JP2004345999A - 菌体製剤組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(A)プルランのように、水に可溶で有機溶媒や油脂に不溶か難溶の物質により被覆された菌体、及び(B)クレオソートおよび/またはその構成成分であるグアヤコール、4−エチルグアヤコール、クレオゾール、オルトクレゾール、パラクレゾールなどのクレゾール類、フェノールやキシレノール類などのフェノール誘導体を含有する菌体製剤組成物。
【効果】この菌体製剤組成物における生菌は、水溶性で有機溶媒や油脂に不溶か難溶の物質により表面が被覆処理されているので、同じ組成物中における抗菌性物質からの影響を受ける心配はなく、のみならず温度に対する悪影響を受けるおそれもない(耐熱性に優れている)。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は菌体製剤組成物に関し、詳しくは菌体と抗菌性物質とを含有する菌体製剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】
体内環境としてよく話題にあがるのが、腸内細菌としての有用細菌(いわゆる「善玉菌」であり、これと対になる細菌を以下、「悪玉菌」という。)である。これら有用細菌と悪玉菌がバランス良く共存している時には健康が保たれる。しかしながら、例えば食の習慣が乱れるなど、何らかの原因で有用細菌が減少すれば、悪玉菌が優勢となって相対比が増え、これによりいろいろな病気を招く原因となる。一旦、悪玉菌が増えると、これによる疾病を防いだり治癒するために、主として次の2つの方法が採られていた。
【0003】
すなわち、1つは、ビフィズス菌、乳酸菌または納豆菌などに代表される有用細菌を含む食品やサプリメントを体内に取り込む方法。そしてもう1つは、増殖して腸内で優勢となっている悪玉菌を減らすべく(殺菌すべく)、抗菌性薬剤などを服用する方法である。いずれの方法を採っても優れた効果が期待できるが、これら「有用細菌の取り込み」と「抗菌性薬剤の服用」を同時に行うことが出来れば、崩れた腸内環境のバランスをいち早く取り戻すことができる。しかしながら、有用細菌と抗菌性薬剤とを単に組み合わせた薬剤組成物は、前記有用細菌が抗菌性薬剤と接触することによって不活性化されることから、両者を単に組み合わせることに問題があった。
【0004】
[発明の目的]
本発明は上記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、互いに悪影響を及ぼすことなく菌体と抗菌性物質とを組み合わせた菌体製剤組成物を提供するところにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の菌体製剤組成物は、(A)水溶性で、かつ有機溶媒や油脂に不溶か難溶の保護剤により被覆された菌体、及び(B)有機溶媒や油脂に可溶の抗菌性物質を含有してなることを特徴とする菌体製剤組成物。
【0006】
請求項2に記載の菌体製剤組成物は、請求項1に記載の組成物において、前記(A)成分における保護剤が増粘剤であることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の菌体製剤組成物は、請求項2に記載の組成物において、前記(A)成分における保護剤が増粘多糖類であることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の菌体製剤組成物は、請求項3に記載の組成物において、前記増粘多糖類がプルランであることを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載の菌体製剤組成物は、請求項2に記載の組成物において、前記(A)成分における保護剤が水溶性ビニル系重合体であることを特徴とする。
【0010】
請求項6に記載の菌体製剤組成物は、請求項1に記載の組成物において、前記(A)成分における菌体が、バチルス属、ビフィドバクテリウム属およびラクトバチルス属に属する細菌からなる群より選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする。
【0011】
請求項7に記載の菌体製剤組成物は、請求項1に記載の組成物において、前記(B)成分の抗菌性物質が、フェノール誘導体からなることを特徴とする。
【0012】
請求項8に記載の菌体製剤組成物は、請求項7に記載の組成物において、前記フェノール誘導体が、クレオソート及び/又はその構成成分であるグアヤコール、4−エチルグアヤコール、クレオゾール、オルトクレゾール、パラクレゾール等のクレゾール類、フェノール、キシレノール類であることを特徴とする。
【0013】
請求項9に記載の菌体製剤組成物は、請求項7に記載の組成物において、前記フェノール誘導体が、クレオソートまたはグアヤコールであることを特徴とする。
【0014】
請求項10に記載の菌体製剤組成物は、(A)プルランにより被覆されたバチルス属、ビフィドバクテリウム属およびラクトバチルス属に属する細菌からなる群より選ばれた少なくとも1種、及び(B)クレオソートまたはグアヤコールを含有してなることを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
保護剤(被覆剤)
本発明において、保護剤を用いて菌体(後述する)の表面をカバーする。保護剤は、水に可溶で有機溶媒に不溶か難溶であればよく、可食性であればなお良い。例えば増粘剤が、菌体との接着性(離脱を防止し、菌体をしっかり外的要因から保護するという性質)、及び入手容易性の点で好ましい。増粘剤としては、プルラン、ペクチン、アルギン酸などの天然多糖類(増粘多糖類)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)などの水溶性ビニル系重合体が挙げられる。中でも、特にプルランは、冷水にも速やかに溶解し、他の多糖類と比較して低粘性でゲル化することがなく、粘着性の強い中性の溶液となり、pHの影響を受けにくいので好ましい。このプルランはデンプンを原料とし、黒酵母の一種であるAureobasidium pullulans を培養して得られた、マルトトリオース(グルコース3分子がα−1,4結合)が規則正しく、α−1,6結合した天然多糖類で無色無臭の白色粉末である(粘度:100〜200cSt(10%、30℃))。
【0016】
菌体
本発明において前記保護剤で覆う菌体(生菌)としては、例えばバチルス属の細菌(納豆菌、有胞子性乳酸菌、枯草菌、セレウス菌など)、ビフィドバクテリウム属の細菌(ビフィダム菌、ブレーベ菌、ロンガム菌、アンドレッセンティス菌など)、ラクトバチルス属の細菌(ガゼイ菌、アシドフィルス菌、ロイテリ菌など)、その他の細菌(大腸菌、コレラ菌、結核菌、緑濃菌、黄色ブドウ球菌など)が挙げられる。これらは1種類を単独で使用してもよいし、2種以上を併用しても構わない。
【0017】
抗菌性物質
本発明において用いる抗菌性物質としては、有機溶媒や油脂に可溶の抗菌性物質であり、具体的にはフェノール系化合物(クレオソート(木クレオソート)や、その構成成分であるグアヤコール、クレゾールなど)、その他の有機溶媒(エタノール、2−プロパノールなど)、上記の抗菌性物質あるいはその他の抗菌性物質が分散あるいは溶解してなる油脂化合物が挙げられる。これらは、固形状(粉末状、顆粒状など)であってもよいし、液状であっても構わない。また、固形状(粉末状、顆粒状など)とする場合、例えば多孔性微粒子における多数の空隙の内部に当該抗菌性物質を封入したものを使用することもできる。
【0018】
クレオソートに関し、さらに一言しておく。すなわち、クレオソートそのものは従来から公知であり、これには、グアヤコール、4−エチルグアヤコール、クレオゾール、オルトクレゾール、パラクレゾール等のクレゾール類、フェノールやキシレノール類等のフェノール誘導体などが含有される。クレオソートは、日本薬局方(第14改正)、米国のナショナル フォーミュラリー(National Formulary)XII等に収載されている。当該クレオソートは、ブナ、カシ、モミジ、マツ等の樹木、特に広葉樹から得られる木タールを蒸留し、分留により200〜230℃程度(760mmHg)の留分を集めて得られるいわゆるウッドクレオソートで(木クレオソート)あり、石炭タールから得られるクレオソートとは明確に区別されているものである[CAS No.8021−39−4(木クレオソート,Wood Creosote),CAS No.8001−58−9(Creosote,Coal Tar)](緒方規男、馬場達也著、リサーチ コミュニケーションズ イン ケミカル パソロジー アンド ファーマコロジー、66刊、411頁〜423頁、1989(N. Ogata and T. Baba, Res. Commun. Chem. Pathol. Pharmacol. 66, 411423, 1989))。上記文献等にも記載されているように、本発明の薬剤の有効成分であるクレオソートは、前述したようにグアヤコール(約20〜35%)、クレオゾール(約15〜25%)のほか、フェノール、クレゾール類、キシレノール類等の各種フェノール誘導体を含有する混合物であり、特徴的な煙臭及び舌を焼くような味を有する無色〜淡黄色の液体で、比重1.064以上を有する。
【0019】
生菌に対する被覆方法
生菌の表面に対する保護剤の被覆処理方法としては、例えば、
a)保護剤を水に溶かして水溶液とし、この中に生菌を投入し撹拌して生菌の分散液を調製し、これを乾燥して得た塊状物を細かく粉砕する方法、
b)水に溶かす前の保護剤を生菌と混合し、この混合物に水を加えて生菌の分散液を調製し、これを乾燥して得た塊状物を細かく粉砕する方法、
c)保護剤を水に溶かして水溶液とし、この中に生菌を投入し撹拌して生菌の分散液を調製し、これを乾燥してシート状、テープ状、帯状に成形し、これを細かく裁断あるいは粉砕する方法、
d)水に溶かす前の保護剤と生菌の混合物に水を加えて生菌の分散液を調製し、これを乾燥してシート状、テープ状、帯状に成形し、これを細かく裁断あるいは粉砕する方法、
e)保護剤の水溶液を生菌にスプレー塗布あるいはその他の手段により塗布し、のち乾燥する方法、
f)保護剤の水溶液に生菌を所定時間浸漬し、のち乾燥する方法、
g)同芯多重(二重、三重、四重)ノズルの内側ノズルから生菌を、またこれと同時に外側ノズルから保護剤の水溶液を、それぞれ油中あるいは有機溶媒中に吐出し、当該油中あるいは有機溶媒中に球状のカプセルを調製してこれらを液中から引き上げ、のち乾燥する方法、
h)水に溶かした保護剤と生菌の混合物を、筒状ノズルから油中あるいは有機溶媒中に吐出し、当該油中あるいは有機溶媒中に球状のカプセルを調製してこれらを液中から引き上げ、のち乾燥する方法などが挙げられる。
【0020】
組成物の形状
本発明の菌体製剤組成物の形状として特に限定はなく、例えば散剤(攪拌造粒法、流動層造粒法、転動攪拌流動層造粒法、噴霧乾燥造粒法などにより作製)、顆粒剤(転動攪拌流動層造粒法、押し出し造粒法、解砕造粒法等により作製)、錠剤(上記の散剤、顆粒剤を打錠したもの)、コーティング剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠(上記の錠剤をフィルムコーティングしたもの))、カプセル剤(上記の散剤、顆粒剤をカプセル充填したもの)、またその他の形状物として、粉砕物(ボールミル、ジェットミルなどの粉砕機により得られるもの)、粒状物(ハンマーミル、ロールミル、クリーンミルなどの整粒機により得られるもの)などが挙げられる。
【0021】
その他、配合割合など
菌体と、その表面を覆う保護剤との配合割合としては特に限定はなく、また用いる保護剤の種類や菌体の種類によって変わるので具体的な数値は一概に言えない。おおよそのことを言えば、菌体の外表面積の50%以上、好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上を覆うことができる量である。50%未満の場合は、菌体と抗菌性物質が接触する機会が多くなり、この抗菌性物質によって不活性となる菌体が飛躍的に多くなる。
【0022】
大雑把に言えば、菌体100部(重量部、以下同様)に対し、保護剤0.01部以上であり、好ましくは0.05〜1000部であり、さらに好ましくは1〜700部である。
【0023】
例えば菌体として納豆菌(Bacillus subtilis)、有胞子性乳酸菌(Bacillus coagulans)あるいは乳酸菌(Enterococcus faecium )を単独でまたは2種以上を混合して用い、保護剤としてプルランを用いる場合は、菌体100部に対し、プルラン0.1部以上であり、0.5〜1000部であることが好ましく、1〜700部であることがさらに好ましい。また、保護剤としてPVAを用いる場合も同様、上記の菌体100部に対し、PVA0.1部以上であり、0.5〜1000部であることが好ましく、1〜700部であることがさらに好ましい。
【0024】
保護剤の量が少ない場合は、あとで行う乾燥処理工程に時間が掛かることになるが、当該保護剤を溶かす水の量を多くすればよい。
【0025】
本発明の菌体製剤組成物を薬剤として使用する場合の投薬量は、患者の性別、年齢、体重、症状の程度等により適宜選択されるが、(A)成分における生菌として、106〜109個/日であることが好ましい。また(B)成分の抗菌性物質がクレオソート又はその構成成分とした場合にあっては、一般に成人に対し、1日当たり体重1kgに対して1〜50mg程度とすることが好ましく、5〜10mg程度とすることがより好ましく、これを1日2〜4回程度に分けて投薬(経口投与)してもよい。その他の成分に関しては公知の量とすることができる。
【0026】
【実施例】
本発明の一実施例を図面を用いて説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0027】
実施例1
プルラン溶液(25%プルラン(林原、PI−20)、0.25%グリセリン(ナカライテスク))に菌体粉末を3%添加し、薄層状に乾燥固化させた。これを粉砕機で粉砕し、菌体粉末の表面をプルランで被覆したプルラン内封入菌体粉末を作製した。
【0028】
なお、使用した菌体粉末は、次の通りである。
【0029】
(1)納豆菌(目黒研究所、ビオナットミン、Bacillus subtilis )、
(2)有胞子性乳酸菌(三共、ラクボン、Bacillus coagulans )、
(3)乳酸菌(目黒研究所、コンクビオゼニン、Enterococcus faecium )。
【0030】
各々のプルラン内封入菌体粉末を各濃度の木クレオソート溶液(0%、50%、100%、ただし希釈剤としてはコーンオイルを用いた)に暴露し、1時間後における生存菌数を寒天平板混釈法にて定量的に調査した。平板培地として、納豆菌(1)に関してはSCD寒天培地(日本製薬、日局試験用)を、有胞子性乳酸菌(2)と乳酸菌(3)にはBCP加プレートカウントアガール(日水製薬)を用い、使用説明書に従い調製した。
【0031】
コントロール(木クレオソート0%溶液)の菌体生存菌数を100%として、各濃度の木クレオソート溶液中での生存菌数率を算出したところ、下記[表1]に示すように若干生存菌数率の低下が見られるものの、菌体が生存していることが確かめられた。一方、比較対照実験として、プルラン内封入処理をしていない菌体粉末の木クレオソートに対する生存菌数率を調査したところ、下記[表1]に示すように劇的に低下した。
【0032】
これにより、菌体の表面にプルランを被覆処理し、当該プルラン内部に菌体を封入することで、その菌体の生存率が飛躍的に上昇することが確かめられた。
【0033】
【表1】
【0034】
実施例2
生菌(納豆菌:Bacillus subtilis)粉末1部に対し、プルラン0.1〜10部を混合し、加水後、実施例1と同様、プルラン内封入納豆菌粉末を作製した。0%濃度の木クレオソート溶液および100%濃度の木クレオソート溶液に各部数のプルラン内封入菌体粉末(納豆菌1部に対するプルランの部数が0.1〜10部)およびプルラン表面処理していない(プルラン0部の)納豆菌粉末を室温で21時間、及び60℃で5日間暴露し、このときの生存菌数をSCD寒天培地(日本製薬、日局試験用)を用いて寒天平板混釈法にて定量的に調査した。
【0035】
0%濃度の木クレオソート溶液(すなわち、木クレオソートを含まないコーンオイル中)の菌体生存菌数を100として、100%濃度木クレオソート溶液中での生存菌数率を算出したところ、下記[表2]に示すようにプルラン封入した納豆菌はいずれの条件でも83%以上であった。納豆菌粉末1部に対してプルラン0.1部とした標品を60℃で5日間暴露した条件でさえ生存菌数率は97%を超えていた。
【0036】
一方、対照実験として、プルラン内封入処理をしていない菌体粉末の木クレオソートに対する生存菌数率は、[表2]に示すように、60℃で5日間暴露した条件で0.16%と劇的に低下した。したがって、プルラン内封入処理をすることで、菌体粉末の生存菌数率が飛躍的に上昇することが確かめられた。
【0037】
また、生菌の表面をプルランで被覆することにより、上述したように、抗菌性物質に晒してもその生存率を高く維持することが可能となり、これ自身驚くべきことであるが、プルラン内封入処理した生菌は、温度に対する効果(耐熱性)に対しても優れていて、この点は予想を遙かに超えていた。
【0038】
【表2】
【0039】
実施例3
生菌(納豆菌:Bacillus subtilis)粉末1部にプルラン10部を混合し、加水後、実施例1と同様の方法でプルラン内封入納豆菌粉末を作製した。100%木クレオソート溶液中における前記プルラン内封入菌体粉末の経時的な生存菌数率を実施例1の方法にて測定した(温度条件は25℃と60℃である)。0%濃度木クレオソート溶液の菌体生存菌数を100%として、100%木クレオソート溶液中での生存菌数率を算出したところ、下記[表3]に示す結果となった。
【0040】
下記[表3]から明かなように、25℃と60℃の双方で4週間経時した条件においても、100%の生存菌数率であった。
【0041】
一方、対照実験として、プルラン内封入処理をしていない菌体粉末の木クレオソートに対する生存菌数率は、下記[表3]に示すように60℃で2週間が経った時には0.009%、4週間経った時には0.0000%(1000万分の1以下)と劇的に低下した。
【0042】
このように、生菌をプルランで表面処理したプルラン内封入納豆菌粉末は、抗菌性物質に晒されても経時的な安定性が確認され、保存性に優れていることが判断できる。
【0043】
【表3】
【0044】
実施例4
生菌(納豆菌:Bacillus subtilis)粉末1部にプルラン10部を混合し、加水後、実施例1の手法によりプルラン内封入納豆菌粉末を作製した。このプルラン内封入菌体粉末における、100%グアヤコール溶液中(60℃、6日間)及び100%フェノール溶液中(60℃、2時間および7日間)の生存菌数率を実施例1と同様の方法で測定した。それぞれの0%溶液での菌体生存菌数を100%として、100%グアヤコール溶液中および100%フェノール溶液での生存菌数率を算出したところ、下記[表4]に示す結果となった。すなわち、両溶液中において生存菌数率はほとんど100%であった。
【0045】
一方、対照実験として、プルラン内封入処理をしていない菌体粉末の両溶液中での生存菌数率は、下記[表4]に示すようにグアヤコール(6日間)では20%、フェノール(2時間)では11%、フェノール(7日間)では0.0002%と劇的に低下した。これにより、プルラン内封入処理をすることで、菌体粉末は木クレオソート以外の殺菌剤であるグアヤコールやフェノールにも安定であることが確かめられた。
【0046】
【表4】
【0047】
実施例5
生菌(納豆菌:Bacillus subtilis 、有胞子性乳酸菌:Bacillus coagulans)粉末1部にプルラン10部を混合し加水後、実施例1と同様にして、プルラン内封入納豆菌粉末およびプルラン内封入有胞子性乳酸菌粉末を作製した。
【0048】
この粉末を下記[表5]の処方に従ってバーチカルグラニュレータ(パウレック)にて混合し、粉体を得た。この粉体をガラス瓶に封入し、60℃で10日間の生存菌数率を実施例1と同様の方法にて測定した。その結果、製剤化した両プルラン内封入菌体末の生存菌数率は、いずれも65%以上となり、対照として用いたプルラン内封入処理をしていない菌体粉末の生存菌数率よりも高かった(表6参照)。これにより、プルラン内封入処理を施した生菌は、製剤化した条件でも生存菌数率の低下が軽減されることが確かめられた。
【0049】
【表5】
【表6】
【0050】
実施例6(散剤)
上記[表5]に示した処方の成分を、バーチカルグラニュレータ(パウレック)にて混合して散剤を得た。
【0051】
実施例7(顆粒剤)
実施例6で作製した散剤をローラーコンパクター(ターボ工業)にて造粒し、ロールグラニュレーター(日本グラニュレーター)にて整粒して顆粒剤を得た。
【0052】
実施例8(錠剤)
実施例7で作製した造粒粉末を打錠機(菊水製作所)を用いて製錠し、直径7mm、1錠あたりの重量が120mgの錠剤を得た。
【0053】
実施例9(糖衣錠)
実施例8で作製した錠剤をドリアコーター(パウレック)を用いて糖衣コーティングし、糖衣錠を得た。
【0054】
実施例10(カプセル剤)
実施例7で得た顆粒剤をカプセル充填機(IMA ZANASI)を用いて充填し、カプセル剤を得た。
【0055】
【発明の効果】
本発明により、菌体(生菌)に対し、雑菌や不活性化という悪影響を及ぼすことなく抗菌性物質を組み合わせた菌体製剤組成物を提供することができる。
【0056】
この菌体製剤組成物における生菌は、水溶性で有機溶媒や油脂に不溶か難溶の物質により表面が被覆処理されているので、同じ組成物中における抗菌性物質からの影響を受ける心配はなく、のみならず温度に対する悪影響を受けるおそれもない(耐熱性に優れている)。
Claims (10)
- (A)水溶性で、かつ有機溶媒や油脂に不溶か難溶の保護剤により被覆された菌体、及び
(B)有機溶媒や油脂に可溶の抗菌性物質
を含有してなることを特徴とする菌体製剤組成物。 - 前記(A)成分における保護剤が増粘剤であることを特徴とする請求項1に記載の菌体製剤組成物。
- 前記(A)成分における保護剤が増粘多糖類であることを特徴とする請求項2に記載の菌体製剤組成物。
- 前記増粘多糖類がプルランであることを特徴とする請求項3に記載の菌体製剤組成物。
- 前記(A)成分における保護剤が水溶性ビニル系重合体であることを特徴とする請求項2に記載の菌体製剤組成物。
- 前記(A)成分における菌体が、バチルス属、ビフィドバクテリウム属およびラクトバチルス属に属する細菌からなる群より選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の菌体製剤組成物。
- 前記(B)成分の抗菌性物質が、フェノール誘導体からなることを特徴とする請求項1に記載の菌体製剤組成物。
- 前記フェノール誘導体が、クレオソート及び/又はその構成成分であるグアヤコール、4−エチルグアヤコール、クレオゾール、オルトクレゾール、パラクレゾール等のクレゾール類、フェノール、キシレノール類であることを特徴とする請求項7に記載の菌体製剤組成物。
- 前記フェノール誘導体が、クレオソートまたはグアヤコールであることを特徴とする請求項7に記載の菌体製剤組成物。
- (A)プルランにより被覆されたバチルス属、ビフィドバクテリウム属およびラクトバチルス属に属する細菌からなる群より選ばれた少なくとも1種、及び
(B)クレオソートまたはグアヤコール
を含有してなることを特徴とする菌体製剤組成物。
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