JP2004346613A - コンクリート構造物の打継目の補修構造及びその補修方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】目地などの打継目としての本来の機能を損なわずに補修ができるコンクリート構造物の打継目の補修構造及びその補修方法を提供すること。
【解決手段】コンクリート構造物1を不連続に形成するために設けたコンクリート構造物の打継目2の補修構造であって、前記打継目2を跨いで断面視凸状の弾性型枠材4を配置し、前記弾性型枠材4の前記打継目2と接しない表面を前記被覆材3で覆い、前記打継目2を跨いで前記コンクリート構造物1の表面に被覆材3を固定することにより、前記被覆材3は前記打継目2と対向する位置において打継目2から離隔して凸状31に形成されていることを特徴とするものである。
【選択図】 図1
【解決手段】コンクリート構造物1を不連続に形成するために設けたコンクリート構造物の打継目2の補修構造であって、前記打継目2を跨いで断面視凸状の弾性型枠材4を配置し、前記弾性型枠材4の前記打継目2と接しない表面を前記被覆材3で覆い、前記打継目2を跨いで前記コンクリート構造物1の表面に被覆材3を固定することにより、前記被覆材3は前記打継目2と対向する位置において打継目2から離隔して凸状31に形成されていることを特徴とするものである。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンクリート構造物に意図的に設ける目地や打継目などの不連続部が、時間の経過や寒暖又は乾湿の繰り返しなどで劣化した場合、又は劣化するおそれがある場合に実施するコンクリート構造物の打継目の補修構造及びその補修方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
トンネルの覆工板や橋梁の床版のように延長方向に長く伸びるコンクリート構造物は、目地などの打継目を設けて不連続にする。すなわち、コンクリート構造物が温度変化によって伸縮した場合に、全長にわたってコンクリート構造物が連続していると内部に圧縮応力や引張応力が発生する。ひび割れや劣化の原因となるこの余分な応力の発生を抑えるために、通常、所定の長さでコンクリート構造物を区切って打継目を設けている。
しかし、コンクリート構造物は、種々の材料的・構造的な要因により経年劣化が生じ、ひび割れが発生して内部の鉄筋が腐食したり、腐食により断面欠損などを生じて構造耐力が低下したりする。特に、温度変化などによって伸縮を繰り返す打継目は劣化し易い。
図4にトンネルの覆工をコンクリート構造物で構築した覆工コンクリートaを示した。トンネルの覆工コンクリートaは、トンネルの延伸方向に単位長さごとに構築していくため、単位長さの覆工コンクリートa,a間には打継目bが形成される。この打継目bに近接する覆工コンクリートaの端部が劣化して劣化部cとなり、落下片dがトンネル内に落下すると、トンネルを走行する列車や自動車を損傷させる危険があるため、近年、社会問題にもなりつつある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記したように劣化したコンクリート構造物を補修する必要はあるが、以下のような問題点がある。
<イ>トンネルの覆工コンクリートの内壁面を、鋼板、プレキャストパネル、金網などですべて覆う方法が従来から実施されている。しかし、打継目だけを早急に補修したい場合や、打継目の補修だけで充分な場合には、補修工事が過剰となり不経済かつ非効率である。
<ロ>目地などの打継目は、コンクリート構造物の伸縮を許容するために意図的に設けられたものである。このため、打継目を板材で覆って連結すると、目地としての役割が果たせなくなり、コンクリート構造物の内部に余分な応力が発生する要因となる。
【0004】
【発明の目的】
本発明は上記したような従来の問題を解決するためになされたもので、目地などの打継目としての本来の機能を損なわずに補修ができるコンクリート構造物の打継目の補修構造及びその補修方法を提供することを目的とする。
また、効率的に打継目周辺のコンクリート構造物を補修できるコンクリート構造物の打継目の補修構造及びその補修方法を提供することを目的とする。
さらに、劣化の進行を抑えることができるコンクリート構造物の打継目の補修構造を提供することを目的とする。
本発明は、これらの目的の少なくとも一つを達成するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記のような目的を達成するために、本発明のコンクリート構造物の打継目の補修構造は、コンクリート構造物を不連続に形成するために設けたコンクリート構造物の打継目の補修構造であって、前記打継目を跨いで前記コンクリート構造物の表面に被覆材を固定し、前記被覆材は前記打継目と対向する位置において打継目から離隔して凸状に形成されていることを特徴とするものである。ここで打継目には、前記打継目を跨いで断面視凸状の弾性型枠材を配置し、前記弾性型枠材の前記打継目と接しない表面を前記被覆材で覆うことが好ましい。また、前記被覆材として繊維シートを使用し、接着剤を前記繊維シートに含浸させて前記コンクリート構造物に被覆材を固定することもできる。
コンクリート構造物の打継目の補修構造。
さらに、上記したいずれかに記載のコンクリート構造物の打継目の補修構造において、前記打継目の両側にある前記コンクリート構造物を、前記打継目から前記コンクリート構造物の厚さ以上離れた位置まで前記被覆材で被覆するのが好ましい。例えば、打継目からコンクリート構造物の厚さに200mm程度を加えた範囲にあるコンクリート構造物の表面を被覆材で覆うことができる。
【0006】
また、本発明のコンクリート構造物の打継目の補修方法は、コンクリート構造物を不連続に形成するために設けたコンクリート構造物の打継目の補修方法において、断面視凸状の弾性型枠材を、前記打継目を跨ぐようにして前記コンクリート構造物の表面に貼り付け、前記弾性型枠材を被覆材で覆い、前記コンクリート構造物の表面に前記被覆材を固定することを特徴とする方法である。ここで、前記弾性型枠材を繊維シート製の被覆材で覆い、前記繊維シートに接着剤を含浸させて前記コンクリート構造物の表面に前記被覆材を貼り付けることもできる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0008】
<イ>コンクリート構造物
本発明の適用対象となるコンクリート構造物1は、打継目2を有する構造物である。打継目2には、コンクリートの打設単位ごとに端面に発生する打継目の他に、コンクリートの温度変化等による伸縮を吸収するために設けるような目地も含まれる。打継目2には、目地材などが充填されていても、されていなくとも良い。
コンクリート構造物1としては、例えばトンネルの覆工板、橋梁の床版等の延長方向に長く伸びる構造物が該当する。トンネル覆工板であれば、トンネル内部への劣化部11の落下を防止するために、覆工板の内壁面を補修する。また、橋梁の床版であれば、床板の下面を補修して下方への劣化部11の落下を防止する。
【0009】
<ロ>被覆材
被覆材3は、打継目2を跨いでコンクリートの構造物1a,1bの表面を被覆するシート材又は板材である。被覆材3は、打継目2を挟んだ両側のコンクリート構造物1a,1bを連結する。このため、コンクリート構造物1が温度変化などによって伸縮又は移動しようとした場合に、その伸縮や移動を妨げない部材でなければならない。
そこで、本発明では被覆材3に凸状部31を設ける。凸状部31aは、例えば三角形状の山形に形成することができる(図1参照)。また、断面視が半円状となる凸状部31cにすることもできる(図3参照)。
【0010】
被覆材3には、繊維シートなどのシート状の被覆材3a,3cを使用することができる。繊維シートとしては、例えば炭素繊維シート、アラミド繊維シート、ポリエチレン繊維シート、ポリプロピレン繊維シート、ガラス繊維シート、ビニロン繊維シート等が使用できる。ここで、各種繊維シートは、公知の単一配向シート、単一配向シートを合板のように交互に積層したもの、クロス状のもの等を使用することができる。例えば炭素繊維シートは、比重が1.7〜1.8と軽量であり、錆びない特性を有するとともに、繊維方向では、鉄筋の約5倍〜6倍である5000〜6000(N/mm2)という大きな引張強度を有している。
【0011】
また、板状の材料で被覆材3bを製作することもできる(図2参照)。板材の中央付近を例えば山形に折り曲げて凸状部31bを形成する。板状の被覆材3bの材料には、凸状部31bを横断する方向(図2のA方向)の力が作用した場合に折り曲げた曲折部32,33の角度が変化する材料を使用する。このような材料であれば、被覆材3bを固定したコンクリート構造物1が伸縮した場合でも、凸状部31bが開閉して打継目2の機能を損なうことがない。例えば、薄いセルロイド板などが板材として使用できる。
【0012】
<ハ>弾性型枠材
弾性型枠材4は、被覆材3の凸状部31の形状を保持するために配置する。弾性型枠材4は、被覆材3を配置するときには凸状部31の型枠としての役割を果たす。また、使用時においては、コンクリート構造物1が伸縮すると、被覆材3の凸状部31が盛り上がったり沈み込んだりするため、その凸状部31の変形に追従して変形できる材料を使用する必要がある。例えば、発泡ウレタンやゴムなどの弾性材料が使用できる。
弾性型枠材4は、断面視凸状に成形する。被覆材3aの凸状部31aを山形にする場合は、三角柱状の弾性型枠材4aを使用する(図1参照)。また、被覆材3cの凸状部31cを断面視半円形にする場合は、円柱を縦断方向に分割した半円断面の弾性型枠材4bを使用する(図3参照)。ここで、板材で被覆材3bを製作した場合は、凸状部31bの形状が保持できるため、型枠として弾性型枠材4を配置する必要はなく、省略することもできる。但し、後述するように凸状部31bの空間を充填する機能を要求するときは、板状の被覆材3bを使用する場合にも弾性型枠材4を配置する。
【0013】
弾性型枠材4は、打継目2を挟んだ両側のコンクリート構造物1a,1bに底面を接着して固定する。そして、弾性型枠材4を被覆材3で被覆すれば、凸状部31の内側が弾性型枠材4で満たされ、被覆材3の凸状部31の隙間に水などが溜まって伸長したり、コンクリート構造物1の劣化の原因となったり、被覆材3がコンクリート構造物1から剥離したりすることを防止できる。
【0014】
<ニ>被覆材の固定手段
被覆材3は、接着剤やボルトやアンカーピンなどによってコンクリート構造物1の表面に固定することができる。
特に、被覆材3に繊維シート材料を使用する場合は、接着剤を繊維シートに含浸させてコンクリート構造物1に固定することができる。ここで、含浸とは、多孔性物体(繊維シート)の改質のために空隙中に液状物質(接着剤)を浸入させることをいう。
接着剤には、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂系、EVA系(エチレン酢酸ビニル共重合樹脂系)、アクリル樹脂系等の樹脂系接着剤や、クロロプレンゴム系、スチレン・ブタジエンゴム系等のゴム系接着剤や、セメント系、石膏系等の水・気硬性接着剤を用いることができる。
【0015】
以下、図1を参照しながらコンクリート構造物の打継目の補修構造及びその補修方法の実施例について説明する。
【0016】
<イ>弾性型枠材の設置
まず、必要に応じて打継目2周辺のコンクリート構造物1表面に浮き上がった劣化部分を取り除く。また、陥没部にはセメントペーストなどを塗布して補修することもできる。
そして、打継目2を挟んだ両側のコンクリート構造物1a,1bの端部に三角柱状の弾性型枠材4aを接着剤などで貼り付けて固定し、打継目2の開口部を塞ぐ。
なお、板材製の被覆材3bなど凸状部31bの形状を保持できる被覆材3bを使用する場合は、弾性型枠材4の設置作業を省略することもできる。
【0017】
<ロ>被覆材の設置
弾性型枠材4aに密着するように被覆材3aを配置する。繊維シート製の被覆材3aを使用する場合は、凸状部31aの形状を保持することが難しいため、弾性型枠材4aの打継目2と接しない面、すなわち被覆材3aで覆う側の面に接着剤を塗布して被覆材3aを密着させることができる。
被覆材3aの幅は、両側の端部が打継目2からコンクリート構造物1の厚さ以上離れた位置まで配置できる幅にしておくのが好ましい。コンクリート構造物1は端面から45°の角度の範囲で劣化し易いとされているため、少なくともコンクリート構造物1の厚さ以上の範囲を被覆材3aで覆うのが好ましい。例えば、コンクリート構造物1の厚さにW=200mm程度を加えた範囲を被覆材3aで覆う。このように被覆材3aによって打継目2周辺のコンクリート構造物1a,1bの表面を被覆すれば、劣化部11がコンクリート構造物1から剥離しても被覆材3aで支えられて落下することがない。また、劣化し易い部分が被覆されるため、劣化の進行を抑えることができる。
また、弾性型枠材4の底面、又は弾性型枠材4を設置しない場合は被覆材3bの内面が、打継目2から流れ出る漏水などの樋の役割を果たすことができる。
【0018】
<ハ>接着剤の含浸
繊維シート製の被覆材3aを使用する場合は、接着剤を含浸させてコンクリート構造物1に固定することができる。接着剤の被覆材3aへの含浸は、被覆材3aを設置する前におこなってもよい。また、被覆材3aを設置した後に被覆材3aを覆うように接着剤を塗布して含浸させることもできる。
【0019】
【発明の効果】
本発明のコンクリート構造物の打継目の補修構造及びその補修方法は、以上説明したようになるから次のような効果を得ることができる。
<イ>コンクリート構造物が温度変化などによって伸縮しても、伸縮を妨げることがない。このため、伸縮目地などの打継目の機能を損なうことなく補修をおこなうことができる。
<ロ>打継目を集中的に補修することができる。このため、効率的かつ経済的である。
<ハ>劣化し易い打継目周辺のコンクリート構造物の表面を被覆材で被覆する。このため、コンクリート構造物の劣化の進行を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のコンクリート構造物の打継目の補修構造の実施例の説明図。
【図2】板材製の被覆材の実施例の斜視図。
【図3】断面視半円形の弾性型枠材と被覆材の実施例の説明図。
【図4】従来のコンクリート構造物の打継目の劣化状況を示した説明図。
【符号の説明】
1・・・コンクリート構造物
2・・・打継目
3・・・被覆材
31・・凸状部
4・・・弾性型枠材
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンクリート構造物に意図的に設ける目地や打継目などの不連続部が、時間の経過や寒暖又は乾湿の繰り返しなどで劣化した場合、又は劣化するおそれがある場合に実施するコンクリート構造物の打継目の補修構造及びその補修方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
トンネルの覆工板や橋梁の床版のように延長方向に長く伸びるコンクリート構造物は、目地などの打継目を設けて不連続にする。すなわち、コンクリート構造物が温度変化によって伸縮した場合に、全長にわたってコンクリート構造物が連続していると内部に圧縮応力や引張応力が発生する。ひび割れや劣化の原因となるこの余分な応力の発生を抑えるために、通常、所定の長さでコンクリート構造物を区切って打継目を設けている。
しかし、コンクリート構造物は、種々の材料的・構造的な要因により経年劣化が生じ、ひび割れが発生して内部の鉄筋が腐食したり、腐食により断面欠損などを生じて構造耐力が低下したりする。特に、温度変化などによって伸縮を繰り返す打継目は劣化し易い。
図4にトンネルの覆工をコンクリート構造物で構築した覆工コンクリートaを示した。トンネルの覆工コンクリートaは、トンネルの延伸方向に単位長さごとに構築していくため、単位長さの覆工コンクリートa,a間には打継目bが形成される。この打継目bに近接する覆工コンクリートaの端部が劣化して劣化部cとなり、落下片dがトンネル内に落下すると、トンネルを走行する列車や自動車を損傷させる危険があるため、近年、社会問題にもなりつつある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記したように劣化したコンクリート構造物を補修する必要はあるが、以下のような問題点がある。
<イ>トンネルの覆工コンクリートの内壁面を、鋼板、プレキャストパネル、金網などですべて覆う方法が従来から実施されている。しかし、打継目だけを早急に補修したい場合や、打継目の補修だけで充分な場合には、補修工事が過剰となり不経済かつ非効率である。
<ロ>目地などの打継目は、コンクリート構造物の伸縮を許容するために意図的に設けられたものである。このため、打継目を板材で覆って連結すると、目地としての役割が果たせなくなり、コンクリート構造物の内部に余分な応力が発生する要因となる。
【0004】
【発明の目的】
本発明は上記したような従来の問題を解決するためになされたもので、目地などの打継目としての本来の機能を損なわずに補修ができるコンクリート構造物の打継目の補修構造及びその補修方法を提供することを目的とする。
また、効率的に打継目周辺のコンクリート構造物を補修できるコンクリート構造物の打継目の補修構造及びその補修方法を提供することを目的とする。
さらに、劣化の進行を抑えることができるコンクリート構造物の打継目の補修構造を提供することを目的とする。
本発明は、これらの目的の少なくとも一つを達成するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記のような目的を達成するために、本発明のコンクリート構造物の打継目の補修構造は、コンクリート構造物を不連続に形成するために設けたコンクリート構造物の打継目の補修構造であって、前記打継目を跨いで前記コンクリート構造物の表面に被覆材を固定し、前記被覆材は前記打継目と対向する位置において打継目から離隔して凸状に形成されていることを特徴とするものである。ここで打継目には、前記打継目を跨いで断面視凸状の弾性型枠材を配置し、前記弾性型枠材の前記打継目と接しない表面を前記被覆材で覆うことが好ましい。また、前記被覆材として繊維シートを使用し、接着剤を前記繊維シートに含浸させて前記コンクリート構造物に被覆材を固定することもできる。
コンクリート構造物の打継目の補修構造。
さらに、上記したいずれかに記載のコンクリート構造物の打継目の補修構造において、前記打継目の両側にある前記コンクリート構造物を、前記打継目から前記コンクリート構造物の厚さ以上離れた位置まで前記被覆材で被覆するのが好ましい。例えば、打継目からコンクリート構造物の厚さに200mm程度を加えた範囲にあるコンクリート構造物の表面を被覆材で覆うことができる。
【0006】
また、本発明のコンクリート構造物の打継目の補修方法は、コンクリート構造物を不連続に形成するために設けたコンクリート構造物の打継目の補修方法において、断面視凸状の弾性型枠材を、前記打継目を跨ぐようにして前記コンクリート構造物の表面に貼り付け、前記弾性型枠材を被覆材で覆い、前記コンクリート構造物の表面に前記被覆材を固定することを特徴とする方法である。ここで、前記弾性型枠材を繊維シート製の被覆材で覆い、前記繊維シートに接着剤を含浸させて前記コンクリート構造物の表面に前記被覆材を貼り付けることもできる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0008】
<イ>コンクリート構造物
本発明の適用対象となるコンクリート構造物1は、打継目2を有する構造物である。打継目2には、コンクリートの打設単位ごとに端面に発生する打継目の他に、コンクリートの温度変化等による伸縮を吸収するために設けるような目地も含まれる。打継目2には、目地材などが充填されていても、されていなくとも良い。
コンクリート構造物1としては、例えばトンネルの覆工板、橋梁の床版等の延長方向に長く伸びる構造物が該当する。トンネル覆工板であれば、トンネル内部への劣化部11の落下を防止するために、覆工板の内壁面を補修する。また、橋梁の床版であれば、床板の下面を補修して下方への劣化部11の落下を防止する。
【0009】
<ロ>被覆材
被覆材3は、打継目2を跨いでコンクリートの構造物1a,1bの表面を被覆するシート材又は板材である。被覆材3は、打継目2を挟んだ両側のコンクリート構造物1a,1bを連結する。このため、コンクリート構造物1が温度変化などによって伸縮又は移動しようとした場合に、その伸縮や移動を妨げない部材でなければならない。
そこで、本発明では被覆材3に凸状部31を設ける。凸状部31aは、例えば三角形状の山形に形成することができる(図1参照)。また、断面視が半円状となる凸状部31cにすることもできる(図3参照)。
【0010】
被覆材3には、繊維シートなどのシート状の被覆材3a,3cを使用することができる。繊維シートとしては、例えば炭素繊維シート、アラミド繊維シート、ポリエチレン繊維シート、ポリプロピレン繊維シート、ガラス繊維シート、ビニロン繊維シート等が使用できる。ここで、各種繊維シートは、公知の単一配向シート、単一配向シートを合板のように交互に積層したもの、クロス状のもの等を使用することができる。例えば炭素繊維シートは、比重が1.7〜1.8と軽量であり、錆びない特性を有するとともに、繊維方向では、鉄筋の約5倍〜6倍である5000〜6000(N/mm2)という大きな引張強度を有している。
【0011】
また、板状の材料で被覆材3bを製作することもできる(図2参照)。板材の中央付近を例えば山形に折り曲げて凸状部31bを形成する。板状の被覆材3bの材料には、凸状部31bを横断する方向(図2のA方向)の力が作用した場合に折り曲げた曲折部32,33の角度が変化する材料を使用する。このような材料であれば、被覆材3bを固定したコンクリート構造物1が伸縮した場合でも、凸状部31bが開閉して打継目2の機能を損なうことがない。例えば、薄いセルロイド板などが板材として使用できる。
【0012】
<ハ>弾性型枠材
弾性型枠材4は、被覆材3の凸状部31の形状を保持するために配置する。弾性型枠材4は、被覆材3を配置するときには凸状部31の型枠としての役割を果たす。また、使用時においては、コンクリート構造物1が伸縮すると、被覆材3の凸状部31が盛り上がったり沈み込んだりするため、その凸状部31の変形に追従して変形できる材料を使用する必要がある。例えば、発泡ウレタンやゴムなどの弾性材料が使用できる。
弾性型枠材4は、断面視凸状に成形する。被覆材3aの凸状部31aを山形にする場合は、三角柱状の弾性型枠材4aを使用する(図1参照)。また、被覆材3cの凸状部31cを断面視半円形にする場合は、円柱を縦断方向に分割した半円断面の弾性型枠材4bを使用する(図3参照)。ここで、板材で被覆材3bを製作した場合は、凸状部31bの形状が保持できるため、型枠として弾性型枠材4を配置する必要はなく、省略することもできる。但し、後述するように凸状部31bの空間を充填する機能を要求するときは、板状の被覆材3bを使用する場合にも弾性型枠材4を配置する。
【0013】
弾性型枠材4は、打継目2を挟んだ両側のコンクリート構造物1a,1bに底面を接着して固定する。そして、弾性型枠材4を被覆材3で被覆すれば、凸状部31の内側が弾性型枠材4で満たされ、被覆材3の凸状部31の隙間に水などが溜まって伸長したり、コンクリート構造物1の劣化の原因となったり、被覆材3がコンクリート構造物1から剥離したりすることを防止できる。
【0014】
<ニ>被覆材の固定手段
被覆材3は、接着剤やボルトやアンカーピンなどによってコンクリート構造物1の表面に固定することができる。
特に、被覆材3に繊維シート材料を使用する場合は、接着剤を繊維シートに含浸させてコンクリート構造物1に固定することができる。ここで、含浸とは、多孔性物体(繊維シート)の改質のために空隙中に液状物質(接着剤)を浸入させることをいう。
接着剤には、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂系、EVA系(エチレン酢酸ビニル共重合樹脂系)、アクリル樹脂系等の樹脂系接着剤や、クロロプレンゴム系、スチレン・ブタジエンゴム系等のゴム系接着剤や、セメント系、石膏系等の水・気硬性接着剤を用いることができる。
【0015】
以下、図1を参照しながらコンクリート構造物の打継目の補修構造及びその補修方法の実施例について説明する。
【0016】
<イ>弾性型枠材の設置
まず、必要に応じて打継目2周辺のコンクリート構造物1表面に浮き上がった劣化部分を取り除く。また、陥没部にはセメントペーストなどを塗布して補修することもできる。
そして、打継目2を挟んだ両側のコンクリート構造物1a,1bの端部に三角柱状の弾性型枠材4aを接着剤などで貼り付けて固定し、打継目2の開口部を塞ぐ。
なお、板材製の被覆材3bなど凸状部31bの形状を保持できる被覆材3bを使用する場合は、弾性型枠材4の設置作業を省略することもできる。
【0017】
<ロ>被覆材の設置
弾性型枠材4aに密着するように被覆材3aを配置する。繊維シート製の被覆材3aを使用する場合は、凸状部31aの形状を保持することが難しいため、弾性型枠材4aの打継目2と接しない面、すなわち被覆材3aで覆う側の面に接着剤を塗布して被覆材3aを密着させることができる。
被覆材3aの幅は、両側の端部が打継目2からコンクリート構造物1の厚さ以上離れた位置まで配置できる幅にしておくのが好ましい。コンクリート構造物1は端面から45°の角度の範囲で劣化し易いとされているため、少なくともコンクリート構造物1の厚さ以上の範囲を被覆材3aで覆うのが好ましい。例えば、コンクリート構造物1の厚さにW=200mm程度を加えた範囲を被覆材3aで覆う。このように被覆材3aによって打継目2周辺のコンクリート構造物1a,1bの表面を被覆すれば、劣化部11がコンクリート構造物1から剥離しても被覆材3aで支えられて落下することがない。また、劣化し易い部分が被覆されるため、劣化の進行を抑えることができる。
また、弾性型枠材4の底面、又は弾性型枠材4を設置しない場合は被覆材3bの内面が、打継目2から流れ出る漏水などの樋の役割を果たすことができる。
【0018】
<ハ>接着剤の含浸
繊維シート製の被覆材3aを使用する場合は、接着剤を含浸させてコンクリート構造物1に固定することができる。接着剤の被覆材3aへの含浸は、被覆材3aを設置する前におこなってもよい。また、被覆材3aを設置した後に被覆材3aを覆うように接着剤を塗布して含浸させることもできる。
【0019】
【発明の効果】
本発明のコンクリート構造物の打継目の補修構造及びその補修方法は、以上説明したようになるから次のような効果を得ることができる。
<イ>コンクリート構造物が温度変化などによって伸縮しても、伸縮を妨げることがない。このため、伸縮目地などの打継目の機能を損なうことなく補修をおこなうことができる。
<ロ>打継目を集中的に補修することができる。このため、効率的かつ経済的である。
<ハ>劣化し易い打継目周辺のコンクリート構造物の表面を被覆材で被覆する。このため、コンクリート構造物の劣化の進行を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のコンクリート構造物の打継目の補修構造の実施例の説明図。
【図2】板材製の被覆材の実施例の斜視図。
【図3】断面視半円形の弾性型枠材と被覆材の実施例の説明図。
【図4】従来のコンクリート構造物の打継目の劣化状況を示した説明図。
【符号の説明】
1・・・コンクリート構造物
2・・・打継目
3・・・被覆材
31・・凸状部
4・・・弾性型枠材
Claims (6)
- コンクリート構造物を不連続に形成するために設けたコンクリート構造物の打継目の補修構造であって、
前記打継目を跨いで前記コンクリート構造物の表面に被覆材を固定し、前記被覆材は前記打継目と対向する位置において打継目から離隔して凸状に形成されていることを特徴とする、
コンクリート構造物の打継目の補修構造。 - 請求項1に記載したコンクリート構造物の打継目の補修構造において、
前記打継目を跨いで断面視凸状の弾性型枠材を配置し、
前記弾性型枠材の前記打継目と接しない表面を前記被覆材で覆うことを特徴とする、
コンクリート構造物の打継目の補修構造。 - 請求項1又は2に記載のコンクリート構造物の打継目の補修構造において、
前記被覆材として繊維シートを使用し、接着剤を前記繊維シートに含浸させて前記コンクリート構造物に被覆材を固定することを特徴とする、
コンクリート構造物の打継目の補修構造。 - 請求項1乃至3のいずれかに記載のコンクリート構造物の打継目の補修構造において、
前記打継目の両側にある前記コンクリート構造物を、前記打継目から前記コンクリート構造物の厚さ以上離れた位置まで前記被覆材で被覆したことを特徴とする、
コンクリート構造物の打継目の補修構造。 - コンクリート構造物を不連続に形成するために設けたコンクリート構造物の打継目の補修方法において、
断面視凸状の弾性型枠材を、前記打継目を跨ぐようにして前記コンクリート構造物の表面に貼り付け、
前記弾性型枠材を被覆材で覆い、前記コンクリート構造物の表面に前記被覆材を固定することを特徴とする、
コンクリート構造物の打継目の補修方法。 - コンクリート構造物を不連続に形成するために設けたコンクリート構造物の打継目の補修方法において、
断面視凸状の弾性型枠材を、前記打継目を跨ぐようにして前記コンクリート構造物の表面に貼り付け、
前記弾性型枠材を繊維シート製の被覆材で覆い、
前記繊維シートに接着剤を含浸させて前記コンクリート構造物の表面に前記被覆材を貼り付けることを特徴とする、
コンクリート構造物の打継目の補修方法。
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JP2003145210A JP2004346613A (ja) | 2003-05-22 | 2003-05-22 | コンクリート構造物の打継目の補修構造及びその補修方法 |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2017203252A (ja) * | 2016-05-09 | 2017-11-16 | 信越化学工業株式会社 | ボックスカルバートの補修方法及び施工方法 |
JP2020041411A (ja) * | 2019-11-13 | 2020-03-19 | 信越化学工業株式会社 | ボックスカルバートの施工方法及びボックスカルバート接続目地部の施工用保護シート |
CN114320344A (zh) * | 2021-12-31 | 2022-04-12 | 中铁二院工程集团有限责任公司 | 一种可诱导变形的隧道衬砌结构及其快速修复方法 |
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2003
- 2003-05-22 JP JP2003145210A patent/JP2004346613A/ja active Pending
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