JP2004349161A - 転位セグメント導体 - Google Patents
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Abstract
【課題】転位セグメントを複数本、管体の周囲に、螺旋状に巻き付けてなる転位セグメント導体において、基体周方向に生じる曲げ歪を抑制することが可能な、転位セグメント導体を提供する。
【解決手段】本発明に係る転位セグメント導体100は、超電導テープ線材を複数本、転位撚り合わせてなる転位セグメント10を複数本、円筒状コアからなる管体1の周囲に螺旋状に巻き付けてなる転位セグメント導体において、管体1は剛性の高い内層部2と剛性の低い外層部3からなり、転位セグメント10の各々の少なくとも一部は、管体1の外層部3に埋設されるように載置されていることを特徴としている。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明に係る転位セグメント導体100は、超電導テープ線材を複数本、転位撚り合わせてなる転位セグメント10を複数本、円筒状コアからなる管体1の周囲に螺旋状に巻き付けてなる転位セグメント導体において、管体1は剛性の高い内層部2と剛性の低い外層部3からなり、転位セグメント10の各々の少なくとも一部は、管体1の外層部3に埋設されるように載置されていることを特徴としている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数本の超電導テープ線材を転位撚り合わせてなる転位セグメントを管体の周囲に螺旋状に巻き付けてなる転位セグメント導体に係る。より詳細には、管体に巻き付けられた超電導テープ線材がその幅方向に受ける歪みを抑制することが可能な転位セグメント導体に関する。
【0002】
【従来の技術】
超電導ケーブルに代表される転位セグメント導体に、交流電流を通電した際に偏流を抑制する方法として、テープ状の超電導体からなる素線を複数本、転位撚り合わせてなる、転位超電導テープユニットと呼ばれる転位撚線構造(以下、転位セグメントと略称する)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−203958号公報
【0004】
図4は従来の転位セグメントを示す一例であり、図4(a)は斜視図、図4(b)はY−Y’部分の断面図である。図4に示すように、例えば複数本のテープ状の素線810を転位撚り合わせた転位セグメント20は、特定の素線810が、隣接する他の素線810の上に向かって渡る転位部(以下、転位渡り部と呼ぶ)820を形成している。例えば素線810が柔軟性に富んだ例えば金属材料で構成される場合には、素線810の幅を例えば2mm程度とすれば、転位渡り部820の長さを100mm程度に設定することができる。
【0005】
また、上記構成からなる転位セグメント800では、その構造を保持させるために、隣り合う転位渡り部820、820間(以下、非転位渡り部830と呼ぶ)の所定箇所が、保形テープ840によって結束されている。保形テープ840は一方の面全体に粘着剤が塗布されたもので、この粘着剤を介して素線810に貼着固定されている。
【0006】
上記構成からなる転位セグメントを複数本、円筒状コアからなる管体(通称フォーマと呼称する)の周囲に螺旋状に巻き付けてなる転位セグメント導体が広く知られている。その際、素線としてBi系超電導材料からなる線材を用い、素線の幅を2mm以下、厚さを0.2mm以上としたものが利用されている。しかしながら、Bi系超電導材料からなる線材は電流密度が低く、シース材に銀を用いているため強度が弱いという問題があった。
【0007】
上記問題を解消するため、Bi系超電導材料に代えてY系超電導材料の素線を用いた転位セグメントの開発が進められてきた。このY系超電導材料からなる転位セグメントを作製し、この転位セグメントで上述した構成の転位セグメント導体を製造し、液体窒素温度で使用可能な超電導ケーブルに用いる研究・開発が鋭意進められている。
【0008】
ところが、現在主に作製されているY系超電導材料の素線は、幅が10mm程度、厚さが0.1mm程度のテープ形状をなしている。このような寸法からなるテープ状の素線を単線で、あるいはテープ状の素線を複数本、撚り合わせてなる転位セグメントを、前述したフォーマに螺旋状に巻き付けた後、その上から絶縁テープを巻き付けた場合について、本発明者らは検討した。
【0009】
図5は、従来の転位セグメント導体において転位セグメントを管体(フォーマ)に螺旋状に巻き付けた状態を示す図であり、(a)はフォーマの軸方向から見た断面図、(b)はフォーマ上に配された転位セグメントを上空から見た平面図である。図5(a)から明らかなように、テープ状の素線は、フォーマの外周方向に、フォーマ径相当の曲げ径で曲げられる力を受けた状態で固定されるので、場合によっては大きな歪みを受けることが分かった。極端な場合には、図5(a)に示すように、転位セグメントの内部で幅方向において中折れ現象が発生する恐れがある。
【0010】
図5(b)は、非転位渡り部を保形テープで結束し、転位渡り部にはそれぞれ5箇所(□印、番号1〜10で示す部分)に歪ゲージを設けた状態を示している。本発明者らは、厚さ0.1mm、幅5mmからなるテープ状の素線を6本撚り合わせて形成した転位セグメントを、径22mmのフォーマに螺旋巻きした場合の転位渡り部上に、歪ゲージを上述したとおり設け、各位置における歪みを測定した。
【0011】
図6は、歪ゲージの取り付け位置と周方向の曲げ歪との関係を示すグラフである。図6より次の点が明らかとなった。
(a)全ての測定地点、すなわち□印と番号α1〜番号α10で示す全ての地点において、少なからず周方向の曲げ歪が観測された。
【0012】
(b)保形テープで結束された非転位渡り部の近傍に位置する測定地点における周方向の曲げ歪が極小値をなす傾向を示す。
【0013】
(c)周方向の曲げ歪は非転位渡り部から離れるに従い増加傾向を示し、非転位渡り部とその隣に位置する非転位渡り部との間の真ん中付近、すなわち転位渡り部の中心付近において、周方向の曲げ歪は極大値を有する。
【0014】
(d)上記グラフの結果から、周方向の曲げ歪は、非転位渡り部の付近で極小となり、転位渡り部の中心付近で極大となる正弦波(点線で示した曲線)とよく似た曲線形状をなすことが判明した。
【0015】
(e)なお、図6において縦軸0.44付近を示す実線は、フォーマの径と転位セグメントの厚さから算出した歪を表しており、実測した周方向の曲げ歪の極大値とこの実線は、極めて一致することが確認された。
【0016】
このように周方向の曲げ歪が存在する転位セグメントを備えた転位セグメント導体では、図5(a)に示すように、極端な場合には転位セグメントの内部で幅方向において中折れ現象が発生する恐れがあり、電気伝導特性を大きく阻害する要因となる。
【0017】
したがって、電気ロスが生じたり、ひいては破断の危険性すらあるため、安定した電気伝導特性を維持するとともに、高い長期信頼性を確立するという側面からも、上記のような周方向の曲げ歪が発生しない構造を備えてなる転位セグメント導体の開発が期待されていた。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、転位セグメントを複数本、フォーマと呼ばれる円筒状コアからなる管体の周囲に、螺旋状に巻き付けてなる転位セグメント導体において、基体周方向に生じる曲げ歪を抑制することが可能な、転位セグメント導体及び超電導ケーブルを提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る転位セグメント導体は、超電導テープ線材を複数本、転位撚り合わせてなる転位セグメントを複数本、円筒状コアからなる管体の周囲に螺旋状に巻き付けてなる転位セグメント導体において、前記管体は剛性の高い内層部と剛性の低い外層部からなり、前記転位セグメントの各々の少なくとも一部は、該管体の外層部に埋設されるように載置されていることを特徴としている。
【0020】
すなわち、かかる構成の転位セグメント導体では、転位セグメントを螺旋状に巻き付ける管体として剛性の高い内層部と剛性の低い外層部からなるものを用いているので、管体に対して外力が加わった場合、まず剛性の低い外層部のみ変形を起こし、この外層部をその下に位置する剛性の高い内層部が支えることが可能となる。
【0021】
そのため、上記転位セグメント導体においては、転位セグメントの各々の少なくとも一部が、管体を構成する剛性の低い外層部に食い込み、埋設されるように載置した構造を採ることができる。その結果、転位セグメントはその周方向に生じる曲げ歪の発生を極力抑えることが可能となり、これは転位セグメント導体に安定した電気伝導特性と高い長期信頼性をもたらす。
【0022】
上記の転位セグメント導体において、前記管体の外層部は、前記転位セグメントに比べて剛性が低く、変形領域が広く、かつ低温に強い樹脂からなることが好ましい。
【0023】
管体の外層部をなす樹脂が、転位セグメントより低い剛性をもつことにより、転位セグメントは管体の外層部から外力を受けにくくなる。また、変形領域が広ければ、小さな外力はもとより、大きな外力に対してもその大きさに応じた変形を、管体の外層部は行うことができる。さらに、転位セグメント導体は、例えば液体窒素や液体ヘリウムで冷却することにより良好な超電導特性を示すことから、この転位セグメント導体を支持する管体の外層部を構成する樹脂は低温に強いことが望ましい。
【0024】
本発明に係る転位セグメント導体では、前記管体の外層部に対して前記転位セグメントを押しつけるように、該転位セグメントの外側から支持用テープを巻き付けてなる形態が好ましい。
【0025】
このように管体に載置された転位セグメントをその外側から、支持用テープで巻き付けることにより、局所的に偏ることなく、広範囲にわたって均一に、転位セグメントを管体の外層部に対して所望の位置となるように固定できる。したがって、この支持用テープは、転位セグメントを構成する超電導テープ線材に大きな電流を流した場合でも、転位セグメントが電磁力により位置ズレするのを抑制手段として機能する。
【0026】
本発明に係る転位セグメント導体は、上記のように支持用テープを巻き付けた際に、隣り合う位置にある前記転位セグメントは互に接触しないように配置されていることが望ましい。
【0027】
また、本発明に係る転位セグメント導体は、上記のように支持用テープを巻き付けた際に、前記転位セグメントは前記管体の内層部と接することなく、該管体の外層部とのみ接した状態にあることが望ましい。かかる構成によれば、転位セグメントがその外側から支持用テープで押さえつけられた場合、その外力は剛性の低い管体の外層部によって十分に緩和される。
【0028】
つまり、剛性の低い管体の外層部が転位セグメントに対してクッション材のように働くこととなり、転位セグメントが保形用テープと剛性の高い管体の内層部とに挟まれて、その平坦性を失ったり、あるいは歪んだりするという不具合が発生するのを低減できるので、かかる構成は安定した超電導特性をもたらす。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下では、本発明に係る転位セグメント導体の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0030】
図1(a)は、本発明に係る転位セグメント導体の一実施形態を示す断面図であり、この形態の転位セグメント導体100は、超電導テープ線材を複数本、転位撚り合わせてなる転位セグメント10を複数本、円筒状コアからなる管体1の周囲に螺旋状に巻き付けてなる転位セグメント導体において、この管体1は剛性の高い内層部2と剛性の低い外層部3からなり、転位セグメント10の各々の少なくとも一部10’は、管体1の外層部3に埋設されるように載置されている。
【0031】
前述したフォーマと呼ばれる管体1は、剛性の高い内層部2と剛性の低い外層部3から構成されており、前者の内層部2としては、例えばステンレス鋼、銅パイプなどの金属材料からなるものが用いられる。後者の外層部3としては、例えばシリコーン樹脂、ウレタン樹脂、紫外線硬化樹脂などの樹脂材料からなるものが用いられる。これらの樹脂材料の弾性率は、0.1〜50GPaが好ましい。
【0032】
このような管体1の表面は、管体1と転位セグメント10との間の通電を抑制するために絶縁処理が施される形態が望ましい。したがって、外層部3としては、電気的に絶縁性または半導電性を示すものが好適である。なお、図1では省略してあるが、管体1の内部空間すなわち内層部2の内部空間には、内部冷媒流路が設けられる。
【0033】
管体1の外層部3としては、転位セグメント10に比べて剛性が低く、変形領域が広く、かつ低温に強い樹脂からなるものが好ましい。転位セグメントの剛性は、150〜250GPaの範囲内にあることから、外層部3の剛性はこの下限値より低いものが望ましい。ここで、変形領域が広いとは、弾性限界歪が大きいことを意味する。低温に強いとは、冷却収縮により割れることが無いことを指す。管体1の外層部3として、この3つの特性を満たす樹脂としては、例えばデソライトR1166(JSR社製)が挙げられる。
【0034】
これに対して、管体1の内層部2としては、いわゆる剛性体が好ましく、例えば延性があり、剛性が高く、塑性変形する金属からなるものが好適に用いられる。特に、内層部2は、外層部3上に転位セグメント10を配し、後述するように転位セグメント10をその外側から支持用テープ4で押しつけた際に、その形状が保持されることが好ましい。内層部2の仕様としては、ヤング率が100GPa以上、降伏応力又は耐力が500MPa以上で、降伏歪が小さいものが望ましく、具体的にはステンレス鋼やリン青銅のような銅合金などが挙げられる。
【0035】
図1(b)は、本発明に係る転位セグメント導体の他の一実施形態を示す断面図である。図1(b)の転位セグメント導体は、管体1の外層部3に対して転位セグメント10を押しつけるように、転位セグメント10の外側から支持用テープ4を巻き付けて設けた点が、前述した図1(a)の転位セグメント導体と相違する。
【0036】
転位セグメント10を管体1の外周側に押しつけて保持させる役目を担う支持用テープ4としては、絶縁性または半導電性の材料が好ましく、具体的な材料としてはカーボン紙、クラフト紙、テフロン(登録商標)テープ、ポリイミドテープなどが挙げられる。
【0037】
また転位セグメント導体100においては、支持用テープ4を巻き付けた際に、転位セグメント10が管体1の内層部2と接することなく、管体1の外層部3とのみ接した状態にあることが望ましい。このような状態が維持されるならば、転位セグメント10がその外側から支持用テープ4で押さえつけられた場合に、その外力は剛性の低い管体1の外層部3によって十分に緩和される。
【0038】
図2は、図1の転位セグメント導体を構成する転位セグメントの一例を示す概略図であり、(a)は斜視図、(b)はX−X’部分の断面図である。図2に示すように、転位セグメント10は、複数本の超電導テープ線材310を転位撚り合わせてなり、特定の超電導テープ線材310が、隣接する他の超電導テープ線材310の上に向かって渡る転位部(以下、転位渡り部と呼ぶ)320を形成している。
【0039】
なお、図2に示すように、転位セグメント10はその構造を保持するために、隣り合う転位渡り部320、320間(以下、非転位渡り部330と呼ぶ)の所定箇所を、保形用テープ340によって結束しても構わない。その際、保形用テープ340は、一方の面全体に粘着剤が塗布されたものが好適に用いられ、この粘着剤を介して超電導テープ線材310に貼着固定されている。
【0040】
超電導テープ線材310としては、図2(b)に示すようにテープ状の平角断面を備えた線材であれば、いかなる材料の線材であっても構わない。特に、例えば基材上に超電導層を設けてなる線材は、その断面形状が矩形状をなすので好適である。
【0041】
超電導テープ線材310としては、金属基材上に酸化物超電導層を形成したもの311以外に、例えば、断面視円形状の超電導多心素線(不図示)が圧延加工等により平坦化されたものを用いても構わない。その際、超電導多心素線を構成する超電導素線の横断面形状は、矩形状とすることが好ましい。
【0042】
本発明で用いる超電導テープ線材310としては、ハステロイ等の金属基板上にイットリア安定化ジルコニア(YSZ)中間層を介してY1Ba2Cu3O7−x(Y123)が成膜された酸化物超電導材料をはじめ、Bi2Sr2Ca1Cu2Ox (Bi2212)、Bi2Sr2Ca2Cu3Oy(Bi2223)、Bi1.6Pb0.4Sr2Ca2Cu3Ox などで示される組成をもつ酸化物超電導材料などの高温超電導材料、あるいはNb3Sn、Nb3AlなどのA15型材料からなる低温超電導材料を例示することができる。例えば、幅5mmで厚さが0.1mmのYBCO線材(ハステロイ基板/YSZ中間層/YBCO超電導体層)が挙げられる。
【0043】
これらは1種を単独で用いても良いし、複数種を併用しても良い。これらは、単体では機械的に脆い性質を有する材料として知られている。また、絶縁被覆層312を紫外線硬化型樹脂被膜により構成することもできる。
【0044】
前述した絶縁被覆層312を構成する絶縁材料としては、例えばポリエステル、ポリエステルイミド、ポリエステルイミドヒダントイン、エナメルなどが用いられる。
【0045】
以下では、上述した本発明に係る転位セグメント導線の具体例として、超電導ケーブルの実施形態について図4に基づき説明する。
【0046】
図4は、転位セグメント導線が超電導ケーブルをなす一実施形態を示す斜視図である。図4においては、超電導ケーブルの全体構成を詳述するため、図1に示した本発明に係る管体1の内部構成、すなわち内層部2と外層部3は省略してあり、管体1のことを図4ではフォーマ(管体)477と呼称する。
【0047】
本実施形態の超電導ケーブル470は、交流電流通電時において偏流を抑制した構造を有するもので、パイプ状のフォーマ(管体)477の周囲に上記の転位セグメント10が螺旋状に巻回されて複数の超電導体層484が積層され、これら超電導体層484、484間に絶縁テープ等からなる層間絶縁層485が形成されたものである。また、超電導ケーブル470の外側には、図示しない半導体層、絶縁層、保護層、断熱層、防食層などが必要に応じて設けてもよい。
【0048】
フォーマ477はステンレス鋼などからなり、その表面にはフォーマ477と転位セグメント10との間の通電を抑制するため絶縁処理が施されている。また、内部の空洞は液体窒素等の冷却媒体の流路として用いられ、転位セグメント10を構成する複数の素線の冷却が行われるようになっている。
【0049】
以上の超電導ケーブル470では、転位セグメントと管体との間に、転位セグメントの幅と略同一の幅を有し、少なくともこの転位セグメントが接するように平板状の剛性体を配したことにより、転位セグメントを管体の周囲に螺旋状に巻き付けた際に、転位セグメント10はフォーマ477の外側に位置する剛性の低い外層部3に押し付けられる。
【0050】
したがって、転位セグメント10の構造は常に安定に保持されるので、転位セグメント10がフォーマ477の周方向に曲げられ、大きな歪みを受けるという従来の問題は解消される。このことは、安定した超電導特性をもたらす。
【0051】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る転位セグメント導体では、管体を剛性の高い内層部と剛性の低い外層部に二分した構成を採用した。そして、転位セグメントと直接に接触する管体の外層部に、転位セグメントの各々の少なくとも一部が埋設されるように載置した。
【0052】
本発明に係る転位セグメント導体は、このような構成を採用したことにより、転位セグメントが管体の周方向に曲げられ、大きな歪みを受けるという従来の問題が解消される。したがって、本発明は、超電導特性の極めて安定な、長期信頼性の高い超電導ケーブルの提供に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る転位セグメント導体の一実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明に係る転位セグメントの一実施形態を示す概略図である。
【図3】本発明に係る超電導ケーブルの一実施形態を示す斜視図である。
【図4】従来の転位セグメントの一実施形態を示す概略図である。
【図5】従来の転位セグメント導体の一実施形態を示す断面図(a)と上方から見た平面図(b)である。
【図6】歪ゲージ取り付け位置と周方向曲げ歪との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
α1〜α10 歪ゲージ取り付け位置、1、901 管体、2 内層部、3 外層部、4 支持テープ、10、20 転位セグメント、310 超電導テープ線材、320 転位渡り部、330 非転位渡り部、340 保形用テープ、470 超電導ケーブル。
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数本の超電導テープ線材を転位撚り合わせてなる転位セグメントを管体の周囲に螺旋状に巻き付けてなる転位セグメント導体に係る。より詳細には、管体に巻き付けられた超電導テープ線材がその幅方向に受ける歪みを抑制することが可能な転位セグメント導体に関する。
【0002】
【従来の技術】
超電導ケーブルに代表される転位セグメント導体に、交流電流を通電した際に偏流を抑制する方法として、テープ状の超電導体からなる素線を複数本、転位撚り合わせてなる、転位超電導テープユニットと呼ばれる転位撚線構造(以下、転位セグメントと略称する)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−203958号公報
【0004】
図4は従来の転位セグメントを示す一例であり、図4(a)は斜視図、図4(b)はY−Y’部分の断面図である。図4に示すように、例えば複数本のテープ状の素線810を転位撚り合わせた転位セグメント20は、特定の素線810が、隣接する他の素線810の上に向かって渡る転位部(以下、転位渡り部と呼ぶ)820を形成している。例えば素線810が柔軟性に富んだ例えば金属材料で構成される場合には、素線810の幅を例えば2mm程度とすれば、転位渡り部820の長さを100mm程度に設定することができる。
【0005】
また、上記構成からなる転位セグメント800では、その構造を保持させるために、隣り合う転位渡り部820、820間(以下、非転位渡り部830と呼ぶ)の所定箇所が、保形テープ840によって結束されている。保形テープ840は一方の面全体に粘着剤が塗布されたもので、この粘着剤を介して素線810に貼着固定されている。
【0006】
上記構成からなる転位セグメントを複数本、円筒状コアからなる管体(通称フォーマと呼称する)の周囲に螺旋状に巻き付けてなる転位セグメント導体が広く知られている。その際、素線としてBi系超電導材料からなる線材を用い、素線の幅を2mm以下、厚さを0.2mm以上としたものが利用されている。しかしながら、Bi系超電導材料からなる線材は電流密度が低く、シース材に銀を用いているため強度が弱いという問題があった。
【0007】
上記問題を解消するため、Bi系超電導材料に代えてY系超電導材料の素線を用いた転位セグメントの開発が進められてきた。このY系超電導材料からなる転位セグメントを作製し、この転位セグメントで上述した構成の転位セグメント導体を製造し、液体窒素温度で使用可能な超電導ケーブルに用いる研究・開発が鋭意進められている。
【0008】
ところが、現在主に作製されているY系超電導材料の素線は、幅が10mm程度、厚さが0.1mm程度のテープ形状をなしている。このような寸法からなるテープ状の素線を単線で、あるいはテープ状の素線を複数本、撚り合わせてなる転位セグメントを、前述したフォーマに螺旋状に巻き付けた後、その上から絶縁テープを巻き付けた場合について、本発明者らは検討した。
【0009】
図5は、従来の転位セグメント導体において転位セグメントを管体(フォーマ)に螺旋状に巻き付けた状態を示す図であり、(a)はフォーマの軸方向から見た断面図、(b)はフォーマ上に配された転位セグメントを上空から見た平面図である。図5(a)から明らかなように、テープ状の素線は、フォーマの外周方向に、フォーマ径相当の曲げ径で曲げられる力を受けた状態で固定されるので、場合によっては大きな歪みを受けることが分かった。極端な場合には、図5(a)に示すように、転位セグメントの内部で幅方向において中折れ現象が発生する恐れがある。
【0010】
図5(b)は、非転位渡り部を保形テープで結束し、転位渡り部にはそれぞれ5箇所(□印、番号1〜10で示す部分)に歪ゲージを設けた状態を示している。本発明者らは、厚さ0.1mm、幅5mmからなるテープ状の素線を6本撚り合わせて形成した転位セグメントを、径22mmのフォーマに螺旋巻きした場合の転位渡り部上に、歪ゲージを上述したとおり設け、各位置における歪みを測定した。
【0011】
図6は、歪ゲージの取り付け位置と周方向の曲げ歪との関係を示すグラフである。図6より次の点が明らかとなった。
(a)全ての測定地点、すなわち□印と番号α1〜番号α10で示す全ての地点において、少なからず周方向の曲げ歪が観測された。
【0012】
(b)保形テープで結束された非転位渡り部の近傍に位置する測定地点における周方向の曲げ歪が極小値をなす傾向を示す。
【0013】
(c)周方向の曲げ歪は非転位渡り部から離れるに従い増加傾向を示し、非転位渡り部とその隣に位置する非転位渡り部との間の真ん中付近、すなわち転位渡り部の中心付近において、周方向の曲げ歪は極大値を有する。
【0014】
(d)上記グラフの結果から、周方向の曲げ歪は、非転位渡り部の付近で極小となり、転位渡り部の中心付近で極大となる正弦波(点線で示した曲線)とよく似た曲線形状をなすことが判明した。
【0015】
(e)なお、図6において縦軸0.44付近を示す実線は、フォーマの径と転位セグメントの厚さから算出した歪を表しており、実測した周方向の曲げ歪の極大値とこの実線は、極めて一致することが確認された。
【0016】
このように周方向の曲げ歪が存在する転位セグメントを備えた転位セグメント導体では、図5(a)に示すように、極端な場合には転位セグメントの内部で幅方向において中折れ現象が発生する恐れがあり、電気伝導特性を大きく阻害する要因となる。
【0017】
したがって、電気ロスが生じたり、ひいては破断の危険性すらあるため、安定した電気伝導特性を維持するとともに、高い長期信頼性を確立するという側面からも、上記のような周方向の曲げ歪が発生しない構造を備えてなる転位セグメント導体の開発が期待されていた。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、転位セグメントを複数本、フォーマと呼ばれる円筒状コアからなる管体の周囲に、螺旋状に巻き付けてなる転位セグメント導体において、基体周方向に生じる曲げ歪を抑制することが可能な、転位セグメント導体及び超電導ケーブルを提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る転位セグメント導体は、超電導テープ線材を複数本、転位撚り合わせてなる転位セグメントを複数本、円筒状コアからなる管体の周囲に螺旋状に巻き付けてなる転位セグメント導体において、前記管体は剛性の高い内層部と剛性の低い外層部からなり、前記転位セグメントの各々の少なくとも一部は、該管体の外層部に埋設されるように載置されていることを特徴としている。
【0020】
すなわち、かかる構成の転位セグメント導体では、転位セグメントを螺旋状に巻き付ける管体として剛性の高い内層部と剛性の低い外層部からなるものを用いているので、管体に対して外力が加わった場合、まず剛性の低い外層部のみ変形を起こし、この外層部をその下に位置する剛性の高い内層部が支えることが可能となる。
【0021】
そのため、上記転位セグメント導体においては、転位セグメントの各々の少なくとも一部が、管体を構成する剛性の低い外層部に食い込み、埋設されるように載置した構造を採ることができる。その結果、転位セグメントはその周方向に生じる曲げ歪の発生を極力抑えることが可能となり、これは転位セグメント導体に安定した電気伝導特性と高い長期信頼性をもたらす。
【0022】
上記の転位セグメント導体において、前記管体の外層部は、前記転位セグメントに比べて剛性が低く、変形領域が広く、かつ低温に強い樹脂からなることが好ましい。
【0023】
管体の外層部をなす樹脂が、転位セグメントより低い剛性をもつことにより、転位セグメントは管体の外層部から外力を受けにくくなる。また、変形領域が広ければ、小さな外力はもとより、大きな外力に対してもその大きさに応じた変形を、管体の外層部は行うことができる。さらに、転位セグメント導体は、例えば液体窒素や液体ヘリウムで冷却することにより良好な超電導特性を示すことから、この転位セグメント導体を支持する管体の外層部を構成する樹脂は低温に強いことが望ましい。
【0024】
本発明に係る転位セグメント導体では、前記管体の外層部に対して前記転位セグメントを押しつけるように、該転位セグメントの外側から支持用テープを巻き付けてなる形態が好ましい。
【0025】
このように管体に載置された転位セグメントをその外側から、支持用テープで巻き付けることにより、局所的に偏ることなく、広範囲にわたって均一に、転位セグメントを管体の外層部に対して所望の位置となるように固定できる。したがって、この支持用テープは、転位セグメントを構成する超電導テープ線材に大きな電流を流した場合でも、転位セグメントが電磁力により位置ズレするのを抑制手段として機能する。
【0026】
本発明に係る転位セグメント導体は、上記のように支持用テープを巻き付けた際に、隣り合う位置にある前記転位セグメントは互に接触しないように配置されていることが望ましい。
【0027】
また、本発明に係る転位セグメント導体は、上記のように支持用テープを巻き付けた際に、前記転位セグメントは前記管体の内層部と接することなく、該管体の外層部とのみ接した状態にあることが望ましい。かかる構成によれば、転位セグメントがその外側から支持用テープで押さえつけられた場合、その外力は剛性の低い管体の外層部によって十分に緩和される。
【0028】
つまり、剛性の低い管体の外層部が転位セグメントに対してクッション材のように働くこととなり、転位セグメントが保形用テープと剛性の高い管体の内層部とに挟まれて、その平坦性を失ったり、あるいは歪んだりするという不具合が発生するのを低減できるので、かかる構成は安定した超電導特性をもたらす。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下では、本発明に係る転位セグメント導体の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0030】
図1(a)は、本発明に係る転位セグメント導体の一実施形態を示す断面図であり、この形態の転位セグメント導体100は、超電導テープ線材を複数本、転位撚り合わせてなる転位セグメント10を複数本、円筒状コアからなる管体1の周囲に螺旋状に巻き付けてなる転位セグメント導体において、この管体1は剛性の高い内層部2と剛性の低い外層部3からなり、転位セグメント10の各々の少なくとも一部10’は、管体1の外層部3に埋設されるように載置されている。
【0031】
前述したフォーマと呼ばれる管体1は、剛性の高い内層部2と剛性の低い外層部3から構成されており、前者の内層部2としては、例えばステンレス鋼、銅パイプなどの金属材料からなるものが用いられる。後者の外層部3としては、例えばシリコーン樹脂、ウレタン樹脂、紫外線硬化樹脂などの樹脂材料からなるものが用いられる。これらの樹脂材料の弾性率は、0.1〜50GPaが好ましい。
【0032】
このような管体1の表面は、管体1と転位セグメント10との間の通電を抑制するために絶縁処理が施される形態が望ましい。したがって、外層部3としては、電気的に絶縁性または半導電性を示すものが好適である。なお、図1では省略してあるが、管体1の内部空間すなわち内層部2の内部空間には、内部冷媒流路が設けられる。
【0033】
管体1の外層部3としては、転位セグメント10に比べて剛性が低く、変形領域が広く、かつ低温に強い樹脂からなるものが好ましい。転位セグメントの剛性は、150〜250GPaの範囲内にあることから、外層部3の剛性はこの下限値より低いものが望ましい。ここで、変形領域が広いとは、弾性限界歪が大きいことを意味する。低温に強いとは、冷却収縮により割れることが無いことを指す。管体1の外層部3として、この3つの特性を満たす樹脂としては、例えばデソライトR1166(JSR社製)が挙げられる。
【0034】
これに対して、管体1の内層部2としては、いわゆる剛性体が好ましく、例えば延性があり、剛性が高く、塑性変形する金属からなるものが好適に用いられる。特に、内層部2は、外層部3上に転位セグメント10を配し、後述するように転位セグメント10をその外側から支持用テープ4で押しつけた際に、その形状が保持されることが好ましい。内層部2の仕様としては、ヤング率が100GPa以上、降伏応力又は耐力が500MPa以上で、降伏歪が小さいものが望ましく、具体的にはステンレス鋼やリン青銅のような銅合金などが挙げられる。
【0035】
図1(b)は、本発明に係る転位セグメント導体の他の一実施形態を示す断面図である。図1(b)の転位セグメント導体は、管体1の外層部3に対して転位セグメント10を押しつけるように、転位セグメント10の外側から支持用テープ4を巻き付けて設けた点が、前述した図1(a)の転位セグメント導体と相違する。
【0036】
転位セグメント10を管体1の外周側に押しつけて保持させる役目を担う支持用テープ4としては、絶縁性または半導電性の材料が好ましく、具体的な材料としてはカーボン紙、クラフト紙、テフロン(登録商標)テープ、ポリイミドテープなどが挙げられる。
【0037】
また転位セグメント導体100においては、支持用テープ4を巻き付けた際に、転位セグメント10が管体1の内層部2と接することなく、管体1の外層部3とのみ接した状態にあることが望ましい。このような状態が維持されるならば、転位セグメント10がその外側から支持用テープ4で押さえつけられた場合に、その外力は剛性の低い管体1の外層部3によって十分に緩和される。
【0038】
図2は、図1の転位セグメント導体を構成する転位セグメントの一例を示す概略図であり、(a)は斜視図、(b)はX−X’部分の断面図である。図2に示すように、転位セグメント10は、複数本の超電導テープ線材310を転位撚り合わせてなり、特定の超電導テープ線材310が、隣接する他の超電導テープ線材310の上に向かって渡る転位部(以下、転位渡り部と呼ぶ)320を形成している。
【0039】
なお、図2に示すように、転位セグメント10はその構造を保持するために、隣り合う転位渡り部320、320間(以下、非転位渡り部330と呼ぶ)の所定箇所を、保形用テープ340によって結束しても構わない。その際、保形用テープ340は、一方の面全体に粘着剤が塗布されたものが好適に用いられ、この粘着剤を介して超電導テープ線材310に貼着固定されている。
【0040】
超電導テープ線材310としては、図2(b)に示すようにテープ状の平角断面を備えた線材であれば、いかなる材料の線材であっても構わない。特に、例えば基材上に超電導層を設けてなる線材は、その断面形状が矩形状をなすので好適である。
【0041】
超電導テープ線材310としては、金属基材上に酸化物超電導層を形成したもの311以外に、例えば、断面視円形状の超電導多心素線(不図示)が圧延加工等により平坦化されたものを用いても構わない。その際、超電導多心素線を構成する超電導素線の横断面形状は、矩形状とすることが好ましい。
【0042】
本発明で用いる超電導テープ線材310としては、ハステロイ等の金属基板上にイットリア安定化ジルコニア(YSZ)中間層を介してY1Ba2Cu3O7−x(Y123)が成膜された酸化物超電導材料をはじめ、Bi2Sr2Ca1Cu2Ox (Bi2212)、Bi2Sr2Ca2Cu3Oy(Bi2223)、Bi1.6Pb0.4Sr2Ca2Cu3Ox などで示される組成をもつ酸化物超電導材料などの高温超電導材料、あるいはNb3Sn、Nb3AlなどのA15型材料からなる低温超電導材料を例示することができる。例えば、幅5mmで厚さが0.1mmのYBCO線材(ハステロイ基板/YSZ中間層/YBCO超電導体層)が挙げられる。
【0043】
これらは1種を単独で用いても良いし、複数種を併用しても良い。これらは、単体では機械的に脆い性質を有する材料として知られている。また、絶縁被覆層312を紫外線硬化型樹脂被膜により構成することもできる。
【0044】
前述した絶縁被覆層312を構成する絶縁材料としては、例えばポリエステル、ポリエステルイミド、ポリエステルイミドヒダントイン、エナメルなどが用いられる。
【0045】
以下では、上述した本発明に係る転位セグメント導線の具体例として、超電導ケーブルの実施形態について図4に基づき説明する。
【0046】
図4は、転位セグメント導線が超電導ケーブルをなす一実施形態を示す斜視図である。図4においては、超電導ケーブルの全体構成を詳述するため、図1に示した本発明に係る管体1の内部構成、すなわち内層部2と外層部3は省略してあり、管体1のことを図4ではフォーマ(管体)477と呼称する。
【0047】
本実施形態の超電導ケーブル470は、交流電流通電時において偏流を抑制した構造を有するもので、パイプ状のフォーマ(管体)477の周囲に上記の転位セグメント10が螺旋状に巻回されて複数の超電導体層484が積層され、これら超電導体層484、484間に絶縁テープ等からなる層間絶縁層485が形成されたものである。また、超電導ケーブル470の外側には、図示しない半導体層、絶縁層、保護層、断熱層、防食層などが必要に応じて設けてもよい。
【0048】
フォーマ477はステンレス鋼などからなり、その表面にはフォーマ477と転位セグメント10との間の通電を抑制するため絶縁処理が施されている。また、内部の空洞は液体窒素等の冷却媒体の流路として用いられ、転位セグメント10を構成する複数の素線の冷却が行われるようになっている。
【0049】
以上の超電導ケーブル470では、転位セグメントと管体との間に、転位セグメントの幅と略同一の幅を有し、少なくともこの転位セグメントが接するように平板状の剛性体を配したことにより、転位セグメントを管体の周囲に螺旋状に巻き付けた際に、転位セグメント10はフォーマ477の外側に位置する剛性の低い外層部3に押し付けられる。
【0050】
したがって、転位セグメント10の構造は常に安定に保持されるので、転位セグメント10がフォーマ477の周方向に曲げられ、大きな歪みを受けるという従来の問題は解消される。このことは、安定した超電導特性をもたらす。
【0051】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る転位セグメント導体では、管体を剛性の高い内層部と剛性の低い外層部に二分した構成を採用した。そして、転位セグメントと直接に接触する管体の外層部に、転位セグメントの各々の少なくとも一部が埋設されるように載置した。
【0052】
本発明に係る転位セグメント導体は、このような構成を採用したことにより、転位セグメントが管体の周方向に曲げられ、大きな歪みを受けるという従来の問題が解消される。したがって、本発明は、超電導特性の極めて安定な、長期信頼性の高い超電導ケーブルの提供に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る転位セグメント導体の一実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明に係る転位セグメントの一実施形態を示す概略図である。
【図3】本発明に係る超電導ケーブルの一実施形態を示す斜視図である。
【図4】従来の転位セグメントの一実施形態を示す概略図である。
【図5】従来の転位セグメント導体の一実施形態を示す断面図(a)と上方から見た平面図(b)である。
【図6】歪ゲージ取り付け位置と周方向曲げ歪との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
α1〜α10 歪ゲージ取り付け位置、1、901 管体、2 内層部、3 外層部、4 支持テープ、10、20 転位セグメント、310 超電導テープ線材、320 転位渡り部、330 非転位渡り部、340 保形用テープ、470 超電導ケーブル。
Claims (4)
- 超電導テープ線材を複数本、転位撚り合わせてなる転位セグメントを複数本、円筒状コアからなる管体の周囲に螺旋状に巻き付けてなる転位セグメント導体において、
前記管体は剛性の高い内層部と剛性の低い外層部からなり、前記転位セグメントの各々の少なくとも一部は、該管体の外層部に埋設されるように載置されていることを特徴とする転位セグメント導体。 - 前記管体の外層部は、前記転位セグメントに比べて剛性が低く、変形領域が広く、かつ低温に強い樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の転位セグメント導体。
- 前記管体の外層部に対して前記転位セグメントを押しつけるように、該転位セグメントの外側から支持用テープを巻き付けてなることを特徴とする請求項1に記載の転位セグメント導体。
- 前記支持用テープを巻き付けた際に、前記転位セグメントは前記管体の内層部と接することなく、該管体の外層部とのみ接した状態にあることを特徴とする請求項3に記載の転位セグメント導体。
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JP2003146416A JP2004349161A (ja) | 2003-05-23 | 2003-05-23 | 転位セグメント導体 |
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JP2009522743A (ja) * | 2006-01-20 | 2009-06-11 | エルエス ケーブル リミテッド | 超伝導ケーブル |
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2003
- 2003-05-23 JP JP2003146416A patent/JP2004349161A/ja not_active Withdrawn
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