JP2004354959A - チオール化合物を用いてなる光学製品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】下記一般式(1)で表されるチオール化合物(a1)を含むA成分と、イソシアネート基および/またはイソチオシアネート基を有する化合物(b1)、ビニル基を有する化合物(b2)、並びにビニル基とイソシアネート基および/またはイソチオシアネート基とを有する化合物(b3)のうちの少なくとも一種を含むB成分とを含有する重合性組成物を重合させて得られた重合体からなる光学製品である。
【化1】
(式中、Rは、アルカン残基、シクロアルカン残基、ヘテロ原子が酸素、窒素もしくはイオウ原子であるヘテロ環残基または芳香族環残基を示し、各残基は置換基を有していてもよい。)
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明はチオール化合物を用いてなる光学製品に関する。さらに詳しくは、本発明の光学製品は、屈折率とアッベ数が共に高く、かつ耐熱性、耐候性、透明性などに優れており、プラスチックレンズ、プリズム、光ファイバー、情報記録用基板、赤外吸収用フィルター、着色フィルターなどに好ましく用いられる光学製品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
プラスチックはガラスに比較し軽量で割れにくく染色が容易であるため、近年、レンズ等の各種光学用途に使用されている。そして、光学用プラスチック材料としては、ポリ(ジエチレングリコールビスアリルカーボネート) (CR−39)やポリ(メチルメタクリレート)が、一般的に用いられている。しかしながら、これらのプラスチックは1.50以下の屈折率を有するため、それらを例えばレンズ材料に用いた場合、度数が強くなるほどレンズが厚くなり、軽量を長所とするプラスチックの優位性が損なわれてしまう。特に強度の凹レンズは、レンズ周辺が肉厚となり、複屈折や色収差が生じることから好ましくない。さらに眼鏡用途において肉厚のレンズは、審美性を悪くする傾向にある。肉薄のレンズを得るためには、材料の屈折率を高めることが効果的である。一般的にガラスやプラスチックは、屈折率の増加に伴いアッベ数が減少し、その結果、それらの色収差は増加する。従って、高い屈折率とアッベ数を兼ね備えたプラスチック材料が望まれている。
【0003】
このような性能を有するプラスチック材料としては、例えば(1) 分子内に臭素を有するポリオールとポリイソシアネートとの重付加により得られるポリウレタン(特許文献1)、(2) ポリチオールとポリイソシアネートとの重付加により得られるポリチオウレタン(特許文献2、特許文献3)が提案されている。そして、特に(2)のポリチオウレタンの原料となるポリチオールとして、イオウ原子の含有率を高めた分岐鎖(特許文献4、特許文献3)や、イオウ原子を高めるためジチアン構造を導入したポリチオール(特許文献5、特許文献6)が提案されている。さらに、(3) エピスルフィドを重合官能基としたアルキルスルフィドの重合体が提案されている(特許文献7、特許文献8)。
しかしながら、上記(1)のポリウレタンは、屈折率がわずかに改良されているものの、アッベ数が低く、かつ耐光性に劣る上、比重が高く、軽量性が損なわれるなどの欠点を有している。また(2)のポリチオウレタンのうち、原料のポリチオールして高イオウ含有率のポリチオールを用いて得られたポリチオウレタンは、例えば屈折率が1.60〜1.68程度に高められているが、同等の屈折率を有する光学用無機ガラスに比べてアッベ数が低く、さらにアッベ数を高めなければならないという課題を有している。さらに、(3)のアルキルスルフィド重合体は、一例としてアッベ数が36において、屈折率が1.70に高められており、この重合体を用いて得られたレンズは、著しく肉薄、軽量化されているが、屈折率とアッベ数を同時に、さらに高めたプラスチック材料が望まれている。
【0004】
【特許文献1】
特開昭58−164615号公報
【特許文献2】
特公平4−58489号公報
【特許文献3】
特開平5−148340号公報
【特許文献4】
特開平2−270859号公報
【特許文献5】
特公平6−5323号公報
【特許文献6】
特開平7−118390号公報
【特許文献7】
特開平9−72580号公報
【特許文献8】
特開平9−110979号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記の課題を解決するためなされたもので、屈折率とアッベ数が共に高く、かつ耐熱性、透明性なども優れる光学製品を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、複数のイオウ原子を含む環状チオールモノマーを必須成分として用いて得られた重合体が高屈折率、高アッベ数、耐熱性、透明性などの特性を有し、光学製品として好適に用いられることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表されるチオール化合物(a1)を含むA成分と、イソシアネート基および/またはイソチオシアネート基を有する化合物(b1)、ビニル基を有する化合物(b2)、並びにビニル基とイソシアネート基および/またはイソチオシアネート基とを有する化合物(b3)のうちの少なくとも一種を含むB成分とを含有する重合性組成物を重合させて得られた重合体からなる光学製品を提供するものである。
【0008】
【化2】
(式中、Rは、炭素数1〜3のアルカン残基、炭素数4〜7のシクロアルカン残基、ヘテロ原子が酸素、窒素もしくはイオウ原子である炭素数3〜7のヘテロ環残基または炭素数6〜10の芳香族環残基を示し、各残基は置換基を有していてもよい。)
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の光学製品は、一般式(1)で表されるチオール化合物(a1)を含むA成分と、イソ(チオ)シアネート基を有する化合物(b1)、ビニル基を有する化合物(b2)、およびビニル基とイソ(チオ)シアネート基とを有する化合物(b3)のうちの少なくとも一種を含むB成分とを含有する重合性組成物を重合させて得られた重合体からなる。なお、イソ(チオ)シアネートとはイソシアネートとイソチオシアネートの両者を意味する。
【0010】
本発明の光学製品で用いるA成分における下記一般式(1)で表されるチオール化合物は、二つのイオウ原子を含む環状構造の隣り合う炭素原子に二つのメルカプト基が結合したものである。
【化3】
一般式(1)式中、Rは、炭素数1〜3のアルカン残基、炭素数4〜7のシクロアルカン残基、ヘテロ原子が酸素、窒素もしくはイオウ原子である炭素数3〜7のヘテロ環残基または炭素数6〜10の芳香族環残基を示し、各残基は置換基を有していてもよい。
【0011】
前記Rのアルカン残基としては、例えば、メタン残基、エタン残基、n−プロパン残基、i−プロパン残基等が挙げられ、メタン残基、エタン残基が好ましい。
前記Rのシクロアルカン残基としては、例えば、シクロブタン残基、シクロペンタン残基、シクロヘキサン残基等が挙げられ、シクロペンタン残基、シクロヘキサン残基が好ましい。
前記Rのヘテロ環残基としては、例えば、1,3−ジチオラン残基、1,3−ジチアン残基、1,4−ジチアン残基等が挙げられ、1,3−ジチオラン残基、1,4−ジチアン残基が好ましい。
前記Rの芳香族環残基としては、例えば、ベンゼン環残基、ナフタレン環残基、等が挙げられ、ベンゼン環残基が好ましい。
また、これらの各残基の置換基としては、臭素、塩素、ヨウ素等のハロゲン原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基等のアルキル基、フェニル基、ナフチル基等の芳香族基等が挙げられる。
【0012】
一般式(1)のチオール化合物は原子屈折の高いイオウ原子を高い割合で含有しておりこのチオール化合物を用いて得られた重合体の屈折率を大きく高める。また、重合官能基である末端チオール基は重合体主鎖へのイオウ原子の導入に寄与するため、このチオール化合物を用いて得られた重合体の屈折率をさらに高める。通常、アモルファス材料のアッベ数はその屈折率の増加とともに減少する傾向にある。イオウ原子を高い割合で含有するポリマーの場合、イオウ原子の電子共鳴が顕著となりアッベ数の大きな低下がよく観測されるが、このチオール化合物ではそのようなことがない。屈折率増加の別の要因として分子容の減少が挙げられ、ポリマーの場合、高い架橋密度や強い分子間力によりそれが発現される。一般式(1)のチオール化合物は複数の重合官能基を有しており、その重合体は特に前者の効果により屈折率が高められる。
【0013】
本発明で用いる一般式(1)で表されるチオール化合物としては、4,5−ジメルカプト−1,3−ジチオラン、2,3−ジメルカプト−1,4−ジチアン、3,4−ジメルカプト−ビシクロ[4.3.0]−2,5,7,9−テトラチアノナン、3,4−ジメルカプト−ビシクロ[4.4.0]−2,5,7,10−テトラチアデカン、2,3−ジメルカプト−1,4−ベンゾジチアン等が挙げられ、これらの化合物は、メルカプト基についてシス−,トランス−異性体を有する場合がある。
【0014】
この一般式(1)で表されるチオール化合物は、グリオキサールと、メルカプト基を2つ以上有するチオール化合物が反応してなる、下記一般式(2)で表わされる本発明の中間体から誘導されてなると好ましい。
【化4】
一般式(2)中、Rの示す基および具体例は前記と同じである。
【0015】
また、本発明で用いる一般式(1)で表されるチオール化合物は、中間体として上記一般式(2)で表わされる中間体を経由して製造されたものが好ましい。前記メルカプト基を2つ以上有するチオール化合物は、一般的には同じ炭素に2つ以上のメルカプト基を持つ化合物、または隣接した炭素に2つ以上のメルカプト基を持つ化合物を示し、具体的には、メタンジチオール、エタンジチオール、エタントリチオール、トリメルカプトプロパン、1,3−ジチオラン−4,5−ジチオール、1,4−ジチアン−2,3−ジチオール、1,2−ジメルカプトベンゼン、1,2−ジメルカプトナフタレン、3,4−ジメルカプトナフタレン等が挙げられる。
【0016】
前記一般式(1)で表されるチオール化合物の代表的な製造法として、4,5−ジメルカプト−1,3−ジチオランの合成を例として下記スキーム1に示す。
スキーム1
【化5】
※式中AcはCH3CO−、Etはエチル基である。
【0017】
スキーム1の製造工程を以下に説明する。グリオキサール水溶液にメタンジチオールを加え、水浴で冷しながら0.5〜5時間程度攪拌反応させる。反応が終わった後、水を除去して4,5−ジヒドロキシ−1,3−ジチオランの白色結晶を得、得られた4,5−ジヒドロキシ−1,3−ジチオランを氷浴で冷しながらピリジン中無水酢酸と反応させることにより、4,5−ジアセトキシ−1,3−ジチオランの白色粉末を得る。4,5−ジアセトキシ−1,3−ジチオランの粉末をチオ酢酸中に溶かし、(C2H5) 2O・BF3、p−トルエンスルフォン酸等を触媒とし、氷浴で冷しながら反応させることにより、4,5−ジチオアセトキシ−1,3−ジチオランの淡黄色のオイルを得、次にエタノールとクロロホルムの混合溶媒中で濃硫酸を用い、室温〜70℃で2〜20時間反応させることにより、目的物の4,5−ジメルカプト−1,3−ジチオランを得る。
【0018】
また、前記A成分中には、重合体の物性等を適宜改良するために、一般式(1)で表されるチオール化合物(a1)以外に、一分子内にメルカプト基および/またはヒドロキシル基を有し、かつ一分子内のメルカプト基とヒドロキシル基の総数が2以上の化合物(a2)を一種もしくは二種以上含んでいてもよい。この化合物(a2)としては、具体的にはトリメチロールプロパン、1,2−エタンジチオール、1,3−プロパンジチオール、テトラキスメルカプトメチルメタン、ペンタエリスリトールテトラキスメルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキスメルカプトアセテート、2−メルカプトエタノール、2,3−ジメルカプトプロパノール、1,2−ジヒドロキシ−3−メルカプトプロパン、4−メルカプトフェノール、1,2−ベンゼンジチオール、1,3−ベンゼンジチオール、1,4−ベンゼンジチオール、1,3,5−ベンゼントリチオール、1,2−ジメルカプトメチルベンゼン、1,3−ジメルカプトメチルベンゼン、1,4−ジメルカプトメチルベンゼン、1,3,5−トリメルカプトメチルベンゼン、トルエン−3,4−ジチオール、4,4’−ジヒドロキシフェニルスルフィド等が挙げられる。
なお一般式(1)で表されるチオール化合物(a1)の使用量は、状況に応じて適宜選定すればよいが、通常はA成分の総量に対して、50〜100mol%であり、好ましくは80〜100mol%である。
【0019】
前記チオール化合物(a1)は重合相手のB成分として、好ましくはイソ(チオ)シアネート基を有する化合物(b1)、さらに好ましくは一分子内に二つ以上のイソ(チオ)シアネート基を有する化合物と重合させることで、高屈折率、高アッベ数、透明且つ耐熱性がよいレンズ材料を与える。
このようなイソ(チオ)シアネート基含有化合物としては、具体的にはキシリレンジイソ(チオ)シアネート、3,3’−ジクロロジフェニル−4,4’−ジイソ(チオ)シアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソ(チオ)シアネート、ヘキサメチレンジイソ(チオ)シアネート、2,2’,5,5’−テトラクロロジフェニル−4,4’−ジイソ(チオ)シアネート、トリレンジイソ(チオ)シアネート等が挙げられる。さらに、一つ以上のシクロアルカン環を有するものとして、ビス(イソ(チオ)シアネートメチル)シクロヘキサン、ビス(4−イソ(チオ)シアネートシクロヘキシル)メタン、ビス(4−イソ(チオ)シアネートメチルシクロヘキシル)メタン、シクロヘキサンジイソ(チオ)シアネート、イソフォロンジイソ(チオ)シアネート、2,5−ビス(イソ(チオ)シアネートメチル)ビシクロ[2.2.2]オクタン、2,5−ビス(イソ(チオ)シアネートメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2−イソ(チオ)シアネートメチル−3−(3−イソ(チオ)シアネートプロピル)−5−イソ(チオ)シアネートメチル−ビシクロ[2.2.1]−ヘプタン、2−イソ(チオ)シアネートメチル−3−(3−イソ(チオ)シアネートプロピル)−6−イソ(チオ)シアネートメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2−イソ(チオ)シアネートメチル−2−[3−イソ(チオ)シアネートプロピル]−5−イソ(チオ)シアネートメチル−ビシクロ[2.2.1]−ヘプタン、2−イソ(チオ)シアネートメチル−2−(3−イソ(チオ)シアネートプロピル)−6−イソ(チオ)シアネートメチル−ビシクロ[2.2.1]−ヘプタン、2−イソ(チオ)シアネートメチル−3−(3−イソ(チオ)シアネートプロピル)−5−(2−イソ(チオ)シアネートエチル)−ビシクロ[2.2.1]−ヘプタン、2−イソ(チオ)シアネートメチル−3−(3−イソ(チオ)シアネートプロピル)−6−(2−イソ(チオ)シアネートエチル)−ビシクロ[2.2.1]−ヘプタン、2−イソ(チオ)シアネートメチル−2−(3−イソ(チオ)シアネートプロピル)−5−(2−イソ(チオ)シアネートエチル)−ビシクロ[2.2.1]−ヘプタン、2−イソ(チオ)シアネートメチル−2−(3−イソ(チオ)シアネートプロピル)−6−(2−イソ(チオ)シアネートエチル)−ビシクロ[2.2.1]−ヘプタンなどが挙げられる。また、2,5−ジイソシアネート−1,4−ジチアン、イソシアヌル酸トリスイソシアネートヘキシルエステル等を用いることができる。これらは単独もしくは二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
また、前記イソ(チオ)シアネートの成分中には、重合体の物性等を適宜改良するためにビニル基を有する化合物(b2)成分を共重合させることも出来る。具体的には、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、一分子内に少なくとも二つ以上の(メタ)アクリロキシ基を含むウレタン変性(メタ)アクリレート、エポキシ変性(メタ)アクリレート、ポリエステル変性(メタ)アクリレート等が挙げられこれらは単独もしくは二種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、上記(メタ)アクリレートはアクリレートとメタクリレートの両者を意味し、(メタ)アクリロキシ基は、アクリロキシ基とメタクリロキシ基の両者を意味する。
【0021】
また、ビニル基とイソ(チオ)シアネート基とを有する化合物(b3)成分としては、具体的には、2−(メタ)アクリロキシエチルイソ(チオ)シアネート、(メタ)アクリロイルイソ(チオ)シアネート等が挙げられこれらは単独もしくは二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
さらに、これらの成分にC成分として、エピスルフィド化合物を添加して光学製品を作製することも可能である。そのエピスルフィド化合物としては、ビス(β−エピチオプロピルチオ)メタン、1,2−ビス(β−エピチオプロピルチオ)エタン、1,3−ビス(β−エピチオプロピルチオ)プロパン、1,2−ビス(β−エピチオプロピルチオ)プロパン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−2−(β−エピチオプロピルチオメチル)プロパン、1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ブタン、1,3−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ブタン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−3−(β−エピチオプロピルチオメチル)ブタン、1,5−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ペンタン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−4−(β−エピチオプロピルチオメチル)ペンタン、1,6−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ヘキサン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−5−(β−エピチオプロピルチオメチル)ヘキサン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−2−〔(2−β−エピチオプロピルチオエチル)チオ〕エタン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−2−[〔2−(2−β−エピチオプロピルチオエチル)チオエチル〕チオ]エタン等の鎖状有機化合物等;テトラキス(β−エピチオプロピルチオメチル)メタン、1,1,1−トリス(β−エピチオプロピルチオメチル)プロパン、1,5−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2−(β−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアペンタン、1,5−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアペンタン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−2,2−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−4−チアヘキサン、1,5,6−トリス(β−エピチオプロピルチオ)−4−(β−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアヘキサン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4−(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4,5ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2,4,5−トリス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2,5−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,9−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−5−(β−エピチオプロピルチオメチル)−5−〔(2−β−エピチオプロピルチオエチル)チオメチル〕−3,7−ジチアノナン、1,10−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−5,6−ビス〔(2−β−エピチオプロピルチオエチル)チオ〕−3,6,9−トリチアデカン、1,11−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4,8−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン、1,11−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−5,7−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン、1,11−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−5,7−〔(2−β−エピチオプロピルチオエチル)チオメチル〕−3,6,9−トリチアウンデカン、1,11−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4,7−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン等の分岐状有機化合物およびこれらの化合物のエピスルフィド基の水素の少なくとも1個がメチル基で置換された化合物等;1,3および1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオ)シクロヘキサン、1,3および1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)シクロヘキサン、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)シクロヘキシル〕メタン、2,2−ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)シクロヘキシル〕プロパン、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)シクロヘキシル〕スルフィド、2,5−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス(β−エピチオプロピルチオエチルチオメチル)−1,4−ジチアン等の環状脂肪族や複素環式有機化合物およびこれらの化合物のエピスルフィド基の水素の少なくとも1個がメチル基で置換された化合物;1,3および1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,3および1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル〕メタン、2,2−ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル〕プロパン、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル〕スルフォン、4,4’−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ビフェニル等の芳香族有機化合物およびこれらの化合物のエピスルフィド基の水素の少なくとも1個がメチル基で置換された化合物等が挙げられ、これらは単独もしくは二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
さらに、本発明の光学製品の耐候性改良のため、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色防止剤、蛍光染料などの添加剤を適宜加えてもよい。また、重合反応性向上のための触媒を適宜使用してもよく、例えばメルカプト基とビニル基との反応性向上のためには有機過酸化物、アゾ化合物や塩基性触媒が効果的であり、メルカプト基やヒドロキシル基と、イソ(チオ)シアネート基との反応性向上のためには有機スズ化合物、アミン化合物などが効果的である。
【0024】
本発明の光学製品は、例えば以下に示す方法に従って製造することができる。まず、上記重合性組成物および必要に応じて用いられる各種添加剤を含む均一な組成物を調製する。次いで、この組成物を公知の注型重合法を用いて、ガラス製または金属製のモールドと樹脂性のガスケットを組み合わせた型の中に注入し、加熱して硬化させる。この際、成形後の樹脂の取り出しを容易にするためにあらかじめモールドを離型処理したり、この組成物に離型剤を混合してもよい。重合温度は、使用する化合物により異なるが、一般には−20〜+150℃で、重合時間は0.5〜72時間程度である。重合後離型された重合体は通常の分散染料を用い、水もしくは有機溶媒中で容易に染色できる。この際さらに染色を容易にするために、染料分散液にキャリアーを加えてもよく、また加熱しても良い。このようにして得られた光学製品は、これに限定されるものではないが、プラスチックレンズ等の光学製品として特に好ましく用いられる。
【0025】
このようなプラスチックレンズは、染料を用いて染色処理を行うことができ、また、耐擦傷性向上のため、有機ケイ素化合物またはアクリル化合物に酸化スズ、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化チタン等の微粒子状無機物等を有するコーティング液を用いて硬化被膜をプラスチックレンズ上に形成してもよい。また、耐衝撃性を向上させるためにポリウレタンを主成分とするプライマー層をプラスチックレンズ上に形成してもよい。
さらに、反射防止の性能を付与するために、前記硬化被膜上に、酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化タンタル等の無機物質からなる反射防止膜を形成してもよい。また、撥水性向上のため、前記反射防止膜上にフッ素原子を含有する有機ケイ素化合物からなる撥水膜を反射防止膜上に形成しても良い。
また、このプラスチックレンズを眼鏡用として使用する場合には、紫外線から樹脂または目を保護する目的で紫外線吸収剤、赤外線から目を保護する目的で赤外線吸収剤を添加しても良い。
さらに、樹脂の美観を維持または向上させる目的で、酸化防止剤の添加や少量の色素を用いてブルーイングをすることもできる。
【0026】
【実施例】
次に、本発明を実施例により、さらに具体的に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。なお、参考例で得られたチオール化合物の物性、および実施例、比較例で得られた重合体の物性は以下に示す方法にしたがって測定した。
【0027】
<チオール化合物の物性>
屈折率 (nD)、アッベ数 (νD): アタゴ社製アッベ屈折率計DR−M4を用いて25℃にて測定した。
<重合体の物性>
1)屈折率 (nD)、アッベ数 (νD): 上記と同様にして測定した。
2)外 観: 肉眼により観察した。
3)耐熱性: リガク社製TMA装置により0.5 mmφのピンを用いて98 mN (10gf)の荷重でTMA測定を行ない、10℃/minの昇温で得られたチャートのピーク温度により評価した。
4)透明性: 日立社製紫外分光器UV−330を用いて550 nmにおける光線透過率により評価した。
【0028】
合成例1
4,5 −ジメルカプト− 1,3 −ジチオランの合成
以下のスキームにより、4,5−ジメルカプト−1,3−ジチオランを合成した。
【化6】
※式中AcはCH3CO−、Etはエチル基である。
【0029】
(1)4,5−ジヒドロキシ−1,3−ジチオランの合成
グリオキサールの40重量%水溶液(18.1g、0.124mol)にメタンジチオール(9.98g、0.124mol)を加え、水浴で冷しながら1時間攪拌反応させた。反応が終わった後、水を除去すると4,5−ジヒドロキシ−1,3−ジチオランが白色結晶で得られた(17.5g)。得られた4,5−ジヒドロキシ−1,3−ジチオランを精製せずに後の工程に用いた。
以下にこの化合物の構造特定のための分析結果を示す。
1H−NMR δ(CDCl3):5.62[2H, d, J=8.4Hz,−CH(OH)S−]、4.02(2H,s, −SCH2S−)、2.36(2H,d,J=8.4Hz,−OH)
(2)4,5−ジアセトキシ−1,3−ジチオランの合成
(1)の工程で得られた4,5−ジヒドロキシ−1,3−ジチオラン(17.5g)を含むピリジン(20ml)中に氷浴で冷しながら無水酢酸(27.9g、10%過剰)を1時間かけて滴下した。攪拌しながらさらに1時間反応させた。室温で減圧蒸留により大部分のピリジンと酢酸を除去したのち、氷とジクロロメタン(40ml)を加え、相分離させた。5重量%の硫酸水溶液で洗いピリジンを完全に除去した。その後、純水でジクロロメタン溶液を数回洗い、硫酸マグネシウムを加え乾燥させた。ジクロロメタンを蒸留で除去することにより、4,5−ジアセトキシ−1,3−ジチオランの白色粉末(28g)を得た。得られた4,5−ジアセトキシ−1,3−ジチオランの白色粉末を精製せずに後工程に用いた。
以下にこの化合物の構造特定のための分析結果を示す。
1H−NMR δ(CDCl3):6.48[2H,s,−CH(OAc)S−]、4.11(2H,s,−SCH2S−)、2.12(6H,s,CH3COO)
(3)4,5−ジチオアセトキシ−1,3−ジチオランの合成
(2)の工程で得られた4,5−ジアセトキシル−1,3−ジチオランの白色粉末(12.79g、57.5mmol)をチオ酢酸(11.8g、0.155mol、35%過剰)中に溶かし、氷浴で冷しながらBF3エーテル溶液(0.45ml)をゆっくり加えた。氷温で3時間反応した後室温でさらに8時間攪拌した。反応液に40mlのジクロロメタンを加え、20重量%の炭酸カリウム溶液で洗浄し、乾燥させた後、溶媒を除去することにより、4,5−ジチオアセトキシ−1,3−ジチオランの淡黄色のオイルを(13.2g、収率90.4%)得た。得られた4,5−ジチオアセトキシ−1,3−ジチオランを精製せずに次の工程に用いた。
以下にこの化合物の構造特定のための分析結果を示す。
1H−NMR δ(CDCl3):5.41[2H,s,−CH(SAc)S−]、4.09(2H,s,−SCH2S−)、2.35(6H,s,CH3COS)
(4)4,5−ジメルカプト−1,3−ジチオランの合成
(3)の工程で得られた4,5−ジチオアセトキシ−1,3−ジチオラン(13.2g、51.9mmol)をエタノール(30ml)とクロロホルム(30ml)の混合溶媒中98%の濃硫酸(1.44g)を用い、60℃で25時間反応させた。得られた反応液を純水で洗い中性にした後、硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を除去し、蒸留することにより、目的物の4,5−ジメルカプト−1,3−ジチオランのシス−とトランス−の異性体の混合物を(4.27g、収率48.3%)得た。沸点は、78〜80℃/0.67Paであった。
1H−NMR δ(CDCl3):4.59−4.64[2H,m,−CH(SH)S−]、4.09(2H,s,−SCH2S−)、2.60−2.65(6H,m,SH)
【0030】
合成例2
3,4 −ジメルカプト−ビシクロ [4.3.0] − 2,5,7,9 −テトラチアノナンの合成
以下のスキームにより、3,4−ジメルカプト−ビシクロ[4.3.0]−2,5,7,9−テトラチアノナンを合成した。
【化7】
【0031】
(1)3,4−ジヒドロキシ−ビシクロ[4.3.0]−2,5,7,9−テトラチアノナンの合成
グリオキサールの40重量%水溶液(18.1g、0.124mol)に4,5−ジメルカプト−1,3−ジチオラン(21.08g、0.124mol)を加え、水浴で冷しながら1時間攪拌反応させた。反応が終わった後、水を除去すると3,4−ジヒドロキシ−ビシクロ[4.3.0]−2,5,7,9−テトラチアノナンが白色結晶で得られた(28.03g、収率99%)。得られた3,4−ジヒドロキシ−ビシクロ[4.3.0]−2,5,7,9−テトラチアノナンの結晶を精製せずに後の工程に用いた。
以下にこの化合物の構造特定のための分析結果を示す。
1H−NMR δ(C5D5N):5.56[2H,s, −CH(OH)S−]、5.23[2H,s, −SCHS−] 、3.93(2H,s, −SCH2S−)
(2)3,4−ジアセトキシ−ビシクロ[4.3.0]−2,5,7,9−テトラチアノナンの合成
(1)の工程で得られた3,4−ジヒドロキシ−ビシクロ[4.3.0]−2,5,7,9−テトラチアノナン(28.03g)を含むピリジン(20ml)中に氷浴で冷しながら無水酢酸(27.6g、10%過剰)を1時間かけて滴下した。攪拌しながらさらに1時間反応させた。室温で減圧蒸留により大部分のピリジンと酢酸を除去したのち、氷とジクロロメタン(40ml)を加え、相分離させた。5重量%の硫酸水溶液で洗いピリジンを完全に除去した。その後、純水でジクロロメタン溶液を数回洗い、硫酸マグネシウムを加え乾燥させた。ジクロロメタンを蒸留で除去することにより、3,4−ジアセトキシ−ビシクロ[4.3.0]−2,5,7,9−テトラチアノナンの白色粉末(38.17g、収率99.5%)を得た。得られた3,4−ジアセトキシ−ビシクロ[4.3.0]−2,5,7,9−テトラチアノナンの粉末を精製せずに後工程に用いた。
以下にこの化合物の構造特定のための分析結果を示す。
1H−NMR δ(CDCl3):5.82[2H,s, −CH(OAc)S−]、5.20[2H,s, −SCHS−] 、3.95(2H,s, −SCH2S−)、2.20(6H,s,CH3CO−)
(3)3,4−ジチオアセトキシ−ビシクロ[4.3.0]−2,5,7,9−テトラチアノナンの合成
(2)の工程で得られた3,4−ジアセトキシ−ビシクロ[4.3.0]−2,5,7,9−テトラチアノナンの粉末(38.17g、0.122mol)をチオ酢酸(23.25g、0.305mol、25%過剰)中に溶かし、氷浴で冷しながらBF3エーテル溶液(0.45ml)をゆっくり加えた。氷温で3時間反応した後室温でさらに8時間攪拌した。反応液に40mlのジクロロメタンを加え、20重量%の炭酸カリウム溶液で洗浄し、乾燥させた後、溶媒を除去することにより、3,4−ジチオアセトキシ−ビシクロ[4.3.0]−2,5,7,9−テトラチアノナンの淡黄色のオイルを(16.82g、収率40.0%)得た。得られた3,4−ジチオアセトキシ−ビシクロ[4.3.0]−2,5,7,9−テトラチアノナンを精製せずに次の工程に用いた。
以下にこの化合物の構造特定のための分析結果を示す。
1H−NMR δ(CDCl3):5.01[2H,s, −CH(SAc)S−]、4.95[2H,s, −SCHS−] 、3.94(2H,s, −SCH2S−)、2.39(6H,s,CH3CO−)
(4)3,4−ジメルカプト−ビシクロ[4.3.0]−2,5,7,9−テトラチアノナンの合成
(3)の工程で得られた3,4−ジチオアセトキシ−ビシクロ[4.3.0]−2,5,7,9−テトラチアノナン(16.82g、48.8mmol)をエタノール(30ml)とクロロホルム(30ml)の混合溶媒中98%の濃硫酸(1.44g)を用い、60℃で25時間反応させた。得られた反応液を純水で洗い中性にした後、硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を除去し、蒸留することにより、目的物の3,4−ジメルカプト−ビシクロ[4.3.0]−2,5,7,9−テトラチアノナンのシス−とトランス−の異性体の混合物を(10.79g、収率85.0%)得た。沸点は、105〜110℃/0.67Paであった。
以下にこの化合物の構造特定のための分析結果を示す。
1H−NMR δ(CDCl3):4.1〜4.3[4H,m, −CH(SH)S−]、4.85[2H,s, −SCHS−] 、4.60[2H,s, −SCHS−] 、3.94(4H,s, −SCH2S−)、2.6〜2.8(4H,m,−SH)
【0032】
合成例3
2,3 −ジメルカプト− 1,4 −ベンゾジチアンの合成
以下のスキームにより、2,3−ジメルカプト−1,4−ベンゾジチアンを合成した。
【化8】
【0033】
(1)2,3−ジヒドロキシ−1,4−ベンゾジチアンの合成
グリオキサールの40重量%水溶液(18.1g、0.124mol)に1,2−ジメルカプトベンゼン(17.61g、0.124mol)を加え、水浴で冷しながら1時間攪拌反応させた。反応が終わった後、水を除去すると2,3−ジヒドロキシ−1,4−ベンゾジチアンが白色結晶で得られた(24.59g、収率99.0%)。得られた2,3−ジヒドロキシ−1,4−ベンゾジチアンの結晶を精製せずに後の工程に用いた。
(2)2,3−ジアセトキシ−1,4−ベンゾジチアンの合成
(1)の工程で得られた2,3−ジヒドロキシ−1,4−ベンゾジチアン(21.64g)を含むピリジン(20ml)中に氷浴で冷しながら無水酢酸(25.1g、10%過剰)を1時間かけて滴下した。攪拌しながらさらに1時間反応させた。室温で減圧蒸留により大部分のピリジンと酢酸を除去したのち、氷とジクロロメタン(40ml)を加え、相分離させた。5重量%の硫酸水溶液で洗いピリジンを完全に除去した。その後、純水でジクロロメタン溶液を数回洗い、硫酸マグネシウムを加え乾燥させた。ジクロロメタンを蒸留で除去することにより、2,3−ジアセトキシ−1,4−ベンゾジチアンの白色粉末(34.8g、収率99.0%)を得た。得られた2,3−ジアセトキシ−1,4−ベンゾジチアンの粉末を精製せずに後工程に用いた。
(3)2,3−ジチオアセトキシ−1,4−ベンゾジチアンの合成
(2)の工程で得られた2,3−ジアセトキシ−1,4−ベンゾジチアンの粉末(34.8g、0.122mol)をチオ酢酸(24.15g、0.317mol、30%過剰)中に溶かし、氷浴で冷しながらBF3エーテル溶液(0.45ml)をゆっくり加えた。氷温で3時間反応した後室温でさらに8時間攪拌した。反応液に40mlのジクロロメタンを加え、20重量%の炭酸カリウム溶液で洗浄し、乾燥させた後、溶媒を除去することにより、2,3−ジチオアセトキシ−1,4−ベンゾジチアンの淡黄色のオイルを(17.49g、収率45%)得た。得られた2,3−ジチオアセトキシ−1,4−ベンゾジチアンを精製せずに次の工程に用いた。
(4)2,3−ジメルカプト−1,4−ベンゾジチアンの合成
(3)の工程で得られた2,3−ジチオアセトキシ−1,4−ベンゾジチアン(17.49g、54.9mmol)をエタノール(30ml)とクロロホルム(30ml)の混合溶媒中98%の濃硫酸(1.44g)を用い、60℃で25時間反応させた。得られた反応液を純水で洗い中性にした後、硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を除去し、蒸留することにより、目的物の2,3−ジメルカプト−1,4−ベンゾジチアンのシス−とトランス−の異性体の混合物を(10.5g、収率82.3%)得た。沸点は、97〜100℃/0.67Paであった。
【0034】
実施例1
重合体からなる光学製品の製造
合成例1で得られた4,5−ジメルカプト−1,3−ジチオラン(T1) (0.2mol)、2,5−ジイソシアネートメチル−1,4−ジチアン(BIMD) (0.2mol)およびジブチルチンジクロライド(DBTDCL) (1×10−5mol)の混合物を室温にて均一に攪拌し、二枚のレンズ成形用ガラス型に注入し、60℃で10時間、その後90℃で5時間、さらに120℃で3時間加熱重合させてレンズ形状の重合体を得た。得られた重合体の諸物性を表1に示す。表1から、本実施例1で得られた重合体は無色透明であり、屈折率(nD) は1.70と非常に高く、アッベ数 (νD)も32と高いものであり、耐熱性 (116℃)および透明性 (90%)に優れたものであった。従って、得られた重合体は光学製品として好適であった。
【0035】
実施例2〜9
重合体からなる光学製品の製造
一般式(1)で表されるチオール化合物と、イソ(チオ)シアネート基含有化合物および重合触媒を表1に示すように使用して、重合条件を適宜変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、レンズ形状の重合体を得た。これらの重合体の諸物性を表1に示す。表1から、本実施例2〜9で得られた重合体も無色透明であり、屈折率 (nD)は1.59〜1.70と非常に高く、アッベ数 (νD)も31〜47と高いものであり、耐熱性 (80〜116℃)、透明性(90〜94%)も優れたものであった。従って、得られた重合体は光学製品として好適であった。
【0036】
比較例1
重合体からなる光学製品の製造
表1に示すようにペンタエリスリトールテトラキスメルカプトプロピオネート (PETMA) 0.1mol、m−キシリレンジイソシアネート (XDI) 0.2molおよびジブチルチンジクロライド (DBTDCL) 1.0×10−4molの混合物を均一に撹拌し、二枚のレンズ成形用ガラス型に注入し、50℃で10時間、その後60℃で5時間、さらに120℃で3時間加熱重合させてレンズ形状の重合体を得た。得られた重合体の諸物性を表1に示す。表1から、本比較例1の重合体は無色で透明性(92%)は良かったが、nD/νDが1.59/36と屈折率が低く、耐熱性も86℃と劣っていた。
【0037】
比較例2
重合体からなる光学製品の製造
表1に示すように1,3,5−トリメルカプトベンゼン(TMB)0.2mol、m−キシリレンジイソシアネート (XDI) 0.3molおよびジブチルチンジクロライド (DBTDCL) 1.5×10−4molの混合物を均一に撹拌し、二枚のレンズ成形用ガラス型に注入し、50℃で10時間、その後60℃で5時間、さらに120℃で3時間加熱重合させてレンズ形状の重合体を得た。得られた重合体の諸物性を表1に示す。表1から、本比較例2の重合体は耐熱性 (94%)は良かったが、nD/νDが1.67/28と屈折率は高いがアッベ数は低く、透明性は81%と劣っていた。
【0038】
【表1】
【0039】
(表1の略号)
T1: 4,5−ジメルカプト−1,3−ジチオラン
T2: 2,3−ジメルカプト−1,4−ジチアン
BIMD:2,5−ジイソシアネートメチル−1,4−ジチアン
XDI: m−キシリレンジイソシアネート
NBDI:ノルボルネンジイソシアネート
HXDI: 1,3−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン
HXR: イソシアヌル酸トリスイソシアナートヘキシルエステル
PETMA: ペンタエリスリトールテトラキスメルカプトプロピオネート
TMB: 1,3,5−トリメルカプトベンゼン
DBTDCL: ジブチルチンジクロライド
【0040】
【発明の効果】
本発明の一般式(1)で表されるチオール化合物を用いてなる光学製品は、屈折率、アッベ数が高く、耐熱性、耐候性、透明性に優れている。このため、眼鏡レンズ、カメラレンズ等のレンズ、プリズム、光ファイバー、光ディスク、磁気ディスク等に用いられる記録媒体基板、着色フィルター、赤外線吸収フィルター等の光学製品として好適である。
Claims (5)
- 前記A成分が、一分子内にメルカプト基および/またはヒドロキシル基を有し、かつ一分子内のメルカプト基とヒドロキシル基の総数が2以上の化合物(a2)を含む請求項1に記載の光学製品。
- 前記B成分が、少なくともイソシアネート基および/またはイソチオシアネート基を有する化合物(b1)を含み、該(b1)成分が一分子内に二つ以上のイソシアネート基および/またはイソチオシアネート基を有する化合物である請求項1に記載の光学製品。
- 前記A成分およびB成分に、さらにエピスルフィド化合物を添加した重合体を用いる請求項1に記載の光学製品。
- 前記光学製品がプラスチックレンズである請求項1〜4のいずれかに記載の光学製品。
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