JP2004342431A - 固体電解質型燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】燃料電池が備える固体電解質層をより薄型化する技術を提供する。
【解決手段】燃料電池10は、電解質膜20とアノード30とを備えている。電解質膜20は、緻密膜24と触媒層23と固体電解質層22とを備えている。緻密膜24は、カーボン粉末を混在させたポリプロピレンによって形成され、電子伝導性と共に酸素透過性を有している。また、固体電解質層22は、酸化物イオン伝導性を有している。このような緻密膜24上に固体電解質層22を成膜することにより、固体電解質層22の薄型化が可能となる。
【選択図】 図1
【解決手段】燃料電池10は、電解質膜20とアノード30とを備えている。電解質膜20は、緻密膜24と触媒層23と固体電解質層22とを備えている。緻密膜24は、カーボン粉末を混在させたポリプロピレンによって形成され、電子伝導性と共に酸素透過性を有している。また、固体電解質層22は、酸化物イオン伝導性を有している。このような緻密膜24上に固体電解質層22を成膜することにより、固体電解質層22の薄型化が可能となる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、酸化物イオン伝導性を有する固体電解質を備える固体電解質型燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電解質として酸化物イオン伝導性の固体電解質を用いた固体電解質型燃料電池が知られている。酸化物イオン伝導性の固体電解質としては、ジルコニア系の固体電解質や、ペロブスカイト型固体電解質などが知られている。例えば、特許文献1では、ジルコニア系固体電解質の両側に酸化セリウム系の薄膜を設け、その両側にさらに電極を設ける構成が開示されている。
【0003】
【特許文献1】
特開平5−67473号公報
【特許文献2】
特開2002−134131号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
これらセラミックスから成る固体電解質を用いる場合には、固体電解質層の強度を確保するために充分な厚みが必要となるため、固体電解質層の薄型化が困難であった。ここで、上記特許文献1に開示された燃料電池では、固体電解質層の両面に酸化セリウム系の薄膜を形成することにより、固体電解質を含む層全体の強度を向上させることが可能となっている。しかしながらこの場合にも、酸化セリウム系薄膜が多孔質体であるために、固体電解質層におけるガス不透過性を確保しようとすると、上記多孔質体が有する細孔の大きさに応じて固体電解質層の厚みを確保する必要がある。そのため、固体電解質層の薄型化には限界があり、従来から、固体電解質層をより薄型化することが望まれていた。固体電解質層が厚い場合には、固体電解質層における酸化物イオン伝導性を確保するために燃料電池の運転温度をより高く設定する必要がある。運転温度が高いことは、燃料電池を構成する部材の材料を選択する際の自由度が低下すると共に、燃料電池の起動時間がより長くなるため望ましくない。
【0005】
本発明は、上述した従来の課題を解決するためになされたものであり、燃料電池が備える固体電解質層をより薄型化する技術を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
上記目的を達成するために、本発明は、固体電解質型燃料電池であって、
酸化物イオン伝導性を有する固体電解質層と、電子伝導性および酸素分子と酸素原子と酸化物イオンとのうちの少なくともいずれか一種を透過させる性質を有すると共に前記固体電解質層の少なくとも一方の面上に形成される緻密膜と、を備える電解質膜と、
前記電解質膜の一方の面に対して、酸素を含有する酸化ガスを供給する酸化ガス供給部と、
前記電解質膜の他方の面に対して、水素を含有する燃料ガスを供給する燃料ガス供給部と
を備えることを要旨とする。
【0007】
以上のように構成された本発明の固体電解質型燃料電池によれば、電解質膜が緻密膜と固体電解質層とを備えるため、固体電解質が緻密膜によって保持されることで電解質膜全体の強度を確保することができる。また、緻密膜上に固体電解質層が設けられることで、多孔質体上に固体電解質層を設ける場合に比べて固体電解質層におけるガス不透過性の確保が容易となり、固体電解質層の薄型化が可能となる。
【0008】
本発明の固体電解質型燃料電池において、
前記緻密膜は、前記電解質膜において前記酸化ガス供給部から前記酸化ガスが供給される側の面に形成され、
前記電解質膜は、さらに、前記緻密膜と前記固体電解質層との間に、酸素分子と酸素原子との少なくとも一方から酸化物イオンを生じさせる第1の触媒層を備えることとしても良い。
【0009】
このような構成とすれば、酸化ガス中の酸素が、酸素分子あるいは酸素原子の状態で緻密膜内を透過するときに、これら酸素分子あるいは酸素原子から、上記第1の触媒層において酸化物イオンを生じることができる。このようにして生じた酸化物イオンが固体電解質層内を移動することで、電気化学反応を進行することが可能となる。
【0010】
あるいは、本発明の固体電解質型燃料電池において、
前記緻密膜は、前記電解質膜において前記燃料ガス供給部から前記燃料ガスが供給される側の面に形成され、
前記電解質膜は、さらに、前記緻密膜と前記固体電解質層との間に、酸化物イオンから、酸素分子と酸素原子との少なくとも一方を生じさせる第2の触媒層を備えることとしても良い。
【0011】
このような構成とすれば、固体電解質層内を酸化物イオンが移動するときに、この酸化物イオンから、上記第2の触媒層において酸素分子あるいは酸素原子を生じることができる。このようにして生じた酸素分子あるいは酸素原子が緻密膜内を移動することで、電気化学反応を進行することが可能となる。
【0012】
上記第1の触媒あるいは第2の触媒は、白金系触媒を備えることとしても良い。白金系触媒は、卑金属系触媒に比べて低温活性が高い。そのため、固体電解質層を薄型化して、固体電解質型燃料電池の動作温度をより低くする場合にも、高い効率で電池反応を進行させることが可能となる。
【0013】
また、本発明の固体電解質型燃料電池において、前記緻密膜を電極部材として用いることとしても良い。このような構成とすれば、緻密膜を設けた側には別途電極部材を設ける必要がなく、燃料電池の構成を簡素化することができる。
【0014】
本発明の固体電解質型燃料電池において、前記緻密膜は、電子伝導性を有する材料から成る粉末を内部に分散保持することとしても良い。このような構成とすれば、酸素分子と酸素原子と酸化物イオンとのうちの少なくともいずれか一種を透過させる性質を有する材料により緻密膜を構成する際に、緻密膜に対して容易に電子伝導性を付与することができる。
【0015】
また、本発明の固体電解質型燃料電池において、前記緻密膜は、該緻密膜の一方の面において、前記酸化ガス供給部から供給された酸化ガス中の酸素分子が内部に溶解し、該緻密層内を前記酸素分子が拡散し、該緻密膜の他方の面から前記酸素分子が外部に離脱することにより、酸素が透過することとしても良い。このような前記緻密膜は、ポリプロピレンを含むこととしても良い。ポリプロピレンを含む緻密膜を用いることで、緻密膜における酸素分子の透過性を確保することができる。
【0016】
なお、本発明は、上記以外の種々の形態で実現可能であり、例えば、電解質膜や、電解質膜の製造方法などの形態で実現することが可能である。
【0017】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.燃料電池の構成と製造方法:
B.効果:
C.第2実施例:
D.第3実施例:
E.変形例:
【0018】
A.燃料電池の構成と製造方法:
図1は、本発明の第1実施例としての燃料電池10の構成の概略を表わす説明図である。図1では、単セルの断面の様子を示している。燃料電池10は、電解質膜20と、アノード30と、セパレータ36,37とを備えている。ここで、電解質膜20は、固体電解質によって形成される電解質層22と、緻密膜24と、電解質層22および緻密膜24との間に形成される触媒層23と、を備える。
【0019】
電解質層22を構成する固体電解質は、電子伝導性を有することなく酸化物イオン伝導性を有する金属酸化物である。このような固体電解質としては、例えば、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)などのジルコニア系酸化物イオン伝導体や、ペロブスカイト型構造を有する酸化物イオン伝導体など、種々のセラミックス酸化物イオン伝導体を用いることができる。
【0020】
緻密膜24は、電子伝導性および酸素透過性を有する緻密性の膜である。本実施例では、カーボン粉末を内部に分散保持するポリプロピレンによって、緻密膜24を形成している。このような本実施例の緻密膜24では、ポリプロピレンによって酸素透過性を実現しており、混在させたカーボン粉末によって電子伝導性を確保している。緻密膜24に混在させるカーボン粉末としては、カーボンブラックやアセチレンブラックや天然黒鉛など種々の粉末を用いることができる。混在させるカーボン粉末の割合は、例えば15〜40%程度とすることができ、本実施例ではカーボンブラックを30%混在させている。これらカーボン粉末の他、金属粉末など、他種の電子伝導性微粒子を混在させることとしても良い。なお、ポリプロピレンを含有する緻密膜24を酸素が透過するときには、酸素は、分子の状態で、圧力の高い側の面から緻密膜24内に溶解して内部で拡散し、圧力の低い側の面から外部に離脱すると考えられている。この緻密膜24は、電子伝導性を有することにより、燃料電池10が発電するときには、集電を行なうカソード電極として働き、外部配線から電子が供給される。
【0021】
触媒層23は、本実施例では、白金(Pt)層によって形成されている。触媒層23は、緻密膜24を酸素分子が通過してきたときに、外部配線から供給された電子を用いて、酸素分子から酸化物イオンを生じる活性を有している。触媒層23で生じた酸化物イオンは、電気化学反応の進行に伴って電解質層22内を移動する。なお、触媒層23は、比較的低温で活性の高い白金系貴金属を備えることが望ましい。上記したようにPtを備える層とする他、例えばロジウム(Rh)やルテニウム(Ru)を含む層とすることができる。
【0022】
アノード30は、電解質膜20において、緻密膜24が形成されていない側の表面に設けられている。本実施例では、アノード30は、触媒であるPtを備える多孔質層として形成されている。なお、アノード30は、触媒層23と同様に、Ptに限らず、貴金属を含有する酸化触媒を備えることとすればよい。
【0023】
セパレータ36,37は、電解質膜20とアノード30とを積層した構造を、両側から挟持している。電解質膜20の緻密膜24と接するセパレータ36は、緻密膜24と接する側の表面に、酸化ガスが通過する流路を形成するための凹凸形状を有している。同様に、アノード30と接するセパレータ37は、アノード30と接する側の表面に、燃料ガスが通過する流路を形成するための凹凸形状を有している。これらセパレータ36,37は、電子伝導性とガス不透過性を有する材料によって形成することができ、例えば金属材料や炭素材料によって形成することができる。
【0024】
本実施例では、電解質層22は0.1μm、緻密膜24は1μmとした。各層の厚さは任意に設定することができる。例えば電解質層22は、ガス不透過性を確保することができる厚さであればよい。また、緻密膜24は、要求出力や要求強度や緻密膜24の酸素透過係数を考慮して、適宜設定することができる。
【0025】
図2は、燃料電池10の製造方法を表わす工程図である。燃料電池10を製造する際には、まず、緻密膜24を形成するために、カーボン粉末を所定の割合で含有するポリプロピレン層を形成する(ステップS100)。
【0026】
次に、このポリプロピレン層上に、触媒層23を構成するPt層を形成する(ステップS110)。Pt層は、例えばメッキ処理によって形成することができる。このPt層の厚みは、ポリプロピレン層から電解質層22に移動する酸素分子あるいは酸化物イオンの移動を妨げない厚さとすればよい。Pt層を形成すると、このPt層の上に、電解質層22となる固体電解質を成膜する(ステップS120)。固体電解質の膜は、例えば、PVD法やCVD法により形成することができる。あるいは、微粒化した固体電解質をPt層上に衝突付着させるエアロゾルデポジション法によって、固体電解質の膜を形成することとしても良い。
【0027】
その後、固体電解質の膜上であって、Pt層およびポリプロピレン層が形成されていない側に、Ptを備える多孔質層であるアノード30を形成する(ステップS130)。アノード30は、例えば、Pt担持カーボン粉末を溶媒によってスラリ化したものを、固体電解質膜上に塗布し、その後加熱によって溶媒を除去することにより形成することができる。電解質膜20上にアノード30を形成すると、予め所定の形状に形成したセパレータ36,37によってこれらを両側から挟み込み(ステップS140)、燃料電池10を完成する。セパレータ36,37を配設する際には、積層する各部材の周辺部において、燃料ガスおよび酸化ガスがそれぞれの流路から漏れ出さないように、ガスシール性を確保する。なお、図1では、燃料電池10として単セルを示したが、実際に燃料電池を組み立てる際には、要求出力に応じて所定数の単セルを積層してスタック構造とすればよい。
【0028】
本実施例の燃料電池10において、セパレータ36上に形成される流路に酸素を含有する酸化ガスを供給し、セパレータ37上に形成される流路に水素を含有する燃料ガスを供給すると、燃料電池10は、供給ガス量と負荷に応じた電力を発生する。図3は、燃料電池10で電気化学反応が進行するときの様子を模式的に表わす説明図である。なお、図3では、セパレータ36,37の記載は省略している。図3に示すように、緻密膜24では、供給された酸化ガス中の酸素が、分子の状態で内部に溶解して拡散し、電解質層22側に移動する。ここで、電子伝導性を有する緻密膜24には外部配線から電子が供給されるため、電解質層22との境界付近にまで移動した酸素分子は、触媒層23の働きで酸化物イオンとなり、生じた酸化物イオンは電解質層22内をアノード30側に向かって移動する。アノード30では、酸化物イオンが電子を放出すると共に、供給された燃料ガス中の水素と反応して水を生じる。さらに、燃料ガス中に一酸化炭素が含まれる場合には、この一酸化炭素と反応して二酸化炭素を生じる反応も進行する。
【0029】
C.効果:
以上のように構成された本実施例の燃料電池10によれば、ポリプロピレンからなる緻密膜24上に電解質層22を成膜しているため、電解質膜20全体の強度を確保するができる。さらに、ポリプロピレンによって形成される緻密膜24がガス不透過な無孔膜であるため、電解質層22のガス不透過性を確保する際に電解質層22に必要な厚みが緻密膜24の影響を受けることがなく、電解質層22の薄型化が可能となる。例えば、多孔質体から成る基板上に電解質層を成膜する場合には、電解質層のガス不透過性を確保するために、多孔質体の細孔の大きさ以上の膜厚を確保する必要があるが、本実施例ではこのように基材の状態を考慮する必要がない。そのため、電解質層22の厚さは、例えば、0.1μm以下にすることができる。
【0030】
このように電解質層22をより薄くすることで、電解質層22における酸化物イオン伝導性が向上するため、燃料電池10の運転温度をより低く設定することが可能になる。従来は、例えば金属多孔質体から成る基材上にペロブスカイト型固体電解質を成膜して電解質層の薄型化を図る場合でも、800℃程度に昇温して運転する必要があったが、本実施例によれば、より低い温度で運転することが可能となる。例えば、常温〜500℃程度で発電を行なうことが可能となる。ここで、本実施例では、触媒としてPt等の貴金属触媒を用いているため、従来の固体電解質型燃料電池の動作温度よりも低い温度においても、高い効率で発電を行なうことができる。
【0031】
このように運転温度を低くすることで、本実施例によれば、燃料電池10における起動性を向上させるという効果を奏することができる。すなわち、燃料電池10の起動時に、良好に電気化学反応が進行する定常温度に燃料電池10が達するまでの時間を短縮させることができる。
【0032】
さらに、燃料電池10の運転温度が低くなることで、燃料電池10を構成する部材を形成する材料の選択の自由度が増すという効果が得られる。従来の固体電解質型燃料電池のように、800〜1000℃程度で運転する場合には、セパレータや電極などの部材もセラミックスによって形成する必要があったが、運転温度を低くすることで、金属材料を選択することが可能となる。金属材料を用いれば、強度を確保しつつさらなる薄型化が可能となる。また、実施例のように薄板状部材を積層してスタック構造を形成する場合には、各板状部材の外周部でガスシールを充分に行なう必要があるが、運転温度を低くすることによってシール材の選択の自由度を増すことができる。1000℃程度で運転する場合には、通常は技術的にも困難なガラスによるシールが行なわれるが、運転温度をより低くすることで、樹脂材料を用いてシールしたり、カーボンガスケットを用いてシール性を確保することが可能となり、組み立て操作を容易化できる。
【0033】
また、本実施例の燃料電池10によれば、電解質層22に隣接して設けた緻密膜24が電子伝導性を有するため、緻密膜24がカソード電極として働く。そのため、アノード側のように別途電極部材を設ける必要がなく、緻密膜24を設けたことによる構造の複雑化を抑えることができる。
【0034】
C.第2実施例:
図4は、第2実施例の燃料電池110の構成の概略を現わす説明図である。第2実施例の燃料電池110において、第1実施例の燃料電池10と共通する構成要素には、同じ参照番号を付して詳しい説明を省略する。燃料電池110は、電解質膜120と、カソード32と、セパレータ36,37とを備えている。ここで、電解質膜120は、電解質層22と、緻密膜124と、緻密膜124の両側にそれぞれ形成される触媒層123a,123bと、を備える。カソード32は第1実施例のアノード30と同様に形成され、緻密膜124は緻密膜24と同様に形成され、触媒層123a,123bは、触媒層23と同様に形成されている。
【0035】
第2実施例の燃料電池110では、セパレータ36上に形成される流路に酸素を含有する酸化ガスを供給すると、カソード32には外部配線から電子が供給されるため、カソード32において酸素分子は酸化物イオンとなる。生じた酸化物イオンは、電解質層22内を触媒層123aに向かって移動する。触媒層123aでは、酸化物イオンは電子を放出して酸素分子となり、生じた酸素分子は緻密膜124内を触媒層123bに向かって移動する。触媒層123bでは、この酸素分子が、セパレータ37上に形成される流路に供給された燃料ガス中の水素と反応して水を生じる。なお、触媒層123aで酸化物イオンから放出された電子は、電子伝導性を有する緻密膜124、触媒層123b、セパレータ37を介して外部配線に流れる。
【0036】
以上のように構成された第2実施例の燃料電池110によれば、電子伝導性と酸素透過性とを有する緻密膜124上に電解質層22を成膜しているため、電解質層22の薄型化が可能となり、第1実施例の燃料電池10と同様の効果を得ることができる。
【0037】
D.第3実施例:
図5は、第3実施例の燃料電池210の構成の概略を現わす説明図である。第3実施例の燃料電池210において、第1実施例の燃料電池10と共通する構成要素には、同じ参照番号を付して詳しい説明を省略する。燃料電池210は、電解質膜220と、セパレータ36,37とを備えている。ここで、電解質膜220は、緻密膜224a、触媒層223a、電解質層22、触媒層223b、緻密膜224b、触媒層223cの順で、各層を重ね合わせた構造を有している。緻密膜224a,224bは緻密膜24と同様に形成され、触媒層223a,223b,223cは、触媒層23と同様に形成されている。
【0038】
第3実施例の燃料電池210では、セパレータ36上に形成される流路に酸素を含有する酸化ガスを供給すると、酸化ガス中の酸素分子は、緻密膜224a内を触媒層223aに向かって拡散する。このとき、外部配線から供給される電子はセパレータ36および緻密膜224aを介して触媒層223aに流れ、触媒層223aでは、緻密膜224aを透過した酸素分子から酸化物イオンが生じる。生じた酸化物イオンは、電解質層22内を触媒層223bに向かって移動する。触媒層223bでは、酸化物イオンは電子を放出して酸素分子となり、生じた酸素分子は緻密膜224b内を触媒層223cに向かって移動する。触媒層223cでは、この酸素分子が、セパレータ37上に形成される流路に供給された燃料ガス中の水素と反応して水を生じる。なお、触媒層223bで酸化物イオンから放出された電子は、電子伝導性を有する緻密膜224b、触媒層223c、セパレータ37を介して外部配線に流れる。
【0039】
以上のように構成された第3実施例の燃料電池210によれば、電解質層22の両側に、電子伝導性と酸素透過性とを有する緻密膜224a,224bを形成しているため、電解質層22の薄型化が可能となり、第1実施例の燃料電池10と同様の効果を得ることができる。
【0040】
E.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0041】
E1.変形例1:
第1ないし第3実施例では、緻密膜としてポリプロピレン膜を用いたが酸素透過性を有する他種の膜を用いることとしても良い。例えば、シリコン膜や、シリコンポリカーボネート膜を用いることができる。実質的に無孔質でガス不透過な膜であれば、電解質層を薄型化する同様の効果を得ることができる。上記したような高分子材料から成る緻密膜を用いることで、薄型化した電解質膜全体の柔軟性を高めることができるため、電池全体の形態をより多様化させることが可能となる。なお、緻密膜を形成する材料は高分子材料に限るものではなく、また、緻密膜として用いる酸素透過膜が充分な電子伝導性を有しているならば、実施例とは異なり電子伝導性粉末を混合させないこととしても良い。
【0042】
E2.変形例2:
第1ないし第3実施例では、緻密膜と電解質層との間に触媒層を設けたが、酸素分子から酸化物イオンを生じたり酸化物イオンから酸素分子を生じる活性を有する緻密膜を用いる場合には、触媒層を設けないこととしても良い。例えば、酸素分子ではなく、酸化物イオンを透過させる性質を有する緻密膜を用いれば、触媒層を設けることなく酸化物イオンを電解質層に供給することができる。
【0043】
E3.変形例3:
また、緻密膜として、酸素を原子の状態で透過させる性質を有する膜を用いることとしても良い。この場合には、必要に応じて、酸素原子から酸化物イオンを生じるための触媒層、あるいは酸化物イオンから酸素原子を生じるための触媒層を、緻密膜と電解質層との間に設ければよい。酸素分子と酸素原子と酸化物イオンとの内の少なくとも一種を透過させる性質を緻密膜が有していれば、本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例の燃料電池10の構成を表わす説明図である。
【図2】燃料電池10の製造方法を表わす工程図である。
【図3】燃料電池10で電気化学反応が進行するときの様子を模式的に表わす説明図である。
【図4】第2実施例の燃料電池110の構成の概略を現わす説明図である。
【図5】第3実施例の燃料電池210の構成の概略を現わす説明図である。
【符号の説明】
10,110,210…燃料電池
20,120,220…電解質膜
22…電解質層
23…触媒層
24,124…緻密膜
30…アノード
32…カソード
36,37…セパレータ
123a,123b…触媒層
223a,223b,223c…触媒層
224a,224b…緻密膜
【発明の属する技術分野】
この発明は、酸化物イオン伝導性を有する固体電解質を備える固体電解質型燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電解質として酸化物イオン伝導性の固体電解質を用いた固体電解質型燃料電池が知られている。酸化物イオン伝導性の固体電解質としては、ジルコニア系の固体電解質や、ペロブスカイト型固体電解質などが知られている。例えば、特許文献1では、ジルコニア系固体電解質の両側に酸化セリウム系の薄膜を設け、その両側にさらに電極を設ける構成が開示されている。
【0003】
【特許文献1】
特開平5−67473号公報
【特許文献2】
特開2002−134131号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
これらセラミックスから成る固体電解質を用いる場合には、固体電解質層の強度を確保するために充分な厚みが必要となるため、固体電解質層の薄型化が困難であった。ここで、上記特許文献1に開示された燃料電池では、固体電解質層の両面に酸化セリウム系の薄膜を形成することにより、固体電解質を含む層全体の強度を向上させることが可能となっている。しかしながらこの場合にも、酸化セリウム系薄膜が多孔質体であるために、固体電解質層におけるガス不透過性を確保しようとすると、上記多孔質体が有する細孔の大きさに応じて固体電解質層の厚みを確保する必要がある。そのため、固体電解質層の薄型化には限界があり、従来から、固体電解質層をより薄型化することが望まれていた。固体電解質層が厚い場合には、固体電解質層における酸化物イオン伝導性を確保するために燃料電池の運転温度をより高く設定する必要がある。運転温度が高いことは、燃料電池を構成する部材の材料を選択する際の自由度が低下すると共に、燃料電池の起動時間がより長くなるため望ましくない。
【0005】
本発明は、上述した従来の課題を解決するためになされたものであり、燃料電池が備える固体電解質層をより薄型化する技術を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
上記目的を達成するために、本発明は、固体電解質型燃料電池であって、
酸化物イオン伝導性を有する固体電解質層と、電子伝導性および酸素分子と酸素原子と酸化物イオンとのうちの少なくともいずれか一種を透過させる性質を有すると共に前記固体電解質層の少なくとも一方の面上に形成される緻密膜と、を備える電解質膜と、
前記電解質膜の一方の面に対して、酸素を含有する酸化ガスを供給する酸化ガス供給部と、
前記電解質膜の他方の面に対して、水素を含有する燃料ガスを供給する燃料ガス供給部と
を備えることを要旨とする。
【0007】
以上のように構成された本発明の固体電解質型燃料電池によれば、電解質膜が緻密膜と固体電解質層とを備えるため、固体電解質が緻密膜によって保持されることで電解質膜全体の強度を確保することができる。また、緻密膜上に固体電解質層が設けられることで、多孔質体上に固体電解質層を設ける場合に比べて固体電解質層におけるガス不透過性の確保が容易となり、固体電解質層の薄型化が可能となる。
【0008】
本発明の固体電解質型燃料電池において、
前記緻密膜は、前記電解質膜において前記酸化ガス供給部から前記酸化ガスが供給される側の面に形成され、
前記電解質膜は、さらに、前記緻密膜と前記固体電解質層との間に、酸素分子と酸素原子との少なくとも一方から酸化物イオンを生じさせる第1の触媒層を備えることとしても良い。
【0009】
このような構成とすれば、酸化ガス中の酸素が、酸素分子あるいは酸素原子の状態で緻密膜内を透過するときに、これら酸素分子あるいは酸素原子から、上記第1の触媒層において酸化物イオンを生じることができる。このようにして生じた酸化物イオンが固体電解質層内を移動することで、電気化学反応を進行することが可能となる。
【0010】
あるいは、本発明の固体電解質型燃料電池において、
前記緻密膜は、前記電解質膜において前記燃料ガス供給部から前記燃料ガスが供給される側の面に形成され、
前記電解質膜は、さらに、前記緻密膜と前記固体電解質層との間に、酸化物イオンから、酸素分子と酸素原子との少なくとも一方を生じさせる第2の触媒層を備えることとしても良い。
【0011】
このような構成とすれば、固体電解質層内を酸化物イオンが移動するときに、この酸化物イオンから、上記第2の触媒層において酸素分子あるいは酸素原子を生じることができる。このようにして生じた酸素分子あるいは酸素原子が緻密膜内を移動することで、電気化学反応を進行することが可能となる。
【0012】
上記第1の触媒あるいは第2の触媒は、白金系触媒を備えることとしても良い。白金系触媒は、卑金属系触媒に比べて低温活性が高い。そのため、固体電解質層を薄型化して、固体電解質型燃料電池の動作温度をより低くする場合にも、高い効率で電池反応を進行させることが可能となる。
【0013】
また、本発明の固体電解質型燃料電池において、前記緻密膜を電極部材として用いることとしても良い。このような構成とすれば、緻密膜を設けた側には別途電極部材を設ける必要がなく、燃料電池の構成を簡素化することができる。
【0014】
本発明の固体電解質型燃料電池において、前記緻密膜は、電子伝導性を有する材料から成る粉末を内部に分散保持することとしても良い。このような構成とすれば、酸素分子と酸素原子と酸化物イオンとのうちの少なくともいずれか一種を透過させる性質を有する材料により緻密膜を構成する際に、緻密膜に対して容易に電子伝導性を付与することができる。
【0015】
また、本発明の固体電解質型燃料電池において、前記緻密膜は、該緻密膜の一方の面において、前記酸化ガス供給部から供給された酸化ガス中の酸素分子が内部に溶解し、該緻密層内を前記酸素分子が拡散し、該緻密膜の他方の面から前記酸素分子が外部に離脱することにより、酸素が透過することとしても良い。このような前記緻密膜は、ポリプロピレンを含むこととしても良い。ポリプロピレンを含む緻密膜を用いることで、緻密膜における酸素分子の透過性を確保することができる。
【0016】
なお、本発明は、上記以外の種々の形態で実現可能であり、例えば、電解質膜や、電解質膜の製造方法などの形態で実現することが可能である。
【0017】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.燃料電池の構成と製造方法:
B.効果:
C.第2実施例:
D.第3実施例:
E.変形例:
【0018】
A.燃料電池の構成と製造方法:
図1は、本発明の第1実施例としての燃料電池10の構成の概略を表わす説明図である。図1では、単セルの断面の様子を示している。燃料電池10は、電解質膜20と、アノード30と、セパレータ36,37とを備えている。ここで、電解質膜20は、固体電解質によって形成される電解質層22と、緻密膜24と、電解質層22および緻密膜24との間に形成される触媒層23と、を備える。
【0019】
電解質層22を構成する固体電解質は、電子伝導性を有することなく酸化物イオン伝導性を有する金属酸化物である。このような固体電解質としては、例えば、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)などのジルコニア系酸化物イオン伝導体や、ペロブスカイト型構造を有する酸化物イオン伝導体など、種々のセラミックス酸化物イオン伝導体を用いることができる。
【0020】
緻密膜24は、電子伝導性および酸素透過性を有する緻密性の膜である。本実施例では、カーボン粉末を内部に分散保持するポリプロピレンによって、緻密膜24を形成している。このような本実施例の緻密膜24では、ポリプロピレンによって酸素透過性を実現しており、混在させたカーボン粉末によって電子伝導性を確保している。緻密膜24に混在させるカーボン粉末としては、カーボンブラックやアセチレンブラックや天然黒鉛など種々の粉末を用いることができる。混在させるカーボン粉末の割合は、例えば15〜40%程度とすることができ、本実施例ではカーボンブラックを30%混在させている。これらカーボン粉末の他、金属粉末など、他種の電子伝導性微粒子を混在させることとしても良い。なお、ポリプロピレンを含有する緻密膜24を酸素が透過するときには、酸素は、分子の状態で、圧力の高い側の面から緻密膜24内に溶解して内部で拡散し、圧力の低い側の面から外部に離脱すると考えられている。この緻密膜24は、電子伝導性を有することにより、燃料電池10が発電するときには、集電を行なうカソード電極として働き、外部配線から電子が供給される。
【0021】
触媒層23は、本実施例では、白金(Pt)層によって形成されている。触媒層23は、緻密膜24を酸素分子が通過してきたときに、外部配線から供給された電子を用いて、酸素分子から酸化物イオンを生じる活性を有している。触媒層23で生じた酸化物イオンは、電気化学反応の進行に伴って電解質層22内を移動する。なお、触媒層23は、比較的低温で活性の高い白金系貴金属を備えることが望ましい。上記したようにPtを備える層とする他、例えばロジウム(Rh)やルテニウム(Ru)を含む層とすることができる。
【0022】
アノード30は、電解質膜20において、緻密膜24が形成されていない側の表面に設けられている。本実施例では、アノード30は、触媒であるPtを備える多孔質層として形成されている。なお、アノード30は、触媒層23と同様に、Ptに限らず、貴金属を含有する酸化触媒を備えることとすればよい。
【0023】
セパレータ36,37は、電解質膜20とアノード30とを積層した構造を、両側から挟持している。電解質膜20の緻密膜24と接するセパレータ36は、緻密膜24と接する側の表面に、酸化ガスが通過する流路を形成するための凹凸形状を有している。同様に、アノード30と接するセパレータ37は、アノード30と接する側の表面に、燃料ガスが通過する流路を形成するための凹凸形状を有している。これらセパレータ36,37は、電子伝導性とガス不透過性を有する材料によって形成することができ、例えば金属材料や炭素材料によって形成することができる。
【0024】
本実施例では、電解質層22は0.1μm、緻密膜24は1μmとした。各層の厚さは任意に設定することができる。例えば電解質層22は、ガス不透過性を確保することができる厚さであればよい。また、緻密膜24は、要求出力や要求強度や緻密膜24の酸素透過係数を考慮して、適宜設定することができる。
【0025】
図2は、燃料電池10の製造方法を表わす工程図である。燃料電池10を製造する際には、まず、緻密膜24を形成するために、カーボン粉末を所定の割合で含有するポリプロピレン層を形成する(ステップS100)。
【0026】
次に、このポリプロピレン層上に、触媒層23を構成するPt層を形成する(ステップS110)。Pt層は、例えばメッキ処理によって形成することができる。このPt層の厚みは、ポリプロピレン層から電解質層22に移動する酸素分子あるいは酸化物イオンの移動を妨げない厚さとすればよい。Pt層を形成すると、このPt層の上に、電解質層22となる固体電解質を成膜する(ステップS120)。固体電解質の膜は、例えば、PVD法やCVD法により形成することができる。あるいは、微粒化した固体電解質をPt層上に衝突付着させるエアロゾルデポジション法によって、固体電解質の膜を形成することとしても良い。
【0027】
その後、固体電解質の膜上であって、Pt層およびポリプロピレン層が形成されていない側に、Ptを備える多孔質層であるアノード30を形成する(ステップS130)。アノード30は、例えば、Pt担持カーボン粉末を溶媒によってスラリ化したものを、固体電解質膜上に塗布し、その後加熱によって溶媒を除去することにより形成することができる。電解質膜20上にアノード30を形成すると、予め所定の形状に形成したセパレータ36,37によってこれらを両側から挟み込み(ステップS140)、燃料電池10を完成する。セパレータ36,37を配設する際には、積層する各部材の周辺部において、燃料ガスおよび酸化ガスがそれぞれの流路から漏れ出さないように、ガスシール性を確保する。なお、図1では、燃料電池10として単セルを示したが、実際に燃料電池を組み立てる際には、要求出力に応じて所定数の単セルを積層してスタック構造とすればよい。
【0028】
本実施例の燃料電池10において、セパレータ36上に形成される流路に酸素を含有する酸化ガスを供給し、セパレータ37上に形成される流路に水素を含有する燃料ガスを供給すると、燃料電池10は、供給ガス量と負荷に応じた電力を発生する。図3は、燃料電池10で電気化学反応が進行するときの様子を模式的に表わす説明図である。なお、図3では、セパレータ36,37の記載は省略している。図3に示すように、緻密膜24では、供給された酸化ガス中の酸素が、分子の状態で内部に溶解して拡散し、電解質層22側に移動する。ここで、電子伝導性を有する緻密膜24には外部配線から電子が供給されるため、電解質層22との境界付近にまで移動した酸素分子は、触媒層23の働きで酸化物イオンとなり、生じた酸化物イオンは電解質層22内をアノード30側に向かって移動する。アノード30では、酸化物イオンが電子を放出すると共に、供給された燃料ガス中の水素と反応して水を生じる。さらに、燃料ガス中に一酸化炭素が含まれる場合には、この一酸化炭素と反応して二酸化炭素を生じる反応も進行する。
【0029】
C.効果:
以上のように構成された本実施例の燃料電池10によれば、ポリプロピレンからなる緻密膜24上に電解質層22を成膜しているため、電解質膜20全体の強度を確保するができる。さらに、ポリプロピレンによって形成される緻密膜24がガス不透過な無孔膜であるため、電解質層22のガス不透過性を確保する際に電解質層22に必要な厚みが緻密膜24の影響を受けることがなく、電解質層22の薄型化が可能となる。例えば、多孔質体から成る基板上に電解質層を成膜する場合には、電解質層のガス不透過性を確保するために、多孔質体の細孔の大きさ以上の膜厚を確保する必要があるが、本実施例ではこのように基材の状態を考慮する必要がない。そのため、電解質層22の厚さは、例えば、0.1μm以下にすることができる。
【0030】
このように電解質層22をより薄くすることで、電解質層22における酸化物イオン伝導性が向上するため、燃料電池10の運転温度をより低く設定することが可能になる。従来は、例えば金属多孔質体から成る基材上にペロブスカイト型固体電解質を成膜して電解質層の薄型化を図る場合でも、800℃程度に昇温して運転する必要があったが、本実施例によれば、より低い温度で運転することが可能となる。例えば、常温〜500℃程度で発電を行なうことが可能となる。ここで、本実施例では、触媒としてPt等の貴金属触媒を用いているため、従来の固体電解質型燃料電池の動作温度よりも低い温度においても、高い効率で発電を行なうことができる。
【0031】
このように運転温度を低くすることで、本実施例によれば、燃料電池10における起動性を向上させるという効果を奏することができる。すなわち、燃料電池10の起動時に、良好に電気化学反応が進行する定常温度に燃料電池10が達するまでの時間を短縮させることができる。
【0032】
さらに、燃料電池10の運転温度が低くなることで、燃料電池10を構成する部材を形成する材料の選択の自由度が増すという効果が得られる。従来の固体電解質型燃料電池のように、800〜1000℃程度で運転する場合には、セパレータや電極などの部材もセラミックスによって形成する必要があったが、運転温度を低くすることで、金属材料を選択することが可能となる。金属材料を用いれば、強度を確保しつつさらなる薄型化が可能となる。また、実施例のように薄板状部材を積層してスタック構造を形成する場合には、各板状部材の外周部でガスシールを充分に行なう必要があるが、運転温度を低くすることによってシール材の選択の自由度を増すことができる。1000℃程度で運転する場合には、通常は技術的にも困難なガラスによるシールが行なわれるが、運転温度をより低くすることで、樹脂材料を用いてシールしたり、カーボンガスケットを用いてシール性を確保することが可能となり、組み立て操作を容易化できる。
【0033】
また、本実施例の燃料電池10によれば、電解質層22に隣接して設けた緻密膜24が電子伝導性を有するため、緻密膜24がカソード電極として働く。そのため、アノード側のように別途電極部材を設ける必要がなく、緻密膜24を設けたことによる構造の複雑化を抑えることができる。
【0034】
C.第2実施例:
図4は、第2実施例の燃料電池110の構成の概略を現わす説明図である。第2実施例の燃料電池110において、第1実施例の燃料電池10と共通する構成要素には、同じ参照番号を付して詳しい説明を省略する。燃料電池110は、電解質膜120と、カソード32と、セパレータ36,37とを備えている。ここで、電解質膜120は、電解質層22と、緻密膜124と、緻密膜124の両側にそれぞれ形成される触媒層123a,123bと、を備える。カソード32は第1実施例のアノード30と同様に形成され、緻密膜124は緻密膜24と同様に形成され、触媒層123a,123bは、触媒層23と同様に形成されている。
【0035】
第2実施例の燃料電池110では、セパレータ36上に形成される流路に酸素を含有する酸化ガスを供給すると、カソード32には外部配線から電子が供給されるため、カソード32において酸素分子は酸化物イオンとなる。生じた酸化物イオンは、電解質層22内を触媒層123aに向かって移動する。触媒層123aでは、酸化物イオンは電子を放出して酸素分子となり、生じた酸素分子は緻密膜124内を触媒層123bに向かって移動する。触媒層123bでは、この酸素分子が、セパレータ37上に形成される流路に供給された燃料ガス中の水素と反応して水を生じる。なお、触媒層123aで酸化物イオンから放出された電子は、電子伝導性を有する緻密膜124、触媒層123b、セパレータ37を介して外部配線に流れる。
【0036】
以上のように構成された第2実施例の燃料電池110によれば、電子伝導性と酸素透過性とを有する緻密膜124上に電解質層22を成膜しているため、電解質層22の薄型化が可能となり、第1実施例の燃料電池10と同様の効果を得ることができる。
【0037】
D.第3実施例:
図5は、第3実施例の燃料電池210の構成の概略を現わす説明図である。第3実施例の燃料電池210において、第1実施例の燃料電池10と共通する構成要素には、同じ参照番号を付して詳しい説明を省略する。燃料電池210は、電解質膜220と、セパレータ36,37とを備えている。ここで、電解質膜220は、緻密膜224a、触媒層223a、電解質層22、触媒層223b、緻密膜224b、触媒層223cの順で、各層を重ね合わせた構造を有している。緻密膜224a,224bは緻密膜24と同様に形成され、触媒層223a,223b,223cは、触媒層23と同様に形成されている。
【0038】
第3実施例の燃料電池210では、セパレータ36上に形成される流路に酸素を含有する酸化ガスを供給すると、酸化ガス中の酸素分子は、緻密膜224a内を触媒層223aに向かって拡散する。このとき、外部配線から供給される電子はセパレータ36および緻密膜224aを介して触媒層223aに流れ、触媒層223aでは、緻密膜224aを透過した酸素分子から酸化物イオンが生じる。生じた酸化物イオンは、電解質層22内を触媒層223bに向かって移動する。触媒層223bでは、酸化物イオンは電子を放出して酸素分子となり、生じた酸素分子は緻密膜224b内を触媒層223cに向かって移動する。触媒層223cでは、この酸素分子が、セパレータ37上に形成される流路に供給された燃料ガス中の水素と反応して水を生じる。なお、触媒層223bで酸化物イオンから放出された電子は、電子伝導性を有する緻密膜224b、触媒層223c、セパレータ37を介して外部配線に流れる。
【0039】
以上のように構成された第3実施例の燃料電池210によれば、電解質層22の両側に、電子伝導性と酸素透過性とを有する緻密膜224a,224bを形成しているため、電解質層22の薄型化が可能となり、第1実施例の燃料電池10と同様の効果を得ることができる。
【0040】
E.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0041】
E1.変形例1:
第1ないし第3実施例では、緻密膜としてポリプロピレン膜を用いたが酸素透過性を有する他種の膜を用いることとしても良い。例えば、シリコン膜や、シリコンポリカーボネート膜を用いることができる。実質的に無孔質でガス不透過な膜であれば、電解質層を薄型化する同様の効果を得ることができる。上記したような高分子材料から成る緻密膜を用いることで、薄型化した電解質膜全体の柔軟性を高めることができるため、電池全体の形態をより多様化させることが可能となる。なお、緻密膜を形成する材料は高分子材料に限るものではなく、また、緻密膜として用いる酸素透過膜が充分な電子伝導性を有しているならば、実施例とは異なり電子伝導性粉末を混合させないこととしても良い。
【0042】
E2.変形例2:
第1ないし第3実施例では、緻密膜と電解質層との間に触媒層を設けたが、酸素分子から酸化物イオンを生じたり酸化物イオンから酸素分子を生じる活性を有する緻密膜を用いる場合には、触媒層を設けないこととしても良い。例えば、酸素分子ではなく、酸化物イオンを透過させる性質を有する緻密膜を用いれば、触媒層を設けることなく酸化物イオンを電解質層に供給することができる。
【0043】
E3.変形例3:
また、緻密膜として、酸素を原子の状態で透過させる性質を有する膜を用いることとしても良い。この場合には、必要に応じて、酸素原子から酸化物イオンを生じるための触媒層、あるいは酸化物イオンから酸素原子を生じるための触媒層を、緻密膜と電解質層との間に設ければよい。酸素分子と酸素原子と酸化物イオンとの内の少なくとも一種を透過させる性質を緻密膜が有していれば、本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例の燃料電池10の構成を表わす説明図である。
【図2】燃料電池10の製造方法を表わす工程図である。
【図3】燃料電池10で電気化学反応が進行するときの様子を模式的に表わす説明図である。
【図4】第2実施例の燃料電池110の構成の概略を現わす説明図である。
【図5】第3実施例の燃料電池210の構成の概略を現わす説明図である。
【符号の説明】
10,110,210…燃料電池
20,120,220…電解質膜
22…電解質層
23…触媒層
24,124…緻密膜
30…アノード
32…カソード
36,37…セパレータ
123a,123b…触媒層
223a,223b,223c…触媒層
224a,224b…緻密膜
Claims (12)
- 固体電解質型燃料電池であって、
酸化物イオン伝導性を有する固体電解質層と、電子伝導性および酸素分子と酸素原子と酸化物イオンとのうちの少なくともいずれか一種を透過させる性質を有すると共に前記固体電解質層の少なくとも一方の面上に形成される緻密膜と、を備える電解質膜と、
前記電解質膜の一方の面に対して、酸素を含有する酸化ガスを供給する酸化ガス供給部と、
前記電解質膜の他方の面に対して、水素を含有する燃料ガスを供給する燃料ガス供給部と
を備える固体電解質型燃料電池。 - 請求項1記載の固体電解質型燃料電池であって、
前記緻密膜は、前記電解質膜において前記酸化ガス供給部から前記酸化ガスが供給される側の面に形成され、
前記電解質膜は、さらに、前記緻密膜と前記固体電解質層との間に、酸素分子と酸素原子との少なくとも一方から酸化物イオンを生じさせる第1の触媒層を備える
固体電解質型燃料電池。 - 請求項2記載の固体電解質型燃料電池であって、
前記第1の触媒層は、白金系触媒を備える
固体電解質型燃料電池。 - 請求項1記載の固体電解質型燃料電池であって、
前記緻密膜は、前記電解質膜において前記燃料ガス供給部から前記燃料ガスが供給される側の面に形成され、
前記電解質膜は、さらに、前記緻密膜と前記固体電解質層との間に、酸化物イオンから、酸素分子と酸素原子との少なくとも一方を生じさせる第2の触媒層を備える
固体電解質型燃料電池。 - 請求項4記載の固体電解質型燃料電池であって、
前記第2の触媒層は、白金系触媒を備える
固体電解質型燃料電池。 - 請求項1ないし5いずれか記載の固体電解質型燃料電池であって、
前記緻密膜を電極部材として用いる
固体電解質型燃料電池。 - 請求項1ないし6いずれか記載の固体電解質型燃料電池であって、
前記緻密膜は、電子伝導性を有する材料から成る粉末を内部に分散保持する
固体電解質型燃料電池。 - 請求項1ないし7いずれか記載の固体電解質型燃料電池であって、
前記緻密膜は、該緻密膜の一方の面において、前記酸化ガス供給部から供給された酸化ガス中の酸素分子が内部に溶解し、該緻密層内を前記酸素分子が拡散し、該緻密膜の他方の面から前記酸素分子が外部に離脱することにより、酸素が透過する
固体電解質型燃料電池。 - 請求項8記載の固体電解質型燃料電池であって、
前記緻密膜は、ポリプロピレンを含む
固体電解質型燃料電池。 - 燃料電池用の電解質膜であって、
酸化物イオン伝導性を有する固体電解質層と、
電子伝導性と共に、酸素分子と酸素原子と酸化物イオンとのうちの少なくともいずれか一種を透過させる性質を有する緻密膜と
を備える電解質膜。 - 燃料電池用電解質膜の製造方法であって、
(a)電子伝導性と共に、酸素分子と酸素原子と酸化物イオンとのうちの少なくともいずれか一種を透過させる性質を有する緻密膜を形成する工程と、
(b)前記緻密膜上に、酸化物イオン伝導性を有する固体電解質層を形成する工程と
を備える電解質膜の製造方法。 - 請求項11記載の燃料電池用電解質膜の製造方法であって、さらに、
(c)前記緻密膜上に、貴金属触媒層を形成する工程を備え、
前記(b)工程は、前記緻密膜上に形成された前記貴金属触媒層上に、前記固体電解質層を形成する
電解質膜の製造方法。
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