JP2004352954A - エポキシ樹脂組成物及び半導体装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(A)エポキシ樹脂
(B)硬化剤
(C)下記平均組成式(1)で示されるホスファゼン化合物
【化1】
[式中、R1は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、Rは脂肪族不飽和基を含有しない置換又は非置換の一価炭化水素基、Xは二価の有機基を示し、x、y、z、nは、0≦x<2n、0<y≦2n、x+y=2n、0≦z≦400、3≦n≦1,000を満たす数である。]
を必須成分とし、臭素化物及びアンチモン化合物を実質的に含まないエポキシ樹脂組成物、及びこの組成物の硬化物で封止した半導体装置。
【効果】本発明のエポキシ樹脂組成物は、成形性に優れるとともに、難燃性及び耐湿信頼性に優れた硬化物を得ることができる。しかも、臭素化エポキシ樹脂等の臭素化物、三酸化アンチモン等のアンチモン化合物をエポキシ樹脂組成物中に含有しないので、人体、環境に対する悪影響もない。
【選択図】 な し
(B)硬化剤
(C)下記平均組成式(1)で示されるホスファゼン化合物
【化1】
[式中、R1は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、Rは脂肪族不飽和基を含有しない置換又は非置換の一価炭化水素基、Xは二価の有機基を示し、x、y、z、nは、0≦x<2n、0<y≦2n、x+y=2n、0≦z≦400、3≦n≦1,000を満たす数である。]
を必須成分とし、臭素化物及びアンチモン化合物を実質的に含まないエポキシ樹脂組成物、及びこの組成物の硬化物で封止した半導体装置。
【効果】本発明のエポキシ樹脂組成物は、成形性に優れるとともに、難燃性及び耐湿信頼性に優れた硬化物を得ることができる。しかも、臭素化エポキシ樹脂等の臭素化物、三酸化アンチモン等のアンチモン化合物をエポキシ樹脂組成物中に含有しないので、人体、環境に対する悪影響もない。
【選択図】 な し
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、成形性に優れるとともに、難燃性及び耐湿信頼性に優れ、臭素化エポキシ樹脂等の臭素化物、三酸化アンチモン等のアンチモン化合物を含有しない硬化物を得ることができる、特に半導体封止用として好適なエポキシ樹脂組成物、及び該樹脂組成物の硬化物で封止した半導体装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、半導体デバイスは樹脂封止型のダイオード、トランジスター、IC、LSI、超LSIが主流であるが、エポキシ樹脂が他の熱硬化性樹脂に比べて成形性、接着性、電気特性、機械特性、耐湿性等に優れているため、エポキシ樹脂組成物で半導体装置を封止することが一般的である。半導体デバイスは家電製品、コンピュータ等、生活環境のあらゆる所で使用されているため、万が一の火災に備えて、半導体装置には難燃性が要求されている。
【0003】
半導体封止用エポキシ樹脂組成物中には、難燃性を高めるため、一般にハロゲン化エポキシ樹脂と三酸化アンチモンとが配合されている。このハロゲン化エポキシ樹脂と三酸化アンチモンとの組み合わせは、気相においてラジカルトラップ、空気遮断効果が大きく、その結果、高い難燃効果が得られるものである。
【0004】
しかし、ハロゲン化エポキシ樹脂は燃焼時に有毒ガスを発生するという問題があり、また三酸化アンチモンにも粉体毒性があるため、人体、環境に対する影響を考慮すると、これらの難燃剤を樹脂組成物中に全く含まないことが好ましい。
【0005】
このような要求に対して、ハロゲン化エポキシ樹脂あるいは三酸化アンチモンの代替として、従来からAl(OH)3、Mg(OH)2等の水酸化物、赤リン、リン酸エステル等のリン系難燃剤等の検討がなされてきている。しかし、Al(OH)3、Mg(OH)2等の水酸化物は難燃効果が低いため、難燃組成とするためには、エポキシ樹脂組成物中に水酸化物を多量に添加しなければならず、その結果、組成物の粘度が上昇し、成形時にボイド、ワイヤー流れ等の成形不良が発生するという問題がある。一方、赤リン、リン酸エステル等のリン系難燃剤をエポキシ樹脂組成物に添加した場合、半導体装置が高温高湿条件にさらされると、リン系難燃剤が加水分解されてリン酸が生成し、このリン酸がアルミ配線を腐食、もしくは銅フレーム、銀メッキフレームにおいてイオンマイグレーションを発生するなど信頼性を低下させるという大きな問題があった。
【0006】
この問題を解決するため、特許第2843244号公報(特許文献1)では、赤リンの表面にSiXOY組成からなる被覆層で被覆した化合物を難燃剤として使用したエポキシ樹脂組成物が提案されているが、上記の耐湿信頼性は改善されていないのが現状である。また、特開平10−259292号公報(特許文献2)では、環状ホスファゼン化合物を、充填剤を除く配合成分の合計量に対して、燐原子の量が0.2〜3.0質量%となる量を使用したエポキシ樹脂組成物も提案されているが、難燃性を得るためには相当な量をエポキシ樹脂組成物に添加する必要があり、その場合は硬化性の低下ならびに高温環境下での電気抵抗性低下を引き起こす等の問題点があった。
【0007】
【特許文献1】
特許第2843244号公報
【特許文献2】
特開平10−259292号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、臭素化エポキシ樹脂等の臭素化物及び三酸化アンチモン等のアンチモン化合物を含有せず、成形性に優れるとともに、難燃性及び耐湿信頼性に優れる硬化物を得ることができるエポキシ樹脂組成物、及び該樹脂組成物の硬化物で封止した半導体装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者等は、上記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)平均組成式(1)で示されるホスファゼン化合物、及び好ましくは(D)無機質充填剤を必須成分とし、臭素化物及びアンチモン化合物を実質的に含まないエポキシ樹脂組成物が、成形性に優れるとともに、難燃性、耐湿信頼性に優れる硬化物となりえ、また該エポキシ樹脂組成物の硬化物で封止された半導体装置が、難燃性、耐湿信頼性、高温電気特性に優れるものであることを見出し、本発明をなすに至ったものである。
【0010】
従って、本発明は、
(A)エポキシ樹脂
(B)硬化剤
(C)下記平均組成式(1)で示されるホスファゼン化合物
【化2】
[式中、R1は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、Rは脂肪族不飽和基を含有しない置換又は非置換の一価炭化水素基、Xは二価の有機基を示し、x、y、z、nは、0≦x<2n、0<y≦2n、x+y=2n、0≦z≦400、3≦n≦1,000を満たす数である。]
を必須成分とし、臭素化物及びアンチモン化合物を実質的に含まないことを特徴とするエポキシ樹脂組成物、及び上記エポキシ樹脂組成物の硬化物で封止した半導体装置を提供する。
【0011】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、このように、臭素化物、アンチモン化合物を実質的に含まないものである。一般に、エポキシ樹脂組成物中には、難燃性を達成するため、臭素化エポキシ樹脂と三酸化アンチモンとが配合されているが、本発明のエポキシ樹脂組成物は、この臭素化エポキシ樹脂と三酸化アンチモンとを使用せずに、難燃規格であるUL−94、V−0を達成することができるものである。
【0012】
ここで、臭素化エポキシ樹脂あるいは三酸化アンチモンの代替として、従来からAl(OH)3、Mg(OH)2等の水酸化物、赤リン、リン酸エステル等のリン系難燃剤等が検討されている。しかし、これらの公知の代替難燃剤は、特に高温において耐水性が弱く、難燃剤自身が溶解、分解して、抽出水中の不純物イオンを増加させるという共通の欠点があった。このため、臭素化物、アンチモン化合物を実質的に含まない従来の難燃性エポキシ樹脂組成物で封止された半導体装置を長時間高温高湿下に放置すると、半導体装置のアルミ配線が腐食し、耐湿信頼性が低下するという問題があった。
【0013】
本発明者等は、上記不都合を解決すべく鋭意検討を行った結果、難燃剤として平均組成式(1)で示されるホスファゼン化合物(C)を用いた半導体封止用エポキシ樹脂組成物が、前述のように抽出水中の不純物イオンを増加させることもなく、成形性に優れ、難燃性及び耐湿信頼性に優れた硬化物を得ることができることを見出したものである。
【0014】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明のエポキシ樹脂組成物を構成する(A)エポキシ樹脂は特に限定されない。一般的なエポキシ樹脂としては、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールアルカン型エポキシ樹脂、アラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格含有アラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂、ナフタレン環含有エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、スチルベン型エポキシ樹脂等が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を併用することができるが、本発明において臭素化エポキシ樹脂は配合されない。
【0015】
上記エポキシ樹脂は、加水分解性塩素が1,000ppm以下、特に500ppm以下であり、ナトリウム及びカリウムはそれぞれ10ppm以下の含有量とすることが好ましい。加水分解性塩素が1,000ppmを超える、また、ナトリウム又はカリウムが10ppmを超える場合は、長時間高温高湿下に半導体装置を放置すると、耐湿性が劣化する場合がある。
【0016】
本発明に用いる(B)硬化剤も特に限定されるものではない。一般的な硬化剤としては、フェノール樹脂が好ましく、具体的には、フェノールノボラック樹脂、ナフタレン環含有フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂、トリフェノールアルカン型フェノール樹脂、ビフェニル骨格含有アラルキル型フェノール樹脂、ビフェニル型フェノール樹脂、脂環式フェノール樹脂、複素環型フェノール樹脂、ナフタレン環含有フェノール樹脂、ビスフェノールA型樹脂、ビスフェノールF型樹脂等のビスフェノール型フェノール樹脂などが挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を併用することができる。
【0017】
上記硬化剤は、エポキシ樹脂と同様に、ナトリウム及びカリウムの含有量をそれぞれ10ppm以下とすることが好ましい。ナトリウム又はカリウムが10ppmを超える場合は、長時間高温高湿下に半導体装置を放置すると、耐湿性が劣化する場合がある。
【0018】
ここで、エポキシ樹脂、硬化剤の配合量は特に制限されないが、硬化剤としてフェノール樹脂を用いる場合、エポキシ樹脂中に含まれるエポキシ基1モルに対して、硬化剤中に含まれるフェノール性水酸基のモル比が0.5〜1.5、特に0.8〜1.2の範囲となる量であることが好ましい。
【0019】
また、本発明において、エポキシ樹脂と硬化剤との硬化反応を促進させるため、硬化促進剤を用いることが好ましい。この硬化促進剤は、硬化反応を促進させるものであれば特に制限はなく、例えばトリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(p−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリフェニルホスフィン・トリフェニルボラン、テトラフェニルホスフィン・テトラフェニルボレートなどのリン系化合物、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、α−メチルベンジルジメチルアミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7などの第3級アミン化合物、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール化合物等を使用することができる。
【0020】
硬化促進剤の配合量は有効量であるが、(A)エポキシ樹脂と(B)硬化剤との総量100質量部に対し、0.1〜5質量部、特に0.5〜2質量部とすることが好ましい。
【0021】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(C)下記平均組成式(1)で示されるホスファゼン化合物を使用するものである。
【化3】
[式中、R1は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、Rは脂肪族不飽和基を含有しない置換又は非置換の一価炭化水素基、Xは二価の有機基を示し、x、y、z、nは、0≦x<2n、0<y≦2n、x+y=2n、0≦z≦400、3≦n≦1,000を満たす数である。]
【0022】
上記式(1)で示されるホスファゼン化合物を添加した本発明のエポキシ樹脂組成物は、赤リン、リン酸エステル等のリン系難燃剤を添加したエポキシ樹脂組成物と比較して、熱水抽出特性に優れ、耐湿信頼性に特に優れる硬化物を得ることができる。また、上記式(1)で示されるホスファゼン化合物は、シリコーン骨格を有する為、難燃性と耐湿信頼性とを兼ね備えたものである。
【0023】
ここで、式(1)において、R1は水素原子、又はメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基であり、またRは脂肪族不飽和基を含有しない置換又は非置換の一価炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、キシリル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基などや、これら炭化水素基の水素原子の一部又は全部を塩素、フッ素、臭素等のハロゲン原子で置換したクロロメチル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換一価炭化水素基などの炭素数1〜15、特に1〜10の一価炭化水素基が例示される。
【0024】
Xは二価の有機基であり、炭素数2〜15、特に2〜5の酸素原子が介在してもよいアルキレン基が好ましく、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−OCH2CH2CH2−等で示される基を例示することができる。
【0025】
またこの場合、nは3〜1,000であるが、より好ましくは3〜10であり、合成上特に好ましくは3である。また、x、y、zは、上述した通りであるが、難燃性、耐湿信頼性の両立のためには、1.2n≦x≦1.8n、0.2n≦y≦0.8n、5≦z≦100であることが好ましい。
【0026】
更に詳しくは、上記シリコーン変性ホスファゼン化合物は、下記一般式(2)
(NPCl2)m ・・・(2)
(式中、mは3〜100、好ましくは3〜10である。)
で表わされる(I)クロロホスファゼン化合物と、(II)下記一般式(3)
【化4】
(式中、R1は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、Yは末端に二重結合を有する有機基を示す。)
で表されるフェノールと、必要により(III)フェノールとを反応させ、この反応物中のYの末端二重結合と、下記一般式(4)
【化5】
(式中、Rは脂肪族不飽和基を含有しない置換又は非置換の一価炭化水素基であり、zは0≦z≦400である。)
で示される(IV)有機珪素化合物のSiH基とを付加反応させることにより得ることができる。
【0027】
前記(II)成分のフェノールは、下記一般式(3)で表されるものである。
【化6】
(式中、R1は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、Yは末端に二重結合を有する有機基を示す。)
【0028】
上記式(3)中、R1は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、上述したR1と同様のものが例示できる。また、Yは末端に二重結合を有する有機基であり、末端に二重結合を有するものであれば特に限定されるものではないが、特に炭素数2〜15、とりわけ2〜5のものが好ましく、例えば、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、アリルオキシ基等のアルケニルオキシ基などが挙げられるが、中でもアリル基が好ましい。
【0029】
このような式(3)で表されるフェノールとして、具体的には、アリルフェノール、アリルオキシフェノールなどが挙げられ、本発明においては、この1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
【0030】
本発明において、(I)クロロホスファゼン化合物と、(II)末端が二重結合の有機基を含有するフェノール及び(III)フェノールとを反応させる際の混合割合としては、(I)クロロホスファゼン化合物中のP−Cl結合:(II)末端が二重結合の有機基を含有するフェノール及び(III)フェノール中のフェノール性水酸基当量=1:1〜1:50、特に1:1.1〜1:10となる量とすることが好ましい。
【0031】
また、フェノールを用いる場合、反応に用いる(II)末端が二重結合の有機基を含有するフェノールと(III)フェノールとの混合割合としては、フェノール性水酸基当量比で(II)末端が二重結合の有機基を含有するフェノール:(III)フェノール=1:1〜1:100、特に1:2〜1:20となる量とすることが好ましい。
【0032】
本発明において、クロロホスファゼン化合物と末端が二重結合の有機基を含有するフェノールと必要によりフェノールとを反応させる際、触媒を用いることが好ましい。触媒としては、例えば、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、α−メチルベンジルジメチルアミン等の第3級アミン化合物、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物等が挙げられる。
【0033】
上記触媒の添加量は有効量であり、特に限定されるものではないが、好ましくはクロロホスファゼン化合物の全P−Cl結合に対して1.2〜2.0当量(モル比)である。
【0034】
クロロホスファゼン化合物と末端が二重結合の有機基を含有するフェノールとフェノールとを反応させる際の反応は、通常有機溶媒中で行われ、このような有機溶媒としては、例えば、THF、トルエン、アセトン等が挙げられる。
【0035】
本反応方法としては、例えば、クロロホスファゼン化合物、フェノール及び触媒を有機溶媒中で反応させ、これに末端が二重結合の有機基を含有するフェノールを加えて更に反応させた後、再結晶させることにより、末端が二重結合の有機基を含有するホスファゼン化合物を得ることができる。またこの反応温度は、収率及び生産効率の面から室温〜150℃が好ましく、特に50〜100℃が好適であり、反応時間は1〜48時間、特に3〜20時間とすることが好ましい。
【0036】
次に、上述した(I)クロロホスファゼン化合物と、(II)末端が二重結合の有機基を含有するフェノールと、場合により(III)フェノールとを反応させた後、この反応物のYの末端二重結合と、下記平均組成式(4)で示される(IV)有機珪素化合物のSiH基とを付加反応させることにより、本発明のシリコーン変性ホスファゼン化合物を得ることができる。
【0037】
【化7】
上記式中、Rは脂肪族不飽和基を含有しない置換又は非置換の一価炭化水素基であり、上述したRと同様のものが例示でき、zは0≦z≦400、特に5≦z≦100である。
【0038】
このようなオルガノポリシロキサンとして、具体的には、下記式で示されるものが挙げられる。
【化8】
(式中、Meはメチル基、Phはフェニル基である。)
【0039】
ここで、上記末端が二重結合の有機基を含有するホスファゼン化合物と有機珪素化合物を付加反応させる場合、該末端が二重結合の有機基を含有するホスファゼン化合物及び有機珪素化合物は、それぞれ1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0040】
本付加反応において、上記末端が二重結合の有機基を含有するホスファゼン化合物と有機珪素化合物の混合割合としては、上記ホスファゼン化合物中のYの末端二重結合に対する有機珪素化合物中の珪素原子に結合した水素原子(SiH基)のモル比が、0.2〜1.0モル/モル、特に0.4〜0.95モル/モルとなる量で配合することが好ましい。
【0041】
上記付加反応の方法としては、従来公知の付加反応法に準じて行うことができる。即ち、付加反応に際しては、従来公知の付加反応触媒、例えば白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と1価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテートなどの白金系触媒、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム等のパラジウム系触媒、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等のロジウム系触媒などの白金族金属触媒を使用することが好ましい。なお、付加反応触媒の添加量としては触媒量とすることができ、通常、溶液濃度は20〜60質量%、触媒濃度は反応物に対して白金族金属換算で10〜100ppmである。
【0042】
また、上記付加反応は有機溶媒中で行うことが望ましく、有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、メチルイソブチルケトン等の不活性溶媒を用いることが好ましい。
【0043】
付加反応条件は特に制限されないが、通常60〜120℃で30分〜10時間反応させることが好ましい。
【0044】
また、(C)成分であるホスファゼン化合物の添加量は、(A)エポキシ樹脂と(B)硬化剤との総量100質量部に対し、1〜50質量部、特に2〜30質量部が好ましい。添加量が1質量部未満では十分な難燃効果が得られない場合があり、また50質量部を超えると、流動性の低下を引き起こす場合がある。
【0045】
本発明のエポキシ樹脂組成物中に配合される(D)無機質充填剤としては、通常エポキシ樹脂組成物に配合されるものを使用することができる。例えば、溶融シリカ、結晶性シリカ等のシリカ類、アルミナ、窒化珪素、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド、酸化チタン、ガラス繊維等が挙げられる。
【0046】
これら無機質充填剤の平均粒径や形状及び無機質充填剤の充填量は、特に限定されないが、難燃性を高めるためには、エポキシ樹脂組成物中に成形性を損なわない範囲で可能な限り多量に充填させることが好ましい。この場合、無機質充填剤の平均粒径、形状として、平均粒径5〜30μmの球状の溶融シリカが特に好ましく、また、無機質充填剤の充填量は、(A)エポキシ樹脂と(B)硬化剤との総量100質量部に対し、400〜1,200質量部、特に500〜1,000質量部とすることが好ましい。
【0047】
なお、本発明において、平均粒径は、例えばレーザー光回折法等による重量平均値(又はメディアン径)等として求めることができる。
【0048】
無機質充填剤は、樹脂と無機質充填剤との結合強度を強くするため、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤などのカップリング剤で予め表面処理したものを配合することが好ましい。このようなカップリング剤としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン、γ−メルカプトシラン等のメルカプトシランなどのシランカップリング剤を用いることが好ましい。ここで表面処理に用いるカップリング剤の配合量及び表面処理方法については、特に制限されるものではない。
【0049】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、本発明の目的及び効果を発現できる範囲内において、他の難燃剤、例えばリン酸エステル、トリフェニルホスフェート、ポリリン酸アンモニウム、赤リン等のリン系化合物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛等の無機化合物を添加することもできる。但し、三酸化アンチモン等のアンチモン化合物は配合されない。
【0050】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、更に必要に応じて各種の添加剤を配合することができる。例えば熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、有機合成ゴム、シリコーン系等の低応力剤、カルナバワックス、高級脂肪酸、合成ワックス等のワックス類、カーボンブラック等の着色剤、ハロゲントラップ剤等の添加剤を添加配合することができる。
【0051】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、硬化剤、ホスファゼン化合物、必要により無機質充填剤、その他の添加物を所定の組成比で配合し、これをミキサー等によって十分均一に混合した後、熱ロール、ニーダー、エクストルーダー等による溶融混合処理を行い、次いで冷却固化させ、適当な大きさに粉砕して成形材料とすることができる。
【0052】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、各成分を有機溶剤を用いて混合することができ、エポキシ樹脂、硬化剤、無機質充填剤、その他の添加物を所定の組成比で配合し、有機溶剤を用いて均一に混合した後、減圧留去により有機溶剤を除き、次いで冷却固化させ、適当な大きさに粉砕して成形材料とすることができる。更に、エポキシ樹脂、硬化剤のみ有機溶剤を用いて同様に混合物を得、これに無機質充填剤、その他の添加物を加えてミキサー等によって十分均一に混合した後、熱ロール、ニーダー、エクストルーダー等による溶融混合処理を行い、次いで冷却固化させ、適当な大きさに粉砕して成形材料とすることもできる。また、ワニスとしても使用可能である。このような有機溶剤としては、例えば、トルエン、MEK、THF、アセトン等が挙げられる。
【0053】
このようにして得られる本発明のエポキシ樹脂組成物は、各種の半導体装置の封止用として有効に利用でき、この場合、封止の最も一般的な方法としては、低圧トランスファー成形法が挙げられる。なお、本発明のエポキシ樹脂組成物の成形は、温度150〜180℃で30〜180秒、後硬化は150〜180℃で2〜16時間行うことが望ましい。
【0054】
【発明の効果】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、成形性に優れるとともに、難燃性及び耐湿信頼性に優れた硬化物を得ることができる。しかも、臭素化エポキシ樹脂等の臭素化物、三酸化アンチモン等のアンチモン化合物をエポキシ樹脂組成物中に含有しないので、人体、環境に対する悪影響もないものである。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物で封止された半導体装置は、難燃性、耐湿信頼性に優れたものであり、産業上特に有用である。
【0055】
【実施例】
以下、ホスファゼン化合物の合成例、及びエポキシ樹脂組成物の実施例と比較例を示し、本発明を具体的に示すが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0056】
[合成例1] 化合物Aの合成
窒素雰囲気下、室温にてヘキサクロロシクロトリホスファゼン25.7g(73.9mmol)、フェノール34.8g(370mmol)、トルエン250gの混合物中に、DBU31.0g(2,035mmol)を滴下した。80℃にて5時間攪拌した後、2−アリルフェノール49.6g(370mmol)のトルエン120g溶液を滴下し、100℃にて更に6時間攪拌を行った。その後、5%塩化水素水溶液500ml×2回、5%水酸化ナトリウム水溶液500ml×3回、5%塩化アンモニウム水溶液500ml×2回、純水500ml×3回で抽出を行い、硫酸ナトリウム50gを加えて乾燥させ、減圧下にて溶媒を留去することにより、下記式(5)で表されるアリル基含有ホスファゼン化合物を48.3g得た。
【0057】
【化9】
【0058】
リフラックスコンデンサー、温度計、攪拌機、及び滴下ロートを具備した500ml四つ口フラスコ中にトルエン100g、上記式(5)で表されるアリル基含有ホスファゼン化合物10gを入れ、窒素雰囲気下で2時間共沸脱水を行った。系内を80℃まで冷却し、塩化白金触媒0.1gを加えた後、下記式(6)で表される有機珪素化合物20.8gをトルエン83.1gに溶解した溶液を2時間かけて滴下した。系内を90〜100℃に保ちながら6時間攪拌して熟成した後、室温まで冷却した。その後、減圧下にて溶媒留去することにより、目的とするシリコーン変性ホスファゼン化合物(化合物A)が27.6g得られた。
【0059】
【化10】
【0060】
得られた反応生成物の1H−NMR、IRを測定した結果、1H−NMRは−0.5−0.5,4.2−4.4,7.2−7.8,7.9−8.2ppmにピークを示し、IRは700−950,1200−1400cm−1にP−N由来、1255cm−1付近にSi−Me由来のピークを示した。これにより、下記式で示される化合物Aが得られたことがわかった。
【0061】
(化合物A)
【化11】
【0062】
[合成例2] 化合物Bの合成
窒素雰囲気下、0℃で水素化ナトリウム4.8g(119mmol)をTHF50mlに懸濁させ、そこにフェノール10.2g(108mmol)、4,4’−スルホニルジフェノール0.45g(1.8mmol)のTHF50ml溶液を滴下した。30分攪拌後、ヘキサクロロトリホスファゼン12.5g(36.0mmol)のTHF50ml溶液を滴下し、5時間加熱還流を行った。そこに、別途0℃で水素化ナトリウム5.2g(130mmol)をTHF50mlに懸濁させ、そこにフェノール11.2g(119mmol)のTHF50ml溶液を滴下した溶液を滴下し、更に19時間加熱還流した。溶媒を減圧留去後、クロロベンゼンを加えて溶解し、5%水酸化ナトリウム水溶液200ml×2回、5%硫酸水溶液200ml×2回、5%炭酸水素ナトリウム水溶液200ml×2回、水200ml×2回で抽出を行った。溶媒を減圧留去し、黄褐色結晶(化合物B)を20.4g得た。
【0063】
(化合物B)
【化12】
【0064】
[実施例1〜3、比較例1〜3]
表1に示す成分を熱2本ロールにて均一に溶融混合し、冷却、粉砕して半導体封止用エポキシ樹脂組成物を得た。これらの組成物につき、次の(I)〜(VIII)の諸特性を測定した。結果を表2に示した。
【0065】
(I)スパイラルフロー値
EMMI規格に準じた金型を使用して、温度175℃、成形圧力6.9N/mm2、成形時間120秒の条件で測定した。
【0066】
(II)ゲル化時間
組成物のゲル化時間を175℃の熱板上で測定した。
【0067】
(III)成形硬度
JIS−K6911に準じて、温度175℃、成形圧力6.9N/mm2、成形時間90秒の条件で10×4×100mmの棒を成形したときの熱時硬度をバーコール硬度計で測定した。
【0068】
(IV)高温電気抵抗特性
温度175℃、成形圧力6.9N/mm2、成形時間120秒の条件で70φ×3mmの円板を成形し、180℃で4時間ポストキュアーした。その後、150℃雰囲気下で体積抵抗率を測定した。
【0069】
(V)難燃性
UL−94規格に基づき、1/32インチ厚の板を、温度175℃、成形圧力6.9N/mm2、成形時間120秒の条件で成形し、180℃で4時間ポストキュアーしたものの難燃性を調べた。
【0070】
(VI)耐湿性
アルミニウム配線を形成した6×6mmの大きさのシリコンチップを14pin−DIPフレーム(42アロイ)に接着し、更にチップ表面のアルミニウム電極とリードフレームとを30μmφの金線でワイヤボンディングした後、これにエポキシ樹脂組成物を温度175℃、成形圧力6.9N/mm2、成形時間120秒の条件で成形し、180℃で4時間ポストキュアーした。このパッケージそれぞれ20個を140℃/85%RHの雰囲気中−5Vの直流バイアス電圧をかけて500時間放置した後、アルミニウム腐食が発生したパッケージ数を調べた。
【0071】
(VII)高温保管信頼性
アルミニウム配線を形成した6×6mmの大きさのシリコンチップを14pin−DIPフレーム(42アロイ)に接着し、更にチップ表面のアルミニウム電極とリードフレームとを30μmφの金線でワイヤボンディングした後、これにエポキシ樹脂組成物を温度175℃、成形圧力6.9N/mm2、成形時間120秒の条件で成形し、180℃で4時間ポストキュアーした。このパッケージそれぞれ20個を200℃雰囲気中500時間放置した後、発煙硝酸で溶解、開封し、金線引張り強度を測定した。引張り強度が初期値の70%以下となったものを不良とし、不良数を調べた。
【0072】
(VIII)耐熱衝撃クラック性
アルミニウム配線を形成した6×6mmの大きさのシリコンチップを14pin−DIPフレーム(42アロイ)に接着し、更にチップ表面のアルミニウム電極とリードフレームとを30μmφの金線でワイヤボンディングした後、これにエポキシ樹脂組成物を温度175℃、成形圧力6.9N/mm2、成形時間120秒の条件で成形し、180℃で4時間ポストキュアーした。このパッケージそれぞれ5個を260℃の半田浴/30秒及び−196℃/60秒の冷熱衝撃を100サイクル行い、クラックが発生したものを不良としてこの不良率(%)を調べた。
【0073】
【表1】
【0074】
エポキシ樹脂:o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、EOCN1020−55(日本化薬製、エポキシ当量200)
硬化剤:フェノールノボラック樹脂、DL−92(明和化成製、フェノール性水酸基当量110)
ホスファゼン化合物:合成例1,2の化合物(化合物A,B)
無機質充填剤:球状溶融シリカ(龍森製、平均粒径20μm)
硬化触媒:トリフェニルホスフィン(北興化学製)
離型剤:カルナバワックス(日興ファインプロダクツ製)
カーボンブラック:デンカブラック(電気化学工業製)
シランカップリング剤:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、KBM−403(信越化学工業製)
【0075】
【表2】
【0076】
表2の結果から明らかなように、本発明のエポキシ樹脂組成物は、硬化性に優れると共に、難燃性、耐湿信頼性に優れ、高温電気抵抗特性に優れる硬化物を得ることができ、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物で封止された半導体装置は、難燃性、耐湿信頼性に優れるものである。しかも、臭素化エポキシ樹脂等の臭素化物、三酸化アンチモン等のアンチモン化合物を樹脂組成物中に含有しないので、人体・環境に対する悪影響がないものである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、成形性に優れるとともに、難燃性及び耐湿信頼性に優れ、臭素化エポキシ樹脂等の臭素化物、三酸化アンチモン等のアンチモン化合物を含有しない硬化物を得ることができる、特に半導体封止用として好適なエポキシ樹脂組成物、及び該樹脂組成物の硬化物で封止した半導体装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、半導体デバイスは樹脂封止型のダイオード、トランジスター、IC、LSI、超LSIが主流であるが、エポキシ樹脂が他の熱硬化性樹脂に比べて成形性、接着性、電気特性、機械特性、耐湿性等に優れているため、エポキシ樹脂組成物で半導体装置を封止することが一般的である。半導体デバイスは家電製品、コンピュータ等、生活環境のあらゆる所で使用されているため、万が一の火災に備えて、半導体装置には難燃性が要求されている。
【0003】
半導体封止用エポキシ樹脂組成物中には、難燃性を高めるため、一般にハロゲン化エポキシ樹脂と三酸化アンチモンとが配合されている。このハロゲン化エポキシ樹脂と三酸化アンチモンとの組み合わせは、気相においてラジカルトラップ、空気遮断効果が大きく、その結果、高い難燃効果が得られるものである。
【0004】
しかし、ハロゲン化エポキシ樹脂は燃焼時に有毒ガスを発生するという問題があり、また三酸化アンチモンにも粉体毒性があるため、人体、環境に対する影響を考慮すると、これらの難燃剤を樹脂組成物中に全く含まないことが好ましい。
【0005】
このような要求に対して、ハロゲン化エポキシ樹脂あるいは三酸化アンチモンの代替として、従来からAl(OH)3、Mg(OH)2等の水酸化物、赤リン、リン酸エステル等のリン系難燃剤等の検討がなされてきている。しかし、Al(OH)3、Mg(OH)2等の水酸化物は難燃効果が低いため、難燃組成とするためには、エポキシ樹脂組成物中に水酸化物を多量に添加しなければならず、その結果、組成物の粘度が上昇し、成形時にボイド、ワイヤー流れ等の成形不良が発生するという問題がある。一方、赤リン、リン酸エステル等のリン系難燃剤をエポキシ樹脂組成物に添加した場合、半導体装置が高温高湿条件にさらされると、リン系難燃剤が加水分解されてリン酸が生成し、このリン酸がアルミ配線を腐食、もしくは銅フレーム、銀メッキフレームにおいてイオンマイグレーションを発生するなど信頼性を低下させるという大きな問題があった。
【0006】
この問題を解決するため、特許第2843244号公報(特許文献1)では、赤リンの表面にSiXOY組成からなる被覆層で被覆した化合物を難燃剤として使用したエポキシ樹脂組成物が提案されているが、上記の耐湿信頼性は改善されていないのが現状である。また、特開平10−259292号公報(特許文献2)では、環状ホスファゼン化合物を、充填剤を除く配合成分の合計量に対して、燐原子の量が0.2〜3.0質量%となる量を使用したエポキシ樹脂組成物も提案されているが、難燃性を得るためには相当な量をエポキシ樹脂組成物に添加する必要があり、その場合は硬化性の低下ならびに高温環境下での電気抵抗性低下を引き起こす等の問題点があった。
【0007】
【特許文献1】
特許第2843244号公報
【特許文献2】
特開平10−259292号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、臭素化エポキシ樹脂等の臭素化物及び三酸化アンチモン等のアンチモン化合物を含有せず、成形性に優れるとともに、難燃性及び耐湿信頼性に優れる硬化物を得ることができるエポキシ樹脂組成物、及び該樹脂組成物の硬化物で封止した半導体装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者等は、上記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)平均組成式(1)で示されるホスファゼン化合物、及び好ましくは(D)無機質充填剤を必須成分とし、臭素化物及びアンチモン化合物を実質的に含まないエポキシ樹脂組成物が、成形性に優れるとともに、難燃性、耐湿信頼性に優れる硬化物となりえ、また該エポキシ樹脂組成物の硬化物で封止された半導体装置が、難燃性、耐湿信頼性、高温電気特性に優れるものであることを見出し、本発明をなすに至ったものである。
【0010】
従って、本発明は、
(A)エポキシ樹脂
(B)硬化剤
(C)下記平均組成式(1)で示されるホスファゼン化合物
【化2】
[式中、R1は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、Rは脂肪族不飽和基を含有しない置換又は非置換の一価炭化水素基、Xは二価の有機基を示し、x、y、z、nは、0≦x<2n、0<y≦2n、x+y=2n、0≦z≦400、3≦n≦1,000を満たす数である。]
を必須成分とし、臭素化物及びアンチモン化合物を実質的に含まないことを特徴とするエポキシ樹脂組成物、及び上記エポキシ樹脂組成物の硬化物で封止した半導体装置を提供する。
【0011】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、このように、臭素化物、アンチモン化合物を実質的に含まないものである。一般に、エポキシ樹脂組成物中には、難燃性を達成するため、臭素化エポキシ樹脂と三酸化アンチモンとが配合されているが、本発明のエポキシ樹脂組成物は、この臭素化エポキシ樹脂と三酸化アンチモンとを使用せずに、難燃規格であるUL−94、V−0を達成することができるものである。
【0012】
ここで、臭素化エポキシ樹脂あるいは三酸化アンチモンの代替として、従来からAl(OH)3、Mg(OH)2等の水酸化物、赤リン、リン酸エステル等のリン系難燃剤等が検討されている。しかし、これらの公知の代替難燃剤は、特に高温において耐水性が弱く、難燃剤自身が溶解、分解して、抽出水中の不純物イオンを増加させるという共通の欠点があった。このため、臭素化物、アンチモン化合物を実質的に含まない従来の難燃性エポキシ樹脂組成物で封止された半導体装置を長時間高温高湿下に放置すると、半導体装置のアルミ配線が腐食し、耐湿信頼性が低下するという問題があった。
【0013】
本発明者等は、上記不都合を解決すべく鋭意検討を行った結果、難燃剤として平均組成式(1)で示されるホスファゼン化合物(C)を用いた半導体封止用エポキシ樹脂組成物が、前述のように抽出水中の不純物イオンを増加させることもなく、成形性に優れ、難燃性及び耐湿信頼性に優れた硬化物を得ることができることを見出したものである。
【0014】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明のエポキシ樹脂組成物を構成する(A)エポキシ樹脂は特に限定されない。一般的なエポキシ樹脂としては、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールアルカン型エポキシ樹脂、アラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格含有アラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂、ナフタレン環含有エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、スチルベン型エポキシ樹脂等が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を併用することができるが、本発明において臭素化エポキシ樹脂は配合されない。
【0015】
上記エポキシ樹脂は、加水分解性塩素が1,000ppm以下、特に500ppm以下であり、ナトリウム及びカリウムはそれぞれ10ppm以下の含有量とすることが好ましい。加水分解性塩素が1,000ppmを超える、また、ナトリウム又はカリウムが10ppmを超える場合は、長時間高温高湿下に半導体装置を放置すると、耐湿性が劣化する場合がある。
【0016】
本発明に用いる(B)硬化剤も特に限定されるものではない。一般的な硬化剤としては、フェノール樹脂が好ましく、具体的には、フェノールノボラック樹脂、ナフタレン環含有フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂、トリフェノールアルカン型フェノール樹脂、ビフェニル骨格含有アラルキル型フェノール樹脂、ビフェニル型フェノール樹脂、脂環式フェノール樹脂、複素環型フェノール樹脂、ナフタレン環含有フェノール樹脂、ビスフェノールA型樹脂、ビスフェノールF型樹脂等のビスフェノール型フェノール樹脂などが挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を併用することができる。
【0017】
上記硬化剤は、エポキシ樹脂と同様に、ナトリウム及びカリウムの含有量をそれぞれ10ppm以下とすることが好ましい。ナトリウム又はカリウムが10ppmを超える場合は、長時間高温高湿下に半導体装置を放置すると、耐湿性が劣化する場合がある。
【0018】
ここで、エポキシ樹脂、硬化剤の配合量は特に制限されないが、硬化剤としてフェノール樹脂を用いる場合、エポキシ樹脂中に含まれるエポキシ基1モルに対して、硬化剤中に含まれるフェノール性水酸基のモル比が0.5〜1.5、特に0.8〜1.2の範囲となる量であることが好ましい。
【0019】
また、本発明において、エポキシ樹脂と硬化剤との硬化反応を促進させるため、硬化促進剤を用いることが好ましい。この硬化促進剤は、硬化反応を促進させるものであれば特に制限はなく、例えばトリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(p−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリフェニルホスフィン・トリフェニルボラン、テトラフェニルホスフィン・テトラフェニルボレートなどのリン系化合物、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、α−メチルベンジルジメチルアミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7などの第3級アミン化合物、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール化合物等を使用することができる。
【0020】
硬化促進剤の配合量は有効量であるが、(A)エポキシ樹脂と(B)硬化剤との総量100質量部に対し、0.1〜5質量部、特に0.5〜2質量部とすることが好ましい。
【0021】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(C)下記平均組成式(1)で示されるホスファゼン化合物を使用するものである。
【化3】
[式中、R1は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、Rは脂肪族不飽和基を含有しない置換又は非置換の一価炭化水素基、Xは二価の有機基を示し、x、y、z、nは、0≦x<2n、0<y≦2n、x+y=2n、0≦z≦400、3≦n≦1,000を満たす数である。]
【0022】
上記式(1)で示されるホスファゼン化合物を添加した本発明のエポキシ樹脂組成物は、赤リン、リン酸エステル等のリン系難燃剤を添加したエポキシ樹脂組成物と比較して、熱水抽出特性に優れ、耐湿信頼性に特に優れる硬化物を得ることができる。また、上記式(1)で示されるホスファゼン化合物は、シリコーン骨格を有する為、難燃性と耐湿信頼性とを兼ね備えたものである。
【0023】
ここで、式(1)において、R1は水素原子、又はメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基であり、またRは脂肪族不飽和基を含有しない置換又は非置換の一価炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、キシリル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基などや、これら炭化水素基の水素原子の一部又は全部を塩素、フッ素、臭素等のハロゲン原子で置換したクロロメチル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換一価炭化水素基などの炭素数1〜15、特に1〜10の一価炭化水素基が例示される。
【0024】
Xは二価の有機基であり、炭素数2〜15、特に2〜5の酸素原子が介在してもよいアルキレン基が好ましく、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−OCH2CH2CH2−等で示される基を例示することができる。
【0025】
またこの場合、nは3〜1,000であるが、より好ましくは3〜10であり、合成上特に好ましくは3である。また、x、y、zは、上述した通りであるが、難燃性、耐湿信頼性の両立のためには、1.2n≦x≦1.8n、0.2n≦y≦0.8n、5≦z≦100であることが好ましい。
【0026】
更に詳しくは、上記シリコーン変性ホスファゼン化合物は、下記一般式(2)
(NPCl2)m ・・・(2)
(式中、mは3〜100、好ましくは3〜10である。)
で表わされる(I)クロロホスファゼン化合物と、(II)下記一般式(3)
【化4】
(式中、R1は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、Yは末端に二重結合を有する有機基を示す。)
で表されるフェノールと、必要により(III)フェノールとを反応させ、この反応物中のYの末端二重結合と、下記一般式(4)
【化5】
(式中、Rは脂肪族不飽和基を含有しない置換又は非置換の一価炭化水素基であり、zは0≦z≦400である。)
で示される(IV)有機珪素化合物のSiH基とを付加反応させることにより得ることができる。
【0027】
前記(II)成分のフェノールは、下記一般式(3)で表されるものである。
【化6】
(式中、R1は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、Yは末端に二重結合を有する有機基を示す。)
【0028】
上記式(3)中、R1は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、上述したR1と同様のものが例示できる。また、Yは末端に二重結合を有する有機基であり、末端に二重結合を有するものであれば特に限定されるものではないが、特に炭素数2〜15、とりわけ2〜5のものが好ましく、例えば、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、アリルオキシ基等のアルケニルオキシ基などが挙げられるが、中でもアリル基が好ましい。
【0029】
このような式(3)で表されるフェノールとして、具体的には、アリルフェノール、アリルオキシフェノールなどが挙げられ、本発明においては、この1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
【0030】
本発明において、(I)クロロホスファゼン化合物と、(II)末端が二重結合の有機基を含有するフェノール及び(III)フェノールとを反応させる際の混合割合としては、(I)クロロホスファゼン化合物中のP−Cl結合:(II)末端が二重結合の有機基を含有するフェノール及び(III)フェノール中のフェノール性水酸基当量=1:1〜1:50、特に1:1.1〜1:10となる量とすることが好ましい。
【0031】
また、フェノールを用いる場合、反応に用いる(II)末端が二重結合の有機基を含有するフェノールと(III)フェノールとの混合割合としては、フェノール性水酸基当量比で(II)末端が二重結合の有機基を含有するフェノール:(III)フェノール=1:1〜1:100、特に1:2〜1:20となる量とすることが好ましい。
【0032】
本発明において、クロロホスファゼン化合物と末端が二重結合の有機基を含有するフェノールと必要によりフェノールとを反応させる際、触媒を用いることが好ましい。触媒としては、例えば、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、α−メチルベンジルジメチルアミン等の第3級アミン化合物、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物等が挙げられる。
【0033】
上記触媒の添加量は有効量であり、特に限定されるものではないが、好ましくはクロロホスファゼン化合物の全P−Cl結合に対して1.2〜2.0当量(モル比)である。
【0034】
クロロホスファゼン化合物と末端が二重結合の有機基を含有するフェノールとフェノールとを反応させる際の反応は、通常有機溶媒中で行われ、このような有機溶媒としては、例えば、THF、トルエン、アセトン等が挙げられる。
【0035】
本反応方法としては、例えば、クロロホスファゼン化合物、フェノール及び触媒を有機溶媒中で反応させ、これに末端が二重結合の有機基を含有するフェノールを加えて更に反応させた後、再結晶させることにより、末端が二重結合の有機基を含有するホスファゼン化合物を得ることができる。またこの反応温度は、収率及び生産効率の面から室温〜150℃が好ましく、特に50〜100℃が好適であり、反応時間は1〜48時間、特に3〜20時間とすることが好ましい。
【0036】
次に、上述した(I)クロロホスファゼン化合物と、(II)末端が二重結合の有機基を含有するフェノールと、場合により(III)フェノールとを反応させた後、この反応物のYの末端二重結合と、下記平均組成式(4)で示される(IV)有機珪素化合物のSiH基とを付加反応させることにより、本発明のシリコーン変性ホスファゼン化合物を得ることができる。
【0037】
【化7】
上記式中、Rは脂肪族不飽和基を含有しない置換又は非置換の一価炭化水素基であり、上述したRと同様のものが例示でき、zは0≦z≦400、特に5≦z≦100である。
【0038】
このようなオルガノポリシロキサンとして、具体的には、下記式で示されるものが挙げられる。
【化8】
(式中、Meはメチル基、Phはフェニル基である。)
【0039】
ここで、上記末端が二重結合の有機基を含有するホスファゼン化合物と有機珪素化合物を付加反応させる場合、該末端が二重結合の有機基を含有するホスファゼン化合物及び有機珪素化合物は、それぞれ1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0040】
本付加反応において、上記末端が二重結合の有機基を含有するホスファゼン化合物と有機珪素化合物の混合割合としては、上記ホスファゼン化合物中のYの末端二重結合に対する有機珪素化合物中の珪素原子に結合した水素原子(SiH基)のモル比が、0.2〜1.0モル/モル、特に0.4〜0.95モル/モルとなる量で配合することが好ましい。
【0041】
上記付加反応の方法としては、従来公知の付加反応法に準じて行うことができる。即ち、付加反応に際しては、従来公知の付加反応触媒、例えば白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と1価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテートなどの白金系触媒、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム等のパラジウム系触媒、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等のロジウム系触媒などの白金族金属触媒を使用することが好ましい。なお、付加反応触媒の添加量としては触媒量とすることができ、通常、溶液濃度は20〜60質量%、触媒濃度は反応物に対して白金族金属換算で10〜100ppmである。
【0042】
また、上記付加反応は有機溶媒中で行うことが望ましく、有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、メチルイソブチルケトン等の不活性溶媒を用いることが好ましい。
【0043】
付加反応条件は特に制限されないが、通常60〜120℃で30分〜10時間反応させることが好ましい。
【0044】
また、(C)成分であるホスファゼン化合物の添加量は、(A)エポキシ樹脂と(B)硬化剤との総量100質量部に対し、1〜50質量部、特に2〜30質量部が好ましい。添加量が1質量部未満では十分な難燃効果が得られない場合があり、また50質量部を超えると、流動性の低下を引き起こす場合がある。
【0045】
本発明のエポキシ樹脂組成物中に配合される(D)無機質充填剤としては、通常エポキシ樹脂組成物に配合されるものを使用することができる。例えば、溶融シリカ、結晶性シリカ等のシリカ類、アルミナ、窒化珪素、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド、酸化チタン、ガラス繊維等が挙げられる。
【0046】
これら無機質充填剤の平均粒径や形状及び無機質充填剤の充填量は、特に限定されないが、難燃性を高めるためには、エポキシ樹脂組成物中に成形性を損なわない範囲で可能な限り多量に充填させることが好ましい。この場合、無機質充填剤の平均粒径、形状として、平均粒径5〜30μmの球状の溶融シリカが特に好ましく、また、無機質充填剤の充填量は、(A)エポキシ樹脂と(B)硬化剤との総量100質量部に対し、400〜1,200質量部、特に500〜1,000質量部とすることが好ましい。
【0047】
なお、本発明において、平均粒径は、例えばレーザー光回折法等による重量平均値(又はメディアン径)等として求めることができる。
【0048】
無機質充填剤は、樹脂と無機質充填剤との結合強度を強くするため、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤などのカップリング剤で予め表面処理したものを配合することが好ましい。このようなカップリング剤としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン、γ−メルカプトシラン等のメルカプトシランなどのシランカップリング剤を用いることが好ましい。ここで表面処理に用いるカップリング剤の配合量及び表面処理方法については、特に制限されるものではない。
【0049】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、本発明の目的及び効果を発現できる範囲内において、他の難燃剤、例えばリン酸エステル、トリフェニルホスフェート、ポリリン酸アンモニウム、赤リン等のリン系化合物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛等の無機化合物を添加することもできる。但し、三酸化アンチモン等のアンチモン化合物は配合されない。
【0050】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、更に必要に応じて各種の添加剤を配合することができる。例えば熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、有機合成ゴム、シリコーン系等の低応力剤、カルナバワックス、高級脂肪酸、合成ワックス等のワックス類、カーボンブラック等の着色剤、ハロゲントラップ剤等の添加剤を添加配合することができる。
【0051】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、硬化剤、ホスファゼン化合物、必要により無機質充填剤、その他の添加物を所定の組成比で配合し、これをミキサー等によって十分均一に混合した後、熱ロール、ニーダー、エクストルーダー等による溶融混合処理を行い、次いで冷却固化させ、適当な大きさに粉砕して成形材料とすることができる。
【0052】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、各成分を有機溶剤を用いて混合することができ、エポキシ樹脂、硬化剤、無機質充填剤、その他の添加物を所定の組成比で配合し、有機溶剤を用いて均一に混合した後、減圧留去により有機溶剤を除き、次いで冷却固化させ、適当な大きさに粉砕して成形材料とすることができる。更に、エポキシ樹脂、硬化剤のみ有機溶剤を用いて同様に混合物を得、これに無機質充填剤、その他の添加物を加えてミキサー等によって十分均一に混合した後、熱ロール、ニーダー、エクストルーダー等による溶融混合処理を行い、次いで冷却固化させ、適当な大きさに粉砕して成形材料とすることもできる。また、ワニスとしても使用可能である。このような有機溶剤としては、例えば、トルエン、MEK、THF、アセトン等が挙げられる。
【0053】
このようにして得られる本発明のエポキシ樹脂組成物は、各種の半導体装置の封止用として有効に利用でき、この場合、封止の最も一般的な方法としては、低圧トランスファー成形法が挙げられる。なお、本発明のエポキシ樹脂組成物の成形は、温度150〜180℃で30〜180秒、後硬化は150〜180℃で2〜16時間行うことが望ましい。
【0054】
【発明の効果】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、成形性に優れるとともに、難燃性及び耐湿信頼性に優れた硬化物を得ることができる。しかも、臭素化エポキシ樹脂等の臭素化物、三酸化アンチモン等のアンチモン化合物をエポキシ樹脂組成物中に含有しないので、人体、環境に対する悪影響もないものである。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物で封止された半導体装置は、難燃性、耐湿信頼性に優れたものであり、産業上特に有用である。
【0055】
【実施例】
以下、ホスファゼン化合物の合成例、及びエポキシ樹脂組成物の実施例と比較例を示し、本発明を具体的に示すが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0056】
[合成例1] 化合物Aの合成
窒素雰囲気下、室温にてヘキサクロロシクロトリホスファゼン25.7g(73.9mmol)、フェノール34.8g(370mmol)、トルエン250gの混合物中に、DBU31.0g(2,035mmol)を滴下した。80℃にて5時間攪拌した後、2−アリルフェノール49.6g(370mmol)のトルエン120g溶液を滴下し、100℃にて更に6時間攪拌を行った。その後、5%塩化水素水溶液500ml×2回、5%水酸化ナトリウム水溶液500ml×3回、5%塩化アンモニウム水溶液500ml×2回、純水500ml×3回で抽出を行い、硫酸ナトリウム50gを加えて乾燥させ、減圧下にて溶媒を留去することにより、下記式(5)で表されるアリル基含有ホスファゼン化合物を48.3g得た。
【0057】
【化9】
【0058】
リフラックスコンデンサー、温度計、攪拌機、及び滴下ロートを具備した500ml四つ口フラスコ中にトルエン100g、上記式(5)で表されるアリル基含有ホスファゼン化合物10gを入れ、窒素雰囲気下で2時間共沸脱水を行った。系内を80℃まで冷却し、塩化白金触媒0.1gを加えた後、下記式(6)で表される有機珪素化合物20.8gをトルエン83.1gに溶解した溶液を2時間かけて滴下した。系内を90〜100℃に保ちながら6時間攪拌して熟成した後、室温まで冷却した。その後、減圧下にて溶媒留去することにより、目的とするシリコーン変性ホスファゼン化合物(化合物A)が27.6g得られた。
【0059】
【化10】
【0060】
得られた反応生成物の1H−NMR、IRを測定した結果、1H−NMRは−0.5−0.5,4.2−4.4,7.2−7.8,7.9−8.2ppmにピークを示し、IRは700−950,1200−1400cm−1にP−N由来、1255cm−1付近にSi−Me由来のピークを示した。これにより、下記式で示される化合物Aが得られたことがわかった。
【0061】
(化合物A)
【化11】
【0062】
[合成例2] 化合物Bの合成
窒素雰囲気下、0℃で水素化ナトリウム4.8g(119mmol)をTHF50mlに懸濁させ、そこにフェノール10.2g(108mmol)、4,4’−スルホニルジフェノール0.45g(1.8mmol)のTHF50ml溶液を滴下した。30分攪拌後、ヘキサクロロトリホスファゼン12.5g(36.0mmol)のTHF50ml溶液を滴下し、5時間加熱還流を行った。そこに、別途0℃で水素化ナトリウム5.2g(130mmol)をTHF50mlに懸濁させ、そこにフェノール11.2g(119mmol)のTHF50ml溶液を滴下した溶液を滴下し、更に19時間加熱還流した。溶媒を減圧留去後、クロロベンゼンを加えて溶解し、5%水酸化ナトリウム水溶液200ml×2回、5%硫酸水溶液200ml×2回、5%炭酸水素ナトリウム水溶液200ml×2回、水200ml×2回で抽出を行った。溶媒を減圧留去し、黄褐色結晶(化合物B)を20.4g得た。
【0063】
(化合物B)
【化12】
【0064】
[実施例1〜3、比較例1〜3]
表1に示す成分を熱2本ロールにて均一に溶融混合し、冷却、粉砕して半導体封止用エポキシ樹脂組成物を得た。これらの組成物につき、次の(I)〜(VIII)の諸特性を測定した。結果を表2に示した。
【0065】
(I)スパイラルフロー値
EMMI規格に準じた金型を使用して、温度175℃、成形圧力6.9N/mm2、成形時間120秒の条件で測定した。
【0066】
(II)ゲル化時間
組成物のゲル化時間を175℃の熱板上で測定した。
【0067】
(III)成形硬度
JIS−K6911に準じて、温度175℃、成形圧力6.9N/mm2、成形時間90秒の条件で10×4×100mmの棒を成形したときの熱時硬度をバーコール硬度計で測定した。
【0068】
(IV)高温電気抵抗特性
温度175℃、成形圧力6.9N/mm2、成形時間120秒の条件で70φ×3mmの円板を成形し、180℃で4時間ポストキュアーした。その後、150℃雰囲気下で体積抵抗率を測定した。
【0069】
(V)難燃性
UL−94規格に基づき、1/32インチ厚の板を、温度175℃、成形圧力6.9N/mm2、成形時間120秒の条件で成形し、180℃で4時間ポストキュアーしたものの難燃性を調べた。
【0070】
(VI)耐湿性
アルミニウム配線を形成した6×6mmの大きさのシリコンチップを14pin−DIPフレーム(42アロイ)に接着し、更にチップ表面のアルミニウム電極とリードフレームとを30μmφの金線でワイヤボンディングした後、これにエポキシ樹脂組成物を温度175℃、成形圧力6.9N/mm2、成形時間120秒の条件で成形し、180℃で4時間ポストキュアーした。このパッケージそれぞれ20個を140℃/85%RHの雰囲気中−5Vの直流バイアス電圧をかけて500時間放置した後、アルミニウム腐食が発生したパッケージ数を調べた。
【0071】
(VII)高温保管信頼性
アルミニウム配線を形成した6×6mmの大きさのシリコンチップを14pin−DIPフレーム(42アロイ)に接着し、更にチップ表面のアルミニウム電極とリードフレームとを30μmφの金線でワイヤボンディングした後、これにエポキシ樹脂組成物を温度175℃、成形圧力6.9N/mm2、成形時間120秒の条件で成形し、180℃で4時間ポストキュアーした。このパッケージそれぞれ20個を200℃雰囲気中500時間放置した後、発煙硝酸で溶解、開封し、金線引張り強度を測定した。引張り強度が初期値の70%以下となったものを不良とし、不良数を調べた。
【0072】
(VIII)耐熱衝撃クラック性
アルミニウム配線を形成した6×6mmの大きさのシリコンチップを14pin−DIPフレーム(42アロイ)に接着し、更にチップ表面のアルミニウム電極とリードフレームとを30μmφの金線でワイヤボンディングした後、これにエポキシ樹脂組成物を温度175℃、成形圧力6.9N/mm2、成形時間120秒の条件で成形し、180℃で4時間ポストキュアーした。このパッケージそれぞれ5個を260℃の半田浴/30秒及び−196℃/60秒の冷熱衝撃を100サイクル行い、クラックが発生したものを不良としてこの不良率(%)を調べた。
【0073】
【表1】
【0074】
エポキシ樹脂:o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、EOCN1020−55(日本化薬製、エポキシ当量200)
硬化剤:フェノールノボラック樹脂、DL−92(明和化成製、フェノール性水酸基当量110)
ホスファゼン化合物:合成例1,2の化合物(化合物A,B)
無機質充填剤:球状溶融シリカ(龍森製、平均粒径20μm)
硬化触媒:トリフェニルホスフィン(北興化学製)
離型剤:カルナバワックス(日興ファインプロダクツ製)
カーボンブラック:デンカブラック(電気化学工業製)
シランカップリング剤:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、KBM−403(信越化学工業製)
【0075】
【表2】
【0076】
表2の結果から明らかなように、本発明のエポキシ樹脂組成物は、硬化性に優れると共に、難燃性、耐湿信頼性に優れ、高温電気抵抗特性に優れる硬化物を得ることができ、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物で封止された半導体装置は、難燃性、耐湿信頼性に優れるものである。しかも、臭素化エポキシ樹脂等の臭素化物、三酸化アンチモン等のアンチモン化合物を樹脂組成物中に含有しないので、人体・環境に対する悪影響がないものである。
Claims (4)
- (A)エポキシ樹脂と(B)硬化剤との総量100質量部に対し、(C)ホスファゼン化合物の添加量が1〜50質量部であることを特徴とする請求項1記載のエポキシ樹脂組成物。
- 更に、(D)無機質充填剤を(A)エポキシ樹脂と(B)硬化剤との総量100質量部に対して400〜1,200質量部配合してなることを特徴とする請求項1又は2記載のエポキシ樹脂組成物。
- 請求項1,2又は3記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物で封止した半導体装置。
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JP2003155482A JP2004352954A (ja) | 2003-05-30 | 2003-05-30 | エポキシ樹脂組成物及び半導体装置 |
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JP2022066237A (ja) * | 2016-07-29 | 2022-04-28 | 住友ベークライト株式会社 | 半導体封止用エポキシ樹脂組成物および半導体装置 |
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