JP2004352736A - オレフィン類重合用固体触媒成分および触媒 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、オレフィン類重合用固体触媒成分および触媒に関し、特には高温重合特性および活性持続性に優れたオレフィン類重合用固体触媒成分および触媒に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、オレフィンの重合においては、マグネシウム、チタン、電子供与性化合物及びハロゲンを必須成分として含有する固体触媒成分が知られている。また該固体触媒成分、有機アルミニウム化合物及び有機ケイ素化合物から成るオレフィン重合用触媒の存在下に、プロピレンを重合もしくは共重合させるオレフィンの重合方法が数多く提案されている。例えば、特許文献1(特開昭57−63310号公報)および特許文献2(特開昭57−63311号公報)には、塩化マグネシウムを初めとするマグネシウム化合物、四塩化チタンを初めとするチタン化合物およびフタル酸ジエステルをはじめとするジエステル化合物の電子供与体を含有する固体触媒成分と有機アルミニウム化合物およびSi−O−C結合を有する有機ケイ素化合物との組み合わせから成る触媒を用いて、炭素数3以上のオレフィンを重合させる方法が開示されている。また、特許文献3(特開平1−6006号公報)には、アルコキシマグネシウム、四塩化チタン、フタル酸ジブチルを含むオレフィン類重合用固体触媒成分が開示されている。
【0003】
上記の従来の固体触媒成分や触媒は、オレフィンの存在下に重合することによって、オレフィン重合体が高収率で得られており、プロピレン重合を初めとして工業的に広く用いられている。上記のようなマグネシウムやチタンを含有する固体触媒成分は一般に熱に弱く、通常100℃以上の高温になると活性が極端に低下してしまう。オレフィン重合の場合、発熱反応であるため、重合プロセスにおいて発生する重合反応熱を除去しながら行っており、通常エチレンやプロピレンの重合は70〜80℃程度の温度で行っている。また、このように重合して粉状のオレフィン重合体を得た後、加熱溶融して顆粒状にペレットに成形し、射出成型や押出成型などにより最終的に製品化される。したがって、重合体が溶融するような高温度域で重合を行うことができれば、重合反応熱の除去や、ペレット化に要するエネルギー付加を省略することができる。しかしながら、上記のようなマグネシウムや四塩化チタンなどのハロゲン含有チタン化合物を含有するチーグラー・ナッタ触媒を主とする従来の触媒では100℃以上の高温重合で活性を維持できるものはなかった。
【0004】
さらに最近プロピレン−エチレンのブロック共重合体など、特性の優れたより付加価値の高い重合体が要求され、その市場が拡大している。プロピレン−エチレンのブロック共重合体は、第1段階でプロピレンの単独重合を行い、第2段階以降でエチレンとプロピレンの共重合を行う。このように多段階で重合を行うため、使用する触媒には重合時の活性の持続性(リビング性)が要求される。しかしながら、上記のようなマグネシウムや四塩化チタンなどのハロゲン含有チタン化合物を含有するチーグラー・ナッタ触媒を主とする従来のオレフィン類重合用触媒は、上述したような高温により失活するという問題もあり、重合時の活性持続性(リビング性)が必ずしも十分ではなかった。
【0005】
一方、最近では、シクロペンタジエニルやインデニルを配位子とするメタロセン触媒や、フェノキシ−イミン骨格を有する配位子を持つ遷移金属化合物などの非メタロセン触媒などによる高温重合特性や共重合特性の改善が試みられており、エチレンの重合を中心に成果をあげつつある。しかしながら、これらの触媒は錯体の重合時の安定性や得られる重合体特性を改善するため、配位子を架橋したり、また特殊な置換基を配するなど複雑な合成が必要であり触媒製造コストが非常に高いという問題がある。金属成分としてクロムなどの毒性を有するものを用いられる場合があり、環境上の問題もあり、上記の触媒特性を改善しつつ低コストでかつ環境に影響のない触媒の開発が望まれていた。
【0006】
【特許文献1】
特開昭57−63310号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】
特開昭57−63311号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】
特開平1−6006号公報(特許請求の範囲)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
すなわち、本発明の目的は、かかる従来技術に残された問題点を解決するものであり、高温重合特性および活性持続性に優れ、低コストで環境に影響のないオレフィン類重合用固体触媒成分および触媒を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記従来技術に残された課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の構造を有するハロゲンを含有しないアルコキシチタン錯化合物を含むオレフィン類重合用固体触媒成分が、オレフィン類の重合あるいは共重合に供したときに高温重合特性および活性の持続性に優れること、低コストで環境に影響のない触媒であることなどを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記一般式(1):
【0010】
【化2】
【0011】
(式中、R1 は、炭素数1〜12の直鎖状または分岐鎖状アルキル基を示し、R2、R3およびR4は、水素原子、炭素数1〜12の直鎖状または分岐鎖状アルキル基、フェニル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアシル基、炭素数1〜12のアシルオキシ基、メタクリルオキシ基、メタクリルオキシアルキル基、メタクリルオキシアルコキシ基を示し、R2、R3およびR4は同一でも異なっていてもよく、xは0または1〜3の整数、yは1〜4の整数、x+y=4、xとyとは同一でも異なっていてもよい。)で表されるチタン錯化合物を含有することを特徴とするオレフィン類重合用固体触媒成分を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、(A)前記オレフィン類重合用固体触媒成分、および(B)下記一般式(2);R5 pAlQ3−p (2)
(式中、R5は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Qは水素原子あるいはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3の整数である。)で表される有機アルミニウム化合物を用いて形成されることを特徴とするオレフィン類重合用触媒を提供するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明における成分(A)に含有されるチタン錯化合物(以下、単に「成分(a)」ということがある。)としては、前記一般式(1)で表される化合物であり、アルコキシチタンに1,3−ジケトン(β−ジケトン)が配位したアルコキシチタン錯化合物、またはチタンに1,3−ジケトン(β−ジケトン)が配位したチタン錯化合物である。本発明のチタン錯化合物はx+yが4であるので4価のチタン化合物であり、具体的には、一般式(1)中、xが2でyが2の場合、アルコキシが2つで1,3−ジケトンが2つの6配位のチタン化合物、及びxが3でyが1の場合のアルコキシが3つで1,3−ジケトンが1つの5配位のチタン化合物が挙げられる。
【0014】
R1としては炭素数1〜8の直鎖状または分岐鎖状アルキル基が好ましく、特に炭素数2〜4の直鎖状または分岐鎖状アルキル基が好ましく、具体的にはプロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチルなどが挙げられる。またR3としては、水素原子またはメチルが好ましく、特に好ましくは水素原子である。R2およびR4としては、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ、メタクリル、メタクリルオキシ、メタクリルオキシ基、メタクリルオキシアルキル基、メタクリルオキシアルコキシ基が好ましく、R2とR4は同一でも異なっていてもよい。
【0015】
一般式(1)で表されるチタン錯化合物の具体例としては、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナト)チタン、ジイソプロポキシビス(2−エチル−1,3−ヘキサンジオラト)チタン、トリイソプロポキシ(エチルアセトアセテート)チタン、トリイソプロポキシ(アセチルアセトナト)チタン、トリイソプロポキシ(2−エチル−1,3−ヘキサンジオラト)チタン、トリイソプロポキシ(メタクリルオキシエチルアセトアセテート)チタン、ジブトキシビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジブトキシビス(アセチルアセトナト)チタン、ジブトキシビス(2−エチル−1,3−ヘキサンジオラト)チタン、トリブトキシ(エチルアセトアセテート)チタン、トリブトキシ(アセチルアセトナト)チタン、トリブトキシ(2−エチル−1,3−ヘキサンジオラト)チタン、トリブトキシ(メタクリルオキシエチルアセトアセテート)チタン、テトラエチルアセトアセテートチタン、テトラアセチルアセトナトチタン、テトラ(2−エチル−1,3−ヘキサンジオラト)チタン、テトラ(メタクリルオキシエチルアセトアセテート)チタンなどが挙げられる。
【0016】
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分は上記のチタン錯化合物(a)を含有するが、その他にハロゲン含有マグネシウム化合物などを担体成分として用いることによってマグネシウムまたはハロゲンを含有することが好ましい。本発明の固体触媒成分の具体的な調製方法は、上記チタン錯化合物(a)とマグネシウム化合物などの担体成分、また必要に応じて電子供与性化合物を接触させて調製することができる。
【0017】
本発明のオレフィン類重合用触媒成分の調製に用いられる担体成分(以下、単に「成分(b)」ということがある。)としては、マグネシウム化合物、シリカなどのケイ素化合物、アルミナなどのアルミニウム化合物が挙げられ、このうち、マグネシウム化合物が好ましい。
【0018】
好適に使用されるマグネシウム化合物としては、ジハロゲン化マグネシウム、ジアルキルマグネシウム、ハロゲン化アルキルマグネシウム、ジアルコキシマグネシウム、ジアリールオキシマグネシウム、ハロゲン化アルコキシマグネシウムあるいは脂肪酸マグネシウム等が挙げられる。
【0019】
ジハロゲン化マグネシウムとしては、二塩化マグネシウム、二臭化マグネシウムおよび二沃化マグネシウム等が挙げられる。
【0020】
ジアルキルマグネシウムとしては、ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、メチルエチルマグネシウム、ジプロピルマグネシウム、メチルプロピルマグネシウム、エチルプロピルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、メチルブチルマグネシウムおよびエチルブチルマグネシウム等が挙げられる。
【0021】
ハロゲン化アルキルマグネシウムとしては、エチル塩化マグネシウム、プロピル塩化マグネシウムおよびブチル塩化マグネシウム等が挙げられる。
【0022】
ジアルコキシマグネシウムまたはジアリールオキシマグネシウムとしては、ジメトキシマグネシウム、ジエトキシマグネシウム、ジプロポキシマグネシウム、ジブトキシマグネシウム、ジフェノキシマグネシウム、エトキシメトキシマグネシウム、エトキシプロポキシマグネシウムおよびブトキシエトキシマグネシウム等が挙げられる。
【0023】
ハロゲン化アルコキシマグネシウムとしては、メトキシ塩化マグネシウム、エトキシ塩化マグネシウム、プロポキシ塩化マグネシウム、ブトキシ塩化マグネシウム等が挙げられる。
【0024】
脂肪酸マグネシウムとしては、ラウリル酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、オクタン酸マグネシウム及びデカン酸マグネシウム等が挙げられる。
【0025】
本発明におけるこれらマグネシウム化合物の中で、ジハロゲン化マグネシウムが好ましく、その中でも特に二塩化マグネシウムが好ましい。本発明の固体触媒成分は、触媒活性種として成分(a)のようなハロゲンを含まないチタン錯化合物を用いており、この点が従来の触媒にない新規な点である。しかしながら、上記マグネシウム化合物のうちジアルキルマグネシウム、ジアルコキシマグネシウム、ジアリールオキシマグネシウム、脂肪酸マグネシウムについては、その一部あるいは全部をハロゲン化して用いることもでき、そのハロゲン化剤として四塩化チタンなどを用いることができる。また、活性や立体特異性などの特性を向上させるために、固体触媒成分(A)の調製において、成分(a)と成分(b)を接触させる前、接触時、あるいは接触した後に、四塩化チタンを接触させることもできる。
【0026】
本発明における固体触媒成分(A)の調製に用いられる電子供与性化合物(以下、単に成分(c)ということがある。)は、酸素原子あるいは窒素原子を含有する有機化合物であり、例えばアルコール類、フェノール類、エーテル類、エポキシ類、エステル類、ケトン類、酸ハライド類、アルデヒド類、アミン類、アミド類、ニトリル類、イソシアネート類、ピペリジン類、Si−O−C結合を含む有機ケイ素化合物等が挙げられる。
【0027】
具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−エチルヘキサノール等のアルコール類、フェノール、クレゾール等のフェノール類、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、ブチルエーテル、アミルエーテル、ジフェニルエーテル、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3―ジメトキシプロパン等のエーテル類、1,8−シネオール等のエポキシ類、ギ酸メチル、酢酸エチル、酢酸ビニル、酢酸プロピル、酢酸オクチル、酢酸シクロヘキシル、プロピオン酸エチル、酪酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸オクチル、安息香酸シクロヘキシル、安息香酸フェニル、p−トルイル酸メチル、p−トルイル酸エチル、アニス酸メチル、アニス酸エチル等のモノカルボン酸エステル類、コハク酸ジエチル、コハク酸ジプロピル、コハク酸ジブチル、コハク酸ジイソブチル、n−ブチルコハク酸ジエチル、n−ブチルコハク酸ジプロピル、n−ブチルコハク酸ジブチル、n−ヘキシルコハク酸ジエチル、n−ヘキシルコハク酸ジプロピル、n−ヘキシルコハク酸ジブチル、n−デシルコハク酸ジエチル、n−デシルコハク酸プロピル、n−デシルコハク酸ジブチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジプロピル、マロン酸ジブチル、マロン酸ジイソブチル、マロン酸ジペンチル、マロン酸ジネオペンチル、イソプロピルブロモマロン酸ジエチル、ブチルブロモマロン酸ジエチル、イソブチルブロモマロン酸ジエチル、ジイソプロピルマロン酸ジエチル、ジブチルマロン酸ジエチル、ジイソブチルマロン酸ジエチル、ジイソペンチルマロン酸ジエチル、イソプロピルイソブチルマロン酸ジエチル、イソプロピルイソペンチルマロン酸ジメチル、(3−クロロ−n−プロピル)マロン酸ジエチル、ビス(3−ブロモ−n−プロピル)マロン酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジプロピル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジオクチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−プロピル、フタル酸ジ−iso−プロピル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジ−iso−ブチル、フタル酸エチルメチル、フタル酸メチル(iso−プロピル)、フタル酸エチル(n−プロピル)、フタル酸エチル(n−ブチル)、フタル酸エチル(iso−ブチル)、フタル酸ジ−n−ペンチル、フタル酸ジ−iso−ペンチル、フタル酸ジ−neo−ペンチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジ−n−ヘプチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ビス(2,2−ジメチルヘキシル)、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジ−n−ノニル、フタル酸ジ−iso−デシル、フタル酸ビス(2,2−ジメチルヘプチル)、フタル酸n−ブチル(iso−ヘキシル)、フタル酸n−ブチル(2−エチルヘキシル)、フタル酸n−ペンチルヘキシル、フタル酸n−ペンチル(iso−ヘキシル)、フタル酸iso−ペンチル(ヘプチル)、フタル酸n−ペンチル(2−エチルヘキシル)、フタル酸n−ペンチル(iso−ノニル)、フタル酸iso−ペンチル(n−デシル)、フタル酸n−ペンチルウンデシル、フタル酸iso−ペンチル(iso−ヘキシル)、フタル酸n−ヘキシル(2,2−ジメチルヘキシル)、フタル酸n−ヘキシル(2−エチルヘキシル)、フタル酸n−ヘキシル(iso−ノニル)、フタル酸n−ヘキシル(n−デシル)、フタル酸n−ヘプチル(2−エチルヘキシル)、フタル酸n−ヘプチル(iso−ノニル)、フタル酸n−ヘプチル(neo−デシル)、フタル酸2−エチルヘキシル(iso−ノニル)、4−メチルフタル酸ジネオペンチル、4−エチルフタル酸ジネオペンチル、4,5−ジメチルフタル酸ジネオペンチル、4,5−ジエチルフタル酸ジネオペンチル、4−クロロフタル酸ジエチル、4−クロロフタル酸ジ−n−ブチル、4−クロロフタル酸ジネオペンチル、4−クロロフタル酸ジイソブチル、4−クロロフタル酸ジイソヘキシル、4−クロロフタル酸ジイソオクチル、4−ブロモフタル酸ジエチル、4−ブロモフタル酸ジ−n−ブチル、4−ブロモフタル酸ジネオペンチル、4−ブロモフタル酸ジイソブチル、4−ブロモフタル酸ジイソヘキシル、4−ブロモフタル酸ジイソオクチル、4,5−ジクロロフタル酸ジエチル、4,5−ジクロロフタル酸ジ−n−ブチル、4,5−ジクロロフタル酸ジイソヘキシル、4,5−ジクロロフタル酸ジイソオクチルなどのフタル酸ジエステルおよびフタル酸ジエステル誘導体等のジカルボン酸エステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン等のケトン類、フタル酸ジクロライド、テレフタル酸ジクロライド等の酸ハライド類、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、オクチルアルデヒド、ベンズアルデヒド等のアルデヒド類、メチルアミン、エチルアミン、トリブチルアミン、ピペリジン、アニリン、ピリジン等のアミン類、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド等のアミド類、アセトニトリル、ベンゾニトリル、トルニトリル等のニトリル類、イソシアン酸メチル、イソシアン酸エチル等のイソシアネート類、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどのピペリジン類、フェニルアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、フェニルアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルキルアルコキシシラン等のSi−O−C結合を含む有機ケイ素化合物等を挙げることができる。
【0028】
上記の電子供与性化合物のうち、エステル類、とりわけモノカルボン酸エステル類および芳香族ジカルボン酸ジエステルが好ましく用いられ、特に安息香酸エステルおよびフタル酸ジエステルが好適である。
【0029】
前記固体触媒成分(A)は、上述したような成分(a)および成分(b)、または成分(a)、成分(b)および成分(c)を接触させることにより調製することができ、この接触は、不活性有機溶媒の不存在下で処理することも可能であるが、操作の容易性を考慮すると、該溶媒の存在下で処理することが好ましい。用いられる不活性有機溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素化合物、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素化合物、オルトジクロルベンゼン、塩化メチレン、四塩化炭素、ジクロルエタン等のハロゲン化炭化水素化合物等が挙げられるが、このうち、沸点が90〜150℃程度の、常温で液状状態の芳香族炭化水素化合物、具体的にはトルエン、キシレン、エチルベンゼンが好ましく用いられる。
【0030】
また、固体触媒成分(A)を調製する方法としては、(I)上記の成分(a)と成分(b)、あるいは成分(a)、成分(b)および成分(c)を共粉砕する方法、(II)上記の成分(b)のマグネシウム化合物を、アルコール又はチタン化合物等に溶解させ、成分(a)あるいは成分(a)および成分(c)との接触あるいは加熱処理などにより固体物を析出させ、この固体物に成分(a)あるいは成分(a)と成分(c)を接触して固体触媒成分(A)を得る方法、または(III)成分(b)を不活性炭化水素溶媒等に懸濁させ、これに成分(a)あるいは成分(a)と成分(c)を接触して固体触媒成分(A)を得る方法などが挙げられる。
【0031】
各成分の接触は、不活性ガス雰囲気下及び水分等を除去した状況下、撹拌機を具備した容器中で撹拌しながら行われる。接触温度は、単に接触させて撹拌混合する場合や、分散あるいは懸濁させて変性処理する場合には、室温付近あるいはそれ以下の比較的低温域であっても差し支えないが、接触後に反応させて生成物を得る場合には、0〜130℃の温度域が好ましい。130℃を超えると使用した溶媒の蒸発が顕著になるなどして、反応の制御が困難になる。なお、反応時間は1分以上、好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上である。
【0032】
以下に、固体触媒成分(A)の調製方法を例示する。
(1)二塩化マグネシウムを溶媒に懸濁させ、これにチタン錯化合物(a)を添加し、反応させ、次いで成分(c)を接触反応させて固体触媒成分(A)を調製する方法。
(2)二塩化マグネシウム及び2−エチルヘキシルアルコールを反応させて均一溶液とした後、該均一溶液にチタン錯化合物(a)を添加し、反応させ、次いで成分(c)を接触反応させて固体触媒成分(A)を調製する方法。
(3)ジブチルマグネシウム等の有機マグネシウム化合物に四塩化チタンを接触させ塩素化した後、チタン錯化合物(a)を接触反応させ、次いで成分(c)を接触反応させて固体触媒成分(A)を調製する方法。
(4)ジエトキシマグネシウムをアルキルベンゼンまたはハロゲン化炭化水素溶媒中に懸濁させた後、四塩化チタンと接触させ、固体成分を得、これにチタン錯化合物(a)を接触反応させ、次いで成分(c)を接触反応させて固体触媒成分(A)を調製する方法。
(5)ステアリン酸マグネシウムのような脂肪族マグネシウムをアルキルベンゼンまたはハロゲン化炭化水素溶媒中に懸濁させた後、四塩化チタンと接触させ、固体成分を得、これにチタン錯化合物(a)を接触反応させ、次いで成分(c)を接触反応させて固体触媒成分(A)を調製する方法。
【0033】
本発明の固体触媒成分(A)中、チタン錯化合物(a)の含有量としては、通常0.1〜30重量%、好ましくは1〜20重量%である。また担体成分としてマグネシウム、ハロゲンまた電子供与性化合物を含む場合、マグネシウムが10〜30重量%、ハロゲン原子が40〜70重量%、電子供与性化合物の含有量は3〜30重量%である。
【0034】
各化合物の使用量比は、調製法により異なるため一概には規定できないが、例えば成分(b)1モル当たり、成分(a)が0.5〜100モル、好ましくは0.5〜50モルである。また成分(c)が0.01〜10モル、好ましくは0.02〜5.0モルである。
【0035】
本発明のオレフィン類重合用触媒を形成する際に用いられる有機アルミニウム化合物(B)(以下、「成分(B)」ということがある。)としては、上記一般式(2)で表される化合物を用いることができる。このような有機アルミニウム化合物(B)の具体例としては、トリエチルアルミニウム、トリ−iso−ブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムブロマイド、エチルアルミニウムセスキクロライド、メチルアルミニウムセスキクロライド、ジイソブチルアルミニウムクロライドなどのハロゲン含有アルキルアルミニウム化合物、ジエチルアルミニウムハイドライドなどの水素含有アルキルアルミニウム化合物、またジエチルアルミニウムエトキシド、エチルアルミニウムジエトキシドなどが挙げられ、このうち、トリエチルアルミニウム、トリ−iso−ブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライドが好ましい。またこれらの有機アルミニウム化合物は1種単独または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0036】
本発明のオレフィン類重合用触媒を形成する際に用いられる外部電子供与性化合物(C)(以下、「成分(C)」ということがある。)としては、前記固体触媒成分の調製に用いることのできる電子供与性化合物と同じものが用いられるが、その中でも9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3―ジメトキシプロパン等のエーテル類、安息香酸メチルおよび安息香酸エチルなどのエステル類、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどのピペリジン類、1,8−シネオールなどのエポキシ類および有機ケイ素化合物が好ましい。
【0037】
上記の有機ケイ素化合物としては、下記一般式(3)で表される化合物が用いられる。 R6 qSi( OR7)4−q (3)
(式中、R6は炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基のいずれかで、同一または異なっていてもよい。R7は炭素数1〜4のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基を示し、同一または異なっていてもよい。qは0≦q≦3の整数である。)
【0038】
このような有機ケイ素化合物としては、フェニルアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、フェニルアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルキルアルコキシシラン等を挙げることができる。
【0039】
上記の有機ケイ素化合物を具体的に例示すると、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリ−n−プロピルメトキシシラン、トリ−n−プロピルエトキシシラン、トリ−n−ブチルメトキシシラン、トリ−iso−ブチルメトキシシラン、トリ−t−ブチルメトキシシラン、トリ−n−ブチルエトキシシラン、トリシクロヘキシルメトキシシラン、トリシクロヘキシルエトキシシラン、シクロヘキシルジメチルメトキシシラン、シクロヘキシルジエチルメトキシシラン、シクロヘキシルジエチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−iso−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−iso−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−iso−ブチルジメトキシシラン、ジ−t−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、n−ブチルメチルジメトキシシラン、ビス(2−エチルヘキシル)ジメトキシシラン、ビス(2−エチルヘキシル)ジエトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジエトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジエトキシシラン、ビス(3−メチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、ビス(4−メチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、ビス(3,5−ジメチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジエトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジプロポキシシラン、3−メチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、4−メチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、3,5−ジメチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、3−メチルシクロヘキシルシクロヘキシルジメトキシシラン、4−メチルシクロヘキシルシクロヘキシルジメトキシシラン、3,5−ジメチルシクロヘキシルシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロペンチルメチルジメトキシシラン、シクロペンチルメチルジエトキシシラン、シクロペンチルエチルジエトキシシラン、シクロペンチル(iso−プロピル)ジメトキシシラン、シクロペンチル(iso−ブチル)ジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジエトキシシラン、シクロヘキシル(n−プロピル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(iso−プロピル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(n−プロピル)ジエトキシシラン、シクロヘキシル(iso−ブチル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(n−ブチル)ジエトキシシラン、シクロヘキシル(n−ペンチル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(n−ペンチル)ジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、フェニルエチルジメトキシシラン、フェニルエチルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、iso−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、iso−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、iso−ブチルトリメトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、2−エチルヘキシルトリメトキシシラン、2−エチルヘキシルトリエトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等を挙げることができる。このうち、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−iso−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−iso−ブチルジメトキシシラン、ジ−t−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジエトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジエトキシシラン、シクロペンチルメチルジメトキシシラン、シクロペンチルメチルジエトキシシラン、シクロペンチルエチルジエトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジエトキシシラン、3−メチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、4−メチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、3,5−ジメチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシランが好ましく用いられる。これら有機ケイ素化合物は1種単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
次に本発明のオレフィン類重合用触媒は、前記成分(A)および成分(B)、または成分(A)、成分(B)および成分(C)より成り、該触媒の存在下にオレフィン類の重合もしくは共重合を行う。オレフィン類としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキサン等であり、これらのオレフィン類は1種または2種以上併用することができる。とりわけ、エチレン、プロピレン及び1−ブテンが好適に用いられる。特に好ましくはプロピレンである。プロピレンの重合の場合、他のオレフィン類との共重合を行うこともできる。共重合されるオレフィン類としては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキサン等であり、これらのオレフィン類は1種単独または2種以上併用することができる。とりわけ、エチレン及び1−ブテンが好適に用いられる。プロピレンと他のオレフィン類との共重合体としては、プロピレンと少量のエチレンをモノマーとして1段階で重合して製造されるランダム共重合体と、第1段階(第1重合槽)でプロピレンのみの重合を行い第2段階(第1重合槽)でプロピレンとエチレンの共重合を行い製造される、所謂プロピレン−エチレンのインパクトコポリマーが代表的である。このようなランダム共重合体やインパクトコポリマーの製造においても、上記の成分(A)、成分(B)および成分(C)からなる本発明の触媒は有効であり、共重合特性や得られた共重合体の特性も良好である。
【0041】
各成分の使用量比は、本発明の効果に影響を及ぼすことのない限り任意であり、特に限定されるものではないが、通常成分(B)は成分(A)中のチタン原子1モル当たり、1〜2000モル、好ましくは50〜1000モルの範囲で用いられる。成分(C)は、(B)成分1モル当たり、0.002〜10モル、好ましくは0.01〜2モルの範囲で用いられる。
【0042】
各成分の接触順序は任意であるが、重合系内にまず有機アルミニウム化合物(B)を装入し、次いで固体触媒成分(A)を接触させることが望ましい。外部電子供与性化合物(C)を用いる場合は、重合系内にまず有機アルミニウム化合物(B)を装入し、次いで外部電子供与性化合物(C)を接触させ、更に固体触媒成分(A)を接触させることが望ましい。
【0043】
本発明における重合は、有機溶媒の存在下または不存在下で行うことができ、またプロピレン等のオレフィン単量体は、気体及び液体のいずれの状態でも用いることができる。重合温度は200℃以下であり、重合圧力は10MPa以下、好ましくは5MPa以下である。重合温度は、特に100〜200℃の高温度域であっても触媒の活性が維持でき、重合反応熱の除去やペレット化に要するエネルギー付加を省略することができる点で有利である。また、連続重合法、バッチ式重合法のいずれでも可能である。更に重合反応を1段で行ってもよいし、2段以上で行ってもよい。
【0044】
更に、本発明において成分(A)および成分(B)、また必要に応じて成分(C)より成る触媒を用いてオレフィンを重合するにあたり(本重合ともいう。)、本重合に先立ち予備重合を行うことも可能である。予備重合の際には、本重合と同様のオレフィン類あるいはスチレン等のモノマーを用いることができる。
【0045】
予備重合を行うに際して、各成分及びモノマーの接触順序は任意であるが、好ましくは、不活性ガス雰囲気あるいはプロピレンなどの重合を行うガス雰囲気に設定した予備重合系内にまず成分(B)を装入し、次いで成分(A)を接触させた後、プロピレン等のオレフィン及び/または1種あるいは2種以上の他のオレフィン類を接触させる。成分(C)を組み合わせて予備重合を行う場合は、不活性ガス雰囲気あるいはプロピレンなどの重合を行うガス雰囲気に設定した予備重合系内にまず成分(B)を装入し、次いで成分(C)を接触させ、更に固体触媒成分(A)を接触させた後、プロピレン等のオレフィン及び/または1種あるいはその他の2種以上のオレフィン類を接触させる方法が望ましい。
【0046】
本発明によって形成されるオレフィン類重合用触媒は、オレフィン類の重合を行った場合、高温の重合温度での活性があまり低下せず、また長時間活性が低下せず、重合時の活性持続性が良好である。
【0047】
【実施例】
以下、本発明の実施例により具体的に説明する。なお、以下の実施例において、オレフィン類重合用固体触媒成分(A)中のチタンの含有量は酸化還元滴定法により測定した。
【0048】
実施例1
〔固体触媒成分(A)の調製〕
窒素ガスで十分に置換され、撹拌機を具備した容量500mlの丸底フラスコに無水二塩化マグネシウム粉末(比表面積80m2/g)5g、トルエン80mlおよび安息香酸エチル1.1mlを装入して、懸濁状態とした。この懸濁液に、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタンが88容量%のイソプロピルアルコール溶液1.0mlを200mlのトルエンに溶解させた溶液を、室温にて、2時間かけて滴下した。その後室温にて3時間攪拌した。その後100mlのトルエンで常温にて3回デカンテーションにて洗浄を行い、固体触媒成分を得た。なお、この固体触媒成分中の固液を分離して、固体分中のチタンの含有量を測定したところ、0.57重量%であった。
【0049】
〔重合触媒の形成および重合〕
窒素ガスで完全に置換され、撹拌機を具備した容量500mlの丸底フラスコに、n−ヘプタン200mlを加えた。次いで、ジエチルアルミニウムクロライドをn−ヘプタンで希釈した溶液をアルミニウム原子として40mmolおよび安息香酸エチルを5mmol加えて70℃に昇温した。その後フラスコにプロピレンガスを15分間フローした。次いで、上記で調製した固体触媒成分をチタン原子として0.1mmol加え、70℃で1時間重合を行った。得られた重合体をろ別し、減圧乾燥して固体重合体を得た。一方、ろ液を凝縮して重合溶媒に溶存する重合体を得、その量を(M) とし、固体重合体の量を(N) とする。固体触媒成分当たりの重合活性(Y) を下記式で表す。
(Y)=[ (M) +(N)](g)/固体触媒成分量(mmol−Ti)
【0050】
また、生成固体重合体の立体規則性の指標であるペンタド(mmmm)を13C−NMRにて以下の条件で測定した。
測定装置:GEM−300スペクトロメーター(バリアン社製)
測定周波数:75MHz
測定温度:120℃
溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼン
ロック剤:ベンゼン−d6、99.6%
内部標準液:ヘキサメチルジシロキサン
【0051】
上記の結果、重合活性は32g−PP/mmol−Ti、ペンタド(mmmm)は85.8mol%であった。
【0052】
実施例2
〔固体触媒成分(A)の調製〕
ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタンが88容量%のイソプロピルアルコール溶液1.0mlの代わりに、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナト)チタンが88容量%のイソプロピルアルコール溶液1.0mlを用いた以外、実施例1と同様に実験を行い固体触媒成分を調製した。なお、この固体触媒成分中の固液を分離して、固体分中のチタンの含有量を測定したところ、0.64重量%であった。
【0053】
〔重合触媒の形成および重合〕
実施例1と同様に行った結果、重合活性は13g−PP/mmol−Ti、ペンタド(mmmm)は83.1mol%であった。
【0054】
実施例3
〔重合触媒の形成および重合〕
窒素ガスで完全に置換され、撹拌機を具備した容量500mlの丸底フラスコに、n−デカン200mlを加えた。次いで、ジエチルアルミニウムクロライドをn−デカンで希釈した溶液をアルミニウム原子として40mmolおよび安息香酸エチルを5mmol加えて100℃に昇温した。その後フラスコにプロピレンガスを15分間フローした。次いで、実施例1で調製した固体触媒成分をチタン原子として0.1mmol加え、100℃で1時間重合を行った。その結果、重合活性は25g−PP/mmol−Ti、ペンタド(mmmm)は75.1mol%であった。
【0055】
実施例4
〔重合触媒の形成および重合〕
窒素ガスで完全に置換され、撹拌機を具備した容量500mlの丸底フラスコに、n−デカン200mlを加えた。次いで、ジエチルアルミニウムクロライドをn−デカンで希釈した溶液をアルミニウム原子として40mmolおよび安息香酸エチルを5mmol加えて130℃に昇温した。その後フラスコにプロピレンガスを15分間フローした。次いで、実施例1で調製した固体触媒成分をチタン原子として0.1mmol加え、130℃で1時間重合を行った。その結果、重合活性は17g−PP/mmol−Ti、ペンタド(mmmm)は73.5mol%であった。
【0056】
【発明の効果】
本発明のオレフィン類重合用触媒は、オレフィン類重合または共重合に供した際、高温重合においても活性の低下が少なく、また活性持続性に優れており、従って、ポリオレフィンを、低コストで提供し得ると共に、高機能性を有するオレフィン類の共重合体の製造において有用性が期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の重合触媒を調製する工程を示すフローチャート図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、オレフィン類重合用固体触媒成分および触媒に関し、特には高温重合特性および活性持続性に優れたオレフィン類重合用固体触媒成分および触媒に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、オレフィンの重合においては、マグネシウム、チタン、電子供与性化合物及びハロゲンを必須成分として含有する固体触媒成分が知られている。また該固体触媒成分、有機アルミニウム化合物及び有機ケイ素化合物から成るオレフィン重合用触媒の存在下に、プロピレンを重合もしくは共重合させるオレフィンの重合方法が数多く提案されている。例えば、特許文献1(特開昭57−63310号公報)および特許文献2(特開昭57−63311号公報)には、塩化マグネシウムを初めとするマグネシウム化合物、四塩化チタンを初めとするチタン化合物およびフタル酸ジエステルをはじめとするジエステル化合物の電子供与体を含有する固体触媒成分と有機アルミニウム化合物およびSi−O−C結合を有する有機ケイ素化合物との組み合わせから成る触媒を用いて、炭素数3以上のオレフィンを重合させる方法が開示されている。また、特許文献3(特開平1−6006号公報)には、アルコキシマグネシウム、四塩化チタン、フタル酸ジブチルを含むオレフィン類重合用固体触媒成分が開示されている。
【0003】
上記の従来の固体触媒成分や触媒は、オレフィンの存在下に重合することによって、オレフィン重合体が高収率で得られており、プロピレン重合を初めとして工業的に広く用いられている。上記のようなマグネシウムやチタンを含有する固体触媒成分は一般に熱に弱く、通常100℃以上の高温になると活性が極端に低下してしまう。オレフィン重合の場合、発熱反応であるため、重合プロセスにおいて発生する重合反応熱を除去しながら行っており、通常エチレンやプロピレンの重合は70〜80℃程度の温度で行っている。また、このように重合して粉状のオレフィン重合体を得た後、加熱溶融して顆粒状にペレットに成形し、射出成型や押出成型などにより最終的に製品化される。したがって、重合体が溶融するような高温度域で重合を行うことができれば、重合反応熱の除去や、ペレット化に要するエネルギー付加を省略することができる。しかしながら、上記のようなマグネシウムや四塩化チタンなどのハロゲン含有チタン化合物を含有するチーグラー・ナッタ触媒を主とする従来の触媒では100℃以上の高温重合で活性を維持できるものはなかった。
【0004】
さらに最近プロピレン−エチレンのブロック共重合体など、特性の優れたより付加価値の高い重合体が要求され、その市場が拡大している。プロピレン−エチレンのブロック共重合体は、第1段階でプロピレンの単独重合を行い、第2段階以降でエチレンとプロピレンの共重合を行う。このように多段階で重合を行うため、使用する触媒には重合時の活性の持続性(リビング性)が要求される。しかしながら、上記のようなマグネシウムや四塩化チタンなどのハロゲン含有チタン化合物を含有するチーグラー・ナッタ触媒を主とする従来のオレフィン類重合用触媒は、上述したような高温により失活するという問題もあり、重合時の活性持続性(リビング性)が必ずしも十分ではなかった。
【0005】
一方、最近では、シクロペンタジエニルやインデニルを配位子とするメタロセン触媒や、フェノキシ−イミン骨格を有する配位子を持つ遷移金属化合物などの非メタロセン触媒などによる高温重合特性や共重合特性の改善が試みられており、エチレンの重合を中心に成果をあげつつある。しかしながら、これらの触媒は錯体の重合時の安定性や得られる重合体特性を改善するため、配位子を架橋したり、また特殊な置換基を配するなど複雑な合成が必要であり触媒製造コストが非常に高いという問題がある。金属成分としてクロムなどの毒性を有するものを用いられる場合があり、環境上の問題もあり、上記の触媒特性を改善しつつ低コストでかつ環境に影響のない触媒の開発が望まれていた。
【0006】
【特許文献1】
特開昭57−63310号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】
特開昭57−63311号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】
特開平1−6006号公報(特許請求の範囲)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
すなわち、本発明の目的は、かかる従来技術に残された問題点を解決するものであり、高温重合特性および活性持続性に優れ、低コストで環境に影響のないオレフィン類重合用固体触媒成分および触媒を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記従来技術に残された課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の構造を有するハロゲンを含有しないアルコキシチタン錯化合物を含むオレフィン類重合用固体触媒成分が、オレフィン類の重合あるいは共重合に供したときに高温重合特性および活性の持続性に優れること、低コストで環境に影響のない触媒であることなどを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記一般式(1):
【0010】
【化2】
【0011】
(式中、R1 は、炭素数1〜12の直鎖状または分岐鎖状アルキル基を示し、R2、R3およびR4は、水素原子、炭素数1〜12の直鎖状または分岐鎖状アルキル基、フェニル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアシル基、炭素数1〜12のアシルオキシ基、メタクリルオキシ基、メタクリルオキシアルキル基、メタクリルオキシアルコキシ基を示し、R2、R3およびR4は同一でも異なっていてもよく、xは0または1〜3の整数、yは1〜4の整数、x+y=4、xとyとは同一でも異なっていてもよい。)で表されるチタン錯化合物を含有することを特徴とするオレフィン類重合用固体触媒成分を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、(A)前記オレフィン類重合用固体触媒成分、および(B)下記一般式(2);R5 pAlQ3−p (2)
(式中、R5は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Qは水素原子あるいはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3の整数である。)で表される有機アルミニウム化合物を用いて形成されることを特徴とするオレフィン類重合用触媒を提供するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明における成分(A)に含有されるチタン錯化合物(以下、単に「成分(a)」ということがある。)としては、前記一般式(1)で表される化合物であり、アルコキシチタンに1,3−ジケトン(β−ジケトン)が配位したアルコキシチタン錯化合物、またはチタンに1,3−ジケトン(β−ジケトン)が配位したチタン錯化合物である。本発明のチタン錯化合物はx+yが4であるので4価のチタン化合物であり、具体的には、一般式(1)中、xが2でyが2の場合、アルコキシが2つで1,3−ジケトンが2つの6配位のチタン化合物、及びxが3でyが1の場合のアルコキシが3つで1,3−ジケトンが1つの5配位のチタン化合物が挙げられる。
【0014】
R1としては炭素数1〜8の直鎖状または分岐鎖状アルキル基が好ましく、特に炭素数2〜4の直鎖状または分岐鎖状アルキル基が好ましく、具体的にはプロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチルなどが挙げられる。またR3としては、水素原子またはメチルが好ましく、特に好ましくは水素原子である。R2およびR4としては、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ、メタクリル、メタクリルオキシ、メタクリルオキシ基、メタクリルオキシアルキル基、メタクリルオキシアルコキシ基が好ましく、R2とR4は同一でも異なっていてもよい。
【0015】
一般式(1)で表されるチタン錯化合物の具体例としては、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナト)チタン、ジイソプロポキシビス(2−エチル−1,3−ヘキサンジオラト)チタン、トリイソプロポキシ(エチルアセトアセテート)チタン、トリイソプロポキシ(アセチルアセトナト)チタン、トリイソプロポキシ(2−エチル−1,3−ヘキサンジオラト)チタン、トリイソプロポキシ(メタクリルオキシエチルアセトアセテート)チタン、ジブトキシビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジブトキシビス(アセチルアセトナト)チタン、ジブトキシビス(2−エチル−1,3−ヘキサンジオラト)チタン、トリブトキシ(エチルアセトアセテート)チタン、トリブトキシ(アセチルアセトナト)チタン、トリブトキシ(2−エチル−1,3−ヘキサンジオラト)チタン、トリブトキシ(メタクリルオキシエチルアセトアセテート)チタン、テトラエチルアセトアセテートチタン、テトラアセチルアセトナトチタン、テトラ(2−エチル−1,3−ヘキサンジオラト)チタン、テトラ(メタクリルオキシエチルアセトアセテート)チタンなどが挙げられる。
【0016】
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分は上記のチタン錯化合物(a)を含有するが、その他にハロゲン含有マグネシウム化合物などを担体成分として用いることによってマグネシウムまたはハロゲンを含有することが好ましい。本発明の固体触媒成分の具体的な調製方法は、上記チタン錯化合物(a)とマグネシウム化合物などの担体成分、また必要に応じて電子供与性化合物を接触させて調製することができる。
【0017】
本発明のオレフィン類重合用触媒成分の調製に用いられる担体成分(以下、単に「成分(b)」ということがある。)としては、マグネシウム化合物、シリカなどのケイ素化合物、アルミナなどのアルミニウム化合物が挙げられ、このうち、マグネシウム化合物が好ましい。
【0018】
好適に使用されるマグネシウム化合物としては、ジハロゲン化マグネシウム、ジアルキルマグネシウム、ハロゲン化アルキルマグネシウム、ジアルコキシマグネシウム、ジアリールオキシマグネシウム、ハロゲン化アルコキシマグネシウムあるいは脂肪酸マグネシウム等が挙げられる。
【0019】
ジハロゲン化マグネシウムとしては、二塩化マグネシウム、二臭化マグネシウムおよび二沃化マグネシウム等が挙げられる。
【0020】
ジアルキルマグネシウムとしては、ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、メチルエチルマグネシウム、ジプロピルマグネシウム、メチルプロピルマグネシウム、エチルプロピルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、メチルブチルマグネシウムおよびエチルブチルマグネシウム等が挙げられる。
【0021】
ハロゲン化アルキルマグネシウムとしては、エチル塩化マグネシウム、プロピル塩化マグネシウムおよびブチル塩化マグネシウム等が挙げられる。
【0022】
ジアルコキシマグネシウムまたはジアリールオキシマグネシウムとしては、ジメトキシマグネシウム、ジエトキシマグネシウム、ジプロポキシマグネシウム、ジブトキシマグネシウム、ジフェノキシマグネシウム、エトキシメトキシマグネシウム、エトキシプロポキシマグネシウムおよびブトキシエトキシマグネシウム等が挙げられる。
【0023】
ハロゲン化アルコキシマグネシウムとしては、メトキシ塩化マグネシウム、エトキシ塩化マグネシウム、プロポキシ塩化マグネシウム、ブトキシ塩化マグネシウム等が挙げられる。
【0024】
脂肪酸マグネシウムとしては、ラウリル酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、オクタン酸マグネシウム及びデカン酸マグネシウム等が挙げられる。
【0025】
本発明におけるこれらマグネシウム化合物の中で、ジハロゲン化マグネシウムが好ましく、その中でも特に二塩化マグネシウムが好ましい。本発明の固体触媒成分は、触媒活性種として成分(a)のようなハロゲンを含まないチタン錯化合物を用いており、この点が従来の触媒にない新規な点である。しかしながら、上記マグネシウム化合物のうちジアルキルマグネシウム、ジアルコキシマグネシウム、ジアリールオキシマグネシウム、脂肪酸マグネシウムについては、その一部あるいは全部をハロゲン化して用いることもでき、そのハロゲン化剤として四塩化チタンなどを用いることができる。また、活性や立体特異性などの特性を向上させるために、固体触媒成分(A)の調製において、成分(a)と成分(b)を接触させる前、接触時、あるいは接触した後に、四塩化チタンを接触させることもできる。
【0026】
本発明における固体触媒成分(A)の調製に用いられる電子供与性化合物(以下、単に成分(c)ということがある。)は、酸素原子あるいは窒素原子を含有する有機化合物であり、例えばアルコール類、フェノール類、エーテル類、エポキシ類、エステル類、ケトン類、酸ハライド類、アルデヒド類、アミン類、アミド類、ニトリル類、イソシアネート類、ピペリジン類、Si−O−C結合を含む有機ケイ素化合物等が挙げられる。
【0027】
具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−エチルヘキサノール等のアルコール類、フェノール、クレゾール等のフェノール類、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、ブチルエーテル、アミルエーテル、ジフェニルエーテル、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3―ジメトキシプロパン等のエーテル類、1,8−シネオール等のエポキシ類、ギ酸メチル、酢酸エチル、酢酸ビニル、酢酸プロピル、酢酸オクチル、酢酸シクロヘキシル、プロピオン酸エチル、酪酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸オクチル、安息香酸シクロヘキシル、安息香酸フェニル、p−トルイル酸メチル、p−トルイル酸エチル、アニス酸メチル、アニス酸エチル等のモノカルボン酸エステル類、コハク酸ジエチル、コハク酸ジプロピル、コハク酸ジブチル、コハク酸ジイソブチル、n−ブチルコハク酸ジエチル、n−ブチルコハク酸ジプロピル、n−ブチルコハク酸ジブチル、n−ヘキシルコハク酸ジエチル、n−ヘキシルコハク酸ジプロピル、n−ヘキシルコハク酸ジブチル、n−デシルコハク酸ジエチル、n−デシルコハク酸プロピル、n−デシルコハク酸ジブチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジプロピル、マロン酸ジブチル、マロン酸ジイソブチル、マロン酸ジペンチル、マロン酸ジネオペンチル、イソプロピルブロモマロン酸ジエチル、ブチルブロモマロン酸ジエチル、イソブチルブロモマロン酸ジエチル、ジイソプロピルマロン酸ジエチル、ジブチルマロン酸ジエチル、ジイソブチルマロン酸ジエチル、ジイソペンチルマロン酸ジエチル、イソプロピルイソブチルマロン酸ジエチル、イソプロピルイソペンチルマロン酸ジメチル、(3−クロロ−n−プロピル)マロン酸ジエチル、ビス(3−ブロモ−n−プロピル)マロン酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジプロピル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジオクチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−プロピル、フタル酸ジ−iso−プロピル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジ−iso−ブチル、フタル酸エチルメチル、フタル酸メチル(iso−プロピル)、フタル酸エチル(n−プロピル)、フタル酸エチル(n−ブチル)、フタル酸エチル(iso−ブチル)、フタル酸ジ−n−ペンチル、フタル酸ジ−iso−ペンチル、フタル酸ジ−neo−ペンチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジ−n−ヘプチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ビス(2,2−ジメチルヘキシル)、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジ−n−ノニル、フタル酸ジ−iso−デシル、フタル酸ビス(2,2−ジメチルヘプチル)、フタル酸n−ブチル(iso−ヘキシル)、フタル酸n−ブチル(2−エチルヘキシル)、フタル酸n−ペンチルヘキシル、フタル酸n−ペンチル(iso−ヘキシル)、フタル酸iso−ペンチル(ヘプチル)、フタル酸n−ペンチル(2−エチルヘキシル)、フタル酸n−ペンチル(iso−ノニル)、フタル酸iso−ペンチル(n−デシル)、フタル酸n−ペンチルウンデシル、フタル酸iso−ペンチル(iso−ヘキシル)、フタル酸n−ヘキシル(2,2−ジメチルヘキシル)、フタル酸n−ヘキシル(2−エチルヘキシル)、フタル酸n−ヘキシル(iso−ノニル)、フタル酸n−ヘキシル(n−デシル)、フタル酸n−ヘプチル(2−エチルヘキシル)、フタル酸n−ヘプチル(iso−ノニル)、フタル酸n−ヘプチル(neo−デシル)、フタル酸2−エチルヘキシル(iso−ノニル)、4−メチルフタル酸ジネオペンチル、4−エチルフタル酸ジネオペンチル、4,5−ジメチルフタル酸ジネオペンチル、4,5−ジエチルフタル酸ジネオペンチル、4−クロロフタル酸ジエチル、4−クロロフタル酸ジ−n−ブチル、4−クロロフタル酸ジネオペンチル、4−クロロフタル酸ジイソブチル、4−クロロフタル酸ジイソヘキシル、4−クロロフタル酸ジイソオクチル、4−ブロモフタル酸ジエチル、4−ブロモフタル酸ジ−n−ブチル、4−ブロモフタル酸ジネオペンチル、4−ブロモフタル酸ジイソブチル、4−ブロモフタル酸ジイソヘキシル、4−ブロモフタル酸ジイソオクチル、4,5−ジクロロフタル酸ジエチル、4,5−ジクロロフタル酸ジ−n−ブチル、4,5−ジクロロフタル酸ジイソヘキシル、4,5−ジクロロフタル酸ジイソオクチルなどのフタル酸ジエステルおよびフタル酸ジエステル誘導体等のジカルボン酸エステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン等のケトン類、フタル酸ジクロライド、テレフタル酸ジクロライド等の酸ハライド類、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、オクチルアルデヒド、ベンズアルデヒド等のアルデヒド類、メチルアミン、エチルアミン、トリブチルアミン、ピペリジン、アニリン、ピリジン等のアミン類、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド等のアミド類、アセトニトリル、ベンゾニトリル、トルニトリル等のニトリル類、イソシアン酸メチル、イソシアン酸エチル等のイソシアネート類、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどのピペリジン類、フェニルアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、フェニルアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルキルアルコキシシラン等のSi−O−C結合を含む有機ケイ素化合物等を挙げることができる。
【0028】
上記の電子供与性化合物のうち、エステル類、とりわけモノカルボン酸エステル類および芳香族ジカルボン酸ジエステルが好ましく用いられ、特に安息香酸エステルおよびフタル酸ジエステルが好適である。
【0029】
前記固体触媒成分(A)は、上述したような成分(a)および成分(b)、または成分(a)、成分(b)および成分(c)を接触させることにより調製することができ、この接触は、不活性有機溶媒の不存在下で処理することも可能であるが、操作の容易性を考慮すると、該溶媒の存在下で処理することが好ましい。用いられる不活性有機溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素化合物、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素化合物、オルトジクロルベンゼン、塩化メチレン、四塩化炭素、ジクロルエタン等のハロゲン化炭化水素化合物等が挙げられるが、このうち、沸点が90〜150℃程度の、常温で液状状態の芳香族炭化水素化合物、具体的にはトルエン、キシレン、エチルベンゼンが好ましく用いられる。
【0030】
また、固体触媒成分(A)を調製する方法としては、(I)上記の成分(a)と成分(b)、あるいは成分(a)、成分(b)および成分(c)を共粉砕する方法、(II)上記の成分(b)のマグネシウム化合物を、アルコール又はチタン化合物等に溶解させ、成分(a)あるいは成分(a)および成分(c)との接触あるいは加熱処理などにより固体物を析出させ、この固体物に成分(a)あるいは成分(a)と成分(c)を接触して固体触媒成分(A)を得る方法、または(III)成分(b)を不活性炭化水素溶媒等に懸濁させ、これに成分(a)あるいは成分(a)と成分(c)を接触して固体触媒成分(A)を得る方法などが挙げられる。
【0031】
各成分の接触は、不活性ガス雰囲気下及び水分等を除去した状況下、撹拌機を具備した容器中で撹拌しながら行われる。接触温度は、単に接触させて撹拌混合する場合や、分散あるいは懸濁させて変性処理する場合には、室温付近あるいはそれ以下の比較的低温域であっても差し支えないが、接触後に反応させて生成物を得る場合には、0〜130℃の温度域が好ましい。130℃を超えると使用した溶媒の蒸発が顕著になるなどして、反応の制御が困難になる。なお、反応時間は1分以上、好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上である。
【0032】
以下に、固体触媒成分(A)の調製方法を例示する。
(1)二塩化マグネシウムを溶媒に懸濁させ、これにチタン錯化合物(a)を添加し、反応させ、次いで成分(c)を接触反応させて固体触媒成分(A)を調製する方法。
(2)二塩化マグネシウム及び2−エチルヘキシルアルコールを反応させて均一溶液とした後、該均一溶液にチタン錯化合物(a)を添加し、反応させ、次いで成分(c)を接触反応させて固体触媒成分(A)を調製する方法。
(3)ジブチルマグネシウム等の有機マグネシウム化合物に四塩化チタンを接触させ塩素化した後、チタン錯化合物(a)を接触反応させ、次いで成分(c)を接触反応させて固体触媒成分(A)を調製する方法。
(4)ジエトキシマグネシウムをアルキルベンゼンまたはハロゲン化炭化水素溶媒中に懸濁させた後、四塩化チタンと接触させ、固体成分を得、これにチタン錯化合物(a)を接触反応させ、次いで成分(c)を接触反応させて固体触媒成分(A)を調製する方法。
(5)ステアリン酸マグネシウムのような脂肪族マグネシウムをアルキルベンゼンまたはハロゲン化炭化水素溶媒中に懸濁させた後、四塩化チタンと接触させ、固体成分を得、これにチタン錯化合物(a)を接触反応させ、次いで成分(c)を接触反応させて固体触媒成分(A)を調製する方法。
【0033】
本発明の固体触媒成分(A)中、チタン錯化合物(a)の含有量としては、通常0.1〜30重量%、好ましくは1〜20重量%である。また担体成分としてマグネシウム、ハロゲンまた電子供与性化合物を含む場合、マグネシウムが10〜30重量%、ハロゲン原子が40〜70重量%、電子供与性化合物の含有量は3〜30重量%である。
【0034】
各化合物の使用量比は、調製法により異なるため一概には規定できないが、例えば成分(b)1モル当たり、成分(a)が0.5〜100モル、好ましくは0.5〜50モルである。また成分(c)が0.01〜10モル、好ましくは0.02〜5.0モルである。
【0035】
本発明のオレフィン類重合用触媒を形成する際に用いられる有機アルミニウム化合物(B)(以下、「成分(B)」ということがある。)としては、上記一般式(2)で表される化合物を用いることができる。このような有機アルミニウム化合物(B)の具体例としては、トリエチルアルミニウム、トリ−iso−ブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムブロマイド、エチルアルミニウムセスキクロライド、メチルアルミニウムセスキクロライド、ジイソブチルアルミニウムクロライドなどのハロゲン含有アルキルアルミニウム化合物、ジエチルアルミニウムハイドライドなどの水素含有アルキルアルミニウム化合物、またジエチルアルミニウムエトキシド、エチルアルミニウムジエトキシドなどが挙げられ、このうち、トリエチルアルミニウム、トリ−iso−ブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライドが好ましい。またこれらの有機アルミニウム化合物は1種単独または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0036】
本発明のオレフィン類重合用触媒を形成する際に用いられる外部電子供与性化合物(C)(以下、「成分(C)」ということがある。)としては、前記固体触媒成分の調製に用いることのできる電子供与性化合物と同じものが用いられるが、その中でも9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3―ジメトキシプロパン等のエーテル類、安息香酸メチルおよび安息香酸エチルなどのエステル類、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどのピペリジン類、1,8−シネオールなどのエポキシ類および有機ケイ素化合物が好ましい。
【0037】
上記の有機ケイ素化合物としては、下記一般式(3)で表される化合物が用いられる。 R6 qSi( OR7)4−q (3)
(式中、R6は炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基のいずれかで、同一または異なっていてもよい。R7は炭素数1〜4のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基を示し、同一または異なっていてもよい。qは0≦q≦3の整数である。)
【0038】
このような有機ケイ素化合物としては、フェニルアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、フェニルアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルキルアルコキシシラン等を挙げることができる。
【0039】
上記の有機ケイ素化合物を具体的に例示すると、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリ−n−プロピルメトキシシラン、トリ−n−プロピルエトキシシラン、トリ−n−ブチルメトキシシラン、トリ−iso−ブチルメトキシシラン、トリ−t−ブチルメトキシシラン、トリ−n−ブチルエトキシシラン、トリシクロヘキシルメトキシシラン、トリシクロヘキシルエトキシシラン、シクロヘキシルジメチルメトキシシラン、シクロヘキシルジエチルメトキシシラン、シクロヘキシルジエチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−iso−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−iso−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−iso−ブチルジメトキシシラン、ジ−t−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、n−ブチルメチルジメトキシシラン、ビス(2−エチルヘキシル)ジメトキシシラン、ビス(2−エチルヘキシル)ジエトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジエトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジエトキシシラン、ビス(3−メチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、ビス(4−メチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、ビス(3,5−ジメチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジエトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジプロポキシシラン、3−メチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、4−メチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、3,5−ジメチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、3−メチルシクロヘキシルシクロヘキシルジメトキシシラン、4−メチルシクロヘキシルシクロヘキシルジメトキシシラン、3,5−ジメチルシクロヘキシルシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロペンチルメチルジメトキシシラン、シクロペンチルメチルジエトキシシラン、シクロペンチルエチルジエトキシシラン、シクロペンチル(iso−プロピル)ジメトキシシラン、シクロペンチル(iso−ブチル)ジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジエトキシシラン、シクロヘキシル(n−プロピル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(iso−プロピル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(n−プロピル)ジエトキシシラン、シクロヘキシル(iso−ブチル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(n−ブチル)ジエトキシシラン、シクロヘキシル(n−ペンチル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(n−ペンチル)ジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、フェニルエチルジメトキシシラン、フェニルエチルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、iso−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、iso−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、iso−ブチルトリメトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、2−エチルヘキシルトリメトキシシラン、2−エチルヘキシルトリエトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等を挙げることができる。このうち、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−iso−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−iso−ブチルジメトキシシラン、ジ−t−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジエトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジエトキシシラン、シクロペンチルメチルジメトキシシラン、シクロペンチルメチルジエトキシシラン、シクロペンチルエチルジエトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジエトキシシラン、3−メチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、4−メチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、3,5−ジメチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシランが好ましく用いられる。これら有機ケイ素化合物は1種単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
次に本発明のオレフィン類重合用触媒は、前記成分(A)および成分(B)、または成分(A)、成分(B)および成分(C)より成り、該触媒の存在下にオレフィン類の重合もしくは共重合を行う。オレフィン類としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキサン等であり、これらのオレフィン類は1種または2種以上併用することができる。とりわけ、エチレン、プロピレン及び1−ブテンが好適に用いられる。特に好ましくはプロピレンである。プロピレンの重合の場合、他のオレフィン類との共重合を行うこともできる。共重合されるオレフィン類としては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキサン等であり、これらのオレフィン類は1種単独または2種以上併用することができる。とりわけ、エチレン及び1−ブテンが好適に用いられる。プロピレンと他のオレフィン類との共重合体としては、プロピレンと少量のエチレンをモノマーとして1段階で重合して製造されるランダム共重合体と、第1段階(第1重合槽)でプロピレンのみの重合を行い第2段階(第1重合槽)でプロピレンとエチレンの共重合を行い製造される、所謂プロピレン−エチレンのインパクトコポリマーが代表的である。このようなランダム共重合体やインパクトコポリマーの製造においても、上記の成分(A)、成分(B)および成分(C)からなる本発明の触媒は有効であり、共重合特性や得られた共重合体の特性も良好である。
【0041】
各成分の使用量比は、本発明の効果に影響を及ぼすことのない限り任意であり、特に限定されるものではないが、通常成分(B)は成分(A)中のチタン原子1モル当たり、1〜2000モル、好ましくは50〜1000モルの範囲で用いられる。成分(C)は、(B)成分1モル当たり、0.002〜10モル、好ましくは0.01〜2モルの範囲で用いられる。
【0042】
各成分の接触順序は任意であるが、重合系内にまず有機アルミニウム化合物(B)を装入し、次いで固体触媒成分(A)を接触させることが望ましい。外部電子供与性化合物(C)を用いる場合は、重合系内にまず有機アルミニウム化合物(B)を装入し、次いで外部電子供与性化合物(C)を接触させ、更に固体触媒成分(A)を接触させることが望ましい。
【0043】
本発明における重合は、有機溶媒の存在下または不存在下で行うことができ、またプロピレン等のオレフィン単量体は、気体及び液体のいずれの状態でも用いることができる。重合温度は200℃以下であり、重合圧力は10MPa以下、好ましくは5MPa以下である。重合温度は、特に100〜200℃の高温度域であっても触媒の活性が維持でき、重合反応熱の除去やペレット化に要するエネルギー付加を省略することができる点で有利である。また、連続重合法、バッチ式重合法のいずれでも可能である。更に重合反応を1段で行ってもよいし、2段以上で行ってもよい。
【0044】
更に、本発明において成分(A)および成分(B)、また必要に応じて成分(C)より成る触媒を用いてオレフィンを重合するにあたり(本重合ともいう。)、本重合に先立ち予備重合を行うことも可能である。予備重合の際には、本重合と同様のオレフィン類あるいはスチレン等のモノマーを用いることができる。
【0045】
予備重合を行うに際して、各成分及びモノマーの接触順序は任意であるが、好ましくは、不活性ガス雰囲気あるいはプロピレンなどの重合を行うガス雰囲気に設定した予備重合系内にまず成分(B)を装入し、次いで成分(A)を接触させた後、プロピレン等のオレフィン及び/または1種あるいは2種以上の他のオレフィン類を接触させる。成分(C)を組み合わせて予備重合を行う場合は、不活性ガス雰囲気あるいはプロピレンなどの重合を行うガス雰囲気に設定した予備重合系内にまず成分(B)を装入し、次いで成分(C)を接触させ、更に固体触媒成分(A)を接触させた後、プロピレン等のオレフィン及び/または1種あるいはその他の2種以上のオレフィン類を接触させる方法が望ましい。
【0046】
本発明によって形成されるオレフィン類重合用触媒は、オレフィン類の重合を行った場合、高温の重合温度での活性があまり低下せず、また長時間活性が低下せず、重合時の活性持続性が良好である。
【0047】
【実施例】
以下、本発明の実施例により具体的に説明する。なお、以下の実施例において、オレフィン類重合用固体触媒成分(A)中のチタンの含有量は酸化還元滴定法により測定した。
【0048】
実施例1
〔固体触媒成分(A)の調製〕
窒素ガスで十分に置換され、撹拌機を具備した容量500mlの丸底フラスコに無水二塩化マグネシウム粉末(比表面積80m2/g)5g、トルエン80mlおよび安息香酸エチル1.1mlを装入して、懸濁状態とした。この懸濁液に、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタンが88容量%のイソプロピルアルコール溶液1.0mlを200mlのトルエンに溶解させた溶液を、室温にて、2時間かけて滴下した。その後室温にて3時間攪拌した。その後100mlのトルエンで常温にて3回デカンテーションにて洗浄を行い、固体触媒成分を得た。なお、この固体触媒成分中の固液を分離して、固体分中のチタンの含有量を測定したところ、0.57重量%であった。
【0049】
〔重合触媒の形成および重合〕
窒素ガスで完全に置換され、撹拌機を具備した容量500mlの丸底フラスコに、n−ヘプタン200mlを加えた。次いで、ジエチルアルミニウムクロライドをn−ヘプタンで希釈した溶液をアルミニウム原子として40mmolおよび安息香酸エチルを5mmol加えて70℃に昇温した。その後フラスコにプロピレンガスを15分間フローした。次いで、上記で調製した固体触媒成分をチタン原子として0.1mmol加え、70℃で1時間重合を行った。得られた重合体をろ別し、減圧乾燥して固体重合体を得た。一方、ろ液を凝縮して重合溶媒に溶存する重合体を得、その量を(M) とし、固体重合体の量を(N) とする。固体触媒成分当たりの重合活性(Y) を下記式で表す。
(Y)=[ (M) +(N)](g)/固体触媒成分量(mmol−Ti)
【0050】
また、生成固体重合体の立体規則性の指標であるペンタド(mmmm)を13C−NMRにて以下の条件で測定した。
測定装置:GEM−300スペクトロメーター(バリアン社製)
測定周波数:75MHz
測定温度:120℃
溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼン
ロック剤:ベンゼン−d6、99.6%
内部標準液:ヘキサメチルジシロキサン
【0051】
上記の結果、重合活性は32g−PP/mmol−Ti、ペンタド(mmmm)は85.8mol%であった。
【0052】
実施例2
〔固体触媒成分(A)の調製〕
ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタンが88容量%のイソプロピルアルコール溶液1.0mlの代わりに、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナト)チタンが88容量%のイソプロピルアルコール溶液1.0mlを用いた以外、実施例1と同様に実験を行い固体触媒成分を調製した。なお、この固体触媒成分中の固液を分離して、固体分中のチタンの含有量を測定したところ、0.64重量%であった。
【0053】
〔重合触媒の形成および重合〕
実施例1と同様に行った結果、重合活性は13g−PP/mmol−Ti、ペンタド(mmmm)は83.1mol%であった。
【0054】
実施例3
〔重合触媒の形成および重合〕
窒素ガスで完全に置換され、撹拌機を具備した容量500mlの丸底フラスコに、n−デカン200mlを加えた。次いで、ジエチルアルミニウムクロライドをn−デカンで希釈した溶液をアルミニウム原子として40mmolおよび安息香酸エチルを5mmol加えて100℃に昇温した。その後フラスコにプロピレンガスを15分間フローした。次いで、実施例1で調製した固体触媒成分をチタン原子として0.1mmol加え、100℃で1時間重合を行った。その結果、重合活性は25g−PP/mmol−Ti、ペンタド(mmmm)は75.1mol%であった。
【0055】
実施例4
〔重合触媒の形成および重合〕
窒素ガスで完全に置換され、撹拌機を具備した容量500mlの丸底フラスコに、n−デカン200mlを加えた。次いで、ジエチルアルミニウムクロライドをn−デカンで希釈した溶液をアルミニウム原子として40mmolおよび安息香酸エチルを5mmol加えて130℃に昇温した。その後フラスコにプロピレンガスを15分間フローした。次いで、実施例1で調製した固体触媒成分をチタン原子として0.1mmol加え、130℃で1時間重合を行った。その結果、重合活性は17g−PP/mmol−Ti、ペンタド(mmmm)は73.5mol%であった。
【0056】
【発明の効果】
本発明のオレフィン類重合用触媒は、オレフィン類重合または共重合に供した際、高温重合においても活性の低下が少なく、また活性持続性に優れており、従って、ポリオレフィンを、低コストで提供し得ると共に、高機能性を有するオレフィン類の共重合体の製造において有用性が期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の重合触媒を調製する工程を示すフローチャート図である。
Claims (7)
- 更に、マグネシウム及びハロゲンを含有することを特徴とする請求項1記載のオレフィン類重合用固体触媒成分。
- 前記固体触媒成分が、マグネシウム化合物及び前記一般式(1)で表されるチタン錯化合物を接触させて調製することを特徴とする請求項1記載のオレフィン類重合用固体触媒成分。
- 前記固体触媒成分が、マグネシウム化合物、前記一般式(1)で表されるチタン錯化合物及び電子供与性化合物を接触させて調製することを特徴とする請求項1記載のオレフィン類重合用固体触媒成分。
- 前記マグネシウム化合物が、ハロゲン化マグネシウムであることを特徴とする請求項3又は4記載のオレフィン類重合用固体触媒成分。
- (A)請求項1〜5のいずれか1項記載のオレフィン類重合用固体触媒成分、および(B)下記一般式(2);
R5 pAlQ3−p (2)
(式中、R5は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Qは水素原子、アルコキシ基あるいはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3の実数である。)で表される有機アルミニウム化合物を用いて形成されることを特徴とするオレフィン類重合用触媒。 - 更に、(C)外部電子供与性化合物を用いることを特徴とする請求項6記載のオレフィン類重合用触媒。
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CN104098598B (zh) * | 2013-04-09 | 2017-09-08 | 双叶电子工业株式会社 | 络合物、干燥剂、密封结构及有机电致发光元件 |
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