JP2004347734A - 電子写真組成物及び電子写真ドライフィルム並びにそれを用いた電子写真方式によるプリント配線板の作製方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】貫通孔または/及び非貫通孔を有するプリント配線板を作製するに際して、露光時の位置ズレ等に対する許容範囲が大きいだけでなく、配線密度を容易に向上するランドレスの孔を簡便且つ確実に形成可能で、且つ良好な画像再現性を実現する電子写真組成物及び電子写真ドライフィルム並びにそれを用いた電子写真方式によるプリント配線板の作製方法を提供すること。
【解決手段】少なくとも電子写真用感光物質と、アルカリ可溶性樹脂と、ヘテロ環状メルカプタン化合物とを含み、場合によっては第2の樹脂成分を含んでも良い電子写真組成物、及び該電子写真組成物から成る電子写真ドライフィルム、並びに該電子写真ドライフィルムを用いて孔開口部を除く回路形成用基板の両面に電子写真感光層を形成することを特徴とする電子写真方式によるプリント配線板の作製方法。
【選択図】 図1
【解決手段】少なくとも電子写真用感光物質と、アルカリ可溶性樹脂と、ヘテロ環状メルカプタン化合物とを含み、場合によっては第2の樹脂成分を含んでも良い電子写真組成物、及び該電子写真組成物から成る電子写真ドライフィルム、並びに該電子写真ドライフィルムを用いて孔開口部を除く回路形成用基板の両面に電子写真感光層を形成することを特徴とする電子写真方式によるプリント配線板の作製方法。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真法による画像形成が可能な電子写真組成物及び該電子写真組成物から成る電子写真ドライフィルム及びそれを用いた電子写真方式によるプリント配線板の作製方法に関し、より詳しくは貫通孔または/及び非貫通孔を有するプリント配線板の作製に関する。
【0002】
【従来の技術】
プリント配線板の作製方法はサブトラクティブ法とアディティブ法の2つに大別される。サブトラクティブ法は絶縁性基板に銅等の金属導電層を設けた回路形成用基板上にレジスト画像を形成し、そのレジスト画像で被覆されていない金属導電層をエッチングにより取り除く方法である。アディティブ法は絶縁性基板上の配線パターン部にのみ金属導電層を形成する方法である。これら以外に、導電性基板上にめっきレジストでレジスト画像を設け、このレジスト画像以外の導電性基板上に金属めっきを施して金属配線パターンを作製し、次いでレジスト画像を除去した後、金属配線パターンのみを絶縁性材料に転写する配線転写法等が提案されている。本発明の電子写真方式によるプリント配線板の作製方法はサブトラクティブ法に属する。
【0003】
一般的に、上記レジスト画像を形成する方法に関しては、感光性高分子から成るドライフィルム及び液状フォトレジスト等のフォトポリマーが用いられており、該フォトポリマーとしてはネガ型とポジ型の2種類が存在する。つまり、フォトポリマーは、形成したフォトポリマー層に光を照射して該フォトポリマー分子に化学変化を生じさせて、現像液に対する溶解性を変化させるが、光が照射された部分が重合・硬化して、現像液に対して不溶性となるのがネガ型、逆に光が照射された部分の官能基が変化し、現像液に対する溶解性を示すようになる(他に化学増幅系等メカニズムは複数)ポジ型である。何れの場合にも、現像液による処理後に導電性基板上に残存する、現像液に不溶の感光材料がエッチングレジスト性を有するレジスト画像となる。その後、エッチング、レジスト剥離を行うことにより所望の配線パターンが得られる。
【0004】
また、近年の電子機器の小型、多機能化に伴い、機器内部に使用されるプリント配線板も高密度化や回路パターンの微細化が進められており、そのような条件を達成する手段としては、プリント配線板の多層化が挙げられる。多層プリント配線板は、多層構造を成すために、一般にスルーホール、バイアホールと呼ばれる、内壁を導電体で被覆した貫通孔、非貫通孔といった細孔を通じて各層間の導通が行われている。
【0005】
上記フォトポリマー層を用いて、貫通孔または/及び非貫通孔(以下、孔)を有する導電性基板に配線パターンを形成する方法としては、ドライフィルムを用いるテンティング法、または穴埋めインクを用いる穴埋め法、ポジ型液状フォトレジストを用いる方法等が挙げられる。(ネガ型液状フォトレジストを単独で用いる場合は、ネガ型フォトポリマーでは孔の内部まで光硬化することは困難である。)以下に最も一般的なフォトポリマードライフィルムを用いるテンティング法を説明する。
【0006】
一般的なドライフィルムを用いる場合には、ネガ型フォトポリマーのシートから成るドライフィルムを回路形成用基板上にラミネートした後、孔の径よりも大きな径のランド(のりしろ)を形成するように光を照射して、孔を光硬化したドライフィルムで完全に蓋をする(テンティングする)ことにより、孔内壁の金属導電層のエッチングレジストを達成する。しかしながら、この方法に於いては、露光時点でのパターン形成の位置ズレが発生したり、露光フィルムマスクが温湿度変化等で全体的に伸縮した場合、アルカリ現像後の段階で孔の蓋に隙間が生じるようなことがあると、孔の内壁をエッチングレジストすることができず不良品となってしまうので工程管理に注意を要する。さらには、前記の不良品を避けるためにある程度大きな幅のランドが必須であるために配線密度の向上を妨げることや、フォトポリマー層の厚みが大きいため高解像度化に制約があるといった欠点もある。しかし、コスト等の点で現状最も普及している方法でもある(例えば、非特許文献1参照)。
【0007】
一方、電子写真法を用いたプリント配線板の作製では、上記のようなフォトポリマーを用いたドライフィルムや液状フォトレジストによる方法とは異なり、レジスト層の膜厚を少なく設定することが可能なことから、塗布乾燥条件、アルカリ現像条件、エッチング液の液まわり等に有利であり、したがって、細線再現性及び生産性に優れている。また、アルカリ現像液のメンテナンス性、高感度ゆえレーザー直描への対応可能性、塗布後基板の取り扱い性が良いだけでなく、下記のように孔内部を無条件にレジスト可能でランドの必要性が無い(ランドレス)等々、他のレジスト材料に比べ優れた特性が多いため、実用化への期待が注がれている。
【0008】
具体的な電子写真方式による孔を有するプリント配線板の作製は、次の様にしてなされる。孔を有する回路形成用基板の両面に、浸漬塗布等により電子写真感光層を設け、該電子写真感光層表面の帯電及び露光を行うことにより、露光部分に沿った静電潜像が形成される。該静電潜像に対してトナー現像処理を行ってトナー画像を形成する。(この際、孔の内壁面は帯電処理時に帯電されないため、トナー現像処理により孔の内壁もトナー膜が形成される。)次いで、該トナー画像をレジストとして、トナー画像部以外の電子写真感光層を溶解除去し、トナー画像と電子写真感光層とからなる金属導電層のレジスト画像が作製される。金属導電層の不要部のエッチング除去及びそれ以降のプリント配線板の作製工程は、従来と同様にして行うことができる。この方法によれば、理論的には、孔へ至る配線パターンが孔から離れなければ、孔の層間接続に於ける断線が起こることは無いので、前記のネガ型フォトポリマーによるテンティング法の場合より露光ズレの許容範囲が大きいだけでなく、ランドレスの孔を形成可能であるため配線密度も容易に向上することが可能となるはずである。
【0009】
しかしながら、一般的に孔を有する回路形成用基板への電子写真感光層の形成は、電子写真感光材料を含有する塗布液を浸漬塗布法等により塗布及び乾燥するため、塗布浸漬時に於いて孔内へ気泡が混入した場合は、使用する塗布液の粘度及び乾燥特性によっては、孔の開口部に薄い膜が形成されてしまう場合があり、この上にトナー膜を形成したとしても、例えばエッチング処理より前に孔開口部の膜が割れた場合には、孔の内壁はレジストされず不良品となる。また、孔内に気泡が混入されない状態で塗布を行えたとしても、乾燥後には孔の深さ方向中央付近に一枚の塗膜が残る場合が多く、この状態でトナー現像を施したとしても、孔の径やアスペクト比によってはトナーと一緒に孔内に空気が混入しやすいので、トナー電着の妨げとなる場合があり、この場合も導通不良を起こすことがあった。(一般の非貫通孔の場合は径もアスペクト比も小さいため、このような問題は起きない。)さらに、塗布時に孔からの液だれが起こった場合には、基板表面の電子写真感光層に膜厚ムラを引き起こすこととなるため、微細なパターンが要求される場合には、画像カブリ等による配線短絡の欠陥となり易い。このような問題は、昨今の様々な径及び深さの孔を有するプリント配線板に於いては、塗布液の性状等の制御だけでは解決が困難となってきている。
【0010】
なお、本発明の電子写真方式によるプリント配線板の作製方法に適用される電子写真感光層に用いる電子写真感光物質としては、光導電物質を用いるものとフォトメモリー性感光物質を用いるものが挙げられる。両者は、その工程上で比較すると静電潜像を形成するに際して、露光処理と帯電処理の順序が入れ替わるだけであり、以下にそれぞれの処理工程を説明する。
【0011】
光導電物質を用いた電子写真方式によるプリント配線板の作製方法は、絶縁性基板の両面に金属導電層及び電子写真感光層を設けた回路形成用基板を両面同時現像することで、両面にレジスト画像を形成させることが可能である。具体的には、暗中で電子写真感光層表面を帯電し、その後所定の波長の光によるパターン露光により、露光部の電荷が消失して静電潜像が形成され、その後帯電電荷と同極性を持った微細なトナー粒子を露光部である電荷の消失した部位に付着させることにより行われる。電子写真方式では、現像電極と呼ばれる導電性部材を静電潜像面と対向して設置し、この電極に同極性のバイアス電圧を印加することにより、トナー粒子の露光部への付着が促進され、高画質なトナー画像が得られる。この後トナー画像の熱定着処理を行えば、被現像体両面にレジスト画像を形成することが可能である(例えば、特許文献1、2参照)。
【0012】
また、フォトメモリー性感光物質を用いたプリント配線板の作製方法は、金属導電層上に電子写真感光層を設けた回路形成用基板上に所定のパターンの露光処理を施すことにより、該電子写真感光層に露光パターンに応じた帯電特性の差を誘起させておき、次いでフォトメモリー性感光層表面を全面帯電処理を施せば露光パターンに応じた静電潜像が形成されるから、上記光導電物質を用いた場合と同様にフォトメモリー性感光物質による電子写真感光層上にレジスト画像を形成することが可能である(例えば、特許文献3参照)。
【0013】
【特許文献1】
特開昭52−2437号公報
【特許文献2】
特開平6−224541号公報
【特許文献3】
特開2002−158422号公報
【非特許文献1】
「プリント回路技術便覧 第2版」、プリント回路学会、1993年2月、96〜99頁
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、貫通孔または/及び非貫通孔を有するプリント配線板を作製するに際して、露光時の位置ズレ等に対する許容範囲が大きいだけでなく、配線密度を容易に向上するランドレスの孔を簡便且つ確実に形成可能で、且つ良好な画像再現性を実現する電子写真組成物及び電子写真ドライフィルム並びにそれを用いた電子写真方式によるプリント配線板の作製方法を提供する。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記従来技術の問題点を解決するために鋭意研究を重ねた結果、少なくともヘテロ環状メルカプタン化合物を含む電子写真組成物から成る被膜が所望の特性を発現し、加えて第2の樹脂成分を添加した場合にさらなる優位性が発現することを見出し本発明を成すに至った。これにより基材との密着力を自由に制御することが可能となるため、孔の部位のみ電子写真感光層が除去された状態を形成することが可能となる。従って、基材表面の孔のエッジ近傍まで電子写真感光層が均一な厚みで形成され、且つ孔内壁へのエッチングレジスト不良の原因を除去することが可能となり、少なくとも配線パターンが孔に通じていれば良いという条件の下でランドレスの孔を確実に形成することが可能となる。即ち、本発明は以下のものを提供する。
【0016】
1)少なくとも電子写真用感光物質と、アルカリ可溶性樹脂と、ヘテロ環状メルカプタン化合物とを含むことを特徴とする電子写真組成物である。
【0017】
2)さらに第2の樹脂成分を添加して成る1)記載の電子写真組成物である。
【0018】
3)上記第2の樹脂成分が熱可塑性のアクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ウレタン樹脂、及びウレタン尿素樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂であることを特徴とする2)記載の電子写真組成物である。
【0019】
4)上記ヘテロ環状メルカプタン化合物が下記一般式で表される化合物のうち少なくとも一種を含むことを特徴とする1)から3)のいずれかに記載の電子写真組成物である。
【0020】
【化2】
【0021】
ただし、式中X及びYを含む環状部分は5または6原子を有するヘテロ環を形成しており、Xは1個の芳香環の一部を形成している2個または3個の炭素原子、あるいは単結合もしくは二重結合によって結合されている2個の炭素原子、あるいは単結合もしくは二重結合によって結合されている2個の窒素原子、あるいは単結合もしくは二重結合によって結合されている1個の炭素原子と1個の窒素原子から成る主鎖を有し、Yは酸素原子、硫黄原子、炭素原子、または窒素原子を表し、X及びYは、それぞれ独立してアルキル、アラルキル、アリール、アルケニル、アミノ、ヒドロキシル、アルキルアミノ、アシドアミド、またはスルホンアミド基で置換されていても良い。
【0022】
5)キャリアフィルム上に、1)から4)のいずれかに記載の電子写真組成物から成る電子写真感光層を有することを特徴とする電子写真ドライフィルムである。
【0023】
6)電子写真組成物から成る電子写真感光層の厚みが3〜15μmであることを特徴とする5)記載の電子写真ドライフィルムである。
【0024】
7)貫通孔または/及び非貫通孔を有する基板表面に金属めっき処理により金属導電層を設けた回路形成用基板の両面に対し、5)または6)記載の電子写真ドライフィルムのキャリアフィルムの反対面側をラミネートした後、電子写真感光層の帯電処理の前までに、キャリアフィルムと貫通孔または/及び非貫通孔の開口部の電子写真感光層とを除去し、該開口部を除く回路形成用基板の両面に電子写真感光層を形成することを特徴とする電子写真方式によるプリント配線板の作製方法である。
【0025】
8)キャリアフィルムと貫通孔または/及び非貫通孔の開口部の電子写真感光層とを除去し、該開口部を除く回路形成用基板の両面に電子写真感光層を形成するに際し、電子写真感光層のガラス転移温度よりも10℃以上高い温度に於いてキャリアフィルムを剥離することを特徴とする7)記載の電子写真方式によるプリント配線板の作製方法である。
【0026】
すなわち、電子写真感光層のガラス転移温度よりも10℃以上高い温度に於いてキャリアフィルムを剥離することにより、各基材間の密着力を制御することも可能となり、より安定して孔の開口部を除く回路形成用基板の両面に電子写真感光層を形成することが可能となる。なお、電子写真感光層のガラス転移温度とは、より詳しくは電子写真組成物のガラス転移温度であり、該電子写真組成物(混合物)を示差走査熱量計で測定して得られた値とする。
【0027】
9)キャリアフィルムと貫通孔または/及び非貫通孔の開口部の電子写真感光層とを除去し、該開口部を除く回路形成用基板の両面に電子写真感光層を形成した後、電子写真感光層のガラス転移温度より40℃以上高い温度になるように電子写真感光層へ加熱処理を施すことを特徴とする7)または8)記載の電子写真方式によるプリント配線板の作製方法である。
【0028】
すなわち、孔の開口部を除く回路形成用基板の両面に電子写真感光層を形成した後、電子写真感光層のガラス転移温度より40℃以上高い温度になるように電子写真感光層へ加熱処理を施すことにより、該孔の開口部よりも内側に若干でも電子写真感光層が残存した場合に孔内壁側へ残存した電子写真感光層を垂れさせることが可能となるので、万が一にも残存した電子写真感光層の破片が工程を汚染するようなことも無く、安定して孔内部のエッチングレジストを形成することが可能となる。
【0029】
よって、本発明の電子写真組成物から成る電子写真ドライフィルムを用いた電子写真方式によるプリント配線板の作製方法によれば、回路形成用基板への電子写真感光層の形成は、液状材料を塗布するのではなく、基本的にドライフィルムの形態を有する材料をラミネートしてなされるので、孔からの液だれに配慮する必要がなくなるばかりでなく、ラミネート後から帯電の略直前までの期間にキャリアフィルムを剥離除去することにより、回路形成用基板面に接着していない孔の開口部にあたる電子写真感光層をキャリアフィルムと一緒に除去し、該回路形成用基板の孔内壁を除く両面のみに電子写真感光層が形成されるので、液状材料の塗布の場合に見られたような不用意な孔開口部への電子写真感光層による膜形成がなくなる。したがって、液だれに起因する孔周辺での画像欠陥や、孔内壁のレジスト不良による欠陥を確実になくすことが可能となり、すなわち、孔へのレジスト形成を簡易かつ確実に達成し、かつ画像再現性が良好となる。
【0030】
さらには、本発明に於いては、一般的なフォトポリマーを用いたドライフィルムのように孔のテンティングを行わず、電子写真方式によるトナー膜により孔の内壁を保護することが可能であるため、露光時点でのパターン形成の位置ズレ等が発生した場合に於いても、完全に孔からパターンが外れない限りに於いて孔の断線欠陥を引き起こすことがなくなり、かつ前述のようにフォトポリマーを用いたドライフィルムに比較して感光層を薄くすることが可能となるため、これらの観点からも本発明の課題を優位に解決することが可能となる。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の電子写真組成物及び電子写真ドライフィルム並びにそれを用いた電子写真方式によるプリント配線板の作製方法について詳細に説明する。
【0032】
まず、本発明の電子写真組成物に含まれる各成分について詳細に説明する。本発明の電子写真組成物は、電子写真用感光物質と、アルカリ可溶性樹脂と、ヘテロ環状メルカプタン化合物と、必要に応じて第2の樹脂成分とを含む。本発明に係わる電子写真感光物質は、前述のように光導電物質を用いるものとフォトメモリー性感光物質を用いるものが挙げられる。
【0033】
光導電物質としては、公知の有機または無機の光導電性化合物を使用できる。有機光導電性化合物としては、無金属或いは金属(酸化物)フタロシアニン及びナフタロシアニン、及びその誘導体等が挙げられる。無機光導電性化合物としては、酸化亜鉛、酸化チタン、及び硫化カドミウム等が挙げられる。これらの光導電性化合物は単独または2種類以上混合して用いても良い。
【0034】
また、フォトメモリー性感光物質としては、ポリビニルカルバゾール/o−ニトロベンゼン/トリクロロ酢酸の混合物、ポリビニルカルバゾール・トリニトロフルオレノン−ジアゾニウム塩系、ポリビニルカルバゾール・ジアルキルアミノ置換色素系、テトラシアノ−p−キノジメタン・銅錯体等が挙げられる。本発明に係わる不可逆性のフォトメモリー性を有する感光体としては、ここで挙げた化合物や混合物に限定されず、フォトメモリーの性質を有する化合物であれば適用できる。例えば、特開2002−158422号公報に記載されている化合物も適用可能である。
【0035】
上記電子写真感光物質の全固形分に対する混合比は、所望する電子写真感光物質の電子写真特性によって異なるが、所望する帯電電位が安定的に得られる電子写真組成物から成る電子写真感光層の最低塗布量に於いて、所望する光感度が得られる最低量の電子写真感光物質の混合比が適当であり、具体的には全固形分に対して1〜50重量%程度であり、さらには5〜25重量%程度が好適である。
【0036】
本発明の電子写真組成物に含まれるアルカリ可溶性樹脂は、帯電性能を満足し、アルカリ可溶性を有するものが好ましい。また、金属導電層をエッチングする際に使用するエッチング液に対して耐性を有する必要もある。その具体例としては、スチレン/マレイン酸モノエステル共重合体、メタクリル酸/メタクリル酸エステル共重合体、スチレン/メタクリル酸/メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸/メタクリル酸エステル共重合体、スチレン/アクリル酸/メタクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸共重合体、及び酢酸ビニル/クロトン酸/メタクリル酸エステル共重合体と、スチレン、(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル、及び安息香酸ビニル単量体等と(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸等、もしくは無水マレイン酸及びフマル酸のモノエステル等のカルボキシル基含有単量体との共重合体、フェノール樹脂等が挙げられる。これらのアルカリ可溶性樹脂はアルカリ可溶性及び膜強度等を制御するために種々のビニル重合性単量体を共重合させたものでも良い。また、2種以上のアルカリ可溶樹脂を混合して用いても良い。
【0037】
さらに、本発明に係わるヘテロ環状メルカプタン化合物は、下記一般式で示される。該一般式に於いて、X及びYを含む環状部分は5または6原子を有するヘテロ環を形成しており、Xはベンゼンまたはナフタレンを構成する2個または3個の炭素原子、あるいは、Yを含めて記述すると、−N=N−Y−、−NR−NR−Y−、−NR−N=Y−、−N=CR−Y−、−NR−CR=Y−が挙げられ、Rはそれぞれ独立に水素、メチル、エチル、プロピル、n−ブチル、t−ブチル、フェニル、フェノキシ、フェノキシメチル、フェノキシエチル、ヒドロキシル、アミノ、ビニル基である。また、Yは酸素原子、硫黄原子、炭素原子、または窒素原子を表し、このうち炭素原子及び窒素原子に関しては、水素、メチル、エチル、プロピル、n−ブチル、t−ブチル、フェニル、フェノキシ、フェノキシメチル、フェノキシエチル、ヒドロキシル、アミノ、ビニル、フェニルスルホンアミド、フェニルカルボキシアミド基のいずれかの置換基を有しても良い。
【0038】
【化3】
【0039】
前記一般式で表されるヘテロ環状メルカプタン化合物の具体例としては以下に挙げるものを好適に用いることができる。すなわち、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、6−エトキシ−2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトイミダゾリン、2−メルカプトチアゾリン、2−メルカプト−1−メチルイミダゾール、2−メルカプトピリジン、2−メルカプトキノリン、1,2−ナフチル(2−メルカプト)オキサゾール、2−メルカプトニコチン酸、2−メルカプト−3−ピリジノール、2−メルカプトピリミジン、2−メルカプト−4−メチルピリミジン、4,6−ジメチル−2−メルカプトピリミジン、4−ヒドロキシ−2−メルカプト−6−メチルピリミジン、4−ヒドロキシ−2−メルカプト−6−プロピルピリミジン、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−フェニル−4−アミノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−メチル−4−エチル−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3,4−ジアミノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3,4−ジフェニル−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−メチル−4−アリル−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−メチル−4−フェニルスルホンアミド−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−フェニル−4−フェニルスルホンアミド−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−フェニル−4−フェニルカルボキシアミド−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプト−5−チアゾリドン、1−フェニル−1H−テトラゾール−5−チオール、1−カルボキシメチル−5−メルカプトテトラゾール、6−メルカプトプリン等が挙げられ、上記化合物は置換基等の種類による一例であり本発明に於いてはこれらに限定されるものではない。また、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いても良い。なお、これらの化合物の混合比は、他の成分の混合比にもよるが、全固形分の0.3〜10重量%が適当である。
【0040】
また、本発明の電子写真組成物に含まれる第2の樹脂成分としては、必要量を添加した際に、電子写真感光層の電子写真特性、アルカリ可溶性、及び金属導電層をエッチングする際に使用するエッチング液に対する耐性を極度に低下させることが無く、且つ該電子写真組成物に含まれるアルカリ可溶性樹脂との相溶性が良いものが選ばれる。具体的には、熱可塑性のアクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ウレタン樹脂、及びウレタン尿素樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂成分であれば良い。該第2の樹脂成分の混合比に関しては、上述の性能を満たす範囲であれば良いが、具体的には全固形分の3〜35重量%で、より好ましくは5〜15重量%程度が好適である。また、アクリル樹脂を用いる場合には、各種ビニル重合性単量体の線状重合物もしくは共重合物を用いれば良く、カルボキシル基含有のビニル重合性単量体、もしくはヒドロキシル基等の親水性を与えるビニル重合性単量体を適用した共重合体であれば、アルカリ可溶性が低下しにくくなるので好適である。上記ビニル重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−ラウリル、アクリル酸エチル、スチレン、ビニルトルエン、N−ビニルピロリドン、アクリルアミド、アクリロニトリル、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル等が挙げられる。カルボキシル基を含有するビニル重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸、フマル酸、けい皮酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸が挙げられる。
【0041】
さらに、上記第2の樹脂成分としては、粉体もしくは適当な溶剤に溶解した樹脂が塗料用等の用途向けに市販されており、これらを用いても良い。具体的には、日本ポリウレタン工業(株)製「ニッポラン」シリーズ、大日本インキ化学工業(株)製「アクリディック」シリーズ、「バーノック」シリーズ、電気化学工業(株)製「デンカブチラール」シリーズ、積水化学工業(株)製「エスレック」シリーズ等が挙げられ、さらに具体的に示せば、日本ポリウレタン工業(株)製「ニッポラン5109」、「同5110」、「同5111」、「同5120」、大日本インキ化学工業(株)製「アクリディックA−1650」、「同A−166」、「同A−136−55」、「同A−804」、「同A−811」、「同A−823」、「同A−829」、「同A−837」、「同A−832」「同A−430−60」、「同A−345」、「同A−416−70S」、「同A−413−70S」、「同57−773」、「同57−1287」、「同DU−1446−X」、「同A−418」、「同A−433」、「同52−101」、「同52−666」、「同52−614」、「バーノック12−406」、「同16−416」、「同16−411」、「同DF−407」、「同18−472」、電気化学工業(株)製「デンカブチラール#2000−L」、「同3000−1」、「同3000−2」、「同3000−4」、「同3000−K」、「同4000−1」、「同4000−2」、積水化学工業(株)製「エスレックBL−1」、「同BL−1H」、「同BL−2」、「同BL−2H」、「同BL−2」、「同BL−5」、「同BL−10」、「同BL−S」、「同BL−SH」、「同BX−L」、「同BX−1」、「同BX−3」、「同BX−5」、「同BM−1」、「同BL−2」、「同BM−5」、「同BM−S」、「同BM−SH」、「同BH−3」、「同BH−6」、「同BH−A」、「同BH−S」が挙げられる。
【0042】
上記の本発明の電子写真組成物を構成する各物質は、適当な溶剤に溶解せしめて使用する。従って、使用する溶剤は構成する各組成物を均一に溶解もしくは分散できるものであれば良く、具体的には、メタノール、エタノール、及び1−プロパノール等のアルコール類、THF、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、1,2−ジメトキシエタン、エチレングリコールモノメチルエーテル、及び1−メトキシ−2−プロパノール等のエーテル類、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、及びメチルイソブチルケトン等のケトン類、トルエン、及びキシレン等の芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸メチル、及び酢酸イソブチル等のエステル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、及びN−メチルピロリドン等のアミド類、及びジメチルスルホキシド等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、塗布方法と乾燥条件等によって適当なものを単独または2種以上を選択して使用できる。塗布液の固形分濃度についても、所望する膜厚と塗布方法と乾燥条件等によって適切な濃度を選択できる。
【0043】
本発明の電子写真ドライフィルムに関して説明する。上記電子写真組成物から成る電子写真ドライフィルムは、少なくともキャリアフィルムと電子写真感光層の2層から成っておれば良く、電子写真組成物は上記溶剤に溶解せしめてキャリアフィルム上に塗布及び乾燥して形成し、乾燥後の厚みは2から18μm程度であれば良く、さらには4から12μmが好適である。さらに、場合によっては、保存時の物理的衝撃や組成の経時変化に対する安定性の面から、電子写真感光層をはさんでキャリアフィルムと反対面にポリエチレン等の保護フィルムを設けても良い。
【0044】
キャリアフィルムとしては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート、アラミド、カプトン、ポリメチルペンテン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のフィルムを使用することができる。さらに、電子写真感光層を塗布する面の接着性を制御するため、少なくとも電子写真感光層を形成する側の面にコロナ処理やプライマー処理が施されたフィルムを用いることもある。
【0045】
また、本発明の電子写真ドライフィルムは、基本的には上記の電子写真組成物を少なくとも含んでいれば良いが、回路形成用基板と電子写真感光層の接着力や電子写真特性等の向上のため、必要に応じてドライフィルムのキャリアフィルム上に塗布された電子写真感光層上に、さらにカゼイン、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、フェノール樹脂、スチレン/無水マレイン酸共重合体、マレイン酸/アクリル酸共重合体、アクリル酸/メタクリル酸共重合体、ポリアクリル酸、及びこれら高分子電解質のアルカリ金属塩及び/またはアンモニウム塩、エタノールアミン類及びそれらの塩酸塩、しゅう酸塩、リン酸塩、クエン酸、及び酒石酸等のヒドロキシカルボン酸、及びそれらの塩、グリシン、アラニン、グルタミン酸等のアミノ酸、スルファミン酸等の脂肪族アミノスルホン酸、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、トリエチレンンテトラミン六酢酸等の(ポリ)アミノポリ酢酸、アミノトリ(メチレンホスホン)酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)等の(ポリ)アミノポリ(メチレンホスホン酸)及びその類似物、及びこれら化合物の酸基の少なくとも一部がアルカリ金属塩或いはアンモニウム塩等からなる中間層を設けても良い。中間層にはさらに、酸化チタン、アルミナ、シリカ、ジルコニア、及び酸化アンチモン等のサブミクロン微粒子を併用しても良い。中間層の厚みには特に制限はないが、光導電層の接着性を目的とするのであれば、用いる支持体に関係なく厚くとも5μm以下で良い。また、中間層の電気伝導度が低いと光導電層の電荷の散逸が起こりにくく、光感度が低下してトナー画像の解像度が低下するから、中間層の電気伝導度は10−9S/cm以上が好ましい。もちろん、上記保護フィルムを設ける場合は中間層の上に設けるものである。
【0046】
本発明の電子写真ドライフィルムの作製は、上記のキャリアフィルム上に、カーテンコート法、バーコート法、スプレーコート法、ロールコート法、スピナーコート法等の公知の塗布方法により、本発明の電子写真組成物から成る塗布液の塗布を行い、所望の厚みの電子写真感光層を得ることによって行われる。さらに、必要に応じて中間層の塗布及び保護フィルム層の積層を行う。また、塗布液には必要に応じて、本発明の電子写真組成物の他に、電子写真感光層の膜物性、塗布液の粘度等を改良する目的で、増感剤、可塑剤、界面活性剤、染料を添加しても良い。
【0047】
本発明の電子写真組成物から成る電子写真ドライフィルムを用いた電子写真方式によるプリント配線板の作製方法を説明する。図1は、本発明の電子写真方式によるプリント配線板の作製方法の工程概念図である。ここでは、上記した2種類の電子写真感光物質のうち、フォトメモリー性感光物質を用いた場合(露光後帯電処理にて静電潜像を得る場合)を示しており、また、既に金属導電層を貫通孔内に設けた貫通孔を有する回路形成用基板1を対象として説明を進める。まず、図示しないラミネート装置により、孔2を有する回路形成用基板1の両面に本発明に係わる電子写真感光層3及びキャリアフィルム4から成るドライフィルムをラミネートし(図1(a))、次いでマスク5を介して電子写真感光層の両面に対して所定の露光処理を施すことにより、露光パターンに応じた帯電特性の差を誘起させておき(図1(b))、その後キャリアフィルム4を剥離することにより、非貫通孔の開口部を除く回路形成用基板1の両面のみに電子写真感光層3を形成する(図1(c))。続いて、両面に所定の帯電処理を施すことにより、所望の配線パターンに従った静電潜像を得(図1(d))、さらに図示しない電子写真トナー現像装置により静電潜像上及び孔の内壁へトナー膜6を形成することによりトナー画像を得る(図1(e))。その後は一般のサブトラクティブ法と同様の工程で、アルカリ現像工程、エッチング工程、及びレジスト剥離工程を経て孔を有するプリント配線板が作製される。
【0048】
本発明の電子写真方式によるプリント配線板の作製方法によれば、キャリアフィルム剥離工程は、少なくとも帯電工程の略直前までに行われれば良く、上記のフォトメモリー性感光物質を用いた場合に於いては、キャリアフィルム剥離工程(図1(c))を露光工程(図1(b))の前に入れ替えても良い。さらに、電子写真感光物質として光導電物質を用いる場合(帯電後露光処理にて静電潜像を得る場合)には、図1を参考に、ラミネート工程(図1(a))、キャリアフィルム剥離工程(図1(c))、帯電工程(図1(d))、露光工程(図1(b))の順に処理を施し、その後は同様に処理すれば良い。
【0049】
本発明の電子写真方式によるプリント配線板の作製方法に係わる、貫通孔または/及び非貫通孔内を含む基板表面に金属導電層を設けた回路形成用基板は、基本的には、絶縁性基板の両面に金属導電層を設けた積層板、或いは貫通孔または/及び非貫通孔を形成する工程を有する多層プリント配線板製造時の孔形成前の外層板(内層に絶縁層を介して配線パターン層、グランド層等を有する積層板)等に対して、ポンチ、ドリル、またはパルスレーザー等を用いて貫通孔または/及び非貫通孔を形成し、さらに所定のめっき処理を施すことにより、該貫通孔または/及び非貫通孔の内壁に金属導電層を設けることによって得られる。例えば、貫通孔及び非貫通孔による層間接続を行う上記多層プリント配線板に関しては、「JPCA規格、ビルドアップ配線板」(1998年5月、日本プリント回路工業会発刊)に記載されており、一般的なスルーホール、バリードバイアホール、ブラインドバイアホール等、基本的にサブトラクティブ法で適用可能なものに対応することが可能である。
【0050】
上記の絶縁性基板の両面に金属導電層を設けた積層板としては、例えば「プリント回路技術便覧−第二版−」((社)プリント回路学会編、日刊工業新聞社発刊)に記載されているものを使用することができる。絶縁性基板としては、紙基材またはガラス基材にエポキシ樹脂またはフェノール樹脂等を含浸させたもの、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム等が挙げられる。導電層の材料としては、例えば、銅、銀、アルミ等が挙げられる。
【0051】
本発明の電子写真方式によるプリント配線板の作製方法に係わる金属めっき処理の方法としては、例えば、めっき導電層が銅の場合には、「表面実装技術」(1993年6月号、日刊工業新聞社発刊)等記載の無電解めっき工程、無電解めっき−電解めっき工程、直接電解めっき工程等を適用することができる。
【0052】
本発明の電子写真方式によるプリント配線板の作製方法に係わる、電子写真ドライフィルムのラミネート方法は、基本的には、一般的なフォトポリマーから成るドライフィルムをラミネートするために広く使用されているラミネート装置を適用することが可能であり、少なくとも電子写真ドライフィルムを基材上に加熱及び圧着できれば良く、両面同時にラミネート可能なものが生産性等の点から好ましい。具体的には、ロールラミネータ、及び真空ラミネータを使用することが可能である。また、作製工程によっては、ラミネート後にキャリアフィルムを剥離する手段と同時に基材を加熱する手段を設けても良い。
【0053】
なお、本発明に於ける、電子写真感光層及びキャリアフィルムの少なくとも2層から成るドライフィルムのキャリアフィルムの反対面側とは、上記で説明した電子写真感光層からなるドライフィルムの構成に対して、中間層を有さない場合には電子写真感光層面側であり、電子写真感光層と中間層を有する場合には中間層面側である。
【0054】
本発明の電子写真方式によるプリント配線板の作製方法における画像パターン露光方法としては、キセノンランプ、タングステンランプ、蛍光灯を光源とした反射画像露光、フィルムマスクを用いた片面、両面密着露光、マスクを通した直接投影露光、またはレーザ光、発光ダイオード等による走査露光が挙げられる。走査露光を行う場合には、He−Neレーザー、He−Cdレーザー、アルゴンレーザー、クリプトンイオンレーザー、ルビーレーザー、YAGレーザー、窒素レーザー、色素レーザー、エキシマレーザー等のレーザー光源を発光波長に応じてSHG波長変換して走査露光する、あるいは液晶シャッター、マイクロミラーアレイシャッターを利用して露光することも可能である。
【0055】
また、本発明に係わる帯電方法としては、従来からコロトロン方式及びスコロトロン方式等の非接触帯電方法、また導電ロール帯電等の接触帯電方法が知られており、本発明に係わる電子写真感光層が一様に帯電できれば何れの方式を採用しても良い。上記の露光方法と組み合わせて、電子写真感光層上に静電潜像が形成される。
【0056】
本発明における電子写真法によるトナー画像形成方法としては、乾式現像法(カスケード現像、磁気ブラシ現像、パウダークラウド現像)や、トナー粒子を適当な絶縁性液体中に分散させた液体トナーによる現像法を用いることができる。これらのうち、液体現像法は乾式現像法に比してトナー粒子を安定に小粒径にできるため、より微細なトナー画像を形成できるので、本発明に於いては液体現像法を用いることが好ましい。
【0057】
具体的には本発明に係わる液体現像装置としては、基本的な構成としては以下の様な方式の装置を用いることができる。従来より用いられている静電潜像形成面を上下方向に向けて略水平に搬送し、その上面または下面から片面に液体トナーを供給する片面横現像、特開平2−91649号公報等に記載の様な基板を立てて略鉛直に搬送し、その片面にトナー供給する片面縦現像、特開平6−224541号公報等に記載の様な基板を寝かせて略水平に搬送し、その上下両側から基板両面にトナー供給する両面横現像、特開平10−142949号に記載の様に基板を立てて略鉛直に搬送し、その両面にトナー供給する両面縦現像等の方式が挙げられ、トナー画像形成方法の基本的な部分は、これらに挙げられる電子写真現像法による液体現像方法に従う。
【0058】
本発明で用いられる液体トナーは後工程である回路部の電子写真感光層の溶出除去に対してレジスト性を有するものでなければならない。このためにトナー粒子の成分としては、例えばメタクリル酸、メタクリル酸エステル等からなるアクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニルとエチレンまたは塩化ビニル等との共重合体、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルブチラールの様なビニルアセタール樹脂、ポリスチレン、スチレンとブタジエン、メタクリル酸エステル等との共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン及びその塩化物、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンイソフタレート等のポリエステル樹脂、ポリカプラミドやポリヘキサメチレンアジポアミド等のポリアミド樹脂、ビニル変性アルキッド樹脂、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース等のセルロースエステル誘導体、その他ワックス等を含有することは好ましい。また、トナーには現像あるいは定着等に悪影響を及ぼさない範囲で、色素や電荷制御剤を含有させることもできる。さらにトナーの荷電は、電子写真感光層へのコロナ帯電時の帯電極性に応じて正、負を使い分ける必要がある。
【0059】
トナー現像法としては、静電潜像と同極性を有するトナーを用いて適当なバイアス電圧の印加の下で露光部を現像する反転現像を用いる。これにより帯電されることのない孔の内壁へもトナー膜形成が可能となり、本発明の目的である孔の一括レジストが実現される。形成されたトナー画像は、例えば加熱定着、圧力定着、溶剤定着等の方法により定着し、付着されたトナー粒子を成膜する。この様にして形成したトナー画像をレジストとして、トナー画像部以外の電子写真感光層を溶出液により除去して、導電性基板上に電子写真感光層とトナー画像とからなるレジスト画像を形成する。
【0060】
トナー画像部以外の電子写真感光層を溶出除去するための方法としては、基本的には溶出液を使用した一般的にフォトポリマードライフィルム等に用いられるのと同様のシャワー溶出処理機等を使用することができる。本発明で用いられる溶出液は塩基性化合物を含有する。塩基性化合物としては、例えばケイ酸アルカリ金属塩、アルカリ金属水酸化物、リン酸及び炭酸アルカリ金属塩、リン酸及び炭酸アンモニウム塩等の無機塩基性化合物、エタノールアミン類、エチレンジアミン、プロパンジアミン類、トリエチレンテトラミン、モルホリン等の有機塩基性化合物等を用いることができる。上記塩基性化合物は単独または混合物として使用できる。また、溶出液の溶剤としては水を用いることが好ましい。
【0061】
本発明の電子写真方式によるプリント配線板の作製方法では、レジスト画像部以外の露出した金属導電層をエッチングにより除去する。エッチング工程では、「プリント回路技術便覧」(社団法人日本プリント回路工業会編、1997年刊行、日刊工業新聞社発行)記載の方法等を使用することができる。エッチンング液は金属導電層を溶解除去できるもので、また電子写真感光層及びトナーが耐性を有しているものであれば良い。一般に金属導電層に銅層を使用する場合には塩化第二鉄水溶液、塩化第二銅水溶液等を使用することができる。
【0062】
また、本発明の電子写真方式によるプリント配線板の作製方法に於いては、一般のフォトポリマードライフィルムフォトレジスト等を利用したプリント配線板作製時と同様に、レジスト画像はエッチング工程後、非回路部の溶出除去で使用した溶出液よりもさらにアルカリ性の強い溶液で処理することにより除去することができる。また、必要に応じてメチルエチルケトン、ジオキサン、メタノール、エタノール、プロパノール等の電子写真感光層の結着樹脂を溶解する有機溶剤を併用することもできる。
【0063】
【実施例】
以下で、実施例により、さらに詳細に本発明の効果を説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。なお、実施例中の「部」及び「%」はそれぞれ「重量部」及び「重量%」を示す。
【0064】
貫通孔を有する回路形成用基板の準備
ガラス基材エポキシ樹脂板の両面に銅箔を張り合わせた両面銅張積層板(三菱ガス化学(株)製、200×300×0.8mm、銅厚18μm)に、0.2mmφ及び0.5mmφの貫通孔を100個ずつ開けた後、無電解銅めっき−電解銅めっき処理(奥野製薬(株)、OPCプロセスM)を施し、貫通孔内部を含む積層板表面に厚さ15μmの銅めっき層を設け、貫通孔を有する回路形成用基板を得た。なお、本実施例では非貫通孔は扱わないが、非貫通孔に関しても貫通孔と同様のプロセスで処理可能である。
【0065】
電子写真感光物質
また、本実施例で用いた本発明の電子写真組成物に係わる電子写真感光物質としては、全ての実施例及び比較例に於いて下記式で示される化合物(以下、CTと記述)を適用した。
【0066】
【化4】
【0067】
アルカリ可溶性樹脂
また、本実施例で用いた本発明の電子写真組成物に係わるアルカリ可溶性樹脂としては、全ての実施例及び比較例に於いて、アクリル酸−2−エチルヘキシル55部、メタクリル酸−フェノキシエチル20部、及びメタクリル酸25部から成る分子量3万の共重合樹脂(以下、P1と記述)を適用した。
【0068】
ヘテロ環状メルカプタン化合物
また、本発明の電子写真組成物に係わるヘテロ環状メルカプタン化合物としては、各実施例及び比較例に於いて、下記の表1に示すものを適用した。なお、ヘテロ環状メルカプタン化合物H1は3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、同H2は3−フェニル−4−フェニルカルボキシアミド−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾールである。
【0069】
第2の樹脂成分
さらに、同様に、第2の樹脂成分P21としてポリビニルアセタール樹脂(積水化学工業(株)製、エスレックBL−1)、同P22としてウレタン尿素樹脂(大日本インキ化学工業(株)製、バーノック16−416)、同P23としてアクリル樹脂(大日本インキ化学工業(株)製、アクリディック57−773)を本実施例にて使用した。
【0070】
電子写真組成物の処方
下記の表1に各実施例及び比較例に適用した電子写真組成物の処方を示す。なお、溶剤には酢酸エチルを用いており、溶剤以外の表中の数字は固形分の重量部である。
【0071】
【表1】
【0072】
実施例1
上記表1の処方に基づいたフォトメモリー性感光物質による電子写真組成物から成る塗液を調液した。両面ともに何も処理していない一般的なドライフィルム用ポリエチレンテレフタラートフィルム(厚み16μm、三菱化学ポリエステルフィルム(株)製、R310)の片面に、ロールコート法を用いて、乾燥後の電子写真感光層の厚みが7μmとなるように塗布し、本発明の電子写真ドライフィルムを得た。なお、示差走査熱分析装置を用いて電子写真組成物のガラス転移温度を測定したところ42℃であった。
【0073】
次いで、弾性熱ロール対及び金属熱ロール対の順に配置されたロールラミネータを用いて、上記回路形成用基板の両面に電子写真ドライフィルムをラミネートした。この際熱ロールの温度は、前段150℃、後段130℃として処理した。
【0074】
キャリアフィルムを剥離しない状態で、電子写真感光層上にランドレススルーホールを形成可能な画像パターンを描画した露光マスクを乗せ、吸引密着機構を有する焼付用高圧水銀灯光源装置;ユニレックURM300(ウシオ電機(株)製)を用いて30秒間紫外線露光を行った。さらに、基板を反転し、非露光面を同様にして、30秒間露光を行い、両面のフォトメモリー性感光層上に帯電特性の差を誘起させた。
【0075】
その後、何も加熱しない弾性ロールを通しながら、キャリアフィルムを均一な速度で剥離した。この際、孔の剥離形状を観察したところ、回路形成用基板の孔開口部のエッジに沿って、良好に孔開口部の電子写真感光層が除去されていた。
【0076】
次いで、電子写真感光層をコロナ帯電機(帯電印加電圧;+5.0kV)を用いて両面に電荷を与えた後、コロナ帯電終了より20秒後の紫外線露光部と未露光部の表面電位を測定したところ、露光部は+30V、未露光部は+230Vであり、静電潜像が形成できていることが確認された。さらに、静電潜像を三菱OPCプリンティングシステム用正電荷トナー(三菱製紙(株)製、「ODP−TW」)を用いて、バイアス電圧+150Vを印加して反転現像を行い、トナー画像を得た。70℃で10分間加熱してトナー画像を定着させ、良好なレジスト画像を得た。
【0077】
トナー画像部以外の電子写真感光層を35℃1%炭酸ナトリウム水溶液を用いて溶出除去することにより、トナー画像及び電子写真感光層からなるレジスト画像を形成した。さらに、残存するトナー画像と電子写真感光層をエッチングレジストとして、積層板に45℃に加熱された塩化第二鉄溶液(サンハヤト製、H20L)をスプレー圧2.5kg/cm2で2分間スプレーすることにより銅層をエッチング除去した。その後、3%水酸化ナトリウム水溶液でエッチングレジストを除去して、所望の孔を有するプリント配線板を作製した。該プリント配線板を詳細に観察したところ、孔開口部周辺表面に短絡欠陥が見られることもなく、全ての孔に於いて断線の無いランドレススルーホールが形成されたばかりでなく、孔内壁の断面観察に於いてもクワレ等のエッチングレジスト不良は観察されなかった。
【0078】
実施例2
実施例1に於いて、ドライフィルムのラミネート工程後、露光工程の略直前にキャリアフィルム剥離工程を実施した(露光工程とキャリアフィルム剥離工程を入れ替えた)以外は実施例1と同様にして、プリント配線板の作製を試みた。
【0079】
その結果、キャリアフィルムの剥離工程後に於いて、回路形成用基板の孔開口部のエッジに沿って、良好に孔開口部の電子写真感光層が除去されていた。つまり、露光するか否かに関わらず孔開口部の電子写真感光層を除去することが可能な電子写真ドライフィルムを提供することができた。さらに、出来上がった孔を有するプリント配線板を詳細に観察したところ、実施例1と同様に、孔開口部周辺表面に短絡欠陥が見られることもなく、全ての孔に於いて断線の無いランドレススルーホールが得られたばかりでなく、孔内壁の断面観察に於いてもクワレ等のエッチングレジスト不良は観察されなかった。
【0080】
実施例3
上記の表1の処方に基づいた、実施例1及び2とは異なるヘテロ環状メルカプタン化合物と第2の樹脂成分を用いた電子写真組成物を用いたことを除いては、実施例2と同様にしてプリント配線板の作製を試みた。なお、示差走査熱分析装置を用いて電子写真組成物のガラス転移温度を測定したところ40℃であった。
【0081】
その結果、キャリアフィルムの剥離工程後に於いて、回路形成用基板の孔開口部のエッジに沿って、良好に孔開口部の電子写真感光層が除去されていた。さらに、出来上がった孔を有するプリント配線板を詳細に観察したところ、実施例1及び2と同様に、孔開口部周辺表面に短絡欠陥が見られることもなく、全ての孔に於いて断線の無いランドレススルーホールが得られたばかりでなく、孔内壁の断面観察に於いてもクワレ等のエッチングレジスト不良は観察されなかった。
【0082】
実施例4
上記の表1の処方に基づいた、実施例1及び2で用いた電子写真組成物と比較して第2の樹脂成分を添加しない電子写真組成物を適用し、さらに、キャリアフィルムとして片面にコロナ処理を施したポリエチレンテレフタラートフィルム(厚み16μm、三菱化学ポリエステルフィルム(株)製、H500)を適用したことを除いては、実施例2と同様にしてプリント配線板の作製を試みた。
【0083】
その結果、キャリアフィルムの剥離工程後に於いて、孔開口部近傍の電子写真感光層に関しては、0.2mmφの貫通孔では孔開口部のエッジから内側へ、最大で25μm残存した部位が見られたが、0.5mmφの貫通孔では孔開口部のエッジに沿って良好に電子写真感光層が除去されていた。さらに、出来上がった孔を有するプリント配線板を詳細に観察したところ、実施例1から3と同様に、孔開口部周辺表面に短絡欠陥が見られることもなく、0.2mmφの孔を含めた全ての孔に於いて断線の無いランドレススルーホールが得られたばかりでなく、孔内壁の断面観察に於いてもクワレ等のエッチングレジスト不良は観察されなかった。
【0084】
実施例5
上記の表1の処方に基づいた、第2の樹脂成分をP23とした電子写真組成物と、実施例1から3と同様のキャリアフィルムを適用して電子写真ドライフィルムを形成した。なお、示差走査熱分析装置を用いて電子写真組成物のガラス転移温度を測定したところ40℃であった。その後の工程に関しては、キャリアフィルムの剥離工程に於いて、60℃に設定された弾性熱ロールを通しながら、キャリアフィルムを均一な速度で剥離したことを除いては、実施例2と同様にしてプリント配線板の作製を試みた。
【0085】
その結果、キャリアフィルムの剥離工程後に於いて、回路形成用基板の全ての孔に於いて、孔開口部のエッジに沿って良好に孔開口部の電子写真感光層が除去されていた。さらに、出来上がった孔を有するプリント配線板を詳細に観察したところ、実施例2と同様に、孔開口部周辺表面に短絡欠陥が見られることもなく、全ての孔に於いて断線の無いランドレススルーホールが得られたばかりでなく、孔内壁の断面観察に於いてもクワレ等のエッチングレジスト不良は観察されなかった。
【0086】
実施例6
上記の表1に示したように、実施例5と同様の電子写真組成物を適用し、電子写真ドライフィルムの構成に関しても実施例5と同様とした。その後の工程に関しては、加熱を行わずにキャリアフィルムを剥離した後、熱風装置より電子写真感光層表面の温度が100℃となるように両面に加熱処理を施したことを除いては、実施例2と同様にしてプリント配線板の作製を試みた。
【0087】
その結果、キャリアフィルムの剥離工程直後に於いて、孔開口部近傍の電子写真感光層に関しては、0.2mmφの貫通孔では孔開口部のエッジから内側へ、最大で20μm残存した部位が見られたが、0.5mmφの貫通孔では孔開口部のエッジに沿って良好に電子写真感光層が除去されていた。さらに、キャリアフィルムの剥離工程後に100℃熱風処理を施したところ、0.2mmφの貫通孔に見られた電子写真感光層の残存部は孔内壁側へ垂れて密着していることが確認された。さらに、出来上がった孔を有するプリント配線板を詳細に観察したところ、実施例2と同様に、孔開口部周辺表面に短絡欠陥が見られることもなく、0.2mmφの孔を含めた全ての孔に於いて断線の無いランドレススルーホールが得られたばかりでなく、孔内壁の断面観察に於いてもクワレ等のエッチングレジスト不良は観察されなかった。また、本実施例6の結果から、実施例5に於いては、キャリアフィルム剥離時の加熱により、0.2mmφの貫通孔であっても、安定して良好に孔開口部の電子写真感光層を除去することができていたことも確認できた。
【0088】
比較例1
上記の表1の処方に基づいた、ヘテロ環状メルカプタン化合物及び第2の樹脂成分の両方とも添加しない、本発明の範疇にない電子写真組成物を用いたことを除いては、実施例2と同様にしてプリント配線板の作製を試みた。
【0089】
その結果、キャリアフィルムの剥離工程後に於いて、孔開口部の観察を行ったところ、0.5mmφの孔であっても、大部分の孔開口部に於いて全く電子写真感光層が除去されずに残っており、一部の孔開口部に於いて電子写真感光層が除去されたのみであった。さらに、出来上がった孔を有するプリント配線板を詳細に観察したところ、孔開口部周辺表面に短絡欠陥が見られることは無かったが、大部分の孔に於いて孔内壁の金属導電層に断線が発生していた。
【0090】
比較例2
上記の表1の処方に基づいた、ヘテロ環状メルカプタン化合物を添加しない、本発明の範疇にない電子写真組成物を用いたことを除いては、実施例2と同様にしてプリント配線板の作製を試みた。
【0091】
その結果、キャリアフィルムの剥離工程後に於いて、孔開口部以外の回路形成用基板表面の電子写真感光層まで大部分の電子写真感光層がキャリアフィルムと一緒に剥離されてしまっていた。したがって、この時点で電子写真法によるプリント配線板の作製は不可能となった。
【0092】
【発明の効果】
以上説明したごとく、本発明の電子写真組成物及び電子写真ドライフィルム並びにそれを用いた電子写真方式によるプリント配線板の作製方法では、従来のフォトポリマーを用いたドライフィルムによる孔を有するプリント配線板の作製のように、テンティングのためのランドを必用としないため、孔に通ずる配線が孔開口部のエッジに少なくとも接しておれば良く、露光の位置ズレ等の処理不良に対する許容範囲が非常に大きいものとなる。また、露光パターンの設計時に於いてランドを排除したパターンを作製すれば、配線密度を容易に向上するランドレスの孔を簡便且つ確実に形成可能である。さらには、回路形成用基板の孔開口部近傍表面に於けるエッジ部分まで電子写真感光層を確実に形成されるので、細部にわたり良好な画像再現性を実現することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子写真方式によるプリント配線板の作製方法の工程概念図。
【符号の説明】
1 回路形成用基板
2 孔
3 電子写真感光層
4 キャリアフィルム
5 マスク
6 トナーレジスト
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真法による画像形成が可能な電子写真組成物及び該電子写真組成物から成る電子写真ドライフィルム及びそれを用いた電子写真方式によるプリント配線板の作製方法に関し、より詳しくは貫通孔または/及び非貫通孔を有するプリント配線板の作製に関する。
【0002】
【従来の技術】
プリント配線板の作製方法はサブトラクティブ法とアディティブ法の2つに大別される。サブトラクティブ法は絶縁性基板に銅等の金属導電層を設けた回路形成用基板上にレジスト画像を形成し、そのレジスト画像で被覆されていない金属導電層をエッチングにより取り除く方法である。アディティブ法は絶縁性基板上の配線パターン部にのみ金属導電層を形成する方法である。これら以外に、導電性基板上にめっきレジストでレジスト画像を設け、このレジスト画像以外の導電性基板上に金属めっきを施して金属配線パターンを作製し、次いでレジスト画像を除去した後、金属配線パターンのみを絶縁性材料に転写する配線転写法等が提案されている。本発明の電子写真方式によるプリント配線板の作製方法はサブトラクティブ法に属する。
【0003】
一般的に、上記レジスト画像を形成する方法に関しては、感光性高分子から成るドライフィルム及び液状フォトレジスト等のフォトポリマーが用いられており、該フォトポリマーとしてはネガ型とポジ型の2種類が存在する。つまり、フォトポリマーは、形成したフォトポリマー層に光を照射して該フォトポリマー分子に化学変化を生じさせて、現像液に対する溶解性を変化させるが、光が照射された部分が重合・硬化して、現像液に対して不溶性となるのがネガ型、逆に光が照射された部分の官能基が変化し、現像液に対する溶解性を示すようになる(他に化学増幅系等メカニズムは複数)ポジ型である。何れの場合にも、現像液による処理後に導電性基板上に残存する、現像液に不溶の感光材料がエッチングレジスト性を有するレジスト画像となる。その後、エッチング、レジスト剥離を行うことにより所望の配線パターンが得られる。
【0004】
また、近年の電子機器の小型、多機能化に伴い、機器内部に使用されるプリント配線板も高密度化や回路パターンの微細化が進められており、そのような条件を達成する手段としては、プリント配線板の多層化が挙げられる。多層プリント配線板は、多層構造を成すために、一般にスルーホール、バイアホールと呼ばれる、内壁を導電体で被覆した貫通孔、非貫通孔といった細孔を通じて各層間の導通が行われている。
【0005】
上記フォトポリマー層を用いて、貫通孔または/及び非貫通孔(以下、孔)を有する導電性基板に配線パターンを形成する方法としては、ドライフィルムを用いるテンティング法、または穴埋めインクを用いる穴埋め法、ポジ型液状フォトレジストを用いる方法等が挙げられる。(ネガ型液状フォトレジストを単独で用いる場合は、ネガ型フォトポリマーでは孔の内部まで光硬化することは困難である。)以下に最も一般的なフォトポリマードライフィルムを用いるテンティング法を説明する。
【0006】
一般的なドライフィルムを用いる場合には、ネガ型フォトポリマーのシートから成るドライフィルムを回路形成用基板上にラミネートした後、孔の径よりも大きな径のランド(のりしろ)を形成するように光を照射して、孔を光硬化したドライフィルムで完全に蓋をする(テンティングする)ことにより、孔内壁の金属導電層のエッチングレジストを達成する。しかしながら、この方法に於いては、露光時点でのパターン形成の位置ズレが発生したり、露光フィルムマスクが温湿度変化等で全体的に伸縮した場合、アルカリ現像後の段階で孔の蓋に隙間が生じるようなことがあると、孔の内壁をエッチングレジストすることができず不良品となってしまうので工程管理に注意を要する。さらには、前記の不良品を避けるためにある程度大きな幅のランドが必須であるために配線密度の向上を妨げることや、フォトポリマー層の厚みが大きいため高解像度化に制約があるといった欠点もある。しかし、コスト等の点で現状最も普及している方法でもある(例えば、非特許文献1参照)。
【0007】
一方、電子写真法を用いたプリント配線板の作製では、上記のようなフォトポリマーを用いたドライフィルムや液状フォトレジストによる方法とは異なり、レジスト層の膜厚を少なく設定することが可能なことから、塗布乾燥条件、アルカリ現像条件、エッチング液の液まわり等に有利であり、したがって、細線再現性及び生産性に優れている。また、アルカリ現像液のメンテナンス性、高感度ゆえレーザー直描への対応可能性、塗布後基板の取り扱い性が良いだけでなく、下記のように孔内部を無条件にレジスト可能でランドの必要性が無い(ランドレス)等々、他のレジスト材料に比べ優れた特性が多いため、実用化への期待が注がれている。
【0008】
具体的な電子写真方式による孔を有するプリント配線板の作製は、次の様にしてなされる。孔を有する回路形成用基板の両面に、浸漬塗布等により電子写真感光層を設け、該電子写真感光層表面の帯電及び露光を行うことにより、露光部分に沿った静電潜像が形成される。該静電潜像に対してトナー現像処理を行ってトナー画像を形成する。(この際、孔の内壁面は帯電処理時に帯電されないため、トナー現像処理により孔の内壁もトナー膜が形成される。)次いで、該トナー画像をレジストとして、トナー画像部以外の電子写真感光層を溶解除去し、トナー画像と電子写真感光層とからなる金属導電層のレジスト画像が作製される。金属導電層の不要部のエッチング除去及びそれ以降のプリント配線板の作製工程は、従来と同様にして行うことができる。この方法によれば、理論的には、孔へ至る配線パターンが孔から離れなければ、孔の層間接続に於ける断線が起こることは無いので、前記のネガ型フォトポリマーによるテンティング法の場合より露光ズレの許容範囲が大きいだけでなく、ランドレスの孔を形成可能であるため配線密度も容易に向上することが可能となるはずである。
【0009】
しかしながら、一般的に孔を有する回路形成用基板への電子写真感光層の形成は、電子写真感光材料を含有する塗布液を浸漬塗布法等により塗布及び乾燥するため、塗布浸漬時に於いて孔内へ気泡が混入した場合は、使用する塗布液の粘度及び乾燥特性によっては、孔の開口部に薄い膜が形成されてしまう場合があり、この上にトナー膜を形成したとしても、例えばエッチング処理より前に孔開口部の膜が割れた場合には、孔の内壁はレジストされず不良品となる。また、孔内に気泡が混入されない状態で塗布を行えたとしても、乾燥後には孔の深さ方向中央付近に一枚の塗膜が残る場合が多く、この状態でトナー現像を施したとしても、孔の径やアスペクト比によってはトナーと一緒に孔内に空気が混入しやすいので、トナー電着の妨げとなる場合があり、この場合も導通不良を起こすことがあった。(一般の非貫通孔の場合は径もアスペクト比も小さいため、このような問題は起きない。)さらに、塗布時に孔からの液だれが起こった場合には、基板表面の電子写真感光層に膜厚ムラを引き起こすこととなるため、微細なパターンが要求される場合には、画像カブリ等による配線短絡の欠陥となり易い。このような問題は、昨今の様々な径及び深さの孔を有するプリント配線板に於いては、塗布液の性状等の制御だけでは解決が困難となってきている。
【0010】
なお、本発明の電子写真方式によるプリント配線板の作製方法に適用される電子写真感光層に用いる電子写真感光物質としては、光導電物質を用いるものとフォトメモリー性感光物質を用いるものが挙げられる。両者は、その工程上で比較すると静電潜像を形成するに際して、露光処理と帯電処理の順序が入れ替わるだけであり、以下にそれぞれの処理工程を説明する。
【0011】
光導電物質を用いた電子写真方式によるプリント配線板の作製方法は、絶縁性基板の両面に金属導電層及び電子写真感光層を設けた回路形成用基板を両面同時現像することで、両面にレジスト画像を形成させることが可能である。具体的には、暗中で電子写真感光層表面を帯電し、その後所定の波長の光によるパターン露光により、露光部の電荷が消失して静電潜像が形成され、その後帯電電荷と同極性を持った微細なトナー粒子を露光部である電荷の消失した部位に付着させることにより行われる。電子写真方式では、現像電極と呼ばれる導電性部材を静電潜像面と対向して設置し、この電極に同極性のバイアス電圧を印加することにより、トナー粒子の露光部への付着が促進され、高画質なトナー画像が得られる。この後トナー画像の熱定着処理を行えば、被現像体両面にレジスト画像を形成することが可能である(例えば、特許文献1、2参照)。
【0012】
また、フォトメモリー性感光物質を用いたプリント配線板の作製方法は、金属導電層上に電子写真感光層を設けた回路形成用基板上に所定のパターンの露光処理を施すことにより、該電子写真感光層に露光パターンに応じた帯電特性の差を誘起させておき、次いでフォトメモリー性感光層表面を全面帯電処理を施せば露光パターンに応じた静電潜像が形成されるから、上記光導電物質を用いた場合と同様にフォトメモリー性感光物質による電子写真感光層上にレジスト画像を形成することが可能である(例えば、特許文献3参照)。
【0013】
【特許文献1】
特開昭52−2437号公報
【特許文献2】
特開平6−224541号公報
【特許文献3】
特開2002−158422号公報
【非特許文献1】
「プリント回路技術便覧 第2版」、プリント回路学会、1993年2月、96〜99頁
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、貫通孔または/及び非貫通孔を有するプリント配線板を作製するに際して、露光時の位置ズレ等に対する許容範囲が大きいだけでなく、配線密度を容易に向上するランドレスの孔を簡便且つ確実に形成可能で、且つ良好な画像再現性を実現する電子写真組成物及び電子写真ドライフィルム並びにそれを用いた電子写真方式によるプリント配線板の作製方法を提供する。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記従来技術の問題点を解決するために鋭意研究を重ねた結果、少なくともヘテロ環状メルカプタン化合物を含む電子写真組成物から成る被膜が所望の特性を発現し、加えて第2の樹脂成分を添加した場合にさらなる優位性が発現することを見出し本発明を成すに至った。これにより基材との密着力を自由に制御することが可能となるため、孔の部位のみ電子写真感光層が除去された状態を形成することが可能となる。従って、基材表面の孔のエッジ近傍まで電子写真感光層が均一な厚みで形成され、且つ孔内壁へのエッチングレジスト不良の原因を除去することが可能となり、少なくとも配線パターンが孔に通じていれば良いという条件の下でランドレスの孔を確実に形成することが可能となる。即ち、本発明は以下のものを提供する。
【0016】
1)少なくとも電子写真用感光物質と、アルカリ可溶性樹脂と、ヘテロ環状メルカプタン化合物とを含むことを特徴とする電子写真組成物である。
【0017】
2)さらに第2の樹脂成分を添加して成る1)記載の電子写真組成物である。
【0018】
3)上記第2の樹脂成分が熱可塑性のアクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ウレタン樹脂、及びウレタン尿素樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂であることを特徴とする2)記載の電子写真組成物である。
【0019】
4)上記ヘテロ環状メルカプタン化合物が下記一般式で表される化合物のうち少なくとも一種を含むことを特徴とする1)から3)のいずれかに記載の電子写真組成物である。
【0020】
【化2】
【0021】
ただし、式中X及びYを含む環状部分は5または6原子を有するヘテロ環を形成しており、Xは1個の芳香環の一部を形成している2個または3個の炭素原子、あるいは単結合もしくは二重結合によって結合されている2個の炭素原子、あるいは単結合もしくは二重結合によって結合されている2個の窒素原子、あるいは単結合もしくは二重結合によって結合されている1個の炭素原子と1個の窒素原子から成る主鎖を有し、Yは酸素原子、硫黄原子、炭素原子、または窒素原子を表し、X及びYは、それぞれ独立してアルキル、アラルキル、アリール、アルケニル、アミノ、ヒドロキシル、アルキルアミノ、アシドアミド、またはスルホンアミド基で置換されていても良い。
【0022】
5)キャリアフィルム上に、1)から4)のいずれかに記載の電子写真組成物から成る電子写真感光層を有することを特徴とする電子写真ドライフィルムである。
【0023】
6)電子写真組成物から成る電子写真感光層の厚みが3〜15μmであることを特徴とする5)記載の電子写真ドライフィルムである。
【0024】
7)貫通孔または/及び非貫通孔を有する基板表面に金属めっき処理により金属導電層を設けた回路形成用基板の両面に対し、5)または6)記載の電子写真ドライフィルムのキャリアフィルムの反対面側をラミネートした後、電子写真感光層の帯電処理の前までに、キャリアフィルムと貫通孔または/及び非貫通孔の開口部の電子写真感光層とを除去し、該開口部を除く回路形成用基板の両面に電子写真感光層を形成することを特徴とする電子写真方式によるプリント配線板の作製方法である。
【0025】
8)キャリアフィルムと貫通孔または/及び非貫通孔の開口部の電子写真感光層とを除去し、該開口部を除く回路形成用基板の両面に電子写真感光層を形成するに際し、電子写真感光層のガラス転移温度よりも10℃以上高い温度に於いてキャリアフィルムを剥離することを特徴とする7)記載の電子写真方式によるプリント配線板の作製方法である。
【0026】
すなわち、電子写真感光層のガラス転移温度よりも10℃以上高い温度に於いてキャリアフィルムを剥離することにより、各基材間の密着力を制御することも可能となり、より安定して孔の開口部を除く回路形成用基板の両面に電子写真感光層を形成することが可能となる。なお、電子写真感光層のガラス転移温度とは、より詳しくは電子写真組成物のガラス転移温度であり、該電子写真組成物(混合物)を示差走査熱量計で測定して得られた値とする。
【0027】
9)キャリアフィルムと貫通孔または/及び非貫通孔の開口部の電子写真感光層とを除去し、該開口部を除く回路形成用基板の両面に電子写真感光層を形成した後、電子写真感光層のガラス転移温度より40℃以上高い温度になるように電子写真感光層へ加熱処理を施すことを特徴とする7)または8)記載の電子写真方式によるプリント配線板の作製方法である。
【0028】
すなわち、孔の開口部を除く回路形成用基板の両面に電子写真感光層を形成した後、電子写真感光層のガラス転移温度より40℃以上高い温度になるように電子写真感光層へ加熱処理を施すことにより、該孔の開口部よりも内側に若干でも電子写真感光層が残存した場合に孔内壁側へ残存した電子写真感光層を垂れさせることが可能となるので、万が一にも残存した電子写真感光層の破片が工程を汚染するようなことも無く、安定して孔内部のエッチングレジストを形成することが可能となる。
【0029】
よって、本発明の電子写真組成物から成る電子写真ドライフィルムを用いた電子写真方式によるプリント配線板の作製方法によれば、回路形成用基板への電子写真感光層の形成は、液状材料を塗布するのではなく、基本的にドライフィルムの形態を有する材料をラミネートしてなされるので、孔からの液だれに配慮する必要がなくなるばかりでなく、ラミネート後から帯電の略直前までの期間にキャリアフィルムを剥離除去することにより、回路形成用基板面に接着していない孔の開口部にあたる電子写真感光層をキャリアフィルムと一緒に除去し、該回路形成用基板の孔内壁を除く両面のみに電子写真感光層が形成されるので、液状材料の塗布の場合に見られたような不用意な孔開口部への電子写真感光層による膜形成がなくなる。したがって、液だれに起因する孔周辺での画像欠陥や、孔内壁のレジスト不良による欠陥を確実になくすことが可能となり、すなわち、孔へのレジスト形成を簡易かつ確実に達成し、かつ画像再現性が良好となる。
【0030】
さらには、本発明に於いては、一般的なフォトポリマーを用いたドライフィルムのように孔のテンティングを行わず、電子写真方式によるトナー膜により孔の内壁を保護することが可能であるため、露光時点でのパターン形成の位置ズレ等が発生した場合に於いても、完全に孔からパターンが外れない限りに於いて孔の断線欠陥を引き起こすことがなくなり、かつ前述のようにフォトポリマーを用いたドライフィルムに比較して感光層を薄くすることが可能となるため、これらの観点からも本発明の課題を優位に解決することが可能となる。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の電子写真組成物及び電子写真ドライフィルム並びにそれを用いた電子写真方式によるプリント配線板の作製方法について詳細に説明する。
【0032】
まず、本発明の電子写真組成物に含まれる各成分について詳細に説明する。本発明の電子写真組成物は、電子写真用感光物質と、アルカリ可溶性樹脂と、ヘテロ環状メルカプタン化合物と、必要に応じて第2の樹脂成分とを含む。本発明に係わる電子写真感光物質は、前述のように光導電物質を用いるものとフォトメモリー性感光物質を用いるものが挙げられる。
【0033】
光導電物質としては、公知の有機または無機の光導電性化合物を使用できる。有機光導電性化合物としては、無金属或いは金属(酸化物)フタロシアニン及びナフタロシアニン、及びその誘導体等が挙げられる。無機光導電性化合物としては、酸化亜鉛、酸化チタン、及び硫化カドミウム等が挙げられる。これらの光導電性化合物は単独または2種類以上混合して用いても良い。
【0034】
また、フォトメモリー性感光物質としては、ポリビニルカルバゾール/o−ニトロベンゼン/トリクロロ酢酸の混合物、ポリビニルカルバゾール・トリニトロフルオレノン−ジアゾニウム塩系、ポリビニルカルバゾール・ジアルキルアミノ置換色素系、テトラシアノ−p−キノジメタン・銅錯体等が挙げられる。本発明に係わる不可逆性のフォトメモリー性を有する感光体としては、ここで挙げた化合物や混合物に限定されず、フォトメモリーの性質を有する化合物であれば適用できる。例えば、特開2002−158422号公報に記載されている化合物も適用可能である。
【0035】
上記電子写真感光物質の全固形分に対する混合比は、所望する電子写真感光物質の電子写真特性によって異なるが、所望する帯電電位が安定的に得られる電子写真組成物から成る電子写真感光層の最低塗布量に於いて、所望する光感度が得られる最低量の電子写真感光物質の混合比が適当であり、具体的には全固形分に対して1〜50重量%程度であり、さらには5〜25重量%程度が好適である。
【0036】
本発明の電子写真組成物に含まれるアルカリ可溶性樹脂は、帯電性能を満足し、アルカリ可溶性を有するものが好ましい。また、金属導電層をエッチングする際に使用するエッチング液に対して耐性を有する必要もある。その具体例としては、スチレン/マレイン酸モノエステル共重合体、メタクリル酸/メタクリル酸エステル共重合体、スチレン/メタクリル酸/メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸/メタクリル酸エステル共重合体、スチレン/アクリル酸/メタクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸共重合体、及び酢酸ビニル/クロトン酸/メタクリル酸エステル共重合体と、スチレン、(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル、及び安息香酸ビニル単量体等と(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸等、もしくは無水マレイン酸及びフマル酸のモノエステル等のカルボキシル基含有単量体との共重合体、フェノール樹脂等が挙げられる。これらのアルカリ可溶性樹脂はアルカリ可溶性及び膜強度等を制御するために種々のビニル重合性単量体を共重合させたものでも良い。また、2種以上のアルカリ可溶樹脂を混合して用いても良い。
【0037】
さらに、本発明に係わるヘテロ環状メルカプタン化合物は、下記一般式で示される。該一般式に於いて、X及びYを含む環状部分は5または6原子を有するヘテロ環を形成しており、Xはベンゼンまたはナフタレンを構成する2個または3個の炭素原子、あるいは、Yを含めて記述すると、−N=N−Y−、−NR−NR−Y−、−NR−N=Y−、−N=CR−Y−、−NR−CR=Y−が挙げられ、Rはそれぞれ独立に水素、メチル、エチル、プロピル、n−ブチル、t−ブチル、フェニル、フェノキシ、フェノキシメチル、フェノキシエチル、ヒドロキシル、アミノ、ビニル基である。また、Yは酸素原子、硫黄原子、炭素原子、または窒素原子を表し、このうち炭素原子及び窒素原子に関しては、水素、メチル、エチル、プロピル、n−ブチル、t−ブチル、フェニル、フェノキシ、フェノキシメチル、フェノキシエチル、ヒドロキシル、アミノ、ビニル、フェニルスルホンアミド、フェニルカルボキシアミド基のいずれかの置換基を有しても良い。
【0038】
【化3】
【0039】
前記一般式で表されるヘテロ環状メルカプタン化合物の具体例としては以下に挙げるものを好適に用いることができる。すなわち、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、6−エトキシ−2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトイミダゾリン、2−メルカプトチアゾリン、2−メルカプト−1−メチルイミダゾール、2−メルカプトピリジン、2−メルカプトキノリン、1,2−ナフチル(2−メルカプト)オキサゾール、2−メルカプトニコチン酸、2−メルカプト−3−ピリジノール、2−メルカプトピリミジン、2−メルカプト−4−メチルピリミジン、4,6−ジメチル−2−メルカプトピリミジン、4−ヒドロキシ−2−メルカプト−6−メチルピリミジン、4−ヒドロキシ−2−メルカプト−6−プロピルピリミジン、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−フェニル−4−アミノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−メチル−4−エチル−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3,4−ジアミノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3,4−ジフェニル−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−メチル−4−アリル−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−メチル−4−フェニルスルホンアミド−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−フェニル−4−フェニルスルホンアミド−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−フェニル−4−フェニルカルボキシアミド−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプト−5−チアゾリドン、1−フェニル−1H−テトラゾール−5−チオール、1−カルボキシメチル−5−メルカプトテトラゾール、6−メルカプトプリン等が挙げられ、上記化合物は置換基等の種類による一例であり本発明に於いてはこれらに限定されるものではない。また、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いても良い。なお、これらの化合物の混合比は、他の成分の混合比にもよるが、全固形分の0.3〜10重量%が適当である。
【0040】
また、本発明の電子写真組成物に含まれる第2の樹脂成分としては、必要量を添加した際に、電子写真感光層の電子写真特性、アルカリ可溶性、及び金属導電層をエッチングする際に使用するエッチング液に対する耐性を極度に低下させることが無く、且つ該電子写真組成物に含まれるアルカリ可溶性樹脂との相溶性が良いものが選ばれる。具体的には、熱可塑性のアクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ウレタン樹脂、及びウレタン尿素樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂成分であれば良い。該第2の樹脂成分の混合比に関しては、上述の性能を満たす範囲であれば良いが、具体的には全固形分の3〜35重量%で、より好ましくは5〜15重量%程度が好適である。また、アクリル樹脂を用いる場合には、各種ビニル重合性単量体の線状重合物もしくは共重合物を用いれば良く、カルボキシル基含有のビニル重合性単量体、もしくはヒドロキシル基等の親水性を与えるビニル重合性単量体を適用した共重合体であれば、アルカリ可溶性が低下しにくくなるので好適である。上記ビニル重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−ラウリル、アクリル酸エチル、スチレン、ビニルトルエン、N−ビニルピロリドン、アクリルアミド、アクリロニトリル、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル等が挙げられる。カルボキシル基を含有するビニル重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸、フマル酸、けい皮酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸が挙げられる。
【0041】
さらに、上記第2の樹脂成分としては、粉体もしくは適当な溶剤に溶解した樹脂が塗料用等の用途向けに市販されており、これらを用いても良い。具体的には、日本ポリウレタン工業(株)製「ニッポラン」シリーズ、大日本インキ化学工業(株)製「アクリディック」シリーズ、「バーノック」シリーズ、電気化学工業(株)製「デンカブチラール」シリーズ、積水化学工業(株)製「エスレック」シリーズ等が挙げられ、さらに具体的に示せば、日本ポリウレタン工業(株)製「ニッポラン5109」、「同5110」、「同5111」、「同5120」、大日本インキ化学工業(株)製「アクリディックA−1650」、「同A−166」、「同A−136−55」、「同A−804」、「同A−811」、「同A−823」、「同A−829」、「同A−837」、「同A−832」「同A−430−60」、「同A−345」、「同A−416−70S」、「同A−413−70S」、「同57−773」、「同57−1287」、「同DU−1446−X」、「同A−418」、「同A−433」、「同52−101」、「同52−666」、「同52−614」、「バーノック12−406」、「同16−416」、「同16−411」、「同DF−407」、「同18−472」、電気化学工業(株)製「デンカブチラール#2000−L」、「同3000−1」、「同3000−2」、「同3000−4」、「同3000−K」、「同4000−1」、「同4000−2」、積水化学工業(株)製「エスレックBL−1」、「同BL−1H」、「同BL−2」、「同BL−2H」、「同BL−2」、「同BL−5」、「同BL−10」、「同BL−S」、「同BL−SH」、「同BX−L」、「同BX−1」、「同BX−3」、「同BX−5」、「同BM−1」、「同BL−2」、「同BM−5」、「同BM−S」、「同BM−SH」、「同BH−3」、「同BH−6」、「同BH−A」、「同BH−S」が挙げられる。
【0042】
上記の本発明の電子写真組成物を構成する各物質は、適当な溶剤に溶解せしめて使用する。従って、使用する溶剤は構成する各組成物を均一に溶解もしくは分散できるものであれば良く、具体的には、メタノール、エタノール、及び1−プロパノール等のアルコール類、THF、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、1,2−ジメトキシエタン、エチレングリコールモノメチルエーテル、及び1−メトキシ−2−プロパノール等のエーテル類、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、及びメチルイソブチルケトン等のケトン類、トルエン、及びキシレン等の芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸メチル、及び酢酸イソブチル等のエステル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、及びN−メチルピロリドン等のアミド類、及びジメチルスルホキシド等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、塗布方法と乾燥条件等によって適当なものを単独または2種以上を選択して使用できる。塗布液の固形分濃度についても、所望する膜厚と塗布方法と乾燥条件等によって適切な濃度を選択できる。
【0043】
本発明の電子写真ドライフィルムに関して説明する。上記電子写真組成物から成る電子写真ドライフィルムは、少なくともキャリアフィルムと電子写真感光層の2層から成っておれば良く、電子写真組成物は上記溶剤に溶解せしめてキャリアフィルム上に塗布及び乾燥して形成し、乾燥後の厚みは2から18μm程度であれば良く、さらには4から12μmが好適である。さらに、場合によっては、保存時の物理的衝撃や組成の経時変化に対する安定性の面から、電子写真感光層をはさんでキャリアフィルムと反対面にポリエチレン等の保護フィルムを設けても良い。
【0044】
キャリアフィルムとしては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート、アラミド、カプトン、ポリメチルペンテン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のフィルムを使用することができる。さらに、電子写真感光層を塗布する面の接着性を制御するため、少なくとも電子写真感光層を形成する側の面にコロナ処理やプライマー処理が施されたフィルムを用いることもある。
【0045】
また、本発明の電子写真ドライフィルムは、基本的には上記の電子写真組成物を少なくとも含んでいれば良いが、回路形成用基板と電子写真感光層の接着力や電子写真特性等の向上のため、必要に応じてドライフィルムのキャリアフィルム上に塗布された電子写真感光層上に、さらにカゼイン、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、フェノール樹脂、スチレン/無水マレイン酸共重合体、マレイン酸/アクリル酸共重合体、アクリル酸/メタクリル酸共重合体、ポリアクリル酸、及びこれら高分子電解質のアルカリ金属塩及び/またはアンモニウム塩、エタノールアミン類及びそれらの塩酸塩、しゅう酸塩、リン酸塩、クエン酸、及び酒石酸等のヒドロキシカルボン酸、及びそれらの塩、グリシン、アラニン、グルタミン酸等のアミノ酸、スルファミン酸等の脂肪族アミノスルホン酸、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、トリエチレンンテトラミン六酢酸等の(ポリ)アミノポリ酢酸、アミノトリ(メチレンホスホン)酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)等の(ポリ)アミノポリ(メチレンホスホン酸)及びその類似物、及びこれら化合物の酸基の少なくとも一部がアルカリ金属塩或いはアンモニウム塩等からなる中間層を設けても良い。中間層にはさらに、酸化チタン、アルミナ、シリカ、ジルコニア、及び酸化アンチモン等のサブミクロン微粒子を併用しても良い。中間層の厚みには特に制限はないが、光導電層の接着性を目的とするのであれば、用いる支持体に関係なく厚くとも5μm以下で良い。また、中間層の電気伝導度が低いと光導電層の電荷の散逸が起こりにくく、光感度が低下してトナー画像の解像度が低下するから、中間層の電気伝導度は10−9S/cm以上が好ましい。もちろん、上記保護フィルムを設ける場合は中間層の上に設けるものである。
【0046】
本発明の電子写真ドライフィルムの作製は、上記のキャリアフィルム上に、カーテンコート法、バーコート法、スプレーコート法、ロールコート法、スピナーコート法等の公知の塗布方法により、本発明の電子写真組成物から成る塗布液の塗布を行い、所望の厚みの電子写真感光層を得ることによって行われる。さらに、必要に応じて中間層の塗布及び保護フィルム層の積層を行う。また、塗布液には必要に応じて、本発明の電子写真組成物の他に、電子写真感光層の膜物性、塗布液の粘度等を改良する目的で、増感剤、可塑剤、界面活性剤、染料を添加しても良い。
【0047】
本発明の電子写真組成物から成る電子写真ドライフィルムを用いた電子写真方式によるプリント配線板の作製方法を説明する。図1は、本発明の電子写真方式によるプリント配線板の作製方法の工程概念図である。ここでは、上記した2種類の電子写真感光物質のうち、フォトメモリー性感光物質を用いた場合(露光後帯電処理にて静電潜像を得る場合)を示しており、また、既に金属導電層を貫通孔内に設けた貫通孔を有する回路形成用基板1を対象として説明を進める。まず、図示しないラミネート装置により、孔2を有する回路形成用基板1の両面に本発明に係わる電子写真感光層3及びキャリアフィルム4から成るドライフィルムをラミネートし(図1(a))、次いでマスク5を介して電子写真感光層の両面に対して所定の露光処理を施すことにより、露光パターンに応じた帯電特性の差を誘起させておき(図1(b))、その後キャリアフィルム4を剥離することにより、非貫通孔の開口部を除く回路形成用基板1の両面のみに電子写真感光層3を形成する(図1(c))。続いて、両面に所定の帯電処理を施すことにより、所望の配線パターンに従った静電潜像を得(図1(d))、さらに図示しない電子写真トナー現像装置により静電潜像上及び孔の内壁へトナー膜6を形成することによりトナー画像を得る(図1(e))。その後は一般のサブトラクティブ法と同様の工程で、アルカリ現像工程、エッチング工程、及びレジスト剥離工程を経て孔を有するプリント配線板が作製される。
【0048】
本発明の電子写真方式によるプリント配線板の作製方法によれば、キャリアフィルム剥離工程は、少なくとも帯電工程の略直前までに行われれば良く、上記のフォトメモリー性感光物質を用いた場合に於いては、キャリアフィルム剥離工程(図1(c))を露光工程(図1(b))の前に入れ替えても良い。さらに、電子写真感光物質として光導電物質を用いる場合(帯電後露光処理にて静電潜像を得る場合)には、図1を参考に、ラミネート工程(図1(a))、キャリアフィルム剥離工程(図1(c))、帯電工程(図1(d))、露光工程(図1(b))の順に処理を施し、その後は同様に処理すれば良い。
【0049】
本発明の電子写真方式によるプリント配線板の作製方法に係わる、貫通孔または/及び非貫通孔内を含む基板表面に金属導電層を設けた回路形成用基板は、基本的には、絶縁性基板の両面に金属導電層を設けた積層板、或いは貫通孔または/及び非貫通孔を形成する工程を有する多層プリント配線板製造時の孔形成前の外層板(内層に絶縁層を介して配線パターン層、グランド層等を有する積層板)等に対して、ポンチ、ドリル、またはパルスレーザー等を用いて貫通孔または/及び非貫通孔を形成し、さらに所定のめっき処理を施すことにより、該貫通孔または/及び非貫通孔の内壁に金属導電層を設けることによって得られる。例えば、貫通孔及び非貫通孔による層間接続を行う上記多層プリント配線板に関しては、「JPCA規格、ビルドアップ配線板」(1998年5月、日本プリント回路工業会発刊)に記載されており、一般的なスルーホール、バリードバイアホール、ブラインドバイアホール等、基本的にサブトラクティブ法で適用可能なものに対応することが可能である。
【0050】
上記の絶縁性基板の両面に金属導電層を設けた積層板としては、例えば「プリント回路技術便覧−第二版−」((社)プリント回路学会編、日刊工業新聞社発刊)に記載されているものを使用することができる。絶縁性基板としては、紙基材またはガラス基材にエポキシ樹脂またはフェノール樹脂等を含浸させたもの、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム等が挙げられる。導電層の材料としては、例えば、銅、銀、アルミ等が挙げられる。
【0051】
本発明の電子写真方式によるプリント配線板の作製方法に係わる金属めっき処理の方法としては、例えば、めっき導電層が銅の場合には、「表面実装技術」(1993年6月号、日刊工業新聞社発刊)等記載の無電解めっき工程、無電解めっき−電解めっき工程、直接電解めっき工程等を適用することができる。
【0052】
本発明の電子写真方式によるプリント配線板の作製方法に係わる、電子写真ドライフィルムのラミネート方法は、基本的には、一般的なフォトポリマーから成るドライフィルムをラミネートするために広く使用されているラミネート装置を適用することが可能であり、少なくとも電子写真ドライフィルムを基材上に加熱及び圧着できれば良く、両面同時にラミネート可能なものが生産性等の点から好ましい。具体的には、ロールラミネータ、及び真空ラミネータを使用することが可能である。また、作製工程によっては、ラミネート後にキャリアフィルムを剥離する手段と同時に基材を加熱する手段を設けても良い。
【0053】
なお、本発明に於ける、電子写真感光層及びキャリアフィルムの少なくとも2層から成るドライフィルムのキャリアフィルムの反対面側とは、上記で説明した電子写真感光層からなるドライフィルムの構成に対して、中間層を有さない場合には電子写真感光層面側であり、電子写真感光層と中間層を有する場合には中間層面側である。
【0054】
本発明の電子写真方式によるプリント配線板の作製方法における画像パターン露光方法としては、キセノンランプ、タングステンランプ、蛍光灯を光源とした反射画像露光、フィルムマスクを用いた片面、両面密着露光、マスクを通した直接投影露光、またはレーザ光、発光ダイオード等による走査露光が挙げられる。走査露光を行う場合には、He−Neレーザー、He−Cdレーザー、アルゴンレーザー、クリプトンイオンレーザー、ルビーレーザー、YAGレーザー、窒素レーザー、色素レーザー、エキシマレーザー等のレーザー光源を発光波長に応じてSHG波長変換して走査露光する、あるいは液晶シャッター、マイクロミラーアレイシャッターを利用して露光することも可能である。
【0055】
また、本発明に係わる帯電方法としては、従来からコロトロン方式及びスコロトロン方式等の非接触帯電方法、また導電ロール帯電等の接触帯電方法が知られており、本発明に係わる電子写真感光層が一様に帯電できれば何れの方式を採用しても良い。上記の露光方法と組み合わせて、電子写真感光層上に静電潜像が形成される。
【0056】
本発明における電子写真法によるトナー画像形成方法としては、乾式現像法(カスケード現像、磁気ブラシ現像、パウダークラウド現像)や、トナー粒子を適当な絶縁性液体中に分散させた液体トナーによる現像法を用いることができる。これらのうち、液体現像法は乾式現像法に比してトナー粒子を安定に小粒径にできるため、より微細なトナー画像を形成できるので、本発明に於いては液体現像法を用いることが好ましい。
【0057】
具体的には本発明に係わる液体現像装置としては、基本的な構成としては以下の様な方式の装置を用いることができる。従来より用いられている静電潜像形成面を上下方向に向けて略水平に搬送し、その上面または下面から片面に液体トナーを供給する片面横現像、特開平2−91649号公報等に記載の様な基板を立てて略鉛直に搬送し、その片面にトナー供給する片面縦現像、特開平6−224541号公報等に記載の様な基板を寝かせて略水平に搬送し、その上下両側から基板両面にトナー供給する両面横現像、特開平10−142949号に記載の様に基板を立てて略鉛直に搬送し、その両面にトナー供給する両面縦現像等の方式が挙げられ、トナー画像形成方法の基本的な部分は、これらに挙げられる電子写真現像法による液体現像方法に従う。
【0058】
本発明で用いられる液体トナーは後工程である回路部の電子写真感光層の溶出除去に対してレジスト性を有するものでなければならない。このためにトナー粒子の成分としては、例えばメタクリル酸、メタクリル酸エステル等からなるアクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニルとエチレンまたは塩化ビニル等との共重合体、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルブチラールの様なビニルアセタール樹脂、ポリスチレン、スチレンとブタジエン、メタクリル酸エステル等との共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン及びその塩化物、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンイソフタレート等のポリエステル樹脂、ポリカプラミドやポリヘキサメチレンアジポアミド等のポリアミド樹脂、ビニル変性アルキッド樹脂、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース等のセルロースエステル誘導体、その他ワックス等を含有することは好ましい。また、トナーには現像あるいは定着等に悪影響を及ぼさない範囲で、色素や電荷制御剤を含有させることもできる。さらにトナーの荷電は、電子写真感光層へのコロナ帯電時の帯電極性に応じて正、負を使い分ける必要がある。
【0059】
トナー現像法としては、静電潜像と同極性を有するトナーを用いて適当なバイアス電圧の印加の下で露光部を現像する反転現像を用いる。これにより帯電されることのない孔の内壁へもトナー膜形成が可能となり、本発明の目的である孔の一括レジストが実現される。形成されたトナー画像は、例えば加熱定着、圧力定着、溶剤定着等の方法により定着し、付着されたトナー粒子を成膜する。この様にして形成したトナー画像をレジストとして、トナー画像部以外の電子写真感光層を溶出液により除去して、導電性基板上に電子写真感光層とトナー画像とからなるレジスト画像を形成する。
【0060】
トナー画像部以外の電子写真感光層を溶出除去するための方法としては、基本的には溶出液を使用した一般的にフォトポリマードライフィルム等に用いられるのと同様のシャワー溶出処理機等を使用することができる。本発明で用いられる溶出液は塩基性化合物を含有する。塩基性化合物としては、例えばケイ酸アルカリ金属塩、アルカリ金属水酸化物、リン酸及び炭酸アルカリ金属塩、リン酸及び炭酸アンモニウム塩等の無機塩基性化合物、エタノールアミン類、エチレンジアミン、プロパンジアミン類、トリエチレンテトラミン、モルホリン等の有機塩基性化合物等を用いることができる。上記塩基性化合物は単独または混合物として使用できる。また、溶出液の溶剤としては水を用いることが好ましい。
【0061】
本発明の電子写真方式によるプリント配線板の作製方法では、レジスト画像部以外の露出した金属導電層をエッチングにより除去する。エッチング工程では、「プリント回路技術便覧」(社団法人日本プリント回路工業会編、1997年刊行、日刊工業新聞社発行)記載の方法等を使用することができる。エッチンング液は金属導電層を溶解除去できるもので、また電子写真感光層及びトナーが耐性を有しているものであれば良い。一般に金属導電層に銅層を使用する場合には塩化第二鉄水溶液、塩化第二銅水溶液等を使用することができる。
【0062】
また、本発明の電子写真方式によるプリント配線板の作製方法に於いては、一般のフォトポリマードライフィルムフォトレジスト等を利用したプリント配線板作製時と同様に、レジスト画像はエッチング工程後、非回路部の溶出除去で使用した溶出液よりもさらにアルカリ性の強い溶液で処理することにより除去することができる。また、必要に応じてメチルエチルケトン、ジオキサン、メタノール、エタノール、プロパノール等の電子写真感光層の結着樹脂を溶解する有機溶剤を併用することもできる。
【0063】
【実施例】
以下で、実施例により、さらに詳細に本発明の効果を説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。なお、実施例中の「部」及び「%」はそれぞれ「重量部」及び「重量%」を示す。
【0064】
貫通孔を有する回路形成用基板の準備
ガラス基材エポキシ樹脂板の両面に銅箔を張り合わせた両面銅張積層板(三菱ガス化学(株)製、200×300×0.8mm、銅厚18μm)に、0.2mmφ及び0.5mmφの貫通孔を100個ずつ開けた後、無電解銅めっき−電解銅めっき処理(奥野製薬(株)、OPCプロセスM)を施し、貫通孔内部を含む積層板表面に厚さ15μmの銅めっき層を設け、貫通孔を有する回路形成用基板を得た。なお、本実施例では非貫通孔は扱わないが、非貫通孔に関しても貫通孔と同様のプロセスで処理可能である。
【0065】
電子写真感光物質
また、本実施例で用いた本発明の電子写真組成物に係わる電子写真感光物質としては、全ての実施例及び比較例に於いて下記式で示される化合物(以下、CTと記述)を適用した。
【0066】
【化4】
【0067】
アルカリ可溶性樹脂
また、本実施例で用いた本発明の電子写真組成物に係わるアルカリ可溶性樹脂としては、全ての実施例及び比較例に於いて、アクリル酸−2−エチルヘキシル55部、メタクリル酸−フェノキシエチル20部、及びメタクリル酸25部から成る分子量3万の共重合樹脂(以下、P1と記述)を適用した。
【0068】
ヘテロ環状メルカプタン化合物
また、本発明の電子写真組成物に係わるヘテロ環状メルカプタン化合物としては、各実施例及び比較例に於いて、下記の表1に示すものを適用した。なお、ヘテロ環状メルカプタン化合物H1は3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、同H2は3−フェニル−4−フェニルカルボキシアミド−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾールである。
【0069】
第2の樹脂成分
さらに、同様に、第2の樹脂成分P21としてポリビニルアセタール樹脂(積水化学工業(株)製、エスレックBL−1)、同P22としてウレタン尿素樹脂(大日本インキ化学工業(株)製、バーノック16−416)、同P23としてアクリル樹脂(大日本インキ化学工業(株)製、アクリディック57−773)を本実施例にて使用した。
【0070】
電子写真組成物の処方
下記の表1に各実施例及び比較例に適用した電子写真組成物の処方を示す。なお、溶剤には酢酸エチルを用いており、溶剤以外の表中の数字は固形分の重量部である。
【0071】
【表1】
【0072】
実施例1
上記表1の処方に基づいたフォトメモリー性感光物質による電子写真組成物から成る塗液を調液した。両面ともに何も処理していない一般的なドライフィルム用ポリエチレンテレフタラートフィルム(厚み16μm、三菱化学ポリエステルフィルム(株)製、R310)の片面に、ロールコート法を用いて、乾燥後の電子写真感光層の厚みが7μmとなるように塗布し、本発明の電子写真ドライフィルムを得た。なお、示差走査熱分析装置を用いて電子写真組成物のガラス転移温度を測定したところ42℃であった。
【0073】
次いで、弾性熱ロール対及び金属熱ロール対の順に配置されたロールラミネータを用いて、上記回路形成用基板の両面に電子写真ドライフィルムをラミネートした。この際熱ロールの温度は、前段150℃、後段130℃として処理した。
【0074】
キャリアフィルムを剥離しない状態で、電子写真感光層上にランドレススルーホールを形成可能な画像パターンを描画した露光マスクを乗せ、吸引密着機構を有する焼付用高圧水銀灯光源装置;ユニレックURM300(ウシオ電機(株)製)を用いて30秒間紫外線露光を行った。さらに、基板を反転し、非露光面を同様にして、30秒間露光を行い、両面のフォトメモリー性感光層上に帯電特性の差を誘起させた。
【0075】
その後、何も加熱しない弾性ロールを通しながら、キャリアフィルムを均一な速度で剥離した。この際、孔の剥離形状を観察したところ、回路形成用基板の孔開口部のエッジに沿って、良好に孔開口部の電子写真感光層が除去されていた。
【0076】
次いで、電子写真感光層をコロナ帯電機(帯電印加電圧;+5.0kV)を用いて両面に電荷を与えた後、コロナ帯電終了より20秒後の紫外線露光部と未露光部の表面電位を測定したところ、露光部は+30V、未露光部は+230Vであり、静電潜像が形成できていることが確認された。さらに、静電潜像を三菱OPCプリンティングシステム用正電荷トナー(三菱製紙(株)製、「ODP−TW」)を用いて、バイアス電圧+150Vを印加して反転現像を行い、トナー画像を得た。70℃で10分間加熱してトナー画像を定着させ、良好なレジスト画像を得た。
【0077】
トナー画像部以外の電子写真感光層を35℃1%炭酸ナトリウム水溶液を用いて溶出除去することにより、トナー画像及び電子写真感光層からなるレジスト画像を形成した。さらに、残存するトナー画像と電子写真感光層をエッチングレジストとして、積層板に45℃に加熱された塩化第二鉄溶液(サンハヤト製、H20L)をスプレー圧2.5kg/cm2で2分間スプレーすることにより銅層をエッチング除去した。その後、3%水酸化ナトリウム水溶液でエッチングレジストを除去して、所望の孔を有するプリント配線板を作製した。該プリント配線板を詳細に観察したところ、孔開口部周辺表面に短絡欠陥が見られることもなく、全ての孔に於いて断線の無いランドレススルーホールが形成されたばかりでなく、孔内壁の断面観察に於いてもクワレ等のエッチングレジスト不良は観察されなかった。
【0078】
実施例2
実施例1に於いて、ドライフィルムのラミネート工程後、露光工程の略直前にキャリアフィルム剥離工程を実施した(露光工程とキャリアフィルム剥離工程を入れ替えた)以外は実施例1と同様にして、プリント配線板の作製を試みた。
【0079】
その結果、キャリアフィルムの剥離工程後に於いて、回路形成用基板の孔開口部のエッジに沿って、良好に孔開口部の電子写真感光層が除去されていた。つまり、露光するか否かに関わらず孔開口部の電子写真感光層を除去することが可能な電子写真ドライフィルムを提供することができた。さらに、出来上がった孔を有するプリント配線板を詳細に観察したところ、実施例1と同様に、孔開口部周辺表面に短絡欠陥が見られることもなく、全ての孔に於いて断線の無いランドレススルーホールが得られたばかりでなく、孔内壁の断面観察に於いてもクワレ等のエッチングレジスト不良は観察されなかった。
【0080】
実施例3
上記の表1の処方に基づいた、実施例1及び2とは異なるヘテロ環状メルカプタン化合物と第2の樹脂成分を用いた電子写真組成物を用いたことを除いては、実施例2と同様にしてプリント配線板の作製を試みた。なお、示差走査熱分析装置を用いて電子写真組成物のガラス転移温度を測定したところ40℃であった。
【0081】
その結果、キャリアフィルムの剥離工程後に於いて、回路形成用基板の孔開口部のエッジに沿って、良好に孔開口部の電子写真感光層が除去されていた。さらに、出来上がった孔を有するプリント配線板を詳細に観察したところ、実施例1及び2と同様に、孔開口部周辺表面に短絡欠陥が見られることもなく、全ての孔に於いて断線の無いランドレススルーホールが得られたばかりでなく、孔内壁の断面観察に於いてもクワレ等のエッチングレジスト不良は観察されなかった。
【0082】
実施例4
上記の表1の処方に基づいた、実施例1及び2で用いた電子写真組成物と比較して第2の樹脂成分を添加しない電子写真組成物を適用し、さらに、キャリアフィルムとして片面にコロナ処理を施したポリエチレンテレフタラートフィルム(厚み16μm、三菱化学ポリエステルフィルム(株)製、H500)を適用したことを除いては、実施例2と同様にしてプリント配線板の作製を試みた。
【0083】
その結果、キャリアフィルムの剥離工程後に於いて、孔開口部近傍の電子写真感光層に関しては、0.2mmφの貫通孔では孔開口部のエッジから内側へ、最大で25μm残存した部位が見られたが、0.5mmφの貫通孔では孔開口部のエッジに沿って良好に電子写真感光層が除去されていた。さらに、出来上がった孔を有するプリント配線板を詳細に観察したところ、実施例1から3と同様に、孔開口部周辺表面に短絡欠陥が見られることもなく、0.2mmφの孔を含めた全ての孔に於いて断線の無いランドレススルーホールが得られたばかりでなく、孔内壁の断面観察に於いてもクワレ等のエッチングレジスト不良は観察されなかった。
【0084】
実施例5
上記の表1の処方に基づいた、第2の樹脂成分をP23とした電子写真組成物と、実施例1から3と同様のキャリアフィルムを適用して電子写真ドライフィルムを形成した。なお、示差走査熱分析装置を用いて電子写真組成物のガラス転移温度を測定したところ40℃であった。その後の工程に関しては、キャリアフィルムの剥離工程に於いて、60℃に設定された弾性熱ロールを通しながら、キャリアフィルムを均一な速度で剥離したことを除いては、実施例2と同様にしてプリント配線板の作製を試みた。
【0085】
その結果、キャリアフィルムの剥離工程後に於いて、回路形成用基板の全ての孔に於いて、孔開口部のエッジに沿って良好に孔開口部の電子写真感光層が除去されていた。さらに、出来上がった孔を有するプリント配線板を詳細に観察したところ、実施例2と同様に、孔開口部周辺表面に短絡欠陥が見られることもなく、全ての孔に於いて断線の無いランドレススルーホールが得られたばかりでなく、孔内壁の断面観察に於いてもクワレ等のエッチングレジスト不良は観察されなかった。
【0086】
実施例6
上記の表1に示したように、実施例5と同様の電子写真組成物を適用し、電子写真ドライフィルムの構成に関しても実施例5と同様とした。その後の工程に関しては、加熱を行わずにキャリアフィルムを剥離した後、熱風装置より電子写真感光層表面の温度が100℃となるように両面に加熱処理を施したことを除いては、実施例2と同様にしてプリント配線板の作製を試みた。
【0087】
その結果、キャリアフィルムの剥離工程直後に於いて、孔開口部近傍の電子写真感光層に関しては、0.2mmφの貫通孔では孔開口部のエッジから内側へ、最大で20μm残存した部位が見られたが、0.5mmφの貫通孔では孔開口部のエッジに沿って良好に電子写真感光層が除去されていた。さらに、キャリアフィルムの剥離工程後に100℃熱風処理を施したところ、0.2mmφの貫通孔に見られた電子写真感光層の残存部は孔内壁側へ垂れて密着していることが確認された。さらに、出来上がった孔を有するプリント配線板を詳細に観察したところ、実施例2と同様に、孔開口部周辺表面に短絡欠陥が見られることもなく、0.2mmφの孔を含めた全ての孔に於いて断線の無いランドレススルーホールが得られたばかりでなく、孔内壁の断面観察に於いてもクワレ等のエッチングレジスト不良は観察されなかった。また、本実施例6の結果から、実施例5に於いては、キャリアフィルム剥離時の加熱により、0.2mmφの貫通孔であっても、安定して良好に孔開口部の電子写真感光層を除去することができていたことも確認できた。
【0088】
比較例1
上記の表1の処方に基づいた、ヘテロ環状メルカプタン化合物及び第2の樹脂成分の両方とも添加しない、本発明の範疇にない電子写真組成物を用いたことを除いては、実施例2と同様にしてプリント配線板の作製を試みた。
【0089】
その結果、キャリアフィルムの剥離工程後に於いて、孔開口部の観察を行ったところ、0.5mmφの孔であっても、大部分の孔開口部に於いて全く電子写真感光層が除去されずに残っており、一部の孔開口部に於いて電子写真感光層が除去されたのみであった。さらに、出来上がった孔を有するプリント配線板を詳細に観察したところ、孔開口部周辺表面に短絡欠陥が見られることは無かったが、大部分の孔に於いて孔内壁の金属導電層に断線が発生していた。
【0090】
比較例2
上記の表1の処方に基づいた、ヘテロ環状メルカプタン化合物を添加しない、本発明の範疇にない電子写真組成物を用いたことを除いては、実施例2と同様にしてプリント配線板の作製を試みた。
【0091】
その結果、キャリアフィルムの剥離工程後に於いて、孔開口部以外の回路形成用基板表面の電子写真感光層まで大部分の電子写真感光層がキャリアフィルムと一緒に剥離されてしまっていた。したがって、この時点で電子写真法によるプリント配線板の作製は不可能となった。
【0092】
【発明の効果】
以上説明したごとく、本発明の電子写真組成物及び電子写真ドライフィルム並びにそれを用いた電子写真方式によるプリント配線板の作製方法では、従来のフォトポリマーを用いたドライフィルムによる孔を有するプリント配線板の作製のように、テンティングのためのランドを必用としないため、孔に通ずる配線が孔開口部のエッジに少なくとも接しておれば良く、露光の位置ズレ等の処理不良に対する許容範囲が非常に大きいものとなる。また、露光パターンの設計時に於いてランドを排除したパターンを作製すれば、配線密度を容易に向上するランドレスの孔を簡便且つ確実に形成可能である。さらには、回路形成用基板の孔開口部近傍表面に於けるエッジ部分まで電子写真感光層を確実に形成されるので、細部にわたり良好な画像再現性を実現することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子写真方式によるプリント配線板の作製方法の工程概念図。
【符号の説明】
1 回路形成用基板
2 孔
3 電子写真感光層
4 キャリアフィルム
5 マスク
6 トナーレジスト
Claims (9)
- 少なくとも電子写真用感光物質と、アルカリ可溶性樹脂と、ヘテロ環状メルカプタン化合物とを含むことを特徴とする電子写真組成物。
- さらに第2の樹脂成分を添加して成る請求項1記載の電子写真組成物。
- 上記第2の樹脂成分が熱可塑性のアクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ウレタン樹脂、及びウレタン尿素樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂であることを特徴とする請求項2記載の電子写真組成物。
- 上記ヘテロ環状メルカプタン化合物が下記一般式で表される化合物のうち少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電子写真組成物。
- キャリアフィルム上に、請求項1から4のいずれかに記載の電子写真組成物から成る電子写真感光層を有することを特徴とする電子写真ドライフィルム。
- 電子写真組成物から成る電子写真感光層の厚みが3〜15μmであることを特徴とする請求項5記載の電子写真ドライフィルム。
- 貫通孔または/及び非貫通孔を有する基板表面に金属めっき処理により金属導電層を設けた回路形成用基板の両面に対し、請求項5または6記載の電子写真ドライフィルムのキャリアフィルムの反対面側をラミネートした後、電子写真感光層の帯電処理の前までに、キャリアフィルムと貫通孔または/及び非貫通孔の開口部の電子写真感光層とを除去し、該開口部を除く回路形成用基板の両面に電子写真感光層を形成することを特徴とする電子写真方式によるプリント配線板の作製方法。
- キャリアフィルムと貫通孔または/及び非貫通孔の開口部の電子写真感光層とを除去し、該開口部を除く回路形成用基板の両面に電子写真感光層を形成するに際し、電子写真感光層のガラス転移温度よりも10℃以上高い温度に於いてキャリアフィルムを剥離することを特徴とする請求項7記載の電子写真方式によるプリント配線板の作製方法。
- キャリアフィルムと貫通孔または/及び非貫通孔の開口部の電子写真感光層とを除去し、該開口部を除く回路形成用基板の両面に電子写真感光層を形成した後、電子写真感光層のガラス転移温度より40℃以上高い温度になるように電子写真感光層へ加熱処理を施すことを特徴とする請求項7または8記載の電子写真方式によるプリント配線板の作製方法。
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- 2003-05-21 JP JP2003142788A patent/JP2004347734A/ja active Pending
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