JP2004351464A - マグネシウム合金の曲げ加工方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】金型を必要とすることなく、厚肉のマグネシウム合金に曲げ変形を付与する加工方法を提供する。
【解決手段】押圧具4により曲げ変形を付与して製品を成形するマグネシウム合金1の曲げ加工方法において、加熱手段5を備えた押圧具4を前記マグネシウム合金1に接触させて熱伝導により前記マグネシウム合金1を加熱し、その後前記マグネシウム合金1を前記押圧具4により押圧成形し、厚肉のマグネシウム合金1の曲げ加工を行う。
【選択図】 図1
【解決手段】押圧具4により曲げ変形を付与して製品を成形するマグネシウム合金1の曲げ加工方法において、加熱手段5を備えた押圧具4を前記マグネシウム合金1に接触させて熱伝導により前記マグネシウム合金1を加熱し、その後前記マグネシウム合金1を前記押圧具4により押圧成形し、厚肉のマグネシウム合金1の曲げ加工を行う。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、マグネシウム合金の曲げ加工方法に係り、特に少量生産品の曲げ加工に好適な加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
マグネシウムは実用に供される金属の中では最も軽量であり、比強度、電磁シールド性能、熱放散性能、振動減衰性能等が優れている。また、リサイクル率が高く、リサイクルのための再生産エネルギも少なくて済むことから、最近では電気通信機器の構造部材に多用されるようになってきた。因みに樹脂材料のリサイクル率が20%程度であるのに対し、軽金属材料の場合には90%以上のリサイクル率を確保することも可能である。
【0003】
しかし、同じく軽金属に属するアルミニウム材料に比較すると、マグネシウム合金材料は延性に乏しく、曲げ加工など加工度の大きな塑性加工を行うと容易に破断してしまう。したがって、最近までマグネシウム合金の塑性加工は困難と考えられていた。また、構造材として実用に供されるようになった歴史が浅いことから、構造材として長い歴史を有する鉄鋼材料やアルミニウム材料に比較すると、塑性加工方法に関するデータは極端に少ない。
【0004】
このような情況下において、本願の発明者らは上述したようなマグネシウム合金材料が有する優れた特性について早くから着目し、マグネシウム合金の塑性加工方法を研究してきた。そして、近年に至って比較的展延性に富むAZ31等のマグネシウム合金も実用に供されるようになってきたことから、マグネシウム合金の薄板を予熱した後、塑性変形を付与するプレス加工方法や加工装置について幾つかの具体的提案をしてきた(例えば、特許文献1,2参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開2003−48026号公報
【特許文献2】
特開2003−53437号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来技術であるマグネシウム合金のプレス加工方法は、ダイスとパンチという一対の金型が必要になるという問題がある。したがって、大量生産品の場合はともかく、少量生産品の場合には高価な金型の償却負担が重く、適用製品の拡大という面で大きな制約となっていた。
【0007】
そこで、金型の代わりに押圧具のみで曲げ加工可能なマグネシウム合金の加工方法を開発すれば、少量生産品にも適用することができる。また、金型が不要となれば、金型製作費用が不要になるのみならず、金型製作に要する時間も不要となり、製品開発のリードタイムを大幅に短縮することもできる。
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、金型を必要としない安価な汎用機械である曲げ加工機により厚肉のマグネシウム合金に曲げ変形を付与する加工方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明における請求項1のマグネシウム合金の曲げ加工方法は、押圧具により曲げ変形を付与して製品を成形するマグネシウム合金の曲げ加工方法において、加熱手段を備えた押圧具を前記マグネシウム合金に接触させて熱伝導により前記マグネシウム合金を加熱し、その後、前記マグネシウム合金を前記押圧具により押圧成形するものである。
【0010】
この請求項1の構成によれば、マグネシウム合金の曲げ加工を行うに際し、高価な金型を必要としないことから生産設備費を低減できる。また、金型製作に要する時間も必要ないことから、製品開発のリードタイムを短縮することができる。さらに、被加工物を加熱した後で曲げ加工を行うことから、変形抵抗が小さくなり、小さな押圧力で加工することができる。したがって、肉厚の厚いマグネシウム合金材料であっても破断することなく曲げ加工することができる。
【0011】
本発明における請求項2のマグネシウム合金の曲げ加工方法は、前記押圧具に加熱温度を検出する温度検出手段を備えたものである。
【0012】
この請求項2の構成によれば、押圧具の加熱温度を適正な範囲内に制御することができるので、被加工物の肉厚寸法が種々変化しても肉厚に応じて適正な変形抵抗に制御することができる。
【0013】
本発明における請求項3のマグネシウム合金の曲げ加工方法は、前記押圧具に備える加熱手段として電熱ヒータを用いたものである。
【0014】
この請求項3の構成によれば、電熱ヒータへの通電を制御することにより押圧具の温度調整が容易になる。
【0015】
本発明における請求項4のマグネシウム合金の曲げ加工方法は、前記押圧具の加熱温度を200〜400℃に加熱した後、マグネシウム合金に押圧して曲げ加工するものである。
【0016】
この請求項4の構成によれば、変形抵抗を低減することができ、厚肉材料であっても破断することなく曲げ加工することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例について図面に基づいて説明する。図1は金属板を曲げ加工する汎用の曲げ加工機のテーブル上に載置された被加工物を示す断面図である。図1において、被加工物であるマグネシウム合金板材1の曲げ部1aは、テーブル2のコーナー部2aに一致するように位置決めして置かれる。次に、テーブル2の上方からマグネシウム合金板材1を押さえ付ける押さえ具3が下ろされ、テーブル2上にマグネシウム合金板材1が押圧固定される。また、押圧具4はテーブル側面2bから適正な間隔となる位置にセットされる。ここで、適正な間隔とは、被加工物1の板厚より若干大きな寸法をいう。この押圧具4の内部には加熱ヒータ5が組み込まれており、加熱ヒータ5への通電により押圧具4全体が加熱されるようになっている。加熱温度は被加工物1の質量の大小により異なり、質量が大きい場合は高めの温度に設定され、質量が小さい場合には低めの温度に設定されるが、概ね200〜400℃程度に加熱される。
【0018】
次に、上記の適正温度に加熱された押圧具4を降下させ、マグネシウム合金板材1の上面に接触した段階で降下を一時停止する。ここで、押圧具4が被加工物1に接触した段階で所定時間だけ押圧具4の降下を停止すると、加熱された押圧具4から被加工物であるマグネシウム合金板材1に熱伝導により電熱ヒータ5の熱が伝わり、被加工物1の曲げ変形部1aが温められる。そして、所定時間経過後、押圧具4を再度降下させれば被加工物であるマグネシウム合金板材1を直角に曲げることができる。ここで、被加工物1の曲げ変形部1aを加熱するのは、曲げ変形部1aの塑性変形抵抗を低減して小さな押圧力で加工可能にすると共に、曲げ変形部1aにクラックが生じるのを防止し、製品歩留まりの向上を図るためである。なお、上記工程において、押圧具4の降下を一時停止する時間は被加工物1の質量の大小により異なり、被加工物1の質量に応じて適宜選択される。
【0019】
また、押圧具4の内部には、押圧具4の温度を検出するための温度センサ6が埋設されている。具体的には熱電対6が埋め込まれている。このようにすると、押圧具4の加熱温度が的確に把握され、被加工物1の質量の大小によらず適正な温度に達した状態で曲げ加工を行うことができる。
【0020】
さらに、押圧具4の内部に設置する加熱ヒータには電熱ヒータ5が用いられる。電熱ヒータ5は電流の通断により的確に温度調節ができると共に、電熱ヒータ5に流す電流の大小により発生熱量を容易に調節できることから、被加工物1の質量の大小にかかわらず、同一の曲げ加工機により異なる種類の被加工物1を曲げ加工できる。
【0021】
このように本実施例によれば、マグネシウム合金1の曲げ加工を行うに際し、高価な金型を必要としないことから生産設備費を低減できる。また、金型生産に要する時間も必要ないことから、製品開発のリードタイムを短縮することができる。さらに、被加工物1を加熱した後に曲げ加工を行うことから、変形抵抗が小さくなり、小さな押圧力で加工することができる。したがって、厚板のマグネシウム合金であっても破断することなく曲げ加工することができる。
【0022】
図2はマグネシウム合金板材1の端部1bをヘミング加工している状態を示す断面図である。曲げ加工機のテーブル2の中央部にヘミング加工したい部位1bを置き、その後、上方から押圧具4を押し付けてヘミング加工を行う。この場合においても、押圧具4を降下させて押圧具4が被加工物であるマグネシウム合金板材1に接触した段階で押圧具4の降下をいったん停止し、加熱された押圧具4の熱を熱伝導により被加工物1に伝達する。そして所定時間が経過した後、再度押圧具4を降下させてヘミング加工を完了する。この場合においても熱伝導に要する時間は被加工物1の質量の大小により異なるが、被加工物の質量に応じて適宜選択される。
【0023】
次に、本発明に係るマグネシウム合金1の曲げ加工方法により製作される機構部品または製品について説明する。図3は段差がある家屋の玄関口11と道路面12との間に設置して身体障害者を乗せた車椅子を通すためのスロープ13の使用状態を示すものである。スロープ13の長さは、長いほど使用状態における勾配が緩やかになり、車椅子の昇降操作は容易になるが、長くするとスロープ13の質量が増加して運搬時の負担が増加するし、設置状態のスパンも長くなることから強度を強くする必要がある。また、スロープ13の強度を向上させるには板厚を厚くするのみならず、断面係数を大きくするのが効果的である。そこで、図4に示すようにスロープ13の断面の側部上端に折り曲げ部13a〜13cを設ける必要がある。また、折り曲げ部13a〜13cは強度向上の手段であるのみならず、スロープ13という商品の売れ行きを左右する美観に与える影響も大きいことから、図4に示すような種々の形状13a〜13cに折り曲げ加工する場合がある。仮に、これら各種の形状13a〜13cに対応した金型を製作してプレス加工により塑性加工すると、金型費用は極めて高額になってしまう。しかし、本発明に係るマグネシウム合金1の曲げ加工方法によれば、曲げ加工機の押圧具4の形状を変更するだけで各種の製品形状に対応することができる。したがって、少量生産品であっても、安価、かつ短納期にマグネシウム合金製部品を製作することができる。
【0024】
図5は、近年普及が著しい薄型大画面テレビの一種であるプラズマテレビ21の外観を示す斜視図である。プラズマテレビ21は、薄型大画面であることも特徴の一つであるが、壁掛けテレビとしても使用可能という特徴を有することから、軽量であることが求められる。したがって、プラズマテレビ21の構造部材である筐体は、比強度の高い材料で製作するのが効果的である。そこで、プラズマテレビ21の筐体をマグネシウム合金で製作することが検討されている。図6は、図5に示すプラズマテレビ21の筐体枠22を示す外観斜視図である。この筐体枠22は一枚のマグネシウム合金帯板を曲げ加工して製作する。ここで、筐体枠22の4隅のうち3隅22a〜22cは、曲げ加工により形成し、残りの1隅22dは溶接により接合する。本発明に係るマグネシウム合金の曲げ加工方法を前記3隅22a〜22cの曲げ加工に適用すると、安価で短期間に製作することができる。
【0025】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。たとえば前記実施例では、温度検出手段として熱電対を用いて説明したが、熱電対に替えてサーミスタを用いることも可能である。また、マグネシウム合金材料としてAZ31を例に上げて説明したが、AZ31に限らず他のマグネシウム合金材料にも適用することができる。
【0026】
【発明の効果】
本発明における請求項1のマグネシウム合金の曲げ加工方法によれば、マグネシウム合金の曲げ加工を行うに際し、高価な金型を必要としないことから生産設備費を低減できる。また、金型生産に要する期間も必要ないことから、製品開発のリードタイムを短縮することができる。さらに、被加工物を加熱した後に曲げ加工を行うことから変形抵抗が小さくなり、小さな押圧力で加工することができる。したがって、厚板であっても破断することなく塑性加工することができ、製品歩留まりも向上する。
【0027】
本発明における請求項2のマグネシウム合金の曲げ加工方法によれば、押圧具の加熱温度を適正な範囲内に制御することができるので、被加工物の肉厚寸法が種々変化しても肉厚に応じて適正な変形抵抗に制御することができる。
【0028】
本発明における請求項3のマグネシウム合金の曲げ加工方法によれば、電熱ヒータへの電流を通断することにより押圧具の加熱制御が容易になる。
【0029】
本発明における請求項4のマグネシウム合金の曲げ加工方法によれば、変形抵抗を低減することができ、厚肉材料であっても破断することなく塑性加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるマグネシウム合金の曲げ加工方法を示す構成図である。
【図2】同上
【図3】本発明によるマグネシウム合金の曲げ加工方法により製作された製品の使用状態を示す外観斜視図である。
【図4】同上製品の側板上端部の拡大図である。
【図5】本発明によるマグネシウム合金の曲げ加工方法により製作された部品が使用されたプラズマテレビの外観斜視図である。
【図6】同上筐体枠を示す外観斜視図である。
【符号の説明】
1 マグネシウム合金(マグネシウム合金板材)
4 押圧具
5 加熱手段、電熱ヒータ
6 温度検出手段(熱電対)
【発明の属する技術分野】
本発明は、マグネシウム合金の曲げ加工方法に係り、特に少量生産品の曲げ加工に好適な加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
マグネシウムは実用に供される金属の中では最も軽量であり、比強度、電磁シールド性能、熱放散性能、振動減衰性能等が優れている。また、リサイクル率が高く、リサイクルのための再生産エネルギも少なくて済むことから、最近では電気通信機器の構造部材に多用されるようになってきた。因みに樹脂材料のリサイクル率が20%程度であるのに対し、軽金属材料の場合には90%以上のリサイクル率を確保することも可能である。
【0003】
しかし、同じく軽金属に属するアルミニウム材料に比較すると、マグネシウム合金材料は延性に乏しく、曲げ加工など加工度の大きな塑性加工を行うと容易に破断してしまう。したがって、最近までマグネシウム合金の塑性加工は困難と考えられていた。また、構造材として実用に供されるようになった歴史が浅いことから、構造材として長い歴史を有する鉄鋼材料やアルミニウム材料に比較すると、塑性加工方法に関するデータは極端に少ない。
【0004】
このような情況下において、本願の発明者らは上述したようなマグネシウム合金材料が有する優れた特性について早くから着目し、マグネシウム合金の塑性加工方法を研究してきた。そして、近年に至って比較的展延性に富むAZ31等のマグネシウム合金も実用に供されるようになってきたことから、マグネシウム合金の薄板を予熱した後、塑性変形を付与するプレス加工方法や加工装置について幾つかの具体的提案をしてきた(例えば、特許文献1,2参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開2003−48026号公報
【特許文献2】
特開2003−53437号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来技術であるマグネシウム合金のプレス加工方法は、ダイスとパンチという一対の金型が必要になるという問題がある。したがって、大量生産品の場合はともかく、少量生産品の場合には高価な金型の償却負担が重く、適用製品の拡大という面で大きな制約となっていた。
【0007】
そこで、金型の代わりに押圧具のみで曲げ加工可能なマグネシウム合金の加工方法を開発すれば、少量生産品にも適用することができる。また、金型が不要となれば、金型製作費用が不要になるのみならず、金型製作に要する時間も不要となり、製品開発のリードタイムを大幅に短縮することもできる。
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、金型を必要としない安価な汎用機械である曲げ加工機により厚肉のマグネシウム合金に曲げ変形を付与する加工方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明における請求項1のマグネシウム合金の曲げ加工方法は、押圧具により曲げ変形を付与して製品を成形するマグネシウム合金の曲げ加工方法において、加熱手段を備えた押圧具を前記マグネシウム合金に接触させて熱伝導により前記マグネシウム合金を加熱し、その後、前記マグネシウム合金を前記押圧具により押圧成形するものである。
【0010】
この請求項1の構成によれば、マグネシウム合金の曲げ加工を行うに際し、高価な金型を必要としないことから生産設備費を低減できる。また、金型製作に要する時間も必要ないことから、製品開発のリードタイムを短縮することができる。さらに、被加工物を加熱した後で曲げ加工を行うことから、変形抵抗が小さくなり、小さな押圧力で加工することができる。したがって、肉厚の厚いマグネシウム合金材料であっても破断することなく曲げ加工することができる。
【0011】
本発明における請求項2のマグネシウム合金の曲げ加工方法は、前記押圧具に加熱温度を検出する温度検出手段を備えたものである。
【0012】
この請求項2の構成によれば、押圧具の加熱温度を適正な範囲内に制御することができるので、被加工物の肉厚寸法が種々変化しても肉厚に応じて適正な変形抵抗に制御することができる。
【0013】
本発明における請求項3のマグネシウム合金の曲げ加工方法は、前記押圧具に備える加熱手段として電熱ヒータを用いたものである。
【0014】
この請求項3の構成によれば、電熱ヒータへの通電を制御することにより押圧具の温度調整が容易になる。
【0015】
本発明における請求項4のマグネシウム合金の曲げ加工方法は、前記押圧具の加熱温度を200〜400℃に加熱した後、マグネシウム合金に押圧して曲げ加工するものである。
【0016】
この請求項4の構成によれば、変形抵抗を低減することができ、厚肉材料であっても破断することなく曲げ加工することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例について図面に基づいて説明する。図1は金属板を曲げ加工する汎用の曲げ加工機のテーブル上に載置された被加工物を示す断面図である。図1において、被加工物であるマグネシウム合金板材1の曲げ部1aは、テーブル2のコーナー部2aに一致するように位置決めして置かれる。次に、テーブル2の上方からマグネシウム合金板材1を押さえ付ける押さえ具3が下ろされ、テーブル2上にマグネシウム合金板材1が押圧固定される。また、押圧具4はテーブル側面2bから適正な間隔となる位置にセットされる。ここで、適正な間隔とは、被加工物1の板厚より若干大きな寸法をいう。この押圧具4の内部には加熱ヒータ5が組み込まれており、加熱ヒータ5への通電により押圧具4全体が加熱されるようになっている。加熱温度は被加工物1の質量の大小により異なり、質量が大きい場合は高めの温度に設定され、質量が小さい場合には低めの温度に設定されるが、概ね200〜400℃程度に加熱される。
【0018】
次に、上記の適正温度に加熱された押圧具4を降下させ、マグネシウム合金板材1の上面に接触した段階で降下を一時停止する。ここで、押圧具4が被加工物1に接触した段階で所定時間だけ押圧具4の降下を停止すると、加熱された押圧具4から被加工物であるマグネシウム合金板材1に熱伝導により電熱ヒータ5の熱が伝わり、被加工物1の曲げ変形部1aが温められる。そして、所定時間経過後、押圧具4を再度降下させれば被加工物であるマグネシウム合金板材1を直角に曲げることができる。ここで、被加工物1の曲げ変形部1aを加熱するのは、曲げ変形部1aの塑性変形抵抗を低減して小さな押圧力で加工可能にすると共に、曲げ変形部1aにクラックが生じるのを防止し、製品歩留まりの向上を図るためである。なお、上記工程において、押圧具4の降下を一時停止する時間は被加工物1の質量の大小により異なり、被加工物1の質量に応じて適宜選択される。
【0019】
また、押圧具4の内部には、押圧具4の温度を検出するための温度センサ6が埋設されている。具体的には熱電対6が埋め込まれている。このようにすると、押圧具4の加熱温度が的確に把握され、被加工物1の質量の大小によらず適正な温度に達した状態で曲げ加工を行うことができる。
【0020】
さらに、押圧具4の内部に設置する加熱ヒータには電熱ヒータ5が用いられる。電熱ヒータ5は電流の通断により的確に温度調節ができると共に、電熱ヒータ5に流す電流の大小により発生熱量を容易に調節できることから、被加工物1の質量の大小にかかわらず、同一の曲げ加工機により異なる種類の被加工物1を曲げ加工できる。
【0021】
このように本実施例によれば、マグネシウム合金1の曲げ加工を行うに際し、高価な金型を必要としないことから生産設備費を低減できる。また、金型生産に要する時間も必要ないことから、製品開発のリードタイムを短縮することができる。さらに、被加工物1を加熱した後に曲げ加工を行うことから、変形抵抗が小さくなり、小さな押圧力で加工することができる。したがって、厚板のマグネシウム合金であっても破断することなく曲げ加工することができる。
【0022】
図2はマグネシウム合金板材1の端部1bをヘミング加工している状態を示す断面図である。曲げ加工機のテーブル2の中央部にヘミング加工したい部位1bを置き、その後、上方から押圧具4を押し付けてヘミング加工を行う。この場合においても、押圧具4を降下させて押圧具4が被加工物であるマグネシウム合金板材1に接触した段階で押圧具4の降下をいったん停止し、加熱された押圧具4の熱を熱伝導により被加工物1に伝達する。そして所定時間が経過した後、再度押圧具4を降下させてヘミング加工を完了する。この場合においても熱伝導に要する時間は被加工物1の質量の大小により異なるが、被加工物の質量に応じて適宜選択される。
【0023】
次に、本発明に係るマグネシウム合金1の曲げ加工方法により製作される機構部品または製品について説明する。図3は段差がある家屋の玄関口11と道路面12との間に設置して身体障害者を乗せた車椅子を通すためのスロープ13の使用状態を示すものである。スロープ13の長さは、長いほど使用状態における勾配が緩やかになり、車椅子の昇降操作は容易になるが、長くするとスロープ13の質量が増加して運搬時の負担が増加するし、設置状態のスパンも長くなることから強度を強くする必要がある。また、スロープ13の強度を向上させるには板厚を厚くするのみならず、断面係数を大きくするのが効果的である。そこで、図4に示すようにスロープ13の断面の側部上端に折り曲げ部13a〜13cを設ける必要がある。また、折り曲げ部13a〜13cは強度向上の手段であるのみならず、スロープ13という商品の売れ行きを左右する美観に与える影響も大きいことから、図4に示すような種々の形状13a〜13cに折り曲げ加工する場合がある。仮に、これら各種の形状13a〜13cに対応した金型を製作してプレス加工により塑性加工すると、金型費用は極めて高額になってしまう。しかし、本発明に係るマグネシウム合金1の曲げ加工方法によれば、曲げ加工機の押圧具4の形状を変更するだけで各種の製品形状に対応することができる。したがって、少量生産品であっても、安価、かつ短納期にマグネシウム合金製部品を製作することができる。
【0024】
図5は、近年普及が著しい薄型大画面テレビの一種であるプラズマテレビ21の外観を示す斜視図である。プラズマテレビ21は、薄型大画面であることも特徴の一つであるが、壁掛けテレビとしても使用可能という特徴を有することから、軽量であることが求められる。したがって、プラズマテレビ21の構造部材である筐体は、比強度の高い材料で製作するのが効果的である。そこで、プラズマテレビ21の筐体をマグネシウム合金で製作することが検討されている。図6は、図5に示すプラズマテレビ21の筐体枠22を示す外観斜視図である。この筐体枠22は一枚のマグネシウム合金帯板を曲げ加工して製作する。ここで、筐体枠22の4隅のうち3隅22a〜22cは、曲げ加工により形成し、残りの1隅22dは溶接により接合する。本発明に係るマグネシウム合金の曲げ加工方法を前記3隅22a〜22cの曲げ加工に適用すると、安価で短期間に製作することができる。
【0025】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。たとえば前記実施例では、温度検出手段として熱電対を用いて説明したが、熱電対に替えてサーミスタを用いることも可能である。また、マグネシウム合金材料としてAZ31を例に上げて説明したが、AZ31に限らず他のマグネシウム合金材料にも適用することができる。
【0026】
【発明の効果】
本発明における請求項1のマグネシウム合金の曲げ加工方法によれば、マグネシウム合金の曲げ加工を行うに際し、高価な金型を必要としないことから生産設備費を低減できる。また、金型生産に要する期間も必要ないことから、製品開発のリードタイムを短縮することができる。さらに、被加工物を加熱した後に曲げ加工を行うことから変形抵抗が小さくなり、小さな押圧力で加工することができる。したがって、厚板であっても破断することなく塑性加工することができ、製品歩留まりも向上する。
【0027】
本発明における請求項2のマグネシウム合金の曲げ加工方法によれば、押圧具の加熱温度を適正な範囲内に制御することができるので、被加工物の肉厚寸法が種々変化しても肉厚に応じて適正な変形抵抗に制御することができる。
【0028】
本発明における請求項3のマグネシウム合金の曲げ加工方法によれば、電熱ヒータへの電流を通断することにより押圧具の加熱制御が容易になる。
【0029】
本発明における請求項4のマグネシウム合金の曲げ加工方法によれば、変形抵抗を低減することができ、厚肉材料であっても破断することなく塑性加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるマグネシウム合金の曲げ加工方法を示す構成図である。
【図2】同上
【図3】本発明によるマグネシウム合金の曲げ加工方法により製作された製品の使用状態を示す外観斜視図である。
【図4】同上製品の側板上端部の拡大図である。
【図5】本発明によるマグネシウム合金の曲げ加工方法により製作された部品が使用されたプラズマテレビの外観斜視図である。
【図6】同上筐体枠を示す外観斜視図である。
【符号の説明】
1 マグネシウム合金(マグネシウム合金板材)
4 押圧具
5 加熱手段、電熱ヒータ
6 温度検出手段(熱電対)
Claims (4)
- 押圧具により曲げ変形を付与して製品を成形するマグネシウム合金の曲げ加工方法において、加熱手段を備えた押圧具を前記マグネシウム合金に接触させて熱伝導により前記マグネシウム合金を加熱し、その後前記マグネシウム合金を前記押圧具により押圧成形することを特徴とするマグネシウム合金の曲げ加工方法。
- 前記押圧具に加熱温度を検出する温度検出手段を備えたことを特徴とする請求項1記載のマグネシウム合金の曲げ加工方法。
- 前記押圧具に備える加熱手段として電熱ヒータを用いたことを特徴とする請求項1記載のマグネシウム合金の曲げ加工方法。
- 前記押圧具を200〜400℃に加熱した後、マグネシウム合金に押圧して成形することを特徴とする請求項1〜3記載のマグネシウム合金の曲げ加工方法。
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---|---|---|---|
JP2003152132A JP2004351464A (ja) | 2003-05-29 | 2003-05-29 | マグネシウム合金の曲げ加工方法 |
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Family
ID=34047425
Family Applications (1)
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010089586A (ja) * | 2008-10-06 | 2010-04-22 | Aisin Keikinzoku Co Ltd | 多段スライド式車両用スロープ装置 |
US9440278B2 (en) | 2012-11-30 | 2016-09-13 | GM Global Technologies Operations LLC | Roller hemming |
CN107717466A (zh) * | 2017-09-30 | 2018-02-23 | 深圳市中创镁工程技术有限公司 | 一种镁合金型材深加工产线 |
-
2003
- 2003-05-29 JP JP2003152132A patent/JP2004351464A/ja active Pending
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US9440278B2 (en) | 2012-11-30 | 2016-09-13 | GM Global Technologies Operations LLC | Roller hemming |
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