導電層、補強層、遮水層、銅、アルミニウム等の外部金属遮蔽層、プラスチックからなる防食層、海底ケーブル仕様の鉄線外装など、その目的に応じて適宜の被覆層を形成してもよい。
【0016】
なお、上記絶縁層を形成する際の無水マレイン酸グラフトポリエチレンには、本発明の効果を損なわない範囲で種々の添加剤を加えることができる。その一例としては、他の合成樹脂やゴム、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤、滑剤、難燃剤、充填剤などが挙げられ、これら添加剤はその目的に応じて一種または二種以上混合して用いることができる。
【0017】
また、半導電層の形成には、種々のポリエチレン(低密度、中密度および高密度ポリエチレン)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)等を、それぞれ単独でもしくはブレンドしたものをベース樹脂とし、これに慣用量の導電性カーボンブラック、一般的にはベース樹脂100重量部に対しカーボンブラック30〜100重量部を加え、溶融混練などの方法で均一化したものを使用することができる。なお、その際のベース樹脂として、本発明における上記無水マレイン酸グラフト共重合体を用いても良い。
【0018】
【実施例】
次に実施例並びに比較例を示して本発明をさらに詳しく説明するが、以下の実施例は一例であって、本発明はこれらによって限定されるものではない。表1に示す各種試料について、高温電気特性(AC破壊電圧、誘電正接)を測定した。使用した無水マレイン酸グラフトポリエチレンは、いずれも三井化学社製のもので、密度が0.92g/cm3のものは商品名がミラソン、密度が0.93g/cm3の場合は商品名がネオゼックス、また密度が0.95g/cm3の場合は商品名がハイゼックスである。そしてこの無水マレイン酸グラフトポリエチレンは、いずれも溶液グラフト法によって製造されたものである。これらの無水マレイン酸グラフトポリエチレンは、種々の無水マレイン酸濃度(重量%)とするために、純ポリエチレンによって10倍程度に希釈して試料とした。
【0019】
このようにして得た無水マレイン酸グラフトポリエチレンを用いて、交流電力ケーブルを製造した。すなわち、上記で得たそれぞれの無水マレイン酸グラフトポリエチレンを絶縁層とし、またエチレン酢酸ビニル共重合体/高密度ポリエチレン(密度0.95g/cm3)/アセチレンカーボンブラックの重量部比が70/30/50の半導電性混和物を半導電層として、400mm2の導体上に、内部半導電層、絶縁層および外部半導電層の順に、200℃の押出温度で同時押出しにより絶縁層厚9mmの電力ケーブルを製造した。比較のために、通常の低密度架橋ポリエチレン絶縁ケーブルを、上記と同様の構造になるように作製した。これらの交流用電力ケーブルについて、AC破壊試験としては、90℃の温度で、50Hzの交流電圧を課電し絶縁破壊電圧(kV/mm)を測定した。また誘電正接(tanδ)を、90℃の温度で50Hz、10kV/mmの交流電圧を課電し求めた。結果を、表1に示した。
【0020】
【表1】
【0021】
表1の結果から明らかなように、密度0.93g/cm3以上のポリエチレンを用い、これに0.01〜5重量%濃度の無水マレイン酸をグラフト重合した、無水マレイン酸グラフトポリエチレンを絶縁体とする、実施例1〜4で示した本発明の交流用電力ケーブルは、比較例5で示した従来の低密度架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブル(密度0.92g/cm3)と比較しても、遜色のない耐熱特性、すなわち高温AC破壊電圧が高く、かつ高温誘電正接(tanδ)特性にも優れたものであった。
【0022】
これに対し、比較例1で示した電力ケーブルは、無水マレイン酸濃度が本発明の範囲内であるにもかかわらず、ポリエチレンの密度が本発明の範囲を外れて低いものであったため、AC破壊強度の向上は得られなかった。また、比較例2および3で示した電力ケーブルは、無水マレイン酸グラフトポリエチレン中の無水マレイン酸濃度が、本発明の範囲を外れて低かったため、無水マレイン酸による空間電荷抑制効果が小さく、十分なAC破壊強度が得られなかった。さらに、比較例4で示した電力ケーブルは、絶縁体中の無水マレイン酸濃度が高すぎて、誘電正接が0.3%と高く、好ましくないものであった。
【0023】
【発明の効果】
以上述べたように本発明の交流電力ケーブルは、絶縁体として密度0.93g/cm3以上のポリエチレンに、特定濃度の無水マレイン酸をグラフと重合せしめたグラフト重合体を使用しているので、従来の汎用架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルと遜色のない良好な耐熱特性が得られ、また上記ポリエチレンに残留する触媒残渣によって生じ易いと考えられている、交流絶縁破壊を効果的に抑制せしめることができる。すなわち高温AC破壊電圧が高く、かつ高温誘電特性に優れたものである。加えて本発明の交流電力ケーブルは、絶縁体が非架橋体であるので、電力ケーブルが撤去されリサイクル使用が可能であるので、焼却や埋設等の処分を行う必要がないから、環境負荷の低減に寄与するなど優れた効果を有する。
【発明の属する技術分野】
本発明は、交流電力送電のための電力ケーブルに関し、特に好ましい導体許容温度を維持しつつ、非架橋型でリサイクル可能なポリエチレンを、絶縁体に用いた交流電力ケーブルに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電力ケーブルとしては、低密度ポリエチレンを架橋してなる架橋ポリエチレンを絶縁体とする、架橋ポリエチレンケーブルが汎用されている。架橋の目的は、低密度ポリエチレン絶縁体の耐熱性の向上であり、架橋による耐熱性の向上によって導体許容温度を高くすることができ、送電容量の増大に有利となるためである。しかし、絶縁体が架橋されていると撤去ケーブルを処分する際、絶縁体をリサイクル使用することは殆ど不可能で、多くの場合焼却や埋め立て処分せざるを得ないのが現状であり、その結果、焼却による大気汚染や埋め立てにおいては土壌中に半永久的に放置されるなど、環境負荷を増大させるのが問題となっている。
【0003】
上記問題は、前述の架橋ポリエチレンに代えて、非架橋のポリエチレンを用いることによって解消できる。すなわち、結晶化度の大きい中密度ポリエチレンまたは高密度ポリエチレンは、上記架橋ポリエチレンと同等の耐熱性を有しているので、これら中密度ないし高密度ポリエチレンを絶縁体に用いた電力ケーブルは、従来の汎用的な架橋ポリエチレン電力ケーブルと比較しても遜色の無い導体許容温度が得られ、かつ、撤去ケーブルとして処分する場合には絶縁体のリサイクル使用が可能となる。しかしながら、上記汎用的な架橋ポリエチレン電力ケーブルの絶縁体に用いられている低密度ポリエチレンは、通常高圧ラジカル重合法により得られるのに対し、中密度ポリエチレンないし高密度ポリエチレンは、重合触媒を用いた低圧重合法によって得られるため、これら中密度ないし高密度ポリエチレンには重合時の重合触媒残渣が残留しており、この触媒残渣が得られた電力ケーブルの電気特性、特に絶縁特性に悪影響を及ぼすという問題がある。
【0004】
上記のような非架橋ポリエチレンを絶縁体とする電力ケーブルについて、その検討が従来から行われており、また提案されている。例えば、高圧ラジカル重合法によって得られる低密度ポリエチレンと二塩基酸無水物との共重合体、または高圧ラジカル重合法によって得られる低密度ポリエチレンに、二塩基酸無水物をグラフトした共重合体であって、二塩基酸無水物基含量0.002〜0.05重量%のエチレン共重合体を絶縁体とする電力ケーブルについて、特許文献1で提案されている。上記特許文献1で提案の電力ケーブルは、誘電正接を上昇させることなく電気絶縁抵抗を飛躍的に高めることができるので、絶縁層を厚くしなくても高電圧送電時の電力損失を低減させることができるとしている。しかし、絶縁体のベースポリマーとして、耐熱性に難点のある低密度ポリエチレンが用いられているため、高温特性、特に導体許容温度を高くして送電容量を増大しようとする目的には、さらに改善の余地が残されている。
【0005】
また、無水マレイン酸をグラフト重合させてなる0.94g/cm3以上の低圧法ポリエチレンを、絶縁体に用いた直流電力ケーブルが特許文献2に提案されている。この直流電力ケーブルによれば、ポリエチレン中に残留する触媒残渣によって絶縁体中に局部的に形成される空間電荷の蓄積を、無水マレイン酸の作用で抑制させることができるので、絶縁破壊強度の向上が図れる旨記載されている。そこで、このようなポリエチレングラフトマーについて、交流用の電力ケーブルの絶縁体としての検討を行った。
【0006】
【特許文献1】
特開平5−205527号公報
【特許文献2】
特開平2−10610号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
解決しようとする課題は、非架橋ポリエチレンを絶縁体とする交流電力ケーブルであって、従来の汎用架橋低密度ポリエチレンを絶縁体とする電力ケーブルに匹敵する導体許容温度、および高温絶縁破壊特性を維持し、撤去電力ケーブルとして処分する場合において、絶縁体のリサイクル使用が可能な交流電力ケーブルを提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記解決しようとする課題は、請求項1に記載されるように、密度が0.93g/cm3以上、無水マレイン酸濃度が0.01〜5重量%の無水マレイン酸グラフトポリエチレンを、絶縁体に用いた交流電力ケーブルとすることによって、解決される。また好ましくは、請求項2に記載されるように、前記無水マレイン酸濃度が、0.01〜1重量%である、請求項1記載の交流電力ケーブルとすることによって、解決される。
【0009】
【発明の実施の形態】
上記本発明の電力ケーブルにおいて、絶縁体に用いる無水マレイン酸グラフトポリエチレンを得るためのポリエチレンは、その密度が0.93g/cm3以上であることが重要である。該ポリエチレンの密度が0.93g/cm3より小さいと、高温領域での電気特性、特に高温時の交流(AC)破壊電圧が低くなり、送電容量の増大が期待できない。用いることのできるポリエチレンとしては、前記特定の密度を有するものであれば何れでも良い。一般的には中密度ポリエチレンまたは高密度ポリエチレンと称して市場に供給されている種々のポリエチレンが使用できる。より具体的には、高密度ポリエチレンとして、三井化学社のハイゼックス、三菱化学社の三菱ポリエチレンHD、出光興産社の出光ポリエチレンやジャパンポリオレフィン社のジェイレクスHD等がある。また中密度および直鎖状ポリエチレンとして、三井化学社のウルトゼックス、ネオゼックス、出光興産社の出光ポリエチレンL、住友化学社のスミカセンLなどが挙げられる。
【0010】
また、上記無水マレイン酸グラフトポリエチレンにおいて、グラフト重合の際に用いる無水マレイン酸は、最終的に得られる無水マレイン酸グラフトポリエチレン中に、0.01〜5重量%の濃度となる量でグラフト重合せしめることが重要である。無水マレイン酸濃度が0.01重量%未満では、AC絶縁破壊特性の向上効果が小さく、5重量%を超えると無水マレイン酸に由来する極性基濃度が高くなり過ぎ、誘電特性(tanδ)を悪化させ、交流高電圧送電時の電力損失を増大させるようになるので好ましくない。
【0011】
なお特に好ましくは、上記無水マレイン酸グラフトポリエチレンは、請求項2に記載されるように、ポリエチレンの密度が0.93g/cm3以上で、かつ無水マレイン酸濃度が0.01〜1重量%の範囲のグラフト重合体とされ、このような無水マレイン酸グラフトポリエチレンを交流電力ケーブルの絶縁体とすることによって、さらに好ましいAC絶縁破壊特性および誘電特性(tanδ)を有する交流電力ケーブルとすることができる。
【0012】
そして、本発明に用いられる無水マレイン酸グラフトポリエチレンは、一般に良く知られたグラフト化方法、有機過酸化物、例えばジクミルパーオキサイドなどの触媒を用いる方法で製造することができる。具体的には、ポリエチレン、無水マレイン酸および有機過酸化物等触媒の所定量を、溶融混練下でグラフト反応させる方法、ポリエチレン、無水マレイン酸および有機過酸化物触媒等の所定量を適宜な有機溶媒に溶解し、溶液状態としてグラフト化反応を行う方法、ポリエチレンを水中に分散し、無水マレイン酸および有機化酸化物等触媒を供給しつつグラフト化反応を行う方法などである。中でも好ましいのは、溶液グラフト法によって製造されたものである。
【0013】
なお、上記無水マレイン酸グラフトポリエチレンは、無水マレイン酸濃度が最初から0.01〜5重量%の範囲となるような量でグラフト化反応をおこなって製造しても良いが、該無水マレイン酸濃度を、5重量%を超える高濃度でグラフト化反応をおこない、得られた高濃度無水マレイン酸グラフト重合体に、密度が0.93g/cm3以上のポリエチレンを追加し、最終的に得られる無水マレイン酸グラフト重合体中の無水マレイン酸濃度を、0.01〜5重量%の濃度範囲となるように調整しても良く、いずれも本発明に使用する無水マレイン酸グラフトポリエチレンとすることができる。
【0014】
以上のようにして得られた無水マレイン酸グラフトポリエチレンは、ベースポリマーであるポリエチレン中に、電気的特性に悪影響を及ぼす触媒残渣が残留していても、無水マレイン酸の作用でその影響が抑止される。そのメカニズムは、必ずしも明らかでないが、高電界下での交流の半サイクル毎に起こる絶縁体中の電荷注入および電荷抽出に基づく空間電荷の形成が抑制され、その結果として交流絶縁破壊特性を向上させることができると考えられる。
【0015】
本発明の交流電力ケーブルは、絶縁体として上記無水マレイン酸グラフトポリエチレンを用いたこと以外、その形状ないし構造は何ら特殊なものではなく、従来の汎用的な架橋ポリエチレン絶縁ケーブルと全く同様とすることができ、したがって、その製造も従来一般的な電力ケーブルと同様の方法で製造することができる。具体的には、導体上に半導電層、無水マレイン酸グラフトポリエチレンからなる絶縁層を順次押し出し形成する方法、あるいは、これら複数層を同時押し出しにより形成する方法などである。また、本発明の電力ケーブルには、必要に応じて通常の電力ケーブル同様、外部半導電層、補強層、遮水層、銅、アルミニウム等の外部金属遮蔽層、プラスチックからなる防食層、海底ケーブル仕様の鉄線外装など、その目的に応じて適宜の被覆層を形成してもよい。
【0016】
なお、上記絶縁層を形成する際の無水マレイン酸グラフトポリエチレンには、本発明の効果を損なわない範囲で種々の添加剤を加えることができる。その一例としては、他の合成樹脂やゴム、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤、滑剤、難燃剤、充填剤などが挙げられ、これら添加剤はその目的に応じて一種または二種以上混合して用いることができる。
【0017】
また、半導電層の形成には、種々のポリエチレン(低密度、中密度および高密度ポリエチレン)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)等を、それぞれ単独でもしくはブレンドしたものをベース樹脂とし、これに慣用量の導電性カーボンブラック、一般的にはベース樹脂100重量部に対しカーボンブラック30〜100重量部を加え、溶融混練などの方法で均一化したものを使用することができる。なお、その際のベース樹脂として、本発明における上記無水マレイン酸グラフト共重合体を用いても良い。
【0018】
【実施例】
次に実施例並びに比較例を示して本発明をさらに詳しく説明するが、以下の実施例は一例であって、本発明はこれらによって限定されるものではない。表1に示す各種試料について、高温電気特性(AC破壊電圧、誘電正接)を測定した。使用した無水マレイン酸グラフトポリエチレンは、いずれも三井化学社製のもので、密度が0.92g/cm3のものは商品名がミラソン、密度が0.93g/cm3の場合は商品名がネオゼックス、また密度が0.95g/cm3の場合は商品名がハイゼックスである。そしてこの無水マレイン酸グラフトポリエチレンは、いずれも溶液グラフト法によって製造されたものである。これらの無水マレイン酸グラフトポリエチレンは、種々の無水マレイン酸濃度(重量%)とするために、純ポリエチレンによって10倍程度に希釈して試料とした。
【0019】
このようにして得た無水マレイン酸グラフトポリエチレンを用いて、交流電力ケーブルを製造した。すなわち、上記で得たそれぞれの無水マレイン酸グラフトポリエチレンを絶縁層とし、またエチレン酢酸ビニル共重合体/高密度ポリエチレン(密度0.95g/cm3)/アセチレンカーボンブラックの重量部比が70/30/50の半導電性混和物を半導電層として、400mm2の導体上に、内部半導電層、絶縁層および外部半導電層の順に、200℃の押出温度で同時押出しにより絶縁層厚9mmの電力ケーブルを製造した。比較のために、通常の低密度架橋ポリエチレン絶縁ケーブルを、上記と同様の構造になるように作製した。これらの交流用電力ケーブルについて、AC破壊試験としては、90℃の温度で、50Hzの交流電圧を課電し絶縁破壊電圧(kV/mm)を測定した。また誘電正接(tanδ)を、90℃の温度で50Hz、10kV/mmの交流電圧を課電し求めた。結果を、表1に示した。
【0020】
【表1】
【0021】
表1の結果から明らかなように、密度0.93g/cm3以上のポリエチレンを用い、これに0.01〜5重量%濃度の無水マレイン酸をグラフト重合した、無水マレイン酸グラフトポリエチレンを絶縁体とする、実施例1〜4で示した本発明の交流用電力ケーブルは、比較例5で示した従来の低密度架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブル(密度0.92g/cm3)と比較しても、遜色のない耐熱特性、すなわち高温AC破壊電圧が高く、かつ高温誘電正接(tanδ)特性にも優れたものであった。
【0022】
これに対し、比較例1で示した電力ケーブルは、無水マレイン酸濃度が本発明の範囲内であるにもかかわらず、ポリエチレンの密度が本発明の範囲を外れて低いものであったため、AC破壊強度の向上は得られなかった。また、比較例2および3で示した電力ケーブルは、無水マレイン酸グラフトポリエチレン中の無水マレイン酸濃度が、本発明の範囲を外れて低かったため、無水マレイン酸による空間電荷抑制効果が小さく、十分なAC破壊強度が得られなかった。さらに、比較例4で示した電力ケーブルは、絶縁体中の無水マレイン酸濃度が高すぎて、誘電正接が0.3%と高く、好ましくないものであった。
【0023】
【発明の効果】
以上述べたように本発明の交流電力ケーブルは、絶縁体として密度0.93g/cm3以上のポリエチレンに、特定濃度の無水マレイン酸をグラフと重合せしめたグラフト重合体を使用しているので、従来の汎用架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルと遜色のない良好な耐熱特性が得られ、また上記ポリエチレンに残留する触媒残渣によって生じ易いと考えられている、交流絶縁破壊を効果的に抑制せしめることができる。すなわち高温AC破壊電圧が高く、かつ高温誘電特性に優れたものである。加えて本発明の交流電力ケーブルは、絶縁体が非架橋体であるので、電力ケーブルが撤去されリサイクル使用が可能であるので、焼却や埋設等の処分を行う必要がないから、環境負荷の低減に寄与するなど優れた効果を有する。
Claims (2)
- 密度が0.93g/cm3以上、無水マレイン酸濃度が0.01〜5重量%の無水マレイン酸グラフトポリエチレンを、絶縁体に用いたことを特徴とする交流電力ケーブル。
- 前記無水マレイン酸濃度が、0.01〜1重量%であることを特徴とする、請求項1記載の交流電力ケーブル。
Priority Applications (1)
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JP2003161892A JP2004363020A (ja) | 2003-06-06 | 2003-06-06 | 交流電力ケーブル |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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US9076566B2 (en) | 2010-07-13 | 2015-07-07 | Ls Cable Ltd. | DC power cable with space charge reducing effect |
WO2020204012A1 (ja) | 2019-03-29 | 2020-10-08 | 古河電気工業株式会社 | 絶縁性樹脂組成物およびその製造方法、絶縁テープおよびその製造方法、絶縁層形成方法、ならびに電力ケーブルおよびその製造方法 |
-
2003
- 2003-06-06 JP JP2003161892A patent/JP2004363020A/ja active Pending
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