JP2004354301A - レーダー装置及び類似装置並びに受信データの書込方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】受信データを座標変換して画像メモリ中に記憶している時に、これと並行して、乗算を行うことで画像データのレベルを小さくしていくことにより、従来のような調整を行わなくてもクラッターの中から物標の映像を容易に識別表示することのできる、レーダー装置及び類似装置並びに受信データの書込方法を提供する。
【解決手段】スイープ回転に伴って受信データを順次極座標から直交座標に座標変換して記憶する画像メモリ6と、前記座標変換によるデータの書き込みがFIRST検出時にだけ行われるようFIRSTを検出するFIRST検出部8と、FIRST以外の期間に画像メモリ6上に乗算領域指定部14で指定された領域の画素データに所定の乗算係数を乗算していく乗算データ発生部9と、を備える。
【選択図】 図2
【解決手段】スイープ回転に伴って受信データを順次極座標から直交座標に座標変換して記憶する画像メモリ6と、前記座標変換によるデータの書き込みがFIRST検出時にだけ行われるようFIRSTを検出するFIRST検出部8と、FIRST以外の期間に画像メモリ6上に乗算領域指定部14で指定された領域の画素データに所定の乗算係数を乗算していく乗算データ発生部9と、を備える。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーダーやソナー等、例えば、極座標系で受信される探知信号を全周囲に渡り直交座標で配列された画像メモリに記憶した後、ラスター走査方式の表示器に表示する装置に関し、特に、クラッターの中から物標の映像を識別可能に表示することのできるレーダー装置及びソナー等の類似装置並びに受信データの書込方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図1は、従来のレーダー装置の構成図を示している。
【0003】
レーダーアンテナ1は、ある周期で水平面を回転しながら別の周期でパルス状電波を発射すると同時に、物標で反射した電波を受信する。受信回路2はレーダーアンテナ1による受信信号を検波し増幅する。A/Dコンバータ3は、受信回路2で得られたアナログ信号をデジタル信号に変換する。一次メモリ4は、A/D変換された1スイープ分のデータを実時間で記憶し、次の送信により得られるデータが再び書き込まれるまでに、その1スイープ分のデータを後段の画像メモリ6に書き込む際のバッファとして用いられる。
【0004】
座標変換部5は、中心座標を開始番地として、中心から周辺に向かって、たとえば船首方向を基準としてアンテナの角度θと、一次メモリ4の読み出し位置とから、対応する直交座標で配列された画像メモリの画素を示す番地を作成する。
座標変換部5は、具体的には次式を実現するハードウェアにより構成される。
X=Xs+r・sinθ
Y=Ys+r・cosθ
ただし、
X、Y:画像メモリの画素を示す番地
Xs、Ys:中心番地
r:中心からの距離
θ:座標変換の角度
表示用の画像メモリ6は、アンテナ1回転で得られる受信データを記憶する容量を持つ。図示しない表示制御部によって表示器7がラスター走査され、ラスター走査に同期して画像メモリ6の内容が高速で読み出され、受信信号の強度に応じた輝度または色で識別された画像が表示される。
【0005】
以上のような構成で、海面反射や雨雪反射等のクラッターの中から物標の映像を識別表示するためには、GAIN、STC、FTC等の調整を適正に行う必要がある。特に、クラッターとの信号強度に差が少ない場合には微妙な調整が要求され、調整の前後での映像の違いを比較しながら調整量を加減し、最適値を探す操作を行う。
【0006】
ところが、上記の従来の装置では、映像の更新はアンテナの方向のスイープライン上でのみ行われるため、調整結果の確認は、回転するスイープラインが観測点の方向に来た時以降となり、且つ、アンテナ1回転に要する時間は通常2、3秒を要するために、調整操作が完了するまでに時間がかかるという問題があった。また、別の物標で最適な調整値が異なる場合にはその都度調整する必要があり、その結果、頻繁な調整操作を繰り返しながら映像観測するということになり、操作性、応答性の点で非常に使いづらいという問題があった。このような問題は、レーダーに限らずスイープ回転に伴って受信データを順次極座標から直交座標に座標変換して記憶する類似装置(例えば、ソナー)においても同様であった。
【0007】
そこで、本発明の出願人は、下記特許文献1の出願により、受信データを座標変換して画像メモリ中に記憶する動作と並行して、減算を行うことで画像データのレベルを小さくしていくことにより、従来のような調整を行わなくてもクラッターの中から物標の映像を容易に識別表示することのできる、レーダー装置及び類似装置並びに受信データの書込方法を提案した(特許文献1参照)。
【0008】
図14は、特許文献1で開示されている従来のレーダー装置の構成図を示している。この従来のレーダー装置は、図1に示す従来のレーダー装置に対し、FIRST検出部8、減算データ発生部9、セレクタ10(セレクタA)、セレクタ11(セレクタB)、減算タイミング発生部12、減算領域アドレス発生部13、減算領域指定部14、減算数値指定部15が追加される。
【0009】
特許文献1は、スイープ回転に伴って受信データを順次極座標から直交座標に座標変換して記憶する画像メモリと、前記座標変換によるデータの書き込みと並行して画像メモリ上に設定された領域の画素データから一定値を減算していく減算手段と、を備えてなることを特徴とする。
【0010】
上記減算手段は、設定された領域の画素データから一定値を減算していくことにより、スイープによって描画される画像とは別に、設定された領域内の画像を徐々に消えていくように見せることができる。従って、同領域内の画像については、従来の装置においてスイープ1回転の間にゲインを徐々に小さくしていく調整を行ったのと同じ観測が可能になる。これによって、手動による微妙な調整を行わなくてもクラッターの中から物標の映像を容易に識別表示させることが可能になる。
【0011】
【特許文献1】
特開2000−65920公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本来、ゲイン調整は受信信号に定数を乗算する同等の処理である。
すなわち
ゲイン調整後出力値 = 受信信号・α (α:定数)
となる。
これに対し従来の減算処理は、(例えば受信回路内の)ゲイン調整部の後段に減算処理部を配置していることから、
となる。
【0013】
上記式から分かるように、ゲイン調整が乗算、つまり受信信号にαを乗じることによって行われているのに対し、減算処理は減算、つまりn ・βを減じることによって行われているので、減算処理による表示輝度の変化はゲイン調整と同等ではない。 特に、上記の特許文献1の装置では、減算を繰り返すことにより、エコーサイズが小さくなってしまい、本来表示すべき物標及びその周辺の映像を小さく表示してしまうという問題があった。
【0014】
図11(A)では、特許文献1の装置により減算を繰り返してゲインを連続的に変えた場合の受信信号と量子化後の画像データの様子が描かれている。同図は、減算しきい値L5以下の場合に、減算値1で減算する場合の減算処理実行時のデータの推移を描いているが、ゲインをG6に設定しておくと、全ての信号が減算しきい値L5以下となるから、減算領域内の画像全体を徐々に消していくことになる。
【0015】
この場合、エコーサイズ、つまり横軸方向の信号が、時間の経過と共に、徐々に小さくなっているのが分かる。減算処理においてはどのレベル画素に対しても減算量が一定であるため、エコーの大きさも不自然に変化する。このように、エコーサイズが小さくなると、時間が経つにつれて、表示している物標及びその周辺が小さくなってしまい、実際の物標周辺の映像と異なるものを表示しているので、見え方が不自然であり、さらには航海に支障をきたす可能性がある。
【0016】
本発明の目的は、受信データを座標変換して画像メモリ中に記憶する動作と並行して、乗算を行うことで画像データのレベルを変化させていくことにより、従来のような調整を行わなくてもクラッターの中から物標の映像を容易に識別表示することのできる、レーダー装置及び類似装置並びに受信データの書込方法を提供することにある。
【0017】
また、本発明の別の目的は、過去の物標からの信号ゲインを小さくする際、エコーサイズを小さくすることなく、従来の装置と比べて、クラッターの中から物標の映像を容易に識別表示することができ、見え方が自然なレーダー装置及び類似装置並びに受信データの書込方法を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、スイープ回転に伴って受信データを順次極座標から直交座標に座標変換して記憶する画像メモリと、前記座標変換によるデータの書き込みと並行して画像メモリ上に設定された領域の画素データに所定の乗算係数を乗算していく乗算手段と、を備えてなることを特徴とする。
【0019】
上記乗算手段は、設定された領域の画素データに所定の乗算係数を乗算していくことにより、スイープによって描画される画像とは別に、設定された領域内の画像を徐々に消えていく、あるいは浮き上がるように見せることができる等、同領域内の画像を徐々に変化させることができる。従って、上記乗算係数を1未満とすれば、同領域内の画像については、従来の装置においてスイープ1回転の間にゲインを徐々に小さくしていく調整を行ったのと同じ観測が可能になる。これによって、手動による微妙な調整を行わなくてもクラッターの中から物標の映像を容易に識別表示させることが可能になる。
【0020】
本発明では、「減算」ではなく「乗算」を行うことが重要な特徴点である。
【0021】
「減算」処理では、図11(A)に示すように、減算毎にエコーサイズが小さくなってしまうが、「乗算」処理では図11(B)又は(C)に示すように、乗算係数の乗算毎にエコーサイズが大きくは変化しない。
【0022】
実際は量子化の際の誤差によってS5、S6付近でエコーサイズが小さくなるが、この誤差は、図10で示すように、ゲインを連続的に変えた場合でも起こりうることなので、大きな問題ではない。
【0023】
請求項2の発明は、スイープの1周回内において前記座標変換時に画像メモリの画素に最初にアクセスする場合をFIRSTとして検出するFIRST検出手段を備え、前記乗算手段は、FIRST検出以外の時に乗算することを特徴とする。
【0024】
座標変換では、受信データは幾何学上、中心位置が密で、周辺ほど疎となり、中心付近ほど画像メモリの同一番地に多くの受信データが対応することになる。この場合、画像メモリの1つの画素に書き込むデータを複数の受信データから選択することになるが、単に上書きするのであれば最後のデータが書き込まれ、受信データの中から最大のデータを選んで書き込むのであれば、FIRST検出とMAX処理が行われる。FIRST検出とは、画像メモリの画素に対するアクセスがスイープ1周回内において最初であることを検出する動作であり、MAX処理とは、FIRST検出の時にその時の受信データをそのまま書き込み、FIRST検出でない時(即ち、2番目以降のアクセスの時)には、その時の受信データと既に書き込まれているデータとの大小比較をし、大きい方を書き込む動作である。このように、座標変換時に、受信データを1つの画素に対してそのまま上書きする方法やFIRST検出とMAX処理とで最大値データを書き込む方法があるが、いずれにしても、画像メモリ中の1つの画素に対しては1つのデータしか書き込むことができないから、1つの画素に1つのデータを書き込むという条件を満足するには最低1回アクセスすればよい。そこで、請求項2の発明では、FIRST検出時に画像メモリの画素にアクセスして受信データを書き込むようにする。そして、FIRST検出しない時には画像メモリに対する座標変換のアクセスを行わない。このようにすると、座標変換の期間内に画像メモリに対して座標変換のアクセスを行わない期間ができるから、この間に、乗算手段によって上記領域における画素データの乗算処理を行っていく。
【0025】
請求項3の発明は、スイープの1周回内において前記座標変換時に画像メモリの画素に最後にアクセスする場合をLASTとして検出するLAST検出手段を備え、前記乗算手段は、LAST検出以外の時に乗算することを特徴とする。
【0026】
この請求項3では、LAST検出時にのみ座標変換を行う。従って、1つの画素に対してLAST検出をしない座標変化の時には、乗算手段の動作が行われる。
【0027】
請求項4の発明は、前記領域を領域指定手段によって任意に指定できるようにしたものである。このようにすることで、例えば、カーソル等によって画面上の注目すべき領域を指定し、この領域内で物標の映像をクラッターの中から識別表示させることができる。また、スイープの回転が高速になるほどFIRSTアクセス期間やLASTアクセス期間の全体に占める割合が大きくなるために、結果的に上記領域全体をアクセスして乗算する期間が短くなって、画像の段階的消去を十分にできなくなるが、このような場合には、上記領域の面積を小さくして画面内を自由に移動することで対応することができる。
【0028】
請求項5の発明は、前記乗算係数を任意の固定値としたものである。任意の固定値を1未満にすることで、上記領域内の画像については、従来の装置においてスイープ1回転の間にゲインを徐々に小さくしていく調整を行ったのと同じ観測が可能になる。あるいは、任意の固定値を1より大きい値にすることで、上記領域内の画像については、従来の装置においてスイープ1回転の間にゲインを徐々に大きくしていく調整を行ったのと同じ観測が可能になる。
【0029】
【発明の実施の形態】
図2は、本発明の実施形態であるレーダー装置の構成図である。このレーダー装置は、図1に示す従来のレーダー装置に対し、FIRST検出部8、乗算データ発生部9、セレクタ10(セレクタA)、セレクタ11(セレクタB)、乗算タイミング発生部12、乗算領域アドレス発生部13、乗算領域指定部14、乗算数値指定部15が追加される。
【0030】
FIRST検出部8は、例えば、特公平3−11669号公報において詳細に述べられているような構成にある。即ち、通常のアクセス時においては、画像メモリ6に対するアドレスは、座標変換部5において、極座標においてのスイープ方向θと中心方向からの距離rに基づいて発生するが、スイープ1回転内において、このアドレスが初めて発生した場合、即ち画像メモリ6に画素が初めてアクセスされた場合を検出してFIRST信号を出力する。画像メモリ6内の画素が初めてアクセスされたかどうかは、座標変換部5の出力によって容易に知ることができる。
【0031】
乗算データ発生部9は、設定された領域の画素へのアクセス時にそのアクセスした画素データに所定の乗算係数を乗算した値を作成する。このデータは、再び同じ画素に書き込まれる。
【0032】
なお、この処理を乗算ワイパー処理と呼び、上記同じ画素に書き込まれる値を乗算ワイパー出力値と呼ぶ。さらに、この領域に対するアクセスを、以下乗算アクセスという。また、画像メモリ6上に設定される上記領域を乗算領域、乗算領域の画素データに乗算していく所定の乗算係数を乗算値、乗算を行うかどうかのしきい値を乗算しきい値という。
【0033】
特に、乗算値が固定の場合は、(例えば受信回路内の)ゲイン調整部の後段に乗算処理部を配置していることから、
となる。これはゲイン調整(αを乗じる処理)と乗算処理(γn を乗じる処理)は同等であることを示す。例えばγ<1として乗算処理をした場合、ゲインをαより小さくした時と同じ効果が得られ、乗算処理を1スキャン間に繰り返すことによってゲインを小さくしていった時の変化が見られる。
【0034】
図3は、乗算データ発生部9の構成図である。この乗算データ発生部9は、比較器9a、乗算器9b、セレクタ9cからなる。比較器9aは、乗算領域内の或る画素から読み出した読出データ(c)が、別に設定された乗算しきい値(a)未満かどうかを比較する。乗算器9bは、読出データ(c)から、別に設定された乗算値(b)を乗算する。比較器9aにおいて、c<aの場合、乗算器9bにおいて、d=b・cの乗算を行い、書込データdを得る。読出データ(c)が乗算しきい値(a)以上の場合には、読出データ(c)と同じデータを書込データ(d)とする。なお、乗算しきい値(a)と乗算値(b)は、乗算数値指定部15によって任意の値に指定することができる。
【0035】
セレクタ10は、画像メモリ6に書き込むデータを選択する部分で、通常アクセス時のFIRSTの時にのみ、一時メモリ4から読み出したデータを出力し、乗算アクセス時に(FIRST以外の時)は乗算データ発生部9で作成したデータを出力する。
【0036】
セレクタ11は、画像メモリ6に与えるアドレスを選択する部分で、通常アクセス時のFIRSTの場合にのみ座標変換部5で作成したアドレスを出力し、乗算アクセス時(FIRST以外の時)には乗算領域アドレス発生部13で作成したアドレスを出力する。
【0037】
乗算タイミング発生部12は、RクロックからFIRSTの期間を除いた期間でのみ動作する。Rクロックは、一次メモリ4に対する読み出しクロックである。すなわち、乗算アクセスがFIRST以外の期間に実行されるように、RクロックとFIRST信号に基づいて、RクロックからFIRSTの期間を除いた期間に、乗算アクセス用のクロックを発生する。この期間のクロックをR’とする。図4は、乗算タイミング発生部12の構成図、図5はタイミングチャート、図6は、乗算領域を示している。乗算タイミング発生部12は、乗算タイミング発生回路12aと、ゲート12bとからなり、ゲート12bにおいて、RクロックからFIRSTの期間を除いた期間を判定し、この期間内にR’クロックを発生するとともに、乗算タイミング発生回路12aにおいて乗算開始トリガからT1とT2を発生する。
【0038】
図6に示すように、乗算領域をX方向にA画素、Y方向にB画素の大きさの矩形領域とすると、T1は、R’クロックA回分の期間に等しく、T2はT1のB回分の期間に等しい。即ち、T1は乗算領域のX方向1行分の乗算期間であり、T2は乗算領域の全領域に対する乗算期間である。T2の終了後、再び乗算開始トリガを発生し、図5に示すタイミング発生動作が繰り返される。なお、図5から明らかなように、R’クロックは等間隔でないからT1も厳密には一定ではなく、同様にT2も一定ではない。
【0039】
乗算領域アドレス発生部13は、乗算アクセス時に、乗算アクセス用アドレスを発生する。図7に示すように、この乗算領域アドレス発生部13は、カウンタ13aと13bとからなる。カウンタ13aは、乗算領域指定部14から入力される乗算開始番地XsからX方向にR′クロック毎にXアドレスを進めていき、カウンタ13bは、乗算領域指定部14から入力する乗算開始アドレスYsからT1期間毎にYアドレスを進めていく。乗算開始番地XsからX方向にn回目、乗算開始番地YsからY方向にm行目のアクセス点の座標を(Xn、Ym)とすると、
Xn=Xs+n
Ym=Ys+m
ただし、
(Xs、Ys):乗算開始番地
となる。
【0040】
図8は、Xアドレス発生タイミングチャートとYアドレス発生タイミングチャートを示している。また、図9は、乗算領域でのアドレスの進み方を示している。
【0041】
乗算領域指定部14は、例えば、レーダー装置本体の操作部に設けられているトラックボールやカーソルキー等を含む入力部で構成され、表示画面上の任意の領域を乗算領域として指定することができる。また、乗算数値指定部15は、例えば、数式等を含む入力部で構成され、乗算データ発生部9に対して与える乗算しきい値や乗算値を任意の値に設定することができる。
【0042】
次に、上記のレーダー装置の動作について、所定の乗算係数が1未満の場合に関して説明する。
【0043】
この実施形態のレーダー装置では、画像メモリ6への書き込みが、FIRSTの時には通常アクセスによって、FIRSTの時でない時には乗算アクセスによってデータの書き込みが行われる。通常アクセスとは、一次メモリ4に記憶されている受信データを読み込む時のアクセスであり、乗算アクセスとは乗算データ発生部9の出力を書き込むアクセスである。今、受信データの或る座標変換サイクルにおいてFIRSTが検出されたとすると、その時の一次メモリ4の対応データが座標変換された画像メモリの位置に記憶される。次の座標変換サイクルでFIRSTが検出されなかった場合は、乗算アクセスとなり、乗算領域アドレス発生部13で発生した画像メモリの位置に乗算データ発生部9で出力されるデータが書き込まれる。この時の乗算データ発生部9で発生するデータは、当該アドレスの読出データから予め設定した乗算値を掛けた値である。従って、表示器7の表示画面上では、乗算データを画像メモリ上に書き込んだ直後にその位置の画像の輝度が低下する(輝度によって画像データの大きさを表す場合)。このように、画像メモリ6のデータの更新は、通常アクセスと乗算アクセスとによって順次行われていき、通常アクセスについては、スイープの回転にともなって得られる受信データによる更新が行われ、乗算アクセスについては、乗算領域指定部14で設定された乗算領域内でのデータの乗算更新が行われる。この結果、通常アクセスによりスイープライン上の画素が更新された後、再びスイープが1回転して同じ画素を更新するまでの間に、各画素についてゲインを連続的に下げる操作をしたと同じように、乗算領域における映像を順次消えていくように表示させることができる。
【0044】
図10、図11(B)及び(C)は、この状態について説明するための図である。図10は、仮にある画素についてゲインを連続的に下げた場合の受信信号と画像データを示している。また、図11は、乗算動作によって変化する画像データを示し、同図(B)はゲインが図10のG6の状態で、乗算しきい値に関係なく乗算処理をした場合を示し、同図(C)はゲインが図10のG6の状態で、レベルL5未満の信号にのみ乗算処理をした場合を示している。なお、この例では、量子化レベルがL5未満の場合に乗算されるよう乗算しきい値をL5に設定し、乗算値を1未満(0.71)に固定している。また、S0は通常アクセス後の画像、S1〜S6は乗算アクセス後の画像であって、数字は各段階を示している。 図11(B)では、乗算しきい値に関係なく乗算処理をしているので、乗算領域内の画像全体を徐々に消していくことができる。
【0045】
また、図11(C)では、最も大きなレベルは乗算しきい値L5以上であるから、この分を除くレベルの信号についてのみ乗算処理が行われる。したがって、レベルの強い画像を明確に表示でき、周囲のクラッター等の相対的に弱いレベルの画像は徐々に消していくことができる。
【0046】
なお、このような映像の変化中においても、クラッター中から物標の映像を識別できるようになる。クラッター中から物標の映像を識別できるようにするための適切なゲインの設定は状況により異なり、図11(B)が好ましいことも、図11(C)が好ましいこともある。
【0047】
図11(B)及び(C)のいずれの場合においても、乗算処理を実行すると、量子化の関係でエコーサイズ(横軸方向)は多少減少してしまうが、それでも特許文献1で開示されている減算処理を行った場合(S0→S4)に比べると、エコーサイズの減り方は少ない(S0→S6)ので、映像に悪影響を及ぼすことはない。減算ではなく、乗算を用いたことにより、クラッターによる信号レベルも、すぐには0に達せず、その結果、表示がより自然なものになる。
【0048】
なお、図2において、FIRST時にFIRST信号を受けてセレクタ10およびセレクタ11が、それぞれ一次メモリ4からの出力と座標変換部5からの出力を選択し、FIRST以外の時に乗算データ発生部9と乗算領域アドレス発生部13の出力をそれぞれ選択するとともに、乗算タイミング発生部12は、FIRST検出以外の期間にR’クロックによってT1、T2を発生して乗算領域アドレス発生部13に出力する。また、乗算領域指定部14による乗算開始アドレスXs、Ysの指定は任意の時に行うことができ、乗算数値指定部15による乗算しきい値と乗算値の設定も任意の時に行うことができる。
【0049】
以上の動作によって、例えば、図12に示すような表示を得ることができる。図の表示領域のうち、Aは雨を原因とするクラッター領域、Bは雨の中の物標、Cは乗算領域を示している。この例では、物標Bの輝度が図11(C)に示すような適当な大きさに設定されている。即ち、画面全体が1回更新される間に乗算領域C内の物標Bを除く領域の映像が徐々に輝度低下していく。また、乗算領域指定部14で、この乗算領域Cを任意の位置に移動可能なため、通常アクセスによって画像データの更新中にこの乗算領域Cを移動すれば、移動した新たな位置で同じような順次消える映像を得ることができる。
【0050】
乗算領域Cの大きさ、即ち、乗算領域Cの全体をアクセスする周期T2は、スイープ1回転の周期Tと関係する。即ち、スイープ回転周期Tが速くなれば、スイープ1回転中に確保できる乗算期間はそれだけ短くなるから、周期T2の繰り返し回数も少なくなる。今、スイープ回転周期=T、乗算領域Cでの全ての画素データの値が0になるまでの(図3の書込データ(d)が0になる)乗算回数=N、乗算領域C全体を1回アクセスするに要する時間=tとすると、
T=N・t
が成立するよう、乗算領域Cの大きさが設定されることが理想的である。なぜなら、乗算される途中経過を表示器上で観測する余裕があることが必要であるからである。しかし、上記の式が成立しない場合には効果がないわけではなく、実際には、これにできるだけ近くなるような大きさの乗算領域に設定すればよい。従って、スイープの回転、すなわちアンテナの回転が高速になるほど、観測のしやすさの点から乗算領域Cの大きさが制限されるが、乗算領域の大きさに制限が生じた場合には、これを表示画面内で移動させることにより、乗算領域を大きくした場合と同等の効果を得ることが可能である。
【0051】
上記実施形態では、FIRST時に通常アクセスを行い、FIRST以外の時に乗算アクセスを行うようにしたが、画像メモリの画素への最後のアクセスをLASTとして検出し、このLAST時に通常アクセスを行い、LAST以外の時に乗算アクセスを行うようにしてもよい。
【0052】
図13は、本発明の他の実施形態を示す。図2と相違する点は、Wデータ発生部20(スキャン相関用)、画像メモリ(スキャン相関用)、座標変換部22(スキャン相関用)、FIRST検出部23(スキャン相関用)を新たに追加した点である。
【0053】
スキャン相関処理は、連続したスイープ1回転毎の相関処理のことを言う。すなわち、連続したスイープ回転毎のデータ間(メモリ上のデータと新データ間)で相関処理を行う処理であり、通常アクセスにおいて、アンテナ1回転前の画像メモリ上のデータと、今回転で新たに得られたデータの両者から今回書き込むデータを、例えば平均処理等により決定する処理であって、従来から実施されている。このスキャン相関処理は、スイープ1回転毎に同一画素について1回のみ書き換える処理であるのに対し、乗算処理は画素データを常時乗算する処理であるから、同じ画像メモリを使用した場合、乗算処理とスキャン相関処理は両立出来ない。そこで、スキャン相関処理用のメモリを表示用画像メモリとは別に設け、前段でスキャン相関処理を実行し、スキャン相関処理した結果を表示用画像メモリに対する通常アクセス用の書込みデータとすることにより、スキャン相関処理と乗算処理を両立させることが出来る。図13は、そのための具体的な構成を示す図である。
【0054】
図13において、Wデータ発生部20は、スキャン相関処理用に設けられるセレクタであり、FIRST検出部23でFIRSTが検出されたときに一次メモリ4からの新データとスキャン相関用のために設けられた画像メモリ21のデータとを相関処理して、同画像メモリ21に再記憶する。また、そのデータはセレクタ10を介して表示用の画像メモリ6に記憶される。FIRSTでないときには、Wデータ発生部20は画像メモリ21から読み出したデータをそのまま出力する。したがって、画像メモリ21には、スキャン相関処理されたデータが記憶される。スキャン相関処理用の座標変換部22は、画像メモリ21の座標変換アアドレスを作成する。この座標変換部22を表示メモリ用の座標変換部5と別に設けているのは、スキャン相関用の画像メモリ21では真運動座標モードで記憶しているのに対し、表示用の画像メモリ6では相対運動モードのヘッドアップ、コースアップ、ノースアップ、または、真運動座標モードの中から選ばれたモードで記憶するようにしているからである。なお、図示はしていないが、コンパス、船速情報が各々の座標変換部5、22に入力するようになっている。
【0055】
以上の構成により、スキャン相関処理されたデータを表示用の画像メモリ6に対する通常アクセス用の書込みデータとすることが出来る。
【0056】
同様に、スイープ1回転中に同じ画素に複数のデータが対応したときに、これらのデータの内最大値を選択して再書込みするMAX処理を前段で行い、その結果を表示用の画像メモリ6に対する通常アクセス用の書込みデータとすることにより、MAX処理と乗算処理を行うことが出来る。
【0057】
なお、上記では、乗算係数(=乗算値(b))を1未満としたが、1より大きな値、例えば1.05等に設定することで、微小信号を時間の経過とともに浮かび上がらせるように表示することも可能である。乗算値(b)が1より大きい固定値の場合は、データの発散を防ぐため乗算しきい値(a)だけでなく、もう一つの乗算上限値(z)が必要となる。そして、読出データ(c)<乗算しきい値(a)の場合には、d=b・cの乗算を行い、乗算した結果dが乗算上限値(z)を超える場合には、d=zとする。乗算上限値(z)も、乗算しきい値(a)や乗算値(b)と同様に、乗算数値指定部15によって、任意の値に指定することができる。
【0058】
また、上記乗算係数を乗算毎に複数の候補から選択して変化させることも可能である。
【0059】
乗算値(b)を乗算毎に変化させる方法としては、乗算の回数をカウントして、回数に応じた乗算値(b)を乗算することも可能であるし、あるいは、読出データ(c)の値に応じて、乗算値(b)を変えることも可能である。
【0060】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、設定された領域の画素データに所定の乗算係数を乗算していくことにより、設定された領域内のゲインを常時調整しながら観測したと同じ効果が得られるから、手動による微妙な調整を行わなくてもクラッターの中から物標の映像を容易に識別表示させることが可能になる。
【0061】
請求項2の発明によれば、画像メモリに対して座標変換のアクセスを行わない期間に、乗算手段によって上記領域における画素データの乗算処理を行っていくため、スイープ回転による画像表示を行いながら、設定された領域において順次消えていく、あるいは浮かび上がってくる画像を表示させることが出来る。
【0062】
請求項3の発明によれば、LAST検出手段を設けた場合においても乗算処理を行うことが出来、また、請求項4の発明によれば、前記領域を領域指定手段によって任意に指定できるから、例えば、カーソル等によって画面上の注目すべき領域を指定し、この領域内で物標の映像をクラッターの中から識別表示させることができる。また、スイープの回転が高速であるときには、上記領域の面積が制限されるようになるが、この面積を小さくして画面内を自由に移動することで対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のレーダー装置の構成図
【図2】本発明の実施形態の構成図
【図3】乗算データ発生部の構成図
【図4】乗算タイミング発生部の構成図
【図5】乗算データ発生部のタイミングチャート
【図6】乗算領域を示す図
【図7】乗算領域アドレス発生部の構成図
【図8】乗算領域アドレス発生部のタイミングチャート
【図9】アドレスの進み方を示す図
【図10】ゲインを連続的に代えた場合の受信信号と量子化後の画像データ
【図11】減算及び乗算処理実行時のデータの推移を示す図
【図12】本発明の表示例を示す図
【図13】本発明の他の実施形態の構成図
【図14】従来のレーダー装置の他の構成図
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーダーやソナー等、例えば、極座標系で受信される探知信号を全周囲に渡り直交座標で配列された画像メモリに記憶した後、ラスター走査方式の表示器に表示する装置に関し、特に、クラッターの中から物標の映像を識別可能に表示することのできるレーダー装置及びソナー等の類似装置並びに受信データの書込方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図1は、従来のレーダー装置の構成図を示している。
【0003】
レーダーアンテナ1は、ある周期で水平面を回転しながら別の周期でパルス状電波を発射すると同時に、物標で反射した電波を受信する。受信回路2はレーダーアンテナ1による受信信号を検波し増幅する。A/Dコンバータ3は、受信回路2で得られたアナログ信号をデジタル信号に変換する。一次メモリ4は、A/D変換された1スイープ分のデータを実時間で記憶し、次の送信により得られるデータが再び書き込まれるまでに、その1スイープ分のデータを後段の画像メモリ6に書き込む際のバッファとして用いられる。
【0004】
座標変換部5は、中心座標を開始番地として、中心から周辺に向かって、たとえば船首方向を基準としてアンテナの角度θと、一次メモリ4の読み出し位置とから、対応する直交座標で配列された画像メモリの画素を示す番地を作成する。
座標変換部5は、具体的には次式を実現するハードウェアにより構成される。
X=Xs+r・sinθ
Y=Ys+r・cosθ
ただし、
X、Y:画像メモリの画素を示す番地
Xs、Ys:中心番地
r:中心からの距離
θ:座標変換の角度
表示用の画像メモリ6は、アンテナ1回転で得られる受信データを記憶する容量を持つ。図示しない表示制御部によって表示器7がラスター走査され、ラスター走査に同期して画像メモリ6の内容が高速で読み出され、受信信号の強度に応じた輝度または色で識別された画像が表示される。
【0005】
以上のような構成で、海面反射や雨雪反射等のクラッターの中から物標の映像を識別表示するためには、GAIN、STC、FTC等の調整を適正に行う必要がある。特に、クラッターとの信号強度に差が少ない場合には微妙な調整が要求され、調整の前後での映像の違いを比較しながら調整量を加減し、最適値を探す操作を行う。
【0006】
ところが、上記の従来の装置では、映像の更新はアンテナの方向のスイープライン上でのみ行われるため、調整結果の確認は、回転するスイープラインが観測点の方向に来た時以降となり、且つ、アンテナ1回転に要する時間は通常2、3秒を要するために、調整操作が完了するまでに時間がかかるという問題があった。また、別の物標で最適な調整値が異なる場合にはその都度調整する必要があり、その結果、頻繁な調整操作を繰り返しながら映像観測するということになり、操作性、応答性の点で非常に使いづらいという問題があった。このような問題は、レーダーに限らずスイープ回転に伴って受信データを順次極座標から直交座標に座標変換して記憶する類似装置(例えば、ソナー)においても同様であった。
【0007】
そこで、本発明の出願人は、下記特許文献1の出願により、受信データを座標変換して画像メモリ中に記憶する動作と並行して、減算を行うことで画像データのレベルを小さくしていくことにより、従来のような調整を行わなくてもクラッターの中から物標の映像を容易に識別表示することのできる、レーダー装置及び類似装置並びに受信データの書込方法を提案した(特許文献1参照)。
【0008】
図14は、特許文献1で開示されている従来のレーダー装置の構成図を示している。この従来のレーダー装置は、図1に示す従来のレーダー装置に対し、FIRST検出部8、減算データ発生部9、セレクタ10(セレクタA)、セレクタ11(セレクタB)、減算タイミング発生部12、減算領域アドレス発生部13、減算領域指定部14、減算数値指定部15が追加される。
【0009】
特許文献1は、スイープ回転に伴って受信データを順次極座標から直交座標に座標変換して記憶する画像メモリと、前記座標変換によるデータの書き込みと並行して画像メモリ上に設定された領域の画素データから一定値を減算していく減算手段と、を備えてなることを特徴とする。
【0010】
上記減算手段は、設定された領域の画素データから一定値を減算していくことにより、スイープによって描画される画像とは別に、設定された領域内の画像を徐々に消えていくように見せることができる。従って、同領域内の画像については、従来の装置においてスイープ1回転の間にゲインを徐々に小さくしていく調整を行ったのと同じ観測が可能になる。これによって、手動による微妙な調整を行わなくてもクラッターの中から物標の映像を容易に識別表示させることが可能になる。
【0011】
【特許文献1】
特開2000−65920公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本来、ゲイン調整は受信信号に定数を乗算する同等の処理である。
すなわち
ゲイン調整後出力値 = 受信信号・α (α:定数)
となる。
これに対し従来の減算処理は、(例えば受信回路内の)ゲイン調整部の後段に減算処理部を配置していることから、
となる。
【0013】
上記式から分かるように、ゲイン調整が乗算、つまり受信信号にαを乗じることによって行われているのに対し、減算処理は減算、つまりn ・βを減じることによって行われているので、減算処理による表示輝度の変化はゲイン調整と同等ではない。 特に、上記の特許文献1の装置では、減算を繰り返すことにより、エコーサイズが小さくなってしまい、本来表示すべき物標及びその周辺の映像を小さく表示してしまうという問題があった。
【0014】
図11(A)では、特許文献1の装置により減算を繰り返してゲインを連続的に変えた場合の受信信号と量子化後の画像データの様子が描かれている。同図は、減算しきい値L5以下の場合に、減算値1で減算する場合の減算処理実行時のデータの推移を描いているが、ゲインをG6に設定しておくと、全ての信号が減算しきい値L5以下となるから、減算領域内の画像全体を徐々に消していくことになる。
【0015】
この場合、エコーサイズ、つまり横軸方向の信号が、時間の経過と共に、徐々に小さくなっているのが分かる。減算処理においてはどのレベル画素に対しても減算量が一定であるため、エコーの大きさも不自然に変化する。このように、エコーサイズが小さくなると、時間が経つにつれて、表示している物標及びその周辺が小さくなってしまい、実際の物標周辺の映像と異なるものを表示しているので、見え方が不自然であり、さらには航海に支障をきたす可能性がある。
【0016】
本発明の目的は、受信データを座標変換して画像メモリ中に記憶する動作と並行して、乗算を行うことで画像データのレベルを変化させていくことにより、従来のような調整を行わなくてもクラッターの中から物標の映像を容易に識別表示することのできる、レーダー装置及び類似装置並びに受信データの書込方法を提供することにある。
【0017】
また、本発明の別の目的は、過去の物標からの信号ゲインを小さくする際、エコーサイズを小さくすることなく、従来の装置と比べて、クラッターの中から物標の映像を容易に識別表示することができ、見え方が自然なレーダー装置及び類似装置並びに受信データの書込方法を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、スイープ回転に伴って受信データを順次極座標から直交座標に座標変換して記憶する画像メモリと、前記座標変換によるデータの書き込みと並行して画像メモリ上に設定された領域の画素データに所定の乗算係数を乗算していく乗算手段と、を備えてなることを特徴とする。
【0019】
上記乗算手段は、設定された領域の画素データに所定の乗算係数を乗算していくことにより、スイープによって描画される画像とは別に、設定された領域内の画像を徐々に消えていく、あるいは浮き上がるように見せることができる等、同領域内の画像を徐々に変化させることができる。従って、上記乗算係数を1未満とすれば、同領域内の画像については、従来の装置においてスイープ1回転の間にゲインを徐々に小さくしていく調整を行ったのと同じ観測が可能になる。これによって、手動による微妙な調整を行わなくてもクラッターの中から物標の映像を容易に識別表示させることが可能になる。
【0020】
本発明では、「減算」ではなく「乗算」を行うことが重要な特徴点である。
【0021】
「減算」処理では、図11(A)に示すように、減算毎にエコーサイズが小さくなってしまうが、「乗算」処理では図11(B)又は(C)に示すように、乗算係数の乗算毎にエコーサイズが大きくは変化しない。
【0022】
実際は量子化の際の誤差によってS5、S6付近でエコーサイズが小さくなるが、この誤差は、図10で示すように、ゲインを連続的に変えた場合でも起こりうることなので、大きな問題ではない。
【0023】
請求項2の発明は、スイープの1周回内において前記座標変換時に画像メモリの画素に最初にアクセスする場合をFIRSTとして検出するFIRST検出手段を備え、前記乗算手段は、FIRST検出以外の時に乗算することを特徴とする。
【0024】
座標変換では、受信データは幾何学上、中心位置が密で、周辺ほど疎となり、中心付近ほど画像メモリの同一番地に多くの受信データが対応することになる。この場合、画像メモリの1つの画素に書き込むデータを複数の受信データから選択することになるが、単に上書きするのであれば最後のデータが書き込まれ、受信データの中から最大のデータを選んで書き込むのであれば、FIRST検出とMAX処理が行われる。FIRST検出とは、画像メモリの画素に対するアクセスがスイープ1周回内において最初であることを検出する動作であり、MAX処理とは、FIRST検出の時にその時の受信データをそのまま書き込み、FIRST検出でない時(即ち、2番目以降のアクセスの時)には、その時の受信データと既に書き込まれているデータとの大小比較をし、大きい方を書き込む動作である。このように、座標変換時に、受信データを1つの画素に対してそのまま上書きする方法やFIRST検出とMAX処理とで最大値データを書き込む方法があるが、いずれにしても、画像メモリ中の1つの画素に対しては1つのデータしか書き込むことができないから、1つの画素に1つのデータを書き込むという条件を満足するには最低1回アクセスすればよい。そこで、請求項2の発明では、FIRST検出時に画像メモリの画素にアクセスして受信データを書き込むようにする。そして、FIRST検出しない時には画像メモリに対する座標変換のアクセスを行わない。このようにすると、座標変換の期間内に画像メモリに対して座標変換のアクセスを行わない期間ができるから、この間に、乗算手段によって上記領域における画素データの乗算処理を行っていく。
【0025】
請求項3の発明は、スイープの1周回内において前記座標変換時に画像メモリの画素に最後にアクセスする場合をLASTとして検出するLAST検出手段を備え、前記乗算手段は、LAST検出以外の時に乗算することを特徴とする。
【0026】
この請求項3では、LAST検出時にのみ座標変換を行う。従って、1つの画素に対してLAST検出をしない座標変化の時には、乗算手段の動作が行われる。
【0027】
請求項4の発明は、前記領域を領域指定手段によって任意に指定できるようにしたものである。このようにすることで、例えば、カーソル等によって画面上の注目すべき領域を指定し、この領域内で物標の映像をクラッターの中から識別表示させることができる。また、スイープの回転が高速になるほどFIRSTアクセス期間やLASTアクセス期間の全体に占める割合が大きくなるために、結果的に上記領域全体をアクセスして乗算する期間が短くなって、画像の段階的消去を十分にできなくなるが、このような場合には、上記領域の面積を小さくして画面内を自由に移動することで対応することができる。
【0028】
請求項5の発明は、前記乗算係数を任意の固定値としたものである。任意の固定値を1未満にすることで、上記領域内の画像については、従来の装置においてスイープ1回転の間にゲインを徐々に小さくしていく調整を行ったのと同じ観測が可能になる。あるいは、任意の固定値を1より大きい値にすることで、上記領域内の画像については、従来の装置においてスイープ1回転の間にゲインを徐々に大きくしていく調整を行ったのと同じ観測が可能になる。
【0029】
【発明の実施の形態】
図2は、本発明の実施形態であるレーダー装置の構成図である。このレーダー装置は、図1に示す従来のレーダー装置に対し、FIRST検出部8、乗算データ発生部9、セレクタ10(セレクタA)、セレクタ11(セレクタB)、乗算タイミング発生部12、乗算領域アドレス発生部13、乗算領域指定部14、乗算数値指定部15が追加される。
【0030】
FIRST検出部8は、例えば、特公平3−11669号公報において詳細に述べられているような構成にある。即ち、通常のアクセス時においては、画像メモリ6に対するアドレスは、座標変換部5において、極座標においてのスイープ方向θと中心方向からの距離rに基づいて発生するが、スイープ1回転内において、このアドレスが初めて発生した場合、即ち画像メモリ6に画素が初めてアクセスされた場合を検出してFIRST信号を出力する。画像メモリ6内の画素が初めてアクセスされたかどうかは、座標変換部5の出力によって容易に知ることができる。
【0031】
乗算データ発生部9は、設定された領域の画素へのアクセス時にそのアクセスした画素データに所定の乗算係数を乗算した値を作成する。このデータは、再び同じ画素に書き込まれる。
【0032】
なお、この処理を乗算ワイパー処理と呼び、上記同じ画素に書き込まれる値を乗算ワイパー出力値と呼ぶ。さらに、この領域に対するアクセスを、以下乗算アクセスという。また、画像メモリ6上に設定される上記領域を乗算領域、乗算領域の画素データに乗算していく所定の乗算係数を乗算値、乗算を行うかどうかのしきい値を乗算しきい値という。
【0033】
特に、乗算値が固定の場合は、(例えば受信回路内の)ゲイン調整部の後段に乗算処理部を配置していることから、
となる。これはゲイン調整(αを乗じる処理)と乗算処理(γn を乗じる処理)は同等であることを示す。例えばγ<1として乗算処理をした場合、ゲインをαより小さくした時と同じ効果が得られ、乗算処理を1スキャン間に繰り返すことによってゲインを小さくしていった時の変化が見られる。
【0034】
図3は、乗算データ発生部9の構成図である。この乗算データ発生部9は、比較器9a、乗算器9b、セレクタ9cからなる。比較器9aは、乗算領域内の或る画素から読み出した読出データ(c)が、別に設定された乗算しきい値(a)未満かどうかを比較する。乗算器9bは、読出データ(c)から、別に設定された乗算値(b)を乗算する。比較器9aにおいて、c<aの場合、乗算器9bにおいて、d=b・cの乗算を行い、書込データdを得る。読出データ(c)が乗算しきい値(a)以上の場合には、読出データ(c)と同じデータを書込データ(d)とする。なお、乗算しきい値(a)と乗算値(b)は、乗算数値指定部15によって任意の値に指定することができる。
【0035】
セレクタ10は、画像メモリ6に書き込むデータを選択する部分で、通常アクセス時のFIRSTの時にのみ、一時メモリ4から読み出したデータを出力し、乗算アクセス時に(FIRST以外の時)は乗算データ発生部9で作成したデータを出力する。
【0036】
セレクタ11は、画像メモリ6に与えるアドレスを選択する部分で、通常アクセス時のFIRSTの場合にのみ座標変換部5で作成したアドレスを出力し、乗算アクセス時(FIRST以外の時)には乗算領域アドレス発生部13で作成したアドレスを出力する。
【0037】
乗算タイミング発生部12は、RクロックからFIRSTの期間を除いた期間でのみ動作する。Rクロックは、一次メモリ4に対する読み出しクロックである。すなわち、乗算アクセスがFIRST以外の期間に実行されるように、RクロックとFIRST信号に基づいて、RクロックからFIRSTの期間を除いた期間に、乗算アクセス用のクロックを発生する。この期間のクロックをR’とする。図4は、乗算タイミング発生部12の構成図、図5はタイミングチャート、図6は、乗算領域を示している。乗算タイミング発生部12は、乗算タイミング発生回路12aと、ゲート12bとからなり、ゲート12bにおいて、RクロックからFIRSTの期間を除いた期間を判定し、この期間内にR’クロックを発生するとともに、乗算タイミング発生回路12aにおいて乗算開始トリガからT1とT2を発生する。
【0038】
図6に示すように、乗算領域をX方向にA画素、Y方向にB画素の大きさの矩形領域とすると、T1は、R’クロックA回分の期間に等しく、T2はT1のB回分の期間に等しい。即ち、T1は乗算領域のX方向1行分の乗算期間であり、T2は乗算領域の全領域に対する乗算期間である。T2の終了後、再び乗算開始トリガを発生し、図5に示すタイミング発生動作が繰り返される。なお、図5から明らかなように、R’クロックは等間隔でないからT1も厳密には一定ではなく、同様にT2も一定ではない。
【0039】
乗算領域アドレス発生部13は、乗算アクセス時に、乗算アクセス用アドレスを発生する。図7に示すように、この乗算領域アドレス発生部13は、カウンタ13aと13bとからなる。カウンタ13aは、乗算領域指定部14から入力される乗算開始番地XsからX方向にR′クロック毎にXアドレスを進めていき、カウンタ13bは、乗算領域指定部14から入力する乗算開始アドレスYsからT1期間毎にYアドレスを進めていく。乗算開始番地XsからX方向にn回目、乗算開始番地YsからY方向にm行目のアクセス点の座標を(Xn、Ym)とすると、
Xn=Xs+n
Ym=Ys+m
ただし、
(Xs、Ys):乗算開始番地
となる。
【0040】
図8は、Xアドレス発生タイミングチャートとYアドレス発生タイミングチャートを示している。また、図9は、乗算領域でのアドレスの進み方を示している。
【0041】
乗算領域指定部14は、例えば、レーダー装置本体の操作部に設けられているトラックボールやカーソルキー等を含む入力部で構成され、表示画面上の任意の領域を乗算領域として指定することができる。また、乗算数値指定部15は、例えば、数式等を含む入力部で構成され、乗算データ発生部9に対して与える乗算しきい値や乗算値を任意の値に設定することができる。
【0042】
次に、上記のレーダー装置の動作について、所定の乗算係数が1未満の場合に関して説明する。
【0043】
この実施形態のレーダー装置では、画像メモリ6への書き込みが、FIRSTの時には通常アクセスによって、FIRSTの時でない時には乗算アクセスによってデータの書き込みが行われる。通常アクセスとは、一次メモリ4に記憶されている受信データを読み込む時のアクセスであり、乗算アクセスとは乗算データ発生部9の出力を書き込むアクセスである。今、受信データの或る座標変換サイクルにおいてFIRSTが検出されたとすると、その時の一次メモリ4の対応データが座標変換された画像メモリの位置に記憶される。次の座標変換サイクルでFIRSTが検出されなかった場合は、乗算アクセスとなり、乗算領域アドレス発生部13で発生した画像メモリの位置に乗算データ発生部9で出力されるデータが書き込まれる。この時の乗算データ発生部9で発生するデータは、当該アドレスの読出データから予め設定した乗算値を掛けた値である。従って、表示器7の表示画面上では、乗算データを画像メモリ上に書き込んだ直後にその位置の画像の輝度が低下する(輝度によって画像データの大きさを表す場合)。このように、画像メモリ6のデータの更新は、通常アクセスと乗算アクセスとによって順次行われていき、通常アクセスについては、スイープの回転にともなって得られる受信データによる更新が行われ、乗算アクセスについては、乗算領域指定部14で設定された乗算領域内でのデータの乗算更新が行われる。この結果、通常アクセスによりスイープライン上の画素が更新された後、再びスイープが1回転して同じ画素を更新するまでの間に、各画素についてゲインを連続的に下げる操作をしたと同じように、乗算領域における映像を順次消えていくように表示させることができる。
【0044】
図10、図11(B)及び(C)は、この状態について説明するための図である。図10は、仮にある画素についてゲインを連続的に下げた場合の受信信号と画像データを示している。また、図11は、乗算動作によって変化する画像データを示し、同図(B)はゲインが図10のG6の状態で、乗算しきい値に関係なく乗算処理をした場合を示し、同図(C)はゲインが図10のG6の状態で、レベルL5未満の信号にのみ乗算処理をした場合を示している。なお、この例では、量子化レベルがL5未満の場合に乗算されるよう乗算しきい値をL5に設定し、乗算値を1未満(0.71)に固定している。また、S0は通常アクセス後の画像、S1〜S6は乗算アクセス後の画像であって、数字は各段階を示している。 図11(B)では、乗算しきい値に関係なく乗算処理をしているので、乗算領域内の画像全体を徐々に消していくことができる。
【0045】
また、図11(C)では、最も大きなレベルは乗算しきい値L5以上であるから、この分を除くレベルの信号についてのみ乗算処理が行われる。したがって、レベルの強い画像を明確に表示でき、周囲のクラッター等の相対的に弱いレベルの画像は徐々に消していくことができる。
【0046】
なお、このような映像の変化中においても、クラッター中から物標の映像を識別できるようになる。クラッター中から物標の映像を識別できるようにするための適切なゲインの設定は状況により異なり、図11(B)が好ましいことも、図11(C)が好ましいこともある。
【0047】
図11(B)及び(C)のいずれの場合においても、乗算処理を実行すると、量子化の関係でエコーサイズ(横軸方向)は多少減少してしまうが、それでも特許文献1で開示されている減算処理を行った場合(S0→S4)に比べると、エコーサイズの減り方は少ない(S0→S6)ので、映像に悪影響を及ぼすことはない。減算ではなく、乗算を用いたことにより、クラッターによる信号レベルも、すぐには0に達せず、その結果、表示がより自然なものになる。
【0048】
なお、図2において、FIRST時にFIRST信号を受けてセレクタ10およびセレクタ11が、それぞれ一次メモリ4からの出力と座標変換部5からの出力を選択し、FIRST以外の時に乗算データ発生部9と乗算領域アドレス発生部13の出力をそれぞれ選択するとともに、乗算タイミング発生部12は、FIRST検出以外の期間にR’クロックによってT1、T2を発生して乗算領域アドレス発生部13に出力する。また、乗算領域指定部14による乗算開始アドレスXs、Ysの指定は任意の時に行うことができ、乗算数値指定部15による乗算しきい値と乗算値の設定も任意の時に行うことができる。
【0049】
以上の動作によって、例えば、図12に示すような表示を得ることができる。図の表示領域のうち、Aは雨を原因とするクラッター領域、Bは雨の中の物標、Cは乗算領域を示している。この例では、物標Bの輝度が図11(C)に示すような適当な大きさに設定されている。即ち、画面全体が1回更新される間に乗算領域C内の物標Bを除く領域の映像が徐々に輝度低下していく。また、乗算領域指定部14で、この乗算領域Cを任意の位置に移動可能なため、通常アクセスによって画像データの更新中にこの乗算領域Cを移動すれば、移動した新たな位置で同じような順次消える映像を得ることができる。
【0050】
乗算領域Cの大きさ、即ち、乗算領域Cの全体をアクセスする周期T2は、スイープ1回転の周期Tと関係する。即ち、スイープ回転周期Tが速くなれば、スイープ1回転中に確保できる乗算期間はそれだけ短くなるから、周期T2の繰り返し回数も少なくなる。今、スイープ回転周期=T、乗算領域Cでの全ての画素データの値が0になるまでの(図3の書込データ(d)が0になる)乗算回数=N、乗算領域C全体を1回アクセスするに要する時間=tとすると、
T=N・t
が成立するよう、乗算領域Cの大きさが設定されることが理想的である。なぜなら、乗算される途中経過を表示器上で観測する余裕があることが必要であるからである。しかし、上記の式が成立しない場合には効果がないわけではなく、実際には、これにできるだけ近くなるような大きさの乗算領域に設定すればよい。従って、スイープの回転、すなわちアンテナの回転が高速になるほど、観測のしやすさの点から乗算領域Cの大きさが制限されるが、乗算領域の大きさに制限が生じた場合には、これを表示画面内で移動させることにより、乗算領域を大きくした場合と同等の効果を得ることが可能である。
【0051】
上記実施形態では、FIRST時に通常アクセスを行い、FIRST以外の時に乗算アクセスを行うようにしたが、画像メモリの画素への最後のアクセスをLASTとして検出し、このLAST時に通常アクセスを行い、LAST以外の時に乗算アクセスを行うようにしてもよい。
【0052】
図13は、本発明の他の実施形態を示す。図2と相違する点は、Wデータ発生部20(スキャン相関用)、画像メモリ(スキャン相関用)、座標変換部22(スキャン相関用)、FIRST検出部23(スキャン相関用)を新たに追加した点である。
【0053】
スキャン相関処理は、連続したスイープ1回転毎の相関処理のことを言う。すなわち、連続したスイープ回転毎のデータ間(メモリ上のデータと新データ間)で相関処理を行う処理であり、通常アクセスにおいて、アンテナ1回転前の画像メモリ上のデータと、今回転で新たに得られたデータの両者から今回書き込むデータを、例えば平均処理等により決定する処理であって、従来から実施されている。このスキャン相関処理は、スイープ1回転毎に同一画素について1回のみ書き換える処理であるのに対し、乗算処理は画素データを常時乗算する処理であるから、同じ画像メモリを使用した場合、乗算処理とスキャン相関処理は両立出来ない。そこで、スキャン相関処理用のメモリを表示用画像メモリとは別に設け、前段でスキャン相関処理を実行し、スキャン相関処理した結果を表示用画像メモリに対する通常アクセス用の書込みデータとすることにより、スキャン相関処理と乗算処理を両立させることが出来る。図13は、そのための具体的な構成を示す図である。
【0054】
図13において、Wデータ発生部20は、スキャン相関処理用に設けられるセレクタであり、FIRST検出部23でFIRSTが検出されたときに一次メモリ4からの新データとスキャン相関用のために設けられた画像メモリ21のデータとを相関処理して、同画像メモリ21に再記憶する。また、そのデータはセレクタ10を介して表示用の画像メモリ6に記憶される。FIRSTでないときには、Wデータ発生部20は画像メモリ21から読み出したデータをそのまま出力する。したがって、画像メモリ21には、スキャン相関処理されたデータが記憶される。スキャン相関処理用の座標変換部22は、画像メモリ21の座標変換アアドレスを作成する。この座標変換部22を表示メモリ用の座標変換部5と別に設けているのは、スキャン相関用の画像メモリ21では真運動座標モードで記憶しているのに対し、表示用の画像メモリ6では相対運動モードのヘッドアップ、コースアップ、ノースアップ、または、真運動座標モードの中から選ばれたモードで記憶するようにしているからである。なお、図示はしていないが、コンパス、船速情報が各々の座標変換部5、22に入力するようになっている。
【0055】
以上の構成により、スキャン相関処理されたデータを表示用の画像メモリ6に対する通常アクセス用の書込みデータとすることが出来る。
【0056】
同様に、スイープ1回転中に同じ画素に複数のデータが対応したときに、これらのデータの内最大値を選択して再書込みするMAX処理を前段で行い、その結果を表示用の画像メモリ6に対する通常アクセス用の書込みデータとすることにより、MAX処理と乗算処理を行うことが出来る。
【0057】
なお、上記では、乗算係数(=乗算値(b))を1未満としたが、1より大きな値、例えば1.05等に設定することで、微小信号を時間の経過とともに浮かび上がらせるように表示することも可能である。乗算値(b)が1より大きい固定値の場合は、データの発散を防ぐため乗算しきい値(a)だけでなく、もう一つの乗算上限値(z)が必要となる。そして、読出データ(c)<乗算しきい値(a)の場合には、d=b・cの乗算を行い、乗算した結果dが乗算上限値(z)を超える場合には、d=zとする。乗算上限値(z)も、乗算しきい値(a)や乗算値(b)と同様に、乗算数値指定部15によって、任意の値に指定することができる。
【0058】
また、上記乗算係数を乗算毎に複数の候補から選択して変化させることも可能である。
【0059】
乗算値(b)を乗算毎に変化させる方法としては、乗算の回数をカウントして、回数に応じた乗算値(b)を乗算することも可能であるし、あるいは、読出データ(c)の値に応じて、乗算値(b)を変えることも可能である。
【0060】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、設定された領域の画素データに所定の乗算係数を乗算していくことにより、設定された領域内のゲインを常時調整しながら観測したと同じ効果が得られるから、手動による微妙な調整を行わなくてもクラッターの中から物標の映像を容易に識別表示させることが可能になる。
【0061】
請求項2の発明によれば、画像メモリに対して座標変換のアクセスを行わない期間に、乗算手段によって上記領域における画素データの乗算処理を行っていくため、スイープ回転による画像表示を行いながら、設定された領域において順次消えていく、あるいは浮かび上がってくる画像を表示させることが出来る。
【0062】
請求項3の発明によれば、LAST検出手段を設けた場合においても乗算処理を行うことが出来、また、請求項4の発明によれば、前記領域を領域指定手段によって任意に指定できるから、例えば、カーソル等によって画面上の注目すべき領域を指定し、この領域内で物標の映像をクラッターの中から識別表示させることができる。また、スイープの回転が高速であるときには、上記領域の面積が制限されるようになるが、この面積を小さくして画面内を自由に移動することで対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のレーダー装置の構成図
【図2】本発明の実施形態の構成図
【図3】乗算データ発生部の構成図
【図4】乗算タイミング発生部の構成図
【図5】乗算データ発生部のタイミングチャート
【図6】乗算領域を示す図
【図7】乗算領域アドレス発生部の構成図
【図8】乗算領域アドレス発生部のタイミングチャート
【図9】アドレスの進み方を示す図
【図10】ゲインを連続的に代えた場合の受信信号と量子化後の画像データ
【図11】減算及び乗算処理実行時のデータの推移を示す図
【図12】本発明の表示例を示す図
【図13】本発明の他の実施形態の構成図
【図14】従来のレーダー装置の他の構成図
Claims (7)
- スイープ回転に伴って受信データを順次極座標から直交座標に座標変換して記憶する画像メモリと、
前記座標変換によるデータの書き込みと並行して画像メモリ上に設定された領域の画素データに所定の乗算係数を乗算していく乗算手段と、を備えてなるレーダー装置及び類似装置。 - スイープの1周回内において前記座標変換時に画像メモリの画素に最初にアクセスする場合をFIRSTとして検出するFIRST検出手段を備え、前記乗算手段は、FIRST検出以外の時に乗算することを特徴とする、請求項1記載のレーダー装置及び類似装置。
- スイープの1周回内において前記座標変換時に画像メモリの画素に最後にアクセスする場合をLASTとして検出するLAST検出手段を備え、前記乗算手段は、LAST検出以外の時に乗算することを特徴とする、請求項1記載のレーダー装置及び類似装置。
- 前記領域を指定する領域指定手段を備えた、請求項1〜3のいずれかに記載のレーダー装置及び類似装置
- 前記乗算係数を任意の固定値とする乗算数値指定手段を設けた、請求項1〜4のいずれかに記載のレーダー装置及び類似装置。
- 前記乗算係数を複数の候補から選択する手段を設けた、請求項1〜5のいずれかに記載のレーダー装置及び類似装置。
- 受信データを極座標から直交座標に座標変換して1周回毎に画像メモリに更新しながら記憶するステップと、
前記座標変換によるデータの書き込みと並行して画像メモリ上に設定された領域の画素データに一定値を乗算していく乗算ステップと、を備え、
1周回の期間内に前記領域内のデータを順次乗算していくようにした、受信データの書込方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003154458A JP2004354301A (ja) | 2003-05-30 | 2003-05-30 | レーダー装置及び類似装置並びに受信データの書込方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2003154458A JP2004354301A (ja) | 2003-05-30 | 2003-05-30 | レーダー装置及び類似装置並びに受信データの書込方法 |
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JP (1) | JP2004354301A (ja) |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN113311422A (zh) * | 2020-02-27 | 2021-08-27 | 富士通株式会社 | 坐标转换方法、装置和数据处理设备 |
-
2003
- 2003-05-30 JP JP2003154458A patent/JP2004354301A/ja not_active Withdrawn
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