JP2004345059A - 表面被覆切削工具 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】基材表面に被覆膜を具える表面被覆切削工具であって、前記被覆膜には、(Ti1−x−y−zAlxSiy)(M)zの窒化物、炭窒化物、窒酸化物及び炭窒酸化物から選択される化合物層を具える。前記Mは、Mは、CaS、MnS、CaF2、及びBaF2より選択される少なくとも1種とする。また、0≦x≦0.6、0≦y≦0.4、0.01≦z≦0.2、1−x−y−z≠0とする。AlTiSi系やTiSi系などの被覆膜中にCaS、MnS、CaF2やBaF2を含有することで、工具表面での潤滑性能が向上し、切削性能が向上する。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、基材表面に被覆膜を具える切削工具に関する。特に、耐摩耗性に優れると共に、潤滑性を向上することができる表面被覆切削工具に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、切削工具や耐摩耗工具などでは、耐摩耗性や表面保護機能の改善のために、WC基超硬合金、サーメット、高速度鋼、その他の硬質材料などからなる基材表面に、AlTiの窒化物や炭窒化物からなる被覆膜を1層以上形成することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、以下に示す最近の動向から、切削の際、工具の刃先温度はますます高温になる傾向にあり、工具材料に要求される特性は厳しくなる一方である。例えば、
▲1▼地球環境保全の観点から潤滑油剤(切削油剤)を用いない乾式(ドライ)加工が求められている、
▲2▼被加工材(被削材)が多様化している、
▲3▼加工能率を一層向上させるために切削速度が高速になってきている、などが挙げられる。
【0004】
特に、工具材料の要求特性として、高温での被覆膜の安定性(耐酸化特性や基材に対する密着性)はもちろんのこと、工具寿命に関係する耐摩耗性、即ち、高温における被覆膜の硬度の向上が一段と重要となっている。
【0005】
そこで、特許文献2では、AlTiSi系の被覆膜を提案しており、Siの含有により、高温時に起こるTiの酸化を抑制したり、Alの酸化物からなる保護膜を緻密化して、耐摩耗性を向上することが開示されている。また、特許文献3では、TiSi系の被覆膜を具えることで、高速連続切削において耐摩耗性に優れることが開示されている。その他、特許文献4では、基材上にTiN、TiCN、TiAlNを被覆し、更にその上にダイヤモンドライクカーボンを被覆することで、安定した耐久性が得られることが開示されている。
【0006】
【特許文献1】
特公平5−67705号公報
【特許文献2】
特許第2793773号公報
【特許文献3】
特開平8−118106号公報
【特許文献4】
特許第3372493号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来の技術では、耐摩耗性の向上を主に考慮しており、潤滑性について十分な検討がされていない。切削過程において完全に潤滑油剤を使わない乾式加工を行うには、上記高温での被覆膜の安定性や高温における被覆膜の硬度の向上だけでは不十分である。特に、特許文献4に開示されるダイヤモンドライクカーボンは、耐酸化特性が悪く、400℃を越える切削加工では、優れた耐酸化特性の効果が得られにくい。
【0008】
従って、潤滑油剤に替わり被覆膜の表面の潤滑性能を向上させることが一段と必要となってきている。被覆膜の潤滑性能が向上すれば、工具と被加工材との界面の温度が低下すると共に、擦過距離も小さくなるため切り屑の排出性をも向上させることができるので、乾式加工が可能となる。
【0009】
そこで、本発明は、耐摩耗性に優れると共に、潤滑性にも優れる被覆膜を具える表面被覆切削工具を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、基材に特定の被覆膜、具体的には、SやFの化合物を含む膜を設けることで上記目的を達成する。
【0011】
即ち、本発明は、基材表面に被覆膜を具える表面被覆切削工具であって、前記被覆膜には、(Ti1−x−y−zAlxSiy)(M)zの窒化物、炭窒化物、窒酸化物及び炭窒酸化物から選択される化合物層を具える。前記Mは、CaS、MnS、CaF2及びBaF2より選択される少なくとも1種とし、0≦x≦0.6、0≦y≦0.4、0.01≦z≦0.2、1−x−y−z≠0とする。
【0012】
発明者が種々検討した結果、AlTiSi系やTiSi系などの被覆膜中にCaSやMnSといった硫化物、CaF2やBaF2といったフッ化物が存在すると、工具表面での潤滑性能が向上し、結果として切削性能が向上するという知見を得た。即ち、優れた耐摩耗性を実現すると共に、潤滑性を向上させるためには、上記硫化物やフッ化物が必要であるとの知見に基づき、本発明を規定するものである。以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明において基材上に形成する(Ti1−x−y−zAlxSiy)(M)zの窒化物、炭窒化物、窒酸化物及び炭窒酸化物から選択される化合物層(以下、単に化合物層と呼ぶ)が、SやFの化合物を含まない従来のAlTiSi系、TiSi系の被覆膜よりも優れた耐摩耗性を示す理由は十分に解明されている訳ではない。しかし、(Ti1−x−y−zAlxSiy)膜中にCaS、MnS、CaF2、及びBaF2の少なくとも1種を含有すると、切削時、切削加工に伴って被覆膜表面に種々の酸化物が生成されることが影響していると考えられる。本発明の場合、上記酸化物としては、CaO、Al2O3、SiO2、MnOなどが挙げられる。そして、これらの酸化物は、切削加工中に工具表面にベラーグと呼ばれる付着層を形成し、この付着層が工具表面を保護すると共に、工具表面の潤滑性を向上させると考えられる。また、CaF2やBaF2は、それ自身でも、500〜950℃の範囲において摩擦係数が低いことから、これらが(Ti1−x−y−zAlxSiy)膜中に分散していると、被覆膜表面の摩擦係数を低下させることができると考えられる。
そのため、本発明は、切削の際に生成される上記酸化物の表面保護により、優れた耐摩耗性を発揮すると共に、同酸化物により潤滑性が向上されることで、潤滑油剤を用いない乾式加工であっても、工具寿命を著しく向上できる。
【0014】
上記化合物層中において、Ti、Al、Siの少なくとも1種は、膜構成元素として不可欠である。本発明では、少なくともTiを含有するものとし、Tiの含有量(原子比)を後述するAl、Si、及び化合物Mの原子比x、y、zにより規定する。具体的には、1−x−y−z=0となる場合を除く。Alを含有すると、耐酸化特性が向上するため好ましいが、多過ぎると、膜の硬度が低下するため、逆に摩耗が促進される恐れがある。そこで、本発明では、Alの含有量(原子比)xを0≦x≦0.6と規定する。
より好ましくは、0.45≦x≦0.55である。Siを含有すると、膜の硬度が向上するため好ましいが、多過ぎると、膜が脆くなり、逆に摩耗が促進される恐れがある。また、膜を形成する原料となる合金ターゲットを熱間静水圧加圧処理で作製する場合、yを0.4超としてSiを含有させると、合金ターゲットが作製中に割れることがあり、膜の成形(コーティング)に使用可能な材料強度が得られない恐れがある。そこで、本発明では、Siの含有量(原子比)yを0≦y≦0.4と規定する。より好ましくは、0.05≦y≦0.15である。
【0015】
上記化合物層中において化合物Mは、膜構成元素として不可欠である。化合物Mは、CaS、MnS、CaF2、及びBaF2より選択される少なくとも1種とする。(Ti1−x−y−zAlxSiy)膜中に化合物Mを含有すると、切削加工中に工具表面にベラーグが形成されて工具表面の保護、及び工具表面の潤滑性を向上できるため好ましいが、多過ぎると、膜の硬度が低下して、逆に摩耗が促進される恐れがある。そこで、本発明では、化合物Mの含有量(原子比)zを0.01≦z≦0.2に規定する。より好ましくは、0.05≦z≦0.15である。化合物Mは、単一種でもよいし、複数種でもよい。従って、硫化物CaS、MnSから少なくとも1種としてもよいし、フッ化物CaF2、BaF2から少なくとも1種としてもよいし、硫化物とフッ化物の双方を含む、即ち、硫化物CaS、MnSから少なくとも1種及びフッ化物CaF2、BaF2から少なくとも1種としてもよい。複数種選択する場合、各化合物の原子比を合算したものをzとする。
【0016】
上記化合物層において、Ti、Al、Siや化合物Mの含有量(原子比)x、y、zは、膜を形成する原料、例えば、合金ターゲットの原子比を変化させることで変化させることができる。
【0017】
上記化合物層の厚みは、0.5μm以上10μm以下であることが好ましい。厚みが0.5μm未満では、上記化合物層を設ける効果が少なく、耐摩耗性や潤滑性の向上が十分に得られない。逆に10μmを越えると、膜中の残留応力が大きくなり基材との密着強度が低下して剥離し易くなる恐れがある。また、上記化合物層は、被覆膜中に少なくとも1層具えていればよく、複数層具えていてもよい。化合物層を複数具える場合、化合物層の総厚みは、0.5μm以上10μm以下とすることが好ましい。なお、膜厚は、成膜時間を変化させることで変化させることができる。
【0018】
上記化合物層は、結晶性が高い化合物を形成できる成膜プロセスにて作製されることが適する。そこで、種々の成膜方法を検討した結果、物理的蒸着法を用いることが好ましいとの知見を得た。また、物理的蒸着法には、スパッタリング法、イオンプレーティング法などがあるが、特に、原料元素のイオン化率が高いアーク式イオンプレーティング法(カソードアークイオンプレーティング)が最適である。カソードアークイオンプレーティングを用いた場合、化合物層を形成する前に基材表面に対して金属のイオンボンバードメント処理が可能であるため、化合物層の密着性を格段に向上させることができ、密着性の観点からも好ましいプロセスである。
【0019】
本発明において基材表面に設ける被覆膜は、上記化合物層のみで構成してもよいが、その他の膜を具えていてもよい。例えば、基材表面と上記化合物層との間に中間層を具えることが挙げられる。中間層としては、Ti、Cr、Tiの窒化物及びCrの窒化物より選択される1種からなる膜が好ましい。これらTiやCrなどの膜は、基材と上記化合物層との双方に対して密着性がよい。従って、このような中間層を具えると、基材と上記化合物層との密着性を一層向上させることができ、化合物層が基材から剥がれることを抑制し、工具寿命を更に延長させることができる。この中間層の厚みは、0.05μm以上1.0μm以下であることが好ましい。0.05μm未満では、密着強度の向上が得られにくく、逆に1.0μmを越えても密着強度の更なる向上が見られない。
【0020】
本発明において基材は、WC基超硬合金、サーメット、高速度鋼、セラミックス、立方晶型窒化硼素(cBN)焼結体、ダイヤモンド焼結体、窒化ケイ素焼結体、及び酸化アルミニウムと炭化チタンとを含む焼結体から選択される1種から形成されることが好ましい。
【0021】
WC基超硬合金は、炭化タングステン(WC)を主成分とする硬質相と、コバルト(Co)などの鉄族金属を主成分とする結合相とからなるもので、通常よく用いられているものを用いるとよい。更に、周期律表4a、5a、6a族の遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種と、炭素、窒素、酸素及び硼素から選ばれる少なくとも1種とからなる固溶体が含まれているものでもよい。固溶体としては、例えば、(Ta,Nb)C、VC、Cr2C2、NbCなどが挙げられる。
【0022】
サーメットとしては、例えば、周期律表4a、5a、6a族の遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種と炭素、窒素、酸素及び硼素から選ばれる少なくとも1種とからなる固溶体相と、1種以上の鉄系金属からなる結合相と、不可避的不純物とからなるもので、通常よく用いられるものを用いるとよい。
【0023】
高速度鋼としては、例えば、JIS記号SKH2、SKH5、SKH10などのW系高速度鋼、SKH9、SKH52、SKH56などのMo系高速度鋼などが挙げられる。
【0024】
セラミックスは、例えば、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウムなどが挙げられる。
【0025】
cBN焼結体としては、cBNを30体積%以上含むものが挙げられる。より具体的には、以下の焼結体が挙げられる。
【0026】
(1)cBNを30体積%以上80体積%以下含み、残部が結合材と鉄族金属と不可避的不純物とからなる焼結体。結合材は、周期律表4a、5a、6a族元素の窒化物、硼化物、炭化物並びにこれらの固溶体からなる群から選択される少なくとも1種と、アルミニウム化合物とを含むものである。
【0027】
上記cBN焼結体においてcBN粒子は、被加工材としてよく用いられる鉄との親和性が低い上記結合材を介して主に結合され、この結合が強固であることから、基材の耐摩耗性と強度とを向上させる。
【0028】
cBN含有量を30体積%以上とするのは、30体積%未満となると、cBN焼結体の硬度が低下し易くなり、例えば、焼入鋼のような高い硬度の被加工材を切削するには、硬度が不足するからである。cBN含有量を80体積%以下とするのは、80体積%を超える場合、結合材を介してcBN粒子同士の結合が困難になり、cBN焼結体の強度が低下する恐れがあるからである。
【0029】
(2)cBNを80体積%以上90体積%以下含み、cBN粒子同士が結合しており、残部が結合材と不可避的不純物とからなる焼結体。結合材は、Al化合物又はCo化合物を主成分とするものである。
【0030】
このcBN焼結体は、触媒作用を有するAl又はCoを含有する金属、或いは金属間化合物を出発原料として液相焼結を行うことで、cBN粒子同士を結合させ、かつcBN粒子の含有率を高めることができる。cBN粒子の含有率が高いことから、耐摩耗性が低下し易いものの、cBN粒子同士が強固な骨格構造を形成しているため、耐欠損性に優れ、過酷な条件での切削が可能となる。
【0031】
cBN含有量を80体積%以上とするのは、80体積%未満となると、cBN粒子同士の結合による骨格構造を形成することが難しくなるからである。cBN含有量を90体積%以下とするのは、90体積%を超えると、触媒作用を有する上記結合材が不足して、未焼結部分を生ずるため、cBN焼結体の強度が低下するからである。
【0032】
ダイヤモンド焼結体としては、ダイヤモンドを40体積%以上含むものが挙げられる。より具体的には、以下の焼結体が挙げられる。
(1)ダイヤモンドを50〜98体積%含み、残部が鉄族金属、WC及び不可避的不純物からなる焼結体。鉄族金属は、特に、Coが好ましい。
(2)ダイヤモンドを85〜99体積%含み、残部が空孔、WC及び不可避的不純物からなる焼結体。
(3)ダイヤモンドを60〜95体積%含み、残部が結合材及び不可避的不純物からなる焼結体。結合材は、鉄族金属と、周期律表4a、5a、6a族元素の炭化物及び炭窒化物からなる群から選択される1種以上と、WCとを含むものである。より好ましい結合材は、CoとTiCとWCとを含むものである。
(4)ダイヤモンドを60〜98体積%含み、残部がケイ素及び炭化ケイ素の少なくとも1種、WC及び不可避的不純物からなる焼結体。
【0033】
窒化ケイ素焼結体としては、窒化ケイ素を90体積%以上含むものが挙げられる。特に、HIP法(熱間静水圧焼結法)を用いて結合した窒化ケイ素を90体積%以上含む焼結体が好ましい。この焼結体において残部は、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化イットリウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、希土類、TiN及びTiCから選ばれる少なくとも1種からなる結合材と不可避的不純物とからなることが好ましい。
【0034】
酸化アルミニウムと炭化チタンとを含む焼結体としては、体積%で酸化アルミニウムを20%以上80%以下、炭化チタンを15%以上75%以下含み、残部がMg、Y、Ca、Zr、Ni、Ti、TiNの酸化物から選ばれる少なくとも1種の結合材と不可避的不純物とからなる焼結体が挙げられる。特に、酸化アルミニウムは、65体積%以上70体積%以下、炭化チタンは、25体積%以上30体積%以下で、結合材は、Mg、Y、Caの酸化物から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0035】
本発明工具は、ドリル、エンドミル、フライス加工用刃先交換型チップ、旋削用刃先交換型チップ、メタルソー、歯切工具、リーマ及びタップから選択された1種に使用されるとよい。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
(実施例1)
以下に示す表面被覆切削工具を作製し、耐摩耗性を調べてみた。
(1) サンプルの作製
(i)サンプルNo.1〜24の作製
まず、本例で用いた成膜装置について説明する。図1は、本例で用いた成膜装置の模式図である。成膜装置は、基材5が搭載される基材ホルダー4と、チャンバー1の側壁に配置されるアーク式蒸発源(ターゲット)6、7と、各蒸発源6、7に接続される可変電源としての直流電源8、9と、基材ホルダー4に接続される基材バイアス用の直流電源10と、ガスを供給するガス導入口2と、ガスを排気するガス排気口3とを具える。
【0037】
チャンバー1は、真空ポンプ(図示せず)と連結されており、ガス排気口3を通して、チャンバー1内の圧力を変化させることが可能である。基材ホルダー4は、直流電源10の負極と電気的に接続され、直流電源10の正極は、アースされている。
基板ホルダー4は、回転可能である。アーク式蒸発源6、7は、それぞれ直流電源8、9の負極と電気的に接続され、直流電源8、9の正極は、アースされると共にチャンバー1と電気的に接続されている。
【0038】
そして、アーク式蒸発源6、7とチャンバー1との間のアーク放電によって、蒸発源6、7を部分的に容解させてカソード物質を基材5に対して前方方向に蒸発させ、基材5表面に被覆膜を形成する。このとき、チャンバー1には、ガス導入口2からマスフローコントローラー(図示せず)を介して様々なガスを導入する。ガスは、例えば、アルゴンや窒素ガスなどの不活性ガス、メタン、アセチレン、ベンゼンなどの炭化水素ガスなどが挙げられる。また、放電の際、アーク式蒸発源6、7とチャンバー1との間には、数十から数百V程度の電圧が印加される。
【0039】
以下、被覆膜の成膜方法を説明する。基材には、グレードがJIS規格P30の超硬合金、チップ形状がJIS規格のSPGN120308のものを用意した。そして、図1で示す成膜装置を用いて、基材ホルダー4を回転させながらヒーター(図示せず)にてチップ形状の基材5を温度450℃に加熱すると共に、真空ポンプにて真空引きを行って、チャンバー1内の圧力が1.0×10−3Paとなるまで減圧する。次に、ガス導入口2からアルゴンガスを導入してチャンバー1内の圧力を3.0Paに保持し、基板バイアス用の直流電源10の電圧を徐々に上げていって−1000Vとし、基材5表面のクリーニングを15分間行う。その後、ガス排気口3からアルゴンガスを排気する。
【0040】
次に、基板バイアス用の直流電源10の電圧を−1000Vに維持したまま、チャンバー1内にガス導入口2を通して100SCCMのアルゴンと、窒素との混合ガスを導入する。そして、直流電源8から100Aのアーク電流を供給し、アーク式蒸発源6から金属イオンを2分間発生させる。アーク式蒸発源6には、TiやCrといった金属、又はTiやCrの化合物を用いた。この工程により、アーク式蒸発源6からの金属イオンが基材5の表面をスパッタクリーニングし、基材5表面に存在する強固な汚れや酸化膜などを除去する。アルゴンと共に窒素も同時に導入しているのは、アルゴンのみの場合に比べて被覆膜の面粗度が格段に良好になるからである。これは、窒素を導入することで、アーク式蒸発源の表面が窒化され、金属のみの状態に比べて融点が高くなるので、発生する溶融粒子が減少するためであると考えられる。
【0041】
その後、チャンバー1内の圧力が2.7Paになるようにガス導入口2から窒素ガスを導入し、基板バイアス用の直流電源10の電圧を−75Vにする。すると、基材5表面において、金属窒化膜の形成が始まる。金属窒化膜(本例ではTiN、CrN)が所定の厚みに達するまでこの状態を維持する。この工程により、中間層としてTiN膜、CrN膜を形成した。また、この工程において、窒素ガスを導入しなければ、中間層として金属膜(本例ではTi膜、Cr膜)が得られる。
【0042】
上記中間層の形成が終了した後、このままの状態(チャンバー内の圧力:2.7Pa、直流電源10の電圧:−75V)で直流電源8の供給を止めて、炭素ガス、窒素ガス、及び酸素ガスの少なくとも一種のガス雰囲気中で、続けて直流電源9に100Aの電流を供給する。すると、アーク式蒸発源7から金属イオンが基材5に向かって前方方向に蒸発して、基材5表面に所定の厚みの化合物層を形成する。アーク式蒸発源7には、金属化合物(Ti1−x−y−zAlxSiy)Mz(0≦x≦0.6、0≦y≦0.4、0.01≦z≦0.2、MはCaS、MnS、CaSとMnS、CaF2、BaF2、CaF2とBaF2、CaSとBaF2、CaSとCaF2、MnSとCaF2、MnSとBaF2、のいずれか)を用いた。
【0043】
中間層を具えていないサンプルは、基材表面のクリーニングの後、アルゴンガスを排気し、窒素ガスを導入して、圧力:2.7Pa、基板バイアス用の直流電源10の電圧:−75Vとして、上記と同様に化合物層を形成した。また、更に最表層を具えるサンプルは、化合物層を形成した後、続けてアーク式蒸発源6にTiやAlの化合物を用いてTiやAlの化合物層を形成した。各膜は、成膜時間を変化させることで、膜厚を変化させた。
【0044】
上記工程により、特定の化合物層を具えるサンプルNo.1〜24を作製した。表1に各サンプルの被覆膜の膜種、膜厚を示す。表1において、サンプルNo.1〜24に示す化合物の組成は、XPS(X−ray Photoelectron Spectroscopy)にて行った。後述の表5においても同様である。組成の確認は、透過電子顕微鏡に併設の微小領域EDX(Energy Dispersive X−ray Spectroscopy)分析や、SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)によってもできる。なお、本例では、化合物層を含めて被覆膜の形成をカソードアークイオンプレーティング法で行っているが、別の手法、例えばスパッタリング法によっても可能である。
【0045】
【表1】
【0046】
(ii)従来品(サンプルNo.25〜28)の作製
サンプルNo.25〜28は、以下のように作製した。まず、上記サンプルNo.1〜24と同じ基材を準備した。この基材を図1に示す成膜装置の基材ホルダー4にセットする。アーク式蒸発源6にはTiを用いた。成膜装置の構成については、上記サンプルNo.1〜24の作製の際と同様にした。
【0047】
上記成膜装置を用いて、上記と同様の手法で、基材5表面をアルゴンでスパッタクリーニングした後、チタンイオンでスパッタクリーニングした。そして、上記と同様にして、基材5表面に中間層として、厚さ0.3μmのTiN膜を形成した。
【0048】
TiN膜の形成が終了した後、直流電源9からアーク式蒸発源7に100Aの電流を供給して、蒸発源7から金属イオンを発生させると共に、ガス導入口2から窒素ガスを導入する。発生した金属イオンと窒素ガスが基材5上で反応して、中間層のTiN膜上に膜厚3μmの膜を形成して、サンプルNo.25〜28を得た。
【0049】
サンプルNo.25では、アーク式蒸発源7に、TiとAlの化合物(Ti0.5Al0.5)を用い、チタンイオン、アルミニウムイオンを発生させて、(Ti0.5Al0.5)N膜を形成した。以上から、従来製法によるTiAlN膜を具えるサンプルを得た。なお、(Ti0.5Al0.5)とは、TiとAlの原子比(原子%)が0.5:0.5(50:50)の化合物をいい、(Ti0.5Al0.5)Nとは、TiとAlとNとの原子比が0.5:0.5:1の化合物をいう。
【0050】
サンプルNo.26では、アーク式蒸発源7にTiとSiの化合物(Ti0.7Si0.3)を用い、チタンイオン、シリコンイオンを発生させて、(Ti0.7Si0.3)N膜を形成した。以上から、従来製法によるTiSiN膜を具えるサンプルを得た。なお、(Ti0.7Si0.3)とは、TiとSiの原子比が0.7:0.3の化合物をいい、(Ti0.7Si0.3)Nとは、TiとSiとNとの原子比が0.7:0.3:1の化合物をいう。
【0051】
サンプルNo.27では、アーク式蒸発源7に、Tiを用い、窒素ガスと共にメタンガスを導入し、チタンイオンを発生させて、TiC0.5N0.5膜を形成した。以上から、従来製法によるTiCN膜を具えるサンプルを得た。なお、TiC0.5N0.5とは、TiとCとNとの原子比が1:0.5:0.5の化合物をいう。
【0052】
サンプルNo.28では、アーク式蒸発源7にTiとAlの化合物(Ti0.5Al0.5)を用い、窒素ガスと共にメタンガスを導入し、チタンイオン、アルミニウムイオンを発生させて、(Ti0.5Al0.5)C0.5N0.5膜を形成した。以上から、従来製法によるTiAlCN膜を具えるサンプルを得た。なお、(Ti0.5Al0.5)C0.5N0.5とは、TiとSiとCとNとの原子比が0.5:0.5:0.5:0.5の化合物をいう。
【0053】
【表2】
【0054】
(2) 工具寿命の評価
得られたサンプルNo.1〜28のそれぞれについて、表3に示す条件で乾式の連続切削試験及び断続切削試験を行い、刃先の逃げ面摩耗幅を測定した。その結果を表4に示す。また、各サンプルにおいて、被覆膜のヌープ硬度(GPa)、及び被覆膜の残留応力(GPa)の測定を行った。ヌープ硬度は、荷重を10gとした。残留応力の測定は、「PVD・CVD被膜の基礎と応用」、編者:(社)表面技術協会、槇書店、1994年9月25日初版発行、p156に記載の方法により、X線回折を用いて行った。その結果を表4に示す。
【0055】
【表3】
【0056】
【表4】
【0057】
表4から明らかなように、(Ti1−x−y−zAlxSiy)膜中にCaS、MnS、CaF2、及びBaF2の少なくとも1種を含むサンプルNo.1〜24は、潤滑油剤を用いないドライ加工であっても、サンプルNo.25〜28と比較して摩耗量が非常に少ないことがわかる。特に、条件の厳しい断続切削においても、摩耗量が少ないことがわかる。従って、本発明工具は、工具寿命を大きく向上できることが確認された。
【0058】
また、サンプルNo.8及び18において、原子比が異なるターゲットを用い、化合物層の原子比を変化させたサンプル(サンプルNo.8−1〜8−3、18−1〜18−3)を作製した。サンプルNo.4及び14において、成膜時間を変化させて化合物層の厚みを変化させたサンプル(サンプルNo.4−1’、4−2’、14−1、14−2)を作製した。そして、サンプルNo.4、8及び14、18と同様の切削条件(表3参照)で、連続切削試験及び断続切削試験を行い、刃先の逃げ面摩耗幅を測定した。また、同様にヌープ硬度、残留応力も測定した。その結果を表5に示す。
【0059】
【表5】
【0060】
表5に示すように、(Ti1−x−y−zAlxSiy)膜中にCaS、MnS、CaF2、及びBaF2の少なくとも1種を含んでいても、原子比が特定の範囲外、即ち、x>0.6、y>0.4、z>0.2であると、摩耗量が多いことがわかる。また、原子比が特定の範囲内にある化合物層を具えていても、膜厚が薄過ぎると、耐摩耗性の向上が十分に得られず、厚過ぎると、残留応力が大きく、膜が剥がれる恐れがあることがわかる。
【0061】
(実施例2)
実施例1と同様の製造方法により、リーマ(JISK10超硬合金)の基材上にそれぞれにコーティングを行い、サンプルNo.2−1〜2−10を得た。サンプルNo.2−1は、上記サンプルNo.1と同様の被覆膜(中間層、化合物層)を具える。サンプルNo.2−2は、従来の製法で基材表面にTiSiN膜を1μmコーティングし、この膜の上に上記サンプルNo.1と同様の被覆膜を具える。サンプルNo.2−3は、従来の製法で基材表面にTiAlN膜を1μmコーティングし、この膜の上に上記サンプルNo.1と同様の被覆膜を具える。サンプルNo.2−4は、上記サンプルNo.11と同様の被覆膜(中間層、化合物層)を具える。サンプルNo.2−5は、従来の製法で基材表面にTiSiN膜を1μmコーティングし、この膜の上に上記サンプルNo.11と同様の被覆膜を具える。サンプルNo.2−6は、従来の製法で基材表面にTiAlN膜を1μmコーティングし、この膜の上に上記サンプルNo.11と同様の被覆膜を具える。サンプルNo.2−7〜2−10は、それぞれ基材上に上記サンプルNo.25〜28と同様の被覆膜(中間層、化合物層)を具える。
【0062】
これらサンプルNo.2−1〜2−10のそれぞれについて、ねずみ鋳鉄(FC250)の穴開け加工を行い、その寿命評価を行った。切削条件は、リーマ径20mm、切削速度5m/min、送り0.4mm/刃、切り込み0.15mm、ウエット(湿式)条件とした。寿命評価は、被加工材(鋳鉄)に開けた穴の寸法精度が規定の範囲を外れた時点を寿命とし、寿命となるまでの穴の個数を評価した。結果を表6に示す。
【0063】
【表6】
【0064】
表6に示すように、サンプルNo.2−1〜2−6は、サンプルNo.2−7〜2−10と比較して、寿命を大きく向上していることが確認された。このように寿命を向上することができたのは、耐摩耗性に優れると共に、潤滑性を向上したためであると考えられる。
【0065】
(実施例3)
実施例1と同様の製造方法により、エンドミル(JISK10超硬合金)の基材上にそれぞれにコーティングを行い、サンプルNo.3−1〜3−10を得た。サンプルNo.3−1は、上記サンプルNo.1と同様の被覆膜(中間層、化合物層)を具える。サンプルNo.3−2は、従来の製法で基材表面にTiSiN膜を1μmコーティングし、この膜の上に上記サンプルNo.1と同様の被覆膜を具える。サンプルNo.3−3は、従来の製法で基材表面にTiAlN膜を1μmコーティングし、この膜の上に上記サンプルNo.1と同様の被覆膜を具える。サンプルNo.3−4は、上記サンプルNo.11と同様の被覆膜(中間層、化合物層)を具える。サンプルNo.3−5は、従来の製法で基材表面にTiSiN膜を1μmコーティングし、この膜の上に上記サンプルNo.11と同様の被覆膜を具える。
サンプルNo.3−6は、従来の製法で基材表面にTiAlN膜を1μmコーティングし、この膜の上に上記サンプルNo.11と同様の被覆膜を具える。サンプルNo.3−7〜3−10は、それぞれ基材上に上記サンプルNo.25〜28と同様の被覆膜(中間層、化合物層)を具える。
【0066】
これらサンプルNo.3−1〜3−10のそれぞれについて、球状黒鉛鋳鉄(FCD450)のエンドミル側面削り(切削幅15mm)加工を行い、その寿命評価を行った。切削条件は、切削速度75m/min、送り0.03mm/刃、切り込み2mm、ウエット(湿式)条件とした。寿命評価は、被加工材(鋳鉄)に行った側面削りの寸法精度が規定の範囲を外れた時点を寿命とし、寿命となるまでの切削長さを評価した。その結果を表7に示す。
【0067】
【表7】
【0068】
表7に示すように、サンプルNo.3−1〜3−6は、サンプルNo.3−7〜3−10と比較して、寿命を大きく向上していることが確認された。このように寿命を向上することができたのは、耐摩耗性に優れると共に、潤滑性を向上したためであると考えられる。
【0069】
(実施例4)
実施例1と同様の製造方法により、旋削用刃先交換型チップ(JISP10超硬合金、刃先形状はスクイ角8°、逃げ角6°)の基材上にそれぞれにコーティングを行い、サンプルNo.4−1〜4−10を得た。サンプルNo.4−1は、上記サンプルNo.1と同様の被覆膜(中間層、化合物層)を具える。サンプルNo.4−2は、従来の製法で基材表面にTiSiN膜を1μmコーティングし、この膜の上に上記サンプルNo.1と同様の被覆膜を具える。サンプルNo.4−3は、従来の製法で基材表面にTiAlN膜を1μmコーティングし、この膜の上に上記サンプルNo.1と同様の被覆膜を具える。サンプルNo.4−4は、上記サンプルNo.11と同様の被覆膜(中間層、化合物層)を具える。サンプルNo.4−5は、従来の製法で基材表面にTiSiN膜を1μmコーティングし、この膜の上に上記サンプルNo.11と同様の被覆膜を具える。サンプルNo.4−6は、従来の製法で基材表面にTiAlN膜を1μmコーティングし、この膜の上に上記サンプルNo.11と同様の被覆膜を具える。サンプルNo.4−7〜4−10は、それぞれ基材上に上記サンプルNo.25〜28と同様の被覆膜(中間層、化合物層)を具える。
【0070】
これらサンプルNo.4−1〜4−10のそれぞれについて、クロムモリブデン鋼(SCM435)の中仕上げ旋削加工を行い、その寿命評価を行った。切削条件は、切削速度100m/min、送り0.08mm/刃、ドライ(乾式)条件とした。寿命評価は、被加工材(鋼)の中仕上げの寸法精度が規定の範囲を外れた時点を寿命とし、寿命となるまでの時間を評価とした。その結果を表8に示す。
【0071】
【表8】
【0072】
表8に示すように、サンプルNo.4−1〜4−6は、サンプルNo.4−7〜4−10と比較して、寿命を大きく向上していることが確認された。また、サンプルNo.4−1〜4−6は、ドライ条件においても、耐摩耗性に優れ、潤滑性を向上していることが分かる。
【0073】
(実施例5)
基材にcBN焼結体を用いた切削用チップを作製し、摩耗量を調べてみた。cBN焼結体は、超硬合金製ポット及びボールを用いて、TiN:40重量%、Al:10重量%からなる結合材粉末と平均粒径2.5μmのcBN粉末:50重量%とを混ぜ合わせ、超硬合金製容器に充填し、圧力5GPa、温度1400℃で60分焼結することで得た。このcBN焼結体を加工して、ISO規格SNGA120408の形状の切削用チップを得た。このチップの基材上に、実施例1と同様にして上記サンプルNo.1、11と同様の中間層、被覆膜を形成したサンプルを得た(サンプルNo.5−1、5−2)。また、比較例として、このチップの基材上に、実施例1と同様にして上記サンプルNo.25と同様の中間層、被覆膜を形成したサンプルNo.5−3を用意した。
【0074】
これらサンプルNo.5−1〜5−3のそれぞれについて、焼入鋼の1種であるSUJ2の丸棒(HRC62)の外周切削を行い、逃げ面摩耗量を調べた。切削条件は、切削速度100m/min、切り込み0.2mm、送り0.1mm/rev.、ドライ(乾式)条件とし、30分間の切削を行った。
【0075】
その結果、サンプルNo.5−1の逃げ面摩耗量は、0.085mm、サンプルNo.5−2の逃げ面摩耗量は、0.076mmであったのに対し、サンプルNo.5−3の逃げ面摩耗量は0.265mmであった。このようにサンプルNo.5−1、5−2は、ドライ条件においても逃げ面摩耗量が少なく、耐摩耗性に優れることが分かる。
【0076】
【発明の効果】
以上説明したように本発明表面被覆切削工具によれば、被覆膜に特定の化合物層を具えることで、高硬度で耐摩耗性に優れると共に、潤滑性を向上することができるという効果を奏し得る。そのため、本発明工具は、特に、切削油剤を用いないドライ加工であっても、工具寿命を向上することができる。従って、本発明は、ドリル、エンドミル、フライス加工用刃先交換型チップ、旋削用刃先交換型チップ、メタルソー、歯切工具、リーマ、タップなど工具において耐摩耗性の向上が図れ、工具寿命を向上することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】成膜装置の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
1 チャンバー 2 ガス導入口 3 ガス排気口 4 基材ホルダー 5 基材
6、7 アーク式蒸発源 8、9、10 直流電源
Claims (8)
- 基材表面に被覆膜を具える表面被覆切削工具であって、
前記被覆膜には、(Ti1−x−y−zAlxSiy)(M)zの窒化物、炭窒化物、窒酸化物及び炭窒酸化物から選択される化合物層を具え、
前記Mは、CaS、MnS、CaF2、及びBaF2より選択される少なくとも1種であることを特徴とする表面被覆切削工具。
ただし、0≦x≦0.6、0≦y≦0.4、0.01≦z≦0.2、1−x−y−z≠0とする。 - 化合物層の厚みが0.5μm以上10μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の表面被覆切削工具。
- 基材表面と化合物層との間には、Ti、Cr、Tiの窒化物、及びCrの窒化物より選択される1種からなる中間層を具えることを特徴とする請求項1又は2に記載の表面被覆切削工具。
- 中間層の厚みが0.005μm以上0.5μm以下であることを特徴とする請求項3に記載の表面被覆切削工具。
- 基材がWC基超硬合金、サーメット、高速度鋼、セラミックス、立方晶型窒化硼素焼結体、ダイヤモンド焼結体、窒化ケイ素焼結体、及び酸化アルミニウムと炭化チタンとを含む焼結体より選択される1種からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
- 表面被覆切削工具は、ドリル、エンドミル、フライス加工用刃先交換型チップ、旋削用刃先交換型チップ、メタルソー、歯切工具、リーマ、タップから選択される1種であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
- 化合物層は、物理的蒸着法により被覆されたことを特徴とする請求項1に記載の表面被覆切削工具。
- 物理的蒸着法がアーク式イオンプレーティング法であることを特徴とする請求項7に記載の表面被覆切削工具。
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