JP2004346609A - かばん用シリンダ錠 - Google Patents
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Abstract
【課題】固有の錠止機能を有する,信頼度の高いかばん用錠を提供する。
【解決手段】かばん本体に取り付けたケース部に横引き可能に組み込まれたスライダの錠止部により、かばん蓋に取り付けた鉤を係止するかばん用錠であって、前記スライダ2に回転子5を外筒4に組み込んでなるシリンダ部20が固定されており、該回転子5には複数個の可動障害子が内蔵されているとともにその下端部に係止カム19が装着されており、該係止カム19は鍵で前記可動障害子の拘束を開放して回転子を回転させることによりスライダに錠止機能を付与して施錠する。
【選択図】図1
【解決手段】かばん本体に取り付けたケース部に横引き可能に組み込まれたスライダの錠止部により、かばん蓋に取り付けた鉤を係止するかばん用錠であって、前記スライダ2に回転子5を外筒4に組み込んでなるシリンダ部20が固定されており、該回転子5には複数個の可動障害子が内蔵されているとともにその下端部に係止カム19が装着されており、該係止カム19は鍵で前記可動障害子の拘束を開放して回転子を回転させることによりスライダに錠止機能を付与して施錠する。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、かばんやケース用として使用するのに適したかばん錠に関するもので、さらには固有の錠止機能を有するかばん用シリンダ錠に関する。
【0002】
【従来の技術】
旅行用などのかばんには、かばん本体に取り付けたケース部に横引き可能に組み込まれたスライダの錠止部で、かばん蓋に取り付けた鉤を係止する錠止構造の錠が一般に使用されている。そして、その施錠はケース内においてスライダを係止カムで固定することにより行われる。ところが、このような錠に鍵を差し込んで回すと、鍵先が係止カムに係合して係止カムの錠止機能を容易に外せるために、かばんを簡単に開けることができる。しかも、これらの錠の仕様が実質的に同じであるために、共通の一つの鍵でほとんどのかばんを開けることができ、錠本来の機能を充分に果たしていないのが実情である。
【0003】
かばん用錠としてこのように錠止構造が簡単な錠を採用する背景には、かばん特有の性質としてかばん自体を容易に持ち去ることができるために、施錠性能の高い錠を使用する認識が乏しく、かつその必要性も低いことが挙げられる。さらに、錠はかばんの比較的薄肉の側壁外面に取り付けなければならないために、薄型で構造的にも簡単なものが好しいということもその一つの理由である。
【0004】
【発明が課題しようとする課題】
しかしながら、かばんの高級化や独自性に対する志向が強まるのにつれて、錠に対する差別化を求める傾向が強くなり、従来の錠のように共通の鍵で簡単に開口できる錠止構造のものでは充分な満足度が得られなくなった。その結果、自己のかばんだけに固有する、すなわち固有の鍵でないと開口できない錠の出現が強く求められている。
【0005】
また、固有の錠止機能を有する錠としては、ドア用錠などに広く使用されているシリンダ錠が知られている。しかしながら、この種のシリンダ錠は可動障害子を内蔵する回転子が組み込まれているシリンダ部が錠の裏側に突出し、裏面が平坦でないために、薄肉のかばん本体に取り付けることは困難とされている。そのため、これまではかばん用錠にシリンダ錠を使用することは不適とされていた。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、シリンダ錠に係止カムを組み合わせた錠止構造にすることにより、錠の体裁をほとんど変えずに錠止機能をかばん毎に変更でき、かつ信頼度の高いかばん用シリンダ錠を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するために、錠のケース部に横引き可能に設けたスライダに、複数個の可動障害子を内臓する回転子を組み込んだシリンダ部を取り付け、この回転子に係止カムを装着することにより、前記目的が達成できるかばん用シリンダ錠を提供するもので、次の特徴を有している。
【0008】
本発明は、かばん本体に取り付けたケース部の化粧板と裏板との間に横引き可能に組み込まれているスライダの錠止部により、かばん蓋に取り付けた鉤を係止するかばん用錠であって、前記スライダに回転子を外筒に組み込んでなるシリンダ部が固定されており、該回転子には複数個の可動障害子が内蔵されているとともにその下端部に係止カムが装着されており、該係止カムは回転子の回転によって前記ケース部に係合したときスライダの横引きを阻止し、かつこの状態で回転子の回転を可動障害子によって固定したときスライダに錠止機能を付与することを特徴とする。
【0009】
また、本発明はスライダがケース部の化粧板と裏板との間に横引き可能に組み込まれており、前記スライダと裏板が化粧板に内包され、かつシリンダ部と係止カムが裏板の内側に収容されており化粧板の下面が平坦であることを特徴とする。
さらにまた、本発明は係止カムが弾性部材を介在してケース部に係合し、スライダを弾性部材の弾性力により横引き可能に保持することを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明において、かばんは旅行用あるいは携帯用として一般に使用されるかばんおよびケースであって、かばん本体の開口部に蓋部が開閉可能に装着されている通常のかばんである。したがって、かばんの形体、大きさおよび材質などは特に限定されない。材質としては皮製、布製、金属製もしくはプラスチック製、またはこれらの二つ以上を組み合わせたものが使用できる。
【0011】
本発明の錠は、このようなかばんに使用する横引き錠であって、実質的にはかばん本体に取り付ける錠に関する。かばん蓋に設ける鉤は、従来のものと同じであるので説明は省略する。前記錠はケース部に横引き可能に設けたスライダにシリンダ部を取り付けてなり、このシリンダ部は複数個の可動障害子を内蔵した回転子を外筒に挿入して形成されている。
【0012】
本発明は、スライダに固定したシリンダ部の前記回転子の端部に係止カムを装着し、この係止カムによって錠止機能を得ることを特徴とする。すなわち、本発明の錠止構造は、シリンダ部の回転子に内蔵されている可動障害子によって回転子が回転しないように係止されている状態において、回転子の端部に装着した係止カムがスライダを動かないように錠止し、前記可動障害子を鍵で操作して回転子を回転させることによって、係止カムが錠止を解いてスライダを自由に横引きできるように構成されている。
【0013】
次に、本発明の実施例を添付図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の好ましい実施形態に係わるかばん用シリンダ錠(以下、シリンダ錠とする)の分解図である。図1の左側には、シリンダ錠のケース部を形成する化粧板1と裏板3、及びこれら両者の間に組み込まれるスライダ2等を示し、右側にはスライダ2に取り付けるシリンダ部とその取付け金具を示している。シリンダ錠を構成するこれらの部品は、強度と加工のしやすさから通常は金属製である。例えば化粧板1、スライダ2及び裏板3は、金属板を打ち抜きして得られる金属片をプレス加工することによって容易に得ることができる。この場合、ケース部の形状は特定されないが、デザインと取り付け安定性などから通常は矩形状に形成される。
【0014】
化粧板1は、シリンダ錠の外側をカバーする部材で、内部にスライダ2及び裏板3を組み込むことができる所望の空間を有しており、その上面の所定の位置には図示するようにシリンダ部を嵌挿するための切欠部7と錠止窓8が設けられている。この場合、切欠部7はシリンダ錠の開閉時におけるシリンダ部の移動域を確保するために、スライダ2の横引き幅だけ大き目に形成される。また、四隅にはシリンダ錠をかばん本体に鋲やねじによって取り付けるための孔9が設けられている。
【0015】
また、スライダ2には、シリンダ部を取り付けるための切欠部11が化粧板1の前記切欠部7に対応して設けられており、また図1において左側の端部には、スライダ2の横引き動作によって化粧板1の錠止窓8に出没する錠止部15が形成されている。そして、切欠部11と錠止部15との間には、板ばね6のような弾性部材の片側を保持するための折曲げ突起12が設けられている。この折曲げ突起12は、例えばスライダ2に便宜的に設けた凹み部の一部を切り込みし、下方に折り曲げることにより形成できる。板ばね6を安定して保持するために、前記折曲げ突起12は横方向に2個並べて設けるのが好ましい。
【0016】
一方、裏板3にはスライダ2の幅に合わせて凹部30が設けられていて、この凹部30にスライダ2を嵌合することによりスライダ2を矢印方向に横引き可能に保持できる。この凹部30には、スライダ2の前記折曲げ突起12で片側を保持した板ばね6の他側を保持するための折曲げ部13と、係止カムが係合してスライダ2の横引きを固定するためのストッパー14が設けられている。さらに、凹部30の両側には化粧板1と裏板3とを結合する際に有用な切欠31と33が形成されている。
【0017】
次に、シリンダ部について説明する。図1に示す如く、シリンダ部20の主要部は、可動障害子を内蔵する回転子5を外筒4に組み込むことによって構成される。この回転子5の下端には係止カム19が装着されており、シリンダ部20をスライダに取り付けたとき、この係止カム19が回転子5の回転操作によってスライダ2の横引きを阻止する。また、回転子5の回転操作は、上端の鍵孔23に鍵を差し込んで可動障害子を操作することにより行うことができる。
【0018】
なお、図1において、17はシリンダ部20をケース部に取り付けるための留め金具で、その上部にはシリンダ部20の回転子5の鍵孔23を露呈させるための窓孔28が設けられている。また、16はシリンダ部20のケース部から突出している上端部分に被着するキャップである。
【0019】
本例において、ケース部とシリンダ部20とは次の方法によって組み立てられる。先ず、留め金具17の上部にキャップ16を被冠して、キャップ16の留めツメ29と留め金具17の窓孔28の外側に設けたツメとをそれぞれ相手側に対し折り曲げることにより、キャップ16と留め金具17とを結合する。次いで、シリンダ部20にこの留め金具17を上方から被せた状態で、化粧板1の切欠部7に挿通し、更にこのシリンダ部20をスライダ2の切欠部11に、外筒4の側部に設けた位置決め用突起34がスライダ2に接触するまで挿通する。スライダ2に接触したら留め金具17の脚35の下端に設けた留めツメ21を、スライダ2の切欠部11の周縁に対し外方向に折り曲げし、シリンダ部20をケース部のスライダ2に固定する。そして、スライダ2の裏側において回転子5の下端に係止カム19を取り付ける。
【0020】
次いで、シリンダ部20が固定されたスライダ2の下側に裏板3を配置して、この裏板3の凹部30にスライダ2を嵌合する。その際に、スライダ2の突起12と裏板3の折曲げ部13との間に板ばね6を装入し、かつ該板ばね6と裏板3のストッパー14との間に係止カム19が位置するようにする。同時に、化粧板1の切欠部7の周部に設けた留め片10と錠止窓8の両側に設けた留めツメ32を、裏板3の切欠33と切欠31にそれぞれ挿入し、この状態で留め片10と留めツメ32を裏板3の裏面に当るように折り曲げる。これにより、化粧板1と裏板3との間にスライダ2が矢印方向に横引き可能に組み込まれた状態で、化粧板1と裏板3とを結合することができる。さらに、シリンダ部20と回転子5に装着した係止カム19とを、裏板3の内側に組み込むことができる。
【0021】
図2は、このようにケース部に組み込まれた係止カム19による錠止構造を示す平面説明図である。本例の係止カム19は薄い金属板から形成されており、図2に示すように施錠時にスライダ2を動かないように固定するための錠止凸部38と、施錠状態にないスライダ2に板ばね6の弾性力を作用させるための凸部36を有している。このような係止カム19のカム形状により、スライダ2は所望の横引き動作を得ることができる。本例ではカム形状を例示の板ばね6に適合するように形成しているが、係止カム19のカム形状は板ばね6の形状やストッパー14の位置などにより適宜変更できる。
【0022】
図2に示する如く係止カム19の錠止凸部38が裏板3のストッパー14に係合した状態では、回転子5はストッパー14によって矢印方向には動かなくなる。係止カム19の錠止凸部38が前記ストッパー14に係合するときが係止カム19の錠止位置で、係止カム19がこの錠止位置にあるとき、スライダ2は固定され横引きできない状態となる。この状態で、係止カム19および回転子5が回転しないようにすれば施錠できる。
【0023】
しかし、回転子5が回転して係止カム19が仮想線の位置になると、係止カム19はストッパー14との係合が外れるため、回転子5を矢印方向に動かすことができる。その結果、スライダ2は化粧板1と裏板3との間において裏板3の凹部30内を横引き可能となり、スライダ2の錠止部15を化粧板1の錠窓8において自由に出没させることができる。
【0024】
この場合に、スライダ2と裏板3の折曲げ部13との間に板ばね6を設け、係止カム19の錠止凸部38がストッパー14から外れた仮想線の状態(施錠されていない状態)で、係止カム19の凸部36が該板ばね6に接触するように設定しておくと、スライダ2に板ばね6の弾性力を作用させることができる。これににより、施錠されていないときのスライダ2を錠窓8(図1参照)の側に弾性的に押圧した状態に保持できる。
【0025】
図3は、上記したように組み立てられた本例のシリンダ錠の正面図であり、図4は図3のA−A部における断面図である。本例のシリンダ錠は、孔9を鋲またはねじで固定することによりかばん本体に取り付けできる。そして、施錠するときには、スライダ2の錠止部15が化粧板1の錠窓8に対して自由に出没できる状態において、すなわちスライダ2が横引き可能な状態において、蓋側に取り付けた鉤部(図示せず)を錠窓8に差し込んで前記錠止部15によって係止する。この状態で鍵を鍵孔23に差し込み回転子5を回転して係止カムを錠止位置にし、同時にこの回転子5に内蔵されている可動障害子22により回転子5が回転しないように拘束し施錠する。施錠を外すときには、これと逆の操作で鍵により可動障害子22の拘束を解放して回転子5を回転し、係止カムを錠止位置から動かしてスライダ2が自由に横引きできるようにする。
【0026】
本例のシリンダ錠において、化粧板1は約4〜6mmの厚さの空間部を有しており、この空間部にスライダ2及び裏板3のほかシリンダ部20の端部に装着した係止カム等が収容される。その結果、シリンダ錠でありながら化粧板1の下端面からは図4に示す如く何も外側に突き出ないので、シリンダ錠の裏面を平坦にすることができる。
【0027】
次に、本例のシリンダ錠における錠止構造を図5乃至図7に従って具体的に説明する。図5はシリンダ部の断面図で、上部は図7のY部における断面、下部は図7のX部における断面をそれぞれ示し、図6は図5のB−B部における断面図である。図5において係止カム19は省略してある。外筒4に嵌挿されている回転子5には、図6に示す如く可動障害子22を挿入するためのスリットが中心の鍵孔部を貫通して設けられており、このスリットに可動障害子22が挿入されている。
【0028】
図8はこの可動障害子22の一例である。可動障害子22は、中央部に鍵を挿通するための孔37を有する略矩形状をなしており、その両側に係止端39と操作端40を有している。また、その側端部にばね押え24が設けられており、スリットに可動障害子22を挿入したとき、可動障害子22は図6の如くばね25の作用でスリットから係止端39が押し出される。そして、押し出された係止端は39、外筒4と回転子5とのシェアラインを越えて外筒4の開口部26(図6参照)に侵入し回転子の回転を阻止する。
【0029】
回転子の鍵孔に鍵を差し込むと、鍵の山(鍵山)が対応する可動障害子22の操作端40の内側に接触係合して可動障害子22を山の方向に動かし、係止端39を外筒4の開口部26からシェアラインの内側に後退させる。鍵によってすべての可動障害子22の係止端がスリット内に引込まれると、可動障害子22の拘束がなくなるので、回転子は自由に回転できる。そのため、鍵の差し込み方向における鍵山の位置と回転子5に内蔵されている可動障害子22の位置とは一致している。そして、この鍵山の頂点が操作端40の内側に係合したとき、可動障害子22の係止端39が、外筒4の開口部26から脱出して回転子のスリット内に引き込まれるようになっている。そのため、可動障害子22の中心から操作端40の内側までの距離Lは、対応する鍵山の高さに合わせて調整されている。
【0030】
前記距離Lとこのシリンダ錠の開閉用鍵における鍵山の高さとを、一つの回転子に組み込まれている複数個の可動障害子について変えることによって、錠止機能の異なる多数の錠を得ることができる。この場合、少なくとも一つの可動傷害子のLを変えるだけで、錠止機能の異なる錠を得ることができるので、各錠に固有の錠止機能を容易に付与できる。
【0031】
本発明において一つのシリンダ錠に使用する可動障害子22の数は特定されないが、可動障害子22の個数が多いほどシリンダ錠の錠止性能が向上する。これはシリンダ錠の特性である。つまり、施錠されたシリンダ錠を開けるには、前記したように各可動障害子22の障害を鍵山によってすべて取り外さなければならないため、回転子5に内蔵されている可動障害子22の個数と鍵山の数とは同じとなる。したがって、可動障害子22の個数が増加すると、それに合わせて鍵山を多くする必要があり、山の数が多い高精細の鍵でなければ錠を開けることができなくなる。
【0032】
しかしながら、可動障害子22の個数が増えると、シリンダ部の構造が複雑になるために、シリンダ錠の製造加工コストが高くなるとともに、可動障害子22を組み込むのに大きい回転子5が必要になる。かばん用錠のため、回転子5の大きさには制約があることから、通常は3〜5個程度が好ましく、本例では5個の可動障害子22を使用している。可動障害子22がこの程度の個数であれば、製造加工も比較的容易であり、かつ固有の錠止機能を有する所望のシリンダ錠を得ることができる。
【0033】
また、可動障害子22を回転子5に組み込む場合に、本例では図5に示す如く可動障害子22の係止端の向きを1個おきに変えて挿入している。すなわち、5個の可動障害子22のうち両側と真中の3個の可動障害子22は紙面に向かって挿入し、他の2個は反対方向から挿入している。しかし、回転子5に対しすべての可動障害子22の係止端が同一側に位置するように挿入することもできる。
【0034】
シリンダ錠において可動障害子22の係止端を本例のように変えるかあるいは同一側に揃えるかは、鍵山を鍵の両側に設けるかあるいは片側に設けるかによって適宜決めることができる。具体的には、本例のように可動障害子22の係止端の向きが交互の場合には、可動障害子22の操作端に係合する鍵山も交互に設け、また係止端の向きが同一の場合には、可動障害子22の操作端に係合する鍵山を片側だけに設ければよい。いずれの場合でも鍵を回転子5の鍵孔23に差し込むときには、可動障害子22の操作端と該操作端に係合する鍵山とを常に一致させるために、鍵の向きをこれに合わせることが重要である。鍵の向きを合わせる便法として、図6に示すように回転子5の鍵孔23を異形孔に形成し、鍵をこの異形孔に合わせて製作する方法が知られている。
【0035】
図7は、図5の本例における可動障害子の回転子5の端部に、係止カム19を装着したときの底面図である。図示のように係止カム19は、回転子5の下端に形成した矩形状端部に嵌着されているので、可動障害子22によって拘束されていない状態において回転子5が回転すると、この回転子5と一緒に回転する。そして、前記したようにスライダを横引きができないように固定したり、あるいはスライダを自由に横引きできる状態にする。
【0036】
本例のシリンダ錠は上記したように構成されているので、図9に示す如く回転子5の鍵孔に、山と谷とを有する鍵27を差し込むと、鍵27の鍵山が回転子5に内蔵されている各可動障害子22の操作端に順次に接触係合して可動障害子22を鍵山の方向に押し動かす。その結果、それまで外筒4とのシェアラインを越えていた、該可動障害子22の反対側の係止端が、シェアラインより内側に引き込まれる。そして、鍵27を奥まで差し込んだとき、すべての可動障害子22の係止端がシェアラインの内側に引き込まれる。この状態になると、可動障害子22の拘束がすべて解消されるため、回転子5を鍵27により回転させて係止カムを動作させることができる。これにより、シリンダ錠に錠止機能を付与して施錠し、あるいは施錠されているシリンダ錠を開けることができる。
【0037】
以上本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されないで、目的が達成できる範囲で適宜変更できる。例えば、係止カムは構造が簡略化できるため、通常は実施例のように裏板に係合させてスライダの横引きを阻止するが、化粧板に係合させてもよい。また、ケース部及びシリンダ部の形体やこれらを構成する部品は、シリンダ部の回転子に係止カムを装着することを満たしていれば、シリンダ錠としての基本構造の範囲内で変更できる。
【0038】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したようにかばん用シリンダ錠のスライダに錠止機能を付与する係止カムを、複数個の可動障害子を内蔵するシリンダ部の回転子に装着して錠止構造を構成しているので、かばん用錠にシリンダ錠を活用することができる。つまり、シリンダ錠の回転子に組み込んだ複数個の可動障害子の操作端までの距離(図8のL)とこのシリンダ錠の鍵山の高さとを変えることによって、各錠に固有の錠止機能を付与することができるので、異なる錠止機能を有し信頼性の高いかばん用錠が容易に得られる。
【0039】
また、錠のケース部を形成している化粧板の内空間部にスライダ及び裏板を収容するとともに、スライダの横引きを固定する係止カムをシリンダ部の回転子の端部に装着して裏板の内側に収容し、シリンダ部の下端部が化粧板の下端面より外側に突出するのを防止できる。これにより、かばん用錠の裏面を平坦にできるので、従来の錠と同じように薄肉のかばん本体に安定して取り付けできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好ましい実施形態に係わるかばん用錠の分解図。
【図2】図1のかばん用錠の係止カム取り付け部における平面説明図。
【図3】図1のかばん用錠の平面図。
【図4】図3のA−A部における断面図。
【図5】図4のかばん用錠のシリンダ部の断面図。
【図6】図5のB−B部における断面図。
【図7】図4のかばん用錠のシリンダ部における底面図。
【図8】好ましい実施形態に係わる可動障害子の平面図。
【図9】シリンダ部に鍵を差し込んだときの断面図。
【符号の説明】
1:化粧板
2:スライダ
3:裏板
4:外筒
5:回転子
6:板ばね
8:錠止窓
15:錠止部
16:キャップ
19:係止カム
20:シリンダ部
22:可動障害子
23:鍵孔
27:鍵
36:凸部
38:錠止凸部
39:係止端
40:操作端
【発明の属する技術分野】
本発明は、かばんやケース用として使用するのに適したかばん錠に関するもので、さらには固有の錠止機能を有するかばん用シリンダ錠に関する。
【0002】
【従来の技術】
旅行用などのかばんには、かばん本体に取り付けたケース部に横引き可能に組み込まれたスライダの錠止部で、かばん蓋に取り付けた鉤を係止する錠止構造の錠が一般に使用されている。そして、その施錠はケース内においてスライダを係止カムで固定することにより行われる。ところが、このような錠に鍵を差し込んで回すと、鍵先が係止カムに係合して係止カムの錠止機能を容易に外せるために、かばんを簡単に開けることができる。しかも、これらの錠の仕様が実質的に同じであるために、共通の一つの鍵でほとんどのかばんを開けることができ、錠本来の機能を充分に果たしていないのが実情である。
【0003】
かばん用錠としてこのように錠止構造が簡単な錠を採用する背景には、かばん特有の性質としてかばん自体を容易に持ち去ることができるために、施錠性能の高い錠を使用する認識が乏しく、かつその必要性も低いことが挙げられる。さらに、錠はかばんの比較的薄肉の側壁外面に取り付けなければならないために、薄型で構造的にも簡単なものが好しいということもその一つの理由である。
【0004】
【発明が課題しようとする課題】
しかしながら、かばんの高級化や独自性に対する志向が強まるのにつれて、錠に対する差別化を求める傾向が強くなり、従来の錠のように共通の鍵で簡単に開口できる錠止構造のものでは充分な満足度が得られなくなった。その結果、自己のかばんだけに固有する、すなわち固有の鍵でないと開口できない錠の出現が強く求められている。
【0005】
また、固有の錠止機能を有する錠としては、ドア用錠などに広く使用されているシリンダ錠が知られている。しかしながら、この種のシリンダ錠は可動障害子を内蔵する回転子が組み込まれているシリンダ部が錠の裏側に突出し、裏面が平坦でないために、薄肉のかばん本体に取り付けることは困難とされている。そのため、これまではかばん用錠にシリンダ錠を使用することは不適とされていた。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、シリンダ錠に係止カムを組み合わせた錠止構造にすることにより、錠の体裁をほとんど変えずに錠止機能をかばん毎に変更でき、かつ信頼度の高いかばん用シリンダ錠を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するために、錠のケース部に横引き可能に設けたスライダに、複数個の可動障害子を内臓する回転子を組み込んだシリンダ部を取り付け、この回転子に係止カムを装着することにより、前記目的が達成できるかばん用シリンダ錠を提供するもので、次の特徴を有している。
【0008】
本発明は、かばん本体に取り付けたケース部の化粧板と裏板との間に横引き可能に組み込まれているスライダの錠止部により、かばん蓋に取り付けた鉤を係止するかばん用錠であって、前記スライダに回転子を外筒に組み込んでなるシリンダ部が固定されており、該回転子には複数個の可動障害子が内蔵されているとともにその下端部に係止カムが装着されており、該係止カムは回転子の回転によって前記ケース部に係合したときスライダの横引きを阻止し、かつこの状態で回転子の回転を可動障害子によって固定したときスライダに錠止機能を付与することを特徴とする。
【0009】
また、本発明はスライダがケース部の化粧板と裏板との間に横引き可能に組み込まれており、前記スライダと裏板が化粧板に内包され、かつシリンダ部と係止カムが裏板の内側に収容されており化粧板の下面が平坦であることを特徴とする。
さらにまた、本発明は係止カムが弾性部材を介在してケース部に係合し、スライダを弾性部材の弾性力により横引き可能に保持することを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明において、かばんは旅行用あるいは携帯用として一般に使用されるかばんおよびケースであって、かばん本体の開口部に蓋部が開閉可能に装着されている通常のかばんである。したがって、かばんの形体、大きさおよび材質などは特に限定されない。材質としては皮製、布製、金属製もしくはプラスチック製、またはこれらの二つ以上を組み合わせたものが使用できる。
【0011】
本発明の錠は、このようなかばんに使用する横引き錠であって、実質的にはかばん本体に取り付ける錠に関する。かばん蓋に設ける鉤は、従来のものと同じであるので説明は省略する。前記錠はケース部に横引き可能に設けたスライダにシリンダ部を取り付けてなり、このシリンダ部は複数個の可動障害子を内蔵した回転子を外筒に挿入して形成されている。
【0012】
本発明は、スライダに固定したシリンダ部の前記回転子の端部に係止カムを装着し、この係止カムによって錠止機能を得ることを特徴とする。すなわち、本発明の錠止構造は、シリンダ部の回転子に内蔵されている可動障害子によって回転子が回転しないように係止されている状態において、回転子の端部に装着した係止カムがスライダを動かないように錠止し、前記可動障害子を鍵で操作して回転子を回転させることによって、係止カムが錠止を解いてスライダを自由に横引きできるように構成されている。
【0013】
次に、本発明の実施例を添付図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の好ましい実施形態に係わるかばん用シリンダ錠(以下、シリンダ錠とする)の分解図である。図1の左側には、シリンダ錠のケース部を形成する化粧板1と裏板3、及びこれら両者の間に組み込まれるスライダ2等を示し、右側にはスライダ2に取り付けるシリンダ部とその取付け金具を示している。シリンダ錠を構成するこれらの部品は、強度と加工のしやすさから通常は金属製である。例えば化粧板1、スライダ2及び裏板3は、金属板を打ち抜きして得られる金属片をプレス加工することによって容易に得ることができる。この場合、ケース部の形状は特定されないが、デザインと取り付け安定性などから通常は矩形状に形成される。
【0014】
化粧板1は、シリンダ錠の外側をカバーする部材で、内部にスライダ2及び裏板3を組み込むことができる所望の空間を有しており、その上面の所定の位置には図示するようにシリンダ部を嵌挿するための切欠部7と錠止窓8が設けられている。この場合、切欠部7はシリンダ錠の開閉時におけるシリンダ部の移動域を確保するために、スライダ2の横引き幅だけ大き目に形成される。また、四隅にはシリンダ錠をかばん本体に鋲やねじによって取り付けるための孔9が設けられている。
【0015】
また、スライダ2には、シリンダ部を取り付けるための切欠部11が化粧板1の前記切欠部7に対応して設けられており、また図1において左側の端部には、スライダ2の横引き動作によって化粧板1の錠止窓8に出没する錠止部15が形成されている。そして、切欠部11と錠止部15との間には、板ばね6のような弾性部材の片側を保持するための折曲げ突起12が設けられている。この折曲げ突起12は、例えばスライダ2に便宜的に設けた凹み部の一部を切り込みし、下方に折り曲げることにより形成できる。板ばね6を安定して保持するために、前記折曲げ突起12は横方向に2個並べて設けるのが好ましい。
【0016】
一方、裏板3にはスライダ2の幅に合わせて凹部30が設けられていて、この凹部30にスライダ2を嵌合することによりスライダ2を矢印方向に横引き可能に保持できる。この凹部30には、スライダ2の前記折曲げ突起12で片側を保持した板ばね6の他側を保持するための折曲げ部13と、係止カムが係合してスライダ2の横引きを固定するためのストッパー14が設けられている。さらに、凹部30の両側には化粧板1と裏板3とを結合する際に有用な切欠31と33が形成されている。
【0017】
次に、シリンダ部について説明する。図1に示す如く、シリンダ部20の主要部は、可動障害子を内蔵する回転子5を外筒4に組み込むことによって構成される。この回転子5の下端には係止カム19が装着されており、シリンダ部20をスライダに取り付けたとき、この係止カム19が回転子5の回転操作によってスライダ2の横引きを阻止する。また、回転子5の回転操作は、上端の鍵孔23に鍵を差し込んで可動障害子を操作することにより行うことができる。
【0018】
なお、図1において、17はシリンダ部20をケース部に取り付けるための留め金具で、その上部にはシリンダ部20の回転子5の鍵孔23を露呈させるための窓孔28が設けられている。また、16はシリンダ部20のケース部から突出している上端部分に被着するキャップである。
【0019】
本例において、ケース部とシリンダ部20とは次の方法によって組み立てられる。先ず、留め金具17の上部にキャップ16を被冠して、キャップ16の留めツメ29と留め金具17の窓孔28の外側に設けたツメとをそれぞれ相手側に対し折り曲げることにより、キャップ16と留め金具17とを結合する。次いで、シリンダ部20にこの留め金具17を上方から被せた状態で、化粧板1の切欠部7に挿通し、更にこのシリンダ部20をスライダ2の切欠部11に、外筒4の側部に設けた位置決め用突起34がスライダ2に接触するまで挿通する。スライダ2に接触したら留め金具17の脚35の下端に設けた留めツメ21を、スライダ2の切欠部11の周縁に対し外方向に折り曲げし、シリンダ部20をケース部のスライダ2に固定する。そして、スライダ2の裏側において回転子5の下端に係止カム19を取り付ける。
【0020】
次いで、シリンダ部20が固定されたスライダ2の下側に裏板3を配置して、この裏板3の凹部30にスライダ2を嵌合する。その際に、スライダ2の突起12と裏板3の折曲げ部13との間に板ばね6を装入し、かつ該板ばね6と裏板3のストッパー14との間に係止カム19が位置するようにする。同時に、化粧板1の切欠部7の周部に設けた留め片10と錠止窓8の両側に設けた留めツメ32を、裏板3の切欠33と切欠31にそれぞれ挿入し、この状態で留め片10と留めツメ32を裏板3の裏面に当るように折り曲げる。これにより、化粧板1と裏板3との間にスライダ2が矢印方向に横引き可能に組み込まれた状態で、化粧板1と裏板3とを結合することができる。さらに、シリンダ部20と回転子5に装着した係止カム19とを、裏板3の内側に組み込むことができる。
【0021】
図2は、このようにケース部に組み込まれた係止カム19による錠止構造を示す平面説明図である。本例の係止カム19は薄い金属板から形成されており、図2に示すように施錠時にスライダ2を動かないように固定するための錠止凸部38と、施錠状態にないスライダ2に板ばね6の弾性力を作用させるための凸部36を有している。このような係止カム19のカム形状により、スライダ2は所望の横引き動作を得ることができる。本例ではカム形状を例示の板ばね6に適合するように形成しているが、係止カム19のカム形状は板ばね6の形状やストッパー14の位置などにより適宜変更できる。
【0022】
図2に示する如く係止カム19の錠止凸部38が裏板3のストッパー14に係合した状態では、回転子5はストッパー14によって矢印方向には動かなくなる。係止カム19の錠止凸部38が前記ストッパー14に係合するときが係止カム19の錠止位置で、係止カム19がこの錠止位置にあるとき、スライダ2は固定され横引きできない状態となる。この状態で、係止カム19および回転子5が回転しないようにすれば施錠できる。
【0023】
しかし、回転子5が回転して係止カム19が仮想線の位置になると、係止カム19はストッパー14との係合が外れるため、回転子5を矢印方向に動かすことができる。その結果、スライダ2は化粧板1と裏板3との間において裏板3の凹部30内を横引き可能となり、スライダ2の錠止部15を化粧板1の錠窓8において自由に出没させることができる。
【0024】
この場合に、スライダ2と裏板3の折曲げ部13との間に板ばね6を設け、係止カム19の錠止凸部38がストッパー14から外れた仮想線の状態(施錠されていない状態)で、係止カム19の凸部36が該板ばね6に接触するように設定しておくと、スライダ2に板ばね6の弾性力を作用させることができる。これににより、施錠されていないときのスライダ2を錠窓8(図1参照)の側に弾性的に押圧した状態に保持できる。
【0025】
図3は、上記したように組み立てられた本例のシリンダ錠の正面図であり、図4は図3のA−A部における断面図である。本例のシリンダ錠は、孔9を鋲またはねじで固定することによりかばん本体に取り付けできる。そして、施錠するときには、スライダ2の錠止部15が化粧板1の錠窓8に対して自由に出没できる状態において、すなわちスライダ2が横引き可能な状態において、蓋側に取り付けた鉤部(図示せず)を錠窓8に差し込んで前記錠止部15によって係止する。この状態で鍵を鍵孔23に差し込み回転子5を回転して係止カムを錠止位置にし、同時にこの回転子5に内蔵されている可動障害子22により回転子5が回転しないように拘束し施錠する。施錠を外すときには、これと逆の操作で鍵により可動障害子22の拘束を解放して回転子5を回転し、係止カムを錠止位置から動かしてスライダ2が自由に横引きできるようにする。
【0026】
本例のシリンダ錠において、化粧板1は約4〜6mmの厚さの空間部を有しており、この空間部にスライダ2及び裏板3のほかシリンダ部20の端部に装着した係止カム等が収容される。その結果、シリンダ錠でありながら化粧板1の下端面からは図4に示す如く何も外側に突き出ないので、シリンダ錠の裏面を平坦にすることができる。
【0027】
次に、本例のシリンダ錠における錠止構造を図5乃至図7に従って具体的に説明する。図5はシリンダ部の断面図で、上部は図7のY部における断面、下部は図7のX部における断面をそれぞれ示し、図6は図5のB−B部における断面図である。図5において係止カム19は省略してある。外筒4に嵌挿されている回転子5には、図6に示す如く可動障害子22を挿入するためのスリットが中心の鍵孔部を貫通して設けられており、このスリットに可動障害子22が挿入されている。
【0028】
図8はこの可動障害子22の一例である。可動障害子22は、中央部に鍵を挿通するための孔37を有する略矩形状をなしており、その両側に係止端39と操作端40を有している。また、その側端部にばね押え24が設けられており、スリットに可動障害子22を挿入したとき、可動障害子22は図6の如くばね25の作用でスリットから係止端39が押し出される。そして、押し出された係止端は39、外筒4と回転子5とのシェアラインを越えて外筒4の開口部26(図6参照)に侵入し回転子の回転を阻止する。
【0029】
回転子の鍵孔に鍵を差し込むと、鍵の山(鍵山)が対応する可動障害子22の操作端40の内側に接触係合して可動障害子22を山の方向に動かし、係止端39を外筒4の開口部26からシェアラインの内側に後退させる。鍵によってすべての可動障害子22の係止端がスリット内に引込まれると、可動障害子22の拘束がなくなるので、回転子は自由に回転できる。そのため、鍵の差し込み方向における鍵山の位置と回転子5に内蔵されている可動障害子22の位置とは一致している。そして、この鍵山の頂点が操作端40の内側に係合したとき、可動障害子22の係止端39が、外筒4の開口部26から脱出して回転子のスリット内に引き込まれるようになっている。そのため、可動障害子22の中心から操作端40の内側までの距離Lは、対応する鍵山の高さに合わせて調整されている。
【0030】
前記距離Lとこのシリンダ錠の開閉用鍵における鍵山の高さとを、一つの回転子に組み込まれている複数個の可動障害子について変えることによって、錠止機能の異なる多数の錠を得ることができる。この場合、少なくとも一つの可動傷害子のLを変えるだけで、錠止機能の異なる錠を得ることができるので、各錠に固有の錠止機能を容易に付与できる。
【0031】
本発明において一つのシリンダ錠に使用する可動障害子22の数は特定されないが、可動障害子22の個数が多いほどシリンダ錠の錠止性能が向上する。これはシリンダ錠の特性である。つまり、施錠されたシリンダ錠を開けるには、前記したように各可動障害子22の障害を鍵山によってすべて取り外さなければならないため、回転子5に内蔵されている可動障害子22の個数と鍵山の数とは同じとなる。したがって、可動障害子22の個数が増加すると、それに合わせて鍵山を多くする必要があり、山の数が多い高精細の鍵でなければ錠を開けることができなくなる。
【0032】
しかしながら、可動障害子22の個数が増えると、シリンダ部の構造が複雑になるために、シリンダ錠の製造加工コストが高くなるとともに、可動障害子22を組み込むのに大きい回転子5が必要になる。かばん用錠のため、回転子5の大きさには制約があることから、通常は3〜5個程度が好ましく、本例では5個の可動障害子22を使用している。可動障害子22がこの程度の個数であれば、製造加工も比較的容易であり、かつ固有の錠止機能を有する所望のシリンダ錠を得ることができる。
【0033】
また、可動障害子22を回転子5に組み込む場合に、本例では図5に示す如く可動障害子22の係止端の向きを1個おきに変えて挿入している。すなわち、5個の可動障害子22のうち両側と真中の3個の可動障害子22は紙面に向かって挿入し、他の2個は反対方向から挿入している。しかし、回転子5に対しすべての可動障害子22の係止端が同一側に位置するように挿入することもできる。
【0034】
シリンダ錠において可動障害子22の係止端を本例のように変えるかあるいは同一側に揃えるかは、鍵山を鍵の両側に設けるかあるいは片側に設けるかによって適宜決めることができる。具体的には、本例のように可動障害子22の係止端の向きが交互の場合には、可動障害子22の操作端に係合する鍵山も交互に設け、また係止端の向きが同一の場合には、可動障害子22の操作端に係合する鍵山を片側だけに設ければよい。いずれの場合でも鍵を回転子5の鍵孔23に差し込むときには、可動障害子22の操作端と該操作端に係合する鍵山とを常に一致させるために、鍵の向きをこれに合わせることが重要である。鍵の向きを合わせる便法として、図6に示すように回転子5の鍵孔23を異形孔に形成し、鍵をこの異形孔に合わせて製作する方法が知られている。
【0035】
図7は、図5の本例における可動障害子の回転子5の端部に、係止カム19を装着したときの底面図である。図示のように係止カム19は、回転子5の下端に形成した矩形状端部に嵌着されているので、可動障害子22によって拘束されていない状態において回転子5が回転すると、この回転子5と一緒に回転する。そして、前記したようにスライダを横引きができないように固定したり、あるいはスライダを自由に横引きできる状態にする。
【0036】
本例のシリンダ錠は上記したように構成されているので、図9に示す如く回転子5の鍵孔に、山と谷とを有する鍵27を差し込むと、鍵27の鍵山が回転子5に内蔵されている各可動障害子22の操作端に順次に接触係合して可動障害子22を鍵山の方向に押し動かす。その結果、それまで外筒4とのシェアラインを越えていた、該可動障害子22の反対側の係止端が、シェアラインより内側に引き込まれる。そして、鍵27を奥まで差し込んだとき、すべての可動障害子22の係止端がシェアラインの内側に引き込まれる。この状態になると、可動障害子22の拘束がすべて解消されるため、回転子5を鍵27により回転させて係止カムを動作させることができる。これにより、シリンダ錠に錠止機能を付与して施錠し、あるいは施錠されているシリンダ錠を開けることができる。
【0037】
以上本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されないで、目的が達成できる範囲で適宜変更できる。例えば、係止カムは構造が簡略化できるため、通常は実施例のように裏板に係合させてスライダの横引きを阻止するが、化粧板に係合させてもよい。また、ケース部及びシリンダ部の形体やこれらを構成する部品は、シリンダ部の回転子に係止カムを装着することを満たしていれば、シリンダ錠としての基本構造の範囲内で変更できる。
【0038】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したようにかばん用シリンダ錠のスライダに錠止機能を付与する係止カムを、複数個の可動障害子を内蔵するシリンダ部の回転子に装着して錠止構造を構成しているので、かばん用錠にシリンダ錠を活用することができる。つまり、シリンダ錠の回転子に組み込んだ複数個の可動障害子の操作端までの距離(図8のL)とこのシリンダ錠の鍵山の高さとを変えることによって、各錠に固有の錠止機能を付与することができるので、異なる錠止機能を有し信頼性の高いかばん用錠が容易に得られる。
【0039】
また、錠のケース部を形成している化粧板の内空間部にスライダ及び裏板を収容するとともに、スライダの横引きを固定する係止カムをシリンダ部の回転子の端部に装着して裏板の内側に収容し、シリンダ部の下端部が化粧板の下端面より外側に突出するのを防止できる。これにより、かばん用錠の裏面を平坦にできるので、従来の錠と同じように薄肉のかばん本体に安定して取り付けできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好ましい実施形態に係わるかばん用錠の分解図。
【図2】図1のかばん用錠の係止カム取り付け部における平面説明図。
【図3】図1のかばん用錠の平面図。
【図4】図3のA−A部における断面図。
【図5】図4のかばん用錠のシリンダ部の断面図。
【図6】図5のB−B部における断面図。
【図7】図4のかばん用錠のシリンダ部における底面図。
【図8】好ましい実施形態に係わる可動障害子の平面図。
【図9】シリンダ部に鍵を差し込んだときの断面図。
【符号の説明】
1:化粧板
2:スライダ
3:裏板
4:外筒
5:回転子
6:板ばね
8:錠止窓
15:錠止部
16:キャップ
19:係止カム
20:シリンダ部
22:可動障害子
23:鍵孔
27:鍵
36:凸部
38:錠止凸部
39:係止端
40:操作端
Claims (4)
- かばん本体に取り付けたケース部の化粧板と裏板との間に横引き可能に組み込まれているスライダの錠止部により、かばん蓋に取り付けた鉤を係止するかばん用錠であって、前記スライダに、回転子を外筒に組み込んでなるシリンダ部が固定されており、該回転子には複数個の可動障害子が内蔵されているとともにその下端部に係止カムが装着されており、該係止カムは回転子の回転によって前記ケース部に係合したときスライダの横引きを阻止し、かつこの状態で回転子の回転を可動障害子によって固定したときスライダに錠止機能を付与することを特徴とするかばん用シリンダ錠。
- スライダがケース部の化粧板と裏板との間に横引き可能に組み込まれており、前記スライダと裏板が化粧板に内包され、かつシリンダ部と係止カムが裏板の内側に収容されており化粧板の下端面から突出していない請求項1に記載のかばん用シリンダ錠。
- 係止カムが弾性部材を介在してケース部に係合しており、スライダが弾性部材の弾性力により横引き可能に保持されている請求項1または2に記載のかばん用シリンダ錠。
- 回転子に内臓されている可動障害子の数が3〜5個である請求項1、2または3に記載のかばん用シリンダ錠。
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Cited By (2)
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-
2003
- 2003-05-22 JP JP2003145034A patent/JP2004346609A/ja not_active Withdrawn
Cited By (3)
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JP2007071013A (ja) * | 2006-05-01 | 2007-03-22 | Seiban:Kk | かばん錠 |
JP4446277B2 (ja) * | 2006-05-01 | 2010-04-07 | 株式会社セイバン | かばん錠 |
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