JP2004337956A - 耐火物内張り層の形成方法 - Google Patents

耐火物内張り層の形成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】加熱領域の温度差を従来よりも小さくし、局部的な亀裂や剥離の発生を抑制、更には防止し、加熱時における水蒸気爆裂、剥離等の恐れが無く、複雑な形状にも対応可能な耐火物内張り層の形成方法を提供する。
【解決手段】耐火粉末と低温熱硬化性樹脂と高温熱硬化性バインダーとを含む実質的に無水の耐火材料31を隙間19、23に充填し、耐火材料31を間接的に加熱して硬化させるので、加熱領域の温度差を従来よりも小さくし、局部的な亀裂や剥離の発生を抑制、更には防止し、加熱時における水蒸気爆裂、剥離等の恐れが無く、複雑な形状にも対応可能である。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、連続鋳造用浸漬ノズル、樋、タンディッシュ(内面、堰、ストッパーなど)、鍋、注湯用ノズル(上ノズル、下ノズル、ロングノズル、スライディングノズルなど)等の耐火物の内張り施工や補修を行ったり、あるいは耐火物の内側に内装体等を形成する場合に、耐火物の材質劣化を抑制し、低コストで鋳片介在物や気泡に起因した品質劣化を効果的に改善することが可能な耐火物内張り層の形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、樋や容器等は、鉄皮にパーマネントレンガを配置し、その上に不定形耐火物を内張りしたウエアー層を設けて構成されており、その補修にあっては、まず、溶銑や溶鋼を受湯し、又は搬送することによって溶損したり、変質したりした部分を削り、その部分に不定形耐火物を用いて新たなウエアー層を形成し乾燥させ、これを再度使用することが一般的に行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、中子を用いて、ウエアー層やウエアー層の上層に、水を加えて混練した不定形耐火物を流し込んで固める補修方法が提案されている。しかし、不定形耐火物中には、通常12〜20質量%の水が添加されており、不定形耐火物の種類によっては水和反応が生じて品質が低下する。また、予熱、あるいは乾燥を行う昇熱時においては、不定形耐火物中の水分が気化し、水蒸気爆裂や剥離が発生し易かった。そして、不定形耐火物には水分が加えられているため、乾燥後の耐火物の気孔率が、例えば24〜25%と極めて高くなり、使用に際しては、耐火物の摩耗や溶損を招く恐れがあった。
【0004】
また、特許文献1の流し込み補修方法に代わる方法として、特許文献2及び特許文献3には、ウエアー層の損耗部を削った後に、水と硬化剤とを混練した不定形耐火物を、吹き付けノズルを介して施工面に吹き付けることにより、新しいウエアー層を形成する補修方法が提案されている。
しかし、この補修方法は、吹き付け施工であるため、耐火物のリバウンドロスが発生する問題がある。また、この補修方法においても、不定形耐火物中には、10〜20%の水分が添加されているため、上記した特許文献1と同様の問題がある。
【0005】
更に、特許文献4には、連続鋳造に使用されるタンディッシュの内張り施工方法が提案されているが、吹き付け施工であるため、やはり耐火物のリバウンドロスが発生する。なお、この施工方法においても、不定形耐火物中には、5〜20%の水分が添加されているため、やはり前記した特許文献1と同様の問題が発生する。
上記したように、不定形耐火物中に水分が添加されることで、種々の問題が生じるため、添加する水分量の低減を図ることも考えられるが、不定形耐火物の流動性を確保するためには、適量の水分の添加が必要であり、やはり上記した問題を解決できない。
【0006】
また、溶鋼と耐火物が接触する連続鋳造用注入ノズル(以下、注入用ノズルとも言う)として、取鍋では、上ノズル、スライディングノズル、下ノズルがあり、タンディッシュでは、ロングノズル、上ノズル、スライディングノズル、下ノズル、浸漬ノズルがある。これらの各ノズルは、耐食性向上と耐スポーリング性に優れたアルミナ黒鉛材質やジルコニア黒鉛材質で構成されている。
従来、上記の各注入用ノズルは、その内孔を溶鋼が通過する際に発生する熱応力により割れが生じるため、通常のライニングで構成されているような異膨張挙動を示す異種材質の積層構造が採用できなかった。
【0007】
このような課題に対して、特許文献5には、異種材質間に、焼成時に容易に焼失する材質を配置し、かつその非接触面積を80%以上として、積層構造とする方法が提案されている。また、特許文献6には、積層に使用する耐火物を、ノズル周方向及び/又は長手方向に複数分割し、目地部を設け膨張差を克服する手段が提案されている。
しかし、上記した方法は、いずれもノズルの内孔に配置する成形体を事前に製造し、外周側材質に装填セットする方法であり、製造ラインとして、成形体の製造工程、ノズルの製造工程、及びそのセット作業の工程の合計3工程を有することになり、コスト高となる。また、外周側材質へ隙間を設けて型枠をセットし、この間隙に異種組成の不定形耐火物を、前記したように流し込み成形する方法も考えられるが、やはり水分に対して変質劣化する材質を適用することが困難であり、適用材質に制約があり、しかもその後乾燥工程が入るため、作業工程が増加してコスト高になるなどの問題があった。
【0008】
この課題を解決する方法として、特許文献7及び特許文献8には、ノズル耐火物の外側に金枠を設け、この金枠とノズル耐火物との間に形成される隙間に、フェノール樹脂で被覆した耐火物粒子を流し込み、このノズル耐火物全体をオーブンで加熱して、耐火物粒子を硬化させる方法が提案されている。しかし、加熱温度が高く(例えば、600〜800℃)なると過焼結になり、硬化した耐火物粒子に割れや亀裂が発生する。そして、フェノール樹脂中の炭素も酸化され、硬化した耐火物粒子の強度が低下して、使用可能な強度を維持できない問題も発生する。
そこで、強度を維持するため、特許文献8では、フェノール樹脂を被覆した耐火物粒子に加えて硼素化合物を添加することで、高温度の加熱時のフェノール樹脂の炭素の酸化を抑制して、強度の低下を防止する方法が提案されている。
しかし、特許文献7及び特許文献8のいずれとも、ノズル耐火物の外側に充填層を形成するものであり、その加熱処理(初期加熱)は、耐火物全体を例えばオーブンに入れて加熱しなければならず、設備が大掛かりとなりコストが増大する。また、例えば、耐火物に対して局部的に補修を施した場合であっても、耐火物全体の加熱を行わなければならず、母材と補修材との間の膨張収縮差で、母材に対して補修材が馴染まなくなり、剥離が発生する。また、耐火物全体を加熱するため、熱エネルギーのロスが大きく、エネルギーコストが高くなり経済的でない。
【0009】
そこで、特許文献9及び特許文献10には、石灰クリンカーを含有する塩基性骨材に、粉末の熱硬化性樹脂と無水金属塩を添加した実質的に無水の石灰質の耐火材料を、タンディッシュの他の耐火物を内張りした面と内枠との間に充填し、この内枠の内部に熱風バーナー(火炎バーナー)から温風を吹き込み、耐火材料を加熱して、充填した耐火材料を焼成する方法が提案されている。なお、特許文献10には、この成形方法により、タンディッシュの堰を製造することも開示されている。
これにより、前記した特許文献1〜4のように、水分の添加を行った不定形耐火物を使用する必要性が無くなり、設備コストを低減でき、しかもエネルギーコストの低減を図ることができる。
【0010】
【特許文献1】
特開平4−197574号公報
【特許文献2】
特開昭52−138002号公報
【特許文献3】
特開昭59−145479号公報
【特許文献4】
特開平11−123508号公報
【特許文献5】
特公昭63−43190号公報
【特許文献6】
実公平7−18467号公報
【特許文献7】
特公昭63−43191号公報
【特許文献8】
特開平7−204834号公報
【特許文献9】
特開昭61−33741号公報
【特許文献10】
特開昭61−33742号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献9及び特許文献10に記載された方法は、いずれも熱風バーナーを使用して、金枠に70〜200℃の温風を吹き込み加熱するものであり、例えば、図9に示すように、浸漬ノズル90の内壁面91に配置された耐火材料92を熱風バーナー(火炎バーナー)93で加熱した場合から明らかなように、発生する温風には火炎94の流れに沿って温度分布が生じるため、加熱領域にある耐火材料92の各部分に温度差が生じ、耐火材料92の一次硬化強度にばらつきが発生する。このため、この方法を実際に使用する際には、例えば、強度偏差にかかわる割れ、剥離、また焼成の不均一による溶損等が生じるといった問題が発生する。
なお、熱風バーナー93による加熱は昇温速度が速く、昇温時における速度制御が困難であり、特に耐火材料92の一次硬化を行う低温度域(例えば、常温から200℃の範囲)においては、急速な温度上昇が生じるので、耐火材料92の一次硬化強度のばらつきが顕著になり、割れ、剥離等を防止できないという問題がある。
【0012】
また、耐火材料92には、低温度域での硬化を促進するため、例えばフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂が添加されているが、急速な温度上昇によりフェノール樹脂中に含まれる炭素成分が早期に気化し、焼成後の耐火物の気孔率が大きくなって焼成後の耐火物に強度低下が生じ、また亀裂、剥離等が発生して、熱硬化性樹脂を添加した効果を十分に発揮することができない。
なお、焼成後の耐火物の見掛け気孔率は30%程度と極めて高く、使用時において、耐火物が、摩耗、溶損等を生じ易く、長期の使用に対応できず経済的でない。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、加熱領域の温度差を従来よりも小さくし、局部的な亀裂や剥離の発生を抑制、更には防止し、加熱時における水蒸気爆裂、剥離等の恐れが無く、複雑な形状にも対応可能な耐火物内張り層の形成方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記目的に沿う第1の発明に係る耐火物内張り層の形成方法は、耐火粉末と低温熱硬化性樹脂と高温熱硬化性バインダーとを含む実質的に無水の耐火材料を隙間に充填し、該耐火材料を間接的に加熱して硬化させる。
【0014】
ここで、耐火粉末としては、例えば、アルミナ、ムライト、マグネシア、ドロマイト、ジルコン、石灰等の酸化物の1又は2以上を主体とした(例えば、80%以上含む)ものや、例えば、炭化珪素、硼化ジルコニウム、窒化珪素等の非酸化物系の1又は2以上を主体とした(例えば、80%以上含む)ものを使用できる。
また、低温熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル粉末等の1又は2以上を混合して使用でき、いずれも非水系のものを使用することが好ましい。
そして、高温熱硬化性バインダーとしては、例えば、ガラス屑(フリット、ブリット)、ウラステナイト(CuO・SiO )、リチウム、珪酸ソーダ(SiO ・nNa O)等の1又は2以上を混合して使用できる。
【0015】
このように、隙間に無水の耐火材料を充填し、この充填層を間接的に加熱して低温の熱硬化性樹脂によって硬化させることにより、耐火材料の硬化反応を均一に行うことができ、新たに形成された耐火物層の剥離や亀裂の発生を防止することができるので、耐火物層の品質を向上させることができる。
更に、新たな耐火物層の形成を容易に行うことができ、製作した耐火物層を、例えばノズルや浸漬ノズル等の複雑な構造体の一部への内装体に使用することが可能になる。しかも、例えば、予め形成された耐火物の母材の内側の隙間に、無水の耐火材料を充填して加熱した場合においては、予め形成された母材となる耐火物に対する硬化した耐火材料の馴染みが良好であり、成形した内張り層の構造的な強度の低下が防止でき、製造も簡単に行うことができる。
また、実質的に無水の耐火材料を使用するため、従来のように、水分が添加された耐火材料を使用した場合と異なり、成形後の乾燥が不要であり、水分で変質や劣化が懸念される材質の適用も可能になり、材質系の選定範囲が広げられる。なお、水分を添加しない耐火材料を使用することにより、予熱、あるいは乾燥を行う昇熱時において、耐火材料中の水分が気化することで生じる水蒸気爆裂、剥離等の恐れが無くなる。
【0016】
前記目的に沿う第2の発明に係る耐火物内張り層の形成方法は、第1の発明に係る耐火物内張り層の形成方法において、前記隙間は、伝熱ヒータを組み合わせた型枠、又は伝熱ヒータからなる型枠を用いて形成され、前記耐火材料を前記伝熱ヒータにより加熱する。
このように、隙間を形成する型枠として、伝熱ヒータを組み合わせた型枠、又は伝熱ヒータからなる型枠を用いるので、例えば従来のように熱風バーナーを使用した場合よりも、加熱領域の温度差を小さくでき、局部的な亀裂や剥離の発生を抑制、更には防止できる。また、耐火材料の昇温速度を制御できるので、耐火材料の一次硬化を行う低温度域(例えば、常温から200℃の範囲)において、急速な温度上昇を生じさせることなく、低温熱硬化性樹脂の気化を防止し、しかも耐火材料の初期強度のばらつきを低減して、硬化した耐火材料の割れ、剥離等を抑制、更には防止できる。
なお、伝熱ヒータとしては、例えば、電気抵抗を利用した電気ヒータ、ガスを利用したガスヒータなどの温度制御が可能なヒータ等を使用できる。
【0017】
前記目的に沿う第3の発明に係る耐火物内張り層の形成方法は、第2の発明に係る耐火物内張り層の形成方法において、注湯用ノズル及び連続鋳造用浸漬ノズルのいずれか一方又は双方からなるノズルの溶鋼接触面の少なくとも一部に、前記耐火材料を前記伝熱ヒータにより加熱し硬化させて成形した内装体を形成する。ここで、例えば、ノズルの溶鋼と接触する面の少なくとも一部に耐火材料を配置し、この耐火材料を伝熱ヒータで加熱し硬化させて内装体を成形するので、例えば従来のように、ノズルの製造工程、内装体の製造工程、及びノズルと内装体との組み合わせ工程の合計3工程を個別に要することなく内装体の成形が可能になる。
【0018】
前記目的に沿う第4の発明に係る耐火物内張り層の形成方法は、第3の発明に係る耐火物内張り層の形成方法において、鋳造計画に従って前記ノズルを作製し、該ノズルの前記溶鋼接触面に消化性を備えた前記耐火材料を配置した後、これを前記伝熱ヒータにより100℃以上の温度に加温保持し、2日以内であって溶鋼の鋳造に使用する直前に600℃以上に予熱して、前記内装体を成形する。
このように、まず鋳造計画(鋳造予定)に基づき必要なノズルを予め製造し、製造過程において、600〜800℃の範囲に加熱して硬化及び焼成する際に必要となる熱を極力保持するため、その温度が100℃から低下しないように保持するので、耐火材料を充填して焼成した内装体の熱応力の軽減を図ることができ、また加熱後の冷却過程や保管中の吸湿といった問題を無くし、消化性を備えた内装体が消化することを防止できる。
しかも、100℃以上の温度に加温保持したノズルを2日以内に使用することで、消化し易い内装体の表層の品質低下を確実に抑制できるので、使用にあっては、本来内装体の稼働面となる部分にCaO−Al 系の低融点の介在物を形成して液層化でき、アルミナ系介在物の付着を防止することができる。
更に、予熱時に発生する膨張に起因した亀裂、割れや剥離を防止し、かつ鋳造に使用する前の予熱に必要となるエネルギーを節減でき、同時に、一連の工程の簡素化、及びノズル品質の向上が図れる。
【0019】
前記目的に沿う第5の発明に係る耐火物内張り層の形成方法は、第2〜第4の発明に係る耐火物内張り層の形成方法において、前記伝熱ヒータを組み合わせた前記型枠は、金属製の型枠本体と、電気抵抗を利用した前記伝熱ヒータとを有する。
このように、伝熱ヒータとして電気抵抗を利用したヒータを使用して耐火材料を加熱するので、加熱領域の各部分の温度差を、例えば10℃以内の範囲のばらつきに抑えることができる。これにより、耐火材料の表層から深部へかけての焼成を良好に行うことができ、硬化後の耐火材料の強度や耐溶損性を向上できる。
【0020】
前記目的に沿う第6の発明に係る耐火物内張り層の形成方法は、第1〜第5の発明に係る耐火物内張り層の形成方法において、硬化した前記耐火材料の気孔率は9〜18体積%である。
ここで、硬化した耐火材料の気孔率を9〜18体積%にするためには、例えば、最大粒径が5mm以下、より好ましくは3mm以下であり、その平均粒径が0.5〜1mmの耐火粉末を使用し、この耐火粉末を有する耐火材料を、例えば、充填して加振したり、加振しながら充填したりした後、焼成することで得られる。このように、硬化した耐火材料の気孔率を9〜18体積%に設定するので、耐火物の膨張収縮時における変位を耐火材料で吸収でき、しかも溶鋼によるヒートショック(熱衝撃)も耐火材料で吸収できる。そして、気孔率を所定値にしているので、溶鋼との接触による溶鋼中のAlの酸化、あるいは脱酸生成物であるAl と反応するマトリックス中からのCaOの供給が良好になり、Al −CaO系の低融点生成物の形成を促進することができる。
【0021】
なお、硬化した耐火材料の気孔率が9体積%未満の場合、溶鋼によるヒートショックを十分に吸収できず、硬化した耐火材料に剥落が生じる。このため、通常、ラバープレス等を用いて成形した耐火物(気孔率が数体積%、例えば7〜8体積%)においても、使用にあっては剥離が生じ易い。
一方、硬化した耐火材料の気孔率が18体積%を超える場合、使用にあっては、摩耗及び溶損が発生し、ランニングコストがかかり経済的でない。このため、流し込みで成形した耐火物(気孔率が例えば24〜25体積%)においても、使用にあっては、乾燥時の水分除去での水蒸気爆裂や、亀裂、剥離等が生じ、やはりランニングコストがかかり経済的でない。
以上のことから、硬化させた耐火材料の剥離、摩耗、及び溶損を、抑制、更に防止するためには、その気孔率を9〜18体積%、更には10〜16体積%にすることが好ましい。
【0022】
前記目的に沿う第7の発明に係る耐火物内張り層の形成方法は、第1〜第6の発明に係る耐火物内張り層の形成方法において、前記耐火材料の常温から100〜150℃の範囲にある初期焼結温度までの加熱昇温速度を3〜15(℃/分)に設定する。
このように、耐火材料の常温から100〜150℃の範囲にある初期焼結温度(低温熱硬化性樹脂による耐火粉末の結合を行うことが可能な温度)までの加熱昇温速度を設定するので、耐火材料の初期強度を発現させるために重要な領域の加熱を、大きな温度差を生じさせることなく、略均一に行うことができる。
ここで、加熱昇温速度を設定する耐火材料の加熱温度(初期焼結温度)が100℃未満の場合、低温熱硬化性樹脂が溶融せず、耐火粉末の結合を行うことができない。一方、耐火材料の加熱温度が150℃を超える場合、低温熱硬化性樹脂による耐火粉末の結合は略終了しているため、逆に加熱に要する熱エネルギーコストがかかり経済的でない。
【0023】
また、昇温速度が3(℃/分)未満の場合、昇温に要する時間が長くなり耐火材料の製造効率が低下する。一方、昇温速度が15(℃/分)を超える場合、昇温速度が速くなり、加熱領域にある耐火材料の各部分に温度差が生じ、耐火材料の一次硬化強度にばらつきが発生する。このため、これを実際に使用する際には、例えば、強度偏差にかかわる割れ、剥離、焼成の不均一による溶損等の問題が生じる。
以上のことから、硬化させた耐火材料が良好な品質を備え、しかもこれを効率的に製造するためには、少なくとも100〜150℃の所定温度までの加熱昇温速度を3〜15(℃/分)、更には5〜15(℃/分)に設定することが好ましい。
【0024】
前記目的に沿う第8の発明に係る耐火物内張り層の形成方法は、第1〜第7の発明に係る耐火物内張り層の形成方法において、前記耐火粉末の組成に、内張り層を形成する耐火物の組成と異なるものを使用し、硬化した前記耐火材料が前記耐火物の上に少なくとも1層形成されている。
このように、内張り層を形成する耐火物の上に硬化した耐火材料を少なくとも1層形成するので、溶鋼接触面に配置する耐火粉末の適用材質の選定範囲を広げることができ、耐火物の上層に耐溶損、反応安定性等の機能に応じた耐火物層を形成することができる。
【0025】
前記目的に沿う第9の発明に係る耐火物内張り層の形成方法は、第8の発明に係る耐火物内張り層の形成方法において、前記耐火粉末はCaO成分を含有する。このように、CaO成分を含有する耐火粉末が耐火材料に含まれるので、膨張に起因する割れ、又は亀裂等が発生し易い特性を改善して回避でき、しかも溶鋼が接触する稼働面にCaO−Al 系の低融点の介在物を形成して液層化でき、これを溶鋼と共に下流側へ流すことで、アルミナ系介在物の付着を防止することができる。
【0026】
前記目的に沿う第10の発明に係る耐火物内張り層の形成方法は、第9の発明に係る耐火物内張り層の形成方法において、前記耐火粉末にはドロマイトクリンカーが配合され、前記CaO成分が20〜70質量%含まれている。
このように、耐火粉末にはドロマイトクリンカーが配合されているので、膨張に起因する割れ、又は亀裂等の発生し易い特性を有する組成を、耐火粉末の充填施工により回避でき、しかも溶鋼が接触する稼働面にCaO−Al 系の低融点の介在物を形成して液層化でき、これを溶鋼と共に下流側へ流すことで、アルミナ系介在物の付着を防止することができる。また、稼働面に耐食性が良好なMgOのリッチな晶出層を形成することができ、耐火物の耐溶損性を向上することができる。
特に、ドロマイトクリンカーを配合し、CaO成分の含有量を20〜70質量%とした場合では、例えば、強度の低下、亀裂、剥離が発生し易い特性を有するため、例えば、伝熱ヒータによる加熱は、初期の一次硬化(一次焼結)の温度域として100〜150℃の範囲内の所定温度まで、均一に行うことが重要である。この一次焼結を均一な温度で行うことにより、耐火材料に配合された低温度で反応する低温熱硬化性樹脂による結合が良好になり、加熱領域の各部分での初期強度を均一に向上させることができる。
【0027】
ここで、耐火粉末中のCaO成分が20質量%未満の場合、溶鋼と接触する稼働面で、溶鋼中のAl成分の耐火物等との反応、あるいは脱酸生成物であるAl 等の稼働面への接触により、CaO−Al 系の低融点化合物の生成が悪くなり、アルミナ系介在物の付着が発生する。一方、CaO成分が70質量%を超える場合、耐火物の焼成後の強度の低下や、使用中での消化が顕著になる。しかも耐火物中のCaO成分がAl 等と反応し低融点化して溶損が激しくなり、耐火物の寿命の低下、また介在物の増加による溶鋼汚染等を招く。
以上のことから、アルミナ系介在物の付着を抑制、更には防止し、耐火物の寿命を上昇させ、また介在物を低減して清浄な溶鋼を製造するためには、耐火粉末中のCaO成分を20〜65質量%、更には25〜60質量%とすることが好ましい。
【0028】
前記目的に沿う第11の発明に係る耐火物内張り層の形成方法は、第9及び第10の発明に係る耐火物内張り層の形成方法において、前記耐火材料中の炭素濃度が、0質量%、又は0を超え1質量%未満である。
このように、耐火材料中の炭素濃度を設定するので、耐火材料に生じる亀裂や剥離を防止し、炭素に起因する溶鋼の炭素ピックアップを最小限にして、極低炭素溶鋼の溶製を安定して行うことができる。
ここで、耐火材料中の炭素濃度を、0質量%、又は0を超え1質量%未満に設定しているので、耐火材料を構成する炭素濃度が低くなり、膨張の緩和効果が減少するため、昇熱による耐火材料の膨張が大きくなり、亀裂や剥離が顕著になる。しかし、初期の焼成により、耐火材料の強度を予め高めているので、高温度の焼成過程で発生する大きい膨張に起因する亀裂、大きな割れや剥離を抑制することができ、しかも同時に使用中の炭素の消化が生じても、稼働面の粗度を良好にし、溶鋼の炭素ピックアップを確実に抑制して、極低炭素溶鋼の溶製を安定して行うことができる。
【0029】
前記目的に沿う第12の発明に係る耐火物内張り層の形成方法は、第9及び第10の発明に係る耐火物内張り層の形成方法において、前記耐火材料中の炭素濃度が、1質量%以上10質量%以下である。
このように、耐火材料中の炭素濃度を設定するので、耐火材料に生じる亀裂や剥離を防止し、炭素に起因する溶鋼の炭素ピックアップを最小限にして、極低炭素溶鋼の溶製を安定して行うことができる。
ここで、耐火材料中の炭素濃度を、1質量%以上10質量%以下に設定しているので、耐火材料に配合された炭素により、耐火材料の強度が高められ、しかも加熱時に発生する膨張を炭素で吸収することができ、耐火材料に生じる亀裂や剥離を防止することができる。また、炭素濃度を10質量%以下に抑えているので、炭素に起因する溶鋼の炭素ピックアップを最小限にすることができる。
【0030】
前記目的に沿う第13の発明に係る耐火物内張り層の形成方法は、第1〜第12の発明に係る耐火物内張り層の形成方法において、前記低温熱硬化性樹脂及び前記高温熱硬化性バインダーの合計量は、前記耐火粉末量の1〜10質量%である。
このように、低温熱硬化性樹脂及び高温熱硬化性バインダーの合計量を設定するので、耐火材料の初期硬化を十分に行うことができ、高温域における耐火材料の割れ、亀裂等を抑制、更には防止できる。
ここで、低温熱硬化性樹脂及び高温熱硬化性バインダーの合計量が1質量%未満の場合、耐火材料の初期硬化が不十分になり、焼成温度を高めた際に割れや亀裂等が発生する。一方、合計量が10質量%を超える場合、耐火材料が過焼結になり、同様に割れや亀裂等が発生し、不焼成分の増加に起因して耐溶損性が悪くなる。
以上のことから、高温域における耐火材料の割れ、亀裂等を抑制、更には防止するためには、非水系である低温熱硬化性樹脂及び高温熱硬化性バインダーの合計量を1〜10質量%、更には2〜7質量%にすることが好ましい。
【0031】
即ち、例えば、樋やタンディッシュ等の溶鉄の受湯容器の耐火物のウエアー層の損傷部位を削って、その上に新たなウエアー層を形成したり、また全く新たなウエアー層を形成したりして、注湯系(下ノズル、スライディングノズル、浸漬ノズル等)のように、耐火物の内側に別の組成からなる耐火物層を形成する場合においては、成形体に焼成むらが生じたり、焼成過程で耐火物に亀裂や剥離等が発生し、品質が極端に低下して、その後に行う鋳造工程で、耐火物の異常溶損、耐火骨材の脱落や剥離による溶鋼の汚染、またノズルを所定時間使用する鋳造が困難になるなどの問題が発生していた。
また、耐火物に配置された内枠に振動を付与しながら、耐火材料の充填を十分に行い、更に従来法で使用された火炎バーナー(熱風バーナー)による加熱を試みた際、その加熱領域が狭ければ、各部分の温度差を小さくでき、略均一に加熱できるが、例えば、構造が複雑なもの、また加熱領域の長さが100mm以上ある部分では、加熱領域の各部分での温度差が大きくなり、その加熱が不均一になるため、前記した技術課題が解消されなかった。
本発明は、上記した問題によって、実用化の支障となっていた原因を究明した結果、耐火粉末の十分な圧密と、特にその後の均一温度での加熱(焼成)が重要であることを知見し得たものである。
【0032】
【発明の実施の形態】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここに、図1は本発明の一実施の形態に係る耐火物内張り層の形成方法の説明図、図2は同耐火物内張り層の形成方法に使用する型枠の平面展開した模式図、図3は同耐火物内張り層の形成方法に使用する耐火粉末の粒度分布の説明図、図4は同耐火物内張り層の形成方法に使用する低温熱硬化性樹脂及び高温熱硬化性バインダーの合計量が内装体に及ぼす影響について示した説明図、図5(A)は変形例に係る型枠の側断面図、(B)は(A)のa−a矢視断面図、図6は本発明の一実施の形態に係る耐火物内張り層の形成方法を使用して製造する内装体の温度と加熱による昇温時間との関係を示す説明図、図7は同内装体の昇温速度が内装体の亀裂及び溶損の発生率に及ぼす影響について示した説明図、図8は同内装体の温度分布が内装体の亀裂及び溶損の発生率に及ぼす影響について示した説明図である。
【0033】
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る耐火物内張り層の形成方法は、溶鋼10が通過する有底の筒状部11と、その下部に設けられ、溶鋼10を吐出する複数(ここでは、筒状部11を中心として左右対称に1個ずつ)の吐出口12が形成された母材となる連続鋳造用浸漬ノズル(耐火物の一例)13の内側表面14に、内張り層となる内装体15を形成する方法である。なお、各吐出口12は、その傾斜角度が水平位置に対して上向き10度から下向き35度の範囲に設定されており、また各吐出口12の断面形状は実質的に同一であり、矩形となっているが、例えば、円形、楕円形等であってもよい。以下、詳しく説明する。
【0034】
まず、図1、図2に示すように、予め策定した鋳造計画に従って、例えば従来から使用されている浸漬ノズル用耐火物であるアルミナ黒鉛質耐火物(AG)を使用して作製した浸漬ノズル13に、伝熱ヒータ16を備えた型枠17を、筒状部11の上方から筒状部11の内部に装入し、浸漬ノズル13の筒状部11の内側表面部18に隙間19を設けて配置する。続いて、伝熱ヒータ20を組み合わせた型枠21を、各吐出口12の側方から吐出口12の内部に装入し、各吐出口12の内側表面部22に隙間23を設けて配置する。ここで、筒状部11の内側表面部18、及び各吐出口12の内側表面部22が、溶鋼10との接触面に相当する部分となっていた。なお、浸漬ノズル13は、ジルコニア黒鉛質耐火物(ZG)、シリカ系の耐火物等で構成することもできる。
【0035】
図2に示すように、型枠17、21は、伝熱性を有する材料である一般の炭素鋼板、ステンレス等の金属製の型枠本体24、25と、この型枠本体24、25の裏板26、27の一面に取付けられ、ニクロム線で構成される電気抵抗を利用して加熱する伝熱ヒータ(電気ヒータ)16、20とを有している。ここで、伝熱ヒータの代わりに、一般に用いられているマイカーヒータを使用することもできる。
筒状部11の内側表面部18に配置される型枠17は、型枠本体24の表面側(裏板26と逆側)が、筒状部11の内側表面部18と対向するように中空円筒状に形成されており、形成する内装体15のサイズ(例えば、厚み、長さ等)に応じて、その外径d1が筒状部11の内径D1より、片側で例えば5〜30mm小さくなっている。なお、型枠本体24の下部には、各吐出口12の軸心を中心とした円形の貫通孔28が、吐出口12の数に対応して設けられている。
【0036】
また、各吐出口12の内側表面部22に配置される型枠21は、型枠本体25の表面側(裏板27と逆側)が、吐出口12の内側表面部22と対向するように中空状となったもので、その断面形状が矩形となっており、型枠本体25の外面と吐出口12の内側表面部22との間が、例えば5〜30mmになっている。なお、型枠本体25の基部は、筒状部11の内部に配置された型枠本体24の各貫通孔28にそれぞれ嵌入可能になっており、また型枠本体25の先端部には、筒状部11の外面に当接し、型枠21全体が吐出口12の内部に入り込むことを防止するストッパー29が、一体的に設けられている。
また、筒状部11内に配置された型枠本体24の内周面には、振動装置30が取付けられており、各型枠本体24、25に振動を付与することが可能な構成となっている。
【0037】
次に、筒状部11と各吐出口12に型枠17、21をそれぞれ配置した後、振動装置30を作動させて型枠17、21に振動を付与しながら、筒状部11の内部に形成された隙間19の上方から、予め混合された耐火粉末と非水系からなる低温熱硬化性樹脂と高温熱硬化性バインダーとを含む実質的に無水の消化性を備えた耐火材料31を装入し、充填する。なお、耐火材料31中の炭素濃度は、0質量%、1質量%未満、及び1〜10質量%のいずれか1となっている。
ここで、耐火粉末としては、例えば、アルミナ、ムライト、マグネシア、ドロマイト、ジルコン、石灰等の酸化物の1又は2以上を主体とした(例えば、80%以上含む)ものや、例えば、炭化珪素、硼化ジルコニウム、窒化珪素等の非酸化物系の1又は2以上を主体とした(例えば、80%以上含む)ものを使用できる。また、低温熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂粉末、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル粉末等の非水系ものものを、1又は2以上を混合して使用できる。そして、高温熱硬化性バインダーとしては、例えば、ガラス屑、ウラステナイト(CuO・SiO )、リチウム等の1又は2以上を混合して使用できる。
【0038】
耐火粉末として使用できるドロマイトは、例えばCaO成分の含有量W1とMgO成分の含有量W2との質量比W1/W2が0.46〜3.0であって、しかもCaO成分が20〜70質量%含まれたものである。また、この耐火粉末は、SiO 及びFe の各含有率が、それぞれ3質量%以下になるように調整され、耐火材料31を加熱し硬化させた内装体15の内側表面32である溶鋼接触面、即ち稼動面側に付着したAl と耐火材料31に含まれるCaOとの反応から形成されるAl −CaO系液相の生成を促進し、しかも耐火材料31自体の極端な低融点化も抑制する。なお、アルミナ黒鉛質耐火物とドロマイトとは反応するため、筒状部11の内側表面部18、及び各吐出口12の内側表面部22に、予めジルコニア系のモルタル又はマグネシア質のモルタル等を配置した後、形成された隙間19、23に耐火材料31を充填し配置する。
【0039】
この耐火粉末の粒径は、図3に示すように、最大粒径が5mm以下で、その平均粒径が0.5〜1mmに調整されたものである。なお、図3の縦軸は、各大きさの篩目を通過した耐火粉末の合計量を示し、横軸はそのときの篩目の大きさ(耐火粉末の粒径)を示している。
これにより、加熱し焼成して硬化させた耐火材料31の気孔率を、浸漬ノズル13の膨張収縮時における浸漬ノズル13の変位、及び浸漬ノズル13の溶鋼10によるヒートショックを吸収可能な9〜18体積%に調整でき、溶鋼との接触による溶鋼中のAlの酸化、あるいは脱酸生成物であるAl と反応するマトリックス中からのCaOの供給が良好になり、Al −CaO系の低融点生成物の形成を促進することができる。
【0040】
また、低温熱硬化性樹脂及び高温熱硬化性バインダーの合計量は、耐火粉末量の1〜10質量%である。
図4に示すように、低温熱硬化性樹脂及び高温熱硬化性バインダーの合計量が1質量%未満の場合、及び合計量が10質量%を超える場合、共に内装体15に対する亀裂及び溶損の発生率が上昇する。
このため、耐火粉末に、低温熱硬化性樹脂を1〜4質量%添加することで、初期の焼成による内装体15の強度を高め、この耐火粉末に、更に高温熱硬化性バインダーを6〜9質量%添加することで、600〜800℃の焼成や昇熱を行った場合に発生する内装体15の亀裂や剥離、割れ等を防止して、高強度の内装体15にすることができる。
【0041】
ここで、耐火粉末に添加する低温熱硬化性樹脂量が1質量%未満の場合、加熱時に必要な初期硬化が不十分となり、内装体の強度不足を招く。一方、4質量%を超える場合、耐火材料を高温に加熱したときに過焼結となり、やはり内装体の強度低下を招く。
また、耐火粉末に添加する高温熱硬化性バインダー量が6質量%未満の場合、低温熱硬化性樹脂による過焼結が生じ、高強度の内装体を得ることができない。一方、9質量%を超える場合、初期強度が低下し、結果的に高強度の内装体を得ることができない。
【0042】
この耐火材料31が各隙間19、23に充填された後、伝熱ヒータ16、20の両端部に電極端子33〜36を接続して通電し、各型枠本体24、25を電気抵抗熱で昇温する。これにより、型枠本体24、25を介して間接的に、耐火材料31の少なくとも100〜150℃の所定温度までの加熱昇温速度を3〜15(℃/分)に温度制御しながら、耐火材料31を100℃以上の温度に加温して保持でき、この熱によって耐火材料31を一次焼結(一次昇温)させることができる。
このように、耐火材料31の加熱を、型枠17、21を介して温度制御しながら行うので、耐火材料31は各型枠本体24、25との接触面側から均一に焼成され、耐火材料31の昇温時における加熱領域の温度のばらつきを10℃以下にして、加熱領域の全面に渡って略均一に温度上昇させることができ、しかも耐火材料31の厚み方向の焼成も同様にできる。
【0043】
特に、耐火粉末にドロマイトクリンカーを配合し、全CaO含有量を20〜70質量%に設定した場合では、製造した内装体の強度低下や、亀裂、剥離等が発生し易い特性を有するため、上記した初期の一次焼結の温度域である100〜150℃での昇熱を、均一に行うことが重要である。この一次焼結を、上記したように、均一な温度で行うことにより、耐火材料に配合された低温度で反応する低温熱硬化性樹脂による耐火粉末の結合が良好になり、加熱領域の各部分において、初期強度を均一に向上させることができる。
ここで、耐火粉末の組成としては、浸漬ノズルを構成する組成と異なるものが使用され、硬化した耐火材料が浸漬ノズルの上に1層形成されている。なお、この作業を複数回繰り返し、浸漬ノズルの上に硬化した耐火材料を2層以上形成することも可能である。
【0044】
そして、2日以内であって溶鋼10の鋳造に使用する直前に400〜800℃の温度域、好ましくは600℃以上で加熱(予熱)する二次の昇熱によって高温熱硬化性バインダーを反応させ、一次焼結させた耐火材料31を加熱し焼成させて硬化させ、内装体15を成形することで、内装体15の強度を高めることができる。
この400〜800℃の高温の二次焼成では、一次昇温の際に、耐火材料31に対して均一な加熱を施しているので、高温焼成過程で生じ易い膨張のばらつきや、温度差に起因する亀裂や剥離が抑制され、しかも高温熱硬化性バインダーによる硬化(二次焼結)を良好に行うことができる。このため、この加熱は、各型枠17、21を外すことなく行うことも、また、各型枠17、21を外した後、熱風バーナー(火炎バーナー)を用いて行うことも可能である。
従って、焼成された内装体15の強度を高めることができ、亀裂や剥離が全くなく、極めて良品質の内装体15を成形できる。
【0045】
このように、内装体15を、浸漬ノズル13の各吐出口12や、その近傍に配置することにより、例えば、溶鋼10の脱酸生成物や、溶鋼10中のAlの酸化によるアルミナ系介在物の付着、堆積等に起因したノズル詰まりや閉塞を防止して、安定した鋳造を行うことができ、鋳片の表層及び内層の品質を向上させることができる。
また、例えば従来のように、浸漬ノズルの製造工程、内装体の製造工程、及び浸漬ノズルと内装体との組み合わせ工程の合計3工程を個別に要することなく製造でき、省工程化が図れるため、非常に安価で欠陥のない浸漬ノズル13を製造できる。
そして、耐火材料31には水分が使用されないので、かつ好ましくは非水系の低温熱硬化性樹脂及び高温熱硬化性バインダーを用いるため、成形後の乾燥が不要であり、水分で変質や劣化が懸念される材質の適用も可能になり、材質系の選定範囲が広げられると同時に、複雑異型箇所である例えば吐出口でも容易に成形可能であるため、従来吐出口の閉塞防止に適用できなかったドロマイト、石灰等のCaO含有素材や、BN等の材料系の適用が図れ、鋳造の安定化が図れる。
【0046】
また、図5(A)、(B)に示すように、型枠17の代わりに、伝熱ヒータ(ガスヒータ)40を組み合わせた型枠41を使用することも可能である。この型枠41は、ガスを利用したものであり、内部が空洞であって、伝熱性を有する材料である一般の炭素鋼板、ステンレス等の金属製の型枠本体42と、この型枠本体42の内部に、等間隔に複数本(ここでは、5本)配置された噴出ノズル43とを有している。
この噴出ノズル43には、長手方向に等間隔に複数の噴出口44が設けられ、各噴出ノズル43の上流側のガス供給部(図示しない)から供給されたガスにより、各噴出口44から火炎45が噴出可能な構成となっている。なお、型枠本体42の裏面と噴出ノズル43の各噴出口44との間には、金属製の分散板46が配置され、各噴出口44から噴出した火炎45を、分散板46を介して略均等に型枠本体42の裏面に接触させているので、加熱領域における各部分の温度分布を略均一に行うことができる。ここで、分散板46としては、例えば、網目状となったステンレス板、多数の小径の貫通孔が設けられたステンレス板等を使用できる。また、隣り合う各噴出ノズル43の間隔、及び複数の噴出口44の間隔を狭くすることで、更に均一な温度分布を形成できる。
【0047】
【実施例】
まず、耐火材料を、前記したニクロム線で構成される伝熱ヒータ16を組み合わせた型枠17(電気ヒータ加熱:黒太線)、複数の噴出ノズル43を有する伝熱ヒータ40を組み合わせた型枠41(ガスヒータ加熱:黒点線)、及び従来使用している火炎バーナー(火炎バーナー加熱:黒細線)により、それぞれ加熱し焼成して内装体を製造した場合における昇温時間と各内装体の温度(熱電対による測定)との関係について、図6を参照しながら説明する。なお、図6の縦軸は内装体の加熱面から10mmの深さ(A点)の温度(℃)、横軸はその温度に到達するまでの昇温時間(分)をそれぞれ示している。
【0048】
図6に示すように、例えば200℃に達するまでの昇温時間は、電気ヒータ加熱、ガスヒータ加熱、火炎バーナー加熱という順序で、順次短くなっている。
ここで、200℃までの昇温時間を長くすることにより、昇温時における温度制御が実施し易くなり、加熱領域における各部分の温度のばらつきを小さくできるので、加熱領域の各部分を均一加熱するには、火炎バーナー加熱よりも、ガスヒータ加熱及び電気ヒータ加熱の方が適していることが分かる。なお、火炎バーナー加熱で均一な加熱を行うために、火炎バーナー加熱による昇温時間を長くすることも考えられるが、図6から明らかなように、その昇温時間を長くすることには限界があり、均一な加熱を実施することが困難である。
【0049】
また、上記した電気ヒータ加熱、ガスヒータ加熱、及び火炎バーナー加熱を用いてそれぞれ製造した内装体を鋳造に使用した場合の亀裂及び溶損等の不合(不良品)発生率と、常温から100〜150℃の範囲までの加熱過程における耐火材料の昇温速度との関係について、図7を参照しながら説明する。なお、図7の縦軸は製造した全内装体のうちの不良品発生割合(%)、横軸は内装体の加熱面から10mmの深さ(A点)の昇温速度(℃/mm)をそれぞれ示している。
【0050】
図7に示すように、昇温速度の分布は、火炎バーナー加熱(□)及びガスヒータ加熱(○)が10〜20(℃/mm)の範囲にあり、電気ヒータ加熱(●)が0.5〜10(℃/mm)の範囲にある。また、不良品発生割合は、昇温速度の上昇に伴って増加している。
このように、昇温速度の調整範囲が広く、しかも温度域を低温側に最も下げることが可能な電気ヒータ加熱を利用した場合、耐火材料を一次焼結させるまで、その加熱を均一に行うことができるので、不良品の発生が殆どない。また、火炎バーナー加熱及びガスヒータ加熱は、いずれも略同等の昇温速度であるが、ガスヒータ加熱は多数の噴出口を用いることで、耐火材料の加熱を均一に行うことができるので、火炎バーナー加熱よりもガスヒータ加熱の方が、不良品発生割合が低くなっている。
【0051】
そして、上記した電気ヒータ加熱、ガスヒータ加熱、及び火炎バーナー加熱を用いてそれぞれ製造した浸漬ノズルを鋳造に使用した場合の亀裂及び溶損等の損傷発生率と、加熱過程における耐火材料の高さ方向の各部分(1)〜(3)の温度分布との関係について、図8を参照しながら説明する。なお、各部分(1)〜(3)は、浸漬ノズルの上部(溶鋼の注入口)から下部(溶鋼の吐出口)へかけて順次設定された点であり、火炎バーナー加熱は火炎バーナーを注入口に配置して行っている。
従来行われている火炎バーナー加熱を用いた場合、火炎の長手方向の各部分の温度に大きな差があるため、耐火材料の各部(1)〜(3)の温度のばらつきが100〜220℃と大きくなり、焼成して硬化させた内装体を鋳造に使用することで、その内装体に亀裂や溶損が発生し、極めて悪い結果が生じた。
一方、ガスヒータ加熱を用いた場合、耐火材料の各部(1)〜(3)の温度のばらつきが130〜170℃の40℃以内になり、火炎バーナーを用いた場合と比較して、鋳造に使用した内装体への亀裂や溶損の発生を抑制することができた。特に、電気ヒータ加熱を使用した場合、耐火材料の各部(1)〜(3)の温度のばらつきを、最小限の10℃以内にでき、鋳造に使用した内装体の亀裂や溶損等を安定して低減することができた。
【0052】
続いて、本発明に係る耐火物内張り層の形成方法を適用し、試験を行った結果について説明する。
(実施例1)
耐火物である高炉樋では、この高炉樋を通過する溶鋼、及びこの溶鋼の上方に存在するスラグが接触する部分に局部損傷が発生し、特に、溶鋼とスラグの境界部分近傍で、激しい局部損傷が発生する。なお、高炉樋の溶鋼が通過する部分をメタルライン、スラグが通過する部分をスラグラインと呼ぶ。
【0053】
このメタルライン及びスラグラインの局部損傷部位に、前記したニクロム線で構成される電気抵抗を利用して加熱する伝熱ヒータを備えた型枠と実質的に同一の構成となった船型の型枠をセットし、フェノール樹脂、珪酸ソーダ、及びアルミナ−SiC−C質耐火粉末を含む乾式粉末樋材(耐火材料)を、残存した耐火物と型枠との間に形成された空間に充填し、その後型枠に配置された伝熱ヒータにて、200℃まで加熱し脱枠した。その後、熱風バーナーにて650℃まで昇熱し、乾式混合粉を焼成させて硬化させ、通銑を開始した。
一方、従来例1として、アルミナセメントを用いた水硬化性流し込み材を、局部損傷部位に配置して加熱し、焼成させて硬化させ、通銑を開始した。
ここで、各内張り層の施工状況、及び補修後の高炉樋を使用した後の各内張り層の各種物性値を表1に示す。なお、表1中の化学成分は、各内張り層の代表成分を示しており、表中のF.Cは、単体で存在する炭素(フリーカーボン)、例えば、黒鉛、ピッチコークス等の量を示している。
【0054】
【表1】
Figure 2004337956
【0055】
施工要員は、実施例1に対して従来例1が2倍必要となり、また施工量は、実施例1よりも従来例1の方が5トン多く必要である。そして、施工時間は、実施例1に対して従来例1が2倍以上かかっている。
このように、実施例1と従来例1とを比較すると、実施例1の方が内張り層を短期間に経済的に成形できる。
また、実施例1では、乾式の粉末樋材を使用しているので、耐爆裂性も非常に良好であり、製造過程における安全性を確保できる。
そして、実施例1の方が従来例1よりも寿命向上を達成できるので、ランニングコストを低減でき、経済的である。
【0056】
(実施例2)
容量が300トンの鋼鍋の羽口周辺部には、耐火物が設けられており、この耐火物に局部損傷が発生する。ここで、溶鋼鍋の羽口(直径350mm)の交換時に耐火物の解体除去を行い、内張り層の成形を行った。
溶鋼鍋の羽口の交換において、フェノール樹脂及び珪酸ソーダ(SiO ・nNa O)耐火粉末を含む乾式粉末材(耐火材料)を、内張り層を成形する羽口周辺の高さまで充填し、充填層の上に、前記したニクロム線で構成される電気抵抗を利用して加熱する伝熱ヒータからなる円盤状の型枠を設置し、60分間で300℃(昇温速度:5℃/分)まで加熱した。その後、円盤状の型枠を撤去し、溶鋼鍋全体をガスバーナーにて1000℃まで15時間で昇熱した後、これを使用した。
一方、従来例2として、アルミナセメントを用いた水硬化性流し込み材を、羽口周辺の高さまで流し込んで加熱し、焼成させて硬化させ、これを使用した。
ここで、各内張り層の施工状況、及び補修後の各羽口を使用した後の内張り層の各種物性値を表2に示す。なお、表2中の化学成分は、各内張り層の代表成分を示している。
【0057】
【表2】
Figure 2004337956
【0058】
この結果、施工要員は、実施例2の2人に対して従来例2が3人必要となり、また施工量は、実施例2よりも従来例の方が0.3トン多く必要である。そして、施工時間は、実施例2に対して従来例2が2倍以上かかっている。
このように、実施例2と従来例2とを比較すると、実施例2の方が内張り層を短期間の間に経済的に成形できる。
また、実施例2では、乾燥粉末材を使用しているので、従来例2のように予備乾燥を行う必要性がなく、製造期間の短縮を図ることができる。
そして、実施例2の方が従来例2よりも寿命向上を達成できるので、ランニングコストを低減でき、経済的である。
なお、容量が60トンのタンディッシュの羽口補修についても、上記した方法と略同様の方法を適用した結果、やはり羽口補修後の予備乾燥工程が不要となり、しかも寿命向上を達成できるので、補修までのタンディッシュの使用回数を従来よりも向上させることができ、操業安定化に寄与できた。
【0059】
(実施例3)
図1に示すように、アルミナ黒鉛質耐火物で構成された連続鋳造用浸漬ノズル13の内部に、ニクロム線で構成される電気抵抗を利用して加熱する伝熱ヒータ16、20をそれぞれ組み合わせた型枠17、21を配置した。そして、振動装置30を作動させて型枠17、21に振動を付与しながら、その隙間19、23に、ドロマイト質の3mm以下の粒度の乾式粉末(耐火粉末)と、この乾式粉末の3質量%の熱可塑性のフェノール及びウラステナイトとを混合した耐火骨材(耐火材料)を装入し、充填した。
【0060】
その後、各型枠17、21の表面が100℃、更に200℃になるように、伝熱ヒータ16、20による加熱を行って20分間保持し、乾式粉末の形状を保持した状態で硬化させ、浸漬ノズル13の内側表面14に、厚み10mmの一次硬化させた成形体を形成した。
そして、各型枠17、21を取り外し、フレーム温度を1100℃に調整可能なガスバーナー(火炎バーナー)を用いて、筒状部11の上方から2時間予熱して硬化させて内装体15を形成した後、これを2ストランドの60トンのタンディッシュ(2つの供給口を備えたタンディッシュ)の一方側のストランドに装着し、330トンの溶鋼を使用して6ヒート(6回分)の鋳造を行った。なお、他方側のストランドには、内装体が設けられていないアルミナ黒鉛質耐火物で構成された従来例3の連続鋳造用浸漬ノズルを装着した。
ここで、各連続鋳造用浸漬ノズルの各種物性値を表3に示す。
【0061】
【表3】
Figure 2004337956
【0062】
従来例3の連続鋳造用浸漬ノズルは、4ヒート目でノズルに閉塞が生じ、ノズル交換を行わなければならなかった。一方、実施例3の連続鋳造用浸漬ノズル13については、鋳型内の湯面変動やノズルの閉塞トラブルを生じることなく、6ヒートを完全に鋳造できた。
【0063】
前記実施の形態においては、予め形成された母材となる耐火物の表面に隙間を介して型枠を配置し、この隙間に耐火材料を充填して加熱することで、内張り層を形成する場合について述べたが、型枠を用いて形成した隙間に耐火材料を充填して加熱し、硬化させて成形した内装体を、母材となる耐火物の内面に内装することにより、前記した実施の形態と同様の効果を発現することができる。
【0064】
以上、本発明を、一実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の耐火物内張り層の形成方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
また、前記実施の形態においては、耐火物として連続鋳造用浸漬ノズルを使用した場合について説明したが、他の耐火物として、例えば、樋、タンディッシュ(内面、堰、ストッパー)、鍋、注湯用ノズル(上ノズル、下ノズル、ロングノズル、スライディングノズル)等を使用することもできる。
【0065】
そして、前記実施の形態においては、型枠の形状を、筒状部及び吐出口の各形状に応じて、中空状となった円筒形及び断面矩形とした場合について説明したが、形成する内装体等の形状に対応させ、耐火材料の硬化時において、3次元的に膨張することを考慮することなく、複雑な形状にすることもできる。例えば、吐出口の部分に、溶鋼を吐出可能な複数の貫通孔を備えた吐出部(蜂の巣状等)を備えた内装体を形成する場合においても、容易に異なる材質で構成でき、内装体に発生する亀裂や剥離を抑制することができる。
従って、内装体の製造の簡素化と、加工等の工程を省略した量産化が可能になり、経済的であると共に、作業性も良好になる。
【0066】
更に、前記実施の形態においては、伝熱ヒータを組み合わせた型枠を使用した場合について説明したが、伝熱ヒータからなる型枠、即ち伝熱ヒータ自体が型枠となったものを使用することもできる。これにより、伝熱ヒータとしては、例えば、電熱抵抗線を用いないインダクションヒータ、及び電気ヒータマット等、また熱電対もしくは光ファイバーセンサ等によるセンシング機能を用いて任意の温度制御を可能としたシステムの固体内熱伝導を利用するものを使用することもできる。これにより、施工範囲全体を略均一に加熱することができる。
【0067】
【発明の効果】
請求項1〜13記載の耐火物内張り層の形成方法においては、隙間に充填された無水の耐火材料を間接的に加熱して硬化させることにより、この耐火材料の硬化を均一に発現することができ、新たに形成された耐火物層の剥離や亀裂の発生を抑制できる。
しかも、例えば、予め形成された母材となる耐火物に内張り層を形成した場合、母材となる耐火物に対する硬化した耐火材料の馴染みが良好であり、形成した内張り層の構造的な強度の低下が防止でき、製造も簡単に行うことができるので、耐火物に安定した品質の内張り層を作業性良く製造できる。
また、実質的に無水の耐火材料を使用するため、材質系の選定範囲を広げることができ、用途に応じて耐火粉末の組成を選択できる。なお、耐火材料中の水分が気化することで生じる水蒸気爆裂、剥離等の恐れが無くなるので、製造時における作業性が良好になり、しかも安全に作業を行うことができる。
そして、耐火物の表面への耐火材料の配置が容易なので、複雑異型な箇所でも内張りを容易に成形できる。
【0068】
特に、請求項2記載の耐火物内張り層の形成方法においては、耐火材料を充填する隙間が、伝熱ヒータを組み合わせた型枠、又は伝熱ヒータからなる型枠を用いて形成されるので、例えば従来のように熱風バーナーを使用した場合よりも、加熱領域の温度差を小さくでき、局部的な亀裂や剥離の発生を抑制、更には防止できる。
また、耐火材料の昇温速度を制御できるので、耐火材料の一次硬化を行う低温度域(例えば、常温から200℃の範囲)において、急速な温度上昇を生じさせることなく、低温熱硬化性樹脂の気化を防止し、しかも耐火材料の初期強度のばらつきを低減して、硬化した耐火材料の割れ、剥離等を抑制、更には防止でき、耐火物に更に安定した品質の内張り層を形成できる。
【0069】
請求項3記載の耐火物内張り層の形成方法においては、例えば従来のように、ノズルの製造工程、内装体の製造工程、及びノズルと内装体との組み合わせ工程の合計3工程を個別に要することなく内装体の成形が可能になるので、従来よりも作業工程を簡略化でき、設備コスト等の削減を図ることができる。
請求項4記載の耐火物内張り層の形成方法においては、温度が100℃から低下しないように保持するので、耐火材料を充填して焼成した内装体の熱応力の軽減を図ることができ、また冷却過程や保管中の吸湿を防止し、内装体が消化することを防止できる。また、これを2日以内に使用することで、本来内装体の稼働面となる部分にCaO−Al 系の低融点の介在物を形成して液層化でき、アルミナ系介在物の付着を防止することができる。このように、アルミナ系介在物の付着を防止できるので、ノズルから吐出する溶鋼の流れを均一にでき、例えば、安定した品質の鋳片を製造できる。
【0070】
請求項5記載の耐火物内張り層の形成方法においては、耐火材料の表層から深部へかけての焼成を良好に行うことができ、硬化後の耐火材料の強度や耐溶損性を向上できるので、安定した品質の内張り層を形成できる。
請求項6記載の耐火物内張り層の形成方法においては、硬化した耐火材料の気孔率を9〜18体積%に設定するので、耐火物の膨張収縮時における変位やヒートショックを耐火材料で吸収でき、耐火物の破損や損傷を抑制、更には防止できる。
請求項7記載の耐火物内張り層の形成方法においては、耐火材料の加熱時における昇温速度を設定するので、耐火材料の加熱領域内に大きな温度差を生じさせることなく、略均一に行うことができ、耐火材料の初期強度のばらつきを低減して、硬化した耐火材料の割れ、剥離等を抑制、更には防止できる。また、低温熱硬化性樹脂の気化を防止し、焼成後の耐火材料の気孔率を小さくできるので、熱硬化性樹脂を添加した効果を十分に発揮することができる。
【0071】
請求項8記載の耐火物内張り層の形成方法においては、内張り層を形成する耐火物の上に硬化した耐火材料を少なくとも1層形成するので、溶鋼接触面に配置する耐火粉末の適用材質の選定範囲を広げることができ、各種用途に応じた内張り層の形成が可能になる。
請求項9記載の耐火物内張り層の形成方法においては、溶鋼が接触する稼働面へのアルミナ系介在物の付着を防止することができるので、安定した溶鋼の流れを形成できる。
【0072】
請求項10記載の耐火物内張り層の形成方法においては、溶鋼が接触する稼働面へのアルミナ系介在物の付着を防止することができるので、安定した溶鋼の流れを形成できる。また、稼働面に耐食性が良好なMgOリッチな晶出層を形成することができ、耐火物の耐溶損性を向上することができるので、耐火物の長期使用が可能になり、ランニングコストを低減できて経済的である。
請求項11、12記載の耐火物内張り層の形成方法においては、極低炭素溶鋼の溶製を、安定して容易に行うことができる。
請求項13記載の耐火物内張り層の形成方法においては、低温熱硬化性樹脂及び高温熱硬化性バインダーの合計量を設定するので、耐火材料の初期硬化を十分に行うことができ、高温域における耐火材料の割れ、亀裂等を抑制、更には防止でき、安定した品質の内張り層を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る耐火物内張り層の形成方法の説明図である。
【図2】同耐火物内張り層の形成方法に使用する型枠の平面展開した模式図である。
【図3】同耐火物内張り層の形成方法に使用する耐火粉末の粒度分布の説明図である。
【図4】同耐火物内張り層の形成方法に使用する低温熱硬化性樹脂及び高温熱硬化性バインダーの合計量が内装体に及ぼす影響について示した説明図である。
【図5】(A)は変形例に係る型枠の側断面図、(B)は(A)のa−a矢視断面図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係る耐火物内張り層の形成方法を使用して製造する内装体の温度と加熱による昇温時間との関係を示す説明図である。
【図7】同内装体の昇温速度が内装体の亀裂及び溶損の発生率に及ぼす影響について示した説明図である。
【図8】同内装体の温度分布が内装体の亀裂及び溶損の発生率に及ぼす影響について示した説明図である。
【図9】従来例に係る浸漬ノズルの内張り形成方法の説明図である。
【符号の説明】
10:溶鋼、11:筒状部、12:吐出口、13:連続鋳造用浸漬ノズル(耐火物)、14:内側表面、15:内装体、16:伝熱ヒータ、17:型枠、18:内側表面部、19:隙間、20:伝熱ヒータ、21:型枠、22:内側表面部、23:隙間、24、25:型枠本体、26、27:裏板、28:貫通孔、29:ストッパー、30:振動装置、31:耐火材料、32:内側表面、33〜36:電極端子、40:伝熱ヒータ、41:型枠、42:型枠本体、43:噴出ノズル、44:噴出口、45:火炎、46:分散板

Claims (13)

  1. 耐火粉末と低温熱硬化性樹脂と高温熱硬化性バインダーとを含む実質的に無水の耐火材料を隙間に充填し、該耐火材料を間接的に加熱して硬化させることを特徴とする耐火物内張り層の形成方法。
  2. 請求項1記載の耐火物内張り層の形成方法において、前記隙間は、伝熱ヒータを組み合わせた型枠、又は伝熱ヒータからなる型枠を用いて形成され、前記耐火材料を前記伝熱ヒータにより加熱することを特徴とする耐火物内張り層の形成方法。
  3. 請求項2記載の耐火物内張り層の形成方法において、注湯用ノズル及び連続鋳造用浸漬ノズルのいずれか一方又は双方からなるノズルの溶鋼接触面の少なくとも一部に、前記耐火材料を前記伝熱ヒータにより加熱し硬化させて成形した内装体を形成することを特徴とする耐火物内張り層の形成方法。
  4. 請求項3記載の耐火物内張り層の形成方法において、鋳造計画に従って前記ノズルを作製し、該ノズルの前記溶鋼接触面に消化性を備えた前記耐火材料を配置した後、これを前記伝熱ヒータにより100℃以上の温度に加温保持し、2日以内であって溶鋼の鋳造に使用する直前に600℃以上に予熱して、前記内装体を成形することを特徴とする耐火物内張り層の形成方法。
  5. 請求項2〜4のいずれか1項に記載の耐火物内張り層の形成方法において、前記伝熱ヒータを組み合わせた前記型枠は、金属製の型枠本体と、電気抵抗を利用した前記伝熱ヒータとを有することを特徴とする耐火物内張り層の形成方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の耐火物内張り層の形成方法において、硬化した前記耐火材料の気孔率は9〜18体積%であることを特徴とする耐火物内張り層の形成方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の耐火物内張り層の形成方法において、前記耐火材料の常温から100〜150℃の範囲にある初期焼結温度までの加熱昇温速度を3〜15(℃/分)に設定することを特徴とする耐火物内張り層の形成方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の耐火物内張り層の形成方法において、前記耐火粉末の組成に、内張り層を形成する耐火物の組成と異なるものを使用し、硬化した前記耐火材料が前記耐火物の上に少なくとも1層形成されていることを特徴とする耐火物内張り層の形成方法。
  9. 請求項8記載の耐火物内張り層の形成方法において、前記耐火粉末はCaO成分を含有することを特徴とする耐火物内張り層の形成方法。
  10. 請求項9記載の耐火物内張り層の形成方法において、前記耐火粉末にはドロマイトクリンカーが配合され、前記CaO成分が20〜70質量%含まれていることを特徴とする耐火物内張り層の形成方法。
  11. 請求項9及び10のいずれか1項に記載の耐火物内張り層の形成方法において、前記耐火材料中の炭素濃度が、0質量%、又は0を超え1質量%未満であることを特徴とする耐火物内張り層の形成方法。
  12. 請求項9及び10のいずれか1項に記載の耐火物内張り層の形成方法において、前記耐火材料中の炭素濃度が、1質量%以上10質量%以下であることを特徴とする耐火物内張り層の形成方法。
  13. 請求項1〜12のいずれか1項に記載の耐火物内張り層の形成方法において、前記低温熱硬化性樹脂及び前記高温熱硬化性バインダーの合計量は、前記耐火粉末量の1〜10質量%であることを特徴とする耐火物内張り層の形成方法。
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