JP2004352623A - ラクタム化合物の製造法 - Google Patents
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Abstract
【課題】液相中で固体酸触媒の存在下、シクロアルカノンオキシム化合物のベックマン転位反応を行うにあたり、使用する固体酸触媒の脱水工程および溶媒の脱水処理を施すことなく、むしろ所定量の水を共存させることにより、温和な反応条件下、高選択率でラクタム化合物を製造する方法を提供することを課題とする。
【解決手段】固体酸触媒存在下、ベックマン転位反応によりシクロアルカノンオキシム化合物から対応するラクタム化合物を製造するに際し、
(1)固体酸触媒が、珪素およびMを含む複合酸化物であり、
(2)有機溶媒、および
(3)有機溶媒に対し、0.3〜6重量%の水、
を使用することを特徴とするラクタム化合物の製造法
(ただし、Mは第4〜14族(族番号に1−18の通し番号を用いる1989年改訂のIUPAC無機化学命名法に従う)による族番号から成る群より選ばれる1種以上の元素であり、炭素および珪素は除く)により解決される。
【選択図】なし
【解決手段】固体酸触媒存在下、ベックマン転位反応によりシクロアルカノンオキシム化合物から対応するラクタム化合物を製造するに際し、
(1)固体酸触媒が、珪素およびMを含む複合酸化物であり、
(2)有機溶媒、および
(3)有機溶媒に対し、0.3〜6重量%の水、
を使用することを特徴とするラクタム化合物の製造法
(ただし、Mは第4〜14族(族番号に1−18の通し番号を用いる1989年改訂のIUPAC無機化学命名法に従う)による族番号から成る群より選ばれる1種以上の元素であり、炭素および珪素は除く)により解決される。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シクロアルカノンオキシム化合物をベックマン転位反応により対応するラクタム化合物を製造する方法に関するものである。得られるラクタム化合物は、ナイロンの原料として重要な化合物である。
【0002】
【従来の技術】
シクロアルカノンオキシム化合物のラクタム化合物への転位反応は、ベックマン転位反応として知られている。具体的には、シクロヘキサノンオキシムの転位によるε−カプロラクタムの工業的製造では、触媒として発煙硫酸を用いた液相系の反応が採用されている。しかし、この方法ではε−カプロラクタムを分離回収するために、通常、硫酸等の強酸をアンモニアで中和する必要があり、大量の硫酸アンモニウムが副生すること、また、装置の腐食など工程上の問題も多く、効率的な転位用触媒の開発が期待されている。
【0003】
そこで、硫酸触媒を使用しない液相でのベックマン転位反応に関し、均一系触媒或いは固体酸触媒について種々の検討が行われてきている。しかし、均一系触媒は生成物と触媒の分離、回収が煩雑となるため、工業的には触媒の分離が容易な固体酸触媒がより好ましい。
固体酸触媒を用いる方法としては、亜鉛を含有したβ型ゼオライトを触媒とする方法(特許文献1)、予め酸を含む水溶液で処理したゼオライトを触媒とする方法(特許文献2)、Y型ゼオライトおよびH−ZSM−5ゼオライトを触媒とする方法(非特許文献1)、β型ゼオライトを触媒とする方法(非特許文献2)などの酸強度のある固体酸触媒が提案されている。
しかしながら、これらの固体酸触媒は、水が吸着すると酸強度が低下するため(例えば非特許文献3)、液相中でのベックマン転位反応は脱水条件下で行われる必要がある。例えば、前述した亜鉛を含有したβ型ゼオライトや予め酸を含む水溶液で処理したゼオライトを触媒とする方法では、溶媒に脱水処理を施したものを使用している。また、Y型ゼオライトおよびH−ZSM−5ゼオライトを触媒とする方法やβ型ゼオライトを触媒とする方法では150℃(減圧下)あるいは500℃で使用前に触媒の乾燥を行っている。
このように、上記の固体酸触媒を用いる方法では固体酸触媒の脱水工程や溶媒の乾燥工程を必要とするため、工業的操作が煩雑になるだけでなく経済的にも好ましいものではない。さらに、転化率ならびにラクタムの選択性も十分とはいえず、工業的に満足しうるものではない。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−19670号公報
【0005】
【特許文献2】
特開2001−72658号公報
【0006】
【非特許文献1】
Zeolite、Vol.11、pp.593(1991)
【0007】
【非特許文献2】
J.Catal.,177,pp.267(1998)、
【0008】
【非特許文献3】
講談社出版の触媒講座10、触媒学会編、1986年、pp.107
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、液相中で固体酸触媒の存在下、シクロアルカノンオキシム化合物のベックマン転位反応を行うにあたり、使用する固体酸触媒の脱水工程および溶媒の脱水処理を施すことなく、むしろ所定量の水を共存させることにより、温和な反応条件下、高選択率でラクタム化合物を製造する方法を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記の課題に鑑み鋭意検討した結果、
固体酸触媒存在下、ベックマン転位反応によりシクロアルカノンオキシム化合物から対応するラクタム化合物を製造するに際し、
(1)固体酸触媒が、珪素およびMを含む複合酸化物であり、
(2)有機溶媒、および
(3)有機溶媒に対し、0.3〜6重量%の水、
を使用することを特徴とするラクタム化合物の製造法
(ただし、Mは第4〜14族(族番号に1−18の通し番号を用いる1989年改訂のIUPAC無機化学命名法に従う)による族番号から成る群より選ばれる1種以上の元素であり、炭素および珪素は除く)
、により解決される。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で使用するシクロアルカノンオキシム化合物は、好ましくは炭素数5〜12個を有する環状脂肪族炭化水素オキシム化合物である。具体的には、シクロペンタノンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、シクロヘプタノンオキシム、シクロオクタノンオキシム、シクロノナノンオキシム、シクロデカノンオキシム、シクロウンデカノンオキシム、シクロドデカノンオキシムが挙げられる。好ましくは、シクロヘキサノンオキシム、シクロドデカノンオキシムである。
これらシクロアルカノンオキシムは、塩の形で使用することもできる。塩としては、塩酸塩や硫酸塩で使用される。
また、これらのシクロアルカノンオキシム化合物は、単独での使用ならびに2種以上を混合して使用しても何ら問題はない。
【0012】
本発明で得られる対応するラクタム化合物の具体例としては、シクロペンタノンオキシムからはバレロラクタム、シクロヘキサノンオキシムからはカプロラクタム、シクロヘプタノンオキシムからはエナントラクタム、シクロドデカノンオキシムからはラウロラクタムが挙げられる。
【0013】
本発明で使用する複合酸化物の固体酸触媒は、珪素およびM(ただし、Mは第4〜14族(族番号に1−18の通し番号を用いる1989年改訂のIUPAC無機化学命名法に従う)による族番号から成る群より選ばれる1種以上の元素であり、炭素および珪素は除く)、有機溶媒、水、必要に応じてテンプレート剤を原料にして製造できる。得られる珪素およびMを含む複合酸化物の比表面積については、特に制限はないが、好ましくは300m2/g以上、より好ましくは700m2/g以上、更に好ましくは700〜1200m2/gである。
【0014】
本発明に用いる第4〜14族から選ばれる元素Mの具体例としては、4族のチタン、ジルコニウム、ハフニウム、5族のバナジウム、ネオジウム、タンタル、6族のクロム、モリブデン、タングステン、7族のマンガン、レニウム、8族の鉄、ルテニウム、オスミウム、9族のコバルト、ロジウム、イリジウム、10族のニッケル、パラジウム、白金、11族の銅、銀、金、12族の亜鉛、カドミウム、水銀、13族のホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、14族のゲルマニウム、スズ、鉛が挙げられる。好ましくは、周期律表の第13族から選ばれるホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム元素であり、より好ましくはアルミニウムおよびガリウムである。
これらの元素は2種以上を混合して使用しても何ら、問題はない。
複合酸化物の珪素源としては、珪素のアルコキシド(テトラエチルオルトシリケート等のテトラアルキルオルトシリケートなど)が好ましく用いられる。また、M(Mは第4〜14族から選ばれる1種以上の元素で、炭素および珪素を除いたもの)源としては、金属アルコキシドや金属硝酸塩が好ましく用いられる。
具体的には、アルミニウムイソプロポキシド、硝酸アルミニウム、硝酸ガリウムなどが挙げられる。
【0015】
珪素およびM(Mは第4〜14族から選ばれる1種以上の元素で、炭素および珪素を除く)を含む複合酸化物の製造に用いる有機溶媒としては、アルコール(好ましくは、エタノール、イソプロパノール、1−ブタノール等の炭素数1〜4の脂肪族アルコール)、ケトン(好ましくは、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソプロピルケトン等の炭素数3〜8の脂肪族ケトン)などが単独又は複数で用いられるが、アルコール(特にエタノールやイソプロパノール)が好ましい。水を使用する場合は、特に制限はなく、脱イオン水(イオン交換水、蒸留水等)であればよい。
【0016】
テンプレート剤は、使用してもしなくても良いが、比表面積の増大、元素Mの分散性向上、適切な反応場の形成といった観点から、使用することが好ましい。使用する場合、細孔径がテンプレートの分子サイズによって変化するため、必要とする細孔径に応じて適宜選択することができる。テンプレート剤としては、アルキルアミン、アルキルアンモニウム塩などが好ましく用いられる。
テンプレート剤の中でも、製造コストの観点から一級アルキルアミンが好ましく、その中でも炭素数6〜20の一級アルキルアミンが好ましく、炭素数8〜20の一級アルキルアミンが多孔体にメソ細孔を与えることができるので、さらに好ましい。
なお、前記のアルキルアミンには、一級アルキルアミン(好ましくは、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン等の炭素数8〜20のもの)、二級アルキルアミン(好ましくは、N−メチルヘキシルアミン等の主鎖の炭素数6〜20、N−アルキル基の炭素数1〜6のもの)、三級アルキルアミン(好ましくは、N,N−ジメチルドデシルアミン等の主鎖の炭素数8〜20、N−アルキル基の炭素数1〜6のもの)が挙げられ、アルキルアンモニウム塩には、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、セチルトリメチルアンモニムブロミド等の炭素数8〜20のハロゲン化アルキルアンモニウムなどが挙げられる。
【0017】
本発明の珪素とM(Mは第4〜14族から選ばれる1種以上の元素で、炭素および珪素は除く)を含む複合酸化物は、例えば、次の手順で製造できるが、これに検定されるものではない。
なお、Si/Mの原子比は、好ましくは5〜500、より好ましくは10〜100、さらに好ましくは20〜60である。
(1)混合液1の調製:珪素源1モルとM源を所定のSi/M(原子比)になるように加えて、混合する。
得られる溶液を「混合液1」とする。
(2)混合液2の調製:珪素源に対して、1〜20倍モルの有機溶媒と10〜50倍モルの水と必要に応じて0.1〜10倍モルのテンプレート剤とを混合する。得られる溶液を「混合液2」とする。
(3)ゲル形成及び熟成:混合液1を混合液2に加えて0〜50℃(但し、水熱合成の場合は0〜150℃)で10分〜5時間激しく攪拌してゲルを形成させ、その後、同温度範囲で12〜400時間熟成させる。次いで、濾過により得られる白色固体を水及びエタノールで洗浄して、80〜120℃で乾燥する。
(4)脱テンプレート処理(焼成):乾燥後の固体を、空気中又は不活性ガス雰囲気下(好ましくは空気又は不活性ガスを流通させながら)、0.1〜20℃/分(好ましくは0.5〜5℃/分)で所定温度まで昇温して、400〜900℃、10分〜4時間の範囲で温度及び時間を選んで、テンプレート剤が除去されるまで焼成する。これにより複合酸化物が得られる。
【0018】
得られた珪素およびM(Mは第4〜14族から選ばれる1種以上の元素、ただし炭素および珪素を除く)を含む複合酸化物の使用量は、特に限定されるものではないが、シクロアルカノンオキシム化合物に対し0.000001〜10重量倍用いることができる。
【0019】
本発明のベックマン転位反応は、有機溶媒の存在下に行われる。溶媒としては、例えば、ベンゾニトリル、アセトニトリル、プロピオニトリル、カプロニトリル、アジポニトリル、トルニトリル等のニトリル化合物、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、メトキシベンゼン等の芳香族炭化水素化合物、モノクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素化合物、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ドデカン等の脂肪族炭化水素化合物、フタル酸ジメチル、フタル酸ジブチル、マロン酸ジメチル等のエステル化合物、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール化合物、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等のアルデヒド化合物、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン化合物、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル化合物等を挙げることができ、これらを単独でも混合しても使用できる。中でもベンゾニトリル、アセトニトリル、プロピオニトリル、カプロニトリル、アジポニトリル、トルニトリル等のニトリル化合物を溶媒として用いた時、収率が向上し特に好ましい。これら溶媒の使用量は特に限定されるものではないが、シクロアルカノンオキシム化合物に対し、1〜10000重量倍使用することができる。
【0020】
本発明で使用する水は、特に制限はなく、脱イオン水(イオン交換水、蒸留水等)であればよい。使用する水の量は、重要で、有機溶媒に対し0.3〜6重量%である。好ましくは0.5〜5.5重量%、より好ましくは0.9〜1.9重量%である。水の使用量が、0.3重量%より少ないか、6重量%より多い場合には、ベックマン転位反応の結果が不充分となり望ましくない。
また、水の導入方法としては、特に制限されるものではなく、有機溶媒に所定量の水が共存していればよい。例えば、予め有機溶媒に添加しておいてもよいし、反応液へ連続的或いは間欠的に供給してもよい。また、予め複合酸化物及び/或いは溶媒に含有させて導入してもよい。
【0021】
本発明のベックマン転位反応は、通常、シクロアルカノンオキシム化合物、水、珪素およびM(Mは第4〜14族から選ばれる1種以上の元素で、炭素および珪素は除く)を含む複合酸化物を適当な溶媒に導入後、加熱することによって行われる。反応は、通常空気または転位反応に不活性なガスの存在下、好ましくは転位反応に不活性なガスの存在下で行う。転位反応に不活性なガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴン等が挙げられる。反応温度は、通常30〜350℃、好ましくは50℃〜250℃、さらに好ましくは60〜200℃で実施される。反応圧力は、特に限定されるものではなく、常圧下、加圧下いずれでも実施される。
転位反応温度が低すぎると、反応がほとんど進行しない。また、反応温度が高すぎると副反応が進行し、目的物のラクタムの収率が減少し、好ましくない。
反応形式はバッチ反応、連続流通反応いずれでも良く、また縣濁床、固定床、流動床のいずれでも実施される。反応時間或いは滞留時間は反応条件により異なるが、1分〜24時間で実施される。
得られるラクタム化合物は、蒸留操作等により分離・精製される。
【0022】
【実施例】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、Si/M(原子比)はICP−AES測定装置(ICAP−575II型;日本ジャーレル・アッシュ社製)を用いるICP分析により、比表面積は高速比表面積・細孔径分布測定装置(NOVA−1200;ユアサアイオニクス社製)を用いる窒素吸着によるBET比表面積測定(120℃真空下で30分間前処理)により、X線回折パターン(Cu−Kα線)は粉末X線回折装置(RAD−RX:理学電機社製)を用いてそれぞれ測定した。シクロアルカノンオキシム化合物の転化率およびラクタム化合物の収率は、反応液をFID検出器によるガスクロマトグラフィーを用いて分析し、算出した。
【0023】
実施例1
(触媒の調整)
アルミニウムイソプロポキシド3.9mmol/イソプロパノール216mmol溶液を70℃で30分攪拌し、テトラエチルオルトシリケート192mmol/エタノール2mol溶液と混合した。得られた混合液(1)を、ドデシルアミン55mmolと水7.2molの混合液(2)に加えて室温で1時間激しく攪拌した。生成した白色ゲルを室温で48時間熟成させた後、白色固体を濾取して水及びエタノールで洗浄し、105℃で24時間乾燥した。次いで、空気中、室温から600℃まで3.3℃/分で昇温して、600℃で2時間焼成した。得られた焼成物について分析を行ったところ、ICP分析よりSi/Al(原子比)=59であった。また、X線回折測定(Cu−Kα線)および窒素吸着測定による窒素吸着等温線からメソ多孔体であることを確認した。以下、これをAl−MS−59と略記する。
(ベックマン転位反応によるラクタムの合成)
50mlガラス製フラスコに、Al−MS−59を0.1g、シクロヘキサノンオキシムを1.0mmol、ベンゾニトリルを10.0g、水をベンゾニトリルに対し1.0重量%(5.6mmol)充填し、110℃で2時間反応を行った。その結果、シクロヘキサノンオキシムの転化率は27.5モル%、カプロラクタムの選択率は73.9モル%であった。
【0024】
実施例2
(ベックマン転位反応によるラクタムの合成)
実施例1において、水をベンゾニトリルに対し1.9重量%(11mmol)加えたこと以外は同様の方法でシクロヘキサノンオキシムのベックマン転位反応を実施した。シクロヘキサノンオキシムの転化率は28.4モル%、カプロラクタムの選択率は79.2モル%であった。
【0025】
実施例3
(ベックマン転位反応によるラクタムの合成)
実施例1において、水をベンゾニトリルに対し5.4重量%(31mmol)加えたこと以外は同様の方法でシクロヘキサノンオキシムのベックマン転位反応を実施した。シクロヘキサノンオキシムの転化率は26.6モル%、カプロラクタムの選択率は66.5モル%であった。
【0026】
比較例1
(ベックマン転位反応によるラクタムの合成)
実施例1において、水を加えずに反応を行ったこと以外は同様の方法でシクロヘキサノンオキシムのベックマン転位反応を実施した。シクロヘキサノンオキシムの転化率は18.3モル%、カプロラクタムの選択率は65.9モル%であった。
【0027】
比較例2
(ベックマン転位反応によるラクタムの合成)
実施例1において、水をベンゾニトリルに対し9.3重量%(57mmol)加えたこと以外は同様の方法でシクロヘキサノンオキシムのベックマン転位反応を実施した。シクロヘキサノンオキシムの転化率は17.5モル%、カプロラクタムの選択率は53.5モル%であった。
【0028】
実施例4
(触媒の調製)
実施例1においてアルミニウムイソプロポキシドを8.0mmolに変更した以外は実施例1と同様の方法で行った。ICP分析よりSi/Al(原子比)=34であった。以下、これをAl−MS−34と略記する。
(ベックマン転位反応によるラクタムの合成)
実施例1において、Al−MS−59をAl−MS−34に変更し、水をベンゾニトリルに対し1.9重量%(11mmol)加えたこと以外は同様の方法でシクロヘキサノンオキシムのベックマン転位反応を実施した。シクロヘキサノンオキシムの転化率は36.5モル%、カプロラクタムの選択率は73.8モル%であった。
【0029】
比較例3
(ベックマン転位反応によるラクタムの合成)
実施例4において、水を加えずに反応を行ったこと以外は同様の方法でシクロヘキサノンオキシムのベックマン転位反応を実施した。シクロヘキサノンオキシムの転化率は23.3モル%、カプロラクタムの選択率は70.7モル%であった。
【0030】
実施例5
(触媒の調製)
硝酸ガリウム・n水和物3.9mmolおよびテトラエチルオルトシリケート194mmol/エタノール0.43mol溶液(1)を、ドデシルアミン56mmolとエタノール1molと水7.2molの混合液(2)に加えて室温で1時間激しく攪拌した。生成した白色ゲルを室温で120時間熟成させた後、白色固体を濾取して水及びエタノールで洗浄し、105℃で24時間乾燥した。次いで、空気中、室温から600℃まで3.3℃/分で昇温して、600℃で2時間焼成した。得られた焼成物について分析を行ったところ、ICP分析よりSi/Ga(原子比)=50であった。また、X線回折測定(Cu−Kα線)および窒素吸着測定による窒素吸着等温線からメソ多孔体であることを確認した。以下、これをGa−MS−50と略記する。
(ベックマン転位反応によるラクタムの合成)
実施例1において、Al−MS−59をGa−MS−50に変更し、水をベンゾニトリルに対し1.9重量%(11mmol)加えたこと以外は同様の方法でシクロヘキサノンオキシムのベックマン転位反応を実施した。シクロヘキサノンオキシムの転化率は44.0モル%、カプロラクタムの選択率は72.2モル%であった。
【0031】
比較例4
(ベックマン転位反応によるラクタムの合成)
実施例5において、水を加えずに反応を行ったこと以外は同様の方法でシクロヘキサノンオキシムのベックマン転位反応を実施した。シクロヘキサノンオキシムの転化率は29.5モル%、カプロラクタムの選択率は60.8モル%であった。
【0032】
実施例6
(触媒の調製)
実施例5において硝酸ガリウム・n水和物を7.7mmolに変更した以外は実施例5と同様の方法で行った。ICP分析よりSi/Ga(原子比)=25であった。以下、これをGa−MS−25と略記する。
(ベックマン転位反応によるラクタムの合成)
実施例1において、Al−MS−59をGa−MS−25に変更し、水をベンゾニトリルに対し1.9重量%(11mmol)加えたこと以外は同様の方法でシクロヘキサノンオキシムのベックマン転位反応を実施した。シクロヘキサノンオキシムの転化率は57.5モル%、カプロラクタムの選択率は83.3モル%であった。
【0033】
比較例5
(ベックマン転位反応によるラクタムの合成)
実施例6において、水を加えずに反応を行ったこと以外は同様の方法でシクロヘキサノンオキシムのベックマン転位反応を実施した。シクロヘキサノンオキシムの転化率は34.6モル%、カプロラクタムの選択率は71.3モル%であった。
【0034】
実施例7
(触媒の調製)
ヘキサデシルトリメチルアンモニウム ブロマイド9.0mmol/H2O4.6mol溶液(1)へ、硝酸ガリウム・n水和物2.3mmolおよび27重量%けい酸ナトリウム水溶液10gの混合液(2)を加えた。続いて1規定塩酸でpHが8−9の間に調製した混合溶液をオートクレーブ中で100℃、20時間加熱攪拌した。水熱合成により得られた白色固体を濾取して水及びエタノールで洗浄し、85℃で24時間乾燥した。次いで、空気中、室温から650℃まで2.7℃/分で昇温して、650℃で3時間焼成した。得られた焼成物について分析を行ったところ、ICP分析よりSi/Ga(原子比)=20であった。また、X線回折測定(Cu−Kα線)からメソ多孔体であることを確認した。以下、これをGa−MS’−20と略記する。
(ベックマン転位反応によるラクタムの合成)
実施例1において、Al−MS−59をGa−MS’−20に変更し、水をベンゾニトリルに対し1.9重量%(11mmol)加えたこと以外は同様の方法でシクロヘキサノンオキシムのベックマン転位反応を実施した。シクロヘキサノンオキシムの転化率は63.4モル%、カプロラクタムの選択率は80.3モル%であった。
【0035】
比較例6
(ベックマン転位反応によるラクタムの合成)
実施例7において、水を加えずに反応を行ったこと以外は同様の方法でシクロヘキサノンオキシムのベックマン転位反応を実施した。シクロヘキサノンオキシムの転化率は39.2モル%、カプロラクタムの選択率は59.9モル%であった。
【0036】
実施例8
(ベックマン転位反応によるラクタムの合成)
実施例1において、Al−MS−59をN.E CHEMCAT社製のH−ZSM−5(Si/Ga=100)に変更し、水をベンゾニトリルに対し1.9重量%(11mmol)加えたこと以外は同様の方法でシクロヘキサノンオキシムのベックマン転位反応を実施した。シクロヘキサノンオキシムの転化率は11.0モル%、カプロラクタムの選択率は60.4モル%であった。
【0037】
比較例7
(ベックマン転位反応によるラクタムの合成)
実施例8において、水を加えずに反応を行ったこと以外は同様の方法でシク
ロヘキサノンオキシムのベックマン転位反応を実施した。シクロヘキサノンオキシムの転化率は3.8モル%、カプロラクタムの選択率は42.1モル%であった。
【0038】
実施例9
(ベックマン転位反応によるラクタムの合成)
実施例1において、Al−MS−59をN.E CHEMCAT社製のH−ZSM−5(Si/Ga=200)に変更し、水をベンゾニトリルに対し1.9重量%(11mmol)加えたこと以外は同様の方法でシクロヘキサノンオキシムのベックマン転位反応を実施した。シクロヘキサノンオキシムの転化率は7.9モル%、カプロラクタムの選択率は67.6モル%であった。
【0039】
比較例8
(ベックマン転位反応によるラクタムの合成)
実施例9において、水を加えずに反応を行ったこと以外は同様の方法でシクロヘキサノンオキシムのベックマン転位反応を実施した。シクロヘキサノンオキシムの転化率は3.9モル%、カプロラクタムの選択率は17.3モル%であった
【0040】
以上、シクロヘキサノンオキシムを用い110℃でのベックマン転位反応の結果、実施例1〜9および比較例1〜8を表1にまとめて示した。
【表1】
【0041】
実施例10
ベックマン転位反応によるラクタムの合成)
実施例1において、温度を110℃から150℃に変更し、水をベンゾニトリルに対し1.9重量%(11mmol)加えたこと以外は同様の方法でシクロヘキサノンオキシムのベックマン転位反応を実施した。シクロヘキサノンオキシムの転化率は53.5モル%、カプロラクタムの選択率は71.4モル%であった。
【0042】
比較例9
(ベックマン転位反応によるラクタムの合成)
実施例10において、水を加えずに反応を行ったこと以外は同様の方法でシクロヘキサノンオキシムのベックマン転位反応を実施した。シクロヘキサノンオキシムの転化率は42.4モル%、カプロラクタムの選択率は55.8モル%であった。
【0043】
実施例11
(ベックマン転位反応によるラクタムの合成)
実施例6において、温度を110℃から150℃に変更したこと以外は同様の方法でシクロヘキサノンオキシムのベックマン転位反応を実施した。シクロヘキサノンオキシムの転化率は85.6モル%、カプロラクタムの選択率は80.1モル%であった。
【0044】
比較例10
(ベックマン転位反応によるラクタムの合成)
実施例11において、水を加えずに反応を行ったこと以外は同様の方法でシクロヘキサノンオキシムのベックマン転位反応を実施した。シクロヘキサノンオキシムの転化率は54.1モル%、カプロラクタムの選択率は64.0モル%であった。
【0045】
以上、シクロヘキサノンオキシムを用い150℃でのベックマン転位反応の結果、実施例10〜11および比較例9〜10を表2にまとめて示した。
【表2】
【0046】
実施例12
(ベックマン転位反応によるラクタムの合成)
50mlガラス製フラスコに、Ga−MS−50を0.05g、シクロドデカノンオキシムを2.5mmol、ベンゾニトリルを5.0g、水をベンゾニトリルに対し0.5重量% (1.4mmol)充填し、90℃で4時間反応を行った。その結果、シクロドデカノンオキシムの転化率は26.0モル%、ラウロラクタムの選択率は76.7モル%であった。
【0047】
実施例13
(ベックマン転位反応によるラクタムの合成)
実施例12において、水をベンゾニトリルに対し0.9重量%(2.4mmol)加えたこと以外は同様の方法でシクロドデカノンオキシムのベックマン転位反応を実施した。シクロドデカノンオキシムの転化率は30.2モル%、ラウロラクタムの選択率は72.9モル%であった。
【0048】
実施例14
(ベックマン転位反応によるラクタムの合成)
実施例12において、水をベンゾニトリルに対し2.0重量%(5.5mmol)加えたこと以外は同様の方法でシクロドデカノンオキシムのベックマン転位反応を実施した。シクロドデカノンオキシムの転化率は19.8モル%、ラウロラクタムの選択率は71.9モル%であった。
【0049】
比較例11
(ベックマン転位反応によるラクタムの合成)
実施例12において、水を加えずに反応を行ったこと以外は同様の方法でシクロドデカノンオキシムのベックマン転位反応を実施した。シクロドデカノンオキシムの転化率は18.7モル%、ラウロラクタムの選択率は65.9モル%であった。
【0050】
以上、シクロドデカノンオキシムを用いた90℃でのベックマン転位反応の結果、実施例12〜14および比較例11を表3に示した。
【表3】
【0051】
【発明の効果】
本発明により、液相中で固体酸触媒の存在下、シクロアルカノンオキシム化合物のベックマン転位反応を行うにあたり、使用する固体酸触媒の脱水工程および溶媒の脱水処理を施すことなく、むしろ所定量の水を共存させることにより、温和な反応条件下、高選択率でラクタム化合物を製造することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、シクロアルカノンオキシム化合物をベックマン転位反応により対応するラクタム化合物を製造する方法に関するものである。得られるラクタム化合物は、ナイロンの原料として重要な化合物である。
【0002】
【従来の技術】
シクロアルカノンオキシム化合物のラクタム化合物への転位反応は、ベックマン転位反応として知られている。具体的には、シクロヘキサノンオキシムの転位によるε−カプロラクタムの工業的製造では、触媒として発煙硫酸を用いた液相系の反応が採用されている。しかし、この方法ではε−カプロラクタムを分離回収するために、通常、硫酸等の強酸をアンモニアで中和する必要があり、大量の硫酸アンモニウムが副生すること、また、装置の腐食など工程上の問題も多く、効率的な転位用触媒の開発が期待されている。
【0003】
そこで、硫酸触媒を使用しない液相でのベックマン転位反応に関し、均一系触媒或いは固体酸触媒について種々の検討が行われてきている。しかし、均一系触媒は生成物と触媒の分離、回収が煩雑となるため、工業的には触媒の分離が容易な固体酸触媒がより好ましい。
固体酸触媒を用いる方法としては、亜鉛を含有したβ型ゼオライトを触媒とする方法(特許文献1)、予め酸を含む水溶液で処理したゼオライトを触媒とする方法(特許文献2)、Y型ゼオライトおよびH−ZSM−5ゼオライトを触媒とする方法(非特許文献1)、β型ゼオライトを触媒とする方法(非特許文献2)などの酸強度のある固体酸触媒が提案されている。
しかしながら、これらの固体酸触媒は、水が吸着すると酸強度が低下するため(例えば非特許文献3)、液相中でのベックマン転位反応は脱水条件下で行われる必要がある。例えば、前述した亜鉛を含有したβ型ゼオライトや予め酸を含む水溶液で処理したゼオライトを触媒とする方法では、溶媒に脱水処理を施したものを使用している。また、Y型ゼオライトおよびH−ZSM−5ゼオライトを触媒とする方法やβ型ゼオライトを触媒とする方法では150℃(減圧下)あるいは500℃で使用前に触媒の乾燥を行っている。
このように、上記の固体酸触媒を用いる方法では固体酸触媒の脱水工程や溶媒の乾燥工程を必要とするため、工業的操作が煩雑になるだけでなく経済的にも好ましいものではない。さらに、転化率ならびにラクタムの選択性も十分とはいえず、工業的に満足しうるものではない。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−19670号公報
【0005】
【特許文献2】
特開2001−72658号公報
【0006】
【非特許文献1】
Zeolite、Vol.11、pp.593(1991)
【0007】
【非特許文献2】
J.Catal.,177,pp.267(1998)、
【0008】
【非特許文献3】
講談社出版の触媒講座10、触媒学会編、1986年、pp.107
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、液相中で固体酸触媒の存在下、シクロアルカノンオキシム化合物のベックマン転位反応を行うにあたり、使用する固体酸触媒の脱水工程および溶媒の脱水処理を施すことなく、むしろ所定量の水を共存させることにより、温和な反応条件下、高選択率でラクタム化合物を製造する方法を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記の課題に鑑み鋭意検討した結果、
固体酸触媒存在下、ベックマン転位反応によりシクロアルカノンオキシム化合物から対応するラクタム化合物を製造するに際し、
(1)固体酸触媒が、珪素およびMを含む複合酸化物であり、
(2)有機溶媒、および
(3)有機溶媒に対し、0.3〜6重量%の水、
を使用することを特徴とするラクタム化合物の製造法
(ただし、Mは第4〜14族(族番号に1−18の通し番号を用いる1989年改訂のIUPAC無機化学命名法に従う)による族番号から成る群より選ばれる1種以上の元素であり、炭素および珪素は除く)
、により解決される。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で使用するシクロアルカノンオキシム化合物は、好ましくは炭素数5〜12個を有する環状脂肪族炭化水素オキシム化合物である。具体的には、シクロペンタノンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、シクロヘプタノンオキシム、シクロオクタノンオキシム、シクロノナノンオキシム、シクロデカノンオキシム、シクロウンデカノンオキシム、シクロドデカノンオキシムが挙げられる。好ましくは、シクロヘキサノンオキシム、シクロドデカノンオキシムである。
これらシクロアルカノンオキシムは、塩の形で使用することもできる。塩としては、塩酸塩や硫酸塩で使用される。
また、これらのシクロアルカノンオキシム化合物は、単独での使用ならびに2種以上を混合して使用しても何ら問題はない。
【0012】
本発明で得られる対応するラクタム化合物の具体例としては、シクロペンタノンオキシムからはバレロラクタム、シクロヘキサノンオキシムからはカプロラクタム、シクロヘプタノンオキシムからはエナントラクタム、シクロドデカノンオキシムからはラウロラクタムが挙げられる。
【0013】
本発明で使用する複合酸化物の固体酸触媒は、珪素およびM(ただし、Mは第4〜14族(族番号に1−18の通し番号を用いる1989年改訂のIUPAC無機化学命名法に従う)による族番号から成る群より選ばれる1種以上の元素であり、炭素および珪素は除く)、有機溶媒、水、必要に応じてテンプレート剤を原料にして製造できる。得られる珪素およびMを含む複合酸化物の比表面積については、特に制限はないが、好ましくは300m2/g以上、より好ましくは700m2/g以上、更に好ましくは700〜1200m2/gである。
【0014】
本発明に用いる第4〜14族から選ばれる元素Mの具体例としては、4族のチタン、ジルコニウム、ハフニウム、5族のバナジウム、ネオジウム、タンタル、6族のクロム、モリブデン、タングステン、7族のマンガン、レニウム、8族の鉄、ルテニウム、オスミウム、9族のコバルト、ロジウム、イリジウム、10族のニッケル、パラジウム、白金、11族の銅、銀、金、12族の亜鉛、カドミウム、水銀、13族のホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、14族のゲルマニウム、スズ、鉛が挙げられる。好ましくは、周期律表の第13族から選ばれるホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム元素であり、より好ましくはアルミニウムおよびガリウムである。
これらの元素は2種以上を混合して使用しても何ら、問題はない。
複合酸化物の珪素源としては、珪素のアルコキシド(テトラエチルオルトシリケート等のテトラアルキルオルトシリケートなど)が好ましく用いられる。また、M(Mは第4〜14族から選ばれる1種以上の元素で、炭素および珪素を除いたもの)源としては、金属アルコキシドや金属硝酸塩が好ましく用いられる。
具体的には、アルミニウムイソプロポキシド、硝酸アルミニウム、硝酸ガリウムなどが挙げられる。
【0015】
珪素およびM(Mは第4〜14族から選ばれる1種以上の元素で、炭素および珪素を除く)を含む複合酸化物の製造に用いる有機溶媒としては、アルコール(好ましくは、エタノール、イソプロパノール、1−ブタノール等の炭素数1〜4の脂肪族アルコール)、ケトン(好ましくは、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソプロピルケトン等の炭素数3〜8の脂肪族ケトン)などが単独又は複数で用いられるが、アルコール(特にエタノールやイソプロパノール)が好ましい。水を使用する場合は、特に制限はなく、脱イオン水(イオン交換水、蒸留水等)であればよい。
【0016】
テンプレート剤は、使用してもしなくても良いが、比表面積の増大、元素Mの分散性向上、適切な反応場の形成といった観点から、使用することが好ましい。使用する場合、細孔径がテンプレートの分子サイズによって変化するため、必要とする細孔径に応じて適宜選択することができる。テンプレート剤としては、アルキルアミン、アルキルアンモニウム塩などが好ましく用いられる。
テンプレート剤の中でも、製造コストの観点から一級アルキルアミンが好ましく、その中でも炭素数6〜20の一級アルキルアミンが好ましく、炭素数8〜20の一級アルキルアミンが多孔体にメソ細孔を与えることができるので、さらに好ましい。
なお、前記のアルキルアミンには、一級アルキルアミン(好ましくは、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン等の炭素数8〜20のもの)、二級アルキルアミン(好ましくは、N−メチルヘキシルアミン等の主鎖の炭素数6〜20、N−アルキル基の炭素数1〜6のもの)、三級アルキルアミン(好ましくは、N,N−ジメチルドデシルアミン等の主鎖の炭素数8〜20、N−アルキル基の炭素数1〜6のもの)が挙げられ、アルキルアンモニウム塩には、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、セチルトリメチルアンモニムブロミド等の炭素数8〜20のハロゲン化アルキルアンモニウムなどが挙げられる。
【0017】
本発明の珪素とM(Mは第4〜14族から選ばれる1種以上の元素で、炭素および珪素は除く)を含む複合酸化物は、例えば、次の手順で製造できるが、これに検定されるものではない。
なお、Si/Mの原子比は、好ましくは5〜500、より好ましくは10〜100、さらに好ましくは20〜60である。
(1)混合液1の調製:珪素源1モルとM源を所定のSi/M(原子比)になるように加えて、混合する。
得られる溶液を「混合液1」とする。
(2)混合液2の調製:珪素源に対して、1〜20倍モルの有機溶媒と10〜50倍モルの水と必要に応じて0.1〜10倍モルのテンプレート剤とを混合する。得られる溶液を「混合液2」とする。
(3)ゲル形成及び熟成:混合液1を混合液2に加えて0〜50℃(但し、水熱合成の場合は0〜150℃)で10分〜5時間激しく攪拌してゲルを形成させ、その後、同温度範囲で12〜400時間熟成させる。次いで、濾過により得られる白色固体を水及びエタノールで洗浄して、80〜120℃で乾燥する。
(4)脱テンプレート処理(焼成):乾燥後の固体を、空気中又は不活性ガス雰囲気下(好ましくは空気又は不活性ガスを流通させながら)、0.1〜20℃/分(好ましくは0.5〜5℃/分)で所定温度まで昇温して、400〜900℃、10分〜4時間の範囲で温度及び時間を選んで、テンプレート剤が除去されるまで焼成する。これにより複合酸化物が得られる。
【0018】
得られた珪素およびM(Mは第4〜14族から選ばれる1種以上の元素、ただし炭素および珪素を除く)を含む複合酸化物の使用量は、特に限定されるものではないが、シクロアルカノンオキシム化合物に対し0.000001〜10重量倍用いることができる。
【0019】
本発明のベックマン転位反応は、有機溶媒の存在下に行われる。溶媒としては、例えば、ベンゾニトリル、アセトニトリル、プロピオニトリル、カプロニトリル、アジポニトリル、トルニトリル等のニトリル化合物、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、メトキシベンゼン等の芳香族炭化水素化合物、モノクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素化合物、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ドデカン等の脂肪族炭化水素化合物、フタル酸ジメチル、フタル酸ジブチル、マロン酸ジメチル等のエステル化合物、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール化合物、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等のアルデヒド化合物、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン化合物、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル化合物等を挙げることができ、これらを単独でも混合しても使用できる。中でもベンゾニトリル、アセトニトリル、プロピオニトリル、カプロニトリル、アジポニトリル、トルニトリル等のニトリル化合物を溶媒として用いた時、収率が向上し特に好ましい。これら溶媒の使用量は特に限定されるものではないが、シクロアルカノンオキシム化合物に対し、1〜10000重量倍使用することができる。
【0020】
本発明で使用する水は、特に制限はなく、脱イオン水(イオン交換水、蒸留水等)であればよい。使用する水の量は、重要で、有機溶媒に対し0.3〜6重量%である。好ましくは0.5〜5.5重量%、より好ましくは0.9〜1.9重量%である。水の使用量が、0.3重量%より少ないか、6重量%より多い場合には、ベックマン転位反応の結果が不充分となり望ましくない。
また、水の導入方法としては、特に制限されるものではなく、有機溶媒に所定量の水が共存していればよい。例えば、予め有機溶媒に添加しておいてもよいし、反応液へ連続的或いは間欠的に供給してもよい。また、予め複合酸化物及び/或いは溶媒に含有させて導入してもよい。
【0021】
本発明のベックマン転位反応は、通常、シクロアルカノンオキシム化合物、水、珪素およびM(Mは第4〜14族から選ばれる1種以上の元素で、炭素および珪素は除く)を含む複合酸化物を適当な溶媒に導入後、加熱することによって行われる。反応は、通常空気または転位反応に不活性なガスの存在下、好ましくは転位反応に不活性なガスの存在下で行う。転位反応に不活性なガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴン等が挙げられる。反応温度は、通常30〜350℃、好ましくは50℃〜250℃、さらに好ましくは60〜200℃で実施される。反応圧力は、特に限定されるものではなく、常圧下、加圧下いずれでも実施される。
転位反応温度が低すぎると、反応がほとんど進行しない。また、反応温度が高すぎると副反応が進行し、目的物のラクタムの収率が減少し、好ましくない。
反応形式はバッチ反応、連続流通反応いずれでも良く、また縣濁床、固定床、流動床のいずれでも実施される。反応時間或いは滞留時間は反応条件により異なるが、1分〜24時間で実施される。
得られるラクタム化合物は、蒸留操作等により分離・精製される。
【0022】
【実施例】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、Si/M(原子比)はICP−AES測定装置(ICAP−575II型;日本ジャーレル・アッシュ社製)を用いるICP分析により、比表面積は高速比表面積・細孔径分布測定装置(NOVA−1200;ユアサアイオニクス社製)を用いる窒素吸着によるBET比表面積測定(120℃真空下で30分間前処理)により、X線回折パターン(Cu−Kα線)は粉末X線回折装置(RAD−RX:理学電機社製)を用いてそれぞれ測定した。シクロアルカノンオキシム化合物の転化率およびラクタム化合物の収率は、反応液をFID検出器によるガスクロマトグラフィーを用いて分析し、算出した。
【0023】
実施例1
(触媒の調整)
アルミニウムイソプロポキシド3.9mmol/イソプロパノール216mmol溶液を70℃で30分攪拌し、テトラエチルオルトシリケート192mmol/エタノール2mol溶液と混合した。得られた混合液(1)を、ドデシルアミン55mmolと水7.2molの混合液(2)に加えて室温で1時間激しく攪拌した。生成した白色ゲルを室温で48時間熟成させた後、白色固体を濾取して水及びエタノールで洗浄し、105℃で24時間乾燥した。次いで、空気中、室温から600℃まで3.3℃/分で昇温して、600℃で2時間焼成した。得られた焼成物について分析を行ったところ、ICP分析よりSi/Al(原子比)=59であった。また、X線回折測定(Cu−Kα線)および窒素吸着測定による窒素吸着等温線からメソ多孔体であることを確認した。以下、これをAl−MS−59と略記する。
(ベックマン転位反応によるラクタムの合成)
50mlガラス製フラスコに、Al−MS−59を0.1g、シクロヘキサノンオキシムを1.0mmol、ベンゾニトリルを10.0g、水をベンゾニトリルに対し1.0重量%(5.6mmol)充填し、110℃で2時間反応を行った。その結果、シクロヘキサノンオキシムの転化率は27.5モル%、カプロラクタムの選択率は73.9モル%であった。
【0024】
実施例2
(ベックマン転位反応によるラクタムの合成)
実施例1において、水をベンゾニトリルに対し1.9重量%(11mmol)加えたこと以外は同様の方法でシクロヘキサノンオキシムのベックマン転位反応を実施した。シクロヘキサノンオキシムの転化率は28.4モル%、カプロラクタムの選択率は79.2モル%であった。
【0025】
実施例3
(ベックマン転位反応によるラクタムの合成)
実施例1において、水をベンゾニトリルに対し5.4重量%(31mmol)加えたこと以外は同様の方法でシクロヘキサノンオキシムのベックマン転位反応を実施した。シクロヘキサノンオキシムの転化率は26.6モル%、カプロラクタムの選択率は66.5モル%であった。
【0026】
比較例1
(ベックマン転位反応によるラクタムの合成)
実施例1において、水を加えずに反応を行ったこと以外は同様の方法でシクロヘキサノンオキシムのベックマン転位反応を実施した。シクロヘキサノンオキシムの転化率は18.3モル%、カプロラクタムの選択率は65.9モル%であった。
【0027】
比較例2
(ベックマン転位反応によるラクタムの合成)
実施例1において、水をベンゾニトリルに対し9.3重量%(57mmol)加えたこと以外は同様の方法でシクロヘキサノンオキシムのベックマン転位反応を実施した。シクロヘキサノンオキシムの転化率は17.5モル%、カプロラクタムの選択率は53.5モル%であった。
【0028】
実施例4
(触媒の調製)
実施例1においてアルミニウムイソプロポキシドを8.0mmolに変更した以外は実施例1と同様の方法で行った。ICP分析よりSi/Al(原子比)=34であった。以下、これをAl−MS−34と略記する。
(ベックマン転位反応によるラクタムの合成)
実施例1において、Al−MS−59をAl−MS−34に変更し、水をベンゾニトリルに対し1.9重量%(11mmol)加えたこと以外は同様の方法でシクロヘキサノンオキシムのベックマン転位反応を実施した。シクロヘキサノンオキシムの転化率は36.5モル%、カプロラクタムの選択率は73.8モル%であった。
【0029】
比較例3
(ベックマン転位反応によるラクタムの合成)
実施例4において、水を加えずに反応を行ったこと以外は同様の方法でシクロヘキサノンオキシムのベックマン転位反応を実施した。シクロヘキサノンオキシムの転化率は23.3モル%、カプロラクタムの選択率は70.7モル%であった。
【0030】
実施例5
(触媒の調製)
硝酸ガリウム・n水和物3.9mmolおよびテトラエチルオルトシリケート194mmol/エタノール0.43mol溶液(1)を、ドデシルアミン56mmolとエタノール1molと水7.2molの混合液(2)に加えて室温で1時間激しく攪拌した。生成した白色ゲルを室温で120時間熟成させた後、白色固体を濾取して水及びエタノールで洗浄し、105℃で24時間乾燥した。次いで、空気中、室温から600℃まで3.3℃/分で昇温して、600℃で2時間焼成した。得られた焼成物について分析を行ったところ、ICP分析よりSi/Ga(原子比)=50であった。また、X線回折測定(Cu−Kα線)および窒素吸着測定による窒素吸着等温線からメソ多孔体であることを確認した。以下、これをGa−MS−50と略記する。
(ベックマン転位反応によるラクタムの合成)
実施例1において、Al−MS−59をGa−MS−50に変更し、水をベンゾニトリルに対し1.9重量%(11mmol)加えたこと以外は同様の方法でシクロヘキサノンオキシムのベックマン転位反応を実施した。シクロヘキサノンオキシムの転化率は44.0モル%、カプロラクタムの選択率は72.2モル%であった。
【0031】
比較例4
(ベックマン転位反応によるラクタムの合成)
実施例5において、水を加えずに反応を行ったこと以外は同様の方法でシクロヘキサノンオキシムのベックマン転位反応を実施した。シクロヘキサノンオキシムの転化率は29.5モル%、カプロラクタムの選択率は60.8モル%であった。
【0032】
実施例6
(触媒の調製)
実施例5において硝酸ガリウム・n水和物を7.7mmolに変更した以外は実施例5と同様の方法で行った。ICP分析よりSi/Ga(原子比)=25であった。以下、これをGa−MS−25と略記する。
(ベックマン転位反応によるラクタムの合成)
実施例1において、Al−MS−59をGa−MS−25に変更し、水をベンゾニトリルに対し1.9重量%(11mmol)加えたこと以外は同様の方法でシクロヘキサノンオキシムのベックマン転位反応を実施した。シクロヘキサノンオキシムの転化率は57.5モル%、カプロラクタムの選択率は83.3モル%であった。
【0033】
比較例5
(ベックマン転位反応によるラクタムの合成)
実施例6において、水を加えずに反応を行ったこと以外は同様の方法でシクロヘキサノンオキシムのベックマン転位反応を実施した。シクロヘキサノンオキシムの転化率は34.6モル%、カプロラクタムの選択率は71.3モル%であった。
【0034】
実施例7
(触媒の調製)
ヘキサデシルトリメチルアンモニウム ブロマイド9.0mmol/H2O4.6mol溶液(1)へ、硝酸ガリウム・n水和物2.3mmolおよび27重量%けい酸ナトリウム水溶液10gの混合液(2)を加えた。続いて1規定塩酸でpHが8−9の間に調製した混合溶液をオートクレーブ中で100℃、20時間加熱攪拌した。水熱合成により得られた白色固体を濾取して水及びエタノールで洗浄し、85℃で24時間乾燥した。次いで、空気中、室温から650℃まで2.7℃/分で昇温して、650℃で3時間焼成した。得られた焼成物について分析を行ったところ、ICP分析よりSi/Ga(原子比)=20であった。また、X線回折測定(Cu−Kα線)からメソ多孔体であることを確認した。以下、これをGa−MS’−20と略記する。
(ベックマン転位反応によるラクタムの合成)
実施例1において、Al−MS−59をGa−MS’−20に変更し、水をベンゾニトリルに対し1.9重量%(11mmol)加えたこと以外は同様の方法でシクロヘキサノンオキシムのベックマン転位反応を実施した。シクロヘキサノンオキシムの転化率は63.4モル%、カプロラクタムの選択率は80.3モル%であった。
【0035】
比較例6
(ベックマン転位反応によるラクタムの合成)
実施例7において、水を加えずに反応を行ったこと以外は同様の方法でシクロヘキサノンオキシムのベックマン転位反応を実施した。シクロヘキサノンオキシムの転化率は39.2モル%、カプロラクタムの選択率は59.9モル%であった。
【0036】
実施例8
(ベックマン転位反応によるラクタムの合成)
実施例1において、Al−MS−59をN.E CHEMCAT社製のH−ZSM−5(Si/Ga=100)に変更し、水をベンゾニトリルに対し1.9重量%(11mmol)加えたこと以外は同様の方法でシクロヘキサノンオキシムのベックマン転位反応を実施した。シクロヘキサノンオキシムの転化率は11.0モル%、カプロラクタムの選択率は60.4モル%であった。
【0037】
比較例7
(ベックマン転位反応によるラクタムの合成)
実施例8において、水を加えずに反応を行ったこと以外は同様の方法でシク
ロヘキサノンオキシムのベックマン転位反応を実施した。シクロヘキサノンオキシムの転化率は3.8モル%、カプロラクタムの選択率は42.1モル%であった。
【0038】
実施例9
(ベックマン転位反応によるラクタムの合成)
実施例1において、Al−MS−59をN.E CHEMCAT社製のH−ZSM−5(Si/Ga=200)に変更し、水をベンゾニトリルに対し1.9重量%(11mmol)加えたこと以外は同様の方法でシクロヘキサノンオキシムのベックマン転位反応を実施した。シクロヘキサノンオキシムの転化率は7.9モル%、カプロラクタムの選択率は67.6モル%であった。
【0039】
比較例8
(ベックマン転位反応によるラクタムの合成)
実施例9において、水を加えずに反応を行ったこと以外は同様の方法でシクロヘキサノンオキシムのベックマン転位反応を実施した。シクロヘキサノンオキシムの転化率は3.9モル%、カプロラクタムの選択率は17.3モル%であった
【0040】
以上、シクロヘキサノンオキシムを用い110℃でのベックマン転位反応の結果、実施例1〜9および比較例1〜8を表1にまとめて示した。
【表1】
【0041】
実施例10
ベックマン転位反応によるラクタムの合成)
実施例1において、温度を110℃から150℃に変更し、水をベンゾニトリルに対し1.9重量%(11mmol)加えたこと以外は同様の方法でシクロヘキサノンオキシムのベックマン転位反応を実施した。シクロヘキサノンオキシムの転化率は53.5モル%、カプロラクタムの選択率は71.4モル%であった。
【0042】
比較例9
(ベックマン転位反応によるラクタムの合成)
実施例10において、水を加えずに反応を行ったこと以外は同様の方法でシクロヘキサノンオキシムのベックマン転位反応を実施した。シクロヘキサノンオキシムの転化率は42.4モル%、カプロラクタムの選択率は55.8モル%であった。
【0043】
実施例11
(ベックマン転位反応によるラクタムの合成)
実施例6において、温度を110℃から150℃に変更したこと以外は同様の方法でシクロヘキサノンオキシムのベックマン転位反応を実施した。シクロヘキサノンオキシムの転化率は85.6モル%、カプロラクタムの選択率は80.1モル%であった。
【0044】
比較例10
(ベックマン転位反応によるラクタムの合成)
実施例11において、水を加えずに反応を行ったこと以外は同様の方法でシクロヘキサノンオキシムのベックマン転位反応を実施した。シクロヘキサノンオキシムの転化率は54.1モル%、カプロラクタムの選択率は64.0モル%であった。
【0045】
以上、シクロヘキサノンオキシムを用い150℃でのベックマン転位反応の結果、実施例10〜11および比較例9〜10を表2にまとめて示した。
【表2】
【0046】
実施例12
(ベックマン転位反応によるラクタムの合成)
50mlガラス製フラスコに、Ga−MS−50を0.05g、シクロドデカノンオキシムを2.5mmol、ベンゾニトリルを5.0g、水をベンゾニトリルに対し0.5重量% (1.4mmol)充填し、90℃で4時間反応を行った。その結果、シクロドデカノンオキシムの転化率は26.0モル%、ラウロラクタムの選択率は76.7モル%であった。
【0047】
実施例13
(ベックマン転位反応によるラクタムの合成)
実施例12において、水をベンゾニトリルに対し0.9重量%(2.4mmol)加えたこと以外は同様の方法でシクロドデカノンオキシムのベックマン転位反応を実施した。シクロドデカノンオキシムの転化率は30.2モル%、ラウロラクタムの選択率は72.9モル%であった。
【0048】
実施例14
(ベックマン転位反応によるラクタムの合成)
実施例12において、水をベンゾニトリルに対し2.0重量%(5.5mmol)加えたこと以外は同様の方法でシクロドデカノンオキシムのベックマン転位反応を実施した。シクロドデカノンオキシムの転化率は19.8モル%、ラウロラクタムの選択率は71.9モル%であった。
【0049】
比較例11
(ベックマン転位反応によるラクタムの合成)
実施例12において、水を加えずに反応を行ったこと以外は同様の方法でシクロドデカノンオキシムのベックマン転位反応を実施した。シクロドデカノンオキシムの転化率は18.7モル%、ラウロラクタムの選択率は65.9モル%であった。
【0050】
以上、シクロドデカノンオキシムを用いた90℃でのベックマン転位反応の結果、実施例12〜14および比較例11を表3に示した。
【表3】
【0051】
【発明の効果】
本発明により、液相中で固体酸触媒の存在下、シクロアルカノンオキシム化合物のベックマン転位反応を行うにあたり、使用する固体酸触媒の脱水工程および溶媒の脱水処理を施すことなく、むしろ所定量の水を共存させることにより、温和な反応条件下、高選択率でラクタム化合物を製造することができる。
Claims (6)
- 固体酸触媒存在下、ベックマン転位反応によりシクロアルカノンオキシム化合物から対応するラクタム化合物を製造するに際し、
(1)固体酸触媒が、珪素およびMを含む複合酸化物であり、
(2)有機溶媒、および
(3)有機溶媒に対し、0.3〜6重量%の水、
を使用することを特徴とするラクタム化合物の製造法。
(ただし、Mは第4〜14族(族番号に1−18の通し番号を用いる1989年改訂のIUPAC無機化学命名法に従う)による族番号から成る群より選ばれる1種以上の元素であり、炭素および珪素は除く) - (1)固体酸触媒のMが、アルミニウムまたはガリウムである請求項1に記載のラクタム化合物の製造法。
- (1)固体酸触媒の珪素/Mの原子比が、5〜500である請求項1または2に記載のラクタム化合物の製造法。
- (1)固体酸触媒が、テンプレート剤を用いて調整された珪素およびMを含む複合酸化物である請求項1〜3いずれか1項記載のラクタム化合物の製造法。
- 有機溶媒が、少なくとも1個のシアノ基を有する有機化合物である請求項1〜4のいずれか1項に記載のラクタム化合物の製造法。
- シクロアルカノンオキシム化合物がシクロヘキサノンオキシム及び/又はシクロドデカノンオキシムである請求項1〜5のいずれか1項に記載のラクタム化合物の製造法。
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2003
- 2003-05-28 JP JP2003150214A patent/JP2004352623A/ja active Pending
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