JP2004350165A - スピーカ - Google Patents

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力 榎本
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Abstract

【課題】振動板による内部損失によって発生する高音域での音圧低下を防止するようにした圧電型スピーカを提供する。
【解決手段】圧電素子14を一面に接合した駆動板13の上面に筒状伝達部材22の開放側の端部を接合し、しかもこの筒状伝達部材22の閉塞されかつフランジ23を有する端部の上記フランジ23の外周側の傾斜面24に振動板20の前面を接合する。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はスピーカに係り、とくに圧電素子の振動によって振動板を振動させるようにしたスピーカに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に圧電素子は機械的な運動と電気的な運動との変換のためのトランスジューサを構成している。従ってこのようなトランスジューサを利用してスピーカを組立てることが従来より試みられている。すなわちダイナミックスピーカにおけるボイスコイルに代えて、圧電素子を用いることによって、圧電スピーカが得られる。
【0003】
例えば特開昭62−265896号公報には、コーン型振動板を有するスピーカのコーン型振動板の上面にダストキャップを接着するとともに、このダストキャップにセラミックの素子を結合したコアキシャルスピーカが開示されている。すなわちここではダイナミックスピーカの振動板の前面側に高音域用の圧電スピーカを取付けるようにしている。
【0004】
従来の一般的な圧電素子を用いたスピーカは図8に示すように構成されていた。このスピーカはほぼカップ状をなす鋼板製のフレーム1を備え、このフレーム1の底部の開口にアダプタリング2を介して駆動板2を取付けるようにし、この駆動板2の下面に圧電素子4を取付ける。そして周縁部をフレーム1にエッジを介して支持された振動板5の中心側の部分を上記駆動板3の上面に取付け、しかも振動板2の中央の開口部をドーム状のキャップ6によって閉塞するようにしている。
【0005】
このようなスピーカにおいて、上記圧電素子4に音声信号電流を印加すると、この圧電素子4が面方向に伸縮し、これによって駆動板3が厚さ方向に振動を起す。この振動が駆動板3に直接取付けられている振動板5に伝達され、これによって振動板5が音声を再生する。
【0006】
【特許文献1】特開昭62−265896号公報
【発明が解決しようとする課題】
図8に示す従来の圧電型スピーカによれば、圧電素子4を取付けた駆動板3に振動板5の中心側の部分が直接接着される構造になっている。従って上記振動板5によるエネルギ損失が多く、とくに高音域での音質の低下が著しいという問題がある。すなわち図6において点線で示すように、高音側、とくに10KHz以上の高音域において十分な音圧を得ることができない問題がある。
【0007】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであって、高音域での音圧の低下を防止するようにした圧電型スピーカを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本願の主要な発明は、
音声信号電流を圧電素子に印加し、該圧電素子の振動を振動板に伝えて音声を再生するスピーカにおいて、
一端にフランジ部を有する伝達部材を前記圧電素子と前記振動板との間に介在させ、該伝達部材を介して前記圧電素子から前記振動板に振動を伝達することを特徴とするスピーカに関するものである。
【0009】
ここで前記伝達部材が筒状をなすとともに、一端が閉塞され、該閉塞された端部の外周部に前記フランジが一体に連結され、前記フランジの外周部に前記振動板が連結されるとともに、閉塞された端部とは反対側の端部が前記圧電素子に連結されることが好ましい。また前記伝達部材が合成樹脂の成形体であることが好ましい。また前記伝達部材のフランジの外周面が傾斜面から構成されるとともに、該傾斜面が前記振動板の放音側の表面に接合されることが好ましい。また前記伝達部材のフランジの断面がほぼ円弧状に湾曲されるとともに、湾曲した前記フランジの外周面が傾斜面から構成され、該傾斜面が前記振動板の放音側の表面に接合されることが好ましい。また前記伝達部材のフランジが斜めに開放するように錐状をなし、しかも該錐状のフランジの外周面が前記振動板の放音側の表面に接合されることが好ましい。
【0010】
本願の別の主要な発明は、
圧電素子の振動によって振動板を振動させるようにしたスピーカにおいて、
前記圧電素子と前記振動板との間に筒状の伝達部材を介在させ、該筒状の伝達部材を介して軸線方向に振動を伝達することを特徴とするスピーカに関するものである。
【0011】
ここで前記圧電素子の一方の面が電極を兼ねる駆動板に接合されるとともに、該駆動板に前記伝達部材の一端が接合されることが好ましい。また前記筒状の伝達部材の一方の端部が前記駆動板の振動の腹の部位またはその近傍に接合されることが好ましい。また前記駆動板がほぼ円板状をなすとともに、該円板状の駆動板の一方の表面に矩形の板状の圧電素子が接合され、該圧電素子の面方向の伸縮によって前記駆動板が厚さ方向に振動することが好ましい。
【0012】
本願の別の主要な発明は、
圧電素子の一方の表面に取付けられた伝達部材の前記圧電素子との取付け部とは反対側の端部に振動板の中心部の開口の周縁部を接合したことを特徴とする圧電型スピーカに関するものである。
【0013】
ここで前記伝達部材が筒状部を有し、該筒状部の開口された端部を前記圧電素子の一方の表面に取付けることが好ましい。また前記振動板の放音側の表面を前記伝達部材に接合することが好ましい。また前記伝達部材がほぼ円筒状をなすとともに、前記圧電素子の振動の腹またはその近傍に外周壁が接するように直径の値が設定されることが好ましい。
【0014】
本願に含まれる発明の好ましい態様は、圧電素子と振動板との間に筒状をなすとともに、この筒状部の一端を閉塞してフランジを形成することによりダストキャップとなし、このダストキャップになっている伝達部材を介在させ、この伝達部材を介して圧電素子から振動板側へ振動を伝達することによって、高音域の音圧を向上させるようにしたものである。とくに伝達部材の内部に空洞を設けることによって共振により音色が変わるとともに、伝達部材の重量の軽減によって音圧が向上し、空洞による共振を利用して音圧特性を調整できるようになる。またここで上記の伝達部材を樹脂や金属等の加工の容易になものから構成することによって、好ましい形状とし、これによって外観デザインの改善が容易になる。
【0015】
上記のような好ましい態様によると、高音域での音圧が向上する。また従来の圧電型スピーカよりも高音域での音圧調整が容易になる。さらには伝達部材がダストキャップを兼用することによってそのデザインを変更することが可能になり、より多彩なデザインのスピーカを提供できるようになる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下本願に含まれる発明を図示の実施の形態によって説明する。図1および図2は本実施の形態の圧電型スピーカの全体の構成を示すものであって、このスピーカは鋼板を鍛造して偏平なカップ状に形成したフレーム11を備えている。フレーム11はその底部であってその中央部に形成されている開口部に嵌着されるアダプタリング12を備えている。そしてこのアダプタリング11を介してフレーム11に駆動板13が固着されている。駆動板13は弾性に優れたりん青銅板、真鍮板、アルミニウム合金板等から構成されるとともに、この駆動板13の下面にロッシェル塩のセラミックから成る圧電素子14が接合されている。そしてこの圧電素子14の下面に電極15が形成されている。なお圧電素子14の上面の電極が駆動板13によって兼用される。
【0017】
スピーカの振動板20は図2に示すようにフレーム11の開口部を覆うようにダンパエッジ21を介して取付けられている。そして振動板20の中心側の円形の開口の周縁部が筒状伝達部材22に結合されている。筒状伝達部材22はその上端側であって外周側にダストキャップを兼用するようにほぼ円弧状をなすフランジ23を備えるとともに、このフランジ23の外周面24が傾斜面から構成され、傾斜面に上記振動板20の放音側の表面が接合されている。また筒状伝達部材22はその内部が空洞になっている。
【0018】
図3はとくに上記筒状伝達部材22を示しており、この伝達部材22はABS樹脂によって一端にダストキャップをなすフランジ23を一体に成形されたものである。なお筒状伝達部材22は必ずしもABS樹脂である必要はないが、比較的硬質であってしかも軽い樹脂で成形することが好ましい。
【0019】
このような筒状伝達部材22はとくに図4に示すように円形の駆動板13の表面に接合される。すなわち筒状伝達部材22のダストキャップをなすフランジ23が設けられて閉塞された部分とは反対側の部分が上記駆動板13の中心部に同軸状に接合される。そして駆動板13の下面には矩形の圧電素子14が接合される。
【0020】
このように本実施の形態のスピーカは筒状伝達部材22を圧電素子14を取付けた駆動板13と振動板20との間に介在させることを大きな特徴としている。筒状伝達部材22のフランジ23はこのスピーカのダストキャップを兼用しており、ダストキャップを兼用するフランジ23の外周部の傾斜面24が振動板20に接合され、これに対して筒状伝達部材22の反対側の開放された端面が駆動板13に接合される。そして上記筒状伝達部材22と振動板20によって音波を前方に放射するようにしている。筒状伝達部材22は樹脂、金属等のようなエネルギ内部損失の少ないものを使用するのが好ましい。
【0021】
これに対して振動板20は紙やアルミフィルム、あるいは樹脂シート等の軽量なものを使用する。このようなスピーカの音圧特性の調整は筒状伝達部材22の内部の空洞25の大きさとこの筒状伝達部材22の直径とを変化させることにより行なう。なおダストキャップを構成するフランジ23の部分はデザインや音圧特性の調整によってその形状を決定することが好適である。
【0022】
図3はこのような圧電型スピーカによる駆動の方式を示している。すなわちアンプ30の出力端を圧電素子14の一方の電極を兼ねる駆動板13に接続するとともに、圧電素子14の他方の電極15を接地する。そしてアンプ30によって圧電素子14に音声信号電流を印加すると、圧電素子14が面方向に伸縮し、これに応答して駆動板13が厚さ方向に振動する。従ってこのような振動を筒状伝達部材22を介して振動板20に伝達することによって、音が再生される。
【0023】
とくにこのスピーカの大きな特徴は図5に示すように、駆動板13の振動の振幅の最も大きな腹の位置あるいはその近傍に上記筒状伝達部材22を接着することである。これによって高い音圧を得ることが可能になる。
【0024】
図6は従来の圧電型スピーカと本願発明の圧電型スピーカの音圧の差異を示したものである。実線で示す本願発明のスピーカはその音圧特性において点線で示される従来のスピーカの音圧に比べてはるかに高いレベルにあることが明白である。とくに従来問題であった高音域側、とくに10KHz以上の高音域における音圧の改善に効果があることが明確に確認されている。
【0025】
次に別の実施の形態を図7によって説明する。この実施の形態は駆動板13から振動板20に振動を伝達する筒状伝達部材22の形状を変更したものである。とくにこの筒状伝達部材22のダストキャップを兼ねるフランジ23の部分の形状を変更している。
【0026】
図7に示すように筒状伝達部材22の閉塞された上端に設けられているフランジ23はその外周側に開放されるようになっており、テーパ状をなしている。そしてこのようなテーパ状をなすフランジ23の外周面に上記振動板20の前面側の部分が接合されている。なおそれ以外の構成は上記実施の形態とほぼ同様である。
【0027】
従ってこのような変形例においても、とくに振動板20に振動を伝達する筒状伝達部材22によって高音域側の音圧を向上させることが可能になるとともに、伝達部材22の内部に空洞25を設けることによって、重量を軽減させて音圧を向上し、しかも空洞25の共振によって音圧特性を調整できるようになる。なおこの実施の形態において上記フランジ23の上面にさらにドーム状をなすキャップを装着してもよい。
【0028】
以上本願に含まれる発明を図示の実施の形態によって説明したが、本願に含まれる発明は上記実施の形態によって限定されることなく、本願に含まれる発明の技術的思想の範囲内において各種の変更が可能である。例えば上記実施の形態は、圧電素子14を駆動板13の下面に接合し、しかも駆動板13を圧電素子14の電極15とは反対側の電極を兼用するような構造になっているが、駆動板13を省略して圧電素子14の両面に電極を形成するとともに、圧電素子14に直接筒状伝達部材22を接合するようにしてもよい。
【0029】
【発明の効果】
本願の主要な発明は、音声信号電流を圧電素子に印加し、該圧電素子の振動を振動板に伝えて音声を再生するスピーカにおいて、一端にフランジ部を有する伝達部材を圧電素子と振動板との間に介在させ、該伝達部材を介して圧電素子から振動板に振動を伝達するようにしたものである。
【0030】
従ってこのようなスピーカによれば、圧電素子と振動板との間に介在される伝達部材によって振動板におけるエネルギ損失を防止してとくに高音域の音圧低下を防止できるようになる。
【0031】
本願の別の主要な発明は、圧電素子の振動によって振動板を振動させるようにしたスピーカにおいて、圧電素子と振動板との間に筒状の伝達部材を介在させ、該筒状の伝達部材を介して軸線方向に振動を伝達するようにしたものである。
【0032】
従ってこのようなスピーカによれば、圧電素子の振動が筒状伝達部材の軸線方向の振動を介して振動板に伝達されるようになり、とくにコーンの中心部における内部損失によるエネルギ損失が防止される。従って高音域まで十分な音圧を維持することが可能なスピーカが提供され、とくに高音用の圧電型スピーカが提供されることになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】圧電型スピーカの正面図である。
【図2】図1におけるA〜A線断面図である。
【図3】筒状伝達部材の平面図および縦断面図である。
【図4】筒状伝達部材と駆動板と圧電素子の結合構造を示す分解斜視図である。
【図5】圧電型スピーカの駆動の動作を示す要部拡大断面図である。
【図6】周波数に対する音圧レベルの変化を示すグラフである。
【図7】変形例のスピーカの縦断面図である。
【図8】従来の圧電型スピーカの縦断面図である。
【符号の説明】
1‥‥フレーム、2‥‥アダプタリング、3‥‥駆動板、4‥‥圧電素子、5‥‥振動板、6‥‥キャップ、11‥‥フレーム、12‥‥アダプタリング、13‥‥駆動板、14‥‥圧電素子、15‥‥電極、20‥‥振動板、21‥‥ダンパエッジ、22‥‥筒状伝達部材、23‥‥フランジ、24‥‥傾斜面(外周面)、25‥‥空洞、30‥‥アンプ

Claims (14)

  1. 音声信号電流を圧電素子に印加し、該圧電素子の振動を振動板に伝えて音声を再生するスピーカにおいて、
    一端にフランジ部を有する伝達部材を前記圧電素子と前記振動板との間に介在させ、該伝達部材を介して前記圧電素子から前記振動板に振動を伝達することを特徴とするスピーカ。
  2. 前記伝達部材が筒状をなすとともに、一端が閉塞され、該閉塞された端部の外周部に前記フランジが一体に連結され、前記フランジの外周部に前記振動板が連結されるとともに、閉塞された端部とは反対側の端部が前記圧電素子に連結されることを特徴とする請求項1に記載のスピーカ。
  3. 前記伝達部材が合成樹脂の成形体であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスピーカ。
  4. 前記伝達部材のフランジの外周面が傾斜面から構成されるとともに、該傾斜面が前記振動板の放音側の表面に接合されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスピーカ。
  5. 前記伝達部材のフランジの断面がほぼ円弧状に湾曲されるとともに、湾曲した前記フランジの外周面が傾斜面から構成され、該傾斜面が前記振動板の放音側の表面に接合されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスピーカ。
  6. 前記伝達部材のフランジが斜めに開放するように錐状をなし、しかも該錐状のフランジの外周面が前記振動板の放音側の表面に接合されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスピーカ。
  7. 圧電素子の振動によって振動板を振動させるようにしたスピーカにおいて、
    前記圧電素子と前記振動板との間に筒状の伝達部材を介在させ、該筒状の伝達部材を介して軸線方向に振動を伝達することを特徴とするスピーカ。
  8. 前記圧電素子の一方の面が電極を兼ねる駆動板に接合されるとともに、該駆動板に前記伝達部材の一端が接合されることを特徴とする請求項7に記載のスピーカ。
  9. 前記筒状の伝達部材の一方の端部が前記駆動板の振動の腹の部位またはその近傍に接合されることを特徴とする請求項8に記載のスピーカ。
  10. 前記駆動板がほぼ円板状をなすとともに、該円板状の駆動板の一方の表面に矩形の板状の圧電素子が接合され、該圧電素子の面方向の伸縮によって前記駆動板が厚さ方向に振動することを特徴とする請求項8または請求項9に記載のスピーカ。
  11. 圧電素子の一方の表面に取付けられた伝達部材の前記圧電素子との取付け部とは反対側の端部に振動板の中心部の開口の周縁部を接合したことを特徴とする圧電型スピーカ。
  12. 前記伝達部材が筒状部を有し、該筒状部の開口された端部を前記圧電素子の一方の表面に取付けることを特徴とする請求項11に記載の圧電型スピーカ。
  13. 前記振動板の放音側の表面を前記伝達部材に接合することを特徴とする請求項11に記載の圧電型スピーカ。
  14. 前記伝達部材がほぼ円筒状をなすとともに、前記圧電素子の振動の腹またはその近傍に外周壁が接するように直径の値が設定されることを特徴とする請求項12に記載の圧電型スピーカ。
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