JP2004340019A - 車載内燃機関のバルブタイミング制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】機関停止過程でカムシャフトの相対回転位相を所定進角状態に固定することができなくなるのを抑制する。
【解決手段】エンジン運転中、エンジン停止開始後に吸気カムシャフトの相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に変化しきらないエンジン運転状況のもとでは、ストッパ機構16による固定が解除されることはない。この状態にあっては、当該相対回転位相の所定進角状態よりも遅角側への変化がストッパ機構16によって禁止されたままになる。このことから、エンジン停止開始時に上記相対回転位相が所定進角状態よりも遅角側になるのは、エンジン停止開始後に当該相対回転位相を所定進角状態よりも進角側に変更することが可能なときだけになる。従って、エンジン停止過程において、上記相対回転位相が所定進角側よりも進角側に移行しきらなくなることは抑制され、ロック機構15によって的確に所定進角状態に固定されるようになる。
【選択図】 図3
【解決手段】エンジン運転中、エンジン停止開始後に吸気カムシャフトの相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に変化しきらないエンジン運転状況のもとでは、ストッパ機構16による固定が解除されることはない。この状態にあっては、当該相対回転位相の所定進角状態よりも遅角側への変化がストッパ機構16によって禁止されたままになる。このことから、エンジン停止開始時に上記相対回転位相が所定進角状態よりも遅角側になるのは、エンジン停止開始後に当該相対回転位相を所定進角状態よりも進角側に変更することが可能なときだけになる。従って、エンジン停止過程において、上記相対回転位相が所定進角側よりも進角側に移行しきらなくなることは抑制され、ロック機構15によって的確に所定進角状態に固定されるようになる。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車載内燃機関のバルブタイミング制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、自動車用エンジン等の車載内燃機関にあっては、出力向上や燃費改善等を意図して、同機関のバルブタイミングを適宜変更するバルブタイミング可変機構が設けられている。こうしたバルブタイミング可変機構は、例えば車載内燃機関の吸気カムシャフトに連結された可動部材と、可動部材を挟むように設けられた進角側圧力室及び遅角側圧力室とを備えている。そして、それら圧力室に選択的にオイルを供給して油圧で可動部材を移動させることにより、同機関のクランクシャフトに対するカムシャフトの相対回転位相を進遅角させる。このようにカムシャフトの相対回転位相を変更することにより、同機関における吸気バルブのバルブタイミングが変更されるようになる。
【0003】
ところで、内燃機関の始動開始時には、圧力室からオイルが抜けた状態になっており、機関始動開始と同時に圧力室にオイルを供給し始めても、可動部材が油圧により移動可能となるのに所定の時間を要する。そのため、この場合は、吸気バルブのバルブタイミングを制御することができなくなるとともに、可動部材に油圧が働かないことから、吸気バルブの開閉駆動に伴う反力によってカムシャフトの相対回転位相(バルブタイミング)が最遅角状態となる。従って、内燃機関の始動性を良好なものとするためには、吸気バルブのバルブタイミングが最遅角状態になったとき、機関始動に適したバルブタイミング(以下、始動タイミングという)が得られるよう同バルブタイミングの制御範囲を設定する必要が生じる。なお、この始動タイミングとは、圧縮行程中に機関始動に適した混合気の圧縮を行うことが可能なバルブタイミングである。
【0004】
しかし、上記のような要求が満たされるようにバルブタイミングの制御範囲を設定すると、その制御範囲の遅角限界が始動タイミングまでに制限されため、バルブタイミングの制御範囲が狭くなって内燃機関の全運転領域に亘ってバルブタイミングを最適に制御することが困難になる。そこで、機関始動時のバルブタイミングを最適にしつつ、バルブタイミング制御の制御範囲の縮小を抑制する技術として、機関始動時にはカムシャフトの相対回転位相を最遅角状態よりも所定量だけ進角した状態である所定進角状態で固定することが提案されている。
【0005】
例えば、カムシャフトの相対回転位相を所定進角状態で進角側と遅角側との両方について固定可能なロック機構を設け、同機構によりカムシャフトの相対回転位相が固定される状態のとき、バルブタイミングが始動タイミングとなるようにバルブタイミング制御の制御範囲を設定する。この場合、ロック機構によってカムシャフトの相対回転位相が固定されているときには、圧力室にオイルが満たされていなくてもバルブタイミングを始動タイミングに維持することが可能になる。そのため、機関始動中においては、上記ロック機構による固定がなされた状態とすることで、内燃機関の始動性が良好なものとされる。
【0006】
上記ロック機構による固定を実現するため、内燃機関が停止開始されたときにカムシャフトの相対回転位相が所定進角状態よりも遅角側にある場合には、特許文献1に示されるように当該相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に変更させられる。そして、その後の内燃機関の自立運転停止過程で、所定進角状態よりも進角したカムシャフトの相対回転位相が、吸気バルブの開閉駆動に伴う反力によって遅角して所定進角状態とされ、その状態でロック機構による固定が行われる。なお、機関始動中に圧力室にオイルが満たされると、ロック機構による固定を解除することが可能となり、同固定の解除によってカムシャフトの相対回転位相の変更によるバルブタイミング制御が可能になる。このバルブタイミング制御では、バルブタイミングを始動タイミングよりも遅角側に制御することができるようになる。
【0007】
上記のようにロック機構を設けるとともに、機関始動時に同機構による固定及び固定解除を実現することで、機関始動時にバルブタイミングを始動タイミングに保持しつつ、機関始動後におけるバルブタイミング制御の制御範囲の縮小を抑制することができる。
【0008】
【特許文献1】
特開2002−213262公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、機関停止開始後においては、内燃機関の自立運転が停止されて機関回転速度が徐々に低下してゆくことになる。バルブタイミング可変機構の圧力室に供給されるオイルは、内燃機関の回転に基づき駆動されるオイルポンプから吐出されるものであるため、上記機関回転速度の低下に伴いオイルポンプのオイル吐出量も徐々に低下してゆく。機関停止開始時にカムシャフトの相対回転位相が所定進角状態よりも遅角側にあって、機関停止開始後にカムシャフトの相対回転位相を所定進角状態よりも進角させるときには、上記オイルポンプからのオイルが進角側圧力室に供給されることになる。しかし、機関停止開始時点での機関運転状況によっては、カムシャフトの相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に移行しきらなくなる場合がある。
【0010】
このような不都合が生じる機関運転状況としては、例えば以下に示すものがあげられる。
・低温時であってオイル粘度が高いとき。この場合、機関停止過程で進角側圧力室にオイルを供給しようとしても、そのオイル粘度が高いことに起因してオイルの流れが悪くなり油圧の上昇に時間がかかることから、カムシャフトの相対回転位相を所定進角状態よりも進角側に変化させる上で必要なオイルの油圧が得られなくなる。従って、カムシャフトの相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に移行しきらなくなる。
【0011】
・高温時であってオイル粘度が低いとき。この場合、機関停止過程で進角側圧力室にオイルを供給しようとしても、オイル粘度が低いことに起因して供給途中でのオイルの漏れが多くなることから、カムシャフトの相対回転位相を所定進角状態よりも進角側に変化させる上で必要なオイルの油圧が得られなくなる。従って、カムシャフトの相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に移行しきらなくなる。
【0012】
・機関回転速度が低いとき。この場合、オイルポンプからのオイルの吐出量が少なくなってカムシャフトの相対回転位相を進角させるための油圧が低くなるとともに、機関停止開始後に機関回転速度が「0」になるまでの期間が短くなることからカムシャフトの相対回転位相を進角させることの可能な期間も短くなる。従って、カムシャフトの相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に移行しきらなくなる。
【0013】
・内燃機関における補機を駆動するための負荷が大きいとき。この場合、内燃機関により駆動される補機の駆動抵抗が大であることから、機関停止開始後に機関回転速度が速やかに「0」になり、機関停止開始後に機関回転速度が「0」になるまでの期間が短くなる。このため、機関停止過程において、カムシャフトの相対回転位相を進角させることの可能な期間が短くなり、当該相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に移行しきらなくなる。
【0014】
以上のような機関運転状況が原因で、機関停止開始後にカムシャフトの相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に移行しきらないと、機関回転速度が「0」になったときにも、当該相対回転位相が所定進角状態よりも遅角側の状態のままになる。この場合、カムシャフトの相対回転位相をロック機構によって所定進角状態で固定することができなくなり、次回の機関始動時にはバルブタイミングが始動タイミングでない状態で内燃機関の始動を行わなければならず、内燃機関の始動性低下を招くこととなる。
【0015】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、機関停止過程でカムシャフトの相対回転位相を所定進角状態に固定することができなくなり、次回の機関始動時にカムシャフトの相対回転位相が所定進角状態からずれた状態になるのを抑制することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明では、車載内燃機関のクランクシャフトに対するカムシャフトの相対回転位相を進遅角させるバルブタイミング可変機構と、前記カムシャフトの相対回転位相を最遅角状態よりも所定量だけ進角した所定進角状態で進角側と遅角側との両方について固定可能なロック手段とを備え、前記カムシャフトの相対回転位相が前記所定進角状態よりも遅角側にあって同機関が停止開始したとき、当該相対回転位相が前記所定進角状態よりも進角側に向けて変更されるよう前記バルブタイミング可変機構を制御する車載内燃機関のバルブタイミング制御装置において、前記カムシャフトの相対回転位相を前記所定進角状態で遅角側についてのみ固定するストッパ手段と、機関運転中、機関停止開始後に前記カムシャフトの相対回転位相が前記所定進角状態よりも進角側に変化させることの可能な機関運転状況にある旨判断されることを条件に、前記ストッパ手段による固定の解除を許容する制御手段とを備えた。
【0017】
上記構成によれば、機関停止開始後に前記カムシャフトの相対回転位相が前記所定進角状態よりも進角側に変化しきらない機関運転状況下では、機関運転中にストッパ手段による固定が解除されることはなく、当該相対回転位相の所定進角状態よりも遅角側への変更がストッパ手段によって禁止されたままになる。そして、機関停止開始後に前記カムシャフトの相対回転位相を前記所定進角状態よりも進角側に変化させることの可能な機関運転状況になって始めてストッパ手段による固定の解除が許容される。このことから、機関停止開始時にカムシャフトの相対回転位相が所定進角状態よりも遅角側になるのは、機関停止開始後にカムシャフトの相対回転位相を所定進角状態よりも進角側に変更することが可能なときだけということになる。従って、機関停止開始後にカムシャフトの相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に移行しきらないという不都合が生じることはなくなる。このため、機関停止過程で的確にロック機構による固定を行うことができるようになり、次回の機関始動時にはカムシャフトの相対回転位相を的確に所定進角状態として内燃機関の始動を行うことができる。
【0018】
請求項2記載の発明では、請求項1記載の発明において、前記バルブタイミング可変機構は、オイルの供給を受けて油圧駆動されるものであって、前記制御手段は、機関運転中にあって、前記オイルの油圧が機関停止開始後に前記カムシャフトの相対回転位相を前記所定進角状態よりも進角側に変化させることの可能な所定値以上である旨判断されるとき、前記ストッパ手段による固定の解除を許容するものとした。
【0019】
上記油圧が機関停止開始後に前記カムシャフトの相対回転位相を前記所定進角状態よりも進角側に変化させることの可能な所定値未満である旨判断されるときには、機関停止開始後に前記カムシャフトの相対回転位相が前記所定進角状態よりも進角側に変化しきらない機関運転状況にあることになる。このような状況下ではストッパ手段による固定が維持される。これにより、機関停止開始後にカムシャフトの相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に移行しきらないという状況が生じるのを抑制することができる。
【0020】
なお、上記油圧が所定値以上であるか、或いは所定値未満であるかの判断については、同油圧を直接検出して行ってもよいし、同油圧に関係するパラメータを用いて行ってもよい。こうしたパラメータとしては、例えばオイルの油温、内燃機関の冷却水温や吸気温をあげることができる。また、バルブタイミング可変機構が車載内燃機関の回転に基づき駆動されるオイルポンプから吐出されるオイルの油圧によって駆動されるものである場合は、機関回転速度を上記パラメータとして用いることも可能である。
【0021】
請求項3記載の発明では、請求項1記載において、前記制御手段は、機関運転中であって、機関回転速度が機関停止開始後に前記カムシャフトの相対回転位相を前記所定進角状態よりも進角側に変化させる前に機関回転が停止する所定値以上である旨判断されるとき、前記ストッパ手段による固定の解除を許容するものとした。
【0022】
機関回転速度が、機関停止開始後に前記カムシャフトの相対回転位相を前記所定進角状態よりも進角側に変化させる前に機関回転が停止する所定値未満である旨判断されるときには、機関停止開始後に前記カムシャフトの相対回転位相が前記所定進角状態よりも進角側に変化しきらない機関運転状況にあることになる。このような状況下ではストッパ手段による固定が維持される。これにより、機関停止開始後にカムシャフトの相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に移行しきらないという状況が生じるのを抑制することができる。
【0023】
請求項4記載の発明では、請求項1記載の発明において、前記制御手段は、機関運転中であって、機関回転抵抗が機関停止開始後に前記カムシャフトの相対回転位相を前記所定進角状態よりも進角側に変化させる前に機関回転が停止する所定値未満である旨判断されるとき、前記ストッパ手段による固定の解除を許容するものとした。
【0024】
機関回転抵抗が、機関停止開始後に前記カムシャフトの相対回転位相を前記所定進角状態よりも進角側に変化させる前に機関回転が停止する所定値以上である旨判断されるときには、機関停止開始後に前記カムシャフトの相対回転位相が前記所定進角状態よりも進角側に変化しきらない機関運転状況にあることになる。このような状況下ではストッパ手段による固定が維持される。これにより、機関停止開始後にカムシャフトの相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に移行しきらないという状況が生じるのを抑制することができる。
【0025】
なお、上記機関回転抵抗としては、例えば車載内燃機関によって駆動される補機の駆動抵抗をあげることができる。
請求項5記載の発明では、車載内燃機関のクランクシャフトに対するカムシャフトの相対回転位相を進遅角させるバルブタイミング可変機構と、前記カムシャフトの相対回転位相を最遅角状態よりも所定量だけ進角した所定進角状態で進角側と遅角側との両方について固定可能なロック手段とを備え、前記カムシャフトの相対回転位相が前記所定進角状態よりも遅角側にあって同機関が停止開始したとき、当該相対回転位相が前記所定進角状態よりも進角側に向けて変更されるよう前記バルブタイミング可変機構を制御する車載内燃機関のバルブタイミング制御装置において、前記カムシャフトの相対回転位相を前記所定進角状態で遅角側についてのみ固定するストッパ手段と、機関運転中、機関停止開始されることのない機関運転状況にある旨判断されることを条件に、前記ストッパ手段による固定の解除を許容する制御手段とを備えた。
【0026】
上記構成によれば、機関停止開始される可能性のある機関運転状況下では、機関運転中にストッパ手段による固定が解除されることはなく、カムシャフトの相対回転位相の所定進角状態よりも遅角側への変更がストッパ手段によって禁止されたままになる。そして、機関停止開始される可能性のない機関運転状況になって始めてストッパ手段による固定の解除が許容される。このことから、機関停止開始時にカムシャフトの相対回転位相が所定進角状態よりも遅角側にあるという状況は生じ得ないものとなる。従って、機関停止開始後にカムシャフトの相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に移行しきらないという不都合が生じることはなくなる。このため、機関停止過程で的確にロック機構による固定を行うことができるようになり、次回の機関始動時にはカムシャフトの相対回転位相を的確に所定進角状態として内燃機関の始動を行うことができる。
【0027】
請求項6記載の発明では、請求項5記載の発明において、前記制御手段は、機関出力要求のある旨判断されるとき、前記ストッパ手段による固定の解除を許容するものとした。
【0028】
機関出力要求がない旨判断されるときには、機関停止開始される可能性のある機関運転状況にあることになる。このような状況下ではストッパ手段による固定が維持されるため、機関停止開始時にカムシャフトの相対回転位相が所定進角状態よりも遅角側にあるという状況は生じ得ないものとなる。従って、機関停止開始後にカムシャフトの相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に移行しきらないという状況が生じるのを抑制することができる。
【0029】
なお、上記機関出力要求がなされているか否かの判断については、例えば車載内燃機関のスロットル開度やアクセル操作量が最小値以外の値であるか否か、またブレーキ操作がなされているか否か等に基づき行うことが可能である。
【0030】
請求項7記載の発明では、請求項5記載の発明において、前記制御手段は、車速が「0」又はそれに近い値でない旨判断されるとき、前記ストッパ手段による固定の解除を許容するものとした。
【0031】
車速が「0」又はそれに近い値である旨判断されるときには、機関停止開始される可能性のある機関運転状況にあることになる。このような状況下ではストッパ手段による固定が維持されるため、機関停止開始時にカムシャフトの相対回転位相が所定進角状態よりも遅角側にあるという状況は生じ得ないものとなる。従って、機関停止開始後にカムシャフトの相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に移行しきらないという状況が生じるのを抑制することができる。
【0032】
なお、上記車速が「0」又はそれに近い値ではないか否かの判断については、例えば車速センサ等からの検出信号に基づき行うことや、車載内燃機関に連結される変速機の変速態様を変更するためのシフトレバーの操作位置がニュートラルポジション及びパーキングポジションにない状態か否かに基づき行うことが可能である。
【0033】
【発明の実施の形態】
[第1実施形態]
以下、本発明を自動車用エンジンに適用した第1実施形態を図1〜図5に従って説明する。
【0034】
図1に示されるエンジン1においては、その駆動に伴うクランクシャフト2の回転が自動車に搭載される各種補機に伝達されるとともに、自動変速機等の変速機を介して自動車の車輪に伝達される。こうした回転伝達に基づき、自動車が走行したり各種補機が駆動したりするようになる。
【0035】
また、エンジン1の駆動に伴うクランクシャフト2の回転は吸気カムシャフト3及び排気カムシャフト4に伝達され、これらカムシャフト3,4の回転に基づき吸気バルブ5及び排気バルブ6が開閉動作する。吸気カムシャフト3には、吸気バルブ5のバルブ特性としてバルブタイミング(開閉タイミング)を変更すべく、クランクシャフト2に対する吸気カムシャフト3の相対回転位相を変更するバルブタイミング可変機構7が設けられている。このバルブタイミング可変機構7の内部構造を図2に示す。
【0036】
同装置7は、吸気カムシャフト3の軸線上に設けられて同シャフト3に固定されるロータ8と、ロータ8と同軸上に設けられてクランクシャフト2に対しチェーン等を介して連結されるギヤ9と、ロータ8と同軸上で同ロータ8の周りを囲うように設けられてギヤ9に固定されるリングカバー10とを備えている。ロータ8の外周部には複数のベーン11が突出形成され、これらベーン11によりリングカバー10内が進角側油圧室12と遅角側油圧室13とに区画されている。
【0037】
こうしたバルブタイミング可変機構7にあって、進角側油圧室12に油路を通じて作動油が供給されると、その作動油の油圧に基づきロータ8がギヤ9及びリングカバー10に対し図中左方向に相対回転しながら、遅角側油圧室13内の作動油が油路を通じて排出されるようになる。上記ロータ8の左方向への相対回転により、クランクシャフト2に対する吸気カムシャフト3の相対回転位相が進角側に変化し、吸気バルブ5のバルブタイミングが進角する。
【0038】
また、遅角側油圧室13に油路を通じて作動油が供給されると、その作動油の油圧に基づきロータ8がギヤ9及びリングカバー10に対し図中右方向に相対回転しながら、進角側油圧室12内の作動油が油路を通じて排出されるようになる。上記ロータ8の右方向への相対回転位相により、クランクシャフト2に対する吸気カムシャフト3の相対回転位相が遅角側に変化し、吸気バルブ5のバルブタイミングが遅角する。
【0039】
バルブタイミング可変機構7には、吸気カムシャフト3の相対回転位相を最遅角状態よりも所定量だけ進角した所定進角状態で固定可能なロック機構15が設けられている。このロック機構15による固定が行われているときには、吸気バルブ5のバルブタイミングがエンジン1の始動に適したタイミング(以下、始動タイミングという)となる。即ち、吸気カムシャフト3の相対回転位相を上記所定進角状態としたとき、吸気バルブ5のバルブタイミングが上記始動タイミングとなるよう、同バルブタイミングの制御範囲が予め設定されている。
【0040】
次に、バルブタイミング可変機構7へのオイル供給構造、及び上記ロック機構15の詳細な構造について図3を参照して説明する。同図は、図2のバルブタイミング可変機構7及びロック機構15を矢印A−A方向から見た状態を模式的に示すとともに、バルブタイミング可変機構7へのオイル供給を行うための油圧回路を示すものである。
【0041】
バルブタイミング可変機構7において、ロック機構15が設けられるベーン11は、ギヤ9、リングカバー10、及びプレート14等によって囲われた状態となっている。そして、それらギヤ9、リングカバー10、及びプレート14等の内側に、上記ベーン11によって区画された進角側油圧室12及び遅角側油圧室13が形成されている。また、バルブタイミング可変機構7には、吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態に向けて進角側(図中右側)に変化するよう、上記ベーン11(ロータ8)を進角側に付勢するばね17が設けられている。
【0042】
バルブタイミング可変機構7へのオイル供給を行う油圧回路は、進角側油圧室12に接続される進角側油路18と、遅角側油圧室13に接続される遅角側油路19とを備えている。そして、これら油路18,19は、オイルコントロールバルブ(OCV)20、供給通路21、及び排出通路22を介して、エンジン1のオイルパン23に繋がっている。
【0043】
上記供給通路21には、クランクシャフト2に連結されて同シャフト2の回転に基づき駆動されるオイルポンプ24が設けられている。また、上記OCV20は、互いに逆方向に働くコイルスプリング25及び電磁ソレノイド26の付勢力によって切換動作し、供給通路21及び排出通路22と進角側油路18及び遅角側油路19との接続状態を変更する。このOCV20の駆動制御は、エンジン1等の運転制御を行うべく自動車に搭載された電子制御装置41を通じて、電磁ソレノイド26に対する電圧印可を制御することによって行われる。
【0044】
OCV20は、電磁ソレノイド26の消磁状態においては、遅角側油路19と供給通路21とを連通するとともに、進角側油路18と排出通路22とを連通する。この場合、オイルパン23内のオイルがオイルポンプ24により遅角側油圧室13へ送り出されるとともに、進角側油圧室12内にあったオイルがオイルパン23内へ戻される。このときには、遅角側油圧室13に供給されるオイルの油圧によりベーン11が遅角側(図中左側)に押され、クランクシャフト2に対する吸気カムシャフト3の相対回転位相が遅角側に移行する。その結果、吸気バルブ5のバルブタイミングが遅角側に変化するようになる。
【0045】
また、電磁ソレノイド26が励磁されたときには、遅角側油路19と排出通路22とが連通するとともに、進角側油路18と供給通路21とが連通する。この場合、オイルパン23内のオイルがオイルポンプ24により進角側油圧室12に送り出されるとともに、遅角側油圧室13内にあったオイルがオイルパン23内へ戻される。このときには、進角側油圧室12に供給されるオイルの油圧によりベーン11が進角側(図中右側)に押され、クランクシャフト2に対する吸気カムシャフト3の相対回転位相が進角側に移行する。その結果、吸気バルブ5のバルブタイミングが進角側に変化するようになる。
【0046】
上記ロック機構15は、進角側油圧室12及び遅角側油圧室13内に存在するオイルの油圧に基づき動作し、吸気カムシャフト3の相対回転位相の所定進角状態での固定、及び当該固定の解除を行うものである。以下、ロック機構15の詳細な構造について説明する。
【0047】
ロック機構15は、ベーン11に設けられてコイルスプリング27によりギヤ9に向かって付勢されるロックピン28と、ギヤ9に設けられてロックピン28の先端が挿入される穴29とを備えている。この穴29は、ロックピン28の先端よりも若干大径に形成されるとともに、吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態となったときにロックピン28の先端に対応して位置するように設けられている。また、穴29の底部には油室32が形成されている。油室32は、進角側油圧室12に連通しており、この進角側油圧室12からのオイルを受け入れるようになっている。一方、上記ロックピン28及びコイルスプリング27は、ベーン11に形成された収容孔30内に配設されている。ロックピン28の外周面にはフランジ28aが形成され、このフランジ28aにより収容孔30内においてロックピン28の先端寄りの位置に油室31が区画形成されている。この油室31は、遅角側油圧室13と連通しており、同遅角側油圧室13からのオイルを受け入れるようになっている。
【0048】
エンジン1の運転中であって、進角側油圧室12と遅角側油圧室13との少なくとも一方に作動油が供給されているときには、上記油室31,32内における少なくとも一方の油圧によりロックピン28がコイルスプリング27の付勢力に抗して穴29から抜き出された状態に維持される。このときには、ロック機構15による吸気カムシャフト3の相対回転位相(吸気バルブ5のバルブタイミング)の進角側と遅角側との両方についての固定が解除された状態となる。
【0049】
また、エンジン1が停止する過程において、クランクシャフト2の回転速度が徐々に低下すると、オイルポンプ24により進角側油圧室12及び遅角側油圧室13に送り出されるオイルの量が徐々に低下し、それら油圧室12内におけるオイルの油圧が低下する。吸気カムシャフト3には、吸気バルブ5を開閉駆動する際の反力による回転トルクが同シャフト3の相対回転位相を遅角側に変化させる方向に働く。このため、進角側油圧室12及び遅角側油圧室13内のオイルの油圧が低下するエンジン1の停止過程にあって、吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも進角側にあるときには、当該相対回転位相が上記回転トルクによって遅角側に変化しようとする。
【0050】
一方、エンジン1の停止開始時点で、吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも遅角側にあるときには、ばね17の付勢力が吸気カムシャフト3の相対回転位相を進角側に変更させる方向に働くこととなる。このばね17の付勢力により、エンジン1の停止過程で吸気カムシャフト3の相対回転位相を所定進角状態に維持することができれば、エンジン1の停止過程で吸気カムシャフト3の相対回転位相をロック機構15によって所定進角状態で固定することが可能になる。即ち、エンジン停止過程で進角側油圧室12及び遅角側油圧室13内のオイルの油圧が低下し、ロックピン28がコイルスプリング27の付勢力によりベーン11から突出しようとするとき、吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態であればロックピン28が穴29に挿入される。これにより、当該相対回転位相の所定進角状態からの進角側及び遅角側への変化が禁止され、ロック機構15による固定が実現される。
【0051】
しかし、エンジン1の停止過程において、上記ばね17の付勢力だけで吸気カムシャフト3の相対回転位相を所定進角状態に維持できるとは限らず、維持できずに当該相対回転位相が所定進角状態よりも遅角側変化している場合には、上記ロック機構15による固定が実現不可能となる。このため、エンジン1の停止開始時点(図4のタイミングT1)で、吸気カムシャフト3の相対回転位相が図4(a)に実線で示されるように所定進角状態よりも遅角側にあるときには、当該相対回転位相が一旦所定進角状態よりも進角側に移行させられる。即ち、電子制御装置41を通じてOCV20が励磁され、進角側油圧室12へのオイル供給が図られる。これにより、図4(a)に実線で示されるように、吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に移行する。その後、図4(b)に示されるエンジン回転速度(機関回転速度)の低下に伴い、進角側油圧室12及び遅角側油圧室13内のオイルの油圧が低下し、ロックピン28がコイルスプリング27の付勢力によって突出可能な状態となる。この状態にあって、吸気カムシャフト3の相対回転位相が吸気バルブ5の開閉駆動に伴う反力に基づき所定進角状態まで遅角すると(タイミングT2)、ロックピン28が穴29に挿入され、図4(c)に実線で示されるようにロック機構15による固定が行われるようになる。
【0052】
ただし、エンジン1の停止開始時点での同エンジン1の運転状況によっては、図4(a)に破線で示されるように、吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に移行しきらなくなる場合がある。このような不都合が生じる状況としては、[従来の技術]の欄にも記載したように、エンジン低高温時のオイル粘度が高いとき、エンジン回転速度が低いとき、及びエンジン1の補機を駆動するための負荷が大きいとき等の状況があげられる。エンジン停止過程において、吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に移行しきらないと、図4(c)に破線で示されるようにロック機構15による固定を行えなくなり、吸気カムシャフト3の相対回転位相を所定進角状態で固定することができなくなる。その結果、次回のエンジン始動時には吸気バルブ5のバルブタイミング始動タイミングではない状態で、エンジン1の始動を行わなければならなくなり、エンジン1の始動性の低下を招くことになる。
【0053】
そこで本実施形態では、吸気カムシャフト3の相対回転位相を所定進角状態で遅角側についてのみ固定するストッパ機構16を設ける。そして、エンジン運転中、エンジン停止開始後に吸気カムシャフト3の相対回転位相を所定進角状態よりも進角側に変化させることの可能なエンジン運転状況にある旨判断されることを条件に、上記ストッパ機構16による固定の解除を許容する。
【0054】
この場合、エンジン運転中、エンジン停止開始後に吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に変化しきらない状況下では、ストッパ機構16による固定が解除されることはなく、当該相対回転位相の所定進角状態よりも遅角側への変更がストッパ機構16によって禁止されたままになる。そして、エンジン停止開始後に吸気カムシャフト3の相対回転位相を所定進角状態よりも進角側に変化させることの可能なエンジン運転状況になって始めてストッパ機構16による固定の解除が許容される。
【0055】
このことから、エンジン停止開始時に吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも遅角側になるのは、エンジン停止開始後に当該相対回転位相を所定進角状態よりも進角側に変更することが可能なときだけということになる。従って、エンジン停止開始後に吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に移行しきらないという不都合が生じることはなくなる。このため、エンジン停止過程で的確にロック機構15による固定を行うことができるようになり、次回のエンジン始動時には吸気カムシャフト3の相対回転位相を的確に所定進角状態としてエンジン1の始動を行うことができる。
【0056】
ここで、上記ストッパ機構16の構造について、図3を参照して詳しく説明する。
ストッパ機構16は、ベーン11に設けられてコイルスプリング33によりプレート14に向かって付勢されるストッパピン34と、プレート14に設けられてストッパピン34の先端が挿入される長穴35とを備えている。
【0057】
この長穴35においては、ベーン11の移動方向(図中左右方向)に延びるように形成され、その移動方向の長さがロック機構15の固定位置からのベーン11の進角側への最大移動量と同じ値か、それよりも大きい値に設定されている。また、長穴35は、吸気カムシャフトの相対回転位相が所定進角状態にあって、ロック機構15による固定が行われる位置にベーン11が存在しているとき、ストッパピン34の先端が長穴35の遅角側の端部(図中左端)に挿入されるよう形成されている。従って、ストッパピン34が長穴35に挿入されてストッパ機構16による固定が行われているときにも、ベーン11の進角側への移動に際してはストッパピン34の先端が長穴35内を進角側の端部(図中右端)まで移動可能となる。このため、ストッパ機構16による固定が行われているときにも、吸気カムシャフト3の相対回転位相を所定進角状態から最進角状態まで進角側に移行させることができる。
【0058】
一方、上記ストッパピン34及びコイルスプリング33は、ベーン11に形成された収容孔36内に配設されている。ストッパピン34の外周面にはフランジ34aが形成され、このフランジ34aにより収容孔36内においてストッパピン34の先端寄りの位置に油室37が区画形成されている。そして、油室37には給排通路38が接続され、同通路38はオイルスイッチングバルブ(OSV)39、供給通路21、及び排出通路40を介して、エンジン1のオイルパン23に繋がっている。なお、上記供給通路21は上記オイルポンプ24の下流側で二つに分岐しており、そのうちの一方がOSV39に接続されるとともに、他方が上記OCV20に接続されている。
【0059】
OSV39は、互いに逆方向に働くコイルスプリング42と電磁ソレノイド43の付勢力によって切換動作し、給排通路38に対する供給通路21と排出通路40との接続状態を変更するものである。このOSV39の駆動制御は、上記電子制御装置41を通じて、電磁ソレノイド43に対する電圧印可を制御することによって行われる。
【0060】
OSV39は、電磁ソレノイド43の消磁状態においては、給排通路38と排出通路40とを連通する。この場合、油室37内にあったオイルがオイルパン23内へ戻される。そして、ストッパピン34がコイルスプリング33の付勢力によってベーン11の収容孔36内から突出し、ストッパピン34の先端が長穴35に挿入されるようになる。
【0061】
また、電磁ソレノイド43が励磁されたときには、給排通路38と供給通路21とが連通する。この場合、オイルパン23内のオイルがオイルポンプ24により油室37へ送り出される。そして、油室37内のオイルの油圧により、ストッパピン34がコイルスプリング33の付勢力に抗して長穴35から抜き出され、ベーン11の収容孔36内に没入するようになる。
【0062】
次に、本実施形態におけるバルブタイミング制御装置の電気的構成について説明する。
バルブタイミング制御装置は、吸気バルブ5のバルブタイミング制御を行うべくOCV20を駆動制御するとともに、ストッパ機構16による固定及び固定解除を行うべくOSV39を駆動制御する上記電子制御装置41を備えている。この電子制御装置41には、以下に示される各種信号が入力される。
【0063】
・クランクシャフト2の回転に対応した信号を出力するクランクポジションセンサ44からの検出信号。
・吸気カムシャフト3の回転位置を検出するカムポジションセンサ45からの検出信号。
【0064】
・オイルポンプ24から吐出されるオイルの油圧を検出する油圧センサ46からの検出信号。
・オイルポンプ24から吐出されるオイルの油温を検出する油温センサ47からの検出信号。
【0065】
・エンジン1の冷却水温を検出する水温センサ48からの検出信号。
・エンジン1における吸入空気の温度を検出する吸気温センサ49からの検出信号。
【0066】
・自動車の運転者によるアクセルペダルの踏込量を検出するアクセルポジションセンサ50からの検出信号。
・エンジン1のスロットル開度を検出するスロットルポジションセンサ51からの検出信号。
【0067】
・自動車の運転者によるブレーキペダルの踏み込みの有無を検出するブレーキスイッチ53からの検出信号。
・自動車の走行速度を検出する車速センサ55からの検出信号。
【0068】
・自動変速機の変速態様を変更すべく自動車の運転者によって操作されるシフトレバーの操作位置に対応した信号を出力するシフトスイッチ56からの検出信号。
【0069】
・自動車に搭載された各種補機を駆動するための駆動回路57から出力される各種補機の駆動に対応した信号。
・エンジン1の吸気圧を検出するバキュームセンサ58からの検出信号。
【0070】
上記電子制御装置41は、エンジン回転速度及びエンジン負荷等に基づきOCV20を駆動し、吸気バルブ5のバルブタイミング制御を実行する。上記エンジン回転速度はクランクポジションセンサ44からの検出信号に基づき求められ、エンジン負荷は吸入空気量に関係するパラメータとエンジン回転速度とに基づき求められる。なお、吸入空気量に関係するパラメータとしては、吸気圧、スロットル開度、及びアクセル踏込量等を用いることができる。
【0071】
上述した吸気バルブ5のバルブタイミング制御として、通常は、最適なバルブタイミングが始動タイミングよりも進角側に存在することから、バルブタイミングの調整は始動タイミングよりも進角側の領域で行われることとなる。ただし、エンジン軽負荷時には燃費改善という観点から、またエンジン1に対する高出力要求時には出力向上の観点から、最適なバルブタイミングが始動タイミングよりも遅角側に移行する。そして、これら最適なバルブタイミングが得られるよう吸気バルブ5のバルブタイミング制御を行うことで、当該バルブタイミングが始動タイミングよりも遅角側の領域で調整されるようになる。
【0072】
なお、エンジン軽負荷時に吸気バルブ5のバルブタイミングを始動タイミングよりも遅角側とすることでエンジン1の燃費が改善するのは、当該バルブタイミング調整によって吸気バルブ5と排気バルブ6とのバルブオーバラップが小となって内部EGR量が減少し、燃焼が安定するためである。また、エンジン1に対する高出力要求時に吸気バルブ5のバルブタイミングを始動タイミングよりも遅角側とすることでエンジン1の出力が向上するのは、当該バルブタイミング調整によって吸気バルブ5の閉弁タイミングが吸気脈動を利用した吸気充填効率の向上に適したタイミングとなるためである。
【0073】
次に、ストッパ機構16による固定、及び当該固定解除の実行手順について、ストッパピン制御ルーチンを示す図5のフローチャートを参照して説明する。このストッパピン制御ルーチンは、電子制御装置41を通じて例えば所定時間毎の時間割り込みにて実行される。
【0074】
ストッパ制御ルーチンにおいては、エンジン運転中(S101:YES)、エンジン停止開始後に吸気カムシャフト3の相対回転位相を所定進角状態よりも進角側に変化させることの可能な状況であるか否かが判断される(S102)。こうした判断は、例えば以下に示される[1]〜[6]の各条件が全て成立しているか否かに基づき行われる。
【0075】
[1]オイルポンプ24から吐出されるオイルの油圧が所定値a以上であること。なお、所定値aは、吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも遅角側に存在した状態でのエンジン停止開始後に、進角側油圧室12へのオイル供給によって上記相対回転位相を所定進角状態よりも進角側に移行させることの可能な油圧の最低値に等しい値に設定される。
【0076】
[2]オイルポンプ24から吐出されるオイルの油温が低温領域及び高温領域を除く所定範囲内の値であること。なお、オイルの油温が所定値b未満の低温領域にあるときには、オイル粘度が高くなってオイルの流れる速度が緩やかになるため、オイルの油圧上昇に時間がかかって同油圧が低くなる傾向がある。また、オイルの油温が所定値c以上の高温領域にあるときには、オイル粘度が低くなって油圧回路からのオイル漏れが多くなることから、オイルの油圧上昇が妨げられて同油圧が低くなる傾向がある。上記所定範囲については、その下限及び上現がそれぞれ上述した所定値b,cに設定される。このように設定された所定範囲は、吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも遅角側に存在した状態でのエンジン停止開始後に、進角側油圧室12へのオイル供給によって上記相対回転位相を所定進角状態よりも進角側に移行させることの可能な油圧が得られる油温の範囲となる。
【0077】
[3]エンジン1の冷却水温が低温領域及び高温領域を除く所定範囲内の値であること。エンジン1の冷却水温は、上記オイルの油温に対応して変化するパラメータである。従って、エンジン1の冷却水温が上記所定値bに対応する値である所定値d未満となる低温領域にあるときには、オイル粘度が高くなってオイルの油圧が低くなる傾向がある。また、エンジン1の冷却水温が上記所定値cに対応する所定値e以上となる高温領域にあるときには、オイルの粘度が低くなってオイルの油圧が低くなる傾向がある。上記所定範囲については、その下限及び上限がそれぞれ上述した所定値d,eに設定される。このように設定された所定範囲は、吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも遅角側に存在した状態でのエンジン停止開始後に、進角側油圧室12へのオイル供給によって上記相対回転位相を所定進角状態よりも進角側に移行させることの可能な油圧が得られる冷却水温の範囲となる。
【0078】
[4]エンジン1の吸気温が低温領域及び高温領域を除く所定範囲内の値であること。エンジン1の吸気温は、上記オイルの油温及びエンジン1の冷却水温に影響を及ぼすパラメータである。従って、油温及び冷却水温がそれぞれ所定値b,d未満になる可能性のある吸気温である所定値f未満の低温領域まで当該吸気温が低下しているときには、オイル粘度が高くなってオイルの油圧が低くなる傾向がある。また、油温及び冷却水温がそれぞれ所定値c,e以上になる可能性のある吸気温である所定値g以上の高温領域まで当該吸気温が上昇しているときには、オイル粘度が低くなってオイルの油圧が低くなる傾向がある。上記所定範囲については、その下限及び上限がそれぞれ上述した所定値f,gに設定される。このように設定された所定範囲については、油温が所定値b〜所定値cの範囲に入る、また冷却水温が所定値d〜所定値eの範囲に入る吸気温の範囲となる。
【0079】
[5]エンジン回転速度が所定値h以上であること。エンジン回転速度は、オイルポンプ24からのオイル吐出量、即ち同ポンプ24から吐出されるオイルの油圧に関係するパラメータである。また、エンジン停止開始時点でのエンジン回転速度は、エンジン停止開始からエンジン回転速度が「0(エンジン停止完了)」になるまでの時間に関係するパラメータでもある。従って、エンジン回転速度が低いほど、吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも遅角側に存在した状態でのエンジン停止開始後に、進角側油圧室12へのオイル供給によって上記相対回転位相を所定進角状態よりも進角側に移行させることができなくなる可能性が高い。上記所定値hは、エンジン1の停止過程において、進角側油圧室12へのオイル供給によって吸気カムシャフト3の相対回転位相を所定進角状態よりも進角側に移行させることの可能なエンジン回転速度の最低値に等しい値に設定される。
【0080】
[6]エンジン1によって駆動される各種補機による駆動抵抗が所定値j未満であること。この駆動抵抗が所定値j未満であるか否かは、駆動回路57からの信号によって分かる各種補機の駆動状態に基づき判断することができる。エンジン1の各種補機による駆動抵抗が大になるほど、吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも遅角側に存在した状態でのエンジン停止開始後に、進角側油圧室12へのオイル供給によって上記相対回転位相を所定進角状態よりも進角側に移行させる前にエンジン回転が停止する可能性が高い。これは、エンジン1の各種補機による駆動抵抗が大になるほど、エンジン1の回転抵抗(機関回転抵抗)が大となり、エンジン停止開始からエンジン回転速度が「0」になるまでの時間が短くなるためである。上記所定値jは、エンジン1の停止過程において進角側油圧室12へのオイル供給により吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に変化する前にエンジン回転が停止する上記各種補機の駆動抵抗に等しい値に設定される。
【0081】
以上の[1]〜[6]の各条件のうち、成立していないものが一つでもある場合には(S102:NO)、エンジン停止開始後に吸気カムシャフト3の相対回転位相を所定進角状態よりも進角側に変化させることのできないエンジン運転状況である旨判断され、ステップS105に進む。このステップS105では、ストッパピン34が長穴35内に突出させられ、ストッパ機構16による固定を実行した状態とされる。
【0082】
一方、[1]〜[6]の各条件が全て成立すると(S102:YES)、エンジン停止開始後に吸気カムシャフト3の相対回転位相を所定進角状態よりも進角側に変化させることの可能なエンジン運転状況である旨判断され、ステップS103に進む。そして、ステップS103の処理ではストッパ機構16による固定の解除を許容し、続くステップS104の処理でストッパピン34が長穴35から抜き出されて収容孔36内に没入した状態とされる。こうしてストッパ機構16による固定が解除される。
【0083】
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)エンジン運転中、エンジン停止開始後に吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に変化しきらないエンジン運転状況下では、エンジン運転中にストッパ機構16による固定が解除されることはない。この状態にあっては、当該相対回転位相の所定進角状態よりも遅角側への変化がストッパ機構16によって禁止されたままになる。そして、エンジン停止開始後に吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に変化させることの可能なエンジン運転状況になって始めてストッパ機構16による固定の解除が許容され、ストッパピン34が長穴35から抜き出される。このことから、エンジン停止開始時に吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも遅角側になるのは、エンジン停止開始後に当該相対回転位相を所定進角状態よりも進角側に変更することが可能なときだけということになる。従って、エンジン停止開始後に吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に移行しきらないという不都合が生じることはなくなる。このため、エンジン停止過程で的確にロック機構15による固定を行うことができるようになり、次回のエンジン始動時には吸気カムシャフト3の相対回転位相を的確に所定進角状態としてエンジン1の始動を行うことができる。
【0084】
(2)エンジン停止開始後に吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に変化しきらないエンジン運転状況としては、オイルポンプ24から吐出されるオイルの油圧が所定値a未満になる状況があげられる。このような状況では、ストッパ機構16による固定が維持されて吸気カムシャフト3の相対回転位相の所定進角状態よりも遅角側への変化が禁止される。これにより、エンジン停止開始後に吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に移行しきらないという状況が生じるのを抑制することができる。
【0085】
(3)オイルポンプ24から吐出されるオイルの油圧に関係するパラメータとしては、同オイルの油温、エンジン1の冷却水温や吸気温、及びエンジン回転速度といったものがあげられる。そして、これらパラメータに基づいて、エンジン停止開始後に吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に変化させることのできる油圧を確保可能か否かが判断される(条件[2]〜[5])。同判断の結果として、上記油圧を確保できない旨の判断がなされる場合、即ち条件[2]〜[5]の少なくとも一つが不成立である場合には、ストッパ機構16による固定が維持されて吸気カムシャフト3の相対回転位相の所定進角状態よりも遅角側への変化が禁止される。これにより、エンジン停止開始後に吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に移行しきらないという状況が生じるのを抑制することができる。
【0086】
(4)また、エンジン回転速度が所定値h未満である状況や、各種補機による駆動抵抗が所定値j以上である状況も、エンジン停止開始後に吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に変化しきらないエンジン運転状況ということになる。これらの状況のもとで上記相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に移行しきらないのは、エンジン停止開始からエンジン回転速度が「0」になるまでの時間が短いためである。そして、これらの状況のもとでは、ストッパ機構16による固定が維持されて吸気カムシャフト3の相対回転位相の所定進角状態よりも遅角側への変化が禁止される。これにより、エンジン停止開始後に吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に移行しきらないという状況が生じるのを抑制することができる。
【0087】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を図6に基づき説明する。
図6は、本実施形態におけるストッパピン制御ルーチンを示すフローチャートである。
【0088】
このストッパピン制御ルーチンにおいては、エンジン運転中(S201:YES)、エンジン停止開始されることのないエンジン運転状況にあるか否かが判断される(S202)。ここで、否定判定であれば、ストッパピン34が長穴35内に突出させられ、ストッパ機構16による固定を実行した状態とされる(S205)。また、肯定判定であれば、ストッパ機構16による固定の解除が許容され(S206)、ストッパピン34が長穴35から抜き出されて収容孔36内に没入した状態とされる(S207)。こうしてストッパ機構16による固定が解除される。
【0089】
上記ステップS202での判断は、例えば以下に示される[7]〜[11]の各条件が全て成立しているか否かに基づき行われる。
[7]スロットル開度が最小値よりも大きい値であること。このときにはエンジン1に対する出力要求がなされており、エンジン1が停止開始される可能性はほとんどない状況である。
【0090】
[8]アクセル踏込量が最小値よりも大きい値であること。このときにはエンジン1に対する出力要求がなされており、エンジン1が停止開始される可能性はほとんどない状況である。
【0091】
[9]ブレーキペダルの踏み込みがなされていないこと。アクセルペダルの踏み込み等に基づくエンジン1への出力要求がなされているときには、ブレーキペダルが踏み込まれていないことになる。このため、ブレーキペダルが踏み込まれていないときには、アクセルペダルの踏み込み等に基づくエンジン1への出力要求がなされている可能性が高くなる。
【0092】
[10]車速が「0」又はそれに近い値ではないこと。このときには自動車が走行している最中であることから、エンジン1が停止開始される可能性がほとんどない状況ということになる。
【0093】
[11]シフトレバーの操作位置がニュートラルポジション及びパーキングポジションにはないこと。自動車の走行中にはシフトレバーの操作位置がドライブポジションなどニュートラルポジション及びパーキングポジション以外の位置になることから、同レバーがパーキングポジション及びニュートラルポジションでないときには、車速が「0」又はそれに近い値ではない可能性が高くなる。
【0094】
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(5)エンジン停止開始される可能性のあるエンジン運転状況下では(S202:NO)、エンジン運転中にストッパ機構16による固定が解除されることはなく、吸気カムシャフト3の相対回転位相の所定進角状態から遅角側への変更がストッパ機構16によって禁止されたままになる。そして、エンジン停止開始される可能性のないエンジン運転状況になって(S202:YES)始めてストッパ機構16による固定の解除が許容され、ストッパピン34が長穴35から抜き出される。このことから、エンジン停止開始時に吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも遅角側にあるという状況は生じ得ないものとなる。従って、エンジン停止開始後に吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に移行しきらないという不都合が生じることはなくなる。このため、エンジン停止過程で的確にロック機構15による固定を行うことができるようになり、次回のエンジン始動時には吸気カムシャフト3の相対回転位相を的確に所定進角状態としてエンジン1の始動を行うことができる。
【0095】
(6)エンジン1が停止開始される可能性のあるエンジン運転状況としては、エンジン1に対する出力要求がなされていない状況があげられる。同出力要求がなされている旨の判断については、スロットル開度が最小値よりも大きいこと、アクセル踏込量が最小値よりも大きいこと、及びブレーキペダルの踏み込みがないこと等に基づき行われる(条件[7]〜[9])。従って、これらのような状況でないことに基づきエンジン1に対する出力要求がなされていない旨判断される場合には、エンジン1が停止開始される可能性があることから、ストッパ機構16による固定が維持されて吸気カムシャフト3の相対回転位相の所定進角状態よりも遅角側への変化が禁止される。これにより、エンジン停止開始後に吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に移行しきらないという状況が生じるのを抑制することができる。
【0096】
(7)エンジン1が停止開始される可能性のあるエンジン運転状況としては、車速が「0」又はそれに近い値となっている状況があげられる。このような状況下では、ストッパ機構16による固定が維持されて吸気カムシャフト3の相対回転位相の所定進角状態よりも遅角側への変化が禁止される。これにより、エンジン停止開始後に吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に移行しきらないという状況が生じるのを抑制することができる。
【0097】
(8)また、シフトレバーの操作位置がニュートラルポジション及びパーキングポジションにないときには、自動車の走行中である可能性が高く、車速が「0」又はそれに近い値ではない可能性が高い。従って、車速が「0」又はそれに近い値ではない旨の判断については、車速を直接的にモニタする他に、シフトレバーの操作位置がニュートラルポジション及びパーキングポジションにはない旨の判断に基づき行うこともできる(条件[11])。そして、同判断の結果として、車速が「0」又はそれに近い値である旨の判断がなされた場合には、ストッパ機構16による固定が維持されて吸気カムシャフト3の相対回転位相の所定進角状態よりも遅角側への変化が禁止される。これにより、エンジン停止開始後に吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に移行しきらないという状況が生じるのを抑制することができる。
【0098】
なお、上記各実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・第1実施形態においては、エンジン停止開始後に吸気カムシャフト3の相対回転位相を所定進角状態よりも進角側に変化させることの可能な状況であるか否かを判断するための条件として、上記[1]〜[6]に示される合計六つの条件を例示したが、これら各条件のうちの一つ又は複数だけを用いてもよい。なお、第1実施形態のように[1]〜[6]に示される六つの条件全てを用いれば、一層的確な判断を行うことができる。
【0099】
・第1実施形態においては、上記[1]〜[6]の各条件のうちの一つでも不成立であれば、エンジン停止開始後に吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に変化しきらない状況である旨判断したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記各条件のうちの一つのみ又は任意の複数のみが成立していないだけのときには、エンジン停止開始後に吸気カムシャフトの相対回転位相を所定進角状態に変化させることの可能な状況である旨の判断をするようにしてもよい。
【0100】
・第1実施形態において、条件[1]で用いられる所定値aを、より大きい値に設定してもよい。
・第1実施形態において、条件[2]で用いられる所定範囲の下限値である所定値bをより大きい値に設定したり、同所定範囲の上限値である所定値cをより小さい値に設定したりしてもよい。
【0101】
・第1実施形態において、条件[3]で用いられる所定範囲の下限値である所定値dをより大きい値に設定したり、同所定範囲の上限値である所定値eをより大きい値に設定したりしてもよい。
【0102】
・第1実施形態において、条件[4]で用いられる所定範囲の下限値である所定値fをより大きい値に設定したり、同所定範囲の上限値である所定値gをより大きい値に設定したりしてもよい。
【0103】
・第1実施形態において、条件[5]で用いられる所定値hを、より大きい値に設定してもよい。
・第1実施形態において、条件[6]で用いられる所定値iを、より小さい値に設定してもよい。
【0104】
・第2実施形態においては、エンジン停止開始されることのないエンジン運転状況にあるか否かを判断するための条件として、上記[7]〜[11]に示される合計五つの条件を例示したが、これら各条件の一つ又は複数だけを用いてもよい。なお、第2実施形態のように[7]〜[11]に示される五つの条件全てを用いれば、一層的確な判断を行うことができる。
【0105】
・第2実施形態においては、上記[7]〜[11]の各条件のうちの一つでも不成立であれば、エンジン1が停止開始される可能性のある状況である旨判断したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記各条件のうちの一つのみ又は任意の複数のみが成立していないだけのときには、エンジン1が停止開始されることのない状況である旨の判断をするようにしてもよい。
【0106】
・エンジン運転中にストッパ機構16による固定の解除を許容するか否かを判断するに当たり、第1実施形態のストッパピン制御ルーチン(図5)におけるステップS102の判断と、第2実施形態のストッパピン制御ルーチン(図6)におけるステップS202の判断との両方を行うようにしてもよい。
【0107】
・第1及び第2実施形態では、ストッパ機構16による固定の解除が許容されたとき(S103,S203)、ストッパピン34を長穴35から抜き出してストッパ機構16による固定を解除したが(S103,S104)、本発明はこれに限定されない。例えば、ストッパ機構16による固定の解除が許容された後、エンジン軽負荷時やエンジン1に対する高出力要求時など、実際に吸気カムシャフト3の相対回転位相を所定進角状態よりも遅角側とすべき状況になってから、ストッパ機構16による固定を解除するようにしてもよい。この場合、吸気カムシャフト3の相対回転位相を実際に所定進角状態よりも遅角側に移行させるべき状況になって始めてストッパ機構16による固定が解除される。このため、同固定の解除が誤って行われて吸気カムシャフト3の相対回転位相が誤って所定進角状態よりも遅角側に変化してしまう可能性を極力排除することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態のバルブタイミング制御装置が適用されるエンジン全体を示す略図。
【図2】バルブタイミング可変機構の内部構造を示す略図。
【図3】図2のバルブタイミング可変機構を矢印A−A方向から見た状態を模式的に示すとともに、同バルブタイミング可変機構へのオイル供給を行うための油圧回路を示す図。
【図4】(a)〜(c)は、エンジン停止開始後における吸気カムシャフトの相対回転位相が所定進角状態よりも遅角側にある状態からのエンジン停止開始後における当該相対回転位相の変化態様、エンジン回転速度の変化態様、並びに、ロック機構における固定及び固定解除の実行態様を示すタイムチャート。
【図5】第1実施形態におけるストッパ機構による固定、及び当該固定解除の実行手順を示すフローチャート。
【図6】第2実施形態におけるストッパ機構による固定、及び当該固定解除の実行手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
1…エンジン、2…クランクシャフト、3…吸気カムシャフト、4…排気カムシャフト、5…吸気バルブ、6…排気バルブ、7…バルブタイミング可変機構、8…ロータ、9…ギヤ、10…リングカバー、11…ベーン、12…進角側油圧室、13…遅角側油圧室、14…プレート、15…ロック機構(ロック手段)、16…ストッパ機構(ストッパ手段)、17…ばね、18…進角側油路、19…遅角側油路、20…オイルコントロールバルブ(OCV)、21…供給通路、22…排出通路、23…オイルパン、24…オイルポンプ、25…コイルスプリング、26…電磁ソレノイド、27…コイルスプリング、28…ロックピン、28a…フランジ、29…穴、30…収容孔、31,32…油室、33…コイルスプリング、34…ストッパピン、34a…フランジ、35…長穴、36…収容孔、37…油室、38…給排通路、39…オイルスイッチングバルブ(OSV)、40…排出通路、41…電子制御装置(制御手段)、42…コイルスプリング、43…電磁ソレノイド、44…クランクポジションセンサ、45…カムポジションセンサ、46…油圧センサ、47…油温センサ、48…水温センサ、49…吸気温センサ、50…アクセルポジションセンサ51…スロットルポジションセンサ、53…ブレーキスイッチ、55…車速センサ、56…シフトスイッチ、57…駆動回路、58…バキュームセンサ。
【発明の属する技術分野】
本発明は、車載内燃機関のバルブタイミング制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、自動車用エンジン等の車載内燃機関にあっては、出力向上や燃費改善等を意図して、同機関のバルブタイミングを適宜変更するバルブタイミング可変機構が設けられている。こうしたバルブタイミング可変機構は、例えば車載内燃機関の吸気カムシャフトに連結された可動部材と、可動部材を挟むように設けられた進角側圧力室及び遅角側圧力室とを備えている。そして、それら圧力室に選択的にオイルを供給して油圧で可動部材を移動させることにより、同機関のクランクシャフトに対するカムシャフトの相対回転位相を進遅角させる。このようにカムシャフトの相対回転位相を変更することにより、同機関における吸気バルブのバルブタイミングが変更されるようになる。
【0003】
ところで、内燃機関の始動開始時には、圧力室からオイルが抜けた状態になっており、機関始動開始と同時に圧力室にオイルを供給し始めても、可動部材が油圧により移動可能となるのに所定の時間を要する。そのため、この場合は、吸気バルブのバルブタイミングを制御することができなくなるとともに、可動部材に油圧が働かないことから、吸気バルブの開閉駆動に伴う反力によってカムシャフトの相対回転位相(バルブタイミング)が最遅角状態となる。従って、内燃機関の始動性を良好なものとするためには、吸気バルブのバルブタイミングが最遅角状態になったとき、機関始動に適したバルブタイミング(以下、始動タイミングという)が得られるよう同バルブタイミングの制御範囲を設定する必要が生じる。なお、この始動タイミングとは、圧縮行程中に機関始動に適した混合気の圧縮を行うことが可能なバルブタイミングである。
【0004】
しかし、上記のような要求が満たされるようにバルブタイミングの制御範囲を設定すると、その制御範囲の遅角限界が始動タイミングまでに制限されため、バルブタイミングの制御範囲が狭くなって内燃機関の全運転領域に亘ってバルブタイミングを最適に制御することが困難になる。そこで、機関始動時のバルブタイミングを最適にしつつ、バルブタイミング制御の制御範囲の縮小を抑制する技術として、機関始動時にはカムシャフトの相対回転位相を最遅角状態よりも所定量だけ進角した状態である所定進角状態で固定することが提案されている。
【0005】
例えば、カムシャフトの相対回転位相を所定進角状態で進角側と遅角側との両方について固定可能なロック機構を設け、同機構によりカムシャフトの相対回転位相が固定される状態のとき、バルブタイミングが始動タイミングとなるようにバルブタイミング制御の制御範囲を設定する。この場合、ロック機構によってカムシャフトの相対回転位相が固定されているときには、圧力室にオイルが満たされていなくてもバルブタイミングを始動タイミングに維持することが可能になる。そのため、機関始動中においては、上記ロック機構による固定がなされた状態とすることで、内燃機関の始動性が良好なものとされる。
【0006】
上記ロック機構による固定を実現するため、内燃機関が停止開始されたときにカムシャフトの相対回転位相が所定進角状態よりも遅角側にある場合には、特許文献1に示されるように当該相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に変更させられる。そして、その後の内燃機関の自立運転停止過程で、所定進角状態よりも進角したカムシャフトの相対回転位相が、吸気バルブの開閉駆動に伴う反力によって遅角して所定進角状態とされ、その状態でロック機構による固定が行われる。なお、機関始動中に圧力室にオイルが満たされると、ロック機構による固定を解除することが可能となり、同固定の解除によってカムシャフトの相対回転位相の変更によるバルブタイミング制御が可能になる。このバルブタイミング制御では、バルブタイミングを始動タイミングよりも遅角側に制御することができるようになる。
【0007】
上記のようにロック機構を設けるとともに、機関始動時に同機構による固定及び固定解除を実現することで、機関始動時にバルブタイミングを始動タイミングに保持しつつ、機関始動後におけるバルブタイミング制御の制御範囲の縮小を抑制することができる。
【0008】
【特許文献1】
特開2002−213262公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、機関停止開始後においては、内燃機関の自立運転が停止されて機関回転速度が徐々に低下してゆくことになる。バルブタイミング可変機構の圧力室に供給されるオイルは、内燃機関の回転に基づき駆動されるオイルポンプから吐出されるものであるため、上記機関回転速度の低下に伴いオイルポンプのオイル吐出量も徐々に低下してゆく。機関停止開始時にカムシャフトの相対回転位相が所定進角状態よりも遅角側にあって、機関停止開始後にカムシャフトの相対回転位相を所定進角状態よりも進角させるときには、上記オイルポンプからのオイルが進角側圧力室に供給されることになる。しかし、機関停止開始時点での機関運転状況によっては、カムシャフトの相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に移行しきらなくなる場合がある。
【0010】
このような不都合が生じる機関運転状況としては、例えば以下に示すものがあげられる。
・低温時であってオイル粘度が高いとき。この場合、機関停止過程で進角側圧力室にオイルを供給しようとしても、そのオイル粘度が高いことに起因してオイルの流れが悪くなり油圧の上昇に時間がかかることから、カムシャフトの相対回転位相を所定進角状態よりも進角側に変化させる上で必要なオイルの油圧が得られなくなる。従って、カムシャフトの相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に移行しきらなくなる。
【0011】
・高温時であってオイル粘度が低いとき。この場合、機関停止過程で進角側圧力室にオイルを供給しようとしても、オイル粘度が低いことに起因して供給途中でのオイルの漏れが多くなることから、カムシャフトの相対回転位相を所定進角状態よりも進角側に変化させる上で必要なオイルの油圧が得られなくなる。従って、カムシャフトの相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に移行しきらなくなる。
【0012】
・機関回転速度が低いとき。この場合、オイルポンプからのオイルの吐出量が少なくなってカムシャフトの相対回転位相を進角させるための油圧が低くなるとともに、機関停止開始後に機関回転速度が「0」になるまでの期間が短くなることからカムシャフトの相対回転位相を進角させることの可能な期間も短くなる。従って、カムシャフトの相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に移行しきらなくなる。
【0013】
・内燃機関における補機を駆動するための負荷が大きいとき。この場合、内燃機関により駆動される補機の駆動抵抗が大であることから、機関停止開始後に機関回転速度が速やかに「0」になり、機関停止開始後に機関回転速度が「0」になるまでの期間が短くなる。このため、機関停止過程において、カムシャフトの相対回転位相を進角させることの可能な期間が短くなり、当該相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に移行しきらなくなる。
【0014】
以上のような機関運転状況が原因で、機関停止開始後にカムシャフトの相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に移行しきらないと、機関回転速度が「0」になったときにも、当該相対回転位相が所定進角状態よりも遅角側の状態のままになる。この場合、カムシャフトの相対回転位相をロック機構によって所定進角状態で固定することができなくなり、次回の機関始動時にはバルブタイミングが始動タイミングでない状態で内燃機関の始動を行わなければならず、内燃機関の始動性低下を招くこととなる。
【0015】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、機関停止過程でカムシャフトの相対回転位相を所定進角状態に固定することができなくなり、次回の機関始動時にカムシャフトの相対回転位相が所定進角状態からずれた状態になるのを抑制することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明では、車載内燃機関のクランクシャフトに対するカムシャフトの相対回転位相を進遅角させるバルブタイミング可変機構と、前記カムシャフトの相対回転位相を最遅角状態よりも所定量だけ進角した所定進角状態で進角側と遅角側との両方について固定可能なロック手段とを備え、前記カムシャフトの相対回転位相が前記所定進角状態よりも遅角側にあって同機関が停止開始したとき、当該相対回転位相が前記所定進角状態よりも進角側に向けて変更されるよう前記バルブタイミング可変機構を制御する車載内燃機関のバルブタイミング制御装置において、前記カムシャフトの相対回転位相を前記所定進角状態で遅角側についてのみ固定するストッパ手段と、機関運転中、機関停止開始後に前記カムシャフトの相対回転位相が前記所定進角状態よりも進角側に変化させることの可能な機関運転状況にある旨判断されることを条件に、前記ストッパ手段による固定の解除を許容する制御手段とを備えた。
【0017】
上記構成によれば、機関停止開始後に前記カムシャフトの相対回転位相が前記所定進角状態よりも進角側に変化しきらない機関運転状況下では、機関運転中にストッパ手段による固定が解除されることはなく、当該相対回転位相の所定進角状態よりも遅角側への変更がストッパ手段によって禁止されたままになる。そして、機関停止開始後に前記カムシャフトの相対回転位相を前記所定進角状態よりも進角側に変化させることの可能な機関運転状況になって始めてストッパ手段による固定の解除が許容される。このことから、機関停止開始時にカムシャフトの相対回転位相が所定進角状態よりも遅角側になるのは、機関停止開始後にカムシャフトの相対回転位相を所定進角状態よりも進角側に変更することが可能なときだけということになる。従って、機関停止開始後にカムシャフトの相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に移行しきらないという不都合が生じることはなくなる。このため、機関停止過程で的確にロック機構による固定を行うことができるようになり、次回の機関始動時にはカムシャフトの相対回転位相を的確に所定進角状態として内燃機関の始動を行うことができる。
【0018】
請求項2記載の発明では、請求項1記載の発明において、前記バルブタイミング可変機構は、オイルの供給を受けて油圧駆動されるものであって、前記制御手段は、機関運転中にあって、前記オイルの油圧が機関停止開始後に前記カムシャフトの相対回転位相を前記所定進角状態よりも進角側に変化させることの可能な所定値以上である旨判断されるとき、前記ストッパ手段による固定の解除を許容するものとした。
【0019】
上記油圧が機関停止開始後に前記カムシャフトの相対回転位相を前記所定進角状態よりも進角側に変化させることの可能な所定値未満である旨判断されるときには、機関停止開始後に前記カムシャフトの相対回転位相が前記所定進角状態よりも進角側に変化しきらない機関運転状況にあることになる。このような状況下ではストッパ手段による固定が維持される。これにより、機関停止開始後にカムシャフトの相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に移行しきらないという状況が生じるのを抑制することができる。
【0020】
なお、上記油圧が所定値以上であるか、或いは所定値未満であるかの判断については、同油圧を直接検出して行ってもよいし、同油圧に関係するパラメータを用いて行ってもよい。こうしたパラメータとしては、例えばオイルの油温、内燃機関の冷却水温や吸気温をあげることができる。また、バルブタイミング可変機構が車載内燃機関の回転に基づき駆動されるオイルポンプから吐出されるオイルの油圧によって駆動されるものである場合は、機関回転速度を上記パラメータとして用いることも可能である。
【0021】
請求項3記載の発明では、請求項1記載において、前記制御手段は、機関運転中であって、機関回転速度が機関停止開始後に前記カムシャフトの相対回転位相を前記所定進角状態よりも進角側に変化させる前に機関回転が停止する所定値以上である旨判断されるとき、前記ストッパ手段による固定の解除を許容するものとした。
【0022】
機関回転速度が、機関停止開始後に前記カムシャフトの相対回転位相を前記所定進角状態よりも進角側に変化させる前に機関回転が停止する所定値未満である旨判断されるときには、機関停止開始後に前記カムシャフトの相対回転位相が前記所定進角状態よりも進角側に変化しきらない機関運転状況にあることになる。このような状況下ではストッパ手段による固定が維持される。これにより、機関停止開始後にカムシャフトの相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に移行しきらないという状況が生じるのを抑制することができる。
【0023】
請求項4記載の発明では、請求項1記載の発明において、前記制御手段は、機関運転中であって、機関回転抵抗が機関停止開始後に前記カムシャフトの相対回転位相を前記所定進角状態よりも進角側に変化させる前に機関回転が停止する所定値未満である旨判断されるとき、前記ストッパ手段による固定の解除を許容するものとした。
【0024】
機関回転抵抗が、機関停止開始後に前記カムシャフトの相対回転位相を前記所定進角状態よりも進角側に変化させる前に機関回転が停止する所定値以上である旨判断されるときには、機関停止開始後に前記カムシャフトの相対回転位相が前記所定進角状態よりも進角側に変化しきらない機関運転状況にあることになる。このような状況下ではストッパ手段による固定が維持される。これにより、機関停止開始後にカムシャフトの相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に移行しきらないという状況が生じるのを抑制することができる。
【0025】
なお、上記機関回転抵抗としては、例えば車載内燃機関によって駆動される補機の駆動抵抗をあげることができる。
請求項5記載の発明では、車載内燃機関のクランクシャフトに対するカムシャフトの相対回転位相を進遅角させるバルブタイミング可変機構と、前記カムシャフトの相対回転位相を最遅角状態よりも所定量だけ進角した所定進角状態で進角側と遅角側との両方について固定可能なロック手段とを備え、前記カムシャフトの相対回転位相が前記所定進角状態よりも遅角側にあって同機関が停止開始したとき、当該相対回転位相が前記所定進角状態よりも進角側に向けて変更されるよう前記バルブタイミング可変機構を制御する車載内燃機関のバルブタイミング制御装置において、前記カムシャフトの相対回転位相を前記所定進角状態で遅角側についてのみ固定するストッパ手段と、機関運転中、機関停止開始されることのない機関運転状況にある旨判断されることを条件に、前記ストッパ手段による固定の解除を許容する制御手段とを備えた。
【0026】
上記構成によれば、機関停止開始される可能性のある機関運転状況下では、機関運転中にストッパ手段による固定が解除されることはなく、カムシャフトの相対回転位相の所定進角状態よりも遅角側への変更がストッパ手段によって禁止されたままになる。そして、機関停止開始される可能性のない機関運転状況になって始めてストッパ手段による固定の解除が許容される。このことから、機関停止開始時にカムシャフトの相対回転位相が所定進角状態よりも遅角側にあるという状況は生じ得ないものとなる。従って、機関停止開始後にカムシャフトの相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に移行しきらないという不都合が生じることはなくなる。このため、機関停止過程で的確にロック機構による固定を行うことができるようになり、次回の機関始動時にはカムシャフトの相対回転位相を的確に所定進角状態として内燃機関の始動を行うことができる。
【0027】
請求項6記載の発明では、請求項5記載の発明において、前記制御手段は、機関出力要求のある旨判断されるとき、前記ストッパ手段による固定の解除を許容するものとした。
【0028】
機関出力要求がない旨判断されるときには、機関停止開始される可能性のある機関運転状況にあることになる。このような状況下ではストッパ手段による固定が維持されるため、機関停止開始時にカムシャフトの相対回転位相が所定進角状態よりも遅角側にあるという状況は生じ得ないものとなる。従って、機関停止開始後にカムシャフトの相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に移行しきらないという状況が生じるのを抑制することができる。
【0029】
なお、上記機関出力要求がなされているか否かの判断については、例えば車載内燃機関のスロットル開度やアクセル操作量が最小値以外の値であるか否か、またブレーキ操作がなされているか否か等に基づき行うことが可能である。
【0030】
請求項7記載の発明では、請求項5記載の発明において、前記制御手段は、車速が「0」又はそれに近い値でない旨判断されるとき、前記ストッパ手段による固定の解除を許容するものとした。
【0031】
車速が「0」又はそれに近い値である旨判断されるときには、機関停止開始される可能性のある機関運転状況にあることになる。このような状況下ではストッパ手段による固定が維持されるため、機関停止開始時にカムシャフトの相対回転位相が所定進角状態よりも遅角側にあるという状況は生じ得ないものとなる。従って、機関停止開始後にカムシャフトの相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に移行しきらないという状況が生じるのを抑制することができる。
【0032】
なお、上記車速が「0」又はそれに近い値ではないか否かの判断については、例えば車速センサ等からの検出信号に基づき行うことや、車載内燃機関に連結される変速機の変速態様を変更するためのシフトレバーの操作位置がニュートラルポジション及びパーキングポジションにない状態か否かに基づき行うことが可能である。
【0033】
【発明の実施の形態】
[第1実施形態]
以下、本発明を自動車用エンジンに適用した第1実施形態を図1〜図5に従って説明する。
【0034】
図1に示されるエンジン1においては、その駆動に伴うクランクシャフト2の回転が自動車に搭載される各種補機に伝達されるとともに、自動変速機等の変速機を介して自動車の車輪に伝達される。こうした回転伝達に基づき、自動車が走行したり各種補機が駆動したりするようになる。
【0035】
また、エンジン1の駆動に伴うクランクシャフト2の回転は吸気カムシャフト3及び排気カムシャフト4に伝達され、これらカムシャフト3,4の回転に基づき吸気バルブ5及び排気バルブ6が開閉動作する。吸気カムシャフト3には、吸気バルブ5のバルブ特性としてバルブタイミング(開閉タイミング)を変更すべく、クランクシャフト2に対する吸気カムシャフト3の相対回転位相を変更するバルブタイミング可変機構7が設けられている。このバルブタイミング可変機構7の内部構造を図2に示す。
【0036】
同装置7は、吸気カムシャフト3の軸線上に設けられて同シャフト3に固定されるロータ8と、ロータ8と同軸上に設けられてクランクシャフト2に対しチェーン等を介して連結されるギヤ9と、ロータ8と同軸上で同ロータ8の周りを囲うように設けられてギヤ9に固定されるリングカバー10とを備えている。ロータ8の外周部には複数のベーン11が突出形成され、これらベーン11によりリングカバー10内が進角側油圧室12と遅角側油圧室13とに区画されている。
【0037】
こうしたバルブタイミング可変機構7にあって、進角側油圧室12に油路を通じて作動油が供給されると、その作動油の油圧に基づきロータ8がギヤ9及びリングカバー10に対し図中左方向に相対回転しながら、遅角側油圧室13内の作動油が油路を通じて排出されるようになる。上記ロータ8の左方向への相対回転により、クランクシャフト2に対する吸気カムシャフト3の相対回転位相が進角側に変化し、吸気バルブ5のバルブタイミングが進角する。
【0038】
また、遅角側油圧室13に油路を通じて作動油が供給されると、その作動油の油圧に基づきロータ8がギヤ9及びリングカバー10に対し図中右方向に相対回転しながら、進角側油圧室12内の作動油が油路を通じて排出されるようになる。上記ロータ8の右方向への相対回転位相により、クランクシャフト2に対する吸気カムシャフト3の相対回転位相が遅角側に変化し、吸気バルブ5のバルブタイミングが遅角する。
【0039】
バルブタイミング可変機構7には、吸気カムシャフト3の相対回転位相を最遅角状態よりも所定量だけ進角した所定進角状態で固定可能なロック機構15が設けられている。このロック機構15による固定が行われているときには、吸気バルブ5のバルブタイミングがエンジン1の始動に適したタイミング(以下、始動タイミングという)となる。即ち、吸気カムシャフト3の相対回転位相を上記所定進角状態としたとき、吸気バルブ5のバルブタイミングが上記始動タイミングとなるよう、同バルブタイミングの制御範囲が予め設定されている。
【0040】
次に、バルブタイミング可変機構7へのオイル供給構造、及び上記ロック機構15の詳細な構造について図3を参照して説明する。同図は、図2のバルブタイミング可変機構7及びロック機構15を矢印A−A方向から見た状態を模式的に示すとともに、バルブタイミング可変機構7へのオイル供給を行うための油圧回路を示すものである。
【0041】
バルブタイミング可変機構7において、ロック機構15が設けられるベーン11は、ギヤ9、リングカバー10、及びプレート14等によって囲われた状態となっている。そして、それらギヤ9、リングカバー10、及びプレート14等の内側に、上記ベーン11によって区画された進角側油圧室12及び遅角側油圧室13が形成されている。また、バルブタイミング可変機構7には、吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態に向けて進角側(図中右側)に変化するよう、上記ベーン11(ロータ8)を進角側に付勢するばね17が設けられている。
【0042】
バルブタイミング可変機構7へのオイル供給を行う油圧回路は、進角側油圧室12に接続される進角側油路18と、遅角側油圧室13に接続される遅角側油路19とを備えている。そして、これら油路18,19は、オイルコントロールバルブ(OCV)20、供給通路21、及び排出通路22を介して、エンジン1のオイルパン23に繋がっている。
【0043】
上記供給通路21には、クランクシャフト2に連結されて同シャフト2の回転に基づき駆動されるオイルポンプ24が設けられている。また、上記OCV20は、互いに逆方向に働くコイルスプリング25及び電磁ソレノイド26の付勢力によって切換動作し、供給通路21及び排出通路22と進角側油路18及び遅角側油路19との接続状態を変更する。このOCV20の駆動制御は、エンジン1等の運転制御を行うべく自動車に搭載された電子制御装置41を通じて、電磁ソレノイド26に対する電圧印可を制御することによって行われる。
【0044】
OCV20は、電磁ソレノイド26の消磁状態においては、遅角側油路19と供給通路21とを連通するとともに、進角側油路18と排出通路22とを連通する。この場合、オイルパン23内のオイルがオイルポンプ24により遅角側油圧室13へ送り出されるとともに、進角側油圧室12内にあったオイルがオイルパン23内へ戻される。このときには、遅角側油圧室13に供給されるオイルの油圧によりベーン11が遅角側(図中左側)に押され、クランクシャフト2に対する吸気カムシャフト3の相対回転位相が遅角側に移行する。その結果、吸気バルブ5のバルブタイミングが遅角側に変化するようになる。
【0045】
また、電磁ソレノイド26が励磁されたときには、遅角側油路19と排出通路22とが連通するとともに、進角側油路18と供給通路21とが連通する。この場合、オイルパン23内のオイルがオイルポンプ24により進角側油圧室12に送り出されるとともに、遅角側油圧室13内にあったオイルがオイルパン23内へ戻される。このときには、進角側油圧室12に供給されるオイルの油圧によりベーン11が進角側(図中右側)に押され、クランクシャフト2に対する吸気カムシャフト3の相対回転位相が進角側に移行する。その結果、吸気バルブ5のバルブタイミングが進角側に変化するようになる。
【0046】
上記ロック機構15は、進角側油圧室12及び遅角側油圧室13内に存在するオイルの油圧に基づき動作し、吸気カムシャフト3の相対回転位相の所定進角状態での固定、及び当該固定の解除を行うものである。以下、ロック機構15の詳細な構造について説明する。
【0047】
ロック機構15は、ベーン11に設けられてコイルスプリング27によりギヤ9に向かって付勢されるロックピン28と、ギヤ9に設けられてロックピン28の先端が挿入される穴29とを備えている。この穴29は、ロックピン28の先端よりも若干大径に形成されるとともに、吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態となったときにロックピン28の先端に対応して位置するように設けられている。また、穴29の底部には油室32が形成されている。油室32は、進角側油圧室12に連通しており、この進角側油圧室12からのオイルを受け入れるようになっている。一方、上記ロックピン28及びコイルスプリング27は、ベーン11に形成された収容孔30内に配設されている。ロックピン28の外周面にはフランジ28aが形成され、このフランジ28aにより収容孔30内においてロックピン28の先端寄りの位置に油室31が区画形成されている。この油室31は、遅角側油圧室13と連通しており、同遅角側油圧室13からのオイルを受け入れるようになっている。
【0048】
エンジン1の運転中であって、進角側油圧室12と遅角側油圧室13との少なくとも一方に作動油が供給されているときには、上記油室31,32内における少なくとも一方の油圧によりロックピン28がコイルスプリング27の付勢力に抗して穴29から抜き出された状態に維持される。このときには、ロック機構15による吸気カムシャフト3の相対回転位相(吸気バルブ5のバルブタイミング)の進角側と遅角側との両方についての固定が解除された状態となる。
【0049】
また、エンジン1が停止する過程において、クランクシャフト2の回転速度が徐々に低下すると、オイルポンプ24により進角側油圧室12及び遅角側油圧室13に送り出されるオイルの量が徐々に低下し、それら油圧室12内におけるオイルの油圧が低下する。吸気カムシャフト3には、吸気バルブ5を開閉駆動する際の反力による回転トルクが同シャフト3の相対回転位相を遅角側に変化させる方向に働く。このため、進角側油圧室12及び遅角側油圧室13内のオイルの油圧が低下するエンジン1の停止過程にあって、吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも進角側にあるときには、当該相対回転位相が上記回転トルクによって遅角側に変化しようとする。
【0050】
一方、エンジン1の停止開始時点で、吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも遅角側にあるときには、ばね17の付勢力が吸気カムシャフト3の相対回転位相を進角側に変更させる方向に働くこととなる。このばね17の付勢力により、エンジン1の停止過程で吸気カムシャフト3の相対回転位相を所定進角状態に維持することができれば、エンジン1の停止過程で吸気カムシャフト3の相対回転位相をロック機構15によって所定進角状態で固定することが可能になる。即ち、エンジン停止過程で進角側油圧室12及び遅角側油圧室13内のオイルの油圧が低下し、ロックピン28がコイルスプリング27の付勢力によりベーン11から突出しようとするとき、吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態であればロックピン28が穴29に挿入される。これにより、当該相対回転位相の所定進角状態からの進角側及び遅角側への変化が禁止され、ロック機構15による固定が実現される。
【0051】
しかし、エンジン1の停止過程において、上記ばね17の付勢力だけで吸気カムシャフト3の相対回転位相を所定進角状態に維持できるとは限らず、維持できずに当該相対回転位相が所定進角状態よりも遅角側変化している場合には、上記ロック機構15による固定が実現不可能となる。このため、エンジン1の停止開始時点(図4のタイミングT1)で、吸気カムシャフト3の相対回転位相が図4(a)に実線で示されるように所定進角状態よりも遅角側にあるときには、当該相対回転位相が一旦所定進角状態よりも進角側に移行させられる。即ち、電子制御装置41を通じてOCV20が励磁され、進角側油圧室12へのオイル供給が図られる。これにより、図4(a)に実線で示されるように、吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に移行する。その後、図4(b)に示されるエンジン回転速度(機関回転速度)の低下に伴い、進角側油圧室12及び遅角側油圧室13内のオイルの油圧が低下し、ロックピン28がコイルスプリング27の付勢力によって突出可能な状態となる。この状態にあって、吸気カムシャフト3の相対回転位相が吸気バルブ5の開閉駆動に伴う反力に基づき所定進角状態まで遅角すると(タイミングT2)、ロックピン28が穴29に挿入され、図4(c)に実線で示されるようにロック機構15による固定が行われるようになる。
【0052】
ただし、エンジン1の停止開始時点での同エンジン1の運転状況によっては、図4(a)に破線で示されるように、吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に移行しきらなくなる場合がある。このような不都合が生じる状況としては、[従来の技術]の欄にも記載したように、エンジン低高温時のオイル粘度が高いとき、エンジン回転速度が低いとき、及びエンジン1の補機を駆動するための負荷が大きいとき等の状況があげられる。エンジン停止過程において、吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に移行しきらないと、図4(c)に破線で示されるようにロック機構15による固定を行えなくなり、吸気カムシャフト3の相対回転位相を所定進角状態で固定することができなくなる。その結果、次回のエンジン始動時には吸気バルブ5のバルブタイミング始動タイミングではない状態で、エンジン1の始動を行わなければならなくなり、エンジン1の始動性の低下を招くことになる。
【0053】
そこで本実施形態では、吸気カムシャフト3の相対回転位相を所定進角状態で遅角側についてのみ固定するストッパ機構16を設ける。そして、エンジン運転中、エンジン停止開始後に吸気カムシャフト3の相対回転位相を所定進角状態よりも進角側に変化させることの可能なエンジン運転状況にある旨判断されることを条件に、上記ストッパ機構16による固定の解除を許容する。
【0054】
この場合、エンジン運転中、エンジン停止開始後に吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に変化しきらない状況下では、ストッパ機構16による固定が解除されることはなく、当該相対回転位相の所定進角状態よりも遅角側への変更がストッパ機構16によって禁止されたままになる。そして、エンジン停止開始後に吸気カムシャフト3の相対回転位相を所定進角状態よりも進角側に変化させることの可能なエンジン運転状況になって始めてストッパ機構16による固定の解除が許容される。
【0055】
このことから、エンジン停止開始時に吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも遅角側になるのは、エンジン停止開始後に当該相対回転位相を所定進角状態よりも進角側に変更することが可能なときだけということになる。従って、エンジン停止開始後に吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に移行しきらないという不都合が生じることはなくなる。このため、エンジン停止過程で的確にロック機構15による固定を行うことができるようになり、次回のエンジン始動時には吸気カムシャフト3の相対回転位相を的確に所定進角状態としてエンジン1の始動を行うことができる。
【0056】
ここで、上記ストッパ機構16の構造について、図3を参照して詳しく説明する。
ストッパ機構16は、ベーン11に設けられてコイルスプリング33によりプレート14に向かって付勢されるストッパピン34と、プレート14に設けられてストッパピン34の先端が挿入される長穴35とを備えている。
【0057】
この長穴35においては、ベーン11の移動方向(図中左右方向)に延びるように形成され、その移動方向の長さがロック機構15の固定位置からのベーン11の進角側への最大移動量と同じ値か、それよりも大きい値に設定されている。また、長穴35は、吸気カムシャフトの相対回転位相が所定進角状態にあって、ロック機構15による固定が行われる位置にベーン11が存在しているとき、ストッパピン34の先端が長穴35の遅角側の端部(図中左端)に挿入されるよう形成されている。従って、ストッパピン34が長穴35に挿入されてストッパ機構16による固定が行われているときにも、ベーン11の進角側への移動に際してはストッパピン34の先端が長穴35内を進角側の端部(図中右端)まで移動可能となる。このため、ストッパ機構16による固定が行われているときにも、吸気カムシャフト3の相対回転位相を所定進角状態から最進角状態まで進角側に移行させることができる。
【0058】
一方、上記ストッパピン34及びコイルスプリング33は、ベーン11に形成された収容孔36内に配設されている。ストッパピン34の外周面にはフランジ34aが形成され、このフランジ34aにより収容孔36内においてストッパピン34の先端寄りの位置に油室37が区画形成されている。そして、油室37には給排通路38が接続され、同通路38はオイルスイッチングバルブ(OSV)39、供給通路21、及び排出通路40を介して、エンジン1のオイルパン23に繋がっている。なお、上記供給通路21は上記オイルポンプ24の下流側で二つに分岐しており、そのうちの一方がOSV39に接続されるとともに、他方が上記OCV20に接続されている。
【0059】
OSV39は、互いに逆方向に働くコイルスプリング42と電磁ソレノイド43の付勢力によって切換動作し、給排通路38に対する供給通路21と排出通路40との接続状態を変更するものである。このOSV39の駆動制御は、上記電子制御装置41を通じて、電磁ソレノイド43に対する電圧印可を制御することによって行われる。
【0060】
OSV39は、電磁ソレノイド43の消磁状態においては、給排通路38と排出通路40とを連通する。この場合、油室37内にあったオイルがオイルパン23内へ戻される。そして、ストッパピン34がコイルスプリング33の付勢力によってベーン11の収容孔36内から突出し、ストッパピン34の先端が長穴35に挿入されるようになる。
【0061】
また、電磁ソレノイド43が励磁されたときには、給排通路38と供給通路21とが連通する。この場合、オイルパン23内のオイルがオイルポンプ24により油室37へ送り出される。そして、油室37内のオイルの油圧により、ストッパピン34がコイルスプリング33の付勢力に抗して長穴35から抜き出され、ベーン11の収容孔36内に没入するようになる。
【0062】
次に、本実施形態におけるバルブタイミング制御装置の電気的構成について説明する。
バルブタイミング制御装置は、吸気バルブ5のバルブタイミング制御を行うべくOCV20を駆動制御するとともに、ストッパ機構16による固定及び固定解除を行うべくOSV39を駆動制御する上記電子制御装置41を備えている。この電子制御装置41には、以下に示される各種信号が入力される。
【0063】
・クランクシャフト2の回転に対応した信号を出力するクランクポジションセンサ44からの検出信号。
・吸気カムシャフト3の回転位置を検出するカムポジションセンサ45からの検出信号。
【0064】
・オイルポンプ24から吐出されるオイルの油圧を検出する油圧センサ46からの検出信号。
・オイルポンプ24から吐出されるオイルの油温を検出する油温センサ47からの検出信号。
【0065】
・エンジン1の冷却水温を検出する水温センサ48からの検出信号。
・エンジン1における吸入空気の温度を検出する吸気温センサ49からの検出信号。
【0066】
・自動車の運転者によるアクセルペダルの踏込量を検出するアクセルポジションセンサ50からの検出信号。
・エンジン1のスロットル開度を検出するスロットルポジションセンサ51からの検出信号。
【0067】
・自動車の運転者によるブレーキペダルの踏み込みの有無を検出するブレーキスイッチ53からの検出信号。
・自動車の走行速度を検出する車速センサ55からの検出信号。
【0068】
・自動変速機の変速態様を変更すべく自動車の運転者によって操作されるシフトレバーの操作位置に対応した信号を出力するシフトスイッチ56からの検出信号。
【0069】
・自動車に搭載された各種補機を駆動するための駆動回路57から出力される各種補機の駆動に対応した信号。
・エンジン1の吸気圧を検出するバキュームセンサ58からの検出信号。
【0070】
上記電子制御装置41は、エンジン回転速度及びエンジン負荷等に基づきOCV20を駆動し、吸気バルブ5のバルブタイミング制御を実行する。上記エンジン回転速度はクランクポジションセンサ44からの検出信号に基づき求められ、エンジン負荷は吸入空気量に関係するパラメータとエンジン回転速度とに基づき求められる。なお、吸入空気量に関係するパラメータとしては、吸気圧、スロットル開度、及びアクセル踏込量等を用いることができる。
【0071】
上述した吸気バルブ5のバルブタイミング制御として、通常は、最適なバルブタイミングが始動タイミングよりも進角側に存在することから、バルブタイミングの調整は始動タイミングよりも進角側の領域で行われることとなる。ただし、エンジン軽負荷時には燃費改善という観点から、またエンジン1に対する高出力要求時には出力向上の観点から、最適なバルブタイミングが始動タイミングよりも遅角側に移行する。そして、これら最適なバルブタイミングが得られるよう吸気バルブ5のバルブタイミング制御を行うことで、当該バルブタイミングが始動タイミングよりも遅角側の領域で調整されるようになる。
【0072】
なお、エンジン軽負荷時に吸気バルブ5のバルブタイミングを始動タイミングよりも遅角側とすることでエンジン1の燃費が改善するのは、当該バルブタイミング調整によって吸気バルブ5と排気バルブ6とのバルブオーバラップが小となって内部EGR量が減少し、燃焼が安定するためである。また、エンジン1に対する高出力要求時に吸気バルブ5のバルブタイミングを始動タイミングよりも遅角側とすることでエンジン1の出力が向上するのは、当該バルブタイミング調整によって吸気バルブ5の閉弁タイミングが吸気脈動を利用した吸気充填効率の向上に適したタイミングとなるためである。
【0073】
次に、ストッパ機構16による固定、及び当該固定解除の実行手順について、ストッパピン制御ルーチンを示す図5のフローチャートを参照して説明する。このストッパピン制御ルーチンは、電子制御装置41を通じて例えば所定時間毎の時間割り込みにて実行される。
【0074】
ストッパ制御ルーチンにおいては、エンジン運転中(S101:YES)、エンジン停止開始後に吸気カムシャフト3の相対回転位相を所定進角状態よりも進角側に変化させることの可能な状況であるか否かが判断される(S102)。こうした判断は、例えば以下に示される[1]〜[6]の各条件が全て成立しているか否かに基づき行われる。
【0075】
[1]オイルポンプ24から吐出されるオイルの油圧が所定値a以上であること。なお、所定値aは、吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも遅角側に存在した状態でのエンジン停止開始後に、進角側油圧室12へのオイル供給によって上記相対回転位相を所定進角状態よりも進角側に移行させることの可能な油圧の最低値に等しい値に設定される。
【0076】
[2]オイルポンプ24から吐出されるオイルの油温が低温領域及び高温領域を除く所定範囲内の値であること。なお、オイルの油温が所定値b未満の低温領域にあるときには、オイル粘度が高くなってオイルの流れる速度が緩やかになるため、オイルの油圧上昇に時間がかかって同油圧が低くなる傾向がある。また、オイルの油温が所定値c以上の高温領域にあるときには、オイル粘度が低くなって油圧回路からのオイル漏れが多くなることから、オイルの油圧上昇が妨げられて同油圧が低くなる傾向がある。上記所定範囲については、その下限及び上現がそれぞれ上述した所定値b,cに設定される。このように設定された所定範囲は、吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも遅角側に存在した状態でのエンジン停止開始後に、進角側油圧室12へのオイル供給によって上記相対回転位相を所定進角状態よりも進角側に移行させることの可能な油圧が得られる油温の範囲となる。
【0077】
[3]エンジン1の冷却水温が低温領域及び高温領域を除く所定範囲内の値であること。エンジン1の冷却水温は、上記オイルの油温に対応して変化するパラメータである。従って、エンジン1の冷却水温が上記所定値bに対応する値である所定値d未満となる低温領域にあるときには、オイル粘度が高くなってオイルの油圧が低くなる傾向がある。また、エンジン1の冷却水温が上記所定値cに対応する所定値e以上となる高温領域にあるときには、オイルの粘度が低くなってオイルの油圧が低くなる傾向がある。上記所定範囲については、その下限及び上限がそれぞれ上述した所定値d,eに設定される。このように設定された所定範囲は、吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも遅角側に存在した状態でのエンジン停止開始後に、進角側油圧室12へのオイル供給によって上記相対回転位相を所定進角状態よりも進角側に移行させることの可能な油圧が得られる冷却水温の範囲となる。
【0078】
[4]エンジン1の吸気温が低温領域及び高温領域を除く所定範囲内の値であること。エンジン1の吸気温は、上記オイルの油温及びエンジン1の冷却水温に影響を及ぼすパラメータである。従って、油温及び冷却水温がそれぞれ所定値b,d未満になる可能性のある吸気温である所定値f未満の低温領域まで当該吸気温が低下しているときには、オイル粘度が高くなってオイルの油圧が低くなる傾向がある。また、油温及び冷却水温がそれぞれ所定値c,e以上になる可能性のある吸気温である所定値g以上の高温領域まで当該吸気温が上昇しているときには、オイル粘度が低くなってオイルの油圧が低くなる傾向がある。上記所定範囲については、その下限及び上限がそれぞれ上述した所定値f,gに設定される。このように設定された所定範囲については、油温が所定値b〜所定値cの範囲に入る、また冷却水温が所定値d〜所定値eの範囲に入る吸気温の範囲となる。
【0079】
[5]エンジン回転速度が所定値h以上であること。エンジン回転速度は、オイルポンプ24からのオイル吐出量、即ち同ポンプ24から吐出されるオイルの油圧に関係するパラメータである。また、エンジン停止開始時点でのエンジン回転速度は、エンジン停止開始からエンジン回転速度が「0(エンジン停止完了)」になるまでの時間に関係するパラメータでもある。従って、エンジン回転速度が低いほど、吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも遅角側に存在した状態でのエンジン停止開始後に、進角側油圧室12へのオイル供給によって上記相対回転位相を所定進角状態よりも進角側に移行させることができなくなる可能性が高い。上記所定値hは、エンジン1の停止過程において、進角側油圧室12へのオイル供給によって吸気カムシャフト3の相対回転位相を所定進角状態よりも進角側に移行させることの可能なエンジン回転速度の最低値に等しい値に設定される。
【0080】
[6]エンジン1によって駆動される各種補機による駆動抵抗が所定値j未満であること。この駆動抵抗が所定値j未満であるか否かは、駆動回路57からの信号によって分かる各種補機の駆動状態に基づき判断することができる。エンジン1の各種補機による駆動抵抗が大になるほど、吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも遅角側に存在した状態でのエンジン停止開始後に、進角側油圧室12へのオイル供給によって上記相対回転位相を所定進角状態よりも進角側に移行させる前にエンジン回転が停止する可能性が高い。これは、エンジン1の各種補機による駆動抵抗が大になるほど、エンジン1の回転抵抗(機関回転抵抗)が大となり、エンジン停止開始からエンジン回転速度が「0」になるまでの時間が短くなるためである。上記所定値jは、エンジン1の停止過程において進角側油圧室12へのオイル供給により吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に変化する前にエンジン回転が停止する上記各種補機の駆動抵抗に等しい値に設定される。
【0081】
以上の[1]〜[6]の各条件のうち、成立していないものが一つでもある場合には(S102:NO)、エンジン停止開始後に吸気カムシャフト3の相対回転位相を所定進角状態よりも進角側に変化させることのできないエンジン運転状況である旨判断され、ステップS105に進む。このステップS105では、ストッパピン34が長穴35内に突出させられ、ストッパ機構16による固定を実行した状態とされる。
【0082】
一方、[1]〜[6]の各条件が全て成立すると(S102:YES)、エンジン停止開始後に吸気カムシャフト3の相対回転位相を所定進角状態よりも進角側に変化させることの可能なエンジン運転状況である旨判断され、ステップS103に進む。そして、ステップS103の処理ではストッパ機構16による固定の解除を許容し、続くステップS104の処理でストッパピン34が長穴35から抜き出されて収容孔36内に没入した状態とされる。こうしてストッパ機構16による固定が解除される。
【0083】
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)エンジン運転中、エンジン停止開始後に吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に変化しきらないエンジン運転状況下では、エンジン運転中にストッパ機構16による固定が解除されることはない。この状態にあっては、当該相対回転位相の所定進角状態よりも遅角側への変化がストッパ機構16によって禁止されたままになる。そして、エンジン停止開始後に吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に変化させることの可能なエンジン運転状況になって始めてストッパ機構16による固定の解除が許容され、ストッパピン34が長穴35から抜き出される。このことから、エンジン停止開始時に吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも遅角側になるのは、エンジン停止開始後に当該相対回転位相を所定進角状態よりも進角側に変更することが可能なときだけということになる。従って、エンジン停止開始後に吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に移行しきらないという不都合が生じることはなくなる。このため、エンジン停止過程で的確にロック機構15による固定を行うことができるようになり、次回のエンジン始動時には吸気カムシャフト3の相対回転位相を的確に所定進角状態としてエンジン1の始動を行うことができる。
【0084】
(2)エンジン停止開始後に吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に変化しきらないエンジン運転状況としては、オイルポンプ24から吐出されるオイルの油圧が所定値a未満になる状況があげられる。このような状況では、ストッパ機構16による固定が維持されて吸気カムシャフト3の相対回転位相の所定進角状態よりも遅角側への変化が禁止される。これにより、エンジン停止開始後に吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に移行しきらないという状況が生じるのを抑制することができる。
【0085】
(3)オイルポンプ24から吐出されるオイルの油圧に関係するパラメータとしては、同オイルの油温、エンジン1の冷却水温や吸気温、及びエンジン回転速度といったものがあげられる。そして、これらパラメータに基づいて、エンジン停止開始後に吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に変化させることのできる油圧を確保可能か否かが判断される(条件[2]〜[5])。同判断の結果として、上記油圧を確保できない旨の判断がなされる場合、即ち条件[2]〜[5]の少なくとも一つが不成立である場合には、ストッパ機構16による固定が維持されて吸気カムシャフト3の相対回転位相の所定進角状態よりも遅角側への変化が禁止される。これにより、エンジン停止開始後に吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に移行しきらないという状況が生じるのを抑制することができる。
【0086】
(4)また、エンジン回転速度が所定値h未満である状況や、各種補機による駆動抵抗が所定値j以上である状況も、エンジン停止開始後に吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に変化しきらないエンジン運転状況ということになる。これらの状況のもとで上記相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に移行しきらないのは、エンジン停止開始からエンジン回転速度が「0」になるまでの時間が短いためである。そして、これらの状況のもとでは、ストッパ機構16による固定が維持されて吸気カムシャフト3の相対回転位相の所定進角状態よりも遅角側への変化が禁止される。これにより、エンジン停止開始後に吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に移行しきらないという状況が生じるのを抑制することができる。
【0087】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を図6に基づき説明する。
図6は、本実施形態におけるストッパピン制御ルーチンを示すフローチャートである。
【0088】
このストッパピン制御ルーチンにおいては、エンジン運転中(S201:YES)、エンジン停止開始されることのないエンジン運転状況にあるか否かが判断される(S202)。ここで、否定判定であれば、ストッパピン34が長穴35内に突出させられ、ストッパ機構16による固定を実行した状態とされる(S205)。また、肯定判定であれば、ストッパ機構16による固定の解除が許容され(S206)、ストッパピン34が長穴35から抜き出されて収容孔36内に没入した状態とされる(S207)。こうしてストッパ機構16による固定が解除される。
【0089】
上記ステップS202での判断は、例えば以下に示される[7]〜[11]の各条件が全て成立しているか否かに基づき行われる。
[7]スロットル開度が最小値よりも大きい値であること。このときにはエンジン1に対する出力要求がなされており、エンジン1が停止開始される可能性はほとんどない状況である。
【0090】
[8]アクセル踏込量が最小値よりも大きい値であること。このときにはエンジン1に対する出力要求がなされており、エンジン1が停止開始される可能性はほとんどない状況である。
【0091】
[9]ブレーキペダルの踏み込みがなされていないこと。アクセルペダルの踏み込み等に基づくエンジン1への出力要求がなされているときには、ブレーキペダルが踏み込まれていないことになる。このため、ブレーキペダルが踏み込まれていないときには、アクセルペダルの踏み込み等に基づくエンジン1への出力要求がなされている可能性が高くなる。
【0092】
[10]車速が「0」又はそれに近い値ではないこと。このときには自動車が走行している最中であることから、エンジン1が停止開始される可能性がほとんどない状況ということになる。
【0093】
[11]シフトレバーの操作位置がニュートラルポジション及びパーキングポジションにはないこと。自動車の走行中にはシフトレバーの操作位置がドライブポジションなどニュートラルポジション及びパーキングポジション以外の位置になることから、同レバーがパーキングポジション及びニュートラルポジションでないときには、車速が「0」又はそれに近い値ではない可能性が高くなる。
【0094】
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(5)エンジン停止開始される可能性のあるエンジン運転状況下では(S202:NO)、エンジン運転中にストッパ機構16による固定が解除されることはなく、吸気カムシャフト3の相対回転位相の所定進角状態から遅角側への変更がストッパ機構16によって禁止されたままになる。そして、エンジン停止開始される可能性のないエンジン運転状況になって(S202:YES)始めてストッパ機構16による固定の解除が許容され、ストッパピン34が長穴35から抜き出される。このことから、エンジン停止開始時に吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも遅角側にあるという状況は生じ得ないものとなる。従って、エンジン停止開始後に吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に移行しきらないという不都合が生じることはなくなる。このため、エンジン停止過程で的確にロック機構15による固定を行うことができるようになり、次回のエンジン始動時には吸気カムシャフト3の相対回転位相を的確に所定進角状態としてエンジン1の始動を行うことができる。
【0095】
(6)エンジン1が停止開始される可能性のあるエンジン運転状況としては、エンジン1に対する出力要求がなされていない状況があげられる。同出力要求がなされている旨の判断については、スロットル開度が最小値よりも大きいこと、アクセル踏込量が最小値よりも大きいこと、及びブレーキペダルの踏み込みがないこと等に基づき行われる(条件[7]〜[9])。従って、これらのような状況でないことに基づきエンジン1に対する出力要求がなされていない旨判断される場合には、エンジン1が停止開始される可能性があることから、ストッパ機構16による固定が維持されて吸気カムシャフト3の相対回転位相の所定進角状態よりも遅角側への変化が禁止される。これにより、エンジン停止開始後に吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に移行しきらないという状況が生じるのを抑制することができる。
【0096】
(7)エンジン1が停止開始される可能性のあるエンジン運転状況としては、車速が「0」又はそれに近い値となっている状況があげられる。このような状況下では、ストッパ機構16による固定が維持されて吸気カムシャフト3の相対回転位相の所定進角状態よりも遅角側への変化が禁止される。これにより、エンジン停止開始後に吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に移行しきらないという状況が生じるのを抑制することができる。
【0097】
(8)また、シフトレバーの操作位置がニュートラルポジション及びパーキングポジションにないときには、自動車の走行中である可能性が高く、車速が「0」又はそれに近い値ではない可能性が高い。従って、車速が「0」又はそれに近い値ではない旨の判断については、車速を直接的にモニタする他に、シフトレバーの操作位置がニュートラルポジション及びパーキングポジションにはない旨の判断に基づき行うこともできる(条件[11])。そして、同判断の結果として、車速が「0」又はそれに近い値である旨の判断がなされた場合には、ストッパ機構16による固定が維持されて吸気カムシャフト3の相対回転位相の所定進角状態よりも遅角側への変化が禁止される。これにより、エンジン停止開始後に吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に移行しきらないという状況が生じるのを抑制することができる。
【0098】
なお、上記各実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・第1実施形態においては、エンジン停止開始後に吸気カムシャフト3の相対回転位相を所定進角状態よりも進角側に変化させることの可能な状況であるか否かを判断するための条件として、上記[1]〜[6]に示される合計六つの条件を例示したが、これら各条件のうちの一つ又は複数だけを用いてもよい。なお、第1実施形態のように[1]〜[6]に示される六つの条件全てを用いれば、一層的確な判断を行うことができる。
【0099】
・第1実施形態においては、上記[1]〜[6]の各条件のうちの一つでも不成立であれば、エンジン停止開始後に吸気カムシャフト3の相対回転位相が所定進角状態よりも進角側に変化しきらない状況である旨判断したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記各条件のうちの一つのみ又は任意の複数のみが成立していないだけのときには、エンジン停止開始後に吸気カムシャフトの相対回転位相を所定進角状態に変化させることの可能な状況である旨の判断をするようにしてもよい。
【0100】
・第1実施形態において、条件[1]で用いられる所定値aを、より大きい値に設定してもよい。
・第1実施形態において、条件[2]で用いられる所定範囲の下限値である所定値bをより大きい値に設定したり、同所定範囲の上限値である所定値cをより小さい値に設定したりしてもよい。
【0101】
・第1実施形態において、条件[3]で用いられる所定範囲の下限値である所定値dをより大きい値に設定したり、同所定範囲の上限値である所定値eをより大きい値に設定したりしてもよい。
【0102】
・第1実施形態において、条件[4]で用いられる所定範囲の下限値である所定値fをより大きい値に設定したり、同所定範囲の上限値である所定値gをより大きい値に設定したりしてもよい。
【0103】
・第1実施形態において、条件[5]で用いられる所定値hを、より大きい値に設定してもよい。
・第1実施形態において、条件[6]で用いられる所定値iを、より小さい値に設定してもよい。
【0104】
・第2実施形態においては、エンジン停止開始されることのないエンジン運転状況にあるか否かを判断するための条件として、上記[7]〜[11]に示される合計五つの条件を例示したが、これら各条件の一つ又は複数だけを用いてもよい。なお、第2実施形態のように[7]〜[11]に示される五つの条件全てを用いれば、一層的確な判断を行うことができる。
【0105】
・第2実施形態においては、上記[7]〜[11]の各条件のうちの一つでも不成立であれば、エンジン1が停止開始される可能性のある状況である旨判断したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記各条件のうちの一つのみ又は任意の複数のみが成立していないだけのときには、エンジン1が停止開始されることのない状況である旨の判断をするようにしてもよい。
【0106】
・エンジン運転中にストッパ機構16による固定の解除を許容するか否かを判断するに当たり、第1実施形態のストッパピン制御ルーチン(図5)におけるステップS102の判断と、第2実施形態のストッパピン制御ルーチン(図6)におけるステップS202の判断との両方を行うようにしてもよい。
【0107】
・第1及び第2実施形態では、ストッパ機構16による固定の解除が許容されたとき(S103,S203)、ストッパピン34を長穴35から抜き出してストッパ機構16による固定を解除したが(S103,S104)、本発明はこれに限定されない。例えば、ストッパ機構16による固定の解除が許容された後、エンジン軽負荷時やエンジン1に対する高出力要求時など、実際に吸気カムシャフト3の相対回転位相を所定進角状態よりも遅角側とすべき状況になってから、ストッパ機構16による固定を解除するようにしてもよい。この場合、吸気カムシャフト3の相対回転位相を実際に所定進角状態よりも遅角側に移行させるべき状況になって始めてストッパ機構16による固定が解除される。このため、同固定の解除が誤って行われて吸気カムシャフト3の相対回転位相が誤って所定進角状態よりも遅角側に変化してしまう可能性を極力排除することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態のバルブタイミング制御装置が適用されるエンジン全体を示す略図。
【図2】バルブタイミング可変機構の内部構造を示す略図。
【図3】図2のバルブタイミング可変機構を矢印A−A方向から見た状態を模式的に示すとともに、同バルブタイミング可変機構へのオイル供給を行うための油圧回路を示す図。
【図4】(a)〜(c)は、エンジン停止開始後における吸気カムシャフトの相対回転位相が所定進角状態よりも遅角側にある状態からのエンジン停止開始後における当該相対回転位相の変化態様、エンジン回転速度の変化態様、並びに、ロック機構における固定及び固定解除の実行態様を示すタイムチャート。
【図5】第1実施形態におけるストッパ機構による固定、及び当該固定解除の実行手順を示すフローチャート。
【図6】第2実施形態におけるストッパ機構による固定、及び当該固定解除の実行手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
1…エンジン、2…クランクシャフト、3…吸気カムシャフト、4…排気カムシャフト、5…吸気バルブ、6…排気バルブ、7…バルブタイミング可変機構、8…ロータ、9…ギヤ、10…リングカバー、11…ベーン、12…進角側油圧室、13…遅角側油圧室、14…プレート、15…ロック機構(ロック手段)、16…ストッパ機構(ストッパ手段)、17…ばね、18…進角側油路、19…遅角側油路、20…オイルコントロールバルブ(OCV)、21…供給通路、22…排出通路、23…オイルパン、24…オイルポンプ、25…コイルスプリング、26…電磁ソレノイド、27…コイルスプリング、28…ロックピン、28a…フランジ、29…穴、30…収容孔、31,32…油室、33…コイルスプリング、34…ストッパピン、34a…フランジ、35…長穴、36…収容孔、37…油室、38…給排通路、39…オイルスイッチングバルブ(OSV)、40…排出通路、41…電子制御装置(制御手段)、42…コイルスプリング、43…電磁ソレノイド、44…クランクポジションセンサ、45…カムポジションセンサ、46…油圧センサ、47…油温センサ、48…水温センサ、49…吸気温センサ、50…アクセルポジションセンサ51…スロットルポジションセンサ、53…ブレーキスイッチ、55…車速センサ、56…シフトスイッチ、57…駆動回路、58…バキュームセンサ。
Claims (7)
- 車載内燃機関のクランクシャフトに対するカムシャフトの相対回転位相を進遅角させるバルブタイミング可変機構と、前記カムシャフトの相対回転位相を最遅角状態よりも所定量だけ進角した所定進角状態で進角側と遅角側との両方について固定可能なロック手段とを備え、前記カムシャフトの相対回転位相が前記所定進角状態よりも遅角側にあって同機関が停止開始したとき、当該相対回転位相が前記所定進角状態よりも進角側に向けて変更されるよう前記バルブタイミング可変機構を制御する車載内燃機関のバルブタイミング制御装置において、
前記カムシャフトの相対回転位相を前記所定進角状態で遅角側についてのみ固定するストッパ手段と、
機関運転中、機関停止開始後に前記カムシャフトの相対回転位相が前記所定進角状態よりも進角側に変化させることの可能な機関運転状況にある旨判断されることを条件に、前記ストッパ手段による固定の解除を許容する制御手段と、
を備えることを特徴とする車載内燃機関のバルブタイミング制御装置。 - 前記バルブタイミング可変機構は、オイルの供給を受けて油圧駆動されるものであって、
前記制御手段は、機関運転中にあって、前記オイルの油圧が機関停止開始後に前記カムシャフトの相対回転位相を前記所定進角状態よりも進角側に変化させることの可能な所定値以上である旨判断されるとき、前記ストッパ手段による固定の解除を許容する
請求項1記載の車載内燃機関のバルブタイミング制御装置。 - 前記制御手段は、機関運転中であって、機関回転速度が機関停止開始後に前記カムシャフトの相対回転位相を前記所定進角状態よりも進角側に変化させる前に機関回転が停止する所定値以上である旨判断されるとき、前記ストッパ手段による固定の解除を許容する
請求項1記載の車載内燃機関のバルブタイミング制御装置。 - 前記制御手段は、機関運転中であって、機関回転抵抗が機関停止開始後に前記カムシャフトの相対回転位相を前記所定進角状態よりも進角側に変化させる前に機関回転が停止する所定値未満である旨判断されるとき、前記ストッパ手段による固定の解除を許容する
請求項1記載の車載内燃機関のバルブタイミング制御装置。 - 車載内燃機関のクランクシャフトに対するカムシャフトの相対回転位相を進遅角させるバルブタイミング可変機構と、前記カムシャフトの相対回転位相を最遅角状態よりも所定量だけ進角した所定進角状態で進角側と遅角側との両方について固定可能なロック手段とを備え、前記カムシャフトの相対回転位相が前記所定進角状態よりも遅角側にあって同機関が停止開始したとき、当該相対回転位相が前記所定進角状態よりも進角側に向けて変更されるよう前記バルブタイミング可変機構を制御する車載内燃機関のバルブタイミング制御装置において、
前記カムシャフトの相対回転位相を前記所定進角状態で遅角側についてのみ固定するストッパ手段と、
機関運転中、機関停止開始されることのない機関運転状況にある旨判断されることを条件に、前記ストッパ手段による固定の解除を許容する制御手段と、
を備えることを特徴とする車載内燃機関のバルブタイミング制御装置。 - 前記制御手段は、機関出力要求のある旨判断されるとき、前記ストッパ手段による固定の解除を許容する
請求項5記載の車載内燃機関のバルブタイミング制御装置。 - 前記制御手段は、車速が「0」又はそれに近い値でない旨判断されるとき、前記ストッパ手段による固定の解除を許容する
請求項5記載の車載内燃機関のバルブタイミング制御装置。
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---|---|---|---|
JP2003137290A JP2004340019A (ja) | 2003-05-15 | 2003-05-15 | 車載内燃機関のバルブタイミング制御装置 |
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JP2004340019A true JP2004340019A (ja) | 2004-12-02 |
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ID=33526989
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2003137290A Pending JP2004340019A (ja) | 2003-05-15 | 2003-05-15 | 車載内燃機関のバルブタイミング制御装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2004340019A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008196376A (ja) * | 2007-02-13 | 2008-08-28 | Toyota Motor Corp | 車両およびその制御方法 |
US8160801B2 (en) | 2006-03-20 | 2012-04-17 | Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha | Valve drive system and valve driving method |
JP2013104466A (ja) * | 2011-11-11 | 2013-05-30 | Toyota Motor Corp | 車両制御装置 |
DE102007007073B4 (de) * | 2007-02-13 | 2020-10-01 | Schaeffler Technologies AG & Co. KG | Vorrichtung und Verfahren zur variablen Einstellung der Steuerzeiten von Gaswechselventilen einer Brennkraftmaschine |
-
2003
- 2003-05-15 JP JP2003137290A patent/JP2004340019A/ja active Pending
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