JP2004360053A - 直接電解法による低炭素金属チタンの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】溶融塩中の電解還元による金属チタン製造方法において、炭素による汚染が少なく、かつ生産効率を高くできる製造方法の提供。
【解決手段】電解質として塩化カルシウムを10質量%以上含有する溶融塩を用い、温度範囲を600〜840℃、電流密度を0.1〜5A/cm2として、電解還元をおこなう炭素による汚染の少ない金属チタンの製造方法。さらにその場合の素材となる電極として、気孔率が0.5〜60%、硬さが60HV以上である酸化チタン多孔質焼結体を用いる金属チタンの製造方法。
【選択図】なし。
【解決手段】電解質として塩化カルシウムを10質量%以上含有する溶融塩を用い、温度範囲を600〜840℃、電流密度を0.1〜5A/cm2として、電解還元をおこなう炭素による汚染の少ない金属チタンの製造方法。さらにその場合の素材となる電極として、気孔率が0.5〜60%、硬さが60HV以上である酸化チタン多孔質焼結体を用いる金属チタンの製造方法。
【選択図】なし。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸化物形態のチタン原材料を溶融塩中で電解還元して金属とする金属チタンの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属チタンは、耐食性、意匠性などにすぐれ、適度の弾性を有し、かつ同じ質量にて得られる強度、すなわち比強度が高い材料として航空機材料、屋根材、ゴルフのヘッド、熱交換器用材料、化学プラントなど広く使用されている。近年では、人体に対して毒性のない金属として医療関係の機器類への使用など、用途は拡大される一方である。しかしながら、金属チタンの製造は製錬に多工程を要し、金属として高価であるため、生産性の高い、より安価な工業的製造方法が望まれている。
【0003】
通常の金属チタンの製造方法は、原料である酸化チタン(主としてTiO2)を塩素化して四塩化チタンとし、これを蒸留精製した後、Mgと反応させて還元しスポンジ状の金属Tiとする。還元にNaを用いる方法もあり、Mgを用いる方法はクロール法、Naを用いる方法はハンター法と呼ばれている。この四塩化チタンの還元反応は発熱反応であり、急激に進行させるのは危険であることから、十分制御して反応させるために長時間を要し、しかもバッチ方式なので生産性が大きく制限される。その上、還元により生じたMgCl2は、溶融塩電解法によりMgとCl2に分離し再利用するが、金属チタン製錬にて使用する電力の約2/3がこの溶融塩電解で消費される。したがって、反応時間を短くし、かつ電力を有効利用することにより製造コストを低下し得る方法が求められている。
【0004】
最近、金属酸化物を塩化物溶融塩中で通電還元し金属とする直接電解法が提案され、チタンに適用できれば直接電解が可能になり、製造方法が大幅に合理化されるとして注目されている。これは特許文献1にて開示された方法で、たとえば酸素を含む金属チタンを陰極として溶融塩中で通電すると、電解質である溶融塩中の金属イオンが陰極のチタンの表面に析出するよりも、チタン中の酸素が電解質中に移動する反応の方が優先的に進行するという現象を利用する。
【0005】
この溶融塩中での通電電解により、酸化チタンを原料とし電解して金属チタンを得ようとする場合、陰極には導電体を取り付けた多孔質の酸化チタン、陽極には炭素または黒鉛が用いられる。しかし、このような構成の装置にて実際に酸化チタンの電解を実施してみると、多くの対処すべき問題がある。その主要な問題として、電解の初期には金属チタンの生成効率は高いが、継続していくと生成効率が大きく低下してくること、および得られた金属チタンに炭素が混入してくることがある。
【0006】
電解を継続すると生成効率が大きく低下することに対しては、電流密度の制御、溶融塩中に増加してくる酸素濃度の管理などの対策が取られるが、必ずしも十分ではない。また、炭素による汚染は、陽極に黒鉛が用いられることから生じると考えられる。黒鉛は酸素との反応により消耗し、電極間距離の制御が必要という操業上の問題があるが、安価なので消耗品として使用することができる。そして、何よりも、高温の溶融塩に対し陽電極溶解せず、塩素に対し反応しない適当な電極用導電体であり、さらには、酸素との燃焼反応により電解時の電圧が下げられるという利点があるので、陽極用電極材料は、炭素または黒鉛が最も有用と考えられる。
【0007】
【特許文献1】
特表2002−517613号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、陰極に酸化チタン、陽極に炭素または黒鉛を用いて溶融塩中で金属チタンを直接電解にて製造する際の、金属チタンの生成効率を向上させ、かつ炭素による汚染を低減する製造方法の提供にある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、酸化チタン(TiO2)を原料とし、CaCl2、BaCl2、MgCl2、NaClなどの溶融塩中で電気分解することにより直接金属チタンを得る製造方法について、種々検討をおこなった。原料とする陰極は、電気伝導体の金属チタンなどを芯に用いた酸化チタンの焼結体とし、その酸化物焼結体について好ましい形態を調査した。その結果、できれば多孔質体とし、その焼結体の気孔率や気孔の状態、あるいは硬さなどを管理すれば、金属チタンの生成効率を向上できることを確認した。
【0010】
ここで生成効率というのは、流した電流と時間から、電気分解におけるファラデーの法則によりTiO2がすべてTiになるとして計算したTi量に対する実際に得られたTi量の比率を示すこととする。
【0011】
生成効率をより一層高めるべく、さらなる改善検討を続けていくと、得られる金属チタンは炭素による汚染を生じており、場合によってかなり多く混入していることがわかってきた。炭素は、JIS規格において合金板や合金棒では0.1%以下、スポンジチタンでは0.03%以下に規制されている。金属チタンへの炭素の混入は、窒素や酸素ほどには影響は大きくないが、引張り強さを高め、伸びを劣化させ、電気伝導度を低下させるので、多すぎる混入は好ましくない。
【0012】
炭素の汚染に対する電解条件の影響について調査してみると、電解の温度を低くすれば、炭素の混入が低下する傾向が認められた。電解用の溶融塩はCaCl2を主とするのが金属チタンの生成効率を高くできるので好ましいが、CaCl2は融点が高いので、温度を大きく低下できない。そこで、NaClなど他の塩化物を混ぜ融点を低下させるなどして、広範囲に温度を変えて検討した結果、この電解液の温度を低下させることが炭素の混入低減にとくに効果があることが確認された。
【0013】
溶融塩電解液には溶け込まないはずの陽極の炭素が、陰極の金属チタンを汚染する理由は、次のように考えられる。生成効率を高くするために液温を高くしたり、生成速度を増すために電流密度を大きくしたりすると、CaCl2が電解され金属カルシウムが生じやすくなる。生じた金属カルシウムは、酸化チタンの還元に有効に消費されるが、一部が溶融塩電解液中に溶け込んで陽極にまで達し、炭素と反応してカルシウムカーバイドを形成する。カルシウムカーバイドは溶融塩電解液に溶けるので、これが陰極の酸化チタンにまで移動し、酸化チタンを還元するとともに炭素を付着させることになり、汚染を生じる。これに対し、電解液温度を下げると、金属カルシウムの炭素との反応が抑制され、炭素の汚染が生じ難くなったのではないかと推定される
種々製造条件の異なる電極を、この電解液温度を低くした条件にて電解をおこなってみた結果、二つの問題のあることがわかってきた。一つは電解の初期には通電した電流に対する金属チタンの生成量すなわち電流効率が高いが、電解の続行にしたがってこの電流効率が急激に低下する場合のあることであり、もう一つは電解の進行により電極が崩壊するもののあることである。
【0014】
電解により電極に生じた金属チタンを調べてみると、とくに生成効率が大きく低下した場合、その気孔率が小さいことが見出された。
【0015】
酸化チタンTiO2が見かけの体積は変わらずに電解後すべてTiになったとすれば、TiO2の密度4.2g/cm3および金属Tiの密度4.5g/cm3から、気孔率は44%と計算される。ところが電解中生成効率が大きく低下した場合を調べてみると、得られた金属チタンの気孔率は5%未満になっていた。電解の進行過程で生じてくる海綿状の金属チタンの焼結が進行し、このために、電解液と接する陽極の実効的な表面積が低下して、生成効率が大きく低下してしまったのではないかと推定される。
【0016】
このような金属チタンの気孔率の減少は、電解液の温度が高いほど生じやすい。これに対し炭素の汚染防止を目的に電解液の温度を低下すると、高温でおこなう場合より生じ難くなる。しかし、より確実に電解中生じた金属チタンの気孔率低減を抑止するには、原料となる陰極の焼結体の気孔率を高くし、硬さを高くしておくとよいことが有効であることがわかった。
【0017】
一方、電解進行中に崩壊を生じた電極について調べてみると、生じた金属チタンの気孔率が高く、80%を超える状態になっている。通常、陰極に用いる酸化チタンの焼結体は、できるだけ気孔率を高くする方が電流密度を高くすることができ、金属チタンの生成速度を大きくすることができる。したがって、素材電極は気孔率が高い方が好ましいと考えられたが、電解液温度が低い場合は焼結が生じ難くなるため、電解にて生じた金属チタンの気孔率が高くなりすぎると、電極崩壊や通電用導体との接合が弱くなって剥離してしまうなどの現象を生じやすくなったものと思われた。
【0018】
以上のような検討結果から、炭素による汚染の限界を0.5質量%以下であることとし、その上で、電解により生じた金属チタンの気孔率が5〜80%の範囲にあることを目標にして、電解液組成、電解液温度、電流密度などの電解条件および電極の性状等についてその限界をあきらかにし、本発明を完成させた。本発明の要旨は次のとおりである。
【0019】
(1) 酸化チタンを陰極とし、陽極に黒鉛を用いる溶融塩中の直接電解法による金属チタンの製造法において、溶融塩は塩化カルシウムを10質量%以上含有するものとし、温度範囲を600〜840℃、電流密度を0.1〜5A/cm2として、通電還元をおこなうことを特徴とする低炭素の金属チタンの製造方法。
【0020】
(2) 陰極として、気孔率が0.5〜60%、60HV以上である酸化チタン多孔質焼結体を用いることを特徴とする、請求項1に記載の通電還元による低炭素の金属チタンの製造方法。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明の酸化チタンの溶融塩中の直接電解による金属チタンの製造法は、陽極は黒鉛、陰極は酸化チタンの焼結体とし、溶融塩電解液は塩化カルシウムを10%以上含有し、液の温度は600〜840℃、電流密度は0.1〜5A/cm2として、通電還元するものとする。
【0022】
電解液の溶融塩は、10質量%以上の塩化カルシウム(CaCl2)を含むものがよい。これは、10質量%を下回る場合、金属チタンの生成効率が低下してしまうからである。溶融塩液の組成は塩化カルシウムのみ(100質量%)としてもよいが、溶融点が782℃で液の温度を低くできないので、NaCl、KCl、BaCl2などを混ぜ溶融温度を低下させて使用するのがよい。
【0023】
電解時の溶融塩の温度は、600〜840℃とする。これは、600℃を下回ると生成効率が低下するからである。溶融塩の流動性が低下するためではないかと思われる。しかし840℃を超える温度にて電解をおこなうと、得られる金属チタン中の炭素量が0.5質量%超える場合が多くなる。その上、金属チタンの気孔率が5%を下回ることも多くなり、電解の初期は生成効率が高いが、電解が進むにしたがって大きく低下し、全体として電流の効率が低い結果となる。
【0024】
なお、この温度範囲が600〜840℃ということは、電解中常にこの範囲にあることを意味し、一時的に840℃を超えたりすると、生じた海綿状金属チタンの焼結が進行し、生成効率が低下したり、炭素量が増したりするおそれがある。
【0025】
電解の電流密度(A/cm2)は、溶融塩中にある陰極の見かけの表面積(外形状の幾何学的寸法による表面積)に対する電極電流の比とするが、低すぎるとたとえ電流効率が高くても、生産性が低いので0.1A/cm2以上必要である。しかし高くしすぎると、炭素による汚染が増大することや、生成効率が初期には高くても、時間経過とともに急激に低下することがあるので、5.0A/cm2以下とするのがよい。
【0026】
原料電極は、芯部に金属チタンなどの電気良導体を用い、その周りを原料となる酸化チタンが覆う形状のものが好ましい。この酸化チタンはルチルやアナターゼなどの原料粉末を焼結して電極形状に成形する。その場合、緻密な焼結体でもよいが、多孔質体であることがより好ましい。これは、緻密な焼結体では電流密度を高くできず、生産性が低いからである。多孔質とすれば、溶融塩が浸透すること、あるいは表面積が増すことによると思われるが、電気伝導度が上がり電流密度を上げることができ、生成速度が増して生産性が向上する。
【0027】
上述の液温度を低下させた溶融塩電解において、多孔質の電極とする場合、生成効率がよくなかったり、電解中に電極の崩壊が生じて、それ以上の電解がおこなえなかったりすることがある。このような問題の解消に関しては、素材となる電極は気孔率が0.5〜60%、硬さが60HV以上である酸化チタン多孔質焼結体とするのがよい。
【0028】
焼結体の気孔率は、0.5%を下回る場合、電流密度を大きくできず、Tiの生成効率が大きくならないからである。これは電解中に生じた金属チタンの焼結が進行しやすく、気孔率が高くならず、電極の溶融した電解液との接触面積が相対的に低下するためと思われる。一方、焼結体の気孔率が60%を超えると還元途中で素材料の形状が崩壊したり、電流密度増加により、炭素汚染が増すおそれがある。十分な還元ができなくなるばかりでなく、金属チタンの回収が困難になるおそれがある。生じた金属チタンの気孔率も大きくなりすぎてしまったためと思われる。
【0029】
多孔質焼結体の硬さはビッカース硬さ(HV))にて60以上あることが好ましい。これは、60HVを下回る場合、焼結が不十分で、電解還元中に素材料の形状が崩壊するおそれがあるからである。酸化チタン多孔質焼結体の気孔率は0.5〜60%とするが、気孔率の高いものになるほど焼結が不十分になりがちになる。しかし、硬さが60HV以上となるように焼成しておけば、電解中の形状崩壊は生じなくなる。この場合、気孔率が上記範囲内であれば、硬さの上限はとくには限定しなくてもよい。
【0030】
上述の酸化チタン多孔質焼結体の製造方法は、原料にルチルやアナターゼなどの酸化チタン粉末を用いる。その場合の原料の粉末の平均粒径は0.2〜2000μmの範囲がよい。この範囲より粒径が小さいものや大きいものが多く含まれると、混合した粉体を加圧成形したとき、成形後の形状維持が困難になることがあり、また、焼成後の焼結体の強度が不足して電解中に崩壊を起こしやすくなったり、目的とする気孔率のものが得られなくなったりするからである。
【0031】
原料の粉末には、とくに気孔率を大きくしたい場合や加圧成形後の形状維持が困難な場合は、バインダー等を添加し混錬すればよいが、添加しなくてもよい。これら原料は金型を用い、9.8〜78.5MPaの範囲で加圧して所要形状に成形するとよい。加圧力が9.8MPa未満では、型から取りだした後の形状維持が困難になるおそれがあり、78.5MPaを超える加圧は、焼成後に目標とする範囲の、比表面積あるいは細孔径分布が得られなくなることがある。
【0032】
電極の形状は、チタンなど金属製導体を芯にしてその周囲に素材料を密着させたものが好ましい。このような一体化した構造の電極は、金属製導体と共に素材料の原料粉末混錬体を電極形状に成形し、同時焼成をおこなって一体化するか、あるいは金属製導体と多孔質焼結体とを機械的に密着させ構成させる。
【0033】
この多孔質焼結体は、上述の原料粉末を加圧成形後、要すれば十分に乾燥し、1100〜1500℃にて0.5〜10時間の焼成をおこなう。焼成温度が1100℃未満または焼成時間が0.5時間未満の場合は焼結が不十分で、多孔質焼結体は十分な硬さが得られない。焼成温度が1500℃を超えたり、加熱時間が10時間超えるようになると、気孔率が0.5%未満となるおそれがある。なお、焼結時の雰囲気中の酸素濃度は、10ppm〜25%程度であればよい。
【0034】
多孔質焼結体を製造する方法において、原料粉末にTiO、Ti2O3あるいはTi3O5など亜酸化チタン粉末を質量%で0.1〜40%配合し混合後、加圧成形し焼成をおこなえば、焼成温度範囲を900〜1400℃と低くしても十分に焼結が進行し、焼成後の硬さを60HV以上にすることができる。亜酸化チタンは酸化チタンTiO2に対し酸素の不足した酸化チタンで、いずれの組成のものであってもよく、単独で添加しても混合して添加してもよい。
【0035】
【実施例】
純度99.99%の酸化チタン粉末を原料に用い、金型を用いプレス加圧して直径25mm、高さ10mmの円柱状とし1000℃、1時間の仮焼結をおこなった後、10mm角で長さ15mmの角柱に切断加工し、長さ方向の中心軸に沿って深さ12mmの孔をあけ、直径2.0mmのチタン棒を挿入した。その後、1100〜1200℃にて焼結をおこない、導電体の付いた酸化チタン電極とした。この電極の酸化チタンは、酸化チタン粉末の粒度およびプレスの加圧力を変え、さらに亜酸化チタンの添加によって、気孔率および硬さを変化させた。
【0036】
得られた焼結体について、焼結体の重量と寸法から見かけ密度を求め、TiO2の理論密度との差を理論密度で除して気孔率とした。
【0037】
これらの電極を用い、陽極は黒鉛とし、塩化カルシウムと塩化ナトリウムを混合して電解液組成を変え、電解電位を3.0Vとして液温度および電流密度を変えて電解をおこなった。これらの条件を表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
表の電流密度は電解開始初期の値である。10時間の通電還元後、電極に生じた金属チタン量を分析し、流した電流と時間からファラデーの法則によりTiO2がTiになるとして計算したTi量に対する、実測Ti量の比を生成効率として求めた。また、電極の単位表面積と時間当たりのTi生成の平均速度も求めてみた。電極に生成された金属チタンについて、断面の走査型電子顕微鏡観察をおこない、チタン部分と気孔部分との比率を画像解析し気孔率を求めた。さらに、この金属チタンの炭素量を分析して汚染の程度を調査した。得られた結果を合わせて表1に示す。
【0040】
表1の結果からわかるように、試番1および2は液の塩化カルシウム濃度が低すぎ、金属チタンの生成効率は低く、生成速度も低い。試番3、4、5、7および8は、生成金属チタンの気孔率が小さく炭素による汚染が大きい。液温が高すぎたため、素材の酸化物焼結体の気孔率が高くても、生じた金属チタンは気孔率の低いものとなってしまったと思われる。試番6は液温が550℃と低すぎるため電解が十分おこなわれていない。試番9、10および11は電流密度が高く、生成平均速度は大きいが、生成効率がよくない。これは電解中電極からチタンの剥離が起きており、陰極の気孔率は高いが硬さが低いためと推定される。
【0041】
これらに比し、試験番号12〜23に示す本発明にて定める条件にて電解をおこなった場合は、いずれも炭素による汚染は少なく金属チタンの生成効率は高い。電解中の液温を低くし、電極の気孔率および硬さを規制することにより、得られた金属チタンの気孔率が12〜78%の範囲になっていることによる効果であると思われる。
【0042】
【発明の効果】
電解質を溶融塩とする電解により酸化チタンを直接還元して金属チタンとする方法は、従来より低コストにて金属チタンを得る可能性のある方法として注目されているが、本発明によれば、この製造方法において、金属チタンの生成効率を向上させ、かつ炭素による汚染を低減することができ、より実用性にすぐれたものとすることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸化物形態のチタン原材料を溶融塩中で電解還元して金属とする金属チタンの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属チタンは、耐食性、意匠性などにすぐれ、適度の弾性を有し、かつ同じ質量にて得られる強度、すなわち比強度が高い材料として航空機材料、屋根材、ゴルフのヘッド、熱交換器用材料、化学プラントなど広く使用されている。近年では、人体に対して毒性のない金属として医療関係の機器類への使用など、用途は拡大される一方である。しかしながら、金属チタンの製造は製錬に多工程を要し、金属として高価であるため、生産性の高い、より安価な工業的製造方法が望まれている。
【0003】
通常の金属チタンの製造方法は、原料である酸化チタン(主としてTiO2)を塩素化して四塩化チタンとし、これを蒸留精製した後、Mgと反応させて還元しスポンジ状の金属Tiとする。還元にNaを用いる方法もあり、Mgを用いる方法はクロール法、Naを用いる方法はハンター法と呼ばれている。この四塩化チタンの還元反応は発熱反応であり、急激に進行させるのは危険であることから、十分制御して反応させるために長時間を要し、しかもバッチ方式なので生産性が大きく制限される。その上、還元により生じたMgCl2は、溶融塩電解法によりMgとCl2に分離し再利用するが、金属チタン製錬にて使用する電力の約2/3がこの溶融塩電解で消費される。したがって、反応時間を短くし、かつ電力を有効利用することにより製造コストを低下し得る方法が求められている。
【0004】
最近、金属酸化物を塩化物溶融塩中で通電還元し金属とする直接電解法が提案され、チタンに適用できれば直接電解が可能になり、製造方法が大幅に合理化されるとして注目されている。これは特許文献1にて開示された方法で、たとえば酸素を含む金属チタンを陰極として溶融塩中で通電すると、電解質である溶融塩中の金属イオンが陰極のチタンの表面に析出するよりも、チタン中の酸素が電解質中に移動する反応の方が優先的に進行するという現象を利用する。
【0005】
この溶融塩中での通電電解により、酸化チタンを原料とし電解して金属チタンを得ようとする場合、陰極には導電体を取り付けた多孔質の酸化チタン、陽極には炭素または黒鉛が用いられる。しかし、このような構成の装置にて実際に酸化チタンの電解を実施してみると、多くの対処すべき問題がある。その主要な問題として、電解の初期には金属チタンの生成効率は高いが、継続していくと生成効率が大きく低下してくること、および得られた金属チタンに炭素が混入してくることがある。
【0006】
電解を継続すると生成効率が大きく低下することに対しては、電流密度の制御、溶融塩中に増加してくる酸素濃度の管理などの対策が取られるが、必ずしも十分ではない。また、炭素による汚染は、陽極に黒鉛が用いられることから生じると考えられる。黒鉛は酸素との反応により消耗し、電極間距離の制御が必要という操業上の問題があるが、安価なので消耗品として使用することができる。そして、何よりも、高温の溶融塩に対し陽電極溶解せず、塩素に対し反応しない適当な電極用導電体であり、さらには、酸素との燃焼反応により電解時の電圧が下げられるという利点があるので、陽極用電極材料は、炭素または黒鉛が最も有用と考えられる。
【0007】
【特許文献1】
特表2002−517613号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、陰極に酸化チタン、陽極に炭素または黒鉛を用いて溶融塩中で金属チタンを直接電解にて製造する際の、金属チタンの生成効率を向上させ、かつ炭素による汚染を低減する製造方法の提供にある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、酸化チタン(TiO2)を原料とし、CaCl2、BaCl2、MgCl2、NaClなどの溶融塩中で電気分解することにより直接金属チタンを得る製造方法について、種々検討をおこなった。原料とする陰極は、電気伝導体の金属チタンなどを芯に用いた酸化チタンの焼結体とし、その酸化物焼結体について好ましい形態を調査した。その結果、できれば多孔質体とし、その焼結体の気孔率や気孔の状態、あるいは硬さなどを管理すれば、金属チタンの生成効率を向上できることを確認した。
【0010】
ここで生成効率というのは、流した電流と時間から、電気分解におけるファラデーの法則によりTiO2がすべてTiになるとして計算したTi量に対する実際に得られたTi量の比率を示すこととする。
【0011】
生成効率をより一層高めるべく、さらなる改善検討を続けていくと、得られる金属チタンは炭素による汚染を生じており、場合によってかなり多く混入していることがわかってきた。炭素は、JIS規格において合金板や合金棒では0.1%以下、スポンジチタンでは0.03%以下に規制されている。金属チタンへの炭素の混入は、窒素や酸素ほどには影響は大きくないが、引張り強さを高め、伸びを劣化させ、電気伝導度を低下させるので、多すぎる混入は好ましくない。
【0012】
炭素の汚染に対する電解条件の影響について調査してみると、電解の温度を低くすれば、炭素の混入が低下する傾向が認められた。電解用の溶融塩はCaCl2を主とするのが金属チタンの生成効率を高くできるので好ましいが、CaCl2は融点が高いので、温度を大きく低下できない。そこで、NaClなど他の塩化物を混ぜ融点を低下させるなどして、広範囲に温度を変えて検討した結果、この電解液の温度を低下させることが炭素の混入低減にとくに効果があることが確認された。
【0013】
溶融塩電解液には溶け込まないはずの陽極の炭素が、陰極の金属チタンを汚染する理由は、次のように考えられる。生成効率を高くするために液温を高くしたり、生成速度を増すために電流密度を大きくしたりすると、CaCl2が電解され金属カルシウムが生じやすくなる。生じた金属カルシウムは、酸化チタンの還元に有効に消費されるが、一部が溶融塩電解液中に溶け込んで陽極にまで達し、炭素と反応してカルシウムカーバイドを形成する。カルシウムカーバイドは溶融塩電解液に溶けるので、これが陰極の酸化チタンにまで移動し、酸化チタンを還元するとともに炭素を付着させることになり、汚染を生じる。これに対し、電解液温度を下げると、金属カルシウムの炭素との反応が抑制され、炭素の汚染が生じ難くなったのではないかと推定される
種々製造条件の異なる電極を、この電解液温度を低くした条件にて電解をおこなってみた結果、二つの問題のあることがわかってきた。一つは電解の初期には通電した電流に対する金属チタンの生成量すなわち電流効率が高いが、電解の続行にしたがってこの電流効率が急激に低下する場合のあることであり、もう一つは電解の進行により電極が崩壊するもののあることである。
【0014】
電解により電極に生じた金属チタンを調べてみると、とくに生成効率が大きく低下した場合、その気孔率が小さいことが見出された。
【0015】
酸化チタンTiO2が見かけの体積は変わらずに電解後すべてTiになったとすれば、TiO2の密度4.2g/cm3および金属Tiの密度4.5g/cm3から、気孔率は44%と計算される。ところが電解中生成効率が大きく低下した場合を調べてみると、得られた金属チタンの気孔率は5%未満になっていた。電解の進行過程で生じてくる海綿状の金属チタンの焼結が進行し、このために、電解液と接する陽極の実効的な表面積が低下して、生成効率が大きく低下してしまったのではないかと推定される。
【0016】
このような金属チタンの気孔率の減少は、電解液の温度が高いほど生じやすい。これに対し炭素の汚染防止を目的に電解液の温度を低下すると、高温でおこなう場合より生じ難くなる。しかし、より確実に電解中生じた金属チタンの気孔率低減を抑止するには、原料となる陰極の焼結体の気孔率を高くし、硬さを高くしておくとよいことが有効であることがわかった。
【0017】
一方、電解進行中に崩壊を生じた電極について調べてみると、生じた金属チタンの気孔率が高く、80%を超える状態になっている。通常、陰極に用いる酸化チタンの焼結体は、できるだけ気孔率を高くする方が電流密度を高くすることができ、金属チタンの生成速度を大きくすることができる。したがって、素材電極は気孔率が高い方が好ましいと考えられたが、電解液温度が低い場合は焼結が生じ難くなるため、電解にて生じた金属チタンの気孔率が高くなりすぎると、電極崩壊や通電用導体との接合が弱くなって剥離してしまうなどの現象を生じやすくなったものと思われた。
【0018】
以上のような検討結果から、炭素による汚染の限界を0.5質量%以下であることとし、その上で、電解により生じた金属チタンの気孔率が5〜80%の範囲にあることを目標にして、電解液組成、電解液温度、電流密度などの電解条件および電極の性状等についてその限界をあきらかにし、本発明を完成させた。本発明の要旨は次のとおりである。
【0019】
(1) 酸化チタンを陰極とし、陽極に黒鉛を用いる溶融塩中の直接電解法による金属チタンの製造法において、溶融塩は塩化カルシウムを10質量%以上含有するものとし、温度範囲を600〜840℃、電流密度を0.1〜5A/cm2として、通電還元をおこなうことを特徴とする低炭素の金属チタンの製造方法。
【0020】
(2) 陰極として、気孔率が0.5〜60%、60HV以上である酸化チタン多孔質焼結体を用いることを特徴とする、請求項1に記載の通電還元による低炭素の金属チタンの製造方法。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明の酸化チタンの溶融塩中の直接電解による金属チタンの製造法は、陽極は黒鉛、陰極は酸化チタンの焼結体とし、溶融塩電解液は塩化カルシウムを10%以上含有し、液の温度は600〜840℃、電流密度は0.1〜5A/cm2として、通電還元するものとする。
【0022】
電解液の溶融塩は、10質量%以上の塩化カルシウム(CaCl2)を含むものがよい。これは、10質量%を下回る場合、金属チタンの生成効率が低下してしまうからである。溶融塩液の組成は塩化カルシウムのみ(100質量%)としてもよいが、溶融点が782℃で液の温度を低くできないので、NaCl、KCl、BaCl2などを混ぜ溶融温度を低下させて使用するのがよい。
【0023】
電解時の溶融塩の温度は、600〜840℃とする。これは、600℃を下回ると生成効率が低下するからである。溶融塩の流動性が低下するためではないかと思われる。しかし840℃を超える温度にて電解をおこなうと、得られる金属チタン中の炭素量が0.5質量%超える場合が多くなる。その上、金属チタンの気孔率が5%を下回ることも多くなり、電解の初期は生成効率が高いが、電解が進むにしたがって大きく低下し、全体として電流の効率が低い結果となる。
【0024】
なお、この温度範囲が600〜840℃ということは、電解中常にこの範囲にあることを意味し、一時的に840℃を超えたりすると、生じた海綿状金属チタンの焼結が進行し、生成効率が低下したり、炭素量が増したりするおそれがある。
【0025】
電解の電流密度(A/cm2)は、溶融塩中にある陰極の見かけの表面積(外形状の幾何学的寸法による表面積)に対する電極電流の比とするが、低すぎるとたとえ電流効率が高くても、生産性が低いので0.1A/cm2以上必要である。しかし高くしすぎると、炭素による汚染が増大することや、生成効率が初期には高くても、時間経過とともに急激に低下することがあるので、5.0A/cm2以下とするのがよい。
【0026】
原料電極は、芯部に金属チタンなどの電気良導体を用い、その周りを原料となる酸化チタンが覆う形状のものが好ましい。この酸化チタンはルチルやアナターゼなどの原料粉末を焼結して電極形状に成形する。その場合、緻密な焼結体でもよいが、多孔質体であることがより好ましい。これは、緻密な焼結体では電流密度を高くできず、生産性が低いからである。多孔質とすれば、溶融塩が浸透すること、あるいは表面積が増すことによると思われるが、電気伝導度が上がり電流密度を上げることができ、生成速度が増して生産性が向上する。
【0027】
上述の液温度を低下させた溶融塩電解において、多孔質の電極とする場合、生成効率がよくなかったり、電解中に電極の崩壊が生じて、それ以上の電解がおこなえなかったりすることがある。このような問題の解消に関しては、素材となる電極は気孔率が0.5〜60%、硬さが60HV以上である酸化チタン多孔質焼結体とするのがよい。
【0028】
焼結体の気孔率は、0.5%を下回る場合、電流密度を大きくできず、Tiの生成効率が大きくならないからである。これは電解中に生じた金属チタンの焼結が進行しやすく、気孔率が高くならず、電極の溶融した電解液との接触面積が相対的に低下するためと思われる。一方、焼結体の気孔率が60%を超えると還元途中で素材料の形状が崩壊したり、電流密度増加により、炭素汚染が増すおそれがある。十分な還元ができなくなるばかりでなく、金属チタンの回収が困難になるおそれがある。生じた金属チタンの気孔率も大きくなりすぎてしまったためと思われる。
【0029】
多孔質焼結体の硬さはビッカース硬さ(HV))にて60以上あることが好ましい。これは、60HVを下回る場合、焼結が不十分で、電解還元中に素材料の形状が崩壊するおそれがあるからである。酸化チタン多孔質焼結体の気孔率は0.5〜60%とするが、気孔率の高いものになるほど焼結が不十分になりがちになる。しかし、硬さが60HV以上となるように焼成しておけば、電解中の形状崩壊は生じなくなる。この場合、気孔率が上記範囲内であれば、硬さの上限はとくには限定しなくてもよい。
【0030】
上述の酸化チタン多孔質焼結体の製造方法は、原料にルチルやアナターゼなどの酸化チタン粉末を用いる。その場合の原料の粉末の平均粒径は0.2〜2000μmの範囲がよい。この範囲より粒径が小さいものや大きいものが多く含まれると、混合した粉体を加圧成形したとき、成形後の形状維持が困難になることがあり、また、焼成後の焼結体の強度が不足して電解中に崩壊を起こしやすくなったり、目的とする気孔率のものが得られなくなったりするからである。
【0031】
原料の粉末には、とくに気孔率を大きくしたい場合や加圧成形後の形状維持が困難な場合は、バインダー等を添加し混錬すればよいが、添加しなくてもよい。これら原料は金型を用い、9.8〜78.5MPaの範囲で加圧して所要形状に成形するとよい。加圧力が9.8MPa未満では、型から取りだした後の形状維持が困難になるおそれがあり、78.5MPaを超える加圧は、焼成後に目標とする範囲の、比表面積あるいは細孔径分布が得られなくなることがある。
【0032】
電極の形状は、チタンなど金属製導体を芯にしてその周囲に素材料を密着させたものが好ましい。このような一体化した構造の電極は、金属製導体と共に素材料の原料粉末混錬体を電極形状に成形し、同時焼成をおこなって一体化するか、あるいは金属製導体と多孔質焼結体とを機械的に密着させ構成させる。
【0033】
この多孔質焼結体は、上述の原料粉末を加圧成形後、要すれば十分に乾燥し、1100〜1500℃にて0.5〜10時間の焼成をおこなう。焼成温度が1100℃未満または焼成時間が0.5時間未満の場合は焼結が不十分で、多孔質焼結体は十分な硬さが得られない。焼成温度が1500℃を超えたり、加熱時間が10時間超えるようになると、気孔率が0.5%未満となるおそれがある。なお、焼結時の雰囲気中の酸素濃度は、10ppm〜25%程度であればよい。
【0034】
多孔質焼結体を製造する方法において、原料粉末にTiO、Ti2O3あるいはTi3O5など亜酸化チタン粉末を質量%で0.1〜40%配合し混合後、加圧成形し焼成をおこなえば、焼成温度範囲を900〜1400℃と低くしても十分に焼結が進行し、焼成後の硬さを60HV以上にすることができる。亜酸化チタンは酸化チタンTiO2に対し酸素の不足した酸化チタンで、いずれの組成のものであってもよく、単独で添加しても混合して添加してもよい。
【0035】
【実施例】
純度99.99%の酸化チタン粉末を原料に用い、金型を用いプレス加圧して直径25mm、高さ10mmの円柱状とし1000℃、1時間の仮焼結をおこなった後、10mm角で長さ15mmの角柱に切断加工し、長さ方向の中心軸に沿って深さ12mmの孔をあけ、直径2.0mmのチタン棒を挿入した。その後、1100〜1200℃にて焼結をおこない、導電体の付いた酸化チタン電極とした。この電極の酸化チタンは、酸化チタン粉末の粒度およびプレスの加圧力を変え、さらに亜酸化チタンの添加によって、気孔率および硬さを変化させた。
【0036】
得られた焼結体について、焼結体の重量と寸法から見かけ密度を求め、TiO2の理論密度との差を理論密度で除して気孔率とした。
【0037】
これらの電極を用い、陽極は黒鉛とし、塩化カルシウムと塩化ナトリウムを混合して電解液組成を変え、電解電位を3.0Vとして液温度および電流密度を変えて電解をおこなった。これらの条件を表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
表の電流密度は電解開始初期の値である。10時間の通電還元後、電極に生じた金属チタン量を分析し、流した電流と時間からファラデーの法則によりTiO2がTiになるとして計算したTi量に対する、実測Ti量の比を生成効率として求めた。また、電極の単位表面積と時間当たりのTi生成の平均速度も求めてみた。電極に生成された金属チタンについて、断面の走査型電子顕微鏡観察をおこない、チタン部分と気孔部分との比率を画像解析し気孔率を求めた。さらに、この金属チタンの炭素量を分析して汚染の程度を調査した。得られた結果を合わせて表1に示す。
【0040】
表1の結果からわかるように、試番1および2は液の塩化カルシウム濃度が低すぎ、金属チタンの生成効率は低く、生成速度も低い。試番3、4、5、7および8は、生成金属チタンの気孔率が小さく炭素による汚染が大きい。液温が高すぎたため、素材の酸化物焼結体の気孔率が高くても、生じた金属チタンは気孔率の低いものとなってしまったと思われる。試番6は液温が550℃と低すぎるため電解が十分おこなわれていない。試番9、10および11は電流密度が高く、生成平均速度は大きいが、生成効率がよくない。これは電解中電極からチタンの剥離が起きており、陰極の気孔率は高いが硬さが低いためと推定される。
【0041】
これらに比し、試験番号12〜23に示す本発明にて定める条件にて電解をおこなった場合は、いずれも炭素による汚染は少なく金属チタンの生成効率は高い。電解中の液温を低くし、電極の気孔率および硬さを規制することにより、得られた金属チタンの気孔率が12〜78%の範囲になっていることによる効果であると思われる。
【0042】
【発明の効果】
電解質を溶融塩とする電解により酸化チタンを直接還元して金属チタンとする方法は、従来より低コストにて金属チタンを得る可能性のある方法として注目されているが、本発明によれば、この製造方法において、金属チタンの生成効率を向上させ、かつ炭素による汚染を低減することができ、より実用性にすぐれたものとすることができる。
Claims (2)
- 酸化チタンを陰極とし、陽極に黒鉛を用いる溶融塩中の直接電解法による金属チタンの製造法において、溶融塩は塩化カルシウムを10質量%以上含有するものとし、温度範囲を600〜840℃、電流密度を0.1〜5A/cm2として、通電還元をおこなうことを特徴とする低炭素の金属チタンの製造方法。
- 陰極として、気孔率が0.5〜60%、60HV以上である酸化チタン多孔質焼結体を用いることを特徴とする、請求項1に記載の通電還元による低炭素の金属チタンの製造方法。
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WO2006000025A1 (en) * | 2004-06-28 | 2006-01-05 | Bhp Billiton Innovation Pty Ltd | Production of titanium |
JP2013079446A (ja) * | 2011-09-30 | 2013-05-02 | Pangang Group Panzhihua Iron & Steel Research Inst Co Ltd | 金属チタンの製造方法およびこの方法を用いて得られた金属チタン |
KR101264597B1 (ko) | 2006-12-20 | 2013-05-23 | 재단법인 포항산업과학연구원 | 용융염속의 칼슘티탄산화물로부터 금속 티탄을 제조하는방법 |
CN115161714A (zh) * | 2022-08-01 | 2022-10-11 | 青岛国韬钛金属产业研究院有限公司 | 一种熔盐固态脱氧法制取金属钛的方法 |
-
2003
- 2003-06-09 JP JP2003163220A patent/JP2004360053A/ja active Pending
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CN115161714B (zh) * | 2022-08-01 | 2023-07-18 | 青岛国韬钛金属产业研究院有限公司 | 一种熔盐固态脱氧法制取金属钛的方法 |
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