JP2004346909A - ピストンのシール構造 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】このピストンのシール構造は、ディーゼルエンジンのピストン1に適用されて、ピストン1のトップリング溝D1にレクタンギュラリング(トップリングR1)を装着することによりシリンダSとの摺動部におけるシールを実現する。そして、トップリング溝D1の下面(リング溝下面Dfl)をピストン1の径方向外方に向かってエンジンの燃焼室とは反対側に傾斜する面として形成した。
【選択図】図3
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンにおいて燃焼室内のガスをシールするためのピストンのシール構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
エンジンにおいては、ピストンのリング溝に装着されたピストンリングを通じて燃焼室内のガスのシールが行われている。
【0003】
一般に、ピストンリングとしてレクタンギュラリング(断面が矩形状のリング)を採用する場合、ピストンリングとシリンダとの摩耗の均一化を図るため、リング溝の下面(ピストンリングの下面と対向する面)は水平な状態に維持されていることが望ましいと考えられている。
【0004】
一方で、ピストンの熱膨張時にはリング溝の下面が燃焼室から離間する方向に変形することが知られている。
こうしたことから、従来、リング溝の下面はエンジンの所定運転状態(エンジンの暖機完了後)において水平となるように形成されている。
【0005】
即ち、図9に示すように、ピストン5の冷間時においてリング溝51の下面(リング溝下面52)がピストンの径方向外方に向かってエンジンの燃焼室側に傾斜した状態となるようにリング溝51が形成されている。
【0006】
ところで、ピストンリングのシール態様については、次のようなことが知られている。
[イ]ピストンリングの下面の内周とリング溝の下面とが接触した「内側シール」の状態のとき、燃焼室内のガスのくさび作用が小さくなり高いシール性能が得られる。
[ロ]ピストンリングの下面とリング溝の下面の外周とが接触した「外側シール」の状態のとき、燃焼室内のガスのくさび作用が大きくなりシール性能が低下する。
【0007】
レクタンギュラリングを上記ピストン5に装着した場合には、図9に示されるように、レクタンギュラリング6の下面(リング下面61)とリング溝下面52の外周とが接触した「外側シール」の状態となる。
【0008】
この場合、ピストン5とシリンダ7との摺動部におけるシール性能の低下が問題となるため、通常は以下の[A]及び[B]の処理を通じて「内側シール」の状態が得られるようにしている。
[A]レクタンギュラリングの上面の内周側に面取り加工を通じてインナベベルを設けることにより、レクタンギュラリングに所定のねじれ角度を生じさせる。
[B]インナベベルが設けられたレクタンギュラリングをリング溝に装着した際にリング下面とリング溝の下面とに所定の相対角度が形成されるように、リング溝の下面の傾斜角度及びリングのねじれ角度を調整する。
【0009】
図10に示すように、インナベベル62を有するレクタンギュラリング6をピストン5へ装着することにより、レクタンギュラリング6とリング溝下面52とが「内側シール」の状態に維持されるようになる。
【0010】
なお、本発明にかかる先行技術文献としては、以下に示す特許文献1が挙げられる。
【0011】
【特許文献1】
特開昭59−043260号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、本発明者がエンジンの運転中における上記ピストンのリング溝及びリングの変形挙動について解析を行ったところ、次のようなことが明らかにされた。
【0013】
ピストン5を搭載したエンジンにおいては、エンジン(ピストン5)の冷間時、図10に示されるようにリング溝下面52とリング下面61とによる「内側シール」の状態が確保される。
【0014】
しかし、エンジンの運転中、リング溝下面52の傾斜度合い及びレクタンギュラリング6のねじれ角度がエンジンの運転状態に応じて変動することにより、図11に示すようにリング下面61とリング溝下面52の外周とが接触して「外側シール」の状態となることもある。
【0015】
即ち、ピストン5とシリンダ7との摺動部におけるシール状態は、エンジンの運転状態に応じて「内側シール」の状態(図10)と「外側シール」の状態(図11)とを遷移するようになる。
【0016】
このように、上記エンジンにおいては、シール性能の高い「内側シール」とシール性能の低い「外側シール」と遷移する不安定なシール態様を通じて燃焼室内のガスのシールが行われている。
【0017】
なお、特許文献1に記載のピストンのシール構造においては、トップリングの下面とリング溝の下面とのなす角度が5分〜25分となるようにピストンリングを構成している。
【0018】
しかし、上記文献においては、ピストンの熱膨張時におけるリング溝の形状やリングの変形挙動については何ら考慮されていないため、上記構成を採用したとしても適切なシール態様が得られないことも考えられる。
【0019】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、安定したシール状態を好適に確保することのできるピストンのシール構造を提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1記載の発明は、エンジンのピストンに適用されて、前記ピストンのリング溝にレクタンギュラリングを装着することによりシリンダとの摺動部におけるシールを実現するピストンのシール構造において、前記リング溝の下面を前記ピストンの径方向外方に向かって前記エンジンの燃焼室とは反対側に傾斜する面として形成したことを要旨としている。
【0021】
上記構成によれば、リング溝の下面がピストンの径方向外方に向かってエンジンの燃焼室とは反対側に傾斜する面として形成される。これにより、レクタンギュラリングをリング溝へ装着することでリングの下面内周とリング溝の下面とが接触した「内側シール」の状態が的確に実現されるため、安定したシール性能を好適に確保することができる。
【0022】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のピストンのシール構造において、前記リング溝の下面が前記ピストンの温度状態にかかわらず前記エンジンの燃焼室とは反対側へ傾斜した状態に維持されるように前記リング溝の傾斜度合いを設定したことを要旨としている。
【0023】
上記構成によれば、リング溝の下面がピストンの温度状態にかかわらずエンジンの燃焼室とは反対側へ傾斜した状態に維持されるようにリング溝の傾斜度合いが設定される。これにより、ピストンの温度状態にかかわらずレクタンギュラリングの下面内周とリング溝の下面とが接触した「内側シール」の状態が確保されるため、より安定したシール状態を実現することができるようになる。
【0024】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載のピストンのシール構造において、前記リング溝を前記ピストンのトップリング溝として形成したことを要旨としている。
【0025】
上記構成によれば、トップリング溝の下面がピストンの径方向外方に向かってエンジンの燃焼室とは反対側に傾斜する面として形成される。これにより、シール性能が最も要求されるトップリング溝において、上記請求項1または2記載の発明の作用効果が得られるようになるため、シール性能のさらなる向上を図ることができるようになる。
【0026】
請求項4記載の発明は、請求項1または2記載のピストンのシール構造において、前記リング溝を前記ピストンのセカンドリング溝として形成したことを要旨としている。
【0027】
上記構成によれば、セカンドリング溝の下面がピストンの径方向外方に向かってエンジンの燃焼室とは反対側に傾斜する面として形成される。こうした構成を採用することによっても、上記請求項1または2記載の発明の作用効果に準じた作用効果が得られるようになる。
【0028】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載のピストンのシール構造において、前記エンジンがディーゼルエンジンであることを要旨としている。
上記構成によれば、ディーゼルエンジンのピストンにおいて、リング溝の下面がピストンの径方向外方に向かってエンジンの燃焼室とは反対側に傾斜する面として形成される。ちなみに、ディーゼルエンジンにおいてはより高いシール性能が要求されるため、ピストンリングとしてキーストンリングが採用されることもある。しかし、キーストンリングは製造工程においてテーパ加工が必要となるため、工数及びコストの増大が問題となる。この点、当該シール構造を採用することにより、レクタンギュラリングを流用して高いシール性能を確保することが可能となるため、ピストン及びピストンリングの製造にかかる工数及びコストの増大を抑制することができるようになる。
【0029】
【発明の実施の形態】
本発明を具体化した実施の形態について、図1〜図8を参照して説明する。
本実施の形態のピストンは、ディーゼルエンジンに搭載されるとともに、ピストンリングとしてレクタンギュラリングが装着される。
【0030】
図1を参照して、ピストンの構成について説明する。なお、図1は、冷間状態におけるピストンの断面構造を示している。
ピストン1には、ピストンピン穴11よりも上方(ピストンヘッド12側)の外周面に、以下の各リング溝が形成されている。なお、図中の一点鎖線C−Cはピストン1の中心線を示している。
[a]トップリングR1を装着するためのトップリング溝D1。
[b]セカンドリングR2を装着するためのセカンドリング溝D2。
[c]オイルリングR3を装着するためのオイルリング溝D3。
【0031】
ピストン1を搭載したディーゼルエンジンにおいては、トップリングR1及びセカンドリングR2を通じてピストン1とシリンダとの摺動部におけるシールが実現される。
【0032】
図2を参照して、トップリング溝D1の詳細な構成について説明する。なお、図2は、図1の破線内の拡大図を示している。
トップリング溝D1は、以下の各リング溝面により形成されている。
[a]トップリングR1における燃焼室側の面(リング上面Rfu)と対向するリング溝上面Dfu。
[b]トップリングR1における燃焼室側とは反対の面(リング下面Rfl)と対向するリング溝下面Dfl。
[c]トップリングR1の内周面(リング内周面Rfi)と対向するリング溝外周面Dfi。
【0033】
リング溝下面Dflは、ピストン1の径方向外方(矢印Awにて示す方向)となるほどピストンヘッド12から離間する方向へ傾斜した面として形成されている。換言すると、リング溝下面Dflは、ピストン1の径方向外方に向かってエンジンの燃焼室側とは反対の方向へ傾斜する面として形成されている。
【0034】
リング溝上面Dfuは、水平面A−Aに対して平行な面として形成されている。
リング溝外周面Dfiは、水平面A−Aに対して垂直に交差する面として形成されている。
【0035】
ここで、リング溝下面Dflと水平面A−Aとのなす角度を以下のように定義する。
[イ]「水平面A−Aを基準として、ピストンヘッド12に近接する方向を正側の角度」
[ロ]「水平面A−Aを基準として、ピストンヘッド12から離間する方向を負側の角度」
リング溝下面Dflは、水平面A−Aに対して負側の所定角度(下面傾斜角度THl)を有する傾斜面となっている。この下面傾斜角度THlは、ピストン1の温度状態にかかわらずリング溝下面Dflが水平面A−Aに対して負側の角度を有するように設定される。
【0036】
なお、水平面A−Aは、ピストン1の中心線C−Cを含む平面に対して垂直に交差する平面を示す。
次に、本実施の形態のシール構造を通じて奏せられる作用効果について説明する。
【0037】
図3を参照して、ピストン1の冷間時における燃焼室内のガスのシール態様について説明する。
図3は、ピストン1をディーゼルエンジンのシリンダS内に挿入した状態において、ディーゼルエンジンが冷間状態のときのトップリング溝D1及びトップリングR1の断面形状を示している。
【0038】
このとき、リング溝下面Dflが初期の状態(変形していない状態)にあるため、リング溝下面Dflと水平面A−Aとのなす角度は下面傾斜角度THlとなる。
【0039】
リング溝下面Dflとリング下面Rflとの間には、下面傾斜角度THlに相当する相対角度THrが形成される。
燃焼室内のガスのシール態様は、リング下面Rflの内周(リング下面内周Rri)とリング溝下面Dflが接触した「内側シール」の状態に維持される。
【0040】
図4を参照して、ピストン1の熱膨張時における燃焼室内のガスのシール態様について説明する。
図4は、ピストン1をディーゼルエンジンのシリンダS内に挿入した状態において、ディーゼルエンジンの暖機が完了した状態のときのトップリング溝D1及びトップリングR1の断面構造を示している。
【0041】
このとき、ピストン1の熱膨張によりリング溝下面Dflがピストンヘッド12から離間する方向に変形しているため、リング下面Rflと水平面A−Aとのなす角度は下面傾斜角度THlよりも大きい角度(傾斜角度THlx)となる。
【0042】
燃焼室内のガスのシール態様は、リング下面Rflの内周(リング下面内周Rri)とリング溝下面Dflが接触した「内側シール」の状態に維持される。
このように、リング溝下面Dflをピストン1の径方向外方にかけてピストンヘッド12から離間する方向へ傾斜した面として形成したことにより、ピストン1の温度状態にかかわらずトップリングR1による燃焼室内のガスのシール態様が「内側シール」の状態に維持されるようになる。
【0043】
これにより、トップリングR1を通じて高いシール性能が確保されるとともに、ディーゼルエンジンの全運転領域において安定したシール性能が得られるようになる。
【0044】
ちなみに、「内側シール」の状態においては、リング内周面Rfiとリング溝下面Dflとのなす角度THiが大きい角度に維持されることにより燃焼室内のガスのくさび効果が小さくなるため、高いシール性能が実現される。
【0045】
また、本実施の形態のシール構造によれば、以下に説明する作用効果が奏せられるようにもなる。
即ち、図5に示すピストン2(リング溝下面21がピストン2の径方向外方となるほどピストンヘッド22に近接するようにトップリング溝23が形成されているピストン2)をエンジンに採用することにより生じる以下の[課題1]及び[課題2]を解消することができるようになる。
【0046】
[課題1]リング溝下面21が水平面A−Aに対して正側の所定角度(下面傾斜角度THu)を有する傾斜面として形成されているピストン2(図5)をエンジンに採用する場合、次のようなことが問題となる。
【0047】
即ち、こうしたピストン2にレクタンギュラリング(トップリング)3を装着した場合には、リング下面31とリング溝下面21の外周(リング溝下面外周21p)とが接触した「外側シール」の状態となる(図5)。
【0048】
ちなみに、「外側シール」の状態においては、リング下面31とリング溝下面21とのなす角度THiが小さい角度に維持されることにより燃焼室内のガスのくさび効果が大きくなるため、シール性能の低下をまねくことになる。
【0049】
そこで、ピストン2をエンジンに採用する場合には、リング下面31の内周(リング下面内周31i)とリング溝下面21とが接触した「内側シール」の状態を確保するため、図6に示すように、レクタンギュラリング3の内周面上部に対する面取り加工を通じてインナベベル32を設けるようにしている。
【0050】
これにより、レクタンギュラリング3にねじれが生じて、リング下面31が水平面A−Aに対して所定角度(リングねじれ角度THt)を有する傾斜面となるため、レクタンギュラリング3をピストン2に装着した際には、図7に示すように、リング溝下面21とリング下面31とに相対角度THrxが生じて「内側シール」の状態が実現される。
【0051】
一方で、エンジンの爆発工程においては、燃焼圧力によりレクタンギュラリング3がリング溝下面21に押しつけられる方向にねじれることが知られている。このため、ピストン2及びレクタンギュラリング3の製造工程においては、こうしたリングのねじれを許容しつつリング溝下面21とリング下面31との相対角度THrxを維持するために、リング溝下面21の傾斜度合い(下面傾斜角度THu)及びリングねじれ角度THtの調整に多大な工数及びコストがかけられている(以上[課題1])。
【0052】
この点、本実施の形態においては、リング溝下面Dflがピストン1の径方向外方にかけてピストンヘッド12から離間する方向へ傾斜するようにトップリング溝D1を形成しているため(図2)、通常のレクタンギュラリング(インナベベルが設けられていないレクタンギュラリング)をピストン1に装着することによってもリング溝下面Dflとリング下面Rflとの間に相対角度THrが形成される(「内側シール」の状態が得られる)。
【0053】
従って、レクタンギュラリングに対する面取り加工を省略することが可能となるため、レクタンギュラリングの製造工程における工数及びコストの削減が図られるようになる。また、相対角度の確保にともなうリング溝下面の傾斜度合いの調整も不要となるため、ピストンの製造工程における工数及びコストの削減も図られるようになる。
【0054】
[課題2]ピストン2(図7)を搭載したエンジンにおいては、次のようなことが問題となる。
即ち、エンジン(ピストン2)の冷間時はリング溝下面21とリング下面31とによる「内側シール」の状態(図7)が確保されるものの、エンジンの運転中、リング溝下面21の傾斜度合い(下面傾斜角度THu)及びレクタンギュラリング3のねじれ度合いがエンジンの運転状態に応じて変動することに起因して、図8に示すようにリング下面31とリング溝下面21の外周(リング溝下面外周21p)とが接触した「外側シール」の状態となることもある。
【0055】
ちなみに、リング溝下面21の傾斜度合い(下面傾斜角度THu)は、通常、エンジンの所定運転状態(例えば暖機完了後)においてリング溝下面21が水平面A−Aに対して平行となるように設計されているものの、実際にはエンジンの運転状態に応じて変動している。
【0056】
こうしたことから、ピストン2を搭載したエンジンにおいては、エンジンの運転状態に応じて「内側シール」の状態(図7)と「外側シール」の状態(図8)とを遷移する不安定なシール態様を通じて燃焼室内のガスのシールが行われることになる(以上[課題2])。
【0057】
この点、本実施の形態のシール構造を採用した場合には、エンジンの運転状態に応じてリング溝下面Dflの傾斜度合い及びレクタンギュラリングRのねじれ度合いが変動したとしても「内側シール」の状態が維持されるため、「内側シール」の状態と「外側シール」の状態とを遷移する不安定なシール態様となることが好適に回避されるようになる。
【0058】
以上詳述したように、この実施の形態にかかるピストンのシール構造によれば、以下に列記するような優れた効果が得られるようになる。
(1)本実施の形態では、リング溝下面Dflがピストン1の径方向外方にかけてピストンヘッド12から離間する方向へ傾斜したトップリング溝D1をピストン1に形成している。これにより、トップリングR1のリング下面内周Rriとリング溝下面Dflとが的確に「内側シール」の状態に維持されるため、安定したシール状態を好適に確保することができるようになる。
【0059】
(2)また、通常のレクタンギュラリングをピストン1に装着することにより「内側シール」の状態が確保されるため、トップリングR1に対する面取り加工の省略が可能になるとともに、トップリングR1の製造工程における工数及びコストの削減を図ることができるようになる。
【0060】
(3)また、リング溝下面Dflの傾斜度合いの調整も不要となるため、ピストンの製造工程における工数及びコストの削減を図ることができるようになる。
(4)本実施の形態では、ピストン1の温度状態にかかわらずリング溝下面Dflが水平面A−Aに対して負側の角度を有するように下面傾斜角度THlを設定している。これにより、ピストン1の温度状態にかかわらず「内側シール」の状態が確保されるため、より安定したシール状態を実現することができるようになる。
【0061】
(5)また、「内側シール」の状態と「外側シール」の状態とを遷移する不安定なシール態様となることを好適に回避することができるようになる。
(6)本実施の形態では、トップリング溝D1に対して上記(1)の構成を適用するようにしている。これにより、シール性能が最も要求されるトップリング溝において高いシール性能が得られるため、シール性能のさらなる向上を図ることができるようになる。
【0062】
(7)本実施の形態では、ディーゼルエンジンのピストン1に対して上記(1)の構成を適用するようにしている。これにより、ディーゼルエンジンにおいてもレクタンギュラリングを流用して高いシール性能を確保することが可能となるため、ピストン及びピストンリングの製造にかかる工数及びコストの増大を抑制することができるようになる。
【0063】
なお、上記実施の形態は、これを適宜変更した、例えば次のような形態として実施することもできる。
・上記実施の形態では、ピストン1に対して、リング溝下面Dflがピストン1の径方向外方にかけてピストンヘッド12から離間する方向へ傾斜したトップリング溝D1を形成する構成としたが、例えば次のように変更することも可能である。即ち、ピストン1に対して、リング溝下面がピストン1の径方向外方にかけてピストンヘッド12から離間する方向へ傾斜したセカンドリング溝を形成することもできる。
【0064】
・また、リング溝下面がピストン1の径方向外方にかけてピストンヘッド12から離間する方向へ傾斜したトップリング溝及びセカンドリング溝をピストン1に形成することもできる。
【0065】
・上記実施の形態では、リング溝上面Dfuが水平面A−Aに対して平行な面となるようにトップリング溝D1を形成したが、リング溝上面Dfuの構成は上記実施の形態にて例示した構成に限られず適宜変更可能である。
【0066】
・上記実施の形態では、リング溝外周面Dfiが水平面A−Aに対して垂直に交差する面となるようにトップリング溝D1を形成したが、リング溝外周面Dfiの構成は上記実施の形態にて例示した構成に限られず適宜変更可能である。
【0067】
・上記実施の形態では、ディーゼルエンジンのピストン1に対して本発明を適用する構成としたが、本発明の適用対象はディーゼルエンジンのピストンに限られない。要するに、レクタンギュラリングがピストンリングとして装着されるピストンであれば、いずれのピストンに対しても本発明の適用は可能であり、こうした構成を採用した場合にも上記実施の形態の作用効果に準じた作用効果が得られるようになる。
【0068】
以上の事項も含めて、最後に、この発明にかかるピストンのシール構造は次のような技術思想を含むものであることを付記しておく。
(1)エンジンのピストンに適用されて、前記ピストンのリング溝にレクタンギュラリングを装着することによりシリンダとの摺動部におけるシールを実現するピストンのシール構造において、前記リング溝の下面を前記ピストンの径方向外方となるほど同ピストンのヘッドから離間する方向に傾斜した面として形成したことを特徴とするピストンのシール構造。
【0069】
上記構成によれば、リング溝の下面がピストンの径方向外方となるほどピストンのヘッドから離間する方向に傾斜した面として形成される。これにより、レクタンギュラリングをリング溝へ装着することでリングの下面内周とリング溝の下面とが接触した「内側シール」の状態が的確に実現されるため、安定したシール性能を好適に確保することができるようになる。
【0070】
(2)前記(1)記載のピストンのシール構造において、前記リング溝の下面が前記ピストンの温度状態にかかわらず前記ピストンのヘッドから離間する方向へ傾斜した状態に維持されるように前記リング溝の傾斜度合いを設定したことを特徴とするピストンのシール構造。
【0071】
上記構成によれば、リング溝の下面がピストンの温度状態にかかわらずピストンのヘッドから離間する方向へ傾斜した状態に維持されるようにリング溝の傾斜度合いが設定される。これにより、ピストンの温度状態にかかわらずレクタンギュラリングの下面内周とリング溝の下面とが接触した「内側シール」の状態が確保されるため、より安定したシール状態を実現することができるようになる。
【0072】
(3)前記(1)または(2)記載のピストンのシール構造において、前記リング溝を前記ピストンのトップリング溝として形成したことを特徴とするピストンのシール構造。
【0073】
上記構成によれば、トップリング溝の下面がピストンの径方向外方となるほどピストンのヘッドから離間する方向に傾斜した面として形成される。これにより、シール性能が最も要求されるトップリング溝において、上記(1)または(2)記載の発明の作用効果が得られるようになるため、シール性能のさらなる向上を図ることができるようになる。
【0074】
(4)前記(1)または(2)記載のピストンのシール構造において、前記リング溝を前記ピストンのセカンドリング溝として形成したことを特徴とするピストンのシール構造。
【0075】
上記構成によれば、セカンドリング溝の下面がピストンの径方向外方となるほどピストンのヘッドから離間する方向に傾斜した面として形成される。こうした構成を採用することによっても、上記(1)または(2)記載の発明の作用効果に準じた作用効果が得られるようになる。
【0076】
(5)前記(1)〜(4)のいずれかに記載のピストンのシール構造において、前記エンジンがディーゼルエンジンであることを特徴とするピストンのシール構造。
【0077】
上記構成によれば、ディーゼルエンジンのピストンにおいて、リング溝の下面がピストンの径方向外方となるほどピストンのヘッドから離間する方向に傾斜した面として形成される。これにより、レクタンギュラリングを流用して高いシール性能を確保することが可能となるため、ディーゼルエンジンのピストン及びピストンリングの製造にかかる工数及びコストの増大を抑制することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるピストンのシール構造を具体化した実施の形態について、ピストンの断面構造を示す図。
【図2】同実施の形態のピストンについて、トップリング溝及びトップリングの断面構造を示す図。
【図3】同実施の形態のピストンについて、ピストンの冷間時におけるトップリング溝及びトップリングの断面構造を示す図。
【図4】同実施の形態のピストンについて、ピストンの熱膨張時におけるトップリング溝及びトップリングの断面構造を示す図。
【図5】ピストンリング溝及びピストンリングの断面構造を示す図。
【図6】ピストンリングの断面構造を示す図。
【図7】ピストンリング溝及びピストンリングの断面構造を示す図。
【図8】ピストンリング溝及びピストンリングの断面構造を示す図。
【図9】従来のピストンのシール構造について、ピストンリング溝の断面構造を示す図。
【図10】従来のピストンのシール構造について、ピストンリング溝及びピストンリングの断面構造を示す図。
【図11】従来のピストンのシール構造について、ピストンリング溝及びピストンリングの断面構造を示す図。
【符号の説明】
1…ピストン、11…ピストンピン穴、12…ピストンヘッド、D1…トップリング溝、D2…セカンドリング溝、D3…オイルリング溝、R1…トップリング、R2…セカンドリング、R3…オイルリング、Rfu…リング上面、Rfl…リング下面、Rfi…リング内周面、Rri…リング下面内周、Dfu…リング溝上面、Dfl…リング溝下面、Dfi…リング溝外周面、S…シリンダ。
Claims (5)
- エンジンのピストンに適用されて、前記ピストンのリング溝にレクタンギュラリングを装着することによりシリンダとの摺動部におけるシールを実現するピストンのシール構造において、
前記リング溝の下面を前記ピストンの径方向外方に向かって前記エンジンの燃焼室とは反対側に傾斜する面として形成した
ことを特徴とするピストンのシール構造。 - 請求項1記載のピストンのシール構造において、
前記リング溝の下面が前記ピストンの温度状態にかかわらず前記エンジンの燃焼室とは反対側へ傾斜した状態に維持されるように前記リング溝の傾斜度合いを設定した
ことを特徴とするピストンのシール構造。 - 請求項1または2記載のピストンのシール構造において、
前記リング溝を前記ピストンのトップリング溝として形成した
ことを特徴とするピストンのシール構造。 - 請求項1または2記載のピストンのシール構造において、
前記リング溝を前記ピストンのセカンドリング溝として形成した
ことを特徴とするピストンのシール構造。 - 請求項1〜4のいずれかに記載のピストンのシール構造において、
前記エンジンがディーゼルエンジンである
ことを特徴とするピストンのシール構造。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2003147945A JP2004346909A (ja) | 2003-05-26 | 2003-05-26 | ピストンのシール構造 |
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JP2003147945A JP2004346909A (ja) | 2003-05-26 | 2003-05-26 | ピストンのシール構造 |
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-
2003
- 2003-05-26 JP JP2003147945A patent/JP2004346909A/ja active Pending
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JP2011523004A (ja) * | 2008-06-12 | 2011-08-04 | エムエーエヌ・ディーゼル・アンド・ターボ・フィリアル・アフ・エムエーエヌ・ディーゼル・アンド・ターボ・エスイー・ティスクランド | ピストンリングを安定させるための方法および当該方法を実施するための手段および当該方法の使用 |
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