JP2004339082A - マスカラ下地 - Google Patents
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Abstract
【課題】水で容易に落とすことができるマスカラ下地について開示する。
【解決手段】水溶性ポリアクリル酸系高分子とポリビニルピロリドンを含有することを特徴とするマスカラ下地を採用した。
【解決手段】水溶性ポリアクリル酸系高分子とポリビニルピロリドンを含有することを特徴とするマスカラ下地を採用した。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、マスカラ下地に関する。特に、マスカラを塗布したまま、マスカラごと水で容易に落とすことができるマスカラ下地に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、複数の透明マスカラが用いられている。例えば、睫用化粧料として、水溶性カルボキシビニルポリマーと、塩基性物質と、デキストリンとを含有するものが開示されている(特許文献1)。当該特許文献1には、前記睫用化粧料は、睫に濡れたようなつやと、ハリを与え、使用時のべたつきが少なく、自然な仕上がりを与え、しかも塗布後、経時でフレーキングを生じないと記載されている。
【0003】
また、睫用化粧料として、合成樹脂エマルジョンと平均置換度3以上の油溶性高置換度ショ糖脂肪酸エステル2〜40重量%を含有することを特徴とするものも開示されている(特許文献2)。当該特許文献2には、前記睫用化粧料は、カール効果に優れ使用性、仕上がり状態、経時安定性等に優れていると記載されている。
【0004】
さらに、皮膜型マスカラとして、ポリビニルアルコールと遊離型カルボキシビニルポリマーと水と塩基とを配合してなり、全体が透明な液状を形成していることを特徴とする透明な液状のものも開示されている(特許文献3)。当該特許文献3には、前記皮膜型マスカラは、長期間保存しても極めて安定であり、睫に塗布するに際しては伸びよく、また、均一に付着して、速やかに乾燥し、透明な皮膜を形成し、睫に自然なはり・色相・カール感を与えると記載されている。さらに、これらによって、自然なメイクアップ効果を付与し、かつ目元をぱっちりさせて、魅力を増大、保持し得るとも記載されている。
【0005】
さらにまた、皮膜型マスカラとして、ビニルピロリドン・酢酸ビニル共重合体とカルボキシビニルポリマーと塩基と水とエタノールの5成分を必須成分とする透明なものも開示されている(特許文献4)。当該特許文献4には、前記皮膜型マスカラは、睫に塗布することにより、毛表面に透明な皮膜を形成し、睫につやとハリを付与し、本来睫のもつ自然な色相を生かしながらカール力、セット力を挙げることができると記載されている。さらに、ボリューム感のある仕上がりを容易に得るための補助効果をも有するという特徴があると記載されている。
【0006】
上述のようなマスカラは、もともとは、自然な化粧を好む者を対象とするものである。しかしながら、マスカラのカール効果、ボリュームアップ効果を補強するために、上述のようなマスカラの上から、着色したマスカラを塗布する者も多い。
【0007】
そこで、マスカラ使用時の化粧効果およびその持続性を改善し、また使用性が良く、安全性、安定性も良好なマスカラ下地の検討がなされている。例えば、特許文献5には、マスカラ下地化粧料として、繊維、被膜形成性エマルションポリマー、水溶性被膜形成性樹脂を含有するものが当該課題を解決すると記載されている(特許文献5)。
【0008】
また、睫のボリュームアップ効果やカール効果等の向上したマスカラ下地についても検討されている。例えば、特許文献6には、マスカラ下地用化粧料として、油溶性樹脂と、水性成分と、無水ケイ酸を含有するものが当該課題を解決すると記載されている(特許文献6)。
【0009】
【特許文献1】特開平3−246214号公報
【特許文献2】特公平3−30568号公報
【特許文献3】特公平4−36130号公報
【特許文献4】特開平4−173718号公報
【特許文献5】特開2001−322913号公報
【特許文献6】特開2002−234819号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のマスカラやマスカラ下地は、落とす段階には、化粧落としを用いることを前提としており、手間がかかる。特に、一般的なマスカラやマスカラ下地は、通常の化粧落としとは別に、アイメイク専用の化粧落としを必要とする。すなわち、マスカラを使用する者は、通常のものとアイメイク専用のものと、2種類の化粧落としを用意する必要がある。さらに、汗や涙でにじみにくい、いわゆる油系や乳化系のマスカラを落とす場合は、アイメイク専用の化粧落としを用いても、マスカラを完全に落とすことが困難となることも多い。また、水系のマスカラを使用する場合、アイメイク専用の化粧落としを用いれば比較的良く落ちるが、化粧効果維持の観点からの問題も指摘されている。また、アイメイク専用の化粧落としは、瞼にも負担がかかる。
【0011】
これらの状況を考えると、油系・乳化系・水系いずれのマスカラを用いた場合であっても、化粧落としを使わずに、マスカラを落とせる手段が求められる。
【0012】
【課題を解決するための手段】
そこで、本願発明者らは、鋭意研究することにより、新たなマスカラ下地によって、上記課題を解決しうることを見出した。すなわち、水溶性ポリアクリル酸系高分子と、ポリビニルピロリドンと、水を含み、かつ、水の含量が50〜98重量%であることを特徴とするマスカラ下地を採用した。当該マスカラ下地の上にマスカラを塗布した場合、当該マスカラ下地と共に、マスカラを水で容易に落とすことが可能となる。つまり、睫のボリュームアップ等マスカラ本来の効果を維持しつつ、特別な化粧落とし等を使用せずに、水洗いするだけで、簡単にマスカラとマスカラ下地を落とすことが可能となる。特に、水系、乳化系、油系いずれのマスカラを用いた場合でもその効果が得られる。
【0013】
さらに、水溶性ポリアクリル酸系高分子0.01〜3.0重量%と、ポリビニルピロリドン1.0〜30.0重量%と、水50〜98重量%を含むことを特徴とするマスカラ下地;上記マスカラ下地において、水溶性ポリアクリル酸系高分子が、カルボシキビニルポリマーであるマスカラ下地;上記マスカラ下地において、水溶性ポリアクリル酸系高分子が、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体であるマスカラ下地を採用した。さらに、上記マスカラ下地と、マスカラからなるマスカラセットを採用した。
【0014】
【発明の実施の形態】
本願発明のマスカラ下地とは、マスカラを塗布する前に、睫に塗布するものをいう。本願発明のマスカラ下地は、マスカラを塗布する前に、睫に塗布し、これが乾燥した後、マスカラを塗布して使用する。マスカラを落とす際には、水洗いを行う。水洗いの方法は、一般的な方法を利用することができ、例えば、流水の下、コットンを用いてふき取る方法が採用できる。この水洗いという簡単な操作だけで、マスカラとマスカラ下地の両方を落とすことができる。もちろん、ファンデーション等の一般的な化粧用の化粧落としで落とすことも可能である。
【0015】
本願発明のマスカラ下地の後に塗布するマスカラは、その種類を特に定めるものではなく、広く一般的なマスカラを採用できる。すなわち、水系、油系、乳化系いずれのマスカラでも採用できる。
【0016】
ここで、本願発明のマスカラ下地を、水系マスカラ用のマスカラ下地として用いる場合、水洗いで容易に落とすことができるのに加え、マスカラが睫の上でにじみにくくなる、マスカラ下地とマスカラのなじみがよくなるといった効果も得られる。この結果、睫への塗布が容易になり、初心者でもマスカラを上手に塗布することが可能になる。
【0017】
次に、本願発明のマスカラ下地を、油系マスカラ用のマスカラ下地として用いる場合、水洗いで容易に落とすことができるのに加え、油系マスカラが本来的にもっている、高いカールアップ効果をさらに高めつつ、睫を痛めない、という利点もある。すなわち、本願発明のマスカラ下地には、油系マスカラから睫を保護する役割も備えている。また、マスカラ自体の耐水性も損なわれない。このように、油系マスカラを水で容易に落とすことが可能なマスカラ下地は、非常に有用である。
【0018】
さらに、本願発明のマスカラ下地を、乳化系のマスカラのマスカラ下地として用いる場合、水系成分をベースとして、油系成分を加えた乳化系マスカラ(以下、O/W乳化系マスカラ、と言うことがある)および油系成分をベースとして、水系成分を加えた乳化系マスカラ(以下、W/O乳化系マスカラ、と言うことがある)のいずれのマスカラ下地としても採用することができる。特に、O/W乳化系マスカラのマスカラ下地として用いる場合、マスカラが睫の上でにじみにくくなる、マスカラ下地とマスカラのなじみがよくなるといった効果も得られる。この結果、睫への塗布が容易になり、初心者でもマスカラを上手に塗布することが可能になる。さらに、マスカラ自体の耐水性も損なわれない。一方、W/O乳化系マスカラのマスカラ下地として用いる場合、カールアップ効果を維持しつつ、睫を痛めない、という利点がある。この場合も、マスカラ自体の耐水性は損なわれない。
【0019】
さらに、本願発明のマスカラ下地は、透明とすることが可能である。そして、透明マスカラ下地とした場合、その上に塗布するマスカラの色調変化が無いという効果も有する。すなわち、当該マスカラ下地は、透明のものの他、黒色・青色・茶色等いずれの色のマスカラにも採用することができる。もちろん、本願発明の精神を逸脱しない限り、有色としてもよい。例えば、黒・茶・濃紺等とすることがあげられる。
【0020】
加えて、本願発明のマスカラ下地は、マスカラのつきをよくする。また、にじみ防止の効果を有する為、マスカラの上に、さらに、塗布することにより、にじみ防止効果のあるマスカラコート剤としても利用することが可能である。また、マスカラ下地自体のつきもよく、その乾燥も速い。
【0021】
さらに加えて、本願発明のマスカラ下地は、熱に対して安定である、という特徴を有する。すなわち、−10℃〜60℃で、特に、−5℃〜50℃で、安定に保存することができる。さらに、本願発明のマスカラ下地は、光に対しても安定である。すなわち、保存する場合に、遮光性容器を使用しなくても保存が可能である。さらに、温度変化に対しても、安定である。
【0022】
本願発明のマスカラ下地を製品化する場合、例えば、従来のマスカラ用の容器に充填し、従来のマスカラ用のブラシを添付して販売することができる。
【0023】
本願発明でいう水溶性ポリアクリル酸系高分子とは、水溶性であって、アクリル酸、アクリル酸塩、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸塩および/またはメタクリル酸エステルの重合体をいう。ここでいう水溶性とは、水に溶解、懸濁、混合あるいは混和するものをいう。さらには、本願発明のマスカラ下地の他の成分と、層に分かれて分離せずに存在しうるものをいう。従って、一般的に「水溶性」として販売されているポリアクリル酸系高分子は、本願発明の水溶性ポリアクリル酸系高分子に含まれる。本願発明でいう水溶性ポリアクリル酸系高分子としては、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、メタクリル酸・アクリル酸アルキル共重合体、メタクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、アクリル酸・アクリル酸アルキル共重合体等を採用することができる。その他、ポリアクリル酸塩、ポリアクリル酸も採用することができる。これらは、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併せて用いてもよい。含量は、全体の0.01〜3.0重量%が好ましい。
【0024】
本願発明で採用するカルボキシビニルポリマーは、増粘剤として用いられるものであり、その種類等は、本願発明の精神を逸脱しない限り、特に定めるものではない。例えば、カルボキシビニルポリマーは、白色粉末の状態で販売されている市販品を採用することができる。具体的には、アクペックHV−505E(販売元:住友精化)、HV−501(販売元:住友精化)、HV−504(販売元:住友精化)、カーボポール941(BFGoodrich社製)、カーボポール934(BFGoodrich社製)、カーボポール940(BFGoodrich社製)、ハイビスワコー106(販売元:和光純薬工業)、ハイビスワコー105(販売元:和光純薬工業)、ハイビスワコー104(販売元:和光純薬工業)、ハイビスワコー103(販売元:和光純薬工業)、ジュンロンPW−110(販売元:日本純薬)、ジュンロンPW−111(販売元:日本純薬)、ジュンロンPW−150(販売元:日本純薬)等を用いることができる。
【0025】
カルボキシビニルポリマーの含有量は、好ましくは、0.01〜3.0重量%であり、より好ましくは、0.1〜2.0重量%であり、最も好ましくは0.2〜1.0重量%である。採用するカルボキシポリマーの平均分子量は、好ましくは、10万〜500万であり、より好ましくは、20万〜300万であり、最も好ましくは、200万〜300万である。カルボキシビニルポリマーの粘度は、0.2%溶液(pH7.2)の場合で、好ましくは、1000〜5万であり、より好ましくは、2500〜4万であり、最も好ましくは、15000〜3万である。さらに、0.5%溶液(pH7.2)の場合では、好ましくは、3000〜10万であり、より好ましくは、5000〜10万であり、最も好ましくは、45000〜7万である。また、透過率は、好ましくは、70〜99%、より好ましくは、80〜95%、最も好ましくは、82〜92%である。
【0026】
本願発明で採用するアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体は、増粘剤として用いられるものであり、その種類等は、本願発明の精神を逸脱しない限り、特に定めるものではない。例えば、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体は、白色粉末の状態で販売されている市販品を採用することができる。具体的には、PEMULEN TR−1(BFGoodrich社製)やPEMULEN
TR−2(BFGoodrich社製)を採用することができる。
【0027】
アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体の含有量は、好ましくは、0.01〜3.0重量%であり、より好ましくは、0.1〜2.0重量%であり、最も好ましくは0.2〜1.0重量%である。採用するアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体の平均分子量は、好ましくは、80万〜350万であり、より好ましくは90万〜170万である。アルキル基は、炭素数が10〜50のものを採用するのが好ましい。
【0028】
本願発明で採用するポリビニルピロリドンは、皮膜剤として用いられるものであり、その種類等は、本願発明の精神を逸脱しない限り、特に定めるものではない。例えば、粉末または溶液として販売されているものを採用することができる。具体的には、PVPK30(販売元:アイエスピー・ジャパン)、PVPK15(販売元:アイエスピー・ジャパン)、PVPK60(販売元:アイエスピー・ジャパン)、PVPK90(販売元:アイエスピー・ジャパン)、PVPK120(販売元:アイエスピー・ジャパン)、ルビスコールK17(販売元:BASF社製)、ルビスコールK30(販売元:BASF社製)、ルビスコールK80(販売元:BASF社製)、ルビスコールK90(販売元:BASF社製)の名前で知られている原料を用いることができる。
【0029】
ポリビニルピロリドンの含有量は、好ましくは、1.0〜30.0重量%であり、より好ましくは、2.0〜10.0重量%であり、最も好ましくは、2.0〜8.0重量%である。採用するポリビニルピロリドンの平均分子量は、好ましくは、5000〜数百万、より好ましくは、8000〜300万、最も好ましくは、5万〜7万である。
【0030】
本願発明で採用するカルボキシビニルポリマーとポリビニルピロリドンの構成比率は、本願発明の精神を逸脱しない限り、適宜定めることができる。好ましくは、カルボキシビニルポリマー0.01〜3.0重量%に対し、ポリビニルピロリドン1.0〜30.0重量%であり、より好ましくは、カルボキシビニルポリマー0.1〜2.0重量%に対し、ポリビニルピロリドン2.0〜10.0重量%であり、さらに好ましくは、カルボキシビニルポリマー0.2〜1.0重量%に対し、ポリビニルピロリドン2.0〜8.0重量%である。
【0031】
本願発明で採用するアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体とポリビニルピロリドンの構成比率は、本願発明の精神を逸脱しない限り、適宜定めることができる。好ましくは、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体0.01〜3.0重量%に対し、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体1.0〜30.0重量%であり、より好ましくは、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体0.1〜2.0重量%に対し、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体2.0〜10.0重量%であり、さらに好ましくは、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体0.2〜1.0重量%に対し、ポリビニルピロリドン2.0〜8.0重量%である。
【0032】
尚、本願発明のマスカラ下地における水溶性ポリアクリル酸系高分子とポリビニルピロリドンの組み合わせは、本願発明の精神を逸脱しない限り、適宜定めることができる。従って、必ずしも、上述した水溶性ポリアクリル酸系高分子とポリビニルピロリドンとの組み合わせに限るものではない。また、具体的な組み合わせの一例としては、上述のアクペックHV−505E(販売元:住友精化)とPVPK30(販売元:アイエスピー・ジャパン)との組み合わせや、上述のPEMULEN TR−1(BFGoodrich社製)とPVPK30(販売元:アイエスピー・ジャパン)との組み合わせがあげられる。
【0033】
本願発明で採用する水は、特に定めるものではないが、一例として、化粧品に採用されている精製水を採用することができる。水の含量は、50〜98重量%以上が好ましく、より好ましくは、60〜95重量%であり、最も好ましくは、70〜90重量%である。もちろん、カルボキシビニルポリマーやポリビニルピロリドンおよび後述する他のマスカラ下地成分を加えた、全量が100重量%となるのを上限とするのはいうまでもない。
【0034】
本願発明では、水溶性アクリル酸系共重合体と、ポリビニルピロリドンと、水を含有することを特徴とするマスカラ下地であって、他の成分は、本願発明の精神を逸脱しない限り適宜定めることができる。具体的には、pH調整剤、皮膚調整剤、防腐剤、化粧品用収歛剤、保湿剤の少なくとも1種類以上を含めることができる。さらに、本願発明の精神に逸脱しない範囲で、他の皮膜剤、すなわち、ポリビニルピロリドン以外の皮膜剤、および、他の増粘剤、すなわち、水溶性アクリル酸系共重合体以外の増粘剤も含めることができる。これらに加えて、保湿剤、パール剤、色剤等を適宜添加することもできる。
【0035】
本願発明でいうpH調整剤とは、マスカラ下地のpHを調整するために添加されるものであり、本願発明の精神を逸脱しない限り、特に定めるものではない。本願発明のpH調整剤としては、塩基があげられる。塩基の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、アルギニン等をあげることができる。これらは、1種類を用いても良いし、2種類以上を用いても良い。塩基は、マスカラ下地が、好ましくは、pH6.0〜8.0に、より好ましくは、pH7.0〜7.5になるように添加する。
【0036】
皮膚調整剤は、特に定めるものではないが、例えば、グルタミン酸ナトリウム、1,3ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、濃グリセリン、ポリエチレングリコール、1,2−ペンタンジオール等を採用することができる。これらは、1種類を用いても良いし、2種類以上を用いても良い。
【0037】
防腐剤は、特に定めるものではないが、例えば、パラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール、デヒドロ酢酸ナトリウム等を採用することができる。パラオキシ安息香酸エステルは、メチルパラペンを原料とするものであっても、エチルパラペンを原料とするものであってもよい。もちろん、両方を採用してもよい。さらに、防腐剤は、これらの1種類を用いても良いし、2種類以上を用いても良い。
【0038】
化粧品用収歛剤は、特に定めるものではないが、例えば、無水エタノールを用いることができる。
【0039】
さらに、他の皮膜剤としては、ポリビニルピロリドン以外の皮膜剤であって、本願発明の精神を逸脱しない皮膜剤を採用することができる。
【0040】
また、他の増粘剤としては、上述の水溶性ポリアクリル酸系高分子以外の増粘剤であって、本願発明の精神を逸脱しない増粘剤を広く採用できる。例えば、カルボキシメチルセルロース、合成ケイ酸ナトリウム、キサンタンガム、タマリンドガム、サイクロデキストリン、ゴーカストビーカム、ヒドロキシエチルセルロース等があげられる。これらは、1種類を用いても良いし、2種類以上を用いても良い。
【0041】
本願発明のマスカラ下地の粘度は、好ましくは、3000〜90000cpsであり、より好ましくは、5000〜30000cpsであり、最も好ましくは、10000〜20000cpsである。この範囲内で睫に塗布することにより、マスカラ下地が睫につき易く、かつ、その上に塗布するマスカラもつき易くなるという利点がある。マスカラ下地の粘度は、水溶性ポリアクリル酸系高分子で、適宜調整することができる。このように、粘度を調整することにより、睫に塗布しやすいマスカラ下地を、睫の種類等に合わせて適宜設定することも可能である。
【0042】
粘度が3000〜90000cpsであり、かつ、pH6.0〜8.0がであるマスカラ下地として、例えば、少なくとも、水溶性ポリアクリル酸系高分子0.01〜3.0重量%、ポリビニルピロリドン1.0〜30.0重量%、塩基0.01〜2.50重量%、水50〜98重量%を含むマスカラ下地があげられる。より好ましくは、少なくとも、水溶性ポリアクリル酸系高分子0.1〜2.0重量%と、ポリビニルピロリドン2.0〜10.0重量%、塩基0.07〜1.40重量%、水50〜98重量%を含むマスカラ下地である。ここでの塩基は、水酸化カリウムまたは、水酸化ナトリウムが好ましい。
【0043】
具体的には、水溶性ポリアクリル酸系高分子と、ポリビニルピロリドンと、塩基と、水を含み、かつ、水の含量が50〜98重量%であることを特徴とするマスカラ下地があげられる。より具体的には、精製水、カルボキシメチルセルロースナトリウム、グルタミン酸ナトリウム、1,3−ブチレングリコール、パラオキシ安息香酸エステル、カルボキシビニルポリマー、水酸化カリウム、ポリビニルピロリドン、無水エタノールを含むマスカラ下地とすることができる。本願発明の好ましい含量比の一例として次のようなものがあげられる。尚、表中の単位は重量%である(以下、同じ)。
【0044】
【表1】
【0045】
【実施例1】
本願発明における水溶性ポリアクリル酸系高分子の効果について検討した。ここでは、カルボキシビニルポリマーおよびアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体を採用した。すなわち、表2に示すように、増粘剤として、▲1▼カルボキシビニルポリマーを用いた本願発明のマスカラ下地と、▲2▼アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体を用いた本願発明のマスカラ下地と、▲3▼当該マスカラ下地の成分のうち、水溶性ポリアクリル酸系高分子を他の増粘剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウムに代えたマスカラ下地とについて、下記の方法により比較を行った。それぞれのマスカラ下地のpHが7.2となるよう、水酸化カリウムおよび精製水を用いて調整を行った。(尚、マスカラ下地のpHは、その性質上、±0.2以内の誤差を生じることがある。以下、同じ。)。その結果を、表2に示した。
【0046】
《比較の方法》
上記▲1▼〜▲3▼のマスカラ下地を塗布して乾燥させた後、油系のマスカラ(商品名:サナ パワースタイル マスカラ ボリューム、販売元:(株)サナ)を塗布し、乾燥させた。その後、流水の下、コットンを用いてふき取った。評価は、(1)水洗いによるマスカラの落としやすさ、(2)マスカラ下地を塗布乾燥後の睫へのマスカラのつき易さ、(3)睫へのマスカラ下地のつき易さ、(4)睫に塗布したマスカラ下地の乾燥の速さについて、5人のテスタにより行った。評価は、4段階で示した。ここで、「◎」は非常に良好、「○」は良好、「△」はやや不良、「×」は不良を示す。
【0047】
【表2】
【0048】
表2に示すとおり、▲1▼または▲2▼のマスカラ下地を用いた場合、水で容易に落とすことが出来た。しかし、▲3▼のマスカラ下地では、マスカラの落ちがやや不良であった。また、マスカラのつき・マスカラ下地のつき・マスカラ下地の乾燥の速さについても、本願発明のマスカラ下地のような良好な結果は得られなかった。
【0049】
【実施例2】
カルボキシビニルポリマーの含量を代えてマスカラ下地の効果について検討した。ここでは、カルボキシビニルポリマーの含量を0〜3.0重量%まで変化させて検討した。その結果を下記表3に示す。ここで、各マスカラ下地の比較は、実施例1と同様の方法で行った。尚、カルボキシビニルポリマーの含量差から生じる調整は、精製水によって行った。それぞれのマスカラ下地のpHが7.2となるよう、水酸化カリウムおよび精製水を用いて調整を行った。
【0050】
【表3】
【0051】
ここで、カルボキシビニルポリマーの含量が0.01重量%より少ない場合は、マスカラ下地が睫に均一に塗布されず、すなわち、ムラが生じる場合があり、そのためマスカラの落としやすさがやや不良であった。これは、マスカラ下地の粘度が低くなっていることによるものである。特に、マスカラ下地の粘度が、3000cpsより低くなるとこのような現象が起きやすい。また、3.0重量%より多くした場合、マスカラ下地としては、粘度が高かった。そのため、当該マスカラ下地を、睫に塗布するために用いるブラシに付着しにくかった。
【0052】
【実施例3】
本願発明におけるポリビニルピロリドンの効果について検討した。すなわち、下記表4に示すように、▲1▼上記表1に表した本願発明のマスカラ下地と、当該成分中のポリビニルピロリドンを、それぞれ、▲2▼ポリビリルアルコール(原料名:信越ポバールPA−05、製造元:信越化学)に代えたマスカラ下地と、▲3▼ポリビニルアルコール(原料名:ゴーゼノールEG25、製造元:日本合成化学)に代えたマスカラ下地とについて、実施例1と同様の方法で比較した。それぞれのマスカラ下地のpHが7.2となるよう、水酸化カリウムおよび精製水を用いて調整を行った。
【0053】
【表4】
【0054】
表4に示すとおり、ポリビニルピロリドンに代えてポリビニルアルコールを用いた場合、マスカラの落としやすさがやや不良であった。また、マスカラのつき・マスカラ下地のつき・マスカラ下地の乾燥の速さについても、本願発明のマスカラ下地のような良好な結果は得られなかった。
【0055】
【実施例4】
ポリビニルピロリドンの含量を代えて、マスカラ下地の効果について検討した。下記表5に示すマスカラ下地は、上記表1において、ポリビニルピロリドンの含量割合を変化させたものである。ここで、各マスカラ下地について、実施例1と同様に比較を行った。尚、マスカラ下地の含量割合差から生じる調整は、精製水によって行った。それぞれのマスカラ下地のpHが7.2となるよう、水酸化カリウムおよび精製水を用いて調整を行った。
【0056】
【表5】
【0057】
ここで、ポリビニルピロリドンが、含まれていない場合、付着はするものの、皮膜となる成分に欠けるめ下地としての効果を果たさず、マスカラの落としやすさがやや不良であった。一方、30重量%より多い場合、それ以下のものより、塗布した部分が固まりやすかった。また、マスカラのつきがやや不良であった。
【0058】
【実施例5】
本願発明のマスカラ下地の効果を、市販されているマスカラを用い、その効果を検討した。すなわち、人間の腕に、上記表1に示す本願発明のマスカラ下地を塗布し、乾燥後、▲1▼(商品名:サナ パワースタイル マスカラ ボリューム、販売元:(株)サナ)、▲2▼マスカラ アクアレジスタントNo.1(イブサンローラン製)のいずれかを塗布した。当該マスカラの乾燥後、流水の元で、コットンを用いてふき取った。尚、上記▲1▼のマスカラは、一般的な油系マスカラの、上記▲2▼のマスカラは、一般的な乳化系のマスカラの一例に相当する。
【0059】
図1は、水洗い前後の腕の部分を写真撮影したものである。ここで、Bは、表1に示す本願発明のマスカラ下地を塗布し、その後上記▲1▼または▲2▼のマスカラを塗布したものである。Aは、比較実験例として、上記▲1▼または▲2▼のマスカラのみを塗布したものである。図1において、水洗い前は、全てのマスカラについてほぼ同じ状態であった。そして、水洗いによって、上記▲1▼、▲2▼のいずれのマスカラを採用した場合も、本願発明のマスカラ下地の上に塗布して場合(B)、完全に除去することができた。一方、本願発明のマスカラ下地を塗布しない場合(A)、流水では、全く落ちなかった。
【0060】
図1の結果より、本願発明のマスカラ下地は、油系、乳化系いずれのマスカラにも有効であることが認められた。油系、乳化系マスカラは、従来の水系マスカラ下地の上に塗布しても落ちないことが知られており、この点からも、本願発明のマスカラ下地は、有用である。
【0061】
【実施例6】
上記表1に示した本願発明のマスカラ下地と、従来から知られているマスカラ下地の効果の比較を行った。その結果を表6に示す。ここで、表6における、マスカラ下地▲1▼は、特開平4−173718号公報の表1の実施例1に示されたものをマスカラ下地として採用したものであり、マスカラ下地▲2▼は、特公平4−36130号公報の実施例2に示されたものをマスカラ下地として採用したものである。比較は、実施例1と同様に行った。
【0062】
【表6】
【0063】
上記▲1▼および▲2▼のマスカラ下地を用いた場合、マスカラの落ちはやや不良であった。また、マスカラのつき・マスカラ下地のつき・マスカラ下地の乾燥の速さについても、本願発明のマスカラ下地のような良好な結果は得られなかった。
【0064】
【実施例7】
さらに、本願発明の効果を検討するため、▲1▼上記表1に示した本願発明のマスカラ下地と、▲2▼表7、▲3▼表8、▲4▼表9に示す各種マスカラ下地を処方し、比較を行った。ここで、表7は、一般的な油系マスカラ下地の一例を、表8は、一般的なO/W乳化系マスカラ下地の一例を、表9は、一般的なW/O乳化系マスカラ下地の一例を示す。
【0065】
【表7】
【0066】
【表8】
【0067】
【表9】
【0068】
具体的には、人間の腕に、上記▲1▼〜▲4▼のマスカラ下地を塗布し、乾燥後、油系マスカラ(商品名:サナ パワースタイル マスカラ ボリューム、販売元:(株)サナ)を塗布した。油系マスカラの乾燥後、流水の下でコットンを用いてふき取った。比較例として、上記マスカラ下地を塗布していない部分にも、上記マスカラを塗布して、同様に行った。図2は、水洗い前後の腕の部分を写真撮影したものである。ここで、▲1▼は本願発明のマスカラ下地を、▲2▼は表7に示す油系マスカラ下地を、▲3▼は表8に示すO/W乳化系マスカラ下地を、▲4▼は表9に示すW/O乳化系マスカラ下地を、それぞれ塗布したものである。また、それぞれにおいて、マスカラ下地は、下半分にのみ塗布されている。
【0069】
水洗い前は、▲1▼〜▲4▼のすべてにおいて、特に違いはなかった。水洗い後、本願発明のマスカラ下地を用いた場合(▲1▼)のみ、水洗いで簡単に落ち、他のマスカラ下地(▲2▼〜▲4▼)をマスカラ塗布前に、塗布した場合は、全く効果が認められなかった(下半分)。また、マスカラ下地を採用しない場合(上半分)も、全くマスカラが落ちなかった。
【0070】
【実施例8】
本願発明のマスカラ下地の温度および光に対する耐性を検討した。すなわち、上記表1に記載のマスカラ下地を、表10に示すとおり、−5〜50℃の各温度、サイクル、および、光をあてた状態で、1ヶ月間静置し、その使用性・粘度・pHについて検討した。ここで、使用性については、マスカラの落ちやすさ、マスカラのつき、マスカラ下地のつき、マスカラ下地の乾きの早さについて総合的に評価し、変化の無い場合は、「変化無し」と示した。尚、サイクルとは、5℃の環境下と40℃の環境下に、6時間ごとに交互に置いたものである。これらの結果を表10に示す。
【表10】
【0071】
【発明の効果】
本願発明のマスカラ下地を塗布した場合、その上に塗ったマスカラを、特別な化粧落とし等を利用しなくとも、水洗いで簡単落とすことが可能になった。さらに、本願発明のマスカラ下地の効果は、マスカラの種類に関係なく採用することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明のマスカラ下地を塗布した場合の効果を示す。
【図2】本願発明のマスカラ下地を塗布した場合の各種マスカラの落ちやすさを示す。
【発明の属する技術分野】
本願発明は、マスカラ下地に関する。特に、マスカラを塗布したまま、マスカラごと水で容易に落とすことができるマスカラ下地に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、複数の透明マスカラが用いられている。例えば、睫用化粧料として、水溶性カルボキシビニルポリマーと、塩基性物質と、デキストリンとを含有するものが開示されている(特許文献1)。当該特許文献1には、前記睫用化粧料は、睫に濡れたようなつやと、ハリを与え、使用時のべたつきが少なく、自然な仕上がりを与え、しかも塗布後、経時でフレーキングを生じないと記載されている。
【0003】
また、睫用化粧料として、合成樹脂エマルジョンと平均置換度3以上の油溶性高置換度ショ糖脂肪酸エステル2〜40重量%を含有することを特徴とするものも開示されている(特許文献2)。当該特許文献2には、前記睫用化粧料は、カール効果に優れ使用性、仕上がり状態、経時安定性等に優れていると記載されている。
【0004】
さらに、皮膜型マスカラとして、ポリビニルアルコールと遊離型カルボキシビニルポリマーと水と塩基とを配合してなり、全体が透明な液状を形成していることを特徴とする透明な液状のものも開示されている(特許文献3)。当該特許文献3には、前記皮膜型マスカラは、長期間保存しても極めて安定であり、睫に塗布するに際しては伸びよく、また、均一に付着して、速やかに乾燥し、透明な皮膜を形成し、睫に自然なはり・色相・カール感を与えると記載されている。さらに、これらによって、自然なメイクアップ効果を付与し、かつ目元をぱっちりさせて、魅力を増大、保持し得るとも記載されている。
【0005】
さらにまた、皮膜型マスカラとして、ビニルピロリドン・酢酸ビニル共重合体とカルボキシビニルポリマーと塩基と水とエタノールの5成分を必須成分とする透明なものも開示されている(特許文献4)。当該特許文献4には、前記皮膜型マスカラは、睫に塗布することにより、毛表面に透明な皮膜を形成し、睫につやとハリを付与し、本来睫のもつ自然な色相を生かしながらカール力、セット力を挙げることができると記載されている。さらに、ボリューム感のある仕上がりを容易に得るための補助効果をも有するという特徴があると記載されている。
【0006】
上述のようなマスカラは、もともとは、自然な化粧を好む者を対象とするものである。しかしながら、マスカラのカール効果、ボリュームアップ効果を補強するために、上述のようなマスカラの上から、着色したマスカラを塗布する者も多い。
【0007】
そこで、マスカラ使用時の化粧効果およびその持続性を改善し、また使用性が良く、安全性、安定性も良好なマスカラ下地の検討がなされている。例えば、特許文献5には、マスカラ下地化粧料として、繊維、被膜形成性エマルションポリマー、水溶性被膜形成性樹脂を含有するものが当該課題を解決すると記載されている(特許文献5)。
【0008】
また、睫のボリュームアップ効果やカール効果等の向上したマスカラ下地についても検討されている。例えば、特許文献6には、マスカラ下地用化粧料として、油溶性樹脂と、水性成分と、無水ケイ酸を含有するものが当該課題を解決すると記載されている(特許文献6)。
【0009】
【特許文献1】特開平3−246214号公報
【特許文献2】特公平3−30568号公報
【特許文献3】特公平4−36130号公報
【特許文献4】特開平4−173718号公報
【特許文献5】特開2001−322913号公報
【特許文献6】特開2002−234819号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のマスカラやマスカラ下地は、落とす段階には、化粧落としを用いることを前提としており、手間がかかる。特に、一般的なマスカラやマスカラ下地は、通常の化粧落としとは別に、アイメイク専用の化粧落としを必要とする。すなわち、マスカラを使用する者は、通常のものとアイメイク専用のものと、2種類の化粧落としを用意する必要がある。さらに、汗や涙でにじみにくい、いわゆる油系や乳化系のマスカラを落とす場合は、アイメイク専用の化粧落としを用いても、マスカラを完全に落とすことが困難となることも多い。また、水系のマスカラを使用する場合、アイメイク専用の化粧落としを用いれば比較的良く落ちるが、化粧効果維持の観点からの問題も指摘されている。また、アイメイク専用の化粧落としは、瞼にも負担がかかる。
【0011】
これらの状況を考えると、油系・乳化系・水系いずれのマスカラを用いた場合であっても、化粧落としを使わずに、マスカラを落とせる手段が求められる。
【0012】
【課題を解決するための手段】
そこで、本願発明者らは、鋭意研究することにより、新たなマスカラ下地によって、上記課題を解決しうることを見出した。すなわち、水溶性ポリアクリル酸系高分子と、ポリビニルピロリドンと、水を含み、かつ、水の含量が50〜98重量%であることを特徴とするマスカラ下地を採用した。当該マスカラ下地の上にマスカラを塗布した場合、当該マスカラ下地と共に、マスカラを水で容易に落とすことが可能となる。つまり、睫のボリュームアップ等マスカラ本来の効果を維持しつつ、特別な化粧落とし等を使用せずに、水洗いするだけで、簡単にマスカラとマスカラ下地を落とすことが可能となる。特に、水系、乳化系、油系いずれのマスカラを用いた場合でもその効果が得られる。
【0013】
さらに、水溶性ポリアクリル酸系高分子0.01〜3.0重量%と、ポリビニルピロリドン1.0〜30.0重量%と、水50〜98重量%を含むことを特徴とするマスカラ下地;上記マスカラ下地において、水溶性ポリアクリル酸系高分子が、カルボシキビニルポリマーであるマスカラ下地;上記マスカラ下地において、水溶性ポリアクリル酸系高分子が、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体であるマスカラ下地を採用した。さらに、上記マスカラ下地と、マスカラからなるマスカラセットを採用した。
【0014】
【発明の実施の形態】
本願発明のマスカラ下地とは、マスカラを塗布する前に、睫に塗布するものをいう。本願発明のマスカラ下地は、マスカラを塗布する前に、睫に塗布し、これが乾燥した後、マスカラを塗布して使用する。マスカラを落とす際には、水洗いを行う。水洗いの方法は、一般的な方法を利用することができ、例えば、流水の下、コットンを用いてふき取る方法が採用できる。この水洗いという簡単な操作だけで、マスカラとマスカラ下地の両方を落とすことができる。もちろん、ファンデーション等の一般的な化粧用の化粧落としで落とすことも可能である。
【0015】
本願発明のマスカラ下地の後に塗布するマスカラは、その種類を特に定めるものではなく、広く一般的なマスカラを採用できる。すなわち、水系、油系、乳化系いずれのマスカラでも採用できる。
【0016】
ここで、本願発明のマスカラ下地を、水系マスカラ用のマスカラ下地として用いる場合、水洗いで容易に落とすことができるのに加え、マスカラが睫の上でにじみにくくなる、マスカラ下地とマスカラのなじみがよくなるといった効果も得られる。この結果、睫への塗布が容易になり、初心者でもマスカラを上手に塗布することが可能になる。
【0017】
次に、本願発明のマスカラ下地を、油系マスカラ用のマスカラ下地として用いる場合、水洗いで容易に落とすことができるのに加え、油系マスカラが本来的にもっている、高いカールアップ効果をさらに高めつつ、睫を痛めない、という利点もある。すなわち、本願発明のマスカラ下地には、油系マスカラから睫を保護する役割も備えている。また、マスカラ自体の耐水性も損なわれない。このように、油系マスカラを水で容易に落とすことが可能なマスカラ下地は、非常に有用である。
【0018】
さらに、本願発明のマスカラ下地を、乳化系のマスカラのマスカラ下地として用いる場合、水系成分をベースとして、油系成分を加えた乳化系マスカラ(以下、O/W乳化系マスカラ、と言うことがある)および油系成分をベースとして、水系成分を加えた乳化系マスカラ(以下、W/O乳化系マスカラ、と言うことがある)のいずれのマスカラ下地としても採用することができる。特に、O/W乳化系マスカラのマスカラ下地として用いる場合、マスカラが睫の上でにじみにくくなる、マスカラ下地とマスカラのなじみがよくなるといった効果も得られる。この結果、睫への塗布が容易になり、初心者でもマスカラを上手に塗布することが可能になる。さらに、マスカラ自体の耐水性も損なわれない。一方、W/O乳化系マスカラのマスカラ下地として用いる場合、カールアップ効果を維持しつつ、睫を痛めない、という利点がある。この場合も、マスカラ自体の耐水性は損なわれない。
【0019】
さらに、本願発明のマスカラ下地は、透明とすることが可能である。そして、透明マスカラ下地とした場合、その上に塗布するマスカラの色調変化が無いという効果も有する。すなわち、当該マスカラ下地は、透明のものの他、黒色・青色・茶色等いずれの色のマスカラにも採用することができる。もちろん、本願発明の精神を逸脱しない限り、有色としてもよい。例えば、黒・茶・濃紺等とすることがあげられる。
【0020】
加えて、本願発明のマスカラ下地は、マスカラのつきをよくする。また、にじみ防止の効果を有する為、マスカラの上に、さらに、塗布することにより、にじみ防止効果のあるマスカラコート剤としても利用することが可能である。また、マスカラ下地自体のつきもよく、その乾燥も速い。
【0021】
さらに加えて、本願発明のマスカラ下地は、熱に対して安定である、という特徴を有する。すなわち、−10℃〜60℃で、特に、−5℃〜50℃で、安定に保存することができる。さらに、本願発明のマスカラ下地は、光に対しても安定である。すなわち、保存する場合に、遮光性容器を使用しなくても保存が可能である。さらに、温度変化に対しても、安定である。
【0022】
本願発明のマスカラ下地を製品化する場合、例えば、従来のマスカラ用の容器に充填し、従来のマスカラ用のブラシを添付して販売することができる。
【0023】
本願発明でいう水溶性ポリアクリル酸系高分子とは、水溶性であって、アクリル酸、アクリル酸塩、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸塩および/またはメタクリル酸エステルの重合体をいう。ここでいう水溶性とは、水に溶解、懸濁、混合あるいは混和するものをいう。さらには、本願発明のマスカラ下地の他の成分と、層に分かれて分離せずに存在しうるものをいう。従って、一般的に「水溶性」として販売されているポリアクリル酸系高分子は、本願発明の水溶性ポリアクリル酸系高分子に含まれる。本願発明でいう水溶性ポリアクリル酸系高分子としては、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、メタクリル酸・アクリル酸アルキル共重合体、メタクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、アクリル酸・アクリル酸アルキル共重合体等を採用することができる。その他、ポリアクリル酸塩、ポリアクリル酸も採用することができる。これらは、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併せて用いてもよい。含量は、全体の0.01〜3.0重量%が好ましい。
【0024】
本願発明で採用するカルボキシビニルポリマーは、増粘剤として用いられるものであり、その種類等は、本願発明の精神を逸脱しない限り、特に定めるものではない。例えば、カルボキシビニルポリマーは、白色粉末の状態で販売されている市販品を採用することができる。具体的には、アクペックHV−505E(販売元:住友精化)、HV−501(販売元:住友精化)、HV−504(販売元:住友精化)、カーボポール941(BFGoodrich社製)、カーボポール934(BFGoodrich社製)、カーボポール940(BFGoodrich社製)、ハイビスワコー106(販売元:和光純薬工業)、ハイビスワコー105(販売元:和光純薬工業)、ハイビスワコー104(販売元:和光純薬工業)、ハイビスワコー103(販売元:和光純薬工業)、ジュンロンPW−110(販売元:日本純薬)、ジュンロンPW−111(販売元:日本純薬)、ジュンロンPW−150(販売元:日本純薬)等を用いることができる。
【0025】
カルボキシビニルポリマーの含有量は、好ましくは、0.01〜3.0重量%であり、より好ましくは、0.1〜2.0重量%であり、最も好ましくは0.2〜1.0重量%である。採用するカルボキシポリマーの平均分子量は、好ましくは、10万〜500万であり、より好ましくは、20万〜300万であり、最も好ましくは、200万〜300万である。カルボキシビニルポリマーの粘度は、0.2%溶液(pH7.2)の場合で、好ましくは、1000〜5万であり、より好ましくは、2500〜4万であり、最も好ましくは、15000〜3万である。さらに、0.5%溶液(pH7.2)の場合では、好ましくは、3000〜10万であり、より好ましくは、5000〜10万であり、最も好ましくは、45000〜7万である。また、透過率は、好ましくは、70〜99%、より好ましくは、80〜95%、最も好ましくは、82〜92%である。
【0026】
本願発明で採用するアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体は、増粘剤として用いられるものであり、その種類等は、本願発明の精神を逸脱しない限り、特に定めるものではない。例えば、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体は、白色粉末の状態で販売されている市販品を採用することができる。具体的には、PEMULEN TR−1(BFGoodrich社製)やPEMULEN
TR−2(BFGoodrich社製)を採用することができる。
【0027】
アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体の含有量は、好ましくは、0.01〜3.0重量%であり、より好ましくは、0.1〜2.0重量%であり、最も好ましくは0.2〜1.0重量%である。採用するアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体の平均分子量は、好ましくは、80万〜350万であり、より好ましくは90万〜170万である。アルキル基は、炭素数が10〜50のものを採用するのが好ましい。
【0028】
本願発明で採用するポリビニルピロリドンは、皮膜剤として用いられるものであり、その種類等は、本願発明の精神を逸脱しない限り、特に定めるものではない。例えば、粉末または溶液として販売されているものを採用することができる。具体的には、PVPK30(販売元:アイエスピー・ジャパン)、PVPK15(販売元:アイエスピー・ジャパン)、PVPK60(販売元:アイエスピー・ジャパン)、PVPK90(販売元:アイエスピー・ジャパン)、PVPK120(販売元:アイエスピー・ジャパン)、ルビスコールK17(販売元:BASF社製)、ルビスコールK30(販売元:BASF社製)、ルビスコールK80(販売元:BASF社製)、ルビスコールK90(販売元:BASF社製)の名前で知られている原料を用いることができる。
【0029】
ポリビニルピロリドンの含有量は、好ましくは、1.0〜30.0重量%であり、より好ましくは、2.0〜10.0重量%であり、最も好ましくは、2.0〜8.0重量%である。採用するポリビニルピロリドンの平均分子量は、好ましくは、5000〜数百万、より好ましくは、8000〜300万、最も好ましくは、5万〜7万である。
【0030】
本願発明で採用するカルボキシビニルポリマーとポリビニルピロリドンの構成比率は、本願発明の精神を逸脱しない限り、適宜定めることができる。好ましくは、カルボキシビニルポリマー0.01〜3.0重量%に対し、ポリビニルピロリドン1.0〜30.0重量%であり、より好ましくは、カルボキシビニルポリマー0.1〜2.0重量%に対し、ポリビニルピロリドン2.0〜10.0重量%であり、さらに好ましくは、カルボキシビニルポリマー0.2〜1.0重量%に対し、ポリビニルピロリドン2.0〜8.0重量%である。
【0031】
本願発明で採用するアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体とポリビニルピロリドンの構成比率は、本願発明の精神を逸脱しない限り、適宜定めることができる。好ましくは、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体0.01〜3.0重量%に対し、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体1.0〜30.0重量%であり、より好ましくは、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体0.1〜2.0重量%に対し、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体2.0〜10.0重量%であり、さらに好ましくは、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体0.2〜1.0重量%に対し、ポリビニルピロリドン2.0〜8.0重量%である。
【0032】
尚、本願発明のマスカラ下地における水溶性ポリアクリル酸系高分子とポリビニルピロリドンの組み合わせは、本願発明の精神を逸脱しない限り、適宜定めることができる。従って、必ずしも、上述した水溶性ポリアクリル酸系高分子とポリビニルピロリドンとの組み合わせに限るものではない。また、具体的な組み合わせの一例としては、上述のアクペックHV−505E(販売元:住友精化)とPVPK30(販売元:アイエスピー・ジャパン)との組み合わせや、上述のPEMULEN TR−1(BFGoodrich社製)とPVPK30(販売元:アイエスピー・ジャパン)との組み合わせがあげられる。
【0033】
本願発明で採用する水は、特に定めるものではないが、一例として、化粧品に採用されている精製水を採用することができる。水の含量は、50〜98重量%以上が好ましく、より好ましくは、60〜95重量%であり、最も好ましくは、70〜90重量%である。もちろん、カルボキシビニルポリマーやポリビニルピロリドンおよび後述する他のマスカラ下地成分を加えた、全量が100重量%となるのを上限とするのはいうまでもない。
【0034】
本願発明では、水溶性アクリル酸系共重合体と、ポリビニルピロリドンと、水を含有することを特徴とするマスカラ下地であって、他の成分は、本願発明の精神を逸脱しない限り適宜定めることができる。具体的には、pH調整剤、皮膚調整剤、防腐剤、化粧品用収歛剤、保湿剤の少なくとも1種類以上を含めることができる。さらに、本願発明の精神に逸脱しない範囲で、他の皮膜剤、すなわち、ポリビニルピロリドン以外の皮膜剤、および、他の増粘剤、すなわち、水溶性アクリル酸系共重合体以外の増粘剤も含めることができる。これらに加えて、保湿剤、パール剤、色剤等を適宜添加することもできる。
【0035】
本願発明でいうpH調整剤とは、マスカラ下地のpHを調整するために添加されるものであり、本願発明の精神を逸脱しない限り、特に定めるものではない。本願発明のpH調整剤としては、塩基があげられる。塩基の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、アルギニン等をあげることができる。これらは、1種類を用いても良いし、2種類以上を用いても良い。塩基は、マスカラ下地が、好ましくは、pH6.0〜8.0に、より好ましくは、pH7.0〜7.5になるように添加する。
【0036】
皮膚調整剤は、特に定めるものではないが、例えば、グルタミン酸ナトリウム、1,3ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、濃グリセリン、ポリエチレングリコール、1,2−ペンタンジオール等を採用することができる。これらは、1種類を用いても良いし、2種類以上を用いても良い。
【0037】
防腐剤は、特に定めるものではないが、例えば、パラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール、デヒドロ酢酸ナトリウム等を採用することができる。パラオキシ安息香酸エステルは、メチルパラペンを原料とするものであっても、エチルパラペンを原料とするものであってもよい。もちろん、両方を採用してもよい。さらに、防腐剤は、これらの1種類を用いても良いし、2種類以上を用いても良い。
【0038】
化粧品用収歛剤は、特に定めるものではないが、例えば、無水エタノールを用いることができる。
【0039】
さらに、他の皮膜剤としては、ポリビニルピロリドン以外の皮膜剤であって、本願発明の精神を逸脱しない皮膜剤を採用することができる。
【0040】
また、他の増粘剤としては、上述の水溶性ポリアクリル酸系高分子以外の増粘剤であって、本願発明の精神を逸脱しない増粘剤を広く採用できる。例えば、カルボキシメチルセルロース、合成ケイ酸ナトリウム、キサンタンガム、タマリンドガム、サイクロデキストリン、ゴーカストビーカム、ヒドロキシエチルセルロース等があげられる。これらは、1種類を用いても良いし、2種類以上を用いても良い。
【0041】
本願発明のマスカラ下地の粘度は、好ましくは、3000〜90000cpsであり、より好ましくは、5000〜30000cpsであり、最も好ましくは、10000〜20000cpsである。この範囲内で睫に塗布することにより、マスカラ下地が睫につき易く、かつ、その上に塗布するマスカラもつき易くなるという利点がある。マスカラ下地の粘度は、水溶性ポリアクリル酸系高分子で、適宜調整することができる。このように、粘度を調整することにより、睫に塗布しやすいマスカラ下地を、睫の種類等に合わせて適宜設定することも可能である。
【0042】
粘度が3000〜90000cpsであり、かつ、pH6.0〜8.0がであるマスカラ下地として、例えば、少なくとも、水溶性ポリアクリル酸系高分子0.01〜3.0重量%、ポリビニルピロリドン1.0〜30.0重量%、塩基0.01〜2.50重量%、水50〜98重量%を含むマスカラ下地があげられる。より好ましくは、少なくとも、水溶性ポリアクリル酸系高分子0.1〜2.0重量%と、ポリビニルピロリドン2.0〜10.0重量%、塩基0.07〜1.40重量%、水50〜98重量%を含むマスカラ下地である。ここでの塩基は、水酸化カリウムまたは、水酸化ナトリウムが好ましい。
【0043】
具体的には、水溶性ポリアクリル酸系高分子と、ポリビニルピロリドンと、塩基と、水を含み、かつ、水の含量が50〜98重量%であることを特徴とするマスカラ下地があげられる。より具体的には、精製水、カルボキシメチルセルロースナトリウム、グルタミン酸ナトリウム、1,3−ブチレングリコール、パラオキシ安息香酸エステル、カルボキシビニルポリマー、水酸化カリウム、ポリビニルピロリドン、無水エタノールを含むマスカラ下地とすることができる。本願発明の好ましい含量比の一例として次のようなものがあげられる。尚、表中の単位は重量%である(以下、同じ)。
【0044】
【表1】
【0045】
【実施例1】
本願発明における水溶性ポリアクリル酸系高分子の効果について検討した。ここでは、カルボキシビニルポリマーおよびアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体を採用した。すなわち、表2に示すように、増粘剤として、▲1▼カルボキシビニルポリマーを用いた本願発明のマスカラ下地と、▲2▼アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体を用いた本願発明のマスカラ下地と、▲3▼当該マスカラ下地の成分のうち、水溶性ポリアクリル酸系高分子を他の増粘剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウムに代えたマスカラ下地とについて、下記の方法により比較を行った。それぞれのマスカラ下地のpHが7.2となるよう、水酸化カリウムおよび精製水を用いて調整を行った。(尚、マスカラ下地のpHは、その性質上、±0.2以内の誤差を生じることがある。以下、同じ。)。その結果を、表2に示した。
【0046】
《比較の方法》
上記▲1▼〜▲3▼のマスカラ下地を塗布して乾燥させた後、油系のマスカラ(商品名:サナ パワースタイル マスカラ ボリューム、販売元:(株)サナ)を塗布し、乾燥させた。その後、流水の下、コットンを用いてふき取った。評価は、(1)水洗いによるマスカラの落としやすさ、(2)マスカラ下地を塗布乾燥後の睫へのマスカラのつき易さ、(3)睫へのマスカラ下地のつき易さ、(4)睫に塗布したマスカラ下地の乾燥の速さについて、5人のテスタにより行った。評価は、4段階で示した。ここで、「◎」は非常に良好、「○」は良好、「△」はやや不良、「×」は不良を示す。
【0047】
【表2】
【0048】
表2に示すとおり、▲1▼または▲2▼のマスカラ下地を用いた場合、水で容易に落とすことが出来た。しかし、▲3▼のマスカラ下地では、マスカラの落ちがやや不良であった。また、マスカラのつき・マスカラ下地のつき・マスカラ下地の乾燥の速さについても、本願発明のマスカラ下地のような良好な結果は得られなかった。
【0049】
【実施例2】
カルボキシビニルポリマーの含量を代えてマスカラ下地の効果について検討した。ここでは、カルボキシビニルポリマーの含量を0〜3.0重量%まで変化させて検討した。その結果を下記表3に示す。ここで、各マスカラ下地の比較は、実施例1と同様の方法で行った。尚、カルボキシビニルポリマーの含量差から生じる調整は、精製水によって行った。それぞれのマスカラ下地のpHが7.2となるよう、水酸化カリウムおよび精製水を用いて調整を行った。
【0050】
【表3】
【0051】
ここで、カルボキシビニルポリマーの含量が0.01重量%より少ない場合は、マスカラ下地が睫に均一に塗布されず、すなわち、ムラが生じる場合があり、そのためマスカラの落としやすさがやや不良であった。これは、マスカラ下地の粘度が低くなっていることによるものである。特に、マスカラ下地の粘度が、3000cpsより低くなるとこのような現象が起きやすい。また、3.0重量%より多くした場合、マスカラ下地としては、粘度が高かった。そのため、当該マスカラ下地を、睫に塗布するために用いるブラシに付着しにくかった。
【0052】
【実施例3】
本願発明におけるポリビニルピロリドンの効果について検討した。すなわち、下記表4に示すように、▲1▼上記表1に表した本願発明のマスカラ下地と、当該成分中のポリビニルピロリドンを、それぞれ、▲2▼ポリビリルアルコール(原料名:信越ポバールPA−05、製造元:信越化学)に代えたマスカラ下地と、▲3▼ポリビニルアルコール(原料名:ゴーゼノールEG25、製造元:日本合成化学)に代えたマスカラ下地とについて、実施例1と同様の方法で比較した。それぞれのマスカラ下地のpHが7.2となるよう、水酸化カリウムおよび精製水を用いて調整を行った。
【0053】
【表4】
【0054】
表4に示すとおり、ポリビニルピロリドンに代えてポリビニルアルコールを用いた場合、マスカラの落としやすさがやや不良であった。また、マスカラのつき・マスカラ下地のつき・マスカラ下地の乾燥の速さについても、本願発明のマスカラ下地のような良好な結果は得られなかった。
【0055】
【実施例4】
ポリビニルピロリドンの含量を代えて、マスカラ下地の効果について検討した。下記表5に示すマスカラ下地は、上記表1において、ポリビニルピロリドンの含量割合を変化させたものである。ここで、各マスカラ下地について、実施例1と同様に比較を行った。尚、マスカラ下地の含量割合差から生じる調整は、精製水によって行った。それぞれのマスカラ下地のpHが7.2となるよう、水酸化カリウムおよび精製水を用いて調整を行った。
【0056】
【表5】
【0057】
ここで、ポリビニルピロリドンが、含まれていない場合、付着はするものの、皮膜となる成分に欠けるめ下地としての効果を果たさず、マスカラの落としやすさがやや不良であった。一方、30重量%より多い場合、それ以下のものより、塗布した部分が固まりやすかった。また、マスカラのつきがやや不良であった。
【0058】
【実施例5】
本願発明のマスカラ下地の効果を、市販されているマスカラを用い、その効果を検討した。すなわち、人間の腕に、上記表1に示す本願発明のマスカラ下地を塗布し、乾燥後、▲1▼(商品名:サナ パワースタイル マスカラ ボリューム、販売元:(株)サナ)、▲2▼マスカラ アクアレジスタントNo.1(イブサンローラン製)のいずれかを塗布した。当該マスカラの乾燥後、流水の元で、コットンを用いてふき取った。尚、上記▲1▼のマスカラは、一般的な油系マスカラの、上記▲2▼のマスカラは、一般的な乳化系のマスカラの一例に相当する。
【0059】
図1は、水洗い前後の腕の部分を写真撮影したものである。ここで、Bは、表1に示す本願発明のマスカラ下地を塗布し、その後上記▲1▼または▲2▼のマスカラを塗布したものである。Aは、比較実験例として、上記▲1▼または▲2▼のマスカラのみを塗布したものである。図1において、水洗い前は、全てのマスカラについてほぼ同じ状態であった。そして、水洗いによって、上記▲1▼、▲2▼のいずれのマスカラを採用した場合も、本願発明のマスカラ下地の上に塗布して場合(B)、完全に除去することができた。一方、本願発明のマスカラ下地を塗布しない場合(A)、流水では、全く落ちなかった。
【0060】
図1の結果より、本願発明のマスカラ下地は、油系、乳化系いずれのマスカラにも有効であることが認められた。油系、乳化系マスカラは、従来の水系マスカラ下地の上に塗布しても落ちないことが知られており、この点からも、本願発明のマスカラ下地は、有用である。
【0061】
【実施例6】
上記表1に示した本願発明のマスカラ下地と、従来から知られているマスカラ下地の効果の比較を行った。その結果を表6に示す。ここで、表6における、マスカラ下地▲1▼は、特開平4−173718号公報の表1の実施例1に示されたものをマスカラ下地として採用したものであり、マスカラ下地▲2▼は、特公平4−36130号公報の実施例2に示されたものをマスカラ下地として採用したものである。比較は、実施例1と同様に行った。
【0062】
【表6】
【0063】
上記▲1▼および▲2▼のマスカラ下地を用いた場合、マスカラの落ちはやや不良であった。また、マスカラのつき・マスカラ下地のつき・マスカラ下地の乾燥の速さについても、本願発明のマスカラ下地のような良好な結果は得られなかった。
【0064】
【実施例7】
さらに、本願発明の効果を検討するため、▲1▼上記表1に示した本願発明のマスカラ下地と、▲2▼表7、▲3▼表8、▲4▼表9に示す各種マスカラ下地を処方し、比較を行った。ここで、表7は、一般的な油系マスカラ下地の一例を、表8は、一般的なO/W乳化系マスカラ下地の一例を、表9は、一般的なW/O乳化系マスカラ下地の一例を示す。
【0065】
【表7】
【0066】
【表8】
【0067】
【表9】
【0068】
具体的には、人間の腕に、上記▲1▼〜▲4▼のマスカラ下地を塗布し、乾燥後、油系マスカラ(商品名:サナ パワースタイル マスカラ ボリューム、販売元:(株)サナ)を塗布した。油系マスカラの乾燥後、流水の下でコットンを用いてふき取った。比較例として、上記マスカラ下地を塗布していない部分にも、上記マスカラを塗布して、同様に行った。図2は、水洗い前後の腕の部分を写真撮影したものである。ここで、▲1▼は本願発明のマスカラ下地を、▲2▼は表7に示す油系マスカラ下地を、▲3▼は表8に示すO/W乳化系マスカラ下地を、▲4▼は表9に示すW/O乳化系マスカラ下地を、それぞれ塗布したものである。また、それぞれにおいて、マスカラ下地は、下半分にのみ塗布されている。
【0069】
水洗い前は、▲1▼〜▲4▼のすべてにおいて、特に違いはなかった。水洗い後、本願発明のマスカラ下地を用いた場合(▲1▼)のみ、水洗いで簡単に落ち、他のマスカラ下地(▲2▼〜▲4▼)をマスカラ塗布前に、塗布した場合は、全く効果が認められなかった(下半分)。また、マスカラ下地を採用しない場合(上半分)も、全くマスカラが落ちなかった。
【0070】
【実施例8】
本願発明のマスカラ下地の温度および光に対する耐性を検討した。すなわち、上記表1に記載のマスカラ下地を、表10に示すとおり、−5〜50℃の各温度、サイクル、および、光をあてた状態で、1ヶ月間静置し、その使用性・粘度・pHについて検討した。ここで、使用性については、マスカラの落ちやすさ、マスカラのつき、マスカラ下地のつき、マスカラ下地の乾きの早さについて総合的に評価し、変化の無い場合は、「変化無し」と示した。尚、サイクルとは、5℃の環境下と40℃の環境下に、6時間ごとに交互に置いたものである。これらの結果を表10に示す。
【表10】
【0071】
【発明の効果】
本願発明のマスカラ下地を塗布した場合、その上に塗ったマスカラを、特別な化粧落とし等を利用しなくとも、水洗いで簡単落とすことが可能になった。さらに、本願発明のマスカラ下地の効果は、マスカラの種類に関係なく採用することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明のマスカラ下地を塗布した場合の効果を示す。
【図2】本願発明のマスカラ下地を塗布した場合の各種マスカラの落ちやすさを示す。
Claims (5)
- 水溶性ポリアクリル酸系高分子と、ポリビニルピロリドンと、水を含み、かつ、水の含量が50〜98重量%であることを特徴とするマスカラ下地。
- 水溶性ポリアクリル酸系高分子0.01〜3.0重量%と、ポリビニルピロリドン1.0〜30.0重量%と、水50〜98重量%を含むことを特徴とするマスカラ下地。
- 請求項1または2のいずれか1項において、水溶性ポリアクリル酸系高分子が、カルボシキビニルポリマーであるマスカラ下地。
- 請求項1または2のいずれか1項において、水溶性ポリアクリル酸系高分子が、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体であるマスカラ下地。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載のマスカラ下地と、マスカラからなるマスカラセット。
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