JP2004344122A - セロファン寒天培地、セロファン寒天培地の使用方法、及び微生物観察方法 - Google Patents
セロファン寒天培地、セロファン寒天培地の使用方法、及び微生物観察方法 Download PDFInfo
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- C12Q1/04—Determining presence or kind of microorganism; Use of selective media for testing antibiotics or bacteriocides; Compositions containing a chemical indicator therefor
Abstract
【課題】細菌などの微生物の固定を良好に行い、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡で、前記微生物の、生育増殖しているその場の真の形態や微生物固有の形態などを観察する。
【解決手段】少なくとも一方の表面に溝部を有するセロファン片と、このセロファン片の前記表面に前記溝部を介して形成した栄養寒天とからなるセロファン寒天培地を準備し、これを湿潤雰囲気中に配置する。次いで、前記セロファン寒天培地上に微生物を接種して培養し、次いで、前記セロファン寒天培地に固定液を添加し、前記微生物を前記セロファン寒天培地に固定する。その後、所定の加工を行って観察用の試料を作製し、走査型電子顕微鏡又は透過型電子顕微鏡により、前記微生物の状態を観察する。
【選択図】 図4
【解決手段】少なくとも一方の表面に溝部を有するセロファン片と、このセロファン片の前記表面に前記溝部を介して形成した栄養寒天とからなるセロファン寒天培地を準備し、これを湿潤雰囲気中に配置する。次いで、前記セロファン寒天培地上に微生物を接種して培養し、次いで、前記セロファン寒天培地に固定液を添加し、前記微生物を前記セロファン寒天培地に固定する。その後、所定の加工を行って観察用の試料を作製し、走査型電子顕微鏡又は透過型電子顕微鏡により、前記微生物の状態を観察する。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、食品、酒造、醤油、製薬や公害衛生研究の分野などで好適に用いることのできる、セロファン寒天培地、セロファン寒天培地の使用方法、及び微生物観察方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
カビや酵母などの真菌細胞では、動物細胞のように固定がうまくいかず、微細構造的研究が大幅に立ち遅れている。かかる状況に鑑みて、「電子顕微鏡、Vol. 21, No. 1, 1986」には、真菌細胞などの微生物を接種した寒天培地と対向するようにしてセロファンを配置し、菌糸が成長したセロファンを冷媒中に浸漬するなどして、前記微生物を前記セロファンごと凍結して固定する急速凍結置換法が開示されている。
【0003】
しかしながら、この方法では、微生物が培地したセロファン寒天培地を2枚のガラス板に挟んで包埋する必要がある。したがって、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡で観察できるような試料作製は困難であった。また、前記微生物の生育増殖しているその場の真の形態や微生物固有の形態などを観察することはできなかった。
【0004】
一方、微生物のその場観察や微生物固有の形態などを観察すべく、「月刊細胞、Vol. 29, 1997」には、セロファン寒天培地上に直接的に微生物を培養させることが開示されている。この方法では、セロファン寒天培地からの薄片の作製が容易であるために、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡観察に供することのできる試料を簡易に作製することができる。しかしながら、この方法では、前記微生物を前記セロファン寒天培地に効率良く固定することができず、実際の観察に供することができないという問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、細菌などの微生物の固定を良好に行い、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡で、前記微生物の、生育増殖しているその場の真の形態や微生物固有の形態などを観察することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく、本発明は、
少なくとも一方の表面に溝部を有するセロファン片と、
前記セロファン片の前記表面に前記溝部を介して形成した栄養寒天と、
を具えることを特徴とする、セロファン寒天培地に関する。
【0007】
セロファンはビスコースから作製されたセルロースの一種であって、薄片状に形成することによって、その適度な強度などに基づき、ピンセットで挟むなどの取り扱いが容易となる。本発明においては、このようなセロファン片の少なくとも一方の表面に溝部を形成しているので、微生物培養のための寒天を形成した場合においても、この寒天が離脱することがない。さらに、前記寒天を比較的薄く形成することができるので、包埋樹脂の浸透によるダメージの問題も回避することができる。
【0008】
また、本発明では、上記セロファン寒天培地を用いて微生物の培養を行う。具体的には、上述したセロファン寒天培地を湿潤雰囲気中に配置し、前記セロファン寒天培地上に微生物を接種し培養する。次いで、前記セロファン寒天培地に固定液を添加し、前記微生物を前記セロファン寒天培地に固定し、前記微生物を走査型電子顕微鏡又は透過型電子顕微鏡で観察する。
【0009】
このような前記セロファン寒天培地は微細な薄片への加工が容易であるため、走査型電子顕微鏡観察や透過型電子顕微鏡観察のための微細な薄片試料の作製が容易になる。また、前記微生物は湿潤雰囲気中で前記セロファン寒天培地上に直接的に培養するため、前記セロファン寒天培地から前記薄片試料を作製することにより、走査型電子顕微鏡及び透過型電子顕微鏡により前記微生物の生育増殖している真の形態や、微生物固有の形態などを観察することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を発明の実施の形態に則して詳細に説明する。
本発明のセロファン寒天培地においては、使用するセロファン片の少なくとも一方の表面に溝部を形成する。この溝部の深さは特に限定されるものではないが、好ましくは1μm以上とする。また、前記セロファン片の前記表面における密度は3×104個/cm2以上とすることが好ましい。これによって、前記セロファン片のアンカー効果が増大し、後に形成する栄養寒天の保持を簡易に行うことができるようになる。
【0011】
なお、前記溝部の形状は特に限定されず、以下に示すような作製方法によって決定される。
【0012】
前記溝部は例えばイオンスパッタ装置を用いたイオンエッチングなどを用いて形成することができる。この場合、前記セロファン片の前記表面はイオンボンバードを受けるため、前記表面は凹凸状となり、前記溝部は前記表面に形成された凹部から構成されるようになる。
【0013】
また、前記セロファン片の前記表面に対して鉄鋼性ブラシなどで擦傷することにより、前記溝部を機械的に形成することもできる。この場合、前記溝部は直線状となる。
【0014】
前記セロファン片はピンセットなどによる取り扱いが容易となるような大きさに予め加工しておく。具体的には、一辺の大きさが5mm〜8mmであることが好ましい。また、前記セロファン片の厚さも取り扱いが容易となるように適宜に設定する。具体的には、37μm〜60μmの厚さに設定することが好ましい。
【0015】
本発明のセロファン寒天培地では、上述のようにして溝部を形成したセロファン片の表面上に栄養寒天を形成する。前記栄養寒天は、所定の液状寒天を準備し、この液状寒天中に前記セロファン片を所定時間浸漬し、前記セロファン片の前記表面上に付着した寒天を冷蔵庫などで冷却固化することによって形成することができる。この際、前記セロファン片は、エチレンオキサイドガスなどを用いて滅菌処理することができ、前記液状寒天もオートクレーブ内で滅菌処理することができる。
【0016】
前記栄養寒天の厚さは特に限定されるものではないが、後の顕微鏡観察用試料作製の際に使用する包埋樹脂の浸透を抑制し、培養する細菌など微生物へのダメージを抑制すべく、比較的薄く形成することが好ましい。具体的には、2μm〜5μmに形成することが好ましい。
【0017】
図1及び図2は、上述のような工程を経て作製した本発明のセロファン寒天培地の一例を示す構成図である。図1はセロファン寒天培地の平面図であり、図2はセロファン寒天培地の側面図である。
【0018】
本例のセロファン寒天培地10においては、セロファン片11の両面に栄養寒天12が形成されている。また、セロファン寒天培地10、すなわちセロファン片11の右上方角部が切り取られ、切り欠き部13が形成されている。このような切り欠き部を設けることにより、セロファン寒天培地10の表裏の判断を簡易に判断することができるようになる。
【0019】
なお、切り欠き部の形成位置は特に限定されるものではないが、セロファン片11の角部に形成することにより、切り欠き部の形成を容易に行うことができるとともに、表裏の判断を正確に行うことができるようになる。
【0020】
次に、上述したセロファン寒天培地を用いた微生物の観察方法について説明する。
【0021】
図3及び図4は、セロファン寒天培地を用いた微生物の培養方法を説明するための図である。図3は、微生物の培養状態を上側から見た場合の平面図であり、図4は、前記培養状態を横側から見た場合の側面図である。
【0022】
図3及び図4に示すように、微生物の培養に際しては、密閉容器としての蓋付きシャーレ21と蓋なしシャーレ22とを準備し、蓋付きシャーレ21の底部には水分を含有した濾紙23を載置する。蓋なしシャーレ22は、蓋付きシャーレ21内に配置するとともに、その底部にはパラフィルムなどのフィルム24を敷布する。フィルム24上には上述のようにして作製したセロファン寒天培地10を配置する。
【0023】
なお、セロファン寒天培地10は蓋なしシャーレ22内に配置されており、濾紙23と接触しないため、濾紙23中に含有された水分がセロファン寒天培地10内部に直接的に浸透することなどの影響を防止することができる。
【0024】
次いで、セロファン寒天培地10に微生物を接種し、所定の温度に保持することによって前記微生物の培養を行う。セロファン寒天培地10は蓋付きシャーレ21内に配置されて密閉されており、その内部は水分含有濾紙23によって湿潤状態に維持されているため、上述した培養は湿潤状態で行うことになる。これによって、前記微生物の乾燥を抑制することができる。
【0025】
なお、前記微生物として細菌を培養する場合、細菌を例えば108cfu/mL〜109cfu/mLの濃度で生理食塩水などに生食水中に懸濁させ、得られた懸濁液をセロファン寒天培地10中に接種することが好ましい。
【0026】
培養終了後、セロファン寒天培地10を秤量瓶などの他の容器に移し、所定濃度のグルタルアルデヒドなどの固定液を注入することによって予備的な固定を行い、さらに前記固定液を追加することによって固定する。次いで、脱水及び臨界点乾燥を行い、乾燥したセロファン寒天培地に対して金パラジウムなどをコーティングすることによって、走査型電子顕微鏡の観察に供することのできる試料を提供できるようになる。
【0027】
なお、前記固定液には、細菌の場合においては、低張のカコジル酸緩衝液やNaClを添加してセロファン寒天培地上の細菌の収縮を抑制し、前記細菌などの前記微生物のより真に近い状態を観察することができる。
【0028】
透過型電子顕微鏡によって観察する場合は、上述のようにして固定して脱水した後、セロファン寒天培地10を微細な小片、例えば1×5mm2の大きさに寒天が剥離する事なく切り出し、無水アセトン及びプロピレンオキサイドなどに浸漬した後、低粘度のエポキシ樹脂などを浸透させる。
【0029】
なお、この浸透操作において、低粘度エポキシ樹脂とプロピレンオキサイドとの混合樹脂溶液を用い、この樹脂溶液中にセロファン寒天培地10の前記小片を浸漬させて震盪し、前記樹脂溶液を前記小片内部に浸透させ、次いで、所定温度に保持して重合させることにより、前記小片内部に樹脂を浸透させることもできる。なお、この方法は、Quetol 653法と呼ばれ、「低粘度エポキシ樹脂包埋法、細胞13(1981)、p184−188、串田弘」及び「A new method for embedding with low viscosity epoxy resin “Quetol 653”, J. Electron. Microsc. 29, p193−197, by Kushida H.」などに詳細に記述されている。
【0030】
次いで、前記小片から厚さ80nm程度の超薄片を切り出し、厚さ10nm程度のカーボンを蒸着して透過型電子顕微鏡の観察に供することのできる試料を提供する。
【0031】
以上のような操作を経て試料を得、走査型電子顕微鏡観察及び透過型電子顕微鏡観察に供することにより、前記微生物は湿潤雰囲気中でセロファン寒天培地10上に直接的に培養しているので、前記微生物の生育増殖している真の形態や、微生物固有の形態などを観察することができる。
【0032】
以上、発明の実施の形態に則して本発明を説明してきたが、本発明の内容は上記に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいて、あらゆる変形や変更が可能である。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、細菌などの微生物の固定を良好に行い、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡で、前記微生物の、生育増殖しているその場の真の形態や微生物固有の形態などを観察することができる。具体的には、微生物の培養を湿潤状態で行うので、細菌固有の鞭毛や線毛などの発現をも観察することができる。
【0034】
また、セロファン寒天培地を複数準備しておくことができ、細菌などの増殖過程を経過時間毎に観察できるような複数の試料を作製することができる。また、走査型電子顕微鏡及び透過型電子顕微鏡の両方で観察するための試料を同時に作製することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のセロファン寒天培地の一例を示す上平面図である。
【図2】図1に示すセロファン寒天培地の側面図である。
【図3】本発明のセロファン寒天培地を用いた微生物の培養状態を、上側から見た場合の平面図である。
【図4】図3に示す前記培養状態を横側から見た場合の側面図である。
【符号の説明】
10 セロファン寒天培地
11 セロファン片
12 栄養寒天
21 蓋付きシャーレ
22 蓋なしシャーレ
23 水分含有濾紙
24 フィルム
【発明の属する技術分野】
本発明は、食品、酒造、醤油、製薬や公害衛生研究の分野などで好適に用いることのできる、セロファン寒天培地、セロファン寒天培地の使用方法、及び微生物観察方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
カビや酵母などの真菌細胞では、動物細胞のように固定がうまくいかず、微細構造的研究が大幅に立ち遅れている。かかる状況に鑑みて、「電子顕微鏡、Vol. 21, No. 1, 1986」には、真菌細胞などの微生物を接種した寒天培地と対向するようにしてセロファンを配置し、菌糸が成長したセロファンを冷媒中に浸漬するなどして、前記微生物を前記セロファンごと凍結して固定する急速凍結置換法が開示されている。
【0003】
しかしながら、この方法では、微生物が培地したセロファン寒天培地を2枚のガラス板に挟んで包埋する必要がある。したがって、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡で観察できるような試料作製は困難であった。また、前記微生物の生育増殖しているその場の真の形態や微生物固有の形態などを観察することはできなかった。
【0004】
一方、微生物のその場観察や微生物固有の形態などを観察すべく、「月刊細胞、Vol. 29, 1997」には、セロファン寒天培地上に直接的に微生物を培養させることが開示されている。この方法では、セロファン寒天培地からの薄片の作製が容易であるために、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡観察に供することのできる試料を簡易に作製することができる。しかしながら、この方法では、前記微生物を前記セロファン寒天培地に効率良く固定することができず、実際の観察に供することができないという問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、細菌などの微生物の固定を良好に行い、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡で、前記微生物の、生育増殖しているその場の真の形態や微生物固有の形態などを観察することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく、本発明は、
少なくとも一方の表面に溝部を有するセロファン片と、
前記セロファン片の前記表面に前記溝部を介して形成した栄養寒天と、
を具えることを特徴とする、セロファン寒天培地に関する。
【0007】
セロファンはビスコースから作製されたセルロースの一種であって、薄片状に形成することによって、その適度な強度などに基づき、ピンセットで挟むなどの取り扱いが容易となる。本発明においては、このようなセロファン片の少なくとも一方の表面に溝部を形成しているので、微生物培養のための寒天を形成した場合においても、この寒天が離脱することがない。さらに、前記寒天を比較的薄く形成することができるので、包埋樹脂の浸透によるダメージの問題も回避することができる。
【0008】
また、本発明では、上記セロファン寒天培地を用いて微生物の培養を行う。具体的には、上述したセロファン寒天培地を湿潤雰囲気中に配置し、前記セロファン寒天培地上に微生物を接種し培養する。次いで、前記セロファン寒天培地に固定液を添加し、前記微生物を前記セロファン寒天培地に固定し、前記微生物を走査型電子顕微鏡又は透過型電子顕微鏡で観察する。
【0009】
このような前記セロファン寒天培地は微細な薄片への加工が容易であるため、走査型電子顕微鏡観察や透過型電子顕微鏡観察のための微細な薄片試料の作製が容易になる。また、前記微生物は湿潤雰囲気中で前記セロファン寒天培地上に直接的に培養するため、前記セロファン寒天培地から前記薄片試料を作製することにより、走査型電子顕微鏡及び透過型電子顕微鏡により前記微生物の生育増殖している真の形態や、微生物固有の形態などを観察することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を発明の実施の形態に則して詳細に説明する。
本発明のセロファン寒天培地においては、使用するセロファン片の少なくとも一方の表面に溝部を形成する。この溝部の深さは特に限定されるものではないが、好ましくは1μm以上とする。また、前記セロファン片の前記表面における密度は3×104個/cm2以上とすることが好ましい。これによって、前記セロファン片のアンカー効果が増大し、後に形成する栄養寒天の保持を簡易に行うことができるようになる。
【0011】
なお、前記溝部の形状は特に限定されず、以下に示すような作製方法によって決定される。
【0012】
前記溝部は例えばイオンスパッタ装置を用いたイオンエッチングなどを用いて形成することができる。この場合、前記セロファン片の前記表面はイオンボンバードを受けるため、前記表面は凹凸状となり、前記溝部は前記表面に形成された凹部から構成されるようになる。
【0013】
また、前記セロファン片の前記表面に対して鉄鋼性ブラシなどで擦傷することにより、前記溝部を機械的に形成することもできる。この場合、前記溝部は直線状となる。
【0014】
前記セロファン片はピンセットなどによる取り扱いが容易となるような大きさに予め加工しておく。具体的には、一辺の大きさが5mm〜8mmであることが好ましい。また、前記セロファン片の厚さも取り扱いが容易となるように適宜に設定する。具体的には、37μm〜60μmの厚さに設定することが好ましい。
【0015】
本発明のセロファン寒天培地では、上述のようにして溝部を形成したセロファン片の表面上に栄養寒天を形成する。前記栄養寒天は、所定の液状寒天を準備し、この液状寒天中に前記セロファン片を所定時間浸漬し、前記セロファン片の前記表面上に付着した寒天を冷蔵庫などで冷却固化することによって形成することができる。この際、前記セロファン片は、エチレンオキサイドガスなどを用いて滅菌処理することができ、前記液状寒天もオートクレーブ内で滅菌処理することができる。
【0016】
前記栄養寒天の厚さは特に限定されるものではないが、後の顕微鏡観察用試料作製の際に使用する包埋樹脂の浸透を抑制し、培養する細菌など微生物へのダメージを抑制すべく、比較的薄く形成することが好ましい。具体的には、2μm〜5μmに形成することが好ましい。
【0017】
図1及び図2は、上述のような工程を経て作製した本発明のセロファン寒天培地の一例を示す構成図である。図1はセロファン寒天培地の平面図であり、図2はセロファン寒天培地の側面図である。
【0018】
本例のセロファン寒天培地10においては、セロファン片11の両面に栄養寒天12が形成されている。また、セロファン寒天培地10、すなわちセロファン片11の右上方角部が切り取られ、切り欠き部13が形成されている。このような切り欠き部を設けることにより、セロファン寒天培地10の表裏の判断を簡易に判断することができるようになる。
【0019】
なお、切り欠き部の形成位置は特に限定されるものではないが、セロファン片11の角部に形成することにより、切り欠き部の形成を容易に行うことができるとともに、表裏の判断を正確に行うことができるようになる。
【0020】
次に、上述したセロファン寒天培地を用いた微生物の観察方法について説明する。
【0021】
図3及び図4は、セロファン寒天培地を用いた微生物の培養方法を説明するための図である。図3は、微生物の培養状態を上側から見た場合の平面図であり、図4は、前記培養状態を横側から見た場合の側面図である。
【0022】
図3及び図4に示すように、微生物の培養に際しては、密閉容器としての蓋付きシャーレ21と蓋なしシャーレ22とを準備し、蓋付きシャーレ21の底部には水分を含有した濾紙23を載置する。蓋なしシャーレ22は、蓋付きシャーレ21内に配置するとともに、その底部にはパラフィルムなどのフィルム24を敷布する。フィルム24上には上述のようにして作製したセロファン寒天培地10を配置する。
【0023】
なお、セロファン寒天培地10は蓋なしシャーレ22内に配置されており、濾紙23と接触しないため、濾紙23中に含有された水分がセロファン寒天培地10内部に直接的に浸透することなどの影響を防止することができる。
【0024】
次いで、セロファン寒天培地10に微生物を接種し、所定の温度に保持することによって前記微生物の培養を行う。セロファン寒天培地10は蓋付きシャーレ21内に配置されて密閉されており、その内部は水分含有濾紙23によって湿潤状態に維持されているため、上述した培養は湿潤状態で行うことになる。これによって、前記微生物の乾燥を抑制することができる。
【0025】
なお、前記微生物として細菌を培養する場合、細菌を例えば108cfu/mL〜109cfu/mLの濃度で生理食塩水などに生食水中に懸濁させ、得られた懸濁液をセロファン寒天培地10中に接種することが好ましい。
【0026】
培養終了後、セロファン寒天培地10を秤量瓶などの他の容器に移し、所定濃度のグルタルアルデヒドなどの固定液を注入することによって予備的な固定を行い、さらに前記固定液を追加することによって固定する。次いで、脱水及び臨界点乾燥を行い、乾燥したセロファン寒天培地に対して金パラジウムなどをコーティングすることによって、走査型電子顕微鏡の観察に供することのできる試料を提供できるようになる。
【0027】
なお、前記固定液には、細菌の場合においては、低張のカコジル酸緩衝液やNaClを添加してセロファン寒天培地上の細菌の収縮を抑制し、前記細菌などの前記微生物のより真に近い状態を観察することができる。
【0028】
透過型電子顕微鏡によって観察する場合は、上述のようにして固定して脱水した後、セロファン寒天培地10を微細な小片、例えば1×5mm2の大きさに寒天が剥離する事なく切り出し、無水アセトン及びプロピレンオキサイドなどに浸漬した後、低粘度のエポキシ樹脂などを浸透させる。
【0029】
なお、この浸透操作において、低粘度エポキシ樹脂とプロピレンオキサイドとの混合樹脂溶液を用い、この樹脂溶液中にセロファン寒天培地10の前記小片を浸漬させて震盪し、前記樹脂溶液を前記小片内部に浸透させ、次いで、所定温度に保持して重合させることにより、前記小片内部に樹脂を浸透させることもできる。なお、この方法は、Quetol 653法と呼ばれ、「低粘度エポキシ樹脂包埋法、細胞13(1981)、p184−188、串田弘」及び「A new method for embedding with low viscosity epoxy resin “Quetol 653”, J. Electron. Microsc. 29, p193−197, by Kushida H.」などに詳細に記述されている。
【0030】
次いで、前記小片から厚さ80nm程度の超薄片を切り出し、厚さ10nm程度のカーボンを蒸着して透過型電子顕微鏡の観察に供することのできる試料を提供する。
【0031】
以上のような操作を経て試料を得、走査型電子顕微鏡観察及び透過型電子顕微鏡観察に供することにより、前記微生物は湿潤雰囲気中でセロファン寒天培地10上に直接的に培養しているので、前記微生物の生育増殖している真の形態や、微生物固有の形態などを観察することができる。
【0032】
以上、発明の実施の形態に則して本発明を説明してきたが、本発明の内容は上記に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいて、あらゆる変形や変更が可能である。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、細菌などの微生物の固定を良好に行い、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡で、前記微生物の、生育増殖しているその場の真の形態や微生物固有の形態などを観察することができる。具体的には、微生物の培養を湿潤状態で行うので、細菌固有の鞭毛や線毛などの発現をも観察することができる。
【0034】
また、セロファン寒天培地を複数準備しておくことができ、細菌などの増殖過程を経過時間毎に観察できるような複数の試料を作製することができる。また、走査型電子顕微鏡及び透過型電子顕微鏡の両方で観察するための試料を同時に作製することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のセロファン寒天培地の一例を示す上平面図である。
【図2】図1に示すセロファン寒天培地の側面図である。
【図3】本発明のセロファン寒天培地を用いた微生物の培養状態を、上側から見た場合の平面図である。
【図4】図3に示す前記培養状態を横側から見た場合の側面図である。
【符号の説明】
10 セロファン寒天培地
11 セロファン片
12 栄養寒天
21 蓋付きシャーレ
22 蓋なしシャーレ
23 水分含有濾紙
24 フィルム
Claims (15)
- 少なくとも一方の表面に溝部を有するセロファン片と、
前記セロファン片の前記表面に前記溝部を介して形成した栄養寒天と、
を具えることを特徴とする、セロファン寒天培地。 - 前記溝部の深さが1μm以上であることを特徴とする、請求項1に記載のセロファン寒天培地。
- 前記溝部の密度が3×104個/cm2以上であることを特徴とする、請求項2に記載のセロファン寒天培地。
- 前記溝部は、イオンエッチングにより形成したことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載のセロファン寒天培地。
- 前期溝部は、機械的な擦傷により形成したことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載のセロファン寒天培地。
- 前記栄養寒天の厚さが2μm〜5μmであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一に記載のセロファン寒天培地。
- 前記セロファン片の角部において切り欠き部を形成したことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一に記載のセロファン寒天培地。
- 請求項1〜7のいずれか一に記載のセロファン寒天培地を走査型電子顕微鏡による観察のために使用することを特徴とする、セロファン寒天培地の使用方法。
- 請求項1〜7のいずれか一にセロファン寒天培地を透過型電子顕微鏡による観察のために使用することを特徴とする、セロファン寒天培地の使用方法。
- 請求項1〜7のいずれか一に記載のセロファン寒天培地を湿潤雰囲気中に配置する工程と、
前記セロファン寒天培地上に微生物を接種し培養する工程と、
前記セロファン寒天培地に固定液を添加し、前記微生物を前記セロファン寒天培地に固定する工程と、
前記微生物を走査型電子顕微鏡で観察する工程と、
を具えることを特徴とする、微生物観察方法。 - 請求項1〜7のいずれか一に記載のセロファン寒天培地を湿潤雰囲気に配置する工程と、
前記セロファン寒天培地上に微生物を接種し培養する工程と、
前記セロファン寒天培地に固定液を添加し、前記微生物を前記セロファン寒天培地に固定する工程と、
前記微生物を透過型電子顕微鏡で観察する工程と、
を具えることを特徴とする、微生物観察方法。 - 前記微生物は生食水中に懸濁させ、得られた懸濁液を前記セロファン寒天培地に接種することを特徴とする、請求項10又は11に記載の微生物観察方法。
- 前記懸濁液中における前記微生物の濃度を108cfu/mL〜109cfu/mLとすることを特徴とする、請求項12に記載の微生物観察方法。
- 前記セロファン寒天培地は所定の密閉容器中に配置し、前記湿潤状態は前記密閉容器中に水分含有濾紙を配置することにより形成することを特徴とする、請求項10〜13のいずれか一に記載の微生物観察方法。
- 前記セロファン寒天培地は、前記密閉容器中において所定の容器内に載置し、前記水分含有濾紙との接触を防止することを特徴とする、請求項14に記載の微生物観察方法。
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