JP2004357315A - アダプティブアレイアンテナ指向性制御システム - Google Patents
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Abstract
【課題】 移動局との通信状況に対応して通信に最適なパスを選択し、且つ干渉除去効果を向上できるアダプティブアレイアンテナ指向性制御システムを提供する。
【解決手段】 CDMA基地局に設けられたアダプティブアレイアンテナを構成する複数のアンテナ素子21において受信された各パスの信号の電力値及び到来角度を測定して、これらの測定結果に基づいて送信希望パスを選択すると共に、各アンテナから送信する信号に対し当該測定結果に基づいたウエイト制御を行い、送信信号として無線出力するアダプティブアレイアンテナ指向性制御システムである。
【選択図】 図1
【解決手段】 CDMA基地局に設けられたアダプティブアレイアンテナを構成する複数のアンテナ素子21において受信された各パスの信号の電力値及び到来角度を測定して、これらの測定結果に基づいて送信希望パスを選択すると共に、各アンテナから送信する信号に対し当該測定結果に基づいたウエイト制御を行い、送信信号として無線出力するアダプティブアレイアンテナ指向性制御システムである。
【選択図】 図1
Description
(発明の詳細な説明)
(発明の属する技術分野)本発明は、移動局との無線通信を行う無線基地局におけるアダプティブアレイアンテナの指向性制御システムに係り、特に移動局との通信状況に対応して干渉を除去できるアダプティブアレイアンテナの指向性制御システムに関する。
(発明の属する技術分野)本発明は、移動局との無線通信を行う無線基地局におけるアダプティブアレイアンテナの指向性制御システムに係り、特に移動局との通信状況に対応して干渉を除去できるアダプティブアレイアンテナの指向性制御システムに関する。
(従来の技術)CDMA(Code Division Multiple Access:符号分割多重通信)による無線通信システムでは、基地局が移動局毎に割り振られた拡散符号を用いて、移動局から無線送信された信号に対し逆拡散を行って信号を復調し、また移動局に送信しようとする信号を拡散変調し、無線送信を行う。CDMAによる無線通信システムでは、拡散符号を用いることによって、複数の移動局によって同一の周波数帯を共用した無線通信を行うことができる。
しかし、複数の移動局によって同一の周波数帯が共用されることから、ある移動局との通信で使用される無線信号が、他の移動局の信号を干渉することになる信号、すなわち干渉信号となる場合がある。また同じ移動局との通信で用いる無線信号が、複数の経路を介して送信又は受信されるマルチパスによっても、他の経路における信号が干渉信号となり、干渉が発生する。
他の移動局の信号又はマルチパスによって発生する干渉を除去する手段として、CDMA通信システムの基地局にアダプティブアレイアンテナを備えることが検討されている。アダプティブアレイアンテナは、複数のアンテナ素子で構成され、特定の方向の電波の送受信を行うことができるアンテナである。アダプティブアレイアンテナでは具体的に、それぞれのアンテナに受信ウエイトや送信ウエイトを持たせて、受信時及び送信時の指向性を制御するシステム(以下、アダプティブアレイアンテナ指向性制御システム)によって、特定方向の電波の送受信を可能としている。アダプティブアレイアンテナでは、上記システムを用いて、移動局との通信を希望する信号の経路(以下、希望パス)を特定し、希望パスへの干渉を回避しつつ移動局との通信を行う。
(発明が解決しようとする課題)しかしながら、上記従来のアダプティブアレイアンテナの指向性制御システムでは、以下に説明する通り、干渉を充分に除去できないという問題点があった。次世代の移動通信方式として導入されているW−CDMA(Wide-band Code Division Multiple Access:広帯域符号分割多重通信)では、高速のデータ通信から低速の音声通信までの幅広い伝送速度をカバーするマルチレートサービスを行うことを特徴としている。
しかしW−CDMAにおける高速データ通信は拡散率が低いため、干渉に非常に弱い。このためW−CDMA無線通信システムの干渉除去についても、アダプティブアレイアンテナを用いて除去することが検討されている。しかしアダプティブアレイアンテナを用いたとしても、希望パスの近傍に干渉信号の経路(以下、干渉パス)が存在する場合、干渉パスの利得低減のためにメインローブレベルが下がるため干渉の除去が困難であり、アンテナの通信特性が劣化してしまう。
一方、アダプティブアレイアンテナにおける希望パスの選択においても、従来は最初に基地局に到達した信号である先行波の経路か、電力値が最も大きい信号の経路を希望パスとしていたが、移動局やパスの位置関係又は信号の電力値によっては必ずしも最適ではなく、上述した例などによって干渉の影響を受け、アンテナの通信特性が劣化していた。
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、移動局との通信状況に対応して希望パスの選択を行い、アダプティブアレイアンテナの干渉除去効果を向上できるアダプティブアレイアンテナ指向性制御システムを提供することを目的とする。
(課題を解決するための手段)上記従来例の問題点を解決するための本発明は、無線基地局に設けられたアダプティブアレイアンテナの指向性を制御し、アダプティブアレイアンテナを構成する複数のアンテナ素子で受信された移動局からの信号に対し、各アンテナ素子に対応したウエイトを持たせて、移動局からの信号を受信するのに最適な受信希望パス又は移動局への信号を送信するのに最適な送信希望パスへの干渉を低減するアダプティブアレイアンテナ指向性制御システムであって、各アンテナ素子で受信された信号からパスを検出し、検出されたパス毎に電力値及びアンテナ素子への到来角度を算出し、検出されたパスのうち電力値又は到来角度のうち少なくとも一方に基づいて受信希望パス又は送信希望パスを選択すると共に、送信希望パス又は受信希望パスへの干渉を低減するウエイトをアンテナ素子毎に算出し、各アンテナ素子で送信する信号又は受信した信号に対して、対応するウエイトを乗算することを特徴とするものであり、移動局との通信状況に対応して受信希望パスの選択を行い、アダプティブアレイアンテナの干渉除去効果を向上することができる。
(発明の実施の形態)本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本発明の実施の形態に係るアダプティブアレイアンテナ指向性制御システムは、CDMA基地局に設けられたアダプティブアレイアンテナを構成する複数のアンテナ素子において受信された各パスの信号の電力値及び到来角度を測定して、これらの測定結果に基づいて希望パスを選択すると共に、受信した信号に対し当該測定結果に基づいたウエイト制御を行って総合したものを受信信号として出力するものであり、これにより上り回線において最適な希望パスを選択でき、干渉パスによる干渉除去効果を向上することができる。
また、CDMA基地局に設けられたアダプティブアレイアンテナを構成する複数のアンテナ素子において受信された各パスの信号の電力値及び到来角度を測定して、これらの測定結果に基づいて希望パスを選択すると共に、各アンテナから送信する信号に対し当該測定結果に基づいたウエイト制御を行い、送信信号として無線出力するものであり、これにより下り回線において最適な希望パスを選択でき、干渉パスによる干渉除去効果を向上することができ、送信電力を低減することができる。
本発明の実施の形態のアダプティブアレイアンテナ指向性制御システムの構成について、図1〜図3を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る上り回線に対応したアダプティブアレイアンテナ指向性制御システムの構成ブロック図である。図1のアダプティブアレイアンテナ指向性制御システム(以下、図1の指向性制御システム)は、CDMA通信基地局において、複数のアンテナにおいて受信した各パスの信号の電力値及び到来角度を測定して、測定結果に基づいて希望パスを選択すると共に、受信した信号にウエイト制御部で求められたウエイトを各アンテナ毎に乗算し、各乗算結果を加算したものを受信信号として出力するものである。尚、図1の指向性制御システムでは、4本のアンテナを備えており、各アンテナで受信した信号に基づいて、パスの選択及びウエイト制御を行っているが、アンテナは異なる本数であってもよい。
図1の指向性制御システムは、アンテナ11-1〜11-4と、RF(Radio Frequency:無線周波数)受信機12-1〜12-4と、受信データ処理部13と、ウエイト制御部14と、乗算器15-1〜15-4と、加算器16と、シンボル検出部(図示せず)とで構成される。また受信データ処理部13は、パス検出部131と、電力測定部132と、角度推定部133と、パス選択部134とで構成される。
次に、図1の指向性制御システムの各部について説明する。アンテナ11-1〜11-4は、アダプティブアレイアンテナを構成する指向性のアンテナ素子であり、移動局から無線送信された拡散変調信号を受信すると、各アンテナに対応して設けられたRF受信機12-1〜12-4にそれぞれ出力する。アンテナ11-1〜11-4は、移動局との通信を広範囲に行うため、等間隔に格子状又は円周状に配置してもよく、その他の配置となっていてもよい。
RF受信機12-1〜12-4は、アンテナ11-1〜11-4で受信した信号をRF帯からBB(BaseBand)帯に周波数変換を行い、各RF受信機に対応した乗算器15-1〜15-4にそれぞれ出力すると共に、受信データ処理部13に出力する。
受信データ処理部13は、RF受信機12-1〜12-4から出力されたBB帯の信号からパスを検出し、検出されたパスの電力値及び到来角度を測定して、さらに測定結果に基づいて希望パスを選択する。また受信データ処理部13は、パス検出結果、電力値測定結果、到来角度測定結果及び希望パス選択結果のうち必要な情報をウエイト制御部14に出力する。
次に、受信データ処理部13を構成する各部について説明する。パス検出部131は、受信データ処理部13に各アンテナで受信した信号が入力されると、逆拡散処理を行って到来タイミングを検出することでパスの検出を行う。各パスにおける逆拡散処理結果は、到来タイミングの情報とを含んだ逆拡散信号として電力測定部132、角度推定部133及びウエイト制御部14に出力される。パス検出部131は、受信した信号に対応した逆拡散符号を記憶しているが、逆拡散符号を生成する手段を他に設け、パス検出部131では、生成された逆拡散符号と信号との逆拡散演算を行うようにしてもよい。
電力測定部132は、入力された逆拡散信号に基づいて各パスにおける信号の電力値を測定し、パス電力値情報としてパス選択部134及びウエイト制御部14に出力する。角度推定部133は、入力された逆拡散信号に基づいて各パスにおける信号の到来角度を推定し、パス到来角度情報としてパス選択部134及びウエイト制御部14に出力する。パス選択部134は、入力されたパス電力値情報及びパス到来角度情報のうち、少なくとも一方に基づいて、検出されたパスから希望パスを選択し、選択結果を選択パス情報として、ウエイト制御部14に出力する。
ここで角度推定部133の構成の一例として、図3を用いて説明する。信号の到来角度を推定する方法としては、MUSIC法やESPRITといった方向推定アルゴリズムが知られているが、本発明では後述する単純な演算による推定法を用いており、図3の構成は、この推定法を実現するための構成の一例である。図3は、本発明の実施の形態に係るアダプティブアレイアンテナ指向性制御システムにおける、角度推定部及び角度推定に必要な構成の構成ブロック図である。図3の角度推定部34は、乗算器343-1〜343-2と、加算器345-1〜345-2と、角度演算部346とで構成される。また、角度推定に必要な構成として、シンボル検出部342がある。尚、図3の角度推定部では、図1におけるアンテナ11-1及び11-2の二つのアンテナにおいて受信した信号を用いて到来角度を測定する構成としているが、実際には二つ以上のアンテナにおいて受信した信号に対して到来角度を測定する構成となっている。本発明の指向性制御システムにおいて、信号の到来角度の推定方法としては他の方法を用いてもよく、角度推定部の構成についても、用いる推定方法に対応した構成にしてもよい。
図3の角度推定部34において、乗算器343は、角度推定の対象となる二つ以上のアンテナ素子毎に設けられており、逆拡散信号に含まれる逆拡散処理結果と、シンボル検出部342から出力された信号のシンボル値との乗算をシンボル毎に行う。図3では、図1のアンテナ11-1、11-2で受信された信号の逆拡散処理結果と、シンボル検出部342から出力されたシンボル値との乗算を、それぞれ乗算器343-1、343-2で行っている。
加算器345は、乗算器343に対応して設けられており、対応する乗算器343で出力された乗算結果を累積加算し、角度演算部346に出力する。図3の角度推定部34では、乗算器343及び加算器345は、角度推定の対象となる1番目及び2番目のアンテナに対応して設けられている。
角度演算部346は、加算器345から出力された各パスにおける累積加算結果に基づいて、各パスにおける信号の到来角度を推定し、推定結果をパス到来角度情報としてパス毎にウエイト制御部14に出力する。
シンボル検出部342は、後述する加算器16から出力される受信信号に基づいてシンボル値を検出し、シンボル値の複素共役値を乗算器343-1、343-2にそれぞれ出力する。
図1において、ウエイト制御部14は、ウエイト制御アルゴリズムを用いて、受信データ処理部13から出力された検出パス情報、パス電力値情報、パス到来角度情報及び選択パス情報のうち必要な情報に基づいて、各パスに対するウエイトを生成し、対応する乗算器15-1〜15-4に出力する。ウエイト制御アルゴリズムによるウエイト生成方法については、後述する。
乗算器15-1〜15-4は、RF受信機12-1〜12-4毎に設けられており、各アンテナで受信した信号と、ウエイト制御部14から出力された各パスのウエイトとの乗算を行い、乗算結果を加算器16に出力する。加算器16は、乗算器15-1〜15-4における乗算結果を加算し、加算結果を受信信号として出力する。
次に、図1の指向性制御システムの動作について図1及び図3を用いて説明する。図1において、上り回線で送信された信号は、アンテナ11-1〜11-4で受信され、各アンテナに対応したRF受信機12-1〜12-4に出力される。RF受信機では、受信した信号をRF帯からIF(Intermediate Frequency:内部周波数)帯を経由して、BB帯に変換し、受信データ処理部13に出力する。
各アンテナで受信された信号は、受信データ処理部13においてパス検出部131に入力される。パス検出部131では、逆拡散処理を用いて各アンテナで受信された信号の到来タイミングを検出することで、当該信号のパスを検出する。またパス検出部131は、各アンテナにおける信号に、検出した到来タイミングによる逆拡散信号を各アンテナ素子毎に求め、必要なアンテナ素子の逆拡散信号を逆拡散信号として電力測定部132、角度推定部133及びウエイト制御部14に出力する
電力測定部132では、各パスの逆拡散信号が入力されると、1つ以上のアンテナからの逆拡散信号に基づいて信号の電力値をパス毎に測定し、パス電力値情報としてパス選択部134及びウエイト制御部14に出力する。ウエイト制御部14で用いる制御アルゴリズムがパス電力値を必要としない場合には、パス電力情報は出力しなくてもよい。
角度推定部133は、角度推定の対象である2つ以上のアンテナで受信された信号に基づいて信号の到来角度を推定し、推定結果をパス到来角度情報としてパス選択部134及びウエイト制御部14に出力する。
次に角度推定部133における到来角度の測定動作及び方法について、図3を用いて詳細に説明する。図3において、パス検出部131から出力された逆拡散信号は、角度推定部34において対応する乗算器343に出力される。またシンボル検出部342は、図1における加算器16から出力された受信信号からシンボル値を検出して、受信信号のシンボル値の複素共役値を、乗算器343に出力する。
乗算器343は、パス検出情報のうち各アンテナで受信した信号の逆拡散処理結果と、受信信号のシンボル値の複素共役値との乗算をシンボル毎に行う。つまり乗算器343-1では、アンテナ11-1で受信した信号に基づく逆拡散処理結果とシンボル値の複素共役値の乗算が行われ、乗算器343-2では、アンテナ11-2で受信した信号に基づく逆拡散処理結果とシンボル値の複素共役値の乗算が行われる。各乗算器の乗算結果は、対応する加算器345に出力される。
加算器345は、対応する乗算器343から出力された乗算結果を累積加算し、累積加算結果を角度演算部346に出力する。図3において、加算器345-1は乗算器343-1から出力された乗算結果を、加算器345-2は乗算器343-2から出力された乗算結果を複数シンボル分に渡って累積加算する。
角度演算部346は、加算器345から出力された累積加算結果に基づいて、角度推定の対象である2つのアンテナにおける信号の位相差から到来角度を推定し、推定結果を各パスの到来角度として、パス選択部134及びウエイト制御部14にパス到来角度情報を出力する。図3では、角度演算部346はアンテナ11-1で受信した信号を用いて到来角度の推定を行う。
ここで角度演算部346における角度推定の方法について説明する。i番目のアンテナで受信した信号の逆拡散演算結果をZi(k)、シンボル検出部342で検出されるシンボル値をS(k)(kはシンボル番号)とすると、i番目のアンテナに対応する加算器345-iにおける累積加算結果は
と表される。(1)式において、Liは信号の平均位相を、S*はシンボル値の複素共役値を表している。
角度演算部346では、(1)式で表される加算結果のうち、到来角度の推定対象となる二つのアンテナについての加算結果に基づいて、到来角度を推定する。到来角度の推定対象として、i番目及びi+1番目のアンテナで受信した信号に基づく累積加算結果を用いるものとすると、両アンテナにおける信号の位相差Δφは
と表せる。また、アンテナ素子間隔をd、i番目及びi+1番目のアンテナで受信する信号の行路差をΔl、キャリア周波数に対する波長をλとすると、位相差Δφは
とも表せる。(3)式より、アンテナで受信した信号の到来角度θは
と算出される。角度演算部346では、(2)〜(4)式の演算を行うことによって各アンテナの信号の到来角度を推定し、各パスの到来角度としている。角度演算部346では、上記数式に必要なパラメータを記憶しておくような構成とすることが望ましい。また、信号の到来角度の推定方法としては他の方法を用いてもよく、角度推定を行う構成についても、用いる推定方法に対応した構成にしてもよい。
図1において、パス選択部134は、本発明の特徴部分となるものであり、入力されたパス電力値情報及びパス到来角度情報のうち、少なくとも一方に基づいて、検出されたパスから希望パスを選択し、選択結果を選択パス情報として、ウエイト制御部14に出力する。これにより、上り回線で干渉を低減するアンテナ制御を実現できる。尚、パス選択部134における希望パスの選択方法の一例については、後述する。
図1において、ウエイト制御部14は、受信データ処理部13から出力された検出パス情報、パス電力値情報、パス到来角度情報及び選択パス情報のうち必要な情報に基づいて、各パスに対するウエイトω1〜ω4を生成し、各アンテナに対応する乗算器15-1〜15-4にそれぞれ出力する。ウエイト制御部14は、ウエイト制御アルゴリズムにしたがって、各パスのウエイトを生成する。また、乗算器15-1〜15-4は、各アンテナで受信した信号と、ウエイト制御部14で生成された各パスのウエイトとの乗算を行い、乗算結果を加算器16に出力する。
図1において、乗算器15-1〜15-4では、各アンテナで受信した信号と、ウエイト制御部14から出力された各パスのウエイトω1〜ω4との乗算を行い、乗算結果を加算器16に出力する。加算器16は、乗算器15-1〜15-4から出力された乗算結果の総和を求め、総和を受信信号として出力する。受信信号は、復調処理信号若しくは基地局既知のパイロット信号として、図3のシンボル検出部32に出力されることでシンボル検出が行われ、復調処理部(図示せず)等に出力されることで復調処理が行われる。
次に、本発明の実施の形態の他のアダプティブアレイアンテナ指向性制御システムの構成について、図2を用いて説明する。図2は、本発明の実施の形態に係る下り回線に対応したアダプティブアレイアンテナ指向性制御システムの構成ブロック図である。
図2のアダプティブアレイアンテナ指向性制御システム(以下、図2の指向性制御システム)は、CDMA基地局において、複数のアンテナにおいて受信した各パスの信号の電力値及び到来角度を測定して、測定結果に基づいて希望パスを選択すると共に、各アンテナから送信する信号に当該測定結果に基づいてウエイト制御を行い、送信信号として無線出力するものである。尚、図2の指向性制御システムでは、4本のアンテナを備えており、各アンテナで受信した信号に基づいて、パスの選択及びウエイト制御を行っているが、アンテナは異なる本数であってもよい。
図2の指向性制御システムは、アンテナ21-1〜21-4と、RF受信機22-1〜22-4と、受信データ処理部23と、ウエイト制御部24と、乗算器25-1〜25-4と、RF送信機26-1〜26-4と、分配器27とで構成される。また受信データ処理部23は、パス検出部231と、電力測定部232と、角度推定部233と、パス選択部234とで構成される。
次に、図2の指向性制御システムの各部について説明する。尚、図2においてアンテナ21-1〜21-4、RF受信機22-1〜22-4及び受信データ処理部23の構成については、図1の対応する装置と同一であるので説明を省略する。ウエイト制御部24は、ウエイト制御アルゴリズムを用いて、受信データ処理部23から出力された検出パス情報、パス電力値情報、パス到来角度情報及び選択パス情報のうち必要な情報に基づいて、各パスに対するウエイトを生成し、対応する乗算器25-1〜25-4に出力する。
分配器27は、拡散変調された送信信号を各乗算器25-1〜25-4に分配する。乗算器25-1〜25-4は、RF送信機26-1〜26-4毎に設けられており、分配器27から出力された送信信号と、ウエイト制御部24から出力された各パスのウエイトとの乗算を行い、乗算結果をRF送信機26-1〜26-4に出力する。
RF送信機26-1〜26-4は、アンテナ21-1〜21-4毎に設けられており、対応する乗算器25-1〜25-4から出力された乗算結果を、BB帯からRF帯に周波数変換を行い、アンテナ21-1〜21-4に出力する。アンテナ21-1〜21-4に出力された送信信号は、通信先の移動局に無線送信される。
次に、図2の指向性制御システムの動作について図2を用いて説明する。図2において、アンテナ21-1〜21-4による信号の受信から受信データ処理部23における希望パスの選択までの動作については、図1の指向性制御システムと同一であるので、説明を省略する。
図2において、ウエイト制御部24は、受信データ処理部23から出力された検出パス情報、パス電力値情報、パス到来角度情報及び選択パス情報のうち必要な情報に基づいて、各パスに対するウエイトω1〜ω4を生成し、各アンテナに対応する乗算器25-1〜25-4にそれぞれ出力する。ウエイト制御部24は、ウエイト制御アルゴリズムにしたがって、各パスのウエイトを生成する。
一方、各移動局に送信しようとするBB帯の送信信号は、無線変調部(図示せず)で拡散変調され分配器27に出力される。分配器27は乗算器25-1〜25-4にそれぞれ送信信号を分配し、出力する。
乗算器25-1〜25-4では、分配器27から出力された送信信号と、ウエイト制御部14から出力された各パスのウエイトω1〜ω4との乗算を行い、乗算結果をRF送信機26-1〜26-4に出力する。RF送信機26-1〜26-4は、対応する乗算器25-1〜25-4から出力された乗算結果をRF帯に周波数変換し、アンテナ21-1〜21-4に出力する。アンテナ21-1〜21-4に出力された送信信号は、通信先の移動局へ無線送信される。すなわち図2の指向性制御システムにおいて選択される希望パスは、送信用としての希望パスである。
図1の指向性制御システムでは、ウエイト制御部14はアンテナで受信した信号に基づいて受信ウエイトを生成し、乗算器15において受信した信号に対してウエイト制御を行っているが、図2の指向性制御システムでは、ウエイト制御部24はアンテナで受信した信号に基づいて送信ウエイトを生成し、乗算器25において送信信号に対してウエイト制御を行っている。尚、図2の指向性制御システムにおいて、送信信号に対するウエイト制御とは別に、受信信号に対するウエイト制御を行うようにしてもよい。
ここで図1及び図2の指向性制御システムのパス選択部における希望パスの選択方法について説明する。CDMA通信において、干渉除去効果が高く、且つ希望パス方向の利得を下げないようにするには、近傍に大きな干渉波がなく、且つ両側に干渉波がないようなパスを希望パスとして選択することが重要である。
またCDMAの下り回線では、他移動局の信号同士は同期しており、拡散符号が直交している。よって基地局と移動局を結ぶパスが1本であれば、パスの中に他移動局の信号が大電力で含まれていても、移動局側では干渉とならない。しかし、マルチパス方向に大電力信号がある場合、つまりマルチパス方向近傍を希望パスとしている移動局が存在すると、干渉が発生する。このため角度の近接している移動局がある場合には、希望パスである送信パスを近づけることが有効である。
本発明では上り回線においては他移動局の信号が、下り回線では自局のマルチパスが干渉信号となるため、パス選択部では回線の違いを考慮してこれらの信号による干渉を除去できるような希望パスを選択することを目的とする。
角度を用いたパス選択は、高速通信ユーザにとって効果的なものである。パス選択部は、全ユーザを対象としてパス選択を行うものであるが、角度を用いたパス選択方法は高速通信ユーザのみを対象とし、他のユーザ、例えば低速通信ユーザについては電力値情報によってパスの選択を行うようにしてもよい。尚、パスの通信速度については、パス検出部で用いる拡散符号から知ることができる。
一般にアダプティブアレイアンテナは、1)ある程度角度が離れた干渉パス、2)電力が大きい干渉パス、3)干渉パスが固まっている方向に対して指向性利得を低減する。本発明の指向性制御システムにおけるパス選択方法の特徴である到来角度と電力値から最適なパスを判断する、ということは上記アダプティブアレイアンテナの指向性パターンの特徴を活かすということに他ならない。しかし、干渉パスの到来角度や電力値の違い、特にフェージングによる変動によって、受信特性は複雑な変化をするため、最適なパス選択のモデルを作ることは困難である。しかし、パス選択を行うためにはこの複雑な変化を見せるパス配置状況と受信特性の特徴からパス選択の基準を作らねばならない。
以下、パス選択部におけるパス選択方法の一例を回線の方向別に図5〜図7を用いて説明する。図5〜図7において、各矢印の長さは電力値の大きさを、矢印間の距離は角度を表している。
図5は上り回線の指向性制御システムにおける希望パスの選択方法について示した図である。上り回線は非同期のため、希望パスを除く無線通信装置に到来する全てのパスが干渉パスとなりうる。図5において、各矢印は図1の指向性制御システムで検出されたパスであり、このうちAとBは同一の移動局Uのパスであり、Cが最大電力値を有する干渉パスである。CはA、Bの移動局Uとは異なる移動局のパスである。既述したように近傍に電力値が大の干渉パスが存在すると干渉が発生するため、図1の指向性制御システムでは、干渉パスCから角度差が最も大きいパスAを希望パスとして選択する。図5のパス選択方法は、上り回線で基地局と高速通信を行う移動局が複数あり、また複数のパスを用いて通信を行う場合に有効である。図5において、AとBの間にはA及びBと同一の移動局のパスがあってもよく、U以外の移動局のパスがCの他に複数あってもよい。
図6及び図7は、下り回線の指向性制御システムにおける希望パスの選択方法について示した図である。既述したように、CDMA下り回線では各移動局に対応する拡散符号が直交及び同期している。このため下り回線では、干渉信号となるのは自局のマルチパスであり、マルチパスによる複数パスが存在するとパス間で非同期となり、干渉の原因となる。
このためアダプティブアレイアンテナでは、マルチパス方向のアンテナ利得を低減することでマルチパスによる干渉を低減させる必要があるが、マルチパスが送信パス方向の近傍の角度方向にある場合には、マルチパスのアンテナ利得の低減は困難であり、また送信パスの両側にマルチパスがある場合には、送信パスのアンテナ利得が下がり、干渉が大きくなるという問題点があった。
図6のパス選択方法では、移動局が一つしか存在しないとき、選択対象のパスの中で両端にあるパスA1及びA2のうち、その隣接するパスC又はDから最も離れているパスを希望パス、すなわち送信パスとして選択する。例えばパスA1とパスDの角度差がa、パスA2とパスCの角度差がbであるとすれば、a>bのときにはA1を、a<bのときにはA2を選択する。尚、基地局は指向性アンテナであるため、限定された範囲の中で端を定義しているが、無指向性の場合には、ユーザの存在範囲に近い角度幅の中で端を定義する。
図6において、パスCやDを送信パスとすると、パスの左側にも右側にも干渉を与える。しかしA1かA2を選択することで、右側又は左側の一方だけマルチパスの干渉を受けることになり、さらにマルチパスから最も離れた方を選択することで、マルチパスの利得の低減をしやすくすることができる。図6のパス選択方法は、下り回線で一つの移動局が複数のパスを用いて高速通信を行っており、パス同士が角度的に近接している場合に有効である。図6において、CとDの間に複数のパスがあってもよく、またCとDは同一のパスであってもよい。
また図7において、A1及びA2は角度によるパス選択を行う角度範囲の端のパスであり、Eは上記角度範囲内にあるパスであり、EはA1及びA2とは移動局が異なるパスである。またA1とEの角度差はa、A2とEの角度差はbであり、a<bである。大きな電力を持つ干渉元の中で端にあるパスのうち、隣接したパスとの角度差が小さく、且つその隣接しているパスが他の移動局のパスである場合、端のパスを送信パスとして選択すると隣接パスへの干渉低減効果が小さいため、隣接パスの中に大電力の移動局の信号が含まれることになり、これは干渉信号となる。
ここで隣接パスを送信パスに選択すると、その隣接パスを持つ移動局と端の移動局の信号とは同期しているため干渉元にならない。また、端のパスとその隣接パスを送信パスとすることによって、例えばA1とEを送信パスに選択した場合には、A1とEのアンテナ指向性は右端方向にある干渉方向への利得を低減する。このためA2が受ける干渉は小さくなる。しかしA2とEを送信パスとすると、A1とEの角度差が小さいため、Eの指向性パターンはA1方向でも大きな利得となっており、A2はA1による干渉の影響を受けることになる。したがって送信パスとしてA1及びEを選択することで、送信パス自身のアンテナ利得の低減を避けることができ、アンテナの干渉低減効果を向上できる。
図7のパス選択方法は、下り回線で複数の移動局が高速通信を行っており、移動局のパス同士が近接している場合に有効である。図7のパス選択方法は、A1とA2が同一の移動局でないとき、すなわちEがマルチパスの場合でも適用できる。また図7のパス選択方法では、他の移動局のパスが角度範囲内に複数あってもよく、この場合には右端又は左端とのパスとの角度差が最も小さいパスと当該端のパスとを送信パスとして選択する。
複数のユーザの移動局との通信を行っている場合、パス選択部は、最初に2ユーザ分の希望パスを選択されたパスに与える干渉が抑えられるように選択し、次に選択した希望パスと他のユーザのパスから新たな希望パスを同様に選択していく動作を繰り返し行う。
図7のパス選択方法を細かく分類した2ユーザ以上で適用する希望パスの選択方法について、図8を用いて説明する。図8は、本発明の指向性制御システムにおける最初の2ユーザ分の希望パスの選択方法について示した図である。抜き出された高速通信パスのうち、両端の2パス、すなわち全4パスに着目する。図8(a)に示すように、左端の2パスをL1とL2、右端の2パスをR1とR2とする。図8では、説明を簡便にするために、パス間の距離を角度差として表している。また、隣接した2本の矢印が同じ種類の場合は同一の移動局のパスであり、異なる場合は異なる移動局のパスであることを示している。パス選択部は、L1とL2、R1とR2が同一の移動局のパスであるか否かの確認及びパス間の角度差を認知して、希望パスを選択する。以下場合分けして説明する。
L1とL2、R1とR2が同一の移動局のパスであり、L1とR1が同一の移動局のパスでないとき(図8(b))、パス選択部は、L1及びR1を希望パスとして選択する。
L1とL2が同一の移動局のパスであり、R1とR2が同一の移動局のパスでないとき(図8(c))、パス選択部は、R1及びR2を希望パスとして選択する。
L1とL2が同一の移動局のパスでなく、R1とR2が同一の移動局のパスであるとき(図8(d))、パス選択部は、L1及びL2を希望パスとして選択する。
L1とL2が同一の移動局のパスでなく、R1とR2が同一の移動局のパスでなく、R1とR2の角度差aがL1とL2の角度差bより小さい場合(図8(e))、パス選択部は、L1及びL2を希望パスとして選択する。
L1とL2が同一の移動局のパスでなく、R1とR2が同一の移動局のパスでなく、R1とR2の角度差aがL1とL2の角度差bより大きい場合(図8(f))、パス選択部は、R1及びR2を希望パスとして選択する。
パス選択部は図8(b)〜(f)の5つのパターンにしたがって、まず2つの移動局の希望パスを選択する。移動局が3つ以上ある場合には、選択された希望パスを有する移動局のマルチパスから離れたパスを希望パスとする。移動局が3つの場合における希望パスの選択方法について、図9を用いて説明する。図9は、移動局が3つの場合における希望パスの選択方法について示した図である。符号及び図の表示については、図8と同じである。
図9において、図8(b)のパターンにより、既にL1及びR2が希望パスとして選択されているとする。L1とL2、R1とR2はそれぞれ同じ移動局のパスであるため、L2、R1はマルチパスとなる。ここで他の移動局のパスA、Bが検出されていた場合、BとL2の角度差をα、AとR1の角度差をβとすると、パス選択部はα<βのときにAを、α>βのときにBを希望パスとして選択する。以後、パス選択部は、図9に示した選択方法によって残りの移動局のパスから希望パスの選択を行う。
本発明の指向性制御システムは、上述した希望パスの選択方法によって、複数の移動局に対して平均的に干渉を低減することができる。また、希望パスの選択パターンが図8(b)〜(f)に当てはまらない場合には、パス選択部は、検出したパスのうち、最大の電力値となるパスを希望パスとして選択する。同一レベルのパスがある場合には、先行波を選択する。
上述したパス選択方法において、到来角度で最適なパスであっても電力値が小さい、すなわち伝播路減衰が大きければ干渉信号の電力値が大きくなる場合があり、また電力値で最適なパスであっても、近傍にほぼ電力値が等しい干渉信号がある場合があり、いずれも希望パスとして最適とはいえない。このためパス選択部では、上述した到来角度によるパス選択方法及び従来の最大電力値が最大となるパスを選択する方法を並行して行い、到来角度によるパス選択方法で選択されたパスと最大電力値のパスとの電力差が規定値以上の場合には、最大電力値となるパスを希望パスとして選択する。規定値以下の場合には、到来角度によるパス選択方法によって選択されたパスを、該当するパスがない場合には、最大電力値となるパスを希望パスとする。
発明者は本発明の指向性制御システムを用いて高速2ユーザ3パスの通信環境で2つの方法によるパス選択のシミュレーションを行っており、到来角度によって選択されたパスが最大電力値のパスより4dB減衰している場合では到来角度による選択パスを、5dB以上減衰している場合では最大電力値による選択パスを希望パスとすることで送信特性が向上することを確認している。上述した希望パスの選択方法によって、本発明の指向性制御システムは、干渉除去効果を向上でき、且つ希望パス方向の利得を維持することができる。
発明者は、図2の指向性制御システムを用いて上述したパス選択による干渉除去効果を調べるべくシミュレーションを行った。シミュレーションにあたり、4倍拡散の高速通信の移動局のみが存在するものとした。また、移動局とパスの数は2ユーザ3パスで各パスは同一レベル、各移動局は120度セクタ内に一様に分布しているものとし、遅延波(マルチパス)は先行波の±5度以内に一様に分布しているものとした。また、アンテナの条件としては、アンテナ素子は半波長間隔に6素子直線アレイの配置とし、120度セクタアンテナ正面方向での逆拡散前SN比が0dBとなる送信電力を基準値0dBとし、送信電力の上限値を35dBとした。以上の環境下で、4000回移動局の配置を変更してビーム制御法として以下に示すウエイト制御アルゴリズムを用いて、上述したパス選択による干渉除去のシミュレーションを行った。
ここでシミュレーションで用いたウエイト制御部24におけるウエイト制御アルゴリズムの例を以下に説明する。ウエイト制御には様々な方法が知られているが、ここでは推定角度を用いたウエイト制御方法を実施した。本例におけるウエイト制御部24では、受信データ処理部において推定された各パスの到来角度と、回線の周波数に基づいて、パス毎にアレイ応答ベクトルの演算を行う。次にウエイト制御部24は、決定した各パスのアレイ応答ベクトルと、各パスの信号の電力値に基づいて、各パスのウエイトを計算する。
具体的な計算方法であるが、ウエイト制御部24では、まず、ウエイトの相関行列Rxxを求める。計算式は
となる。(5)式において、Viはi番目のアンテナで受信した信号のアレイ応答ベクトル、Piはi番目のアンテナにおける電力値として想定する値、Pnは熱雑音電力、“T”は転置、Iは単位行列を表している。
次にウエイト制御部24では、(5)式で求めた相関行列を用いて、各パスのウエイトを算出する。k番目のアンテナで受信した信号に対するウエイトWkは
となる。ウエイト制御部24は(6)式を用いて各アンテナに対するウエイトを算出し、各アンテナに対応する乗算器に出力する。
上述したウエイトの算出方法では、各パスのアレイ応答ベクトルと想定電力(Pi/Pn)から相関行列を計算しており、想定電力が大きいほど希望パスのごく近傍にある遅延パス方向への指向性を低減できる。シミュレーションでは、想定電力は30dBとした。(5)式において、シグマ部分は全ユーザパスの加算とせずに高速ユーザパスの加算のみとすることで、移動局との高速通信における干渉を低減する。
この制御によって、希望パス方向のアンテナ利得を向上し、干渉パス方向のアンテナ利得を減少するよう、アレイ応答ベクトルを決定し且つウエイトを算出することができる。尚、ウエイト制御部24で採用するウエイト制御アルゴリズムは、他のアルゴリズムを用いてもよい。上り回線では、LMS(Least Mean Square)アルゴリズムを用いることが一般的である。LMSについては、L.C.Godara、“Application of Antenna Arrays to Mobile Communications,Part2:Beam-Forming and Direction-of-Arrival Considerations,"Proc.IEEE、vol85、no.8、pp.1195-1245、Aug.1997中に詳しい。
上記シミュレーションによる干渉除去の結果は図4に示す通りである。図4は従来及び図2の指向性制御システムによる総送信電力値の累積度数分布図である。ここで総送信電力とは、基地局から各移動局に送信する電力の総和のことであり、総送信電力が小さいほど他のセルまで含めた全体的な干渉が小さくなることが知られている。図4において、横軸は総送信電力値(単位dB)を、縦軸は対応する総送信電力値となる確率を表している。
図4の累積度数分布図では、左側に行くほど小さい送信電力値で多くの移動局を収容できることを示すものであり、従来の先行波(×印)よりも、本発明におけるパス選択(菱形印)の方が小さい送信電力値で済む確率が高く、多くの移動局を収容できることが明らかである。また、SINRを満たさない移動局の割合、すなわち総送信電力が送信電力の上限値(35dB)以上となる移動局の割合は、先行波では11.7%、本発明のパス選択では0.98%となり、本発明の指向性制御システムによって干渉除去効果が向上することが示された。
図1の指向性制御システムによれば、各アンテナにおいて受信された信号からパスを検出し、検出されたパスの電力値又は到来角度のうち少なくとも一方に基づいて希望パスを選択し、パス選択結果に基づいたウエイトを生成し、当該信号に乗算して総和を求めて受信信号とすることによって、上り回線において最適な希望パスを選択でき、従来よりも干渉除去効果を向上できる効果がある。特にパスの電力値又は到来角度のうち少なくとも一方に基づいて希望パスを選択することによって、多様な干渉条件に対応して最も干渉の影響を受けない希望パスを選択することができるため、干渉除去効果を向上でき、上り回線における受信特性を向上できる。
また、基地局では低速通信の移動局も通信対象とする場合がある。一般に低速伝送端末の拡散率は高く、マルチパス干渉による特性劣化が発生しても、RAKE合成を行うことによって通信特性の向上が期待できる。つまり低速通信の場合には、干渉信号が近傍に存在してもそれほど特性は劣化しない。このためパス選択部では、上述した角度に依存したパス選択は干渉除去効果を向上させる必要のある高速データ伝送を行う移動局に限定し、低速通信を行う移動局については、最大電力値となるパスを希望パスとして選択することで、低速通信の移動局のパス選択にかかる処理時間及び負荷を低減でき、アンテナの通信特性を向上できる。
したがって、図1の指向性制御システムでは、上述した希望パスの選択方法を高速データ通信を行う移動局に限定し、低速通信の移動局については、最大電力値となるパスを希望パスとして選択することで、低速通信の移動局のパス選択にかかる処理時間及び負荷を低減できる効果がある。
また、上述した希望パスの選択方法において、到来角度によるパス選択方法で選択されたパスと最大電力値のパスとの電力差が規定値以上の場合には、最大電力値となるパスを希望パスとして選択し、規定値以下の場合には、到来角度によるパス選択方法によって選択されたパスを、該当するパスがない場合には、最大電力値となるパスを希望パスとすることで、干渉除去効果を向上でき、且つ希望パス方向の利得を維持できる効果がある。
図2の指向性制御システムによれば、各アンテナにおいて受信された信号からパスを検出し、検出されたパスの電力値又は到来角度のうち少なくとも一方に基づいて希望パスを選択し、パス選択結果に基づいたウエイトを生成し、各アンテナから送信する信号に対応するウエイトを乗算して送信信号として出力することによって、下り回線において最適な希望パスを選択でき、送信信号の送信電力を低減でき、通信を行う他の移動局への送信電力も低減できるため、基地局におけるユーザの収容数を増加できる効果がある。また、干渉除去効果を向上でき、下り回線における送信特性を向上できる効果がある。特に下り回線では希望パスのマルチパスのみが干渉信号となり、他の移動局からの信号が全て干渉信号となる上り回線と比較して、パス選択による効果が大きい。
また、図2の指向性制御システムにおいて、上述した希望パスの選択方法を高速データ通信を行う移動局に限定し、低速通信の移動局については、最大電力値となるパスを希望パスとして選択することで、低速通信の移動局のパス選択にかかる処理時間及び負荷を低減でき、基地局から低速通信の移動局への送信電力を低減できる効果がある。
また、上述した希望パスの選択方法において、到来角度によるパス選択方法で選択されたパスと最大電力値のパスとの電力差が規定値以上の場合には、最大電力値となるパスを希望パスとして選択し、規定値以下の場合には、到来角度によるパス選択方法によって選択されたパスを、該当するパスがない場合には、最大電力値となるパスを希望パスとすることで、干渉除去効果を向上でき、且つ希望パス方向の利得を維持できる効果がある。
フェージングによる電力値の変動を考慮すると、下り回線と上り回線とではフェージング変動が異なっており、特に下り回線の方がフェージングによる変動量が大きい。このような点から、図2の指向性制御システムでは、フェージング変動時には最適なパスが変動するため、フェージングによって発生した瞬時電力でパスの選択を誤らないよう、長期間の平均電力を取ってパス選択を行うことが望ましい。
また、アダプティブアレイアンテナでは通常、基地局の立ち上げ時等移動局との通信を開始する際に上述した希望パスの選択を行うが、希望パスは通信を開始した時に決めたパスで固定する必要はなく、例えば図1又は図2の指向性制御システムにおいて、通信の状況によって変化する最適なパスをパス選択部で定期的に選ぶことで、希望パスを変更するようにしてもよい。このような構成にすることで、高速データ通信の通信状況の変化に対応して干渉除去効果を高めることができ、高品質の通信特性を保つことができる効果がある。
また、図1及び図2の指向性制御システムにおいて、パス選択部で選択された最適なパスであってもフェージング等の伝搬路状況により、特性が劣化することがある。アダプティブアレイアンテナにおいて、例えば通信が強制切断されるほどの長時間の間、所要SINRを満たさなかったり、もしくは送信電力制御の最大電力で数スロット間送信しても所要SINRを満たさないといったような通信特性の品質が明らかに劣化した場合に、選択パスを電力測定部で計測された電力値の大きいパスから順に切り替えるようにしてもよい。このような構成にすることで、高速データ通信の通信状況の変化に対応して干渉除去効果を高めることができ、高品質の通信特性を保つことができる効果がある。
また、本発明の実施の形態に係るアダプティブアレイアンテナ指向性制御システムは、CDMAだけでなく、基地局間で通信を行って端末位置情報のやりとりを行うことによって他の無線通信方式においても適用でき、上述した効果を奏するものである。
(発明の効果)本発明によれば、無線基地局に設けられたアダプティブアレイアンテナの指向性を制御し、アダプティブアレイアンテナを構成する複数のアンテナ素子で受信された移動局からの信号に対し、各アンテナ素子に対応したウエイトを持たせて、移動局からの信号を受信するのに最適な受信希望パス又は移動局への信号を送信するのに最適な送信希望パスへの干渉を低減するアダプティブアレイアンテナ指向性制御システムであって、各アンテナ素子で受信された信号からパスを検出し、検出されたパス毎に電力値及びアンテナ素子への到来角度を算出し、検出されたパスのうち電力値又は到来角度のうち少なくとも一方に基づいて受信希望パス又は送信希望パスを選択すると共に、送信希望パス又は受信希望パスへの干渉を低減するウエイトをアンテナ素子毎に算出し、各アンテナ素子で送信する信号又は受信した信号に対して、対応するウエイトを乗算するアダプティブアレイアンテナ指向性制御システムとしたことにより、移動局との通信状況に対応して受信希望パスの選択を行い、アダプティブアレイアンテナの干渉除去効果を向上できる効果がある。
11,21…アンテナ、 12,22…RF受信機、 13,23…受信データ処理部、 14,24…ウエイト制御部、 15,25,343…乗算器、16,345…加算器、 26…RF送信機、 27…分配器、 34,133,233…角度推定部、 131,231…パス検出部、 132,232…電力測定部、 134,234…パス選択部、 342…シンボル検出部、 346=角度演算部
Claims (1)
- 無線基地局に設けられたアダプティブアレイアンテナの指向性を制御し、前記アダプティブアレイアンテナを構成する複数のアンテナ素子で受信された移動局からの信号に対し、前記各アンテナ素子に対応したウエイトを持たせて、前記移動局からの信号を受信するのに最適な受信希望パス又は前記移動局への信号を送信するのに最適な送信希望パスへの干渉を低減するアダプティブアレイアンテナ指向性制御システムであって、
前記各アンテナ素子で受信された信号からパスを検出し、前記検出されたパス毎に電力値及び到来角度を算出し、前記検出されたパスのうち前記電力値又は前記到来角度のうち少なくとも一方に基づいて前記受信希望パス又は送信希望パスを選択すると共に、前記送信希望パス又は前記受信希望パスへの干渉を低減するウエイトを前記アンテナ素子毎に算出し、前記各アンテナ素子で送信する信号又は受信した信号に対して、対応する前記ウエイトを乗算することを特徴とするアダプティブアレイアンテナ指向性制御システム。
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- 2004-07-01 JP JP2004195806A patent/JP2004357315A/ja active Pending
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