JP2004347663A - 光偏向器 - Google Patents
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Abstract
【課題】出射光の偏向角が一定の波形を描いて増減するように入射光を偏向させる光偏向器に関し、入射光をリニアに偏向できる光偏向器であって、低騒音で高速スキャンでき、しかも低コストの光偏向器を実現する。
【解決手段】傾動中心軸が平行である第1および第2の傾動平面反射鏡11,12で順次反射した後の光が、光偏向器の出射光となる。第2の傾動平面反射鏡12は、出射光に描かせたい一定の偏向波形の基本周波数および近似振幅で往復傾動され、第1の傾動平面反射鏡11は、光偏向器の出射光の偏向角が一定の波形を描いて増減するように補正傾動されるように構成する。
【選択図】 図1
【解決手段】傾動中心軸が平行である第1および第2の傾動平面反射鏡11,12で順次反射した後の光が、光偏向器の出射光となる。第2の傾動平面反射鏡12は、出射光に描かせたい一定の偏向波形の基本周波数および近似振幅で往復傾動され、第1の傾動平面反射鏡11は、光偏向器の出射光の偏向角が一定の波形を描いて増減するように補正傾動されるように構成する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、出射光の偏向角が一定の波形を描いて増減するように入射光を偏向させる光偏向器に関する。
【0002】
【従来の技術】
レーザプリンタ等では、レーザ光を偏向させて書き込みを行っているが、この場合の光偏向手段としては、回転多面鏡(ポリゴンミラー)が広く用いられている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
また、半導体プロセス等で作製される偏向ミラーでは、平面反射鏡の回転中心位置にトーションばねとして機能する可撓性捩じり梁部を形成しておき、これを弾性変形させることで、平面反射鏡を往復傾動している(たとえば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−67377公報(図2)
【特許文献2】
特開2002−131685公報(図1)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
プリンタでは高速印字の要望が高まっており、光偏向器としては高速スキャンの可能なものが要求されている。この要求を受け、回転多面鏡では、その回転シャフトを空気軸受で支持し、回転多面鏡を3万rpm程度の速度で回転させるようにしたものがある。
【0006】
しかし、回転多面鏡の場合、その回転数は限界に近づいており、より速い印字を実現することが難しくなっている。また、回転多面鏡では、高速回転を実現するため空気軸受によって回転シャフトを支持しているので、回転多面鏡を密閉容器内に入れることは可能であっても、真空状態や低圧状態の環境におくことは困難であり、回転鏡の回転による空気擾乱によって発生する騒音を小さくすることはできず、オフィス環境に適合しないという問題もある。さらに、コストが高いという問題もある。
【0007】
特許文献2に記載されたように平面反射鏡を往復傾動させるタイプの光偏向器では、入射光を±30°程度の広い範囲で偏向する必要があり、その角度範囲で、偏向角がリニアに増加および減少を繰り返すこと、すなわち、偏向角が時間の経過につれて三角波状に増減することが要求される。しかし、特許文献2の構成の場合、平面反射鏡の傾動時、偏向角の絶対値が増大するにつれて、言い換えれば、三角波の折り返し点に近づくにつれて、可撓性捩じり梁部の捩じり反力が大きくなるため、この折り返し点位置では、平面反射鏡を純粋に傾動するための回転力が大きく減少することになる(消費電力にも制限があるため、全体の回転力自体を増加させることも難しい)。よって、パワー不足からこの折り返し点位置で偏向角をシャープに折り返させることが難しく、入射光のリニアな偏向が困難であった。
【0008】
本発明はこれらの問題を解決しようとするもので、入射光をリニアに偏向できる光偏向器であって、低騒音で高速スキャンでき、しかも低コストの光偏向器を実現することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、出射光の偏向角(出射角度)が一定の波形を描いて増減するように入射光を偏向させる光偏向器であり、図1の原理図に示すように、傾動可能な複数(図1には、第1および第2の2つを例示)の傾動平面反射鏡11,12を有している。各傾動平面反射鏡11,12は、図1における時計方向および反時計方向に傾動できるように、その傾動中心軸O1,O2が、図1における背面方向に延び、かつ平行に配置されている。傾動平面反射鏡11,12は、図示しない駆動手段により、時計方向および反時計方向に傾動される。具体的には、第2の傾動平面反射鏡12は、上記出射光の偏向角の変化(最終目標)を示す一定の波形H(たとえば、図3の三角波a)の基本周波数foと同一の周波数で、かつ一定の波形Hに近似した振幅の波形(たとえば、図3の正弦波b)を描くように、往復傾動される。傾動平面反射鏡12単体の回転角Δθ2は、正弦波bの振幅の半分である。
【0010】
一方、第1の傾動平面反射鏡11は、最終的な光偏向器の出射光の偏向角が一定の波形Hを描いて増減するように、傾動制御される。たとえば、図3の場合の差分波形cを描くように往復傾動される。ここで、差分波形cは、三角波aから正弦波bを引いたもので、第1の傾動平面反射鏡11単体の回転角Δθ1は、この差分波形cの振幅の半分である。
【0011】
この構成において、光偏向器への入射光は、傾動平面反射鏡11,12に順次入射し(入射の順番は問わない)、最後の反射光が光偏向器の出射光となる。図1では、光偏向器への入射光として第1の傾動平面反射鏡11に入射した光Li1が、そこで反射後、第2の傾動平面反射鏡12に入射する。そして、第2の傾動平面反射鏡12で偏向された反射光Lo2が、光偏向器の出射光となる。
【0012】
図1において、各傾動平面反射鏡11,12が、それぞれΔθ1,Δθ2だけ回転(傾動)したとすると、傾動平面反射鏡11の反射光Lo1は、入射光Li1に対して2×Δθ1だけ偏向され、さらに傾動平面反射鏡12の反射光Lo2は、その入射光Li2(傾動平面反射鏡11の反射光Lo1)に対して2×Δθ2だけ偏向される。
【0013】
このように傾動平面反射鏡11,12を回転させることにより、各反射光は、各回転角Δθ1,Δθ2の2倍だけ偏向されるので、図1の場合にように2個の傾動平面反射鏡11,12を用いた場合、第2の傾動平面反射鏡での反射光は、最初の入射光Li1 を、θ=2×(Δθ1+Δθ2)だけ偏向させたものとなる。そこで、本発明では、このθが、上記出射光の偏向角の変化(最終目標)を示す一定の波形H(たとえば、図3の三角波a)を描くように、傾動平面反射鏡11の回転角Δθ1を、たとえば、図3の差分波形cを描くように駆動する。
【0014】
このように本発明では、第2の傾動平面反射鏡が、一定の波形Hの基本周波数および近似振幅で往復傾動され、第1の傾動平面反射鏡が、光偏向器の出射光の偏向角が上記一定の波形Hを描いて増減するように補正傾動される。その際、第1の傾動平面反射鏡の回転角(振幅)は小さいので、偏向角の微調整(補正)を速やかに行うことができ、その結果、入射光をリニアに偏向できる。
【0015】
また、傾動平面反射鏡は、回転多面鏡の場合と比較して小さいので軽量化でき、高速スキャンが可能になる。さらに、空気軸受等を用いる必要がないため、減圧あるいは真空容器内に可動部品を密閉し、騒音を小さくできると共に、低コスト化も可能になる。
【0016】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明中の第2の傾動平面反射鏡が、可撓性捩じり梁部により回転可能に支持され、該第2の傾動平面反射鏡の捩れ振動系の固有振動数は、上記一定の波形の基本周波数もしくはその近傍の周波数となるように選択されていることを特徴とするものである。
【0017】
このようにすれば、第2の傾動平面反射鏡が共振状態で駆動されることになり、第2の傾動平面反射鏡は、小さな駆動力であっても、大きく傾動し、消費電力を小さくできる。
【0018】
請求項3に係る発明は、請求項1または2記載の発明において、傾動中心軸が平行である第1および第2の傾動平面反射鏡は、同一平板上に板厚方向に傾動可能に形成され、該第1および第2の傾動平面反射鏡には対向平面反射鏡が対向配置され、光偏向器への入射光は、第1および第2の傾動平面反射鏡と対向平面反射鏡との間で往復しながら、第1および第2の傾動平面反射鏡に順次入射することを特徴とするものである。
【0019】
この発明では、第1および第2の傾動平面反射鏡を同一平板上に形成する構造のため、作製が容易であり、低コスト化が可能になる。
【0020】
請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明中の第1の傾動平面反射鏡が、第2の傾動平面反射鏡よりも小さい平面反射鏡で構成され、第2の傾動平面反射鏡よりも高速で傾動できるようになっていることを特徴とするものである。このようにすれば、第1の傾動平面反射鏡の慣性モーメントを減少させ、その傾動速度を上げることができ、偏向角の微調整を一層速やかに行い、入射光を一層リニアに偏向できる。
【0021】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4に係る発明において、第1および第2の傾動平面反射鏡をフォト・リソグラフィー技術を用いて一括製作することにより、小型軽量化および低コスト化を図ったものである。
【0022】
【実施の形態】
(第1の実施の形態例)
図2〜図4を用いて、本発明の第1の実施の形態例を説明する。ここで、図2は本形態例の分解斜視図、図3は傾動平面反射鏡の駆動波形を示す図、図4は本形態例での駆動手段を示す構成図である。これらの図において、図1と対応する部分には同一符号を付している。まず、平板1上には、板厚方向に傾動可能に、矩形状の2つの傾動平面反射鏡11,12が形成されている。傾動平面反射鏡11,12は、上面が反射面11a,12aとなっている。
【0023】
傾動平面反射鏡11の左右の側端中央部には、小幅のヒンジ部(可撓性捩じり梁部)13a,13bが同軸上に位置するように形成されており、このヒンジ部13a,13bが弾性的に捩れることにより傾動中心軸O1として機能し、傾動平面反射鏡11の時計方向および反時計方向の傾動を実現している。同様に、傾動平面反射鏡12の左右の側端中央部にも、小幅のヒンジ部(可撓性捩じり梁部)14a,14bが同軸上に位置するように形成されており、このヒンジ部14a,14bが弾性的に捩れることにより傾動中心軸O2として機能し、傾動平面反射鏡12の時計方向および反時計方向の傾動を実現している。傾動中心軸O1,O2が平行になるように、ヒンジ部13a,13bとヒンジ部14a,14bは形成されている。
【0024】
第1の傾動平面反射鏡11の外形(矩形)は、第2の傾動平面反射鏡12の外形(矩形)よりも小さく選ばれている。その理由は、第1の傾動平面反射鏡11の場合、入射光光束径の許容する限り小さくし、高周波数駆動を可能とするためである。一方、第2の傾動平面反射鏡12は第1の傾動平面反射鏡11で偏向された光を反射するのでその分大きく構成されている。
【0025】
また、第2の傾動平面反射鏡12の捩れ振動系の固有振動数(傾動平面反射鏡12の慣性モーメントとヒンジ部14a,14bのバネ定数から決まる)は、上記出射光の偏向角の変化(最終目標)を示す三角波a(図3参照)の基本周波数foもしくはその近傍の周波数に選ばれている。
【0026】
傾動平面反射鏡11,12は、その下方に設けられた駆動手段3により、時計方向および反時計方向に傾動される。具体的には、第2の傾動平面反射鏡12は、上記出射光の偏向角の変化(最終目標)を示す三角波a(図3参照)の基本周波数foと同一の周波数で、かつ三角波aに近似した振幅の正弦波b(図3参照)を描くように、往復傾動される。第2の傾動平面反射鏡12単体の回転角Δθ2は、正弦波bの振幅の半分である。
【0027】
一方、第1の傾動平面反射鏡11は、最終的な光偏向器の出射光の偏向角が三角波aを描いて増減するように、図3の差分波形cを描くように往復傾動される。ここで、差分波形cは、三角波aから正弦波bを引いたもので、第1の傾動平面反射鏡11単体の回転角Δθ1は、この差分波形cの振幅の半分である。
【0028】
これら傾動平面反射鏡11,12の上面に対向するように、対向平面反射鏡20が設けられている。対向平面反射鏡20の下面は、反射面20aを構成しており、傾動平面反射鏡11,12の反射面11a,12aと対向している。反射面20aが傾動中心軸O1,O2と平行となるように、対向平面反射鏡20は図示しない支持部材に固定されている。
【0029】
駆動手段3としては、電磁駆動方式、静電駆動方式、あるいは圧電素子を用いた駆動方式等が考えられるが、本形態例では、静電駆動方式のものを用いている。すなわち、第1の傾動平面反射鏡11の裏面に、傾動中心軸O1を回動端側から挟むようにして、矩形状の移動電極15a,15bが間隔をおいて形成され、この移動電極15a,15bにそれぞれ対向するように、基板4の凹部平面4a内に、矩形状の固定電極5a,5bが形成されている。同様に、傾動平面反射鏡12の裏面に、傾動中心軸O2を回動端側から挟むようにして、矩形状の移動電極16a,16bが間隔をおいて形成され、この移動電極16a,16bにそれぞれ対向するように、基板4の他の凹部平面4b内に、矩形状の固定電極6a,6bが形成されている。
【0030】
移動電極15a,15b,16a,16bと固定電極5a,5b,6a,6bとは、最大傾動時でも当接しない程度に接近されており、移動電極15a,15b,16a,16bと固定電極5a,5b,6a,6bに同一極性の電圧が印加されると、両者の間に反発力が作用し、逆に異極性の電圧が印加されると、吸引力が作用する。
【0031】
この静電力は、対向する電極の対向面積および印加電圧値の自乗に比例し、電極間隔(電極ギャップ)に反比例するもので、傾動平面反射鏡11,12の回転駆動力となる。本形態例では、平板1と基板4とは接着されるため、電極間隔は、凹部平面4a,4bの深さとほぼ同じである。なお、移動電極15a,15b,16a,16bに繋がるリード線は、移動電極15a,15b,16a,16bと同時に傾動平面反射鏡11,12の裏面に成膜されており、ヒンジ部13a,13b,14a,14bを介して外方に導出されている。固定電極5a,5b,6a,6bに繋がるリード線も、固定電極5a,5b,6a,6bと同時に形成されている。
【0032】
本形態例において、第1の傾動平面反射鏡11への入射光は、そこで反射後、対向平面反射鏡20に入射し、そこでの反射光が第2の傾動平面反射鏡12に入射する。そして、第2の傾動平面反射鏡12で最後に偏向された反射光が、出射光となる。
【0033】
ここで、各傾動平面反射鏡11,12が、それぞれΔθ1,Δθ2だけ回転(傾動)したとすると、第1の傾動平面反射鏡11の反射光Lo1は、入射光Li1に対して2×Δθ1だけ偏向され、さらに第2の傾動平面反射鏡12の反射光Lo2は、その入射光Li2に対して2×Δθ2だけ偏向される。このように各段の傾動平面反射鏡11,12を回転させることにより、各反射光は、各回転角Δθ1,Δθ2の2倍だけ偏向されるので、最終的な第2の傾動平面反射鏡での反射光は、最初の入射光Li1 を、θ=2×(Δθ1+Δθ2)だけ偏向させたものとなる。
【0034】
本形態例では、上記のように、第2の傾動平面反射鏡12を正弦波bを描くように往復傾動すると共に、第1の傾動平面反射鏡11の回転角Δθ1を差分波形cを描くように駆動するため、第2の傾動平面反射鏡12からの出射光は、三角波aを描くように増減する。
【0035】
ここで、第2の傾動平面反射鏡12の捩れ振動系の固有振動数は、三角波aの基本周波数foもしくはその近傍の周波数に選ばれており、第2の傾動平面反射鏡12は三角波aの基本周波数fo等しい周波数の正弦波bで駆動されるため、第2の傾動平面反射鏡12は共振状態で駆動されることになり、可撓性捩じり梁部14a,14bで支持された傾動平面反射鏡12は、小さな駆動力であっても大きく傾動され、その結果、光偏向器の出射光も広い範囲で偏向され、また、消費電力が小さくなる。
【0036】
図5は、可撓性捩じり梁部14a,14bによって支持された第2の傾動平面反射鏡12における、駆動周波数に対する傾動平面反射鏡12の回転角/駆動力の関係の一例を示している。横軸は周波数で対数目盛であり、図5(a)は共振倍率Qが10の場合、図5(b)は共振倍率Qが100の場合である。駆動周波数が共振周波数frより低い周波数においては、回転角/駆動力はほぼ一定値となり、共振周波数frより高い周波数においては、回転角/駆動力は駆動周波数の自乗の逆数に比例して小さくなる。共振周波数frより低い周波数領域での回転角は、可撓性捩じり梁部14a,14bの捩じり剛性と駆動力によって規定され、共振周波数frより高い周波数領域での回転角は、傾動平面反射鏡12の慣性モーメントと駆動力によって規定される。
【0037】
共振周波数frにおける回転角/駆動力は振動系の共振倍率Qによって規定され、この共振倍率は傾動平面反射鏡12に加わるダンピングが小さくなれば大きくなる。図5からもわかるように、共振周波数frにおいては、小さな駆動力で大きな回転角が得られ、特に共振倍率が大きいほど、この効果も大きくなる。したがって、傾動平面反射鏡12に加わるダンピングを小さくして共振周波数frあるいはその近傍の周波数で駆動することにより、小さな消費電力で大きな偏向角が得られることがわかる。
【0038】
上記の通り、第1の傾動平面反射鏡11の偏向角が図3の差分波形cと等しくなるように第1の傾動平面反射鏡11を駆動制御することにより、最終的には、第2の傾動平面反射鏡12からの出射光の偏向角を三角波状に増減させることができる。この第1の傾動平面反射鏡11の駆動制御に際しては、第1の傾動平面反射鏡11の回転角を回転角検出手段で検出し、その回転角信号を利用して、たとえば図6に示すようなフィードバック制御系によって第1の傾動平面反射鏡11の駆動制御を行う。このフィードバック制御系の目標値である差分波形cは、第2の傾動平面反射鏡12の回転角(正弦波b)がその特性より容易に求められるので、これと指定された三角波aとの差として容易に算出することができる。
【0039】
図6において、制御器21は偏差入力信号を比例・積分・微分等をした信号を出力するもので、この出力信号が増幅器22で増幅され、第1の傾動平面反射鏡11に駆動電圧として印加され、その回転角Δθ1が変化する。この回転角Δθ1は回転角検出手段24で求められ、再び目標値(差分波形c)と比較される。これにより、回転角Δθ1が目標値に追従するように増減されることになる。
【0040】
第1の傾動平面反射鏡11の回転角Δθ1を制御するには、当然ながら、傾動平面反射鏡11の回転角Δθ1を検出する必要がある。回転角Δθ1の検出手段としては種々の方式が考えられるが、フォト・リソグラフィーに適合した方式として、傾動平面反射鏡11の傾動によってヒンジ部13a,13bに弾性歪みが生じることを利用し、この歪みを検出する検出素子をヒンジ部13a,13bに薄膜プロセスで形成する構造が、製作の簡便さから最も有利である。
【0041】
図7はこの検出構造を示している。図7において、圧電材料を利用した2個の検出素子81,82は、固定部13cとヒンジ部13bの表面に跨って設けられている。各検出素子81,82は、圧電材料81a,82aを上側電極81b,82bと下側電極81c,82cで挟んだ構造を有しており、たとえば図7の矢印方向に傾動平面反射鏡11が回転した場合、図8に示すように検出素子81,82が撓み、これに伴う圧電材料81a,82aの歪みにより、上側電極81b,82b・下側電極81c,82c間に電圧V1,V2が発生する。
【0042】
この電圧V1,V2の差分を求めることにより、傾動平面反射鏡11の回転角Δθ1に応じた信号を取り出すことができる。なお、上記検出素子81,82の代わりに、歪みにより抵抗値が変わる抵抗素子を貼り付け、抵抗値の変化から回転角Δθ1を検出するようにも構成できる。
【0043】
なお、第2の傾動平面反射鏡12にも回転角検出手段を付加し、これから得られる信号を用いて第1の傾動平面反射鏡11のフィードバック制御系の目標値を修正することも可能であり、共振特性の経時変化や傾動平面反射鏡12の特性の個体差を考えた場合、この構成はより確実な方式である。
【0044】
さらに他の方式としては、第2の傾動平面反射鏡12の回転角を検出する回転角検出手段を設け、この回転角検出手段の検出信号を用いて、図6と同様なフィードバック制御系を構成し、第2の傾動平面反射鏡12の回転角Δθ2についてもフィードバック制御を行えば、より信頼性が向上する。さらに、第1の傾動平面反射鏡11の制御性を高める見地から、図6の破線示す部分のようなフィードフォワード制御系を付加することも可能である。
【0045】
上記のように、第2の傾動平面反射鏡12を共振状態で駆動することにより、第2の傾動平面反射鏡12での消費電力を低減させているが、本形態例では、図3より明らかなように、差分波形cの振幅を最終的に要求される三角波aの振幅より十分小さくできるため、第1の傾動平面反射鏡11の消費電力についても小さくすることが可能となる。このように、本形態例では、共振駆動される第2の傾動平面反射鏡12と、第2の傾動平面反射鏡12の偏向角を補正するように駆動制御される第1の傾動平面反射鏡11とを組み合わせて、光偏向器を構成したことにより、小さな消費電力で大きな偏向角を得ることができる。
【0046】
さらに、本形態例においては、第1の傾動平面反射鏡11が、第2の傾動平面反射鏡12よりも小さく形成されていると共に、第1の傾動平面反射鏡11の回転角(振幅)も小さいので、第1の傾動平面反射鏡11は第2の傾動平面反射鏡12よりも高速で傾動できる。このため、第1の傾動平面反射鏡11の傾動速度を上げることができ、偏向角の微調整を速やかに行い、入射光をリニアに偏向できる。
【0047】
また、第1および第2の傾動平面反射鏡11,12を同一平板1上に板厚方向に傾動可能に形成した構造のため、作製が容易であり、低コスト化が可能になる。特に、傾動平面反射鏡11,12をフォト・リソグラフィー技術を用いて一括製作すれば、一層の小型軽量化および低コスト化を図れる。この場合において、平板1および基板4等の材料としては、たとえばシリコンを用い、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)により構成することができる。
【0048】
なお、傾動平面反射鏡11,12は、回転多面鏡の場合と比較して小さいので軽量化でき、高速スキャンが可能になる。さらに、空気軸受等を用いる必要がないため、減圧あるいは真空容器内に光偏向器を密閉し騒音を小さくできると共に、低コスト化も可能になる。
(第2の実施の形態例)
図9〜図10を用いて、本発明に係る第2の実施の形態例を説明する。これらの図において、図2および図4と対応する部分には同一符号を付した。本形態例は、第1と第2の傾動平面反射鏡11,12がフォト・リソグラフィ技術を用いて形成されている。図9はその平面図を示し、図10は主要部の斜視図を示している。
【0049】
第1の傾動平面反射鏡11の回転端部には、櫛歯状電極31a,31bが形成され、第2の傾動平面反射鏡12の回転端部には、櫛歯状電極41a,41bが形成されている。一方、平板1側には、櫛歯状電極31a,31bに隙間をおいて噛み合う櫛歯状電極51a,51bと、櫛歯状電極41a,41bに隙間をおいて噛み合う櫛歯状電極61a,61bとが、側方から見た場合、平板1の厚さ方向に段差dをもって、一部重なった状態で形成されている。また、櫛歯状電極31a,41aと櫛歯状電極51a,61aとの間には、櫛歯状電極31b,31bと櫛歯状電極51b,61bとの間とは逆極性の電圧が印加されるように構成されている。この静電電極構造以外の構成は、基本的には、第1の実施の形態例と同様であり、第1の実施の形態例と同様な効果も得られる。
【0050】
図11はこの形態例の製造プロセスの一例を示している。この製造プロセスでは、次のステップからなる。
(1)酸化シリコンの基板層1aの表裏にシリコンの基板層1b,1cを形成した3層構造の基板を平板1として用意する。
(2)上側のシリコンの基板層1bの表面に反射膜となる鏡面膜35を成膜する。
(3)鏡面膜35の表面と、下側のシリコンの基板層1cの表面にレジスト膜36,37を成膜する。
(4)可動側の櫛歯状電極を形成するための可動櫛歯部レジスト膜36aと、固定側の櫛歯状電極を形成するための固定櫛歯部レジスト膜37aとが残るように、パターンニングを行う。
(5)平板1の表裏から、酸化シリコンの基板層1aに到達する深さまでエッチングを行う。
(6)レジスト膜36,37および酸化シリコンの基板層1aを除去する(シリコンの基板層1b,1cで上下から挟まれた酸化シリコンの基板層1a部分は残る)。
(7)櫛歯状電極を形成すると共に、配線処理を行う。
(第3の実施の形態例)
第1および第2の実施の形態例では、駆動手段として、静電駆動方式のものを用いたが、これ以外のものを用いてもよい。たとえば、圧電素子を駆動源とするものや電磁駆動方式のものを用いてもよい。特に、電磁駆動方式の駆動手段としては、図12に示すようなものが適している。図12において、図2や図4と対応する部分には同一符号を付した。この構成は、第1の傾動平面反射鏡11に設けたものであるが、他の平面反射鏡にも同様に設けることができる。図12中の傾動平面反射鏡11の裏面には、傾動平面反射鏡11と平行で傾動中心軸O1と直角に交差する方向に着磁されたマグネット71が接着されている。また、このマグネット71の着磁方向に直交するような磁束を発生するコイル72が、図示しない支持部材に固定されている。このため、コイル72に励磁電流を流すと、傾動平面反射鏡11が電流方向に応じて矢印方向に傾動する。電磁駆動方式は、大きな回転駆動力を得るには有利であるが、可動部のイナーシャは大きくなる。
(その他の実施の形態例)
本発明は上記第1〜第3の実施の形態例に限定されるものではない。たとえば、上記形態例は、2つの傾動平面反射鏡11,12を用いたが、傾動平板反射鏡や対向平板反射鏡の数は、上記の各実施例のものに限定されない。N個(Nは2以上の整数)の傾動平面反射鏡を用いて上記のような系を構成すれば、最終段の傾動平面反射鏡での反射光は、最初の入射光Li1 を、2×(Δθ1+Δθ2+……+ΔθN)だけ偏向させたものとなり、より一層大きな偏向角を得ることができる。この場合、N個の傾動平面反射鏡の少なくとも一つは傾動平面反射鏡11として用いることになる。
【0051】
本発明は、最終的に必要とされる偏向波形が三角波以外の場合にも適用可能であり、場合によっては、第2の傾動平面反射鏡12相当の傾動平面反射鏡の偏向波形を補正するために、差分波形の異なる傾動平面反射鏡(傾動平面反射鏡11相当)を複数用いることも可能である。
【0052】
傾動平面反射鏡11,12だけでなく、対向平面反射鏡20についても、傾動平面反射鏡11,12の傾動中心軸O1,O2と平行な軸を中心に傾動可能に構成することも可能である。
【0053】
また、上記各形態例において、傾動平面反射鏡11,12は可撓性捩じり梁部(ヒンジ部)で回転可能に支持されるため、傾動平面反射鏡や対向平面反射鏡(回転するもの)等の可動部品全体を、最初の入射光と最後の出射光が通過するための光透過窓を設けた密封容器内に封入し、容器内を真空状態あるいは低圧状態にして使用することが可能である。
【0054】
このようにすれば、傾動平面反射鏡の回転による騒音を一層低減できると共に、空気抵抗が無くなるので(低減するので)、一層の高速化も可能になる。ちなみに、回転多面鏡では、高速回転を実現するため空気軸受によって回転シャフトを支持しているので、回転多面鏡を密閉容器内に入れることは可能であっても、真空状態や低圧状態の環境におくことは困難であり、回転鏡の回転による空気擾乱によって発生する騒音を小さくできない。
【0055】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に係る発明では、第2の傾動平面反射鏡が、一定の波形Hの基本周波数および近似振幅で往復傾動され、第1の傾動平面反射鏡が、光偏向器の出射光の偏向角が上記一定の波形Hを描いて増減するように補正傾動される。その際、第1の傾動平面反射鏡の回転角(振幅)は小さいので、偏向角の微調整(補正)を速やかに行うことができ、その結果、入射光をリニアに偏向できる。
【0056】
また、傾動平面反射鏡は、回転多面鏡の場合と比較して小さいので軽量化でき、高速スキャンが可能になる。さらに、空気軸受等を用いる必要がないため、減圧あるいは真空容器内に可動部品を密閉し、騒音を小さくできると共に、低コスト化も可能になる。
【0057】
請求項2に係る発明によれば、第2の傾動平面反射鏡が共振状態で駆動されることになり、第2の傾動平面反射鏡は、小さな駆動力であっても、大きく傾動し、消費電力を小さくできる。
【0058】
請求項3に係る発明によれば、第1および第2の傾動平面反射鏡を同一平板上に形成する構造のため、作製が容易であり、低コスト化が可能になる。
【0059】
請求項4に係る発明によれば、第1の傾動平面反射鏡の慣性モーメントを減少させ、その傾動速度を上げることができ、偏向角の微調整を一層速やかに行い、入射光を一層リニアに偏向できる。
【0060】
請求項5に係る発明では、第1および第2の傾動平面反射鏡をフォト・リソグラフィー技術を用いて一括製作することにより、小型軽量化および低コスト化を図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の原理図である。
【図2】請求項1に係る発明の実施の形態例を示す分解斜視図である。
【図3】傾動平面反射鏡の駆動波形を示す図である。
【図4】図2に示した形態例の駆動手段を示す図である。
【図5】回転角/駆動力の周波数特性を示す図である。
【図6】第1の傾動平面反射鏡の駆動制御を示す図である。
【図7】傾動平面反射鏡の回転角の検出構造を示す図である。
【図8】図7中の検出素子の変形状態を示す拡大図である。
【図9】本発明の他の実施の形態例を示す平面図である。
【図10】図9に示した形態例(主要部)の斜視図である。
【図11】図9に示した形態例の製造プロセスを示す図である。
【図12】電磁駆動方式の駆動手段を示す図である。
【符号の説明】
1,2 平板
3 駆動手段
4 基板
4a,4b 凹部平面
5a,5b,6a,6b 固定電極
11,12 傾動平面反射鏡
11a,12a 反射面
13a,13b,14a,14b ヒンジ部(可撓性捩じり梁部)
20 対向平面反射鏡
81,82 検出素子
【発明の属する技術分野】
本発明は、出射光の偏向角が一定の波形を描いて増減するように入射光を偏向させる光偏向器に関する。
【0002】
【従来の技術】
レーザプリンタ等では、レーザ光を偏向させて書き込みを行っているが、この場合の光偏向手段としては、回転多面鏡(ポリゴンミラー)が広く用いられている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
また、半導体プロセス等で作製される偏向ミラーでは、平面反射鏡の回転中心位置にトーションばねとして機能する可撓性捩じり梁部を形成しておき、これを弾性変形させることで、平面反射鏡を往復傾動している(たとえば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−67377公報(図2)
【特許文献2】
特開2002−131685公報(図1)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
プリンタでは高速印字の要望が高まっており、光偏向器としては高速スキャンの可能なものが要求されている。この要求を受け、回転多面鏡では、その回転シャフトを空気軸受で支持し、回転多面鏡を3万rpm程度の速度で回転させるようにしたものがある。
【0006】
しかし、回転多面鏡の場合、その回転数は限界に近づいており、より速い印字を実現することが難しくなっている。また、回転多面鏡では、高速回転を実現するため空気軸受によって回転シャフトを支持しているので、回転多面鏡を密閉容器内に入れることは可能であっても、真空状態や低圧状態の環境におくことは困難であり、回転鏡の回転による空気擾乱によって発生する騒音を小さくすることはできず、オフィス環境に適合しないという問題もある。さらに、コストが高いという問題もある。
【0007】
特許文献2に記載されたように平面反射鏡を往復傾動させるタイプの光偏向器では、入射光を±30°程度の広い範囲で偏向する必要があり、その角度範囲で、偏向角がリニアに増加および減少を繰り返すこと、すなわち、偏向角が時間の経過につれて三角波状に増減することが要求される。しかし、特許文献2の構成の場合、平面反射鏡の傾動時、偏向角の絶対値が増大するにつれて、言い換えれば、三角波の折り返し点に近づくにつれて、可撓性捩じり梁部の捩じり反力が大きくなるため、この折り返し点位置では、平面反射鏡を純粋に傾動するための回転力が大きく減少することになる(消費電力にも制限があるため、全体の回転力自体を増加させることも難しい)。よって、パワー不足からこの折り返し点位置で偏向角をシャープに折り返させることが難しく、入射光のリニアな偏向が困難であった。
【0008】
本発明はこれらの問題を解決しようとするもので、入射光をリニアに偏向できる光偏向器であって、低騒音で高速スキャンでき、しかも低コストの光偏向器を実現することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、出射光の偏向角(出射角度)が一定の波形を描いて増減するように入射光を偏向させる光偏向器であり、図1の原理図に示すように、傾動可能な複数(図1には、第1および第2の2つを例示)の傾動平面反射鏡11,12を有している。各傾動平面反射鏡11,12は、図1における時計方向および反時計方向に傾動できるように、その傾動中心軸O1,O2が、図1における背面方向に延び、かつ平行に配置されている。傾動平面反射鏡11,12は、図示しない駆動手段により、時計方向および反時計方向に傾動される。具体的には、第2の傾動平面反射鏡12は、上記出射光の偏向角の変化(最終目標)を示す一定の波形H(たとえば、図3の三角波a)の基本周波数foと同一の周波数で、かつ一定の波形Hに近似した振幅の波形(たとえば、図3の正弦波b)を描くように、往復傾動される。傾動平面反射鏡12単体の回転角Δθ2は、正弦波bの振幅の半分である。
【0010】
一方、第1の傾動平面反射鏡11は、最終的な光偏向器の出射光の偏向角が一定の波形Hを描いて増減するように、傾動制御される。たとえば、図3の場合の差分波形cを描くように往復傾動される。ここで、差分波形cは、三角波aから正弦波bを引いたもので、第1の傾動平面反射鏡11単体の回転角Δθ1は、この差分波形cの振幅の半分である。
【0011】
この構成において、光偏向器への入射光は、傾動平面反射鏡11,12に順次入射し(入射の順番は問わない)、最後の反射光が光偏向器の出射光となる。図1では、光偏向器への入射光として第1の傾動平面反射鏡11に入射した光Li1が、そこで反射後、第2の傾動平面反射鏡12に入射する。そして、第2の傾動平面反射鏡12で偏向された反射光Lo2が、光偏向器の出射光となる。
【0012】
図1において、各傾動平面反射鏡11,12が、それぞれΔθ1,Δθ2だけ回転(傾動)したとすると、傾動平面反射鏡11の反射光Lo1は、入射光Li1に対して2×Δθ1だけ偏向され、さらに傾動平面反射鏡12の反射光Lo2は、その入射光Li2(傾動平面反射鏡11の反射光Lo1)に対して2×Δθ2だけ偏向される。
【0013】
このように傾動平面反射鏡11,12を回転させることにより、各反射光は、各回転角Δθ1,Δθ2の2倍だけ偏向されるので、図1の場合にように2個の傾動平面反射鏡11,12を用いた場合、第2の傾動平面反射鏡での反射光は、最初の入射光Li1 を、θ=2×(Δθ1+Δθ2)だけ偏向させたものとなる。そこで、本発明では、このθが、上記出射光の偏向角の変化(最終目標)を示す一定の波形H(たとえば、図3の三角波a)を描くように、傾動平面反射鏡11の回転角Δθ1を、たとえば、図3の差分波形cを描くように駆動する。
【0014】
このように本発明では、第2の傾動平面反射鏡が、一定の波形Hの基本周波数および近似振幅で往復傾動され、第1の傾動平面反射鏡が、光偏向器の出射光の偏向角が上記一定の波形Hを描いて増減するように補正傾動される。その際、第1の傾動平面反射鏡の回転角(振幅)は小さいので、偏向角の微調整(補正)を速やかに行うことができ、その結果、入射光をリニアに偏向できる。
【0015】
また、傾動平面反射鏡は、回転多面鏡の場合と比較して小さいので軽量化でき、高速スキャンが可能になる。さらに、空気軸受等を用いる必要がないため、減圧あるいは真空容器内に可動部品を密閉し、騒音を小さくできると共に、低コスト化も可能になる。
【0016】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明中の第2の傾動平面反射鏡が、可撓性捩じり梁部により回転可能に支持され、該第2の傾動平面反射鏡の捩れ振動系の固有振動数は、上記一定の波形の基本周波数もしくはその近傍の周波数となるように選択されていることを特徴とするものである。
【0017】
このようにすれば、第2の傾動平面反射鏡が共振状態で駆動されることになり、第2の傾動平面反射鏡は、小さな駆動力であっても、大きく傾動し、消費電力を小さくできる。
【0018】
請求項3に係る発明は、請求項1または2記載の発明において、傾動中心軸が平行である第1および第2の傾動平面反射鏡は、同一平板上に板厚方向に傾動可能に形成され、該第1および第2の傾動平面反射鏡には対向平面反射鏡が対向配置され、光偏向器への入射光は、第1および第2の傾動平面反射鏡と対向平面反射鏡との間で往復しながら、第1および第2の傾動平面反射鏡に順次入射することを特徴とするものである。
【0019】
この発明では、第1および第2の傾動平面反射鏡を同一平板上に形成する構造のため、作製が容易であり、低コスト化が可能になる。
【0020】
請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明中の第1の傾動平面反射鏡が、第2の傾動平面反射鏡よりも小さい平面反射鏡で構成され、第2の傾動平面反射鏡よりも高速で傾動できるようになっていることを特徴とするものである。このようにすれば、第1の傾動平面反射鏡の慣性モーメントを減少させ、その傾動速度を上げることができ、偏向角の微調整を一層速やかに行い、入射光を一層リニアに偏向できる。
【0021】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4に係る発明において、第1および第2の傾動平面反射鏡をフォト・リソグラフィー技術を用いて一括製作することにより、小型軽量化および低コスト化を図ったものである。
【0022】
【実施の形態】
(第1の実施の形態例)
図2〜図4を用いて、本発明の第1の実施の形態例を説明する。ここで、図2は本形態例の分解斜視図、図3は傾動平面反射鏡の駆動波形を示す図、図4は本形態例での駆動手段を示す構成図である。これらの図において、図1と対応する部分には同一符号を付している。まず、平板1上には、板厚方向に傾動可能に、矩形状の2つの傾動平面反射鏡11,12が形成されている。傾動平面反射鏡11,12は、上面が反射面11a,12aとなっている。
【0023】
傾動平面反射鏡11の左右の側端中央部には、小幅のヒンジ部(可撓性捩じり梁部)13a,13bが同軸上に位置するように形成されており、このヒンジ部13a,13bが弾性的に捩れることにより傾動中心軸O1として機能し、傾動平面反射鏡11の時計方向および反時計方向の傾動を実現している。同様に、傾動平面反射鏡12の左右の側端中央部にも、小幅のヒンジ部(可撓性捩じり梁部)14a,14bが同軸上に位置するように形成されており、このヒンジ部14a,14bが弾性的に捩れることにより傾動中心軸O2として機能し、傾動平面反射鏡12の時計方向および反時計方向の傾動を実現している。傾動中心軸O1,O2が平行になるように、ヒンジ部13a,13bとヒンジ部14a,14bは形成されている。
【0024】
第1の傾動平面反射鏡11の外形(矩形)は、第2の傾動平面反射鏡12の外形(矩形)よりも小さく選ばれている。その理由は、第1の傾動平面反射鏡11の場合、入射光光束径の許容する限り小さくし、高周波数駆動を可能とするためである。一方、第2の傾動平面反射鏡12は第1の傾動平面反射鏡11で偏向された光を反射するのでその分大きく構成されている。
【0025】
また、第2の傾動平面反射鏡12の捩れ振動系の固有振動数(傾動平面反射鏡12の慣性モーメントとヒンジ部14a,14bのバネ定数から決まる)は、上記出射光の偏向角の変化(最終目標)を示す三角波a(図3参照)の基本周波数foもしくはその近傍の周波数に選ばれている。
【0026】
傾動平面反射鏡11,12は、その下方に設けられた駆動手段3により、時計方向および反時計方向に傾動される。具体的には、第2の傾動平面反射鏡12は、上記出射光の偏向角の変化(最終目標)を示す三角波a(図3参照)の基本周波数foと同一の周波数で、かつ三角波aに近似した振幅の正弦波b(図3参照)を描くように、往復傾動される。第2の傾動平面反射鏡12単体の回転角Δθ2は、正弦波bの振幅の半分である。
【0027】
一方、第1の傾動平面反射鏡11は、最終的な光偏向器の出射光の偏向角が三角波aを描いて増減するように、図3の差分波形cを描くように往復傾動される。ここで、差分波形cは、三角波aから正弦波bを引いたもので、第1の傾動平面反射鏡11単体の回転角Δθ1は、この差分波形cの振幅の半分である。
【0028】
これら傾動平面反射鏡11,12の上面に対向するように、対向平面反射鏡20が設けられている。対向平面反射鏡20の下面は、反射面20aを構成しており、傾動平面反射鏡11,12の反射面11a,12aと対向している。反射面20aが傾動中心軸O1,O2と平行となるように、対向平面反射鏡20は図示しない支持部材に固定されている。
【0029】
駆動手段3としては、電磁駆動方式、静電駆動方式、あるいは圧電素子を用いた駆動方式等が考えられるが、本形態例では、静電駆動方式のものを用いている。すなわち、第1の傾動平面反射鏡11の裏面に、傾動中心軸O1を回動端側から挟むようにして、矩形状の移動電極15a,15bが間隔をおいて形成され、この移動電極15a,15bにそれぞれ対向するように、基板4の凹部平面4a内に、矩形状の固定電極5a,5bが形成されている。同様に、傾動平面反射鏡12の裏面に、傾動中心軸O2を回動端側から挟むようにして、矩形状の移動電極16a,16bが間隔をおいて形成され、この移動電極16a,16bにそれぞれ対向するように、基板4の他の凹部平面4b内に、矩形状の固定電極6a,6bが形成されている。
【0030】
移動電極15a,15b,16a,16bと固定電極5a,5b,6a,6bとは、最大傾動時でも当接しない程度に接近されており、移動電極15a,15b,16a,16bと固定電極5a,5b,6a,6bに同一極性の電圧が印加されると、両者の間に反発力が作用し、逆に異極性の電圧が印加されると、吸引力が作用する。
【0031】
この静電力は、対向する電極の対向面積および印加電圧値の自乗に比例し、電極間隔(電極ギャップ)に反比例するもので、傾動平面反射鏡11,12の回転駆動力となる。本形態例では、平板1と基板4とは接着されるため、電極間隔は、凹部平面4a,4bの深さとほぼ同じである。なお、移動電極15a,15b,16a,16bに繋がるリード線は、移動電極15a,15b,16a,16bと同時に傾動平面反射鏡11,12の裏面に成膜されており、ヒンジ部13a,13b,14a,14bを介して外方に導出されている。固定電極5a,5b,6a,6bに繋がるリード線も、固定電極5a,5b,6a,6bと同時に形成されている。
【0032】
本形態例において、第1の傾動平面反射鏡11への入射光は、そこで反射後、対向平面反射鏡20に入射し、そこでの反射光が第2の傾動平面反射鏡12に入射する。そして、第2の傾動平面反射鏡12で最後に偏向された反射光が、出射光となる。
【0033】
ここで、各傾動平面反射鏡11,12が、それぞれΔθ1,Δθ2だけ回転(傾動)したとすると、第1の傾動平面反射鏡11の反射光Lo1は、入射光Li1に対して2×Δθ1だけ偏向され、さらに第2の傾動平面反射鏡12の反射光Lo2は、その入射光Li2に対して2×Δθ2だけ偏向される。このように各段の傾動平面反射鏡11,12を回転させることにより、各反射光は、各回転角Δθ1,Δθ2の2倍だけ偏向されるので、最終的な第2の傾動平面反射鏡での反射光は、最初の入射光Li1 を、θ=2×(Δθ1+Δθ2)だけ偏向させたものとなる。
【0034】
本形態例では、上記のように、第2の傾動平面反射鏡12を正弦波bを描くように往復傾動すると共に、第1の傾動平面反射鏡11の回転角Δθ1を差分波形cを描くように駆動するため、第2の傾動平面反射鏡12からの出射光は、三角波aを描くように増減する。
【0035】
ここで、第2の傾動平面反射鏡12の捩れ振動系の固有振動数は、三角波aの基本周波数foもしくはその近傍の周波数に選ばれており、第2の傾動平面反射鏡12は三角波aの基本周波数fo等しい周波数の正弦波bで駆動されるため、第2の傾動平面反射鏡12は共振状態で駆動されることになり、可撓性捩じり梁部14a,14bで支持された傾動平面反射鏡12は、小さな駆動力であっても大きく傾動され、その結果、光偏向器の出射光も広い範囲で偏向され、また、消費電力が小さくなる。
【0036】
図5は、可撓性捩じり梁部14a,14bによって支持された第2の傾動平面反射鏡12における、駆動周波数に対する傾動平面反射鏡12の回転角/駆動力の関係の一例を示している。横軸は周波数で対数目盛であり、図5(a)は共振倍率Qが10の場合、図5(b)は共振倍率Qが100の場合である。駆動周波数が共振周波数frより低い周波数においては、回転角/駆動力はほぼ一定値となり、共振周波数frより高い周波数においては、回転角/駆動力は駆動周波数の自乗の逆数に比例して小さくなる。共振周波数frより低い周波数領域での回転角は、可撓性捩じり梁部14a,14bの捩じり剛性と駆動力によって規定され、共振周波数frより高い周波数領域での回転角は、傾動平面反射鏡12の慣性モーメントと駆動力によって規定される。
【0037】
共振周波数frにおける回転角/駆動力は振動系の共振倍率Qによって規定され、この共振倍率は傾動平面反射鏡12に加わるダンピングが小さくなれば大きくなる。図5からもわかるように、共振周波数frにおいては、小さな駆動力で大きな回転角が得られ、特に共振倍率が大きいほど、この効果も大きくなる。したがって、傾動平面反射鏡12に加わるダンピングを小さくして共振周波数frあるいはその近傍の周波数で駆動することにより、小さな消費電力で大きな偏向角が得られることがわかる。
【0038】
上記の通り、第1の傾動平面反射鏡11の偏向角が図3の差分波形cと等しくなるように第1の傾動平面反射鏡11を駆動制御することにより、最終的には、第2の傾動平面反射鏡12からの出射光の偏向角を三角波状に増減させることができる。この第1の傾動平面反射鏡11の駆動制御に際しては、第1の傾動平面反射鏡11の回転角を回転角検出手段で検出し、その回転角信号を利用して、たとえば図6に示すようなフィードバック制御系によって第1の傾動平面反射鏡11の駆動制御を行う。このフィードバック制御系の目標値である差分波形cは、第2の傾動平面反射鏡12の回転角(正弦波b)がその特性より容易に求められるので、これと指定された三角波aとの差として容易に算出することができる。
【0039】
図6において、制御器21は偏差入力信号を比例・積分・微分等をした信号を出力するもので、この出力信号が増幅器22で増幅され、第1の傾動平面反射鏡11に駆動電圧として印加され、その回転角Δθ1が変化する。この回転角Δθ1は回転角検出手段24で求められ、再び目標値(差分波形c)と比較される。これにより、回転角Δθ1が目標値に追従するように増減されることになる。
【0040】
第1の傾動平面反射鏡11の回転角Δθ1を制御するには、当然ながら、傾動平面反射鏡11の回転角Δθ1を検出する必要がある。回転角Δθ1の検出手段としては種々の方式が考えられるが、フォト・リソグラフィーに適合した方式として、傾動平面反射鏡11の傾動によってヒンジ部13a,13bに弾性歪みが生じることを利用し、この歪みを検出する検出素子をヒンジ部13a,13bに薄膜プロセスで形成する構造が、製作の簡便さから最も有利である。
【0041】
図7はこの検出構造を示している。図7において、圧電材料を利用した2個の検出素子81,82は、固定部13cとヒンジ部13bの表面に跨って設けられている。各検出素子81,82は、圧電材料81a,82aを上側電極81b,82bと下側電極81c,82cで挟んだ構造を有しており、たとえば図7の矢印方向に傾動平面反射鏡11が回転した場合、図8に示すように検出素子81,82が撓み、これに伴う圧電材料81a,82aの歪みにより、上側電極81b,82b・下側電極81c,82c間に電圧V1,V2が発生する。
【0042】
この電圧V1,V2の差分を求めることにより、傾動平面反射鏡11の回転角Δθ1に応じた信号を取り出すことができる。なお、上記検出素子81,82の代わりに、歪みにより抵抗値が変わる抵抗素子を貼り付け、抵抗値の変化から回転角Δθ1を検出するようにも構成できる。
【0043】
なお、第2の傾動平面反射鏡12にも回転角検出手段を付加し、これから得られる信号を用いて第1の傾動平面反射鏡11のフィードバック制御系の目標値を修正することも可能であり、共振特性の経時変化や傾動平面反射鏡12の特性の個体差を考えた場合、この構成はより確実な方式である。
【0044】
さらに他の方式としては、第2の傾動平面反射鏡12の回転角を検出する回転角検出手段を設け、この回転角検出手段の検出信号を用いて、図6と同様なフィードバック制御系を構成し、第2の傾動平面反射鏡12の回転角Δθ2についてもフィードバック制御を行えば、より信頼性が向上する。さらに、第1の傾動平面反射鏡11の制御性を高める見地から、図6の破線示す部分のようなフィードフォワード制御系を付加することも可能である。
【0045】
上記のように、第2の傾動平面反射鏡12を共振状態で駆動することにより、第2の傾動平面反射鏡12での消費電力を低減させているが、本形態例では、図3より明らかなように、差分波形cの振幅を最終的に要求される三角波aの振幅より十分小さくできるため、第1の傾動平面反射鏡11の消費電力についても小さくすることが可能となる。このように、本形態例では、共振駆動される第2の傾動平面反射鏡12と、第2の傾動平面反射鏡12の偏向角を補正するように駆動制御される第1の傾動平面反射鏡11とを組み合わせて、光偏向器を構成したことにより、小さな消費電力で大きな偏向角を得ることができる。
【0046】
さらに、本形態例においては、第1の傾動平面反射鏡11が、第2の傾動平面反射鏡12よりも小さく形成されていると共に、第1の傾動平面反射鏡11の回転角(振幅)も小さいので、第1の傾動平面反射鏡11は第2の傾動平面反射鏡12よりも高速で傾動できる。このため、第1の傾動平面反射鏡11の傾動速度を上げることができ、偏向角の微調整を速やかに行い、入射光をリニアに偏向できる。
【0047】
また、第1および第2の傾動平面反射鏡11,12を同一平板1上に板厚方向に傾動可能に形成した構造のため、作製が容易であり、低コスト化が可能になる。特に、傾動平面反射鏡11,12をフォト・リソグラフィー技術を用いて一括製作すれば、一層の小型軽量化および低コスト化を図れる。この場合において、平板1および基板4等の材料としては、たとえばシリコンを用い、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)により構成することができる。
【0048】
なお、傾動平面反射鏡11,12は、回転多面鏡の場合と比較して小さいので軽量化でき、高速スキャンが可能になる。さらに、空気軸受等を用いる必要がないため、減圧あるいは真空容器内に光偏向器を密閉し騒音を小さくできると共に、低コスト化も可能になる。
(第2の実施の形態例)
図9〜図10を用いて、本発明に係る第2の実施の形態例を説明する。これらの図において、図2および図4と対応する部分には同一符号を付した。本形態例は、第1と第2の傾動平面反射鏡11,12がフォト・リソグラフィ技術を用いて形成されている。図9はその平面図を示し、図10は主要部の斜視図を示している。
【0049】
第1の傾動平面反射鏡11の回転端部には、櫛歯状電極31a,31bが形成され、第2の傾動平面反射鏡12の回転端部には、櫛歯状電極41a,41bが形成されている。一方、平板1側には、櫛歯状電極31a,31bに隙間をおいて噛み合う櫛歯状電極51a,51bと、櫛歯状電極41a,41bに隙間をおいて噛み合う櫛歯状電極61a,61bとが、側方から見た場合、平板1の厚さ方向に段差dをもって、一部重なった状態で形成されている。また、櫛歯状電極31a,41aと櫛歯状電極51a,61aとの間には、櫛歯状電極31b,31bと櫛歯状電極51b,61bとの間とは逆極性の電圧が印加されるように構成されている。この静電電極構造以外の構成は、基本的には、第1の実施の形態例と同様であり、第1の実施の形態例と同様な効果も得られる。
【0050】
図11はこの形態例の製造プロセスの一例を示している。この製造プロセスでは、次のステップからなる。
(1)酸化シリコンの基板層1aの表裏にシリコンの基板層1b,1cを形成した3層構造の基板を平板1として用意する。
(2)上側のシリコンの基板層1bの表面に反射膜となる鏡面膜35を成膜する。
(3)鏡面膜35の表面と、下側のシリコンの基板層1cの表面にレジスト膜36,37を成膜する。
(4)可動側の櫛歯状電極を形成するための可動櫛歯部レジスト膜36aと、固定側の櫛歯状電極を形成するための固定櫛歯部レジスト膜37aとが残るように、パターンニングを行う。
(5)平板1の表裏から、酸化シリコンの基板層1aに到達する深さまでエッチングを行う。
(6)レジスト膜36,37および酸化シリコンの基板層1aを除去する(シリコンの基板層1b,1cで上下から挟まれた酸化シリコンの基板層1a部分は残る)。
(7)櫛歯状電極を形成すると共に、配線処理を行う。
(第3の実施の形態例)
第1および第2の実施の形態例では、駆動手段として、静電駆動方式のものを用いたが、これ以外のものを用いてもよい。たとえば、圧電素子を駆動源とするものや電磁駆動方式のものを用いてもよい。特に、電磁駆動方式の駆動手段としては、図12に示すようなものが適している。図12において、図2や図4と対応する部分には同一符号を付した。この構成は、第1の傾動平面反射鏡11に設けたものであるが、他の平面反射鏡にも同様に設けることができる。図12中の傾動平面反射鏡11の裏面には、傾動平面反射鏡11と平行で傾動中心軸O1と直角に交差する方向に着磁されたマグネット71が接着されている。また、このマグネット71の着磁方向に直交するような磁束を発生するコイル72が、図示しない支持部材に固定されている。このため、コイル72に励磁電流を流すと、傾動平面反射鏡11が電流方向に応じて矢印方向に傾動する。電磁駆動方式は、大きな回転駆動力を得るには有利であるが、可動部のイナーシャは大きくなる。
(その他の実施の形態例)
本発明は上記第1〜第3の実施の形態例に限定されるものではない。たとえば、上記形態例は、2つの傾動平面反射鏡11,12を用いたが、傾動平板反射鏡や対向平板反射鏡の数は、上記の各実施例のものに限定されない。N個(Nは2以上の整数)の傾動平面反射鏡を用いて上記のような系を構成すれば、最終段の傾動平面反射鏡での反射光は、最初の入射光Li1 を、2×(Δθ1+Δθ2+……+ΔθN)だけ偏向させたものとなり、より一層大きな偏向角を得ることができる。この場合、N個の傾動平面反射鏡の少なくとも一つは傾動平面反射鏡11として用いることになる。
【0051】
本発明は、最終的に必要とされる偏向波形が三角波以外の場合にも適用可能であり、場合によっては、第2の傾動平面反射鏡12相当の傾動平面反射鏡の偏向波形を補正するために、差分波形の異なる傾動平面反射鏡(傾動平面反射鏡11相当)を複数用いることも可能である。
【0052】
傾動平面反射鏡11,12だけでなく、対向平面反射鏡20についても、傾動平面反射鏡11,12の傾動中心軸O1,O2と平行な軸を中心に傾動可能に構成することも可能である。
【0053】
また、上記各形態例において、傾動平面反射鏡11,12は可撓性捩じり梁部(ヒンジ部)で回転可能に支持されるため、傾動平面反射鏡や対向平面反射鏡(回転するもの)等の可動部品全体を、最初の入射光と最後の出射光が通過するための光透過窓を設けた密封容器内に封入し、容器内を真空状態あるいは低圧状態にして使用することが可能である。
【0054】
このようにすれば、傾動平面反射鏡の回転による騒音を一層低減できると共に、空気抵抗が無くなるので(低減するので)、一層の高速化も可能になる。ちなみに、回転多面鏡では、高速回転を実現するため空気軸受によって回転シャフトを支持しているので、回転多面鏡を密閉容器内に入れることは可能であっても、真空状態や低圧状態の環境におくことは困難であり、回転鏡の回転による空気擾乱によって発生する騒音を小さくできない。
【0055】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に係る発明では、第2の傾動平面反射鏡が、一定の波形Hの基本周波数および近似振幅で往復傾動され、第1の傾動平面反射鏡が、光偏向器の出射光の偏向角が上記一定の波形Hを描いて増減するように補正傾動される。その際、第1の傾動平面反射鏡の回転角(振幅)は小さいので、偏向角の微調整(補正)を速やかに行うことができ、その結果、入射光をリニアに偏向できる。
【0056】
また、傾動平面反射鏡は、回転多面鏡の場合と比較して小さいので軽量化でき、高速スキャンが可能になる。さらに、空気軸受等を用いる必要がないため、減圧あるいは真空容器内に可動部品を密閉し、騒音を小さくできると共に、低コスト化も可能になる。
【0057】
請求項2に係る発明によれば、第2の傾動平面反射鏡が共振状態で駆動されることになり、第2の傾動平面反射鏡は、小さな駆動力であっても、大きく傾動し、消費電力を小さくできる。
【0058】
請求項3に係る発明によれば、第1および第2の傾動平面反射鏡を同一平板上に形成する構造のため、作製が容易であり、低コスト化が可能になる。
【0059】
請求項4に係る発明によれば、第1の傾動平面反射鏡の慣性モーメントを減少させ、その傾動速度を上げることができ、偏向角の微調整を一層速やかに行い、入射光を一層リニアに偏向できる。
【0060】
請求項5に係る発明では、第1および第2の傾動平面反射鏡をフォト・リソグラフィー技術を用いて一括製作することにより、小型軽量化および低コスト化を図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の原理図である。
【図2】請求項1に係る発明の実施の形態例を示す分解斜視図である。
【図3】傾動平面反射鏡の駆動波形を示す図である。
【図4】図2に示した形態例の駆動手段を示す図である。
【図5】回転角/駆動力の周波数特性を示す図である。
【図6】第1の傾動平面反射鏡の駆動制御を示す図である。
【図7】傾動平面反射鏡の回転角の検出構造を示す図である。
【図8】図7中の検出素子の変形状態を示す拡大図である。
【図9】本発明の他の実施の形態例を示す平面図である。
【図10】図9に示した形態例(主要部)の斜視図である。
【図11】図9に示した形態例の製造プロセスを示す図である。
【図12】電磁駆動方式の駆動手段を示す図である。
【符号の説明】
1,2 平板
3 駆動手段
4 基板
4a,4b 凹部平面
5a,5b,6a,6b 固定電極
11,12 傾動平面反射鏡
11a,12a 反射面
13a,13b,14a,14b ヒンジ部(可撓性捩じり梁部)
20 対向平面反射鏡
81,82 検出素子
Claims (5)
- 出射光の偏向角が一定の波形を描いて増減するように入射光を偏向させる光偏向器であって、
傾動中心軸が平行である第1および第2の傾動平面反射鏡で順次反射した後の光が光偏向器の出射光となると共に、前記第2の傾動平面反射鏡は、前記一定の波形の基本周波数および近似振幅で往復傾動され、前記第1の傾動平面反射鏡は、光偏向器の出射光の偏向角が前記一定の波形を描いて増減するように補正傾動される光偏向器。 - 前記第2の傾動平面反射鏡は可撓性捩じり梁部により回転可能に支持され、該第2の傾動平面反射鏡の捩れ振動系の固有振動数は、前記一定の波形の基本周波数もしくはその近傍の周波数となるように選択されていることを特徴とする請求項1記載の光偏向器。
- 傾動中心軸が平行である前記第1および第2の傾動平面反射鏡は、同一平板上に板厚方向に傾動可能に形成され、該第1および第2の傾動平面反射鏡には対向平面反射鏡が対向配置され、光偏向器への入射光は、前記第1および第2の傾動平面反射鏡と前記対向平面反射鏡との間で往復しながら、前記第1および第2の傾動平面反射鏡に順次入射することを特徴とする請求項1または2記載の光偏向器。
- 前記第1の傾動平面反射鏡は、前記第2の傾動平面反射鏡よりも小さい平面反射鏡で構成され、第2の傾動平面反射鏡よりも高速で傾動できるようになっていることを特徴とする請求項3記載の光偏向器。
- 前記第1および第2の傾動平面反射鏡はフォト・リソグラフィー技術を用いて一括製作されていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の光偏向器。
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