JP2004337961A - ハンダ取扱い用コテ先並びに同コテ先の製造方法及び製造装置並びに同コテ先を用いた電気ハンダゴテ及び電気ハンダ吸取りゴテ - Google Patents

ハンダ取扱い用コテ先並びに同コテ先の製造方法及び製造装置並びに同コテ先を用いた電気ハンダゴテ及び電気ハンダ吸取りゴテ Download PDF

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昌伸 布垣
Takashi Nagase
隆 長瀬
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Abstract

【課題】鉛フリーハンダを使用したときのハンダ取扱い用コテ先のハンダによる侵食防止とハンダ付け性またはハンダ除去性とを高めるとともに、コテ先端部の材質がハンダの種類や用途に応じて最適となるようなハンダ取扱い用コテ先を提供する。
【解決手段】電気ハンダゴテまたは電気ハンダ吸取りゴテのコテ先に用いられるハンダ取扱い用コテ先2であって、銅、銅合金、銀、銀合金の何れかからなるコテ先芯材10の少なくとも先端部を含む表面に、イオンプレーティングによる被膜20を形成する。被膜20の成分物質には、鉄、ニッケル、コバルト、銅、銀、錫などを用いる。
【選択図】 図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハンダ取扱い用コテ先、詳しくは電気ハンダゴテのコテ先チップまたは電気ハンダ吸取りゴテの吸取りノズルであって、銅、銅合金、銀または銀合金からなるコテ先芯材の先端にハンダによる侵食の防止策を施したハンダ取扱い用コテ先とその製造方法およびその製造装置、更にそのハンダ取扱い用コテ先を用いた電気ハンダゴテまたは電気ハンダ吸取りゴテに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子工業における接続、接合はハンダ付け法によって行われるのが一般的である。このハンダ付け法は、主にマスソルダリング法(一括ハンダ付け)と、マニュアルソルダリング法(手動ハンダ付け)に大別される。
【0003】
マスソルダリング法は、素子や部品をプリント基板に搭載した後、溶融ハンダ中に浸漬するフローソルダリング法と、ハンダ粒子とフラックスをバインダー(添加剤)によって混練したハンダペーストをプリント基板の接合部分に印刷した後、素子や部品を載せて加熱、ハンダ付けするリフローソルダリング法とがあり、いずれも多数箇所を同時にハンダ付け出来る特徴がある。
【0004】
一方、マニュアルソルダリング法は、電気ハンダゴテを使用してハンダ付けする方法で、従来から広く行われており、誰でも手軽に作業が出来るという特徴がある。そして、前記のマスソルダリング法で行った後のハンダ付け部の不良箇所を手直ししたり、マスソルダリング法でハンダ付け出来なかった部品の後付けをしたりするために、この電気ハンダゴテによるマニュアルソルダリング法が不可欠となっている。
【0005】
従来の電気ハンダゴテ用のコテ先チップは、銅、銅合金、銀または銀合金から成り、その先端部にはハンダによる侵食を防止するための、厚さ数十ないし数百μmの鉄めっきが施されている。そして、その鉄めっき部分にはハンダがコーティングされ、この部分でハンダ付け作業が行われるようになっている。
【0006】
ところで、ハンダの主要成分は錫と鉛(Sn−Pb共晶はんだに代表されるSn−Pb系ハンダ)であるのが通常であったが、近年、環境への配慮から鉛を主要成分としない、いわゆる鉛フリーハンダ(例えば、Sn−Cu系ハンダ、Sn−Ag系ハンダ、Sn−Ag−Cu系ハンダ等)が注目され、多用されるようになってきている。しかしこの鉛フリーハンダは、一般的にSn−Pb系ハンダよりもハンダ付け性(ハンダのぬれ性や拡がり易さなど、良好なハンダ付けが得られやすい性質)に劣る傾向がある。ハンダのぬれ性を悪化させる主な原因として、鉛フリーハンダはSn−Pb系ハンダよりも融点が20〜45℃程度高く、コテ先チップの先端が酸化し易くなることが挙げられる。このため、マニュアルソルダリング法によるハンダ付けの作業性が悪化し、その改善が求められていた。特に、鉛フリーハンダの採用によりマスソルダリング法でのハンダ付け不良が発生し易くなり、手直し頻度が増加傾向にあるため、その改善要求が強かった。
【0007】
そこで本願出願人は、コテ先チップのハンダによる侵食を鉄めっき品とほぼ同じ程度に維持しながらも、そのハンダ付け性を改善する技術を先に出願した(特許文献1参照。)。特許文献1では、従来の鉄めっきに替えてコテ先チップの先端部に鉄−ニッケル合金めっきを施したり、鉄−ニッケル合金製の被覆部材(バルク材)を設けたりしてハンダ付け性を改善している。
【0008】
また、ハンダ付けに関連する作業として、不要箇所のハンダを除去するハンダ除去作業があり、そのために電気ハンダ吸取りゴテが用いられている。電気ハンダ吸取りゴテは、内蔵したヒータ等の加熱手段により吸取りノズルを加熱し、この加熱された吸取りノズルの先端をハンダに当接してハンダを溶かすとともに、吸取りノズルの先端に開口した吸取り口から溶融ハンダを内部に吸引するものである。吸引は真空ポンプ等の吸引手段によって行われ、経路途中に設置したフィルタ付きタンクに溶融ハンダを貯溜する。
【0009】
この電気ハンダ吸取りゴテの吸取りノズルの、加熱した先端部をハンダに当接し、溶融させるという機能や、熱伝導性を確保するためにハンダぬれ性が求められることは電気ハンダゴテのコテ先チップと同様であり、その先端部には同様の鉄めっきが施されている。そして電気ハンダゴテのコテ先チップと同様に、鉛フリーハンダを用いる場合であってもハンダぬれ性を確保しつつ侵食を防止することが求められている。
【0010】
【特許文献1】
特開平10−274085号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記のような鉄−ニッケル合金めっきでは、コテ先チップや吸取りノズル(当明細書ではこれらを総称してハンダ取扱い用コテ先という)の先端部の酸化による寿命(ハンダのぬれ性が次第に低下し、ついにはぬれなくなったとき)は延びるものの、ハンダの侵食による寿命は鉄めっき品相当であった。ところが、鉛フリーハンダはSn−Pb系ハンダよりも融点が高い等の理由でハンダ取扱い用コテ先への侵食量が多いという特徴がある。このため、鉛フリーハンダを用いた場合の侵食量増加に伴う寿命低下に関しては未だ課題を残すものであった。
【0012】
また、めっき処理は、その排液が環境汚染物質となるため、近年の環境浄化に対する社会的要求に適合しないものになりつつあった。更に、めっき処理には20〜30時間程度を要するため、ハンダ取扱い用コテ先の生産性を向上させる上で大きな阻害要因となっていた。
【0013】
従って、例えば鉄−ニッケル合金めっきのめっき時間を延長し、膜厚を増加させて寿命を延長させるような対策は、前記めっき処理に伴う問題点を更に助長するものであり、現実的な解決策とはなり得ていなかった。
【0014】
また、ハンダ取扱い用コテ先の先端部に鉄−ニッケル合金製の被覆部材(バルク材)を設ける対策は、侵食量の増大に対する効果は望めるものの、次のような問題点があった。一般的にハンダのぬれ性と耐侵食性には相反する傾向があり、それらの特性はハンダの材質やコテ先端部の材質の影響が大きい。従って、ハンダの材質やコテ先端部の材質を考慮に入れながらハンダのぬれ性と耐侵食性とのバランス点を求めることが重要となる。従来、Sn−Pb系ハンダといえば殆どSn−Pb共晶ハンダであったが、鉛フリーハンダには前記のように様々な種類がある。従って、ハンダ取扱い用コテ先の先端部に鉄−ニッケル合金製の被覆部材を設けたとき、使用するハンダの種類によってその特性が変化してしまう、という問題が発生する。これに対し、使用するハンダの種類に応じて最適な材質を選択しようとしても、その選択自由度が小さく、満足な結果を得ることができなかった。或いは逆に、ユーザが用途によってハンダ付け性よりもコテ先の寿命延長を要望する場合や、その逆の場合などにおいて、コテ先の材質を最適なものとすることによってその要望に応えるといったことが困難であった。
【0015】
また、ハンダ取扱い用コテ先には、先端が先細の円錐状となったものの他に、円柱状、直方体状のもの等多くの種類があり、大きさも様々である。そしてそれらの多くはユーザの用途に応じた多品種少量生産品である。これらのハンダ取扱い用コテ先に対し、前記の被覆部材を設けるようにすると、その形状を所定のコテ先形状にするための多品種少量生産が必要となる。例えば金型を用いる場合には、コテ先の形状別に多種類の金型を準備する必要があり、生産性の悪化が避けられないものであった。
【0016】
本発明は、かかる事情に鑑み、鉛フリーハンダを使用したときのハンダ取扱い用コテ先のハンダによる侵食防止とハンダ付け性またはハンダ除去性とを高めるとともに、コテ先端部の材質がハンダの種類や用途に応じて最適となるようなハンダ取扱い用コテ先を提供するとともに、そのようなハンダ取扱い用コテ先を容易に製造でき、環境汚染物質の排出を削減するとともに製造時間を短縮し、更に多品種少量生産にも容易に対応することのできるハンダ取扱い用コテ先の製造方法および製造装置を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、電気ハンダゴテまたは電気ハンダ吸取りゴテのコテ先に用いられるハンダ取扱い用コテ先であって、銅、銅合金、銀、銀合金の何れかからなるコテ先芯材の少なくとも先端部を含む表面に、イオンプレーティングによる被膜が形成されていることを特徴とする。
【0018】
イオンプレーティングとは、電磁界を印加して予め発生させたプラズマ中に、特定の目的物質を蒸発、或いはスパッタさせた原子を混入することによりイオン化または励起させ、そのプラズマに対して被加工品を負電位に保つことにより、被加工品表面に薄膜を形成する成膜被覆法であって、薄膜形成の物理的手法(PVD)の一種として一般的に知られているものである。従来、イオンプレーティングは半導体等の結晶成長や微細構造研究、その他超硬工具表面加工、表面装飾などに広く用いられてきた。その膜厚は10μm程度以下で用いられ、それ以上に厚くしても被覆状態が悪く、利用不可となるというのが常識であった。
【0019】
実際、イオンプレーティングによる成膜被覆をハンダ取扱い用コテ先に設けた例はこれまで内外に存在しなかった。その理由として、ハンダ取扱い用コテ先に必要とされためっきの膜厚は200μm程度以上であったため、その膜厚の隔たりが大きく、イオンプレーティングをめっきの代替手法として着想する人がいなかったことが挙げられる。従って、厚い成膜をイオンプレーティングに要求する需要がない為、その成否が深く検証されることもなく、更にはめっきに替えてイオンプレーティングとするにあたって直面する問題点が抽出されることも解決されることもなかったと考えられる。
【0020】
本発明の発明者は、鋭意研究により、めっきの代替技術としてイオンプレーティングによる被膜をハンダ取扱い用コテ先に実用化することを着想し、それが前記課題を全て解決する格段の効果を奏することを見出した。そして、その実施にあたって直面する問題点を抽出し、解決することによって、本発明をより一般化して有益な技術とするに至った。
【0021】
請求項1の発明によると、ハンダ取扱い用コテ先にめっきを施したり、先端部に被覆部材を設けたりする必要がなく、イオンプレーティングによる被膜によってハンダによる侵食を防止することができる。イオンプレーティングを行う成分物質は、一成分であっても複数成分であっても良いが、複数成分とした場合、その成分組み合わせと含有率の選択自由度はめっきに比べて格段に高い。従って、コテ先端部表面の材質をハンダの種類や用途に応じて最適化することが容易にできる。
【0022】
また、金型等も必要とせず、様々な幾何学的形状に対して均一な膜厚の被膜を容易に形成することができる。その結果、コストアップや生産性の低下を排除した多品種少量生産が可能になる。
【0023】
更に、成膜速度を容易に増大させることが可能であり、例えばめっきの10倍以上の成膜速度(250μm/h)としても、めっきによる被膜に対しその表面粗さが1/10程度の滑らかな被膜を得ることができた。即ち、被膜の形成時間を格段に短縮することができ、大幅に生産性を向上させることができる。
【0024】
その上、めっき液を使用しないドライプロセスを採用することによって、めっき液に含まれる被膜組成である目的的反応元素以外の物質を殆ど取り扱わなくて済むので、環境への悪影響を確実に防止することができる。また、排液処理費用も不要となり、コストを低減することができる。
【0025】
請求項2の発明は、請求項1記載のハンダ取扱い用コテ先において、前記被膜の成分物質には、鉄、ニッケル及びコバルトのうち少なくとも1種以上を含むことを特徴とする。
【0026】
このようにすると、鉄、あるいはその同属元素であって鉄と特性の近いニッケルやコバルト、又はそれらの組み合わせを主要成分とする被膜が得られ、ハンダの耐侵食性、ハンダぬれ性ともに高いコテ先チップを得ることができる。特に、鉄を基本とし、それにニッケルやコバルトを添加した場合は、鉄単体の被膜としたものよりも更に耐侵食性やハンダぬれ性を高めることができる。
【0027】
請求項3の発明は、請求項2記載のハンダ取扱い用コテ先において、前記被膜の成分物質における、鉄、ニッケル及びコバルトの合計含有率が、60質量%乃至99.7質量%であることを特徴とする。
【0028】
このようにすると、主要成分としての鉄、ニッケル及びコバルトの特性が有効に作用し、ハンダの耐侵食性やハンダぬれ性を充分高めることができる。
【0029】
請求項4の発明は、請求項2乃至3のいずれか1項に記載のハンダ取扱い用コテ先において、前記被膜の成分物質には、銅、銀、錫および炭素のうち少なくとも1種以上を含むことを特徴とする。
【0030】
このようにすると、ハンダ付け性を更に向上させたり、更にハンダ取扱い用コテ先の寿命を延ばしたりすることができる。即ち、銅、銀および錫は主としてハンダのぬれ性を高めてハンダ付け性を向上させ、炭素は主としてハンダに対する耐侵食性を向上させ、寿命を大幅に延ばす。
【0031】
請求項5の発明は、請求項4記載のハンダ取扱い用コテ先において、前記被膜の成分物質における、銅、銀、錫および炭素の合計含有率は、0.3質量%乃至40質量%であることを特徴とする。
【0032】
このようにすると、これら銅、銀、錫および炭素の量が少なすぎて効果が不十分であったり、多すぎて弊害をもたらしたりするようなことがなく、最適な成分比率の設定とすることができる。
【0033】
請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のハンダ取扱い用コテ先において、前記被膜の膜厚は、50μm乃至500μmであることを特徴とする。
【0034】
このように、イオンプレーティングとしては格段に膜厚の大きな被膜とすることにより、耐侵食性の高いハンダ取扱い用コテ先を得ることができる。膜厚は薄過ぎると耐侵食性が低下し、厚過ぎるとコテ先への伝熱速度が低下するので、50μm乃至500μm、更に望ましくは100μm乃至350μmとするのが好適である。
【0035】
請求項7の発明は、発熱体を備えた本体に、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のハンダ取扱い用コテ先を、交換可能なコテ先チップとして備えたことを特徴とする電気ハンダゴテである。
【0036】
請求項8の発明は、発熱体を備えた本体に、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のハンダ取扱い用コテ先を、交換可能な吸取りノズルとして備えたことを特徴とする電気ハンダ吸取りゴテである。
【0037】
これらのような電気ハンダゴテまたは電気ハンダ吸取りゴテにすると、鉛フリーハンダのハンダ付けやハンダ除去において、ハンダ取扱い用コテ先の交換回数を減少させるとともに作業性を向上させ、更に高い技術を持った作業者でなくても、高品質のハンダ付けを容易に行ったり、はんだ除去を容易に行ったりすることができる。
【0038】
請求項9の発明は、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のハンダ取扱い用コテ先を製造する方法であって、アセチレン、メタン等の炭素化合物、或いは希ガス等のプラズマ雰囲気中に、前記成分物質を蒸発、或いはスパッタさせて混入し、イオン化し、前記プラズマに対して所定の負のバイアス電位を印加することにより、前記コテ先芯材の少なくとも先端部に前記成分物質の被膜を形成するイオンプレーティングを行い、その成膜工程の一部または全工程で、前記コテ先芯材の表面温度が300℃乃至460℃となるように調整することを特徴とする。
【0039】
イオン化した成分物質(イオン粒子)は、蒸発源側からコテ先芯材側に拡散する。このとき、例えばコテ先芯材の先端を蒸発源に対向するように配することによって、コテ先芯材の先端にイオン粒子を蒸着させることができる。
【0040】
しかし、従来の一般的なイオンプレーティングでは、コテ先の最先端部の被膜厚さが極端に厚くなったり、それより基端側では逆に他の部分より薄くなったりするといった膜厚の不均一が発生することがある。それはあたかも先端付近の被膜がずり落ち、最先端部に堆積したかのような形態となっている(図9(b)参照。当明細書ではこれをずり落ち現象と称する)。このずり落ち現象は、成膜速度を上昇させるほど、またコテ先芯材の蒸着面が鉛直に近いほど、顕著に発生する。このことから、ずり落ち現象は、入射イオン粒子が最先端部に集中する結果、その先端部に極端な温度上昇が発生し、このため被膜の粘度が低下し、被膜にかかる重力の表面方向分力を支えきれなくなるために発生すると考えられる。
【0041】
一般的なイオンプレーティングが蒸着面の温度調整を一切行わないのに対し、本発明では300℃乃至460℃となるように調整するので、コテ先芯材の温度上昇が抑制され、ずり落ち現象を防止することができる。またこのような温度調整によって、成膜速度を上昇させてもずり落ち現象が発生し難くなり、生産性を向上させることが容易となる。
【0042】
請求項10の発明は、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のハンダ取扱い用コテ先を製造する方法であって、アセチレン、メタン等の炭素化合物、或いは希ガス等のプラズマ雰囲気中に、前記成分物質を蒸発、或いはスパッタさせて混入し、イオン化し、前記プラズマに対して所定の負のバイアス電位を印加することにより、前記コテ先芯材の少なくとも先端部に前記成分物質の被膜を形成するイオンプレーティングを行い、その成膜工程の一部または全工程で、前記コテ先芯材の表面に繋がるプラズマからの磁力線が形成されるような磁場を印加することを特徴とする。
【0043】
このように構成すると、イオン粒子が磁力線に沿って拡散する性質を利用して、より多くのイオン粒子をコテ先芯材の表面に入射させることができ、成膜速度を高めることができる。更にその成膜工程の一部または全工程で、前記コテ先芯材の表面温度が300℃乃至460℃となるように調整(請求項11)すれば、成膜速度を高めつつずり落ち現象を防止することができる。
【0044】
請求項12の発明は、請求項9乃至11記載のハンダ取扱い用コテ先の製造方法において、前記成膜工程の一部または全工程で、前記コテ先芯材を、その軸線方向と前記イオン化した成分物質の拡散方向とが交差するように設置するとともに、その軸線を中心に自転させることを特徴とする。
【0045】
このようにコテ先芯材を、その軸線方向とイオン粒子の拡散方向とが交差するように設置すると、イオン粒子がコテ先芯材の先端部に入射する角度を直角に近づけることができ、より効率的に被膜を形成することができる。なお、単にこのように設置しただけでは、コテ先芯材の蒸発源側の反対側にイオン粒子が入射し難くなるので膜厚ムラが生じてしまう。本構成では、コテ先芯材を、その軸線を中心に自転させるので、均等にイオン粒子を入射させることができ、均一な厚さの被膜を形成することができる。
【0046】
請求項13の発明は、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のハンダ取扱い用コテ先を製造する装置であって、アセチレン、メタン等の炭素化合物、或いは希ガス等のプラズマ雰囲気中に、前記成分物質を蒸発、或いはスパッタさせて混入し、イオン化し、前記プラズマに対して所定の負のバイアス電位を印加することにより、前記コテ先芯材の少なくとも先端部に前記成分物質の被膜を形成するイオンプレーティング手段を備え、そのイオンプレーティング手段は、その成膜工程の一部または全工程で前記コテ先芯材の表面温度が300℃乃至460℃となるように調整する温度調整手段を含むことを特徴とする。
【0047】
この装置によると、請求項9記載の製造方法を具体的に実現し、その作用効果を確実に奏することができる。
【0048】
請求項14の発明は、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のハンダ取扱い用コテ先を製造する装置であって、アセチレン、メタン等の炭素化合物、或いは希ガス等のプラズマ雰囲気中に、前記成分物質を蒸発、或いはスパッタさせて混入し、イオン化し、前記プラズマに対して所定の負のバイアス電位を印加することにより、前記コテ先芯材の少なくとも先端部に前記成分物質の被膜を形成するイオンプレーティング手段を備え、そのイオンプレーティング手段は、その成膜工程の一部または全工程で、前記コテ先芯材の表面に繋がるプラズマからの磁力線が形成されるような磁場を印加する磁場印加手段を含むことを特徴とする。
【0049】
この装置によると、請求項10記載の製造方法を具体的に実現し、その作用効果を確実に奏することができる。そして、磁力線を前記コテ先芯材の表面に交差させるとともに、前記コテ先芯材の最先端に近づくほど磁力線密度が低下するように調整する磁力線空間分布調整手段を含む(請求項15)ようにすれば、コテ先芯材の形状に起因する、入射イオン粒子の先端部への過度の集中が緩和されるので、ずり落ち現象を効果的に防止することができる。更に、その成膜工程の一部または全工程で前記コテ先芯材の表面温度が300℃乃至460℃となるように調整する温度調整手段を含む(請求項16)ようにすれば、ずり落ち現象の防止効果をより高めることができる。
【0050】
請求項13乃至16記載のハンダ取扱い用コテ先の製造装置において、前記イオンプレーティング手段は、その成膜工程の一部または全工程で、前記コテ先芯材の軸線方向と前記イオン化した成分物質の拡散方向とが交差するように設置された前記コテ先芯材を、その軸線を中心に自転させる自転手段を含む(請求項17)ようにすれば、更に請求項12記載の製造方法による作用効果を付加した装置とすることができる。ここで、この自転手段は、前記コテ先芯材の軸方向と略平行に設けられ、その両側から前記コテ先芯材を挟持する第1挟持板及び第2挟持板と、前記第1挟持板と第2挟持板とを、少なくともその一方をその板面と略垂直な回転軸周りに回転させる挟持板回転手段とを含む(請求項18)ようにすれば、簡単な構造で多数のコテ先芯材を同時に自転させることができ、生産性を向上させることができる。
【0051】
なお、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のハンダ取扱い用コテ先は、請求項9乃至12のいずれか1項に記載のハンダ取扱い用コテ先の製造方法または請求項13乃至18のいずれか1項に記載のハンダ取扱い用コテ先の製造装置によって製造すれば、前記のように格段の効果を得ることができるが、これらの方法、装置によって製造されたものに限定するものではなく、他の方法、他の装置を用いて製造しても良い。例えば従来から知られている一般的なイオンプレーティング法、イオンプレーティング装置によって製造しても良い。
【0052】
また、請求項13乃至18のいずれか1項に記載のハンダ取扱い用コテ先の製造装置は、蒸着面の温度調整を行う必要のある他の用途のイオンプレーティングに対しても応用できる装置であり、その用途をハンダ取扱い用コテ先に限定するものではない。
【0053】
【発明の実施の形態】
本発明の第1実施形態を図1〜図9によって説明する。図1は、電気ハンダゴテ1の先端部付近の正面図であり、図2はその分解斜視図である。電気ハンダゴテ1の先端部には、保護パイプ3に格納され、円錐状の先端が保護パイプ3から突出するコテ先チップ2(ハンダ取扱い用コテ先)が設けられている。保護パイプ3は袋ナット4によって電気ハンダゴテ1のニップル6に固定されている。コテ先チップ2の、保護パイプ3に覆われた円柱状の胴部の内側には凹部11(図3参照)が設けられている。その凹部11に、電気ハンダゴテ1の本体7から突出したセラミックヒータ5が嵌合するように組み立てられている。セラミックヒータ5は、図外の電源スイッチをオンにすることにより発熱する発熱体で、図外のサーモスタット機構により、調節可能な所定の温度範囲を維持するようになっている。
【0054】
図3は、図2におけるコテ先チップ2のIII−III断面図である。コテ先チップ2は、胴部が円柱状、先端が円錐状に成形されたコテ先芯材10の先端部に、被膜20(膜厚は50μm〜500μm)が形成されたものである。コテ先芯材10の材質は、熱伝導性や電気伝導性が高い銅、銅合金、銀、または銀合金が好適であり、コスト面を考慮すると比較的廉価な銅または銅合金が望ましい。被膜20が設けられた先端部は、直接ハンダと接触し、ハンダを溶融させる部分である。通常の使用形態では、被膜20の先端部はハンダ層8に被覆されている。被膜20の成分物質は、鉄を主要成分とし、その他にニッケル、コバルト、銅、銀、錫および炭素などを選択的に所定の含有率で含有するものである(成分の詳細については後述する)。被膜20は、この成分物質をイオンプレーティングによってコテ先芯材10の先端部に蒸着することによって得られる。
【0055】
被膜20は、従来から知られた一般的なイオンプレーティングによっても形成することができるが、その膜厚が格段に厚い上、蒸着面が平面ではなく立体面であるため、効率良く、しかも均一に成膜するのは困難である。当実施形態では、そのような問題を解決する製造装置(詳細は後述する)によって被膜20を形成している。なお、コテ先チップ2の、ハンダ層8に被覆されない部分には、薄いクロムめっき又はイオンプレーティングによる2〜5μm程度のコーティング(成分はモリブデン、タングステンカーバイド、クロム、チタン、ステンレス又はセラミックス等)が施されている。これらはハンダにぬれないので、ハンダ層8が図3の状態から基端側に拡がることはない。
【0056】
以上のような構造により、電気ハンダゴテ1は、図外の電源スイッチをオンとすることにより、セラミックヒータ5が発熱する。その熱は、コテ先チップ2の凹部11から被膜20の表面に素早く、効率良く伝達される。そして、被膜20の先端部のハンダ層8において、ハンダの温度が融点を超えるとハンダが溶融し、新たに供給されるハンダとともにハンダ付けを行う。
【0057】
ここで、被膜20の先端部がハンダ層8に被覆されているので、ハンダ付けの際、溶融したハンダ層8が熱の媒体となって、ハンダ付け部に熱を供給し、良好なハンダ付けを行うことができる。被膜20にハンダ層8を形成するためには、ハンダにぬれやすい性質、いわゆるハンダぬれ性が高いことが求められるが、このハンダぬれ性は良好なハンダ付けを得るための重要な性質である。被膜20にハンダぬれ性がないと、ハンダ付け部に熱を供給する経路が被膜20との接触点のみとなり、熱の伝達性が極めて悪化し、良好なハンダ付けが得られなくなるからである。
【0058】
また、はんだ付けを多数回行うに従い、被膜20がはんだに侵食される、いわゆるハンダ喰われ現象が発生する。この侵食量は少ないのが望ましいが、温度が高いほど多くなるので、融点の高い鉛フリーハンダは、Sn−Pb系ハンダよりも不利な条件となる。また、同じ温度でも一般的に鉛フリーハンダはSn−Pb系ハンダよりも錫の含有率が高い等の理由により、侵食量が多くなる。被膜20は、その含有成分を調整(例えばCoを添加)することにより、従来の鉄めっきよりも高い耐侵食性を得ることができる。
【0059】
ハンダ付けに際し、コテ先の温度管理は重要で、Sn−Pb共晶ハンダ使用時には約340℃、鉛フリーハンダ使用時には約380℃(Sn−0.7%Cuハンダの場合)になるように調整して使用する。温度を上げ過ぎたり、多数回はんだ付けを行ったりしたコテ先は、表面が黒色化してハンダぬれ性を喪失し、寿命となる。そのような場合や用途に応じてコテ先の形状や材質を変更したいときは、袋ナット4を弛めることにより図2の状態に分解し、コテ先チップ2を容易に交換することができる。
【0060】
次に、被膜20の成分について説明する。図4は、被膜20の成分物質の質量配分(%)を示す成分表である。表の縦軸は成分物質の組み合わせ類別に付したタイプを示す。ここでは10タイプを列挙しているが、特許請求の範囲内で他の好適な組み合わせとしても良い。横軸は成分物質の種類を示す。主要成分として、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)及びコバルト(Co)のうち少なくとも1種以上が選択される。タイプ8乃至10のものは、これら主要成分のみからなる。タイプ1乃至7のものには、更に添加成分として銅(Cu)、銀(Ag)、錫(Sn)及び炭素(C)のうち少なくとも1種以上が選択的に添加される。各欄の上段には各成分の狙いの質量%を示し、下段括弧内には好適な範囲(タイプ8乃至10では省略)を示す。
【0061】
例えばタイプ1は、93.2%Fe−5.5%Cu−1.3%Agという配分となっている。そして、各成分の好適な範囲としてはFe:88〜98.5%、Cu:1〜10%、Ag:0.5〜2%となっている。タイプ2〜10の表記もこれに準ずる。これらの各成分は、好適な範囲内でその比率を決定して良いが、タイプ1〜7では、主要成分の合計が60〜99.7%の範囲内、添加成分の合計が0.3〜40%の範囲内となるように調整される。例えばタイプ2では、Cu:10〜38%、Ag:2〜20%の範囲内で決定して良いが、その合計が40%を越えることのないように調整される。
【0062】
Feは、ハンダの耐侵食性に勝れることから各タイプにおいて重要な成分となっている。特にタイプ8は、Feのみが用いられている。
【0063】
Ni、Coは、周期律表VIII族に属するFe族である。従ってNiやCoはFeと類似した特性を有し、Feの代替基材となるほか、組み合わせによってはFe単体を用いるよりも優れた特性を示す。タイプ4、6、9及び10にはNiが、タイプ5、6及び10にはCoが、そしてタイプ6、10にはその両方が用いられている。
【0064】
FeとNiとを含む被膜20(タイプ4、6、9、10)は、Feのみの被膜20に比べてハンダ付け性が改善される。その際のNiの添加量は50%以下が望ましい。50%を超えると耐侵食性が低下し、ハンダの侵食が急速に進行するようになる。
【0065】
FeとCoとを含む被膜20(タイプ5、6、10)は、ハンダによる侵食を抑止する作用が特に大である。Coの添加量は20%以下が望ましい。20%を超えるとハンダ付け性を低下させ、またコストアップとなる。
【0066】
Cu、AgまたはSnを含む被膜20(タイプ1〜6)は、ハンダ付け性を更に向上する作用がある。Cuの添加量は1〜40%が適量で、1%未満では作用効果が少なく、40%を超えると被膜20の耐侵食性が低下する。なかでも、比較的寿命の延長を優先する場合は10%以下が望ましく、10%を超えると、ハンダ付け性を優先する場合に好適な仕様となる。Agの添加量は0.5〜20%が好適で、20%を超えるとコストアップが大となる。Snの添加量は5%以下が好適で、それを超えると被膜20が脆弱化する場合がある。
【0067】
また、0.8%程度のCを用いる(タイプ7)と、コテ先チップ2の耐侵食性が格段に向上し、寿命を大幅に延ばすことができる。
【0068】
次に、被膜20の結晶構造について説明する。イオンプレーティングによる被膜20は、外観上めっきと類似しているが、その結晶構造はめっきとは全く異なっている。図5は、被膜20(Fe)のX線回折結果を示す。横軸に2θ(θはX線入射角。単位は°)、縦軸にX線の反射強度(cps)を示す。グラフの実線はイオンプレーティングによる被膜20のデータ、破線は比較のためのFeめっきのデータである。何れも、約45°及び約82°のポイントにピークを持つが、最大のピークは、被膜20(イオンプレーティング)では約82°のポイントに、Feめっきでは約45°のポイントにある。この特性は、Feめっきの結晶構造がb.c.c.(体心立方晶)であるのに対し、イオンプレーティングでは46面体構造(Tetraxishexa hedron)となることを示している。
【0069】
また表面粗さは、Feめっきでは8μm/mm程度であるのに対し、イオンプレーティングによる被膜20では0.5μm/mm以下であり、Feめっきの1/10以下という高い平滑性を示した。基材の平滑性を上げれば、更に被膜の平滑性向上が見込まれる。また、イオンプレーティング品のなかでも、Ni被膜、Fe被膜、Fe−Ni−Co被膜の順に平滑性が高いという結果が得られた。成膜表面の平滑性が高いと、被膜表面とハンダとがなじみ易く、ハンダぬれ性が向上するので、はんだ付け性が向上する。
【0070】
次に、被膜20をイオンプレーティングにより形成した場合の、ハンダ付け性の評価結果について説明する。評価は、ハンダ拡がり試験にて行った。
【0071】
図6は、ハンダ拡がり試験の試験要領を示す説明図である。試験片90は、25mm角の銅板上に50μmの厚みでイオンプレーティングによる被膜を形成したものである。比較試験として、同厚の鉄めっきを施したものも準備した。希釈フラックス92はイソプロパノールで10倍に希釈したフラックス(HAKKO001(商品名)を使用)である。評価ハンダ94は、φ1mm×40mmの鉛入り糸ハンダ(Hakko HEXSOL(商品名)を使用)で、予めφ40mmの丸棒に巻き付けて癖つけを施したものである。
【0072】
試験は、以下の要領で実施した。試験片90上に、希釈フラックス92を20μl滴下し、その上に評価ハンダ94を載置する。その状態で高温炉内で400℃、1hr加熱後、金属板上で空冷し、溶融した評価ハンダ94の拡がり面積を測定した。拡がり面積が大きいほど、ぬれ性が高い、即ちハンダ付け性が良好であることを示す。
【0073】
試験片90は(1)Fe被膜品90a、(2)Ni被膜品90b、(3)Fe−Ni−Co被膜品90c、(4)Feめっき品(化学研磨なし)90d、(5)Feめっき品(化学研磨あり)90eの5種類準備した。90d及び90eは比較試験用である。試験は各2サンプル実施した。
【0074】
図7に拡がり試験結果を示す。横軸にFe被膜品90a、Ni被膜品90b、Fe−Ni−Co被膜品90c、Feめっき品(化学研磨なし)90d、Feめっき品(化学研磨あり)90eの各試験片を示し、縦軸にFeめっき品(化学研磨なし)90dの拡がり面積を1としたときの各拡がり面積の比を示す。グラフでは、基準となるFeめっき品(化学研磨なし)90dの結果をクロスハッチングで、Feめっき品(化学研磨あり)90eの結果をハッチングで示す。
【0075】
この結果によると、イオンプレーティングによる被膜品90a、90b、90cは、Feめっき品90d、90eに対して2〜3倍程度の拡がり面積を示している。特にFe被膜品90aは、Feめっき品90d、90eに対し、被膜の成分物質が全く同じ(Feのみ)であるにもかかわらず、2.5倍以上の拡がり面積を示している。このことから明らかなように、イオンプレーティングによる被膜20は、従来のFeめっき品に対して格段にハンダぬれ性が高く、ハンダ付け性が向上している。
【0076】
また、Ni被膜品90bはFe被膜品90aよりも更にハンダぬれ性が高く、Niの添加がハンダ付け性向上に特に効果的であることを示している。なお、Fe−Ni−Co被膜品90cは、Feめっき品90d、90eに対しては高いハンダぬれ性を示しているものの、Fe被膜品90aよりはその効果が若干低い。しかしCoの添加は寿命の延長に格段の効果を奏するので、高寿命を優先するような用途に供される場合には、Coの添加が有効となる。
【0077】
次に、コテ先チップ2の製造方法および製造装置について説明する。コテ先チップ2は、銅、銅合金、銀または銀合金を材質とする母材を機械加工等によって成形したコテ先芯材10の先端部に、イオンプレーティングによる被膜20を形成することによって製造する。
【0078】
図8は、本発明の被膜20を形成するのに好適なイオンプレーティング手段としてのイオンプレーティング装置100の模式図である。イオンプレーティング装置100は、蒸発させた成分物質を高周波電力によってイオン化するタイプの高周波イオンプレーティング装置の一種である。真空槽101は、内部に低圧の作動ガス(例えばアルゴンガス)を導入する容器であり、イオンプレーティングはこの真空槽101内で行われる。真空槽101には排気口153(図では左下方に示す)とガス導入口151(図では右下方に示す)が設けられている。
【0079】
真空槽101内の下部にはEBガン105が設けられ、真空槽101外部のEBガン電源134及びEBガン用冷却水管135と接続されている。EBガン105に設けられた3〜5個のるつぼ(ハーネス)107には、被膜の成分物質(Fe、Ni、Coその他)がセットされる。
【0080】
EBガン105の上方には高周波コイル121が設けられ、真空槽101外部の高周波電源123から高周波電力(例えば13.56MHz、50kW)が供給される。
【0081】
高周波コイル121の更に上方には、上昇するイオン粒子109の拡散経路となるように、同軸上に空心コイル131が設けられている。空心コイル131は、電子の運動軌道を規制することにより、イオン粒子109が被加工品であるコテ先芯材10の方向に拡散することを支援するように設定されている。空心コイル131に、真空槽101外の直流電源133からの電流(例えば2A)が供給されるとコイル中心で約100Oe(エルステッド)の磁場が発生し、図のような形状の磁力線135を形成する。磁力線135は、上部に設置(詳細は後述する)されたコテ先芯材10に繋がる。即ち、空心コイル131はコテ先芯材10の表面に繋がるプラズマからの磁力線135が形成されるような磁場を印加する磁場印加手段として機能し、イオン密度を増加させるとともにイオン粒子109の散逸を軽減する。
【0082】
真空槽101内の上方には、下方が凹面湾曲状の基板111が設けられている。基板111の下面には、多数(例えば100個程度。図8では10個を示す。)のコテ先芯材10が、その先端部が高周波コイル121側から視認できる状態でセットされている。基板111には、真空槽101外部の直流電源113から、高周波コイル121を基準にして負のバイアス電圧(例えば−500V〜−3kV)が印加される。コテ先芯材10は基板111と導通されており、バイアス電圧はコテ先芯材10に印加される。なお、基板111の湾曲形は、高周波コイル121内部に生成されたプラズマの径方向分布の不均一性を補償することを目的としたものである(後述する第2実施形態の図10についても同様)。
【0083】
基板111の、コテ先芯材10のセット面側及びその裏面側には、コテ先芯材10を所定温度(300〜460℃)に調整するためのヒータ141及び冷却水管142(温度調整手段)が設けられている。ヒータ141と冷却水管142の冷却水量は真空槽101外の温度制御装置143によって制御され、蒸着中のコテ先芯材10の温度が所定範囲内に保たれる。
【0084】
図9(a)は、基板111にセットされたコテ先芯材10の拡大断面図である。コテ先芯材10の内部には、電気ハンダゴテ1となったときにセラミックヒータ5を格納するための凹部11が設けられているが、基板111にセットされた状態では、その凹部11内に磁石115(磁力線空間分布調整手段)がセットされている。空心コイル131によって磁場が印加され、更に磁石115によって、その磁力線の空間分布が調整されるので、コテ先芯材10の先端付近には、図のように表面に略垂直で、最先端部の磁力線密度の低い磁力線135が形成される。
【0085】
次に、このイオンプレーティング装置100の作動について説明する。まず、排気口153から空気を排出して真空槽101内を10−4Pa台の真空とする。次に、ガス導入口151からアルゴンガス(放電維持ガス)を導入し、100〜10−2Pa程度のガス圧に保持する。そして高周波電源123によって高周波場を印加してプラズマ化する。続いてEBガン105を作動させてハーネス107内の被膜成分物質を電子ビームにより蒸発させると、アルゴンプラズマによって電離されて正電荷を帯びた成分物質のイオン粒子109を含むプラズマ雰囲気が真空槽101内に生成され、イオン粒子109が上方に拡散する。
【0086】
また、空心コイル131による磁場を重畳させることによって電離が促進されるとともに、横方向へのプラズマの拡散が減少するので、蒸着に供されるイオン粒子109の数が増大し、成膜速度が上がる。空心コイル131の内径側中空部を経由したイオン粒子109は、コテ先芯材10と高周波コイル121との間に印加されたバイアス電位により形成された電気力線に沿って加速され、その運動方向はほぼ磁力線135に沿ったものとなる。
【0087】
コテ先芯材10の先端付近まで上昇したイオン粒子109は、図9(a)に示すような空間分布の調整された磁力線135に沿ってコテ先芯材10の先端部に入射するので、最先端部への過度の集中入射が回避され、図9(b)に示すようなずり落ち現象を起こすことなく均一な被膜20を形成する。また、ヒータ141及び冷却水管142によって、コテ先芯材10の温度を調整し、必要以上に高くなり過ぎないようにしているので、これによってもずり落ち現象が効果的に防止される。また、このようにずり落ち現象の発生限界を高めることによって、より高い成膜速度を可能としている。
【0088】
図9(b)は、ずり落ち現象の説明図であり、ずり落ち現象が発生した場合のコテ先チップ2の先端部分断面図である。被膜20aは均一に形成されず、コテ先芯材10の最先端部に他の部分より厚い被膜20cが形成され、それよりやや基端側では逆に他の部分より薄い被膜20bが形成されている。それはあたかも先端付近の被膜がずり落ち、最先端部に堆積したかのような形態となっている。このずり落ち現象は、成膜速度を上昇させるほど、またコテ先芯材10の蒸着面が鉛直に近いほど、顕著に表れる。ずり落ち現象の発生する原因は次のように考えられる。イオン粒子109の蒸着面(コテ先芯材10の表面)は、平面ではなく棒状に突出しているので、その先端部では電界が強くなり、他より多くのイオン粒子109が入射する。従って、コテ先芯材10の先端部はイオン粒子109の衝突頻度が高く、所謂微視的なサーマルスパイクに起因する局所的な温度上昇が起こり易い。その結果、コテ先芯材10の先端部における被膜20aの粘度が局所的に低下し、被膜20aにかかる重力の表面方向分力を支えきれなくなったとき、先端部付近の被膜の一部が垂れ落ち、最先端部に凝集し、固化する。
【0089】
当実施形態では、空心コイル131によって磁場を印加するとともに、磁石115によって、コテ先芯材10の表面に交差し、最先端に近づくほど磁力線密度が低下するように磁力線の空間分布を調整しているので、イオン粒子109の集中的な入射が回避されている。
【0090】
被膜20は、コテ先芯材10の露出表面全体に形成しても、必要なマスキングを行って部分的(先端部)に形成しても良い。所定厚さの被膜20が形成されるとイオンプレーティングが完了する。最後に、コテ先チップ2の先端部以外(図3でハンダ層8に被覆されない部分に薄いクロムめっき又はイオンプレーティングによる2〜5μm程度のコーティング(成分はモリブデン、タングステンカーバイド、クロム、チタン、ステンレス又はセラミックス等)を施してコテ先チップ2が完成する。
【0091】
図10は、ずり落ち現象を効果的に防止することができる第2実施形態のイオンプレーティング装置100’の部分模式図を示す。第2実施形態において、第1実施形態と同一または同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。このイオンプレーティング装置100’では、コテ先芯材10が、上挟持板117(第1挟持板)と下挟持板127(第2挟持板)とに挟持された状態で保持されている。上挟持板117及び下挟持板127は、下方を凹面とした円板であり、それぞれ板面と略垂直に設けられた上挟持板支軸118及び下挟持板支軸128とによって支持されている。成膜工程中、上挟持板支軸118は真空槽101に固定され、下挟持板支軸128は駆動モータ145(挟持板回転手段)によって回転させられる。上挟持板117は、コテ先芯材10との間に一定の摩擦力が作用し得る程度の面圧でコテ先芯材10と接している。後述するように、上挟持板117、下挟持板127及び駆動モータ145は、コテ先芯材10の自転手段として機能する。
【0092】
コテ先芯材10は、その軸線が上挟持板117及び下挟持板127と略平行になるように、そして図11に示すように下挟持板支軸128から放射状に並ぶように下挟持板127上に取付けられる。なお、コテ先芯材10の取付け、取外しを容易にするために、上挟持板117及び下挟持板127は真空槽101に対し着脱自在となっている。
【0093】
図12は、図10に示すコテ先芯材10付近の拡大図である。上挟持板117と下挟持板127に挟持されたコテ先芯材10の凹部11には、磁石115が設けられている。磁石115は磁石支持部127bを介して下挟持板127に固定されている。そして、下挟持板127のコテ先芯材10の先端部に面する箇所には、イオン粒子通過窓127aが設けられている。また、上挟持板117側には冷却水管142が接着してあり、下挟持板127側にはヒータ141aが取付けられている。
【0094】
以上のような構造となっているので、成膜工程において下挟持板127が回転すると、コテ先芯材10は下挟持板127と一体になって下挟持板支軸128まわりを公転しつつ、上挟持板117との摩擦力によって自転する。そして、イオン粒子通過窓127aを通過して導かれたイオン粒子109がコテ先芯材10の先端部に蒸着するが、その蒸着面は、コテ先芯材10の自転によって均等にイオン粒子通過窓127aに面することになるので、コテ先芯材10の先端部には均一な厚さの被膜が形成される。なお、図のようにコテ先芯材10を、その軸線方向とイオン粒子109の拡散方向とが交差(直交するのが好ましい)するように傾斜して設置すれば、イオン粒子109を更に無駄なくコテ先芯材10に入射させることができ、より一層成膜速度を上昇させることができる。
【0095】
また、イオン粒子通過窓127aに面した蒸着面(図のような三角錐形状の場合は稜線L付近の面)が、略水平となるようにコテ先芯材10を設置すれば、ずり落ち現象の発生を更に抑制することができる。
【0096】
図13は、第2実施形態のイオンプレーティング装置の変形例を示す。この変形例では、磁石115aを中空円板状とし、コテ先芯材10の外部に設置している。115aは上挟持板117に固定されている。コテ先芯材10の凹部11には下挟持板127に固定されたガイド127cが当接している。このようにしても、コテ先芯材10の先端部には、その自転によって均一な厚さの被膜が形成され、また磁石115aと空心コイル131とが形成する磁力線によってイオン粒子109が無駄なく蒸着に供され、成膜速度を上昇させることができる。
【0097】
次に、本発明の第3実施形態を図14および図15によって説明する。図14は、電気ハンダ吸取りゴテ60の部分断面図であり、図15はその先端部の拡大図である。本体ケース61の上部には前ホルダ65と後ホルダ66との間に着脱自在に嵌込まれたタンク64を備える。タンク64は外部から観察できるように耐熱ガラス等の透明体からなる筒体で、吸引された溶融ハンダを貯溜する。タンク64の後端には、グラスウールからなるフィルタ68が設けられ、このフィルタ68を介して後ホルダ66と連通している。後ホルダ66には真空チューブ63が接続されており、図外の真空ポンプによってタンク64内を減圧し得るようになっている。
【0098】
前ホルダ65にはタンク64と連通する輸送パイプ79の後端が差し込まれている。輸送パイプ79はステンレス製である。電気ハンダ吸取りゴテ60の先端棒状部には、内孔に輸送パイプ79を貫通させた銅製の加熱芯70と、その内部に設けられたセラミックヒータ71(発熱体)と、加熱芯70の外周面を覆う保護パイプ72と、直接ハンダに当接し、溶融し、吸取る吸取りノズル51(ハンダ取扱い用コテ先)からなる。加熱芯70の先端部におねじ75が形成されるとともに、吸取りノズル51の後端にはそれと螺合するめねじ58が形成されており、吸取りノズル51を着脱、交換可能としている。
【0099】
吸取りノズル51は、銅、銅合金、銀または銀合金からなるコテ先芯材52の先端部に、イオンプレーティングによる被膜53を設けたものである。被膜53の膜厚、成分物質は第1及び第2実施形態における被膜20と同様であり、吸取りノズル51の製造方法、製造装置も第1実施形態等に準ずる。そして、この吸取りノズル51は、第1実施形態等のコテ先チップ2と同様、ハンダぬれ性を高めるとともに従来の鉄めっき品に比べて鉛フリーハンダに対しても耐侵食性が高く、高寿命となっている。
【0100】
吸取りノズル51の先端部には吸取り口54に連通する鉄製の小パイプ55が嵌挿され、輸送パイプ79と連結されている。加熱芯70を加熱するセラミックヒータ71は、リード線62を介して図外の電源コードに接続されている。
【0101】
本体ケース61に設けられた図外の真空吸引スイッチをオンにすると、図外の真空ポンプによってタンク64内および輸送パイプ79内が減圧される。また、セラミックヒータ71の電源をオンにすると加熱芯70とともに吸取りノズル51が加熱される。加熱された吸取りノズル51の先端部をハンダに当接することによってハンダが溶融する。そして、溶融したハンダが吸取り口54から小パイプ55を経由して輸送パイプ79内に吸取られる。吸取られた溶融ハンダは、タンク64内に送られ、貯溜される。タンク64は着脱可能となっており、貯溜量の増加に伴い、適宜交換することができる。
【0102】
以上、第1及び第2実施形態に示すコテ先チップ2並びにそれを用いた電気ハンダゴテ1並びに第3実施形態に示す吸取りノズル51及びそれを用いた電気ハンダ吸取りゴテ60並びにそれらの製造方法について述べたが、本発明は以上のものに限定するものではなく、特許請求の範囲内で適宜変形して良い。
【0103】
例えば、イオンプレーティングの成分物質は、Fe、Ni、Co、Cu、Ag、Sn及びCに限定するものではなく、他の物質を用いても良い。
【0104】
温度調整手段として、ヒータ141または冷却水管142の何れか一方のみを用いても良い。また、温度制御装置143は必ずしも必要ではなく、予め所定の加熱特性や冷却特性を有する機構であっても良い。温度制御手段として、ヒータ141や冷却水管142以外の機構を用いても良い。
【0105】
磁場印加手段として、空心コイル131を用いず、他の機構によって磁場を印加しても良い。前記実施形態のように磁場印加手段として空心コイル131を用いると、イオン粒子109をコテ先芯材10に向けて拡散させる作用に加えて、電離を促進してイオン粒子109の数を増大させる作用も有するので、成膜速度を上げるのに好適である。また、空心コイル131を複数用いる機構としても良い。
【0106】
磁力線空間分布調整手段として、磁石ではない強磁性体や常磁性体を用いても良い。前記実施形態のように磁力線空間分布調整手段として磁石を用いると、より強力な磁力線空間分布調整作用を得ることができる。
【0107】
第2実施形態において、上挟持板117を回転させて下挟持板127を固定させても良く、双方を異なる回転数で回転させても良い。また磁石115、115aを設けない構造としても良い。コテ先芯材10を自転させる手段として、前記のような構造とせず、例えば各コテ先芯材10に自転用のモータを接続するようにしても良い。
【0108】
更に、被膜20や被膜53は、必ずしもイオンプレーティング装置100、100’のような装置で形成する必要はなく、従来の一般的なイオンプレーティング装置で形成しても良い。
【0109】
イオンプレーティング装置100、100’は、必ずしも高周波イオンプレーティング装置でなくても良く、MW(マイクロウェーブ)放電型など、他の方式であっても良い。
【0110】
【発明の効果】
以上説明したことから明らかなように、本発明のハンダ取扱い用コテ先は、銅、銅合金、銀、銀合金の何れかからなるコテ先芯材の少なくとも先端部を含む表面に、イオンプレーティングによる被膜が形成されていることを特徴とするので、ハンダによる侵食を防止することができる。また、コテ先端部の材質をハンダの種類や用途に応じて最適なものとすることが容易にできる。更に、金型等も必要としないので、殆どコストアップや生産性の低下を伴うことなく、多品種少量生産を行うことができる。そして更に、めっきに比べて処理時間を格段に短縮できるので生産性を大幅に向上させることができ、めっき排液の排出に伴う環境への悪影響を確実に防止することができる。
【0111】
また、本発明の電気ハンダゴテや電気ハンダ吸取りゴテは、発熱体を備えた本体に、本発明のハンダ取扱い用コテ先を、交換可能なコテ先チップまたは吸取りノズルとして備えたことを特徴とするので、ハンダ取扱い用コテ先の交換回数を減少させるとともに作業性を向上させ、更に高い技術を持った作業者でなくても、高品質のハンダ付けを容易に行ったり、はんだ除去を容易に行ったりすることができる。
【0112】
更に、本発明のハンダ取扱い用コテ先の製造方法及び製造装置は、アセチレン、メタン等の炭素化合物、或いは希ガス等のプラズマ雰囲気中に、前記成分物質を蒸発、或いはスパッタさせて混入し、イオン化し、前記プラズマに対して所定の負のバイアス電位を印加することにより、前記コテ先芯材の少なくとも先端部に前記成分物質の被膜を形成するイオンプレーティングを行い、その成膜工程の一部または全工程で、前記コテ先芯材の表面温度が300℃乃至460℃となるように調整することを特徴とするので、立体的な蒸着面であっても成膜速度を上昇させつつ、均一な被膜を形成させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる電気ハンダゴテの部分正面図である。
【図2】図1の分解斜視図である。
【図3】図2のIII−III断面図である。
【図4】イオンプレーティングを行う材料物質の成分表である。
【図5】イオンプレーティングによる被膜のX線回折結果である。
【図6】ハンダ拡がり試験の試験要領を示す説明図である。
【図7】ハンダ拡がり試験の試験結果を示すグラフである。
【図8】本発明の第1実施形態におけるイオンプレーティング装置の模式図である。
【図9】(a)は図8におけるコテ先芯材の先端付近の拡大断面図であり、(b)は、同箇所においてずり落ち現象が発生した場合を示す。
【図10】本発明の第2実施形態におけるイオンプレーティング装置の部分模式図である。
【図11】図10に示す装置におけるコテ先芯材の配置図である。
【図12】図10に示す装置の部分拡大図である。
【図13】第2実施形態におけるイオンプレーティング装置の変形例の拡大部分模式図である。
【図14】本発明の第3実施形態にかかる電気ハンダ吸取りゴテの部分断面図である。
【図15】図14に示す装置の部分拡大図である。
【符号の説明】
1 電気ハンダゴテ
2 コテ先チップ(ハンダ取扱い用コテ先)
5 セラミックヒータ(発熱体)
7 本体
10 コテ先芯材
20 被膜(イオンプレーティングによる)
51 吸取りノズル(ハンダ取扱い用コテ先)
52 コテ先芯材
53 被膜(イオンプレーティングによる)
60 電気ハンダ吸取りゴテ
61 本体ケース(本体)
71 セラミックヒータ(発熱体)
100、100’ イオンプレーティング装置(イオンプレーティング手段)
115、115a 磁石(磁力線空間分布調整手段)
117 上挟持板(第1挟持板、自転手段)
127 下挟持板(第2挟持板、自転手段)
131 空心コイル(磁場印加手段)
141 ヒータ(温度調整手段)
142 冷却水管(温度調整手段)
145 駆動モータ(挟持板回転手段、自転手段)

Claims (18)

  1. 電気ハンダゴテまたは電気ハンダ吸取りゴテのコテ先に用いられるハンダ取扱い用コテ先であって、銅、銅合金、銀、銀合金の何れかからなるコテ先芯材の少なくとも先端部を含む表面に、イオンプレーティングによる被膜が形成されていることを特徴とするハンダ取扱い用コテ先。
  2. 前記被膜の成分物質には、鉄、ニッケル及びコバルトのうち少なくとも1種以上を含むことを特徴とする請求項1記載のハンダ取扱い用コテ先。
  3. 前記被膜の成分物質における、鉄、ニッケル及びコバルトの合計含有率は、60質量%乃至99.7質量%であることを特徴とする請求項2記載のハンダ取扱い用コテ先。
  4. 前記被膜の成分物質には、銅、銀、錫および炭素のうち少なくとも1種以上を含むことを特徴とする請求項2または3記載のハンダ取扱い用コテ先。
  5. 前記被膜の成分物質における、銅、銀、錫および炭素の合計含有率は、0.3質量%乃至40質量%であることを特徴とする請求項4記載のハンダ取扱い用コテ先。
  6. 前記被膜の膜厚は、50μm乃至500μmであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のハンダ取扱い用コテ先。
  7. 発熱体を備えた本体に、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のハンダ取扱い用コテ先を、交換可能なコテ先チップとして備えたことを特徴とする電気ハンダゴテ。
  8. 発熱体を備えた本体に、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のハンダ取扱い用コテ先を、交換可能な吸取りノズルとして備えたことを特徴とする電気ハンダ吸取りゴテ。
  9. 請求項1乃至6のいずれか1項に記載のハンダ取扱い用コテ先を製造する方法であって、
    アセチレン、メタン等の炭素化合物、或いは希ガス等のプラズマ雰囲気中に、前記成分物質を蒸発、或いはスパッタさせて混入し、イオン化し、前記プラズマに対して所定の負のバイアス電位を印加することにより、前記コテ先芯材の少なくとも先端部に前記成分物質の被膜を形成するイオンプレーティングを行い、
    その成膜工程の一部または全工程で、前記コテ先芯材の表面温度が300℃乃至460℃となるように調整する
    ことを特徴とするハンダ取扱い用コテ先の製造方法。
  10. 請求項1乃至6のいずれか1項に記載のハンダ取扱い用コテ先を製造する方法であって、
    アセチレン、メタン等の炭素化合物、或いは希ガス等のプラズマ雰囲気中に、前記成分物質を蒸発、或いはスパッタさせて混入し、イオン化し、前記プラズマに対して所定の負のバイアス電位を印加することにより、前記コテ先芯材の少なくとも先端部に前記成分物質の被膜を形成するイオンプレーティングを行い、
    その成膜工程の一部または全工程で、前記コテ先芯材の表面に繋がるプラズマからの磁力線が形成されるような磁場を印加する
    ことを特徴とするハンダ取扱い用コテ先の製造方法。
  11. 前記成膜工程の一部または全工程で、前記コテ先芯材の表面温度が300℃乃至460℃となるように調整することを特徴とする請求項10記載のハンダ取扱い用コテ先の製造方法。
  12. 前記成膜工程の一部または全工程で、前記コテ先芯材を、その軸線方向と前記イオン化した成分物質の拡散方向とが交差するように設置するとともに、その軸線を中心に自転させることを特徴とする請求項9乃至11記載のハンダ取扱い用コテ先の製造方法。
  13. 請求項1乃至6のいずれか1項に記載のハンダ取扱い用コテ先を製造する装置であって、
    アセチレン、メタン等の炭素化合物、或いは希ガス等のプラズマ雰囲気中に、前記成分物質を蒸発、或いはスパッタさせて混入し、イオン化し、前記プラズマに対して所定の負のバイアス電位を印加することにより、前記コテ先芯材の少なくとも先端部に前記成分物質の被膜を形成するイオンプレーティング手段を備え、
    そのイオンプレーティング手段は、その成膜工程の一部または全工程で前記コテ先芯材の表面温度が300℃乃至460℃となるように調整する温度調整手段を含む
    ことを特徴とするハンダ取扱い用コテ先の製造装置。
  14. 請求項1乃至6のいずれか1項に記載のハンダ取扱い用コテ先を製造する装置であって、
    アセチレン、メタン等の炭素化合物、或いは希ガス等のプラズマ雰囲気中に、前記成分物質を蒸発、或いはスパッタさせて混入し、イオン化し、前記プラズマに対して所定の負のバイアス電位を印加することにより、前記コテ先芯材の少なくとも先端部に前記成分物質の被膜を形成するイオンプレーティング手段を備え、
    そのイオンプレーティング手段は、その成膜工程の一部または全工程で、前記コテ先芯材の表面に繋がるプラズマからの磁力線が形成されるような磁場を印加する磁場印加手段を含む
    ことを特徴とするハンダ取扱い用コテ先の製造装置。
  15. 磁力線を前記コテ先芯材の表面に交差させるとともに、前記コテ先芯材の最先端に近づくほど磁力線密度が低下するように調整する磁力線空間分布調整手段を含むことを特徴とする請求項14記載のハンダ取扱い用コテ先の製造装置。
  16. 前記イオンプレーティング手段は、その成膜工程の一部または全工程で前記コテ先芯材の表面温度が300℃乃至460℃となるように調整する温度調整手段を含むことを特徴とする請求項14または15記載のハンダ取扱い用コテ先の製造装置。
  17. 前記イオンプレーティング手段は、その成膜工程の一部または全工程で、前記コテ先芯材の軸線方向と前記イオン化した成分物質の拡散方向とが交差するように設置された前記コテ先芯材を、その軸線を中心に自転させる自転手段を含むことを特徴とする請求項13乃至16記載のハンダ取扱い用コテ先の製造装置。
  18. 前記自転手段は、前記コテ先芯材の軸方向と略平行に設けられ、その両側から前記コテ先芯材を挟持する第1挟持板及び第2挟持板と、
    前記第1挟持板と第2挟持板とを、少なくともその一方をその板面と略垂直な回転軸周りに回転させる挟持板回転手段と
    を含むことを特徴とする請求項17記載のハンダ取扱い用コテ先の製造装置。
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