JP2004359751A - 耐摩耗性難燃樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】自動車用絶縁電線などの絶縁電線の被覆材等に好適な耐摩耗性、難燃性に優れ、かつノンハロゲンの樹脂組成物を得ることにある。
【解決手段】メルトフローレイト1.0(g/10分、230℃)以下、破断点伸び200%以上のポリプロピレンホモポリマー100重量部と、リン−窒素系難燃剤10〜20重量部を含み、破断点伸びが100%以上である耐摩耗性難燃樹脂組成物。リン−窒素系難燃剤には、窒素含有率20〜23wt%、リン含有率18〜21wt%のものが用いられる。
【選択図】なし
【解決手段】メルトフローレイト1.0(g/10分、230℃)以下、破断点伸び200%以上のポリプロピレンホモポリマー100重量部と、リン−窒素系難燃剤10〜20重量部を含み、破断点伸びが100%以上である耐摩耗性難燃樹脂組成物。リン−窒素系難燃剤には、窒素含有率20〜23wt%、リン含有率18〜21wt%のものが用いられる。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、難燃性、耐摩耗性に優れたノンハロゲンの耐摩耗性難燃樹脂組成物に関し、特に自動車用絶縁電線などの絶縁電線の被覆材等として好適に用いられるものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車用絶縁電線の絶縁体、シースなどを構成する樹脂組成物として、コスト、難燃性などの理由から、難燃性ポリエチレン組成物が用いられている。
この難燃性ポリエチレン組成物は、低密度ポリエチレンに水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物を配合した樹脂組成物であって、ポリエチレン100重量部に対して水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物150〜250重量部配合した組成物である。
【0003】
この難燃性ポリエチレン組成物は、良好な難燃性を示し、これを焼却処分する際に有害なハロゲン化合物を発生しないと言うメリットがあり、さらにはコストも比較的安価であるなどの利点もある。
【0004】
しかしながら、この難燃性ポリエチレン組成物にあっては、低密度ポリエチレン自体が剛性が低いことに加えて、多量の金属水酸化物が配合されているため、さらに剛性が低下したものとなる。このため、このような難燃性ポリエチレン組成物を被覆材として被覆した自動車用絶縁電線では、耐摩耗性が不十分となっており、その改善が望まれている。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−138183号公報
【特許文献2】
特開2000−026696号公報
【特許文献3】
特開2000−086858号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
よって、本発明における課題は、自動車用絶縁電線などの絶縁電線の被覆材等に好適な耐摩耗性、難燃性に優れ、かつノンハロゲンの耐摩耗性難燃樹脂組成物を得ることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するため、
請求項1にかかる発明は、メルトフローレイト1.0(g/10分、230℃、JIS K7210による)以下のポリプロピレンホモポリマー100重量部と、リン−窒素系難燃剤10〜20重量部を含み、破断点伸び(JIS K7113による)が100%以上である耐摩耗性難燃樹脂組成物である。
【0008】
請求項2にかかる発明は、リン−窒素系難燃剤が、窒素含有率20〜23wt%、リン含有率18〜21wt%である請求項1記載の耐摩耗性難燃樹脂組成物である。
【0009】
請求項3にかかる発明は、ISO 6722に規定する40度傾斜燃焼試験に合格する請求項1または2記載の耐摩耗性難燃樹脂組成物である。
請求項4にかかる発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の耐摩耗性難燃樹脂組成物を被覆材として用いた絶縁電線である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明においては、耐摩耗性難燃樹脂組成物をなすベースポリマーとして、ポリプロピレンホモポリマーを使用する。ポリプロピレンホモポリマーは、モノマーとしてプロピレンのみを使用して重合したポリマーで、ポリエチレンに比べて、結晶性が高く、強靱であり、耐熱性にも優れており、これをベースポリマーとすることで得られる組成物の耐摩耗性を改善することができる。
【0011】
このポリプロピレンホモポリマーとしては、そのメルトフローレイトが1.0(g/10分、230℃、JIS K7210、以下同様)以下、好ましくは0.01〜1.0、さらに好ましくは0.3〜1の範囲のもので、かつ引張速度200mm/分での引張試験(JIS K7113)での破断点伸びが200%以上、好ましくは200〜700%で、密度が0.90〜0.91g/cm3の範囲のものが採用される。
【0012】
上記メルトフローレイトが1.0を越えると、得られる耐摩耗性難燃組成物の耐摩耗性が低下する。破断点伸びが200%未満では、得られる耐摩耗性難燃組成物の伸びが不足し、被覆材として柔軟性が劣る。
このような物性を有するポリプロピレンホモポリマーは、高剛性、強靱であり、組成物としたときに高い耐摩耗性を発揮する。さらに、強靱性を高めるため、結晶造核剤を0.5〜3wt%程度添加してもよく、これにより溶融時からの冷却の際に、微細な球晶が多数生成し、結晶性が高まり、強靱性が高くなる。この結晶造核剤には、芳香族カルボン酸のNa、Al、Zn塩などが使用できる。
このポリプロピレンホモポリマーの具体的なものとしては、三井住友ポリオレフィン(株)製、「B101−WAT」(商品名)などがある。
【0013】
ところで、一般に「ポリプロピレン」として販売されているポリプロピレンは、5〜10モル%程度のエチレンなどのα−オレフィンと、90〜95モル%程度のプロピレンとのランダムコポリマーもしくはブロックコポリマーであって、このタイプのポリプロピレンをベースポリマーとして採用すると、硬度、剛性が低く、耐摩耗性難燃組成物として十分な耐摩耗性を得ることができない。
【0014】
本発明で使用される難燃剤としては、リン−窒素系難燃剤が用いられる。このリン−窒素系難燃剤は、ハロゲン元素を含まないノンハロゲン系の難燃剤であり、窒素含有率が20〜23wt%、リン含有率が18〜21wt%のもので、白色粉末、粒径が50%Dで約6μm、90%Dで約12μmで、見掛け比重が0.34〜0.38のものである。
【0015】
この難燃剤は、リン酸アンモニウムなどのリン酸塩系難燃剤に比較して高い難燃性付与効果を有し、少量の添加量で高い難燃性を得ることができる。また、加熱安定性、耐熱変色性にも優れている。さらに、これにポリテトラフルオロエチレン粉末を0.1〜0.2wt%併用することで、より高い難燃性を得ることができる。
このリン−窒素系難燃剤の具体的なものとしては、「アデカスタブFP−200」(商品名、旭電化工業(株)製)などがある。
【0016】
そして、このリン−窒素系難燃剤の配合量は、ポリプロピレンホモポリマー100重量部に対して10〜20重量部とされ、要求される難燃度合いに応じて決められる。配合量が10重量部未満では難燃性が不足し、ISO6722に規定される45度傾斜燃焼試験に不合格となる。また、配合量が20重量部を越えると、組成物全体の剛性が低下し、ISO 6722に規定される耐摩耗試験(ブレード往復法)に合格しなくなる。
【0017】
本発明の耐摩耗性難燃樹脂組成物では、酸化防止剤、老化防止剤、カーボンブラックなどの着色剤、帯電防止剤、無機充填材などの添加剤を適宜配合することができる。特に、ポリプロピレンは、分子内の第3級炭素原子に結合した水素が酸素やオゾンで酸化され易いため、酸化防止剤には留意が必要であり、ポリプロピレン用の優れた酸化防止剤を選択使用することが必要である。
【0018】
また、本発明の耐摩耗性難燃樹脂組成物は、その破断点伸び(JIS K7113)が100%以上、好ましくは100〜200%となっている。
一般のポリプロピレンをベースポリマーとした難燃化樹脂組成物では、破断点伸びが50〜60%であり、難燃剤の配合により、ポリプロピレン単独の伸び200〜500%に比べて大幅に低下している。
【0019】
これに対して、本発明の耐摩耗性難燃樹脂組成物では、難燃剤として上述のリン−窒素系難燃剤を採用したことにより、少ない配合量で、十分な難燃性を維持するにもかかわらず、ポリプロピレン本来の伸びの低下が少ないものとなっているのである。
【0020】
このような耐摩耗性難燃樹脂組成物にあっては、ベースポリマーとして、メルトフローレイト1.0(g/10分、230℃)以下、破断点伸び200%以上のポリプロピレンホモポリマーを使用しているので、ベースポリマー自体の剛性が高く、これにより耐摩耗性が高いものとなる。
【0021】
また、難燃剤として、ノンハロゲン系の難燃効果の高いリン−窒素系難燃剤を用いているので、比較的少量の添加量で十分な難燃性を発揮し、この難燃剤の配合量が少ないために、ベースポリマー自体の強靱性の低下が抑えられ、この難燃剤の配合に起因する耐摩耗性の低下も小さいものとなって、難燃性、耐摩耗性の良好なものとなる。
【0022】
また、上述のように破断点伸びが、100%以上と従来の難燃化ポリプロピレンに比較にして高いものとなる。さらに、難燃剤がノンハロゲンであるので、この耐摩耗性難燃樹脂組成物からなる成形品を焼却処分した際に、有害なハロゲン化合物が発生することもない。
【0023】
本発明の絶縁電線は、上述の耐摩耗性難燃樹脂組成物からなる絶縁体、シースなどの被覆層を有する電線である。この絶縁体、シースは、通常の押出被覆法により、導体直上または絶縁体上に被覆された厚さ0.1〜2mmのものである。この絶縁電線は、したがって十分な難燃性と耐摩耗性を具備したものであり、特に自動車用絶縁電線として好適なものとなる。
【0024】
さらに、本発明の絶縁電線は、車両用に使用される60Vおよび600V単心ケーブルの要求特性を定めたISO 6722:2002に規定する45度傾斜燃焼試験および耐摩耗試験(ブレード往復法)に合格する難燃性と耐摩耗性を備えたものとすることができる。
【0025】
以下、具体例を示す。
表1に示す配合組成(単位:重量部)の樹脂組成物を用意し、2軸押出機で混練りしてペレットとし、これを径0.81mmの導体上にクロスヘッドダイを装着した押出機を用いて押出被覆し、厚さ0.2mmの絶縁体を形成し、仕上がり径1.21mmの絶縁電線とした。
【0026】
この絶縁電線に対して、ISO 6722:2002に規定する45度傾斜燃焼試験および耐摩耗試験(ブレード往復法)により、難燃性と耐摩耗性を評価した。傾斜燃焼試験は、n=3の試行で行い、全て70秒内に自己消火したものを合格とし、○で表し、そうでないものを不合格とし、×で表した。
【0027】
ブレード往復法による試験条件は、ニードル径0.45mm、荷重7Nで行い、往復回数150回以上で導体が露出しないものを合格とし、○で表し、そうでないものを不合格とし、×で表した。また、JIS K7113による破断点伸びを測定した。
結果を表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
表1において、
ポリプロピレンホモポリマーAには、メルトフローレイトが0.5で、破断点伸びが500%の「B101−WAT」(商品名、三井住友ポリオレフィン(株)製)を用いた。
ポリプロピレンホモポリマーBには、メルトフローレイトが1.4で、破断点伸びが500%の「J−101」(商品名、三井住友ポリオレフィン(株)製)を用いた。
【0030】
ポリプロピレンブロックコポリマーには、エチレン10モル%とプロピレン90モル%とからなるブロックコポリマーで、メルトフローレイトが4で、破断点伸びが300%である「J703W」(商品名、三井住友ポリオレフィン(株)製)を用いた。
リン−窒素系難燃剤には、「アデカスタブFP−2000」(商品名、旭電化工業(株)製)を使用した。
【0031】
表1の結果から、メルトフローレイトが1.0以下であるポリプロピレンホモポリマー100重量部に対してリン−窒素系難燃剤を10〜20重量部配合した樹脂組成物を用いた絶縁電線では、良好な難燃性と耐摩耗性が得られることがわかる。また、良好な伸び特性を有していることもわかる。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の耐摩耗性難燃樹脂組成物にあっては、難燃性および耐摩耗性に優れ、良好な伸び特性を示し、ノンハロゲンで焼却処分の際に有害なハロゲン含有ガスを発生しないなどの効果が得られる。
また、本発明の絶縁電線にあっては、自動車用絶縁電線の品質規格であるISO 6722:2002に規定する45度傾斜燃焼試験および耐摩耗試験(ブレード往復法)に合格する難燃性と耐摩耗性を具備するものとなるなどの効果を奏する。
【発明の属する技術分野】
この発明は、難燃性、耐摩耗性に優れたノンハロゲンの耐摩耗性難燃樹脂組成物に関し、特に自動車用絶縁電線などの絶縁電線の被覆材等として好適に用いられるものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車用絶縁電線の絶縁体、シースなどを構成する樹脂組成物として、コスト、難燃性などの理由から、難燃性ポリエチレン組成物が用いられている。
この難燃性ポリエチレン組成物は、低密度ポリエチレンに水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物を配合した樹脂組成物であって、ポリエチレン100重量部に対して水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物150〜250重量部配合した組成物である。
【0003】
この難燃性ポリエチレン組成物は、良好な難燃性を示し、これを焼却処分する際に有害なハロゲン化合物を発生しないと言うメリットがあり、さらにはコストも比較的安価であるなどの利点もある。
【0004】
しかしながら、この難燃性ポリエチレン組成物にあっては、低密度ポリエチレン自体が剛性が低いことに加えて、多量の金属水酸化物が配合されているため、さらに剛性が低下したものとなる。このため、このような難燃性ポリエチレン組成物を被覆材として被覆した自動車用絶縁電線では、耐摩耗性が不十分となっており、その改善が望まれている。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−138183号公報
【特許文献2】
特開2000−026696号公報
【特許文献3】
特開2000−086858号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
よって、本発明における課題は、自動車用絶縁電線などの絶縁電線の被覆材等に好適な耐摩耗性、難燃性に優れ、かつノンハロゲンの耐摩耗性難燃樹脂組成物を得ることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するため、
請求項1にかかる発明は、メルトフローレイト1.0(g/10分、230℃、JIS K7210による)以下のポリプロピレンホモポリマー100重量部と、リン−窒素系難燃剤10〜20重量部を含み、破断点伸び(JIS K7113による)が100%以上である耐摩耗性難燃樹脂組成物である。
【0008】
請求項2にかかる発明は、リン−窒素系難燃剤が、窒素含有率20〜23wt%、リン含有率18〜21wt%である請求項1記載の耐摩耗性難燃樹脂組成物である。
【0009】
請求項3にかかる発明は、ISO 6722に規定する40度傾斜燃焼試験に合格する請求項1または2記載の耐摩耗性難燃樹脂組成物である。
請求項4にかかる発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の耐摩耗性難燃樹脂組成物を被覆材として用いた絶縁電線である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明においては、耐摩耗性難燃樹脂組成物をなすベースポリマーとして、ポリプロピレンホモポリマーを使用する。ポリプロピレンホモポリマーは、モノマーとしてプロピレンのみを使用して重合したポリマーで、ポリエチレンに比べて、結晶性が高く、強靱であり、耐熱性にも優れており、これをベースポリマーとすることで得られる組成物の耐摩耗性を改善することができる。
【0011】
このポリプロピレンホモポリマーとしては、そのメルトフローレイトが1.0(g/10分、230℃、JIS K7210、以下同様)以下、好ましくは0.01〜1.0、さらに好ましくは0.3〜1の範囲のもので、かつ引張速度200mm/分での引張試験(JIS K7113)での破断点伸びが200%以上、好ましくは200〜700%で、密度が0.90〜0.91g/cm3の範囲のものが採用される。
【0012】
上記メルトフローレイトが1.0を越えると、得られる耐摩耗性難燃組成物の耐摩耗性が低下する。破断点伸びが200%未満では、得られる耐摩耗性難燃組成物の伸びが不足し、被覆材として柔軟性が劣る。
このような物性を有するポリプロピレンホモポリマーは、高剛性、強靱であり、組成物としたときに高い耐摩耗性を発揮する。さらに、強靱性を高めるため、結晶造核剤を0.5〜3wt%程度添加してもよく、これにより溶融時からの冷却の際に、微細な球晶が多数生成し、結晶性が高まり、強靱性が高くなる。この結晶造核剤には、芳香族カルボン酸のNa、Al、Zn塩などが使用できる。
このポリプロピレンホモポリマーの具体的なものとしては、三井住友ポリオレフィン(株)製、「B101−WAT」(商品名)などがある。
【0013】
ところで、一般に「ポリプロピレン」として販売されているポリプロピレンは、5〜10モル%程度のエチレンなどのα−オレフィンと、90〜95モル%程度のプロピレンとのランダムコポリマーもしくはブロックコポリマーであって、このタイプのポリプロピレンをベースポリマーとして採用すると、硬度、剛性が低く、耐摩耗性難燃組成物として十分な耐摩耗性を得ることができない。
【0014】
本発明で使用される難燃剤としては、リン−窒素系難燃剤が用いられる。このリン−窒素系難燃剤は、ハロゲン元素を含まないノンハロゲン系の難燃剤であり、窒素含有率が20〜23wt%、リン含有率が18〜21wt%のもので、白色粉末、粒径が50%Dで約6μm、90%Dで約12μmで、見掛け比重が0.34〜0.38のものである。
【0015】
この難燃剤は、リン酸アンモニウムなどのリン酸塩系難燃剤に比較して高い難燃性付与効果を有し、少量の添加量で高い難燃性を得ることができる。また、加熱安定性、耐熱変色性にも優れている。さらに、これにポリテトラフルオロエチレン粉末を0.1〜0.2wt%併用することで、より高い難燃性を得ることができる。
このリン−窒素系難燃剤の具体的なものとしては、「アデカスタブFP−200」(商品名、旭電化工業(株)製)などがある。
【0016】
そして、このリン−窒素系難燃剤の配合量は、ポリプロピレンホモポリマー100重量部に対して10〜20重量部とされ、要求される難燃度合いに応じて決められる。配合量が10重量部未満では難燃性が不足し、ISO6722に規定される45度傾斜燃焼試験に不合格となる。また、配合量が20重量部を越えると、組成物全体の剛性が低下し、ISO 6722に規定される耐摩耗試験(ブレード往復法)に合格しなくなる。
【0017】
本発明の耐摩耗性難燃樹脂組成物では、酸化防止剤、老化防止剤、カーボンブラックなどの着色剤、帯電防止剤、無機充填材などの添加剤を適宜配合することができる。特に、ポリプロピレンは、分子内の第3級炭素原子に結合した水素が酸素やオゾンで酸化され易いため、酸化防止剤には留意が必要であり、ポリプロピレン用の優れた酸化防止剤を選択使用することが必要である。
【0018】
また、本発明の耐摩耗性難燃樹脂組成物は、その破断点伸び(JIS K7113)が100%以上、好ましくは100〜200%となっている。
一般のポリプロピレンをベースポリマーとした難燃化樹脂組成物では、破断点伸びが50〜60%であり、難燃剤の配合により、ポリプロピレン単独の伸び200〜500%に比べて大幅に低下している。
【0019】
これに対して、本発明の耐摩耗性難燃樹脂組成物では、難燃剤として上述のリン−窒素系難燃剤を採用したことにより、少ない配合量で、十分な難燃性を維持するにもかかわらず、ポリプロピレン本来の伸びの低下が少ないものとなっているのである。
【0020】
このような耐摩耗性難燃樹脂組成物にあっては、ベースポリマーとして、メルトフローレイト1.0(g/10分、230℃)以下、破断点伸び200%以上のポリプロピレンホモポリマーを使用しているので、ベースポリマー自体の剛性が高く、これにより耐摩耗性が高いものとなる。
【0021】
また、難燃剤として、ノンハロゲン系の難燃効果の高いリン−窒素系難燃剤を用いているので、比較的少量の添加量で十分な難燃性を発揮し、この難燃剤の配合量が少ないために、ベースポリマー自体の強靱性の低下が抑えられ、この難燃剤の配合に起因する耐摩耗性の低下も小さいものとなって、難燃性、耐摩耗性の良好なものとなる。
【0022】
また、上述のように破断点伸びが、100%以上と従来の難燃化ポリプロピレンに比較にして高いものとなる。さらに、難燃剤がノンハロゲンであるので、この耐摩耗性難燃樹脂組成物からなる成形品を焼却処分した際に、有害なハロゲン化合物が発生することもない。
【0023】
本発明の絶縁電線は、上述の耐摩耗性難燃樹脂組成物からなる絶縁体、シースなどの被覆層を有する電線である。この絶縁体、シースは、通常の押出被覆法により、導体直上または絶縁体上に被覆された厚さ0.1〜2mmのものである。この絶縁電線は、したがって十分な難燃性と耐摩耗性を具備したものであり、特に自動車用絶縁電線として好適なものとなる。
【0024】
さらに、本発明の絶縁電線は、車両用に使用される60Vおよび600V単心ケーブルの要求特性を定めたISO 6722:2002に規定する45度傾斜燃焼試験および耐摩耗試験(ブレード往復法)に合格する難燃性と耐摩耗性を備えたものとすることができる。
【0025】
以下、具体例を示す。
表1に示す配合組成(単位:重量部)の樹脂組成物を用意し、2軸押出機で混練りしてペレットとし、これを径0.81mmの導体上にクロスヘッドダイを装着した押出機を用いて押出被覆し、厚さ0.2mmの絶縁体を形成し、仕上がり径1.21mmの絶縁電線とした。
【0026】
この絶縁電線に対して、ISO 6722:2002に規定する45度傾斜燃焼試験および耐摩耗試験(ブレード往復法)により、難燃性と耐摩耗性を評価した。傾斜燃焼試験は、n=3の試行で行い、全て70秒内に自己消火したものを合格とし、○で表し、そうでないものを不合格とし、×で表した。
【0027】
ブレード往復法による試験条件は、ニードル径0.45mm、荷重7Nで行い、往復回数150回以上で導体が露出しないものを合格とし、○で表し、そうでないものを不合格とし、×で表した。また、JIS K7113による破断点伸びを測定した。
結果を表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
表1において、
ポリプロピレンホモポリマーAには、メルトフローレイトが0.5で、破断点伸びが500%の「B101−WAT」(商品名、三井住友ポリオレフィン(株)製)を用いた。
ポリプロピレンホモポリマーBには、メルトフローレイトが1.4で、破断点伸びが500%の「J−101」(商品名、三井住友ポリオレフィン(株)製)を用いた。
【0030】
ポリプロピレンブロックコポリマーには、エチレン10モル%とプロピレン90モル%とからなるブロックコポリマーで、メルトフローレイトが4で、破断点伸びが300%である「J703W」(商品名、三井住友ポリオレフィン(株)製)を用いた。
リン−窒素系難燃剤には、「アデカスタブFP−2000」(商品名、旭電化工業(株)製)を使用した。
【0031】
表1の結果から、メルトフローレイトが1.0以下であるポリプロピレンホモポリマー100重量部に対してリン−窒素系難燃剤を10〜20重量部配合した樹脂組成物を用いた絶縁電線では、良好な難燃性と耐摩耗性が得られることがわかる。また、良好な伸び特性を有していることもわかる。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の耐摩耗性難燃樹脂組成物にあっては、難燃性および耐摩耗性に優れ、良好な伸び特性を示し、ノンハロゲンで焼却処分の際に有害なハロゲン含有ガスを発生しないなどの効果が得られる。
また、本発明の絶縁電線にあっては、自動車用絶縁電線の品質規格であるISO 6722:2002に規定する45度傾斜燃焼試験および耐摩耗試験(ブレード往復法)に合格する難燃性と耐摩耗性を具備するものとなるなどの効果を奏する。
Claims (4)
- メルトフローレイト1.0(g/10分、230℃、JIS K7210)以下のポリプロピレンホモポリマー100重量部と、リン−窒素系難燃剤10〜20重量部を含み、破断点伸び(JIS K7113)が100%以上である耐摩耗性難燃樹脂組成物。
- リン−窒素系難燃剤が、窒素含有率20〜23wt%、リン含有率18〜21wt%である請求項1記載の耐摩耗性難燃樹脂組成物。
- ISO 6722に規定する40度傾斜燃焼試験に合格する請求項1または2記載の耐摩耗性難燃樹脂組成物。
- 請求項1ないし3のいずれかに記載の耐摩耗性難燃樹脂組成物を被覆材として用いた絶縁電線。
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JP2003157981A JP2004359751A (ja) | 2003-06-03 | 2003-06-03 | 耐摩耗性難燃樹脂組成物 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR100977994B1 (ko) * | 2008-07-01 | 2010-08-25 | 주식회사 경신전선 | 와이어링 하네스 작업성을 향상한 내열성 차량용 전선의제조방법 |
CN104312006A (zh) * | 2014-09-24 | 2015-01-28 | 雪龙集团股份有限公司 | 一种增强耐磨聚丙烯复合材料 |
-
2003
- 2003-06-03 JP JP2003157981A patent/JP2004359751A/ja not_active Withdrawn
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