JP2004359604A - ホスホニトリル酸エステルの製造方法 - Google Patents

ホスホニトリル酸エステルの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ホスホニトリルジクロライドをアルカリ金属アリーラート、及び/またはアルカリ金属アルコラートを反応させてホスホニトリル酸エステルを製造する際、反応溶媒と原料との副反応がなく、モノクロロ体の含有率が極めて少ないホスホニトリル酸エステルを製造する方法の提供。
【解決手段】ホスホニトリルジクロライドをアルカリ金属アリーラート、及び/またはアルカリ金属アルコラートと反応させてホスホニトリル酸エステルを製造する際、反応溶媒としてハロゲン化芳香族炭化水素を使用し、かつ反応系内の水分量を特定量以下に制御する。
【選択図】 選択図なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はホスホニトリルジクロライドからホスホニトリル酸エステルを製造する方法に関するものである。さらに詳しくは、ホスホニトリルジクロライドをアルカリ金属アリーラート(arylate)、及び/またはアルカリ金属アルコラートと反応させてホスホニトリル酸エステルを製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ホスホニトリル酸エステルは、ホスホニトリルジクロライドから誘導される化合物であり、プラスチックおよびその添加剤、ゴム、肥料、医薬などとしてその用途は極めて広範囲である。特に近年、社会的な関心が高まっているノンハロゲン系難燃剤によるプラスチックの難燃化や不燃化という点で、ホスホニトリル酸エステルオリゴマーやホスホニトリル酸エステルポリマーの誘導体はその優れた難燃性や従来のリン酸エステルに比べて低い加水分解性、高耐熱性など、極めて優れた特性を有しており難燃・不燃材料への用途が非常に有望である。さらに、これらを添加した樹脂組成物が極めて低い誘電率を示すことからプリント基板用材料、半導体封止材用材料など電子材料用途の難燃剤として、その工業化が強く望まれている。ホスホニトリル酸エステルにおいて、近年特に注目されているのが、下記一般式(5)で表わされる環状3量体、及び下記一般式(6)で表わされる環状4量体である。
【0003】
【化5】
Figure 2004359604
【0004】
(式中、Qはアリールオキシ基またはアルコキシ基を表わす。)
【0005】
【化6】
Figure 2004359604
【0006】
(式中、Qはアリールオキシ基またはアルコキシ基を表わす。)
しかしながら、前記一般式(1)で表わされる環状及び/または鎖状のホスホニトリル酸エステルは構造式上ではリン原子に結合した塩素原子(以下、クロロ基と称する。)を含有していないが、製造時にクロロ基の全てをアリールオキシ基及び/またはアルコキシ基によって置換することは非常に困難であり、アリールオキシ化及び/またはアルコキシ化反応から得られる生成物の一部の化合物には下記一般式(7)で表わされるようにクロロ基が残存したモノクロロ体が残存することになる。
【0007】
【化7】
Figure 2004359604
【0008】
(式中、Qはアリールオキシ基またはアルコキシ基、mは3以上の整数を表わす。)
特に化合物中の最後に残った1個のクロロ基を置換することは困難であり、残存したクロロ基が加水分解によって下記一般式(8)で表わされるヒドロキシ体を発生し、反応生成物の酸価が上昇したり、架橋反応によりP−O−P結合を生じ、ゲル化してホスホニトリル酸エステルが有する優れた特徴を発揮できない場合がある。例えば、アリールオキシ基及び/またはアルコキシ基置換が完結していないホスホニトリル酸エステルが難燃剤として樹脂に添加されていた場合、ポリエステル樹脂、特にポリカーボネート樹脂のような、酸により分解されやすい樹脂の場合にはホスホニトリル酸エステル中に含有されるP−OHに由来するリン酸痕によって樹脂そのものが分解し、樹脂組成物の難燃性や耐熱性などの熱的特性だけでなく、種々の機械的物性を低下させたり、電子材料用途の樹脂である場合には、誘電性能を低下させるなどの問題が発生する。
【0009】
【化8】
Figure 2004359604
【0010】
(式中、Qはアリールオキシ基またはアルコキシ基、mは3以上の整数を表わす。)
ホスホニトリル酸エステルの製造方法には、(1)ホスホニトリルジクロライドとヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩を反応させる方法、(2)第3級アミンやピリジンを塩酸捕捉剤として使用して、ヒドロキシ化合物とホスホニトリルジクロライドを反応させる方法、(3)第4級アンモニウム塩などの相間移動触媒を使用して、第2、3級アミンやピリジン等の塩酸捕捉剤の存在下でヒドロキシ化合物とホスホニトリルジクロライドを反応させる方法などがある。
【0011】
しかしながら、これまでの精力的な研究にも関わらず、前記一般式(2)中のクロロ基を完全にアリールオキシ基またはアルコキシ基で置換する目的は未だ達成できていない。アリールオキシ化またはアルコキシ化反応が完結しないときには多くの場合、生成物中には前記一般式(7)に示すようなクロロ基が一つ残存したモノクロロ体が含有される。
【0012】
ホスホニトリル酸エステルを製造する従来技術としては、反応に不活性な溶媒としてトルエンやキシレンを使用し、アルコール類やフェノール類と水酸化アルカリから共沸脱水により調製したアルカリ金属アルコラートやアルカリ金属フェノラートとホスホニトリルジクロライドを作用させることによりホスホニトリル酸エステルを製造する方法が広く知られている(特許文献1)。しかしながら、この方法では、ホスホニトリルジクロライド中の全てのクロロ基を、例えば嵩高いフェノキシ基で置換することが困難であり、反応に長時間を要するばかりか、残存塩素量が高く問題である。
【0013】
反応溶媒としてトルエンを使用して、環状ホスホニトリルジクロライドをアルカリ金属アリーラートと反応させる際、窒素含有鎖状または環状の有機化合物を添加して求核反応性を高めることにより、残存塩素量を0.01%以下にする方法が知られている(特許文献2)。この方法によれば、確かにホスホニトリル酸エステル中の残存塩素量は低減できるものの、大量の窒素含有有機化合物が必要で、反応生成物や溶剤から窒素含有有機化合物を回収する操作が煩雑となり工業的に実施するのは不利である。
【0014】
また反応溶媒としてジオキサンを使用して、アミン系相間移動触媒、及びアリールオキシ化またはアルコキシ化する際に発生するハロゲン化水素捕捉剤としてピリジン誘導体を添加して反応させる方法が知られている(特許文献3)。この方法では、未だ反応完結に長時間を要するばかりか、大量に使用されるピリジン誘導体は高価であり、再使用することが望ましいが、反応終了後にはハロゲン化水素塩になっており、アルカリ処理、蒸留などの再生工程が煩雑となり問題である。
【0015】
さらに反応溶媒としてトルエンを使用して、相間移動触媒として4級アンモニウム塩を使用する方法が知られている(特許文献4、5)。この方法によれば、多量の4級アンモニウム塩を使用し回収する操作が煩雑であり、また反応時に多量の水を使用するため反応系内が水と有機溶媒のニ相系であることからホスホニトリルジクロライドが加水分解を受けやすく、反応温度を上げられないため、反応完結までに長時間を必要とする。一方、反応性を向上させるために反応温度を上げた場合には加水分解が顕著となりP−OHに由来するリン酸痕を生成したり、さらには架橋反応によってゲル化が起こりやすく問題である。
【0016】
また、従来技術において、ホスホニトリルジクロライドからホスホニトリル酸エステルを製造する際に塩素化芳香族炭化水素を反応溶媒として使用する方法はすでに知られている。
しかしながら、ハロゲン化芳香族炭化水素とアルコールやフェノール類は反応して下記一般式(9)で表わされるようなフェニルエーテルを生成することが知られている。
【0017】
本発明者らの検討によれば、本反応、すなわちホスホニトリルジクロライドとアルカリ金属アルコラート、及び/またはアルカリ金属アリーラートとの反応においても、塩素化芳香族炭化水素が反応溶媒として使用される場合には、ある反応条件下においてはアルコールやフェノール類と反応して前記一般式(9)で示すようなフェニルエーテルを副生し、原料の損失や反応溶媒の回収率低下をもたらすことが判明し、さらにこの副生物を製品から除去するためには、煩雑な操作を必要として問題であることが判明した。
【0018】
【化9】
Figure 2004359604
【0019】
(式中、Xは水素またはハロゲンである。またRは前記一般式(3)中のAr、または一般式(4)中のRである。)
炭素数が6〜9の脂肪族炭化水素を使用してアルカリ金属とアルコールからアルカリ金属アルコラートを調製し、モノクロロベンゼンに溶解したホスホニトリルジクロライドと反応させる方法が知られている(特許文献6)。この反応では比較的短い反応時間で反応を完結させることが可能であるが、アルカリ金属は高価であり、水分との反応性が非常に高く取扱いが困難なため工業化には問題がある。
【0020】
また反応溶媒としてジクロロベンゼンやトリクロロベンゼンを使用して、アルカリ金属アリーラートやアルカリ金属アルコラートとホスホニトリルジクロライドポリマーを反応させる方法が知られている(特許文献7)。この方法においては、アリールオキシ化反応、及び/またはアルコキシ化反応時の反応系内の水分量に関する記載がなく、本発明者らの検討によれば、アルカリ金属アリーラートやアルカリ金属アルコラートと反応溶媒との副反応により、原料の損失や溶媒の回収率低下を起こす問題がある。
【0021】
さらに反応溶媒としてモノクロロベンゼンを使用し、反応系内の水分量を制御して環状ホスホニトリルジクロライドとアルカリ金属アリーラート、及び/またはアルカリ金属アルコラートを反応させる方法が知られている(特許文献8)。
この方法では、アルカリ金属アリーラートやアルカリ金属アルコラートを調製する際の水分量を500ppmにまで低減することにより、反応溶媒中でのアルカリ金属アリーラートやアルカリ金属アルコラート粒子を微分散させ、反応性を向上させている。しかしながらアルカリ金属アリーラートやアルカリ金属アルコラートと反応溶媒との副反応に関しての記載はなく、本発明者らの検討によれば、水分量の削減は未だ不充分であり、例えばアルカリ金属フェノラートとクロロベンゼンとの副反応によりジフェニルエーテルを副生し、原料の損失や溶媒の回収率の低下、製品からの副生物の除去が煩雑となり問題である。
【0022】
【特許文献1】
米国特許4107028号公報
【特許文献2】
特開2001−2691号公報
【特許文献3】
特開平4−13683号公報
【特許文献4】
特開昭64−87634号公報
【特許文献5】
特開昭60−155187号公報
【特許文献6】
米国特許3939228号公報
【特許文献7】
フランス特許2700170号公報
【特許文献8】
特開2000−198793号公報
【0023】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような現状に鑑み、環状及び/または鎖状であるホスホニトリルジクロライドから環状及び/または鎖状であるホスホニトリル酸エステルを製造する方法において原料と反応溶媒との副反応を抑制し、より短い反応時間でモノクロロ体含有量が極めて少ないホスホニトリル酸エステルを製造する方法を提供することを目的とする。
【0024】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者らは、本発明の目的の達成、すなわち、短い反応時間でホスホニトリル酸エステル中に含有されるモノクロロ体量を低減するための製造方法について鋭意研究を重ねた。その結果驚くべきことに、ホスホニトリルジクロライドをアルカリ金属アリーラート、及び/またはアルカリ金属アルコラートと反応させてホスホニトリル酸エステルを製造するに際し、反応溶媒としてハロゲン化芳香族炭化水素を使用することにより、反応が加速され速やかに反応が完結することを見出した。さらに驚くべきことに、本反応において反応溶媒として使用しているハロゲン化芳香族炭化水素は必ずしも不活性ではなく原料、すなわちアルカリ金属アリーラート、及び/またはアルカリ金属アルコラートと副反応を引き起こす問題があることが判明した。しかしながら、この副反応を抑制すべく鋭意検討を行った結果、反応系内に含有される水分量を特定量以下に制御することにより、原料、すなわちアルカリ金属アリーラート、及び/またはアルカリ金属アルコラートと反応溶媒との副反応が抑制され、かつモノクロロ体の含有量が極めて少ないホスホニトリル酸エステルが極めて速やかに得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0025】
すなわち、本発明は、
(I) 下記一般式(1)で表わされる環状及び/または鎖状であるホスホニトリル酸エステルの製造方法において、下記一般式(2)で表わされる環状及び/または鎖状であるホスホニトリルジクロライドに下記一般式(3)で表わされるアルカリ金属アリーラート(arylate)、及び/または下記一般式(4)で表わされるアルカリ金属アルコラートを反応させることにより環状及び/または鎖状ホスホニトリル酸エステルを製造するに際し、反応溶媒としてハロゲン化芳香族炭化水素を使用し、かつ反応系内に含有される水分量が、環状及び/またはホスホニトリルジクロライド1モルに対して、0.05モル以下であることを特徴とするホスホニトリル酸エステルの製造方法、
【0026】
【化10】
Figure 2004359604
【0027】
(式中、Qはアリールオキシ基またはアルコキシ基、mは3以上の整数を表わす。)
【0028】
【化11】
Figure 2004359604
【0029】
(式中、mは3以上の整数を表わす。)
【0030】
【化12】
Figure 2004359604
【0031】
(式中、Arはアリール基、Mはアルカリ金属である。)
【0032】
【化13】
Figure 2004359604
【0033】
(式中、Rはアルキル基、Mはアルカリ金属である。)
(II) 反応溶媒がモノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンの中から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする(I)に記載のホスホニトリル酸エステルの製造方法、
(III) 反応系内の水分量がホスホニトリルジクロライド1モルに対して、0.035モル以下であることを特徴とする(I)または(II)に記載のホスホニトリル酸エステルの製造方法、である。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明について説明する。
本発明に使用される反応溶媒はハロゲン化芳香族炭化水素である。ハロゲン化芳香族炭化水素としては、モノブロモベンゼン、モノクロロベンゼン、モノフルオロベンゼン、1,2−ジブロモベンゼン、1,3−ジブロモベンゼン、1,4−ジブロモベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン、1,2−ジフルオロベンゼン、1,3−ジフルオロベンゼン、1,4−ジフルオロベンゼン、2−ブロモクロロベンゼン、3−ブロモクロロベンゼン、4−ブロモクロロベンゼン、2−フルオロクロロベンゼン、3−フルオロクロロベンゼン、4−フルオロクロロベンゼン、2−フルオロブロモベンゼン、3−フルオロブロモベンゼン、4−フルオロブロモベンゼン、1,2,3−トリブロモベンゼン、1,2,4−トリブロモベンゼン、1,2,5−トリブロモベンゼン、1,2,3−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,2,5−トリクロロベンゼン、1,2,3−トリフルオロベンゼン、1,2,4−トリフルオロベンゼン、1,2,5−トリフルオロベンゼン、ジブロモクロロベンゼン、ジブロモフルオロベンゼン、ジクロロブロモベンゼン、ジクロロフルオロベンゼン、ジフルオロブロモベンゼン、ジフルオロクロロベンゼン等が挙げられ、これらの中でモノクロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン、1,2,3−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,2,5−トリクロロベンゼンが好ましく、フェノキシ化またはアルコキシ化反応完結までの時間短縮の点から、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼンがさらに好ましい。これらのハロゲン化芳香族炭化水素は単独で使用してもよいし、複数を任意の割合で組み合わせて使用してもよい。
【0035】
該ハロゲン化芳香族炭化水素の添加量は、使用するホスホニトリルジクロライド1重量部に対して、好ましくは0.1〜100重量部であり、より好ましくは1〜20重量部である。ハロゲン化芳香族炭化水素の添加量が0.1重量部より少ない場合には、反応系内の原料濃度が高くなり、反応液が粘調となり、効率的な攪拌が困難となるため、反応性が低下し好ましくなく、100重量部より多い場合には、設備の巨大化や用役費の増大など経済的に好ましくない。
【0036】
本発明においては、発明の効果を失わない範囲で他の反応に不活性な溶媒を併用することができる。他の反応に不活性な溶媒としては、例えば、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ベンゼン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトニトリルなどが挙げられる。
【0037】
また本発明においては、反応系内に存在する水分量を制御することが必須である。ここで言う反応系内の水分量とは、ホスホニトリルジクロライドとアルカリ金属アリーラート、及び/またはアルカリ金属アルコラートを反応させるに際し、反応液中に含有される水分量のことを言い、原料および触媒、溶媒、反応に不活性なガスに含有される水分、反応装置内部に付着した水分の総量を指している。さらに該水分量には、アルコキシ化反応あるいはアリールオキシ化反応を開始するにあたり、アルコール類やフェノール類をアルカリ金属水酸化物やアルカリ金属炭酸塩と反応させてアルカリ金属アルコラートやアルカリ金属アリーラートを調製する際に生成する水も含まれている。本発明においては、アルカリ金属アルコラートやアルカリ金属アリーラートを調製する際に生成する水分の除去が特に重要であり、生成する水は反応溶媒との共沸などにより反応系外へ除去され、反応系内に残存する水分量は厳密に制御されなければならない。
【0038】
許容される反応系内の水分量は、使用するホスホニトリルジクロライド1モルに対して0.05モル以下であり、好ましくは0.035モル以下、さらに好ましくは0.025モル以下である。反応系内の水分量がホスホニトリルジクロライド1モルに対して0.05モルより多い場合には、アルカリ金属アルコラート、及び/またはアルカリ金属アリーラートとハロゲン化芳香族炭化水素が反応して前記一般式(5)に示すフェニルエーテルが副生し、原料の損失や反応溶媒の回収率が低下したり、副生物を製品から除去する操作が煩雑となるため好ましくなく、また水と反応溶媒との共沸により反応温度が低下し、反応が進行しにくくなったり、反応中にホスホニトリルジクロライドの加水分解が顕著となりモノヒドロキシ体が生成するため好ましくない。
【0039】
本発明において原料として使用されるホスホニトリルジクロライドは環状であっても、鎖状であっても良く、その組成すなわち、前記一般式(2)中でm=3である環状3量体、m=4である環状4量体、m≧5の環状多量体および鎖状体の比率には特に制限はなく、各成分を任意の割合で含有した混合物を用いることができる。ホスホニトリルジクロライドの製造方法には限定されず、例えば、塩化アンモニウムと塩素化リンから製造された環状体及び鎖状体を含有する粗ホスホニトリルジクロライドを使用しても良いし、粗ホスホニトリルジクロライドを炭化水素系溶媒で処理して鎖状体を除去した環状ホスホニトリルジクロライドを使用しても良いし、再結晶精製や昇華精製により、環状3、4量体の含有率を高めたホスホニトリルジクロライドを使用しても良い。
【0040】
本発明において、前記一般式(3)で示されるアルカリ金属アリーラート、一般式(4)で示されるアルカリ金属アルコラートはそれぞれフェノール類のアルカリ金属塩、アルコール類のアルカリ金属塩であり、アルカリ金属としてはリチウム、カリウム、ナトリウムが挙げられる。フェノール類とは、1価フェノール及び/または2価フェノールであり、1価フェノールとしては一つの水酸基以外の置換基数が0〜5、置換基として炭素数が1〜8の直鎖または分岐アルキル基などを有するものであり、2価フェノールとしては二つの水酸基以外の置換基が0〜4、置換基として炭素数が1〜8の直鎖または分岐アルキル基などを有するものである。1価フェノール類の具体例としては、フェノール、1−ナフトール、2−ナフトール、4−フェニルフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、o−プロピルフェノール、m−プロピルフェノール、p−プロピルフェノール、o−イソプロピルフェノール、m−イソプロピルフェノール、p−イソプロピルフェノール、o−ブチルフェノール、m−ブチルフェノール、p−ブチルフェノール、o−(2−メチルプロピル)フェノール、m−(2−メチルプロピル)フェノール、p−(2−メチルプロピル)フェノール、o−t−ブチルフェノール、m−t−ブチルフェノール、p−t−ブチルフェノール、o−ペンチルフェノール、m−ペンチルフェノール、p−ペンチルフェノール、o−(2−メチルブチル)フェノール、m−(2−メチルブチル)フェノール、p−(2−メチルブチル)フェノール、o−(3−メチルブチル)フェノール、m−(3−メチルブチル)フェノール、p−(3−メチルブチル)フェノール、o−t−アミルフェノール、m−t−アミルフェノール、p−t−アミルフェノール、1−ヒドロキシ−2−メチルナフタレン、1−ヒドロキシ−3−メチルナフタレン、1−ヒドロキシ−4−メチルナフタレン、1−ヒドロキシ−5−メチルナフタレン、1−ヒドロキシ−6−メチルナフタレン、1−ヒドロキシ−7−メチルナフタレン、1−ヒドロキシ−8−メチルナフタレン、2−エチル−1−ヒドロキシナフタレン、3−エチル−1−ヒドロキシナフタレン、4−エチル−1−ヒドロキシナフタレン、5−エチル−1−ヒドロキシナフタレン、6−エチル−1−ヒドロキシナフタレン、7−エチル−1−ヒドロキシナフタレン、8−エチル−1−ヒドロキシナフタレン、2−ヒドロキシ−1−メチルナフタレン、2−ヒドロキシ−3−メチルナフタレン、2−ヒドロキシ−4−メチルナフタレン、2−ヒドロキシ−5−メチルナフタレン、2−ヒドロキシ−6−メチルナフタレン、2−ヒドロキシ−7−メチルナフタレン、2−ヒドロキシ−8−メチルナフタレン、1−エチル−2−ヒドロキシナフタレン、3−エチル−2−ヒドロキシナフタレン、4−エチル−2−ヒドロキシナフタレン、5−エチル−2−ヒドロキシナフタレン、6−エチル−2−ヒドロキシナフタレン、7−エチル−2−ヒドロキシナフタレン、8−エチル−2−ヒドロキシナフタレン、2−メチル−4−フェニルフェノール、2−エチル−4−フェニルフェノール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、2−エチル−6−メチルフェノール、3−エチル−6−メチルフェノール、4−エチル−6−メチルフェノール、5−エチル−6−メチルフェノール、2−エチル−3−メチルフェノール、2−エチル−4−メチルフェノール、2−エチル−5−メチルフェノール、3−エチル−5−メチルフェノール、2−メチル−3−n−プロピルフェノール、2−メチル−4−n−プロピルフェノール、2−メチル−5−n−プロピルフェノール、2−メチル−6−n−プロピルフェノール、3−メチル−2−n−プロピルフェノール、4−メチル−2−n−プロピルフェノール、5−メチル−2−n−プロピルフェノール、3−メチル−4−n−プロピルフェノール、3−メチル−5−n−プロピルフェノール、2−メチル−3−イソプロピルフェノール、2−メチル−4−イソプロピルフェノール、2−メチル−5−イソプロピルフェノール、2−メチル−6−イソプロピルフェノール、3−メチル−2−イソプロピルフェノール、4−メチル−2−イソプロピルフェノール、5−メチル−2−イソプロピルフェノール、3−メチル−4−イソプロピルフェノール、3−メチル−5−イソプロピルフェノール、2−ブチル−6−メチルフェノール、3−n−ブチル−6−メチルフェノール、4−n−ブチル−6−メチルフェノール、5−n−ブチル−6−メチルフェノール、2−n−ブチル−3−メチルフェノール、2−n−ブチル−4−メチルフェノール、2−n−ブチル−5−メチルフェノール、3−n−ブチル−4−メチルフェノール、3−n−ブチル−5−メチルフェノール、2−(2−メチルプロピル)−6−メチルフェノール、2−(2−メチルプロピル)−6−メチルフェノール、3−(2−メチルプロピル)−6−メチルフェノール、4−(2−メチルプロピル)−6−メチルフェノール、5−(2−メチルプロピル)−6−メチルフェノール、2−(2−メチルプロピル)−3−メチルフェノール、2−(2−メチルプロピル)−4−メチルフェノール、2−(2−メチルプロピル)−5−メチルフェノール、3−(2−メチルプロピル)−4−メチルフェノール、3−(2−メチルプロピル)−5−メチルフェノール、2−(3−メチルプロピル)−6−メチルフェノール、3−(3−メチルプロピル)−6−メチルフェノール、4−(3−メチルプロピル)−6−メチルフェノール、5−(3−メチルプロピル)−6−メチルフェノール、2−(3−メチルプロピル)−3−メチルフェノール、2−(3−メチルプロピル)−4−メチルフェノール、2−(3−メチルプロピル)−5−メチルフェノール、3−(3−メチルプロピル)−4−メチルフェノール、3−(3−メチルプロピル)−5−メチルフェノール、2−t−ブチル−6−メチルフェノール、3−t−ブチル−6−メチルフェノール、4−t−ブチル−6−メチルフェノール、5−t−ブチル−6−メチルフェノール、2−t−ブチル−3−メチルフェノール、2−t−ブチル−4−メチルフェノール、2−t−ブチル−5−メチルフェノール、3−t−ブチル−4−メチルフェノール、3−t−ブチル−5−メチルフェノール、2,3−ジエチルフェノール、2,4−ジエチルフェノール、2,5−ジエチルフェノール、2,6−ジエチルフェノール、3,4−ジエチルフェノール、2,3−ジ−n−プロピルフェノール、2,4−ジ−n−プロピルフェノール、2,5−ジ−n−プロピルフェノール、2,6−ジ−n−プロピルフェノール、3,5−ジ−n−プロピルフェノール、2,3−ジ−イソプロピルフェノール、2,4−ジ−イソプロピルフェノール、2,5−ジ−イソプロピルフェノール、2,6−ジ−イソプロピルフェノール、3,4−ジ−イソプロピルフェノール、3,5−ジ−イソプロピルフェノール、2,3−ジ−t−プチルフェノール、2,4−ジ−t−プチルフェノール、2,5−ジ−t−プチルフェノール、2,6−ジ−t−プチルフェノール、3,4−ジ−t−プチルフェノール、3,5−ジ−t−プチルフェノール、2,3−ジ−t−アミルフェノール、2,4−ジ−t−アミルフェノール、2,5−ジ−t−アミルフェノール、2,6−ジ−t−アミルフェノール、3,4−ジ−t−アミルフェノール、3,5−ジ−t−アミルフェノール、1−ヒドロキシ−2,3−ジメチルナフタレン、1−ヒドロキシ−2,5−ジメチルナフタレン、1−ヒドロキシ−2,6−ジメチルナフタレン、1−ヒドロキシ−2,7−ジメチルナフタレン、2−ヒドロキシ−1,3ジメチルナフタレン、2−ヒドロキシ−1,5−ジメチルナフタレン、2−ヒドロキシ−1,7−ジメチルナフタレン、2−ヒドロキシ−1,8−ジメチルナフタレン、2,3−ジエチル−1−ヒドロキシナフタレン、2,5−ジエチル−1−ヒドロキシナフタレン、2,6−ジエチル−1−ヒドロキシナフタレン、2,7−ジエチル−1−ヒドロキシナフタレン、1,3−ジエチル−2−ヒドロキシナフタレン、1,5−ジエチル−2−ヒドロキシナフタレン、1,7−ジエチル−2−ヒドロキシナフタレン、1,8−ジエチル−2−ヒドロキシナフタレン、2,6−ジメチル−4−フェニルフェノール、2,6−ジエチル−4−フェニルフェノールなどが挙げられ、これらの中で、フェノール、1−ナフトール、2−ナフトール、4−フェニルフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノールが好ましい。2価フェノール類としては、例えば、2,2−ビス(4‘−オキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、カテコール、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,8−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、3,4−ジヒドロキシナフタレン、o,o−ビフェノールなどが挙げられる。
【0041】
また、アルコール類としては、炭素数が1〜8の直鎖または分岐アルキル基などを有するアルコールであり、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、2−メチルブタノール、3−メチルブタノール、4−メチルブタノール、2,2−ジメチルプロパノール、3,3−ジメチルプロパノール、3−エチルプロパノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、3−メチルペンタノール、4−メチルペンタノール、5−メチルペンタノール、2,2−ジメチルブタノール、2,3−ジメチルブタノール、2,4−ジメチルブタノール、3,3−ジメチルブタノール、3,4−ジメチルブタノール、3−エチルブタノール、4−エチルブタノール、2,2,3−トリメチルプロパノール、2,3,3−トリメチルプロパノール、3−エチル−2−メチルプロパノール、3−イソプロピルプロパノール、n−へプタノール、n−オクタノールなどが挙げられる。
【0042】
これらのフェノール類、アルコール類は単独で用いても良いし、複数を任意の割合で組み合わせて用いても良い。フェノール類、アルコール類を複数用いた場合には、当然のことながら、生成物におけるアリールオキシ基またはアルコキシ基が2種類以上となる。
【0043】
金属アリーラートあるいは金属アルコラートの調製方法には特に制限はなく、例えば、水酸化リチウムや水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物をフェノール類あるいはアルコール類と作用させ、生成する水を加熱下または減圧下で除去して金属アリーラートあるいは金属アルコラートとしても良いし、生成する水と共沸混合物となる溶媒を添加して加熱下で共沸脱水しても良い。またアルカリ金属をそのままフェノール類あるいはアルコール類と作用させて金属アリーラート類あるいは金属アルコラートとしても良い。
該金属アリーラート類、及び/または金属アルコラートの添加量は、ホスホニトリルジクロライド中のクロロ基1モルに対して、好ましくは1.0〜2.0モルであり、さらに好ましくは、1.05〜1.5モルである。
【0044】
本発明におけるホスホニトリルジクロライドとアルカリ金属アリーラート及び/またはアルカリ金属アルコラートとの反応は従来から知られている種々の方法により実施することが可能である。例えば、反応溶媒中でアルカリ金属水酸化物とアルコール類、及び/またはフェノール類とを作用させて、共沸脱水により水を除去して調製したアルカリ金属アリーラート、及び/またはアルカリ金属アルコラートの反応溶媒スラリーに、ホスホニトリルジクロライドを反応溶媒に溶解した液を滴下して反応させても良いし、予め調製したアルカリ金属アリーラート、及び/またはアルカリ金属アルコラートを反応溶媒に懸濁させ、ホスホニトリルジクロライドを反応溶媒に溶解した液を滴下して反応させても良い。あるいはホスホニトリルジクロライドを反応溶媒に溶解した液に前記スラリーを滴下しても反応させることができる。
反応温度は特に制限されないが、好ましくは50〜200℃の範囲であり、さらに好ましくは120〜185℃である。反応温度が50℃よりも低い場合には、反応が進行しないか反応完結までに長時間を有するため好ましくなく、200℃よりも高い場合には、ホスホニトリルジクロライドの加水分解が顕著となったり、昇華が起こり好ましくない。
【0045】
また本発明においては、ホスホニトリルジクロライドのアリールオキシ化及び/またはアルコキシ化反応において従来から知られている触媒、例えば、塩化亜鉛などの金属塩化物、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロミドなどの第4級アンモニウム塩などを併用することができ、また塩酸捕捉剤として、メチルアミンなどの第1級アミン、ジメチルアミンなどの第2級アミン、トリメチルアミンなどの第3級アミン、ピリジン誘導体などを使用することができる。
【0046】
本発明で使用されるフェノール類は空気中の酸素によって酸化され、着色成分を生成する場合があることから該反応は窒素、アルゴンなどの不活性雰囲気あるいは気流下で行うことが好ましい。
本発明の反応終了後、生成したホスホニトリル酸エステルを回収する方法には特に制限はなく、用途に応じて洗浄や精製を実施することができる。例えば、反応液を蒸留水などで洗浄して、反応時に生成した塩を除去した後、反応溶媒を留去してホスホニトリル酸エステルを回収しても良いし、反応液をアルカリ水で洗浄するか減圧蒸留するなどして過剰のフェノール類、アルコール類を除いた後、水洗してホスホニトリル酸エステルを回収しても良い。さらには回収した反応生成物を適当な溶媒から再結晶により精製することができる。さらに再結晶精製する際の溶媒を選択することにより所望の組成のホスホニトリル酸エステルを得ることができる。
【0047】
【実施例】
以下に実施例及び比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
実施例、比較例において、アリールオキシ化及び/またはアルコキシ化反応の終点は高速液体クロマトグラフィー(以下、HPLCと略称する。)から判定した。ホスホニトリル酸エステルの組成すなわちアリールオキシ化及び/またはアルコキシ化完結体、モノクロロ体の比率は31P−NMRから得られたピーク面積の比率によって決定した。
【0048】
<HPLC測定条件>
装置:東ソー社製HPLC 8020
カラム:Waters Symmetry300 C18 5μm 4.9x150mmx2
検出波長:254nm
カラム温度:40℃
溶離液:アセトニトリル/水=80/20
溶離液流量:1.0ml/min
実施例および比較例に使用される溶媒は、市販特級品(和光純薬製)を、五酸化ニリンおよびモレキュラーシーブで乾燥後、蒸留して使用した。反応系内の水分量は水分気化装置付きカールフィッシャー水分分析計を用いて測定した。
【0049】
<水分量測定条件>
装置:三菱化成工業(株)社製微量水分測定装置CA−100型(水分気化装置:三菱化学(株)社製VA−100型)
測定方法:水分気化−電量滴定法
試料ボートにサンプルを仕込み、120℃に加熱したVA−100内に投入し、300ml/分の窒素気流にて気化した水分を滴定セルに導入して水分量を測定した。
試薬:アクアミクロンAX/CXU
パラメータ:End Sense 0.1、Delay(VA) 2
実施例及び比較例における反応終了後の反応液中のフェニルエーテルの含有率はガスクロマトグラフィー/質量分析法(以下、GC/MSと略称する。)から検量線法により定量した。
【0050】
<GC/MS測定条件>
GC装置:Agilent6890
MS装置:Agilent5973
キャリアガス:ヘリウム
カラム:DB−5
昇温条件:60℃(5分間保持) → 300℃(10℃/分) → 300℃(5分間保持)
サンプル:反応溶液0.1gをアセトニトリル10gで希釈して調整した。
【0051】
[実施例1]
攪拌装置、冷却管、滴下ロート、温度計、ディーンスタークトラップを備えた100mlの4つ口フラスコに、フェノール 5.11g(0.054mol)、水酸化カリウム 3.00g(0.054mol)、1,2−ジクロロベンゼン 25gを投入し、窒素気流下、油浴温度190℃で共沸脱水しつつカリウムフェノキサイドを調製した。室温まで放冷後、攪拌しながら、昇華精製ホスホニトリルジクロライドトリマー 2.50g(0.022mol)を1,2−ジクロロベンゼン 10gに溶解したものを10分間で滴下した。反応溶液の一部をマイクロシリンジで採取し、水分量を測定したところホスホニトリルジクロライド1モルに対して0.018モルであった。その後、油浴温度160℃で加熱攪拌を行った。このとき反応系内の温度は140℃であった。反応はHPLCにより追跡し、加熱開始から5時間後に反応を終了した。反応終了後、反応溶液の一部を採取し、GC/MS測定から2−クロロジフェニルエーテルの生成量を定量した。反応溶液を10%水酸化カリウム水溶液50mlで2回洗浄後、希塩酸で中和した。さらに反応溶液を蒸留水50mlで洗浄後、反応溶媒を減圧留去した。その結果、反応生成物4.93g(クロロホスファゼンから換算した収率98.6%)が得られた。GC/MS測定結果及び31P−NMR測定結果から算出した生成物の組成を表1に示す。
【0052】
[実施例2]
攪拌装置、冷却管、滴下ロート、温度計、ディーンスタークトラップを備えた100mlの4つ口フラスコに、フェノール 5.11g(0.054mol)、水酸化カリウム 3.00g(0.054mol)、モノクロロベンゼン 25gを投入し、窒素気流下、油浴温度160℃で共沸脱水しつつカリウムフェノキサイドを調製した。室温まで放冷後、攪拌しながら、昇華精製ホスホニトリルジクロライドトリマー 2.50g(0.022mol)をモノクロロベンゼン10gに溶解したものを10分間で滴下した。反応溶液の一部をマイクロシリンジで採取し、水分量を測定したところホスホニトリルジクロライド1モルに対して0.019モルであった。その後、油浴温度150℃で加熱攪拌を行った。このとき反応系内の温度は131℃であった。反応はHPLCにより追跡し、加熱開始から7時間後に反応を終了した。反応終了後、反応溶液の一部を採取し、GC/MS測定からジフェニルエーテルの生成量を定量した。反応溶液を10%水酸化カリウム水溶液50mlで2回洗浄後、希塩酸で中和した。さらに反応溶液を蒸留水50mlで洗浄後、反応溶媒を減圧留去した。その結果、反応生成物4.92g(クロロホスファゼンから換算した収率98.3%)が得られた。GC/MS測定結果及び31P−NMR測定結果から算出した生成物の組成を表1に示す。
【0053】
[実施例3]
攪拌装置、冷却管、滴下ロート、温度計、ディーンスタークトラップを備えた100mlの4つ口フラスコに、フェノール 5.11g(0.054mol)、水酸化カリウム 3.00g(0.054mol)、蒸留水 10gを投入し、窒素気流下、油浴温度140℃で脱水しつつカリウムフェノキサイドを調製した。反応系内が完全に乾固していることを確認後、室温まで放冷した。氷冷下、攪拌しながら、昇華精製ホスホニトリルジクロライドトリマー 2.50g(0.022mol)を1,2−ジクロロベンゼン 20gに溶解したものを10分間で滴下した。反応溶液の一部をマイクロシリンジで採取し、水分量を測定したところホスホニトリルジクロライド1モルに対して0.021モルであった。その後、油浴温度160℃で加熱攪拌を行った。このとき反応系内の温度は140℃であった。反応はHPLCにより追跡し、加熱開始から5時間後に反応を終了した。反応終了後、反応溶液の一部を採取し、GC/MS測定から2−クロロジフェニルエーテルの生成量を定量した。反応溶液を10%水酸化カリウム水溶液50mlで2回洗浄後、希塩酸で中和した。さらに反応溶液を蒸留水50mlで洗浄後、反応溶媒を減圧留去した。その結果、反応生成物4.91g(クロロホスファゼンから換算した収率98.2%)が得られた。GC/MS測定結果及び31P−NMR測定結果から算出した生成物の組成を表1に示す。
【0054】
[実施例4]
攪拌装置、冷却管、滴下ロート、温度計、ディーンスタークトラップを備えた100mlの4つ口フラスコに、フェノール 5.11g(0.054mol)、水酸化カリウム 3.00g(0.054mol)、1,2−ジクロロベンゼン 25gを投入し、窒素気流下、油浴温度190℃で共沸脱水しつつカリウムフェノキサイドを調製した。室温まで放冷後、攪拌しながら、環状ホスホニトリルクロライド混合物 2.50g(0.022mol、一般式(1)でm=3の環状3量体65.2%、m=4の環状4量体21.3%、m=5の環状5量体9.4%、m=6の環状6量体4.1%)を 1,2−ジクロロベンゼン 10gに溶解したものを10分間で滴下した。反応溶液の一部をマイクロシリンジで採取し、水分量を測定したところホスホニトリルジクロライド1モルに対して0.016モルであった。その後、油浴温度160℃で加熱攪拌を行った。このとき反応系内の温度は140℃であった。反応はHPLCにより追跡し、加熱開始から5時間後に反応を終了した。反応終了後、反応溶液の一部を採取し、GC/MS測定から2−クロロジフェニルエーテルの生成量を定量した。反応溶液を10%水酸化カリウム水溶液50mlで2回洗浄後、希塩酸で中和した。さらに反応溶液を蒸留水50mlで洗浄後、反応溶媒を減圧留去した。その結果、反応生成物4.93g(クロロホスファゼンから換算した収率98.6%)が得られた。
GC/MS測定結果及び31P−NMR測定結果から算出した生成物の組成を表1に示す。
【0055】
[実施例5]
攪拌装置、冷却管、滴下ロート、温度計、ディーンスタークトラップを備えた100mlの4つ口フラスコに、フェノール 5.11g(0.054mol)、水酸化カリウム 3.00g(0.054mol)、1,2−ジクロロベンゼン 25gを投入し、窒素気流下、油浴温度190℃で共沸脱水しつつカリウムフェノキサイドを調製した。室温まで放冷後、攪拌しながら、粗ホスホニトリルクロライド混合物 2.50g(0.022mol、一般式(1)でm=3の環状3量体64.9%、m=4の環状4量体21.1%、m=5の環状5量体9.3%、m=6の環状6量体3.9%、鎖状体0.8%)を 1,2−ジクロロベンゼン 10gに溶解したものを10分間で滴下した。反応溶液の一部をマイクロシリンジで採取し、水分量を測定したところホスホニトリルジクロライド1モルに対して0.020モルであった。その後、油浴温度160℃で加熱攪拌を行った。このとき反応系内の温度は140℃であった。反応はHPLCにより追跡し、加熱開始から5時間後に反応を終了した。反応終了後、反応溶液の一部を採取し、GC/MS測定から2−クロロジフェニルエーテルの生成量を定量した。
反応溶液を10%水酸化カリウム水溶液50mlで2回洗浄後、希塩酸で中和した。さらに反応溶液を蒸留水50mlで洗浄後、反応溶媒を減圧留去した。その結果、反応生成物4.90g(クロロホスファゼンから換算した収率98.0%)が得られた。GC/MS測定結果及び31P−NMR測定結果から算出した生成物の組成を表1に示す。
【0056】
[比較例1]
攪拌装置、冷却管、滴下ロート、温度計、ディーンスタークトラップを備えた100mlの4つ口フラスコに、フェノール 5.11g(0.054mol)、水酸化カリウム 3.00g(0.054mol)、トルエン 15gを投入し、窒素気流下、油浴温度140℃で共沸脱水しつつカリウムフェノキサイドを調製した。室温まで放冷後、攪拌しながら、昇華精製ホスホニトリルジクロライドトリマー 2.50g(0.022mol)をトルエン 10gに溶解したものを10分間で滴下した。反応溶液の一部をマイクロシリンジで採取し、水分量を測定したところホスホニトリルジクロライド1モルに対して0.015モルであった。その後、油浴温度140℃で加熱還流を行った。このとき反応系内の温度は141℃であった。反応はHPLCにより追跡し、還流開始から12時間後に反応を終了したが、HPLC測定結果によれば、モノクロロ体が残存していた。反応溶液を10%水酸化カリウム水溶液50mlで2回洗浄後、希塩酸で中和した。さらに反応溶液を蒸留水50mlで洗浄後、反応溶媒を減圧留去した。その結果、反応生成物4.71g(クロロホスファゼンから換算した収率94.1%)が得られた。31P−NMR測定結果から算出した生成物の組成を表2に示す。
【0057】
[比較例2]
攪拌装置、冷却管、滴下ロート、温度計、ディーンスタークトラップを備えた100mlの4つ口フラスコに、フェノール 5.11g(0.054mol)、水酸化カリウム 3.00g(0.054mol)、キシレン 15gを投入し、窒素気流下、油浴温度160℃で共沸脱水しつつカリウムフェノキサイドを調製した。室温まで放冷後、攪拌しながら、昇華精製ホスホニトリルジクロライドトリマー 2.50g(0.022mol)をキシレン 10gに溶解したものを10分間で滴下した。反応溶液の一部をマイクロシリンジで採取し、水分量を測定したところホスホニトリルジクロライド1モルに対して0.021モルであった。その後、油浴温度160℃で加熱還流を行った。このとき反応系内の温度は141℃であった。反応はHPLCにより追跡し、還流開始から12時間後に反応を終了したが、HPLC測定結果によれば、モノクロロ体が残存していた。反応溶液を10%水酸化カリウム水溶液50mlで2回洗浄後、希塩酸で中和した。さらに反応溶液を蒸留水50mlで洗浄後、反応溶媒を減圧留去した。その結果、反応生成物4.76g(クロロホスファゼンから換算した収率95.2%)が得られた。31P−NMR測定結果から算出した生成物の組成を表2に示す。
【0058】
[比較例3]
攪拌装置、冷却管、滴下ロート、温度計、ディーンスタークトラップを備えた100mlの4つ口フラスコに、フェノール 5.11g(0.054mol)、水酸化カリウム 3.00g(0.054mol)、モノクロロベンゼン 18gを投入し、窒素気流下、油浴温度150℃で共沸脱水しつつカリウムフェノキサイドを調製した。室温まで放冷後、攪拌しながら、昇華精製ホスホニトリルジクロライドトリマー 2.50g(0.022mol)を モノクロロベンゼン 10gに溶解したものを10分間で滴下した。反応溶液の一部をマイクロシリンジで採取し、水分量を測定したところホスホニトリルジクロライド1モルに対して0.055モルであった。その後、油浴温度150℃で加熱還流を行った。このとき反応系内の温度は131℃であった。反応はHPLCにより追跡し、還流開始から12時間後に反応を終了したが、HPLC測定結果によれば、モノクロロ体が残存していた。反応終了後、反応溶液の一部を採取し、GC/MS測定からジフェニルエーテルの生成量を定量した。反応溶液を10%水酸化カリウム水溶液50mlで2回洗浄後、希塩酸で中和した。さらに反応溶液を蒸留水50mlで洗浄したが、全般的に油水分離は不良であった。その後、反応溶媒を減圧留去した。その結果、反応生成物4.72g(クロロホスファゼンから換算した収率94.4%)が得られた。GC/MS測定結果及び31P−NMR測定結果から算出した生成物の組成を表2に示す。
【0059】
[比較例4]
攪拌装置、冷却管、滴下ロート、温度計、ディーンスタークトラップを備えた100mlの4つ口フラスコに、フェノール 5.11g(0.054mol)、水酸化カリウム 3.00g(0.054mol)、1,2−ジクロロベンゼン 25gを投入し、窒素気流下、油浴温度190℃で共沸脱水しつつカリウムフェノキサイドを調製した。室温まで放冷後、攪拌しながら、昇華精製ホスホニトリルジクロライドトリマー 2.50g(0.022mol)を1,2−ジクロロベンゼン 10gに溶解したものを10分間で滴下した。反応溶液の一部をマイクロシリンジで採取し、水分量を測定したところホスホニトリルジクロライド1モルに対して0.052モルであった。その後、油浴温度160℃で加熱攪拌を行った。このとき反応系内の温度は141℃であった。反応はHPLCにより追跡し、還流開始から12時間後に反応を終了したが、HPLC測定結果によれば、モノクロロ体が残存していた。反応終了後、反応溶液の一部を採取し、GC/MS測定から2−クロロジフェニルエーテルの生成量を定量した。反応溶液を10%水酸化カリウム水溶液50mlで2回洗浄後、希塩酸で中和した。さらに反応溶液を蒸留水50mlで洗浄したが、全般的に油水分離は不良であった。
その後、反応溶媒を減圧留去した。その結果、反応生成物4.74g(クロロホスファゼンから換算した収率94.8%)が得られた。GC/MS測定結果及び31P−NMR測定結果から算出した生成物の組成を表2に示す。
【0060】
[比較例5]
攪拌装置、冷却管、滴下ロート、温度計、ディーンスタークトラップを備えた100mlの4つ口フラスコに、フェノール 5.11g(0.054mol)、水酸化カリウム 3.00g(0.054mol)、1,2−ジクロロベンゼン 25gを投入し、窒素気流下、油浴温度190℃で共沸脱水しつつカリウムフェノキサイドを調製した。室温まで放冷後、攪拌しながら、昇華精製ホスホニトリルジクロライドトリマー 2.50g(0.022mol)を1,2−ジクロロベンゼン 10gに溶解したものを10分間で滴下した。反応溶液の一部をマイクロシリンジで採取し、水分量を測定したところホスホニトリルジクロライド1モルに対して0.063モルであった。その後、油浴温度160℃で加熱攪拌を行った。このとき反応系内の温度は140℃であった。反応はHPLCにより追跡し、還流開始から12時間後に反応を終了したが、HPLC測定結果によれば、モノクロロ体が残存していた。反応終了後、反応溶液の一部を採取し、GC/MS測定から2−クロロジフェニルエーテルの生成量を定量した。反応溶液を10%水酸化カリウム水溶液50mlで2回洗浄後、希塩酸で中和した。さらに反応溶液を蒸留水50mlで洗浄したが、全般的に油水分離は不良であった。
その後、反応溶媒を減圧留去した。その結果、反応生成物4.76g(クロロホスファゼンから換算した収率95.2%)が得られた。GC/MS測定結果及び31P−NMR測定結果から算出した生成物の組成を表2に示す。
【0061】
[比較例6]
攪拌装置、冷却管、滴下ロート、温度計、ディーンスタークトラップを備えた100mlの4つ口フラスコに、窒素気流下、金属ナトリウム 1.25g(0.054mol)及びn−ヘプタン 25gを投入し、油浴温度120℃で金属ナトリウムを溶解した。続いてn−ヘプタン 25gに溶解したフェノール 5.11g(0.054mol)を10分間で投入し、副生する水素ガスを除去しつつ、ナトリウムフェノキサイドを調製した。室温まで放冷後、攪拌しながら、昇華精製ホスホニトリルジクロライドトリマー 2.50g(0.022mol)をモノクロロベンゼン 10gに溶解したものを10分間で滴下した。反応溶液の一部をマイクロシリンジで採取し、水分量を測定したところホスホニトリルジクロライド1モルに対して0.032モルであった。その後、油浴温度140℃で加熱攪拌を行った。反応はHPLCにより追跡し、還流開始から12時間後に反応を終了したが、HPLC測定結果によれば、モノクロロ体が残存していた。反応終了後、反応溶液の一部を採取し、GC/MS測定からジフェニルエーテルの生成量を定量した。反応溶液を10%水酸化カリウム水溶液50mlで2回洗浄後、希塩酸で中和した。さらに反応溶液を蒸留水50mlで洗浄したが、全般的に油水分離は不良であった。その後、反応溶媒を減圧留去した。その結果、反応生成物4.66g(クロロホスファゼンから換算した収率93.2%)が得られた。GC/MS測定結果及び31P−NMR測定結果から算出した生成物の組成を表2に示す。
【0062】
[比較例7]
攪拌装置、冷却管、滴下ロート、温度計を備えた100mlの4つ口フラスコに、フェノール 5.11g(0.054mol)、水酸化カリウム 3.0g(0.054mol)、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド 1.05g(3.25x10−3mol)、蒸留水12gを投入し、窒素気流下、攪拌しながら、昇華精製ホスホニトリルジクロライド 2.5g(0.022mol)をモノクロロベンゼン 15gに溶解したものを10分間で滴下した。その後、油浴温度150℃で加熱還流を行った。反応はHPLCにより追跡し、還流開始から12時間後に反応を終了したが、HPLC測定結果によれば、モノクロロ体が残存していた。反応液を10%水酸化カリウム水溶液50mlで2回洗浄後、希塩酸で中和した。さらに反応液を蒸留水50mlで洗浄したが、全般的に油水分離は不良であった。その後、反応溶媒を減圧留去した。その結果、反応生成物3.40g(ホスホニトリルジクロライドから換算した収率67.9%)が得られた。31P−NMR測定結果から算出した生成物の組成を表2に示す。
【0063】
【表1】
Figure 2004359604
【0064】
【表2】
Figure 2004359604
【0065】
実施例(表1)と比較例(表2)との比較から明らかなように、反応溶媒としてハロゲン化芳香族炭化水素を使用し、かつ反応系内の水分量を制御した場合には、フェニルエーテルの生成がなく、速やかに反応が完結し、モノクロロ体を含まないホスホニトリル酸エステルが得られることが分かる。さらに反応溶媒としてジクロロベンゼンまたはモノクロロベンゼンを使用した場合では、ジクロロベンゼンを使用した場合の方がより速やかに反応が完結していることが分かる。一方、トルエンやキシレン等のハロゲン化芳香族炭化水素以外の反応溶媒では反応系内の水分量が低くても、反応時間が長期化し、モノクロロ体が含有されていることが分かる。さらにハロゲン化芳香族炭化水素を使用した場合でも、反応系内の水分量が特定量以上の場合には原料と反応溶媒が反応してフェニルエーテルが副生したり、反応性が低下して反応時間か長期化し、モノクロロ体が含有されていることが分かる。
【0066】
【発明の効果】
本発明のホスホニトリル酸エステルを製造する方法によれば、環状及び/または鎖状であるホスホニトリルジクロライドをアルカリ金属アリーラート、及び/またはアルカリ金属アルコラートを反応させて環状及び/または鎖状であるホスホニトリル酸エステルを製造するに際し、反応溶媒としてハロゲン化芳香族炭化水素を使用し、かつ反応系内の水分量を制御することにより、原料と反応溶媒との副反応がなく、モノクロロ体の含有率が極めて少ないホスホニトリル酸エステルを製造することが可能である。また本発明によれば、極めて速やかに反応が進行するため、反応時間の短縮が可能で用役費の削減が可能となり、さらに副反応による原料の損失や反応溶媒の回収率低下が抑制されるため、より安価にホスホニトリル酸エステルを製造することが可能である。従って、本発明により工業的に有用なホスホニトリル酸エステルを低塩素含有率で製造することが可能となり、ホスホニトリル酸エステルそのものの耐加水分解性、耐熱性が向上し、さらに樹脂組成物の物性低下が抑制されるため、ホスホニトリル酸エステルオリゴマーやホスホニトリル酸エステルポリマーの各種誘導体がプラスチックおよびその添加剤、ゴム、肥料、医薬など、より広範囲な用途へ使用されることが期待できる。

Claims (3)

  1. 下記一般式(1)で表わされる環状及び/または鎖状であるホスホニトリル酸エステルの製造方法において、下記一般式(2)で表わされる環状及び/または鎖状であるホスホニトリルジクロライドに下記一般式(3)で表わされるアルカリ金属アリーラート(arylate)、及び/または下記一般式(4)で表わされるアルカリ金属アルコラートを反応させることにより環状及び/または鎖状ホスホニトリル酸エステルを製造するに際し、反応溶媒としてハロゲン化芳香族炭化水素を使用し、かつ反応系内に含有される水分量が、環状及び/またはホスホニトリルジクロライド1モルに対して、0.05モル以下であることを特徴とするホスホニトリル酸エステルの製造方法。
    Figure 2004359604
    (式中、Qはアリールオキシ基またはアルコキシ基、mは3以上の整数を表わす。)
    Figure 2004359604
    (式中、mは3以上の整数を表わす。)
    Figure 2004359604
    (式中、Arはアリール基、Mはアルカリ金属である。)
    Figure 2004359604
    (式中、Rはアルキル基、Mはアルカリ金属である。)
  2. 反応溶媒がモノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンの中から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載のホスホニトリル酸エステルの製造方法。
  3. 反応系内の水分量がホスホニトリルジクロライド1モルに対して、0.035モル以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のホスホニトリル酸エステルの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2017223293A1 (en) * 2016-06-22 2017-12-28 The Government of the United States of America, as represented by the Secretary of Navy P(cn)3 reactions with lithium dicynamide producing lithiated carbon phosphonitride extended solids
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