JP2004358746A - インサート射出成形品の製造方法、及びその装置 - Google Patents

インサート射出成形品の製造方法、及びその装置 Download PDF

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Abstract

【課題】インサート片が一体化された射出成形品の射出成形に際して、その射出成形の回数に比例して、インサート片支持部材のその前記配置領域の面積を大きくしたり、又は多数のインサート片支持部材を必要としないで済む前記射出成形品の製造方法とその装置を提供することである。
【解決手段】4行4列の横縦に整列して等間隔の寸法Kをおいて下型Fに形成された16個の通気シートセット用キャビティCの数及び配置と同数で同一に配置された通気シート片1を、一組のインサート片群Gと定め、前記下型Fから離れた位置に配置された支持トレイSの上に、16組の通気シート群Gを、所定寸法(K/4)だけ横縦に間隙を保たせて配置して、隣接する通気シート群G同士の配置領域の一部を共有させ、しかも取出時に特定の一組の通気シート群Gの各通気シート1を取出可能に配置しておき、次の射出成形の前までに、支持トレイSと通気シート保持移送装置Tの取出位置とを、直前の取出位置から前記所定寸法(K/4)だけ位置変更するように両者を相対的に移動させる。
【選択図】 図8

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、成形品本体を形成すると共に、インサート片が一体化された射出成形品を、一回の射出成形で同時に複数個形成する製造方法、及びその装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
上記した射出成形に係る製造方法においては、分割面に複数個のキャビティが形成された射出成形型を使用して、該成形型が開いている時に前記複数個のインサート片を各キャビティにセットし、型締めを行った後に前記キャビティに加熱溶融した樹脂を射出して、成形品本体にインサート片が一体化された射出成形品を複数個成形する方法が一般的である。即ち、射出成形機の射出ノズルからスプルーを通して該成形型内に射出された溶融樹脂は、スプルーから連続する樹脂の流路(以下の説明において「ランナー」と記す)を通り、それぞれの射出ゲートを介して各キャビティに充填され、インサート片が一体化された射出成形品が同時に前記複数個形成される。そして、上記した射出成形に係る成形型においては、射出される溶融樹脂が各キャビティに等しく分配されるように、各キャビティは、互いにほぼ等しい間隔(ピッチ)を維持して、しかもスプルーを中心として対称形をなす配置で、射出成形型の分割面に形成される。上記した等しいピッチ寸法は、射出充填される溶融樹脂の圧力によってキャビティが変形して隣接するキャビティにその影響が及ぶ等のトラブルを避けるためや、射出ゲートやスプルー、或いは突き出しピン等の成形部材を各キャビティ周辺に配置するスペースを確保するために、射出成形品の最大外形よりも大きく設定される必要がある。このために、各キャビティ間のピッチ寸法は、実用上で前記射出成形品の最大外形の2ないし3倍程度に設定される場合が多い。
【0003】
そして、前記射出成形型の複数個のキャビティに同数のインサート片を載置するには、各キャビティの前記ピッチの寸法と同じピッチで配置された複数個の保持具を備えたロボットハンド、又は該ロボットハンドと同一作動をするインサート片保持機構を有する移送装置を使用して、トレイ等のインサート片支持部材の上に前記ピッチと同一ピッチをおいて配置された複数個のインサート片を取り出し、保持及び移送して行われる。即ち、射出成形機の設置場所とは別の離れた場所において、インサート片保持移送装置の保持機構部分を使用して、インサート片支持部材の上に配置されたキャビティの数と同一数のインサート片を取り出して保持し、射出成形型の位置まで移動させ、成形型の分離面と対向させて前進させ、複数個のキャビティにインサート片をセットする方法が採用されている。
【0004】
そして、例えば、円板形のインサート片1’が一体化された16個の射出成形品(図示せず)を製造するためには、以下の工程に従って行う。ここで、射出成形型の分割面には、4行4列の横縦にそれぞれ同一ピッチ(間隔)の寸法Kをおいて配置される16個の各キャビティC(図4参照)が形成されており、16個の各キャビティの配置と同一に、等間隔の寸法Kをおきながら4行4列の横縦に整列して配置される16個のインサート片を、1組の「インサート片群」と定めることができる(図17において、その外形をG’として示す)。図17は、支持部材S’に対するシート片1’の従来の配置状態を示す平面図である。
(1)前記1組のインサート片群G’に対応する16個のインサート片を、前記インサート片保持移送装置によって取出可能な状態で、キャビティへの位置に対応した配置で支持部材S’の上に載置する。
(2)前記インサート片保持移送装置を支持部材S’の設置場所に移動させ、その保持機構の部分を使用して1組16個のインサート片群G’を取り出して保持し、この状態でこれらを成形型の分割面の直上に移動させ、16個のキャビティにインサート片1’をそれぞれセットする。
(3)インサート片がセットされた各キャビティに溶融樹脂を射出して成形品本体を形成し、インサート片1’が一体化された16個の射出成形品を成形して、成形品を成形型から取り出す。
以下の説明において、上記した(1),(2),(3) を1サイクルとして、「1回の射出成形」と定める。従って複数回の射出成形を行うためには、上記(1),(2),(3) を繰り返すことになる。
【0005】
しかしながら、上記した従来の製造方法では、支持部材S’には、1回の射出成形に必要なだけの16個のインサート片1’が載置されている。従って、次の16個の射出成形品を成形する2回目以降の射出成形を行うには、2組目以降のインサート片群G’を用意しなければならず、複数組のインサート片群G’の配置領域を確保できるよう支持部材S’の面積を大きくしたり、予め1組のインサート片群G’を配置した支持部材S’を複数個準備したりしていた。このため、支持部材の使用に広いスペースが必要となったり、射出成形を1回行う毎に、支持部材S’を交換しなければならなくなったりして、その取扱いが煩雑になるという問題を有していた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、インサート片が一体化された射出成形品の射出成形に際して、複数回の射出成形を、インサート片支持部材を大きくしたり、又は射出成形毎にインサート片支持部材の交換をしたりしないで行うことができる前記射出成形品の製造方法とその装置を提供することを課題としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために請求項1に記載の発明は、開閉可能な射出成形型の分割面に複数個のキャビティが形成された射出成形型を用いて、前記成形型が開いている時に各キャビティに、予め別に成形されたインサート片をセットし、前記成形型を閉じた後に前記キャビティに成形材料を射出して、成形品本体を形成すると共に、前記本体に前記インサート片を一体化して、インサート片が一体化された射出成形品を製造する方法であって、前記射出成形型に形成された複数個のキャビティの数及び配置と同数で同一に配置されたインサート片を一組のインサート片群と定め、前記射出成形型から離れた位置に配置されたインサート片支持部材の上に、複数組のインサート片群をインサート片の外形寸法を下廻らない所定寸法だけの間隙を保たせて隣接するインサート片群同士の配置領域の一部を共有させ、特定の一組のインサート片群の各インサート片を取出可能に配置しておき、インサート片保持機構を備えたインサート片保持移送装置を前記インサート片支持部材に移動させて、インサート片保持機構により特定の一組のインサート片群を前記支持部材から取り出して保持し、前記インサート片保持移送装置を前記射出成形型の分割面に移動させて、各インサート片を射出成形型の各キャビティにセットする工程と、各キャビティにインサート片がセットされた状態で射出成形型を閉めて、液状の成形材料をキャビティに射出充填してインサート片が一体化された複数個の射出成形品を形成する工程と、次の射出成形の前までに、インサート片支持部材とインサート片保持移送装置とを、取出位置が前の成形での取出位置から前記所定寸法だけ位置変更するように両者を相対的に移動させる工程と、インサート片保持移送装置のインサート片保持機構により次の一組のインサート片群の各インサート片をインサート片支持部材から取り出して保持し、前記保持移送装置を射出成形型の分割面に移動させて、前記した次の一組のインサート片群の各インサート片を各キャビティにセットする工程と、各キャビティに次のインサート片がセットされた状態で射出成形型を閉めて、液状の成形材料をキャビティに射出充填してインサート片が一体化された次の複数個の射出成形品を形成する工程と、を有して、各工程を繰り返すことを特徴としている。
【0008】
請求項1の発明によれば、インサート片支持部材の上に複数組のインサート片群を前記所定寸法だけの間隙を保って隣接するインサート片群同士の配置領域の一部を共有させ、しかも取出時に特定の一組のインサート片群の各インサート片を取出可能に配置してあるため、従来の配置状態に比較して、インサート片の配置密度を高くすることができる。よって、同じ大きさのインサート片支持部材に、従来の配置状態よりも多くのインサート片を配置することができ、或いはより小さいインサート片支持部材に所定数のインサート片を配置することができる。
この結果、設定数の射出成形品を形成する場合において、インサート片支持部材の交換回数が少なくて済むと共に、その運搬・保管時においても占有空間が小さくなって、取扱いが容易となる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1の発明において、射出成形型の分割面には複数個のキャビティが縦横に整列して形成されていて、インサート片支持部材には、特定の一組のインサート片群を構成する相隣接する2個のインサート片を結ぶ線分上に、別の1ないし複数組のインサート片群を構成するインサート片が配置されていることを特徴としている。
【0010】
請求項2の発明によれば、請求項1に記載の作用効果に加えて、インサート片支持部材の上に、複数組のインサート片群を構成する多数のインサート片が縦横配置されるために、次の射出成形の前までに、インサート片支持部材に対するインサート片保持移送装置の取出位置を直前の取出位置に対して所定寸法だけ位置変更するように両者を相対的に移動させる(両者のうち少なくとも一方を移動させる)際に、互いに直交する縦横二方向の少なくともいずれか一方に所定の寸法ずつ順次移動させて位置を変更すれば良い。この結果、インサート片支持部材、及びインサート片保持移送装置のうち少なくとも一方を上記位置変更させればよいので容易に制御できる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2の発明において、インサート片支持部材の上に載置された複数組のインサート片群を構成する各インサート片の間隔は同一であることを特徴としている。
【0012】
請求項3の発明によれば、請求項2に記載の作用効果に加えて、インサート片支持部材、及びインサート片保持移送装置のうち少なくとも一方の上記位置変更の寸法が一定となるので、位置変更の制御が一層容易となる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかの発明において、複数組のインサート片群を構成する各インサート片は、インサート片支持部材に形成された凹部に配置されていることを特徴としている。
【0014】
請求項4の発明によれば、請求項1ないし3のいずれかに記載の作用効果に加えて、トレイ等のインサート片支持部材の凹部にインサート片が配置されているため、待機状態においても、インサート片が位置ずれしない。また、インサート片支持部材にインサート片を載置する際にも作業がし易い。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかの発明において、帯状のインサート片支持部材に、複数組のインサート片群を構成するインサート片が剥離可能に積層されており、前記インサート片群のインサート片が積層された前記支持部材は、繰出機から繰り出されて、平坦な取出部に配置された状態でインサート片保持移送装置のインサート片保持機構によりインサート片が剥離されて保持されると共に、インサート片が剥離されたインサート片支持部材は、巻取機に巻き取られることを特徴としている。
【0016】
請求項5の発明によれば、請求項1ないし3のいずれかの作用効果に加えて、インサート片を積層した支持部材は、繰出機から繰り出されて、インサート片が剥離されて取り出された後には、巻取機に巻き取られ、繰出機と巻取機の水平な取出部において、インサート片が支持部材から剥離されて取り出される構成であるために、所定組のインサート片群が連続的に供給される。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項5の発明において、帯状のインサート片支持部材に剥離可能に積層された前記インサート片は、帯状のインサート片材に、その外形に沿った切れ目が入れられて形成されていて、インサート片群をなす前記各インサート片が、インサート片保持移送装置のインサート片保持機構により保持されることを特徴としている。
【0018】
請求項6の発明によれば、請求項5に記載の作用効果に加えて、インサート片の外形に沿った切れ目が予め帯状のインサート材に形成されていることにより、各インサート片が、所定寸法の間隙をおいて配置される寸法精度が高まり、この結果、良品の射出成形品が製造される信頼性が高まる。また、別途成形されたインサート片をインサート片支持部材に載置する必要がなく、成形のための準備が簡単になる。
【0019】
請求項7に記載の発明は、開閉可能な射出成形型の分割面に複数個のキャビティが形成された射出成形型を用いて、前記成形型が開いている時に各キャビティに予め別に成形されたインサート片をセットし、前記成形型を閉じた後に前記キャビティに成形材料を射出して、成形品本体を形成すると共に、前記本体に前記インサート片を一体化して、インサート片が一体化された射出成形品を製造する装置であって、前記射出成形型に形成された複数個のキャビティの数及び配置と同数で同一に配置されたインサート片を一組のインサート片群と定め、前記射出成形型から離れた位置に配置されて、その上に複数組のインサート片群をインサート片の外形寸法を下廻らない所定寸法だけの間隙を保たせて、かつ隣接するインサート片群同士の配置領域の一部を共有させ、しかも取出時に特定の一組のインサート片群の各インサート片を取出可能に配置するインサート片支持部材と、前記射出成形型と前記インサート片支持部材との間を往復移動可能で、インサート片支持部材の対向位置で特定の一組のインサート片群の各インサート片を前記支持部材から取り出して保持し、前記射出成形型の分割面の対向位置まで移動させて、保持されている各インサート片を射出成形型の各キャビティにセットするインサート片保持機構を有するインサート片保持移送装置とを備え、次のインサート片群を取り出す毎に、インサート片支持部材とインサート片保持移送装置の取出位置とを、直前の取出位置から前に所定寸法だけ位置変更するように両者を相対的に移動させる構成であることを特徴としている。
【0020】
請求項7の発明によれば、インサート片が一体化された射出成形品を製造する装置において、特にインサート片支持部材を小型化することができ、その取扱いの簡素化、及び省スペース化につながる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明においてインサート片が通気シート1であって、該通気シート1が一体化された射出成形品が通気栓10である場合の実施形態を例示し、第1実施形態の通気栓10の製造方法、及び装置について説明する。図1は、上型Fと下型Fとからなる射出成形型と、インサート片支持部材である支持トレイSと、保持移送装置Tとの配置を示す正面図であって、図2は、上型Fと下型Fとの間に保持移送装置Tが配置された状態の正面図であって、図3は、支持トレイSの直上に保持移送装置Tが配置された状態の正面図である。また、図4は、上型Fと下型Fとが開いている状態の斜視図であって、図5の(イ)は、それぞれ上型Fと下型Fとを閉じて形成されたキャビティCの部分の縦断面図であり、(ロ)は、(イ)のU−U線矢視図である。そして、図6は、射出成形品である通気栓10の一部を破断した斜視図である。なお、実物の通気シート1は、紙片に相当する厚みを有しているが、解かり易くするために、実際の厚みよりも大きく図示する。
【0022】
まず、本実施形態に係る製造装置の概略の構成について説明する。以下の説明においては、方向を示す符号としてX,Y,Zを使用する。Xは、通気シート1の保持移送装置Tが成形型の分割面に沿って往復する移動方向であって、Y,Zは、それぞれ移動方向Xと同一平面内で直交する方向と、X及びYに対して垂直な方向とを示す符号である。また、本実施形態において、1回の射出成形で製造される通気栓10の個数は、従来例の場合と同様に16個である。本実施形態に係る製造装置は、図1及び図4に図示されるとおり、16個のキャビティCが配置され射出成形型を構成する上及び下の各型F,Fと、合計16組の通気シート群Gが載置され、所定寸法だけ各方向X,Yに沿って移動可能に設置された支持トレイSと、射出成形を行う度に支持トレイSに載置される1組の通気シート群Gの各通気シート1を該支持トレイSから取り出して保持し、前記下型F及び支持トレイSの間をX方向に沿って往復移動して通気シート1を前記各通気シートセット用キャビティCにセットする通気シート1の保持移送装置Tとを備えている。また、前記通気栓10は、密閉容器に取り付けられ、容器内外の気圧調整の目的で使用される栓である。図6に示すように、略筒状の通気栓本体2の通気孔3を閉塞するように、その一方の端面4aに通気可能な薄い円板形の前記通気シート1が接合されている。通気栓本体2は、通気シート1が接合される側の端面4aを形成する端部4の外側に、環状溝部5及び環状突部6が、それぞれ端部4よりも1段低く、及び突出して形成され、通気シート1が接合されない側の端部7は、平坦に形成された略筒形状をなしている。また、通気シート1は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の薄膜からなる通気層と、ポリオレフィン系樹脂の不織布からなる補強層との積層体であり、通気栓本体2は、オレフィン系やスチレン系の各熱可塑性エラストマーや軟質樹脂、或いはEPDMゴム等からなる弾性体である。
【0023】
射出成形型を構成する上及び下の各型F,Fは、Z方向に沿って移動可能でそれらの分割面11,21を対向させて設置されており、上方に配置される成形型が固定型となる上型Fであり、下方に配置される成形型が可動型となる下型Fとなっている。上及び下の各型F,Fが閉じると、通気栓10の通気栓本体2に対応するキャビティCが形成される。そして、この射出成形型と離れた別の場所には、前記通気シート1の載置用凹部31が形成された略方形の平板状の前記支持トレイSが該通気シート1の載置面を上にして水平に配置されており、その下には、支持トレイSを移動及び水平の各X,Y方向に沿って所定寸法だけ位置変更させる移動装置40が配置されている。
【0024】
また、通気シート1の保持移送装置Tは、1組の通気シート群Gの通気シート1を吸引して保持するための複数の吸着具51を備えており、下型Fの分割面21及び支持トレイSのそれぞれの直上付近をX方向の移動端として、この間をX方向に沿って往復移動する。そして該移動端において、吸着具51をZ方向に沿って移動させることができる。また、吸着具51は、支持トレイS側の移動端において、通気シート1を吸引保持して取り出したり、下型Fの側の移動端において、これらを離脱したりすることができる。
【0025】
次に、上型F及び下型Fの構成について詳説する。上型Fの分割面11には、等間隔の寸法Kをおきながら4行4列の横縦に整列して配置された16個の各キャビティCが、上型Fに形成されたスプルー12を中心として配置され、下型Fに向けて開口するように設けられている。該キャビティCは、通気栓10の通気シート1が接合されない側の端部7の形状に対応して形成されており、その底面には、前記各キャビティCに同心円状に挿入される円柱状のコア13が下型Fに向けて突出するように形成されている。具体的には、コア13は、上型Fとは別の部材をキャビティCの底壁の嵌合固定孔に嵌合固定して形成されている。そしてこのコア13は、成形品である通気栓本体2の通気孔3の形状に対応した形状を有し、通気孔3の内径とコア13の外径は同一となっている。また、コア13の突出長は、前記通気シート1がセットされる下型FのキャビティCの底面のセット用凹部22に通気シート1をセットして、一対の上及び下の各型F,Fを型合せして閉じた状態において、前記通気シート1がコア13の先端部で適正に押圧、圧縮され得る長さに形成されている。なお、コア13の先端面には、なだらかなドーム状の凹部14が形成され、その結果、先端面の外周には環状押圧部15が形成されている。この環状押圧部15は、下型FのキャビティCの底面にセットされた通気シート1を前記コア13で押圧した状態で成形する際に、通気シート1の中心の通気部分が押圧されないように保護するために設けた部分である。
【0026】
また、下型Fには、上型Fに向けて開口する16個のキャビティCが、前記上型Fの各キャビティCの配置に対応して、等間隔の寸法Kをおきながら、同様に4行4列の横縦に整列した対称な配置で、分割面21に設けられている。該キャビティCは、通気栓10の通気シート1が接合される側の端部4と環状の各溝部5及び突部6との形状に対応して形成されており、その底面には、通気シート1がセットされるセット用凹部22が形成されている。キャビティCの底面には、該キャビティCと同心となって固定配置され通気シート1の外径とほぼ同径の円柱状である通気シート支持ピン23と、該支持ピン23の外側に上下方向にスライド可能に配置された円筒状のスリーブ24とで形成される。
スリーブ24は、前記キャビティCと同一内径を有して分割面21から下方に延設されたスリーブ挿通孔25と、該スリーブ挿通孔25に同心となって配置された前記通気シート支持ピン23とで形成される空間部に、スライド可能でかつバリが生じない程度の射出成形するのに適した寸法で嵌め合って挿入配置されている。また、スリーブ24の先端部には、該スリーブ24と同一内径を保持して上方に延設された円形の環状凸部24aが形成され、その結果として、環状凸部24aと前記支持ピン23の端面の間に段差が生じ、通気シート1の外径に対応する円形の前記凹部22が形成されている。よって、セット用凹部22にセットされる通気シート1とキャビティCとは同心上に配置されるため、分割面21に対する前記各キャビティCの配置間隔と該キャビティCにセットされた通気シートの1のセット間隔とは、どちらも前記寸法Kとなっている。また、支持ピン23及びスリーブ24は、型閉じ時に通気栓本体2の通気シート1が接合される端部4、環状溝部5、環状突部6の各形状に対応したキャビティを形成するように配置されている。
【0027】
このようにして、下型FのキャビティCに通気シート1をセットした後に、上型Fに対して下型Fを上方にスライドさせて両型F,Fを型合せすると、下型FのキャビティCに、上型Fのコア13がキャビティCと同心となって入り込み、成形品である通気栓本体2の形状に対応したキャビティCが形成される。
【0028】
なお、図4の17,27は、一対の上及び下の各型F,Fをそれぞれに一体に固定する方形盤状のダイプレートであって、図示しない可動盤と固定盤とに所定の方法で取付けられている。また、ダイプレート17の上面の18,19は、射出ノズル(図示せず)を安定支持させるためのノズルタッチ部及びロケートリングである。上及び下の各型F,Fの分割面11,21には、上型Fのスプルー12を介して供給される溶融樹脂を16個のキャビティCに供給するためのランナー26がスプルー12を中心として対称位置に設けられている。図5の28は、ランナー26とキャビティCとを接続して溶融樹脂をキャビティC内に射出するサブマリン構造の射出ゲートである。
【0029】
次に、通気シート1を載置する支持トレイSの構成について詳説する。図7は、支持トレイSの通気シート載置用凹部31と保持移送装置Tの吸着具51との関係を示す斜視図であって、図8は、支持トレイSに複数群の通気シート1が配置された状態の平面図であって、図9の(イ)は、支持トレイSを移動及び水平の各方向X,Yに沿って移動させるための移動装置40の平面図であり、(ロ)は、同じく側面図である。略方形の平板形状をなす支持トレイSの上面には、通気シート1を載置する複数の通気シート載置用凹部31が、互いに等間隙の寸法(K/4)をおいて、X,Y方向に沿った16行16列の横縦に整列する対称形に配置して形成されている。通気シート載置用凹部31は、支持トレイSの上面に向けてより大きく開口するテーパー状に形成され、該凹部31の底面部が、通気シート1の外径とほぼ同一となるよう形成されている。そして、図8において、数字『1』を付した1組の通気シート群G〔第1群の通気シート群G(1)とも記す〕を構成する各通気シート1を基準とした場合には、X,Y方向に沿って相隣接する同じ通気シート群G(1)の通気シート1を結ぶ線分上に、等間隙の寸法(K/4)をおいてそれぞれ別の3組の通気シート群G〔X方向に沿った線分上では第2ないし第4の通気シート群G(2)〜G(4)、Y方向に沿った線分上では第5,9,13の各通気シート群G(5),G(9),G(13)〕を構成する各通気シート1が、前記凹部31に載置されている。この結果、X,Y方向に沿って各組の通気シート群Gを寸法(K/4)ずつの間隙を保たせて、個々の通気シート群Gの配置領域の一部を重複しながら共有させた状態で、4組(X方向)×4組(Y方向)の合計16組の通気シート群Gの256個の通気シート1が、1つの支持トレイS上に載置される。これらの通気シート1は、後述するように、16回分の射出成形に応じて、保持移送装置Tの吸着具51に保持され、下型FのキャビティCにセットされるものである。なお、通気シート載置用凹部31の底面には、支持トレイSの下面に向けて貫通する通気孔32が形成されているが、これは、後述する吸着具51によって、該凹部31に載置された通気シート1を吸引して取出す際に、通気シート1の下面に負圧が発生するのを防ぐための孔である。
【0030】
通気シート1の保持移送装置Tは、図1に示されるように、下型Fの分割面21の直上と、複数組の通気シート群Gが配置された支持トレイSの直上とを移動端としてこの間を往復移動すると共に、各移動端において、それぞれ上下動する構成であって、図2に示されるように、装置本体52の下面に、下型Fの分割面21に形成された複数の各キャビティCと同一に配置された同数の吸着具51が下方に突出して取付けられている。ここで、支持トレイSの上には16組の通気シート群Gがその配置領域の一部を共有した状態で配置されているが、各組の通気シート群Gの配置も、下型Fの分割面21に形成された16個の各キャビティCと同一であるので、装置本体52の下面に取付けられた複数の吸着具51の配置は支持トレイSの上に配置された各組の通気シート群Gの配置とも同一である。本実施形態の吸着具51は、真空吸着する構成であって、装置本体52内に配置されたパイプ54を介して真空装置(図示せず)に連結されている。
【0031】
次に、前記トレイSを保持移送装置TのX方向と、Y方向に沿って移動させるための支持トレイSの移動装置40について説明する。通気シート支持装置Aは、支持トレイSと、これを水平面内で前記両X,Y方向に移動させるための移動装置40とで構成される。この移動装置40では、図9(イ),(ロ)に示されるように、支持トレイSが可動板41に対してY方向に移動可能に支持されていると共に、支持トレイSが可動板41と一体となってX方向に移動可能なように固定板42に支持されている。即ち、支持トレイSは、Y方向に沿って配置された一対のリニアガイド43を介してY方向に移動可能な状態で可動板41に支持されている。そして、Y方向送り制御モータMyにより回転されるボールねじ44と、支持トレイSの裏面に取付けられたボールナット45とは螺合しており、Y方向送り制御モータMyの正逆回転により、支持トレイSは可動板41に対してY方向に制御移動される。一方、可動板41は固定板42に支持されておりX方向に沿って配置された一対のリニアガイド、ボールねじ、及びボールナット46,47,48が上記と同様にして組み付けられていて、X方向送り制御モータMxを正逆回転させると、支持トレイS及び可動板41が一体となってX方向に沿って制御移動される。なお、図9の49は、各ボールねじ44,47をそれぞれ支持する1対の軸受である。
【0032】
このようにして、X方向及びY方向の各送り制御モータMx,Myのいずれか一方、又は双方を回転させて、支持トレイSをX方向、Y方向に沿って寸法(K/4)を基準とする設定量だけ移動させることができる。
【0033】
射出成形作業の開始時には、図10(イ)で示される支持トレイSの上に配置された16組の通気シート群Gのうち、斜線で示される第1群の通気シート群G(1)を構成する各通気シート1が、各吸着具51の直下になるように支持トレイSと保持移送装置Tが配置されている。この時の保持移送装置Tの位置を「取出位置」とする。なお、図10(イ)に示される位置において、図の左上の角部BをX−Y平面内での座標(0,0)とする。この状態で、保持移送装置Tの全体を下降させ、図3に示すように、各吸着具51を第1群の通気シート群G(1)を構成する各通気シート1に接触させる。そして、各吸着具51に真空吸引力を作用させ各通気シート1を各吸着具51に吸着し、そのまま装置本体52全体を取出位置まで上昇させる。通気シートの真空吸着時においては、支持トレイSの通気孔32の作用によって、通気シート1の底面部が負圧となるのが防止されるため、通気シート1がスムーズに吸着される。次に、保持移送装置Tの全体を分割状態の下型Fの分割面21の直上まで移動させる。この時の保持移送装置Tの位置を「セット位置」とする。そして、装置本体52全体を下降させ、先端に通気シート1を吸着した各吸着具51を各キャビティC内に挿入して真空吸引力を解除した後に、保持移送装置Tの全体をセット位置まで上昇させると、各キャビティC内に各通気シート1がそれぞれセットされる。
【0034】
次に、保持移送装置Tを通気シート1の取出位置まで移動させて、上型Fと下型Fの間から保持移送装置Tを退避させる。その後、両型F,Fを閉じて、各キャビティCに溶融した材料を射出し、所定時間経過後に両型F,Fを開いて離型させると、上記したように、通気栓本体2と通気シート1とが一体接合して、通気栓10が形成される。
【0035】
上記のように、材料を射出して通気栓10を成形している間に、通気シート1の取出位置に配置されている保持移送装置Tで、第2群の通気シート群G(2)の取出しを行う。即ち、保持移送装置Tが取出位置に退避するのとほぼ同時に、X方向送り制御モータMxの制御回転により支持トレイSをX方向に寸法(K/4)だけ移動させて、保持移送装置Tの各吸着具51の直下に第2群の通気シート群G(2)を構成する各通気シート1がそれぞれ配置された状態にして、第1群の通気シート群G(1)と同様にその取出しを行う。その後、第1回目の成形と同様に、下型Fの前記各キャビティCに通気シート1をそれぞれセットして、次の射出成形を行う。第3回目の成形も同様である。図10(ロ)は、第4群の通気シート群G(4)を取り出している状態の平面図であるが、同(イ)との対比から明瞭なように、保持移送装置Tの取出位置がX方向及びY方向の双方において一定であるのに対して、支持トレイSの角部Bは、3回の成形によりX方向に寸法(3K/4)だけ移動して座標(3/4K,0)に位置している。このため、第4群の通気シート群G(4)を取り出した後に第5群の通気シート群G(5)を取り出すには、支持トレイSをX方向送り制御モータMxの制御回転により移動方向Xと逆方向に沿って寸法(3K/4)だけ移動させると共に、Y方向送り制御モータMyの制御回転によりY方向に寸法(K/4)だけ移動させて行う。
【0036】
また、図11に示すのは、第1群から第9群までの通気シート群G(1)〜G(9)が取り出され、支持トレイSの角部B10は、座標(0,0)の前記角部Bに対してX,Yの両方向にそれぞれ寸法(K/4),(K/2)だけ移動されて、第10群の通気シート群G(10)を構成する各通気シート1が、保持移送装置Tの各吸着具51の直下に配置されている例である。なお、ここでは第1群の通気シート群G(1)から第2、第3の各通気シート群G(2),G(3)…と、各群の番号順に取出す例を挙げたが、例えば第1、第5、第9、第13、第2の各通気シート群G(1),G(5),G(9),G(13),G(2)…という順番で取り出すことも可能であり、取り出す順序は各群の番号順に限定されず、任意に設定することができる。
【0037】
上述した本発明に係る通気栓10の製造方法によれば、各X,Y方向に沿った4行4列の横縦に整列して等間隔の寸法Kをおいて形成されているキャビティCに対応して、支持トレイSの通気シート載置用凹部31も、上記各X,Y方向に沿って形成されており、次回の射出成形を行うまでに、いずれか一方か又は両X,Y方向に沿って支持トレイSの位置を変更する位置変更の制御が容易となっている。即ち、移動及び水平の各方向X,Yに沿ってリニアに配置された1対のボールねじ47,44の2軸と連結するモータMx,Myを備えた装置を使用して、直交する2軸に沿って、可動板41及び支持トレイSを直線駆動するだけの簡単な構成で実現できる。しかも、支持トレイSを移動させて位置変更すべき寸法は、全て両方向X,Yに沿った同一の間隙寸法(K/4)を基準として、その1ないし3以下の整数倍で算定されるので、位置変更の制御がより一層簡単となっている。
【0038】
また、支持トレイSに配置される16組の通気シート群Gは、前記各X,Y方向に沿って、各キャビティC間の寸法Kの間隔を4等分した所定の前記寸法(K/4)だけの間隙を保った状態でそれぞれ配置されているので、各方向に沿って順に隣接配置される他の組の通気シート群Gとの間で、各通気シート群G同士の配置領域の一部が重複されている。1組の通気シート群Gの配置領域はほぼ正方形をなしており、所定の前記寸法(K/4)ずつ間隙を保って各通気シート群Gが配置される結果、配置領域が重複した状態でそれぞれ配置され、通気シート1の載置密度が高くなっている。しかも、本実施形態においては、16組の通気シート群Gの各通気シート1が1つの支持トレイSに取出可能に配置されているので、16回の射出成形を行う間の支持トレイSの交換は必要無い。このため、トレイ交換に係る工数を減らすことができ、また必要な支持トレイSの数を少なくできて省コスト省スペースにつながる。なお、第1実施形態では、通気シート載置用凹部31が形成された支持トレイSの構成ついて説明したが、平板状の支持トレイであっても、同様の作用により通気栓10を製造可能である。
【0039】
次に、第2実施形態の通気シート支持装置Aについて説明する。図12は、通気シート支持装置Aと射出成形型の下型Fとの配置を示す平面図であって、図13は、通気シート支持装置Aの正面図(図12のV矢視図)であって、図14は、通気シート支持装置Aに係る側を断面図に示した図12のW−W線断面に相当する拡大図である。なお、図12においては、第1実施形態の第1群の通気シート群G(1)に相当する通気シート1のみを二重丸又は直径の大きな円形で図示した。通気シート支持装置Aは、多数の通気シート1が切込みを有して設けられた長尺状の通気シート材61と、通気シート材61を取出位置において水平維持させるためにその下方に配置される支持板62と、支持板62における通気シート材61の繰出し方向であるY方向に沿った両端部に近接して配置されるスプロケットから成る送りロール63及び引取ロール64と、長尺の通気シート材61を巻回しておいて、これを所定長ずつ繰り出すために前記送りロール63の下方に配置される繰出ロール65と、通気シート1が取り出された通気シート材61を巻き取るために前記引取ロール64の下方に配置される巻取ロール66とを備えている。通気シート材61には、その裏面側に支持シート材Sが張り付けられ、両者が積層された二層構造となっている。この二層構造により、円形の切込み61aの内部に形成された多数の通気シート1が通気シート材61から確実に剥離できると共に、前記繰出ロール65に巻回された状態で通気シート1の相互接触を防止して、通気シート1を保護することができる。
【0040】
図14に示すように、二層構造となった通気シート材61及び支持シート材Sの幅方向の両端部には一定ピッチをおいて各スプロケット孔61bが形成されている。繰出ロール65から未使用の通気シート材61及びこれを支持する支持シート材Sを繰り出すと同時に使用済の通気シート材61及び支持シート材Sを引き取って巻取ロール66に巻き取る際には、前記各スプロケット孔61bに、スプロケットからなる送りロール63及び引取ロール64の各爪部を入り込ませることにより、通気シート材61及び支持シート材Sはその繰出方向に沿ってずれることなく繰出可能となる。これにより、各通気シート1の配置位置の精度を確保している。なお、図12等に示されているように、通気シート材61及び支持シート材Sの繰出方向は、Y方向と同一である。また、図14に示されているように、通気シート1の取出位置において水平配置された前記支持板62における各通気シート1の中心直下に位置する部分には、それぞれ多数の吸引孔62aが形成されている。各吸引孔62aは、真空装置(図示せず)と連通している。これにより、通気シート1の取出時において、前記保持移送装置Tの各吸着具51で通気シート1を吸着してその周縁の切込み61aの部分で剥離させて上方に引き抜く際に、支持シート材Sが一緒になって上方に持ち上げられるのを防止することができ、通気シート材61に対する通気シート1の取り出しを容易に、しかも確実にしている。
【0041】
また、図12に示されるように、支持板62の上に位置する通気シート材61の繰出方向に沿って長さLで示される範囲内には、前記実施形態の支持トレイSの上に配置された複数(実施形態では16)の通気シート群Gと同一配置で多数の通気シート1が配置されている。また、上記構成の通気シート支持装置Aは、例えば前記した支持トレイSの移動装置40と同一構成の装置によって、X,Y方向に沿って制御移動可能となっている。このため、特定の通気シート群Gを取り出した後に、次の通気シート群Gを構成する各通気シート1が保持移送装置Tの各吸着具51の直下に配置されるように、通気シート支持装置Aを両X,Y方向の少なくとも一方に沿って移動させる。そして、Lで示される範囲内に配置された全ての通気シート1が取り出された後には、巻取ロール66の制御回転により通気シート1が剥離された通気シート材61及び支持シート材Sを長さLだけ巻き取って、次の16組の通気シート群Gを支持板62の上に配置し、この状態で、次回の射出成形に必要な16組の通気シート群Gの取り出しを行う。
【0042】
上記したように、第2実施形態においては、通気シート群Gの供給が連続的に行えるので通気シート1を支持する部材(支持シート材S)の占有空間が少なくて済む。また、通気シート材61には、予め円形の切込み61aが形成され、この内部のシート部分が通気シート1に相当するので、それらが等間隙を保って配置する寸法(K/4)の精度は、ほぼ設計どおり確実であって、製造効率の信頼性が高まっている。
【0043】
なお、上記した各実施形態においては、保持移送装置Tの取出位置を各支持部材(支持トレイS又は支持シート材S)直上の一定位置として、前記各支持部材の側を移動装置40によって基準寸法(K/4)ずつ各X,Y方向に沿って位置変更させて、各組の通気シート群Gの通気シート1を取り出して、射出成形を行う製造方法について説明したが、支持部材と保持移送装置Tの取出位置との両者の位置変更は、両者が相対的に移動することによって行うことができる。即ち、固定された支持部材に対して、保持移送装置Tの取出位置を位置変更させて通気シート1を取り出す方法や、両者共に位置変更させて通気シート1を取り出す方法でも構わない。また、第2実施形態の場合には、前記Y方向に沿った支持シート材Sの位置変更は、繰出ロール65と巻取ロール66の回転制御によって行い、X方向に沿った位置変更は前記移動装置40に相当する装置によって行う方法等が考えられる。
【0044】
次に、第3実施形態の通気シート支持装置Aについて説明する。図15は、8個のキャビティCの放射配置状態を示す図であって、図16の(イ)は、放射配置された8個のキャビティCにセットするための通気シート支持装置Aの平面図であり、(ロ)は、同じく側面図である。既述の射出成形型Fの下型Fに相当する第3実施形態の下型Fには、既述の実施形態のキャビティCと同一形状であって、配置のみが異なるキャビティCが形成されている。図示されるように、下型Fの分割面71には、8個のキャビティCが、スプルー12を中心とした同一の円周上に、45°の等しい中心角度θをおいて、放射状に形成されている。このキャビティCの配置構成に対応する通気シート支持装置Aは、略円形の平板形状をなす支持トレイSと、これを回転移動させながら位置変更させる回転移動装置80とを備えており、支持トレイSの上面には、下型Fの各通気シート1を載置する前記通気シート載置用凹部31が、等しい中心角度(θ/3)をおいて同一の円周上に放射状に形成されており、この結果、24個の通気シート1を載置可能になっている。そして、下型Fの各キャビティCにセットされ、その放射状の形成配置に対応する8個の通気シート1を1組の通気シート群Gとした場合、この24個の通気シート載置用凹部31は、合計3組の通気シート群Gが、中心角度(θ/3)ずつ回転して所定の間隙を保ちながら同一円周上に配置された状態の各通気シート1の配置に対応して形成されている。また、回転移動装置80は、支持トレイSの下面の中心部に取り付けられた回転軸81と、固定板82の同じく中心部に取り付けられた回転角度制御モータMrの回転軸とを、カップリング83を介して互いに連結し、支持トレイSを回転移動する装置であり、前記モータMrは所定の角度ずつ回転制御可能になっている。なお、図15の72は、放射状に等角度で分岐して形成されたランナーであって、サブマリン構造の射出ゲート(図示せず)を介して前記キャビティCと接続している。
【0045】
通気栓10を射出成形している間に、次の通気シート群Gの取出しを行う際には、通気シート1の取出位置に配置されている保持移送装置Tに対して、回転角度制御モータMrを駆動して支持トレイSを(θ/3)=15°だけ回転させて位置変更し、保持移送装置Tの各吸着具51の直下に、次の通気シート群Gを構成する各通気シート1がそれぞれ配置された状態にして、それらの取出しが行なわれる。また、支持トレイSに配置される各通気シート群Gは、同一円周上に沿って中心角度θをおいて形成された1組の通気シ−ト群Gの隣接する通気シート1の間に、別の2組の通気シート群Gが、キャビティCの中心角度θを3等分した前記中心角度(θ/3)だけ回転しながら間隙を保った状態で配置しているので、全ての通気シート群G同士の配置領域は同一であって、重複されており、通気シート1の載置密度が高まっている。
【0046】
また、各実施形態のように、複数のキャビティ(キャビティC,C)が設けられている場合において、インサート片支持部材(支持トレイS,S、支持シート材S)の上に所定量だけ間隙を保って(ずれて)配置される寸法(ずれ量)〔(K/4),(θ/3) 〕は、成形型に形成されたキャビティのピッチと、キャビティ自体の大きさとの関係により定められる。例えば、キャビティのピッチに対するキャビティの大きさの比が大きい、つまり個々のキャビティが小さくて、かつ間隔が大きい場合には、前記寸法(ずれ量)を少なくでき、インサート片支持部材に対するインサート片(通気シート1)の配置密度を高くして配置することができ、逆に前記比が小さい場合には、配置密度が低くなる。
【0047】
また、成形型に形成される複数のキャビティの配置は、上記各実施形態のように、縦横に等間隔に整列して配置されていたり、或いは放射状に配置されている場合に限られず、いかなる配置形態であっても、複数のキャビティの配置と同一に配置された同数のインサート片を一組のインサート片群と定めた場合に、複数組のインサート片群をインサート片支持部材の上に所定寸法だけ間隙を保って(ずらして)配置領域の一部を共有させ、しかも特定の一組のインサート片群の各インサート片を取出可能に配置できる。従って、成形型に形成された複数のキャビティの配置がいかなる場合でも、本発明の実施は可能である。また、本発明は、横方向(水平方向)に移動する成形型を使用する場合であっても実施可能である。
【0048】
【発明の効果】
本発明によれば、インサート片支持部材の上に複数組のインサート片群を前記所定寸法だけ位置変更させてから隣接するインサート片群同士の配置領域の一部を共有させ、しかも取出時に特定の一組のインサート片群の各インサート片を取出可能に配置してあるので、インサート片の配置密度を高くすることができる。よって、インサート片が一体化された射出成形品の成形に際して、インサート片支持部材を大きくしたり、又は多数のインサート片支持部材を必要としないで済むため、取扱い易いインサート片支持部材を使用して効率良く製品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】上型Fと下型Fとからなる射出成形型と、インサート片支持部材である支持トレイSと、保持移送装置Tとの配置を示す正面図である。
【図2】上型Fと下型Fとの間に保持移送装置Tが配置された状態の正面図である。
【図3】支持トレイSの直上に保持移送装置Tが配置された状態の正面図である。
【図4】上型Fと下型Fとが開いている状態の斜視図である。
【図5】(イ)は、それぞれ上型Fと下型Fとを閉じて形成されたキャビティCの部分の縦断面図であり、(ロ)は、(イ)のU−U線矢視図である。
【図6】射出成形品である通気栓10の一部を破断した斜視図である。
【図7】支持トレイSの通気シート載置用凹部31と保持移送装置Tの吸着具51との関係を示す斜視図である。
【図8】支持トレイSに16組の通気シート群Gが配置された状態の平面図である。
【図9】(イ)は、支持トレイSを移動及び水平の各方向X,Yに沿って移動させるための移動装置40の平面図であり、(ロ)は、同じく側面図である。
【図10】(イ)は、原点位置において第1群の通気シート群G(1)を取出す状態の支持トレイSの平面図であり、(ロ)は、同じく第4群の通気シート群G(4)を取出す状態の支持トレイSの平面図である。
【図11】第10群の通気シート群G(10)を取出す状態の支持トレイSの平面図である。
【図12】通気シート支持装置Aと射出成形型の下型Fとの配置を示す平面図である。
【図13】通気シート支持装置Aの正面図(図12のV矢視図)である。
【図14】通気シート支持装置Aに係る部分を断面図に示した図12のW−W線拡大断面図に相当する図である。
【図15】8個のキャビティCの放射配置状態を示す図である。
【図16】(イ)は、放射配置された8個のキャビティCにセットするための通気シート支持装置Aの平面図であって、(ロ)は、同じく側面図である。
【図17】支持トレイS’に対するシート片1’の従来の配置状態を示す平面図である。
【符号の説明】
,C:キャビティ
:上型(射出成形型)
:下型(射出成形型)
G:通気シート群(インサート片群)
K/4:寸法(隣接するインサート片群の所定の間隙)
,S:支持トレイ(インサート片支持部材)
:支持シート材(インサート片支持部材)
T:保持移送装置
θ/3:中心角度(隣接するインサート片群の所定の間隙)
1:通気シート(インサート片)
2:通気栓本体(成形品本体)
10:通気栓(射出成形品)
21,71:分割面
31:通気シート載置用凹部
51:吸着具(インサート片保持機構)
61:通気シート材(インサート片材)
61a:切り込み(切れ目)
65:繰出ロール(繰出機)
66:巻取ロール(巻取機)

Claims (7)

  1. 開閉可能な射出成形型の分割面に複数個のキャビティが形成された射出成形型を用いて、前記成形型が開いている時に各キャビティに、予め別に成形されたインサート片をセットし、前記成形型を閉じた後に前記キャビティに成形材料を射出して、成形品本体を形成すると共に、前記本体に前記インサート片を一体化して、インサート片が一体化された射出成形品を製造する方法であって、
    前記射出成形型に形成された複数個のキャビティの数及び配置と同数で同一に配置されたインサート片を一組のインサート片群と定め、前記射出成形型から離れた位置に配置されたインサート片支持部材の上に、複数組のインサート片群をインサート片の外形寸法を下廻らない所定寸法だけの間隙を保たせて隣接するインサート片群同士の配置領域の一部を共有させ、特定の一組のインサート片群の各インサート片を取出可能に配置しておき、
    インサート片保持機構を備えたインサート片保持移送装置を前記インサート片支持部材に移動させて、インサート片保持機構により特定の一組のインサート片群を前記支持部材から取り出して保持し、前記インサート片保持移送装置を前記射出成形型の分割面に移動させて、各インサート片を射出成形型の各キャビティにセットする工程と、
    各キャビティにインサート片がセットされた状態で射出成形型を閉めて、液状の成形材料をキャビティに射出充填してインサート片が一体化された複数個の射出成形品を形成する工程と、
    次の射出成形の前までに、インサート片支持部材とインサート片保持移送装置とを、取出位置が前の成形での取出位置から前記所定寸法だけ位置変更するように両者を相対的に移動させる工程と、
    インサート片保持移送装置のインサート片保持機構により次の一組のインサート片群の各インサート片をインサート片支持部材から取り出して保持し、前記保持移送装置を射出成形型の分割面に移動させて、前記した次の一組のインサート片群の各インサート片を各キャビティにセットする工程と、
    各キャビティに次のインサート片がセットされた状態で射出成形型を閉めて、液状の成形材料をキャビティに射出充填してインサート片が一体化された次の複数個の射出成形品を形成する工程と、を有して、各工程を繰り返すことを特徴とするインサート射出成形品の製造方法。
  2. 射出成形型の分割面には複数個のキャビティが縦横に整列して形成されていて、
    インサート片支持部材には、特定の一組のインサート片群を構成する相隣接する2個のインサート片を結ぶ線分上に、別の1ないし複数組のインサート片群を構成するインサート片が配置されていることを特徴とする請求項1に記載のインサート射出成形品の製造方法。
  3. インサート片支持部材の上に載置された複数組のインサート片群を構成する各インサート片の間隔は同一であることを特徴とする請求項2に記載のインサート射出成形品の製造方法。
  4. 複数組のインサート片群を構成する各インサート片は、インサート片支持部材に形成された凹部に配置されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のインサート射出成形品の製造方法。
  5. 帯状のインサート片支持部材に、複数組のインサート片群を構成するインサート片が剥離可能に積層されており、
    前記インサート片群のインサート片が積層された前記支持部材は、繰出機から繰り出されて、平坦な取出部に配置された状態でインサート片保持移送装置のインサート片保持機構によりインサート片が剥離されて保持されると共に、インサート片が剥離されたインサート片支持部材は、巻取機に巻き取られることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のインサート射出成形品の製造方法。
  6. 帯状のインサート片支持部材に剥離可能に積層された前記インサート片は、帯状のインサート片材に、その外形に沿った切れ目が入れられて形成されていて、
    インサート片群をなす前記各インサート片が、インサート片保持移送装置のインサート片保持機構により保持されることを特徴とする請求項5に記載のインサート射出成形品の製造方法。
  7. 開閉可能な射出成形型の分割面に複数個のキャビティが形成された射出成形型を用いて、前記成形型が開いている時に各キャビティに予め別に成形されたインサート片をセットし、前記成形型を閉じた後に前記キャビティに成形材料を射出して、成形品本体を形成すると共に、前記本体に前記インサート片を一体化して、インサート片が一体化された射出成形品を製造する装置であって、
    前記射出成形型に形成された複数個のキャビティの数及び配置と同数で同一に配置されたインサート片を一組のインサート片群と定め、前記射出成形型から離れた位置に配置されて、その上に複数組のインサート片群をインサート片の外形寸法を下廻らない所定寸法だけの間隙を保たせて、かつ隣接するインサート片群同士の配置領域の一部を共有させ、しかも取出時に特定の一組のインサート片群の各インサート片を取出可能に配置するインサート片支持部材と、
    前記射出成形型と前記インサート片支持部材との間を往復移動可能で、インサート片支持部材の対向位置で特定の一組のインサート片群の各インサート片を前記支持部材から取り出して保持し、前記射出成形型の分割面の対向位置まで移動させて、保持されている各インサート片を射出成形型の各キャビティにセットするインサート片保持機構を有するインサート片保持移送装置とを備え、
    次のインサート片群を取り出す毎に、インサート片支持部材とインサート片保持移送装置の取出位置とを、直前の取出位置から前に所定寸法だけ位置変更するように両者を相対的に移動させる構成であることを特徴とするインサート射出成形品の製造装置。
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