JP2004352772A - プラスチゾル組成物、及び物品 - Google Patents

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依里子 荒井
Shinji Saeki
慎二 佐伯
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Abstract

【課題】プラスチゾル組成物に含まれる微量の不純物とエポキシ基との反応阻害を防止し、加熱時にエポキシ基とそれと反応する官能基を有する化合物との反応が十分に進行し、優れた機械的特性を有するゲル化膜を得ることが可能なプラスチゾル組成物を得る。
【解決手段】(A)アクリル系重合体、(B)エポキシ基を有する化合物、(C)エポキシ基と反応する官能基を有する化合物、(D)リン酸系化合物、(E)可塑剤を必須構成成分とするプラスチゾル組成物、又は(A’)エポキシ基含有アクリル系重合体、(C)エポキシ基と反応する官能基を有する化合物、(D)リン酸系化合物、(E)可塑剤を必須構成成分とするプラスチゾル組成物。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラスチゾル組成物中に含まれるエポキシ基とそれと反応する官能基を有する化合物との反応を、リン酸系化合物を添加することにより向上させることを目的とした、リン酸系化合物を含むプラスチゾル組成物、及びこれを用いて得られる物品に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、塩化ビニル系プラスチゾルに代表されるように、様々な重合体微粒子を可塑剤中に分散させてなるプラスチゾル組成物が、その優れた物性、作業性により、自動車用途をはじめ、床材、壁紙等、多岐に渡る産業分野で用いられている。中でも、プラスチゾルを構成する重合組成物もしくは、配合組成化合物中に、反応性官能基としてエポキシ基を有するプラスチゾルは、接着性、あるいは硬化物性等に優れる点から、自動車用途をはじめ、建材用途等に多用されている。
【0003】
さらに最近では、環境問題への関心が強まるに従い、塩化ビニル系プラスチゾルに替わるプラスチゾルとして、焼却時に有害なガス等を発生せず、貯蔵安定性が良好であり、なおかつ加熱後の成形品の機械的物性に優れるアクリル系プラスチゾル組成物等が提案されている。その具体例として、例えば重合体組成物中にエポキシ基を有し、そのエポキシ基と反応しうるカルボキシル化合物、酸無水物等種々の添加剤を配合したプラスチゾル組成物等が数多く提案されている。それらは良好な貯蔵安定性を示すと共に、加熱時に化学反応させることにより、強度、接着性、ゲル化特性等の諸物性を向上させることが可能である(例えば特許文献1〜3参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平6−322218号公報
【特許文献2】
特開平7−157622号公報
【特許文献3】
特開平7−188390号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、これらプラスチゾルはコスト低下を目的として、炭酸カルシウム等を代表とする無機フィラーを多量に配合する場合がほとんどである。しかしながら、無機フィラーの種類やそれ以外の成分中に含まれる微量の不純物等が、プラスチゾル中に含まれるエポキシ基とそのエポキシ基と反応する化合物との反応を阻害してしまうという課題があった。ここでいう微量の不純物とは、例えば無機フィラー中に存在するものとしては、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等に代表される、塩基性の金属酸化物類等が挙げられる。
【0006】
そして、プラスチゾル組成物中に含まれる微量の不純物によって、エポキシ基の反応が十分に進行せず、得られるゲル化膜の基材に対する接着性、もしくはゲル化特性等が大幅に低下したり、機械的特性が十分に発現されない傾向がある。
【0007】
以上のように、エポキシ基を含有するプラスチゾル組成物において、組成物中に存在する、特に無機フィラー中に含まれる微量の不純物による、エポキシ基とそれと反応する官能基を有する化合物との反応阻害を阻止する方法は見出されていないのが現状である。
【0008】
つまり本発明が解決しようとする課題は、微量の不純物成分による、エポキシ基とそれと反応する官能基を有する化合物との反応阻害が生じず、しかも得られるゲル化膜の機械的特性に優れるプラスチゾル組成物を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題に対し鋭意検討を行ったところ、プラスチゾル組成物にリン酸系化合物を添加すれば、所望する特性が発現することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明の主旨とするところは、(A)アクリル系重合体、(B)エポキシ基を有する化合物、(C)エポキシ基と反応する官能基を有する化合物、(D)リン酸系化合物、及び(E)可塑剤を必須構成成分とするプラスチゾル組成物である。
ここで、前記記載の(A)アクリル系重合体が、(A’)エポキシ基含有アクリル系重合体である場合、プラスチゾル組成物は、(A’)エポキシ基含有アクリル系重合体、(C)エポキシ基と反応する官能基を有する化合物、(D)リン酸系化合物、(E)可塑剤を必須構成成分としてよい。
また、ここで、前記記載の(A)アクリル系重合体は、(A”)エポキシ基を含まないアクリル系重合体であってもよい。
また、本発明のプラスチゾル組成物は、さらに無機フィラーを含むことが好ましい。
さらに、本発明では、前記記載のプラスチゾル組成物により得られる物品も提供される。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明においてプラスチゾル組成物中に含まれるエポキシ基は、それと反応する官能基を有する化合物と反応することによって、得られる物品の諸物性を向上させるために用いられている。エポキシ基はプラスチゾル組成物のどの構成成分に含まれていてもよく、特には限定されない。
例えば、エポキシ基含有アクリル系重合体を用いる方法、プラスチゾル中にエポキシ基を有する化合物を存在させる方法、及びそれらを組み合わせる方法等が挙げられる。
【0012】
本発明において、アクリル系重合体(A)を得るために使用可能なモノマーの具体例としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート等の直鎖アルキルアルコールの(メタ)アクリレート類、あるいはシクロヘキシル(メタ)アクリレート等の環式アルキルアルコールの(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
特に、炭素数が4以上のアルコールの(メタ)アクリレートとしては、上述したようなn−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート等の直鎖アルキルアルコールの(メタ)アクリレート類、あるいはシクロヘキシル(メタ)アクリレート等の環式アルキルアルコールの(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
またこれ以外に、必要に応じて各種の官能基を有するモノマーを共重合して機能化することも可能である。こうしたモノマーの例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート類、アセトアセトキエチル(メタ)アクリレート等のカルボニル基含有(メタ)アクリレート類、N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
また必要に応じて重合体を架橋することも可能であり、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類等の多官能モノマーを利用することができる。
さらに補助的に、アクリルアミド及びその誘導体として例えばジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド等、さらにはスチレン及びその誘導体、酢酸ビニル、ウレタン変性アクリレート類、エポキシ変性アクリレート類、シリコーン変性アクリレート類等の特殊なモノマーも利用することが可能である。
なお利用可能なモノマーはこれらに限定されるものではない。
【0013】
本発明に用いるアクリル系重合体(A)のうち、エポキシ基含有アクリル系重合体(A’)を得るには、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ含有(メタ)アクリレート類、エポキシ含有アクリレート類を、先に挙げた(メタ)アクリレート化合物と共重合させて、アクリル系重合体中にエポキシ基を導入すればよい。
ここでいうエポキシ基含有アクリレート類の具体例としては、例えばグリシジルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート等が挙げられる。
エポキシ基の共重合比に関しては特に限定はされないが、少なくともエポキシ基含有アクリル系重合体(A’)中に0.01mmol/g以上であることが好ましく、また上限は1mol/g以上であることがより好ましい。
【0014】
本発明のプラスチゾルに用いるアクリル系重合体(A)の構造としては、特に限定されず、均一構造をはじめ、コア/シェル型構造粒子、あるいは複数のモノマーの配合割合(比率)を多段階かつ連続的に変化させながら重合を行うことにより得られるグラディエント型構造粒子等が挙げられる。
【0015】
本発明に用いるアクリル系重合体(A)は、水系媒体中での乳化重合、シード乳化重合、ソープフリー重合、懸濁重合、微細懸濁重合等の手法で得ることが可能である。また、水系媒体でなくとも、有機媒体中での分散重合、あるいは水/有機混合媒体中での分散重合、さらには有機媒体中での沈殿重合等も利用可能である。さらに、これらの重合技術を複数個組み合わせた複合的な重合技術を用いても構わない。
【0016】
これらの重合技術により得られる重合体分散液から重合体を回収する方法としては、特に限定されるものではなく、噴霧乾燥法(スプレードライ法)、凝固法、凍結乾燥法、遠心分離法、濾過法等を広く利用することができる。なかでも、噴霧乾燥法は粒子の性状を制御しやすい点や生産性等の点から好ましい。
【0017】
本発明において、アクリル系重合体(A)として、エポキシ基を含まないアクリル系重合体(A”)を使用する場合には、構成成分としてエポキシ基を有する化合物(B)を含む必要がある。
エポキシ基を有する化合物(B)の具体例としては、例えばビスフェノールAから得られるビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールFから得られるビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールSから得られるビスフェノールS型エポキシ樹脂、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、アルカンジオールジグリシジルエーテル等のジグリシジルエーテル類、およびジグリシジルエステル等の2官能のエポキシ系化合物等が挙げられる。
3官能以上のエポキシ系化合物としては、イソシアヌレートトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、アミノフェノールトリグリシジル化合物、シクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、ビスレゾルシノールのテトラグリシジルエーテル、アルキルジアミンテトラグリシジル化合物、フェノールノボラック型エポキシ樹脂等がある。
【0018】
本発明に用いるエポキシ基と反応する官能基を有する化合物(C)は、本発明の組成物中に含まれるエポキシ基と反応させるために必要な成分である。
エポキシ基と反応する官能基を有する化合物(C)としては特に制限されない。
その中でも、エポキシ基と反応させることにより、アクリル系重合体と可塑剤との相溶性がさらに向上することから、カルボキシル基含有化合物、もしくは酸無水物が好ましい。
例えばエポキシ基含有アクリル系重合体(A’)を用いる場合には、エポキシ基と反応する官能基を有する化合物(C)のうち、カルボキシル基含有化合物又は酸無水物を用いることが好ましい。
カルボキシル基含有化合物の具体例としては、例えばプロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸、ラウリン酸、ミスチリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、等の飽和カルボン酸、さらにはステアリン酸、オレイン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和カルボン酸類の1価脂肪酸類等が挙げられる。
これらカルボキシル基含有化合物の炭素鎖部分は、分枝構造、環構造等を有していてもよい。
また、2価、あるいは3価のカルボキシル化合物であってもよい。
2価のカルボン酸の具体例としては、例えばマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等が挙げられる。
それらの中でも、成膜時の加熱による揮発、分解が起こらないことから、炭素鎖部分は少なくとも炭素数が8以上であることが好ましい。
エポキシ基と反応する官能基を有する化合物(C)として、酸無水物を用いれば、反応によって得られるゲル化膜の諸物性を向上させることができる。
酸無水物の具体例としては、例えば無水フタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水トリカルバリル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水ピロメリット酸、エチレングリコールビストリメリテイト等が挙げられる。
それらの中でも、加熱時に十分反応を進行させることができることから、融点がゲル化膜形成時の加熱温度以下である酸無水物、もしくは後述する可塑剤(E)に溶解する酸無水物が好ましい。
【0019】
エポキシ基を含まないアクリル系重合体(A”)を用いる場合には、エポキシ基と反応する官能基を有する化合物(C)として、例えば第三アミン類、ポリアミン、ジエチレントリアミン、ポリアミド樹脂、ジエチルアミノプロピルアミン、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、メタフェニレンジアミン、ポリスルフィド樹脂、フェノール樹脂、ジシアンジアミド等の化合物を用いることが好ましい。
【0020】
本発明においてエポキシ基と反応する官能基を有する化合物(C)の含有量は特に制限されないが、組成物中に含まれるエポキシ基の量に対し、モル単位計算で0.01〜1000質量%の範囲であることが好ましい。さらにその中でも、組成物中のエポキシ基との反応率の点から、下限値が20質量%以上であることがより好ましい。また、その上限値が120質量%以下の範囲であることがより好ましい。
【0021】
本発明において、エポキシ基の反応阻害防止目的として用いるリン酸系化合物(D)は特に限定されないが、その中でも、エポキシ基の反応阻害を防止する効果に優れることから、下記一般式(1)で表されるリン酸系化合物であることが好ましい。
【化1】
Figure 2004352772
(式中、Rは飽和、あるいは不飽和炭素鎖を示し、n=1〜3である。)
本発明に用いるリン酸系化合物(D)は、その中でも、粘度、コスト、及び取り扱いの面から、一般式(1)中、Rの炭素数が15以下の飽和あるいは不飽和炭素鎖である化合物を用いることがより好ましい。その特に好ましい範囲は10以下である。ここで一般式(1)中、Rの炭素数が15よりも大きい化合物の場合には、粘度が非常に高くなり、場合によっては固体となるため、溶解性等の点で作業性が低下する傾向にある。
また、本発明において用いるリン酸系化合物は、その中でも、不純物との反応を防止する阻害効果に優れることから、一般式(1)中、nは1又は2の酸性リン酸であることが好ましい。
【0022】
本発明においてリン酸系化合物(D)を添加すれば、リン酸系化合物とプラスチゾル組成物中の微量の不純物との反応が、カルボキシル化合物と不純物との反応に比べ優先的に反応する。このようにリン酸系化合物が、いわば微量の不純物のトラップ剤として作用することにより、カルボキシル化合物と不純物との反応を防止する阻害効果が発現する。
なお、本発明においてリン酸系化合物(D)の含有量は、プラスチゾル組成物中に含まれる不純物量によって適宜選択すればよく、不純物が多ければそれに応じて増やせばよい。
その中でも、リン酸系化合物(D)の含有量は、プラスチゾル組成物中に含まれるエポキシ量に対し、0.01〜20質量%の範囲であることが好ましい。より好ましくは、上限値が5質量%以下であり、下限値が1質量%以上である。
このリン酸系化合物(D)の含有量の上限値が20質量%を超える場合には、得られるゲル化膜からブリードアウトしたり、そのゲル化膜の強度が低下する傾向がある。
また、その下限値が0.01質量%より少ない場合には、不純物による反応阻害を防止する効果が十分に発現しない傾向がある。
【0023】
本発明の組成物は、可塑剤(E)を含有する。この可塑剤(E)は特に限定されず、所望に応じて適宜選択すればよく、公知の可塑剤を用いることができる。
可塑剤(E)の具体例としては、例えば、ジ(2−エチルヘキシル)フタレート、ブチルベンジルフタレート、ジノニルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジヘプチルフタレート等のフタル酸エステル、ジオクチルアジペート、ジデシルアジペート等の脂肪族二塩基酸エステル、ポリオキシエチレングリコールジベンゾエート、ポリオキシプロピレングリコールジベンゾエート等のポリグリコール安息香酸エステル、トリブチルホスフェート、トリクレジルホスフェート等のリン酸エステル、ポリアルキレングリコール等が挙げられる。
本発明において、可塑剤(E)の含有量は、得られるゲル化膜の特性に応じて適宜選択すればよい。
その中でも、アクリル系重合体(A)100質量部に対して、可塑剤(E)の含有量は、10〜1000質量部の範囲であることが好ましい。
【0024】
本発明で利用可能な無機フィラーの具体例としては、例えば炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、パーライトカオリン、クレー、コロイダルシリカ、マイカ粉、珪砂、珪藻土、カオリン、タルク、ベントナイト、ガラス粉末、酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、フライアッシュ、シラスバルーン、酸加チタン、硫酸バリウム、亜鉛華、ベンガラ、カーボンブラック、アルミナ、金属粉等が挙げられる。
【0025】
その他、本発明の組成物には、必要に応じて、本発明の組成物中に含まれるエポキシ基と、それと反応する官能基を有する化合物(C)との反応を促進させる反応触媒として、第三アミン、ホウ素錯塩、無機物等を、本発明の特性を損なわない範囲で添加してもよい。
【0026】
本発明のプラスチゾル組成物は、自動車アンダーコート、自動車ボディーシーラ、自動車マスチック接着剤、タイルカーペットバッキング材、クッションフロア、壁紙、鋼板塗料、建材用接着剤、各種シーラ、スクリーン印刷用塗料、等のコーティング材として用いることができる。
また本発明のプラスチゾル組成物は、その他、玩具、手袋、食品サンプル、靴、ガスケット、防水シート、自動車内層表皮材、帆布、テーブルクロス、合成皮革、消しゴム、等の物品の成形材料として用いることもできる。
本発明の物品は、前記したプラスチゾル組成物を加熱してゲル化することによって得られるものであり、基材上にゲル化膜が積層してなる物品であっても、ゲル化膜のみからなる物品であってもよい。
【0027】
【実施例】
次に実施例および比較例を挙げて、本説明をより具体的に説明する。
【0028】
実施例及び比較例における試料の作成方法は次の通りである。
(1) プラスチゾルの調製法
表1に示す各成分を真空ミキサー(シンキー(株)製ARV−200)にて脱泡攪拌(10秒間大気圧にて攪拌した後、20mmHgに減圧し50秒間、回転数2000rpmにて混合)を行い、プラスチゾルを調製する。
(2) ゲル化膜の形成法
(1)の手法により得られたプラスチゾルを、ガラス板上に約2mm厚に塗布し、140℃×30分間加熱してゲル化させ、ゲル化膜を得る。
【0029】
各試料の物性の評価方法は以下の通りである。
(1)反応率(単位:%)
得られたゲル化膜を液体窒素により凍結粉砕した後、アセトン中で一週間放置し、未反応のカルボキシル化合物をアセトン中に十分抽出させ、その抽出量をガスクロマトグラフィー(島津製作所(株)ガスクロマトグラフGC−14B、カラムはJ&W Scientific製DB−EAX)にて定量し、エポキシ基と反応する官能基を有する化合物と反応したエポキシ基の反応率を求める。
得られた反応率について、下記基準に従い評価する。
◎:80%以上〜100%
○:60%以上80%未満
△:40%以上60%未満
×:〜40%未満
(2)強度(単位:MPa)
得られたゲル化膜について、ダンベル形状2号型 (JIS−K7113)に裁断して試験片とし、テンシロン測定器により強度の測定を行う。なお、この試験速度は200mm/min、ロードセル定格980N、測定時の環境温度は25℃で行う。
◎:3.0以上
○:2.0以上3.0未満
△:1.0以上2.0未満
×:1.0以下
上記の測定により得られた結果を表1に示した。
【表1】
Figure 2004352772
表中、(C)欄中の括弧内の数値は、組成物中に含まれるエポキシ基に対する量(モル単位計算、単位:質量%)を意味する。
また、表中の記号は下記の通りである。
(A’)製造例1で得られたエポキシ基含有アクリル系重合体
(A”)製造例2で得られたエポキシ基を含まないアクリル系重合体
*1:ビスフェノールAジグリシジルエーテル樹脂
*2:ジエチレントリアミン
*3:3,3,5−トリメチルヘキサン酸
*4:ラウリン酸(和光純薬(株)製)
*5:無水マレイン酸(日本触媒(株)製)
*6:イソデシルアシッドホスヘート
*7:ポリプロピレングリコール(昭和興産(株)製、商品名:アデカポリエーテルP−700)
*8:炭酸カルシウム
【0030】
[製造例1:エポキシ基を含むアクリル系重合体の調製]
温度計、窒素ガス導入管、攪拌棒、滴下漏斗、冷却管を装備した2リットルの4つ口フラスコに、純水500gを入れ、30分間十分に窒素ガスを通気し、純水中の溶存酸素を置換した。内温が80℃に達した時点で、窒素ガス通気を停止し、10gの純水に溶解した過硫酸カリウム0.25gを一度に添加し、モノマー乳化液(メチルメタクリレート442.8g、グリシジルメタクリレート156.3g、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム5.0g、純水250.0gを混合攪拌して乳化したもの)を5時間かけて滴下し、引き続き80℃にて1時間攪拌を継続して、重合体分散液を得た。
得られた重合体分散液を室温まで冷却した後、スプレードライヤーを用いて、入口温度170℃、出口温度75℃、アトマイザ回転数25000rpmにて噴霧乾燥し、エポキシ基を含むアクリル系重合体を得た。
[製造例2:エポキシ基を含まないアクリル系重合体の調製]
温度計、窒素ガス導入管、攪拌棒、滴下漏斗、冷却管を装備した2リットルの4つ口フラスコに、純水500gを入れ、30分間十分に窒素ガスを通気し、純水中の溶存酸素を置換した。純水中の溶存酸素を置換した。内温が80℃に達した時点で、窒素ガス通気を停止し、10gの純水に溶解した過硫酸カリウム0.25gを一度に添加し、モノマー乳化液(メチルメタクリレート469.8.8g、n−ブチルメタクリレート192.2g、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム5.0g、純水250.0gを混合攪拌して乳化したもの)を5時間かけて滴下し、引き続き80℃にて1時間攪拌を継続して、重合体分散液を得た。
得られた重合体分散液を室温まで冷却した後、スプレードライヤーを用いて、入口温度170℃、出口温度75℃、アトマイザ回転数25000rpmにて噴霧乾燥し、エポキシ基を含まないアクリル系重合体を得た。
【0031】
[実施例1]
製造例1で得られたアクリル系重合体95部に対し、エポキシ基と反応する官能基を有する化合物として3,5,5−トリメチルヘキサン酸(共和発酵(株)製、商品名:キョーワノイックN)を5部、リン酸系化合物としてイソデシルアシッドホスヘート0.2部(大八化学工業(株)製、商品名:AP−10)、可塑剤としてポリプロピレングリコール120部(昭和興産(株)製、商品名:アデカポリエーテルP−700)、反応触媒としてテトラブチルアンモニウムブロマイド0.5部(和光純薬(株)製)を添加し、前述の方法に従って組成物を調製し、それを用いてゲル化膜を得た。
ゲル化膜を得る際に反応したエポキシ基の反応率は、前述の評価法に従ってガスクロマトグラフィーにより確認したところ、78.2%と良好であった。また、得られたゲル化膜のテンシロン測定による引っ張り強度は2.5MPaであり、良好な結果であった。
【0032】
[実施例2及び3]
表1に示す通り、リン酸系化合物の配合量を変更する以外は、実施例1と同様にして組成物を調製し、それを用いてゲル化膜を得た。
【0033】
[実施例4]
製造例2で得られたアクリル系重合体90部に対し、エポキシ基を有する化合物としてビスフェノールAグリシジルエーテル樹脂15部、エポキシ基と反応する官能基を有する化合物としてジエチレントリアミン5部、リン酸系化合物としてイソデシルアシッドホスヘート1.0部、可塑剤としてポリプロピレングリコール120部、反応触媒としてテトラブチルアンモニウムブロマイド0.5部を添加し、炭酸カルシウム360部を前述の方法に従って組成物を調製し、それを用いてゲル化膜を得た。
ゲル化膜を得る際に反応したエポキシ基の反応率は、ガスクロマトグラフィーにより確認したところ、81.7%と良好であった。また、得られたゲル化膜のテンシロン測定による引っ張り強度は3.8MPaであり、大変良好であった。
【0034】
[実施例5〜7]
エポキシ基と反応する官能基を有する化合物としてラウリン酸を用い、リン酸系化合物の添加量を実施例1〜3と同様に変更する以外は表1に示す配合比で、実施例1と同様にして組成物を調製し、それを用いてゲル化膜を得た。この評価結果を表1に示す。
これらのものもエポキシ基と反応する官能基を有する化合物として3,5,5−トリメチルヘキサン酸を用いた場合と同様の物性を示した。
【0035】
[実施例8〜10]
エポキシ基と反応する官能基を有する化合物として無水マレイン酸を用い、リン酸系化合物の添加量を実施例1〜3と同様に変更する以外は表1に示す配合比で、実施例1と同様にして組成物を調製し、それを用いてゲル化膜を得た。この評価結果を表1に示す。
【0036】
[実施例11〜13]
無機フィラーとして炭酸カルシウムも他の構成成分と同時に、さらに配合する以外は表1に示す配合比で実施例1と同様にして組成物を調製し、それを用いてゲル化膜を得た。この評価結果を表1に示す。
【0037】
[比較例1〜5]
リン酸系化合物を配合しない以外は表1に示す配合比で実施例1と同様にして組成物を調製し、それを用いてゲル化膜を得た。この評価結果を表1に示す。
【0038】
【発明の効果】
本発明のプラスチゾル組成物は、リン酸系化合物を添加することにより、エポキシ基の反応を十分に進行させることを可能とした。またその結果、得られるゲル化膜の機械的特性を極めて向上させることを見出したものであり、その効果は著大である。

Claims (5)

  1. (A)アクリル系重合体
    (B)エポキシ基を有する化合物
    (C)エポキシ基と反応する官能基を有する化合物
    (D)リン酸系化合物
    (E)可塑剤
    を必須構成成分とするプラスチゾル組成物。
  2. (A’)エポキシ基含有アクリル系重合体
    (C)エポキシ基と反応する官能基を有する化合物
    (D)リン酸系化合物
    (E)可塑剤
    を必須構成成分とするプラスチゾル組成物。
  3. (A)アクリル系重合体が、(A”)エポキシ基を含まないアクリル系重合体である請求項1記載のプラスチゾル組成物。
  4. さらに無機フィラーを含む請求項1から3のいずれか一項に記載のプラスチゾル組成物。
  5. 請求項1から4のいずれか一項に記載のプラスチゾル組成物により得られる物品。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN109161168A (zh) * 2018-09-03 2019-01-08 界首市鑫豪塑胶有限公司 一种机械性能稳定的改性塑料颗粒及制备工艺

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