JP2004359511A - 自然崩壊型ブロックおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ダム湖などの堆積土砂の有効利用、河川や海岸への土砂の供給、河川、海域における生態系の回復などを図り、従来のコンクリート製ブロックの問題点、ダム湖などの堆積土砂の処理の問題、河川や海岸における土砂流出の問題などを解決した自然崩壊型ブロックを提供する。
【解決手段】自然崩壊型ブロックは、土砂、バインダおよび固化後の崩壊を促進する崩壊促進物質が混合されて固化された固形物よりなる。
【選択図】 図1
【解決手段】自然崩壊型ブロックは、土砂、バインダおよび固化後の崩壊を促進する崩壊促進物質が混合されて固化された固形物よりなる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、護岸、消波、魚礁などのために用いられ、時間の経過に伴って自然に崩壊する自然崩壊型ブロックに関する。
【0002】
【従来の技術】
護岸、消波、魚礁などに使用されることを目的とするブロックとして、従来、コンクリート製の半永久的なものがよく知られている。
【0003】
一方、ダム湖の底には大量の土砂が堆積するため、これを排砂ゲートなどから下流に流すことが試みられているが、ダム湖に堆積する底砂は泥分が多くかつ有機分を多く含み、排砂により下流や海域の環境に悪影響を与えるので、多くのダムでは、土砂が浚渫により陸揚げされて、ダムの近傍に野積みされている。ダム湖とは逆に、海岸では、河川からの土砂の供給が少なく、堆積土砂が少ないため、潮流や波浪により砂が流出し、砂浜の後退や減少を招いている。このために、上記のようなコンクリート製のブロックが消波ブロックあるいは護岸ブロックとして用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来のコンクリート製のブロックの色は人工的であり、これを消波ブロックや護岸ブロックとして使用すると、周囲の景観を損ねることがある。
【0005】
また、従来のコンクリート製のブロックを魚礁に用いた場合、年数の経過に伴い、ブロック表面の付着生物が剥がれ、有機物や浮泥が堆積して、水の交換が悪くなり、有機物による酸素消費量が多くなるため、魚礁内部が貧酸素状態になり、魚礁効果が減少してくる。
【0006】
この発明の目的は、上記の問題を全て解決した自然崩壊型ブロックおよびその製造方法を提供することにある。
【0007】
具体的には、ダム湖などの堆積土砂の有効利用、河川や海岸への土砂の供給、河川、海域における生態系の回復などを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
請求項1の発明は、自然崩壊型ブロックであって、土砂、バインダおよび固化後の崩壊を促進する崩壊促進物質が混合されて固化された固形物よりなることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の自然崩壊型ブロックにおいて、バインダがセメントであることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1または2の自然崩壊型ブロックにおいて、崩壊促進物質が、アルカリ骨材反応を起こすことにより固形物の強度を低下させるアルカリ骨材反応要因物質であることを特徴とするものである。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1または2の自然崩壊型ブロックにおいて、崩壊促進物質が、バインダと反応することにより固形物の強度を低下させる有機物であることを特徴とするものである。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1または2の自然崩壊型ブロックにおいて、崩壊促進物質が、吸水膨張作用により固形物の強度を低下させる膨潤性物質であることを特徴とするものである。
【0013】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれか1項の自然崩壊型ブロックを製造する方法であって、土砂、バインダおよび固化後の崩壊を促進する崩壊促進物質を混合して、固化することを特徴とするものである。
【0014】
この発明の自然崩壊型ブロックを構成する土砂として、たとえば、ダム湖、河川、海などの堆積土砂を浚渫したものが用いられる。
【0015】
請求項2の発明において、セメントとして、たとえば、普通ポルトランドセメントが用いられる。
【0016】
請求項3の発明において、アルカリ骨材反応要因物質は、セメントなどのバインダ、ブロックが設置された海水などの中のアルカリと反応して膨張し、固形物の強度を低下させる。アルカリ骨材反応要因物質として、たとえば、粒状または粉状の各種ガラス、たとえば、ケイ酸ガラス、石灰ガラスなどが用いられる。
【0017】
請求項4の発明において、バインダと反応することにより固形物の強度を低下させる有機物として、たとえば、リグノセルロース、それを含む自然物質、フミン酸、リグニンスルホン酸ナトリウム(以下「リグニン酸」という。)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(以下「CMC」という)など、およびこれらを含む物質が用いられる。フミン酸、リグニン酸およびCMCは、セメントが水和する際に発生するカルシウムイオンと反応して、硬化を妨げる。
【0018】
請求項5の発明において、吸水膨張作用により固形物の強度を低下させる膨潤性物質として、たとえば、粘土、ケイ酸アルミニウム、古紙などが用いられる。
【0019】
崩壊促進物質として、アルカリ骨材反応要因物質、有機酸、膨潤性物質などのうちの1種類だけが用いられてもよいし、これらのうちの2種類以上が用いられてもよい。
【0020】
堆積土砂には、バインダと反応することにより固形物の強度を低下させる有機物が含まれていることがある。堆積土砂に含まれている上記有機物の量が十分である場合は、堆積土砂とそれに元々含まれている上記有機物との混合物をそのまま用いて、他の崩壊促進物質を混合しなくてもよい。堆積土砂に元々含まれている上記有機物の量が不十分である場合は、堆積土砂と上記有機物との混合物に、さらに1種類あるいは複数種類の他の崩壊促進物質を混合すればよい。
【0021】
この発明によるブロックは、護岸ブロック、消波ブロック、魚礁などに用いられ、使用目的に応じて、川岸、海岸、砂浜、海底などに設置される。そして、設置後、時間の経過に伴って、崩壊促進物質の働きにより、徐々に強度が低下し、やがて、崩壊して、土砂に戻る。固化後のブロックの当初の強度は、従来のコンクリート製ブロックのそれに比べてかなり低くてもよい。たとえば、従来のコンクリート製ブロックの1/3〜1/5でもよい。
【0022】
請求項1の自然崩壊型ブロックは、自然の土砂を主体としており、時間が経過すると、崩壊して土砂に戻り、植物が生育するため、景観を損なうことがない。
【0023】
また、ダム湖、河川、海などの堆積土砂を用いると、堆積土砂を有効利用してブロックを安価に製造することができ、しかも、堆積土砂の処理の問題が解決される。堆積土砂は、そのままでは取扱いおよびトラックなどによる輸送が難しいが、この発明では、土砂が固化されて固形物となっているので、取扱いおよび輸送が容易である。
【0024】
護岸ブロックとして用いられる場合、法面の植物が生育するまでは、ブロックがある程度の強度を保持して法面材(土)の流出を防止し、植物が根を張って法面材が安定してからブロックが崩壊して土砂に戻るようにすれば、景観を損なうことなく、法面を安定させることができる。
【0025】
消波ブロックとして用いられる場合、砂浜に設置されて、ブロックがある程度の強度を保持している間は、従来のコンクリート製ブロックと同様に、消波効果を発揮して、砂浜の砂の流出を防止する。そして、ブロックが自然崩壊して土砂に戻った後も、崩壊した土砂のマウンドが消波効果を発揮し、崩壊した土砂が砂浜に供給されることになる。
【0026】
魚礁として用いられる場合、設置後、ある時間が経過すると、ブロックが崩壊して土砂に戻るため、前記のように魚礁内部が貧酸素状態になることがなく、また、ブロックが崩壊して土砂に戻ることにより、新たなブロックを再投入して、魚礁効果を発揮させることが可能になる。
【0027】
護岸ブロック、消波ブロックおよび魚礁として用いられる場合、河川や海岸整備以前に森林から供給されていた陸上植物などの有機物質に含まれる生理活性物質および生理不活性物質を、この発明のブロックによって供給することにより、生態系の回復が図られる。
【0028】
請求項2のブロックによれば、バインダとしてセメントを用いることにより、ブロックを構成する固形物の強度をある程度高めることができ、また、アルカリ骨材反応要因物質、有機物、膨潤性物質などの崩壊促進物質の働きにより、固形物の強度を徐々に低下させて、崩壊させることが可能になる。
【0029】
請求項3のブロックによれば、アルカリ骨材反応要因物質の働きにより、固化したブロックの強度を徐々に低下させて、崩壊させることができる。
【0030】
請求項4のブロックによれば、有機物の働きにより、固化したブロックの強度を徐々に低下させて、崩壊させることができる。
【0031】
請求項5のブロックによれば、膨潤性物質の働きにより、固化したブロックの強度を徐々に低下させて、崩壊させることができる。
【0032】
請求項6の方法によれば、時間の経過に伴って自然に崩壊する自然崩壊型ブロックを製造することができる。
【0033】
土砂、バインダおよび崩壊促進物質の種類、それらの混合比、崩壊促進物質の大きさなどの条件は、ブロックの用途に応じ、ブロックの固化後、ブロックを崩壊させるまでの時間によって、適宜設定される。
【0034】
たとえば、アルカリ骨材反応要因物質としてガラスを用いる場合、通常は、粒状のものが好ましい。粉状のガラスは、全体の表面積が大きいため、セメントなどのバインダのアルカリと早期に反応して、短時間でアルカリを消費してしまうため、強度低下が短時間で終了してしまう。これに対し、粒状のガラスは、全体の表面積が比較的小さいため、セメントなどのバインダのアルカリと徐々に反応し、バインダの強度が高まって、ブロックが固化した後に、バインダのアルカリと徐々に反応して、ブロックの強度低下を長時間持続し、崩壊に至らせる。
【0035】
ブロックを護岸ブロックとして使用する場合、ブロック設置後、法面の植物が根を張って、法面が安定してからブロックが崩壊するように、上記条件が設定される。
【0036】
また、ブロックを魚礁として使用する場合、魚礁内部が貧酸素状態になる前にブロックが崩壊するように、上記条件が設定される。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、この発明の実施形態および実験例について説明する。
【0038】
図1は、自然崩壊型ブロックの製造工程の1例を示す流れ図である。次に、図1を参照して、自然崩壊型ブロックの製造方法の1例について説明する。
【0039】
図1において、まず、土砂を調達し、これとバインダを混合する。土砂としては、たとえば、ダム湖、河川、海などの堆積土砂を浚渫したものを使用する。バインダとしては、たとえば、ポルトランドセメントなどのセメントを使用する。そして、必要に応じ、土砂とバインダの混合物に、崩壊促進物質を添加して、これらを混合し、この混合物を型枠に打設して固化した後、脱型して、ブロックを完成する。
【0040】
たとえば、含水率50%の土砂に、土砂の乾燥重量に対して10%のバインダを混合し、さらに、土砂の乾燥重量に対して20%の崩壊促進物質を添加する。
【0041】
土砂として堆積土砂を用いる場合であって、バインダと反応することにより固形物の強度を低下させる有機物(崩壊促進物質)が堆積土砂中に十分に含まれている場合は、堆積土砂とバインダを混合するだけで、土砂、バインダおよび崩壊促進物質の混合物が得られるので、堆積土砂とバインダの混合物に別に崩壊促進物質を添加する必要はない。
【0042】
上記のようにして製造されたブロックは、護岸ブロック、消波ブロック、魚礁などの種々の用途に使用される。
【0043】
この発明による自然崩壊型ブロックの時間経過による強度変化を調べるために、土砂試料、ポルトランドセメントおよび崩壊促進物質より供試体を作製して、実験を行った。図2は、その実験手順を示す流れ図である。
【0044】
図2において、まず、土砂試料を作製し、土砂試料、セメントおよび崩壊促進物質をソイルミキサに入れて、5分間混合し、安定処理土の締め固めを要しない供試体の作成方法(JGS T 821)に準じて、供試体を作製した。これを7日間密封養生した後に脱型し、60℃の水中で促進劣化を行ない、所定日数後毎に一軸圧縮試験(JGS T 511)およびpH試験(JSF T 211−1991)を行った。
【0045】
土砂試料は、砂と採石スラッジを用いて作製した。砂の粒径は0.1〜数mm、採石スラッジの粒径は数mm以下で、土砂試料の粒径は数mm以下である。
【0046】
実験条件は、土砂試料の含水率を50%とし、セメントは土砂試料の乾燥重量に対して10%外割で添加した。
【0047】
実験は、添加する崩壊促進物質の種類および割合を変えて作製した複数種類の供試体について行った。また、ブロックを海水中に投入したときの海水に対するアルカリ骨材反応の影響を調べるために、塩化ナトリウムを添加した供試体と添加しない供試体とについて、実験を行った。塩化ナトリウムを添加した供試体については、塩化ナトリウムを土砂試料の乾燥重量に対して10%外割で添加した。
【0048】
実験の結果、塩化ナトリウムを添加し、崩壊促進物質としてアルカリ骨材反応要因物質であるケイ酸ガラスを消石灰飽和溶液中に浸漬したものを土砂試料の乾燥重量に対して20%添加した供試体、塩化ナトリウムを添加し、崩壊促進物質として粉状のリグニン酸を土砂試料の乾燥重量に対して0.1%あるいは0.2%添加した供試体については、13週間以降、一軸圧縮強度が低下する傾向がみられた。
【0049】
したがって、崩壊促進物質の種類、大きさ、割合などの諸条件を適当に設定すれば、崩壊促進物質の働きによって、所望の期間でブロックの強度を低下させて、崩壊させることができると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、この発明による自然崩壊型ブロックの製造方法の1例を示す流れ図である。
【図2】図2は、供試体を使用した実験の手順を示す流れ図である。
【発明の属する技術分野】
この発明は、護岸、消波、魚礁などのために用いられ、時間の経過に伴って自然に崩壊する自然崩壊型ブロックに関する。
【0002】
【従来の技術】
護岸、消波、魚礁などに使用されることを目的とするブロックとして、従来、コンクリート製の半永久的なものがよく知られている。
【0003】
一方、ダム湖の底には大量の土砂が堆積するため、これを排砂ゲートなどから下流に流すことが試みられているが、ダム湖に堆積する底砂は泥分が多くかつ有機分を多く含み、排砂により下流や海域の環境に悪影響を与えるので、多くのダムでは、土砂が浚渫により陸揚げされて、ダムの近傍に野積みされている。ダム湖とは逆に、海岸では、河川からの土砂の供給が少なく、堆積土砂が少ないため、潮流や波浪により砂が流出し、砂浜の後退や減少を招いている。このために、上記のようなコンクリート製のブロックが消波ブロックあるいは護岸ブロックとして用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来のコンクリート製のブロックの色は人工的であり、これを消波ブロックや護岸ブロックとして使用すると、周囲の景観を損ねることがある。
【0005】
また、従来のコンクリート製のブロックを魚礁に用いた場合、年数の経過に伴い、ブロック表面の付着生物が剥がれ、有機物や浮泥が堆積して、水の交換が悪くなり、有機物による酸素消費量が多くなるため、魚礁内部が貧酸素状態になり、魚礁効果が減少してくる。
【0006】
この発明の目的は、上記の問題を全て解決した自然崩壊型ブロックおよびその製造方法を提供することにある。
【0007】
具体的には、ダム湖などの堆積土砂の有効利用、河川や海岸への土砂の供給、河川、海域における生態系の回復などを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
請求項1の発明は、自然崩壊型ブロックであって、土砂、バインダおよび固化後の崩壊を促進する崩壊促進物質が混合されて固化された固形物よりなることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の自然崩壊型ブロックにおいて、バインダがセメントであることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1または2の自然崩壊型ブロックにおいて、崩壊促進物質が、アルカリ骨材反応を起こすことにより固形物の強度を低下させるアルカリ骨材反応要因物質であることを特徴とするものである。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1または2の自然崩壊型ブロックにおいて、崩壊促進物質が、バインダと反応することにより固形物の強度を低下させる有機物であることを特徴とするものである。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1または2の自然崩壊型ブロックにおいて、崩壊促進物質が、吸水膨張作用により固形物の強度を低下させる膨潤性物質であることを特徴とするものである。
【0013】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれか1項の自然崩壊型ブロックを製造する方法であって、土砂、バインダおよび固化後の崩壊を促進する崩壊促進物質を混合して、固化することを特徴とするものである。
【0014】
この発明の自然崩壊型ブロックを構成する土砂として、たとえば、ダム湖、河川、海などの堆積土砂を浚渫したものが用いられる。
【0015】
請求項2の発明において、セメントとして、たとえば、普通ポルトランドセメントが用いられる。
【0016】
請求項3の発明において、アルカリ骨材反応要因物質は、セメントなどのバインダ、ブロックが設置された海水などの中のアルカリと反応して膨張し、固形物の強度を低下させる。アルカリ骨材反応要因物質として、たとえば、粒状または粉状の各種ガラス、たとえば、ケイ酸ガラス、石灰ガラスなどが用いられる。
【0017】
請求項4の発明において、バインダと反応することにより固形物の強度を低下させる有機物として、たとえば、リグノセルロース、それを含む自然物質、フミン酸、リグニンスルホン酸ナトリウム(以下「リグニン酸」という。)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(以下「CMC」という)など、およびこれらを含む物質が用いられる。フミン酸、リグニン酸およびCMCは、セメントが水和する際に発生するカルシウムイオンと反応して、硬化を妨げる。
【0018】
請求項5の発明において、吸水膨張作用により固形物の強度を低下させる膨潤性物質として、たとえば、粘土、ケイ酸アルミニウム、古紙などが用いられる。
【0019】
崩壊促進物質として、アルカリ骨材反応要因物質、有機酸、膨潤性物質などのうちの1種類だけが用いられてもよいし、これらのうちの2種類以上が用いられてもよい。
【0020】
堆積土砂には、バインダと反応することにより固形物の強度を低下させる有機物が含まれていることがある。堆積土砂に含まれている上記有機物の量が十分である場合は、堆積土砂とそれに元々含まれている上記有機物との混合物をそのまま用いて、他の崩壊促進物質を混合しなくてもよい。堆積土砂に元々含まれている上記有機物の量が不十分である場合は、堆積土砂と上記有機物との混合物に、さらに1種類あるいは複数種類の他の崩壊促進物質を混合すればよい。
【0021】
この発明によるブロックは、護岸ブロック、消波ブロック、魚礁などに用いられ、使用目的に応じて、川岸、海岸、砂浜、海底などに設置される。そして、設置後、時間の経過に伴って、崩壊促進物質の働きにより、徐々に強度が低下し、やがて、崩壊して、土砂に戻る。固化後のブロックの当初の強度は、従来のコンクリート製ブロックのそれに比べてかなり低くてもよい。たとえば、従来のコンクリート製ブロックの1/3〜1/5でもよい。
【0022】
請求項1の自然崩壊型ブロックは、自然の土砂を主体としており、時間が経過すると、崩壊して土砂に戻り、植物が生育するため、景観を損なうことがない。
【0023】
また、ダム湖、河川、海などの堆積土砂を用いると、堆積土砂を有効利用してブロックを安価に製造することができ、しかも、堆積土砂の処理の問題が解決される。堆積土砂は、そのままでは取扱いおよびトラックなどによる輸送が難しいが、この発明では、土砂が固化されて固形物となっているので、取扱いおよび輸送が容易である。
【0024】
護岸ブロックとして用いられる場合、法面の植物が生育するまでは、ブロックがある程度の強度を保持して法面材(土)の流出を防止し、植物が根を張って法面材が安定してからブロックが崩壊して土砂に戻るようにすれば、景観を損なうことなく、法面を安定させることができる。
【0025】
消波ブロックとして用いられる場合、砂浜に設置されて、ブロックがある程度の強度を保持している間は、従来のコンクリート製ブロックと同様に、消波効果を発揮して、砂浜の砂の流出を防止する。そして、ブロックが自然崩壊して土砂に戻った後も、崩壊した土砂のマウンドが消波効果を発揮し、崩壊した土砂が砂浜に供給されることになる。
【0026】
魚礁として用いられる場合、設置後、ある時間が経過すると、ブロックが崩壊して土砂に戻るため、前記のように魚礁内部が貧酸素状態になることがなく、また、ブロックが崩壊して土砂に戻ることにより、新たなブロックを再投入して、魚礁効果を発揮させることが可能になる。
【0027】
護岸ブロック、消波ブロックおよび魚礁として用いられる場合、河川や海岸整備以前に森林から供給されていた陸上植物などの有機物質に含まれる生理活性物質および生理不活性物質を、この発明のブロックによって供給することにより、生態系の回復が図られる。
【0028】
請求項2のブロックによれば、バインダとしてセメントを用いることにより、ブロックを構成する固形物の強度をある程度高めることができ、また、アルカリ骨材反応要因物質、有機物、膨潤性物質などの崩壊促進物質の働きにより、固形物の強度を徐々に低下させて、崩壊させることが可能になる。
【0029】
請求項3のブロックによれば、アルカリ骨材反応要因物質の働きにより、固化したブロックの強度を徐々に低下させて、崩壊させることができる。
【0030】
請求項4のブロックによれば、有機物の働きにより、固化したブロックの強度を徐々に低下させて、崩壊させることができる。
【0031】
請求項5のブロックによれば、膨潤性物質の働きにより、固化したブロックの強度を徐々に低下させて、崩壊させることができる。
【0032】
請求項6の方法によれば、時間の経過に伴って自然に崩壊する自然崩壊型ブロックを製造することができる。
【0033】
土砂、バインダおよび崩壊促進物質の種類、それらの混合比、崩壊促進物質の大きさなどの条件は、ブロックの用途に応じ、ブロックの固化後、ブロックを崩壊させるまでの時間によって、適宜設定される。
【0034】
たとえば、アルカリ骨材反応要因物質としてガラスを用いる場合、通常は、粒状のものが好ましい。粉状のガラスは、全体の表面積が大きいため、セメントなどのバインダのアルカリと早期に反応して、短時間でアルカリを消費してしまうため、強度低下が短時間で終了してしまう。これに対し、粒状のガラスは、全体の表面積が比較的小さいため、セメントなどのバインダのアルカリと徐々に反応し、バインダの強度が高まって、ブロックが固化した後に、バインダのアルカリと徐々に反応して、ブロックの強度低下を長時間持続し、崩壊に至らせる。
【0035】
ブロックを護岸ブロックとして使用する場合、ブロック設置後、法面の植物が根を張って、法面が安定してからブロックが崩壊するように、上記条件が設定される。
【0036】
また、ブロックを魚礁として使用する場合、魚礁内部が貧酸素状態になる前にブロックが崩壊するように、上記条件が設定される。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、この発明の実施形態および実験例について説明する。
【0038】
図1は、自然崩壊型ブロックの製造工程の1例を示す流れ図である。次に、図1を参照して、自然崩壊型ブロックの製造方法の1例について説明する。
【0039】
図1において、まず、土砂を調達し、これとバインダを混合する。土砂としては、たとえば、ダム湖、河川、海などの堆積土砂を浚渫したものを使用する。バインダとしては、たとえば、ポルトランドセメントなどのセメントを使用する。そして、必要に応じ、土砂とバインダの混合物に、崩壊促進物質を添加して、これらを混合し、この混合物を型枠に打設して固化した後、脱型して、ブロックを完成する。
【0040】
たとえば、含水率50%の土砂に、土砂の乾燥重量に対して10%のバインダを混合し、さらに、土砂の乾燥重量に対して20%の崩壊促進物質を添加する。
【0041】
土砂として堆積土砂を用いる場合であって、バインダと反応することにより固形物の強度を低下させる有機物(崩壊促進物質)が堆積土砂中に十分に含まれている場合は、堆積土砂とバインダを混合するだけで、土砂、バインダおよび崩壊促進物質の混合物が得られるので、堆積土砂とバインダの混合物に別に崩壊促進物質を添加する必要はない。
【0042】
上記のようにして製造されたブロックは、護岸ブロック、消波ブロック、魚礁などの種々の用途に使用される。
【0043】
この発明による自然崩壊型ブロックの時間経過による強度変化を調べるために、土砂試料、ポルトランドセメントおよび崩壊促進物質より供試体を作製して、実験を行った。図2は、その実験手順を示す流れ図である。
【0044】
図2において、まず、土砂試料を作製し、土砂試料、セメントおよび崩壊促進物質をソイルミキサに入れて、5分間混合し、安定処理土の締め固めを要しない供試体の作成方法(JGS T 821)に準じて、供試体を作製した。これを7日間密封養生した後に脱型し、60℃の水中で促進劣化を行ない、所定日数後毎に一軸圧縮試験(JGS T 511)およびpH試験(JSF T 211−1991)を行った。
【0045】
土砂試料は、砂と採石スラッジを用いて作製した。砂の粒径は0.1〜数mm、採石スラッジの粒径は数mm以下で、土砂試料の粒径は数mm以下である。
【0046】
実験条件は、土砂試料の含水率を50%とし、セメントは土砂試料の乾燥重量に対して10%外割で添加した。
【0047】
実験は、添加する崩壊促進物質の種類および割合を変えて作製した複数種類の供試体について行った。また、ブロックを海水中に投入したときの海水に対するアルカリ骨材反応の影響を調べるために、塩化ナトリウムを添加した供試体と添加しない供試体とについて、実験を行った。塩化ナトリウムを添加した供試体については、塩化ナトリウムを土砂試料の乾燥重量に対して10%外割で添加した。
【0048】
実験の結果、塩化ナトリウムを添加し、崩壊促進物質としてアルカリ骨材反応要因物質であるケイ酸ガラスを消石灰飽和溶液中に浸漬したものを土砂試料の乾燥重量に対して20%添加した供試体、塩化ナトリウムを添加し、崩壊促進物質として粉状のリグニン酸を土砂試料の乾燥重量に対して0.1%あるいは0.2%添加した供試体については、13週間以降、一軸圧縮強度が低下する傾向がみられた。
【0049】
したがって、崩壊促進物質の種類、大きさ、割合などの諸条件を適当に設定すれば、崩壊促進物質の働きによって、所望の期間でブロックの強度を低下させて、崩壊させることができると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、この発明による自然崩壊型ブロックの製造方法の1例を示す流れ図である。
【図2】図2は、供試体を使用した実験の手順を示す流れ図である。
Claims (6)
- 土砂、バインダおよび固化後の崩壊を促進する崩壊促進物質が混合されて固化された固形物よりなることを特徴とする自然崩壊型ブロック。
- バインダがセメントであることを特徴とする請求項1の自然崩壊型ブロック。
- 崩壊促進物質が、アルカリ骨材反応を起こすことにより固形物の強度を低下させるアルカリ骨材反応要因物質であることを特徴とする請求項1または2の自然崩壊型ブロック。
- 崩壊促進物質が、バインダと反応することにより固形物の強度を低下させる有機物であることを特徴とする請求項1または2の自然崩壊型ブロック。
- 崩壊促進物質が、吸水膨張作用により固形物の強度を低下させる膨潤性物質であることを特徴とする請求項1または2の自然崩壊型ブロック。
- 土砂、バインダおよび固化後の崩壊を促進する崩壊促進物質を混合して、固化することを特徴とする自然崩壊型ブロックの製造方法。
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JP2003161562A JP2004359511A (ja) | 2003-06-06 | 2003-06-06 | 自然崩壊型ブロックおよびその製造方法 |
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Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2005290172A (ja) * | 2004-03-31 | 2005-10-20 | Taiheiyo Cement Corp | 自己崩壊型固形物とその用途 |
JP2010076970A (ja) * | 2008-09-25 | 2010-04-08 | Sumitomo Osaka Cement Co Ltd | 土砂供給用硬化体及び土砂の供給方法 |
JP2012254905A (ja) * | 2011-06-09 | 2012-12-27 | Kajima Corp | 自己崩壊性コンクリート及びその製造方法 |
JP2013202001A (ja) * | 2012-03-29 | 2013-10-07 | Sumitomo Osaka Cement Co Ltd | 植栽基盤の製造方法及び植栽基盤 |
-
2003
- 2003-06-06 JP JP2003161562A patent/JP2004359511A/ja active Pending
Cited By (4)
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JP2005290172A (ja) * | 2004-03-31 | 2005-10-20 | Taiheiyo Cement Corp | 自己崩壊型固形物とその用途 |
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